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Trademark Appeal Case

特許訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700197
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7533187号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7533187号の請求項1~13に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7533187号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和2年12月11日に出願され、令和6年8月5日にその特許権の設定登録がされ、同年8月14日に特許掲載公報が発行された。

その後、特許異議申立人近野優也(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。

本件特許についての申立人による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和7年 2月14日 :特許異議の申立て(全請求項)

同年 4月30日付け:取消理由通知書

同年 6月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

同年 8月21日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「前記照明コントローラと前記第1照明器具との間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段」と記載されているのを、「前記照明コントローラと前記第1照明器具との間

の全区間

で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段」に訂正(以下「訂正事項1-1」という。)する。

また、特許請求の範囲の請求項1に「前記第1通信手段のプトロコルによる信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能」と記載されているのを、「前記第1通信手段の

プロトコル

による信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能」に訂正(以下「訂正事項1-2」という。)する。

請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2-13も同様に訂正する。

(2)訂正事項2

明細書の段落【0007】を「本開示の1つの態様の照明制御システムは、照明空間を照明する第1照明器具と第2照明器具と、前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具を制御する照明コントローラと、前記照明コントローラと前記第1照明器具との間

の全区間

で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段と、前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で通信を行う、前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段と、を備える照明制御システムであって、前記照明コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ、前記変換装置は、前記第1通信手段の

プロトコル

による信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能、前記第2通信手段側に電源を給電する給電機能、前記第2通信手段に対して制御をおこなう制御機能が設けられていることを特徴とする。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

訂正事項1-1は、「前記照明コントローラと前記第1照明器具との間」における「特定のプロトコルによる第1通信手段」による「通信」の行われる範囲が「前記照明コントローラと前記第1照明器具との間」の「全区間」であることを特定するものである。

したがって、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、訂正事項1-2についてであるが、本件訂正前の請求項1においては、「特定のプロトコルによる第1通信手段」、「前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段」、及び「前記第2通信手段のプロトコルによる信号」との記載がある。そして、本件訂正前の本件特許の明細書においても、「通信プロトコル」(段落【0014】)及び「DALI増幅器15がプロトコルを変換する機能」(段落【0015】)との記載があるところ、請求項1の記載に対応する段落【0007】の記載以外に「プトロコル」との記載はない。

そうすると、本件訂正前の請求項1における「前記第1通信手段のプトロコル」が「前記第1通信手段のプロトコル」の誤記であることは、当業者には明らかである。

したがって、訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)の段落【0012】には、「・・・照明コントローラ11は専用BUSにより通信機能が搭載された各照明器具20(以下照明器具)等に接続されている。・・・また、照明コントローラ11は専用BUS18を介して増幅器14及びDALI増幅器15に接続されている。増幅器14には、専用BUS18を介して照明器具20及びスイッチ21等が接続されている。」との記載があり、当該記載と図1及び2から、一方の照明器具20が、照明コントローラ11と増幅器14を介して接続され、照明コントローラ11と増幅器14の間、及び増幅器14と照明器具20の間が、専用BUS18で接続されているといえる。そして、専用BUS18と増幅器14は、専用BUSのプロトコルで通信が行われると認められるので、照明器具20と照明コントローラ11の間の全ては、専用BUS18のプロトコルで通信するといえる。

したがって、訂正事項1-1は、段落【0012】並びに図1及び2の記載に基づくものであるので、本件特許の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許の明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

また、訂正事項1-2は、訂正前の請求項1の誤記を訂正するものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。

したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1-1は、特許請求の範囲の減縮を行うものであり、また、訂正事項1-2は、訂正前の請求項1の誤記を訂正するものであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではい。

したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的

訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正である。

したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

前記(1)イで述べたのと同じ理由から、訂正事項2は、明細書等及び当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。

したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

3 一群の請求項

本件訂正前の請求項1~13について、請求項2~13は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。

したがって、本件訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

また、明細書の訂正に係る訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る課題解決手段が記載された段落【0007】を訂正するものであり、本件訂正前の請求項2~13は、請求項1を引用するものであるから、当該明細書の訂正に係る請求項1を含む一群の請求項の全てについて訂正するものである。

4 令和7年8月21日提出の意見書(以下「意見書」という。)における本件訂正に関する申立人の主張

意見書における申立人による本件訂正についての主張の概要は、請求人がいう「照明コントローラと第1照明器具との間の全区間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段(専用BUS18)」は、明細書に記載されたものではないので、訂正事項1のうち、「前記照明コントローラと前記第1照明器具との間の全区間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段と、」との訂正(以下、前述と同様に「訂正事項1-1」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超えてなされた訂正である。

また、訂正事項1-1の「第1通信手段」は、専用BUS18以外の、特定のプロトコルによる通信手段も包含し得る、と考えられるところ、本件特許の発明の詳細な説明には、専用BUS18しか記載されておらず、専用BUS18以外の特定のプロトコルによる第1通信手段については開示も示唆もされていないので、訂正事項1-1は、実質上、本件特許の特許請求の範囲を拡張する訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえないというものである。

しかしながら、前記2(1)イで述べたように、本件特許の明細書等の段落【0012】並びに図1及び2から、一方の照明器具20が、照明コントローラ11と増幅器14を介して接続され、照明コントローラ11と増幅器14の間、及び増幅器14と照明器具20の間が、専用BUS18で接続されており、専用BUS18と増幅器14は、専用BUSのプロトコルで通信が行われると認められるので、本件特許の明細書等には、照明器具20と照明コントローラ11の間の全てが専用BUS18のプロトコルで通信することが記載されているといえる。

また、本件特許の明細書等の段落【0006】には、本件特許の課題として、「通信プロトコルが異なる照明器具が混在した場合にも簡易な構成により適切に各照明器具を制御することが可能な照明制御システムを提供すること」との記載があり、本件特許に係る発明が様々な異なる通信プロトコルが混在する照明制御システムを前提とすることが示唆されているので、本件特許の明細書等において、「第1通信手段」として専用BUS18だけが実施例として記載されていたとしても、「第1通信手段」が専用BUSだけに限定されるものであるとは認められない。

そうすると、訂正事項1-1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の明細書等に記載した事項の範囲内でするものであり、また、本件特許の特許請求の範囲を拡張するものではないと認められる。

したがって、申立人の主張を採用することはできない。

5 小括

以上のとおり、訂正事項1及び2に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。さらに、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合し、訂正事項2に係る本件訂正は、同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

したがって、明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の発明

前記第2で説示したように本件訂正は認められるから本件訂正後の請求項1~13に係る発明(以下、「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】

照明空間を照明する第1照明器具と第2照明器具と、

前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具を制御する照明コントローラと、

前記照明コントローラと前記第1照明器具との間の全区間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段と、

前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で通信を行う、前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段と、

を備える照明制御システムであって、

前記照明コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ、

前記変換装置は、前記第1通信手段のプロトコルによる信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能、前記第2通信手段側に電源を給電する給電機能、前記第2通信手段に対して制御をおこなう制御機能を有する照明制御システム。

【請求項2】

前記第2通信手段は前記変換装置を介して、前記第1通信手段又は前記照明コントローラと通信する請求項1に記載の照明制御システム。

【請求項3】

前記第1通信手段及び前記第2通信手段は、相互に通信速度が異なる請求項1又は2に記載の照明制御システム。

【請求項4】

前記第1通信手段及び前記第2通信手段は、一方が動作不能なときにも、他方は動作可能である請求項1~3のいずれか1項に記載の照明制御システム。

【請求項5】

前記変換装置は、前記照明コントローラからの第1アドレス情報、及び、前記第2通信手段のプロトコルによる第2アドレス情報を、相互に変換する請求項1~4のいずれか1項に記載の照明制御システム。

【請求項6】

前記第1アドレス情報、及び、前記第2アドレス情報は、アドレス設定器及び/又は前記変換装置により自動的に設定される請求項5に記載の照明制御システム。

【請求項7】

前記変換装置はデータベースを備えており、前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具のアドレス情報、グループ情報、又は、シーン情報の少なくとも1つを記憶する請求項1~6のいずれか1項に記載の照明制御システム。

【請求項8】

前記第1通信手段に接続されたスイッチ、及び/又は、前記第2通信手段に接続されたスイッチにより、前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具の個別制御、グループ制御、又は、シーン制御の少なくとも1つが可能である請求項1~7のいずれか1項に記載の照明制御システム。

【請求項9】

前記第2通信手段に接続されたスイッチ操作に対して、前記変換装置に記憶された情報に基づき前記第2通信手段に接続された照明が制御されると共に、

前記第2通信手段に接続されたスイッチ操作に対して、前記第1通信手段に接続された照明が制御される請求項1~8のいずれか1項に記載の照明制御システム。

【請求項10】

前記照明コントローラは、前記第1通信手段に接続されたスイッチ、及び、前記第2通信手段に接続されたスイッチの表示を制御する請求項1~9のいずれか1項に記載の照明制御システム。

【請求項11】

前記照明コントローラは、前記第1通信手段に対してグループ制御情報を送信し、前記第2通信手段に対して照明パターン制御情報を送信することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の照明制御システム。

【請求項12】

前記第2通信手段にセンサが接続されている場合、前記センサの情報に応じて前記第2通信手段に接続されて前記第2照明器具が制御されると共に、

前記センサの情報は前記照明コントローラに通知されて、前記センサの情報に基づき前記第1通信手段に接続された前記第1照明器具が制御される請求項1~11のいずれか1項に記載の照明制御システム。

【請求項13】

前記第1通信手段及び/又は前記第2通信手段には、前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具と同様にグループ制御可能なリレー端末が接続されている請求項1~12のいずれか1項に記載の照明制御システム。」

第4 取消理由通知で通知した取消理由について

本件訂正前の請求項1~13に係る特許に対して、当審において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次の取消理由を含むものである。

理由1:(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

理由2:(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明若しくは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

[理由1]

請求項13の記載が明確でなく、請求項13に係る発明は、明確でない。

[理由2]

<引用文献一覧>

甲第3号証:特開2020-113830号公報

甲第1号証:特開2019-175600号公報

甲第2号証:特開2019-83458号公報

以下、「甲第○号証」を「甲○」という。

<請求項に係る発明と引用文献との関係>

・請求項1~7

引用文献 甲3、甲1

・請求項8~13

・引用文献 甲3、甲1、甲2

第5 当審の判断

1 理由1(明確性要件)

(1)本件発明13について

請求項13には、「前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具と同様にグループ制御可能なリレー端末が接続されている」との記載がある。

ここで、一般に、リレー端末の制御がオンオフ制御である一方、照明器具の制御には、調光や調色など多岐にわたる制御が含まれ、両者の制御の内容が異なるものであるのが技術常識である。

そうすると、「リレー端末」が「前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具と同様にグループ制御可能」であるとは、「リレー端末」と「前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具」の「グループ制御」の内容において「同様」であることを意味するのではなく、両者が、単に「グループ制御可能」である点において「同様」であると解するのが妥当と認められる。

したがって、請求項13の記載は明確であり、本件発明13は明確である。

(2)意見書における申立人の主張について

明確性要件に関する申立人の主張は、要するに、「リレー端末に対して単にグループ制御が適用可能であること」は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された事項ではないから、請求人(当審注:「特許権者」の誤記と認める。)の意見に反し、訂正特許請求の範囲の請求項13の記載では、リレー端末に対して単にグループ制御が適用可能であることは特定されていないと考えるので、訂正特許請求の範囲の請求項13は、明確性に関する取消理由に該当するというものである。

しかしながら、前記(1)で述べたように、照明器具の制御内容とリレー端末の制御内容の相違に鑑みれば、特許権者が令和7年6月9日提出の意見書で述べるように、請求項13の記載は、「リレー端末」と「前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具」が、単に「グループ制御可能」であることで同様であると解するのが妥当と認められる。

したがって、申立人の主張を採用することはできない。

(3)小括

以上のとおり、請求項13の記載は明確であり、本件発明13は明確である。

したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

よって、取消理由1(明確性)によって、本件特許の請求項13に係る特許を取り消すことはできない。

2 理由2(進歩性)

(1)甲3について

ア 甲3の認定事項

甲3の段落【0017】、【0020】、【0031】、【0033】~【0035】、【0038】、及び図1から、甲3について、以下のことが認められる。

(ア)段落【0017】及び図1から、照明システム1は、2つの照明制御端末30、前記2つの照明制御端末30のうちの一方の照明制御端末30に接続される一方の照明器具40、前記2つの照明制御端末30のうちの他方の照明制御端末30に接続される他方の照明器具40、インテリジェントハブ装置20、IPアドレス設定装置10、及び操作卓50を備える。

(イ)段落【0038】、図1、及び前記(ア)から、操作卓50は、各照明器具40の調光および調色を指示するための操作盤を有する。

(ウ)段落【0033】、【0035】、及び図1から、照明システム1は、操作卓50と一方の照明制御端末30をインテリジェントハブ装置20を介して接続するイーサネット(登録商標)プロトコルによる通信を行う第1の通信手段及び一方の照明制御端末30と一方の照明器具40を接続するDMXプロトコルによる通信を行う第2の通信手段を備える。

(エ)段落【0033】、【0035】、及び図1から、照明システム1は、操作卓50と他方の照明制御端末30をインテリジェントハブ装置20を介して接続するイーサネット(登録商標)プロトコルによる通信を行う第1の通信手段及び他方の照明制御端末30と他方の照明器具40を接続するDMXプロトコルによる通信を行う第2の通信手段を備える。

(オ)段落【0031】、【0033】、【0035】、前記(ア)、(ウ)、及び(エ)から、各照明制御端末30は、変換部32、制御部34を有し、各変換部32は、イーサネット(登録商標)プロトロルの通信信号とDMXプロトコルの通信信号とを双方向にプロトコル変換し、各制御部34は、第2の通信手段で接続される各照明器具40の調光および調色を制御する。

(カ)段落【0020】、【0034】、図1、前記(ア)、(ウ)、及び(エ)から、IPアドレス設定装置10は、各照明制御端末30がインテリジェントハブ装置20に接続されたとき、設定すべきIPアドレスを決定し、各照明制御端末30に決定したIPアドレスを、通信部11を介して設定し、各記憶部33は、各照明制御端末30に設定されたIPアドレスと、各照明器具40を調光および調色するための各種設定情報を記憶する。

イ 甲3に記載された発明

前記アから、甲3には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる(括弧内に、根拠箇所を示した。以下同様。)。

「2つの照明制御端末30、前記2つの照明制御端末30のうちの一方の照明制御端末30に接続される一方の照明器具40、前記2つの照明制御端末30のうちの他方の照明制御端末30に接続される他方の照明器具40、インテリジェントハブ装置20、IPアドレス設定装置10、及び操作卓50を備えた照明システム1であって(前記ア(ア))、

前記操作卓50と前記一方の照明制御端末30を前記インテリジェントハブ装置20を介して接続するイーサネット(登録商標)プロトコルによる通信を行う第1の通信手段及び前記一方の照明制御端末30と前記一方の照明器具40を接続するDMXプロトコルによる通信を行う第2の通信手段と(前記ア(ウ))、

前記操作卓50と前記他方の照明制御端末30を前記インテリジェントハブ装置20を介して接続するイーサネット(登録商標)プロトコルによる通信を行う前記第1の通信手段及び前記他方の照明制御端末30と前記他方の照明器具40を接続するDMXプロトコルによる通信を行う前記第2の通信手段と(前記ア(エ))、を備え、

前記操作卓50は、前記各照明器具40の調光および調色を指示するための操作盤を有し(前記ア(イ))、

前記各照明制御端末30は、変換部32、記憶部33、制御部34を有し(前記ア(オ))、

前記各変換部32は、イーサネット(登録商標)プロトロルの通信信号とDMXプロトコルの通信信号とを双方向にプロトコル変換し、前記各記憶部33は、前記各照明制御端末30に設定されたIPアドレスと、前記各照明器具40を調光および調色するための各種設定情報を記憶し、前記各制御部34は、第2の通信手段で接続される前記各照明器具40の調光および調色を制御する(前記ア(オ)、(カ))照明システム1。」

(2)本件発明1について

ア 対比

(ア)本件発明1と甲3発明を対比すると、後者の「一方の照明器具40」が前者の「第1照明器具」に相当し、以下同様に、後者の「他方の照明器具40」が前者の「第2照明器具」に、後者の「イーサネット(登録商標)プロトコル」が前者の「特定のプロトコル」に、後者の「第1の通信手段」が前者の「第1通信手段」に、後者の「第2の通信手段」が前者の「第2通信手段」に、それぞれ相当する。

以上の相当関係から、以下のことがいえる。

(イ)後者の「一方の照明器具40」及び「他方の照明器具40」は、照明空間を照明することは明らかなので、前者の「照明空間を照明する第1照明器具と第2照明器具」に相当する。

(ウ)後者の「前記各照明器具40の調光および調色を指示するための操作盤を有」する「操作卓50」は、前者の「前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具を制御する照明コントローラ」に相当する。

(エ)後者の「前記操作卓50と前記一方の照明制御端末30を前記インテリジェントハブ装置20を介して接続するイーサネット(登録商標)プロトコルによる通信を行う第1の通信手段及び前記一方の照明制御端末30と前記一方の照明器具40を接続するDMXプロトコルによる通信を行う第2の通信手段」「を備え」ることと、前者の「前記照明コントローラと前記第1照明器具との間の全区間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段」「を備える」こととは、「前記照明コントローラと前記第1照明器具との間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段」「を備える」ことで共通する。

(オ)後者の「イーサネット(登録商標)プロトコル」と「DMXプロトコル」は、異なるプロトコルであるので、後者の「DMXプロトコル」は、前者の「前記第1通信手段とは異なるプロトコル」に相当する。

(カ)前者の「前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で通信を行う、前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段」「を備える」との記載は、「前記照明コントローラと前記第2照明器具との間」のどこかに「前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段」「を備え」ていればよいものと解される。

そうすると、後者の「前記操作卓50と前記他方の照明制御端末30を前記インテリジェントハブ装置20を介して接続するイーサネット(登録商標)プロトコルによる通信を行う前記第1の通信手段及び前記他方の照明制御端末30と前記他方の照明器具40を接続するDMXプロトコルによる通信を行う前記第2の通信手段」「を備え」ることは、前者の「前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で通信を行う、前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段」「を備える」ことに相当する。

また、後者の「前記操作卓50と前記他方の照明制御端末30を接続するイーサネット(登録商標)プロトコルによる通信を行う前記第1の通信手段及び前記他方の照明制御端末30と前記他方の照明器具40を接続するDMXプロトコルによる通信を行う前記第2の通信手段」「を備え」ることは、「前記他方の照明制御端末30」が「前記操作卓50」と「第2の通信手段」の間に設けられているので、前者の「前記照明コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ」ることに相当する。

(キ)後者の「前記各照明制御端末30は、変換部32、記憶部33、制御部34を有し、前記各変換部32は、イーサネット(登録商標)プロトロルの通信信号とDMXプロトコルの通信信号とを双方向にプロトコル変換し、前記各記憶部33は、前記各照明制御端末30に設定されたIPアドレスと、前記各照明器具40を調光および調色するための各種設定情報を記憶し、前記各制御部34は、第2の通信手段で接続される各照明器具40の調光および調色を制御する」ことは、前者の「前記変換装置は、前記第1通信手段のプトロコルによる信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能、」「前記第2通信手段に対して制御をおこなう制御機能を有する」ことに相当する。

(ク)以上の限りにおいて、後者の「照明システム1」が前者の「照明制御システム」に相当する。

したがって、本件発明1と甲3発明とは、

「照明空間を照明する第1照明器具と第2照明器具と、

前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具を制御する照明コントローラと、

前記照明コントローラと前記第1照明器具との間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段と、

前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で通信を行う、前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段と、

を備える照明制御システムであって、

前記照明コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ、

前記変換装置は、前記第1通信手段のプロトコルによる信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能、前記第2通信手段に対して制御をおこなう制御機能を有する照明制御システム。」

との点で、一致し、以下の点で相違する。

[相違点3-1]

第1通信手段に関して、本件発明1は、前記照明コントローラと前記第1照明器具との間「の全区間」で通信を行うのに対して、甲3発明は、「前記操作卓50と前記一方の照明制御端末30を前記インテリジェントハブ装置20を介して接続する」第1の通信手段である点。

[相違点3-2]

変換装置に関して、本件発明1は、「前記第2通信手段側に電源を給電する給電機能」を有するのに対して、甲3発明1は、かかる「給電機能」を有する点について特定されていない点。

イ 相違点についての検討

(ア)相違点3-1について

甲3には、照明制御端末30と照明器具40との間のDMXプロトコルによる通信をイーサネット(登録商標)プロトコルの通信に変えることについての記載も示唆もない。

また、申立人が提出した他の証拠においても、DMXプロトコルによる通信をイーサネット(登録商標)プロトコルの通信に変えることについて記載も示唆もされていない。

そして、DMXプロトコルが照明器具の調光や調色などの制御を行うための通信規格であることに鑑みれば、甲3発明において、照明制御端末30と照明器具40との間のDMXプロトコルによる通信をイーサネット(登録商標)プロトコルの通信に変えることには、阻害要因があるとも認められる。

そうすると、甲3発明において、相違点3-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

したがって、本件発明1は、相違点3-2について検討するまでもなく、甲3発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。

(3)本件発明2~13について

本件発明2~13は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、前記(2)と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)意見書における申立人の主張

甲3を主引用文献とした進歩性の取消理由についての申立人の主張は、要するに、本件発明1は、甲3発明及び甲1に記載された「システム制御装置1と家電8との間の全区間で通信を行う、第1通信プロトコルであるECHONET Liteによるネットワーク」に関する記載事項(以下「甲1記載事項」という。)に基いて当業者が容易に発明することができたものであるというもの、並びに本件発明1は、甲3発明、甲1記載事項、及び甲2に記載された「第1端末11Dと第1端末11Aとの間が、第1システム1のプロトコルによる伝送路12を介して接続され、更に、第1端末11Aと照明器具4Aとの間も、第1システム1のプロトコルによる伝送路12を介して接続されている」ことに関する記載事項(以下「甲2記載事項」という。)に基いて当業者が容易に発明することができたものであるというものである。

しかしながら、甲3発明において、操作卓50と照明制御装置30の間及び照明制御装置30と照明器具の間を甲1に記載された「ECHONET Liteによるネットワーク」や甲2に記載された「伝送路12」で接続することの動機はない。

そして、甲3発明における照明制御システム1においては、照明制御装置30にインテリジェントハブ装置20を介してIPアドレス設定装置10をイーサネット(登録商標)プロトコルの通信で接続することで、接続された照明制御装置30のIPアドレス設定の作業工数および作業時間を低減するとの課題を解決するものであり、そのような照明システム1を前提として操作卓50からの照明器具40に対する指示もイーサネット(登録商標)プロトコルの通信を利用して送信するものである。

そうすると、甲3発明において、操作卓50と照明器具40の間を甲1の「ECHONET Liteによるネットワーク」や甲2の「伝送路12」の接続を適用した場合には、甲3の前記課題が解決できないおそれがあるので、その適用には、阻害要因があるといえる。

また、仮に、適用できたとしても、その場合には、甲3発明における操作卓50と全ての照明器具40の間が甲1の「ECHONET Liteによるネットワーク」や甲2の「伝送路12」によって接続されることとなるので、照明システム1は、「異なる通信プロトコル」を備えたものではなくなり、相違点3-1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとはならない。

したがって、本件発明1は、甲3発明及び甲1記載事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではなく、また、本件発明1は、甲3発明、甲1記載事項、及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明することができたものでもない。

よって、申立人の主張を採用することはできない。

(5)小括

以上のとおり、本件発明1~13は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、甲3発明、甲1記載事項、及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明することができたものでもないので、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

したがって、取消理由2(進歩性)によって、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

申立人は、特許異議申立書において、前記第4の引用文献一覧で示した証拠以外に、次の証拠を提出し、以下の特許異議申立理由(以下「申立理由」という。)を主張している。

甲4:特開2018-142495号公報

1 申立理由の概要

(1)請求項1~13に係る発明に関するサポート要件違反[特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)]

(2)請求項1~13に係る発明に関する明確性要件違反[特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)]

(3)請求項1~7に係る発明の新規性について(甲1を主たる証拠とした場合)[特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)]。

(4)請求項1~13に係る発明の進歩性について(甲1を主たる証拠とした場合)[特許法第29条第2項(同法第113条第2号)]。

(5)請求項1に係る発明の新規性について(甲4を主たる証拠とした場合)[特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)]。

(6)請求項1に係る発明の進歩性について(甲4を主たる証拠とした場合)[特許法第29条第2項(同法第113条第2号)]。

2 申立理由についての検討

(1)申立理由(1)について

ア 申立理由(1)の概要

請求項1には、「変換装置」と記載されているが、「変換装置」は、明細書には記載されていない。

したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由(1)の検討

請求項1には、「変換装置」に関して、「前記照明コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ、前記変換装置は、前記第1通信手段のプトロコルによる信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能」「を有する」との記載がある。

一方、本件特許の明細書等の段落【0012】には、「照明コントローラ11は専用BUS18を介して・・・DALI増幅器15に接続されている。」との記載があり、段落【0014】には、「DALI増幅器15には、DALI伝送線19を介してDALI規格の照明器具25、・・・が接続されている。」との記載がある。また、段落【0015】には、「DALI増幅器15がプロトコルを変換する機能と危険分散のため給電機能と、壁スイッチ操作、人感センサ動作を制御できる機能を付加した照明制御システムを提供することができる。」との記載があり、段落【0042】には、「DALI増幅器15において専用BUS側システムとDALI通信側システムとの間でのデータ変換が可能である。」との記載がある。

そうすると、これらの段落の記載及び図1~3から、本件特許の明細書等には、「照明コントローラ11」と「DALI伝送線19」との間に設けられた「DALI増幅器15」が「専用BUS18」のプロトコルによる信号を「DALI伝送線19」のプロトコルによる信号に変換する機能を有するものであることが記載されていると認められ、「DALI増幅器15」が請求項1に記載された「変換装置」に当たるものであることが理解できる。

また、本件特許の明細書等の段落【0006】の記載から、本件特許の解決しようとする課題は、「通信プロトコルが異なる照明器具が混在した場合にも簡易な構成により適切に各照明器具を制御することが可能な照明制御システムを提供する」ことであると認められるところ、本件特許の明細書等の段落【0045】の記載から、「照明コントローラ11」と「DALI伝送線19」との間に「DALI増幅器15」が設けられ、「DALI増幅器15」において、「専用BUS18」のプロトコルによる信号が「DALI伝送線19」のプロトコルによる信号に変換される照明制御システムによって、前記課題が解決されることが理解できる。

そうすると、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。また、請求項1を引用する請求項2~13の記載についても同様である。

したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(2)申立理由(2)について

ア 申立理由(2)の概要

請求項1に記載された「前記第2の通信手段側に電源を給電する機能」が明確でないので、請求項1の記載は明確でない。

したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由(2)の検討

請求項1には、「前記変換装置は、・・・前記第2通信手段側に電源を給電する給電機能、・・・を有する」との記載があるところ、当該記載では、「変換装置」が「第2通信手段側に電源を給電する給電機能」を「有する」ことが明確に示されており、その記載自体は明確であるといえる。

一方、本件特許の明細書等の段落【0015】には、「DALI増幅器15がプロトコルを変換する機能と危険分散のため給電機能・・・を提供することができる。」と記載されているところ、前記(1)イで述べたように「DALI増幅器15」が請求項1に記載された「変換装置」に当たるものである。

そうすると、請求項1の記載は、本件特許明細書等の段落【0015】の記載と矛盾するものでもない。

したがって、請求項1の記載は、明確であり、また、請求項1を引用する請求項2~13の記載も明確であるので、本件発明1~13は、明確である。

したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

(3)申立理由(3)及び(4)について

ア 申立理由(3)及び(4)の概要

(ア)申立理由(3)

本件発明1~7は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(イ)申立理由(4)

本件発明1~13は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたもの、又は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項若しくは甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由(3)及び(4)の検討

(ア)甲1の認定事項

甲1の段落【0015】~【0022】、【0025】、【0049】、【0050】、図1及び2から、甲1について、以下のことが認められる。

a 段落【0015】及び【0016】から、電力システム100は、照明システム200と、分電盤7と、複数の家電8とを備え、照明システム200は、システム制御装置1と、ルーター2と、照明制御装置3と、複数の照明器具6とを備える。

b 段落【0017】~【0022】、【0025】、図1及び2から、システム制御装置1は、家電8及び照明器具6を制御する。

c 段落【0017】、【0018】、【0025】、及び図1から、システム制御装置1と家電8の間の全区間は、ルーター2及び分電盤7を介してシステム制御装置1が生成する家電用制御信号で通信が行なわれる。

d 段落【0017】~【0022】から、システム制御装置1と照明制御装置3の間は、ルーター2を介してシステム制御装置1が生成する第1通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第1制御信号で通信が行われ、照明制御装置3と照明器具6の間は、第2通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第2制御信号で通信が行われる。

e 段落【0019】~【0022】から、照明制御装置3は、信号変換ユニット4と、照明制御ユニット5と、照明制御ユニット5Aとを含み、信号変換ユニット4は、第1制御信号を照明制御ユニット5及び照明制御ユニット5Aが認識可能な第2制御信号に変換し、照明制御ユニット5及び照明制御ユニット5Aのそれぞれは、第2制御信号に従って、複数の照明器具6を制御する。

f 段落【0049】及び【0050】から、照明制御ユニット5及び照明制御ユニット5Aは、電力線を介して複数の照明器具6と接続し、分電盤7から供給された外部電力を制御して照明器具6に供給する。

(イ)甲1発明

前記(ア)から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「照明システム200と、分電盤7と、複数の家電8とを備え、前記照明システム200は、システム制御装置1と、ルーター2と、照明制御装置3と、複数の照明器具6とを備える電力システム100であって(前記(ア)a)、

前記システム制御装置1は、前記家電8及び前記照明器具6を制御し(前記(ア)b)、

前記システム制御装置1と前記家電8の間の全区間は、前記ルーター2及び前記分電盤7を介して前記システム制御装置1が生成する家電用制御信号で通信が行なわれ(前記(ア)c)、

前記システム制御装置1と前記照明制御装置3の間は、ルーター2を介して前記システム制御装置1が生成する第1通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第1制御信号で通信が行われ、前記照明制御装置3と前記照明器具6の間は、第2通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第2制御信号で通信が行われ(前記(ア)d)、

前記照明制御装置3は、信号変換ユニット4と、照明制御ユニット5と、照明制御ユニット5Aとを含み、前記信号変換ユニット4は、前記第1制御信号を前記照明制御ユニット5及び前記照明制御ユニット5Aが認識可能な前記第2制御信号に変換し、前記照明制御ユニット5及び前記照明制御ユニット5Aのそれぞれは、第2制御信号に従って、複数の照明器具6を制御し(前記(ア)e)、

前記照明制御ユニット5及び前記照明制御ユニット5Aは、電力線を介して複数の前記照明器具6と接続し、前記分電盤7から供給された外部電力を制御して前記照明器具6に供給する(前記(ア)f)、

電力システム100。」

ウ 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲1発明の対比

本件発明1と甲1発明を対比する。

a 後者の「複数の照明器具6」及び「照明器具6」は、照明空間を照明することは明らかなので、前者の「照明空間を照明する第1照明器具と第2照明器具」とは、「照明空間を照明する照明器具」との点で共通する。

b 後者の「前記家電8及び前記照明器具6を制御」する「前記システム制御装置1」と前者の「前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具を制御する照明コントローラ」は、「照明器具を制御するコントローラ」との点で共通する。

c 後者の「前記システム制御装置1と前記家電8の間の全区間は、前記ルーター2及び前記分電盤7を介して前記システム制御装置1が生成する家電用制御信号で通信が行なわれ」ることは、「前記システム制御装置1と前記家電8の間の全区間」が「家電用制御信号で通信が行なわれ」る特定のプロトコルの通信手段で接続されているといえる。

そうすると、前記bも踏まえると、後者の「前記システム制御装置1と前記家電8の間の全区間は、前記ルーター2及び前記分電盤7を介して前記システム制御装置1が生成する家電用制御信号で通信が行なわれ」ることと、前者の「前記照明コントローラと前記第1照明器具との間の全区間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段」「を備え」ることは、「前記コントローラとの間の所定の全区間で通信を行う、特定のプロトコルによる特定の通信手段」「を備え」ることで共通する。

d 前者の「前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で通信を行う、前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段」「を備える」との記載は、「前記照明コントローラと前記第2照明器具との間」のどこかに「前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段」「を備え」ていればよいものと解される。

一方、後者の「前記システム制御装置1と前記照明制御装置3の間は、ルーター2を介して前記システム制御装置1が生成する第1通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第1制御信号で通信が行われ、前記照明制御装置3と前記照明器具6の間は、第2通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第2制御信号で通信が行われ」ることにおいて、「第2の制御信号」のプロトコルと「家電用制御信号」のプロトコルとは異なるものであるといえる。

そうすると、前記b及びcも踏まえると、後者の「前記システム制御装置1と前記照明制御装置3の間は、ルーター2を介して前記システム制御装置1が生成する第1通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第1制御信号で通信が行われ、前記照明制御装置3と前記照明器具6の間は、第2通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第2制御信号で通信が行われ」ることと、前者の「前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で通信を行う、前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段」「を備え」ることは、「前記コントローラと前記照明器具との間で通信を行う、前記特定の通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段」「を備え」ることで共通する。

e 前者の「前記照明コントローラと前記第1照明器具との間の全区間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段と、前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で通信を行う、前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段と、を備える照明制御システムであって、前記照明コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ、前記変換装置は、前記第1通信手段のプロトコルによる信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能」「を有する」ことにおいて、「変換機能」は、「前記照明コントローラ」からの「前記第1通信手段のプロトコルによる信号」と「第2照明器具との間で通信を行う」「前記第2通信手段のプロトコルによる信号」とを変換するものと認められる。

そうすると、後者の「前記第1制御信号を前記照明制御ユニット5及び前記照明制御ユニット5Aが認識可能な前記第2制御信号に変換」する「前記信号変換ユニット4」と、前者の「前記第1通信手段のプロトコルによる信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能」は、前記bも踏まえると、「前記コントローラからの信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能」との点で共通し、この限りにおいて、後者の「信号変換ユニット4」「を含」む「前記照明制御装置3」は、前者の「変換機能」「を有する」「前記変換装置」に相当する。

f 前記d及びeから、後者の「前記システム制御装置1と前記照明制御装置3の間は、ルーター2を介して前記システム制御装置1が生成する第1通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第1制御信号で通信が行われ、前記照明制御装置3と前記照明器具6の間は、第2通信プロトコルに準拠した信号形式を有する第2制御信号で通信が行われ」ることは、「前記システム制御装置1」と「第2制御信号」の「通信が行われ」る部分の間に「前記照明制御装置3」が設けられているといえるので、前者の「前記照明コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ」ることとは、「前記コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ」る点で共通する。

g 前記eから、後者の「前記照明制御装置3は、」「照明制御ユニット5と、照明制御ユニット5Aとを含み、」「前記照明制御ユニット5及び前記照明制御ユニット5Aのそれぞれは、第2制御信号に従って、複数の照明器具6を制御し、前記照明制御ユニット5及び前記照明制御ユニット5Aは、電力線を介して複数の前記照明器具6と接続し、前記分電盤7から供給された外部電力を制御して前記照明器具6に供給する」ことは、「前記照明器具6」が「第2制御信号で通信が行われ」る側にあることは明らかなので、前者の「前記変換装置は、」「前記第2通信手段側に電源を給電する給電機能、前記第2通信手段に対して制御をおこなう制御機能を有する」ことに相当する。

f 以上の限りにおいて、後者の「電力システム100」は、前者の「照明制御システム」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明は、

「照明空間を照明する照明器具と、

照明器具を制御するコントローラと、

前記コントローラとの間の所定の全区間で通信を行う、特定のプロトコルによる特定の通信手段と、

前記コントローラと前記照明器具との間で通信を行う、前記特定の通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段と、

を備える制御システムであって、

前記コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ、

前記変換装置は、前記コントローラからの信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能、前記第2通信手段側に電源を給電する給電機能、前記第2通信手段に対して制御をおこなう制御機能を有する照明制御システム。」

との点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1-1]

コントローラに関して、本件発明1は、「前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具」を制御する「照明」コントローラであるのに対して、甲1発明は、「家電8及び照明器具6」を制御する「システム制御装置1」である点。

[相違点1-2]

所定の全区間及び特定の通信手段に関して、本件発明1は、「照明コントローラと第1照明器具との間の」全区間で通信を行う、「特定のプロトコルによる第1通信手段」であるのに対して、甲1発明は、「システム制御装置1と家電8の間の」全区間を「家電用制御信号」で通信する点。

[相違点1-3]

変換機能に関して、本件発明1は、「照明コントローラと第1照明器具との間の全区間で通信を行う」「第1通信手段のプロトコルによる信号」と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換するのに対して、甲1発明は、「システム制御装置1と照明制御装置3の間」「で通信」を行う「第1制御信号」を第2制御信号に変換するものの、「第1制御信号」は、システム制御装置1と家電8の間の全区間で通信を行う「家電用制御信号」とは異なる点。

(イ)相違点についての検討

相違点1-1は、実質的な相違点であるので、本件発明1は、甲1発明ではない。

そして、甲1の段落【0025】には、「・・・システム制御装置1から、ルーター2を介して家電8の制御情報を示す家電用制御信号を受信する。そして、分電盤7の制御部は、家電用制御信号に従って、家電8を制御する。」との記載があり、段落【0026】には、「家電8は、例えば、空調機器(エアコン)、テレビ、又は冷蔵庫である。家電8は、分電盤7の制御部に従って動作する。」との記載があるので、甲1においては、家電8は、家電用制御信号によって制御されるものであり、照明器具を含まないものであると解するのが妥当といえる。

そうすると、甲1発明において、家電8を照明器具とすることに、動機はないといえる。

そして、甲2~甲4には、甲1発明における家電8を照明器具とすることを示すような事項について、記載も示唆もされていない。

また、甲1においては、第1制御信号及び第2制御信号によって制御される照明器具6とシステム制御装置1の通信経路と、家電用制御信号によって制御される家電8とシステム制御装置1の通信経路を、あえて別の通信経路として構成していることに鑑みれば、甲1発明において、家電8を照明器具とすることには、阻害事由があるともいえる。

したがって、甲1発明において、家電8を照明器具として、相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

よって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、相違点1-2及び相違点1-3を検討するまでもなく、甲1発明に基づいて、又は甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明2~13について

本件発明2~13は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものである。

そうすると、前記ウ(イ)と同様の理由により、本件発明2~7は、甲1発明ではなく、また、本件発明2~13は、甲1発明に基づいて、又は甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、申立人は、特許異議申立書の62ページ12行~63ページ17行において、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張するものの、その理由は、甲1発明と甲2~4に記載された事項は、技術分野が照明制御に関する点で共通し、通信プロトコルの変換機能を有することで共通するから、適用可能というものである。

しかしながら、前述したように、甲1発明において、家電8を照明器具とすることに、動機はなく、また、甲2~甲4には、甲1発明における家電8を照明器具とすることを示すような事項についての記載も示唆もないので、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、申立人の主張を採用することはできない。

(4)申立理由(5)及び(6)について

ア 申立理由(5)及び(6)の概要

(ア)申立理由(5)

本件発明1は、甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(イ)申立理由(6)

本件発明1は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由(5)及び(6)の検討

(ア)甲4の認定事項

甲4の段落【0014】、【0016】~【0019】、及び図1から、甲4について、以下のことが認められる。

a 段落【0014】、【0016】、及び【0017】から、照明システム1は、照明制御装置10、調光盤20、照明装置200、及び照明装置300を有する。

b 段落【0018】から、照明制御装置10は、照明装置200及び照明装置300の制御を行う。

c 段落【0018】及び図1から、照明制御装置10と照明装置300の間の全区間は、制御内容を示すDMX信号で通信が行われる。

d 段落【0018】、【0019】から、調光盤20は、DMX-PWM変換器21を有し、DMX-PWM変換器21は、照明制御装置10から照明装置200の調光度を示すDMX信号を受付けると、交流位相制御が行われる照明装置をDMX信号が示す調光度で点灯させるためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号を照明装置200へと出力する。

(イ)甲4発明

前記(ア)から、甲4には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

「照明制御装置10、調光盤20、照明装置200、及び照明装置300を有する照明システム1であって(前記(ア)a)、

前記照明制御装置10は、前記照明装置200及び前記照明装置300の制御を行い(前記(ア)b)、

前記照明制御装置10と前記照明装置300の間の全区間は、制御内容を示すDMX信号で通信が行われ(前記(ア)c)、

前記調光盤20は、DMX-PWM変換器21を有し、前記DMX-PWM変換器21は、前記照明制御装置10から前記照明装置200の調光度を示すDMX信号を受付けると、交流位相制御が行われる照明装置をDMX信号が示す調光度で点灯させるためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号を照明装置200へと出力する(前記(ア)d)、

照明システム1。」

ウ 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲4発明の対比

本件発明1と甲4発明を対比する。

a 後者の「照明制御装置10」は、前者の「照明コントローラ」に相当する。

b 後者の「前記照明制御装置10」「との間の全区間」で「制御内容を示すDMX信号で通信」を行う「前記照明装置300」は、「DMX信号」のプロトコルで通信を行う通信手段によって「前記照明制御装置10」と通信を行うことが明らかなので、前記aも踏まえると、前者の「前記照明コントローラ」「との間の全区間で」「第1通信手段」によって「通信を行う」「前記第1照明器具」に相当する。

c 前記bから、後者の「照明装置200」は前者の「第2照明器具」に相当する。

そうすると、後者の「照明装置300」及び「照明装置200」は、照明空間を照明することは明らかなので、前者の「照明空間を照明する第1照明器具と第2照明器具」に相当し、後者の「前記照明装置200及び前記照明装置300の制御を行」う「前記照明制御装置10」は、前者の「前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具を制御する照明コントローラ」に相当する。

d 後者の「前記調光盤20は、DMX-PWM変換器21を有し、前記DMX-PWM変換器21は、前記照明制御装置10から前記照明装置200の調光度を示すDMX信号を受付けると、交流位相制御が行われる照明装置をDMX信号が示す調光度で点灯させるためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号を照明装置200へと出力する」ことにおいて、「照明制御装置10」と「照明装置200」との間に「PWM信号」で通信が行われる通信手段があり、「PWM信号」と「DMX信号」は異なる信号であることは明らかである。

そうすると、後者の「前記調光盤20は、DMX-PWM変換器21を有し、前記DMX-PWM変換器21は、前記照明制御装置10から前記照明装置200の調光度を示すDMX信号を受付けると、交流位相制御が行われる照明装置をDMX信号が示す調光度で点灯させるためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号を照明装置200へと出力する」ことと、前者の「前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で通信を行う、前記第1通信手段とは異なるプロトコルによる第2通信手段」「を備え」ることは、前記bも踏まえると、「前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で、前記第1通信手段とは異なる信号で通信する第2通信手段」「を備える」ことで共通する。

e 後者の「前記照明制御装置10から前記照明装置200の調光度を示すDMX信号を受付けると、交流位相制御が行われる照明装置をDMX信号が示す調光度で点灯させるためのPWM信号を生成」する「前記DMX-PWM変換器21」は、「DMX信号」を「PWM信号」に変換しているといえるので、前記b及びdも踏まえると、前者の「前記第1通信手段のプロトコルによる信号と前記第2通信手段のプロトコルによる信号とを変換する変換機能」とは、「前記第1通信手段のプロトコルによる信号と前記第2通信手段の信号とを変換する変換機能」との点で共通する。

そうすると、この限りにおいて、後者の「DMX-PWM変換器21を有」する「前記調光盤20」は、前者の「変換機能」「を有する」「前記変換装置」に相当する。

f 前記d及びeから、後者の「生成したPWM信号を照明装置200へと出力する」「前記調光盤20」は、前者の「前記第2通信手段に対して制御をおこなう制御機能を有する」「前記変換装置」に相当する。

g 後者の「前記調光盤20は、DMX-PWM変換器21を有し、前記DMX-PWM変換器21は、前記照明制御装置10から前記照明装置200の調光度を示すDMX信号を受付けると、交流位相制御が行われる照明装置をDMX信号が示す調光度で点灯させるためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号を照明装置200へと出力する」ことは、「前記照明制御装置10」と「前記照明装置200」の間に「前記調光盤20」があるといえるので、前記d~fも踏まえると、前者の「前記照明コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ」ることに相当する。

h 以上の限りにおいて、後者の「照明システム1」は、前者の「照明制御システム」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲4発明は、

「照明空間を照明する第1照明器具と第2照明器具と、

前記第1照明器具及び/又は前記第2照明器具を制御する照明コントローラと、

前記照明コントローラと前記第1照明器具との間の全区間で通信を行う、特定のプロトコルによる第1通信手段と、

前記照明コントローラと前記第2照明器具との間で、前記第1通信手段とは異なる信号で通信する第2通信手段と、

を備える照明制御システムであって、

前記照明コントローラと前記第2通信手段との間には変換装置が設けられ、

前記変換装置は、前記第1通信手段のプロトコルによる信号と前記第2通信手段の信号とを変換する変換機能、前記第2通信手段に対して制御をおこなう制御機能を有する照明制御システム。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点4-1]

第2通信手段に関して、本件発明1は、前記第1通信手段とは異なる「プロトコルによる」通信が行われるのに対して、甲4発明では、「PWM信号」で通信が行われる点。

[相違点4-2]

本件発明1は、変換装置は、「第2通信手段側に電源を給電する給電機能」を有するのに対して、甲4発明は、調光盤20が照明装置200側に電源を給電する給電機能を有しているのかが定かではない点。

(イ)相違点についての検討

相違点4-1について、甲4発明におけるPWM信号は、DMX信号の調光度に対応した照明装置200への供給電力の制御をパルス幅の調整によって行うためのパルス信号であり、プロトコルを有する信号ではない。

したがって、相違点4-1は、実質的な相違点であるので、本件発明1は甲4発明ではない。

そして、甲4においては、照明装置200を所定のプロトコルを有する信号により調光制御させることについては、記載も示唆もされていないので、甲4発明において、相違点4-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることに動機はない。

また、甲4における照明システム1は、直流電圧によって制御される照明装置100及び交流位相制御が行われる照明装置200に対する調光制御を行う際に、照明制御装置10からのDMX規格やRDM規格に沿った信号を、直流電圧による制御のための電圧値や交流位相制御のためのPWM信号に変換するものであるので、甲4には、照明制御システム1において、所定のプロトコルを有する制御信号を異なるプロトコルを有する他の信号に変換することについては、記載も示唆もされていない。

したがって、甲4発明において、相違点4-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

よって、本件発明1は、甲4発明ではなく、また、相違点4-2を検討するまでもなく、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 小括

以上から、申立理由(1)~(6)に関して、本件特許の請求項1~13に係る特許については、以下のとおりである。

(1)本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、請求項1~13に係る特許を申立理由(1)により取り消すことはできない。

(2)本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、請求項1~13に係る特許を申立理由(2)により取り消すことはできない。

(3)本件発明1~7は、甲1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

したがって、請求項1~7に係る特許を申立理由(3)により取り消すことはできない。

(4)本件発明1~13は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、又は甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項若しくは甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではないから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

したがって、請求項1~13に係る特許を申立理由(4)により取り消すことはできない。

(5)本件発明1は、甲4に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

したがって、請求項1に係る特許を申立理由(5)により取り消すことはできない。

(6)本件発明1は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

したがって、請求項1に係る特許を申立理由(6)により取り消すことはできない。

第7 むすび

以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。

そして、他に本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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