結論テキスト
特許第7585545号の請求項1~4に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700535 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7585545号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和6年7月8日(優先権主張 令和6年3月22日)に出願され、令和6年11月8日にその特許権の設定登録がされ、同月18日に特許掲載公報が発行された。その後の異議の申立ての手続の経緯は、以下のとおりである。
令和7年 5月16日 特許異議申立人 近本 由美子(以下「申立
人」という)による、本件特許の請求項1~
4に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 7月22日 手続補正書(方式)の提出
同年10月24日付け 取消理由通知書
同年12月12日 意見書の提出(特許権者)
令和8年 1月14日 上申書の提出(申立人)
本件特許の請求項1~4の特許に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリオール(a)、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するアミン化合物(b)、触媒(c)、及び、難燃剤(d)を含む(A)成分と、
イソシアネートを含む(B)成分と、を備え、
前記ポリオール(a)は、官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)と、水酸基価が100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)とを含み、
前記ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオールの90質量%以上が前記エーテル系ポリオール(a1)であり、
前記エーテル系ポリオール(a1)に対する前記ポリエステルポリオール(a2)の質量比(a2)/(a1)が0.2~3.0であり、
前記ポリオール(a)中の前記エーテル系ポリオール(a1)と前記ポリエステルポリオール(a2)の合計量が50質量%以上であり、
前記(A)成分中の前記アミン化合物(b)の含有量が1~10質量%である、
地山固結剤。
【請求項2】
前記触媒(c)が第三級アミン触媒を含む、請求項1に記載の地山固結剤。
【請求項3】
前記難燃剤(d)がリン酸エステル系難燃剤を含む、請求項1に記載の地山固結剤。
【請求項4】
岩盤又は地盤に所定間隔で複数個の孔を穿設する工程、
前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、及び、
前記ボルトの開口部より、請求項1~3のいずれか1項に記載の地山固結剤を、岩盤又は地盤に注入し、固結させる工程
を含む、地山の固結方法。」
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各甲号証を提出した。
(1)取消理由1(明確性要件違反)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、明確でなく、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は同法113条4号に該当し、取り消されるべきである。
(2)取消理由2(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は同法113条2号に該当し、取り消されるべきである。
(3)証拠
申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠は以下のとおりである。
甲第1号証 日本化学会編 第2版 標準化学用語辞典 平成17年3月31日 丸善株式会社、第145~146頁
甲第2号証 斉藤烈他著(当審注:斉は旧字体)文部科学省検定済教科書
高等学校理科用化学 平成25年12月10日、
株式会社新興出版社啓林館、第271~272頁
甲第3号証 化学大辞典編集委員会編、化学大辞典8縮刷版
昭和55年9月15日 共立出版株式会社、第726頁
甲第4号証 特開2015-117304号公報
甲第5号証 松村 明編、大辞林、1988年11月3日、
株式会社三省堂、第1118頁
甲第6号証 特開2023-150270号公報
甲第7号証 特開2019-59942号公報
当審において、令和7年10月24日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(明確性要件違反)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~4の記載が不備のため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
令和7年10月24日に通知した取消理由は、特許異議申立理由のうち取消理由1(明確性要件違反)に関連するものであるので、以下では、これらをまとめて検討する。
また、令和8年1月14日提出の上申書において、申立人が主張する点についても、「第4」において判断する。
(1)申立人が主張する特許異議申立理由のうち取消理由1の具体的理由及び令和8年1月14日提出の上申書における主張は、概略、以下のとおりである。
ア (A)成分と(B)成分とを備える地山固結剤について
本件発明1は、(A)成分と(B)成分とを別々に備える二液型の地山固結剤を指称しているのか、(A)成分と(B)成分とを混合し硬化して備える地山固結剤を指称しているのか、明細書の記載を参酌したとしても、多義的であり、不明確である。
さらに、仮に後者のように(A)成分と(B)成分とを混合して備える地山固結剤であれば、混合してから徐々に硬化を始めるのであるから、硬化開始から硬化終了までのどの時点の地山固結剤を指称しているのか不明確である。
(申立書(4-2)ア)
イ 官能基について
(ア)「官能基」について、官能基がどのようなものを指称するか、特定されておらず、不明確である。(申立書(4-2)(イ-1)、上申書3(3)ア)
(イ)「官能基数」について、本件発明1は、「官能基数が1.5~2.5・・・のエーテル系ポリオール(a1)」と記載されており、「官能基数」が平均官能基数や加重平均値と限定されていないから、官能基数自体、即ち1分子中の官能基数を意図していることは明白である。また、本件発明1の「官能基数」は、文言通り単なる「官能基数」、即ち、「OH、エーテル基(-O-)などの様々な官能基の数」と特定したものとすべきである。そうすると、本件発明1のエーテル系ポリオール(a1)は、一分子中に少なくとも一つのエーテル基と、少なくとも二つの水酸基とを有するから、官能基数は最低でも3であるはずであり、「官能基数が1.5~2.5」という定義の技術的内容が明確ではない。
また、一般に「ポリオール」は一つの分子内に水酸基を2以上有する化合物の呼称であり、「官能基数」が1.5~2未満を含む「エーテル系ポリオール(a1)」が、どのようなエーテル系ポリオール(a1)を特定しているのか不明である。
(申立書(4-2)(イ-3)、(イ-4)、上申書3(3)イ))
(2)令和7年10月24日に通知した取消理由の具体的理由
令和7年10月24日に通知した取消理由(明確性要件違反)の具体的理由は、以下のものである。
一般的に「ポリオール」は、一つの分子内に水酸基を2以上有する化合物の呼称であるから、「ポリオール」の官能基数は2以上であることが技術常識である。
そうすると、「エーテル系ポリオール(a1)」について、「官能基数」が1.5~2未満の「エーテル系ポリオール(a1)」は、上記技術常識と矛盾しているから、官能基数が、前記の範囲の場合に、「官能基数」が1.5~2未満を含む「エーテル系ポリオール(a1)」が、どのようなエーテル系ポリオールを特定しているのかが不明である。
よって、請求項1の記載が意味するところが明確でなく、請求項1の記載を引用する請求項2~4についても同様の点において、発明が明確でない。
特許法36条6項2号の趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合に、特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となることにより生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下、この基準にそって判断する。
また、本件発明2~4は、いずれも、本件発明1の従属項であり、本件発明1の発明特定事項をすべて含むから、以下、本件発明1~4について、まとめて本件発明として判断する。
(1)(A)成分と(B)成分とを備える地山固結剤について(上記1(1)ア)
本件発明1は、「地山固結剤」が「ポリオール(a)、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するアミン化合物(b)、触媒(c)、及び、難燃剤(d)を含む(A)成分と、
イソシアネートを含む(B)成分と、を備え」ることが特定されたものである。
そして、「地山固結剤」は、上記(A)成分と(B)成分とを備えたものであればよく、申立人が主張するような混合の是非や時間的条件を付さずとも理解できるものであり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどの不明確なものではない。
(2)官能基について
ア 官能基に関する記載
「官能基」に関し、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、図面及び特許請求の範囲と併せて「本件明細書等」という。)、甲第1号証、甲第2号証、乙第1号証~乙第3号証には、それぞれ、以下の記載がある。
(ア)本件明細書の記載
本件明細書には、以下の記載がある。(下線は、当審において付した。)
a 「【0012】
(ポリオール(a))
(A)成分は、活性水素化合物としてポリオール(a)を含む。
ポリオール(a)は、官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)
と、水酸基価が100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)とを含み、該ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオールの90質量%以上がエーテル系ポリオール(a1)である。
【0013】
ここで、
エーテル系ポリオールとは、分子内にエーテル結合(-O-)を含むポリオールをいい
、複数のエーテル結合を有するポリエーテルポリオールには限定されず、1つのエーテル結合を有するポリオールも含まれる。但し、ポリエステルポリオールは、仮に分子内にエーテル結合を有するものであっても、エーテル系ポリオールには含まれないものとする。ここで、ポリエステルポリオールとは、分子内に複数のエステル結合(-COO-)を有するポリオールをいう。
【0014】
本実施形態によれば、上記ポリエステルポリオール(a2)と併用するエーテル系ポリオールを実質的に特定のエーテル系ポリオール(a1)のみで構成することにより、止水性や地山改良性といった地山固結剤の性能を発揮しながら、流水下での環境中への流出成分における非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。
【0015】
詳細には、エーテル系ポリオール(a1)の官能基数が1.5以上であることにより、硬化後の強度を高めて地山固結剤の性能を高めることができる。エーテル系ポリオール(a1)の官能基数が2.5以下であることにより、非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。また、エーテル系ポリオール(a1)の水酸基価が400mgKOH以上であることにより、硬化後の強度を高めて地山固結剤の性能を高めることができ、また非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。
【0016】
エーテル系ポリオール(a1)の官能基数は、1.7~2.3であることが好ましく、より好ましくは1.8~2.2である。より好ましくは1.9~2.1であり、更に好ましくは2.0である。
ここで、官能基数とは、ポリオールの1分子あたりの水酸基の数(モル比に応じた加重平均値)である
。
【0017】
エーテル系ポリオール(a1)の水酸基価は、420~1100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは450~1000mgKOH/gであり、より好ましくは500~900mgKOH/gである。本明細書において、水酸基価は、JIS K1557-1:2007のA法に準拠して測定される。
【0018】
エーテル系ポリオール(a1)としては、脂肪族エーテル系ポリオールでもよく、芳香族エーテル系ポリオールでもよい。
脂肪族エーテル系ポリオールは、分子内に芳香環を持たないエーテル系ポリオールをいう。芳香族エーテル系ポリオールは、分子内に芳香環を持つエーテル系ポリオールをいう。
【0019】
脂肪族エーテル系ポリオールとしては、
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミンなどの
脂肪族系活性水素化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを1種又は2種以上使用し、公知の方法で付加重合して得られる脂肪族ポリエーテルポリオール
が挙げられる。脂肪族エーテル系ポリオールとしては、また、例えば、
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられ
る。
【0020】
芳香族エーテル系ポリオールとしては、
例えば、アニリン、ベンゼンジオール、ビスフェノール化合物などの
芳香族系活性水素化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを1種又は2種以上使用し、公知の方法で付加重合して得られる芳香族ポリエーテルポリオールが挙げられ
る。」
b 「【0073】
<使用原料>
[(A)成分]
(ポリオール(a))
・(a1):エーテル系ポリオール及びその比較原料:
・トリプロピレングリコール:官能基数2.0、水酸基価584mgKOH/g
・ジプロピレングリコール:官能基数2.0、水酸基価836mgKOH/g
・PA-400:芳香族ポリエーテルポリオール、第一工業製薬(株)製「ポリハードナーPA-400」、官能基数2.0、水酸基価420mgKOH/g
・ジエチレングリコール:官能基数2.0、水酸基価1057mgKOH/g
・G-480:脂肪族ポリエーテルポリオール、第一工業製薬(株)製「DKポリオールG-480」、官能基数3.0、水酸基価480mgKOH/g(比較原料)
・420:脂肪族ポリエーテルポリオール、AGC(株)製「エクセノール420」、官能基数2.0、水酸基価280mgKOH/g(比較原料)」
(イ)甲第1号証
申立人が特許異議申立書に添付して提出した甲第1号証には、以下の記載がある。(下線は、申立人が付した。)
甲第1号証 日本化学会編 第2版 標準化学用語辞典
「
13
90
0001433100000001.jpg
31
91
0001433100000002.jpg
」
(ウ)甲第2号証
申立人が特許異議申立書に添付して提出した甲第2号証には、以下の記載がある。(下線は、申立人が付した。)
甲第2号証 文部科学省検定済教科書 高等学校理科用化学
「
45
140
0001433100000003.jpg
216
145
0001433100000004.jpg
」
(エ)乙第1号証
特許権者は、令和7年12月12日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)に添付して乙第1~3号証を提出した。
乙第1号証 「EMEROX○RPolyols」
(当審注○Rは登録商標マークを表す)
https://evessio.s3.amazonaws.com/customer/b8ca999f-7ffb-4698-90b7-9628f7143875/event/fce9bdb4-ebf0-4b88-91a9-f60760252362/responses/2b60a790-c683-470a-87f6-653f6df690cc/EmeryOleochemicals-Eco-Friendly-Polyols-EMEROX-Product-Line.pdf
乙第1号証には、以下の記載がある。(下線は、特許権者が付した。)
「
70
145
0001433100000005.jpg
」
(オ)乙第2号証
乙第2号証 山崎 聡 他4名「新規ホスファゼン触媒を用いたポリオキシアルキレンポリオールのポリウレタンへの応用」、ネットワークポリマー、Vol.36、No.3(2015)、108~118頁
https://www.jstage.jst.go.jp/article/networkpolymer/36/3/36_108/_pdf
乙第2号証には、以下の記載がある。(下線は、特許権者が付した。)
a 108頁 概要欄
「
53
145
0001433100000006.jpg
」
b 108頁 右欄下~109頁左欄
「
113
99
0001433100000007.jpg
26
94
0001433100000008.jpg
」
c 109頁左欄
「
82
94
0001433100000009.jpg
・・・
55
80
0001433100000010.jpg
」
(カ)乙第3号証
乙第3号証には、以下の記載がある。(下線は、特許権者が付した。)
乙第3号証 和田 浩志、「低モノオールポリプロピレングリコールを基材とするポリウレタンフォームの構造と物性に関する研究」、2008年12月、5~9、26~27、76~78、96~98頁(長崎大学学術研究成果リポジトリ平成21年7月3日公開、https://nagasaki-u.repo.nii.ac.jp/records/18001)
a 5~6頁
「
87
145
0001433100000011.jpg
190
138
0001433100000012.jpg
」
b 7頁
「
33
145
0001433100000013.jpg
」
c 98頁
「
23
145
0001433100000014.jpg
」
イ 「官能基」の指称するものについて(上記1(1)イ(ア))
甲第1号証(標準化学用語辞典)によれば、「官能基」は、有機化合物に含まれる反応性に富む原子団で,その化合物に特有の化学反応を起こさせる,・・・OH,CO,COOH,NH
2
などであると説明されるものであるが、本件発明が、「ウレタン系地山固結剤」であって、「(A)成分」の含む「ポリオール(a)」が「(B)成分」の含む「イソシアネート」とウレタン結合するものであるから、その際の反応は基本的にポリオールの水酸基とイソシアネートのイソシアネート基との反応によることは技術常識である。
そうすると、甲第1号証、甲第2号証に示されるように、「官能基」水酸基以外にケトン基CO等が含まれるとしても、本件明細書等において、ケトン基が結合に関与することが特段想定されていないウレタン結合の化学反応の「官能基」は、当該技術常識から、「水酸基」を表すものでありケトン基が結合に関与することは特段想定されるものでないといえるから、本件発明の「ポリオール(a)」のウレタン結合における化学反応を起こさせる基である「官能基」は、「水酸基」であると理解できる。
ウ 「官能基数」について(上記1(1)イ(イ)前段)
(ア)上記イにおいて示したように、「(A)成分」の「ポリオール(a)」が「(B)成分」の「イソシアネート」とウレタン結合する本件発明において、ケトン基が「官能基」であると理解しなければならないものではないから、ケトン基の数は、官能基数に算入されず、「官能基数」は「水酸基数」を意味すると認められる。
(イ)そして、本件発明は、「前記ポリオール(a)は、官能基数が1.5~2.5」と自然数ではなく小数で表されていることから、官能基数は、個々の分子の官能基の数ではなく、複数の分子の官能基数の平均値として表現されていることを当業者が認識できることは明らかである。このことは、本件明細書段落【0016】の「ここで、官能基数とは、ポリオールの1分子あたりの水酸基の数(モル比に応じた加重平均値)である」との記載と整合する。
(ウ)申立人は、「官能基数」が平均官能基数や加重平均値と限定されていないから、官能基数自体、即ち1分子中の官能基数を意図していることは明白であり、エーテル系ポリオール(a1)は、一分子中に少なくとも一つのエーテル基と、少なくとも二つの水酸基とを有するから、官能基数は最低でも3であるはずであるため、「官能基数が1.5~2.5」という定義の技術的内容が明確ではない」旨主張するが、上記(ア)及び(イ)のとおり、本件明細書の記載及び技術常識からみて、ケトン基の数は、官能基数に算入しなければならないものではなく、さらに、本件発明において、官能基数が自然数ではなく小数で表されているから、官能基数が整数を前提とした理解をするものでないことは明らかであり、小数表記による数値が表す意味についても上記(イ)のとおり本件明細書を参酌することにより理解することができるものである。
よって、本件発明について、官能基数が、「平均官能基数や加重平均値と限定されていない」との理由により、官能基数は1分子中の官能基数と理解する特段の理由があるとはいえない。
エ 「官能基数」が「1.5~2未満を含む」ことについて(上記1(1)イ(イ)後段、(2))
(ア)乙第2号証(上記イ(イ)a)及び乙第3号証(上記イ(ウ)a)によれば、エーテル系ポリオールが含まれるポリオキシアルキレンポリオールは、ポリウレタンの主原料の一つであるポリオールであり、多価アルコールにアルキレンオキシドを重合して製造されるポリオキシアルキレンポリオールが一般的に用いられることは技術常識であると認められる。
(イ)そして、本件明細書には、「エーテル系ポリオール」は、「分子内にエーテル結合(-O-)を含むポリオール」であり、(本件明細書【0013】)
「脂肪族エーテル系ポリオールでも芳香族エーテル系ポリオールでもよく、」(同【0018】)
「脂肪族エーテル系ポリオールとしては、脂肪族系活性水素化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを1種又は2種以上使用し、公知の方法で付加重合して得られる脂肪族ポリエーテルポリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられ、」(同【0019】)
「芳香族エーテル系ポリオールとしては、芳香族系活性水素化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを1種又は2種以上使用し、公知の方法で付加重合して得られる芳香族ポリエーテルポリオールが挙げられ、」(同【0020】)ることが記載され、これは、上記(ア)の技術常識と整合する。
(ウ)そして、乙第2号証(上記イ(イ)b)、乙第3号証(上記イ(ウ)a)には、エーテル系ポリオール(ポリエーテルポリオール)の実用的な製造について記載されているところ、ポリエーテルポリオールの製造過程において、モノオールも副生されることが示されており(乙第2号証(上記イ(イ)a、c)、乙第3号証(上記イ(ウ)b))、エーテル系ポリオール(ポリエーテルポリオール)の工業的生産に際しては官能基数2とすることを目指しても、1分子あたりの官能基数を求めると2未満となることが理解できる。
(エ)そうすると、本件発明の「エーテル系ポリオール(a1)」において、「官能基」は「水酸基」であるといえ(上記イ)、「ポリオールの1分子あたりの水酸基の数」である「官能基数」は、複数の分子の官能基数の平均値であると認められる(上記ウ)ところ、上記(ウ)において示したようにこの「官能基数」が2未満の数値範囲を含むことは明らかである。
(オ)以上の検討を踏まえると、一般的に「ポリオール」は、一つの分子内に水酸基を2以上有する化合物の呼称であって「ポリオール」の官能基数は2以上であることが技術常識であるとしても、本件発明における「イソシアネートを含む(B)成分」とともに「地山固結剤」とされる「エーテル系ポリオール(a1)」の「官能基数」については、上記(ウ)において示したように、実用的な製造過程を経るものであって、2未満の数値範囲を含み得るものであるから、技術常識と矛盾しているために不明確であるといえるものではない。
(カ)また、本件発明における「官能基数が1.5~2.5・・・のエーテル系ポリオール(a1)」との特定は、官能基数について、その範囲の外縁を明確に示すものであって、第三者に不測の不利益を与えるものではない。
(キ)以上のとおりであるから、「エーテル系ポリオール(a1)」について、「官能基数」が1.5~2未満の「エーテル系ポリオール(a1)」は、技術常識に照らしても矛盾するとはいえず、「官能基数」が1.5~2未満を含む「エーテル系ポリオール(a1)」が、上記ウに示した「官能基数」の理解の下でその数値範囲が特定されているものであり、この記載により発明が明確でないといえるものではない。
(3)小括
以上検討したとおり、本件発明は、発明が明確であるから、本件発明に係る特許は、取消理由2(明確性要件)によっては、取り消すことはできない。
(1)甲第4号証について
ア 甲第4号証の記載
甲第4号証には、以下の記載がある。(下線は当審において付した。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、土質の安定強化止水用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、大量の漏水や湧水を止水することができる十分な強度を有し、水と触れた際の白濁がなくかつ発泡倍率も小さく、加えて、現場の装置に負担をかけないよう十分低粘度である、土質の安定強化止水用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法を提供しようとするものである。
・・・
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]
ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分とイソシアネート化合物を含んでなる(B)成分とからなる、
実質的に水を含まない、土質の安定強化止水用注入薬液組成物であって、
前記ポリオールが、ポリエーテルポリオール(a1)を含有する
ものであり、
前記アミン化合物が、一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1)を含有する
ものである、
土質の安定強化止水用注入薬液組成物、
[2]
前記ポリオールが、ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)を更に含有する
ものである、上記[1]記載の
土質の安定強化止水用注入薬液組成物
、
[3]ポリエーテルポリオール(a1)のヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)に対する配合割合[(a1)/(a2)]が、1.3以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは3.5以上である、上記[2]記載の土質の安定強化止水用注入薬液組成物、
[4]一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1)が、ジエチルトルエンジアミン、ジエタノールアミン、1,2-プロパンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、および末端アミノ化プロピレングリコール(重量平均分子量2000未満)からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の土質の安定強化止水用注入薬液組成物、
[5](A)成分および(B)成分の粘度が、いずれも、25°Cにおいて、650mPa・Sec以下、好ましくは450mPa・Sec以下である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の土質の安定強化止水用注入薬液組成物、
[6]岩盤ないし地盤に所定間隔で複数個の孔を穿設する工程、
前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、および、
前記ボルトの開口部より、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の土質の安定強化止水用注入薬液組成物を、岩盤ないし地盤に注入し、固結させる工程
からなる、土質の安定強化止水工法、
に関する。」
(ウ)「【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を構成する各要素について、以下説明する。
【0015】
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は、ポリオールおよびアミン化合物を含んでなるものである。ここに、該ポリオールは、ポリエーテルポリオール(a1)を含有するものであって、さらに、ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)を含有することもできる。一方、
アミン化合物は、
一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1)を含有するものであり、
さらに、三級アミン化合物(b2)を含有することもできる
。
【0016】
(ポリエーテルポリオール(a1))
本発明に用いられる
ポリエーテルポリオール(a1)としては、
例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコールなどの
モノオール
;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの
ジオール
や、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの
ポリオール
;そのほかモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ソルビトール、蔗糖などの
活性水素含有化合物の単体もしくはこれらの混合物に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを1種または2種以上使用し、公知の方法で付加重合して得られるモノオールまたはポリオールが挙げられ
る。
【0017】
また、前記モノオールまたはポリオールと後述するイソシアネート化合物とを反応させてなる水酸基末端ウレタンプレポリマーも使用することができる。
【0018】
これらのうち、グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオール、プロピレングリコールにプロピレンオキサイド付加重合したポリエーテルポリオール、ソルビトールにプロピレンオキサイド付加重合したポリエーテルポリオールなどが好ましい。
【0019】
これらポリエーテルポリオール(a1)において、その重量平均分子量(Mw)は、作業性およびの硬化物の圧縮強度を保持する観点から、800以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、500以下であることが、最も好ましい。
【0020】
本発明において、重量平均分子量は、GPC法により測定される値である。GPC法としては、例えば、GPC本体として東ソー(株)製のHLC-8020を使用し、カラム温度40°C、ポンプ流量0.6~1.0ml/分、検出器としてRI(GPC本体に内蔵されている)を用いて実施する方法を挙げることができる[カラム:TSKgelG6000HHR+G4000HHR+G3000HHR+G2000HHR(4本つないで使用);移動相:THF;注入量:80μl;サンプル濃度:0.2%(w/v)]。本法においては、例えば、あらかじめ分子量が既知の標準PPGの検量線(分子量250以上での検量)を用いて、PPG換算分子量として、分子量を求めることができる。
【0021】
これら
ポリエーテルポリオール(a1)において、官能基数(水酸基の数)は、作業性の観点から、3以下であることが好ましい
。
【0022】
ポリエーテルポリオール(a1)は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
ポリエーテルポリオール(a1)の配合量は、(A)成分全量に対し、50~95質量%であることが好ましく、55~90質量%がより好ましい。50質量%未満および95質量%超では硬化物の圧縮強度が低下する傾向がある。
【0022】
ポリエーテルポリオール(a1)は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
ポリエーテルポリオール(a1)の配合量は、(A)成分全量に対し、50~95質量%であることが好ましく、55~90質量%がより好ましい。50質量%未満および95質量%超では硬化物の圧縮強度が低下する傾向がある。
【0024】
(ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2))
本発明に用いられる
ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)は、ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸、ヒマシ油に水素付加した水添ヒマシ油またはヒマシ油脂肪酸に水素付加した水添ヒマシ油脂肪酸を用いて製造されたポリオールである
。このようなヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)としては、ヒマシ油、ヒマシ油とその他の天然油脂とのエステル交換物、ヒマシ油と多価アルコールとの反応物、ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、水添ヒマシ油、水添ヒマシ油とその他の天然油脂とのエステル交換物、水添ヒマシ油と多価アルコールとの反応物、水添ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、および、これらにアルキレンオキサイドを付加重合したポリオールなどが挙げられる。このうち、ヒマシ油が最も好ましい。
【0025】
本発明においては、これらヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)を使用することで、水に接触した場合の発泡倍率が過剰に大きくならず、それ故、漏水や湧水によって硬化物が流出した際の環境への悪影響を小さくすることができる。
【0026】
これらヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)において、そのMwは、作業性およびの硬化物の圧縮強度を保持する観点から、800以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、500以下であることが、最も好ましい。
【0027】
これらヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)において、官能基数(水酸基の数)は、作業性の観点から、3以下であることが好ましい。
【0028】
ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)の配合量は、(A)成分全量に対し、0~45質量%であることが好ましく、10~30質量%がより好ましい。45質量%超では硬化物の圧縮強度が低下する傾向がある。
【0030】
(配合比(a1)/(a2))
前記ポリエーテルポリオール(a1)およびヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)の配合割合(質量比)は、(a1)/(a2)が1.3以上であり
、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは3.5以上である。1.3未満の場合には、硬化物の圧縮強度が低下する傾向がある。該配合割合は
、最も好ましくは、約4.0である
。この場合の「約」とは、±0.1程度の変動を許容する趣旨である。」
(エ)「【0031】
(アミン化合物(b1))
本発明に用いられる、一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1)としては、例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルイソプロピルアミン、エチルプロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、N-メチルドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン等のアルキルモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールモノアミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、またはジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;N-メチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、ベンジルアミン、p-メチルベンジルアミン等の芳香族モノアミン;モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1Hピラゾール等のヘテロ環式モノアミン;ヒドラジン;エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ネオペンタンジアミン等の脂肪族ジアミン;4,4'-ジアミノシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,5-または2,6-ジアミノメチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン、ジアミノシクロヘキサン、ジエチルトルエンジアミン等の脂環式ジアミン;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン等の芳香族ジアミン;ジエチレントリアミン等の脂肪族トリアミン;1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(アミノメチル)シクロヘキサン等の芳香族または脂環式トリアミン;水、エチレングリコール、プロピレングリコール等にプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを付加重合して得たポリオキシアルキレングリコール類のヒドロキシル基をアミノ基に変換して得られるポリオキシアルキレンジアミン;グリセリン、トリメチロールプロパン等にプロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイドを付加重合して得たポリオキシアルキレントリオール類のヒドロキシル基をアミノ基に変換して得られるポリオキシアルキレントリアミン等が挙げられる。
【0032】
これらのうち、ジエチルトルエンジアミン、ジエタノールアミン、1,2-プロパンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、および末端アミノ化プロピレングリコール(重量平均分子量2000未満)が好ましい。
【0033】
これらアミン化合物(b1)は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
アミン化合物(b1)の配合量は、(A)成分全量に対し、2~12質量%であることが好ましく、3~10質量%がより好ましい。2質量%未満では白濁を抑制することが困難となる傾向があり、12質量%超では施工時にミキサーボルト等にかかる負荷が大きくなる傾向がある。
【0035】
(三級アミン化合物(b2))
本発明において、三級アミン化合物(b2)としては、公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルラウリルアミン、N,N,N',N'-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス-(ジメチルアミノエチル)エーテル、ヘキサヒドロ-S-トリアジン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、N,N-ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルアミノプロピルイミダゾール、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリプロピレンテトラミン、N,N,N-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミンなどが挙げられる。
【0036】
これら三級アミン化合物(b2)は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
3級アミン触媒(b2)の配合量は、(A)成分全量に対し、0.3~10質量%が好ましく、
0.5~7質量%がより好ましい。0.3質量%未満であると、作業性が悪化する傾向があり、10質量%超では施工時にミキサーボルト等にかかる負荷が大きくなる傾向がある。」
【0038】
(その他の成分)
本発明に係る
(A)成分には、
上記した各成分の他に、必要に応じて、シリコン系整泡剤、希釈剤、
難燃剤
、顔料、無機充填剤、架橋剤、カップリング剤
等の公知の添加剤を
、本発明の目的を損なわない範囲で
加えることができ
る。
・・・
【0041】
難燃剤としては、添加型および反応型のいずれのものを用いることができる。添加型のものの具体例としては、たとえばトリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスモノクロロイソプロピルホスフェートなどの含リン含ハロゲン系;塩素化パラフィン、ペンタブロモエチルベンゼン、デカブロモジフェニルエーテルなどの含ハロゲン系のものなどがあげられる。反応型のものの具体例としては、たとえばジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA、O,O-ジエチルN,N-ジヒドロキシエチルアミノメチルホスホテート、各種含リンポリオールなどの水酸基やアミノ基などを有する含ハロゲン含リン化合物などがあげられる。」
(オ)「【0044】
<(B)成分>
本発明において、(B)成分は、イソシアネート化合物を含んでなるものである。
【0045】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその異性体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリレンジイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチレンキシリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートの単独または混合物;これらポリイソシアネートのカルボジイミド変性体や、触媒を加えて2量体または3量体としたもの:これらポリイソシアネートを、前記ポリエーテルポリオール(a1)またはヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)と反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの単独または混合物などが挙げられる。
【0046】
これらの中で、白濁性の観点から、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)およびこのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが好ましい。
【0047】
これらイソシアネート化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
(その他の成分)
本発明に係る(B)成分には、その他の成分として、必要に応じて、(A)成分の項で説明した従来公知の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で加えることができる。」
(カ)「【0052】
<(A)成分と(B)成分の混合>
本発明に係る(A)成分と(B)成分は、使用時混合することにより、硬化物を形成する。
【0053】
(混合比)
(A)成分と(B)成分の混合比は、(A)成分中のポリオールのOH基およびNH
2
基と、(B)成分中のNCO基との反応当量比、すなわち、(OH+NH
2
)/NCOが、1/5~5/1の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは1/3~2/1である。かかる反応当量比が前記範囲よりも大きい場合には、硬化物が柔かく、その強度が非常に小さくなる傾向があり、また前記範囲よりも小さい場合には、硬化時間が長くなり、また固結体の強度が小さく脆くなる傾向がある。
【0054】
(ゲルタイム)
本発明の土質の安定強化止水注入薬液組成物は、それぞれ20°Cに調整した(A)成分と(B)成分とを混合した際のゲルタイムが、25~55秒であることが好ましい。ゲルタイムが25秒未満であると作業性が悪化する傾向があり、一方、55秒超であると白濁が生じる傾向があり、好ましくない。ここで、ゲルタイムとは、総量30gの(A)成分と(B)成分をそれぞれ20°Cとした後ハンドミキシングにより混合する際に、ゲル化するまでの時間(すなわち、硬化が進行し、糸引きが始まる時間)をいう。
【0055】
(発泡倍率)
本発明の土質の安定強化止水注入薬液組成物は、漏水や湧水によって硬化物が流出した際の環境への悪影響を低くする意味から、硬化物の発泡倍率は低いことが好ましく、例えば、12倍以下であり、より好ましくは11倍以下、さらに好ましくは9倍以下である。一方、発泡倍率の下限値について、特に限定はないが、通常、2倍以上である。本発明において、発泡倍率とは、硬化反応終了後の硬化物の体積を、原料たる(A)成分および(B)成分の体積で除することにより、算出される値である。発泡倍率は、(A)成分100質量部に対して水1質量部を加えたものに、(B)成分を混合し、発泡させることにより測定される。
【0056】
(圧縮強度)
本発明の土質の安定強化止水注入薬液組成物において、硬化物の圧縮強度は、漏水や湧水の流出を防ぐ観点から、20MPa以上であることが好ましく、より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは40MPa以上、さらに好ましくは45MPa以上である。硬化物の圧縮強度は、(A)成分と(B)成分を、水を添加することなくそのまま混合して硬化させた硬化物について、JIS A9511に準拠して、10mm×10mm×10mmの試験片を切り出して、インストロン万能試験機で測定するものである。
【0057】
(pH)
本発明において、(A)成分および(B)成分を混合した後、該混合物を10倍量の水に投入し、反応終了後、上澄み液を採取して測定されるpHは、5~9であることが好ましい。」
(キ)【0058】
<土質の安定強化止水工法>
本発明の土質の安定強化止水注入薬液組成物は、例えばトンネル掘削の際、切羽天端の崩落防止や緩みの拡大防止を目的として行われるウレタン系注入式フォアポーリング工法または注入式長尺先受工法(AGF工法)において、破砕帯を有する岩盤や不安定軟弱地盤の固結による安定化・強化、地山とコンクリートセグメントの間の空隙などの充填による安定化・強化、土砂、岩石、レンガ、石炭などの空洞の封止による安定化・強化、コンクリートなどの人工構造物のクラックなどの補修、補強による安定化・強化、および、漏水や湧水のある岩盤ないし地盤への適用による止水などのために、岩盤または地盤に注入固結される。
【0059】
この注入固結する方法については、とくに限定はなく、公知の方法を採用しうるが、岩盤ないし地盤に所定間隔で複数個の孔を穿設する工程、前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、および、ボルトの開口部より前記注入薬液組成物を岩盤ないし地盤に注入し、固結する工程からなることが好ましい。
【0060】
その一例をあげれば、例えば(A)成分および(B)成分の注入量、圧力および配合比などをコントロールし得る比較配合式ポンプを用いる方法などがある。この方法では、(A)成分と(B)成分とを別々のタンクに入れ、岩盤などの所定箇所(たとえば0.5~3m程度の間隔で穿設された複数個の孔)に、あらかじめ固定されたスタティックミキサーや逆止弁などを内装した有孔のロックボルトや注入ロッドを通し、この中に前記タンク内の各成分を注入圧0.05~25MPaで注入し、スタティックミキサーを通して、所定量の(A)成分と(B)成分を均一に混合させ、所定の不安定岩盤ないし地盤箇所に注入浸透、硬化させて固結安定化する。
【0061】
なお、たとえばトンネルの天盤部に注入する場合には、注入に先立ち、たとえば約2mの所定の間隔で、たとえば42mmφビットのレッグオーガーを用いて削孔し、深さ2m、削孔角度10~30°の注入孔を設け、この注入孔に、スタティックミキサーおよび逆止弁を内装した有孔の長さが3mである中空炭素鋼管製ロックボルトを挿入し、該ロックボルトの口元を、注入薬液の逆流を防ぐために、ウエスおよび発泡硬質ウレタン樹脂等を用いてシールし、薬液を前記の方法で注入することが好ましい。注入作業は、注入圧が急激に上昇した時点、または所定注入量よりもさらに約50%増量した時点で終了する。一般に、注入孔1個あたり薬液は30~200kg注入することが好ましい。」
(ク)「【実施例】
【0062】
実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0063】
<使用原料>
(ポリエーテルポリオール(a1))
ポリオール(a1-1):グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価480mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:DKポリオールG480、第一工業製薬(株)製)
ポリオール(a1-2):プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価280mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:ハイフレックスD400、第一工業製薬(株)製)
ポリオール(a1-3):ソルビトールにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価550mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:エクセノール550SO、旭硝子(株)製)
ポリオール(a1-4):グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価56mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:ハイフレックスG3000C、第一工業製薬(株)製)
【0064】
(ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2))
ポリオール(a2-1):ヒマシ油(商品名:ヒマシ油D、伊藤製油(株)製)
ポリオール(a2-2):官能基数1、平均水酸基価160のヒマシ油系ポリエステルポリオール(商品名:URIC H-31、伊藤製油(株)製)
ポリオール(a2-3):官能基数3、平均水酸基価200のヒマシ油系ポリエステルポリオール(商品名:URIC H-52、伊藤製油(株)製)
ポリオール(a2-4):官能基数3、平均水酸基価340のヒマシ油系ポリエステルポリオール(商品名:URIC H-81、伊藤製油(株)製)
ポリオール(a2-5):官能基数5、平均水酸基価320のヒマシ油系ポリエステルポリオール(商品名:URIC H-102、伊藤製油(株)製)
【0065】
(一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1))
アミン化合物(b1-1):ジエチルトルエンジアミン(商品名:DETDA80、ロンザジャパン(株)製)
アミン化合物(b1-2):ジエタノールアミン((株)日本触媒製)
アミン化合物(b1-3):1,2-プロパンジアミン(和光純薬工業(株)製)
アミン化合物(b1-4):3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(和光純薬工業(株)製)
アミン化合物(b1-5):ヘキサメチレンジアミン(ナカライテスク(株)製)
アミン化合物(b1-6):末端アミノ化ポリプロピレングリコール(商品名:ジェファーミンD-2000、ハンツマン社製)
【0066】
(3級アミノ基を有するアミン化合物(b2))
アミン化合物(b2-1):トリエタノールアミン((株)日本触媒製)
アミン化合物(b2-2):トリエチレンジアミン(商品名:TEDA-L33、東ソー(株)製)
【0067】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物1:ポリメリックMDI(商品名:フォームライトNE2000B、BASF INOACポリウレタン(株)製)
イソシアネート化合物2:ポリメリックMDI(商品名:フォームライトNE5000B、BASF INOACポリウレタン(株)製)
【0068】
<A剤およびB剤の調製>
(A)成分からなる液をA剤、(B)成分からなる液をB剤とし、表1記載の配合に従い原料を適宜混合することにより、A剤およびB剤をそれぞれ調製した。
【0069】
(粘度)
A剤およびB剤について、JIS K-7117-1に準じ、BL型粘度計(東機産業(株)製)にて、25°Cにおける粘度(mPa・Sec)を測定した。
【0070】
<硬化物の評価>
(ゲルタイム)
表1記載の配合に従い調製したA剤およびB剤を、表1に記載の混合比で、合計30gとなるように別々に調製した。A剤およびB剤の温度をいずれも20°Cとした後、該A剤およびB剤をハンドミキシングにより混合し、ゲルタイム(硬化が進行し糸引きが始まる時間)を測定した。
【0071】
(発泡反応性・発泡倍率)
表1記載の配合に従い調製したA剤およびB剤を、表1に記載の混合比で、合計30gとなるように別々に調製した。A剤にのみ、A剤100質量部に対して1質量部の水を加えた。該A剤およびB剤の温度をいずれも20°Cとした後、該A剤およびB剤をハンドミキシングにより混合し、発泡開始時間および発泡終了時間を測定した。硬化反応終了後、硬化物の体積を、原料たるA剤およびB剤の最初の体積で除することにより、発泡倍率を算出した。
【0072】
(圧縮強度)
表1記載の配合に従い調製したA剤およびB剤を、表1に記載の混合比で、合計30gとなるように別々に調製した。該A剤およびB剤の温度をいずれも20°Cとした後、該A剤およびB剤をハンドミキシングにより混合し硬化物を得た。該硬化物から、10mm×10mm×10mmの試験片を切り出し、JISA9511に準拠して、インストロン万能試験機で測定した。
【0073】
<水中白濁試験>
表1記載の配合に従い調製したA剤およびB剤を、表1に記載の混合比で、合計30gとなるように別々に調製した。A剤およびB剤をいずれも20°Cとした後、調整したA剤およびB剤を10秒間ハンドミキシングにより混合し、次いで、該混合物を速やかに300gの水を入れた容器に投入した。該容器に蓋をし、A剤およびB剤の混合開始から30秒後に、該容器全体を激しく上下に振とうし、10秒間継続した。発泡終了後、容器内から水を採取し、水の濁りを、目視および分光光度計(日立分光光度計U-3900H((株)日立ハイテクノロジーズ製)で測定した500nmにおける光の透過率(%))で測定した。透過率は50%以上であることが好ましい。
【0074】
結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
100
144
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(ケ)「【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、大量の漏水や湧水を止水することができる十分な強度を有し、水と触れた際の白濁がなくかつ発泡倍率も小さく、加えて、現場の装置に負担をかけないよう十分低粘度である、土質の安定強化止水用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法を提供することができる。」
イ 甲第4号証に記載された発明
上記アより、甲第4号証には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲4発明)
ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分とイソシアネート化合物を含んでなる(B)成分とからなり、
前記ポリオールが、ポリエーテルポリオール(a1)を含有し、
前記アミン化合物が、一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1)を含有し、
前記ポリオールが、ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)を更に含有する、
土質の安定強化止水用注入薬液組成物であって、(【0009】)
アミン化合物は、さらに、三級アミン化合物(b2)を含有することもでき、(【0015】)
ポリエーテルポリオール(a1)としては、モノオール、ジオール、ポリオール、活性水素含有化合物の単体もしくはこれらの混合物に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを1種または2種以上使用し、公知の方法で付加重合して得られるモノオールまたはポリオールが挙げられ、(【0016】)
ポリエーテルポリオール(a1)において、官能基数(水酸基の数)は、作業性の観点から、3以下であることが好ましく、(【0021】)
使用材料として、
ポリオール(a1-1):グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価480mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:DKポリオールG480、第一工業製薬(株)製)
ポリオール(a1-2):プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価280mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:ハイフレックスD400、第一工業製薬(株)製)
ポリオール(a1-3):ソルビトールにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価550mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:エクセノール550SO、旭硝子(株)製)
ポリオール(a1-4):グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価56mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:ハイフレックスG3000C、第一工業製薬(株)製)が使用原料とでき、(【0063】)
ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)は、ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸、ヒマシ油に水素付加した水添ヒマシ油またはヒマシ油脂肪酸に水素付加した水添ヒマシ油脂肪酸を用いて製造されたポリオールであり、(【0024】)
ポリオール(a2-1):ヒマシ油(商品名:ヒマシ油D、伊藤製油(株)製)
ポリオール(a2-2):官能基数1、平均水酸基価160のヒマシ油系ポリエステルポリオール(商品名:URIC H-31、伊藤製油(株)製)
ポリオール(a2-3):官能基数3、平均水酸基価200のヒマシ油系ポリエステルポリオール(商品名:URIC H-52、伊藤製油(株)製)
ポリオール(a2-4):官能基数3、平均水酸基価340のヒマシ油系ポリエステルポリオール(商品名:URIC H-81、伊藤製油(株)製)
ポリオール(a2-5):官能基数5、平均水酸基価320のヒマシ油系ポリエステルポリオール(商品名:URIC H-102、伊藤製油(株)製)が選択でき、(【0064】)
前記ポリエーテルポリオール(a1)およびヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)の配合割合(質量比)は、(a1)/(a2)が1.3以上であり、最も好ましくは、約4.0であり、(【0030】)
3級アミン触媒(b2)の配合量は、(A)成分全量に対し、0.3~10質量%が好ましく、(【0037】)
(A)成分には、難燃剤等の公知の添加剤を加えることができ、(【0038】)
(A)成分100質量部中、ポリオール(a1-1)36.5質量部、ポリオール(a1-2)36.5質量部、ポリオール(a2-2)10質量部、ポリオール(a2-3)10質量部とした(【0075】表1中の実施例2)、
土質の安定強化止水用注入薬液組成物。
(2)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明の「ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分」であって、「前記アミン化合物が、一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1)を含有し」、「三級アミン化合物(b2)を含有」し、「3級アミン触媒(b2)の配合量は、(A)成分全量に対し、0.3~10質量%」であり、「難燃剤」が「加え」られるたものは、本件発明1の「ポリオール(a)、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するアミン化合物(b)、触媒(c)、及び、難燃剤(d)を含む(A)成分」に相当する。
(イ)甲4発明の「イソシアネート化合物を含んでなる(B)成分」は、本件発明1の「イソシアネートを含む(B)成分」に相当する。
(ウ)本件発明1の「前記ポリオール(a)は、官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)と、水酸基価が100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)とを含」むことと、甲4発明の「前記ポリオールが、ポリエーテルポリオール(a1)を含有し」、「ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)を更に含有する」ものであり、「ヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)」の「使用材料」とされる「ポリオール(a2-2)」~「ポリオール(a2-5)」の平均水酸基価(mgKOH/g)がそれぞれ、「160」、「200」、「340」、「320」であることとは、「前記ポリオール(a)は、エーテル系ポリオール(a1)と、水酸基価が100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)とを含」む点で共通する。
(エ)甲4発明において「成分100質量部中、ポリオール(a1-1)36.5質量部、ポリオール(a1-2)36.5質量部」とし、エーテル系ポリオールは、「ポリオール(a1-1)」及び「ポリオール(a1-2)」のみが配合されたことは、本件発明1の「前記ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオールの90質量%以上が前記エーテル系ポリオール(a1)であ」ることに相当する。
(オ)甲4発明において「前記ポリエーテルポリオール(a1)およびヒマシ油系ポリエステルポリオール(a2)の配合割合(質量比)」は、「(a1)/(a2)」が、最も好ましくは、「約4.0であ」ることは、「(a2)/(a1)」は最も好適な例で約0.25であるから、本件発明1の「前記エーテル系ポリオール(a1)に対する前記ポリエステルポリオール(a2)の質量比(a2)/(a1)が0.2~3.0であ」ることに相当する。
(カ)甲4発明において「(A)成分100質量部中、ポリオール(a1-1)36.5質量部、ポリオール(a1-2)36.5質量部、ポリオール(a2-2)10質量部、ポリオール(a2-3)10質量部」であることは、本件発明1の「前記ポリオール(a)中の前記エーテル系ポリオール(a1)と前記ポリエステルポリオール(a2)の合計量が50質量%以上であ」ることに相当する。
(キ)甲4発明において「3級アミン触媒(b2)の配合量」の好適な量が「(A)成分全量に対し、0.3~10質量%」とされることのうち、1~10質量%の部分は、本件発明1の「前記(A)成分中の前記アミン化合物(b)の含有量が1~10質量%である」ことに相当する。
(ク)甲4発明の「土質の安定強化止水用注入薬液組成物」は、「ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分とイソシアネート化合物を含んでなる(B)成分とからな」るものであり、地山に注入すれば地山を固結することは自明であるから、本件発明1の「地山固結剤」に相当する。
(ケ)上記(ア)~(ク)より、本件発明1と甲4発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
ポリオール(a)、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するアミン化合物(b)、触媒(c)、及び、難燃剤(d)を含む(A)成分と、
イソシアネートを含む(B)成分と、を備え、
前記ポリオール(a)は、エーテル系ポリオール(a1)と、水酸基価が100~400mgKOH/gのポリエステルポリオール(a2)とを含み、
前記ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオールの90質量%以上が前記エーテル系ポリオール(a1)であり、
前記エーテル系ポリオール(a1)に対する前記ポリエステルポリオール(a2)の質量比(a2)/(a1)が0.2~3.0であり、
前記ポリオール(a)中の前記エーテル系ポリオール(a1)と前記ポリエステルポリオール(a2)の合計量が50質量%以上であり、
前記(A)成分中の前記アミン化合物(b)の含有量が1~10質量%である、
地山固結剤。
(相違点)
エーテル系ポリオール(a1)について、本件発明1は、「官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/g」と特定されるのに対し、甲4発明は、そのように特定されていない点。
イ 判断
(ア)本件明細書段落【0015】には、「エーテル系ポリオール(a1)の官能基数が1.5以上であることにより、硬化後の強度を高めて地山固結剤の性能を高めることができる。エーテル系ポリオール(a1)の官能基数が2.5以下であることにより、非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる。」ことが記載されている。
一方、甲4発明は、官能基数について「3以下であることが好ましい」とされるものではあるが、非イオン界面活性剤の検出量を低減する観点からエーテル系ポリオール(a1)の官能基数を2.5以下とすること、及び、硬化後の強度の観点からエーテル系ポリオール(a1)の官能基数を1.5以上とすることについて、記載も示唆もない。
(イ)甲4発明のポリオール(a1)の使用原料とできる「ポリオール(a1-1)」として示されている、「商品名:DKポリオールG480、第一工業製薬(株)製」のポリエーテルポリオールは、平均水酸基価は480mgKOH/gである。
しかし、ポリオール(a1-1)である第一工業製薬(株)製「DKポリオールG-480」は、本件明細書段落【0073】に「比較原料」として示されており、この記載によれば、官能基数3.0である。また、段落【0088】【表2】には、「DKポリオールG-480」を用いたものが「比較例1」として示されている。
そして、甲4発明においてポリオール(a1-1)を使用したもの(実施例2)は、甲4発明の「土質の安定強化止水用注入薬液組成物」を「大量の漏水や湧水を止水することができる十分な強度を有し、水と触れた際の白濁がなくかつ発泡倍率も小さく、加えて、現場の装置に負担をかけないよう十分低粘度である」ものとするとの課題を解決するものであって、甲第4号証には、上記(ア)の観点で官能基数を決定することについて記載も示唆もないから、官能基数を変更する動機付けはない。
(ウ)また、甲4発明のポリオール(a1)の使用原料とできる「ポリオール(a1-3)」として示されている、「商品名:エクセノール550SO、旭硝子(株)製」のポリエーテルポリオールは、平均水酸基価550mgKOH/gであるが、官能基数が示されておらず、「官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/g」であるとはいえない。また、上記(ア)においてポリオール(a1-1)について検討したのと同様の理由により、官能基数を変更する動機付けはない。
(エ)上記(ア)~(ウ)において検討したように、甲第4号証には、「ポリオール(a1)」を「官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)」とすることについて記載も示唆もなく、ポリエステルポリオールと併用するエーテル系ポリオールを「官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/g」とすることが技術常識でもないから、甲4発明においてエーテル系ポリオールを「官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/g」とすることが当業者が容易になし得たこととはいえない。
(オ)そして、本件発明1は、「ウレタン系地山固結剤においては、流水下で岩盤や地盤に注入したときに、環境中への流出成分に非イオン界面活性剤が検出される」ために「非イオン界面活性剤の検出量を低減しながら、地山固結剤としての性能が良いもの」とすることが課題とされるところ(【0005】)、「上記ポリエステルポリオール(a2)と併用するエーテル系ポリオール」を「官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)」を含み、「前記ポリオール(a)に含まれるエーテル系ポリオールの90質量%以上が前記エーテル系ポリオール(a1)」とすることにより、「止水性や地山改良性といった地山固結剤の性能を発揮しながら、流水下での環境中への流出成分における非イオン界面活性剤の検出量を低減することができる」(【0014】)ものとしたものである。
ウ 申立人の主張
(ア)相違点に係る申立人の主張の概要
申立人は、相違点を、官能基数が、本件発明1においては「1.5~2.5」であるのに対し、甲4発明では「3以下」である点として認定し、エーテル系ポリオールで官能基数が3以下であることから、エーテル系ポリオール1分子中の水酸基数は2か3であり、そのちょうど中間となるように官能基数の上限を2.5程度とすることは当業者が適宜行う最適条件の単なる選択に過ぎず、当業者が容易に想到できたものであると主張する。(申立書16頁下から6行~17頁24行)
(イ)主張の検討
水酸基価が本件発明1の数値範囲となる「ポリオール(a1-1)」及び「ポリオール(a1-3)」について、官能基数を「1.5~2.5」とすることに動機付けがないことは、上記イ(イ)及び(ウ)において検討したとおりである。
また、「ポリオール(a1)」を「ポリオール(a1-1)」及び「ポリオール(a1-3)」と特定しないものについては、「水酸基価が400~1100mgKOH/g」であることも含めて「官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/g」である点が相違点となるところ、「ポリオール(a1)」を「官能基数が1.5~2.5かつ水酸基価が400~1100mgKOH/gのエーテル系ポリオール(a1)」とすることについて、甲第4号証には記載も示唆もなく、技術常識でもなく、当業者が容易になし得たこととはいえないことは、上記イ(エ)において示したとおりである。
よって、申立人の主張を検討しても、上記イの判断は左右されない。
エ 小括
本件発明1は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えたものであるから、上記(2)に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び取消理由通知書において通知した取消理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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