結論テキスト
特許第7661265号の請求項1~5に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700957 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7661265号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和4年3月18日を出願日とするものであって、令和7年4月4日に特許権の設定登録がされ、同月14日に特許掲載公報が発行された。
その後、請求項1~5に係る特許に対し、令和7年10月6日に特許異議申立人弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
芯材と、該芯材を覆う表面材とを含み、
前記芯材が樹脂発泡体で構成され、
前記表面材が、樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層を含んでいる樹脂複合体であって、
長手方向と、該長手方向に直交する短手方向とを有する板状体であり、
前記長手方向での前記繊維強化樹脂層の引張弾性率をEw(GPa)とし、
前記短手方向での前記繊維強化樹脂層の引張弾性率をEh(GPa)とし、
前記長手方向での前記芯材の引張弾性率をEf(MPa)とし、
前記芯材の見掛け密度をD(kg/m
3
)とした場合に、
下記式(1)、(2)、及び、(3)の全てを満たす、樹脂複合体。
0.5 ≦ (Ef/D) ≦ 1.5 ・・・(3)
【請求項2】
前記繊維がガラス繊維又は炭素繊維である請求項1記載の樹脂複合体。
【請求項3】
厚さが0.40mm以上、2.00mm以下の前記繊維強化樹脂層を有する請求項1又は2記載の樹脂複合体。
【請求項4】
アクリル樹脂を含むアクリル樹脂組成物で前記樹脂発泡体が構成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂複合体。
【請求項5】
前記芯材の見掛け密度が30kg/m
3
以上110kg/m
3
以下である請求項1乃至4の何れか1項に記載の樹脂複合体。」
申立人による特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
・理由1(新規性)
本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
・理由2(進歩性)
本件発明1~5は、甲第1~4号証に記載された発明に基いて本件特許の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
<証拠一覧>
甲第1号証:特開2005-46182号公報
甲第2号証:「硬質アクリル発泡体セキスイフォーマック
R
S/HR」、積水化成品工業株式会社(「セキスイフォーマック」の後ろのRは、登録商標のマークである。以下同様。)
甲第3号証:「英文社名の変更ならびに弊社ホームページURL変更のお知らせ」、積水化成品工業株式会社、2020年6月24日、[online]、<URL: https://www.sekisuikasei.com/jp/news/detail.php?id=138>
甲第4号証:「今さら聞けない!HTTPとHTTPSの違いとメリット・デメリットを解説」、サイバーリサーチ株式会社、2019年3月16日、[online]、<URL:https://cyres.jp/https-http>
(1)甲第1号証(以下「甲1」という。)について
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある(なお、下線は当審で付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。)。
・「【0002】
【従来の技術】
近年、X線撮影装置やCTスキャナ等の放射線診断装置の天板は、その上に載置する患者の広い範囲を一度に撮影すべく長尺化と、例えば200kgもの体重の患者を載置して繰り返し使用するような場合でも撮影に支障をきたさないよう耐荷重値アップの要求が強い。」
・「【0018】
一方、側面スキン2bや下面スキン2cの長手方向弾性率は、片持ち状態の天板の長手方向に曲げモーメントが作用しても自由端のたわみ量が所定の範囲内となるように高剛性に設計するのが好ましい。また、所定のX線透過率が得られる範囲内で、下面スキン2cの厚みを特定して設計するのが好ましい。このように、長手方向と幅方向とを別個に剛性設計できるように、スキン2は、異方性を有するFRP(繊維強化プラスチック)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を含むことが好ましい。」
・「【0027】
【実施例および比較例】
(実施例)
図1に示したような、
スキン2とコア3とで構成される天板1
を製作した。
・・・
【0029】
スキン2は、複数のCFRP層で構成
し、強化繊維として炭素繊維の朱子織物と平織物を用い、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いた。ただし、
上面スキン2a、下面スキン2c、側面スキン2b
の長手方向弾性率、幅方向弾性率、厚みが以下のようになるよう、炭素繊維の種類や織密度、マトリクス樹脂の種類を選定した。
【0030】
上面スキン:
長手方向弾性率80GPa、幅方向弾性率40GPa、厚み1.3mm
下面スキン:
長手方向弾性率80GPa、幅方向弾性率40GPa、厚み3.6mm
側面スキン:
長手方向弾性率120GPa、幅方向弾性率20GPa
、厚み1.5mm
また、
コア3には
、厚み50mm、幅500mm、長さ2,000mmの
硬質アクリルフォーム(弾性率:70MPa)を用いた。
・・・。」
・「【図1】
29
51
0001433114000001.jpg
【図2】
21
42
0001433114000002.jpg
」
イ 看取事項
甲1の【図1】、【図2】から、「天板1」及びその「側面スキン2b」は、長手方向と幅方向を有する板状体であることが看取される。
ウ 甲1に記載の発明
甲1には、特に実施例に着目すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。なお括弧書きは特に参照した段落を示す。
「スキン2とコア3とで構成される天板1であって、(【0027】)
スキン2は、複数のCFRP層で構成された上面スキン2a、下面スキン2c、側面スキン2bを有し、(【0029】)
天板1及びその側面スキン2bは、長手方向と幅方向を有する板状体であり、側面スキン2bは、長手方向弾性率120GPa、幅方向弾性率20GPa、厚み1.5mmであり、(【0030】、【図1】、上記イ)
コア3は、硬質アクリルフォーム(弾性率:70MPa)である、(【0030】)
天板1」
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「コア3」は、本件発明1の「芯材」に相当する。また、甲1発明の「側面スキン2b」は、「コア3」の側面に設けられたものではあるが、「コア3」の表面を覆う部材であることには変わりないから、本件発明1の「該芯材を覆う表面材」に相当する。
イ 甲1発明の「コア3」は、「硬質アクリルフォーム」であるから、本件発明1の「前記芯材が樹脂発泡体で構成され」たものに相当する。
ウ 甲1発明の「スキン2は、複数のCFRP層で構成された」という事項は、本件発明1の「前記表面材が、樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された」という事項に相当する。
エ 甲1発明の「天板1」は、硬質アクリルフォームである「コア3」とCFRP層である「スキン2」を有しているから、本件発明1の「樹脂複合体」に相当するとともに、上記ウも踏まえると、甲1発明の「天板1」は、「前記表面材が、樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層を含んでいる樹脂複合体」という事項を充足する。
オ 甲1発明の「天板1及びその側面スキン2bは、長手方向と幅方向を有する板状体であり」という事項は、本件発明1における「樹脂複合体」が「長手方向と、該長手方向に直交する短手方向とを有する板状体であり」という事項に相当する。
(2)一致点及び相違点
上記(1)から、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「芯材と、該芯材を覆う表面材とを含み、
前記芯材が樹脂発泡体で構成され、
前記表面材が、樹脂と繊維とを含むシート状の繊維強化樹脂材で構成された繊維強化樹脂層を含んでいる樹脂複合体であって、
長手方向と、該長手方向に直交する短手方向とを有する板状体である、
樹脂複合体」
<相違点>
本件発明1では、
「前記長手方向での前記繊維強化樹脂層の引張弾性率をEw(GPa)とし、前記短手方向での前記繊維強化樹脂層の引張弾性率をEh(GPa)とし、
前記長手方向での前記芯材の引張弾性率をEf(MPa)とし、前記芯材の見掛け密度をD(kg/m
3
)とした場合に、
下記式(1)、(2)、及び、(3)の全てを満たす、」
「6 ≦ (Ew/Eh) ≦ 20 ・・・(1)
0.5 ≦ (Ef/D) ≦ 1.5 ・・・(3)」のに対し、
甲1発明では、これらのすべてを満たしているか不明である点。
(3)相違点の検討
当該相違点について検討するに、甲1発明の「側面スキン2b」は、「長手方向弾性率120GPa、幅方向弾性率20GPa」である。しかし、当該弾性率が引張弾性率なのか、あるいは曲げ弾性率や圧縮弾性率など、他の弾性率であるか不明である。
この点に関し、特に甲1の【0018】には、「一方、側面スキン2bや下面スキン2cの長手方向弾性率は、片持ち状態の天板の長手方向に曲げモーメントが作用しても自由端のたわみ量が所定の範囲内となるように高剛性に設計するのが好ましい。」と記載されているところ、確かに引張弾性率によっても剛性を高めることは可能であるが、甲1においては曲げモーメントによるたわみを問題にしていることからみて、むしろ曲げ弾性率を問題にしていると理解される。また、仮にそうではないとしても、少なくとも甲1発明における当該弾性率が引張弾性率であると理解すべき事情はない。
そうすると、甲1発明における「長手方向弾性率120GPa、幅方向弾性率20GPa」は、引張弾性率であるか不明であるし、その蓋然性が高いともいうこともできない。
さらに、他の証拠にもこの点について記載はないし、甲1発明において、「側面スキン2b」における長手方向の引張弾性率と短手方向の引張弾性率とを上記相違点に係る式を満たすものとする動機付けもない。
してみれば、本件発明は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明ではなく、また、同条第2項に規定される発明にも該当しない。
本件発明2~5は、いずれも本件発明1を引用し、さらに限定を加えたものである。そして、上記2のとおり、本件発明1は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもないから、本件発明2~5も同様である。
申立人は、異議申立書において、甲1における側面スキン2bの長手方向弾性率120GPa、幅方向弾性率20GPaをもって、本件発明1の式(1)及び(2)を満たすものと主張している。しかし、上記2(3)のとおり、当該弾性率がそもそも引張弾性率であるとは言い難いものであり、その主張は採用できない。
本件発明1~5は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではないから、請求項1~5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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