結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2023670053 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由
本件国際登録第1028877A号商標(以下「本件商標」という。)は、「Dot」の文字を書してなり、2010年(平成22年)1月12日に国際商標登録出願(優先権主張 2009年9月18日 ドイツ連邦共和国)、第10類「Apparatus and devices for imaging diagnostics for medical purposes, namely apparatus and devices for magnetic resonance tomography; medical/therapeutic devices for proton imaging; parts of the apparatus and devices mentioned above.」を指定商品として平成25年7月19日に設定登録され、その後、令和2年2月4日に存続期間の更新登録がされた。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年10月2日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間(2020年(令和2年)10月2日~2023年(令和5年)10月1日)を以下「要証期間」という。
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由、及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由、並びに被請求人の回答に対する弁駁(以下「第二弁駁」という。)の理由を、それぞれ要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
本件商標は、その指定商品(以下「取消請求商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(1)概要
被請求人は、日本法人を通じて本件商標及び本件商標と社会通念上同一の商標を使用している旨を主張する。
しかし、被請求人が使用を主張する商標は、本件商標ではなく、かつ、本件商標と社会通念上同一でもない。また、その使用態様は出所識別標識としての使用でない。さらに、乙第14号証は要証期間に展示又は頒布された取引書類といえない。
したがって、被請求人は本件商標を使用していないというべきである。
(2)被請求人が使用を主張する商標の整理
被請求人が使用を主張する商標は以下のとおりである。
・「Dot (Day optimizing throughput) エンジン」(乙1、乙2)
・「Dotエンジン」(乙3)
・「A Tim + Dot System」(乙4)
・「Dotコントロールセンター」及び「Dotディスプレイ」(乙12)
・「Dot Control Centers」(乙13)
・「Spine Dot Engine」、「Large Joint Dot Engine」、「Abdomen Dot Engine」、「Angio Dot Engine」、「Cardiac Dot Engine」及び「Breast Dot Engine」(乙14)
(3)本件商標を使用していないこと
ア 乙第1号証及び乙第2号証
乙第1号証及び乙第2号証には、「Dot (Day optimizing throughput) エンジン」との文字が表示されている。
「Dot」は単独ではなく、その直後の「(Day optimizing throughput) エンジン」とともに使用されている。括弧書きは直前の語を説明する役割を有しており、「Day optimizing throughput」の各語の語頭の文字を組み合わせると「Dot」になる。また、請求人も略称であると述べている。そうすると、「Dot (Day optimizing throughput)」は一体の略称として認識できる。そして、「Dot」の直前の語が「新操作系エンジン」又は「操作系エンジン」であり、その同格として「Dot (Day optimizing throughput) エンジン」が続いている。
このため、「Dot (Day optimizing throughput) エンジン」が一つの語であると認識でき、「Dot」単独の使用はなされていない。
イ 乙第3号証
乙第3号証には、「Dotエンジン」との文字が「」の括弧付きで表示されている。
この表示は「Dot」と「エンジン」を同じ括弧で括っているため、「Dotエンジン」は一つの語として認識でき、「Dot」単独の使用はなされていない。
(4)社会通念上同一でないこと
ア 社会通念上同一でない理由
本件商標は「Dot」であるのに対して、被請求人が使用を主張する商標はいずれも「Dot」以外の文字を含むため、商標法第38条第5項にいう、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」、「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標」又は「外観において同視される図形からなる商標」のいずれにも該当しない。そして、少なくとも本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる商標であれば、社会通念上同一になる余地はあるから検討する。
本件商標及び被請求人が使用を主張する商標の共通点である「Dot」は「点。ぽつ。ポイント。」等を意味するする平易な英単語である(甲2)。
被請求人が使用を主張する商標のうち、「(Day optimizing throughput) エンジン」、「エンジン」、「System」、「Control Centers」又は「ディスプレイ」(以下、これらをまとめて「各付加語」と呼ぶ。)の意味を検討する。
「Day optimizing throughput」の「Day」は「日々の」との意味になり得ることに加え(甲3)、「optimizing」は「最適化する」を意味する語「optimize」の動名詞であり(甲4)、「throughput」は「検査効率」を意味するため(甲5)、全体として「日々の検査効率の最適化」との意味を認識できる。「エンジン」は「機関。発動機。」等を意味する語であり(甲6)、「System」は「複数の要素が有機的に関係しあい、全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体。組織。系統。仕組み。」の意味を有し(甲7)、「コントロールセンター」又は「Control Centers」は「Control」が「制御すること。」等(甲8の1)、「Centers」が「その分野の中心となる機関・施設。」等の意味(甲8の2)から「制御する機関・施設」等の意味を認識できる。「ディスプレイ」は「表示。展示。陳列。モニター」等の意味を有する(甲9)。
このように、被請求人が使用を主張する商標における各付加語が有する観念は、本件商標からは生じ得ない観念である。また、各付加語は磁気共鳴診断装置(MRI)において、その品質その他の特徴を直接的に表す語ではないため、出所識別標識としての称呼及び観念が生じないとまでいうこともできない。さらに、各付加語は「Dot」の語と同一の大きさ及び書体にて一行で一体的に表示されている点からも、出所識別標識としての称呼及び観念が生じないとまでは評価し難い。
加えて、過去の審決例、異議決定例及び審査例からも、各付加語が出所識別標識としての称呼及び観念が生じないとはいえない(甲10~甲22)。
イ 被請求人の答弁への反論
被請求人は、各付加語が識別力のない語であると主張するが、その根拠は「System」が「装置、機構」といった意味として需要者によく知られたと述べるのみである。また、「コントロールセンター」、「Control Centers」は「設定・操作・制御関連の機能が集約された画面や表示領域」を、「ディスプレイ」は「表示画面」を意味する語として医療用機械器具の分野で使用されていると述べるのみである。さらに、「Engine」は「ある特定の処理を行うための機能を提供する、ひとまとまりになった処理装置・ソフトウェア」を意味すると述べるのみである。
つまり、被請求人は各付加語が上記それぞれの意味を有することを主張するのみであり、それを裏付ける証拠が示されていない上、当該それぞれの意味を有することによってなぜ識別力を有しないかの説明もなされていない。
なお、被請求人は「Dot System」の使用を主張するが、「A Tim + Dot System」と本件商標とを対比すべきである。そして、この「A Tim +」の部分からは特定の意味が認識できないため、「A Tim + Dot System」(乙4)は「System」の有無の問題ですらない。
また、被請求人は、乙第14号証における「Spine Dot Engine」等の最初の語について識別力がないと主張するが、そうだとしても更に「Engine」を捨象して、中央の「Dot」のみを抽出することは不自然である。
(5)出所識別標識としての使用でないこと
本件において、乙第1号証ないし乙第3号証では、MRIの優位性を訴求するための説明中の表示であり、当該説明中の他の文字と同じ色、書体及び大きさで表されている。一方、「MAGNETOM Aera」(乙1)、「MAGNETOM Skyra」(乙2)及び「MAGNETOM Amira」(乙3)が色、書体及び大きさにおいて他の文字と異なるように表示され目立っている。このため、これら「MAGNETOM」を含む文字は商品の出所を表示し、自他商品又は役務を識別するものとして需要者において認識できる態様で使用(以下「出所識別標識としての使用」という。)されている一方で、「Dot」を含む文字(乙1~乙3)は出所識別標識としての使用とはいえない。
乙第4号証、乙第12号証及び乙第13号証では、「SIEMENS Healthineer」が最も大きく目立つように表示され、次いで「MAGNETOM Sepra」が目立つように表示されている。これらよりも、「A Tim + Dot System」、「Dotコントロールセンター」、「Dotディスプレイ」及び「Dot Control Centers」は小さく目立たないように表示されている。特に、乙第13号証において、「Dot Control Centers」は、全19ページのうち1ページの1箇所のみに表示されているにすぎない。したがって、「SIEMENS Healthineer」又は「MAGNETOM Sepra」は出所識別標識としての使用であると理解できる一方で、「Dot」を含む文字(乙4、乙12、乙13)は出所識別標識としての使用とはいえない。
(6)取引書類でないこと
乙第14号証は「製品特長書」との記載があるものの、いつ誰にどのタイミングで展示又は頒布されたのか等その性質が不明である。したがって、乙第14号証は要証期間に展示又は頒布された取引書類といえない。
(1)社会通念上同一でないこと
被請求人は回答書にて「A Tim + Dot System」(乙4)と本件商標とが社会通念上同一である理由として、「A Tim」と「Dot System」が記号「+」を挟んでいるため分離していること及び「System」の語が識別力を有しないことを主張する。
しかし、「A Tim + Dot System」は各文字の大きさが同程度であり、書体が異なるものではない。また、「Tim」部分のみが赤めの色であり、それを挟む「A」及び「+ Dot System」は灰色で統一されているから、むしろ「A」から「System」までで一体の表記と認識するのが自然である。さらに、「A Tim +」の部分からは特定の意味が認識できないため、識別力を有しており、捨象すべきでない。
また、被請求人が「System」の語が識別力を有しないと主張する根拠は拒絶審査例のみであるが、「システム」又は「System」を含む語の出願が識別力を有しないとして拒絶査定を受けたことのみをもって「System」の語が識別力を有しないということはできない。これは審決において、「system」の語が直ちに品質等表示と認識されず、称呼されるべき旨が述べられている点から肯定できる(甲12)。
そもそも、被請求人の主張は社会通念上同一の判断基準に沿った主張でない。
(2)出所識別標識としての使用でないこと
被請求人は回答書にて、乙第1号証ないし乙第3号証の各表示に接した需要者は「Dot」が被請求人の商品に独自に記載された機能であることを理解するから商品の説明文の一部ではなく、商品の出所識別標識として認識する旨を主張する。しかし、これらの「Dot」を含む文字が説明文の一部であることは事実であり、説明文でないと認識されるはずがない。また、他の説明文と同じ態様であり、その目的も「MAGNETOM Aera」等のMRIの優位性を訴求することにあるから、需要者は出所識別標識として認識しないというべきである。さらに、商品の機能を表すにすぎない登録商標の使用が自他商品を識別するものと認識されるものとはいえないと判断された審決例も存在する(甲28)。
また、乙第4号証、乙第12号証及び乙第13号証に係る「Dot」を含む文字についても、「SIEMENS Healthineer」や「MAGNETOM Sepra」に比べて小さく目立たない等の理由で出所識別標識としての使用とはいえない。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由、並びに審尋及び弁駁に対する回答の理由を、それぞれ要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第20号証を提出した。
(1)被請求人は、医療用機械器具の製造・販売を主たる業務としており、我が国においても被請求人の日本法人であるシーメンスヘルスケア株式会社を通じて画像診断装置を初めとする各種医療用機械器具を販売している。
(2)被請求人は、本件商標「Dot」を、本件商標の指定商品である「磁気共鳴断層撮影用の機器及び装置」に使用している(乙1~乙14)。
ア 本件商標「Dot」は、「Day optimizing thoughput」の略称であり、被請求人の業務に係る磁気共鳴診断装置(MRI)について使用されている(乙1~乙3)。
乙第1号証ないし乙第3号証は、被請求人の業務に係る磁気共鳴診断装置(MRI)を紹介したウェブサイトにおける本件商標の使用であり、かかる使用は「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。また、乙第1号証ないし乙第3号証は、インターネットアーカイブ「Wayback Machine」に2021年3月3日付けで保存された情報である。
イ 被請求人の業務に係る磁気共鳴診断装置(MRI)「MAGNETOM Sempra」において、商品本体に「Dot System」の表示が付されている(乙4)。
「System」は「装置、機構」といった意味の語として我が国の需要者によく知られた語であり、磁気共鳴診断装置(MRI)のような医療用機械器具の分野においては識別力のない語である。
よって、「Dot System」(乙4)の構成中、「system」からは称呼及び観念は生じないため、「Dot System」は本件商標と社会通念上同一のものである。
乙第5号証ないし乙第10号証は、「MAGNETOM Sempra」の納品書及び請求書であり、要証期間である2023年4月6日(乙5~乙7)、同月14日(乙8~乙10)に発行されたものである。
また、乙第11号証は、「MAGNETOM Sempra」の添付文書であるが、要証期間である2022年3月に改訂が行われている。
ウ 「MAGNETOM Sempra」のカタログ(乙12)及びデータシート(乙13)において、「Dotコントロールセンター」、「Dotディスプレイ」(乙12)及び「Dot Control Centers」(乙13)が使用されている。
「コントロールセンター」、「Control Centers」は「設定・操作・制御関連の機能が集約された画面や表示領域」を、「ディスプレイ」は「表示画面」を意味する語として医療用機械器具の分野で使用されており、識別力のない語である。
よって、被請求人の業務に係る磁気共鳴診断装置(MRI)である「MAGNETOM Sempra」の取引書類において使用されている「Dotコントロールセンター」、「Dotディスプレイ」及び「Dot Control Centers」の構成中、「Dot」以外の部分から称呼及び観念は生じないため、「Dotコントロールセンター」、「Dotディスプレイ」、「Dot Control Centers」はいずれも本件商標と社会通念上同一である。
エ 「MAGNETOM Sempra」の製品特長書(乙14)において、「Spine Dot Engine」、「Large Joint Dot Engine」、「Abdomen Dot Engine」、「Angio Dot Engine」、「Cardiac Dot Engine」及び「Breast Dot Engine」が使用されている。
「Engine」は「ある特定の処理を行うための機能を提供する、ひとまとまりになった処理装置・ソフトウェア」を意味する識別力のない語であり、「Dot Engine」の前に付加されているのは、それぞれ椎体、関節、腹部、血管造影検査、心臓及び乳房を表す語であるから、医療用機械器具の分野においては識別力のない語である。
よって、被請求人の業務に係る磁気共鳴診断装置(MRI)である「MAGNETOM Sempra」の取引書類(製品特長書)において使用されている、「Spine Dot Engine」、「Large Joint Dot Engine」、「Abdomen Dot Engine」、「Angio Dot Engine」、「Cardiac Dot Engine」及び「Breast Dot Engine」の構成中、「Dot」以外の部分から称呼及び観念は生じないため、これらはいずれも本件商標と社会通念上同一である。
(3)まとめ
被請求人は、本件商標「Dot」を、被請求人の業務に係る磁気共鳴診断装置(MRI)について使用している(乙1~乙3)。また、本件商標と社会通念上同一と認められる「Dot System」(乙4~乙10)、「Dotコントロールセンター」及び「Dotディスプレイ」(乙12)、「Dot Control Centers」(乙13)、並びに「Spine Dot Engine」、「Large Joint Dot Engine」、「Abdomen Dot Engine」、「Angio Dot Engine」、「Cardiac Dot Engine」及び「Breast Dot Engine」(乙14)を、被請求人の業務に係る磁気共鳴診断装置(MRI)の商品本体又は取引書類に要証期間に使用している。
上記の事実から、被請求人が日本において、本件商標を取消請求商品中、「apparatus and devices for magnetic resonance tomography」(磁気共鳴断層撮影用の機器及び装置)について使用していることは明らかである。
(1)商品「MAGNETOM Sempra」について
カタログ(乙12)及びデータシート(乙13)が要証期間に顧客との取引において提出された証拠として、乙第15号証ないし乙第17号証を提出する。
乙第15号証ないし乙第17号証は、本件商標の通常使用権者であるシーメンスヘルスケア株式会社の従業員から顧客宛てに電子メールでカタログ(乙12)及びデータシート(乙13)が送付されたことを示すものである。
ここで、カタログ(乙12)は商品「MAGNETOM Sempra」の商品パンフレットであるから商品に関する広告(商標法第2条第3項第8号)に該当し、データシート(乙13)は医療機械器具のデータシート(添付文書)であるから商品の取引書類(商標法第2条第3項第8号)である。
そして、カタログ(乙12)及びデータシート(乙13)を電子メールに添付して顧客に送信する行為は、商品の広告及び取引書類を内容とする情報に標章を付したものを電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
よって、本件商標と社会通念上同一の商標である「Dotコントロールセンター」、「Dotディスプレイ」及び「Dot Control Centers」は、要証期間である2022年4月22日、同年5月18日、同年12月27日に、商標法第2条第3項第8号の規定による使用をされた。
また、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「Brain Dot Engine」、「Spine Dot Engine」、「Large Joint Dot Engine」、「Abdomen Dot Engine」、「Whole-body Dot Engine」、「Breast Dot Engine」、「Cardiac Dot Engine」及び「Angio Dot Engine」が要証期間に使用されていた事実を示すため、乙第18号証を提出する。
製品特長書(乙18)は、製品の優れた点を顧客に訴求することにより購入を促進するものであるから商品に関する広告(商標法第2条第3項第8号)に該当するものであり、製品特長書(乙18)が作成されたのは要証期間である2022年5月20日である。これを証明するため、シーメンスヘルスケア株式会社の社内文書として作成された乙第19号証を提出する。
(2)その他の商品について
「A Tim」と「Dot System」は記号「+」を挟んでいるため分離されており、かつ「System」は医療機械器具の分野では「システム、機構」を表す語として識別力がない。
(3)本件商標の使用者について
本件商標は2024年6月21日付けでSiemens Healthcare GmbHからSiemens Healthineers AGへと所有者の名義が変更されているが、シーメンスヘルスケア株式会社は、名義変更前の商標権者であるSiemens Healthcare GmbHの製品を日本において独占的に販売する権利が与えられている。
この契約の対象となるSiemens Healthcare GmbHの製品には「画像診断装置」が含まれているところ、「MAGNETOM Sempra」を始めとする磁気共鳴断層撮影装置(MRI)は画像診断装置に属するものである。
また、製品の販売や広告に際して商標の使用が必要となるのは当然であるから、シーメンスヘルスケア株式会社は当時の商標権者であったSiemens Healthcare GmbHから本件商標を含む同社の商標について黙示的な使用許諾を受けていたといえる。
よってシーメンスヘルスケア株式会社は、要証期間において、本件商標の通常使用権者であった。
(4)本件商標の使用について
請求人は、「ENGINE」及び「System」が識別力のない語ではないとしていくつかの審決例を挙げているが、「System」は取消請求商品の分野において識別力がない。また、「ENGINE」についても特定の機能を付与したり、サービスを提供したりするハードウエアやソフトウェアを指す語として一般的に使用されているのであるから、識別力を欠くことは明らかである。
よって、「ENGINE」及び「System」が本件商標とともに使用されているとしても、それにより本件商標と社会通念上同一の商標であることを否定する根拠とはならない。
(5)出所識別標識としての使用
乙第1号証ないし第3号証は、商品「MAGNETOM Aera」、「MAGNETOM Skyra」及び「MAGNETOM Amira」のMRI機械器具に搭載されたDotエンジンの優位性を顧客に対して訴求しており、商品の説明文中での記載ではあるが、これに接した需要者は、「Dot」が、商標権者が製造及び販売する商品に独自に記載された機能であることを理解するから、これを単なる商品の説明文の一部ではなく、商品の出所識別標識として認識する。
また、乙第4号証、乙第12号証、乙第13号証において、「A Tim + Dot System」、「Dotコントロールセンター」、「Dotディスプレイ」、「Dot Control Centers」の表示は、同様に商標権者が製造及び販売する商品に独自に記載された機能であることを表示するものであり、需要者もそのように認識するから、商品の出所識別標識ではないとの請求人の主張は失当である。
(6)乙第14号証、乙第18号証について
乙第14号証は、製品の優れた点を顧客に訴求することにより購入を促す目的で作成されたものであるから、商品に関する広告(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
また、乙第14号証と同じく、製品の優れた点を顧客に訴求することにより購入を促進するため、商品に関する広告に該当する乙第18号証は、要証期間に作成されたものである。
(7)まとめ
以上、本件商標と社会通念上同一の商標が要証期間に商品の広告及び取引書類に使用されたものであるから、本件商標は商標法第2条第3項第8号に該当する使用をされたものである。
(1)「MAGNETOM Sempra」について
ア カタログ(乙12)
乙第12号証は、カタログの写しであり、その1葉目の右側上部には、「磁気共鳴診断装置/MAGNETOM Sempra」の記載、右側下部に「SIEMENS/Healthineers」の記載があり、左側下部には、「製造販売業者/シーメンスヘルスケア株式会社」、「超電導磁石式全身用MR装置/MAGNETOM センプラ」の記載がある。
また、その5葉目の右側に、「直感的な操作を可能にするわかりやすいDotコントロールセンターとDotディスプレイ」のタイトル下において、磁気共鳴診断装置上に設けられたコントロールホイールと思われる画像とともに、「Dotコントロールセンター/-被験者セットアップを直感的に制御」の見出しの下に、「●コントロールホイールで、様々な寝台スピードを全方向で調整可能/●ボタンひとつで検査位置または定位置へ自動的に移動」/●ボア内通気およびボア内照明の制御、ヘッドフォンおよび室内ラウドスピーカーのボリューム調整が可能」の記載がある。さらに、その右側には、磁気共鳴診断装置上に設けられたディスプレイと思われる画像とともに、「Dotディスプレイ/-スキャナに直接設置された情報センター」の見出しの下に、「●被験者の受け入れを表示/●心電波形などの生理学的情報、コイルの組み合わせ、寝台位置、風量、明るさなど、被験者の状態や検査準備状況を表示/●独自のガイダンスを表示(例:ECGの最適なセットアップ)」の記載がある。
イ データシート(乙13)
乙第13号証は、データシートの写しであり、その1葉目の上部には、「MAGNETOM Sempra_datasheet_202002」、「1.5T 磁気共鳴断層撮影装置/MAGNETOM Sempra/データシート」の記載、下部に「DATA SHEET/・・・/販売名 :MAGNETOM センプラ」、「SIEMENS/Healthineers」の記載がある。また、その19葉目の下部には、「シーメンスヘルスケア株式会社」の記載がある。
そして、その8葉目には、「D.患者ハンドリングシステム」のタイトル下で、「D.2 Dot Control Centers」の見出しの下に、「ガントリ部前面部に各種コントローラを配置/・患者テーブルコントローラ(テーブルの制御)/・光マーカーによるポジショニング、マグネット中心へ自動送り機能/・ワンタッチで水平方向ホームポジションへの移動/・ボア内の換気風量制御/・ボア内の照明照度制御/・検査室内スピーカー音量制御/・ヘッドフォン音量制御/・操作コンソール上にて、患者テーブルの水平移動、ボア内の照度制御、換気風量制御」の記載がある。
(2)電子メール(乙15~乙17)
乙第15号証は、シーメンスヘルスケア株式会社から株式会社日東に宛てて2022年4月22日付けで送付した電子メールの写しであり、データシート(乙13)が添付されていたことが確認できる。
乙第16号証は、シーメンスヘルスケア株式会社から株式会社ピーズメディカルサポートに宛てて2022年5月18日付けで送付した電子メールの写しであり、カタログ(乙12)が添付されていたことが確認できる。
乙第17号証は、シーメンスヘルスケア株式会社から栗原レントゲン株式会社に宛てて2022年12月27日付けで送付した電子メールの写しであり、カタログ(乙12)及びデータシート(乙13)が添付されていたことが確認できる。
(3)上記(1)及び(2)から以下の事実が認められる。
シーメンスヘルスケア株式会社(以下「シーメンスヘルスケア社」という。)は、「MAGNETOM Sempra」と称する磁気共鳴断層撮影装置又は磁気共鳴診断装置(以下「使用商品」という。)について、要証期間である2022年4月、同年5月及び同年12月頃に、日本国内の顧客に対して、「Dotコントロールセンター」及び「Dotディスプレイ」の表示を付したカタログ(乙12)や、「Dot Control Centers」の表示を付したデータシート(乙13)を頒布した(以下、「Dotコントロールセンター」及び「Dot Control Centers」の表示をまとめて「使用商標1」といい、「Dotディスプレイ」の表示を「使用商標2」という。)。
(1)使用商品について
使用商品は、「MAGNETOM Sempra」と称する磁気共鳴断層撮影装置又は磁気共鳴診断装置であるところ、当該使用商品は、取消請求商品中、第10類「apparatus and devices for magnetic resonance tomography」(磁気共鳴断層撮影用の機器及び装置)の範ちゅうに含まれる商品である。
(2)使用商標について
使用商標1は「Dotコントロールセンター」及び「Dot Control Centers」の表示からなるものであるところ、カタログ(乙12)及びデータシート(乙13)から、使用商品は、磁気共鳴診断装置上にコントロールホイールが設けられ、寝台スピードや位置、ボア内の通気及び照明の制御、ヘッドフォン及びスピーカーのボリューム調整ができるものであると認められるから、使用商標1における「コントロールセンター」及び「Control Centers」の語は当該使用商品がコントローラの要素又は機能を有することを示すにすぎず、使用商標1において、そのようなコントローラを有する使用商品についての自他商品識別力を発揮する要部は「Dot」の表示であると認められる。
そうすると、使用商標1の要部と、本件商標とは、文字構成を同じくするものであるから、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標とみて差し支えない。
次に、使用商標2は「Dotディスプレイ」の表示からなるものであるところ、カタログ(乙12)及びデータシート(乙13)から、使用商品は、磁気共鳴診断装置上にディスプレイが設けられ、被験者の受け入れ、被験者の状態や検査準備状況、ガイダンスが表示できると認められることから、使用商標2における「ディスプレイ」の語は使用商品がディスプレイを有することを示すにすぎず、使用商標2において、そのようなディスプレイを有する使用商品についての自他商品識別力を発揮する要部は「Dot」の表示であると認められる。
そうすると、使用商標2の要部と、本件商標とは、文字構成を同じくするものであるから、使用商標2も、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
なお、請求人は、乙第12号証及び乙第13号証に係る「Dot」を含む文字は、「SIEMENS Healthineer」や「MAGNETOM Sepra」に比べて小さく目立たないから出所識別標識としての使用とはいえない旨を主張している。
しかしながら、上記1(1)のとおり、乙第12号証及び乙第13号証における、「Dotコントロールセンター」、「Dotディスプレイ」及び「Dot Control Centers」の表示は、いずれも見出しとして表示されているから、出所識別標識として認識し得るものであるし、「SIEMENS Healthineer」や「MAGNETOM Sepra」などの表示と比べて小さく目立たないことが、ただちに出所識別標識としての使用を妨げるものとはいえない。
(3)使用行為、使用時期、使用者について
被請求人が提出した証拠から、シーメンスヘルスケア社が、要証期間である2022年4月、同年5月及び同年12月頃に、日本国内の顧客に対して、使用商品について、使用商標1及び2を付した広告又は取引書類(カタログやデータシート)を頒布したことは認められる。
そして、被請求人の答弁及び回答、並びにシーメンスヘルスケア社と商標権者の名称とが相当程度類似していることからみても、シーメンスヘルスケア社が本件商標の通常使用権者とみて差し支えない。
以上から、本件商標の通常使用権者であるシーメンスヘルスケア社が、要証期間に、自社が販売する使用商品に関する広告又は取引書類に、使用商標1及び2を付して頒布したこと、すなわち商標法第2条第3項第8号に規定する使用行為を行ったと認めることができる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、本件商標の通常使用権者が、要証期間に、本件審判に係る本件商標の指定商品中、第10類「apparatus and devices for magnetic resonance tomography」の範ちゅうに含まれる使用商品に関する広告又は取引書類に、使用商標1及び2を付して頒布した(商標法第2条第3項第8号に該当。)と認めることができる。
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の通常使用権者が、その審判請求に係る指定商品について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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