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Trademark Appeal Case

医療機器の類否判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023890053
審判種別記載はありません。
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

結 論
登録第6320554号の指定役務中、第44類「医療用機械器具の貸与」についての登録を無効とする。
令和6年2月8日付け審決のうち、「審判費用は、請求人の負担等する。」との部分を取り消す。
審判費用は、これを2分し、その1を被請求人の、その余を請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6320554号商標(以下「本件商標」という。)は、「AWG治療」の文字を標準文字で表してなり、令和元年10月21日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,資格検定試験の企画・運営又は実施,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),運動施設の提供,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,書籍の貸与,写真の撮影,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与」及び第44類「美容,理容,入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,整体,はり治療,医療情報の提供,健康診断,調剤に関する情報の提供,栄養の指導,介護,医療用機械器具の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与」を指定役務として、同2年11月17日に登録査定、同月25日に設定登録されたものである。

そして、本件審判の請求により、請求に係る指定役務「あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,整体,はり治療,医療用機械器具の貸与」のうち、「医療用機械器具の貸与」以外の指定役務について、その請求は成り立たない旨の審決が令和7年5月23日に一部確定し、その登録が同年9月4日にされたものである。

第2 請求人が引用する商標

請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、引用する登録第6217436号商標(以下「引用商標」という。)は、「AWG治療」の文字を標準文字で表してなり、平成31年4月25日に登録出願、第10類「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。),家庭用電気マッサージ器」を指定商品として、令和2年1月17日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

第3 手続の経緯

本件商標について、令和5年6月30日付けで、「本件商標の指定役務中、第44類「あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,整体,はり治療,医療用機械器具の貸与」についての登録を無効とする。」旨の無効審判の請求があったところ、同6年2月8日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(以下「第一審決」という。)がされた。

この第一審決に対し、請求人は、取り消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴し、これが令和6年(行ケ)第10028号事件として審理された結果、同年11月11日に「1 特許庁が無効2023-890053号事件について令和6年2月8日にした審決のうち登録第6320554号の指定役務中「医療用機械器具の貸与」に係る部分を取り消す。」との判決が言い渡された。

その結果、第一審決で商標登録を維持するとされた請求に係る指定役務のうち、「医療用機械器具の貸与」に関する部分については審決が取り消され、それ以外の指定役務に関する部分の第一審決は確定した。

なお、以下、本件商標の指定役務中の「医療用器械器具の貸与」を「本件指定役務・医療用機械器具の貸与」と、引用商標の指定商品中の「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」を「本件指定商品・医療用機械器具」という場合がある。

第4 請求人の主張

1 請求の趣旨

請求人は、本件商標の指定役務中、第44類「あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,整体,はり治療,医療用機械器具の貸与」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第63号証(枝番号を含む。以下、「甲(乙)第○号証」の表示は、「甲(乙)○」と表記する。)を提出した。

2 請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。

(1)商標の同一性について

本件商標と引用商標は、いずれも「AWG治療」との標準文字からなるものであり、同一の商標である。

(2)商品及び役務の類否について

指定商品の類似性の有無については、「それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある」か否かにより判断されるべきである(最高裁昭和36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁)。

そして、商品・役務間の類似性の場合、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか、商品と役務の用途が一致するかどうか、商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうか、需要者の範囲が一致するかどうか等の事情を総合的に考慮することとなっている。

本件指定商品・医療用機械器具と本件指定役務・医療用機械器具の貸与は、類似する。

(3)「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」と「医療用機械器具の貸与」が類似していること

ア 「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の製造・販売と「医療用機械器具の貸与」の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であること

「医療用機械器具」の製造・販売を行う場合、医療機器の製造販売業に係る都道府県知事等の許可を受けて行う必要がある(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「薬機法」という。)第23条の2第1項、薬機法施行令第80条第3項第1号(甲4:薬機法・薬機法施行令の抜粋)。また、「医療用機械器具の貸与」の提供を行う場合、「高度管理医療機器」及び「特定保守管理医療機器」については、医療機器の貸与業に係る都道府県知事等の許可が(薬機法第39条第1項)、「管理医療機器」(「特定保守管理医療機器」を除く。)については、医療機器の貸与業に係る都道府県知事等への届出が必要である(薬機法第39条の3第1項。以下、許可及び届出を総称して「許可等」という。)。

医療用機械器具の製造、販売、貸与等を行う企業を会員とする団体である商工組合日本医療機器協会(甲5)の会員企業検索において、医療機器の製造販売業又は販売・貸与業の許可等を受けている企業を検索(甲6)したところ、77社の該当があり、そのうち、製造販売業と販売・貸与業の両方の許可等を受けている企業は53社であり、全体の68.8%であった(甲7)。

医療機器の販売・貸与業の許可等を受けている53社には、販売業と貸与業のいずれか又は両方の許可を受けている企業が含まれているが、販売業と貸与業の許可の申請が同一の申請書で同時に行うことができるものとされていること(甲8)や、請求人及び本件商標の出願人が販売業と貸与業の両方の許可を受けている(甲9、甲10)ことからしても多くの企業は販売業と貸与業の両方について許可を受けているものと推測される。

よって、医療用機械器具の製造、販売、貸与を行う企業において、製造販売業と貸与業の両方の許可を受けている企業が多いものといえる。

また、実際に医療用機械器具の製造及び販売と貸与の両方の事業を行っている事業者(甲11、甲12)があり、医療用機械器具の販売と貸与の両方の事業を行っている事業者(甲13~甲20)も多数存在する。

以上から、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の製造・販売と「医療用機械器具の貸与」の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるものといえる。

イ 「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」と「医療用機械器具の貸与」」の用途が一致すること

「医療用機械器具の貸与」は、医療用機械器具を対象としてされるものであり、その用途が一致することは明らかである。

以上から、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」と「医療用機械器具の貸与」の用途が一致するものといえる。

ウ 「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の販売場所と「医療用機械器具の貸与」の提供の場所が一致すること

「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の販売場所は、医療機器の製造販売業の許可を受けた事業所・営業所や、病院・診療所等の医療機関の施設等である。「医療用機械器具の貸与」の提供の場所は、医療機器の貸与業の許可等を受けた事業所・営業所や、病院・診療所等の医療機関の施設等である。

以上から、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の販売場所と「医療用機械器具の貸与」の提供の場所が一致するものといえる。

エ 「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」と「医療用機械器具の貸与」の需要者の範囲が一致すること

「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の需要者は病院・診療所等の医療機関等である。「医療用機械器具の貸与」の需要者も病院・診療所等の医療機関等である。

以上から、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」と「医療用機械器具の貸与」の需要者の範囲が一致するものといえる。

オ 小括

以上のとおり、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」と「医療用機械器具の貸与」については、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であることに加え、商品・役務の用途、商品の販売場所と役務の提供場所、商品と役務の需要者の範囲がそれぞれ一致するものであるから、それらの商品・役務に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造・販売又は役務の提供にかかる商品・役務と誤認される虞があると認められる関係にあるものといえる。

よって、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」と「医療用機械器具の貸与」は類似する。

(4)結語

以上のとおり、本件商標の指定役務中、第44類「医療用機械器具の貸与」は、商標法第4条第1項11号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効である。

第5 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号について(本件指定役務・医療用機械器具の貸与と本件指定商品・医療用機械器具の類否について)

(1)「医療用機械器具の貸与」と「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」は、類似しないこと

「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」は、医院又は病院で専ら使用される機械器具が該当し、診断用機械器具、手術用機械器具、治療用機械器具、病院用機械器具、歯科用機械器具、獣医科用機械器具、医療用の補助器具及び矯正器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)、医療用X線装置などが含まれる。薬機法において「医療機器」とは、「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるものをいう」と定義されており、人体へのリスクの程度により、4つのクラスに分類され、「医療機器を製造又は海外から輸入し、市場出荷する場合は『医療機器製造販売業許可』及び『医療機器製造業登録』が必要となる。また、品目ごとに承認又は認証を取得しなければ、市場に流通させることはできないとされている。(クラスIは届出)」「『医療機器製造販売業許可』を取得した製造販売業者は、製品の出荷・上市を行うほか、医療機器の製品について流通責任を負う者で、第一種~第三種医療機器製造販売業許可制となっている。また、許可を取得するには人的要件のほか、製造管理又は品質管理に係る業務を行う体制の基準に関する省令(QMS体制省令)、製造販売後安全管理の基準に関する省令(GVP省令)に適合することが求められる。製造業者は製造販売業者の委託を受け、医療機器の製造(設計を含む。)をする者で、製造所(製造工程のうち設計、組立て、滅菌、その他の厚生労働省令で定めるものに限る。)ごとに登録を受けなければならないとされている」(乙1)。したがって、医療用機械器具の製造・販売をする者は、医療用機械器具を企画、設計、製造するための製造設備、開発部門、販売部門に加えて所定の許可等を取得するに足りる高度の品質管理体制を有することを必要とする場合が多いといえる。

そうすると、主要な医療機器メーカーと主要な医療機器のリース又はレンタルのサービスを提供する者とが一致するといった事情はなく、むしろ、これらの商品及び役務は異なる企業、事業者によって製造、販売され又は提供されることが一般的であるといえる(乙2~乙6)。

また、医療用機械器具の販売場所において、必ず医療用機械器具の貸与の提供が行われているといった事情もなく、需要者の範囲についても、医療用機械器具の需要者の範囲は、診断用機械器具、手術用機械器具、治療用機械器具、病院用機械器具、歯科用機械器具、獣医科用機械器具、医療用の補助器具及び矯正器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)、医療用X線装置などを使用する医療機関、医者、医療関係者全般であり、極めて広範囲にわたるのに対して、「医療用機械器具の貸与」の需要者は、医療機関、医者、医療関係者のうち、リース方式又はレンタル方式によって得られる主として財政上のメリットがそのデメリットを上回ると判断する需要者であって、医療用機械器具の需要者全体のうちの限られた一部である。よって、これらの商品及び役務の需要者の範囲は一致しない。

また、「医療用機械器具」が人体又は動物の体に直接的物理的な影響を及ぼすものであり、場合によっては生命に関わる可能性もあることからすれば、これらの商品及び役務の取引に当たる需要者、取引者の注意力の程度は極めて高いものである。

以上を踏まえて考察すると、「医療用機械器具の貸与」と「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」とは、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるとはいえず、商品の販売場所と役務の提供場所とが常に一致するということもなく、需要者の範囲も一致しない。してみれば、一方が企業又は個人によって提供される他人のための労務又は便益の提供であるのに対して、他方が有体物として市場に流通し、取引される商品であることから、自ずとそれらの販売又は提供の流通経路、形態が異なることや、これらの商品又は役務の取引に当たって用いられる需要者の注意力の程度が極めて高いことも相まって、これらの商品及び役務に同一又は類似の商標を使用するときに同一営業主の製造又は販売に係る商品ないし同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあるとは認められない。

よって、「医療用機械器具の貸与」と「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」は類似しない。

(2)特許庁類似商品・役務審査基準に照らした検討

以上に述べた被請求人の意見は、特許庁の「類似商品・役務審査基準」において「医療用機械器具の貸与」は類似群コード42X09に分類される役務であるのに対し、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」は類似群コード10D01に分類されるものであり、これらは全く異なる類似群コードに分類される商品と役務として、非類似の関係にあるものと推定されることに照らしてみても首肯できる。そして、かかる推定を覆滅すべき事由は何ら認められないから、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と本件指定商品・医療用機械器具とは類似しない。

2 請求人の主張に対する反論

「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」と「医療用機械器具の貸与」の関係について

(1)「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の製造・販売と「医療用機械器具の貸与」の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるとの主張に対し

ア 甲7の1ないし甲7の3からは、「貸与業」の許可を有している事業者の数は不明であること

請求人は、「医療用機械器具」の製造販売を行う場合は薬機法第23条の2第1項、薬機法施行令第80条第3項第1号における許可が必要であり、「医療機械器具の貸与」の提供を行う場合、薬機法第39条第1項における許可又は薬機法第39条の3第1項における届出が必要であると述べたうえで、商工組合日本医療機器協会のウェブページ(甲5)による検索結果(甲7の1~甲7の3)において抽出された医療用機械器具取扱事業者のうち、医療機器の製造販売業又は販売・貸与業のいずれかの許可等を受けている企業が77社あり、そのうち、製造販売業と販売・貸与業の許可の両方の許可等を受けている企業は53社であり、全体の68.8%であったと主張する等して、「医療用機械器具の製造、販売、貸与を行う企業において、製造販売業と貸与業の両方の許可を受けている企業が多いものといえる」(審判請求書6頁16行目ないし18行目)と主張する。また、実際に医療機械器具の(ア)製造及び販売と(イ)貸与の両方の事業を行っている事業者を2社(甲11及び甲12)挙げ、医療用機械器具の(ア)販売と(イ)貸与の両方の事業を行っている事業者を8社(甲13~甲20)挙げて、「『医療用機械器具(『歩行用補助機・松葉づえ』を除く。)』の製造・販売と『医療用機械器具の貸与』の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるものといえる」と主張する。

しかし、甲7の1ないし甲7の3においては「販売・貸与業」の欄に「要許可」と表示されており、当該会員が許可等を有しているのか、許可等を有しておらず取得することが必要という意味なのかが明らかではない。

この点を一旦措くとして、ここでは前者の意味であると仮定して議論するとしても、薬機法第39条第1項における許可が必要とされるのは、高度管理医療機器等を業として(ア)販売又は(イ)貸与する者であり、薬機法第39条の3における届出が必要とされるのは管理医療機器を業として(ア)販売又は(イ)貸与する者であるところ、甲7の1ないし甲7の3において「販売・貸与業」の欄に「要許可」と表示されていることをもって、各会員企業が「販売・貸与業」の許可の取得等を有しているものと推定したとしても、これらの会員企業が(ア)「販売業」の許可等を有しているのか、(イ)「貸与業」の許可等を有しているのか、それとも(ア)「販売業」と(イ)「貸与業」の両方の許可等を有しているのか、その具体的な内容は、当該資料からは不明である。

よって、甲7の1ないし甲7の3において「貸与業」の許可を有している事業者の数は不明である。

イ 請求人による推認に根拠がないこと

請求人は、東京都の高度管理医療機器等の許可申請書(甲8)において販売業と貸与業の許可の申請が同一の申請書で同時に行うことができること及び本件商標の出願人が販売業と貸与業の両方について許可を受けていることを根拠として、「多くの企業は販売業と貸与業の両方について許可を受けているものと推測される」と主張する。しかし、同一の申請書において販売業と貸与業の両方の申請を同時に行うことができるからといって、これを用いて許可等を申請する事業者が販売業と貸与業の両方を申請することがあり、かつ、そのような事業者が多いとみる理由にはならない。(なお、東京都保健医療局のウェブサイトからダウンロードできる「管理医療機器販売業・貸与業届出書」の記載例(乙11)においては、「販売業」「貸与業」の項目について、「どちらか一方のときは、不要の文字を消してください」とあるから、「販売業」「貸与業」のどちらか一方の業務しか届け出ない事業者の存在が前提になっているものと思われる。)

また、仮に、同一の申請書において販売業と貸与業の両方の申請を同時に行うことができるからという理由で販売業と貸与業の両方を申請する者がいるとしても、そのような事業者が実際に販売業と貸与業の両方の業務を行っており、取引者、需要者において一般的にそのように認識されているかどうかは明らかではない。また、本件商標の出願人が販売業と貸与業の両方の許可を取得しているからといって、医療機器を取り扱う他の事業者の多くが本件商標の出願人と同じように販売業と貸与業の両方の許可を取得していると推認することにも合理的理由はない。

よって、請求人による推認には理由がない。

ウ 請求人が依拠する事業者の数は、医療機器の製造販売許可を有する事業者の3%未満にすぎないこと

請求人の主張の根拠は、甲7の1ないし甲7の3において窺うことのできる商工組合日本医療機器協会に所属する77の事業者に関する情報でしかない。しかるに、一般社団法人日本医療機器産業連合会には20の法人又は団体が正会員となっているところ、商工組合日本医療機器協会はその一員にすぎず、他の19の会員団体に属する事業者における事情は不明である。また、厚生労働省の令和3年版厚生労働白書(資料編)の「保健医療」に関する資料91頁(乙12)によれば、令和2年末現在における医療機器の製造販売業許可数は2,799件であったから、請求人が依拠する事業者の数(77社)はそのうちの約2.75%に過ぎない。そのようなわずかな割合の事業者に関する資料をもって、医療用機械器具を取り扱う事業者全般における一般的傾向が明らかになるとは到底いえない。

また、実際に医療機械器具の(ア)製造及び販売と(イ)貸与の両方の事業を行っている事業者が2社(甲11及び甲12)存在するとしても、医療用機械器具の製造販売許可を取得している2,799社の事業者において、両事業を行うことが一般的であるとはいえないことはいうまでもない。

請求人は医療用機械器具の(ア)販売と(イ)貸与の両方の事業を行っている事業者が8社(甲13~甲19)存在すると主張する。しかし、これらの企業のウェブサイトにおける「事業内容」等の記載には医療機械器具の製造をしていることは記載されておらず、これらの企業が医療用機械器具の製造を行っているかは不明であり、請求人がこれらの事業者を、甲11及び甲12の事業者とは別に論じていることからしても、これらの8社においては、自ら医療用機械器具を製造する行為は行っていないものと思われる。

そうすると、これらの事業者が使用する商標(乙13)に接した取引者、需要者は、これを「医療用機械器具」の出所表示としては認識せず、あくまでも医療用機械器具の小売・卸売の役務ないし貸与という役務の提供者の出所表示として認識し、これらの事業者において販売又は貸与されている個別の商品の出所表示(乙13)とは別のものと認識するとみるのが自然である。

したがって、医療用機械器具の販売と貸与の両方を行っている事業者が8社存在するからといって、商品としての「医療用機械器具」と、役務としての「医療用機械器具の貸与」とが、同一の事業者によって製造・販売され、同時に貸与もされているのが一般的であるとする理由にはならない。

エ 小括

以上の次第で、請求人の主張及び証拠によっては、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の製造・販売と「医療用機械器具の貸与」の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるということはできない。

(2)「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の製造・販売と「医療用機械器具の貸与」の用途が一致するとの主張に対し

請求人は、「医療用機械器具の貸与」は医療用機械器具を対象としてされるものであるから、その用途が一致することは明らかであると主張するが、誤りである。すなわち、そもそも「用途」とは「使用の道。使いみち。用いどころ。」を意味する(広辞苑第7版)ところ、役務(医療用機械器具の貸与)についての「用途」とは何を意味しているのかが全く不明であって、請求人の主張は全くの失当である。

(3)「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の販売場所と「医療用機械器具の貸与」の提供の場所が一致するとの主張に対し

請求人は、何の根拠も示すことなく、「医療用機械器具」の販売場所は医療機器の製造販売業の許可を受けた事業所・営業所や、病院・診療所等の医療機関の施設等であり、「医療用機械器具の貸与」の提供の場所は、医療機器の貸与業の許可等を受けた事業所・営業所や、病院・診療所等の医療機関の施設等であると主張する。しかし、病院・診療所等の医療機関の施設において医療用機械器具が「使用」されることが一般的であるとしても、医療機関施設において医療用機械器具(すなわち、診断用機械器具、手術用機械器具、治療用機械器具、病院用機械器具、歯科用機械器具、獣医科用機械器具、医療用の補助器具及び矯正器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)、医療用X線装置など)が「販売又は貸与」されることが一般的であるとは思われない。よってこの点に関する請求人の主張は失当である。

よって、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の販売場所と「医療用機械器具の貸与」の提供の場所が一致するとはいえない。

(4)「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の需要者と「医療用機械器具の貸与」の需要者の範囲が一致するとの主張に対し

請求人は、「医療用機械器具(「歩行補助器・松葉づえ」を除く。)」の需要者と「医療用機械器具の貸与」の需要者はいずれも病院・診療所等の医療機関等であり、需要者の範囲が一致すると主張する。しかし、「医療用機械器具の貸与」の需要者は、病院・診療所等の医療機関等のうち、リース方式又はレンタル方式によって得られる主として財政上のメリットがそのデメリットを上回ると判断する需要者であって、医療用機械器具の需要者全体のうちの一部に過ぎない。よって、これらの商品及び役務の需要者の範囲は一致しない。

3 結語

以上のとおり、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と本件指定商品・医療用機械器具は類似しない。

したがって、仮に本件商標と引用商標とが同一であるとしても、その商品及び役務が類似しないから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。

第6 当審の判断

1 利害関係について

請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。

2 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標と引用商標の類否について

本件商標は、「AWG治療」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して、「エイダブリュウジイチリョー」の称呼を生じ、また、当該文字は、辞書等に載録がないものであって、かつ、特定の意味を有しない一種の造語と認識されるものであるから、特定の観念を生じないものである。

他方、引用商標は、本件商標と同様に、「AWG治療」の文字を標準文字で表してなり、「エイダブリュウジイチリョー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

そうすると、本件商標と引用商標とは、外観上、同一のものであり、また、「エイダブリュウジイチリョー」の称呼を共通にすることから、これらは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼を共通にするものであるから、両者は、相紛れるおそれのある同一又は類似の商標である。

(2)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との類否について

ア 商標の類否の判断方法

商標法第4条第1項第11号所定の商品役務の類否は、それらの商品・役務に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一の営業主体の製造・販売又は提供する商品・役務と取引者・需要者に誤認されるおそれがあると認められる関係にあるか否かにより判断すべきである(最高裁昭和36年6月27日第三小法 廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。具体的には、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われている実情の有無・程度、商品と役務の用途の共通性、商品の販売場所と役務の提供場所の同一性、商品と役務の需要者の重なり具合等を総合的に考慮し判断するのが相当である。

イ 本件指定役務・医療用機械器具の貸与と本件指定商品・医療用機械器具との関係について

(ア)事業者について

a 証拠(甲10~甲19、甲38、甲40~甲43、乙13)によれば、株式会社アジアス、株式会社日本メディックス、フクダ電子株式会社、アイ・エム・アイ株式会社、株式会社三笑堂、さくらメディカル株式会社、株式会社セントラルメディカル、ジーエムメディカル株式会社、株式会社ナンブ、中嶋メディカルサプライ株式会社、コニカミノルタ株式会社、株式会社アールエフ、オムロンヘルスケアサービス株式会社、三井温熱株式会社、伊藤超短波株式会社といった多数の医療機器メーカー等について、製造・販売と貸与(レンタル・リース)の両方の事業を行っていることが認められる。

また、キヤノンメディカルシステムズ株式会社(製造・販売)とキヤノンメディカルファイナンス株式会社(リース)(甲36)、パラマウントベッド株式会社(製造・販売)とパラマウントケアサービス株式会 社(レンタル)(甲39)についても、同一のハウスマークを用いて営業を行う系列会社であること、これらの需要者は、そうした系列会社間の法人格の異同にさほど関心を持たないと考えられる一般の需要者が含まれていること(後記(4)参照)等の事情を考慮すると、「商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われている場合」に準ずるものということができる。

b 次に、証拠(甲5~甲7)によれば、医療用機械器具の製造、販売、貸与等を行う企業を会員とする団体である商工組合日本医療機器協会においては、医療機器の製造販売業又は販売・貸与業の許可等を受けている企業が77社あり、そのうち、製造販売業と販売・貸与業の両方の許可等を受けている企業は53社(68.8%)あることも認められ、約3分の2の割合という多数の製造・販売業を行う事業者が、貸与業も行うことができる状況にあるといえる。

この点、乙12によれば、令和2年度末における医療機器の製造販売業許可数が2799件となっていることが認められるが、上記協会に加入している企業のうちの対象企業数77社が、サンプルサイズとして小さすぎるとまではいえない。そして、商工組合日本医療機器協会の会員か非会員かの違いが、販売・貸与業の許可等取得割合に実質的な違いを生じさせているといった事情もうかがわれない。そうすると、比較対象たる企業集団の母数の違いのみから、上記の傾向、すなわち、医療機器の製造・販売業を行う事業者の多数が貸与業についても許可等を受けているとの事実を否定することはできない。

加えて、証拠(甲8、乙11)によれば、東京都が用いている「高度管理医療機器等販売業/貸与業許可申請」(様式第87)、「管理医療機器販売業/貸与業届出」(様式第88)の書式では、「販売業」と 「貸与業」の許可申請・届出を1通の書類で行う様式がデフォルトとなっており、販売業と貸与業の「どちらか一方の時は、不要の文字を消してください」という記載例の注意書きが示されていることが認められる。これは、医療機器の販売業と貸与業の双方の許可申請・届出を行う例が現実に多い実情を示すものと理解できる。

c また、被請求人は、国内の主要な医療用機械器具メーカー(乙2)と、主要な医療用機械器具のリースサービスを提供する事業者(乙4、乙5) 又はレンタルサービスを提供する事業者(乙6)が一致していない点を指摘し、同一事業者が機械器具の製造・販売と機械器具の貸与を行うことは一般的でないと主張する。

しかし、業界における主要な事業者とは、企業の経済活動の規模(売上等)や商品・サービスの内容から様々な基準によって選出されるにすぎず、仮にある事業者が製造販売業と貸与業の両者の業務を行っているとしても、企業の経営戦略等によってどちらに重きを置くのかは当然異なり得るのであるから、製造販売業における主要企業と貸与業における主要企業が一致していないからといって、このことから直ちに両者を同時に行う事業者が少ないとまで断言できない。

(イ)用途について

医療用機械器具の貸与は、他人の求めに応じて当該機械器具を貸与することであるところ(乙3)、貸与という行為は、単に貸渡し行為をすることのみならず、需要者に当該機械器具を使用させることを当然に予定するものである(民法第601条参照)。よって、その貸与の用途は、医療用機械器具の医療目的での使用ということができ、本件指定商品・医療用機械器具の用途と共通するといえる。

(ウ)提供場所・販売場所について

上記のとおり、多数の医療用機械器具の製造・販売を行う事業者が同時に貸与も行っている取引の実情があることや、各事業者は、ホームページを設けて申込みや問合せを受け付けており、その際には販売と貸与を共に説明していること(甲54~甲57)に鑑みると、医療用機械器具の販売場所と貸与の提供場所は、いずれも当該企業の営業所所在地やインターネット上のホームページ(同一のサイト)等であると認められる。そうすると、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と、本件指定商品・医療用機械器具については、提供場所・販売場所が同じである場合が多いということができる。

(エ)需要者の範囲について

本件指定商品・医療用機械器具は、医療機関で用いられるものに限らず、一般家庭内で健康状況に応じて使用されるものも含まれること、その需要者には、医療機関のみならず、一般の需要者等が含まれることについては、いずれも当事者間に争いがない。そして、証拠(甲34、甲39、甲42、甲43)によれば、本件指定役務・医療用機械器具の貸与においても、広く一般の需要者(消費者)が想定されている場合があることが認められるから、両者の需要者は実質的に重なるといえる。

これに対し、被請求人は、医療用機械器具の貸与の対象となるものは、専ら高額な機械器具であり、その需要者は事業者、すなわち医療機関に限られると主張する。確かに、貸与の対象となる医療用機械器具は、販売の対象となる医療用機械器具よりも相対的に高額なものが多いであろうことは想像に難くなく、それに伴う需要者の範囲の相対的な違いはあり得るとしても、医療用ベッドや家庭用治療器、リハビリテーション機器等のレンタルサービスを 一般需要者向けの広告で扱っている事例が実際にあることは紛れもない事実である(甲39、甲42、甲43)。本件指定役務・医療用機械器具の貸与の需要者が「医療機関に限られる」という被請求人の主張は、証拠に基づかない極論といわざるを得ない。

結局、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と本件指定商品・医療用機械器具の需要者の範囲は、相対的な違いはあれ、医療機関と一般の需要者等を含む点で実質的には重なっているというべきである。

(オ)小括

以上によれば、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と、本件指定商品・医療用機械器具の製造・販売とは、同一事業者によって行われている例が多数みられ、これらの用途は共通し、販売場所と提供場所は同一である場合が多く、需要者の範囲は実質的に重なっているということができる。このような取引の実情を踏まえると、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と本件指定商品・医療用機械器具に同一の構成の商標(「AWG治療」)を使用する場合には、同一の営業主体の製造・販売又は提供する商品・役務と取引者・需要者に誤認されるおそれがあるというべきである。

なお、本件指定商品・医療用機械器具は、「歩行補助器・松葉づえ」を除くものとされており、このような除外のない本件指定役務・医療用機械器具の貸与と異なっているが、この違いが商品・役務の類否に影響を及ぼすとはいえない。

したがって、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と、本件指定商品・医療用機械器具は、類似する商品・役務であると認められる。

3 結論

以上のとおり、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標であって、本件指定商品・医療用機械器具と類似する本件指定役務・医療用機械器具の貸与について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものであって、その登録は、同号の規定に違反してされたものである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、その指定役務中、第44類「医療用機械器具の貸与」については、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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