結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024000075 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、令和2年10月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 8月24日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 2月28日 :意見書の提出
令和 5年 4月27日 :上申書の提出
令和 5年 9月25日付け:拒絶査定
令和 6年 1月 4日 :審判請求書の提出
令和 6年12月20日 :上申書の提出
本願商標は、別掲のとおりの立体形状よりなり、第30類「チョコレート菓子」を指定商品として登録出願されたものである。
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、商品の形状は、多くの場合、商品の機能をより効果的に発揮させたり、商品の形状の持つ美観を追求する等の目的で採用されるものであり、自他商品・役務を識別することを目的とすることは少ないものといえる。
そして、本願の指定商品の業界においても、様々な形状の「菓子」が製造・販売されている実情を踏まえると、本願商標は、「菓子」の機能又は美観を発揮させるための商品の一形態を表示するにすぎず、同種商品が一般的に採用し得る範囲内にとどまるものと判断するのが相当である。
そうすると、本願商標を、その指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者は、単に商品の形状を表したものと認識するにすぎないといえるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本願商標が本願の指定商品の一般の需要者において、自他商品の識別標識として認識されているとは認めることはできないから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない。
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 立体商標における商品の形状について商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項、同法第5条第2項参照)。
しかしながら、以下の理由により、立体商標における商品等の形状は、通常、自他商品の識別機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。
(ア)商品の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美観をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品の製造者、供給者の観点からすれば、商品の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品の機能又は美観に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
(イ)また、商品の具体的形状は、商品の機能又は美観に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品について、機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品の機能又は美観に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品の機能又は美観に資することを目的とする形状は、同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
(ウ)さらに、商品に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として、商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に、商品の機能の観点からは発明ないし考案として、商品の美観の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる。
(以上、知的財産高等裁判所、平成18年(行ケ)第10555号 同19年6月27日判決、平成19年(行ケ)第10215号 同20年5月29日判決及び平成22年(行ケ)第10253号 同23年6月29日判決参照。)
イ 本願商標は、別掲のとおり、台座上に金の延べ棒のような2つの四角錐台を連結した立体的形状からなるものであり、陰影があるものの全体的に茶色である。
そして、原審提示の情報にあるように、本願の指定商品である「チョコレート菓子」の取引業界においては、様々な形状の商品が製造・販売されている実情があり、2つの(金の延べ棒のような)四角錐台を連結した立体的形状のチョコレート菓子や、複数の(金の延べ棒のような)四角錐体を連結した立体的形状のチョコレート菓子など、本願商標の立体的形状が有する特徴と同様の特徴を備えるものが製造・販売されている実情も確認できるものである。
以上の状況を踏まえて、本願商標に係る立体的形状を考察すると、本願商標に係る立体的形状は、その指定商品である「チョコレート菓子」に採用しうる形状の一形態を表したものと容易に認識されるものであり、これに接する取引者、需要者が、その商品の機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであるというべきであって、商品の機能又は美観に資することを目的とするために採用されたものといえる。
そうすると、本願商標をその指定商品「チョコレート菓子」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品に採用し得る形状の一形態を表したものとして理解するにとどまり、自他商品を識別するための標識としては認識し得ないものと判断するのが相当であるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、本願商標は、永年にわたり使用されてきた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至っている旨主張し、証拠方法として、原審において資料6ないし資料63(枝番号を含む。)、当審において甲第8号証ないし甲第23号証を提出している。
以下、請求人の主張及び同人が提出した上記証拠を参照し、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて検討する。
ア 商標法第3条第2項
商標法第3条第1項第3号から第5号に該当する商標について、同条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」に至ったか否かを判断するに当たっては、当該商標と外観において同一と見られる標章が指定商品又は指定役務とされる商品又は役務に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品又は役務の販売数量又は売上高等及び当該商品又は役務やこれに類似した商品又は役務における当該商標又は標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合的に考慮すべきものといえる(知的財産高等裁判所 平成27年(行ケ)10019号 同年10月29日判決言渡参照)。
イ 事実認定
上記アの観点に照らし、本願商標が商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて判断する。請求人の主張の全趣旨及び同人が提出した各証拠によれば、次のとおりである。
なお、証拠の記載にあたっては、「資料○」を「資○」及び「甲第〇号証」を「甲○」(枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)と表記する場合がある。
(ア)商標の使用態様、使用開始時期及び使用期間
本願商標は、上記(1)イにおいて述べたとおりの構成からなるものであって、「チョコレート菓子」の形状として使用されるものであるところ、本願商標の立体的形状と同一視し得るとされる標章(以下「使用標章」という。)は、「KitKat(キットカット)」と称するチョコレート菓子(以下「キットカット商品」という。)の形状として、2011年以降に使用されているものである。
キットカット商品は、我が国では1973年に販売開始され、その形状は、発売当時は細長い棒状のチョコレートが4本連なった「4フィンガー」と呼ばれており、2002年には、細長い棒状のチョコレートが2本連結した「2フィンガー」を2個入りにした商品にリニューアルされ、その後、2011年よりミニサイズの「2フィンガー」の形状として、使用標章が使用されている(資11、資15、請求人の主張)。
2022年2月時点において、我が国において販売されているキットカット商品58種類のうち、45種類に使用標章が使用されており、使用標章以外には、球状のもの、1本の細長い棒状の商品が確認できる(資18)。また、2023年に、使用標章を使用した新商品が2種類発売されている(甲18、甲20、請求人の主張)。
(イ)商品の販売実績
株式会社富士経済発行の「食品マーケティング便覧」によると、キットカット商品の2015年ないし2019年の年間販売額は約250億円ないし約270億円で、チョコレート菓子のシェアは第1位(約17%)であった(資25)。
(ウ)広告宣伝の実績
使用標章をキットカット商品に使用開始した2011年以降の広告宣伝活動については、2012年(資27、甲10)、2013年(資28、資31、甲11)、2023年(甲12、甲13)にテレビコマーシャルの放映を行い、請求人ウェブサイト(資33)や請求人のSNS公式アカウント(資34、甲21)において広告を発信した。また、キットカット商品の形状を生かした景品によるキャンペーンを実施しており、2015年に「キットカット型金塊」(資35)、2018年に「キットカット型イヤホン」(資36、資37)、2017年にキットカット商品を寿司のネタに見立てた菓子「寿司キットカット」(資43)がプレゼントされた。さらに、2023年に、焼き肉キング、串カツ田中、サーティワンアイスクリーム等の外食産業の企業とのコラボレーションにより、キットカット商品をそのまま使用したアレンジメニューを提供するキャンペーンを実施した(甲14~甲17)。
そして、キットカット商品は、2003年から受験生応援キャンペーンを開始し、近年は、大切な人に応援や感謝の気持ちを伝えるコミュニケーションツールとしても親しまれている(資10、請求人の主張)。
(エ)本願商標に対する需要者の認識度
a インターネット上の記事
チョコレートバーの菓子型を使用して作った、2本の棒状のチョコレートが連結した菓子が「キットカット風」等として(資46~資49)、また、過去に2社から販売されていた2本の棒状のチョコレートが連結した菓子が、「キットカット風」、「キットカットの類似商品」等と(資50、資51、資53)紹介されている。
b アンケート調査
請求人は、2024年5月、株式会社インテージを通じて、本願商標の周知性に関するアンケート調査を実施した(甲22)。これは、2020年3月に実施したアンケート調査(資45)についての、原審における指摘を考慮して実施された2回目のアンケート調査であり、アンケート対象地域を全国とし、食品製造業界やマスコミ・広告・新聞・放送業及び調査業界の勤務者を除く15歳から99歳の男女計1,080人に対し、インターネット上で実施されたものである。
調査対象者は2つのグループに分けられ、まず、一方のグループ(対象者グループ1)には本願商標の画像を提示した上で、「この画像を見たことがありますか」(問3)という設問に「はい」と回答した83.0%の対象者に対し、「この商品名をご存じですか。商品名をお答えください」(問4)として、その画像から想起された商品名を自由回答させる形式で行った。その結果、87.9%の回答者(対象者の72.9%に相当)が「キットカット」「KitKat」などの請求人の商品を想起した回答をした。次に、問5として、近年、請求人の商品パッケージに表示されている、チョコレート菓子1本が割られて断面が見える画像(以下「2つ折り画像」という。)を示し、これと本願商標とを見比べさせた上で「この商品は同じ商品だと思いますか」という質問をした結果、89.6%の回答者(対象者の74.4%に相当)が両画像を「同じ商品だと思う」と回答した。
また、もう一方のグループ(対象者グループ2)に対しては、まず「2つ折り画像」を示した上で、対象者グループ1と同じように「この画像を見たことがありますか」(問3)という設問に「はい」と回答した81.5%の対象者に対し、「この商品名をご存じですか。商品名をお答えください」(問4)の質問を行った結果、89.7%の回答者(対象者の73.0%に相当)が「キットカット」「KitKat」などと請求人商品を想起した回答をした。さらに、立体商標の画像を提示した上で、「この商品は同じ商品だと思いますか」(問5)の質問を行ったところ、82.8%の回答者(対象者の67.4%に相当)が「はい」と回答した。
ウ 判断
上記イのとおり、キットカット商品は、我が国において1973年に発売され、本願商標と同様のミニサイズの「2フィンガー」とされる形状のものは2011年から発売されている。そして、キットカット商品の2015年ないし2019年のチョコレート菓子におけるシェアは第1位である。
また、テレビコマーシャルの放映、請求人ウェブサイトや請求人SNS公式アカウントにおける広告、商品形状を生かした景品によるキャンペーン、外食産業の企業とのコラボレーション等、様々な広告宣伝活動が行われており、受験生応援キャンペーンが実施され、近年では、大切な人に応援や感謝の気持ちを伝えるコミュニケーションツールとして親しまれていることがうかがわれること等から、キットカット商品は、今日において、請求人の業務に係るチョコレート菓子として、我が国の需要者の間に広く知られていることが認められる。
しかしながら、請求人がキットカット商品に使用する標章は、使用標章であるミニサイズの「2フィンガー」とされる形状のもの以外にも、球状のもの、一本の細長い棒状のもの等も確認でき、必ずしも使用標章のみがキットカット商品の形状として認識されているとはいえない。
また、キットカット商品それ自体は、主に個包装され、包装箱又は包装袋に詰められ陳列、販売されているところ、係る販売方法からすれば、キットカット商品の立体的形状が、商品を識別するための標識として需要者の目に付く方法で使用されているとはいえないから、使用標章が自他商品の識別標識として機能しているともいいがたい。
さらに、キットカット商品の包装に、使用標章と同一の形状を表した標章が表示されているものは、2022年及び2023年に販売が確認できる60種類のキットカット商品のうち、わずか2種類のみであり、それ以外の包装には、使用標章を表したとはいい難いチョコレート菓子が割られて断面が見える画像からなる標章等が表示されている。
加えて、2011年以降のキットカット商品の宣伝広告をみるに、請求人ウェブサイトや請求人のSNS公式アカウントにおける広告では、使用標章であるミニサイズの「2フィンガー」とされる形状の商品を確認できるものの、当該形状の上面の多くには「KitKat」の文字が付されており、この点からも本願商標の立体的形状のみで使用されているともいえず、その宣伝広告の規模も大きいものとは認められない。また、テレビコマーシャルの放映では、キットカット商品の立体的形状は、包装で一部が覆われているものや、文字で一部が隠されているものなどが表示されており、本願商標の立体的形状を明瞭に確認できるものではなく、宣伝広告状況からも、本願商標に係る立体的形状それ自体が需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものであるともいえない。
そうすると、仮に、上記イ(エ)のとおりのインターネット記事における紹介や、アンケート調査結果のように、本願商標の立体的形状からキットカット商品が想起される場合があるとしても、一般の需要者がキットカット商品の購入時に、本願商標の立体的形状自体から商品の識別しているものとは認められず、本願商標は、その指定商品について使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとなったとはいえないと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)請求人の主張について
請求人は、長年にわたり商品コンセプトや立体的形状の基本的な特徴を変更することなくキットカット商品を販売しており、需要者はキットカット商品を食べるときにその特徴的な形状を必ず目にするため、その特徴的な形状は強く記憶に残る。そしてこのような需要者の体験及び記憶と、長年にわたる広告宣伝活動により、本願商標にかかる立体的形状は広く認知されるに至っており、当審において提出されたアンケート結果はそれを裏付けるものであることから、本願商標の立体的形状は使用による識別性を獲得している旨主張する。
しかしながら、キットカット商品が、長年にわたる製品の宣伝等の結果、広く需要者に認識されているものだとしても、当該商品の宣伝においてのみならず、商品が販売されている際の包装の状況からも、本願商標の立体的形状が、自他商品を識別する標識として強く印象づけられる態様で表示されているものではなく、たとえ、アンケート結果から本願商標の立体的形状からキットカット商品を想起する需要者が多く確認できるとしても、需要者は、本願商標の立体的形状自体により商品選択を行っているものとは認められず、本願商標は、出所識別標識としての特徴として認識、把握されているものとは認められない。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、また、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものともいえないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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