結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024890009 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6320075号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和元年12月24日に登録出願、第18類「擬革,バッグ,革製のかばん及び財布,革製の小銭入れ,革製又は擬革製のキーケース,革製及び人工皮革製のバッグ,ランドセル,ハンドバッグ,財布,札入れ,ヒップバッグ,革及び擬革,傘,日傘及びつえ,皮革製包装用容器,携帯電話機収納付き財布,かばん金具,がま口口金,皮革,革ひも,原革,原皮,なめし革,毛皮,かばん類,袋物,手提げかばん,カード入れ,キーケース,巾着,買物袋,革製旅行用具入れ,クレジットカード入れ(財布),バックパック,旅行かばん,携帯用化粧道具入れ,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具」を指定商品として、同2年10月14日に登録査定され、同年11月24日に設定登録されたものである。
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、引用する商標は、以下の1ないし3のとおりであり、いずれも、請求人の製造・販売するかばん等の出所を表示するものとして、我が国の需要者及び取引者に広く知られていると主張する商標である。
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品:第14類、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品(別掲3参照)
国際商標登録出願日:2001年(平成13年)12月12日
優先権主張日:2001年(平成13年)10月26日(Italy)
設定登録日:2003年(平成15年)1月31日
商標の態様:別掲4のとおり
指定商品:第3類、第9類、第14類、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品(別掲5参照)
国際商標登録出願日:2008年(平成20年)4月28日
設定登録日:2010年(平成22年)2月5日
商標の態様:別掲6のとおり
指定商品:第3類及び第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品(別掲7参照)
国際商標登録出願日:2005年(平成17年)11月23日
優先権主張日:2005年(平成17年)6月21日(Italy)
設定登録日:2007年(平成19年)7月27日
以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめて「引用商標」という場合がある。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び令和6年6月10日付け答弁書に対する、同7年3月27日付け及び同年4月8日付け上申書(以下、両上申書をあわせて「請求人上申書」という。)及び同年6月23日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
なお、証拠の記載にあたっては、以下、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する場合がある。
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第46条第1項第1号によって無効とされるべきである。
(1)利害関係について
請求人は、引用商標を使用したかばん、財布、衣料品等(以下「かばん等」という。)の製造・販売している。
後に詳述するように、引用商標は、本件商標の出願日(令和元年12月24日)前から、請求人の製造・販売するかばん等の出所を表示するものとして、かばん等の需要者及び取引者に広く知られるに至っている。
よって、請求人は、引用商標と類似する本件商標を無効にすることにつき、重大な利害関係を有する。
(2)引用商標の周知著名性について
ア 請求人について
請求人は、1991年にイタリアのミラノで設立され、設立以来、象徴的な「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」からなる引用商標を特徴とするかばん等を製造・販売してきた(甲5)。
引用商標は、古代地図の巻物を再現するように職人技で描かれ、彩色されており(甲5)、「ジオ・マップ」なる愛称で、世界中で人気を博している(甲6)。
また、請求人のブランドであるプリマクラッセ(1A CLASSE)は、かばんをはじめとするトータルブランドであり、上記「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」を特徴とすることで知られている(甲15、甲22、甲24、甲26の1、甲26の2)。
実際に、「地図柄ブランド」でインターネット検索をすると、検出される画像のほとんどがプリマクラッセの製品である(甲7)。
イ 請求人による引用商標の使用
請求人は、請求人が製造・販売するかばん等に引用商標を使用して、世界中で販売している(甲8~甲11)。
甲第12号証は、東京でのポップアップストアの様子を写した写真であり、請求人の名称「ALVIERO MARTINI」(アルヴィエロ・マルティニ)及び請求人のブランド名「1A CLASSE」の下で、「古代の地図の巻物の如き世界地因柄」を特徴とする引用商標を使用したかばん等(以下「請求人商品」という。)が陳列されていることが分かる。
ウ 請求人商品の我が国での販売
請求人商品は、請求人の公式オンラインストアで、日本円で販売されている(甲13)。
甲第14号証は、2015年~2022年3月までに公式オンラインストアを通じて販売された請求人商品に係る日本向けのインボイス及び販売された商品見本の写真であるところ、請求人商品が継続して我が国において販売されていることが分かる。
そのほか、数多くのECサイトでも請求人商品が取り扱われている(甲15~甲21)。
2008年秋に、全国各地の百貨店における2週間のフェアで、請求人商品が販売され(甲22)、2009年8月には、東武百貨店池袋店に請求人の常設店舗がオープンした(甲23)。
また、2018年には、かばんや財布等を企画・製造及び卸売する株式会社オフィスイチロクヨンが請求人の日本での正規代理店となった(甲24、甲25)。
エ 新聞・雑誌への掲載
請求人商品及び請求人のブランド名であるプリマクラッセは、これまで多数の新聞や雑誌等で紹介されている(甲26、甲27)。
これらの各メディアにおける掲載を通じて、引用商標の名声は、広く我が国の需要者及び取引者に伝播したことが推測される。
オ 請求人商品の売上高
甲第28号証は、請求人のCFO兼取締役であるマウロ・ロンキ氏による宣誓書である。同宣誓書によれば、過去5年間の請求人の皮革製品の売上高は、イタリアで約8542万ユーロ、日本で約53万ユーロ、その他の国で約997万ユーロであり、合計で約9593万ユーロにも上る。
カ 外国での引用商標の使用
請求人の店舗は、イタリアに16店舗、その他の国に30店舗にも及び、世界中で人気を博していることが分かる(甲29、甲30)。
また、2016年には、世界4大コレクションの一つで、レディースファッションに大きな影響を与えているミラノ・コレクション(甲31、甲32)において請求人商品が出展され(甲33)、多数の新聞や雑誌等でその様子及び請求人商品が紹介された(甲34)。
さらに、世界的に有名なファッションモデルや俳優、歌手等の著名人の多くも請求人商品を愛用しており(甲35)、彼らの使用によって、引用商標の名声が世界中の需要者及び取引者に伝播していることが推測される。
キ テレビ番組のスポンサー
請求人は、イタリアのテレビの旅番組のメインスポンサーであり、同番組では、出演者が請求人商品を身に着けて各国を旅している(甲36~甲38)。
同番組は、イタリアの人気長寿番組で、女性たちが旅をするドキュメンタリー番組であり(甲38、甲47)、1989年から現在まで続いていることが分かる(甲41、甲47)。
上記番組が放送されているチャンネル「Rai 2」は、イタリアを含め30か国で放送されており(甲39)、2018年~2023年1月の視聴率は、約2~5%の間で推移していることが分かる(甲40)。
請求人は、1999年から同番組のメインスポンサーを務めており、番組中のかばん、衣類、履物、水着、旅行用品、アクセサリー等は請求人がデザイン・製造しているものであって、これらの製品には引用商標が使用されている(甲41~甲43)。
これらの製品は、公式オンラインストアで販売されており、視聴者も同じものを購入することができる(甲44)。
2019年には日本を舞台にした回が放送され(甲43、甲45~甲47)、2023年10月には再度日本での撮影が行われた(甲48)。
また、2019年には、第76回ヴェネツィア国際映画祭に参加し、請求人商品を身に着けた出演者が多くのメディア取材を受けた(甲49)。
同番組で旅をする女性は、応募者から選考によって選ばれるところ、相当数の応募者がいたことが分かり、このことから、同番組の人気の高さと、視聴者の出演者への憧れの強さが推察される。そして、そのような番組において出演者が常に請求人商品を身に着けていることにより、引用商標の名声が一層高められていることが推測される。
ク 小括
以上のことから、引用商標は、請求人の業務に係るかばん等の商標として、遅くとも本件商標の出願日である令和元年12月24日には、我が国を含む世界各国における関連する需要者及び取引者の間で周知著名に至っていたというべきであり、その周知・著名性は、現在に至るまで維持されている。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標と引用商標の類否
本件商標は、水平方向を長手方向とする水色の長方形の枠内に、世界地図を古代地図風に表したものである。
他方、引用商標1及び引用商標2は、水平方向を長手方向とする肌色ないし黄色の長方形の枠内に、世界地図を古代地図風に表したものである。
引用商標3は、欧文字「GEOBLACK」の文字要素と、水平方向を長手方向とする無彩色の長方形の枠内に、世界地図を古代地図風に表したものである。
本件商標と引用商標とは、いずれも長方形の枠内に古代地図風の世界地図を表した基本的な構成態様で一致する。
具体的な構成態様に目を向けたとき、色彩の相違や、引用商標は、東経0度ないしアメリカ大陸中心に描かれているのに対して、本件商標が我が国(東経135度)中心である、引用商標の上下がやや見切れている、といった相違はあるものの、基本的な構成態様の一致に加えて、以下の点から、酷似した印象を与えるものである。
(ア)各大陸、島々の形状、描写が酷似している。
(イ)共に、国、地域を区切る境界線が、国境に向かって次第に濃くなるようにぼかしが入っている。
(ウ)共に、国毎に濃淡差があるが、比較的濃い色で表示されている国が、とりわけ引用商標2とほぼ共通している(ロシア連邦、アメリカ合衆国、ブラジル、オーストラリア、ノルウェー、インドネシアなど)。
すなわち、本件商標の構成は、引用商標への依拠なしに偶然に生み出されたものとはおよそいい難い共通項があり、それが外観上酷似した印象を与えるものである。
この基本的な構成態様の共通と、具体的な構成態様の一致点を総合的に判断したとき、左右に並べて詳細に直接対比すれば細かな相違に気付かされるものの、各相違点は、需要者及び取引者において、記憶に鮮明に残るレベルのものではなく、とりわけ、時と場所を異にした、いわゆる離隔観察による場合、両商標の出所を混同するおそれは十分にあるというべきである。
さらに、本件商標に係る指定商品(かばん等)は主に一般消費者の需要するものであって、注意力の低い需要者もこれに含まれることを考慮すれば、単に「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」といった観念の共通をもって即席に出所が認識される可能性も否定できず、この場合、なおさら出所の混同を生ずる可能性が懸念されるのである。
よって、両商標は、外観上相紛らわしく、互いに類似する商標というべきである。
イ 本件商標と引用商標の商品の類否
本件商標の指定商品中、第18類「バッグ,革製のかばん及び財布,革製の小銭入れ,革製又は擬革製のキーケース,革製及び人工皮革製のバッグ,ランドセル,ハンドバッグ,財布,札入れ,ヒップバッグ,傘,日傘及びつえ,皮革製包装用容器,携帯電話機収納付き財布,皮革,革ひも,かばん類,袋物,手提げかばん,カード入れ,キーケース,巾着,買物袋,革製旅行用具入れ,クレジットカード入れ(財布),バックパック,旅行かばん,携帯用化粧道具入れ,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具」は、いずれも、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品である。
また、本件商標の指定商品中、第18類「擬革,革及び擬革,原革,原皮,なめし革,毛皮」は、いずれも、引用商標3の指定商品と同一又は類似する商品である。
ウ 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標であり、かつ、同一又は類似の商品を指定するものである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性
ア 本件商標と引用商標との類似性の程度
上記(3)アにて述べたように、本件商標と引用商標とは類似し、その類似度は比較的高いといえる。
イ 引用商標の周知度
上記(2)にて述べたとおり、引用商標は請求人の業務に係るかばん等を表す商標として、遅くとも本件商標の出願日の時点には、我が国における関連する需要者及び取引者の間で周知・著名性を獲得しており、その周知・著名性は今日に至るまで維持されている。
ウ 引用商標が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するか、ないしハウスマークであるか
上記(2)アにて述べたとおり、引用商標は、古代の地図の巻物を再現するように職人技で描かれ、彩色されており、構成上顕著な特徴を有する。
また、引用商標は、厳密にはハウスマークとはいえないとしても、上記(2)イにて述べたとおり、請求人のブランドは引用商標である「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」を特徴とすることで知られており、請求人の代表的な出所識別標識、いわば請求人商品の「顔」として長年にわたり使用されているものである。
エ 商品・役務間の関連性ないし商品等の需要者の共通性その他取引の実情について
上記(3)イにて述べたように、本件商標に係る指定商品はいずれも、引用商標の使用されている請求人商品(かばん等)との関係で、同一又は類似、あるいは共に革製品である点で一定以上の関連性を有するものである。
オ 小括
以上のように、(ア)本件商標は、引用商標との間で高い類似度を有し、(イ)引用商標は、請求人の業務に係る商品を示すものとして、関連する需要者及び取引者の間で、広く知られており、(ウ)引用商標は、請求人により独自に採択された、ありふれて採択されていない独特な創造商標であり、かつ、請求人の代表的出所識別標識であり、(エ)本件商標に係る指定商品と、引用商標に係る指定商品とは、重複ないし密接に関連し、また、需要者・取引者は共通している。
これらの事情を総合的に考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した需要者及び取引者は、請求人、または同人と資本関係または業務提携関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くその出所について誤認混同を生ずるおそれが十分にあるというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(5)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性
ア 引用商標の周知・著名性及び顧客吸引力について
上記(2)にて述べたとおり、引用商標は請求人の業務に係るかばん等を表す商標として、遅くとも本件商標の出願日の時点には、我が国を含む世界各国における関連する需要者及び取引者の間で周知・著名性を獲得しており、その周知・著名性は今日に至るまで維持されている。
イ 引用商標と本件商標の類似性について
上記(3)アにて述べたように、本件商標と引用商標とは類似する。
ウ 不正の目的について
商標法第3条第1項柱書は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」と規定しているところ、本件商標に係る指定商品は、「革製のかばん及び財布」等であり(甲1)、本件商標権者は、これらの商品に係る業務を行っているか、もしくは行う予定があると推察される。
他方、請求人は、(1)にて述べたとおり、かばん等の製造販売会社であり、甲第7号証ないし甲第21号証及び甲第35号証から、革製のかばん及び財布が請求人の主要製品であることが分かる。
そうすると、請求人と同様の商品を取り扱っている、もしくは取り扱う予定である本件商標権者は、引用商標が請求人によって長年にわたり大規模に使用されており、高い名声を博していることは知悉していたはずである。すなわち、本件商標権者は、数多とある選択肢の中で、請求人のブランドを象徴する引用商標と同様の「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」からなる本件商標を採択している。
本件商標権者は、請求人に何ら依拠することなく、偶然に本件商標を採択したとは考えられない。
したがって、本件商標権者は、本件商標の出願時点において、世界規模で周知著名な引用商標の存在を知りながら、その顧客吸引力にフリーライドする目的で、引用商標と酷似する本件商標を登録出願しようとしたものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(6)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」を不登録商標とし、商標審査基準によれば、「(1)商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音である場合。(中略)(2)商標の構成自体が上記(1)でなくても、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合。」と記載されている。この「指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」には、当該登録出願の経緯が、信義誠実の原則に反し、社会的相当性を欠くものである場合を含むと解され、例えば、他人の標章が未登録であることを奇貨として、不正の利益を得る意図で出願する行為は、公正な取引秩序を乱すおそれがあり、その独占使用を認めることは、取引秩序の維持という商標法の目的に反するというべきである。
上記(5)にて述べたとおり、本件商標権者は、引用商標が請求人によって採択され、使用されているものであることを知りながら、引用商標と酷似する本件商標を、請求人の承諾を得ることなく、登録出願したものである。
かかる状況において、先願主義原則に拘泥し、本件商標の登録出願を一部でも正当化すれば、商標登録制度に対する信頼は損なわれ、また、市場流通秩序を乱し、需要者を混乱に陥らせることになりかねない。すなわち、本件商標の出願は、その経緯に社会的相当性を欠くものであって、また、指定商品に関する本件商標の使用は、社会公共の利益に反する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(1)引用商標の周知著名性について
請求人は、1991年の設立以来、甲第8号証ないし甲第10号証及び甲第13号証に示すとおり、世界地図を古代地図風に表した引用商標を請求人の製品に統一的に使用している。
さらに、甲第53号証に示すとおり、請求人は、請求人の製品に引用商標が表示されたタグを付して販売している。このように、請求人が、引用商標を長年にわたり統一的に使用し続けてきたことは明らかである。
このことから、引用商標を付した請求人製品、ないし「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」を施した請求人製品が長年にわたり継続して販売されてきた結果、請求人の製品は、「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」を特徴とすることで、関連する需要者及び取引者の間で広く知られるに至ったことは容易に推認可能である。
よって、引用商標は、請求人の業務に係るかばん等の商標として、遅くとも本件商標の出願日である令和元年12月24日には、我が国を含む世界各国における関連する需要者及び取引者の間で周知著名に至っていたというべきであり、その周知・著名性は、現在に至るまで維持されている。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性
被請求人は、引用商標1及び引用商標2について、「ヨーロッパを中心にした世界地図はほぼ目にしない地図である」と述べているが、ヨーロッパを中心にした世界地図は日本で一般的であり、実際に、Google検索で「世界地図」の画像を検索すると、ヨーロッパを中心にした世界地図が散見される(甲54)。
また、引用商標3については、図形の配置を理由に、「世界地図と全く異なるものになっている」と述べているが、実際の配置からややずれはあるものの、五大陸及び日本列島と一見して認識できる図形が概ね実際の配置どおりに並んでいることから、世界地図と認識されるとみるのが自然である。
そうすると、引用商標はいずれも一見して世界地図を表したものと理解されるものであり、本件商標と引用商標との出所を混同するおそれは十分にあるというべきである。
さらに、審判請求書で述べたとおり、本件商標に係る指定商品(かばん等)は主に一般消費者の需要するものであって、注意力の低い需要者もこれに含まれることを考慮すれば、被請求人が指摘するようなわずかな差異は、出所識別に寄与することはなく、単に「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」といった観念の共通をもって即席に出所が認識される可能性も否定できず、この場合、なおさら出所の混同を生ずる可能性が懸念されるのである。
したがって、両商標は、外観上相紛らわしく、互いに類似する商標というべきである。
また、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商品を指定するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性
ア 本件商標と引用商標との類似性の程度
上記(2)で述べたとおり、本件商標と引用商標とは類似し、その類似度は比較的高いといえる。
イ 引用商標の周知度
上記(1)で述べたとおり、引用商標は請求人の業務に係るかばん等を表す商標として、遅くとも本件商標の出願日の時点には、我が国における関連する需要者及び取引者の間で周知・著名性を獲得しており、その周知・著名性は今日に至るまで維持されている。
ウ 引用商標が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するか、ないしハウスマークであるか
審判請求書で述べたとおり、引用商標は、古代の地図の巻物を再現するように職人技で描かれ、彩色されており、構成上顕著な特徴を有する。
また、引用商標は、厳密にはハウスマークとはいえないとしても、請求人のブランドは引用商標である「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」を特徴とすることで知られており、請求人の代表的な出所識別標識、いわば請求人商品の「顔」として長年にわたり使用されているものである。
エ 商品・役務間の関連性ないし商品等の需要者の共通性その他取引の実情について
審判請求書で述べたとおり、本件商標に係る指定商品はいずれも、引用商標の使用されている請求人商品(かばん等)との関係で、同一又は類似、あるいはともに革製品である点で一定以上の関連性を有するものである。
これらの事情を総合的に考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した需要者及び取引者は、請求人、または同人と資本関係または業務提携関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くその出所について誤認混同を生ずるおそれが十分にあるというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性
ア 引用商標の周知・著名性及び顧客吸引力について
上記(1)で述べたとおり、引用商標は請求人の業務に係るかばん等を表す商標として、遅くとも本件商標の出願日の時点には、我が国を含む世界各国における関連する需要者及び取引者の間で周知・著名性を獲得しており、その周知・著名性は今日に至るまで維持されている。
イ 引用商標と本件商標の類似性について
上記(2)で述べたとおり、本件商標と引用商標とは類似する。
ウ 不正の目的について
本件商標権者は、地球儀の図形及び「PRIMA CLASSE」の欧文字からなる商標登録を24件保有している。「PRIMA CLASSE」は、「プリマクラッセ」と称呼するイタリア語である(甲55)。
審判請求書で述べたとおり、請求人のブランドである「1A CLASSE」は、本件商標と酷似する「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」を特徴とすることで知られている。
この請求人のブランド名は、上述のとおり「1A CLASSE」なる欧文字で表示されているものの、日本では、新聞や雑誌などで「プリマクラッセ」と片仮名で紹介されることが多く(甲6、甲22~甲24、甲26、甲27)、「プリマクラッセ」の呼び名で広く知られている。実際に、ECサイト、フリマサイト、ブログなどで、多くの需要者及び取引者によって、「プリマクラッセ」の片仮名表示が使用されている(甲15、甲17~甲21、甲38、甲56~甲58)。
そうすると、請求人と同様の商品を取り扱っている、もしくは取り扱う予定である本件商標権者が、請求人に何ら依拠することなく、請求人のブランドの呼び名「プリマクラッセ」の称呼が生じる「PRIMA CLASSE」の語を構成要素に含む商標を偶然に採択したとはおよそ考えられない。
すなわち、本件商標権者は、「プリマクラッセ」が請求人のブランド「1A CLASSE」の呼び名として知られていることを出願当初から知悉しながら、上記商標を登録出願したことは想像に難くない。
これまでも言及してきたように、請求人が「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」を特徴とする製品を長年にわたって世界中で販売してきたことからすれば、本件商標権者が、「PRIMA CLASSE」の文字を含む上記商標に加えて、請求人製品を象徴する「古代の地図の巻物の如き世界地因柄」の特徴に由来する引用商標と酷似する本件商標の両方を登録出願したことについて、明らかに背信的な悪意があったと類推せざるを得ない。
したがって、本件商標権者は、「古代の地区の巻物の如き世界地図柄」をモチーフとすることで世界的に周知著名な請求人の製品ないし請求人の所有する引用商標の存在を知りながら、その顧客吸引力にフリーライドする目的で、本件商標を登録出願しようとしたものであることは疑いのない事実である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(5)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性
上記(4)ウで述べたとおり、本件商標権者は、引用商標が請求人によって採択され、使用されているものであることを知りながら、引用商標と酷似する本件商標を、請求人の承諾を得ることなく、登録出願したものである。
かかる状況において、先願主義原則に拘泥し、本件商標の登録出願を一部でも正当化すれば、商標登録制度に対する信頼は損なわれ、また、市場流通秩序を乱し、需要者を混乱に陥らせることになりかねない。すなわち、本件商標の出願は、その経緯に社会的相当性を欠くものであって、また、指定商品に関する本件商標の使用は、社会公共の利益に反する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(6)まとめ
以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号又は同項第19号に違反して登録されたものであり、本件商標の登録は無効とされるべきものである。
よって、請求の趣旨とおりの審決を求める。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
本件商標は、日本及び韓国を中心としたメルカトル図法による世界地図である。そのため、「日本及び韓国を中心とした世界地図」という観念を有する。なお、本件商標は、特定の称呼を有さない。
(1)引用商標1(甲2)
引用商標1は、ヨーロッパ、特にイタリアを中心としたメルカトル図法による世界地図である。この世界地図において、大西洋、太平洋、インド洋などに帆船のような図形が規則正しく配置されている。
また、引用商標1のデザイナーは、「大航海時代の数枚の地図にインスピレーションを受けています」(乙1)と述べている。このようなことから、引用商標1は、「ヨーロッパ、特にイタリアを中心として、航海をするための世界地図」という観念を有する。なお、引用商標1は、特定の称呼を有さない。
(2)引用商標2(甲3)
引用商標2は、ヨーロッパ、特にイタリアを中心としたメルカトル図法による世界地図である。この世界地図において、大西洋、太平洋、インド洋などに帆船のような図形が規則正しく配置されている。また、引用商標2のデザイナーは、「大航海時代の数枚の地図にインスピレーションを受けています」(乙1)と述べている。このようなことから、引用商標2は、「ヨーロッパ、特にイタリアを中心として、航海をするための世界地図」という観念を有する。なお、引用商標2は、特定の称呼を有さない。
(3)引用商標3(甲4)
引用商標3は、「GEOBLACK」なる文字と、幾何学模様を表す図形とを組み合わせた商標である。図形部分は、不規則に配置された不規則な形の図形を有しており、特定の観念や称呼を有さない。
一方、文字部分は、「ジオブラック」なる称呼を有し、「黒い土地」、「黒い地下」といった観念を有する。
したがって、引用商標3は、「ジオブラック」なる称呼を有し、「黒い土地」、「黒い地下」といった観念を有する。
(4)引用商標についての請求人の主張
請求人は、上記引用商標1ないし引用商標3をまとめて「引用商標」と略し、「本件商標は、引用商標と類似するから、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当する」と主張する。
しかしながら、引用商標は、本件商標の審査段階で引用されていない。
引用商標が引用されていないということは、本件商標が引用商標と明らかに非類似であることを意味する。
したがって、具体的な主張をするまでもなく、本件審判請求は成り立たないが、念のため、以下で無効理由毎に具体的に反論する。
(1)引用商標1及び引用商標2に対して
ア 外観について
日本人は、日本及び韓国を中心にしたメルカトル図法による地図を幼少のころから慣れ親しみ、初等教育から、社会や地理の授業で当該地図を使用して教育されてきた。そのため、ヨーロッパを中心にしたメルカトル図法による地図は、一見して世界地図と理解されない。
また、メルカトル図法という作図の性質上、本件商標と、引用商標1及び引用商標2は、各大陸間の距離や大陸の大きさが必然的に異なってくる。その結果、両商標全体から受ける印象も全く異なるものになり、日本及び韓国を中心としたメルカトル図法による地図と、ヨーロッパを中心としたメルカトル図法による地図とで顕著になる。
請求人は、「左右並べ詳細に直接対比すれば細かな相違に気づかされる」と主張しているが、上述のメルカトル図法の性質や日本人の長年の教育により培われた認識から、直接対比すれば両商標の相違は顕著であることは明らかである。この相違は、時と場所を異にしたとしても、ヨーロッパを中心にした世界地図はほぼ目にしない地図であるから、より顕著である。
したがって、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、外観において明らかに区別し得るものであり、出所の混同を生じることはない。
イ 観念について
引用商標1及び引用商標2のようなメルカトル図法による地図は、古くから航海図に使用されてきた。このような事実からも、引用商標1及び引用商標2の観念は、「ヨーロッパ、特にイタリアを中心として、航海するための世界地図」である。
一方、本件商標の観念は、「日本及び韓国を中心とした世界地図」である。
したがって、本件商標の観念は、引用商標1及び引用商標2の観念と全く異なる。
また、請求人は、「単に「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」といった観念の共通をもって即席に出所が認識される可能性も否定できず」と主張する。
しかしながら、本件商標は、古代の地図ではなく、引用商標1及び引用商標2と観念を異にする。
したがって、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、観念上も相紛れることはない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、称呼において比較できないものの、外観及び観念のいずれにおいても非類似の商標であるから、出所の混同は生じない。
(2)引用商標3に対して
ア 外観について
本件商標は、日本及び韓国を中心とした世界地図であるが、引用商標3の図形部分は幾何学模様を有する図である。したがって、本件商標は、引用商標3と明らかに異なる。
請求人は、「引用商標3は、・・・世界地図を古代地図風に表したものである」と主張する。仮に引用商標3の図形部分が古代地図風の地図と解釈しても、地図の中心には、日本様の図形と、それに隣接して南米大陸様の図形と、それに隣接して米大陸様の図形とが配置され、世界地図と全く異なるものになっている。
また、図形部分のその他の図形は、何を表したか理解できず、単なる幾何学模様となっている。そのため、引用商標3は、「世界地図」を表したものではなく、単なる幾何学的模様を表したものにすぎない。
請求人は、「左右並べ詳細に直接対比すれば細かな相違に気づかされる」と認定しているが、左右並べて直接対比すれば、両商標の相違は顕著であることは明らかである。この相違は、時と場所を異にしたとしても、より顕著である。
したがって、本件商標と引用商標3は、外観において明らかに区別し得るものであり、出所の混同を生じることはない。
イ 称呼について
本件商標は、特定の称呼を有しない。一方、引用商標3は、「ジオブラック」なる称呼を有する。そのため、両商標の称呼は、明らかに相違するものである。
ウ 観念について
本件商標は、「日本及び韓国を中心とした世界地図」という観念を有する。これに対し、引用商標3は、「黒い土地」、「黒い地下」という観念を有する。このように、本件商標の観念は、引用商標3の観念と全く異なる。
請求人は、「単に「古代の地図の巻物の如き世界地図柄」といった観念の共通をもって即席に出所が認識される可能性も否定できず」と主張する。しかしながら、本件商標は、古代の地図ではなく、引用商標3と観念を異にする。また、上述したように、引用商標3の図形部分は、単なる幾何学的模様を表したものにすぎないから、「世界地図柄」などといった観念は生じず、文字部分のみから「黒い土地」、「黒い地下」という観念を生じるものである。
したがって、本件商標は、引用商標3と観念上も異なるものである。
エ まとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標3とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても非類似の商標であり、出所の混同は生じない。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に規定する商標にはあたらない。
(1)請求人の主張に対して
請求人は、商標法第4条第1項第15号のいわゆる広義の混同を認定するに際し、商標審査基準に記載された1~7の判断基準を挙げて、本件商標が同号に規定する商標に該当すると主張する。しかしながら、この認定も失当である。以下、詳細に説明する。
ア 類似性の程度
上述したように、本件商標は、引用商標と非類似である。したがって、類似性の程度はゼロである。
イ 引用商標の周知度
請求人は、種々証拠を挙げて、引用商標が周知著名である旨主張する。
しかしながら、請求人が挙げる証拠はいずれも引用商標そのものではなく、引用商標の任意の一部のみを用いた商品である。
以下、請求人の主張項目に対応して具体的に反論する。
(ア)請求人について
請求人は、「引用商標は、・・・「ジオ・マップ」なる愛称で、世界中で人気を博している(甲6)」と主張する。
しかしながら、その根拠として挙げる証拠(甲5、甲7、甲15、甲22、甲24、甲26の1、甲26の2)は、引用商標の任意の一部分のみのデザインを用いたかばんや、引用商標とは全く異なるデザインを用いたかばんや名刺入れを示すものであり、引用商標そのものを用いた商品を示すものではない。
例えば、中国やアジアの一部を使用したデザイン(甲5の2ページ目掲載のかばん)や、もはや引用商標のどの部分を使用したかもわからないようなデザイン(甲15に掲載の財布)となっており、甲第7号証で示される製品も同様である。
このように、請求人が挙げる証拠に記載される商品は、引用商標の任意の一部分または全く異なるデザインを使用しているものである。
したがって、引用商標は世界中で人気を博しているものではない。
(イ)請求人による引用商標の使用
請求人は、「・・・かばん等に引用商標を使用して、世界中で販売している(甲8~甲11)」と主張する。
しかしながら、いずれも、引用商標の任意の一部分のみのデザインを用いたかばんや、引用商標とは全く異なるデザインを用いたかばんや名刺入れを示すものであり、引用商標そのものを使用した商品を示すものではない。
例えば、もはや引用商標のどの部分を使用したかもわからないようなデザイン(甲8の3ページ掲載や甲10の5ページ掲載のかばん)、東南アジアのみの図形や、ヨーロッパ大陸や北アフリカの図形を使用したデザイン(甲9の3ページ掲載のかばんほか 甲11、甲12掲載の商品デザイン)である。
このように、請求人が挙げる証拠に記載される商品は、引用商標の任意の一部分または全く異なるデザインを使用しているものである。そのため、請求人は、引用商標そのものをかばん等に使用していない。
(ウ)請求人商品の我が国での販売
請求人は、公式オンラインストアや各種のECサイトで請求人商品が販売されていると主張する。
しかしながら、それらの商品は、いずれも、引用商標の任意の一部分のみのデザインまたは引用商標のどの部分を使用したかもわからないようなデザインを用いた商品であり、引用商標そのものを使用した商品ではない。
例えば、甲第13号証についてみるとヨーロッパの国々を示すデザイン(1ページ左のかばん)、アメリカのみを示すデザイン(4ページ2行目右側のかばん)、南米大陸を示すデザイン(6ページ上から2行目右から2番目のかばん)や、アフリカ大陸のみを示すデザイン(9ページ上から3行目左のかばん)であり、引用商標そのものを使用したかばん等を示していない。
甲第14号証は、販売された財布、ショートバック、キーケースなどの商品見本を含むが、それらはいずれも引用商標の任意の一部のみを商品の全体にデザイン的にあしらったものである。
もはや引用商標のどの部分を使用したかも分からないデザインとなっており、引用商標とは関係のないデザインをあしらったものもみられる(甲15、甲16)。
引用商標の任意の一部を使用したかばん等を示し、引用商標そのものを使用したかばん等を示していない(甲17~甲20)。
甲第21号証は、引用商標の任意の一部を使用した財布を示し、引用商標そのものを使用した財布を示しておらず、ほとんどの財布は、もはや引用商標のどの部分を使用したかも分からないデザインとなっており、引用商標とは関係のないデザインとなっている。
甲第22号証ないし甲第25号証は、どのような商標を使用しているのか明らかでないが、その他の証拠から、引用商標をそのまま使用した商品ではない。
このように、請求人は、引用商標そのものを使用した商品を我が国で販売していない。
したがって、引用商標は、世界中で人気を博しているものではない。
(エ)新聞・雑誌への掲載
甲第26号証は、引用商標の表示はどこにも開示されておらず、どのような商標を使用しているのか明らかではない。したがって、甲第26号証から、引用商標の名声が広く我が国の需要者及び取引者に伝播したと推測することはできない。
甲第27号証は、引用商標の任意の一部を使用したかばん等を示し、引用商標そのものを使用したかばん等を示していない。
もはや引用商標のどの部分を使用したかも分からないデザイン(枝番1~枝番5)、南米大陸が上下に二つ存在し、北米大陸の上に南米大陸がある(枝番2)など、引用商標とは関係のないデザインとなっている。
また、中国やヨーロッパなどを示すデザイン(枝番3)であったり、東アジアと南米大陸とヨーロッパとが隣接するデザイン(枝番4)やスカンジナビア半島の上にアフリカ大陸があるデザイン(枝番6)となっており、引用商標とは関係のないデザインとなっている。
したがって、甲第27号証から、引用商標の名声が広く我が国の需要者及び取引者に伝播したと推測することはできない。
(オ)請求人商品の売上高
請求人は、宣誓書で皮革製品の売上高を宣誓している。
しかしながら、この皮革製品が引用商標が付された製品であることを示す事実は、甲第28号証からはうかがえず、全く関係のない皮革製品である可能性も否定できないから、引用商標が付された製品の売上高とはいえない。
(カ)外国での引用商標の使用
請求人がイタリアを中心に多くの店舗を有していることがうかがえるが、それらの店舗で引用商標が付された商品が販売されていること、それらの店舗がいつ出店されたか全く分からない。そのため、甲第29号証及び甲第30号証から、引用商標が世界中で人気を博しているとはいえない。
甲第31号証及び甲第32号証は、引用商標の表示はどこにも開示されていない。ミラノコレクションで本件商標が発表されたのかも不明である。
甲第33号証は、何の写真でいつの写真であるか明らかでない。加えて、そこに展示されたバッグは、引用商標の任意の一部であるアフリカ大陸を使用したにすぎず、引用商標そのものを使用していない。
甲第34号証及び甲第35号証は、引用商標の任意の一部であるアフリカ大陸を使用したバッグを開示するにすぎず、引用商標そのものを使用したバッグを開示していない。
そのため、俳優や歌手などの使用によって、引用商標そのものの名声が世界中の需要者等に伝播しているとはいえない。
(キ)テレビ番組のスポンサー
甲第36号証~甲第38号証は、引用商標の任意の一部であるアフリカ大陸やアメリカ大陸のみを使用したバッグを開示するにすぎず、引用商標そのものを使用したバッグを開示していない。
その他のシャツや水着、帽子などは、引用商標のどの部分を使用したかも分からないデザインとなっており、引用商標とは関係のないデザインとなっている。
甲第41号証、甲第42号証及び甲第44号証は、引用商標の任意の一部を使用したかばん等を示し、引用商標そのものを使用したかばん等を示していない。
例えば、甲第41号証の第1頁真ん中の写真の左側の女性のTシャツは、南米大陸の右上にメキシコが位置し、右下にグリーンランドが位置しており引用商標とは全く異なる。
また、甲第42号証において、第3頁の下写真のTシャツは、引用商標には存在しない大陸が表示され、第6頁の上写真の上着は、南米大陸と思われる下に大陸のような図が表示され、第8頁の上写真の右から2番目の女性のTシャツ及び下写真の左の女性のTシャツは、引用商標には存在しない大陸が表示されている。さらに、甲第44号証の第1頁の1行目のかばんは、南米大陸の下に北米大陸があり、2行目のポーチ及び3行目のキャップはどこの国、大陸を表示しているか分からないデザインを表示している。このように、請求人が主張する当該番組で使用されている製品に引用商標そのものは全く使用されていない。
同様に、日本を舞台にした甲第45号証ないし甲第50号証及び甲第52号証も、そこで使用されている帽子やバッグは、引用商用とは全く異なり、引用商標は使用されていない。
(ク)まとめ
以上のように、引用商標そのものは、請求人の商品に使用されていない。
そのため、引用商標は、請求人の業務に係るかばん等の商標として日本のみならず、世界中の取引者・需要者に周知著名になっていない。したがって、引用商標の周知度はゼロである。
ウ 造語または顕著な特徴、ハウスマークについて
引用商標1、引用商標2は、メルカトル図法によるヨーロッパを中心とした世界地図を表したにすぎず、特別な特徴を有しない。また、請求人も主張するように、引用商標は、ハウスマークではない。さらに、上述したように、引用商標そのものは使用されておらず、請求人の商品についての商標として長年にわたり使用されてもいない。
エ 小括
以上のように、引用商標は、本件商標と非類似であり、請求人の業務に係るかばん等の商標として日本のみならず、世界中の取引者・需要者に周知著名になっていない。
そして、引用商標は、特別な特徴を有しない、創造性の低い商標である。
したがって、請求人の主張は全くの失当であって、本件商標は、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ではない。
(2)地図柄のデザインについて
上述したように、各甲号証に開示された商品の地図柄のデザインは、商品によっても異なり、同じ商品によっても異なり、引用商標の任意の一部を切り取った種々のデザインである。
そのため、無数の種類の地図柄のデザインを使用した商品が存在する。
実際、甲第15号証は、「・・・作品の全てが手作業によって作られていることから同じ柄は二つと存在しません。すべて柄が異なっているため自分の好きな国が入っているものを選ぶ楽しみもこのブランドの魅力の一つです」と開示する。
そうすると、請求人は、種々の地図デザインが商品に付されていることを証明しているにすぎず、引用商標が周知著名になっていることを証明していない。
そのため、引用商標は、周知著名になっていない。したがって、本件商標は、請求人の商品と混同を生じるおそれはない。
(3)請求人商品について
上述したように、甲第15号証は、「・・・同じ柄は二つと存在しません。すべて柄が異なっている」と開示する。これは、請求人が販売する商品及び各甲号証に開示された商品は、全て柄が異なっていることを意味し、無数の種類の地図デザインを使用した商品が存在することを意味する。
とすれば、各甲号証に開示された商品はそれぞれ、引用商標ではないことは明らかである。そして、同じ柄が二つと存在しないということは、請求人の商品は、一品製作物であり、自他商品識別機能を発揮する商標を使用した商品ではないことを意味する。一品製作物は、一度購入されると、転々流通する性質のものでもないから、一品製作物である請求人の商品自体が周知著名になることはない。したがって、本件商標は、請求人の商品と混同を生じるおそれはない。
(4)取引実情について
一般に、商品を購入するに際し、当該商品の品質が保証されているか、出所が信頼できるかを認識するために、商品に付された商標がどのような商標であるか確認することは取引者・需要者の関心事項である。とすると、取引者・需要者は、商品に付される商標の種類、商標が商品に付される態様、商品自体などを考慮して商品選択をするものである。
これを請求人商品についてみると、請求人が販売する商品のデザインは、同じ柄が二つと存在せず、全ての柄が異なっている。
そのため、取引者・需要者は、請求人の商品において、どのようなデザインであるかを認識したうえで商品を選択する。
また、請求人の商品に付される地図柄のデザインは、商品全体にあしらわれ、意匠的に使用されている。これは、甲第21号証が「一世を風靡した唯一無二の意匠」と表現していることからも明らかである(第2頁2行目)。
そのため、取引者・需要者は、商品に付された地図デザインを重視し、どのようなデザインであるかを認識したうえで商品を選択する。
さらに、請求人の商品は一品製作物であるから、取引者・需要者は、商品毎及び同じ商品でもデザイン毎に、どのようなデザインであるかを吟味して商品を選択する。
このような取引実情を考慮すると、取引者・需要者は、請求人の商品に付された地図デザインがどのようなデザインであるかを注意して取引が行われる。
そうすると、取引者・需要者は、請求人の商品に付された地図デザインと、本件商標とを十分に識別する結果、商品の販売者等も識別するものである。したがって、本件商標は、請求人の商品と混同を生ずるおそれはない。
(5)小括
以上のように、上記(1)ないし(4)を総合的に判断すると、本件商標をその指定商品に使用したとき、これがあたかも請求人又は同社と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれは全くない。
したがって、本件商標は、請求人に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ではなく、商標法第4条第1項第15号に規定する商標にはあたらない。
(1)請求人の主張
請求人は、「本件商標権者は、・・・世界規模で周知著名な引用商標の存在を知りながら、その顧客吸引力にフリーライドする目的で、引用商標と酷似する本件商標を登録出願しようとしたものである」旨主張する。
しかしながら、この主張も全くの失当であって、本件商標は、同号に該当する商標ではない。以下、具体的に反論する。
(2)周知著名性
上述したように、引用商標は、請求人の業務に係るかばん等の商標として日本のみならず、世界中の取引者・需要者に周知著名になっていない。そのため、本件商標は、本号に該当する商標ではない。
(3)類似性
上述したように、本件商標は、引用商標と類似しない。そのため、本件商標は、本号に該当する商標ではない。
(4)不正の目的
ア 不正の目的の認定にあたっては、<1>その他人の商標が需要者の間に広く知られている事実、<2>その周知商標が造語よりなるものであるかまたは構成上顕著な特徴を有するものであるか、<3>その周知商標の所有者が、我が国に進出する具体的計画を有している事実、<4>その周知商標の所有者が近い将来、事業規模の拡大の計画を有している事実、<5>出願人から商標の買い取りや代理店契約締結等の要求を受けている事実、又は出願人が外国権利者の国内参入を阻止しようとしている事実、<6>出願人がその商標を使用した場合、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあること、を考慮して判断される。
イ 他人の商標である引用商標は、上述したように、需要者の間に広く認識されている商標ではない。そのため、本件商標が請求人の名声や顧客吸引力を毀損させるおそれもない。
また、引用商標は、上述したように顕著な特徴もない。さらに、請求人は、請求人も主張するようにかばん等の製造会社であり、事業の拡大の計画も見当たらない。またさらに、被請求人は、請求人に本件商標の買い取りや代理店契約締結を要求していないし、国内参入を阻止しようとする事実もない。このように、引用商標は、上記<1>ないし<6>の判断基準のいずれにも当てはまらない。したがって、本件商標は、不正の目的をもって使用するものではない。
(5)小括
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない商標であり、商標登録を無効にすべきものではない。
請求人は、「本件商標の出願は、その経緯に社会的相当性を欠くものであって、また、指定商品に関する本件商標の使用は、社会公共の利益に反する」と主張する。しかしながら、本件商標の出願の経緯において、不正の利益を得る意図や、公正な取引秩序を乱すような社会的相当性を欠く客観的事実は存在しない。被請求人は、自己の商品に化体する業務上の信用を保護すべく、正当な目的、理由で本件商標の出願を行ったものである。このような行為は、社会一般に行われている正当な行為であって、むしろ需要者の利益を保護し、産業の発達に寄与するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しないものであり、商標登録を無効にすべきものではない。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当する商標ではない。よって、本件商標の登録は、無効とされるべきものではない。
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は、請求人が本件審判の請求適格を有すると判断するので、以下、本案に入って審理する。
(1)請求人の主張及び提出に係る証拠等によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は1991年にミラノで設立され(甲5)、「ジオ・マップ」と呼ばれる世界地図をモチーフにしたかばん等(以下「請求人使用商品」という。)が、日本及び外国において販売されていることはうかがえる(甲5~甲13)。
イ 請求人は「プリマクラッセ(表記は「1A CLASSE」)」というトータルブランドを使用している(請求人主張、甲12)。
ウ 我が国の複数のウェブサイトには、請求人使用商品が紹介され、商品の説明に「財布地図柄」「マップ柄リュック」など、地図柄を説明に用いているものが見受けられるところ、当該地図柄は、引用商標の任意の一部を切り取った商品として用いており、その態様は商品によって様々である(甲15~甲21、甲57、甲58)。
エ 甲第15号証には、「作品の全てが手作業によって作られていることから同じ柄は二つと存在しません。すべて柄が異なっているため自分の好きな国が入っているものを選ぶ楽しみもこのブランドの魅力の一つです」との記載がある。
オ 2018年から2022年の5年間にイタリア、我が国、その他の国において、請求人の皮革製品の売上げが相当程度あった事実(甲28)がうかがえる。
カ 「プリマクラッセ」及び請求人使用商品は、我が国の新聞(2008年~2012年)や雑誌(2011年、2012年)にて掲載された(甲26、甲27)が、本件商標の登録出願時(2019年12月24日)又は登録査定時(2020年10月14日)におけるメディアの露出や広告宣伝等については確認できない。
キ 2008年秋に、複数の百貨店でのフェアの開催(甲22)や、2009年8月には、請求人使用商品を取り扱う大手百貨店がオープンした(甲23)旨の記事が紹介されているものの、本件商標の登録出願時又は登録査定時においても、継続的に当該フェアが開催されていた事実や、当該店舗における請求人使用商品の取り扱いがされていた事実は確認できない。
ク 請求人使用商品は、2016年のミラノコレクションに出展され、多数の新聞や雑誌等でその様子及び請求人使用商品が紹介されたとされる(請求人の主張)。
ケ 複数の外国の著名人が請求人使用商品を使用し(甲35)、また、イタリアの人気テレビ番組とされる番組の中で出演者が請求人使用商品を身につけていることがうかがえる(請求人の主張、甲36~甲38、甲41、甲42、甲44、甲45、甲48~甲50)。
(2)上記(1)の事実によれば、以下のとおり判断することができる。
ア 請求人について
上記(1)ア及びイによれば、請求人は、「ジオ・マップ」と呼ばれる「世界地図をモチーフにしたデザインを使用した請求人使用商品」を製造販売しており、「プリマクラッセ(表記は「1A CLASSE」)」をトータルブランドとして使用している。
イ 請求人使用商品の使用態様について
上記(1)ウ及びエのとおり、請求人使用商品の地図柄の態様は商品によって様々であって、その使用態様からは、かばん等の装飾的な図柄として認識されるものといえ、少なくとも、引用商標全体をもって、商標的使用をしていたとはいえないものであり、かかる使用をもって、引用商標全体の我が国及び外国における周知性を推し量ることはできない。
ウ 請求人に係るかばん等の売上げ、広告宣伝等
請求人が提出した証拠からは、2018年ないし2022年の5年間で我が国又は外国において、請求人に係る皮革製品の売上げが相当程度あったことはうかがえるとしても、いずれも、世界全体での請求人が取り扱う全商品についての売上高を示していると思われるものの、引用商標の使用に基づく売上高を示したものであるか明らかではないから、かかる売上高をもって、引用商標に関する我が国及び外国における周知性を推し量る証拠として評価することはできない。
また、請求人は、2016年にミラノコレクション等に出展し、多数のメディアで紹介されたことや複数の外国の著名人が請求人使用商品を使用したこと等を根拠に、引用商標の周知性を主張するが、請求人使用商品に実際に使用されている商標は、いずれも商品によって様々な地図柄であって、この点において上記イのとおり、引用商標全体をもって、商標的使用をしていたとはいえないものであるから、かかるメディアの露出や使用をもって、引用商標が我が国及び外国において周知性を獲得したと評価すべきではない。
一方、我が国における請求人使用商品の複数の百貨店でのフェアの開催や請求人使用商品を取り扱う大手百貨店がオープンした事実が認められるとしても、そもそも、引用商標全体をもって、商標的使用をしていたかどうかすら明らかではないのであるから、かかる事実をもって、引用商標の周知性の根拠にすることはできない。
その他、請求人のいずれの証拠をみても、引用商標がかばん等に使用されて、需要者の間に広く知られていたことを認めるに足りる事実は認められない。
エ 小括
以上よりすると、請求人の提出した証拠によっては、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るかばん等の商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(1)本件商標について
本件商標は、水色を基調とした横長の長方形内に、アジア、アメリカ等を中心とした世界地図を表した図形よりなるものであり、かかる構成からは、その全体の印象より、世界地図であることが容易に理解されるといえるから、本件商標からは「世界地図」の観念を生じるものである。
また、図形のみから構成されるから、本件商標は、特定の称呼は生じない。
(2)引用商標1及び引用商標2について
引用商標1及び引用商標2は、肌色ないし黄色を基調とした横長の長方形内に、ヨーロッパ、アフリカ等を中心とした世界地図を表した図形よりなるものであり、当該地図内には、海洋部分に帆船のような図形(以下「帆船図形」という。)が描かれている。
かかる構成からは、その全体の印象より、世界地図であることが容易に理解されるといえるから、引用商標1及び引用商標2からは「世界地図」の観念を生じるものである。
また、引用商標1及び引用商標2は、図形のみから構成されるから、特定の称呼は生じない。
(3)本件商標と引用商標1及び引用商標2の類否について
ア 外観について
本件商標及び引用商標1及び引用商標2は、いずれも、地図をモチーフとした図形である点は共通にするものの、大陸等の配置及び色彩の相違、さらには、帆船図形の有無により、全体の印象が明らかに異なることから、外観上類似するとはいえない。
イ 称呼について
本件商標及び引用商標1及び引用商標2は、いずれも、特定の称呼は生じないから、称呼については比較することができない。
ウ 観念について
本件商標及び引用商標1及び引用商標2は、いずれも「世界地図」の観念を共通にするものである。
エ 小括
本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、称呼において比較できず、観念を共通にするとしても、外観において明らかに異なるものと認識されるものであり、観念の共通性が外観の相違を凌駕するとはいえないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)引用商標3について
引用商標3は、「GEOBLACK」なる文字と、無彩色の横長長方形に、幾何学的に大陸のような形状をモチーフした図形とを組み合わせた商標である。当該図形部分は、請求人が主張するように大陸をモチーフとしているようにも見えるものの、実際の配置とは大きく異なって描かれており、直ちに地図を認識させるともいえないから、図形部分からは、特定の観念及び称呼を生じないものであり、「GEOBLACK」の文字部分に照応し、「ジオブラック」の称呼を生じる。
そして、「GEOBLACK(ジオブラック)」の語は、辞書等に掲載がみられない語であることから、全体として特定の観念は生じないものである。
(5)本件商標と引用商標3の類否について
ア 外観について
本件商標は「世界地図」を一般的な配置に描いてなる外観であるのに対し、引用商標3は大陸のような形状をモチーフとしつつも、実際の配置とは大きく異なって描かれており、直ちに地図を認識させるともいえず、図形の配置及び色彩の相違により、全体の印象が明らかに異なることから、外観上類似するとはいえない。
イ 称呼について
本件商標からは、特定の称呼が生じないのに対し、引用商標3からは、「GEOBLACK」の文字部分に照応し、「ジオブラック」の称呼が生じるから、両商標は、称呼上、相紛れるおそれはない。
ウ 観念について
本件商標が「世界地図」の観念を生じるのに対し、引用商標3は特定の観念を生じないものであるから、観念については相紛れるおそれはない。
エ 小括
本件商標と引用商標3とは、外観において明らかに異なり、称呼及び観念においても相紛れるおそれはないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(6)まとめ
上記(1)ないし(5)のとおり、本件商標と引用商標は別異の商標であり、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(1)引用商標の周知性
上記2のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るかばん等の商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類似性
上記3のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
(3)引用商標の独創性の程度
引用商標は、世界地図を表したものと容易に理解されるもの又は大陸のような形状をモチーフとしたものであり、世界地図等は、観光用、学習用と用途は幅広く、多くの人々に親しまれ一般に利用されるものであるから、引用商標の独創性の程度は高いとはいえない。
(4)出所混同の生じるおそれ
上記(1)ないし(3)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているとは認められないものであり、また、本件商標と引用商標は類似性の程度は低く、引用商標の独創性の程度も高いとはいえないものである。
そうすると、本件商標と引用商標の指定商品との関連性の程度、需要者の共通性の程度などを併せ考慮しても、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について、混同を生じるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が、商品の出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(1)引用商標の周知性
上記2のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るかばん等の商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類似性
上記3のとおり本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。
(3)不正の目的について
請求人は、引用商標が、本件商標の出願日時点には、我が国を含む世界各国における関連する需要者及び取引者の間で周知・著名性を獲得していることを前提に、被請求人は、引用商標の高い名声を博していることを知悉したうえで、本件商標を採択したことは、引用商標の顧客吸引力にフリーライドする目的で、引用商標と酷似する本件商標を出願したと主張する。
また、請求人は、請求人上申書において、本件商標権者の出願に係る「地球儀の図形及び「PRIMA CLASSE」の欧文字からなる商標」(甲55)(以下「本件外出願」という。)を示し、当該商標の出願行為を踏まえれば、本件商標の出願行為にも背信的な悪意があったと類推されると主張する。
しかしながら、上記(1)及び(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るかばん等の商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者間に広く認識されていたものと認めることはできないから、本件外出願の存在をもって、悪意の推認をすることは適切ではない。
そうすると、請求人が主張する本件外出願の行為が直ちに、本件出願が不正の目的をもってなされたものと認めることはできない。
その他、請求人が提出した証拠からは、本件商標権者が、引用商標の信用にただ乗りし、引用商標の出所表示機能を希釈化し又は名声を毀損させるものというべき事実も見いだせず、他に本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
以上のことからすると、本件商標について、商標法の先願登録主義を上回るような、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるとはいえないし、公の秩序又は善良の風俗を害するような事情があるということはできない。
そして、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであり、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見当たらない。
さらに、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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