結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024890047 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6807597号商標(以下「本件商標」という。)は、「Tohoer」の欧文字を横書きしてなり、令和6年2月22日に登録出願、第6類「マグネット付き金属製フック」を指定商品として、同年5月17日に登録査定、同月23日に設定登録されたものである。
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、本件商標と実質同一の「Tohoer」の欧文字からなる標章(以下「引用標章」という。)であり、中国の法人であるshenzhenshijinglikejiyouxiangongsiが、本件商標の登録出願前において、同人の業務に係る商品「マグネットフック(マグネット付き金属製フック)」(以下「引用標章使用商品」という。)を表示するものと使用して、日本国内の需要者の間で広く認識されていると主張するものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項により、その登録は無効にすべきである。
(1)商標法第4条第1項第10号
第三者である「shenzhenshijinglikejiyouxiangongsi」(中国の法人会社。以下「S社」という。)は、Tohoerというブランドにおいて、Amazonの販売サイトにおいて、引用標章使用商品を販売している。
そして、現在同サイトにおいて、2019年8月の取り扱い開始から、6,000件以上の評価がなされており、過去1か月で50点以上購入されている。
また、同様に、2021年9月20日より、Tohoerというブランドにおいて、Amazonの販売サイトにおいて、引用標章使用商品を販売している。
このように、Amazonのサイト内において、Tohoerというブランドは、引用標章使用商品を販売するブランドとして、日本国内において周知性を獲得しているブランドといえる。
そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用標章と同一であって、その商品若しくは役務に類似する商品又は役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号
本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混合(審決注:「混同」の誤記と認める。)とを生ずるおそれがある商標といえるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号
本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国における需要者の間に広く認識されている引用標章と同一の商標であり、不正の目的をもって使用するものといえるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
以下、理由を詳述するが、請求人は、本件商標の登録出願日よりも前から、Amazonのサイトにて、引用標章使用商品に、本件商標と同一の商標を広く使用し今日に至っている。
その結果、少なくとも、日本国内全体にわたり、本件商標の登録出願日より前に広く知られているブランドである。
したがって、引用標章は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識される商標」に該当するといえる。
しかも、引用標章は、造語よりなるものであり、広く認識されている商標である。
そうすると、本件商標は、少なくとも日本国内において周知な商標と同一であり、しかも、その周知な商標は同一であるものであり、本件商標が不正の目的で使用することが明らかである。
請求人は、被請求人の答弁に対して、なんら弁駁していない。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると主張し、その理由を審判事件答弁書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
(1)請求人適格について
商標法第46条第2項において、商標登録無効審判は、利害関係人に限り請求することができる旨規定されている。
審判請求書において、請求人は、「S社は、Tohoerというブランドにおいて、Amazonの販売サイトにおいて、マグネットフック(マグネット付き金属フック)を販売している。」と主張する。
甲第4号証には、S社の住所が欧文字にて表記されているが、同号証に記載の住所における地番等を示すと思われる数字(404、No.4)は、審判請求書の「2 請求人」の欄に記載の住所における地番等の数字(36棟、6017)とは一致しておらず、請求人とS社が同一人であるとは推認できない。
また、その他、審判請求書及び証拠類を参酌しても、請求人とS社との関係性をうかがわせる記述は存在せず、請求人が、本件商標登録に対していかなる利害を持つのか定かでない。
以上より、請求人は、本件商標に対する無効審判の利害関係人とはいえない。
よって、本件審判請求は、請求人適格を欠いた不適法な審判請求であるので、却下されるべきである。
(2)本件商標登録に無効理由が存在しないこと
上記(1)のように、本件審判請求は、請求人適格を欠いた不適法な審判請求であるが、仮にそうでないとしても、本件商標に無効理由は存在しない。
ア 請求人の主張
請求人が主張する、S社商品の販売の証拠は、通信販売サイトであるAmazonにおける販売によるもののみであり、他のサイトや店舗における販売の証拠を請求人は提出していない。
また、請求人が主張するS社商品のAmazonにおける販売数量等は、「2019年8月の取り扱い開始から、6,000件以上の評価がなされており、過去1か月で50点以上購入されている。」というものである。
しかし、かかる請求人の主張から、S社商品は周知な商品ということはできず、Tohoerという商標が、S社のものとして周知な商標ということはできない。
イ S社商品の販売数について
日本国内におけるマグネットフックの販売数は、以下のように推定される。
まず、マグネットフックは、日用品であり、その需要者は、広く国民一般であり、特定の属性を持つ者のみが需要者となるような商品ではなく、2024年11月2日現在、Amazonにおけるマグネットフックの商品総数は、29,411品目である(乙1)。
被請求人が、セラースプライト(Amazon内販売者が販売計画を策定する際に利用する統計データツール。Amazon外のサードパーティーにより提供されている。)を使用して、商品総数29,411品目中、販売数上位の月間50品合計販売数を計算したところ、2023年10月から2024年9月までの月間平均で、21,329個/月と見積もられた(乙2)。
また、2022年において、物販系分野におけるEC(電子商取引)化率は、9.13%であり(乙3の5頁)、2021年において、EC市場におけるAmazon(アマゾン)の市場シェアは、28.2%である(乙4、図表I-64)。
以上より、日本国内におけるマグネットフックの月間推定販売数(N)を計算すると、「N=21,329×100/28.2×100/9.13=828,420」と見積もられる。
日本国内におけるマグネットフックの月間推定販売数約83万個に対して、請求人が主張する「1か月で50点以上」というS社商品の販売数は、僅少なものといわざるを得ない。
したがって、S社商品は周知な商品ではなく、S社がS社商品を販売する際のブランド名であるTohoerは、周知な商標ではない。
ウ S社によるTohoer商標の使用態様について
乙第5号証及び乙第6号証は、Amazonで販売されているS社商品(マグネットフック、及び、その包装)の写真であり、これらを見ると、マグネットフック自体にも、その包装にも、Tohoerの文字は付されていない。
すなわち、S社は、Amazonの販売ページにおけるブランド名としてTohoerの文字を小さな文字で表記しているに過ぎず、Tohoerの商標は、S社商品を購入した者の印象に残るような形態で使用されているとはいえない。
そうすると、S社商品を購入した者は、実際に手元に届いたS社商品と、販売ページにおいて小さな文字で表記されたTohoerの文字とを結びつけて記憶する(手元に届いたS社商品と販売ページのTohoerの文字が同一の出所を示すものと認識する)とは到底考えられない。
したがって、使用態様の点から見ても、Tohoerは、周知な商標とはいえない。
エ 小括
以上のように、マグネットフックの分野におけるS社商品の販売数は、僅少なものであり、また、S社商品であるマグネットフックにもその包装にもTohoerの商標は付されていないことから、Tohoerは、S社商品であるマグネットフックを表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標とはいえない。
また、TohoerはS社商品を示すものとして周知・著名な商標ではないことから、商標権者である被請求人が、マグネットフックに本件商標を使用することにより、S社商品との混同が生じるはずがない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号の規定に違反してされたものではない。
本件審判の請求に関し、被請求人は、答弁書において、請求人が本件商標に対していかなる利害を持つのか定かではないから、本件審判請求の利害関係人といえない旨主張していることから、まず、この点について判断する。
(1)商標法46条の規定に基づき商標登録を無効にすることについての審判を請求するためには、請求人に右審判請求をするについての法律上正当な利益が存することを必要とするものと解すべきであるが、無効審判請求の利益は、審判請求を適法なものとして取り上げ、請求の当否について審決を得るために具備すべき要件であるから、審決時を基準として判断すべきであり、審決時に存在することを必要とするとともにこれをもって足りるというべきである(平成元年10月19日東京高等裁判所判決、平成元年(行ケ)第65号)。
そして、商標登録出願に係る商標が、当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標と同一又はこれに類似し、指定商品若しくは指定役務も同一又は類似するものとして、当該商標登録出願が拒絶され又は拒絶されるおそれがある場合、その商標登録出願は、上記他人の登録商標につき、商標登録の無効審判の請求をする法律上の利益があることは、明らかである。
(2)これを本件についてみるに、本件審判の請求につき利害関係について疑義があることから、当審において職権により調査をするに、請求人は、本件商標と同一又は類似する商標について、商標登録出願(商願2024-86110号。「Tohoer」の文字を標準文字で表してなる商標。)をしていることが認められ、その登録出願に係る商標について、本件商標を引用商標とする商標法第4条第1項第11号に係る拒絶理由通知がなされていることが認められる。
以上の事実よりすれば、請求人は、本件審判の請求をすることについて法律上の利益を有するものと解するのが相当である。
したがって、本件審判の請求は、その請求を不適法なものとして却下することはできない。
(1)請求人提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア S社は、2019年(令和元年)8月20日より、Amazonのウェブサイトにおいて、「Tohoer」のブランドを用いて、引用標章使用商品を販売しており、現在、同サイトにおいて、2019年8月の取扱い開始から、6,000件以上の評価がなされ、過去1か月で50点以上購入されていることがうかがえる(甲2~甲4、請求人の主張)。
当該ウェブサイトのスクリーンショットには、「Tohoer 【4個セット】 マグネット フック ステンレス製 錆びない 磁石付き・・・ブランド:Tohoer・・・6,163個の評価 過去1か月で50点以上購入されました」の記載、及び、金属製とおぼしき4点のフックの画像が表示されている(甲2)。
イ S社は、2021年(令和3年)9月20日より、Amazonのウェブサイトにおいて、「Tohoer」のブランドを用いて、引用標章使用商品を販売していることがうかがえる(甲5、甲6、請求人の主張)。
当該ウェブサイトのスクリーンショットには、「Tohoer 【8個セット】 マグネット フック 磁石付き・・・ブランド:Tohoer・・・4,895個の評価」の記載、及び、金属製とおぼしき8点のフックの画像が表示されている(甲5)。
(2)以上の認定事実によれば、S社は、2019年(令和元年)8月から、引用標章を使用して、Amazonのウェブサイトにおいて、引用標章使用商品を販売したことがうかがえるものの、当該ウェブサイト上の「過去1か月で50点以上購入されました」との記載があるのみであって、いつの時点での「過去1か月」の販売期間であるのか不明であり、また、「50点以上購入」についても、当該商品が実際に販売されたことの取引書類等、裏付けとなる証拠の提出もない。そして、仮に、当該「過去1か月」が、すべて、本件商標の登録出願又は登録査定の時前の販売であるとしても、販売数の多寡を判断するための証拠もないから、当該販売個数に関する主張及びそれに関する証拠をもって、引用標章が我が国において周知であるということはできない。
また、「6,000件以上の評価」についての主張も、その評価の内容が不明であり、「6,000件以上の評価」が、どのように周知性の判断に影響するものかについても明らかではなく、仮に、当該「6,000件以上の評価」が周知性の判断に寄与するものであるとしても、当該評価件数の多寡を判断するための証拠もないから、その主張及びそれに関する証拠をもって、引用標章が我が国において周知であるということもできない。
さらに、甲第2号証ないし甲第6号証は、ウェブサイトの写しであるところ、その作成日(印刷日)が不明であるから、2019年(令和元年)8月20日より、Amazonのウェブサイト(甲2)において、「Tohoer」のブランドを用いて、引用標章使用商品が販売されていたとしても、取扱い開始日と主張する2019年(令和元年)8月20日以降、現在に至るまでの間、S社により販売されていたことについても、明確となっていない。
また、S社が、引用標章を使用した引用標章使用商品の、我が国及び外国における周知性の度合いを客観的に判断するための資料である、引用標章使用商品の売上高、市場シェアなどの事業規模を具体的に把握し得る証拠並びに広告宣伝の方法及び回数などの状況を具体的に示す証拠は見いだすことはできない。
その他、請求人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の取引者、需要者の間で、S社又は請求人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。
そうすると、請求人の提出した証拠によっては、引用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、S社又は請求人の業務に係る商品を表すものとして、我が国又は外国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
引用標章は、上記2のとおり、引用標章使用商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(1)引用標章の周知性
引用標章は、上記2のとおり、引用標章使用商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないものである。
(2)本件商標と引用標章の類似の程度
本件商標及び引用標章は、上記第1及び上記第2のとおりからなり、いずれも「Tohoer」の欧文字のつづりからなり、一般の辞書に載録がなく、特定の意味合い又は事物を想起させる特段の事情も見当たらないことから、我が国において親しまれている英語の読みに倣って、「トーホアー」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
そうすると、両商標は、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛らわしいから、同一又は類似の商標と認められ、類似の程度は高いものである。
(3)引用標章の独創性
引用標章は、一般の辞書等に載録が認められないことから、独創性の程度は高いものである。
(4)本件商標の指定商品と引用標章使用商品の関連性、需要者の共通性
本件商標の指定商品は「マグネット付き金属製フック」であり、引用標章使用商品は「マグネットフック(マグネット付き金属製フック)」であるから、商品の関連性は高く、その需要者も共通するといえる。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば、本件商標と引用標章の類似性の程度及び引用商標の独創性の程度は高く、本件商標の指定商品と引用標章使用商品との関連性及び需要者の共通性が高いとしても、引用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、S社又は請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者が、周知著名ではない引用標章を想起又は連想することは考えにくいから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、当該商品がS社又は請求人若しくはこれらと組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて,不正の目的(中略)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されているところ、引用標章は、上記2のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(S社又は請求人)の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものであるから、本件商標は、同項同号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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