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Trademark Appeal Case

結合商標の要部抽出の可否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025000468
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

1 手続の経緯

本願は、令和4年12月9日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和5年 3月28日付け:拒絶理由通知書

令和5年 5月 8日 :意見書、手続補正書の提出

令和6年 9月26日付け:拒絶査定

令和7年 1月14日 :審判請求書の提出

令和7年 3月 6日 :手続補正書の提出

令和7年 9月11日付け:審尋

令和7年10月 1日 :回答書の提出

令和7年10月17日 :手続補正書の提出

2 本願商標

本願商標は、「一楽ラーメン」の文字を標準文字で表してなり、第30類及び第43類に属する、願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として登録出願されたものであり、その後、指定商品及び指定役務については、令和5年5月8日提出及び同7年10月17日提出の手続補正書により、最終的に、第43類「飲食物の提供,ラーメンを主とする飲食物の提供」に補正されたものである。

3 引用商標

原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第5840444号商標は、「一楽」の文字を標準文字で表してなり、平成27年11月19日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同28年4月8日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

4 原査定の拒絶の理由の要点

本願商標は、引用商標と同一又は類似の商標であって、引用商標の指定役務と同一又は類似の役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

5 当審の判断

(1)結合商標の類否判断について

複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、その構成部分全体によって他人の商標と識別されるから、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは原則として許されないが、取引の実際においては、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、必ずしも常に構成部分全体によって称呼、観念されるとは限らず、その構成部分の一部だけによって称呼、観念されることがあることに鑑みると、商標の構成部分の一部が需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも、許されると解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。

(2)本願商標について

本願商標は、「一楽ラーメン」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「一楽」の文字が漢字で表され、「ラーメン」の文字は片仮名で表されているものであるから、本願商標は、漢字と片仮名という文字種の相違により、視覚上、「一楽」の文字及び「ラーメン」の文字を結合してなるものと看取されるものである。

そして、本願商標の構成中、「一楽」の文字は、一部の辞書には、「土屋一楽。堺の籐細工の名手。」(広辞苑第七版 株式会社岩波書店)を指す語として掲載されているものの、前記の意味が必ずしも広く一般に知られているということはできないから、この文字からなる部分は、本願指定役務の分野において、特定の意味合いを認識させるものではない。また、当該文字部分からは、その構成文字に相応して、「イチラク」の称呼を生じるものである。

他方、構成中、「ラーメン」の文字は、「中国風に仕立てた汁そば」(同)を意味する、我が国において広く一般に親しまれた語である。そして、この文字は、本願指定役務との関係において、需要者に、単に提供される飲食物がラーメンであることを認識させるにすぎないものであることから、当該部分は自他役務の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱いものというべきであり、これより、自他役務の識別標識としての称呼及び観念は生じないというのが相当である。

さらに、前記のとおり、「一楽」の文字部分は特定の観念を生じないものであるから、「一楽」及び「ラーメン」の各文字部分の間に、観念的にも密接な関連性を見いだすことはできない。

そうすると、本願商標は、その構成中の「一楽」の文字部分が、独立して需要者に対し役務の出所識別標識としての機能を果たし得るものといえる。

以上から、本願商標からは、その構成中、「一楽」の文字部分を要部として抽出し、この部分(以下「本願要部」という。)を他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるというべきである。

してみれば、本願商標からは、「イチラクラーメン」の一連の称呼のほか、本願要部に相応して、「イチラク」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

(3)引用商標について

引用商標は、「一楽」の文字を標準文字で表してなるところ、上記(2)のとおり、この文字からなる部分は、本願指定役務の分野において、特定の意味合いを認識させるものではない。そうすると、引用商標からは、その構成文字に相応して、「イチラク」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

(4)本願商標と引用商標の類否について

本願商標と引用商標を比較すると、外観について、全体の構成との比較においては相違するものの、本願要部と引用商標との比較においては、両者はいずれも、「一楽」の文字を標準文字で表してなるものであるから、外観上、同一である。

そして、称呼においては、「イチラク」の称呼を共通にするものである。

また、観念においては、いずれも特定の観念が生じないから比較することができない。

したがって、本願要部と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観を同一にし、「イチラク」の称呼を共通にするものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して考察すれば、本願商標と引用商標は、相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。

(5)本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について

本願商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似するものである。

(6)小括

以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定役務も引用商標の指定役務と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

6 請求人の主張について

(1)請求人は、本願商標は、全体として外観上まとまりよく一体となった商標「一楽ラーメン」であって、これが、「一楽」と「ラーメン」の各文字部分に分離されるものではない旨を主張している。

しかしながら、本願商標の構成中、「ラーメン」の文字は、本願指定役務との関係において、需要者に、単に提供される飲食物がラーメンであることを認識させるにすぎないものであることから、当該部分は自他役務の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱いものというべきであり、当該文字部分からは、自他役務の識別標識としての称呼及び観念は生じないというのが相当である一方、構成中、「一楽」の文字部分は、特定の観念を生じないものであるから、「一楽」及び「ラーメン」の各文字部分の間に、観念的にも密接な関連性を見いだすことはできず、本願商標は、その構成中の「一楽」の文字部分が、独立して需要者に対し役務の出所識別標識としての機能を果たし得るものといえるから、本願商標からは、構成中、「一楽」の文字部分を本願要部として抽出し、他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるというべきであることは、上記5(2)のとおりである。

(2)請求人は、「ラーメン」の文字を有する商標に関する過去の登録例を挙げ、本願商標の類否判断においては、「ラーメン」を含めた商標全体としての類否が判断されるべき旨を主張している。

しかしながら、商標の類否の判断は、対比する商標について個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人が挙げた登録例は、いずれも、当該登録例に係る商標の構成態様(図形との結合の有無、文字種)、又は、請求人が併存登録されているとする商標の構成態様(図形との結合の有無、文字種等)において、本願とは事案を異にするものであり、本願商標と引用商標については、上記5においてした判断のとおりであるから、当該登録例をもってその判断が左右されることはない。

(3)請求人は、本願指定役務における取引の実情として、「飲食店を経営する事業者が出願する商標は、看板に付して使用される場合が多く、本願商標の出願人は、出願された商標を看板に付して使用してい」る旨、「需要者は、店舗に掲げられた看板に付された商標全体を一体的な商標として看取することにより、特定の店舗であることを認識するものと思料する」から、「需要者は、看板に付された商標の一部をわざわざ抽出して、特定の店舗であることを認識しているわけで」はない旨を述べ、「これを踏まえると、本願商標は、「一楽」の文字部分に「ラーメン」の文字部分が加わったものであり、例えば本願商標が店舗名として看板に付して使用された場合、需要者は、「一楽ラーメン」を1つの商標として店舗名を認識することが一般的である」から、「本願商標は、全体を一体に把握することにより自社商品識別機能を発揮するもの」と主張する。

しかしながら、請求人からは、飲食店を経営する事業者が出願する商標は、看板に付して使用される場合が多いことを示す証拠は提出されておらず、また、請求人自身による本願商標の使用状況は、当該商標が現在使用されている役務についてのみの特殊的・限定的な取引の実情であって、これを、本願指定役務における一般的・恒常的な取引の実情ということはできない。

そして、本願商標は、その構成中の「一楽」の文字部分が、独立して需要者に対し役務の出所識別標識としての機能を果たし得るものといえることは、上記5(2)及び6(1)のとおりである。

(4)請求人は、「一楽」という名称の飲食店が、全国に多数存在しており、かかる状況から、「一楽」の文字から特定の店舗を想起・識別することは困難である旨、及び、「一楽ラーメン」という名称を用いた飲食店は、請求人が運営する店舗のみであり、他には確認されていないから、取引者・需要者は、本願商標全体を一体に把握することにより、請求人が運営する飲食店と理解することができる旨を主張している。

しかしながら、請求人の提出に係る証拠(提出物件19)によれば、飲食店検索サイトにおける、全国を対象とした、店名に「一楽」の文字を含む店舗の検索結果が157件であることはうかがえるものの、合議体が職権により、同ウェブサイトにおいて、同条件で検索を行ったところ、別掲1のとおり、当該検索結果(合議体注:合議体が検索した時点での検索結果は158件)には、「和の食彩 吉楽庵」、「瀬戸内酒菜 楽市楽座」、「みき日楽哩」等の、店名に「一楽」の文字を含まない店舗が含まれている。加えて、別掲2によれば、全国における飲食店の店舗数は約100万件又は140万件とされていることを踏まえると、請求人が提出する証拠からは、「一楽」の文字が、本願指定役務との関係で、ありふれた名称であるということはできない。

(5)請求人は、「出願人(合議体注:請求人)の店舗は長年にわたり地元に根差した人気店であり、かつ、『NARUTO』の作中に描かれるラーメン店のモデル店として国内外に広く知られている。このことから、現在では月間売上はおよそ1,000万円、来店者数は約15,000人に達しており、極めて高い認知度と集客力を誇る店舗となった。以上のように本願商標の周知性は立証されることから、本願商標は引用商標と非類似と認識されるべき」旨を主張し、その証拠として、提出物件21ないし提出物件36を提出している。

しかしながら、請求人の主張によれば、請求人の運営に係る店舗は、福岡県福岡市東区及び近隣の町という、限られた地域に所在する4店舗のみであり、請求人が述べる売上額及び来店者数も、本願指定役務である「飲食物の提供,ラーメンを主とする飲食物の提供」に関する業界において、どの程度のシェアを占めるものであるのか不明である。

また、提出された証拠(提出物件21ないし36)からは、請求人の運営に係る店舗が、地域のラーメン店として、地方紙及び同地方紙による書籍並びに地域のテレビ局による放送で取り上げられたことや、漫画作品「NARUTO」に登場するラーメン店のモデルとして、同漫画作品の一部ファンの間で知られていることはうかがえるものの、請求人に係る店舗を紹介する媒体が一地方にとどまり、かつ、取り上げられた回数も数回程度に限られていること、本願指定役務の需要者は、前記漫画作品のファンに限定されない、極めて幅広い層が含まれていることからすれば、請求人の主張及び提出された証拠からは、本願商標が、請求人に係る商標として周知であるということはできない。

(6)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

7 まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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