sokuhyo

Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900028
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6867722号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

1 本件商標

本件登録第6867722号商標(以下「本件商標」という。)は、「FIREBALLS GC」の欧文字を標準文字で表してなり、第25類「被服,ティーシャツ,ワイシャツ類及びシャツ,タンクトップ,ジャケット,コート,スカーフ,ズボン及びパンツ,ショートパンツ及びショーツ,スカート,スコート,ズボン,セーター,下着,ベルト,スウェットシャツ,帽子,バイザー(帽子),バンダナ,履物,ソックス」を指定商品として、令和4年4月27日に登録出願された商願2022―49017に係る商標法

第10条第1項の規定による商標登録出願として同5年4月25日に登録出願、同6年11月11日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりであって、(1)及び(2)の商標権は現に有効に存続している。

(1)商標法第4条第1項第11号に関して引用する商標

登録第6331097号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の構成:FIREBALL PARTY COOLER

指定商品:第21類「家庭用又は台所用の器具及び容器,台所用・清掃用バケツ又は手おけ,食品及び飲料の保冷用アイスパック,氷おけ,飲料冷却保存用容器,アイスペール,飲料用アイスボックス(容器),ワインクーラー,携帯用アイスボックス,携帯用アイスボックス(電気式のものを除く。),瓶用の断熱ホルダー,クーラーバッグ,クーラーボックス,携帯用クーラーボックス(電気式のものを除く。),リキュールグラスセット,冷却用瓶」及び第33類「アルコール飲料(ビールを除く。),アルコール飲料製造用調製品(ビール用のものを除く。),スピリッツ及び洋酒,スピリッツ(蒸留酒),蒸留酒,消化促進酒(リキュール及びスピリッツ),ウイスキー,ブレンドウイスキー,バーボンウイスキー,ウイスキーベースのリキュール,風味付けされたウイスキー,風味付けされたバーボン,シナモン風味のウイスキー,シナモン風味のバーボン,アペリティフ(ビールを除く。),カクテル,プレミックスアルコール飲料(ビールベースのものを除く。),香辛料入りアルコール飲料」

優先権主張日:2019年(令和元年)9月13日(アメリカ合衆国)

登録出願日:令和2年1月29日

設定登録日:令和2年12月17日

(2)商標法第4条第1項第15号に関して引用する商標は、引用商標1のほか、以下のとおりの商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)である。

ア 登録第5710840号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の構成:FIREBALL(標準文字)

指定商品:第33類「蒸留酒,日本酒,ウイスキー,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」

登録出願日:平成26年6月12日

設定登録日:平成26年10月17日

イ 国際登録第1575576号商標(以下「引用商標3」という。)

商標の構成:別掲のとおり

指定商品:第32類「Malt-based beer; brewed sugar-based beer.」及び第33類「Alcoholic beverages, except beer.」

優先権主張日:2020年(令和2年)8月17日(United States of America)

国際商標登録出願日:2020年(令和2年)9月29日

設定登録日:令和4年1月21日

ウ 登録第6520015号商標(以下「引用商標4」という。)

商標の構成:FIREBALL X

指定商品:第32類「ビール,麦芽ビール,風味付けされた麦芽を主原料とするビール,アルコール分を含まない飲料製造用シロップ,飲料製造用調製品(アルコール分を含まないもの),飲料用シロップ,エール,ラガービール,クラフトビール,風味付けされたビール,ウイスキー風味のアルコールを含有しない飲料,バーボン風味のアルコールを含有しない飲料,風味付けされたウイスキー風味のアルコールを含有しない飲料,風味付けされたバーボン風味のアルコールを含有しない飲料,アルコール分を含まないビール風味の清涼飲料,アルコール分を含まないワイン風味の清涼飲料,シードル(アルコール分を含まないもの),アペリティフ(アルコール分を含まないもの),ミネラルウォーター・炭酸水及びその他のアルコール分を含有しない飲料,アルコール分を含まない炭酸飲料,コーラ,レモネード,ジンジャーエール及びジンジャービール,トニックウォーター,果実飲料及びフルーツジュース,シロップその他の飲料製造用調製品,コーディアル(果汁飲料),風味付けされたアルコールを含有しない麦芽飲料(ビールを除く。)」及び第33類「アルコール飲料(ビールを除く。),アルコール飲料製造用調製品(ビール用のものを除く。),スピリッツ(飲料),スピリッツ及び洋酒,スピリッツ(蒸留酒),蒸留酒,消化促進酒(リキュール及びスピリッツ),ウイスキー,ブレンドウイスキー,バーボンウイスキー,ウイスキーベースのリキュール,風味付けされたウイスキー,風味付けされたバーボン,シナモン風味のウイスキー,シナモン風味のバーボン,アルコール入り麦芽飲料(ビールを除く。),麦芽又は麦を使用した蒸留酒,風味付けされたアルコールを含有する麦芽飲料(ビールを除く。),ぶどう酒,りんご酒,アペリティフ(ビールを除く。),ジン,ウオッカ,ラム,カクテル,プレミックスアルコール飲料(ビールベースのものを除く。),香辛料入りアルコール飲料」

優先権主張日:2021年(令和3年)2月26日(アメリカ合衆国)

登録出願日:令和3年8月23日

設定登録日:令和4年2月28日

(3)商標法第4条第1項第19号に関して引用する商標は、上記引用商標に加えて、全世界の「FIREBALL」関連商標登録一覧(甲6)のとおりの商標(以下、まとめて「全世界における引用商標」という。)である。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 本件商標について

本件商標は、その外観上、一連に書され視覚上支配的な「FIREBALLS」の部分と2文字のみからなる「GC」の部分とが分離して認識されることが明らかである。観念においても、当該「FIREBALLS」は、「火の玉」を意味する「FIREBALL」の複数形であるところ、「GC」は何かの語(例えば、商標権者の名称から鑑みれば、golf courseやgolf club等の単語)の頭文字であることが推認されるものの、特定することはできない。したがって、本件商標の要部は、「FIREBALLS」にあることが明らかであり、称呼としても「ファイヤーボールズ」、または「ズ」が省略されて「ファイヤーボール」のみが生ずることも少なくないはずである。

イ 引用商標1について

引用商標1は、「FIREBALL PARTY COOLER」の欧文字を横書きしてなるところ、「FIREBALL」、「PARTY」及び「COOLER」の3つの英単語からなるが、「火の玉」を意味する「FIREBALL」部分を除く「PARTY COOLER」部分は、「パーティ用冷却器」の意味であって、パーティ等で供される酒類を含む飲料との関係において識別力が弱いため、引用商標1の要部は「FIREBALL」部分にある。また、「ファイヤーボールパーティクーラー」の称呼はやや冗長であるため、先頭の「ファイヤーボール」のみの称呼をもって省略されることも多い。

ウ 本件商標と引用商標1との対比

本件商標の要部「FIREBALLS」と引用商標1の要部である「FIREBALL」との相違は、語尾の「S」の有無のみであり、当該「S」は、英語の複数形を表す1文字にすぎず識別力が弱いため、両商標は、観念及び称呼において類似する。

本件商標の指定商品には、包括的な「被服」が含まれ、当該被服には、「手袋」「食事用エプロン」等も含まれる。

一方、引用商標1の指定商品には、包括的な「家庭用又は台所用の器具及び容器」が含まれ、当該商品には、「家事用手袋」のほか、「洋服用ブラシ」、「洋服用伸張具」、「洋服用アイロン台」、「被服用ストレッチャ」等も含まれる。これらの商品は、「家事用エプロン」と「家事用手袋」とがその用途や原材料等において、ほぼ一致するものであり、それ以外の被服関連の商品についても生産部門や販売部門が共通することが多く、需要者の範囲も重複する。

すなわち、両商標は、その指定商品の一部においても類似関係にある。

したがって、本件商標は、引用商標1に類似し、引用商標1の指定商品に類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

ア 引用商標2ないし引用商標4

引用商標2は、「FIREBALL」の欧文字を一連に表してなるところ、引用商標2からは、「火の玉」の観念と「ファイヤーボール」の称呼が生じるものである。

また、引用商標3は、別掲のとおりの構成からなるところ、当該デザインにおいて、文字要素としては「FIREBALL」が支配的であり、当該部分から、「火の玉」の観念と「ファイヤーボール」の称呼が生じるものである。

さらに、引用商標4は、「FIREBALL」の欧文字と一連に書した右側に間隔を空けて「X」の文字を付してなるところ、構成上支配的な部分である「FIREBALL」部分から、「火の玉」の観念と「ファイヤーボール」の称呼が生じるものである。

イ 引用商標の周知性

申立人は、米国ルイジアナ州に本社を構える世界的な酒類・飲料を扱う大手グループ企業であるSazerac Company,Inc.(甲7)のブランド管理に特化した、同じくルイジアナ州に会社を構える上記社の子会社である。以下、申立人と上記社とを同視し、サゼラック社という。

サゼラック社は、1850年に米国で創業されて以来、旧来の家族経営を守り続ける希少な大手酒類飲料メーカーであり、アメリカ国内はもとより、イギリス、アイルランド、インド、カナダ、フランス、オーストラリアなど世界112か国以上で事業を展開し成功を収めている。世界市場で急成長を遂げている「アーリー・タイムズ」、「サザン・カンフォート」、「バッファロー・トレース」などのグローバルブランドを筆頭に、450を超えるプレミアムブランドを所有、販売している(甲8)。

サゼラック社は、日本において2000年(平成12年)以降、株式会社明治屋(以下「明治屋」という。)や日本ビール株式会社等を中心に複数の酒類販売会社と取引をしてきたが、2022年(令和4年)6月には、明治屋との間で、日本市場における「アーリー・タイムズ」、「サザン・カンフォート」、「バッファロー・トレース」等の総代理店契約締結に向け合意に至った(甲8、甲9)。

引用商標を付したウイスキーリキュールについて、申立人は、2007年以降を日本の複数の代理店及びオンラインショップ等を通じ(甲10~甲13)、そして、2022年6月以降は主として明治屋を通じて日本で販売を行っている(甲14。なお、「販売開始日:2025年3月3日」とあるのは、最近新たに追加した「ファイヤーボール」2アイテムに関するものである。)。

当該リキュールは、主として、若者に人気があり、冷やしてショットで飲むスタイルの他、ソーダ割り、アップルジュース割り等のロング・ドリンクとしても供され、海外では、パーティー・シーンを席巻するブランドの一つとなっている(甲14)。

申立人は、当該ブランドのリキュール商品に特化した英語版のウェブサイトも運営し(甲15)、フェイスブックやインスタグラム、Xの専用ページにもリンクさせ(甲16~甲18)、引用商標に係るブランドと当該リキュールを詳しく紹介する第三者のウェブサイト(甲19)もある。

英語圏で独自のウイスキーブランドとして2012年から2013年にかけて人気と知名度が高まった事実を客観的に示すものとしてウィキペディア(甲20)を提出する。当該ウィキペディアにおける記載は、英語のみならず、ポルトガル語、トルコ語のほか、韓国語版もある。

なお、営業秘密に関するため詳細な数字や取引書類を提出できないが、引用商標を使用する商品の2016年6月から2025年3月までの、日本における売上高と販売促進費を米ドルベースで示す。

2024年6月までの1年間の販売個数としては、1ケースでファイヤーボール6ボトル入り(計9リットル)を1,156個日本に出荷している。また、これまでの総ケース数は、約2,500であり、最近特に販売量が増えている。

以上より、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、少なくとも引用商標2及び引用商標3に係る商標が、申立人の業務に係るリキュールないし酒類を表示するものとして日本の需要者の間に広く認識されていたことが明らかである。

ウ 本件商標の指定商品との関連性について

引用商標が使用される商品は、第33類の酒類等の商品に限らない。

申立人は、当該酒類等の商品の販売促進を主たる目的として、引用商標をティーシャツやタンクトップ、帽子、バスローブ、ドレスや各種コスチューム等の被服、アパレル、各種のノベルティ的な商品にも使用している(甲21)。すなわち、申立人の主たる事業であって、引用商標で指定される酒類等の商品のみとの関係で混同を生ずるおそれを評価するのは妥当ではない。本件については、商標審査基準において総合判断すべきとして挙げられた点のうち、「四 その他人の標章がハウスマークであるか」を除き、該当性が強いということができ、当該四についても、引用商標はシリーズの商品について使用される商標であり、ハウスマークに準ずるものとして評価すべきである。なお、日本においても、引用商標と関連付けられる商品がリキュール等の酒類に限らないことは、メルカリの検索結果からもうかがうことができる(甲22)。

エ 小括

以上より、本件商標が当該指定商品である被服等に使用される場合、他人である申立人の業務に係る各種の商品の一つであると誤認し、また少なくとも、需要者が申立人と経済的又は組織的に何らかの関係があると誤認し、その出所について混同するおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第19号について

ア 引用商標の外国における著名性について

引用商標は、我が国におけるよりも欧米を中心とする諸外国においてより広く需要者に知られていることは上述のとおりである。その規模の大きさは、言及した日本に限定した販売促進費と、対応する全世界的な米ドルベースの総額とを比較しても明らかである。

全世界での販売数量は営業秘密であるので、開示することはできないが、全世界における引用商標(甲6)に、オーストラリア、カナダ、イギリス等において被服等を指定商品とする登録商標が含まれる。以上の事実等から、引用商標がその本国のアメリカを含む英語圏において著名であり、全世界においても極めて周知であることは明らかである。

その点を端的に疎明するものとして、Googleサーチエンジンによる「fireball sazerac」の検索結果を提出する(甲23)。

イ 不正の目的について

本件商標と全世界における引用商標との類似性は明らかであるから、次に、不正の目的をもって使用されるものである点を指摘する。

詳細を明かすことはできないが、申立人と本件商標権者とは、これまで全世界における引用商標と本件商標との併存登録契約を締結すべく交渉中であり、交渉中であるにもかかわらず、申立人に知らせることなく、本件商標の出願を行ったことは、それだけでも信義則に反する行為であると考える。この点について、当事者間の交渉によっては、本件商標の登録を自ら抹消すべく申請する等の行為には及ばないものと判断し、本件の登録異議申立てに至った。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断

(1)引用商標の周知性について

ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。

(ア)申立人は、米国ルイジアナ州に本社を構える世界的な酒類・飲料を扱う大手グループ企業(Sazerac Company,Inc.)の子会社である(申立人の主張)。

(イ)「明治屋NEWS」(2022年6月23日)には、「株式会社明治屋(・・・)は、世界的な酒類・飲料ブランドの大手グループ企業であるサゼラック社(・・・)と、日本市場における「アーリー・タイムズ」、「サザン・カンフォート」、「バッファロー・トレース」等の総代理店契約締結に向け合意に至りましたのでお知らせ致します。この結果、株式会社明治屋はサゼラック社保有の上記ブランドを含む7ブランドの取扱いを開始致します。」の記載があるが、引用商標に係るブランド名は紹介されていない(甲8)。

(ウ)「日本ビール株式会社」のウェブサイトの商品紹介において、「ファイヤーボール/Fireball」について説明されるとともに引用商標3の構成文字及び図形を含むラベル(以下「引用商標3に係るラベル」という。)が付されたウイスキーリキュールのボトルが表示され(甲9)、「ビアハウスオンラインショップ」、「Rakuten」、「amazon」、「ビックカメラ.com」の各ウェブサイトにもファイヤーボールと称するウイスキーリキュールが掲載され、上記と同様のボトルが表示されている(甲10~甲13)が、いずれもその掲載日が必ずしも明らかでない。

(エ)「MEIDI-YA ニュースリリース」(2025年2月27日)には、「インバウンド&Z世代の心をつかむ、シナモンフレーバーのリキュール「ファイヤーボール」2アイテムを3月3日(月)より販売開始!」の見出しの下、「「ファイヤーボール」は、米国サゼラック社が製造するシナモン・ウイスキー・フレーバーのリキュールです。」、「米国をはじめとする海外では、主に若者に人気があり、パーティー・シーンを席巻するブランドのひとつとなっています。」の記載がある(甲14)。

(オ)申立人のウェブサイトの上部には、「FIREBALL/WHISKY」の文字が表示され、引用商標3に係るラベルが付されたボトルが掲載されている(甲15)。また、Xには、本件商標の登録出願日前の2014年6月18日に英語による記載と共に上記と同様のボトルが掲載されている(甲18)。さらに、「Dear WHISKY」のウェブサイトには、「ファイヤーボールの種類と味わい、おすすめの飲み方」(2024年3月29日)が紹介され、上記と同様のボトルが掲載されている(甲19)。

(カ)「WIKIPEDIA」には、「Fierball Cinnamon Whisky」の見出しの下、引用商標3に係るラベルが付されたボトルが表示されているが、その説明は英語版のものである(甲20)。

(キ)申立人の販促商品のサイトには、「FIREBALL」の文字が付された帽子、Tシャツ等が掲載され、「ファイヤーボールウイスキーの検索結果」に、引用商標3に係るラベルが付されたウイスキーリキュールのほか、上記ラベルと同様のデザインが表されたTシャツ等が表示されているが、その掲載日は確認できない(甲21、甲22)。

また、「fireball sazerac」の検索結果については、本件商標の登録出願前のものはわずかであって、その具体的内容は不明である(甲23)。

イ 上記アからすると、申立人の業務に係るウイスキーリキュールについて、「FIREBALL(Fireball)」の文字及び引用商標3が使用されていることは認められるものの、本件商標の登録出願前における引用商標に係る使用状況が確認できる証拠は僅かであり、引用商標を使用した商品についての我が国又は外国における市場シェア、売上高などの販売実績、広告宣伝の方法や回数、費用規模など、その周知性を具体的、かつ、客観的に把握することができる証拠は提出されていない。

そうすると、申立人の提出に係る証拠によっては、引用商標が、取引者、需要者に対し、どの程度知られているかを推し量ることはできない。

したがって、提出された証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。

(2)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 本件商標と引用商標1の類否

本件商標は、上記1のとおり、「FIREBALLS GC」の欧文字を標準文字により表してなるものである。

一方、引用商標1は、上記2(1)のとおり、「FIREBALL PARTY COOLER」の欧文字からなるところ、「FIREBALL」、「PARTY」、「COOLER」の各文字の間に半文字程度の間隔を有しているとしても、横一列に同書、同大にまとまりよく表されており、その構成文字から生じる「ファイヤーボールパーティークーラー」の称呼も無理なく称呼し得るものであることから、一連一体のものと看取されるのが相当である。

そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観において、「FIREBALL」の文字を共通にするとしても、「PARTY COOLER」の文字の有無という明らかな差異を有し、当該構成文字の相違により、称呼においても「パーティークーラー」の音の有無の差異を有し、観念においても互いに紛れるものとはならないから、両者の外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

イ 小括

上記アのとおり、本件商標と引用商標1とは非類似の商標であるから、両商標の指定商品の類否について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性について

引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものとはいえない。

そうすると、引用商標を酒類の販売促進のために、帽子、Tシャツ等の商品に使用していること、本件商標に「FIREBALL」の文字が含まれていることを考慮しても、需要者が引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないとするのが相当である。

その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(4)商標法第4条第1項第19号該当性について

全世界における引用商標は、引用商標と同様の商標を含むものであり、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていると認められないものであるから、引用商標と同じ綴りからなる全世界における引用商標も引用商標と同様に日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていると認められないというべきである。

そして、申立人が提出した証拠からは、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的証拠も見いだせない。

なお、申立人は、本件商標権者と全世界における引用商標と本件商標との併存登録契約を締結すべく交渉中である旨主張しているが、提出された証拠からは、具体的な交渉内容については不明であって、当該交渉の事実をもって直ちに不正の目的があるともいい難い。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

(5)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するとはいえず、他に本件商標の登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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