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Trademark Appeal Case

結合商標の分離観察

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900107
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6905128号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6905128号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和6年3月27日に登録出願、第29類「茨城県産の乾燥野菜,茨城県産の乾燥果実,茨城県産のジャム,茨城県産の保存加工をした野菜,茨城県産の保存加工をした果実」、第30類「茨城県産のドレッシング,茨城県産のトマトソース」及び第31類「茨城県産の果実,茨城県産の野菜」を指定商品として、同7年2月7日に登録査定、同年3月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標及び標章は、以下の1及び2のとおりである。

1 申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(5)のとおりであり、その商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。

(1)登録第1636255号商標

商標の構成:「HITACHI」の文字を横書きしてなる商標

登録出願日:昭和56年6月3日

設定登録日:昭和58年11月25日

書換登録日:平成15年7月16日

指定商品:第1類、第5類、第29類、第30類、第31類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品

(2)登録第1734813号商標

商標の構成:「HITACHI」の文字を横書きしてなる商標

登録出願日:昭和56年6月3日

設定登録日:昭和59年12月20日

書換登録日:平成17年8月3日

指定商品:第29類、第30類、第31類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品

(3)登録第4670241号商標

商標の構成:「HITACHI」の文字を横書きしてなる商標

登録出願日:平成14年1月9日

設定登録日:平成15年5月9日

指定商品及び指定役務:第6類ないし第11類、第15類、第16類、第18類、第20類ないし第22類、第28類、第30類、第35類ないし第38類及び第40類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務

(4)登録第5123442号商標

商標の構成:「HITACHI」の文字を横書きしてなる商標

登録出願日:平成19年4月1日

設定登録日:平成20年3月28日

指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務

(5)登録第5362794号商標

商標の構成:「HITACHI」の文字を緑色で横書きしてなる商標

登録出願日:平成22年7月6日

設定登録日:平成22年10月22日

指定商品及び指定役務:第1類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務

以下、上記(1)ないし(5)の登録商標をまとめて「引用商標」という。

2 申立人が本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する標章は、申立人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、その業務に係る商品及び役務について使用し、需要者の間に広く知られていると主張する「HITACHI」の欧文字を横書きしてなるもの(以下「使用商標」という。)である。

第3 登録異議の申立て理由

申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものであると要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第23号証(枝番号を含む。)を提出した。

なお、以下、証拠の表示については、甲第1号証を「甲1」のように省略して表示する場合があり、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標について

ア 本件商標は、赤色、紺色、緑色の円弧又は半円を組み合わせた図形の上部に3つの赤色の三角形を配した図形(以下「本件商標図形部分」という。)の下部に「常陸太陽の庭」の文字を大きめの書体及び「Hitachi Taiyononiwa」の文字を小さめの書体で二段に配してなる(以下、当該文字部分を「本件商標文字部分」という。)ものである(甲1)。

そして、本件商標図形部分と本件商標文字部分は、両者の間に十分な空白があることから、一見して明確に両者を区別して認識できるものである。

また、本件商標図形部分のみからは、特定の称呼及び観念が生じるとはいえないことから、本件商標図形部分と本件商標文字部分とが観念的に密接な関連性を有しているとは考え難く、一連一体となった何かしらの称呼が生じるともいえない。

そうすると、本件商標図形部分と本件商標文字部分とが、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認めることはできないので、本件商標図形部分と本件商標文字部分は、それぞれが独立して出所識別機能を有するというべきである。

イ 本件商標文字部分は、「常陸太陽の庭」の文字及び「Hitachi Taiyononiwa」の文字を二段に配してなるところ、本件商標中の「Hitachi Taiyononiwa」の文字部分は、その上部の「常陸太陽の庭」の読みを欧文字で表したものと看取される場合があるとしても、上部の「常陸太陽の庭」の読みを欧文字の音で表すのであれば、「Hitachitaiyononiwa」又は「Hitachi taiyo no niwa」と一連又は意味合いのある部分を空白で区切って表されることが一般的であると思料する。

しかしながら、本件商標文字部分中の「Hitachi Taiyononiwa」の文字部分は、「Hitachi」と「Taiyononiwa」の部分を空白で区切っている。

以上よりすると、本件商標は、その構成中の「Hitachi」の文字部分が意図的に分離して認識できるように構成したものと考えざるを得ない。

(2)引用商標について

本件商標は、引用商標と類似するものと思料する。

引用商標は、いずれも「HITACHI」の文字を書してなるところ、我が国においては、申立人及びそのグループ会社のハウスマーク及び冠ブランド名として、極めて著名なものである。

そうすると、引用商標は、「ヒタチ」の称呼を生じ、「申立人及びそのグループ会社に係るブランド」の観念を生じるといえる。

(3)本件商標と引用商標との類否

ア 上記のとおり、本件商標の構成中の「Hitachi」の文字部分が意図的に分離して認識できるように構成したものと考えざるを得ないものであり、引用商標「HITACHI」は我が国において申立人及びそのグループ会社のハウスマーク及び冠ブランド名として極めて著名なものである。

そして、本件商標中の「Hitachi」の文字部分と引用商標「HITACHI」とは、本件商標中の「Hitachi」は語頭が大文字でその余が小文字であり、引用商標は全て大文字であるとしても、いずれも普通に用いられている書体で横書きされたものであって、取引者、需要者の注意をひく特徴を有しないものであるから、両者は、外観がほぼ同一のものというべきである。

以上の観点を踏まえると、本件商標は、引用商標との関係において商標審査基準でいうところの「需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」に該当するというべきである。

したがって、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成中の「Hitachi」の文字に注目し、当該部分が強く支配的な印象を与えるというべきであるから、これより「ヒタチ」の称呼及び「申立人及びそのグループ会社に係るブランド」の観念を生じるといえる。

イ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務とは、類似する。

(4)小括

以上よりすると、本件商標は、需要者の間に広く認識された引用商標と外観がほぼ同一であり、称呼及び観念も同一の類似の商標というべきあって、両商標の指定商品及び役務も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号について

(1)申立人について

申立人は、1910年に創業した総合電機メーカーであり、創業当初から発電機などの国産化を目指して電機メーカーとして発展してきた。1924年には国産初の大型電気機関車を完成、1932年には電気冷蔵庫1号を完成、1942年には国産電子顕微鏡第1号製品を完成させるなどした。また、1950年代からコンピューターの開発に着手し、1960年代には他社に先駆けてコンピューター事業を本格化し、1965年には国産コンピューター「HITAC5020システム」、1975年には大型コンピューター「HITAC Mシリーズ」を完成させるなどした。結果、我が国を代表する電機メーカーとなった(甲3)。

申立人の2022年度の売上収益は10兆8811億円、従業員数は約32万人、連結子会社数は575社(2023年12月31日時点)に及ぶ(甲4)。

申立人の2022年度の売上高は、我が国の上場会社で第11位、業種が電気機器としては第2位である(甲5)。

したがって、申立人及びそのグループ会社(以下「申立人等」という。)は、我が国有数の企業であることは明らかである。

現在の申立人等の業務範囲は、非常に広範囲に及んでいる。

申立人等に係る事業は、社会と産業を変革する「デジタル」「グリーン」「コネクティブ」という3つの潮流と親和性の高いアセットをグルーピングし、デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズの3つで構成しており、それらを多くのビジネスユニット(BU)及び子会社が担当している。

具体的には、(a)デジタルシステム&サービスとしては、クラウドサービス・プラットフォームBU、デジタルエンジニアリングBU、金融BU、社会BU、日立システムズ、日立ソリューションズ、(b)グリーンエナジー&モビリティとしては、原子力BU、パワーグリッドBU、日立パワーソリューションズ、鉄道BU、(c)コネクティブインダストリーズとしては、ビルシステムBU、日立グローバルライフソリューションズ、日立ハイテク、インダストリアルデジタルBU、水・環境BU、日立インダストリアルプロダクツ、日立産機システムが担当している(甲4の1)。

(2)使用商標の著名性

ア 申立人等は、我が国において、遅くとも1914年より「HITACHI」の欧文字からなる使用商標を様々な商品及び役務について使用を開始しており、以降、現在に至るまで、申立人等のハウスマーク及び冠ブランド名として、その業務に係る商品・役務について継続して使用している(甲6~甲8)。

イ 申立人及びそのグループの業務に係る商品は、2020年において、業務用エアコン(業務用冷暖房装置)の分野で業界シェアが第3位、家庭用エアコンのランキングでは第20位までに3つの機器がランクイン(2位、12位、18位)、及び冷蔵庫・洗濯機ほか白物家電の売れ筋ランクインでは3位、4位、10位、14位、17位にランキングされている(甲17~甲19)。

また、家電業界売上ランキング(2021~2022年)において5位、売上高は3966億円にのぼっている(甲20)。

ウ 申立人等は、以下のとおり、申立人等に係る商品及び役務の宣伝広告をしている。

(ア)テレビ広告

申立人等は、広告媒体としてテレビを積極的に活用しており、例えば、TBS系列で毎週土曜日21:00から21:54に放送されていたテレビ番組「日立 世界・ふしぎ発見」は、2024年3月にレギュラー放送は終了したものの、申立人等がメインスポンサーとなり、1986年から38年にわたって放送されていた長寿番組であり、全国31局で放映されていた(甲9、甲10)。

当該テレビ番組は、レギュラー放送は終了したものの2024年11月9日及び2025年3月22日に3時間スペシャル番組として放送され、当該テレビ番組は、今後もスペシャル番組が放送される予定である(甲10)。

申立人等は、上記テレビ番組を含め多くのテレビCMを放送しており、その冒頭に使用商標を表示している(甲11の1~3)。

また、申立人等は、近年、インターネットを用いた広告等にも力を入れており、特にYouTubeでは専用チャンネルを設け、全動画の再生件数は、数億回に及ぶ(甲11の4)。

(イ)新聞による広告

申立人等は、近年においては広告をデジタルシフトしているため、数は少なくなっているものの、例えば、日本経済新聞に2015年から2018年にかけて総計25回の広告を掲載していた(甲12の1)。

(ウ)屋外広告

申立人等は、1957年より現在まで大阪・通天閣に「HITACHI」の文字からなるネオンサインを表示している(甲12の2)。

(エ)商品カタログ

申立人等が製作するカタログ等には、必ずその表紙に「HITACHI」の文字を表示している(甲8)。

(オ)プロサッカークラブのメインスポンサー

申立人等は、プロサッカークラブ「柏レイソル」のメインスポンサーである。柏レイソルは、申立人の本社サッカー部が前身であり、1993年に「日立FC柏レイソル」とクラブ名を変更し、その後1996年にチーム名を「柏レイソル」に変更した。歴代のユニホームには、当該クラブの設立当初から現在に至るまで、その胸部分に使用商標が表示されている(甲13~甲15)。

エ 申立人に係る防護標章登録

申立人は、本件商標の指定商品に類似する商品及び役務について、「HITACHI」の文字からなる、登録第433710号商標及び登録第1492488号商標に係る防護標章登録を有している。

オ 以上のとおり、使用商標は、申立人等のハウスマーク及び冠ブランド名として、非常に幅広い商品・役務について使用されており、我が国内において極めて著名であることは明らかである。

(3)混同を生ずるおそれの有無

ア 本件商標と使用商標の類似性の程度

使用商標は、引用商標と同じく「HITACHI」の文字を書してなるところ、上記(2)のとおり、我が国においては、申立人等のハウスマーク及び冠ブランド名として、極めて著名なものである。

そして、本件商標の構成中「Hitachi」の文字部分と使用商標「HITACHI」とは、本件商標の「Hitachi」は語頭が大文字でその余が小文字であり、使用商標は全て大文字であるとしても、いずれも普通に用いられている書体で横書きされたものであって取引者、需要者の注意をひく特徴を有しないものであるから、両者は、外観がほぼ同一である。

しかも、本件商標は、その構成中の「Hitachi」の文字部分が意図的に分離して認識できるように構成したものと考えざるを得ないものである。

そうすると、本件商標は、取引者及び需要者をして、その構成中の「Hitachi」の文字部分が注目されるといえ、本件商標の当該文字部分と使用商標とは、外観がほぼ同一であるから、両商標の類似性は極めて高いというべきである。

イ 使用商標の周知著名性及び独創性の程度

使用商標は、申立人等のハウスマーク及び冠ブランド名として、我が国内において極めて著名であることは明らかである。

遅くとも1914年より「HITACHI」の欧文字を長年にわたり申立人等が一貫して使用してきたことを踏まえれば、使用商標は、相当程度独創性が高いというべきである。

ウ 本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品等との関連性の程度

(ア)本件商標は、その指定商品を上記第1に記載の第29類ないし第31類の商品とするものである。

一方、申立人等は、以下(イ)ないし(キ)のとおり、総合電機メーカーとしての技術を基礎として幅広い事業を行い、現在、使用商標を使用し、本件商標の指定商品を含め、幅広い分野の事業を行っている。

(イ)申立人等は、特に食品関係においては、農作物の生産に係るソリューションを提供しており、田畑などセンサーネットワークを張り巡らせ環境情報や生育情報を収集し、営農支援向けに効果的に活用することによって栽培指導や農作業の品質管理・効率化に役立てている(甲16の1)。

(ウ)申立人のグループ会社は、食品の製造及び加工に関わる企業等に対し、情報システム全体の企画・提案といった上流工程から、アプリケーション設計・開発といった下流工程、さらには稼働後の保守・運用まで一連のシステムライフサイクルの構築、運用を行っている(甲16の2)。

(エ)申立人等は、食品関係の販売の場である店舗・商標施設(決定注:「商標施設」は「商業施設」の誤記と認める。以下同じ。)向けに省エネルギー、かつ快適性に対応した空調、照明、冷凍・冷蔵機器・映像システムなどの提供を行っており、具体的には、例えば、大手コンビニエンスストア店舗の冷蔵ショーケースシステムの熱源機を提供している(甲16の3)。

(オ)申立人等は、食品等の販売の場である小売りに関し、小型の無人店舗サービスの実証実験を2022年2月に開始。実際に都内の百貨店に設置された当該無人店舗においては、商品の陳列棚の上部に画像表示装置を設置し、その画面上に「HITACHI」の文字が表示されている(甲16の4~6)。

飲食物の提供に関しても、申立人のグループ会社は、上記と同様にその店舗・商標施設向けの機器を提供している(甲16の7、甲16の8)。

(カ)申立人等は、そのデジタルサービスを用いて他社との協業により食品廃棄物問題に取り組むソリューションに取り組んでいる。当該ソリューションには、申立人等が開発した生鮮食品の賞味期限を推定するセンサーシステム及びデータ・インサイト・プラットフーム(決定注:「プラットフーム」は「プラットフォーム」の誤記と認める。)を構築し、よりスマートで柔軟なフードサプライチェーンを実現した。当該ソリューションにより、生鮮食料品のサプライチェーンは、少なくとも25%という大幅な農産物の廃棄を防ぐとともに、廃棄物に伴う関連コストを削減することができる(甲16の9~11)。

(キ)申立人等は、地域における新しいコミュニケーションを生み出すことにも取り組んでいる。特に地域の「農業」「人」「街」をつなぎ、街の農業について学びながら、地域住人が地元の野菜を選び、その野菜を調理してくれる地域のお店を選ぶことによって、コミュニケーションを生み、街の発展に貢献している(甲16の12、甲16の13)。

(ク)申立人のグループ会社は、当該会社が販売する調理家電に関連して様々なレシピを公開している(甲16の14、甲16の15)。

(ケ)以上よりすると、申立人等の業務に係る商品及び役務は、本件商標の指定商品の生産・製造・加工と密接な関連性があり、また、本件商標の指定商品の販売の場所である店舗・商標施設に対する設備の提供、本件商標の指定商品に直接関連したソリューション事業、農業を含めた地域コミュケーションの発展への貢献、及び本件商標の指定商品を利用したレシピの公開において関連性を有していることを踏まえれば、本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品及び役務は、高い関連性を有することは明らかである。

エ 商品の取引者及び需要者の共通性

本件商標の指定商品は、一般的な食料品であるから一般需要者を対象としている商品である。

一方、申立人等の業務に係る商品は、一般需要者を対象としている商品を多く含むから、本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品とは、その取引者及び需要者において共通する。

(4)小括

以上のとおり、使用商標は、申立人等のハウスマーク及び冠ブランド名として、本件商標の指定商品を含め、幅広い商品・役務について使用されており、我が国内において極めて著名なものである。

そして、本件商標は、その構成中の「Hitachi」の文字部分が使用商標と外観がほぼ同一であること、使用商標は相当程度独創性が高い商標であること、申立人等の業務に係る商品及び役務が本件商標の指定商品の生産・製造・加工と密接な関連性があり若しくは本件商標の指定商品の販売の場所である店舗・商標施設において関連性を有していること、また、その取引者及び需要者も共に一般需要者であること、などを併せ考慮すると、本件商標をその指定商品について使用するときは、その取引者及び需要者に使用商標を想起、連想させ、当該商品が、申立人等との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう混同を生ずるおそれがある商標に該当する。

(5)その他

ア 原審における認定、判断について

(ア)本件商標は、以下のとおり、原審において2024年11月1日付けで商標法第4条第1項第16号に該当するとして拒絶理由が通知されている。

原審は、当該拒絶理由中において「本件商標は、その構成中に、「旧国名。今の茨城県の大部分。」を表す「常陸」及びそのローマ字表記と認められる「Hitachi」の文字を有してなるものですから、本件商標をその指定商品中「茨城県産の商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨の認定、判断を行っている(甲21)。

そして、本件商標は、2024年11月1日付け(決定注:「2024年11月1日付け」は「2024年12月4日付け」の誤記と認める。)で、その指定商品が「茨城県産の乾燥野菜,茨城県産の乾燥果実,茨城県産のジャム,茨城県産の保存加工をした野菜,茨城県産の保存加工をした野菜,茨城県産の保存加工をした果実,茨城県産のドレッシング,茨城県産のトマトソース,茨城県産の果実,茨城県産の野菜」(決定注:「茨城県産の保存加工をした野菜」は重複記載されているものと認める。)に補正された結果、2025年2月7日付けで登録査定された。

(イ)本件商標は、上記(4)のとおり、その構成中の「Hitachi」の文字部分が、申立人等のハウスマーク及び冠ブランド名として、極めて著名な使用商標「HITACHI」と外観がほぼ同一である。

本件商標と同様に、出願商標の構成中の「Hitachi」の文字又は「HITACHI」の欧文字が、「常陸」及びそのローマ字表記として認識される旨判断しその商標登録を認めた場合には、申立人等のハウスマーク及び冠ブランド名として極めて著名な使用商標「HITACHI」の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)につながることから、申立人は、そのような商標登録を到底承服できない。

しかも、本件商標は、その構成中の「Hitachi」の文字部分が意図的に分離して認識できるように構成したものと考えざるを得ないものである。

したがって、原審における本件商標中の「Hitachi」の文字に係る認定、判断は、誤りである。

イ 知財高裁判決について

申立人は、第三者に係る第11類を指定商品とする登録第6280832号商標「hihachi」について、本件と同様の理由で異議申立(異議2020-900280)を行い、当該登録商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとして取り消された。

当該異議事件は知財高裁でも争われたが、知財高裁は、「本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,・・・検討した事情を総合的に考慮すると,注意力がそれほど高いとはいえない一般消費者が,被告補助参加人及びそのグループ会社の業務に係る商品及び役務を表示するものとして極めて高い周知著名性を有する引用商標に相当程度類似し,取り扱う商品も密接に関連する本件商標が付された商品に接した場合には,当該商品が被告補助参加人及びそのグループ会社の業務に係る商品であると混同するおそれがあるというべきである。」と判示している(知財高裁令和4年1月27日判決令和3年(行ケ)第10092号、甲22)。

ウ 無効審判に係る審決について

申立人は、第三者に係る第21類を指定商品とする登録第6621366号商標「hitasi」について、本件商標と同様の理由で無効審判(無効2024-890002)を行い、当該登録商標は、2024年12月18日付けで商標法第4条第1項第15号に該当する無効審決が通知された(甲23)。

エ 商標法第4条第1項第15号の規定及び防護標章の登録制度の存在意義について

申立人は、上記(1)及び(2)のとおり、我が国有数の企業である。そして、使用商標は、申立人等のハウスマーク及び冠ブランド名として使用され、極めて著名なものである。

本件商標は、上記(4)のとおり、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるから登録が取り消されるべきものであって、本件商標の登録が維持されるとすれば、我が国有数の企業のハウスマーク及び冠ブランド名と類似する商標を関連性の高い商品に認めることとなり、商標法第4条第1項第15号を空文化し、防護標章の登録制度の存在意義を失わせるものと考える。

第4 当審の判断

1 使用商標の周知著名性について

(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。

ア 申立人は、1910年に創業した総合電機メーカーであり、創業以来、発電機、電気機関車、家庭用電気機器、通信機器、電子計算機などの多種の商品を取り扱い(甲3、甲6、甲7)、現在では、総合電機メーカーとしての技術を基礎として、デジタル&サービス、グリーンエナジー&モビリティ及びコネクティブインダストリーズの3つで構成された事業を行っている(甲4の1)。

イ 申立人等の2022年度の売上収益は約10兆8,811億円であり、同売上高は我が国の上場会社で第11位、電気機器の業種では第2位である(甲4の1、甲5)。

また、日本国内における申立人等の2022年度の売上収益は3兆2,286億円である(甲4の1)。

ウ 申立人等の業務に係る商品は、2020年において、「おすすめBEST」と称するウェブサイトで業務用エアコンが業界シェア第3位(甲17)、「価格.com」と称するウェブサイトの「エアコン・クーラー 人気売れ筋ランキング」(2020年10月)で2位、12位、18位(甲18)、「Amazon.co.jp 売れ筋ランキング」(印刷日2020年10月14日)の「冷蔵庫・洗濯機ほか白物家電の売れ筋ランキング」で3位、4位、10位、14位、17位(甲19)にそれぞれ位置しており、「業界動向 SEARCH.COM」と称するウェブサイトの「家電業界 売上高ランキング(2021~2022年)」で申立人が5位、その売上高は3,966億円である(甲20)。

エ 申立人等は、我が国において、遅くとも1914年から使用商標の使用を開始し、現在に至るまで、申立人等の業務に係る様々な商品及び役務(家庭用電気機器、通信機器、電子計算機、ソリューション事業など)について継続して使用している(甲4、甲6~甲8、甲16)。

オ 申立人等は、使用商標を、1986年から2024年3月まで継続して全国で放映されたテレビ番組「日立 世界・ふしぎ発見」におけるCMやその他のCM及び1995年からプロサッカーリーグに昇格したサッカークラブ「柏レイソル」のユニフォームの胸部分に、使用商標を表示するなど、自社の広告宣伝において、使用商標を表示している(甲9~甲15)。

また、使用商標は、遅くとも2018年以降、申立人等の商品カタログの表紙に表示され、申立人のウェブサイトにも表示されている(甲8)。

(2)上記(1)のとおり、申立人等の2022年度の売上収益は、約10兆8,811億円であり、売上高は我が国の上場会社において第11位、電気機器の会社において第2位、日本国内での売上収益は3兆2,286億円であり、申立人の業務に係る商品のシェア及び人気は高く、また、申立人等は1914年から現在まで継続して申立人等の業務に係る商品及び役務(家庭用電気機器、通信機器、電子計算機、ソリューション事業など。)について使用商標を使用し、さらに、申立人等は1986年頃からテレビCM等で使用商標を表示した申立人等又は申立人等の取扱いに係る商品の宣伝広告をし、加えて、使用商標は申立人等の商品カタログの表紙や申立人のウェブサイトに表示されていることなどからすれば、使用商標は、本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして並びに申立人等のハウスマークとして需要者の間に広く認識されているものと認めるのが相当である。

2 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標について

本件商標は、別掲のとおり、上段に赤、紫、黄緑で表された太陽を模したとおぼしき図形(以下「本件図形部分」という。)を、中段に茶色で「常陸太陽の庭」の文字を大きく書し、下段に茶色で「Hitachi Taiyononiwa」の文字を中段の「陸」と「の」の文字の間にほぼ収まるように小さな文字で表したもの(以下、中段と下段の文字部分をまとめて「本件文字部分」という。)からなるところ、本件図形部分と本件文字部分は、間隔を空けて配置され、その色彩も異なることからすれば、視覚上、分離して看取し得るものである。

そして、中段の「常陸太陽の庭」の文字は、その構成中「常陸」は、「旧国名。今の茨城県の大部分。」(出典:「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)の意味を有し、「太陽の庭」は、一般の辞書等に掲載のない語であるところ、同色で横一列に同書、同大、同間隔に、視覚上、まとまりよく一体的に表されたものであるから、その構成全体をもって一種の造語と認識されるものである。

また、下段の「Hitachi Taiyononiwa」の文字は、中段の文字と同色で、視覚上、構成全体がまとまりよく一体的に表されているものであって、本件文字部分の構成中、下段の欧文字部分は、中段の文字部分の読みを表したものと無理なく理解されるものであり、さらに、本件文字部分から生じる「ヒタチタイヨウノニワ」の称呼も、格別冗長というべきものではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。

申立人は、「Hitachi」と「Taiyononiwa」の文字部分を空白で区切っていること、及び「Hitachi」の文字が、申立人等のハウスマーク及び冠ブランド名として著名な「HITACHI」と同一のつづりからなり、外観上ほぼ同一であることから、当該文字部分を分離して抽出し、比較すべきである旨主張している。

しかしながら、本件文字部分は、上記のとおり、構成全体がまとまりよく一体的に表されているものであり、中段に表された文字の読みを表したものと認識される下段に小さく書された欧文字部分に接する需要者、取引者をして、「Hitachi」の文字部分に着目し、これを分離して看取するとはいい難いものであり、仮に、「Hitachi」の文字と「Taiyononiwa」の文字との間に空白があることから、「Hitachi」の文字部分が視覚上分離して看取される場合があるとしても、これに接する取引者、需要者は、当該文字を中段に表された地名である「常陸」の文字の読みを表したものと認識、理解するとみるのが自然であるから、申立人等を想起することはないものというのが相当である。

したがって、本件文字部分からは、その構成文字に相応して、「ヒタチタイヨウノニワ」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じない。

(2)引用商標について

引用商標は、上記第2の1のとおり、いずれも「HITACHI」の欧文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ヒタチ」の称呼を生じるものである。

そして、「HITACHI」の文字は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるから、引用商標は、「申立人等のブランド」の観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用商標の類否

本件商標と引用商標の類否を検討すると、両商標は、文字と図形からなるか文字のみからなるかの構成において明確に区別できるものであり、また、本件文字部分と引用商標を比較すると、外観においては、「Hitachi」と「HITACHI」のつづりを共通にする部分があるとしても、「常陸太陽の庭」及び「Taiyononiwa」の文字の有無の差異によって、明確に区別できるものである。

また、称呼においては、「タイヨウノニワ」の音の有無、音数の差異を有するから明瞭に聴別できるものである。

さらに、観念においては、本件商標からは観念が生じないのに対し、引用商標からは、「申立人等のブランド」の観念を生じるから、相紛れるおそれはないものである。

そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。

(4)小括

以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標である。

したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号について

(1)使用商標の周知著名性について

上記1のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人等の業務に係る商品及び役務(以下「申立人商品役務」という。)を表示するものとして並びに申立人等のハウスマークとして需要者の間に広く認識されているものと認められる。

(2)本件商標と使用商標の類似性の程度について

使用商標は、引用商標と同様に「HITACHI」の欧文字を横書きしてなるところ、上記2のとおり、本件商標と使用商標も同様に、非類似の商標であって、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない商標というべきものであるから、類似性の程度は低いといえる。

(3)本件商標の指定商品と申立人商品役務の関連性、需要者の共通性等について

本件商標の指定商品は、「茨城県産の乾燥野菜,茨城県産の乾燥果実,茨城県産のジャム」などの野菜や果実及びその加工品であり、申立人商品役務は、「家庭用電気機器、通信機器、電子計算機、ソリューション事業」などであるから、その需要者の範囲が一部共通する部分があるとしても、本件商標の指定商品と申立人商品役務とは、商品の製造・販売や役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的とはいえないし、商品の販売場所や役務の提供の場所、あるいは、それらの商品と役務の用途も異なるものであるから、関連性は低いというべきである。

また、申立人等が本件商標の指定商品に係る生産、販売などの経営を進めていることが需要者に認識されているなどの実情も見いだせない。

(4)出所の混同のおそれについて

上記(1)のとおり、使用商標は、申立人商品役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるが、上記(2)のとおり、本件商標は、使用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって、その類似の程度は低いものというべきものであり、本件商標の指定商品と申立人商品役務の関連性も低く、申立人等が本件商標の指定商品に係る生産、販売などの経営を進めていることが需要者に認識されているなどの実情も認めらないことからすれば、本件商標は、本件商標の権利者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして使用商標又は申立人等を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。

その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

(5)小括

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではないから、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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