結論テキスト
登録第6912055号商標の商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025900117 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6912055号商標(以下「本件商標」という。)は、「Project:F」の文字を普通に用いられる方法で書してなり、令和7年1月6日に登録出願、第35類に属する別掲1のとおりの役務、第41類に
属する別掲2のとおりの役務のほか、第36類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同年3月6日に登録査定、同月25日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、ありふれた書体からなる「Project F」の欧文字からなる商標(以下「使用標章」という。)であり、使用標章を「経営に関するコンサルティング,起業に関するコンサルティング」及び「起業支援講座における知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,起業家のためのセミナーの企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催,インターネットを利用して行う音声の提供」(以下「申立人役務」という場合がある。)について使用している。
申立人は、本件商標は、その指定役務中、第35類「全指定役務」及び第41類「全指定役務」(以下「申立てに係る役務」という場合がある。)の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第65号証を提出した(以下「甲第〇号証」を「甲〇」のように記載する。)。
(1)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、ありふれた書体からなる「Project:F」の欧文字により構成されているところ、本件商標権者は、本件商標を使用して起業を志す女性を主たる対象として「ビジネススクール」を開講している(甲3~甲5)。
他方、申立人は、起業を志す女性を主たる対象として「ビジネススクール」を開講し、申立人役務について、使用標章を使用している(甲6~甲8)。
ア 本件商標と使用標章の類否
(ア)外観
本件商標「Project:F」と、使用標章「Project F」とを比較すると、いずれの商標も欧文字の「Project」の文字と、欧文字の「F」の文字とが組み合わされた結合商標であるが、本件商標が「:」を介して結合しているのに対して、使用標章はスペースを介して結合している点に相違が見受けられる。しかしながら、かかるわずかな相違が認められたとしても、当該相違が商標の類否判断に与える影響は限りなく小さく、本件商標と使用標章とは、外観において類似する。
(イ)称呼
本件商標の構成中「:」の部分や使用標章の構成中のスペースの部分が、発音されずに捨象される傾向にあることを考慮すれば、いずれの商標からも「プロジェクトエフ」の称呼が生じ、本件商標と使用標章とは、称呼において類似するものといえる。
(ウ)観念
本件商標及び使用標章は、いずれの商標も造語によって構成される商標であって、商標そのものからは辞書的な意味が生じることを確認することはできないものの、本件商標及び使用標章を構成する語の中で、「Project」の語は、「計画、企画」等の意味を表し、日常的に用いられる平易な語であることから、いずれの商標からも、例えば「エフ計画」や「エフ企画」ほどの観念が生じ、本件商標と使用標章とは、観念において類似するものといえる。
(エ)まとめ
そうすると、本件商標と使用標章とは、商標から生じる外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛らわしく、本件商標と使用標章とは、相互に類似する商標といえる。
イ 本件商標の申立てに係る役務と申立人役務の類否
本件商標に係る指定役務中、第35類「全指定役務」(別掲1)と申立人が、使用標章を使用している役務「経営に関するコンサルティング,起業に関するコンサルティング」、また、第41類「全指定役務」(別掲2)と申立人が、使用標章を使用している役務「起業支援講座における知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,起業家のためのセミナーの企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催,インターネットを利用して行う音声の提供」は、それぞれ類似する役務といえる。
さらに、本件商標権者は、ビジネススクールを開講するに際して本件商標を使用している。一方、申立人も、ビジネススクールを開講するに際して使用標章を使用している。そして、いずれのビジネススクールも、起業を志す女性を主たるターゲットとしていることから、具体的な使用態様を考慮して役務の類否を検討してみても、申立てに係る役務と申立人役務とは、提供する役務の目的が共通し、また、取引者、需要者の範囲が一致することで、類似する役務といえる(甲3~甲8)。
ウ 使用標章の周知性
(ア)商標の使用開始の時期
申立人は、自らが主宰するビジネススクールを、平成28年(2016年)9月頃から開講しており、現在に至るまで、長期間休業することなく、定期的にセミナーを開催している(甲6~甲8)。なお、申立人は、入籍する前の旧姓をビジネスネームに使用して事業を行なっており、申立人と、ビジネススクールの主宰者であるMとは、同一人物である(甲9、甲10)。
また、上記の証拠(甲6~甲8)からは、申立人が、セミナーを開催していること、一部の受講者に対しては、個別のコンサルティングを提供していることが確認できる。なお、証拠方法のレジュメ(甲8)は、申立人が受講者に配布する資料であるが、当該資料は膨大な量に及ぶため、資料の一部を抜粋したものである。
さらに、申立人が、ビジネススクールを始めた時期を示す証拠方法として、申立人と受講者との間で交わされたメールのやりとりの写しの一部(甲11)を提出する。申立人と受講者との間で受講料の振り込みに関する連絡が交わされていることから、申立人が、平成28年(2016年)9月頃にはビジネススクールを開講していたことが確認できる。
(イ)事業内容
申立人が主宰するビジネススクールの講義内容は、「会社経営」や「起業支援」に関する内容が中心であり、細かな内容を含めると多岐にわたるが、事業に課題を抱える女性経営者や、将来的に起業を志す女性を主たる対象に、様々な側面から課題に取り組むようカリキュラムが構築されたセミナーを開催している(甲6~甲8)。
また、受講者が選択するコースによっては、セミナーに参加するだけでなく、個別セッションと呼ばれるマンツーマンによるコンサルティングを受けることが可能となり、受講者が個別の相談を持ちかけ、申立人、又は申立人のもとで働く講師から、直接アドバイスを受けることが可能となっている(甲12、甲13)。申立人のハンドルネームである「め:」と受講者との間で、「経営」や「起業」に関して、相談と回答とが具体的に交わされていることがわかる。
(ウ)受講者数
申立人が集計したところによれば、これまでの受講者の総数は、「プラチナコース:136人」「ゴールドコース:1,527人」「オンラインコース:254人」「合計:1,917人」であり、かかる事実を示す証拠として、申立人が集計した「受講者名簿」の写し(甲14~甲16)及び「受講者の出身地の統計表」の写し(甲17)を提出する。
また、どのコースを選択した場合であっても、申立人が主宰するビジネススクールのセミナーに参加することが可能であるが、「プラチナコース」及び「ゴールドコース」にあっては、申立人又は申立人のもとで働く講師から、個別のコンサルティングを受けることができ、直接アドバイスを得ることが可能となる。
よって、申立人が主宰するビジネススクールは、「起業支援講座における知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,起業家のためのセミナーの企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催」だけでなく、「経営に関するコンサルティング,起業に関するコンサルティング」についても、需要者の間に広く認識される商標ということができる。
また、受講者の住所の分布を確認してみると、北海道から、沖縄県に至るまで、受講者の出身地は日本全国に分布している。ここで、商標法第4条第1項第10号の適用にあっては、隣接する数県程度で広く認識されている程度の周知性で適用が認められると解されているところ、使用標章にあっては、上記の集客の結果から全国的に認識されている商標ということができ、本件商標には同号の適用が認められ、取り消されるべきである。
(エ)売上高
申立人が集計したところによれば、2017年度から2024年度の売上げは、「2017年度(第1期)1,200万円」「2018年度(第2期)3,600万円」(中略)「2023年度(第7期)3億8000万円」「2024年度(第8期)7億5,000万円」であり、かかる事実を示す証拠として、会計を担当している法人の「決算報告書」の写しの一部(甲18~甲26)を提出する。
第1期から第7期までは、申立人が過去に代表を務めていた日本法人「ProjectF株式会社」(甲27)が会計を担当している。また、第8期以降は、現在、申立人が代表を務めるシンガポール法人「M VISION PROJECT PTE.LTD」(甲28、甲29)が会計を担当している。
申立人が主宰するビジネススクールが計上する売上高が毎年順調に伸びており、現在に至ってはビジネススクールの収益としては桁外れの売上高であることは一目瞭然であるが、これは、申立人が主宰するビジネススクールの集客力が並外れていることと、申立人役務に使用している使用標章が、申立人の役務を示すものとして需要者の間に広く認識されていることを示す証拠といえる。
(オ)宣伝広告
申立人は、自らが主宰するビジネススクールを宣伝広告するために、広告代理店「株式会社TendAi」を通じて、ソーシャルネットワーキングサービス「Facebook」に、広告を出稿している。また、申立人が集計したところによれば、これまでに投じた宣伝広告費の総額は、3,000万円にまで上る(甲30)。
また、上記シンガポール法人の会計書類においても、高額な「プロモーション、広告費(Promotion&Advertising Cost)」が計上されている(甲25、甲26)。かかる高額な宣伝広告費を継続して定期的に投じていれば、申立人が使用する使用標章が、ソーシャルネットワーキングサービスを通じて、申立人役務を示すものとして需要者の間に広く認識されていることを容易に推察できる。
さらに、申立人は、受講者の紹介制度を採用しており、既存の受講者が、新規の受講者を申立人に紹介した場合、紹介した既存の受講者は、申立人から報酬を受け取ることが可能となっている。また、申立人が集計したところによれば、これまでに新規の受講者を紹介した既存の受講者に支払った謝礼の総額は、1,600万円にまで上り(甲31)、申立人が、定期的に紹介料を支払い、支払った費用に見合った分の受講者が増加していることがわかる。
(カ)インターネットの記事
申立人の事業活動は、メディアや個人ブロガーからも大きな注目を受けており、第三者が掲載したインターネット記事(甲32~甲41)に、申立人の事業活動が取り上げられている事実と、インターネットが有する情報伝播力とを併せて考慮すれば、申立人役務に使用している使用標章が、申立人役務を示すものとして需要者の間に広く認識されていることを容易にうかがい知ることができる。
(キ)ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)
申立人は、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)である「Facebook」、「Instagram」、「M(旧Twitter)」、「Threads」を利用しており、自己の事業に係るアカウントを開設し、当該アカウント内において使用標章を広告的に使用している(甲42~甲45)。また、いずれのサービスにおいても、申立人のフォロワー数は決して少なくはなく、投稿するコンテンツも多くのユーザーに閲覧されている。
なお、「Instagram」における、投稿内容の注目度を測る指標の一つとして「フォロワー数」が挙げられるが、申立人が開設するアカウントのフォロワー数は、令和7年7月の時点で5万2千人である。かかる数字を客観的に判断するため、Webサイト「BuzzCollege」(甲46)の内容と照合すると、申立人のフォロワー数に対する評価は、世界中のInstagramのユーザーにおける上位10パーセント以内に入ることとなり、申立人が投稿するコンテンツが他のユーザーから高い注目を受けている事実がうかがえる。
また、申立人は、動画投稿サイト「YouTube」に、2つのチャンネルを開設し、数多くの動画を投稿している(甲47、甲48)。
そして、投稿した動画の注目度を測る指標の1つとして「再生回数」「登録者数」が挙げられるが、申立人が投稿した動画は、広く一般に向けた趣味的な娯楽動画というよりは、特定の視聴者に向けた内容から構成された専門的な動画が多数を占めるにも関わらず、再生回数が1千回を超えるものが多数見受けられ、中には視聴回数が10万回を超えている動画まで存在する(甲49、甲50)。なお、かかる数字を客観的に判断するため、Webサイト「写真と動画の撮影・編集入門」(甲51)の記事の内容と照合すると、「一般的には1000回再生は奇跡的な数字」と評価されている。この点、申立人が投稿した動画は、1000回を遥かに上回る再生回数を獲得している動画が散見されることからも、申立人の活動が、取引者、需要者から脚光を浴びていることは明白である。
また、申立人がYouTubeに開設したチャンネルの登録者数は、令和7年7月の時点で9,730人である。なお、かかる数字を客観的に判断するため、上記Webサイト「写真と動画の撮影・編集入門」(甲52)の別の記事の内容と照合すると、「1万人以上の登録者数を持つチャンネルの割合は、全チャンネル数に対して上位2%~3%と言われています。」と評価されている。なお、昨今においてYouTubeは、テレビと並んで老若男女を問わず広く日常的に親しまれて利用されているサービスであって、かかるWebサイトの内容と併せて検討してみても、申立人の活動が、取引者、需要者から耳目を集めていることが容易に理解できる。
なお、YouTubeに申立人が投稿した動画の中で、初期に投稿された起業に関する動画の投稿日が、2016年9月16日であることから、上記(1)ウ(ア)で述べた、申立人が使用標章の使用を開始した時期とも、概ね符合する(甲53)。
(ク)音声配信
申立人は、音声プラットフォーム「Voicy」にも、アカウントを開設し、2018年10月頃より、継続的に自らの音声番組を多数投稿している(甲54)。また、一回の番組は5分から15分程度と決して長くはないものの、フォロワー数が1万2千人、総再生数が228万回と、申立人が配信する番組が人気を博していることが一目瞭然である。そして、コンテンツの内容が「経営に関するコンサルティング,起業に関するコンサルティング」及び「起業支援講座における知識の教授」であることに加え、申立人が提供するかかる役務は、本件商標の指定役務の中で「演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,インターネットを利用して行う音楽の提供」と類似する役務といえる。
(ケ)著書
申立人は、自らの思想やこれまでの経験をまとめた書籍を上梓しており(甲55~甲58)、主宰するビジネススクールの受講者のみならず、女性を中心として広く一般から支持を得ている。
(コ)テレビ出演
申立人は、テレビ局(運営会社、中京テレビ放送株式会社)が制作した番組「DEAR DEA(情報番組「ぐっと」内のコーナー)」、「DEAR DEA 特別番組~女神たちからのメッセージ~あなたが輝く11の扉~ 」に出演しており、申立人の活動が番組内の一部として放送されている(甲59~甲61)。
(サ)その他
申立人は、自らが主宰するビジネススクールにおいて、受講者に「経営に関するコンサルティング,起業に関するコンサルティング」及び「起業支援講座における知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,起業家のためのセミナーの企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催」を提供する際に使用する学習支援ツールとして、自らが考案した「手帳」を配布していたところ、希望者全員に提供することとなり、合計1万1千冊の手帳が希望者の手元に渡っている(甲62)。
また、申立人が投稿したFacebookの該当箇所の写し(甲63)、手帳の応募者を申立人が集計した際の資料の一部である「シェアキャンペーン『人生熱血手帳』プレゼントフォーム(回答)」の写しの一部(甲64)、及び申立人が考案した手帳に言及している、第三者のWebサイト「ゆるぶろ!」の写しの一部(甲65)を提出する。申立人が考案した手帳が、一般に数多く出回ることで、当該手帳が広告塔として機能し、使用標章が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるものに至ったことに寄与している。
(シ)まとめ
いずれの証拠方法の内容を検討してみても、そこから判明する数字はどれも並外れた大きなものであり、使用標章は、申立人役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている。
エ 小括
本件商標は、申立人役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている使用標章に類似する商標であって、申立人役務又はこれに類似する役務について使用をするものといえ、商標法第4条第1項第10号に違反する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
使用標章は、申立人が主宰するビジネススクールを示す名称として需要者の間に広く認識される商標というべきであり、全国的に著名な商標である(甲6~甲65)。
また、本件商標と使用標章とは、いずれも造語によって構成される商標であるが、一般的には既成語によって構成される商標と比較して、造語によって構成される商標の方の識別力が強いといわれている。つまり、既成語が本来の意味で日常的に使用され、また、複数の者に商標として採択、使用される場合もあるが、一方で、造語によって構成される商標は、このようなことはめったに無く、絶対的な識別力を有すると解されており、そうすると、造語によって構成される使用標章が周知・著名となった場合、他人がその商標と同一又は類似の商標を使用するときには、混同の生ずる商品等の範囲は広いというべきである。
さらに、ハウスマークは、商標として多くの商品等に使用されることで使用者とより密着しているため、商品及び役務ごとに使用される商標であるペットマークと比較して、識別力ないし出所表示力が強いものと解されている。この点について、申立人の事業活動は多岐に渡るものの、ビジネススクールに集約されるものであって、使用標章は、商品及び役務ごとに使い分けられるペットマークというよりは、申立人が提供する役務に全体的に使用されるハウスマークというべきである。そうすると、使用標章と類似する商標を、申立人以外のものが使用した場合には、混同の生ずる役務の範囲は広いという結論に至る。
その上、上記(1)イのとおり、申立人と本件商標権者とは、主たる事業としていずれも女性を対象としてビジネススクールを開講するものであって、申立人と本件商標権者とは、提供する役務の内容が共通し、また、取引者、需要者が一致しており、かかる要因も使用標章と本件商標との間で混同が生じるおそれを強く肯定する材料といえる。
よって、本件商標権者が、申立てに係る役務に、本件商標を使用した場合、たとえ申立人役務とは非類似の役務が含まれていたとしても、使用標章と本件商標とは混同を生ずるおそれが認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反する。
(3)商標法第4条第1項第8号について
上記ウのとおり、「Project F」の名称は、申立人が主宰するビジネススクールを示す名称として需要者の間に広く認識される商標というべきであり、全国的に著名な名称である(甲6~甲65)。
また、本件商標は、申立人が過去に代表を務めていた日本法人である「ProjectF株式会社」(甲27)の名称を一部に含むものであり、他人の著名な略称を含む商標といえる。
したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標であり、商標法第4条第1項第8号に違反する。
(1)使用標章の著名性について
ア 申立人の主張及び提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。(ア)履歴事項全部証明書(甲27)によると、ProjectF株式会社は、ビジネス支援に関する教育業務、ビジネス支援に関するコンサルティング業務等を目的とし、平成29年8月17日に設立されているが、代表取締役である申立人は、令和5年5月1日に辞任している。
ProjectF株式会社の決算報告書(平成29年8月16日~令和5年10月31日:甲18~甲24)には、会社全体の売上高が示されているが、使用標章に係る申立人役務の売上高については不明である。
(イ)「project-f club」のウェブサイト(甲6、甲7)及び申立人が受講者に配布するレジュメ(甲8)とするものには、「自由な働き方を叶えるビジネススクール」の表題の下、「ProjectF」の表示がある。
(ウ)株式会社TendAiからProjectF株式会社宛ての「Facebook広告費」及び「Meta広告運用費」の請求書並びに株式会社TendAiからM VISION PROJECT PTE.LTD.宛ての「Meta広告運用費」及び「Meta広告費」の請求書(甲30)には、金額及び品名の記載はあるが、使用標章を用いた広告宣伝の時期、範囲、回数等、その広告宣伝規模を具体的に表す客観的な資料の提出は確認できない。
(エ)アフィリエイト集計表(甲31)には、「2023年9月~12月」から「2025年2月」まで期間ごとに紹介人数が表示されているが、紹介をする際に使用標章が使用されていたか不明である。
(オ)申立人とビジネススクールの主宰者であるMとは、同一人である(甲9、甲10)。そして、申立人の活動が第三者の注目を受けている証拠として提出された各ウェブサイト(甲32~甲45、甲47~甲50、甲54)には、「ProjectF代表取締役 M」(甲32、甲33、甲35等)、「Mさん主宰プロジェクトF。」(甲40)、「【ProjectF】女性企業×Webマーケティングで自由に生きるプログラム Mの小さく起業レッスン チャンネル×登録者数9,710人 7,364回視聴 2016/9/16」(甲53)等の記載はあるが、その内容のほとんどは、M個人に焦点をあてたものであり、また、使用標章を確認できないものもある(甲34、甲47~甲50、甲54)。
加えて、申立人は、ソーシャルネットワーキングサービスにおいて、使用標章を広告的に使用しているとするが、Mの表示の下、M個人に関するものであって、その掲載日も本件商標の登録出願後のものや確認できないものがある(甲42~甲45)。
申立人は、動画投稿サイト「YouTube」に2つのチャンネルを開設し、その中には、視聴回数が10万回を超えている動画もあるとして証拠を提出しているが、使用標章を見いだすことはできない(甲49、甲50)。
(カ)M著の書籍の発売(甲55、甲56)及びテレビ出演(甲59~甲61)は、本件商標の登録出願前であるが、使用標章が表示されているか不明である。
(キ)申立人が考案したとする手帳「人生熱血手帳」の裏表紙には「M」及び「プロジェクトF主宰・メイン講師」の記載があるが(甲64)、「オリジナル手帳2024」(甲62)に使用標章が表示されているか不明である。
また、「ゆるぶろ!」のウェブサイト(甲65)には、「プロジェクトF Mさんの『100日熱狂手帳』を無料でGETする方法&中身を公開!」の見出しの下、当該手帳が紹介されているが、使用標章が表示されているか不明である。
イ 上記アによれば、申立人と同一人である「M」は、平成28年(2016年)9月頃から開講したビジネススクールにおいて、セミナー等を開催しており、その際には、使用標章の表示が散見される。
しかしながら、ソーシャルネットワーキングサービス、各ウェブサイトやテレビCM等において、M個人が取り上げられていることは確認できるが、使用標章がどれほど使用されていたか不明である。
また、申立人の提出に係る証拠によっては、使用標章に係る申立人役務の売上高や使用標章を用いた広告宣伝の時期、範囲、回数等、その広告宣伝規模を客観的に把握することができず、使用標章が、取引者、需要者に対し、どの程度知られているかを把握し、評価することができない。
したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用標章が、申立人役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)ProjectF株式会社について
上記(1)ア(ア)のとおり、ProjectF株式会社は、ビジネス支援に関する教育業務、ビジネス支援に関するコンサルティング業務等を目的とし、平成29年8月17日に設立され、令和5年5月1日までの代表取締役は申立人であった。
そして、申立人が提出した各ウェブサイトやテレビCM等の証拠において、M個人が取り上げられているものの、使用標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「ProjectF株式会社」を指称する著名な略称として使用されている事実は確認できない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 使用標章の周知性について
申立人の提出に係る証拠によれば、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用標章が、申立人役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているとはいえない。
イ 申立てに係る役務と申立人役務との関連性
本件商標の指定役務中、申立てに係る役務は、上記3のとおり、第35類及び第41類に属する役務である。
他方、申立人は、ビジネススクールを開講して、セミナーを開催しているものであるから、本件商標の申立てに係る役務には、申立人の業務に係るビジネススクールで提供する役務と同一又は類似のものが包含されているといえ、両者の役務は、一部において、関連性のあるものといえる。
ウ 本件商標と使用標章の類似性の程度
本件商標は、上記1のとおり、「Project:F」の文字を書してなるところ、その構成文字に相応して「プロジェクトエフ」の称呼を生じ、その構成文字は、辞書等に載録されていないものであるから、特定の観念は生じない。
他方、使用標章は、上記2のとおり、「Project F」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「プロジェクトエフ」の称呼を生じ、その構成文字は、辞書等に載録されていないものであるから、特定の観念は生じない。
外観についてみると、本件商標と使用標章とは、「Project」の文字及び「F」の文字が共通しており、両者の差異は、その間における「:」と空白の違いのみであるから、外観において近似する。
また、両者の称呼は、「プロジェクトエフ」の称呼を共通にする。
そうすると、本件商標と使用標章とは、観念において比較することができないとしても、外観が近似し、称呼を共通にするものであるから、その類似性の程度は高いといえる。
エ 出所混同のおそれについて
上記イのとおり、申立てに係る役務と申立人役務とは、一部において関連性があり、上記ウのとおり、本件商標と使用標章との類似性の程度が高いものであるとしても、使用標章は、上記アのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る申立人役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているとはいえない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用をしても、取引者、需要者が使用標章を連想又は想起するとは考えにくく、その役務が他人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤認し、その出所について混同を生ずるおそれはないとするのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記(1)のとおり、申立人の提出に係る証拠において、使用標章が申立人の業務に係る申立人役務を表示するものとして広く知られているとはいい難いものである。
そうすると、本件商標と使用標章とが類似する商標であるとしても、商標法第4条第1項第10号の要件を具備しないものといえるから、同号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第8号該当性について
上記(1)のとおり、使用標章は、申立人が主宰するビジネススクールを表示するものとして需要者の間に広く認識されているとはいえない。
また、上記(2)のとおり、使用標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「ProjectF株式会社」を指称する著名な略称として使用されている事実は確認できないから、他人の著名な名称の略称ともいえない。
したがって、本件商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標と認めることはできず、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、申立てに係る役務について、商標法第4条第1項第8号、同項第10号及び同項第15号のいずれにも該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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