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Trademark Appeal Case

商標法4条1項該当性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900120
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6911677号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6911677号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和6年7月29日に登録出願、第9類「テレビジョン受信機,コンピュータ用モニター,身体に装着可能なビデオディスプレイモニター,ヘッドマウントディスプレイ,時計の形をしたスマートフォン,スピーカー用筐体,ポータブルスピーカー,イヤホン,テレビゲーム用プログラムソフトを記憶させたROMカートリッジ,音声用カセットプレーヤー,DVDプレーヤー,DVDレコーダー,パーソナルステレオ,モニター付監視装置(医療用のものを除く。),コンピュータ,投影機,映写機,ヘッドホーン,スマートフォン用の無線ヘッドセット」及び第11類「加湿器(電気式及び非電気式のもの),業務用加湿機,家庭用電気式加湿器,家庭用ヘアドライヤー,ヘアドライヤー,家庭用電気式扇風機,換気扇,製氷用装置,業務用製氷機,浄水器を組み込んだコーヒー用機械器具,電気式コーヒー用機械器具,電気式コーヒー用機械器具用のコーヒー用カプセル(空のもの。),懐炉,家庭用加熱器(電気式のものを除く。)」を指定商品として、同7年2月26日に登録査定、同年3月25日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、次の1から10のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。

1 登録第4770605号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の構成:別掲2のとおり

指定商品:第14類、第16類、第21類、第29類、第30類、第31類及び第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成15年9月26日

設定登録日:平成16年5月14日

2 登録第5230146号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の構成:別掲2のとおり

指定商品:第6類、第16類から第18類、第20類から第22類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成20年10月24日

設定登録日:平成21年5月15日

3 登録第4658621号商標(以下「引用商標3」という。)

商標の構成:別掲2のとおり

指定商品:第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成14年3月19日

設定登録日:平成15年4月4日

4 登録第4175262号商標(以下「引用商標4」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定商品:第8類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成5年10月4日

設定登録日:平成10年8月7日

5 登録第3340261号商標(以下「引用商標5」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定商品:第6類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成5年10月4日

設定登録日:平成9年8月15日

6 登録第3299665号商標(以下「引用商標6」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定役務:第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務

登録出願日:平成4年6月2日

設定登録日:平成9年5月2日

7 登録第3280519号商標(以下「引用商標7」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定商品:第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成5年10月4日

設定登録日:平成9年4月11日

8 登録第3086598号商標(以下「引用商標8」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務

登録出願日:平成4年6月2日

設定登録日:平成7年10月31日

9 登録第3070071号商標(以下「引用商標9」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定役務:第36類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務

登録出願日:平成4年6月2日

設定登録日:平成7年8月31日

10 登録第3064805号商標(以下「引用商標10」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定役務:第39類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務

登録出願日:平成4年6月2日

設定登録日:平成7年7月31日

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同項第11号又は同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第82号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 商標法第4条第1項第6号

(1)申立人及び申立人の標章について

申立人は、1961年に設立された世界最大規模の国際NGOであり、引用商標の商標権者である。申立人は、現在、スイスのWWFインターナショナルを中心に80か国以上の国々に拠点を置き、100を超える国々で、環境保護を目的とする活動を展開している(甲12)。

我が国においては、1971年に、申立人のネットワークの一員であるWWFジャパン(当時:世界野生生物基金日本委員会)が正式に発足し、現在に至るまで、野生生物保護や気候変動を始めとする環境保護活動に従事している(甲13)。

WWFジャパンは、2011年に公益財団法人に移行し、法人の名称を「公益財団法人世界自然保護基金ジャパン」とする公益財団法人としての法人格を有する団体であり、通称として「WWFジャパン」の表示を使用している(以下、申立人及び公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(通称:WWFジャパン)をまとめていうときは、「申立人ら」という。)(甲14~甲16)。

WWFジャパンは、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律による認定を受けた団体であり、我が国において、「地球環境の悪化を抑え、人類が自然と調和して生きられる未来をつくることに貢献する。環境汚染と浪費的な消費の削減、自然資源の持続可能な利用の促進、生物多様性の保全の3点」(甲14)に取り組み、生物多様性の保全及び人類による自然環境への負荷の軽減のための活動、調査研究、政策提言及び環境保全思想の普及等の事業を行っているのであるから(甲17)、申立人ネットワークにおいて日本の事業を担うWWFジャパン及びその事業は、商標法第4条第1項第6号所定の「公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないもの」に該当するものである。

(2)引用商標の周知著名性について

引用商標は、パンダをモチーフにした図形及び「WWF」の文字からなるところ、申立人は、同機構を象徴するシンボルとして、「パンダ」のマークを1961年の創立時に採択し、以来、「WWF」の名称とともに、軽微なデザイン変更を経ながらも、一貫して「パンダ」のマークを、世界の各拠点で自身の環境保全活動を示すものとして使用している(甲18)。

引用商標は、申立人らが我が国を含む全世界で統一的に使用しているロゴであり、我が国においても様々な機会を利用して引用商標、すなわち「パンダ」のマーク(引用商標4から10は1986年に採択されたものであり、引用商標1から3は2000年に採択されたものであるが、両者のデザインの相違点は下部「WWF」のフォントのみであり、上部「パンダ」の図形は同一のものである。)の浸透に努めている(甲13、甲19~甲23)。

また、申立人は、環境保全活動の一環として、様々な企業とのパートナーシップを形成・維持しており、対外的な広報においても引用商標を多用している(甲24~甲44)。

このほか、申立人らは、自然保護活動に役立てる資金のために物販の事業を行っており、申立人らを象徴する引用商標が付された商品を幅広く展開している(甲45~甲49)。

さらに、自然保護活動支援のコンセプトを広く世間一般に伝搬する目的で、引用商標のライセンス契約についても積極的な姿勢であり、ボックスティッシュから時計に至るまで、多種多様な商品に引用商標が使用されてきた(甲50~甲56)。

加えて、スポーツジムやリフォーム会社等、業種を限らず様々な企業に引用商標を付した募金箱が設置されており(甲57~甲60)、関東を中心に197店舗ものスーパーマーケットを展開する企業(甲61)や、北海道から沖縄まで全国にホテルチェーンを展開する企業の店先にも募金箱が設置されている(甲62、甲63)。

申立人の活動の目的は環境保全であり、営利を目的としない公益団体ではあるが、活動の規模を示す一つの指標として、近年の収入規模として、「会員費」、「寄付金」、「自主事業」、「受託事業」、「助成・補助金」及び「その他」を合計した金額を集計すると、2016年6月期で9億4,711万2,548円(甲64)、2021年6月期で14億8,281万7,540円(甲65)、2024年6月期で19億4,365万8,784円(甲66)である。

国際協力に従事する日本のNGOの実態を把握するための調査「NGOデータブック2021数字で見る日本のNGO」及び「NGOデータブック2016数字で見る日本のNGO」によると、収入を上記同様に定義付けた場合、我が国のNGOの年間収入額の中央値は1,956万円(2016年)、2,300万円(2021年)であるところ、10億円以上の団体は上位2.5%(2021年)の限られた団体であり、このことからも、申立人の日本における活動規模の大きさが裏付けられる(甲67、甲68)。

また、WWFジャパンの収入は国内外の環境保全活動の資金として活用されているところ、環境保全問題への理解を促すための広報活動や普及教育にも力を入れており、これらの活動に要した広報・普及教育関連費は、2023年及び2024年において、それぞれ8,000万円以上にのぼる(甲69~甲71)。

以上のとおり、引用商標は申立人らを象徴する標章として広く使用されてきたのであり、上述の活動規模及び使用期間等を総合すると、引用商標は、遅くとも、本件商標の登録出願時において、申立人らの事業を表示する標章として、我が国で周知著名となっており、その著名性は現在に至るまで継続していることは明らかである。

(3)本件商標について

本件商標はパンダをモチーフにした図形(以下「本件図形部分」という。)及び「PANDAFAIRWIT」の文字(以下「本件文字部分」という。)からなる。

そして、本件図形部分と本件文字部分は、それぞれに重なり合うことなく、各部分が独立した態様で配置されていることから、視覚上分離して認識されるものであり、これらが一体となって特定の観念や称呼を生ずるものでもなく、常に一体不可分のものとしてのみ把握しなければならない特段の事由はない。

さらに、本件商標の指定商品との関係において、商品の品質等を表示するものである等、本件図形部分及び本件文字部分が殊更に、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき特段の事由もない。

以上からすれば、本件図形部分及び本件文字部分は、これらが独立して自他商品の識別標識としての機能を有するものである。

(4)引用商標について

引用商標は、パンダをモチーフにした図形(以下「引用図形部分」という。)及び「WWF」の文字からなる。

そして、引用図形部分は、四肢で立ち、片前足が踏み出されたポーズが特徴的であり、白黒の配色を用い、輪郭線がなく一切の装飾を排除することで、パンダの形状そのものが際立つデザインとなっており、当該図形部分と文字部分とは、それぞれに重なり合うことなく、各部分が独立した態様で配置されている。

(5)引用商標と本件商標の対比

ア 本件商標は、本件図形部分及び本件文字部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものとはいえない。

また、引用商標についても引用図形部分が構成の大部分を占め、さらに、「WWF」の文字がなく引用図形部分のみを表した商品も多数販売されており(甲72~甲77)、引用図形部分のみについても申立人らを表す標章として知られているといえる。

そうすると、本件商標と引用商標は、本件図形部分と引用図形部分とによって商標の類否を判断することも許されるべきであり、次に詳述するとおり、各図形部分を比較してみれば、両者の類似性の程度は高いものというべきである。

イ 本件図形部分と引用図形部分は、一見して、「パンダ」を正面から見た図形を表したものと理解されるものであり、基本的な構成要素については、(ア)パンダが白黒のシルエットで描かれており、上部に輪郭線がなく両耳が浮いているように表され、(イ)四つ足で立ち、片方の前足が前方に踏み出されている姿で、片方の後足が当該前足で隠されるような構成であり、(ウ)耳部を含めた顔の長さが、顔の下端から足先までの長さより長く、顔部分が大きく描かれている構成において共通するものである。

もっとも、本件図形部分と引用図形部分は、パンダが左向きか右向きかという構成において、また、各部を仔細に見れば、口又は鼻を表すパーツの有無という点において、差異点が存する。

しかしながら、本件図形部分と引用図形部分とは、上述のとおり基本的な構成を共通にし、特に、上部の輪郭線がなく二つの耳が浮いているように描かれるという特徴的な点において共通しているから、看者は、本件図形部分と引用図形部分との上記一致点について強い印象を受けるといえる。また、上記した差異があるとしても、図形の向きに関しては、本件商標を左右反転させると、引用商標とほぼ同様の構成になるのであり、その他の顔のパーツに関する差異については、いずれも細部の違いにとどまるものであるから、両商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合には必ずしも常に図形の細部まで正確に記憶されているとはいえないことや、両商標の図形部分の構成から受ける共通した印象からすれば、微差の範囲といえる。

よって、本件図形部分と引用図形部分とは、全体として外観の印象が似通ったものであり、両図形部分は、外観において類似するものである。

また、本件図形部分と引用図形部分からは、共に特定の称呼が生ずるものとはいえないが、「白黒のシルエットのみをもって表した四肢で立つパンダ」を認識するという点において、互いの観念を共通にするものといい得る。

そうすると、両商標は、それぞれを特徴づける主要な図形部分において、その構成の軌を一にするものというのが相当であり、観念における共通性ともあいまって、それぞれの商標の有する外観上の印象は、互いに相紛らわしいというべきである。

よって、本件商標と引用商標は、図形部分の比較において、外観が近似し、観念においても共通するものであるから、これらを総合的に勘案すると、両商標は互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。

(6)さらに、引用図形部分は、申立人らが独自に採択し、デザインした独創性の高い標章であり(甲18、甲81)、申立人らの環境保全活動を通じ世界的に周知・著名な標章である。

本件図形部分は、このように周知・著名な引用図形部分と基本的な構成や特徴を共通にし、申立人らの引用商標を容易に連想、想起させるといえ、申立人ら及びその活動の著名性や信用に鑑みても、引用商標を想起させる本件商標と引用商標とは、相紛らわしく、類似する商標と考えるのが相当である。

(7)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第6号所定の「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」を表示する標章であって,「著名なもの」に該当する引用商標と類似する商標である。

したがって、本件商標は,商標法第4条第1項第6号に該当する。

2 商標法第4条第1項第11号

(1)本件商標及び引用商標の類似性について

本件商標及び引用商標は、それぞれパンダの図形部分が独立して出所識別標識として機能するといえ、本件商標と引用商標は図形部分において類似し、図形部分から生ずる観念についても相紛らわしいものであるから、本件商標と引用商標は相紛れるおそれのある類似の商標と考えるのが相当である。

特に、本件商標と引用商標は、その構成態様からして、いずれも、「白黒のシルエットのみをもって表した四肢で立つパンダ」として強く印象付けられるというのが相当であり、相紛れるおそれのある類似の商標であるというべきである。

(2)商品の類似性について

本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と類似する商品を含んでおり、両商品は互いに類似する。

(3)小括

以上より、本件商標は、外観及び観念において、引用商標と相紛れるおそれのある類似の商標であることは明らかであり、また、本件商標は、引用商標1の指定商品と類似の商品に使用するものである。

そして、本件商標は、引用商標1の後願に当たる。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

3 商標法第4条第1項第15号

(1)引用商標の周知・著名性について

引用商標は、申立人らの環境保全活動において一貫して使用され、その活動のためのキャンペーンや幅広い物品の販売に際しても使用されてきたものであるから、我が国において著名なものである(甲12~甲63、甲78~甲80)。

(2)引用商標及び本件商標の類似性

本件商標と引用商標は、図形部分の比較において、基本的な構成を共通にし、特に、上部の輪郭線がなく二つの耳が浮いているように描かれるという特徴的な部分において共通し外観が近似するものであり、両商標の類似性の程度は極めて高いといえる。

(3)引用商標がハウスマークであり、かつ独創性があること

引用商標は、申立人らの標章として独自に採択され、継続して使用されているものである。

引用商標は、1961年の設立当初、英国の環境保護活動家・アーティストであるジェラルド・ワターソン氏が描いたロンドン動物園のジャイアントパンダ「チチ」のスケッチを基に、申立人の創設メンバーの一人であるピーター・スコット卿がデザインしたものを基盤としており、「パンダ」の持つ愛くるしさや親しみやすさを感じさせる一方で、絶滅危惧種であるという属性や自然保護の重要性をも想起させる点において、その独創性は極めて高い。

1961年以来、申立人が、世界中で環境保全活動のシンボルマークと認知されるために、「印刷費が節約でき、白黒でインパクトのある動物」であり、「言葉の壁を越えて愛されるシンボルが必要だ」という理念に基づき、改良を重ねてきたものであり、一朝一夕にして完成するものではなく(甲81)、このような独創性の高い図形と、左右反転すれば全体的な構図がほぼ同一となるほど多くの共通点を含む引用商標のような図形が、偶然に創作されることはあり得ない。

(4)需要者の共通性、その他取引の実情

申立人らは、環境保全活動の一環として、引用商標を冠した公式オンラインショッピングサイトにて幅広い商品を販売している(甲45~甲49、甲72~甲80、甲82)。

また、申立人らの活動に賛同する企業は数多くあり、分野を問わず幅広い企業と協同し、環境保全活動を行ったり、引用商標を付した物品を提供したりしている。

本件商標の指定商品は、テレビやイヤホン、ドライヤー、扇風機等の、一般需要者が日常的に使用する商品であるところ、申立人らの業務に係る商品も、一般需要者が日常的に使用する多岐に渡る商品であるから(甲45~甲49、甲72~甲80)、商品の関連性が高く、需要者が共通する。

このような状況において、引用商標と酷似する本件商標が、本件商標に係る指定商品について登録・使用された場合、申立人らと経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品と誤認される可能性は極めて高い。

(5)小括

以上より、引用商標のような著名商標と類似する外観・観念を生じさせる本件商標に需要者等が接した場合、申立人らと経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その出所について混同するおそれがあることは明らかである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断

1 引用商標の周知著名性について

(1)申立人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。

ア 申立人は、1961年に設立された環境保全団体であり(甲12)、我が国においては、1971年に世界野生生物基金日本委員会が発足し(甲13)、2011年に公益財団法人に移行し、その名称を「公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(通称「WWFジャパン」)」として(甲15)、地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業を行っている(甲14)。

イ 申立人らは、1961年の創設当時から、軽微な変更をしながらパンダのマークを使用しており、引用商標4から10は1986年(昭和61年)に、また、引用商標1から3は、2000年(平成12年)にそれぞれ採択されたものである(甲18)。

ウ 申立人らは、引用商標を自身のウェブサイト(甲13)、SNS(甲19、甲20)、メールマガジン(甲22、甲23)、様々な企業等との環境保全活動(甲24~甲44)、募金箱(甲57~甲63)に使用している。

エ 申立人らは、引用商標又は引用図形部分を商品の表面に大きく表したストラップ、タンブラー、ノート、バッグ、Tシャツ等の様々な商品を販売している(甲45~甲49)。

オ ライセンス契約により、引用商標を使用した双眼鏡、ランドセル、腕時計等の商品が販売されている(甲50~甲56)。

(2)前記(1)によれば、申立人らは、環境保全活動を行っている団体であって、昭和61年以降、当該環境保全活動に引用商標を使用していることが認められる。

そして、引用商標は、申立人らのウェブサイト、SNS及びメールマガジン並びに様々な企業等との環境保全活動や募金箱に使用されるとともに、ライセンス契約によるものも含め、引用商標を使用した各種の商品が販売されていることが認められる。

そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの環境保全活動を表示するものとして、需要者の間に広く認識されており、著名なものといえる。

しかしながら、引用商標の構成中の引用図形部分は、白黒の配色からなるパンダの特徴を端的に表した図形からなるものであり、パンダそのものを表したものと容易に認識される図形であるから、引用図形部分の独創性の程度は高いとはいえない。そのため、引用図形部分は、出所識別標識として強い印象を与えるものとはいえない。

そして、引用商標は、引用図形部分と「WWF」の文字からなるものであって、両部分が一体となって使用されることがほとんどであり、引用図形部分のみで使用される場合が僅かに認められるものの、その場合は商品の表面に大きく表されていることから、単なるパンダのデザインとして表されていると認識されるものといえる。

そうすると、引用図形部分のみによっては、申立人らの環境保全活動を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいえず、著名なものともいえない。

2 本件商標と引用商標との類否について

(1)本件商標

本件商標は、別掲1のとおり、上部に、パンダをモチーフにしたと思われる図形を配し、下部に、「PANDAFAIRWIT」の文字を配した構成からなるものであり、その構成中、下部の文字部分からは、「パンダフェアウィット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないと判断するのが相当である。

また、本件商標の構成中、上部の図形部分(本件図形部分)は、四肢で立ち、やや左側を向いた、頭部全体が円形で、黒色の円形の耳と左右に広がった黒色の楕円形の目、口角がやや上がった口を有し、鼻のない、一部枠線を簡略化したパンダをモチーフにしたと思われる図形であり、全体として、笑った顔のパンダをモチーフにした何らかのキャラクターを表したとの印象を与えるものと認められる。

そうすると、本件図形部分からは、何らかのキャラクターを表したものとの印象を与えるものの、これより特定の称呼及び観念は生じない。

(2)引用商標について

引用商標は、別掲2及び3のとおり、上部に、白黒の配色からなるパンダの特徴を端的に表した図形を配し、下部に、「WWF」の文字を配した構成からなるものであり、その構成中、下部の文字部分からは、「ダブリュダブリュエフ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないと判断するのが相当である。

また、引用商標の構成中、上部の図形部分(引用図形部分)は、四肢で立ち、やや右側を向いた、一部枠線を簡略化したパンダの図形であり、白黒の配色からなるパンダの特徴を端的に表した図形であって、全体として、パンダそのものを表したものと容易に認識されるものである。

そうすると、引用図形部分からは、「パンダ」の称呼及び観念を生じるものである。

さらに、引用商標は、前記1(2)のとおり、申立人らの環境保全活動を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものであるから、引用商標全体からは、「申立人らの環境保全活動」の観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用商標の類否について

ア 本件商標と引用商標とを比較すると、両商標の文字部分の比較においては、その構成文字及び称呼が明らかに相違するものであるから、明確に区別できるものである。

イ 次に、本件図形部分と引用図形部分とを比較すると、両者はいずれもパンダを表した又はモチーフにした図形であり、四肢で立ち、やや横を向いた点において共通している。

しかしながら、本件図形部分は、笑った顔のパンダをモチーフにした何らかのキャラクターを表したとの印象を与えるものであるのに対し、引用図形部分は、パンダそのものを表したものと容易に認識されるものであるから、両者の印象は明らかに異なるものである。

また、本件図形部分からは特定の称呼及び観念が生じないのに対し、引用図形部分からは「パンダ」の称呼及び観念を生じるから、両者は称呼及び観念において明確に区別できるものである。

さらに、前記1(2)のとおり、引用図形部分は、申立人らの環境保全活動を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとはいえず、他に、本件図形部分と引用図形部分とが出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

そうすると、本件図形部分と引用図形部分とは、明確に区別できるものというべきである。

ウ さらに、本件商標全体と引用商標全体との比較においても、「PANDAFAIRWIT」と「WWF」の文字の相違、「パンダフェアウィット」と「ダブリュダブリュエフ」の称呼の相違及び図形部分の相違があり、加えて、引用商標からは「申立人らの環境保全活動」の観念が生じるものであり、特定の観念を生じない本件商標とは、観念において相紛れるおそれはない。

そうすると、本件商標と引用商標とは、その全体の比較においても、明確に区別できるものである。

エ 以上により、本件商標と引用商標とは、非類似の商標といわなければならない。

3 商標法第4条第1項第6号該当性について

前記1(2)のとおり、引用商標は、申立人らの環境保全活動を表示するものとして著名なものである。

そうすると、引用商標は、「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なもの」に該当するといえる。

しかしながら、前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。

なお、公益保護の観点を踏まえても、本件商標と引用商標とが類似するというべき事情は見いだせない。

そうすると、本件商標は、「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」とはいえない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第11号該当性について

前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。

そうすると、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務との類否について言及するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

5 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)本件商標と引用商標との類似性の程度について

前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。

そうすると、たとえ、本件商標と引用商標とが、いずれも、四肢で立ち、やや横を向いたパンダを表した又はモチーフにした図形を含むものであるとしても、両商標の類似性の程度は低いといわなければならない。

(2)引用商標の周知著名性及び独創性の程度について

ア 前記1(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの環境保全活動を表示するものとして、需要者の間に広く認識されており、著名なものといえる。

そうすると、引用商標の周知著名性の程度は高いといえる。

イ 引用商標は、上部に、白黒の配色からなるパンダの特徴を端的に表した図形(引用図形部分)を配し、下部に、「WWF」の文字(引用文字部分)を配した構成からなるものである。

そして、引用図形部分は、パンダそのものを表したものと容易に認識されるものであり、また、引用文字部分は、欧文字の3文字からなるものであるから、いずれも独創性の程度は低いといえる。

そうすると、引用図形部分と引用文字部分とからなる引用商標の独創性の程度は、低いといわなければならない。

(3)本件商標の指定商品と申立人らの環境保全活動との間の関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性について

本件商標の指定商品は、前記第1のとおりの商品であり、環境保全活動とは、その性質、用途又は目的において、明らかに異なるものであるから、その関連性の程度は低いといわなければならず、また、取引者及び需要者の共通性も低いといわなければならない。

(4)混同を生ずるおそれについて

以上によれば、引用商標の周知著名性の程度は高いものの、本件商標と引用商標との類似性の程度、引用商標の独創性の程度、本件商標の指定商品と申立人らの環境保全活動との間の関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性は、いずれも低いものである。

そうすると、本件商標に接する取引者及び需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用をしても、その商品が申立人ら又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

6 まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するとはいえず、その登録が同項の規定に違反してされたものとはいえない。

他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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