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Trademark Appeal Case

引用商標の周知著名性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900131
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6917682号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

1 本件商標

本件登録第6917682号商標(以下「本件商標」という。)は、「Godot」の欧文字を標準文字で表してなり、令和6年2月2日に登録出願、第9類、第16類、第35類、第38類、第41類、第42類及び第44類に属する別掲のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和7年4月2日に登録査定、同年4月10日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標

商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、申立人の業務に係るクロスプラットフォーム対応のオープンソースゲームエンジンに使用する「Godot」(以下「引用商標1」という場合がある。)及び「GODOT」(以下「引用商標2」という場合がある。)の欧文字からなる商標である。

なお、以下、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は、第9類、第16類、第35類、第38類、第41類及び第42類に属する全指定商品及び全指定役務について、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第33号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)引用商標の周知著名性について

ア Godotは、クロスプラットフォーム対応のオープンソース2D/3Dゲームエンジンである。MITライセンスのもとで提供されており、誰でも無料で使用・改変・配布が可能である。独自のスクリプト言語「GDScript」を中心に、C♯やC++なども使用可能で、Windows、macOS、Linux、iOS、Android、Webなど多様なプラットフォームに対応している(クロスプラットフォーム対応)。

Godotは、アルゼンチンのソフトウェア開発者Juan LinietskyとAriel Manzurによって、ラテンアメリカの複数の企業向けにブエノスアイレスで開発されたのが起源である。当初は社内ツールとして使われていたが、2014年1月14日にオープンソースとして一般公開された(甲2の1~3)。

イ オープンソースのゲームエンジン「Godot 1.0」が登場

Godotは2015年11月に、オープンソースプロジェクトの法的・財務的支援を行う非営利団体「SFC(Software Freedom Conservancy)」に参加した。SFCの支援のもと、Godotは寄付の受け入れや法的保護、財務管理などを行いながら、開発を加速させてきた(甲3)。

Godot Engineは2016年からSteam上で日本国内でもダウンロード可能であったことから、Godotが日本市場に進出し始めた状況がうかがえる。Steam(スチーム)とは、アメリカのValve Corporation(バルブ社)が運営するPCゲームおよびソフトウェアの配信プラットフォームであり、Godot EngineがSteam経由で簡単にインストール・アップデートが可能になったことは、日本国内のユーザーにとっても、Godotを始めるハードルを下げる重要な手段となったといえる(甲4)。VRコンテンツ開発ガイド2017」で「Godot Engine」においても言及されている(甲5)。

ウ 2019年にGDQuestのNathan氏が東京のインディーゲーム開発者向けイベント「Tokyo Indies」でGodotを紹介し、日本ではGodotの認知度がまだ低く、Unityが主流であったことや日本語の学習リソースが不足していること等を課題としてあげた。この講演がきっかけとなり、数名の開発者が興味を持ち日本での普及活動が開始された(甲6)。

このような動きの中で、2019年9月にBOOTHで頒布された技術同人誌で、Godotを使ったゲーム制作の入門書である、ノンプログラマー向けに書かれた書籍が登場した。その後も継続的に学習リソースに関するウェブサイトが多数登場し人気を博した。例として(ア)ないし(ウ)を挙げる(甲7)。

(ア)Godot Engine超入門~ノンプログラマーのゲーム制作初挑戦~

(イ)Location of Godot GameEngine Japanese Documentation and Invitation for Translation #Essay-Qiita

(ウ)今から始める『Godot Engine』-Zenn

エ 2022年、GodotプロジェクトはSFCからの独立を決定し、オランダに拠点を置く独自の非営利団体「Godot Foundation」を設立した。これは、プロジェクトの成長に伴い、より柔軟で迅速な意思決定と資金運用を可能にするものであり、Godotのグローバル市場における認知度の向上やユーザー数の増加が見込まれることになった。当該団体はGodot Engineを公式に支援する正式な団体である(甲8)。

2023年、GodotエンジンがEpic Games Store(エピック・ゲームズ・ストア)で配信開始され、ユーザーがより簡単にGodotをインストール・更新できるようになった。Epic Games Storeとは、アメリカのゲーム開発会社Epic Gamesが運営するPCおよびMac向けのデジタルゲーム配信プラットフォームであり、多くのユーザーがこのプラットフォームを介してゲームを手に入れており、ユーザーがアクセスしやすい環境となったことから、新規ユーザーの獲得やコミュニティの拡大が進んでいる(甲9)。

現在、2025年6月時点でのGodotゲームエンジンの最新バージョンはGodot4.4(公開日:2025年3月3日)である。公式サイトから無料でダウンロード可能となっている(甲2の2)。

オ 全世界における正確なユーザー数は公表されていないが、GitHub上のGodotリポジトリには約10.1万人以上のスターがついており、世界中に広く利用されていることがわかる。また、Steamやitch.ioなどのプラットフォームでもGodot製ゲームが多数公開されている。なお、当該ページの右上に「★Star」の数が表示されており、リアルタイムで更新されている(甲10)。また、Godot関連の人気アセットやツールのランキングが公開されており、8千人以上のスターがついている(甲11)。

GodotのYouTube公式チャンネルには、9.56万人以上のチャンネル登録者がいる。GodotのYouTube公式チャンネルでは、新バージョンについての新機能紹介、チュートリアル・学習コンテンツの他、毎年、Godotで制作されたゲームやプロジェクトをまとめたショーケース動画が公開されており人気となっている(甲12)。

カ Godotは、2017年8月から公式の支援サイトが設立され、多数の支援者による寄附で運営されている。この寄附は、約2,300人以上の支援者が参加しており、Godot開発に関心のある人々が集まるコミュニティとしても機能している。また、このPatreonページは、GodotFoundationが運営しており、寄付金はGodotの開発者の雇用やイベント開催、法的対応(例:日本での商標問題)などに活用されている(甲13)。

キ Godotには、公式ドキュメントサイトがあり、このサイトはその開発者・ユーザー向けに技術情報を提供している。Godotの「最新開発版(unstable)」に対応したドキュメントであり、安定版にはまだ含まれていない機能や仕様も記載されている。また、多言語対応しており日本はもちろんのこと世界中のユーザーによるアクセスがある。Godotの使い方を学ぶためのチュートリアルや、各クラスの詳細なリファレンスが掲載されている。初心者から上級者まで幅広く対応していることが人気となっている。GitHubでのプルリクエストや翻訳協力、Godot Contributors Chatでのフィードバックなど、オープンな環境で誰でもドキュメント改善に参加できる(甲14)。

ク カンファレンス(Conferences)

(ア)GDC 2023(サンフランシスコ)への出展

GDC(Game Developers Conference)は、世界最大級のゲーム開発者向けカンファレンスであり、日本語では一般的に「ゲーム開発者会議」といわれる。Godotは、2023年、2024年にブースを出展した。2023年のデータでは、アメリカ・サンフランシスコ(モスコーン・センター)で行われ、参加者数28,000人以上(前年比2倍)、1,000人以上の講演者、330社以上の出展者、700以上のセッションが開催された。2024年は公開前であるが、参加者数の傾向から見て、2023年と同等かそれ以上の規模であった可能性が高い(甲15の1~2)。

(イ)GDC 2024(3月18日~22日、サンフランシスコ)

Godot Pavilion(ブースS763)

Moscone CenterのExpoフロアにて、Godot FoundationとW4 Gamesが共同でGodot Pavilionを設置。Godot製ゲームの展示や開発者との交流が行われた。

Godot GDC Meetup(3月20日)GitHub HQにて再びミートアップが開催され、Godotコア開発者やユーザーが集まった(甲15の3)。

(ウ)BIG Festival(Brazil’s Independent Games Festival)

BIG Festival(Brazil’s Independent Games Festival)は、ブラジル・サンパウロで毎年開催される南米最大級のインディーゲームイベントである。Godotは2023年に初めてBIG Festivalに公式ブースを出展した。これは、GDC2023での成功を受けて、Godot FoundationとW4 Gamesが南米市場への展開を強化する一環として参加したものであった(甲15の4)。

(エ)EVA(Exposicion de Video juegos Argentina)

アルゼンチン最大のゲーム開発者向けイベントで、2003年から毎年開催されている。ブエノスアイレスで毎年10月に開催されており、ラテンアメリカ圏におけるゲーム産業の成長を支える重要なイベントであり、Gamescom Latin America版とも称されることがある。Godotは、EVA2024では、Godot EngineがUnreal Engineと並ぶ「技術パートナー」として明記されており、商談会(Rondas de Negocio)にも参加していた。これは、Godotが南米のインディー開発者にとって重要な開発基盤となっていることを示している(甲15の5)。

(オ)TokyoGameShow(TGS)

一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)および日経BPが主催し、毎年9月に千葉県・幕張メッセで開催される日本最大級のゲーム展示会である。TGSは、国内外のゲーム企業が新作を発表する場として注目されている。

近年、TGSのインディーゲームコーナーにて、Godot Engineを使用した作品が複数出展されている。特に2023年以降、Godot4のリリースにより、日本国内の開発者によるGodot採用事例が増加している。TGSでは、Godot Japan User Communityが中心となり、TGS期間中に合わせて、Godot Meet up Tokyoなどの関連イベントが開催されることがある。Godot EngineはTGSのインディーゲームコーナーなどで出展されることが多く、特に日本国内の開発者による採用事例が増加している。Godot FoundationやW4 Gamesによる日本展開の一環として、TGSは重要な露出機会と位置づけられている。なお、東京ゲームショウ2024の総来場者数は27万4739人で歴代2位の記録であり、2023年の24万、2019年の26万を抜いた。Godot Engineも出展している(甲15の6)。

(カ)GodotCon

GodotConは、Godotエンジンの開発者・ユーザー・教育者・支援者が一堂に会する国際会議であり、Godotの最新機能、開発事例、教育活用、XRやWeb対応など多岐にわたるトピックを扱い知識と技術の共有を行うこと、世界中のGodotユーザーが直接交流し、ネットワークを広げる場としてコミュニティの強化をすること、Godotの自由で協調的な開発文化を体現するイベントとしてオープンソース文化の推進を行うこと等の目的と意義を持っている(甲15の7)。参加者数は、2025年で推定500~800人と見込まれている。初心者向けから上級者向けまで幅広い参加者を対象としたイベントが開催されており、参加者の中心は、インディーゲーム開発者、教育関係者(大学・専門学校)、XR/AR/VR開発者、オープンソース支援者、Godot FoundationおよびW4 Games関係者などである。講演者として、Godotに関連する著名人が登壇することから、注目を集めている。

また、技術セッションとして新バージョンの新機能紹介や、XR(VR/AR)開発、Android最適化、Web対応等、マルチプレイヤー、UI/UX、スクリプト言語拡張、3Dタイル、Blender連携等が解説される。さらに、実践的なGodot開発体験のような初心者向けのイベントも開催されている。Godot製ゲームの展示等は一般のユーザーにも多く触れられており注目を集めていた。

(キ)2022年に日本最大のXR業界カンファレンスであるXR KaigiでGodotのセッションが行われた(甲15の8)。「XR Kaigi2022」は、XR分野の開発者やクリエイターが集い、ノウハウの共有や交流を深めることを目的とした国内最大級のXRカンファレンスである。2022年は「Create Everything(なんでもつくろう)」をテーマに、オンラインカンファレンス(12月14日~16日)と、東京都立産業貿易センター浜松町館でのオフライン開催(12月22日・23日)を組み合わせたハイブリッド形式で実施された。そのなかで、株式会社フレームシンセシス代表取締役CEOのK氏による「ゲームエンジンGodot4の概要とVR開発」などのプレゼンテーションが行われ注目され、XRにおいてGodotが有力な開発ツールとなり得ることが周知された(同)。

(ク)2023年にも日本最大のXR業界カンファレンスであるXR KaigiでGodotのセッションが行われた(甲15の9)。「XR会議2023(XR Kaigi2023)」は、日本最大級のXR(Extended Reality)・メタバース・VTuber領域に関するカンファレンスで、2023年12月18日~22日に東京ポートシティ竹芝などで開催された。このイベントでは、業界のキーパーソンによるキーノート、技術セッション、展示会、ネットワーキングパーティーなどが行われ、XRの未来を探る多彩なプログラムが展開された。株式会社フレームシンセシスのK氏が登壇し、「ゲームエンジンGodotの概要とGodot XR Toolsの紹介」を報告、13500名以上の視聴がされた(同)。

(ケ)Godot Meetup Tokyoは、Godot Japan User Communityが主催する日本最大級のGodotエンジンユーザー向けイベントである。現在までに5回開催されており、渋谷スクランブルスクエアや渋谷インフォスタワーなど、都内の主要会場にて定期的に実施されている。参加者は開発者、デザイナー、教育関係者など多岐にわたり、幅広い層が集っている。イベントでは、Godotエンジンの最新機能紹介、実際のゲーム開発事例の共有、XRやWeb対応の技術セッション、初心者向けのハンズオンなどが行われており、参加者同士の交流も活発である。特に、Godot4以降の進化やOpenXR対応など、国内ではまだ広く知られていない情報が多く取り上げられている。このような継続的な活動により、Godotエンジンの国内における認知度は大きく向上した。参加者によるSNS投稿やYouTubeでの講演動画配信、さらにDiscordコミュニティの拡大を通じて、Godotは「無料で使えるプロフェッショナルなゲームエンジン」として、多くの開発者に注目される存在となっている。Godot Meetup Tokyoは、単なる勉強会の枠を超え、日本におけるGodotエコシステムの成長を牽引するハブとして機能している(甲15の10)。

ケ 「The Big Game Engines Report of 2025」の「Number of Game Units Sold by Year by Game Engine(ゲームエンジン別年間販売ユニット数の推移)」(甲16)によれば、Godotのゲームエンジンとしての世界シェア(Steamにおけるダウンロード数)は、全ゲームエンジンの2%程度であるが(甲16-1)、ゲーム本数ベースで考えると10%となる。2020~2024年の成長率に着目すると、Godotは+144%の成長を記録し(甲16の2)、小規模なパブリックエンジンの中で最も成長したエンジンと評価されており、今後の成長が期待されている。Godotは、UnityやUnrealのような大手エンジンに比べるとまだ小規模だが、急成長中のオープンソースエンジンとして注目されている。特に教育分野やインディー開発者の間での支持が強く、今後のシェア拡大が期待されている。

なお、2024年の世界ゲームエンジン市場は、30億4,000万米ドルと推計されている(甲17の1)。このうち、日本のゲームエンジン市場の規模はデータ上明らかではないものの、別資料で現在の世界のゲーム市場の総額が19兆7970億円とされており、その内日本のゲーム市場が1兆9320億円であるとされていることから、世界全体の内日本のゲーム市場は世界シェア約9.76%程度であることが推計される(甲17の2)。この2つの資料から、30億4,000万米ドルの9.76%は、約2億9,670万ドルであり、円換算すると438億円程度の市場規模と推計される。ゲームエンジンのみの市場規模だけでも、かなりのボリュームになると考えられ、ゲームエンジンに関連する需要者はもちろんのこと、ゲーム市場に関連する需要者の裾野が広いことを考慮すればGodotはゲーム市場においてかなりの認知が浸透していると思われる。

(2)本件商標と引用商標の類似性について

本件商標と引用商標は、いずれも、「ゴドー」の称呼が生じる全く同じ綴りからなるアルファベット5文字を、標準的書体で表してなるものであるから、同一と認められるものである。

(3)引用商標の独創性について

「Godot(GODOT)」は、辞書に掲載のない、造語と認識されるものである。引用商標「Godot(GODOT)」は、サミュエル・ベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら(Waiting for Godot)」に由来するものとされ(甲2の3)、ゲームエンジン開発者の独自の発想により採択された、独創性の程度が極めて高い商標といえる。

(4)商品の関連性と需要者の共通性について

ゲームエンジンがコンテンツ産業(;映画・アニメ・漫画・ゲームソフト・音楽・書籍等の制作や流通を担う産業)と親和性が高いことは言うまでもないが、DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進される昨今、ゲームの技術であったゲームエンジンが様々な産業領域で利用されており、産業全般でゲームエンジンが利用されるといっても過言ではない。以下において、本件商標の指定商品(指定役務)とゲームエンジンひいてはゲームとの関連性、そして需要者・取引者の共通性について詳述する。

ア 第9類について

本件商標の指定商品中、「ウェアラブルスピーカー,電気通信機械器具」にはゲームと密接に関連する商品が多数あり、一例を挙げれば、ゲーミングイヤホンやゲーミングスピーカー等がある(甲18)。本件指定商品の「測定機械器具,ウェアラブル活動量計」については、人気ゲームとコラボレーションした体組成計や歩数計・温湿度計が販売されている(甲19)。「メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,楽器用エフェクター,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル」については、いずれも音楽関連の商品であるところ、「ゲーム音楽」は日本の誇るコンテンツ産業であり、これら音楽関連商品はゲームと密接に関連している。例えば、音楽ゲーム(甲20)やゲームができるエフェクター(甲21)、ゲーム音楽を収録したCD(甲22)などが販売されている。「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント」については、いずれも画像ないし映像関連の商品であるところ、ゲームソフトと画像・映像とは切り離せない関係にあるから、これらの商品はゲームと密接に関連しているというべきである。事実、「ダウンロード可能なゲームキャラクター画像」の指定が商標登録出願において可能である。本件指定商品の「電子出版物」については、ゲームエンジンに関する電子出版物が多数存在するから、両者の関連性は密接である(甲23、甲7)。

イ 第16類について

本件商標の指定商品中、「文房具類」については、ゲームキャラクターをあしらった文房具があるように(甲24)、ゲームとの関連性は深い。「印刷物,書籍,出版物」については、ゲームエンジンに関する書籍等が多数存在するから、両者の関連性は密接である(甲25、甲5)。

ウ 第35類について

本件商標の指定役務中、「広告業,企業の広告及び広報活動の企画・代行,メディアへの広報活動の企画・代行,インターネットによる広告,バナー広告,広報活動の企画,トレーディングスタンプの発行」については、いずれも広告業ないし商品の販売促進に係るサービスであるところ、ゲームのプレイヤー人口の拡大に伴い、ゲーム内広告(ゲーム内で配信される広告)にも注目が集まっており(甲26)、これらの役務とゲームとの関連性は深い。「マーケティング」については、ゲーム業界で重要とされている(甲27)。「経営の診断又は経営に関する助言,事業の管理,デジタルトランスフォーメーションのための事業に関する助言,事業の管理に関する指導及び助言,事業の組織に関する指導及び助言,事業の能率化に関する診断・指導及び助言,事業に関する指導及び助言,医療経営に関するコンサルティング及びそれに関する情報の提供,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,統計の編集,他人の事業のために行う物品の調達及びサービスの手配,第三者のための商取引の交渉及び締結の代理及び代行,事業の契約に関する交渉の代行(他人のためのこと),価格比較の調査,会社のための管理業務の代行,商取引の受注管理,人事管理に関する指導及び助言,経済予測,商業又は工業の管理に関する助言,事業の調査,商取引の媒介・取次ぎ又は代理,他人の商品及びサービスのライセンスに関する事業の管理,資金を必要とする起業家と潜在的な個人投資家とのマッチングに関する事業の仲介,事業の評価,商業に関する情報の提供,原価分析,取引相手先の商業及び事業に関する情報の提供,事業に関する情報の提供,事業の組織に関する指導及び助言,スポンサー探し,企業の人事管理のための適正検査」(35B01)については、いずれも経営や事業に関する指導や助言ないしコンサルティング等であるところ、これらのサービスがゲームやeスポーツに特化して提供される実態があり(甲28)、これらの役務とゲームの関連性は深いというべきである。商標登録出願の指定役務にも、「インターネットによるゲームに関するアンケート調査及びその調査結果に関する情報の提供」「ゲームの内容を記憶させた記憶媒体の販売に関する情報の提供」「ビデオゲーム産業及びコンピュータゲーム産業の動向に関する情報の提供」「ブロードバンド対応のゲームの売買契約の媒介」等があり、これらは上記役務(35B01)とゲームとの関連性を示すものである。

「ウェブサイトの検索結果の最適化,マイレージプログラムの管理,販売促進のための検索エンジンの検索結果の最適化,商業又は広告用ウェブのインデックスの作成,販売促進のための企画及び実行の代理,顧客ロイヤリティプログラムの管理,販売を目的とした、各種通信媒体による商品の紹介,広告用具の貸与,広告場所の貸与」はいずれも、広告や販売促進、管理業務の性格を併せ持つサービスであるから、前記「広告業」や「経営の診断又は経営に関する助言」の段落で述べたとおり、ゲームとの関連性が認められる。

「職業のあっせん,求人情報の提供,人材募集」については、ゲームその他の事業を展開するエンターテイメント企業が人材関連ビジネスを手掛ける例があり(甲29)、ゲームとの関連性が認められる。

「印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、第16類の商品の小売等役務であるから、前記第16類の商品との関連性と同様である。

「競売の運営,入札に対する応札の管理支援,文書又は磁気テープのファイリング,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供」は、商品の販売や管理に係る支援業務であって、前掲の「商品の販売に関する情報の提供,事業の管理,会社のための管理業務の代行,商業に関する情報の提供」等と共通する側面があるから、それらと同様にゲームとの関連性が認められるべきものである。

エ 第38類について

本区分では「電気通信(「放送」を除く。),メッセージの送信のための通信,ウェブによるメッセージの通信」が指定されているところ、オンラインゲームが通信と密接に関連していることは明らかである。商標登録出願の指定役務にも、「インターネット経由でのビデオ・映画・画像・映像・テキスト・写真・ゲーム・ユーザー作成コンテンツ・オーディオコンテンツ及び情報の送信」「テレビゲーム機(家庭用及び業務用を含む。)による通信」など、通信とゲームとの関連性を示す役務がある。

オ 第41類について

本区分では「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,書籍の制作,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」が指定されているところ、ゲームの専門学校(甲30)、ゲームに関するセミナー開催(甲31)、ゲーム書籍の制作、放送番組の制作(甲32)、ゲーム用ビデオの制作、ゲームイベントの開催等のサービスがあることは広く知られており、ゲームと第41類の役務との関連性は密接である。商標登録出願の指定役務にも、「ゲームに関する知識の教授及び訓練」「ショー・競技会・スポーツ又はゲームの大会・コンサート及び娯楽イベントの運営並びに上演」「ゲームに関する書籍の制作」「テレビゲームショーの制作及び配給」「インターネット経由によるゲーム大会・競技会の運営及び開催」等があり、これらは上記第41類の役務とゲームとの関連性を示すものである。

カ 第42類について

本件商標の指定役務中、「デザインの考案」は、「アニメーションデザインの考案」や「コンピュータグラフィックデザインの考案」等を含む役務であるから、これがゲーム制作と切り離せないことは明らかである。また、「電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」の役務は、例えばゲーミングPC(:PCゲームを快適にプレイするために設計された高性能パソコン)の性能や操作方法の説明が該当するのであって、ゲームとの関連性は密接である。

キ 需要者及び取引者の共通性

以上述べたとおり、本件商標の指定商品及び指定役務はいずれも、ゲームエンジンひいてはゲームと密接な関連性もしくは一定の関連性がある。そして、引用商標が使用されるGodotエンジンの需要者、取引者は、ゲーム愛好家、コンテンツ産業に従事する人々であって、本件商標の指定商品(第9,16類)及び指定役務(第35,38,41,42類)の需要者、取引者と共通するものである。

(5)混同を生ずるおそれについて

上記(1)のとおり、引用商標はゲームエンジンの名称として我が国における需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得している。

また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は同一と認められるものであり、上記(3)のとおり、引用商標の独創性の程度は極めて高い。

そして、上記(4)のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務は、いずれもゲームエンジンひいてはゲームとの密接な関連性ないし一定の関連性が認められ、その取引者、需要者を共通にする。

さらに、ゲームの制作や配信を行う会社が、広告業、コンサルティング業、人材業、出版業、教育事業等を行っている実情があるなど(甲28、甲29、甲33等)、今やゲームエンジンは様々な産業領域と関連している。

そうすると、本件商標をその指定商品又は指定役務に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名な引用商標を想起又は連想し、その商品等が、申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品等の出所について混同を生じるおそれがある。

(6)むすび

以上述べたとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。

4 当審の判断

(1)引用商標の周知性について

ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。

(ア)引用商標は、アルゼンチンのソフトウェア開発者によって、ラテンアメリカの複数の企業向けにブエノスアイレスで開発され、2014年1月にオープンソースとして一般公開された、クロスプラットフォーム対応のオープンソースゲームエンジンの名称である(甲2)。

(イ)「VRコンテンツ開発ガイド2017」(2017年5月21日初版発行)の「VRアプリケーション開発環境の概況」(48頁)によれば、多数のゲームエンジンの1つとして「Godot Engine」もあることが記載されている(甲5)。さらに、2019年に東京で開催されたインディーゲーム開発者向けイベントにおいて、ノンプログラマー向けにGodotを使用したゲーム制作入門書等が一般に公開された(甲7)。

(ウ)YouTube「Godot Engine」のチャンネル登録者数は、9.56万人となっている(甲12)。

(エ)2023年及び2024年に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたゲーム開発者会議(GDC)において、Godotのブースが出展されるなどした(甲15の2及び3)。

(オ)「ゲームエンジン別年間販売ユニット数の推移」と題する証拠(甲16の1)によれば、全ゲームエンジンに占めるGodotの引用商標を使用したゲームエンジンの世界シェアは2%程度とされる(甲16の1)。また、ロシアのゲームマーケティングサービス情報サイト「App2Top」によれば、「小型エンジンの中では、Godotの人気が高まっており、2024年には、2020年と比較して144%、新しいGodotのゲームがSteamでリリースされた」とする記事が掲載されている(甲16の2)。

(カ)申立人は、引用商標はゲーム市場においてかなりの認知があると主張し、その根拠として、世界のゲームエンジンの市場と日本のデバイス別ゲーム市場の規模を比較し、日本における市場規模がかなりの大きさになることを挙げている(甲17の1及び2)。

イ(ア)上記ア(ア)及び(イ)によれば、申立人は、「Godot」と称するクロスプラットフォーム対応のオープンソースゲームエンジンを開発し、当該ゲームエンジンが2014年に一般公開されたことはうかがい知ることができるとしても、申立人の「Godot」に係る引用商標を使用した商品及び役務の、我が国又は外国における売上高、市場シェアなどは不明である。

そして、我が国において、2017年にVRアプリケーション開発におけるゲームエンジンの1つとして「Godot Engine」が書籍に紹介され、引用商標を使用したゲーム制作の入門書等が公開されたとしても、それらが当該技術分野に関する書籍等の中で、どの程度の売上高又は販売シェアがあるかうかがい知ることができない。

(イ)上記ア(ウ)によれば、申立人のYouTubeにおける「Godot Engine」の登録者数は一定数存在することはうかがえるものの、当該YouTubeの更新日等は不明であり、出力日は本件商標の登録査定後の日付である。さらに、提供している動画は全て英語で表示されていることから、我が国の需要者に向けた動画とはいえないし、その登録者数に我が国の需要者がどの程度含まれているのか、また、当該動画の我が国の視聴者数や視聴回数等の視聴実績も不明である。

(ウ)上記ア(エ)によれば、ゲームイベント、会議等が開催されたとする証拠を複数提出しているが、それらは英語版のウェブサイト(HPアドレス)や、一部日本語に翻訳された記事であるところ、その内容を確認しても、会議やイベント等の来場者数や申立人主催の講演に参加した人数、ブースへの来客数などは不明である。

また、申立人は、Godotの引用商標を使用したゲームエンジンが世界シェアの2%であると主張するが、上記ア(オ)の当該推移のグラフによれば、Godotの引用商標を使用したゲームエンジンを含む「Godot&GameMaker」のシェアが2%であることからすれば、Godotの引用商標を使用したゲームエンジンのみのシェアが2%に満たないことは明らかであり、その割合が多いとは到底いえない(甲16の1)。さらに、2024年に、Steam上でリリースされたGodotの引用商標を使用したゲームエンジンを使用したゲーム数が全体のゲームエンジン別のゲーム数の5%程度であったとしても、全体に占める割合としては多いとはいえない(甲16の2)。

さらに、申立人は、引用商標がゲーム市場でかなりの程度で認知されている旨主張しているが、その根拠となる上記ア(カ)の世界のゲームエンジン市場の規模(甲17の1)の記事は、本件商標の登録査定日後の記事であり、また、主要6ヶ国のデバイス別の国内ゲーム市場規模(コンソール(ソフト販売、オンライン)、PC、モバイル)(甲17の2)は、申立人の市場規模が証明されておらず、デバイス別の市場規模が分かったとしても引用商標の周知性とは関係があるとはいえない。

(エ)以上のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が単独で使用された申立人の業務に係る「ゲームエンジン用プログラム」及び「ゲームエンジン用プログラムの設計、開発及び提供」等についての我が国及び外国における市場占有率(販売シェア等)、売上高、宣伝広告の詳細など、使用の事実を量的に把握することができる資料は提出されておらず、客観的な使用事実に基づいて引用商標の使用状況を把握することができない。

そうすると、申立人提出の証拠によっては、引用商標が、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められない。

(2)商標法第4条第1項第15号該当性について

ア 本件商標と引用商標との類似性の程度について

本件商標は、前記1のとおり、「Godot」の欧文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して、「ゴドット」又は「ゴードット」の称呼を生じ、また、当該文字(語)は、辞書等に載録されている既存の語とは認められないことから、特定の観念を生じないものである。

また、引用商標1は、前記2のとおり「Godot」の欧文字を表してなるものであり、引用商標2は、「GODOT」の欧文字を表してなるものである。

そうすると、前記アと同様に、引用商標からは、「ゴドット」又は「ゴードット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標と同じく構成中に小文字を含むか又は大文字のみからなるかの差異はあるものの、両商標を構成する文字を共通にするものであるから、外観において類似する。

そして、いずれも「ゴドット」又は「ゴードット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものであるから、称呼を共通にし、観念においては比較することができない。

そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観において類似し、称呼を共通にすることから、これらを総合的に考察すれば、両商標は類似の商標というべきであり、その類似性の程度は高いといえる。

イ 引用商標の周知著名性及び独創性の程度について

(ア)引用商標は、前記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていると認めることはできないものである。

(イ)引用商標は、「Godot」又は「GODOT」の文字からなり、当該文字(語)は、辞書等に載録されている既存の語とは認められないことから、引用商標の独創性の程度は高いといえる。

(3)本件商標の指定商品及び指定役務と申立人の業務に係る商品及び役務との関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性について

本件商標の指定商品及び指定役務は、別掲のとおりの商品及び役務であり、他方、申立人の業務に係る商品及び役務は、ゲームエンジン用プログラム、ゲームエンジンの設計及び開発等であるところ、両者は事業者や商品及び役務の用途、販売場所及び提供場所等において明らかに異なり、関連性があるとはいえない。

(4)出所の混同のおそれについて

以上によれば、本件商標と引用商標は類似の商標であり、その類似性の程度及び引用商標の独創性の程度は高いとしても、引用商標は、申立人の業務に係る申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認めることはできず、また、本件商標の指定商品及び指定役務と申立人の業務に係る商品及び役務との関連性並びに取引者及び需要者の共通性は低いことからすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。

その他、本件商標が商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(5)まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとはいえず、その登録は同項の規定に違反してされたものとはいえない。

他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。

したがって、本件商標の指定商品及び指定役務中、第9類「全指定商品」、第16類「全指定商品」、第35類「全指定役務」、第38類「全指定役務」、第41類「全指定役務」及び第42類「全指定役務」についての登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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