sokuhyo

Trademark Appeal Case

一文字違い商標の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900146
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6922883号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6922883号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和6年9月26日に登録出願、第9類「カウンター,材料試験用の器具及び機械,物理学実験用機械器具,粘度計,蓄電器,電線及びケーブル,乗物用蓄電池,バッテリーボックス,点火用バッテリー,陽極,陽極電池,高圧型電池,ガルヴァーニ電池,蓄電池,陰極,太陽電池,電気自動車用充電装置,電子たばこ用バッテリー,携帯式充電器」を指定商品として、同7年3月24日に登録査定、同年4月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、次の1から3のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。

1 登録第579338号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の構成:別掲2のとおり

登録出願日:昭和33年11月19日

設定登録日:昭和36年 8月19日

指定商品の書換登録日:平成14年8月28日

指定商品:第9類及び第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

2 登録第2699186号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

登録出願日:平成3年12月25日

設定登録日:平成6年11月30日

指定商品の書換登録日:平成18年2月22日

指定商品:第7類、第9類及び第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

3 登録第4863228号商標(以下「引用商標3」という。)

商標の構成:別掲4のとおり

登録出願日:平成16年3月 8日

設定登録日:平成17年5月13日

指定商品及び指定役務:第1類、第4類、第6類、第7類、第9類から第12類、第16類、第17類、第21類、第24類及び第35類から第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、その指定商品中、第9類「乗物用蓄電池,バッテリーボックス,点火用バッテリー,陽極電池,高圧型電池,ガルヴァーニ電池,蓄電池,太陽電池,電子たばこ用バッテリー」(以下「申立てに係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第26号証を提出した。以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)申立てに係る商品は「電池」と同一又は類似であると解され、引用商標の指定商品「電池」と類似するといえる。

(2)本件商標について

本件商標は、欧文字「YUNSA」と中国語の簡体字「云山○力」(○は「動」に相当する中国語の簡体字である。以下同じ。)とを横書きしてなる結合商標であって、「YUNSA」と「云山○力」の間にはスペースが設けられていること、「YUNSA」が「云山○力」より大きく表記されていること、さらに、「YUNSA」と「云山○力」が異なる言語で表記されていることから、「YUNSA」と「云山○力」は視覚的に分離される。

また、「云山○力」が日本において特定の読みをもって親しまれた中国語ではない点や日本における簡体字の普及率、識字率、認知度を考慮すると、「云山○力」の部分から直ちに特定の称呼及び観念は生じ難いといえる。

本件商標は、上述のとおり、「YUNSA」と「云山○力」は分離して観察することが取引上不自然であるほど不可分に結合しているものとはいえないことに加え、本件商標に接する取引者又は需要者が「YUNSA」を出所識別標識として認識する可能性が高いといえるため、本件商標中「YUNSA」と引用商標を対比し、類否判断することは許されるといえる。

(3)本件商標と引用商標の類否について

ア 外観の対比について

本件商標中「YUNSA」と引用商標1及び引用商標2の文字部分「YUASA」の相違点は、「N」と「A」の違いのみである。

本件商標において、出所識別標識として強く支配的な印象を与える「YUNSA」と引用商標1及び引用商標2の文字部分「YUASA」は、語頭及び語尾を含む5文字中4文字を共通にし、比較的埋没しやすい中間部分である3文字目が異なるのみであり、両者を時と場所を異にして離隔的に考察した場合、互いに近似した印象を与える。さらに、相違する「N」と「A」はいずれも直線のみで構成されている点において、構造が共通しているといえる。

以上から、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、外観において類似するといえる。

イ 称呼の対比について

本件商標は、その構成中の「YUNSA」の文字部分から「ユンサ」の称呼が生じる。一方、引用商標1及び引用商標2からは「ユアサ」の称呼のみが生じる。また、引用商標3は、「GS YUASA」の文字から「ジイエスユアサ」のみならず、「ユアサ」の称呼も生ずることが商標公報の「称呼(参考情報)」に記されている(甲4)。

本件商標と引用商標の称呼は、3音中2音を同一とし、相違する1音は、語頭にあって強く発せられる「ユ」の音と明瞭に響く語尾の「サ」の音に挟まれる中間音であるため、前後の音の響きに吸収され易く、それ自体の音の響きが相対的に弱められるといえる。

よって、その差異音は常に明瞭に聴取されるものとはいい難く、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調語感が近似し、互いに相紛れるおそれがある。

したがって、本件商標と引用商標は、称呼において類似するといえる。

ウ 観念の対比について

引用商標は、「姓」若しくは「地名」の「湯浅」を想起させるか、又は申立人の著名な商標であることから、申立人の業務に係る商品を想起させると考えるのが妥当である。

一方、本件商標中「YUNSA」は辞書に掲載されていないため造語と認識され、特定の観念は生じない。また、本件商標中「云山○力」からは直ちに特定の観念は生じ難い。ゆえに、本件商標全体からは特定の観念は生じないといえる。

したがって、本件商標と引用商標は、観念において比較することはできない。

(4)小括

以上述べたように、本件商標中、出所識別標識として強く支配的な印象を与える「YUNSA」と引用商標の「YUASA」とは外観及び称呼において相紛らわしく、観念においては比較することはできない。

よって、これらを総合的に勘案した場合、本件商標は引用商標と類似の商標であり、また、その指定商品も類似するため、商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号について

(1)引用商標の周知著名性について

ア 申立人の歴史

申立人は、旧日本電池株式会社(以下「旧日本電池」という。)と旧株式会社ユアサコーポレーション(以下「旧ユアサコーポレーション」という。)が平成16年に経営統合し、設立され、その前身の2社の時代を含めると創業120年以上の長い歴史を持つ(甲8)。

イ 申立人の「YUASA」の使用と商標登録

昭和30年代には、旧ユアサコーポレーションの前身である「湯浅電池株式会社」が引用商標1の使用を開始するとともに商標登録を行った。その後、「ユアサコーポレーション」への社名変更に伴い引用商標2が使用及び商標登録された(甲9)。

そして、旧日本電池と旧ユアサコーポレーションの統合に伴い、申立人は、それぞれの商標である「GS」と「YUASA」を結合させた引用商標3を採択し、商標登録した。引用商標3は、上述した旧ユアサコーポレーションが永年にわたって築いてきた実績の象徴ともいえる「YUASA」を継承しており、現在、国内外の複数の関係会社が「YUASA」を含む社名を使用している(甲10)。

なお、申立人は、経営統合以降も、ハウスマークとして引用商標を世界各国で商標登録している(甲11)。

ウ 申立人の事業規模

申立人の事業規模は、資本金528億円、従業員数12,478名(令和7年3月31日現在)であって、東証プライム市場に株式上場し、日経平均株価指数を算出する日経225銘柄にも指定されている(甲10)。

申立人の連結売上高約5,803億円、連結純資産約3,909億円、連結総資産約6,937億円である(令和7年3月期)。

また、申立人は積極的に海外での事業展開を行っており、令和6年3月31日時点で21か国に海外製造販売拠点を有しており、令和6年度の連結売上高約5,803億円のうち、海外売上高比率は50%を占めている(甲10)。

エ 電池事業における申立人の市場シェア(日本)

令和5年度の日本における申立人の自動車用蓄電池の市場占有率は、新車向け蓄電池の72%、補修向け蓄電池の57%となっており、それぞれ国内第1位のシェアを占めている(甲13)。

オ 取引実情(日本)

「YUASA」及び「電池」をキーワードとしたYahoo検索(ウェブサイト)で、ヒットした件数は約118万件であり、申立人が確認した範囲(検索結果の上位5ページ)では、その大半が申立人の蓄電池製品に関するものであった(甲14)。

カ 電池事業における申立人の市場シェア(海外)

世界における令和5年度の申立人の蓄電池の市場占有率は、オートバイ用は15%、自動車用は7%となっており、オートバイ用蓄電池は世界第1位、自動車用蓄電池は世界第2位のシェアを占めている。

特にオートバイや自動車の販売台数が飛躍的に増加したアセアン地域では、オートバイ用は48%、自動車用は35%のシェアを誇っており、いずれも第1位の市場占有率である(甲13)。

キ 引用商標の周知著名性についての過去の認定(日本)

「YUASA」の文字を含む引用商標が、電池関連事業において需要者に広く認識されていることは、異議2013-900426において、既に認定されているとおりである(甲15)。

また、判定2010-600037においても、「本件商標(商標登録第579338号)は、請求人(株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション)の業務にかかる商品『自動車及びバイク用バッテリー』を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認めることができる」と判断されており、引用商標1の周知著名性が認定されている(甲16)。

また、引用商標2は、2004年発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」に有名商標として掲載されている(甲17)。

ク 引用商標1及び引用商標2の周知著名性(中国)

本件商標権者が本拠を置く中国においては、引用商標2が、海外の有名企業の商標として、2017年発行「中外著名企業 商標維権識別手冊」に掲載されている(甲18)。また、中国では、引用商標1及び引用商標2と同一又は類似の商標が以前より多数出願されているが、申立人による異議申立の結果、登録が取り消されている(甲19)。

ケ 日本及び中国における引用商標1の認知度

申立人は、2025年3月に、日本や中国を含めた世界20か国において、ブランド認知度把握調査を行った。調査対象者は、世帯で自動車又はバイクを保有している運転免許所持者であり、かつ、2週間に1回以上は所有車(自動車・バイク)の運転を行っている18歳~64歳までの各国居住者(ただし、自動車・バイク関連製造業・小売業、自動車部品製造業・卸小売業、広告・マーケティング業関与者を除く。)である(甲20)。

日本において回答があった1,140人のうち、「YUASA」(引用商標1及び引用商標2)の認知度は47.0%であり、「GS YUASA」(引用商標3)の認知度は35.2%であった(甲20)。

また、中国においても、回答があった1,111人のうち、「YUASA」(引用商標1及び引用商標2)については19.6%が認知しており、「GS YUASA」(引用商標3)については12.9%が認知していた(甲20)。

(2)指定商品及び商標の類似性

申立てに係る商品と引用商標の指定商品は類似関係にあり、本件商標と引用商標は類似する相紛らわしい商標だといえる。

(3)小括

以上述べたように、申立人は電池事業で長い歴史を持ち、現在も国内外の市場での高いシェアを獲得していることから、引用商標は国内及び中国において周知著名であるといえる。また、申立人の業務に係る電池を表示する商標として「YUASA」が需要者に広く認識されている取引実情もある。ゆえに、引用商標は申立人のハウスマークとして、あるいは、申立人の業務に係る商品「電池」を表示する商標として、本件商標の出願時及び査定時において、日本のみならず中国でも周知著名な商標であるといえる。また、申立てに係る商品中、特に「乗物用蓄電池,蓄電池」は申立人の取り扱う製品と同一であり、当然に需要者や流通経路も共通する。

したがって、引用商標に類似する本件商標が申立てに係る商品について使用された場合、これに接する取引者・需要者は、申立人の商標又は申立人を想起、連想し、これらの商品が申立人又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといえる。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。さらに、申立てに係る商品である電池類は、安全性や信頼性が重視される製品であるため、製品の出所の混同によって申立人の信用を損なうおそれも大きく、取引秩序を乱す結果につながることも懸念される。

3 商標法第4条第1項第19号について

(1)不正目的の登録であるとする根拠

ア 本件商標「YUNSA 云山○力」における「YUNSA」は、周知著名商標「YUASA」と極めて類似している。

イ 引用商標は、本件商標の出願時及び査定時において、日本だけでなく中国においても周知著名であったと推認できる。

ウ 中国で電池関連分野の事業に携わる本件商標権者も、引用商標が周知著名であることを当然に認識していたと推測できる。

エ 上述のブランド認知度把握調査の「検討候補(今後購入の候補になるブランド)の回答」から、中国では「YUASA」及び「GS YUASA」が取引者・需要者の信用を得ていることが分かる(甲20)。

オ 本件商標権者は、本件商標をハウスマークとして使用していることから、本件商標中の欧文字「YUNSA」は、本件商標権者の社名「云山○力(△波)有限公司」(△は「寧」に相当する中国語の簡体字である。)の一部「云山」の欧文字表記から採択されたと考えるのが自然である(甲21)。

「云山」が中国語で「ユンシャン」と発音されることから、「云山」は「YUNSHAN」や「YUNSHANG」と欧文字表記されることが多いところ、本件商標権者は、あえて周知著名商標であり、取引者・需要者からの信用を得ている「YUASA」と類似する「YUNSA」を採択し使用している。この点から、本件商標権者には申立人の蓄積した信用・顧客吸引力にフリーライドしようとする意図があるものと推認できる。

カ 本件商標権者は本件商標と同一又は類似の商標を、EU、イギリス、アメリカ、中国、マレーシア、ベトナム、タイなど、申立人が既に事業拠点を有している国々に出願している(甲22)。このことから、申立人の海外展開と市場での認知度を意識し、その信用に便乗して事業を行おうとする意図が本件商標権者にあったものと推認される。

キ 本件商標権者がマレーシア及びイギリスに出願した「YUNSA 云山○力」に対して、申立人は、出願商標が引用商標に類似することを理由として異議申立を行ったが、本件商標権者からは一切の応答がなされず、当該出願は取り下げ擬制となっている(甲23、甲24)。

ク アメリカに出願された「YUNSA 云山○力」に対する異議申立についても、本件商標権者は答弁書の提出も期間延長の請求も行っておらず、米国特許商標庁からNOTICE OF DEFAULTが発行されている(甲25)。

ケ このような対応は、本件商標権者が自身の出願に正当性を説明できず、「YUNSA 云山○力」と引用商標が類似することを認めたことを示すものでもある。

なお、本件商標権者が本拠を置く中国において出願した「YUNSA 云山○力」は、審査において拒絶されており、当該商標に関する権利は認められていない(甲26)。それにもかかわらず、本件商標権者は同商標を使用して電池関連事業を継続しており、その事実は本件商標権者のウェブサイト上で確認できる(甲21)。

これらの事実は、本件商標権者が、申立人のグローバルな信用・ブランド認知を不正に利用しようとする意図を明確に持って、申立人の周知著名商標「YUASA」と類似する表記「YUNSA」を採択していることを客観的に示している。

(2)小括

上述のとおり、本件商標は、日本及び中国において周知著名である引用商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をする商標というべきである。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断

1 引用商標の周知性について

(1)申立人提出の証拠及び申立人の主張によれば、以下の事実が認められる。

ア 申立人は、共に蓄電池の製造を行っていた旧日本電池と旧ユアサコーポレーションが平成16年に経営統合し、設立され、前身の2社の時代を含めると創業120年以上の歴史を持つ(甲8)。

イ 申立人は、経営統合以降も、ハウスマークとして引用商標を世界各国で商標登録している(甲11)。

ウ 申立人の事業規模は、資本金528億円、従業員数12,478名(令和7年3月31日現在)であって、東証プライム市場に株式上場し、日経平均株価指数を算出する日経225銘柄にも指定されている(甲10、申立人の主張)。

エ 申立人は海外でも事業展開を行っており、令和7年3月時点で19か国に海外製造販売拠点を有し、令和6年度の連結売上高約5,803億円のうち、海外売上高比率は50%を占めている(甲10、申立人の主張)。

オ 申立人は、引用商標を「蓄電池」に使用している(甲14)。

カ 令和5年度の日本における申立人の自動車用蓄電池の市場占有率は、新車向け蓄電池の72%、補修向け蓄電池の57%となっており、それぞれ国内第1位のシェアを占めている(甲13)。

キ 令和5年度における申立人の蓄電池の市場占有率について、オートバイ用蓄電池は世界第1位、自動車用蓄電池は世界第2位のシェアを占めている。特にアセアン地域では、オートバイ用は48%、自動車用は35%のシェアを占めており、いずれも第1位の市場占有率である(甲13)。

ク 引用商標2は、2004年発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」に掲載されており(甲17)、また、中国において、2017年発行「中外著名企業 商標分類別ハンドブック」に掲載されている(甲18)。

ケ 2025年3月における「グローバルブランド認知度把握調査」において、日本における引用商標2の認知度は47.0%、引用商標3の認知度は35.2%であり、また、中国における引用商標2の認知度は19.6%、引用商標3の認知度は12.9%であった(甲20)。

(2)判断

上記(1)で認定した事実によれば、申立人は、「蓄電池」を製造する企業として長い歴史を持ち、日本及び海外において相当程度の事業規模を有しており、また、引用商標は、申立人によって、ハウスマークとして使用されるとともに「蓄電池」に使用され、当該「蓄電池」は日本及びアセアンにおいて高いシェアを有し、2004年発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」や中国における2017年発行「中外著名企業 商標分類別ハンドブック」に掲載されており、さらに、日本及び中国において、引用商標は相当程度の認知度を有していることが認められる。

そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「蓄電池」を表示するものとして、日本及び外国(中国等)における需要者の間に広く認識されていたというべきである。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は、別掲1のとおり、「YUNSA」の欧文字と中国語の簡体字で表された「云山○力」の漢字とを横書きしてなるところ、太字で大きく表されている欧文字部分からは、「ユンサ」の称呼を生じ、当該欧文字部分は、辞書等に載録が認められないから、特定の観念を生じないものである。

(2)引用商標について

ア 引用商標1は、別掲2のとおり、語頭の「Y」の文字を大きく表した「YUASA」の欧文字を書した構成からなり、その構成文字に相応して「ユアサ」の称呼が生じ、「湯浅の姓氏」ほどの観念が生じるものである。

イ 引用商標2は、別掲3のとおり、幾何学模様からなる図形の下部に「YUASA」の欧文字を書した構成からなり、その構成文字に相応して「ユアサ」の称呼が生じ、「湯浅の姓氏」ほどの観念が生じるものである。

ウ 引用商標3は、別掲4のとおり、「GS YUASA」の欧文字を有した構成からなり、「GS YUASA」の欧文字からは、「ジイエスユアサ」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。

(3)本件商標と引用商標との類否

本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、両商標の全体同士の比較においては、簡体字の有無等により、明らかに相違している。また、本件商標の「YUNSA」の文字部分と引用商標の「YUASA」の文字部分との比較においては、両者は、「Y」、「U」、「S」、「A」の文字を共通にし、異なるところは中間における「A」と「N」の文字の差異にすぎないから、両者を並べて観察する対比観察においては、似通った印象を受けるものといえる。しかしながら、両者は、いずれも何ら特徴のない書体で表されているものであるから、時と所を異にした離隔観察においては、両者の構成文字の共通性は、外観上の特徴として強い印象を与えるものではなく、記憶に残るものでもない。

また、称呼においては、本件商標から生じる「ユンサ」の称呼と引用商標1及び引用商標2から生じる「ユアサ」の称呼とは、語頭における「ユ」及び語尾における「サ」の音を共通にするものの、中間における「ア」又は「ン」の音において明らかな差異を有するものであり、3音という極めて短い音構成においては、その差異が称呼全体に与える影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、明瞭に聴別できる。引用商標3から生じる「ジイエスユアサ」の称呼との比較においては、「ジイエス」の音の有無により、明らかに聴別でき、仮に引用商標3から「ユアサ」の称呼が生じるとしても、引用商標1及び引用商標2の場合と同様に、聴別できる。

さらに、本件商標からは特定の観念を生じないのに対し、引用商標からは、「湯浅の姓氏」ほどの観念が生じるか又は特定の観念を生じないものであるから、両商標は、観念上、相紛れるおそれはない。

したがって、本件商標と引用商標とは、外観において明らかに相違するか又はその共通性が強い印象を与えるものでも記憶に残るものでもないものであり、称呼において聴別でき、観念において相紛れるおそれはないから、これらの外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。

(4)申立てに係る商品と引用商標の指定商品について

申立てに係る商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものである。

(5)小括

したがって、申立てに係る商品が引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものであるとしても、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「蓄電池」を表示するものとして需要者の間に広く知られているとしても、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標とはいえないから、両商標の類似性の程度は低いものである。

そうすると、申立てに係る商品と「蓄電池」との関連性や需要者の共通性等を考慮したとしても、本件商標は、本件商標権者がこれを申立てに係る商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第19号該当性について

引用商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「蓄電池」を表示するものとして、日本及び外国(中国等)における需要者の間に広く認識されていたものである

しかしながら、本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、非類似の商標である。

さらに、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。

したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものということはできないから、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

5 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。