結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024013494 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は,令和2年2月3日に出願した特願2020-16591号の一部を令和4年11月9日に新たな特許出願としたものであって(優先権主張 平成31年2月5日(以下「優先日」という。))、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年12月 5日付け:拒絶理由通知書
(特許法第50条の2を伴う通知)
令和6年 4月10日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月14日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月21日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年9月13日付け:前置報告書]
令和7年 6月27日 :上申書の提出
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月21日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
令和6年8月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次の(1)に示す本件補正前(出願時のものをいう。以下同じ。)のものから、後記(2)に示す本件補正後のものに補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
第1樹脂基材と、ホログラム層とを有する画像表示用導光板であって、
前記第1樹脂基材は、シャドーコントラストによる評価で得られるMC値が0.120以下である、画像表示用導光板。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
第1樹脂基材と、ホログラム層とを有する画像表示用導光板であって、
前記第1樹脂基材は、シャドーコントラストによる評価で得られるMC値が0.120以下であ
り、
前記第1樹脂基材の表面の算術平均粗さRaが5nm以下である
、画像表示用導光板。」
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「第1樹脂基材」を「表面の算術平均粗さRaが5nm以下である」に限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
本件補正により請求項1についてする補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成X並びに構成A及びBに分説する。また、参考図として、本願の【図1】に部材名を記入したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
X 第1樹脂基材と、ホログラム層とを有する画像表示用導光板であって、
A 前記第1樹脂基材は、シャドーコントラストによる評価で得られるMC値が0.120以下であり、
B 前記第1樹脂基材の表面の算術平均粗さRaが5nm以下である、
X 画像表示用導光板。
<参考図>
【図1】
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イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
(ア) 【技術分野】、【発明の概要】(【0001】~【0009】)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示用導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置において、画像表示用導光板が用いられる場合がある。例えば、VR(仮想現実)技術、AR(拡張現実)技術又はMR(複合現実)を用いた表示装置においては、ホログラム層が透明基材に支持された画像表示用導光板が用いられる。ホログラム層には、種々の光学機能、例えば、導波、反射及び回折の機能を有するホログラムが形成される。
透明基材としては、ガラス基材が用いられることが多い。しかし、加工性、軽量性、耐久性及び可搬性の観点から、透明基材として、樹脂基材が用いられることがより好ましい。
【0003】
特許文献1には、車載用ヘッドアップディスプレイに用いられるホログラム積層体が開示されている。このホログラム積層体は、アクリル系樹脂基板、アクリル系接着剤層、アクリル系フォトポリマーからなるホログラム層、アクリル系接着剤層及びアクリル系樹脂基板が、この順に積層されている。
特許文献1には、アクリル系樹脂基板の表面平滑性によって、ホログラムの外観変化が発生することが記載されている。特許文献1によれば、ホログラム積層体の表面平滑性を表す最大高さRmaxが50μmを超えると、ホログラムの外観変化が顕著になる。最大高さRmaxが25μm未満の場合、ホログラムの外観変化は許容範囲である。ただし、特許文献1には、最大高さRmaxが1μm以下のナノオーダの表面平滑性の必要性については特に記載されていない。特許文献1には、ナノオーダの表面平滑性を有する具体例も何ら記載されていない。
また、ホログラム層を形成するホログラム材料は温度変化により樹脂基材を侵食する場合がある。ホログラム材料は、吸湿によって劣化することも知られている。このため、ホログラム層を樹脂基材で支持する表示装置は高温多湿環境下で劣化しやすい。
...(中略)...
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-296583号公報
...(中略)...
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の関連技術には、以下の問題がある。
特許文献1に記載のホログラム積層体は、主に運転者が見る車載用のヘッドアップディスプレイに用いられる。このため、表示画像の画質は、特に高画質でなくてもよい。しかし、例えば、AR又はMRに用いるウェアラブルディスプレイ又はヘッドマウントディスプレイの場合、使用者の全視野において写実的な画像が表示されたり、細かな文字が表されたりすることが多い。このような用途においては、さらなる高画質化が求められる。 本発明者の検討によれば、画像表示用導光板においてホログラム層が樹脂基材に挟まれている場合、最大高さRmaxが25μm未満であっても画質低下が観察されることがある。例えば、押出成形された樹脂基材の表面に、押出ローラの駆動ギアのかみ合いピッチに対応するピッチのうねり(ギアマーク)が生じていると、画像が不鮮明なる箇所が発生しやすい。
...(中略)...
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、樹脂基材を用いた場合であっても鮮明な画像が表示できる画像表示用導光板を提供することを目的とする。
...(中略)...
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究を行い、画像表示用導光板に用いる樹脂基材において、表面粗さで測定されるピッチよりも格段に大きなピッチで変化する表面のうねりの大きさに対応する平面性を改善することにより、鮮明な画像を表示できることを見出し、本発明に到った。
樹脂基材の表面の平面性がうねりによって低下すると、樹脂基材に積層されるホログラム層の厚み振れが生じる。ホログラム層の厚み振れが生じると導波光の振れが生じる結果、画像に微細な歪み、変形が生じ、画像が不鮮明になる。カラー画像の場合には、導波光の振れに起因する色ずれ及び色にじみが生じる結果、画像が不鮮明になる。
これに対して、樹脂基材の表面の平滑性が微細な凹凸によって低下すると、導波光の散乱が生じる結果、画像が不鮮明になる。
...(中略)...
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂基材を用いた場合であっても鮮明な画像が表示できる画像表示用導光板を提供できる。
...(後略)」
(イ) 第1の実施形態(【0012】~【0061】)
「【0012】
[第1の実施形態]
<基本例>
本発明の第1の実施形態の画像表示用導光板について説明する。
本発明の第1の実施形態の画像表示用導光板は、第1樹脂基材と、ホログラム層とを有する。本実施形態の画像表示用導光板は、さらに第2樹脂基材を有していてもよい。本実施形態において、第1樹脂基材及び第2樹脂基材を総称して、以下、単に「樹脂基材」という場合がある。前記樹脂基材は透明である。
前記ホログラム層は、第1樹脂基材及び第2樹脂基材との間、又は第1樹脂基材とガラス基材との間に挟まれている。
前記画像表示用導光板は、画像光を入射する入射部と、画像光による画像を表示する表示画像出射部とを有する。前記ホログラム層は、前記入射部と前記表示画像出射部との間に配置されている。前記ホログラム層には、少なくとも前記入射部から入射される画像光を前記表示画像出射部に導波し、前記表示画像出射部から出射させるための回折格子パターンが形成されている。前記表示画像出射部における回折格子パターンは、前記画像表示用導光板の外部から入射する外光の少なくとも一部を透過させる。なお、前記外光入射部は、前記表示画像出射部とは反対の面を指す。
前記入射部に入射した画像光は、前記ホログラム層内に導波され、前記表示画像出射部から外部に出射される。一方、外光も前記樹脂基材及び前記表示画像出射部を透過する結果、前記表示画像出射部の観察者は、画像光及び外光の両方を、視野内で観察することができる。
本実施形態の画像表示用導光板は、AR技術又はMR技術を用いた表示装置に好適に用いられる。例えば、本実施形態の画像表示用導光板は、ヘッドマウントディスプレイのようなARグラス又は車載向けのヘッドアップディスプレイ等の装置に用いられてもよい。
【0013】
本実施形態の画像表示用導光板に用いられる樹脂基材は、シャドーコントラストによる評価で得られるMC値が0.120以下である。MC値の定義及び具体的な評価方法については、後述する。前記MC値は、前記樹脂基材の表面特性のうち、特に平面性の評価に有効である。すなわち、表面粗さの凹凸の空間周波数よりも空間周波数が低い凹凸に関して、前記MC値が低いほど、凹凸の程度が小さい。このため、前記MC値が低い樹脂基材ほど、平面性が良好である。
前記樹脂基材の材料は、透明材料であれば特に限定されない。
前記樹脂基材に用いられる材料は、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
前記樹脂基材に用いられる材料の屈折率は、1.48~1.70が好ましい。
前記樹脂基材に用いられる材料の熱収縮率は、3%未満が好ましい。ここで、熱収縮率は、JIS K 6718-1:2015の付属書A「加熱時の寸法変化(収縮)の測定」に基づく、加熱寸法変化率である。
なお、この「加熱時の寸法変化(収縮)の測定」は、キャスト板用の規格であるが、本発明における熱収縮率は、前記材料を用いた樹脂基材が押出板や連続キャスト板等の場合であっても、この規格に基づく値を採用する。
前記樹脂基材の平滑性(例えば、算術平均粗さRa又は最大高さRmax等の表面粗さによって表される。)は、前記樹脂基材の表面の算術平均粗さRaで、10nm以下が好ましい。
また、本実施形態の画像表示用導光板においては、後述するバリア層を導入することもできる。バリア層を導入することにより、ホログラム層の劣化を抑制して、鮮明な画像を維持することができる。
【0014】
上述のMC値を有するような平面性に優れる樹脂基材は、例えば、キャスト方式若しくは押出方式等の製造方法を用いて製造するか、又は樹脂基材に切削加工、研磨加工若しくは熱プレス加工等の後加工をすることで製造する。
...(中略)...
【0025】
以下、図1に示す例に基づいて、本実施形態の画像表示用導光板の一例の詳細構成を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の画像表示用導光板の一例を示す模式的な断面図である。
【図1】
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【0026】
図1に示す画像表示用導光板1004では、厚み方向において、第1樹脂基材1001と、ホログラム層1002と、第2樹脂基材1003とがこの順に配置されている。
...(中略)...
【0030】
第1樹脂基材1001としては、シャドーコントラストによる評価で得られるMC値が0.120以下の板材が用いられる。
ここで、MC値の具体的な評価方法及び算出方法について説明する。
図2は、MC値の評価方法を説明する模式的な正面図である。図3は、MC値の評価方法を説明する模式的な平面図である。図4は、MC値の評価用画像の一例を示す模式図である。図5は、MC値のデジタル化された評価用画像の一例を示す模式図である。図6は、MC値の算出方法を示す模式的なグラフである。
【0031】
(シャドーコントラスト評価)
シャドーコントラスト評価は、図2及び図3に示す評価装置1200を用いて行うことができる。
評価装置1200は、光源1201、スクリーン1202、カメラ1203(図3参照)及び演算処理部1204(図3参照)を備える。
評価装置1200は、光源1201から出射される測定光を測定サンプルSに照射することによって、測定サンプルSの透過投影像をスクリーン1202上に形成し、透過投影像の明度分布に基づいて測定サンプルSのMC値を算出する。
測定サンプルSの形状は、第1樹脂基材1001の外形と同様である。以下では、測定サンプルSが平面視矩形状の平板の場合の例で説明する。
【図2】
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【図3】
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【0032】
光源1201の種類は、測定サンプルSの透過投影像を形成できれば特に限定されない。例えば、光源1201としては、スクリーン1202に投影される透過投影像が鮮明になる点で、点光源が用いられることがより好ましい。点光源の例としては、例えば、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ及び高圧水銀灯が挙げられる。光の波長は、280~780nmの範囲とすることが好ましい。測定サンプルSが樹脂基材の場合には400nm~780nmの範囲とすることが好ましい。
【0033】
スクリーン1202としては、例えば、マット系スクリーン、ビーズ系スクリーン及びパール系スクリーンが挙げられる。スクリーン1202の色は、スクリーン1202上の投影像の明度測定に差し支えなければ、特に限定されない。スクリーン1202の色は、例えば、白色又はグレーであってもよい。スクリーン1202の大きさは、必要な測定範囲における測定サンプルSの透過投影像が含まれる大きさであれば特に限定されない。スクリーン1202は、測定サンプルS全体の透過投影像が含まれる大きさ以上であることがより好ましい。
【0034】
カメラ1203の種類は、スクリーン1202上の透過投影像の明度を精度よく撮影できれば、特に限定されない。例えば、カメラ1203は、アナログカメラでもよいし、デジタルカメラでもよい。デジタル解析が容易になる点では、カメラ1203はデジタルカメラであることがより好ましい。なお、アナログカメラで撮影した場合には、後述する画像解析は、得られた画像をデジタル画像に変換した後に行われる。
デジタル画像のサイズとしては、横×縦のピクセル数で表すと、例えば、800×600、1024×768、1600×1200、2048×1536又は5472×3648が用いられる。ただし、デジタル画像のサイズは、うねり等によって発生する測定サンプルSの凹凸に対応する明度変化のカーブを取得できる解像度を持っていれば、これらに限定されるものではない。
明度値は、各ピクセルにおけるデータをモノクロ化したときの濃淡度である。前記明度値の分解能は、各ピクセルの階調数で決まる。各ピクセルの階調数は、0.120以下のMC値の算出が可能であれば、特に限定されない。各ピクセルの階調数は、例えば、128諧調、256諧調、512諧調又は1024諧調であってもよい。
ただし、測定サンプルSの透過率、光源1201の明るさ等の制約によって、透過投影像のコントラストが低くなる場合には、測定精度を上げるために、なるべく高い階調数が用いられることがより好ましい。
【0035】
カメラ1203を用いた撮影は、遮光下で行われることがより好ましい。カメラ1203での撮影を遮光下で行う場合、遮光下で行われない場合に比べて、より精度の高い明度分布を得ることができる。遮光下で撮影する方法は特に限定されない。例えば、評価装置1200が配置された撮影環境が、窓を有する部屋である場合には、窓を目貼りして部屋全体を遮光状態にしてもよい。例えば、評価装置1200は、少なくとも光源1201からスクリーン1202までの光路及びスクリーン1202からカメラ1203までの光路を囲繞する遮光用筐体を有していてもよい。
【0036】
カメラ1203の撮影モードは、カラー画像モードでもモノクロ画像モードでもよい。カラー画像モードで撮影した場合には、画像処理ソフトを用いてモノクロ画像に変換することがより好ましい。
例えば、カメラ1203のレンズの光学特性の影響によって、撮影画像の端部の明度が中心部の明度よりも低くなることがある。このような明度ムラのレベルによるノイズが大きすぎる場合には、予めレンズの光学特性に応じて、撮影画像のシェーディング補正を行った後、測定サンプルSの明度分布を求めることがより好ましい。シェーディング補正は、撮影画像の解析の前に適宜の画像処理ソフトによって行われてもよい。シェーディング補正の補正量は、例えば、測定サンプルSに代えて、平面性及び平滑性が良好な補正用ガラス板を用いた撮影を行い、この明度分布が均一になるように補正量が決められてもよい。この場合、光源1201の光学特性に基づく明度ムラも併せて補正される。
【0037】
以下では、簡単のため、カメラ1203がデジタルカメラであり、モノクロ画像モードにおいてスクリーン1202における透過投影像が撮影される例で説明する。この場合、デジタル画像のピクセルの出力値は、透過投影像の明度に比例している。
カメラ1203がアナログカメラの場合には、以下の説明のデジタル画像を、カメラ1203で撮影画像から生成されたデジタル画像に読み換えればよい。
【0038】
演算処理部1204は、カメラ1203で撮影されたデジタル画像に基づいて、明度分布を求め、前記明度分布に基づいて、MC値を算出する。演算処理部1204は、適宜の画像処理ソフトが実行可能なコンピュータを含んで構成される。
【0039】
評価装置1200における各部の配置及び測定時の測定サンプルSの配置について、説明する。
以下では、XYZ直交座標系に基づいて位置関係を説明する場合がある。X軸は、水平面に延びている。Y軸は、水平面においてX軸に直交している。Z軸は、鉛直軸である。ありX軸及びY軸に直交している。X軸に沿う方向、Y軸に沿う方向及びZ軸に沿う方向を、それぞれ、X方向、Y方向及びZ方向と称する。
図2に示すように、評価装置1200において、スクリーン1202は、YZ平面に平行に配置される。光源1201は、スクリーン1202からX方向において、(d1+d2)だけ離して配置される。光源1201の光軸Oは、X軸に平行である。
【0040】
図3に示すように、測定サンプルSは、光軸O上において、光源1201とスクリーン1202との中間部に配置されている。測定サンプルSの厚み方向の中心を通る断面における矩形外形の各頂点をA、B、C、Dで表すと、辺AD、及び辺BCは、それぞれY軸に平行である。辺ADは光源1201寄りの辺、辺BCはスクリーン1202寄りの辺を表す。
図2に示すように、測定サンプルSにおける矩形ABCDの中心SOは、光軸O上であって、X方向において光源1201から距離d1だけ離れた位置に配置される。さらに測定サンプルSは、水平面から中心SOを通りY軸に平行な軸線を中心として、図示時計回りに仰角θAだけ回転された姿勢で配置される。ただし、測定サンプルSの厚みが薄い場合には、測定サンプルS中心SOに代えて、測定サンプルSの厚み方向における一方の表面の中心が上述と同様の位置に配置されてもよい。
ここで、距離d1及びd2は、例えば、光源1201の放射角及び光量、測定サンプルSの大きさ、並びにスクリーン1202の大きさに応じて適宜設定される。例えば、距離d1及びd2は、30~1000cmであってもよい。
例えば、距離d1は、光源1201を設置できる範囲内においてできるだけ短い距離であることがより好ましい。距離d2は、スクリーン1202を設置できる範囲内においてできるだけ短い距離であることがより好ましい。距離d1及びd2が短いほど、光源1201から照射される測定光を効率よく利用することができる傾向にある。
仰角θAは5~90°が好ましい。例えば、仰角θAは20°として測定することができる。
【0041】
カメラ1203の配置位置は、自身の影及び反射光が撮影範囲に写り込まない位置であって、かつスクリーン1202上の透過投影像の全体を撮影できる位置であれば、特に限定されない。図3に示す例では、平面視では、カメラ1203は、Y方向においてカメラ1203と隣り合う位置に配置されている。ただし、特に図示しないが、カメラ1203は、Z方向においては、測定サンプルSと異なる高さに配置されることによって、自身の影及び反射光が撮影範囲に写り込まない位置に配置されている。
【0042】
このような配置によれば、光源1201から出射された測定光は、測定サンプルSを透過してスクリーン1202に投影される。光源1201が点光源の場合には、測定光が放射状に広がるため、スクリーン1202上には、測定サンプルSの透過光の光強度に基づく透過投影像が形成される。透過投影像は、カメラ1203によって撮影され、デジタル画像として演算処理部1204に送出される。
例えば、演算処理部1204には、図4に模式的に表すようなデジタル画像が送出される。図4において最外周の枠は、スクリーン1202の端部を表す。中央の台形PaPbPcPdは、測定サンプルSの透過投影像Iを表す。点Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ、測定サンプルSの点A、B、C、Dに対応する。
【0043】
透過投影像Iは明度分布を有する。図4に示す例では、高明度部Ibと、低明度部Isと、を有する。高明度部Ibは、測定サンプルSの透過率に応じて透過した測定光がスクリーン1202に投影されて形成される。
透過投影像I上の明度分布は、光路長及び光源1201の放射光強度分布に起因する明度ムラを含んでいる。この明度ムラは、測定サンプルSに凹凸欠陥がなくても、ある程度は生じる。
測定光は放射光であるため、光軸Oを進む測定光の光強度が最大になり、測定サンプルSの周縁に向かうにつれて低下する。光源1201の放射光強度分布も同様である。
この明度ムラが凹凸欠陥に起因する明度ムラよりも大きい場合には、予め補正される。例えば、光軸O上の明度値と、測定サンプルSの外縁部の明度値の差が5以上のときには、上述した明度ムラを補正することがより好ましい。
【図4】
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...(中略)...
【0045】
低明度部Isは、測定サンプルSの表面における平面性の誤差に対応する凹凸欠陥によって形成されると考えられる。
例えば、測定サンプルSに形成された凹凸の曲率半径が、ある程度小さい場合に、凹凸部のレンズ作用によって、測定光がスクリーン1202に到達するまでに拡散することが考えられる。これは平滑性に依存する。
例えば、測定サンプルSが波形に変形する場合には、表面の凹凸があっても厚みが変わらない場合もある。これは平面性に依存する。この場合、凹凸がレンズ作用を有することはないが、同様の測定光の屈折及び回折が発生するため、明度ムラに寄与することが考えられる。
他にも、例えば、測定サンプルSに形成された凹凸によって、凹凸部の近傍に歪み分布が生じ、測定光の出射方向が乱れて、スクリーン1202上の光強度が変化することも考えられる。
例えば、測定サンプルSへの入射角が大きくなると、入射角に依存する透過率特性の変化が大きくなる。このため、測定サンプルSに形成された凹凸部における透過率が変化して明度ムラに寄与することも考えられる。また、測定サンプルS内部の歪みによる屈折率ムラによって変化する透過率も明度ムラに寄与することも考えられる。
このような要因のいずれか又は複合によって、凹凸欠陥は明度ムラを発生させると考えられる。さらに、明度ムラの大きさは、凹凸欠陥の深さと相関が高いと考えられる。このため、低明度部Isと高明度部Ibとの明度の差によって、測定サンプルSの平面性の評価が可能となる。
【0046】
図4に示す例では、低明度部Isは、楕円状である。このような低明度部Isは、測定サンプルSの表面における楕円状の凹部又は凸部に対応している。例えば、測定サンプルSにギアマークが形成されている場合には、低明度部Isは、筋状に形成される。この場合、低明度部Isは、第1樹脂基材1001の押出方向に直交する方向に略平行に等ピッチに形成される。
【0047】
演算処理部1204は、デジタル画像を以下のように解析して、MC値を算出する。 MC値の測定に用いるデジタル画像は、台形PaPbPcPd全体でもよい。しかし、例えば、測定サンプルSの一部が切断されて表示装置に用いられるような場合には、表示装置に用いられる大きさの全範囲で測定されればよい。
場合によっては、測定サンプルSの測定に用いるデジタル画像は、台形PaPbPcPdの内側の一部の領域が台形状に抜き出されてもよい。例えば、MC値によって検出すべき欠陥が、例えば、ギアマークのように方向性、ピッチ等が予め知られている場合には、測定誤差を考慮して複数のギアマークを含む大きさ及び範囲であれば、台形PaPbPcPdの一部の領域が用いられてもよい。例えば、測定サンプルSの形状が、設計上、緩やかな湾曲を有する場合にも同様である。
例えば、測定サンプルSが200mm×200mmの平面視矩形状の場合、測定範囲としては、測定サンプルS上で少なくとも180mm×80mmの大きさの矩形範囲を含むことがより好ましい。ここで、測定範囲の長手方向は、明度変化がより多くなる方向に合わせられる。
例えば、測定サンプルSが平板でなく湾曲板である場合、湾曲を有する方向における測定範囲の幅が50mm以上であることがより好ましい。例えば、測定サンプルSが全体として球面状の湾曲を有する場合、湾曲の頂部を中心として、50mm×50mmの大きさの矩形範囲を含むことがより好ましい。
以下では、一例として、台形PaPbPcPdの全体を使用する場合の例で説明する。
【0048】
演算処理部1204は、予め決められた測定ライン上の明度分布を取得する。例えば、測定ラインは、測定サンプルS上の辺ADをN等分した点qi(ただし、i=1,・・・,N-1)と、測定サンプルS上の辺BCをN等分した点Qi(ただし、i=1,・・・,N-1)とをそれぞれ結んだ(N-1)本の線分qiQiである。
この場合、測定サンプルS上において、点qiと点Qiとは、ZX平面に平行な平面上の点である。
図4には、透過投影像I上における点qi、Qiが示されている。
例えば、Nは2から10000の間で凹凸欠陥の大きさに応じて適宜選択することができる。例えば、幅100mmの欠陥の場合は、測定ラインのピッチが1~20mm程度となるようにNを選択すればよい。
例えば、低明度部Isが筋状の場合には、測定ラインが、低明度部Isと交差するように測定サンプルSの配置を変更してデジタル画像を取得する。この場合、測定ラインは、低明度部Isの長手方向に沿う測定ラインのピッチが、1~20mm程度となるようにNを選択すればよい。
【0049】
図4に示す例では、N=8である。図5における測定ラインL3は、図4における線分q3Q3に対応する測定ラインを模式的に示している。測定サンプルS上の測定ラインが斜め線として投影されるので、透過投影像I上では測定ラインL3は、デジタル化された斜め線になっている。
演算処理部1204は、光源1201、スクリーン1202、及び測定サンプルSの位置関係に基づいて、測定サンプルS上の点qi、Qiの座標を、透過投影像I上の画素座標に変換することによって、各測定ラインの明度値を抽出する。
【図5】
89
92
0001433679000006.jpg
【0050】
図6には、測定ラインL3に沿う明度分布の例が模式的に示されている。図6の横軸はZ方向におけるピクセルの位置、縦軸は明度値を表す。
曲線1210に示すように、測定ラインL3における明度は、点q3から点Q3に向かって、略一定の高い明度値から低下し、最小の明度値になった後、再び略平坦な高い明度値になっている。Z方向において、q3からp1までの区間と、p2からQ3までの区間と、はいずれも高明度部Ibに含まれる。p1からp2までの区間は、低明度部Isに含まれる。
演算処理部1204は、このような明度分布から、明度の最小値Lmin及び最大値Lmaxを求める。
MC値は、下記式(1)で定義される。演算処理部1204は、Lmin、Lmaxを下記式(1)に基づいて、MC値を算出する。
【図6】
61
126
0001433679000007.jpg
【0051】
【数1】
17
111
0001433679000008.jpg
【0052】
MC値は、明度分布における低明度部Isにおける落ち込みの大きさを客観的に表す指標になっている。
上述したように、低明度部Isの明度は、測定サンプルSの平面性が悪いほど低くなる。このため、MC値の値が大きいほど、測定サンプルSの表面の平面性が劣っており、MC値の値が小さいほど、測定サンプルSの表面の平面性が優れている。
【0053】
同様にして、演算処理部1204は、測定ラインごとにMC値を算出する。
測定サンプルSのMC値は、各測定ラインのMC値のうちの最大値とされる。
【0054】
上述の通り、本発明の画像表示用導光板においては、前記樹脂基材のMC値が0.120以下である必要がある。これにより、この導光板を用いて形成される、AR又はMR等のホログラムを利用した表示画像の鮮明性が良好となる。前記樹脂基材のMC値は、0.120以下であり、0.110以下が好ましく、0.100以下がより好ましく、0.080以下がさらに好ましく、0.070以下が特に好ましい。
一方、このMC値を0.001以上とすることによって、基材積層時における基材同士のブロッキングを防ぐことができ、基材加工時の取り扱い性が良好になる傾向にある。前記樹脂基材のMC値は、0.001以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.010以上がさらに好ましく、0.020以上が特に好ましい。
...(中略)...
【0057】
また、上述の通り、本発明の画像表示用導光板においては、前記樹脂基材の表面の算術平均粗さRaが10nm以下であることが好ましい。これにより、この導光板を用いて形成される、AR又はMR等のホログラムを利用した表示画像の鮮明性が良好となる傾向にある。前記樹脂基材の表面の算術平均粗さRaは、10nm以下が好ましく、8nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましい。
...(後略)」
(ウ) 【実施例】(【0214】~【0241】)
「【実施例】
【0214】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明する。しかし、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変更が可能である。
【0215】
[第1の実施形態の実施例及び比較例(実施例1~3、比較例1~3)]
以下、第1の実施形態の実施例及び比較例について説明する。
下記表1に実施例1~3及び比較例1~3に用いる樹脂基材の構成及び評価結果を示す。
【0216】
【表1】
71
141
0001433679000009.jpg
【0217】
三菱ケミカル...三菱ケミカル株式会社
クラレ...株式会社クラレ
住友化学...住友化学株式会社
旭化成...旭化成株式会社
アクリライト、コモグラス、スミベックス及びデラグラスは各社の登録商標。
...(中略)...
【0233】
<評価方法>
次に、実施例1~3及び比較例1~3の評価方法について説明する。評価としては、MC値、Ra、熱収縮率及び表示画像の鮮明性の評価が行われる。
【0234】
(MC値)
MC値の評価は、本明細書の「発明を実施するための形態」に記載した評価方法によって行われる。測定サンプルSとしては、各実施例及び各比較例の評価サンプル1Aが用いられる。
具体的な評価条件としては、距離d1及びd2がそれぞれ1m、仰角θ
A
が20°とされる。
比較例1~3には、ギアマークがあるので、各比較例の評価サンプル1Aは、ギアマークがY方向に向く姿勢で評価装置1200に配置される。
これに対して、実施例1~3にはギアマークが見られない。しかし、製造時の方向性を揃えるため、連続重合装置1100における走行方向と直交する方向がY方向に向くように各実施例の評価サンプル1Aを配置している。
明度分布の測定範囲は、評価装置1200における評価サンプル1Aの配置におけるY方向を横方向(線分AD、BCが延びる方向)、評価サンプル1A上で、横方向に直交する方向を縦方向(線分AB、DCが延びる方向)として、縦方向の幅が180mm、横方向の幅が80mmの矩形領域とされる。
測定範囲は、測定サンプルS上で、横方向に2mmずつずらして41箇所に設けている。各測定範囲において、測定ラインは、測定範囲を横方向に40等分するように選ばれる。
表1には、各測定範囲における各測定ラインの明度分布から求められたMC値の最大値が記載されている。
【0235】
(Ra)
Raの評価では、各評価サンプル1Aの表面の算術平均粗さRaが測定される。
測定装置としては、白色干渉型表面形状測定機Zygo NewView(登録商標)
6300(商品名;Zygo Corporation社製)が用いられる。対物レンズの倍率は2.5倍が用いられる。観察範囲は、2.8mm×2.1mmの矩形状の範囲である。
【0236】
(熱収縮率)
熱収縮率の評価は、JIS K 6718:2015の付属書A「加熱時の寸法変化(収縮)の測定」に準拠する寸法変化(収縮)の測定によって行われる。
【0237】
(表示画像の鮮明性)
実施例1~3及び比較例1~3の画像表示用導光板は、画像表示装置に取り付けられる。画像表示装置には、表示を行う画像光を画像表示用導光板1004の入射部に入射する光学系、駆動電源、及び画像光を得るための画像情報等を供給する回路システムが設けられている。
評価に用いる入力画像としては、白色画像と、文字表示画像と、が用いられる。
評価は、白色画像と、文字表示画像との、見え方を目視で判定することにより行われる。文字画像としては、大きさ10mm×100mm以内の「ABCDE」が表示される。
白色画像において虹色が見えず、文字表示画像において、文字がはっきり見える場合、良い(good、表1では「A」と記載)と判定する。
白色画像においてわずかに虹色が見えるが、文字表示画像において、文字がはっきり見える場合、可(fair、表1では「B」と記載)と判定する。
白色画像において少なくとも一部に虹色が見え、かつ文字表示画像において、文字の輪郭がぼやけて見える場合、不可(no good、表1では「C」と記載)と判定する。
【0238】
<評価結果>
表1に示すように、実施例1~3のMC値は、それぞれ、0.074、0.103、0.060であり、いずれも0.120未満である。これに対して、比較例1~3のMC値は、それぞれ0.126、0.183、0.148であり、いずれも0.120を超えている。
実施例1~3は、ギアマークが観察されず、これに対応してMC値が0.120未満である。この理由は、各実施例の樹脂基材が連続キャスト法、又は切削及び研磨によって製造されるからであると考えられる。連続キャスト法では、各実施例の樹脂基材の原料の表面に、例えば、エンドレスベルト1101、1102の表面形状が転写される。このため、樹脂基材の表面の平面性は、エンドレスベルト1101、1102の平面性と同等になる。切削及び研磨では、樹脂基材の表面の平面性を極めて高くできる。
これに対して、比較例1~3にはギアマークが観察されるので、ギアマークによってMC値が増大していると考えられる。比較例1~3にギアマークが形成される理由としては、例えば、押出機において押出材料に接触するロール類の駆動ムラが大きいこと等が考えられる。
【0239】
実施例1~3の算術平均粗さRaは、それぞれ、4.9nm、4.7nm、2.6nmであり、いずれも10nm未満である。これに対して、比較例1~3のRaは、それぞれ、5.5nm、2.9nm、2.3nmであり、いずれも10nm未満である。このため、Raで表される平滑性に関しては、実施例1~3は、比較例1~3に比べて大きな差はない。
【0240】
実施例1~3の熱収縮率は、いずれも3%未満である。これに対して、比較例1~3の熱収縮率は、いずれも3%以上である。この理由は、比較例1~3の樹脂基材が押出成形によって製造されていることによって、樹脂基材中に歪みが蓄積されたからであると考えられる。
【0241】
実施例1~3の表示画像の鮮明性は、いずれも「良い(A)」と判定される
。
これに対して、比較例1~3の表示画像の鮮明性は、いずれも「不可(C)」と判定される
。
この理由は、比較例1~3では、MC値が各実施例に比べて大きいために、画像光の回折方向等が乱れるためであると考えられる
。
例えば、比較例2、3の樹脂基材は、Raが実施例1、2よりも小さいので、平滑性において実施例1、2においてより優れているが、表示画像の鮮明性においては、平面性(すなわち、MC値)の寄与が大きいからであると考えられる
。
少なくとも、Raが10nm以下であれば、鮮明性において、Raの大きさに優位な差はないと考えられる
。」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である国際公開第2018/135193号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、図は、言及されている箇所の近くに適宜挿入して示した。また、当合議体により、後記イの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
(ア) 請求の範囲
「[請求項1]
画像形成装置から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射され、第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する導光板、
導光板の第1面及び第2面の少なくともいずれか一方に配設され、導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を偏向させる第1偏向手段、並びに、
導光板の第1面及び第2面の少なくともいずれか一方に配設され、導光板の内部を全反射により伝播した光を導光板から出射させるように、導光板の内部を全反射により伝播した光を偏向させる第2偏向手段、
を備えており、
導光板は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する基板、
基板の第1面上に形成された、有機材料を含む第1平坦化膜、及び、
基板の第2面上に形成された、有機材料を含む第2平坦化膜、
から成る光学装置。
...(後略)」
(イ) 技術分野、背景技術、発明の概要([0001]~[0010])
「技術分野
[0001]
本開示は、光学装置及び表示装置に関し、より具体的には、頭部装着型ディスプレイ(HMD,Head Mounted Display)に用いられる表示装置、及び、斯かる表示装置に用いられる光学装置に関する。
背景技術
[0002]
近年、表示装置として、観察者の目の前に配置した光学装置に画像形成装置からの画像を表示させるヘッドマウントディスプレイ(HMD)が話題となっている。この光学装置を構成する導光板として、ガラス基板から成る基板上に反射型又は透過型のホログラム光学素子を配置した導光板が、例えば、特開2010-204397号公報から周知である。ガラス基板を用いた導光板では、良好なコントラストや解像度が得られる。ここで、ガラス基板として、通常、精密品質の面粗さを有する光学ガラス基板が用いられる。また、光学装置の軽量化のために、導光板を構成する基板としてアクリル樹脂等の樹脂基板を用いる光学装置が、例えば、特開2013-109301号公報から周知である。樹脂基板は表面に傷が付き易いという問題があるが、この問題を解決するハードコート層を形成する技術が、例えば、特開2008-156648号公報から周知である。
先行技術文献
特許文献
[0003]
特許文献1:特開2010-204397号公報
特許文献2:特開2013-109301号公報
特許文献3:特開2008-156648号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0004]
ところで、樹脂基板を用いた導光板では、コントラストや解像度が低いという問題があった。然るに、この問題の原因については、従来、明確には判っていなかった。
[0005]
従って、本開示の目的は、コントラスト及び解像度が高い光学装置、並びに、斯かる光学装置を備えた表示装置を提供することにある。より具体的には、軽量な樹脂基板を用いた導光板を備え、且つ、コントラスト及び解像度がガラス基板を用いた導光板を備えた場合と同等の光学装置、及び、斯かる光学装置を備えた表示装置を提供することにある。また、本開示の他の目的は、コントラスト及び解像度が高い光学装置、並びに、斯かる光学装置を備えた表示装置を安価に提供することにある。
課題を解決するための手段
[0006]
上記の目的を達成するための本開示の光学装置は、
画像形成装置から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射され、第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する導光板、
導光板の第1面及び第2面の少なくともいずれか一方に配設され、導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を偏向させる第1偏向手段、並びに、
導光板の第1面及び第2面の少なくともいずれか一方に配設され、導光板の内部を全反射により伝播した光を導光板から出射させるように、導光板の内部を全反射により伝播した光を偏向させる第2偏向手段、
を備えており、
導光板は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する基板、
基板の第1面上に形成された、有機材料を含む第1平坦化膜、及び、
基板の第2面上に形成された、有機材料を含む第2平坦化膜、
から成る。
[0007]
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様に係る表示装置は、
観察者の頭部に装着されるフレーム、及び、
フレームに取り付けられた画像表示装置、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置は、画像形成装置及び光学装置を備えており、
光学装置は、
画像形成装置から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射され、第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する導光板、
導光板の第1面及び第2面の少なくともいずれか一方に配設され、導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を偏向させる第1偏向手段、並びに、
導光板の第1面及び第2面の少なくともいずれか一方に配設され、導光板の内部を全反射により伝播した光を導光板から出射させるように、導光板の内部を全反射により伝播した光を偏向させる第2偏向手段、
を備えており、
導光板は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する基板、
基板の第1面上に形成された、有機材料を含む第1平坦化膜、及び、
基板の第2面上に形成された、有機材料を含む第2平坦化膜、
から成る。
[0008]
尚、「全反射」という用語は、内部全反射、あるいは、導光板内部における全反射を意味する。また、第2偏向手段によって、画像形成装置から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域が構成される。
[0009]
上記の目的を達成するための本開示の第2の態様に係る表示装置は、
観察者の頭部に装着されるフレーム、及び、
フレームに取り付けられた画像表示装置、
を備えた表示装置であって、
画像表示装置は、画像形成装置、及び、上記の本開示の光学装置を備えている。
発明の効果
[0010]
本開示の光学装置、あるいは、本開示の第1の態様~第2の態様に係る表示装置における光学装置において、基板の第1面には有機材料を含む第1平坦化膜が形成されており、基板の第2面には有機材料を含む第2平坦化膜が形成されているので、コントラスト及び解像度が高い光学装置、並びに、斯かる光学装置を備えた表示装置を提供することができる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また、付加的な効果があってもよい。」
(ウ) 全般に関する説明([0013]~[0031])
「[0013]
〈本開示の光学装置及び本開示の第1の態様~第2の態様に係る表示装置、全般に関する説明〉
本開示の光学装置及び本開示の第1の態様~第2の態様に係る表示装置を構成する光学装置(以下、これらの光学装置を総称して、単に『本開示の光学装置等』と呼ぶ)において、基板は樹脂材料から成る形態とすることができる。そして、この場合、限定するものではないが、基板の主成分はシクロオレフィンポリマー(COP)である形態とすることができる。COPは、シクロオレフィン類をモノマーとして合成されるポリマーであり、分子構造中に脂環構造を有するポリマーである。現在工業化されている主なCOPは、シクロオレフィンの中でも反応性の高いノルボルネン誘導体をモノマーに用いており、水素化開環メタセシス重合型及びエチレンとの付加重合型がある。エチレンとの付加重合型は、シクロオレフィンコポリマー(COC)と呼ばれる場合もある。COPは、構造中に極性部が無く、非晶質であるため、優れた耐湿性を有し、また、表面平滑性に優れた基板を得ることができる材料である。しかも、全光線透過率が90%以上であり、アクリル樹脂並みの透明性を有し、透明性に優れている。但し、このような基板(材料)に限定するものではなく、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、硬質塩化ビニル樹脂等に例示される樹脂材料から作製された基板から成る形態とすることができる。また、平面研磨のコストを抑えた安価なガラス材料から成る形態とすることもできる。
[0014]
上記の好ましい形態を含む本開示の光学装置等において、
第1偏向手段及び第2偏向手段の基板への正射影像によって挟まれた導光板の領域に含まれる第1平坦化膜の部分の外面のRqの値は、3nm以下であり、
第1偏向手段及び第2偏向手段の基板への正射影像によって挟まれた導光板の領域に含まれる第2平坦化膜の部分の外面のRqの値は、3nm以下である形態とすることができる。尚、「Rq」は、JIS B0601:2013によって規定された二乗平均平方根粗さである。
...(中略)...
[0016]
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の光学装置等において、第1偏向手段及び第2偏向手段の基板への正射影像によって挟まれた導光板の領域に含まれる第1平坦化膜の部分の外面に対する、第1偏向手段及び第2偏向手段の基板への正射影像によって挟まれた導光板の領域に含まれる第2平坦化膜の部分の外面の平行度は、2/60度以下、好ましくは1/60度以下である形態とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段及び第2偏向手段の基板への正射影像を含む基板の領域に含まれる第1平坦化膜の部分の外面に対する、第1偏向手段及び第2偏向手段の基板への正射影像を含む基板の領域に含まれる第2平坦化膜の部分の外面の平行度は、2/60度以下、好ましくは1/60度以下であることが、より好ましい。
...(中略)...
[0018]
以上に説明した本開示の光学装置等にあっては、導光領域に含まれる第1平坦化膜の部分及び第2平坦化膜の部分に対して各種の規定を設けているが、導光領域とは、より具体的には、導光板に入射された光が内部で全反射されるような基板の領域を指す。そして、基板の導光領域や全導光領域に含まれる第1平坦化膜の部分及び第2平坦化膜の部分が上述した各種の規定を満足することが好ましいが、場合によっては、上記の線分L0に沿った(対応した)第1平坦化膜の部分(領域)及び第2平坦化膜の部分(領域)が上述した各種の規定を満足していてもよい。
[0019]
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の光学装置等において、第1平坦化膜と第2平坦化膜とは、同じ材料から成り、且つ、同じ厚さを有する形態とすることができる。そして、これによって、基板に反りが発生することを確実に防止することができる。
[0020]
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の光学装置等において、第1平坦化膜及び第2平坦化膜は、アクリル系材料を含む有機材料を主成分とする材料とすることができる。このように有機材料を主成分とする材料から構成することで、無機材料と異なり、例えば樹脂材料から成る基板が反った場合でも、第1平坦化膜及び第2平坦化膜に割れやクラックが発生することを防止することができる。また、アクリル系材料を用いることで、透明度を高くすることができる。尚、アクリル系材料でも、添加剤等を工夫することで、例えばCOPから成る基板に対して高い密着性を維持することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂(有機材料)を主成分とし、添加剤としてシリカ(無機材料)を加えた材料(有機材料を主成分とするハイブリッド材料)から成るUV硬化型のコート剤を用いることができる。
...(中略)...
[0023]
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の光学装置等において、
第1平坦化膜を構成する材料の屈折率をn
1
、第2平坦化膜を構成する材料の屈折率をn
2
、基板を構成する材料の屈折率をn
0
としたとき、コントラストやMTFを高くするためには、n
0
=n
1
=n
2
とすることが理想的であるが、本発明者らの検討によれば、
|n
1
-n
0
|/n
0
≦0.03
|n
2
-n
0
|/n
0
≦0.03
を満足すれば十分であることが判った。あるいは又、第1平坦化膜基板を構成する材料の基板屈折率をn
1
、第2平坦化膜基板を構成する材料の基板屈折率をn
2
、基板を構成する材料の屈折率をn
0
としたとき、n
1
≧1.48、n
2
≧1.48、及び、n
0
≧1.48を満足する形態とすることが好ましい。このように、屈折率の値が高いほど、光学設計マージンが広がるし、屈折率の値が1.48以上の材料の選択幅は広い。
...(中略)...
[0028]
本開示の光学装置等は半透過型(シースルー型)である。具体的には、少なくとも観察者の眼球(瞳)に対向する光学装置の部分を半透過(シースルー)とし、光学装置のこの部分を通して外景を眺めることができる。尚、本明細書において、「半透過」という用語を用いる場合があるが、入射する光の1/2(50%)を透過し、あるいは反射することを意味するのではなく、入射する光の一部を透過し、残部を反射するといった意味で用いている。
[0029]
前述したとおり、第1偏向手段は、導光板に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を回折する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段及び第2偏向手段は、前述したとおり、ホログラム回折格子から成る形態とすることができ、更には、ホログラム回折格子は、反射型のホログラム回折格子から成り、あるいは又、透過型のホログラム回折格子から成り、あるいは又、一方の偏向手段は反射型のホログラム回折格子から成り、他方の偏向手段は透過型のホログラム回折格子から成る構成とすることができる。反射型のホログラム回折格子として、反射型体積ホログラム回折格子を挙げることができる。ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材』と呼び、ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材』と呼ぶ場合がある。また、このような構造の光学装置を、便宜上、『第1構造の光学装置』と呼ぶ。
...(中略)...
[0031]
ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材及び第2回折格子部材を構成する材料として、前述したとおり、アクリル系材料及びウレタン系材料を含む材料、あるいは又、アクリル系材料を含む有機材料から成る材料、具体的には、フォトポリマー材料を挙げることができる。ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材及び第2回折格子部材の構成材料や基本的な構造は、従来のホログラム回折格子の構成材料や構造と同じとすればよい。ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折するホログラム回折格子を意味する。回折格子部材には、その内部から表面に亙り干渉縞が形成されているが、係る干渉縞それ自体の形成方法は、従来の形成方法と同じとすればよい。具体的には、例えば、回折格子部材を構成する部材(例えば、フォトポリマー材料)に対して一方の側の第1の所定の方向から物体光を照射し、同時に、回折格子部材を構成する部材に対して他方の側の第2の所定の方向から参照光を照射し、物体光と参照光とによって形成される干渉縞を回折格子部材を構成する部材の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体光及び参照光の波長を適切に選択することで、回折格子部材の表面における干渉縞の所望のピッチ、干渉縞の所望の傾斜角(スラント角)を得ることができる。干渉縞の傾斜角とは、回折格子部材(あるいは回折格子層)の表面と干渉縞の成す角度を意味する。第1回折格子部材及び第2回折格子部材を、ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層の積層構造から構成する場合、このような回折格子層の積層は、P層の回折格子層をそれぞれ別個に作製した後、P層の回折格子層を、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用して積層(接着)すればよい。また、粘着性を有するフォトポリマー材料を用いて1層の回折格子層を作製した後、その上に順次粘着性を有するフォトポリマー材料を貼り付けて回折格子層を作製することで、P層の回折格子層を作製してもよい。」
(エ) [0058]~[0101]
「実施例1
[0058]
実施例1は、本開示の表示装置(具体的には、頭部装着型ディスプレイ,HMD)に関し、具体的には、第1構造の光学装置、及び、第1構成の画像形成装置を備えた本開示の第1の態様~第2の態様に係る表示装置に関する。実施例1の表示装置における画像表示装置の概念図を図1及び図2に示し、実施例1の表示装置を上方から眺めた模式図を図3に示す。また、実施例1の表示装置における光学装置及び調光装置(但し、右眼用)の模式的な正面図を図4Aに示し、図4Aの矢印B-Bに沿った模式的な断面図を図4Bに示し、左眼側から表示装置を眺めたときの表示装置(主に右眼用)の模式的な側面図を図4Cに示す。更には、実施例1の表示装置における反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図を図5に示す。
[0059]
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例10の表示装置は、
(A)観察者の頭部に装着されるフレーム10、及び、
(B)フレーム10に取り付けられた画像表示装置100,200,300,400、
を備えている。尚、実施例の表示装置は、具体的には、2つの画像表示装置を備えた両眼型としたが、1つ備えた片眼型としてもよい。また、画像形成装置111,211は、例えば、単色の画像を表示する。画像形成装置111,211から出射される光の波長λ
0
を523nm(緑色)とした。
[図3]
130
109
0001433679000010.jpg
[0060]
そして、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例10における
画像表示装置100
,200,300,400は、
(a)画像形成装置111
,211、及び、
(b)光学装置120
,320、
を備えている
。更には、実施例1あるいは後述する実施例2~実施例9における画像表示装置100,200,300,400にあっては、
(c)画像形成装置111,211から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)112,254、
を備えており、光学系112,254にて平行光とされた光束が光学装置120,320に入射され、導光され、出射される。光学装置は、画像形成装置111,211から出射された光に基づき虚像が形成される虚像形成領域を有する。
[図1]
87
124
0001433679000011.jpg
[図2]
83
129
0001433679000012.jpg
[0061]
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例10における
光学装置120
,320は、
(b-1)
画像形成装置111
,211
から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射され、第1面122
,322、
及び、第1面122
,322
と対向する第2面123
,323
を有する導光板121
,321、
(b-2)
導光板121
,321
の
第1面122,322及び
第2面123
,323の少なくともいずれか一方
に配設され、導光板121
,321
に入射された光が導光板121
,321
の内部で全反射されるように、導光板121
,321
に入射された光を偏向させる第1偏向手段130
,330、並びに、
(b-3)
導光板121
,321
の
第1面122,322及び
第2面123
,323の少なくともいずれか一方
に配設され、導光板121
,321
の内部を全反射により伝播した光を導光板121
,321
から出射させるように、導光板121
,321
の内部を全反射により伝播した光を偏向させる第2偏向手段140
,340、
を備え
ている。ここで、第2偏向手段140,340によって光学装置の虚像形成領域が構成される。光学装置120,320は、シースルー型(半透過型)である。
[0062]
そして、
導光板121
,321
は、
第1面501、及び、第1面501と対向する第2面502を有する基板500、
基板500の第1面501上に形成された、有機材料を含む第1平坦化膜511、及び、
基板500の第2面502上に形成された、有機材料を含む第2平坦化膜512、
から成る
。
[0063]
実施例1あるいは後述する実施例2~実施例10において、導光板121,321は、導光板121,321の内部全反射による光伝播方向(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面122,322及び第2面123,323)を有している。第1面122,322と第2面123,323とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面122,322から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面122,322から出射される。但し、これに限定するものではなく、第2面123,323によって光入射面が構成され、第1面122,322によって光出射面が構成されていてもよい。また、第1偏向手段130,330は、導光板121,321の第2面123,323上に配設されており、第2偏向手段140,340も、導光板121,321の第2面123,323上に配設されている。
[0064]
実施例1において、画像形成装置111は、第1構成の画像形成装置であり、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する。具体的には、図1に示すように、画像形成装置111は、反射型空間光変調装置150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源153から構成されている。各画像形成装置111全体は、筐体113(図1では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体113には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介して光学系(平行光出射光学系,コリメート光学系)112から光が出射される。反射型空間光変調装置150は、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)151、及び、光源153からの光の一部を反射して液晶表示装置151へと導き、且つ、液晶表示装置151によって反射された光の一部を通過させて光学系112へと導く偏光ビームスプリッター152から構成されている。液晶表示装置151は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、640×480個)の画素(液晶セル)を備えている。偏光ビームスプリッター152は、周知の構成、構造を有する。光源153から出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター152に衝突する。偏光ビームスプリッター152において、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、液晶表示装置151に入射し、液晶表示装置151の内部で反射され、液晶表示装置151から出射される。ここで、液晶表示装置151から出射した光の内、「白」を表示する画素から出射した光にはP偏光成分が多く含まれ、「黒」を表示する画素から出射した光にはS偏光成分が多く含まれる。従って、液晶表示装置151から出射され、偏光ビームスプリッター152に衝突する光の内、P偏光成分は、偏光ビームスプリッター152を通過し、光学系112へと導かれる。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、光源153に戻される。光学系112は、例えば、凸レンズから構成され、平行光を生成させるために、光学系112における焦点距離の所(位置)に画像形成装置111(より具体的には、液晶表示装置151)が配置されている。
[0065]
あるいは又、図2に示すように、画像形成装置111は、有機EL表示装置150’から構成されている。有機EL表示装置150’から出射され画像は、凸レンズ112を通過し、平行光となって、導光板121へと向かう。有機EL表示装置150’は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、640×480個)の画素(有機EL素子)を備えている。
[0066]
フレーム10は、観察者の正面に配置されるフロント部11と、フロント部11の両端に蝶番12を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部13と、各テンプル部13の先端部に取り付けられたモダン部(先セル、耳あて、イヤーパッドとも呼ばれる)14から成る。また、ノーズパッド(図示せず)が取り付けられている。即ち、フレーム10及びノーズパッドの組立体は、基本的には、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。更には、各筐体113が、取付け部材19によって、着脱自在にテンプル部13に取り付けられている。フレーム10は、金属又はプラスチックから作製されている。尚、各筐体113は、取付け部材19によってテンプル部13に着脱できないように取り付けられていてもよい。また、各筐体113を、テンプル部13の内側に取り付けた状態を示しているが、テンプル部13の外側に取り付けてもよい。
[0067]
更には、一方の画像形成装置111Aから延びる配線(信号線や電源線等)15が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部から外部に延び、制御装置(制御回路、制御手段)18に接続されている。更には、各画像形成装置111A,111Bはヘッドホン部16を備えており、各画像形成装置111A,111Bから延びるヘッドホン部用配線17が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部からヘッドホン部16へと延びている。ヘッドホン部用配線17は、より具体的には、モダン部14の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部16へと延びている。このような構成にすることで、ヘッドホン部16やヘッドホン部用配線17が乱雑に配置されているといった印象を与えることがなく、すっきりとした表示装置とすることができる。
[0068]
実施例1の光学装置において、
基板500は樹脂材料から成
る。具体的には、基板500の主成分はシクロオレフィンポリマー(COP)である。シクロオレフィンポリマーの屈折率n
0
は1.53である。基板500の厚さを1mmとした。第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512はアクリル系材料を含む有機材料を主成分とする材料(具体的には、アクリル樹脂を主成分とし、添加剤としてシリカを加えた材料から成るUV硬化型のコート剤)から成る。第1平坦化膜511を構成する材料の屈折率n
1
及び第2平坦化膜512を構成する材料の屈折率n
2
は1.51である。第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512の厚さを1μmとした。このように、第1平坦化膜511と第2平坦化膜512とは、同じ材料から成り、且つ、同じ厚さを有するし、n
1
≧1.48、n
2
≧1.48、及び、n
0
≧1.48を満足している。
[0069]
実施例1において、第1偏向手段(第1回折格子部材)130及び第2偏向手段(第2回折格子部材)140は、基板500の第2面502上(観察者とは反対側の面上)に配設されている。そして、第1偏向手段130は、導光板121に入射された光を回折し、第2偏向手段140は、導光板121の内部を全反射により伝播した光を回折する。
第1偏向手段130及び第2偏向手段140はホログラム回折格子
、より具体的には、反射型体積ホログラム回折格子
から成
る。ここで、ホログラム回折格子は、アクリル系材料及びウレタン系材料を含む。あるいは又、ホログラム回折格子、第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512は、アクリル系材料を含む有機材料を主成分とする材料から成る。そして、実施例1あるいは後述する実施例2において、
第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140を、1層の回折格子層が積層されて成る構成としている
。フォトポリマー材料から成る各回折格子層には、1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されており、従来の方法で作製されている。回折格子層(回折光学素子)に形成された干渉縞のピッチは一定であり、干渉縞は直線状であり、Y軸に平行である。第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140の軸線はX軸と平行であり、法線はZ軸と平行である。
[0070]
そして、第1回折格子部材130は、上述したとおり、基板500の第2面502上に形成された第2平坦化膜512上に配設(接着)されており、導光板121の第1面122から導光板121に入射されたこの平行光が導光板121の内部で全反射されるように、導光板121に入射されたこの平行光を回折(具体的には、回折反射)する。更には、第2回折格子部材140も、上述したとおり、基板500の第2面502上に形成された第2平坦化膜512上に配設(接着)されており、導光板121の内部を全反射により伝播したこの平行光を回折(具体的には、複数回、回折反射)し、導光板121から平行光のまま第1面122から出射する。
[0071]
図5に反射型体積ホログラム回折格子の拡大した模式的な一部断面図を示す。反射型体積ホログラム回折格子には、傾斜角(スラント角)φを有する干渉縞が形成されている。ここで、傾斜角φとは、反射型体積ホログラム回折格子の表面と干渉縞の成す角度を指す。干渉縞は、反射型体積ホログラム回折格子の内部から表面に亙り、形成されている。干渉縞は、ブラッグ条件を満たしている。ここで、ブラッグ条件とは、以下の式(A)を満足する条件を指す。式(A)中、mは正の整数、λは波長、dは格子面のピッチ(干渉縞を含む仮想平面の法線方向の間隔)、Θは干渉縞へ入射する角度の余角を意味する。また、入射角ψにて回折格子部材に光が侵入した場合の、Θ、傾斜角φ、入射角ψの関係は、式(B)のとおりである。
[0072]
m・λ=2・d・sin(Θ) (A)
Θ=90°-(φ+ψ) (B)
[0073]
そして、導光板121にあっては、平行光が内部を全反射により伝播した後、出射される。このとき、導光板121が薄く導光板121の内部を進行する光路が長いため、各画角によって第2回折格子部材140に至るまでの全反射回数は異なっている。より詳細に述べれば、導光板121に入射する平行光のうち、第2回折格子部材140に近づく方向の角度をもって入射する平行光の反射回数は、第2回折格子部材140から離れる方向の角度をもって導光板121に入射する平行光の反射回数よりも少ない。これは、第1回折格子部材130において回折される平行光であって、第2回折格子部材140に近づく方向の角度をもって導光板121に入射する平行光の方が、これと逆方向の角度をもって導光板121に入射する平行光よりも、導光板121の内部を伝播していく光が導光板121の内面と衝突するときの導光板121の法線と成す角度が小さくなるからである。また、第2回折格子部材140の内部に形成された干渉縞の形状と、第1回折格子部材130の内部に形成された干渉縞の形状とは、導光板121の軸線に垂直な仮想平面に対して対称な関係にある。
[0074]
第1偏向手段130を構成するホログラム回折格子の厚さを3μm、第2偏向手段140を構成するホログラム回折格子の厚さを1μmとした。また、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の平面形状を矩形とした。第1偏向手段130のX軸の沿った長さを5.0mmとし、第2偏向手段140のX軸の沿った長さを20.0mmとし、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像によって挟まれた導光板121の領域である導光領域503のX軸の沿った長さを25.0mmとした。全導光領域504のX軸の沿った長さは(5.0+25.0+20.0)=50.0mmである。x方向はX軸と平行であるし、y方向はY軸と平行である。尚、図4Aにおいて、導光領域503を明示するために、導光領域503に斜線を付した。導光板121,321の入射点と出射点を結ぶ線分L
0
(図4A参照)は、1本の線分から構成されている。導光領域503あるいは全導光領域504に含まれる第1平坦化膜511の部分及び第2平坦化膜512の部分が上述した各種の規定を満足することが好ましいが、場合によっては、この線分L
0
に沿った(対応した)第1平坦化膜511の部分(領域)及び第2平坦化膜512の部分(領域)が上述した各種の規定を満足していてもよい。
[0075]
このような導光板121は、以下に説明する方法で作製することができる。即ち、基板500を洗浄した後、第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512を構成する材料を溶解した有機溶液に基板500を浸漬し、次いで、基板500を有機溶液から取り出し、有機溶媒を除去した後、紫外線照射を行うことで、基板500の第1面501及び第2面502に第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512を形成する。こうして、導光板121を得ることができる。そして、反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段130及び第2偏向手段140を第2平坦化膜512の所定の部分に貼り付けることで、光学装置120を得ることができる。
[0076]
実施例1の特徴の1つは、樹脂材料から成る基板500上に、高い表面平坦性を有する第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512を設けたことにある。
第1平坦化膜511の外面に相当する導光板121の第1面122、及び、第2平坦化膜512の外面に相当する導光板121の第2面123の二乗平均平方根粗さ(Rq又はRMS)は3nm以下であ
る。一般に、樹脂材料から成る基板500は、ガラス基板に比べて表面平坦性を高くすることが困難であり、樹脂材料から成る基板500を用いた導光板121では、ガラス基板を用いた導光板と同等のコントラストを得ることが困難である。しかしながら、実施例1にあっては、
樹脂材料から成る基板500上に第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512を形成することで、コントラスト及びMTFの値をガラス基板を用いた導光板と同等にすることができ
る。以下、実験データで説明する。
[0077]
図20に、ガラス基板、樹脂基板(実施例1の樹脂基板を使用)、及び、実施例1の導光板のそれぞれの、二乗平均平方根粗さRqの測定結果を示す。ここで、ガラス基板として、精密品質の表面粗さを有する光学ガラス基板を用いた。尚、図20において、ガラス基板の測定結果を「ガラス」で示し、樹脂基板の測定結果を「樹脂」で示す。また、実施例1の導光板の測定結果を「H」で示すが、「H」の後に付した数字は平坦化膜の厚さを示す。例えば、「H20nm]は厚さ20nmの平坦化膜を設けた実施例1の導光板を示している。
[0078]
Rqの測定には、AFM(Atomic Force Microscope、原子間力顕微鏡)を用いた。カンチレバーとして、Micro cantilever(型番:OMCL-AC160BN-A2)を用いた。また、バラツキ低減と測定時間のバランスを考慮して、走査範囲を10μm、走査速度を1Hzとした。
[0079]
図20に示すように、ガラス基板の外面のRqの値は2.0nm~2.1nmであり、樹脂基板の外面のRqの値は3.9nm~4.3nmであり、樹脂基板はガラス基板に比べて表面平坦性が低かった。実施例1の導光板のRqの測定結果は、平坦化膜の厚さが20nmでは5.9nm~9.2nmであり、樹脂基板よりも大きくなった。また、平坦化膜の厚さが30nmではRqの値は3.5nm~4.2nmであり、樹脂基板と同程度であった。更には、平坦化膜の厚さが50nmではRqの値は2.5nm~2.7nmであり、樹脂基板のRqの値よりも小さくなった。平坦化膜の厚さが170nm、350mではRqの値は2.3nm~2.4nmであり、ガラス基板とほぼ同等になった。このように、平坦化膜の厚さが厚くなるほど、Rqの値が小さくなり、表面平坦性が高くなった。この理由として、樹脂基板の表面凹凸を平坦化するためには平坦化膜の厚さを或る値以上にする必要があるためと考えられる。
[0080]
図21Aに、ガラス基板から構成された導光板(比較例1A、図21Aでは「ガラス基板」で表す)、平坦化膜を設けない樹脂基板(実施例1の樹脂基板)から構成された導光板(比較例1B、図21Aでは「樹脂基板」で表す)、及び、実施例1Aの導光板(第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512の厚さは、それぞれ、1μmであり、図21Aでは「平坦化膜1μm」で表す)のそれぞれの、コントラストの測定結果を示す。図21Aにおいて、横軸は画角を示している。ここで、画角は、図1の観察者の瞳21の正面方向からの、図面の紙面内での左右方向の回転角度に相当し、図1において、右側方向(第1偏光手段側)をプラス、左側方向をマイナスとしている。コントラストの測定においては、図21Bに示すような、0.3lp/(画角1度)の白黒の市松模様において、
{(白の市松模様の明るさ)-(黒の市松模様の明るさ)}/{(白の市松模様の明るさ)+(黒の市松模様の明るさ)}
から求めた。
[0081]
図21Aから判るように、実施例1Aの導光板におけるコントラストの値は、比較例1Aの導光板におけるコントラストの値と同等であり、比較例1Bの導光板におけるコントラストの値よりも高い。比較例1Bの導光板にあっては、導光領域の表面平坦性が低いため、導光領域における光の全反射の際に、大気と樹脂基板の界面において光の散乱が生じたためであると考えられる。
[0082]
ここで、ヘッドマウントディスプレイのコントラストの基準としては、文字を読むことが容易かどうかの指標として、新聞紙が参考となる。新聞紙のコントラスト比は、例えば Richo Technical Report No 39, pp.62 (2014) によれば、1.0:7.8とされる。これを前述の式によりコントラストに換算すれば、
(7.8-1.0)/(7.8+1.0)=0.77
である。図21Aから判るように、比較例1Bの導光板ではコントラスト比は新聞紙のコントラスト比よりも低くなってしまうが、実施例1Aの導光板ではコントラスト比が新聞紙よりも高くなり、文字を読むことが容易になる。
[0083]
また、表1に、比較例1Aの導光板、比較例1Bの導光板及び実施例1Aの導光板のそれぞれの水平方向MTF測定結果を示す。ここで、MTFとは、コントラスト再現比による性能評価方法であり、特定の空間周波数でのMTFが解像度に相当し、値が大きいほど高解像度であることを示す。表1に、図1の観察者の瞳21の正面方向(画角0度)、画角+8度、画角-8度の3点における水平方向MTF測定結果を示す。水平方向MTFは、図22Aに示すような縦線を水平方向に並べた白黒の縞模様で計測する。空間周波数を4.6lp/(画角1度)とした。表1から判るように、実施例1A及び比較例1Aの導光板の水平方向MTFの値はほぼ同等であるが、比較例1Bの導光板の水平方向MTFの値は実施例1A及び比較例1Aの導光板よりも低い。
[0084]
表1には、第2平坦化膜512と第2偏向手段140との密着性が悪い場合を、実施例1Bとして示している。この場合、画角-8度、つまり、第2偏向手段140の外側方向のMTFの値が低くなっている。このように密着性が悪くなるのを防止するためには、
(A)偏向手段が形成される平坦化膜の部分の表面平坦性を高くして、Rqの値を3nm以下にする。
(B)平坦化膜と偏向手段が共にアクリル系材料を含むようにすることで、平坦化膜と偏向手段の間の密着性の向上を図る。
といった対策が有効である。
[0085]
更には、表1に、比較例1Aの導光板、比較例1Bの導光板及び実施例1Aの導光板のそれぞれの垂直方向MTF測定結果を示す。表1には、図1の観察者の瞳21の正面方向(仰角0度)、仰角+3度、仰角-3度の3点における垂直方向MTF測定結果を示す。垂直方向MTFは、図22Bのような横線を垂直方向に並べた白黒の縞模様で計測する。空間周波数を4.6lp/(仰角1度)とした。表1から判るように、実施例1A及び比較例1Aの導光板の垂直方向MTFの値はほぼ同等であるが、比較例1Bの導光板の垂直方向MTFの値は実施例1A及び比較例1Aの導光板よりも低い。
[0086]
〈表1〉
86
86
0001433679000013.jpg
[0087]
以上のとおり、厚さ1μmの平坦化膜511,512を形成することで、樹脂基板を用いた導光板でも、コントラスト及びMTFの値をガラス基板を用いた導光板と同等にすることができる。
[0088]
本発明者らの実験によれば、平坦化膜の厚さをパラメータとしてコントラスト及びMTFの値を測定したところ、平坦化膜の厚さが170nm以上であれば、コントラスト及びMTFの値をガラス基板を用いた導光板と同等にすることができることが判った。これは、図20から判るように、平坦化膜の厚さを170nm以上とすることで二乗平均平方根粗さRqの値がガラス基板とほぼ同等になるためであると考えられる。また、平坦化膜の厚さを50nm以上とすることで、平坦化膜を設けない樹脂基板を用いた導光板よりもコントラスト及びMTFの値を高くすることができる。これは、図20から判るように、平坦化膜の厚さを50nm以上とすることで二乗平均平方根粗さRqの値が樹脂基板よりも小さくなるためであると考えられる。これらから、平坦化膜の厚さは50nm(5×10
-8
m)以上、好ましくは170nm(1.7×10
-7
m)以上とすることが望ましい。
[0089]
また、実施例1の光学装置120において、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像によって挟まれた導光板121の領域(導光領域)503に含まれる第1平坦化膜511の部分の外面に対する、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像によって挟まれた導光板121の領域(導光領域)503に含まれる第2平坦化膜512の部分の外面の平行度は、2/60度以下、好ましくは1/60度以下であることが望ましい。更には、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像を含む基板500の領域(全導光領域504)に含まれる第1平坦化膜511の部分の外面に対する、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像を含む基板500の領域(全導光領域504)に含まれる第2平坦化膜512の部分の外面の平行度は、2/60度以下、好ましくは1/60度以下であることが望ましい。ここで、平行度は、導光板121の第1面122の平均的な表面位置と第2面123の平均的な表面位置の平行からの角度ずれである。導光領域503あるいは全導光領域504における角度ずれが大きくなると、導光される光が設計値の角度から逸脱してしまい、コントラストやMTFが低下する。このような問題の発生を回避するため、上述したとおり、平行度は、2/60度以下、好ましくは1/60度以下であることが望ましい。
[0090]
また、上述したような方法(第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512を構成する材料を溶解した有機溶液に基板500を浸漬する方法)で導光板121を作製した場合、最終的な第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512の厚さが3μmを超えると、平行度を2/60度以下とすることが困難となる。それ故、第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512の厚さを3μm(3×10
-6
m)以下とすることが好ましい。
[0091]
即ち、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像によって挟まれた導光板121の領域(導光領域)503に含まれる第1平坦化膜511の部分の厚さは、5×10
-8
m以上、好ましくは1.7×10
-7
m以上であり、
第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像によって挟まれた導光板121の領域(導光領域)503に含まれる第2平坦化膜512の部分の厚さは、5×10
-8
m以上、好ましくは1.7×10
-7
m以上であることが望ましい。
[0092]
加えて、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像によって挟まれた導光板121の領域(導光領域)503に含まれる第1平坦化膜511の部分の厚さは、3×10
-6
m以下であり、
第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像によって挟まれた導光板121の領域(導光領域)503に含まれる第2平坦化膜512の部分の厚さは、3×10
-6
m以下であることが好ましい。
[0093]
また、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像によって挟まれた導光板121の領域(導光領域)503に含まれる第1平坦化膜511の部分の外面のRqの値は3nm以下であり、第1偏向手段130及び第2偏向手段140の基板500への正射影像によって挟まれた導光板121の領域(導光領域)503に含まれる第2平坦化膜512の部分の外面のRqの値は3nm以下であることが好ましい。
[0094]
更には、導光板として用いるためには、当然ながら、画像形成装置から導光板121,321に入射される光に対する基板の光透過率が高くなければならない。ヘッドマウントディスプレイとして用いる場合の目安として、人間の眼幅の平均が60mm程度であること、及び、光学における減衰の目安として(1/e
2
)=0.14が屡々用いられることから、導光板121に入射される光に対する基板500を構成する材料の光透過率は、基板500を構成する材料の厚さを60mmとしたとき、14%以上であり、導光板121,321に入射される光に対する第1平坦化膜511を構成する材料の光透過率は、第1平坦化膜511を構成する材料の厚さを60mmとしたとき、14%以上であり、導光板121,321に入射される光に対する第2平坦化膜512を構成する材料の光透過率は、第2平坦化膜512を構成する材料の厚さを60mmとしたとき、14%以上であることが好ましい。尚、画像形成装置からの光に対する光透過率として、60mm厚さで14%以上の値を維持できれば、必要に応じてCOP以外の材料を基板に用いることもできる。例えば、強度を重視する場合には、ポリカーボネート樹脂から成る基板を用いることができる。また、透明度や第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512との密着性を重視する場合には、アクリル系樹脂から成る基板を用いることもできる。
[0095]
実施例1にあっては、第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512を構成する材料を、アクリル系の材料を含む有機材料を主成分とする材料とした。このように有機材料を主成分とする材料とすることで、無機材料と異なり、樹脂材料から成る基板500が反った場合でも、第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512に割れやクラックが発生することを防止することができる。また、アクリル系の材料を用いることで、透明度を高くすることができる。尚、アクリル系の材料でも、添加剤等を工夫することでCOPから成る基板500に対して高い密着性を維持することができる。第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512を構成する材料の光透過率の目安としては、上述したように、基板500と同様に、画像形成装置からの光に対して60mmの厚さで14%以上である。この光透過率を維持できれば、必要に応じて有機材料と無機材料のハイブリッド材料等を用いることもできる。
[0096]
また、導光板121に入射される光の波長をλ
0
(=523nm)、基板500の屈折率をn
0
(=1.53)、第1平坦化膜511の屈折率をn
1
(=1.51,但し、n
1
<n
0
)、第2平坦化膜512の屈折率をn
2
(=1.51,但し、n
2
<n
0
)とした。コントラストやMTFを高くするためには、屈折率差は可能な限り小さい方が好ましく、n
0
=n
1
=n
2
とすることが理想的であるが、本発明者らの検討によれば、
|n
1
-n
0
|/n
0
≦0.03
|n
2
-n
0
|/n
0
≦0.03
を満足すれば十分であることが判った。あるいは又、第1平坦化膜511を構成する材料の屈折率をn1、第2平坦化膜512を構成する材料の基板屈折率をn
2
、基板500を構成する材料の屈折率をn
0
としたとき、n1≧1.48、n
2
≧1.48、及び、n
0
≧1.48を満足する形態とすることが好ましい。このように、屈折率の値が高いほど、光学設計マージンが広がる。また、屈折率の値が1.48以上であると材料の選択幅が広くなる。
[0097]
また、実施例1では、第1平坦化膜511と第2平坦化膜512のRqの測定方法にAFMを用い、走査範囲を10μmとした。AFM測定の場合、バラツキ低減と測定時間のバランスから10μm程度の走査範囲が好ましい。後述するように、Rqの測定方法には触針式プロファイラーを用いることもできる。触針式プロファイラーではバラツキ低減と測定時間のバランスから100μm程度のスキャンが好ましい。尚、実施例1における観察では、表面凹凸はナノメートルオーダーの微小なサイズなので、レーザ顕微鏡、VertScan、Zygo等の光学計測機器では測定装置のCCDの横方向分解能を極めて高くしないと正確な測定が困難となる。
[0098]
一般に、樹脂基板は、光学ガラス基板に比べて表面平坦性を高くすることが困難であり、樹脂基板を用いた導光板では、光学ガラス基板を用いた導光板と同等のコントラストを得ることが困難であるとされていた。しかしながら、本発明者らは実験を重ねた結果、樹脂基板上に表面平坦性が高い平坦化膜を形成することで導光板のコントラストや解像度が高くなることを独自に見出した。そして、解析を重ねた結果、樹脂基板は外面に微小な凹凸があり、その表面平坦性がガラス基板よりも低いこと、及び、樹脂基板に平坦化膜を設けて表面平坦性をガラス基板と同程度にすることで、樹脂基板を用いた導光板のコントラストや解像度を、ガラス基板を用いた導光板と同程度まで高くすることができることを発見した。また、これらのことから、樹脂基板を用いた導光板のコントラストや解像度がガラス基板を用いた導光板に比べて低い理由は、樹脂基板の外面の微小な凹凸が原因となって光の導光領域において基板の表面と大気との間で光の散乱が生じるためであると考えられる。
[0099]
もっとも、樹脂材料から成る基板の表面平坦性は、二乗平均平方根粗さRqの値で4nm程度であり、導光する可視光の波長数百nmに比べて極めて小さな値であり、光学特性に大きな影響は無いと考えられていた。しかしながら、本発明者らは、実験から、導光板にあっては導光領域において光の反射が繰り返し生じるため、一般には微小と思われる凹凸であってもコントラストや解像度に影響を与えていることを見出した。そして、本発明者らは、独自に得たこれらの知見から、樹脂材料から成る基板に所定の平坦化膜を形成することで、ガラスの基板を用いた導光板と同等のコントラストや解像度を得ることに成功した。
[0100]
即ち、以上のとおり、実施例1の光学装置、あるいは、実施例1の表示装置において、基板の第1面には有機材料を主成分とする材料から成る第1平坦化膜が形成されており、基板の第2面には有機材料を主成分とする材料から成る第2平坦化膜が形成されている。従って、第1平坦化膜及び第2平坦化膜が樹脂基板に形成されて成る導光板に、全体として高い表面平滑性を付与することが可能となる。そして、その結果、光学特性が良好な導光板を提供することができる。
[0101]
より具体的には、樹脂材料から成る軽量な基板を用いた導光板を備えており、ガラス基板を用いた導光板を備えた光学装置と同等のコントラスト及び解像度を有する光学装置、及び、斯かる光学装置を備えた表示装置を提供することができる。また、基板の表面研磨工程を簡略化することができ、光学装置、及び、斯かる光学装置を備えた表示装置を安価に提供することができる。」
イ 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、実施例1(【図1】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「画像形成装置111及び光学装置120を備える画像表示装置100における光学装置120であって、([0060])
第1面122及び第1面122と対向する第2面123を有し、画像形成装置111から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射される導光板121、
導光板121の第2面123に配設され、導光板121に入射された光が導光板121の内部で全反射されるように、導光板121に入射された光を偏向させる第1偏向手段130、及び、
導光板121の第2面123に配設され、導光板121の内部を全反射により伝播した光を導光板121から出射させるように、導光板121の内部を全反射により伝播した光を偏向させる第2偏向手段140
を備え、([0061])
導光板121は、
第1面501及び第1面501と対向する第2面502を有する基板500、
基板500の第1面501上に形成された、有機材料を含む第1平坦化膜511、及び、
基板500の第2面502上に形成された、有機材料を含む第2平坦化膜512
から成り、([0062])
基板500は樹脂材料から成り、([0068])
第1偏向手段130及び第2偏向手段140は1層の回折格子層が積層されて成る構成のホログラム回折格子から成り、([0069])
第1平坦化膜511の外面に相当する導光板121の第1面122、及び、第2平坦化膜512の外面に相当する導光板121の第2面123の二乗平均平方根粗さ(Rq又はRMS)は3nm以下であり、([0076])
樹脂材料から成る基板500上に第1平坦化膜511及び第2平坦化膜512を形成することで、コントラスト及びMTFの値をガラス基板を用いた導光板と同等にすることができた、([0076])
光学装置120。」
<参考図>
【図1】
96
121
0001433679000014.jpg
(3) 引用文献9の記載事項及び技術常識Aの認定
ア 引用文献9に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である国際公開第2017/138637号(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある(下線は当合議体による。)。
(ア) 技術分野、背景技術([0001]~[0002])
「技術分野
[0001]
本発明は、フィルムやシート等の樹脂成形体の製造に用いられる金属製無端ベルトに関する。より詳しくは、優れた外観を有する樹脂成形体を製造するための金属製無端ベルト及びその製造方法と補修方法、並びに鋳型に関する。
...(中略)...
背景技術
[0002]
金属製無端ベルトは、シートやフィルム等の樹脂成形体(以下、単に「樹脂成形体」と略する。)の製造に使用されている。
最近では、導光体用途や面光源用途の光学用樹脂成形体の製造において
、樹脂成形体の外観、樹脂成形体表面からの反射像、また
樹脂成形体が透明体であればその透過像に歪が観察されないことが要求されている
。」
(イ) [0017]、[図4]
「[0017]
図4は、樹脂成形体306について、透過投影像の明度分布を測定するための各機器の配置を示す一例である。樹脂成形体306の表面に光源303から光を入射して、樹脂成形体306を透過した透過光をスクリーン305に投影して、投影された透過投影像をカメラ304で撮影して、明度データとして取得し、透過投影像の明度分布を得る。
...(後略)
[図4]
52
121
0001433679000015.jpg
」
(ウ) [0028]~[0043]、[図7]~[図10]
「[0028]
<樹脂成形体の外観評価方法>
樹脂成形体の外観を評価する第一の方法として、樹脂成形体の外観及び前記樹脂成形体に光源からの光を入射して得られた透過像を観察して、目視で歪が視認されるか確認する方法が挙げられる。
さらに、第二の方法として、樹脂成形体の透過像の明度分布において、後述するマイケルソンコントラスト(MC)があらかじめ決めた値以下であるか確認する方法が挙げられる。
或いは又、第三の方法として、樹脂成形体の透過像の明度分布において、後述する、明度値のピーク幅があらかじめ決めた値以下であるか確認する方法が挙げられる。
[0029]
<マイケルソンコントラスト(MC)>
上述したように、樹脂成形体の外観を評価する第二の方法として、
樹脂成形体表面の歪の強度(凸形状の高さ又は凹形状の深さ)に関する指標として、下記条件(1)で算出されるマイケルソンコントラスト(MC)を用いる
方法が挙げられる。
MC=(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin)・・・(1)
(樹脂成形体表面の歪が凹形状の場合は、Lmaxは正常部の明度値の平均値を、Lminは異常部である凹部ピークの極小明度値を示す。樹脂成形体表面の歪が凸形状の場合は、Lmaxは異常部である凸ピークの極大明度値を、Lminは正常部の明度値の平均値を示す。)
[0030]
樹脂成形体に、金属製無端ベルトに接していた方の表面から、光源の光を入射して、表面上の歪部分を透過した光は、歪部分が凹形状の場合には光が散乱し、歪部分が凸形状の場合には光が集光する。すなわち、樹脂成形体の透過像の明度分布において、歪部分の凹形状の角度変化率が大きくなるほど透過像の明度値は小さくなり、凸形状の角度変化率が小さくなるほど透過像の明度値は大きくなる。したがって、樹脂成形体の明度分布には、歪部分の凹凸形状に応じてコントラストが生じる。
[0031]
このことから、樹脂成形体の歪部分の凹凸形状の角度変化率を積分することにより、凹凸形状の高さ又は深さを、マイケルソンコントラストの値で定量化することが可能となる。樹脂成形体の透過像の明度分布において、マイケルソンコントラストがあらかじめ決めた値を超える箇所は、樹脂成形体の歪として視認される。
[0032]
図7は、凹形状の歪を有する金属製無端ベルトを用いて製造された樹脂成形体について、前記樹脂成形体の透過像の明度分布を示す。金属製無端ベルトの凹形状の歪は、樹脂成形体の透過像の明度分布において凸ピークを示す。各ピークの高さの明度値をLmaxとし正常部の明度値の平均値をLminとして、各ピークについてマイケルソンコントラストを求め、あらかじめ決めた値dを超えれば樹脂成形体の歪として視認される。
[図7]
55
128
0001433679000016.jpg
[0033]
図8は、凸形状の歪を有する金属製無端ベルトを用いて製造された樹脂成形体について、前記樹脂成形体の透過像の明度分布を示す。金属製無端ベルトの凸形状の歪は、樹脂成形体の透過像の明度分布において凹ピークを示す。正常部の明度値の平均値をLmaxとし各ピークの深さの明度値をLminとして、各ピークについてマイケルソンコントラストを求め、あらかじめ決めた値dを超えれば樹脂成形体の歪として視認される。
[図8]
58
125
0001433679000017.jpg
なお、図7や図8において、値dは金属製無端ベルトの使用目的や用途に応じて適宜決めればよい。具体的には、値dは明度分布データの測定条件と、凹凸形状の程度が既知である樹脂成形体を標本として、適宜決めることができる。
[0034]
<明度値のピーク幅>
上述した樹脂成形体の外観を評価する第三の方法として、樹脂成形体の透過像の明度分布において、正常部の明度値の平均値との差があらかじめ決められた値である明度値におけるピークの幅があらかじめ決めた値c以下であるか確認する方法が挙げられる。
前記のピーク幅とは、樹脂成形体の表面の歪部分の凹凸形状の広がりに関する指標である。正常部の明度値の平均値との差があらかじめ決められた値bである明度値における凹凸欠陥の幅p(w)が、樹脂成形体の歪部分の凹凸形状の広がりの指標となる。値cは、樹脂成形体の表面の凹凸形状を歪として視認できる下限値であり、使用する光源によって決定される。p(w)があらかじめ決めた値cを超えている箇所は、樹脂成形体の歪として視認される。
たとえば、図9おいて、左側のピークの幅p(w)がc以上の場合には、金属板の修正箇所と判断される。なお、値cは金属板の使用目的や用途に応じて適宜決めればよい。具体的には、値cは明度分布データの測定条件と、凹凸欠陥の程度が既知である樹脂成形体を標本として、適宜決めることができる。
[図9]
54
134
0001433679000018.jpg
[0035]
<光源>
光源の種類は、反射像(又は反射投影像)若しくは透過像(又は透過投影像)が鮮明になる観点から点光源が好ましい。具体的な光源としては、たとえばメタルハライド、ハロゲン及び高圧水銀灯が挙げられる。
[0036]
<カメラ>
反射像(又は反射投影像)若しくは透過像(又は透過投影像)の撮影はカメラを用いて行うことができる。カメラは、アナログカメラでもデジタルカメラでもよいが、デジタル解析の観点からデジタルカメラが好ましい。なお、アナログカメラで撮影した場合は、得られた画像をデジタル画像に変換して解析することができる。
[0037]
<検量線>
反射像の明度分布と角度変化率の関係を示す検量線は、次の手順で取得できる。まず、表面形状と角度変化率が既知であるベルトを用いて、光源の位置と反射像(又は反射投影像)の撮影位置を定め、反射像(又は反射投影像)の明度分布を取得する。次いで、反射像(又は反射投影像)の明度分布から、反射像(又は反射投影像)の明度変化率を算出する。次いで、反射像(又は反射投影像)の明度変化率と角度変化率の間の関係式を求め、これを検量線とする。光源の位置、撮影位置、及びベルト反射面の表面粗さが変わると検量線も変化するので、測定に用いるベルト又は同等の表面形状を有するベルトを用いて検量線を取得しておく必要がある。
透過像(又は透過投影像)の明度分布と樹脂成形体の明度分布の関係を示す検量線は、次の手順で取得できる。まず、表面形状と角度変化率が既知である樹脂成形体を用いて、光源の位置と透過像(又は透過投影像)の撮影位置を定め、透過像(又は透過投影像)の明度分布を取得する。次いで、透過像(又は透過投影像)の明度分布から、透過像の明度変化率を算出する。次いで、透過像の明度変化率と角度変化率の間の関係式を求め、これを検量線とする。光源の位置、撮影位置、及び樹脂成形体の表面粗さが変わると検量線も変化するので、測定に用いる樹脂成形体又は同等の表面形状を有する樹脂成形体を用いて検量線を取得しておく必要がある。
...(中略)...
[0043]
<鋳型>
本発明の鋳型は、図10に示すように、一対の金属製無端ベルトの向かい合うベルト面101,102と、前記金属製無端ベルトの両側辺部に配設された一対のガスケット105から構成される鋳型401であって、前記鋳型における金属製無端ベルトは、上述した金属製無端ベルトからなる。例えば、熱硬化性樹脂組成物の注入口107から、鋳型401に熱硬化性樹脂組成物106を流し入れ、樹脂成形体を製造することができる。
さらに、前記鋳型においては、前記一対の金属製無端ベルトの表面上であって、前記一対のガスケット間に挟まれる領域に、下記測定方法5又は下記測定方法6で算出される角度変化率の絶対値が0.006°/mmを超える部分を含まないことを特徴とする。
上記の構成を有する鋳型を用いて樹脂成形体を
製造
すれば、得られた樹脂成形体の外観、及び前記樹脂成形体に光源からの光を入射して得られた透過像に、歪が視認されないので、
導光体用途や面光源用途等の光学用樹脂成形体に好適
である。」
(エ) 実施例([0044]~[0067])
「実施例
[0044]
...(中略)...
[0056]
(樹脂成形体の外観評価:マイケルソンコントラスト(MC))
金属製無端ベルトを用いて製造した樹脂成形体の外観を、以下の方法で評価した。
樹脂成形体に光源から光を入射し、透過像を撮影し、得られた樹脂成形体の透過像の明度を測定して、得られた透過投影像の明度分布を、樹脂成形体の明度分布に変換した。
次いで得られた透過投影像の明度分布を樹脂成形体の明度分布に変換して、下記式(1)より、マイケルソンコントラスト(MC)を算出した。
MC=(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin)・・・(1)
(樹脂成形体表面の歪が凹形状の場合は、Lmaxは正常部の明度値の平均値を、Lminは異常部である凹部ピークの極小明度値を示し、凸形状の場合は、Lmaxは異常部である凸ピークの極大明度値を、Lminは正常部の明度値の平均値を示す。)
...(中略)...
[0067]
[表1]
84
136
0001433679000019.jpg
」
イ 技術常識Aの認定
前記アに摘記した引用文献9の記載事項に例示されるように、次の技術事項は優先日前において技術常識(以下「技術常識A」という。)であったと認められる。
<技術常識A>
「透明樹脂成形体表面の歪の強度(凸形状の高さ又は凹形状の深さ)に関する指標として、下記条件(1)で算出されるマイケルソンコントラスト(MC)を用いること。
MC=(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin)・・・(1)」
(4) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(画像表示用導光板)
a 構成Xは、「第1樹脂基材と、ホログラム層とを有する画像表示用導光板」の発明であることを特定するものである。
b(a) 引用発明における「導光板121」の「基板500」は、「樹脂材料から成[る]」から、本件補正発明における「第1樹脂基材」に相当する。
(b) 引用発明における「1層の回折格子層が積層されて成る構成のホログラム回折格子」は、本件補正発明における「ホログラム層」に相当する。
(c) 引用発明の「光学装置120」は、「導光板121」を備え、「画像形成装置111から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射」する機能を有することから、入射された画像光を伝播させて観察者に対して表示するものであり、本件補正発明にいう「画像表示用導光板」であるといえる。
c 以上の検討結果をまとめると「画像表示用導光板」の発明である本件補正発明と「光学装置120」の発明である引用発明は、「画像表示用導光板」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点(第1樹脂基材のMC値)
a 構成Aは、「第1樹脂基材は、シャドーコントラストによる評価で得られるMC値が0.120以下」であることである。
b 引用発明の「樹脂材料から成[る]」「基板500」は、シャドーコントラストによる評価で得られるMC値としてどのような値を有するかについて特定されていないから、本件補正発明と引用発明は、構成Aの観点である次の点において相違する。
<構成Aの観点における相違点>
本件補正発明においては、
「前記第1樹脂基材は、シャドーコントラストによる評価で得られるMC値が0.120以下」であるのに対して、
引用発明においては、
「樹脂材料から成[る]」「基板500」が、MC値としてどのような値を有するかについて特定がない点。
(ウ) 構成Bの観点(第1樹脂基材の表面の算術平均粗さ)
a 構成Bは、「第1樹脂基材の表面の算術平均粗さRaが5nm以下である」ことである。
b 引用発明の「第1平坦化膜511の外面に相当する導光板121の第1面122、及び、第2平坦化膜512の外面に相当する導光板121の第2面123の二乗平均平方根粗さ(Rq又はRMS)は3nm以下であ[る]」ものの、「樹脂材料から成[る]」「基板500」の表面の粗さがどのような値を有するかについて特定されていないから、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。
<構成Bの観点における相違点>
本件補正発明においては、
「前記第1樹脂基材の表面の算術平均粗さRaが5nm以下である」のに対して、
引用発明においては、
「第1平坦化膜511の外面に相当する導光板121の第1面122、及び、第2平坦化膜512の外面に相当する導光板121の第2面123の二乗平均平方根粗さ(Rq又はRMS)は3nm以下であ[る]」ものの、「樹脂材料から成[る]」「基板500」の表面の粗さがどのような値を有するかについて特定がない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。
(ア) 一致点
「第1樹脂基材と、ホログラム層とを有する画像表示用導光板」の発明である点。
(イ) 相違点
a 部分相違点1
本件補正発明においては、
「前記第1樹脂基材は、シャドーコントラストによる評価で得られるMC値が0.120以下」であるのに対して、
引用発明においては、
「樹脂材料から成[る]」「基板500」が、MC値としてどのような値を有するかについて特定がない点。
b 部分相違点2
本件補正発明においては、
「前記第1樹脂基材の表面の算術平均粗さRaが5nm以下である」のに対して、
引用発明においては、
「第1平坦化膜511の外面に相当する導光板121の第1面122、及び、第2平坦化膜512の外面に相当する導光板121の第2面123の二乗平均平方根粗さ(Rq又はRMS)は3nm以下であ[る]」ものの、
「樹脂材料から成[る]」「基板500」の表面の粗さがどのような値を有するかについて特定がない点。
(5) 判断
ア 相違点の自明性について(その1)
(ア) 本件補正発明に包摂されるものの理想状態としての自明性
a 本件補正は、物の発明であるところ、その概念範囲に包摂されるものについて容易に想到できるのであれば、本件補正発明には進歩性が無いこととなる。したがって、たとえ本件補正発明の「MC値」及び「第1樹脂基材の表面の算術平均粗さRa」を用いて特定することに想到することの困難性があったり、そのようなものを製造することに困難性があったりしたとしても、本件補正発明の概念に包摂されるものに思想として想到することが当業者にとって容易であれば、本件補正発明に進歩性は認められない。
b 「画像形成装置から入射された光が内部を全反射により伝播した後、観察者に向けて出射」する機能を有する部材において、全反射面となる二つの表面が、理想的には、厳密な意味での二つの平面であり、厳密な意味での平行平面であるべきことは、あまりにも自明のことである。
c 引用発明においては、樹脂材料からなる「基板500」の両表面について、おそらくは経済性も考慮した上での簡便な工程でより理想に近い平坦性(平面性)を実現するために第1平坦化膜及び第2平坦化膜を設けているものの、第1平坦化膜及び第2平坦化膜を用いることなく基板500自体の両表面を完全に平坦な(かつ完全に平行な)二つの平面とすることは、少なくとも、理想的な状態として、思想としては自明のことである。
d そして、この場合、前記部分相違点1及び部分相違点2に係る本件補正発明の条件を満たすことは明らかであり、本件補正発明の構成が奏するものとして当業者が予測・発見困難であって格別顕著な効果を認めることはできないから、本件補正発明に進歩性を認めることはできない。
(イ) 参考裁判例
前記(ア)の判断と同様な進歩性要件の判断手法を示す参考裁判例として、それぞれ次のa及びbに示す裁判例1及び裁判例2がある。
a 裁判例1
東京高等裁判所平成15年11月27日判決(平成12年(行ケ)第429号)は、次のように判示している(なお、「,」を「、」に改めた(次の裁判例2も同じ。)。また、丸数字(○の中に数字)を「○1」などと表記を改めた。)。
「本件第1発明は、特定の種類の材料が少なくとも部分的に用いられており、全体が製造された状態において、上記部分が一定の物性を持つめがねフレーム、の発明である。その製造方法でも、ましてや上記材料自体ないしその製造方法でもない。本件で考案の対象とされる本件第1発明は、上記のようなめがねフレームそのものであって、上記製造方法、材料自体ないしその製造方法の容易想到性や、実現の困難性は,基本的に本件において問題になるものではない。
本件第1発明の進歩性を、上記の構成のめがねフレーム自体の容易想到性の有無の観点から判断することが許されることは、当然である。
(2) めがねフレームとして、○1剛性や弾性が大きすぎないこと(かけ心地を軟らかくするためである。)、並びに、○2少なくとも部分的に(例えばつる、テンプル等において)ある程度の弾性を持つこと(かけたとき容易にずれたり外れたりしないようにするためである。)、の二つの性質は、好ましいというより、むしろ当然備えるべきものであり、そのことは、当業者のみならず、単なる消費者であっても容易に思い付く、一般常識といってもよいことである。(中略)
本件第1発明は、前記のとおりのものであり、要するに、ニッケル-チタニウムベースの形状記憶合金を用いて、これに加工硬化と熱処理を加え、めがねのフレームとして具えていることが好ましい特性を、実用性の面からみて好ましい温度幅の全体にわたって維持するようにしてあるめがねフレーム、というものであり,それ以上のものではない。ニッケル-チタニウムベースの形状記憶合金及びそれに対する加工硬化と熱処理という周知技術の下で、これをみれば、つまるところ,これらの技術を用いて達成すべき課題をそのまま構成要件としただけのものであり、それ以上に具体的な要素は何ら有するものではない(このような課題を実現する具体的手段に想到することは困難であり得ても、このような課題に想到することには何らの困難もない。両者の区別は明確に認識されなければならない。)。」
b 裁判例2
東京高等裁判所昭和37年6月26日判決(昭和34年(行ナ)第6号、審決取決訴訟判決集昭和36・37年269頁)
「本件特許請求の範囲における数的限定は、従来知られたものを除外した範囲の、高い酸化鉄濃度と高い残留磁化とである、というにとどまるといわなければならないが、酸化鉄濃度と残留磁化(保磁力)との高いことが従来から要求されているととろであることは、前記のとおりである。原告が本件特許出願において特許を請求している事項は、上記の傾向に基き従来品を包含しない特性の優れた範囲に限定したものに相当し、当業技術者がそのように限定することに格別の工夫を必要とするものとは、とうてい考えることができない。
(中略)
本件特許出願明細書中発明の詳細なる説明の前記記載によれば、本願の発明者が発明した新しい技術として上記明細書に開示されているところのものは、むしろ、従来にない優秀な磁気記録材料の製造方法であって、製造されたその材料そのものではないといわなくてはならない。
(中略)
本願明細書に記載された製造方法が新規有用なものであって方法として特許さるべきであるかどうかは別論として、従前のものよりも優れた物というに異ならない本願の特許請求事項は、当業者の希望するところであつても、そのような希望を述べることに格別の発明能力を要するものとは考えられない。」
イ 相違点の自明性について(その2)
(ア) 第1及び第2平坦化膜を用いないようにすることの自明性
引用発明においては、樹脂材料からなる「基板500」の両表面について、おそらくは経済性も考慮した上での簡便な工程でより理想に近い平坦度(平面度)を実現するために第1平坦化膜及び第2平坦化膜を設けているもの、第1平坦化膜及び第2平坦化膜を用いることなく基板500自体を理想的な平坦度(平面度)を有する二つの平面に許容される範囲内で近づけることは、思想としては自明のことである。
したがって、第1平坦化膜及び第2平坦化膜を用いないようにすることに技術思想としての困難性は認められない。
(イ) 部分相違点1について
a 前記(3)イにおいて技術常識Aとして認定したように、次の技術事項は、技術常識である。
「透明樹脂成形体表面の歪の強度(凸形状の高さ又は凹形状の深さ)に関する指標として、下記条件(1)で算出されるマイケルソンコントラスト(MC)を用いること。
MC=(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin)・・・(1)」
b そうすると、基板500自体の両表面の理想的な平面からのズレを、Rqだけで評価できず、マイケルソンコントラスト(MC)という指標にはRqだけでは評価できないことを評価できる存在意義があることは当業者には自明であるから、第1平坦化膜及び第2平坦化膜を用いないようにした上で、基板500自体の平坦性(平面性)を評価する指標の一つとして、マイケルソンコントラスト(MC)という指標も併せ用いて、この値が所定の値以下となるように好適化して部分相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては自明な設計事項にすぎない。
(ウ) 部分相違点2について
表面の平坦性(平面性)の指標として、それぞれ下記の式A又は式Bで求められる「Rq(二乗平均平方根粗さ)又はRMS」も「Ra(算術平均粗さ)」もよく知られたものである。
21
51
0001433679000020.jpg
・・・(式A)
19
52
0001433679000021.jpg
・・・(式B)
ここで、y(x)は基準線からの高さ、Lは測定長さを表す。
してみれば、引用発明において、第1平坦化膜及び第2平坦化膜を用いないようにした上で、基板500自体の平坦性(粗さ)を評価する指標の一つとしてのRqに代えてRaを採用し、この値を所定の値以下となるように好適化して部分相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては自明な設計事項にすぎない。
(エ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)において検討したとおり、引用発明において、部分相違点1、2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、部分相違点1、2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、本件補正発明は、樹脂基材の平面性(MC値)と平滑性(算術平均粗さRa)の両方を規定の範囲内にコントロールすることで効果を奏するものであるのに対して、引用文献1には、「表面粗さ」以外にも樹脂基材の凹凸として表面周波数が異なる複数種の凹凸が存在すること自体について記載も示唆もなく、シャドーコントラストによる評価で得られる「MC値」が小さい導光板とするという技術思想の教示がないから、本件補正発明は進歩性を有する旨主張している。
また、請求人は、令和7年6月27日提出の上申書において、MC値は、樹脂基材の表面状態が平坦であることに加えて、樹脂基材の内部状態を反映した光学特性も影響する指標であるのに対して、Raは、樹脂基材表面の粗さを表す値、すなわち樹脂基材の形状(表面状態)のみを反映する値であり、樹脂基材の内部状態は関与しないこと、及び、MC値及びRaを特定の範囲に厳密に制御することについてはいずれの引用文献にも記載も示唆も一切ないことから、本件補正発明は進歩性を有する旨主張している。
(イ) 請求人の主張についての検討
樹脂基材の全反射面となる両表面を理想的な平面とすべきことが当業者にとって自明であることは、前記アに説示したとおりであるから、請求人の主張は前記アの判断を左右するものではない。
また、前記(3)イにおいて技術常識Aとして認定したように、「透明樹脂成形体表面の歪の強度(凸形状の高さ又は凹形状の深さ)に関する指標として、マイケルソンコントラスト(MC)を用いること」は、技術常識であり、基板500自体の両表面の理想的な平面からの相違をRq又はRaだけで評価できず、マイケルソンコントラスト(MC)という指標にはRq又はRaだけでは評価できないことを評価できる存在意義があることは当業者には自明であるから、基板500自体の両表面の平坦性(平面性)の評価指標の一つとして、マイケルソンコントラスト(MC)も併せ用いることは、当業者にとっては自明な設計事項にすぎない。したがって、請求人の主張は、前記イの判断を左右するものではない。
エ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
前記3(5)エのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
原査定の本願発明に対する拒絶の理由のうち理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献1、9に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
<主たる引用文献>
引用文献1.国際公開第2018/135193号
<周知技術を示す文献>
引用文献9.国際公開第2017/138637号
引用発明及び技術常識Aは、それぞれ前記第2の3(2)イ及び(3)イに示したとおりである。
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から「第1樹脂基材」についての「表面の算術平均粗さRaが5nm以下である」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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