結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024017523 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、令和2年9月30日の出願であって、令和6年3月19日付けの拒絶理由の通知に対し、同年7月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年8月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされ、令和7年2月12日に上申書が提出されたものである。
[補正の却下の決定の結論]
令和6年11月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由](補正の適否の判断)
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
第一の表面を構成す
る第
一のアクリル粘着剤層と
、中
間粘着剤層と、第二の表面を構成す
る第
二のアクリル粘着剤層とをこの順に有し、
前記第一のアクリル
粘着
剤層及び前記第二のアクリル
粘着
剤層は、アクリル系樹脂100重量部に対して、0.1~3重量部の紫外線吸収剤が配合されてなるものであり、
前記第一のアクリル粘着剤層及び前記第二のアクリル粘着剤層の各厚みは、3μm以上、40μm以下であり、
総厚が200~2100μmであり、
接着力が20N/25mm以上であることを特徴とする光学透明粘着シート。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年7月25日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
第一の表面を構成する熱硬化型の第一のアクリル粘着剤層と、熱硬化型の中間粘着剤層と、第二の表面を構成する熱硬化型の第二のアクリル粘着剤層とをこの順に有し、
前記第一のアクリル樹脂剤層及び前記第二のアクリル樹脂剤層は、アクリル系樹脂100重量部に対して、0.1~3重量部の紫外線吸収剤が配合されてなるものであり、
総厚が200~2100μmであり、
接着力が20N/25mm以上であることを特徴とする光学透明粘着シート。」
(1)請求項1の補正について
本件補正のうち請求項1についてする補正は、次のア~ウに示す補正事項1~3からなる(下線部は、補正箇所である。)。
ア 補正事項1
補正事項1は、下記1aに示す補正前の記載事項を下記1bに示す補正後の記載事項に補正するものである。
1a 補正前の記載事項
「第一の表面を構成す
る熱硬化型の第
一のアクリル粘着剤層と
、熱硬化型の中
間粘着剤層と、第二の表面を構成す
る熱硬化型の第
二のアクリル粘着剤層とをこの順に有し、」
1b 補正後の記載事項
「第一の表面を構成す
る第
一のアクリル粘着剤層と
、中
間粘着剤層と、第二の表面を構成す
る第
二のアクリル粘着剤層とをこの順に有し、」
イ 補正事項2
補正事項2は、下記2aに示す補正前の記載事項を下記2bに示す補正後の記載事項に補正するものである。
2a 補正前の記載事項
「前記第一のアクリル
樹脂
剤層及び前記第二のアクリル
樹脂
剤層は、アクリル系樹脂100重量部に対して、0.1~3重量部の紫外線吸収剤が配合されてなるものであり、」
2b 補正後の記載事項
「前記第一のアクリル
粘着
剤層及び前記第二のアクリル
粘着
剤層は、アクリル系樹脂100重量部に対して、0.1~3重量部の紫外線吸収剤が配合されてなるものであり、」
ウ 補正事項3
補正事項3は、下記3bに示す補正後の記載事項を追加するものである。
3b 補正後の記載事項
「
前記第一のアクリル粘着剤層及び前記第二のアクリル粘着剤層の各厚みは、3μm以上、40μm以下であり、
」
(2)補正の目的についての判断
ア 補正事項1について
本件補正前の請求項1では、「第一のアクリル粘着剤層」、「中間粘着剤層」及び「第二のアクリル粘着剤層」をそれぞれ「熱硬化型の」ものに限定していたが、補正事項1により、本件補正後の請求項1では、当該「熱硬化型の」ものに限定する記載が削除されている。したがって、当該補正事項1は、本件補正前の請求項1の発明特定事項を限定するものではないから、いわゆる限定的減縮に該当しないことは明らかである。
請求人は、審判請求書において、「請求項1において、審査官殿からの指摘を考慮して3つの粘着剤層から「熱硬化型の」との表現を削除した」と述べており、拒絶査定における「本願請求項1の「熱硬化型の・・・アクリル粘着剤層」は、本願明細書の記載からみて、熱硬化により形成されたアクリル粘着剤層と解釈した(他の粘着剤層についても同様)。」との記載も考慮すると、補正事項1が、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると主張しているようにも解される。
しかしながら、「明瞭でない記載の釈明」とは、不明瞭な記載の記載上の不備を正し、その本来の意を明らかにすることである。補正事項1は、本件補正前の請求項1における「熱硬化型の」との表現により特定される本来の意味内容を明らかにするものではなく、「熱硬化型の」との記載を単に削除したものであり、実質的に発明の範囲を拡大するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるということはできない。
そして、補正事項1は、誤記の訂正や請求項の削除を目的とするものにも 該当しないことは明らかである。
よって、補正事項1は特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない。
イ 補正事項2について
請求人は、審判請求書において、「請求項1において、「アクリル粘着剤層」と記載すべきところを、「アクリル樹脂剤層」と誤記しておりましたので、当該誤記を訂正する補正を行いました。」と述べており、本件補正前の請求項1の「前記第一のアクリル樹脂剤層」及び「前記第二のアクリル樹脂剤層」の「前記」との記載も考慮すれば、請求人の主張のとおり、当該「アクリル樹脂剤層」が「アクリル粘着剤層」の誤記であることは明らかである。
よって、補正事項2は、特許法17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。
ウ 補正事項3について
補正事項3は、本件補正前の請求項1の「第一のアクリル粘着剤層」及び「第二のアクリル粘着剤層」について、前記(1)ウのとおり、「各厚みは、3μm以上、40μm以下であ」ることを直列的に付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
エ 補正の目的についてのまとめ
前記アのとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない補正事項1を含むものである。
よって、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
(3)独立特許要件についての判断
前記(2)で検討したとおり、補正事項1は特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しないものの、仮に特許法17条の2第5項各号のいずれかに該当するとしても、前記(2)ウのとおり、少なくとも補正事項3は、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するところ、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、更に検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2020/162439号
2.特開2019-182995号公報
3.特開2017-179242号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2019-214722号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2016-190972号公報(周知技術を示す文献)
(ア)引用文献1
a 引用文献1には、次の記載がある。
「[0068](実施例1)
まず、ポリオレフィンポリオール(出光興産社製の「EPOL(エポール、登録商標)」)75重量部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)系ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製の「デスモジュールI」)2.4重量部、エチレンオキシドユニットを含む変性ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート4022」)4.6重量部、タッキファイヤー(出光興産社製の「アイマーブP-100」)17重量部、及び、触媒(ジラウリル酸ジメチル錫)1重量部を、往復回転式撹拌機アジターを用いて攪拌混合し、α比が1.60である熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した。なお、熱硬化性ポリウレタン組成物において、IPDI系ポリイソシアネート(A)と変性ポリイソシアネート(B)との混合比(モル比)は、A:B=2:1であった。
[0069]なお、東ソー社製の「コロネート4022」は、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートモノマーを出発物質とするポリイソシアネートに対して、ポリアルキレンオキシドユニットを1分子当たり平均3個以上有するエーテルポリオールを反応させて得られたものである。
[0070]その後、得られた熱硬化性ポリウレタン組成物を一対の離型フィルム(表面に離型処理が施されたPETフィルム)によって挟んだ状態で搬送しつつ、炉内温度50~90°C、炉内時間数分間の条件で架橋硬化させ、離型フィルム付きのシートを得た。その後、加熱装置で10~15時間架橋反応させ、両面に離型フィルムが設けられた、熱硬化ポリウレタン層を作製した。熱硬化ポリウレタン層の厚みは1000μmであった。
[0071]その一方で、アクリル系樹脂(綜研化学社製の「SK1838」と「SK1875」を固形分比5:5となるようにブレンドしたもの)100重量部に、イソシアネート系硬化剤(綜研化学社製の「DY-70」)を0.6重量部添加し、アクリル系樹脂組成物を作製した。得られたアクリル系樹脂組成物を離型フィルムにコンマコーターにて塗工し、80~120°Cの乾燥炉において乾燥した後、塗工面に離型フィルムを重ねた。その後、40°Cで1週間加熱することにより硬化を完了させ、アクリル粘着剤層を作製した。アクリル粘着剤層の厚みは25μmであった。得られたアクリル粘着剤層の透湿度をJIS L1099(2012)のA-1法に基づき測定した結果、586g/m
2
・hであった。
[0072]その後、上記離型フィルム付きアクリル粘着剤層を二枚と、上記離型フィルム付き熱硬化ポリウレタン層を一枚とを準備した。一枚目の離型フィルム付きアクリル粘着剤層から一方の離型フィルムを剥離し、一枚目のアクリル粘着剤層の上記離型フィルムを剥離した面に熱硬化ポリウレタン層を積層した。更に、二枚目の離型フィルム付きアクリル粘着剤層から一方の離型フィルムを剥離し、上記熱硬化ポリウレタン層の上記一枚目のアクリル粘着剤層(第一のアクリル粘着剤層)を積層した面と反対側の面に、二枚目のアクリル粘着剤層(第二のアクリル粘着剤層)を積層した。これにより、離型フィルム、第一のアクリル粘着剤層、熱硬化ポリウレタン層、第二のアクリル粘着剤層及び離型フィルムがこの順で積層された積層シートを作製した。第一のアクリル粘着剤層、熱硬化ポリウレタン層及び第二のアクリル粘着剤層からなる光学透明粘着シートの厚みは1050μmであった。」
「[0079](1)信頼性評価
実施例及び比較例で作製した積層シートから離型フィルムを剥がし、光学透明粘着シートの一方の面をガラス板と貼り合わせ、他方の面を厚さ1mmのポリカーボネート板と貼り合わせた。得られたガラス板/光学透明粘着シート/ポリカーボネート板の7インチサイズの積層体を85°C85%の高温高湿環境下に24時間放置した。放置後の積層体を目視で観察し、ガラス板と光学透明粘着シートの接着界面、及び、ポリカーボネート板と光学透明粘着シートの接着界面に、気泡(遅れ泡)が生じているか否かを確認した。遅れ泡が見つからなかった場合を「〇」と評価し、遅れ泡が見つかった場合を「×」と評価した。
[0080](2)白化評価
実施例及び比較例で作製した積層シートから離型フィルムを剥がし、光学透明粘着シートの両面にガラス板を貼り合わせ、得られたガラス板/光学透明粘着シート/ガラス板の積層体を85°C85%の高温高湿環境下に24時間放置した。放置後の積層体について、ヘイズを測定した。ヘイズは、JIS K 7136に準拠した方法で、日本電色工業社製の濁度計「HazeMeter NDH2000」を用いて測定した。ヘイズが0.5%未満であった場合を「〇」と評価し、ヘイズが0.5~1.0%であった場合を「△」と評価し、ヘイズが1.0%を超えていた場合を「×」と評価した。
[0081](3)粘着力評価
図2に示した方法で180°剥離試験を行い、粘着力(N/25mm)を測定した。具体的には、実施例及び比較例で作製した積層シートを、長さ75mm×幅25mmに裁断し、試験片とした。この試験片の片面の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シート10側を、長さ75mm×幅25mmの基材31に貼り付け、圧力0.4MPaで30分間保持し、光学透明粘着シート10と基材31とを貼り合わせた。次に、基材31とは反対側の離型フィルムを剥離し、図2(a)に示すように、光学透明粘着シート10の基材31とは反対側の面に、厚み125μmのPETシート(帝人デュポンフィルム社製の「メリネックス(登録商標)S」)32を貼り合わせた。その後、常温・常湿(温度23°C、湿度50%)下で12時間放置した後、図2(b)に示すように、23°Cの環境下でPETシート32を30mm/分の速度で180°方向に引っ張り、光学透明粘着シート10を基材31との界面で剥離させ、光学透明粘着シート10の粘着力を測定した。なお、測定された粘着力は、基材31としてガラス板を使用したときの「対ガラス粘着力」である。
[0082]
[表1]
23
153
0001433758000001.jpg
[0083]上記表1から分かるように、アクリル粘着剤層の透湿度が500~800g/m
2
・hの範囲内であった実施例1~5に係る光学透明粘着シートは、信頼性評価において遅れ泡の発生が見られず、白化評価においてヘイズが0.5%以下であった。一方、アクリル粘着剤層の透湿度が500~800g/m
2
・hよりも小さかった比較例1に係る光学透明粘着シートは、白化評価においてヘイズが0.5%を超えたことから、85°C85%の高温高湿環境下に24時間放置することで白化したことが確認された。また、アクリル粘着剤層の透湿度が500~800g/m
2
・hよりも大きかった比較例2に係る光学透明粘着シートは、粘着力が小さかったことから、85°C85%の高温高湿環境下に24時間放置した後に遅れ泡が発生した。」
b 引用文献1の段落0068~0072、段落0082の表1に記載された実施例1の光学透明粘着シートに着目して整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「厚み25μmの第一のアクリル粘着剤層、厚み1000μmの熱硬化ポリウレタン層及び厚み25μmの第二のアクリル粘着剤層がこの順で積層された厚み1050μmの光学透明粘着シートであって、その粘着力は38.3N/25mmであり、また、前記第一のアクリル粘着剤層及び第二の粘着剤層は、アクリル系樹脂(綜研化学社製の「SK1838」と「SK1875」を固形分比5:5となるようにブレンドしたもの)100重量部に、イソシアネート系硬化剤(綜研化学社製の「DY-70」)を0.6重量部添加し、得られたアクリル系樹脂組成物を塗工、乾燥後、40°Cで加熱硬化して作製されたものである、光学透明粘着シート」
(イ)引用文献2
a 引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0079】
(実施例1)
まず、ポリオレフィンポリオール(出光興産社製の「EPOL(エポール、登録商標)」)75重量部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)系ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製の「デスモジュールI」)2.4重量部、エチレンオキシドユニットを含む変性ポリイソシアネート(東ソー社製の「コロネート4022」)4.6重量部、タッキファイヤー(出光興産社製の「アイマーブP-100」)17重量部、及び、触媒(ジラウリル酸ジメチル錫)1重量部を、往復回転式撹拌機アジターを用いて攪拌混合し、α比が1.60である熱硬化性ポリウレタン組成物を調製した。なお、熱硬化性ポリウレタン組成物において、IPDI系ポリイソシアネート(A)と変性ポリイソシアネート(B)との混合比(モル比)は、A:B=2:1であった。
【0080】
なお、東ソー社製の「コロネート4022」は、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートモノマーを出発物質とするポリイソシアネートに対して、エチレンオキシドユニットを1分子当たり平均3個以上有するエーテルポリオールを反応させて得られたものである。
【0081】
その後、得られた熱硬化性ポリウレタン組成物を一対の離型フィルム(表面に離型処理が施されたPETフィルム)によって挟んだ状態で搬送しつつ、炉内温度50~90°C、炉内時間数分間の条件で架橋硬化させ、離型フィルム付きのシートを得た。その後、加熱装置で10~15時間架橋反応させ、両面に離型フィルムが設けられた、熱硬化ポリウレタンを含有する中間粘着剤層を作製した。中間粘着剤層の厚みは1480μmであった。
【0082】
その一方で、アクリル系樹脂(綜研化学社製の「SK1838」)に、アクリル系樹脂組成物全体に対して、0.15重量%となるようにエポキシ系硬化剤(綜研化学社製の「E-AX」)を添加し、アクリル系樹脂組成物を作製した。得られたアクリル系樹脂組成物を離型フィルムにコンマコーターにて塗工した後、80°C~120°Cの乾燥炉において乾燥後、更にアクリル粘着剤塗工面に離型フィルムを重ねた。その後、40°Cで1週間加熱することにより硬化を完了させ、表面粘着剤層を作製した。表面粘着剤層の厚みは10μmであった。
【0083】
その後、上記離型フィルム付き表面粘着剤層を二枚と、上記離型フィルム付き中間粘着剤層を一枚とを準備した。一枚目の離型フィルム付き表面粘着剤層から一方の離型フィルムを剥離し、一枚目の表面粘着剤層の上記離型フィルムを剥離した面に中間粘着剤層を積層した。更に、二枚目の離型フィルム付き表面粘着剤層から一方の離型フィルムを剥離し、上記中間粘着剤層の上記一枚目の表面粘着剤層(第一の表面粘着剤層)を積層した面と反対側の面に、二枚目の表面粘着剤層(第二の表面粘着剤層)を積層した。これにより、離型フィルム、第一の表面粘着剤層、中間粘着剤層、第二の表面粘着剤層及び離型フィルムがこの順で積層された離型フィルム付き光学透明粘着シートを作製した。光学透明粘着シートの厚みは1500μmであった。
【0084】
(1)光学透明粘着シートの損失正接(tanδ)の測定
アントンパール社(Anton Paar Germany GmbH)製の粘弾性測定装置「Physica MCR301」を用いて、得られた光学透明粘着シートの損失正接を測定した。測定プレートは、PP12を用い、測定条件は、ひずみ0.1%、周波数1Hz、セル温度25°C~100°C(昇温速度3°C/分)とした。その結果、85°Cでの光学透明粘着シートの損失正接は0.72であった。
【0085】
(2)粘着力の測定
図3に示した方法で180°剥離試験を行い、粘着力(N/25mm)を測定した。具体的には、離型フィルム付き光学透明粘着シートを、長さ75mm×幅25mmに裁断し、試験片とした。この試験片の片面の離型フィルムを剥離した後、光学透明粘着シート10側を、長さ75mm×幅25mmのスライドガラス31に貼り付け、圧力0.4MPaで30分間保持し、光学透明粘着シート10とスライドガラス31とを貼り合わせた。次に、スライドガラス31とは反対側の離型フィルムを剥離し、図3(a)に示すように、光学透明粘着シート10のスライドガラス31とは反対側の面に、厚み125μmのPETシート(帝人デュポンフィルム社製の「メリネックス(登録商標)S」)32を貼り合わせた。その後、常温・常湿(温度23°C、湿度50%)下で12時間放置した後、図3(b)に示すように、PETシート32を180°方向に引っ張り、光学透明粘着シート10をスライドガラス31との界面で剥離させ、スライドガラス31に対する光学透明粘着シート10の粘着力を測定した。
【0086】
なお、測定は、スライドガラス31を使用したときの「対ガラス粘着力」について行われた。また、貼り合わせ直後(23°C)の粘着力(初期粘着力)と、貼り合わせてから85°Cの環境に2時間投入した後の粘着力(高温試験後粘着力)とが測定された。各測定は、各実施例及び比較例に対して、2つの試験片を準備して行われ、得られた2つの測定値の平均値を、各実施例及び比較例における測定結果とした。」
「【0088】
【表1】
18
153
0001433758000002.jpg
【0089】
なお、上記表1において、「α比」は、ポリオール成分由来のOH基のモル数/ポリイソシアネート成分由来のNCO基のモル数である。
【0090】
(3)ベゼルオン貼り合わせ試験
実施例1~10及び比較例1~6に係る光学透明粘着シートを用いて、以下の方法により、ベゼルオン貼合構造を有する積層体を作製した。
液晶パネルの外縁上に枠状のベゼルを重ねて高さ50μmの段差を形成した後、液晶パネル及びベゼルで形成された段差を覆うように、光学透明粘着シートを液晶パネル上に100Paの減圧雰囲気下で貼合した。続いて、液晶パネル上に貼り付けた光学透明粘着シートの上に、厚み3mmのカバーガラスを100Paの減圧雰囲気下、200g/cm2の圧力で圧着した。以上のようにして、外縁上に枠状のベゼルを配置した液晶パネルとカバーガラスとを光学透明粘着シートによって貼り合わせてなる積層体を得た。
また、同様の方法により、ベゼルの厚み(段差高さ)を200μm、500μm、700μm、1000μm及び1300μmとした積層体(カバーガラス(CG)/光学透明粘着シート/液晶パネル)をそれぞれ作製した。
【0091】
各積層体をカバーガラス側(ポリカーボネート側)から観察し、剥がれ及び浮き(気泡)が発生しなかった場合を「○」、段差部付近の2mm以下の引き剥がれを保持できている場合を「△」、剥がれ及び浮きのいずれかが発生した場合、段差を追従できなかった場合、を「×」と評価した。評価結果を下記表2に示した。
【0092】
(4)ヒートサイクル試験
上記(3)ベゼルオン貼り合わせ試験で得られた各積層体について、日立製作所製のヒートショック試験装置(ES-56L)を用いてヒートサイクル試験を行った。上記ヒートサイクル試験は、-40°Cで30分保持し、85°Cで30分保持することを1サイクルとし、1000サイクル行った。剥がれ及び浮き(気泡)が発生しなかった場合を「○」、段差部付近の2mm以下の引き剥がれを保持できている場合を「△」、剥がれ及び浮きのいずれかが発生した場合、段差を追従できなかった場合を「×」と評価した。
【0093】
【表2】
23
147
0001433758000003.jpg
【0094】
表2から分かるように、実施例1~10に係る光学透明粘着シートは、ベゼル段差50~1000μmにおいて、上記(3)ベゼルオン貼り合わせ試験及び(4)ヒートサイクル試験の評価が良好であった。
85°Cにおける光学透明粘着シートの損失正接が所定の範囲であり、所定の膜厚を有する表面粘着剤層を中間粘着剤層の両面に設けることにより、柔軟性に優れ、高温・高湿環境下における信頼性に優れることが確認された。
なお、実施例6及び7では、85°Cにおける光学透明粘着シートの損失正接が0.58未満であったために、段差高さが1300μmでは、弾性率が高く段差追従性において僅かに劣っており、実施例8及び9では、85°Cにおける光学透明粘着シートの損失正接が0.45未満であったために、段差高さが1000μmでは、弾性率が高く段差追従性において僅かに劣っており、段差高さ1300μmでは、段差を追従することができなかった。
一方で、比較例1では、85°Cにおける光学透明粘着シートの損失正接が高いために、上記(4)ヒートサイクル試験後に中間粘着剤層が溶解して貼合することができなかった。また、比較例3では、85°Cにおける光学透明粘着シートの損失正接が低いために、中間粘着剤層が硬すぎて、上段差高さが50μm以上では、段差を追従することができず、上記(4)ヒートサイクル試験において、段差50μm以上では光学透明粘着シートとベゼルとが剥離した。
また、比較例2では、表面粘着剤層が薄すぎたため、上記(4)ヒートサイクル試験後にディレイバブルが発生し、比較例4では、表面粘着剤層が厚すぎために、上記(3)ベゼルオン貼り合わせ試験において、段差高さが200μm以上では段差を追従することができず、上記(4)ヒートサイクル試験において、段差高さが50μm以上では光学透明粘着シートとベゼルとが剥離した。
また、表面粘着剤層を形成しなかった比較例5では、上記(3)ベゼルオン貼り合わせ試験では、段差高さが50μm以上において段差追従性に劣っており、段差高さが1000μm以上において粘着力不足で貼合することができなかった。また、上記(4)ヒートサイクル試験においても、段差高さが200μm以上では光学透明粘着シートとベゼルとが剥離した。
また、表面粘着剤層を形成しなかった比較例6においても、段差高さが1000μm以上において段差を追従することができず、上記(4)ヒートサイクル試験においても、段差高さ1000μm以上では光学透明粘着シートとベゼルとが剥離した。」
b 引用文献2の段落0079~0086、段落0088の表1に記載された実施例1の光学透明粘着シートに着目して整理すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「厚み10μmの第一の表面粘着剤層、厚み1480μmの熱硬化ポリウレタンを含有する中間粘着剤層及び厚み10μmの第二の表面粘着剤層がこの順で積層された、厚み1500μmの光学透明粘着シートであって、その対ガラス初期粘着力は87.6N/25mmであり、また、前記第一の表面粘着剤層及び第二の表面粘着剤層は、アクリル系樹脂(綜研化学社製の「SK1838」)にアクリル系樹脂組成物全体に対して0.15重量%となるようにエポキシ系硬化剤(綜研化学社製の「E-AX」)を添加し、得られたアクリル系樹脂組成物を塗工、乾燥後、40°Cで加熱硬化して作製されたものである、光学透明粘着シート」
(ウ)引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材(A)の一方の面上に、樹脂(b1)及び紫外線吸収剤を含有する粘着剤組成物(x)から形成される粘着剤層(B1)を有し、透明基材(A)のもう一方の面上に樹脂(b2)を含有する粘着剤組成物(y)から形成される粘着剤層(B2)を有する、表示画面用粘着シートであって、該紫外線吸収剤の含有量が、樹脂(b1)100質量部に対して、0.1~30質量である、表示画面用粘着シート。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された保護フィルムは、貼着層にシリコーン系粘着剤を使用しているが、粘着剤及び添加剤の組み合わせによってはヘーズが上昇し視認性が劣るという問題があった。
ところで、このような表示装置の光源としてLEDが使用される場合、青色LEDも多く用いられることから、光源からの出射光線に含まれる380~495nmの波長の青色光が強くなる。そして、かかる青色光は、ブルーライトと呼ばれ、可視光の中でも波長が短くかつ高エネルギーを有しており、網膜に潜在的に有害であると認識されている。
本発明は、このような状況下に事情に鑑みてなされたものであり、ヘーズを抑えることができるために視認性がよく、ブルーライトを遮蔽することができる表示画面用粘着シート、積層体、それらを用いた表示体及びその画面保護方法を提供することを目的とするものである。」
「【0010】
(粘着剤層(B1))
本発明の粘着シートは、透明基材(A)の面上に、樹脂(b1)及び紫外線吸収剤を含有する粘着剤組成物(x)から形成される粘着剤層(B1)を有する。なお、本発明の粘着シートの粘着剤層(B1)側を後述する硬質平面板と貼合することが好ましい。
【0011】
(樹脂(b1))
本発明に係る粘着剤組成物(x)は、樹脂(b1)を含有する。樹脂(b1)としては、特に制限は無いが、アクリル系粘着剤を含有することが好ましい。アクリル系粘着剤を
含有することで、紫外線吸収剤を含有しても、ヘーズが上昇することがない。
樹脂(b1)を構成する樹脂成分の中で、アクリル系粘着剤の含有量は、好ましくは60~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは95~100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
樹脂(b1)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。」
「【0025】
紫外線吸収剤の含有量は、前記樹脂(b1)100質量部(固形分)に対して、0.1~30質量部であり、好ましくは0.1~25質量部、より好ましくは0.5~20質量部、更に好ましくは1.0~15質量部である。前記紫外線吸収剤の含有量が、0.1質量部以上であれば、ブルーライトの透過を抑制することができ、30質量部以下であれば、ヘーズを抑えることができる。」
(エ)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有するアクリル系粘着剤層を有する粘着シートであり、
前記アクリル系ポリマーは、アクリロイル骨格を含む(メタ)アクリロイル系官能基を含有する側鎖を有せず、
前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び水酸基含有モノマーを必須のモノマー構成単位として含み、且つ窒素原子含有モノマー及び脂環構造含有モノマーから選択された少なくとも1種のモノマーを必須のモノマー構成単位として含み、
前記粘着剤層が、紫外線吸収剤として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を、前記粘着剤層のベースポリマー100重量部に対して0.25~0.5重量部含むか、又は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、前記粘着剤層のベースポリマー100重量部に対して0.5~3.6重量部含み、
b
*
が0.42以下であり、
波長350nmの光の透過率が5%以下であることを特徴とする光学用粘着シート。」
「【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、このような表示装置と組み合わせて用いられるタッチパネルなどの入力装置が広く用いられるようになってきている。これらの表示装置や入力装置等においては、光学部材を貼り合わせる用途に、粘着剤層を有する粘着シートが使用されている。例えば、タッチパネルと各種表示部材や光学部材の貼り合わせには、透明な粘着シートが使用されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
上記表示装置や入力装置等に用いられる光学部材には、紫外線による劣化が懸念されるものがある。このため、上記粘着シートには、紫外線吸収性(紫外線カット性、UVカット性)が求められる場合がある。このような粘着シートとして、粘着剤層に紫外線吸収剤を含む透明粘着シート(特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2003-238915号公報
【特許文献2】 特開2003-342542号公報
【特許文献3】 特開2004-231723号公報
【特許文献4】 特開2013-75978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着シートにおいて、紫外線吸収性を付与するために粘着剤層に紫外線吸収剤を添加すると、黄色化して、光学特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0006】
近年、表示装置や入力装置等において、薄型化、小型化、画面の大型化、高機能化等が求められており、また、フレキシブル化なども求められるようになってきている。このため、表示装置や入力装置等で用いられる光学部材も上記の特性に対応できることが求められるようになってきており、光学部材の材料や構造等に変化が生じてきている。ゆえに、このような光学部材に用いられる粘着シートも、当然に、光学特性を維持しつつ、対応することが求められるようになってきている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、光学特性及び紫外線吸収性の両方を、高いレベルで有する光学用粘着シートを提供することにある。」
「【0101】
粘着剤層A(特にアクリル系粘着剤層A)中の上記紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されないが、波長350nmの光の透過率を制御して高い紫外線吸収性を得る点より、ベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.05重量部以上であり、さらに好ましくは0.1重量部以上である。また、上記紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の添加に伴う粘着剤の黄色化現象の発生を抑制し、優れた光学特性、高い透明性、及び、優れた外観特性を得る点より、ベースポリマー100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは9重量部以下であり、さらに好ましくは8重量部以下である。」
「【実施例】
【0145】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、配合部数(重量部)は、全て固形分(不揮発分)換算の値である。なお、実施例8~11、14、16、18は参考例として記載するものである。
【0146】
(ポリマー溶液の調製例1)
モノマー成分として、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA):63重量部、メタクリル酸メチル(MMA):9重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP):15重量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA):13重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル:175重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として2,2 ́-アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部を加え、63°Cに昇温して10時間反応させた。その後、酢酸エチルを加え、固形分濃度36重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
なお、上記アクリル系ポリマー溶液におけるアクリル系ポリマーの重量平均分子量は、85万であった。
【0147】
(モノマー混合物の部分重合物(プレモノマー組成物)の調製例1)
アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA):28.5重量部、イソステアリルアクリレート(ISA):28.5重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA):22重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA):21重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、BASF社製):0.05重量部、及び、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製):0.5重量部を配合した後、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30°C)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
【0148】
(粘着剤組成物の調製例1)
下記表1及び表2に基づき、ポリマー溶液の調製例1で得られた上記アクリル系ポリマー溶液に、架橋剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤を加えて混合し、粘着剤組成物1~16、24及び25を得た。下記表1に、粘着剤組成物1~16の組成を示し、下記表2に粘着剤組成物24及び25の組成を示す。
【表1】
46
130
0001433758000004.jpg
【表2】
47
73
0001433758000005.jpg
表1及び表2において、配合部数(重量部)は、全て固形分(不揮発分)換算の値である。
また、表1及び表2において、「タケネートD110」は「イソシアネート系架橋剤(商品名「タケネート D110N」、三井化学株式会社製)」であり、「KBM403」は「シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)」であり、「Tinuvin477」は「紫外線吸収剤(商品名「Tinuvin477」、BASF社製)」であり、「Tinuvin384-2」は「紫外線吸収剤(商品名「Tinuvin384-2」、BASF社製)」であり、「ケミソーブ111」は「紫外線吸収剤(商品名「KEMISORB111」、ケミプロ化成株式会社製)」であり、「SEESORB106」は「紫外線吸収剤(商品名「SEESORB106」、シプロ化成株式会社製)」であり、「Tinuvin329」は「紫外線吸収剤(商品名「Tinuvin329」、BASF社製)」であり、「Tinuvin928」は「紫外線吸収剤(商品名「Tinuvin928」、BASF社製)」である。
【0149】
(粘着剤組成物の調製例2)
下記表3に基づき、上記プレポリマー組成物に、架橋剤、光重合開始剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤を加えて混合し、粘着剤組成物17~23を得た。下記表3に、粘着剤組成物17~23の組成を示す。
【表3】
47
116
0001433758000006.jpg
表3において、配合部数(重量部)は、全て固形分(不揮発分)換算の値である。
また、表3において、「NKエステル A-HD-N」は「商品名「NKエステル A-HD-N」(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、2官能アクリレート、架橋剤、新中村化学工業株式会社製)」であり、「Irg.651」は「光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、BASF社製)」であり、「Irg819」は「光重合開始剤(商品名「イルガキュア819」、BASF社製)」であり、「KBM403」は「シランカップリング剤(商品名「KBM403」、信越化学工業株式会社製)」であり、「Tinuvin384-2」は「紫外線吸収剤(商品名「Tinuvin384-2」、BASF社製)」である。
【0150】
(実施例1)
粘着剤組成物3を、表面が剥離処理されたポリエチレンテレフタレートセパレーター(PETセパレーター)(商品名「MRF75」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理面上に、塗布して、粘着剤組成物層を得た。次に、130°Cで3分間の加熱乾燥を行い、粘着剤層を形成させた。そして、23°Cで120時間エージングを行い、粘着シートを得た。
上記粘着シートは、粘着剤層の一方の面がセパレーターで保護された構成を有する基材レスタイプの両面粘着シートであった。なお、上記粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0151】
(実施例2)
粘着剤組成物として粘着剤組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0152】
(実施例3)
粘着剤組成物として粘着剤組成物5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0153】
(実施例4)
粘着剤組成物として粘着剤組成物6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0154】
(実施例5)
粘着剤組成物として粘着剤組成物7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0155】
(実施例6)
粘着剤組成物として粘着剤組成物8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0156】
(実施例7)
粘着剤組成物として粘着剤組成物9を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0157】
(実施例8)
粘着剤組成物として粘着剤組成物10を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0158】
(実施例9)
粘着剤組成物として粘着剤組成物11を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0159】
(実施例10)
粘着剤組成物として粘着剤組成物15を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0160】
(実施例11)
粘着剤組成物として粘着剤組成物16を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0161】
(実施例12)
粘着剤組成物17を、ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーター(商品名「MRF50」、三菱樹脂株式会社製)上に塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次いで、上記粘着剤組成物層上に、PETセパレーター(商品名「MRF38」、三菱樹脂株式会社製)を設け、上記粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。そして、MRF50/粘着剤組成物層/MRF38の積層体を得た。
次に、この積層体に対して、積層体の上面(MRF38側)から、ブラックライト(株式会社東芝製)にて、照度3mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。さらに90°Cの乾燥機で2分間乾燥処理を行い、残存モノマーを揮発させた。そして、粘着シートを得た。
上記粘着シートは、粘着剤層のみからなり、粘着剤層の両面がセパレーターで保護されている基材レスタイプの両面粘着シートであった。なお、上記粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0162】
(実施例13)
粘着剤組成物として粘着剤組成物18を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0163】
(実施例14)
粘着剤組成物として粘着剤組成物19を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0164】
(実施例15)
粘着剤組成物として粘着剤組成物20を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0165】
(実施例16)
粘着剤組成物として粘着剤組成物21を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0166】
(実施例17)
粘着剤組成物として粘着剤組成物22を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0167】
(実施例18)
粘着剤組成物として粘着剤組成物23を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、50μmであった。
【0168】
(実施例19)
粘着剤組成物として粘着剤組成物7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、100μmであった。
【0169】
(実施例20)
粘着剤組成物として粘着剤組成物24を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、100μmであった。
【0170】
(実施例21)
粘着剤組成物として粘着剤組成物25を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートを得た。上記粘着シートの粘着剤層の厚みは、100μmであった。」
(オ)引用文献5
引用文献5には、次の事項が記載されている。
「【0007】
ところで、上記のようなディスプレイを備えたモバイル電子機器は、屋外で使用されることが多いため、太陽光からの紫外線を浴び易い。そのため、上記の粘着剤層は、紫外線の照射により劣化して、粘着力が低下する等の懸念がある。また、上記粘着剤層よりも深い位置に存在する内部部材も、紫外線の悪影響を受ける場合がある。例えば、上記粘着剤層よりも深い位置には、ハードコート層を有するプラスチックフィルムが存在する場合があるが、紫外線の影響により、当該ハードコート層がプラスチックフィルムから剥離してしまうことがある。」
「【0070】
(8)粘着剤層の物性
(8-1)ヘイズ値
本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層のヘイズ値は、前述した通り2%以下であり、好ましくは1.5%以下であり、特に好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下である。粘着剤層のヘイズ値が2%以下であると、透明性が非常に高く、光学用途(表示体用)として好適である。かかるヘイズ値は、紫外線吸収剤(C)の種類を適宜選択することにより、達成することが可能である。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。」
ウ 対比
(ア)本件補正発明と引用発明1との対比
引用発明1の「第一のアクリル粘着剤層」、「熱硬化ポリウレタン層」、「第二のアクリル粘着剤層」及びこれらが「この順で積層された」「光学透明粘着シート」は、それぞれ、本件補正発明の「第一のアクリル粘着剤層」、「中間粘着剤層」、「第二のアクリル粘着剤層」及びそれらを「この順に有」する「光学透明粘着シート」に相当する。
引用発明1の「第一のアクリル粘着剤層」及び「第二のアクリル粘着剤層」は、「光学透明粘着シート」の両表面を構成することも明らかであるから、本件補正発明の「第一の表面を構成する第一のアクリル粘着剤層」及び「第二の表面を構成する第二のアクリル粘着剤層」に相当する。
引用発明1の「第一のアクリル粘着剤層」及び「第二のアクリル粘着剤層」は、いずれも「厚み25μm」であるから、本件補正発明の「前記第一のアクリル粘着剤層及び前記第二のアクリル粘着剤層の各厚みは、3μm以上、40μm以下」を充足する。
引用発明1の「光学透明粘着シート」は、「厚み1050μm」であり、「粘着力は38.3N/25mm」であるから、本件補正発明の「光学透明粘着シート」の「総厚が200~2100μmであり、接着力が20N/25mm以上」を充足する。
以上から、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「第一の表面を構成する第一のアクリル粘着剤層と、中間粘着剤層と、第二の表面を構成する第二のアクリル粘着剤層とをこの順に有し、
前記第一のアクリル粘着剤層及び前記第二のアクリル粘着剤層の各厚みは、3μm以上、40μm以下であり、
総厚が200~2100μmであり、
接着力が20N/25mm以上であることを特徴とする光学透明粘着シート。」
<相違点1>
本件補正発明は、「前記第一のアクリル粘着剤層及び前記第二のアクリル粘着剤層は、アクリル系樹脂100重量部に対して、0.1~3重量部の紫外線吸収剤が配合されてなるものであ」るのに対して、引用発明1は、アクリル系樹脂に対して、紫外線吸収剤が配合されていない点
(イ)本件補正発明と引用発明2との対比
引用発明2の「アクリル系樹脂組成物を塗工、乾燥後、40°Cで加熱硬化して作製された」「第一の表面粘着剤層」、「熱硬化ポリウレタンを含有する中間粘着剤層」、「アクリル系樹脂組成物を塗工、乾燥後、40°Cで加熱硬化して作製された」「第二の表面粘着剤層」及びこれらが「この順で積層された」「光学透明粘着シート」は、それぞれ、本件補正発明の「第一の表面を構成する第一のアクリル粘着剤層」、「中間粘着剤層」、「第二の表面を構成する第二のアクリル粘着剤層」及びこれらを「この順に有」する「光学透明粘着シート」に相当する。
引用発明2の「第一の表面粘着剤層」及び「第二の表面粘着剤層」は、いずれも「厚み10μm」であるから、本件補正発明の「前記第一のアクリル粘着剤層及び前記第二のアクリル粘着剤層の各厚みは、3μm以上、40μm以下」を充足する。
引用発明2の「光学透明粘着シート」は、「厚み1500μm」であり、「対ガラス初期粘着力は87.6N/25mm」であるから、本件補正発明の「光学透明粘着シート」の「総厚が200~2100μmであり、接着力が20N/25mm以上」を充足する。
以上から、本件補正発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「第一の表面を構成する第一のアクリル粘着剤層と、中間粘着剤層と、第二の表面を構成する第二のアクリル粘着剤層とをこの順に有し、
前記第一のアクリル粘着剤層及び前記第二のアクリル粘着剤層の各厚みは、3μm以上、40μm以下であり、
総厚が200~2100μmであり、
接着力が20N/25mm以上であることを特徴とする光学透明粘着シート。」
<相違点1’>
本件補正発明は、「前記第一のアクリル粘着剤層及び前記第二のアクリル粘着剤層は、アクリル系樹脂100重量部に対して、0.1~3重量部の紫外線吸収剤が配合されてなるものであ」るのに対して、引用発明2は、アクリル系樹脂に対して、紫外線吸収剤が配合されていない点
エ 相違点についての検討
(ア)相違点1について
表示装置等に用いられる光学部材を貼り合わせる用途に使用される粘着シートにおいて、光学部材を劣化させる紫外線のカットや網膜に有害なブルーライトの遮蔽のために紫外線吸収剤を配合することが求めれる一方、その配合により生じる黄色化、ヘーズの上昇等の光学特性への悪影響を抑える必要があることが知られており(例えば、引用文献3の段落0004、引用文献4の段落0002~0007参照)、すなわち、当該技術分野において、光学透明粘着シートの光学特性を維持しつつ、紫外線吸収性を付与することは周知の課題である。
そして、当該周知の課題に関して、引用文献3には、粘着剤層を形成する粘着剤組成物に樹脂及び紫外線吸収剤を含有する場合に、前記樹脂として「アクリル系粘着剤を含有することで、紫外線吸収剤を含有しても、ヘーズが上昇することがない」(段落0011)、「紫外線吸収剤の含有量は、前記樹脂・・・100重量部(固形分)に対して、0.1~30質量部であり・・・0.1質量部以上であれば、ブルーライトの透過を抑制することができ、30質量部以下であれば、ヘーズを抑えることができる」(段落0025)と記載されている。
また、引用文献4には、「粘着剤層A(特にアクリル系粘着剤層A)中の上記紫外線吸収剤の含有量は・・・高い紫外線吸収性を得る点より、ベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく・・・さらに好ましくは0.1重量部以上で・・・紫外線吸収剤の添加に伴う粘着剤の黄色化現象の発生を抑制し、優れた光学特性、高い透明性、及び、優れた外観特性を得る点より、ベースポリマー100質量部に対して、10重量部以下であることが好ましく・・・さらに好ましくは8重量部以下である」(段落0101)と記載されており、具体的に、アクリル系ポリマー溶液100重量部(固形分)に対して、紫外線吸収剤を0.15重量部(調製例2)、0.25重量部(調製例3、14)、0.5重量部(調製例4、5、15)等の量で含有する粘着剤組成物の複数の調製例及び当該粘着剤組成物をPETセパレーターに塗布して得た厚み50μmの粘着剤層の複数の実施例(段落0145~0170)が記載されている。
そうすると、引用発明1においても、周知の課題である、光学透明粘着シートの光学特性、透明性を維持しつつ、紫外線吸収性を付与することを目的として、各粘着剤層、特に第一及び第二のアクリル粘着剤層に対して、黄色化やヘーズを抑え、透明性を維持しつつ、所望の紫外線吸収性が得られる量の紫外線吸収剤を配合することは当業者が容易に想到し得ることである。また、その配合量の数値範囲を最適化又は好適化することは当業者の通常の創作能力の発揮であって、例えば、引用文献4の調製例、実施例等を参考に、アクリル系樹脂100重量部に対して、0.1~3重量部とすることにも格段の困難性はない。
(イ)相違点1’について
前記(ア)で相違点1について検討したのと同様に、引用発明2においても、光学透明粘着シートの光学特性、透明性を維持しつつ、紫外線吸収性を付与することを目的として、各粘着剤層、特にアクリル系樹脂組成物から作製された第一及び第二の表面粘着剤層に対して、黄色化やヘーズを抑え、透明性を維持しつつ、所望の紫外線吸収性が得られる量の紫外線吸収剤を配合することは当業者が容易に想到し得ることである。また、その配合量の数値範囲を最適化又は好適化することは当業者の通常の創作能力の発揮であって、例えば、引用文献4の調製例、実施例等を参考に、アクリル系樹脂100重量部に対して、0.1~3重量部とすることにも格段の困難性はない。
オ 効果について
本願明細書の段落0019には、「本発明の光学透明粘着シートによれば、樹脂基材とOCAシートとの接着界面で高い接着力を有し、かつ、被着体の膨張・収縮への追従性、適度な透湿性、及び、車載用途として使用可能な高耐候性を有する光学透明粘着シートを得ることができ、高温・高湿環境下における白化が抑制された光学透明粘着シートであって、紫外線カット能を有する光学透明粘着シートを得ることができる」と記載されており、また、同段落0084~0104には、本件補正発明1の実施態様に相当する実施例1~4において、耐候性評価、紫外線カット能、分散度(HAZE)、接着力、信頼性評価(高温・高湿環境下での気泡(遅れ泡)の発生頻度)の評価結果に優れていたことが示されている。
これに対し、引用文献1の段落0079~0083には、実施例1の光学透明粘着シート(引用発明1)について、適度な透湿度(586g/m
2
・h)を有し、信頼性評価(高温・高湿環境下での気泡(遅れ泡)の発生頻度)、白化評価、粘着力評価の評価結果に優れていたことが示されており、引用文献2の段落0090~0094には、実施例1の光学透明粘着シート(引用発明2)について、粘着力測定、ベゼルオン貼り合わせ試験及びヒートサイクル試験(追従性試験)の評価結果に優れることが示されている。
そして、前記エ(ア)、(イ)で検討したとおり、引用発明1、2の各粘着剤層、特に第一及び第二のアクリル粘着剤層に対して、紫外線吸収剤を配合し、その配合量の数値範囲を最適化又は好適化することで、黄色化やヘーズを抑えながら、所望の紫外線カット能や耐候性が得られることは明らかである。
以上から、本件補正発明により、その構成から予測し得ない顕著な効果が奏されるとはいえない。
カ 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年5月2日提出の審判請求書において、「引用文献3~5に基づくと、当業者であれば、紫外線吸収剤を含む粘着剤層の厚みを、紫外線吸収剤を含まない粘着剤層の厚みと同程度にすることは想定し得ず、紫外線吸収剤を含まない粘着剤層の厚みと同程度にすることは想定し得ず、紫外線吸収剤を配合する場合は、その粘着剤層の厚みを、紫外線吸収剤を配合しない場合よりも厚みを大きくする必要があると考えるはずです。より具体的には、紫外線吸収剤を含む粘着剤層の厚みは50μm以上である又は該厚みを50μm以上にする必要があると考えるはずです。」、「そもそも総厚が200μm以上というある程度の厚みのある粘着シートにおいて、紫外線吸収剤を含む粘着剤層の厚みを40μm以下に調整することの示唆等は、引用文献1~5からは一切読み取れません。」、「このように厚みが調整された紫外線吸収剤を含む粘着剤層を、OCAシートの第一及び第二の各表面に配置することの示唆等も、引用文献1~5には無いと言えます。」、「本願明細書の実施例では、上記3つの特徴を併せ持つOCAシートが、OCAシート全体として充分な厚みを有し、かつ各種物性に優れることが示されています。このような本願発明による効果は、上述したように上記特徴b及びcに関する記載や示唆がない引用文献1及び2や、紫外線吸収剤を含む粘着剤層の厚みが上述cで規定された範囲よりも大きく、かつ総厚が小さい粘着シートに関する引用文献3~5に基づいて当業者が予測できるものではありません。」と主張している。
しかしながら、引用文献3、4では、紫外線吸収性の観点と光学特性、透明性の観点とのバランスを考慮して、紫外線吸収剤の配合量を設定することが示唆されており(特に、引用文献3の段落0025、引用文献4の段落0101参照)、審判請求人が主張するように、粘着剤層に紫外線吸収剤を配合する場合に、粘着剤層の厚さを所定以上とする必要があると直ちに認識されるものとはいえない。また、粘着剤層の厚さが増すほど透明性が低下することは当業者の技術常識であるから、粘着剤層の厚さに応じて紫外線吸収剤の配合量の上限を設定すべきことも明らかである。
以上のとおりであるから、前記エ(ア)、(イ)で検討したとおり、引用発明1、2において、各粘着剤層、特に第一及び第二のアクリル粘着剤層に対して、その厚さはそのままに、黄色化やヘーズを抑え、透明性を維持しつつ、所望の紫外線吸収性が得られる量の紫外線吸収剤を配合することは当業者が容易に想到し得ることであり、その結果得られる構成において、引用発明1、2が有する接着力、追従性、適度な透湿度の効果に加え、黄色化やヘーズを抑え、透明性を維持しながら、所望の紫外線カット能や耐候性が得られることも明らかである。
したがって、前記審判請求人の主張はいずれも採用できない。
キ 独立特許要件についてのまとめ
前記ア~カのとおり、本件補正発明は、引用発明1又は引用文献2に記載された発明及び引用文献3、4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものであり、また、同法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
令和6年11月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年7月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載したとおりのものである。
2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由1を含むものである。
理由1(進歩性)この出願の請求項1~7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記3の引用文献1又は2に記載された発明及び引用文献3~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3.引用文献
原査定の拒絶の理由の理由1で引用された引用文献1~5の記載事項は、前記第2の[理由]2(3)イに記載したとおりである。
4.対比・判断
本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「第一のアクリル粘着剤層」、「熱硬化ポリウレタン層」及び「第二のアクリル粘着剤層」は、いずれも熱硬化して作製されたものであって、本願発明の「第一のアクリル粘着剤層」、「熱硬化ポリウレタン層」及び「第二のアクリル粘着剤層」が「熱硬化型」であることに相当するから、両者は相違点1のみで相違する。
また、本願発明と引用発明2を対比すると、同様に、両者は相違点1’のみで相違する。
そうすると、本願発明も、前記第2 2(3)で検討したのと同様に、引用発明1又は引用文献2に記載された発明及び引用文献3、4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
以上のとおり、本願発明は、引用文献1又は2に記載された発明及び引用文献3、4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
してみると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。