結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024018981 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件出願(以下「本願」という。)は、令和3年10月8日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和6年 4月 2日付け:拒絶理由通知書(最初)
令和6年 5月 7日 :面接
令和6年 5月22日提出:意見書、手続補正書
令和6年 8月19日付け:拒絶査定
令和6年11月26日 :電話応対
令和6年11月27日提出:審判請求書、手続補正書
令和7年 3月 3日作成:前置報告書
令和7年12月22日 :面接
[補正の却下の決定の結論]
令和6年11月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正するものである(下線部は補正箇所を示す。)。
(1)本件補正前
「被検査物を搬送する搬送手段と、
前記被検査物にX線を照射するX線照射手段と、
搬送中の前記被検査物を透過したX線の光子のエネルギーを検出するX線検出手段と、
前記X線検出手段における、一定時間ごとの、複数の異なるエネルギー領域ごとの検出光子数を計数する計数手段と、
前記エネルギー領域ごとに、前記被検査物からの前記検出光子数に基づくシングルエナジーの検出データを生成するシングルエナジー検出データ生成手段と、
検査対象の検出データの選択設定を受け付ける設定手段と、
前記設定手段において、デュアルエナジーの検出データが選択設定された場合に、いずれか2個の前記シングルエナジーの検出データからデュアルエナジーの検出データを生成するデュアルエナジー検出データ生成手段と、
前記設定手段において選択設定された前記検出データを用いて検査を実現する検査実現手段と、
を備え、
前記設定手段は、1個以上の前記シングルエナジーの検出データ、前記デュアルエナジーの検出データ、及び前記デュアルエナジーの検出データと1個以上の前記シングルエナジーの検出データとの組のうち2以上からなる選択肢からいずれかを選択設定可能であり、
前記設定手段は、前記選択肢のいずれを選択設定するかが予め定められた複数の異なる被検査物の中から、検査対象とする被検査物の選択を受け付けることにより、選択された被検査物に対応する選択設定を受け付ける
X線検査装置。」
(2)本件補正後
「被検査物を搬送する搬送手段と、
前記被検査物にX線を照射するX線照射手段と、
搬送中の前記被検査物を透過したX線の光子のエネルギーを検出するX線検出手段と、
前記X線検出手段における、一定時間ごとの、複数の異なるエネルギー領域ごとの検出光子数を計数する計数手段と、
前記エネルギー領域ごとに、前記被検査物からの前記検出光子数に基づくシングルエナジーの検出データを生成するシングルエナジー検出データ生成手段と、
検査対象の検出データの選択設定を受け付ける設定手段と、
前記設定手段において、デュアルエナジーの検出データが選択設定された場合に、いずれか2個の前記シングルエナジーの検出データからデュアルエナジーの検出データを生成するデュアルエナジー検出データ生成手段と、
前記設定手段において選択設定された前記検出データを用いて検査を実現する検査実現手段と、
を備え、
前記設定手段は、1個以上の前記シングルエナジーの検出データ、前記デュアルエナジーの検出データ、及び前記デュアルエナジーの検出データと1個以上の前記シングルエナジーの検出データとの組のうち
、前記計数手段において検出光子数の計数対象とした全てのエネルギー領域を網羅する1個のエネルギー領域の前記シングルエナジーの検出データを選択肢として少なくとも含む、
2以上からなる選択肢からいずれかを選択設定可能であり、
前記設定手段は、前記選択肢のいずれを選択設定するかが予め定められた複数の異なる被検査物の中から、検査対象とする被検査物の選択を受け付けることにより、選択された被検査物に対応する選択設定を受け付ける
X線検査装置。」
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「検査対象の検出データの選択設定を受け付ける設定手段」における「選択設定可能」な「選択肢」について、「
前記計数手段において検出光子数の計数対象とした全てのエネルギー領域を網羅する1個のエネルギー領域の前記シングルエナジーの検出データを選択肢として少なくとも含む
」ことを限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された国際公開第2018/066364号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審において付した。以下同じ。)。
a 「[0012] 図1に本発明のX線検査装置100の機能ブロック図を示す。
X線検査装置100は、X線照射手段110、搬送手段120、X線検出手段130、閾値設定手段140、記憶手段141、表示手段150、入力手段160、及び検査手段170を備える。
[0013]
X線照射手段110は、搬送手段120に載置された被測定物Wに向けてX線を照射する
。
搬送手段120は、
例えばX線の透過性が高いベルトコンベアであり、対向配置されたX線照射手段110とX線検出手段130との間に配置されて、
載置された被測定物Wを搬送する。X線照射手段110から被測定物Wに向けて照射されたX線は、被測定物Wと搬送手段120による吸収を受けつつこれらを透過した後、X線検出手段130に到達する。
」
b 「[0015] 本実施形態では、
X線の光子の到達ごとに当該光子のエネルギーを所定の閾値に照らして1以上のエネルギー領域に弁別して光子を検出することが可能
な直接変換方式の
X線ラインセンサが採用され
る。X線を電気信号に直接変換可能なX線検出素子としては、例えばCdTeなどの半導体素子が挙げられる。X線検出手段130では、X線ラインセンサを構成する個々のX線検出素子において、到達したX線の光子によって電子正孔対が生成され、その電荷を増幅して得られる検出信号のエネルギーを所定の閾値と比較し、
所定時間内に閾値を超えた又は超えなかった回数を、当該閾値で画されるエネルギー領域での当該X線検出素子のフォトンカウンティング数(検出した光子の数)として出力する。
なお、検出信号のエネルギーが所定の閾値を超えた回数の代わりに、エネルギーが所定の閾値を超えた又は超えなかった検出信号の電荷量を所定時間で積分した積分電荷量を、当該閾値で画されるエネルギー領域での当該X線検出素子の積分電荷量として出力してもよい。以下では、出力がフォトンカウンティング数の場合を例にとって説明する。
[0016]
X線検出手段130は、光子のエネルギーを弁別してフォトンカウンティングするエネルギー領域の個数に応じた個数の所定の閾値を設定でき
るように構成される。エネルギー領域が2個の場合、例えば、図2(a)に示すように2つの閾値(低エネルギー側の閾値Vth1と高エネルギー側の閾値Vth2)を設定でき、
それぞれの閾値を超えたフォトンカウンティング数
が
逐次メモリに取り込
まれるように構成される。そして、
各X線検出素子における
高エネルギー側の閾値Vth2を超えた
フォトンカウンティング数に基づき高エネルギーのX線透過画像を生成することができ、各検出素子における
低エネルギー側の閾値Vth1を超えた
フォトンカウンティング数
から高エネルギー側の閾値Vth2を超えたフォトンカウンティング数を差し引いた数
に基づき低エネルギーのX線透過画像を生成することができる。
なお、例えば、高エネルギーのX線透過画像については上記と同様に生成し、低エネルギーのX線透過画像の代わりに、低エネルギー側の閾値Vth1を超えたフォトンカウンティング数に基づき低エネルギー+高エネルギーのX線透過画像を生成するというように、2つ以上のX線透過画像を生成するに際し、フォトンカウンティングするエネルギー領域を部分的に重ねて設定しても構わない。
[0017]
フォトンカウンティングするエネルギー領域が2個
の場合、閾値の設定方法は図2(a)に示す方法に限定されるものではなく、例えば図2(b)に示すようにフォトンカウンティングする低エネルギー領域を閾値Vth1より低エネルギーの領域として設定する方法など、任意の方法を採用してよい。また、
フォトンカウンティングをするエネルギー領域を
図2(c),(d)に示すように、ある閾値Vthを超える領域又は超えない領域というように
1個だけ
設定してもよい。また、フォトンカウンティングをするエネルギー領域を3個以上設定してもよく、設定方法も任意である。例えば4個設定する場合、図2(e)に示すようにVth1からVth3の3つの閾値を境に連続して4個設定してもよいし、図2(f)に示すようにVth1からVth6の6つの閾値を設けて断続的に4個設定してもよい。フォトンカウンティングするエネルギー領域を増やすことで多段階でのX線透過画像を得ることができ、よりきめ細かな画像処理が可能となる。」
[0018] 閾値設定手段140は、
被測定物Wとその閾値とが
直接的又は間接的に
対応付けられて記憶された記憶手段141
を参照して、入力された情報により特定された被測定物Wに対応する閾値を、所定の閾値としてX線検出手段130が参照して設定できるように保持する。被測定物Wとその閾値との対応付けは、例えば、被測定物Wをインデックスとして閾値との対応付けが記録されたテーブルとして記憶手段141に記憶する。記憶手段141は、装置にハードディスクやRAMとして固定的に設けてもよいし、メモリーカードなど着脱可能に設けてもよい。また、閾値設定手段140は
、被測定物Wを特定する情報を
装置の
利用者が入力できるよう、
例えば
被測定物Wを選択する入力インタフェースを
ディスプレイ等の
表示手段150に表示する。
[0019] 図3に、被測定物Wごとに1つ又は2つの閾値を設定する場合のテーブルの一例を示す。
テーブルには、被測定物Wごとに、被測定物Wの物性を踏まえて適切な1つ又は2つの閾値が記録される。
ここでいう被測定物Wは被測定物自体に限定されるものではなく、商品名や検出したい異物名、又は被測定物・異物の種別・材質など、適宜カテゴライズして設定してよい。また、被測定物と検出したい異物名との組としても設定してもよい。そして、利用者にはテーブルのインデックスである被測定物Wを選択するメニューを提示し、利用者がマウス、キーボード、タッチパネル、バーコードリーダーなどの
入力手段160を用いて被測定物Wを選択入力すると、閾値設定手段140は、選択された被測定物Wに対応する閾値1、2をテーブルから読み取ってX線検出手段130が所定の閾値として参照できるように保持する。
このとき、利用者に提示する選択メニューには閾値は表示しなくてよい。
[0020] テーブルにおいて被測定物Wと閾値とを対応付ける構成は、図3に示す構成に限定されず、被測定物Wを特定する情報の入力方法に応じて任意に決定してよい。例えば、図3の場合と同様に被測定物Wを利用者に提示して選択入力をする場合に、図3に示すような1つのテーブルで構成する方法のほか、図4(a),(b)に示すような2つのテーブルにより構成する方法を採ってもよい。具体的には、一方のテーブルを図4(a)に示すように被測定物Wと閾値番号との組で構成し、他方のテーブルを図4(b)に示すように閾値番号と閾値との組で構成して、閾値番号により両テーブルのリレーションをとることで被測定物Wと閾値とを間接的に対応付ける。また、被測定物Wを特定する情報をバーコードリーダーからのバーコード若しくはQRコード(登録商標)の読み取り、又はキーボードからの商品番号の直接入力により入力する場合には、図3に示すテーブルにおいてインデックスを、被測定物Wの代わりに被測定物Wを示すコードに対応する番号又は商品番号とすることで、コードや商品番号に対応する被測定物Wと閾値とを対応付けることができる。
[0021]
検査手段170は、X線検出手段130が1以上のエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいて被測定物を検査する。例えば、X線検出手段130が
図2(a)に示す
2つのエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいてX線透過画像を生成し、これらの差分を取るなど、所定の処理を行うことで被測定物Wやその中に含まれる異物がコントラスト高く可視化された画像を生成することができる。
生成した画像は、例えば表示手段150に表示する。なお、検査の結果は必ずしもそれ自体を出力の対象とする必要はなく、例えば、検査の結果に基づいて選別機の制御信号を出力するようにしてもよい。
[0022] なお、検査手段170は、X線検出手段130が1以上のエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に応じた量に基づいて被測定物を検査してもよい。例えば、X線検出手段130において、X線ラインセンサを構成する個々のX線検出素子に到達したX線の光子によって生成された電子正孔対の電荷を増幅して得られる検出信号のエネルギーを所定の閾値と比較し、閾値を超えた又は超えなかった検出信号の電荷量を所定時間で積分して得られた電荷量を当該閾値で画されるエネルギー領域の当該X線検出素子の積分電荷量として出力する。図2(a)に示すように2つの閾値を設定した場合、それぞれの閾値を超えた積分電荷量が逐次メモリに取り込まれるように構成される。そして、各X線検出素子における高エネルギー側の閾値Vth2を超えた積分電荷量に基づき高エネルギーのX線透過画像を生成することができる。また、各検出素子における低エネルギー側の閾値Vth1を超えた積分電荷量から高エネルギー側の閾値Vth2を超えた積分電荷量を差し引いた電荷量に基づき低エネルギーのX線透過画像を生成することができる。
[0023] なお、検査手段170で行う検査の方法を被測定物Wごとに相違させてもよい。例えば、
記憶手段141に記憶されたテーブルに更に、被測定物Wに対応付けて画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)を予め記録しておき、検査手段170による処理実行の際にテーブルを参照して閾値設定手段140に選択入力された被測定物Wに対応する検査方法を実行する
ようにしてもよい。このように被測定物Wごとに異なる検査方法を採用することにより、例えば、コントラストの高い画像を生成するために特別な画像処理を要する被測定物Wがある場合にも簡単な設定で高コントラストな画像を得ることができる。」
(イ)引用発明
上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、認定の根拠となった主な箇所を括弧内に示す。
「載置された被測定物Wを搬送する搬送手段120と([0013])、
前記搬送手段120に載置された被測定物Wに向けてX線を照射するX線照射手段110と([0013])、
前記X線照射手段110から被測定物Wに向けて照射されたX線が、前記被測定物Wと前記搬送手段120による吸収を受けつつこれらを透過した後に到達するものであって([0013])、前記X線の光子の到達ごとに当該光子のエネルギーを所定の閾値に照らして1以上のエネルギー領域に弁別して光子を検出することが可能であり、所定時間内に閾値を超えた又は超えなかった回数を、当該閾値で画されるエネルギー領域での当該X線検出素子のフォトンカウンティング数(検出した光子の数)として出力するX線ラインセンサが採用されており([0015])、光子のエネルギーを弁別してフォトンカウンティングするエネルギー領域の個数に応じた個数の所定の閾値を設定でき、それぞれの閾値を超えたフォトンカウンティング数を逐次メモリに取り込み、各X線検出素子におけるフォトンカウンティング数に基づき高エネルギーのX線透過画像及び低エネルギーのX線透過画像を生成することができるX線検出手段130と([0016])、
被測定物Wごとの、被測定物Wの物性を踏まえた適切な1つ又は2つの閾値、及び、被測定物Wに対応付けた画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)が予め記録されたテーブルを記憶した記憶手段141と([0018]、[0019]、[0023])、
被測定物Wを特定する情報を利用者が入力できるよう、被測定物Wを選択する入力インタフェースを表示する表示手段150([0018])と、
被測定物Wを選択入力する入力手段160と([0019])、
前記入力手段160を用いて被測定物Wが選択入力されると、当該被測定物Wに対応する閾値を前記テーブルから読み取り、所定の閾値としてX線検出手段130が参照して設定できるように保持する閾値設定手段140と([0018]、[0019])、
前記テーブルを参照して選択入力された被測定物Wに対応する検査方法を処理実行し([0023] )、例えば、前記X線検出手段130が2つのエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいてX線透過画像を生成し、これらの差分を取るなど、所定の処理を行うことで被測定物Wやその中に含まれる異物がコントラスト高く可視化された画像を生成することができ、前記X線検出手段130が1以上のエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいて被測定物を検査する検査手段170と([0021])、
を備えるX線検査装置100([0012])。」
イ 周知技術を示す文献
(ア)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2009-192519号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【請求項1】
搬送される被検査物にX線を照射し、前記被検査物を透過した複数の異なるエネルギー帯のX線の透過量を検出する検出手段(10)と、
前記検出手段が出力する前記複数の異なるエネルギー帯毎の検出信号に基づいて前記被検査物中に異物が含まれているか否かを判定する判定手段(22)とを備えたX線異物検出装置(1)において、
前記検出手段が出力する検出信号に基づく前記被検査物の前記複数の異なるエネルギー帯毎の透過画像を記憶する透過画像記憶手段(21)と、
前記透過画像記憶手段に記憶された複数の異なるエネルギー帯の透過画像から独立成分として異物画像を含む複数の分離画像を分離抽出する独立成分分析手段(24)を有する画像処理手段(23)とを備え、
前記判定手段は、前記独立成分分析手段によって分離抽出された異物画像に基づいて被検査物中に異物が含まれているか否かを判定することを特徴とするX線異物検出装置。」
b 「【0083】
図7は、本実施形態にX線異物検出装置における独立成分分析を用いた異物検出処理を実施した場合の観測画像Xおよび分離画像Yである。図7の(a)、(b)は異なるエネルギー帯の透過X線データに基づいた異物を含んだ観測画像Xであり、図7の(a)は低エネルギー帯の画像を示し、図7の(b)は高エネルギー帯の画像を示す。また、図7の(c)、(d)は独立成分分析手段24によって分離抽出された分離画像Yを示す。
【0084】
図7の(c)は、観測画像Xの濃度ヒストグラム分布状態と分離画像Yの各画像における濃度ヒストグラムの分布状態の違いが小さい分離物品画像であり、また、図7の(d)は、異物を独立成分として反映した分離異物画像である。この分離異物画像は、物品のウィンナーが無くなり異物だけの画像となっていることが判る。
【0085】
以上のように、本実施形態では、
独立成分分析を用いて、異なるエネルギー帯の透過画像から独立成分として分離された異物画像(分離異物画像)に基づいて被検査物中に異物が含まれているか否かを判定するため、内容物の重なりによる影響や被検査物の濃度のばらつきによる影響を受けずに確実に異物を検出することができる。
また、独立成分分析に入力される透過画像を白色化してFPICA処理を行うFastICA処理を実行することにより分離画像を高速に生成することができるため、検査能力の向上を図ることもできる。さらに、独立成分として分離された異物画像がフィルタ処理手段によりノイズ除去され、異物画像の背景に対して異物が強調されるため、より確実に異物を抽出することができ、安定した異物検査を行うことができる。」
c 「【0089】
また、本実施形態では、
複数の異なるエネルギー帯の透過画像を観測画像Xとし、観測画像Xから分離抽出された分離異物画像に基づいて被検査物中に異物が含まれているか否かの判定を行うようにしているが、単一の透過画像から検出できる異物に関しては従来の異物検出処理を併用して異物を検出する
ことは言うまでもなく、観測画像Xから分離抽出された分離物品画像を用いて分離異物画像に含まれない他の異なる種類の異物について画像処理を施して異物を検出する異物検出処理を併用するようにしても良い。」
d 図7「
174
149
0001433787000001.jpg
」
(イ)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2021-50959号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0032】
例えば、
対応部分特定手段150における異物候補の存在部分の特定と判定手段160における所定の異物の存否の判定を、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じた、それぞれ異なるエネルギー帯におけるシングルエナジー画像(1つのエネルギー帯における透過量の分布に基づき生成された透過画像)を用いて行う場合は、エネルギー帯が異なる2つのシングルエナジー画像を生成する。
各エネルギー帯における検査対象物W全体のシングルエナジー画像は、例えば、検出部130においてX軸方向に線状に検出された各検出素子の透過量の大小がそれぞれの画素の色調(色彩の明暗・濃淡・強弱などの調子)により表現された線状の画像を各周期について生成し、Y軸方向に時系列で並べることで生成することができる。
【0033】
また、
対応部分特定手段150における異物候補の存在部分の特定をシングルエナジー画像を用いて、判定手段160における所定の異物の存否の判定をデュアルエナジー画像(2つのエネルギー帯においてそれぞれ検出された透過量の分布に基づき生成された透過画像)を用いて、それぞれ行う場合には、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じた、シングルエナジー画像とデュアルエナジー画像を生成する。
【0034】
また、対応部分特定手段150における
異物候補の存在部分の特定をデュアルエナジー画像を用いて、判定手段160における所定の異物の存否の判定をシングルエナジー画像を用いて、それぞれ行う場合においても、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じた、シングルエナジー画像とデュアルエナジー画像を生成する。
【0035】
なお、シングルエナジー画像の生成の対象とするエネルギー帯は、検査対象物Wと異物候補の組み合わせに応じ、デュアルエナジー画像の生成の対象とする2つのエネルギー帯のいずれか一方であってもよいし、別のエネルギー帯でもよい。」
(ウ)引用文献7の記載事項
新たに提示する、本願の出願前に頒布された刊行物である特公平7-117586号公報(以下「引用文献7」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は医用診断等に用いられる
X線像
をはじめとする放射線像の撮像装置に関し、更に詳しくは、
フォトンカウンティング方式を用いた
放射線像
撮像装置に関する。
」
b「【0007】
【作用】
エネルギ弁別を行わない通常のモード
では、図2に示すように検出器1個についてアンプ、コンパレータおよびカウンタが1個ずつ接続された状態で、
従来の通常のフォトンカウンティング方式に基づく計測が行われる。
エネルギ弁別を行う場合、第1および第2ののスイッチング手段を駆動して図1に示すように2個の検出器1a,1bの出力を1個のアンプ2bに導入し、そのアンプ2bからの出力パルスを2個のコンパレータ3a,3bの双方に導くとともに、例えば一方のコンパレータ3aの基準電圧を通常の状態よりも大きくすると、検出器1aおよび1bに入射した放射線について、カウンタ4aには通常モードと同様のしきい値以上のエネルギを持つ放射線が、カウンタ4bにはそれよりも大きいある値以上のエネルギを持つ放射線が計数されることになり、いわば2個の検出器1aと1bを1個の画素と見なしたエネルギ別の画像を得ることができる。」
(エ)周知技術
a 上記(ア)及び(イ)の記載事項に例示されるように、本願の出願前に次の周知技術があったものと認められる。
「X線検査の技術分野において、デュアルエネルギーとシングルエネルギーを使い分けたり併用したりすること」(以下「周知技術1」という。)
b 上記(ウ)の記載事項に例示されるように、本願の出願前に次の周知技術があったものと認められる。
「フォトンカウンティング方式を用いたX線像の撮像装置において、エネルギ弁別を行わずにフォトンカウンティング方式に基づく計測を行う通常のモードが行われること」(以下「周知技術2」という。)
(3)対比
本件補正発明と、引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「被測定物W」、「載置された被測定物Wを搬送する搬送手段120」、「前記搬送手段120に載置された被測定物Wに向けてX線を照射するX線照射手段110」及び『「前記X線照射手段110から被測定物Wに向けて照射されたX線が、前記被測定物Wと前記搬送手段120による吸収を受けつつこれらを透過した後に到達するものであって、前記X線の光子の到達ごとに当該光子のエネルギーを所定の閾値に照らして1以上のエネルギー領域に弁別して光子を検出する」「X線検出手段130」』は、それぞれ、本件補正発明における「被検査物」、「被検査物を搬送する搬送手段」、「前記被検査物にX線を照射するX線照射手段」及び「搬送中の前記被検査物を透過したX線の光子のエネルギーを検出するX線検出手段」に相当する。
イ 引用発明における『「所定の閾値に照らして」「弁別」される「1以上のエネルギー領域」』及び「フォトンカウンティング数(検出した光子の数)」は、それぞれ、本件補正発明における「複数の異なるエネルギー領域」及び「検出光子数」に相当する。
また、引用発明における「X線ラインセンサ」は、「X線検出手段130」に採用されたものであるから、これが出力する『「前記X線の光子の到達ごとに当該光子のエネルギーを所定の閾値に照らして1以上のエネルギー領域に弁別して光子を検出」し、「所定時間内に閾値を超えた又は超えなかった回数」である「当該閾値で画されるエネルギー領域での当該X線検出素子のフォトンカウンティング数(検出した光子の数)」』は、本件補正発明における「前記X線検出手段における、一定時間ごとの、複数の異なるエネルギー領域ごとの検出光子数」に相当する。
よって、引用発明における『「X線検出手段130」に「採用され」た、「前記X線の光子の到達ごとに当該光子のエネルギーを所定の閾値に照らして1以上のエネルギー領域に弁別して光子を検出することが可能であり、所定時間内に閾値を超えた又は超えなかった回数を、当該閾値で画されるエネルギー領域での当該X線検出素子のフォトンカウンティング数(検出した光子の数)として出力するX線ラインセンサ」』は、本件補正発明の「前記X線検出手段における、一定時間ごとの、複数の異なるエネルギー領域ごとの検出光子数を計数する計数手段」に相当する。
ウ 引用発明における『「エネルギー領域の個数に応じた個数の所定の閾値を設定」して、「光子のエネルギーを弁別してフォトンカウンティング」した「各X線検出素子におけるフォトンカウンティング数に基づき」「生成」される「高エネルギーのX線透過画像及び低エネルギーのX線透過画像」』は、いずれも、本件補正発明における『「前記エネルギー領域ごとに」「生成」される「前記検出光子数に基づくシングルエナジーの検出データ」』に相当する。
また、引用発明において、「X線検出手段130」に到達するX線は、「前記被測定物Wと前記搬送手段120による吸収を受けつつこれらを透過した」ものである。
よって、引用発明における、『「前記被測定物Wと前記搬送手段120による吸収を受けつつこれらを透過した」「X線」の「光子のエネルギーを弁別してフォトンカウンティングするエネルギー領域の個数に応じた個数の所定の閾値を設定でき、それぞれの閾値を超えたフォトンカウンティング数を逐次メモリに取り込み、各X線検出素子におけるフォトンカウンティング数に基づき高エネルギーのX線透過画像及び低エネルギーのX線透過画像を生成することができるX線検出手段130」』は、本件補正発明における「前記エネルギー領域ごとに、前記被検査物からの前記検出光子数に基づくシングルエナジーの検出データを生成するシングルエナジー検出データ生成手段」に相当する。
エ(ア)引用発明における、「検査手段170」による「前記X線検出手段130が2つのエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいてX線透過画像を生成し、これらの差分を取るなど、所定の処理を行うことで被測定物Wやその中に含まれる異物がコントラスト高く可視化された画像を生成すること」は、「画像処理」である。
引用発明における当該画像処理が、テーブルに記録した「被測定物Wに対応付けた画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)」により行われること、さらに、「前記テーブルを参照して」「処理実行」する「選択入力された被測定物Wに対応する検査方法」として行われることが、当業者に自明である。
(イ)引用発明における「当該被測定物Wに対応する閾値」、「被測定物Wに対応付けた画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)」及び「被測定物Wに対応する検査方法」のいずれも、「入力手段160」により選択入力された「被測定物W」に対応するものである。また、選択される「閾値」あるいは「画像処理の条件」により、検出データであるところの「フォトンカウンティング数」や『「生成」される「画像」』が異なることは明らかであるから、「入力手段160」による「被測定物W」の選択入力は、「フォトンカウンティング数」や『「生成」される「画像」』を選択することでもある。
(ウ)引用発明における「被測定物W」、「選択入力する入力手段160」及び『「X線ラインセンサ」より出力される「フォトンカウンティング数」、「検査手段170」により「生成」される「画像」』は、それぞれ、本件補正発明における「検査対象」、「選択設定を受け付ける設定手段」及び「検査対象の検出データ」に相当する。
(エ)してみれば、引用発明における「フォトンカウンティング数」や「生成される画像」の選択でもある、『「入力手段160」による「被測定物W」の「選択入力」』は、本件補正発明の「検査対象の検出データの選択設定」に相当する。
よって、引用発明における「被測定物Wを選択入力する入力手段160」は、本件補正発明における「検査対象の検出データの選択設定を受け付ける設定手段」に相当する。
オ(ア)上記エ(ア)にて述べたとおり、引用発明の「検査手段170」による「前記X線検出手段130が2つのエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいてX線透過画像を生成し、これらの差分を取るなど、所定の処理を行うことで被測定物Wやその中に含まれる異物がコントラスト高く可視化された画像を生成すること」は、「画像処理」であって、当該画像処理は、テーブルに記録した「被測定物Wに対応付けた画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)」により行われるものであり、かつ、当該画像処理の条件は、上記エ(イ)にて述べたとおり「入力手段160」により選択入力される「被測定物W」に対応するものであるから、上記「コントラスト高く可視化された画像を生成する」「画像処理」は、「被測定物W」の「選択入力」に基づき行われるものであり、上記エ(イ)にて述べたように「被測定物W」の「選択入力」は、『「生成」される「画像」』の選択でもある。
(イ)引用発明における『「前記X線検出手段130が2つのエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいて」「生成し」た「X線透過画像」』、「これらの差分を取るなど、所定の処理を行うことで被測定物Wやその中に含まれる異物がコントラスト高く可視化された画像」及び『「これらの差分を取るなど、所定の処理を行うことで被測定物Wやその中に含まれる異物がコントラスト高く可視化された画像を生成することができる」「検査手段170」』は、それぞれ、本件補正発明における「2個の前記シングルエナジーの検出データ」、『「2個の前記シングルエナジーの検出データから」「生成」した「デュアルエナジーの検出データ」』及び「いずれか2個の前記シングルエナジーの検出データからデュアルエナジーの検出データを生成するデュアルエナジー検出データ生成手段」に相当する。
(ウ)してみれば、引用発明における『「被測定物Wに対応付けた画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)が予め記録されたテーブルを」「参照して」、「前記入力手段160」により「選択入力された被測定物Wに対応する検査方法を処理実行し」、「前記X線検出手段130が2つのエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいてX線透過画像を生成し、これらの差分を取るなど、所定の処理を行うことで被測定物Wやその中に含まれる異物がコントラスト高く可視化された画像を生成する」「検査手段170」』は、本件補正発明における「前記設定手段において、デュアルエナジーの検出データが選択設定された場合に、いずれか2個の前記シングルエナジーの検出データからデュアルエナジーの検出データを生成するデュアルエナジー検出データ生成手段」に相当する。
カ(ア)上記オ(ウ)より、『「被測定物Wに対応付けた画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)が予め記録されたテーブル」「を参照して選択入力された被測定物Wに対応する検査方法を処理実行し」、「前記X線検出手段130が2つのエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいてX線透過画像を生成し、これらの差分を取るなど、所定の処理を行うことで」「検査手段170」が生成する「被測定物Wやその中に含まれる異物がコントラスト高く可視化された画像」』は、本件補正発明における「前記設定手段において選択設定された検出データ」に相当する。
(イ)上記(ア)の画像の生成は、「検査手段170」による「被測定物W」の検査として行われるものである。
(ウ)してみれば、引用発明における「前記テーブルを参照して選択入力された被測定物Wに対応する検査方法を処理実行し、例えば、前記X線検出手段130が2つのエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいてX線透過画像を生成し、これらの差分を取るなど、所定の処理を行うことで被測定物Wやその中に含まれる異物がコントラスト高く可視化された画像を生成することができ、前記X線検出手段130が1以上のエネルギー領域のそれぞれについて検出した光子の数に基づいて被測定物を検査する検査手段170」は、本件補正発明における「前記設定手段において選択設定された前記検出データを用いて検査を実現する検査実現手段」に相当する。
キ 引用発明において、「記憶手段141」に「被測定物Wごとの、被測定物Wの物性を踏まえた適切な1つ又は2つの閾値、及び、被測定物Wに対応付けた画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)が予め記録されたテーブルを記憶し」ていることからすると、「被測定物W」は、予め定められた複数のものである。
また、引用発明の「入力手段160」は、予め定められた複数の「被測定物W」の中から、いずれかを選択した入力を受け付けるものである。そして、引用発明では、「前記入力手段160を用いて被測定物Wが選択入力されると」、「閾値設定手段140」が「当該被測定物Wに対応する閾値を前記テーブルから読み取り、所定の閾値としてX線検出手段130が参照して設定できるように保持」し、「検査手段170」は、「前記テーブルを参照して選択入力された被測定物Wに対応する検査方法を処理実行」するものであり、そのような閾値の保持、検査方法の処理実行は、選択設定を含むといえる。
よって、引用発明におけるテーブルから読み取った閾値の保持、テーブルを参照して行う検査方法の処理実行に係る「被測定物Wを選択入力する入力手段160」は、本件補正発明における「前記選択肢のいずれを選択設定するかが予め定められた複数の異なる被検査物の中から、検査対象とする被検査物の選択を受け付けることにより、選択された被検査物に対応する選択設定を受け付ける」「設定手段」に相当する。
ク 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア)一致点
「被検査物を搬送する搬送手段と、
前記被検査物にX線を照射するX線照射手段と、
搬送中の前記被検査物を透過したX線の光子のエネルギーを検出するX線検出手段と、
前記X線検出手段における、一定時間ごとの、複数の異なるエネルギー領域ごとの検出光子数を計数する計数手段と、
前記エネルギー領域ごとに、前記被検査物からの前記検出光子数に基づくシングルエナジーの検出データを生成するシングルエナジー検出データ生成手段と、
検査対象の検出データの選択設定を受け付ける設定手段と、
前記設定手段において、デュアルエナジーの検出データが選択設定された場合に、いずれか2個の前記シングルエナジーの検出データからデュアルエナジーの検出データを生成するデュアルエナジー検出データ生成手段と、
前記設定手段において選択設定された前記検出データを用いて検査を実現する検査実現手段と、
を備え、
前記設定手段は、前記選択肢のいずれを選択設定するかが予め定められた複数の異なる被検査物の中から、検査対象とする被検査物の選択を受け付けることにより、選択された被検査物に対応する選択設定を受け付ける
X線検査装置。」
(イ)相違点1
前記設定手段が、本件補正発明においては、「1個以上の前記シングルエナジーの検出データ、前記デュアルエナジーの検出データ、及び前記デュアルエナジーの検出データと1個以上の前記シングルエナジーの検出データとの組のうち、前記計数手段において検出光子数の計数対象とした全てのエネルギー領域を網羅する1個のエネルギー領域の前記シングルエナジーの検出データを選択肢として少なくとも含む、2以上からなる選択肢からいずれかを選択設定可能であ」るのに対して、引用発明では、どのような選択肢を選択設定可能であるのか特定されていない点。
(4)判断
ア 上記相違点1について検討する。
(ア)「X線検査の技術分野において、デュアルエネルギーとシングルエネルギーを使い分けたり併用したりすること」は、本願の出願前に周知であり(周知技術1(前記(2)イ(エ)a参照))、「フォトンカウンティング方式を用いたX線像の撮像装置において、エネルギ弁別を行わずにフォトンカウンティング方式に基づく計測を行う通常のモードが行われること」もまた、本願の出願前に周知である(周知技術2(前記(2)イ(エ)b参照))。
(イ)引用発明は、X線検出手段130として、X線検出素子のフォトンカウンティング数(検出した光子の数)を出力するX線ラインセンサが採用されたX線検査装置100であるから、X線検査を行うものであり、かつ、「フォトンカウンティング方式を用いたX線像の撮像装置」といえる。
(ウ)X線検査を行う引用発明を、デュアルエネルギーとシングルエネルギーを使い分けたり併用したりするものとなすことは、当業者であれば周知技術1に基づいて容易になし得たことである。その際、「フォトンカウンティング方式を用いたX線像の撮像装置」といえる引用発明において、「エネルギ弁別を行わずにフォトンカウンティング方式に基づく計測を行う通常のモード」を選択可能となすことは、当業者であれば周知技術2より適宜なし得たことである。
(エ)上記(ウ)のように構成したX線検査装置における「エネルギ弁別を行わずにフォトンカウンティング方式に基づく計測を行う通常のモード」の検出データは、エネルギ弁別を行わないことから、本件補正発明の「前記計数手段において検出光子数の計数対象とした全てのエネルギー領域を網羅する1個のエネルギー領域の前記シングルエナジーの検出データ」に相当する。
(オ)引用発明では、入力手段160を用いて被測定物Wを選択入力すると、テーブルから閾値を読み取り、また、同テーブルを参照して検査方法を実行するものであるから、上記(ウ)のように構成したX線検査装置において、デュアルエネルギーを用いたX線検査、「エネルギ弁別を行わずにフォトンカウンティング方式に基づく計測を行う通常のモード」であるシングルエネルギーを用いたX線検査のそれぞれを「被測定物」と紐付け、その検査方法をテーブルに記憶して、前記被測定物の選択に応じて、これらの選択、設定を可能となすことは、当業者であれば適宜なし得たことである。
このように構成したX線検査装置において、被測定物の選択は、「デュアルエネルギーを用いたX線検査」の検出データまたは「エネルギ弁別を行わずにフォトンカウンティング方式に基づく計測を行う通常のモード」である「シングルエネルギーを用いたX線検査」の検出データの選択であるともいえる。
(カ)上記(オ)のように構成したX線検査装置において「被測定物Wを選択入力する入力手段160」による被測定物の選択入力により、「デュアルエネルギーを用いたX線検査」の検出データまたは「エネルギ弁別を行わずにフォトンカウンティング方式に基づく計測を行う通常のモード」である「シングルエネルギーを用いたX線検査」の検出データを選択する構成は、「1個以上の前記シングルエナジーの検出データ、前記デュアルエナジーの検出データ、及び前記デュアルエナジーの検出データと1個以上の前記シングルエナジーの検出データとの組のうち、前記計数手段において検出光子数の計数対象とした全てのエネルギー領域を網羅する1個のエネルギー領域の前記シングルエナジーの検出データを選択肢として少なくとも含む、2以上からなる選択肢からいずれかを選択設定可能」とする要件を満たしている。
(キ)以上のとおりであるから、引用発明に周知技術1、2を適用して上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 請求人の主張について
(ア)請求人は、審判請求の理由において、請求項1に係る発明(本件補正発明)は、収集された検出データのうち、実際に検査において、いずれの検出データを適用するかを2以上からなる選択肢から選択して設定可能とする構成を備えているのに対して、引用文献1に記載の発明は、エネルギー領域ごとの検出データを収集する際のエネルギー閾値を設定可能とする構成を備えるにとどまると主張している(審判請求書2.(4)(a)参照)。
当該主張について検討する。
上記(3)エ(イ)及び(エ)にて述べたとおり、引用発明における「入力手段160」の選択入力は、「被測定物Wごとの、被測定物Wの物性を踏まえた適切な1つ又は2つの閾値」の選択のみならず、「被測定物Wに対応付けた画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)」の選択及び「被測定物Wに対応する検査方法」の選択でもあるから、「引用文献1に記載の発明は、エネルギー領域ごとの検出データを収集する際のエネルギー閾値を設定可能とする構成を備えるにとどまる」の主張は引用文献1の記載に基づく主張とは認められない。
また、当業者が、引用発明における「入力手段160(設定手段)」を、「1個以上の前記シングルエナジーの検出データ、前記デュアルエナジーの検出データを選択肢として少なくとも含む、2以上からなる選択肢からいずれかを選択設定可能」なものとなし得ることは、上記アにて述べたとおりである。
よって、当該主張を採用することはできない。
(イ)請求人は、審判請求の理由において、エネルギー閾値を挟んで高エネルギー側のエネルギー領域のシングルエナジーの検出データと低エネルギー側のエネルギー領域のシングルエナジーの検出データのそれぞれを検査に供するか否かは、閾値の設定とは独立に決定される事項であるから、引用文献1に閾値を任意に設定可能とする構成が開示されていても、閾値によって画された各エネルギー領域の検出データのうち、いずれの検出データを検査に供するかを任意に設定可能とする本願発明の構成には想到し得ないと主張している(審判請求書2.(4)(b)参照)。
当該主張について検討する。
引用発明における「検査手段170」は、被測定物Wの検査に際して、「被測定物Wに対応付けた画像処理の条件(例えば、各フォトンカウンティング数に対する係数や和、差などの計算式)が予め記録されたテーブル」「を参照して選択入力された被測定物Wに対応する検査方法を処理実行」するものであり、閾値の値のみによっては、被測定物Wに対応付けた画像の生成も検査も行えないことは、当業者に明らかであるから、上記検査に必要な条件、すなわち、「X線ラインセンサ」が出力する「当該閾値で画されるエネルギー領域」のうち、いずれのエネルギー領域でのフォトンカウンティング数を用いるのかを上記テーブルに予め記録することは当業者であれば当然になし得たことである。
よって、当該主張を採用することはできない。
ウ 効果について
本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者であれば容易に予測することができた程度のものである。
(5)小括
以上のとおり、本件補正後発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、令和6年5月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。
原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1の記載及び引用発明は、前記「第2[理由]2(2)ア」に記載したとおりである。
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、本件発明と引用発明とは、前記「第2[理由]2(3)ク(ア)」の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2>
前記設定手段が、本願発明においては、「1個以上の前記シングルエナジーの検出データ、前記デュアルエナジーの検出データ、及び前記デュアルエナジーの検出データと1個以上の前記シングルエナジーの検出データとの組のうち2以上からなる選択肢からいずれかを選択設定可能であ」るのに対して、引用発明では、どのような選択肢を選択設定可能であるのか特定されていない点。
(2)上記相違点2について検討する。
ア 引用発明は、X線検査を行うものであるから、デュアルエネルギーとシングルエネルギーを使い分けたり併用したりするものとなすことは、当業者であれば周知技術1に基づいて容易になし得たことである。
イ 引用発明では、入力手段160を用いて被測定物Wを選択入力すると、テーブルから閾値を読み取り、また、同テーブルを参照して検査方法を実行するものであるから、上記アのように構成したX線検査装置において、デュアルエネルギーを用いたX線検査、シングルエネルギーを用いたX線検査のそれぞれを「被測定物」と紐付け、その検査方法をテーブルに記憶して、前記被測定物の選択に応じて、これらの選択、設定を可能となすことは、当業者であれば適宜なし得たことである。
このように構成したX線検査装置において、被測定物の選択は、「デュアルエネルギーを用いたX線検査」の検出データまたは「シングルエネルギーを用いたX線検査」の検出データの選択であるともいえる。
ウ 上記のように構成したX線検査装置において「被測定物Wを選択入力する入力手段160」による被測定物の選択入力により、「デュアルエネルギーを用いたX線検査」の検出データまたは「シングルエネルギーを用いたX線検査」の検出データを選択する構成は、「1個以上の前記シングルエナジーの検出データ、前記デュアルエナジーの検出データ、及び前記デュアルエナジーの検出データと1個以上の前記シングルエナジーの検出データとの組のうち2以上からなる選択肢からいずれかを選択設定可能」とする要件を満たしている。
エ 以上のとおりであるから、引用発明に周知技術1を適用して上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)してみれば、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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