結論テキスト
特許第7257001号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第7257001号の請求項1~10に係る特許を取り消す。
特許第7257001号の請求項11に係る特許についての特許異議の申し立てを却下する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2023701055 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理 由
出願の分割の経緯は次のとおりである。なお、括弧内は当該出願の提出日を示す。
最先の出願:特願2011-122064号(平成23年 5月31日)
第1世代 :特願2015-210635号(平成27年10月27日)
第2世代 :特願2016-166072号(平成28年 8月26日)
第3世代 :特願2018- 82549号(平成30年 4月23日)
第4世代 ;特願2019- 49080号(平成31年 3月15日)
第5世代 :特願2021-188750号(令和 3年11月19日)
令和5年10月 2日:▲桑▼原裕二(申立人1)
同年 同月 5日:平居博美 (申立人2)
同年 同月10日:白澤榮樹 (申立人3)
同年 同月11日:渋谷都 (申立人4)
同年 同月13日:土田裕介 (申立人5)
令和5年12月28日付け 取消理由通知書
令和6年 2月19日付け 応対記録(日付は最後の応対日)
同年 3月11日提出 訂正請求書・意見書(特許権者)
同年 4月 1日提出 手続補正書(訂正請求書)(特許権者)
同年 同月10日提出 手続補正書(意見書)(特許権者)
同年 5月22日提出 意見書(申立人1)
同年 同月 同日提出 意見書(申立人5)
同年 同月23日提出 意見書(申立人3)
同年 同月24日提出 意見書(申立人2)
同年 同月 同日提出 手続補正書(方式)(申立人2)
同年11月29日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 2月10日提出 訂正請求書・意見書(特許権者)
同年 7月17日提出 意見書(申立人2)
同年 同月25日提出 意見書(申立人1)
同年 同月 同日提出 意見書(申立人5)
なお、令和6年3月11日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
申立人3、4に対して、令和7年6月24日付け通知書により、同年2月10日に訂正の請求があった旨の通知をしたが、申立人3、4からの応答はなかった。
令和7年2月10日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりであり、一群の請求項である訂正前の請求項1~11についてするものである(なお、下線部は訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンと、を含んでなる樹脂組成物からなるヒートシール性樹脂フィルムであって、
前記ヒートシール性樹脂フィルムが、カルボニル化合物、アミンおよびアミノ酸の含窒素化合物からなる群より選択される1種または2種以上の不純物を含み、
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンに由来する基を前記樹脂組成物全体に対して5~95質量%含んでなり、前記樹脂組成物が、0.91~0.96g/cm
3
の密度を有する、ヒートシール性樹脂フィルム。」との記載を、
「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンと、を含んでなる樹脂組成物
(但し、前記樹脂組成物が、チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920~0.945g/cm
3
のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体との混合樹脂であって、密度0.920~0.941g/cm
3
の範囲にあるもの、並びにリサイクルされたポリエチレンを含むものを除く)
からなるヒートシール性樹脂フィルムであって、
前記ヒートシール性樹脂フィルムが、カルボニル化合物、アミンおよびアミノ酸の含窒素化合物からなる群より選択される1種または2種以上の不純物を含み、
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンに由来する基を前記樹脂組成物全体に対して5~95質量%含んでなり、前記樹脂組成物が、0.91
5
~0.96g/cm
3
の密度を有する、ヒートシール性樹脂フィルム
(但し、レジ袋用フィルムを除く)
。」に訂正する。
また、請求項1を引用する請求項2~10も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、請求項1の樹脂組成物につき「(但し、前記樹脂組成物が、チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920~0.945g/cm
3
のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体との混合樹脂であって、密度0.920~0.941/cm
3
の範囲にあるもの、並びにリサイクルされたポリエチレンを含むものを除く)」との構成を加え(以下「訂正事項1-1」という。)、ヒートシール性樹脂フィルムにつき「(但し、レジ袋用フィルムを除く)」との構成を加え(以下「訂正事項1-2」という。)、樹脂組成物の密度を「0.91~0.96g/cm
3
」から「0.915~0.96g/cm
3
」へと限定し(以下「訂正事項1-3」という。)、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項1のうち訂正事項1-1は、取消理由通知書(令和6年11月29日付け)における文献12(特開昭53-31751号公報)の請求項1に記載された「チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920~0.945・・・のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体との混合樹脂において、密度0.920~0.941・・・の範囲内にある混合樹脂よりなる」もの、及び、同文献1(後記第4参照)の「一部の実施形態では、本発明の容器及び/又はキャップは、リサイクルされた高密度ポリエチレン、・・・、リサイクルされたLLDPE又はリサイクルされたLDPEからなり、」([0029])と記載されていることを踏まえ、上記のリサイクルされた、高密度ポリエチレン、LLDPE、LDPEを包含する「リサイクルされたポリエチレンを含むもの」を除いて、文献12又は文献1に記載された発明との差別化を図るものであり、上記のものを除くことにより、新たな技術的事項を導入するものではない。
訂正事項1のうち訂正事項1-2は、上記取消理由通知書における文献10(後記第4参照)に記載された「レジ袋」用のフィルムを除いて、文献10に記載された発明との差別化を図るものであり、新たな技術的事項を導入するものではない。
訂正事項1のうち訂正事項1-3は、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0052】の「上記の組成物は、・・・好ましくは0.915~0.955g/cm
3
・・・の密度を有するものである。」との記載に基づいて、密度の下限値を、「0.91」から「0.915」とするものであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするのであって、新規事項を導入するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
なお、訂正前の全ての請求項1~11について特許異議申立てがされているので、訂正事項1及び2に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、請求項1~11に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」などという。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンと、を含んでなる樹脂組成物(但し、前記樹脂組成物が、チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920~0.945g/cm
3
のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体との混合樹脂であって、密度0.920~0.941g/cm
3
の範囲にあるもの、並びにリサイクルされたポリエチレンを含むものを除く)からなるヒートシール性樹脂フィルムであって、
前記ヒートシール性樹脂フィルムが、カルボニル化合物、アミンおよびアミノ酸の含窒素化合物からなる群より選択される1種または2種以上の不純物を含み、
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンに由来する基を前記樹脂組成物全体に対して5~95質量%含んでなり、前記樹脂組成物が、0.915~0.96g/cm
3
の密度を有する、ヒートシール性樹脂フィルム(但し、レジ袋用フィルムを除く)。
【請求項2】
前記バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含む、請求項1に記載のヒートシール性樹脂フィルム。
【請求項3】
前記バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含む、請求項1または2に記載のヒートシール性樹脂フィルム。
【請求項4】
前記α-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンである、請求項2または3に記載のヒートシール性樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシール性樹脂フィルムを備えた、包装製品。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシール性樹脂フィルムを備えた、シート成形品。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシール性樹脂フィルムを備えた、ラベル材料。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシール性樹脂フィルムを備えた、蓋材。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシール性樹脂フィルムを備えた、ラミネートチューブ。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシール性樹脂フィルムを備えた、積層フィルム。
【請求項11】
(削除)
本件訂正前の請求項1~13に係る特許に対して、令和6年11月29日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由のうち、文献1又は文献10を主引例とする取消理由は、以下のとおりである。
(1)取消理由2A(文献1を主引例とする進歩性)
請求項1~13に係る発明は、文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)取消理由2D(文献10を主引例とする進歩性)
請求項1~13に係る発明は、文献10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(主引例)
文献1:米国特許出願公開第2011/0120902号明細書
文献10:「自動車・複写機で採用進むバイオポリエチレンも登場」,日経バイオテク12-20,2010年,p.3~8
本件訂正により、請求項11は削除されたため、請求項11に係る特許についての特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなった。
請求項11に係る特許についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8において準用する同法第135条の規定により、却下する。
後記3以降の判断において用いた、技術常識(周知技術を含む)を示す文献の記載を示す。
(1)文献2:特開2010-30902号公報
「【0002】
エチレンは、さまざまな低分子化合物や高分子化合物の原料として有用な化合物である。特に、種々ポリマーの原料としてナフサクラッカー由来のものが用いられている。一方で、従来から石油資源減少が叫ばれており、また、近年においては環境問題の観点から、石炭、天然ガス又はバイオマス由来の原料からのエチレンの製造が種々検討されている。」
「【0019】
原料がバイオマス由来のエタノールの場合、得られたエチレンには、エタノール発酵工程で混入した不純物であるケトン、アルデヒド、エステルなどのカルボニル化合物及びその分解物である炭酸ガスや、酵素の分解物・きょう雑物であるアミン、アミノ酸など含窒素化合物及びその分解物であるアンモニアなどが極微量含まれる。エチレンの用途によっては、これら極微量の不純物が問題となるおそれがあるので、精製により除去しても良い。
精製は、公知のいかなる方法でもよいが、好適な精製操作として吸着精製法をあげることができる。用いる吸着剤は特に限定されないが、高表面積の材料が好ましく、吸着剤の種類としては、バイオマス由来のエタノールの脱水反応により得られるエチレン中の不純物の種類・量に応じて選択される。」
(2)文献3:国際公開第2007/055361号
「[0002] 地球温暖化の原因の一つである二酸化炭素を削減する方法として、化石原料からバイオマス資源原料への転換が望まれている。具体的には、(1)バイオマス資源の高温ガス化により得られるメタノールを原料として得られるエチレン、又は(2)バイオマス資源の醗酵により得られるエタノールを原料としその脱水反応により得られるエチレンを、ナフサクラッカーにより得られるエチレンの代替にする検討がなされている。」
「[0006] ところが、
バイオマス資源から得られるエタノールは、水以外に、発酵工程の不純物 であるカルボニル化合物や酵素の分解物・きょう雑物である含窒素化合物を含んでおり
、
脱水反応でエチレンを得る際に化合物自体又はその分解物がエチレンに混入し
、メタセシス触媒の活性へ悪影響を与えるため、その精製法の開発が望まれていた。」
(3)文献5:特開2010-162748号公報
「【0030】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。まず、使用する樹脂組成などを以下に示す。
<ポリエチレンA>
エチレン(サトウキビ原料)
97重量%
1-ヘキセン(石化原料)
3重量%
重合触媒:チグラー触媒
(MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0.96)
【0031】
<ポリエチレンB>
エチレン(サトウキビ原料)
94重量%
1-ヘキセン(石油原料)
6重量%
重合触媒:メタロセン触媒
(MFR:4 密度:0.93 植物由来度:0.93)」
(4)文献6:特表2010-511634号公報
「【0084】
本発明による方法によって生成したプロピレン、エチレン及びブチレンは、それらの公知の誘導体を得るために、好ましくはポリプロピレン及びそのコポリマー並びに
ポリエチレン及びそのコポリマーを生成するために使用することができ
、
再生可能な天然源からの原料及び残渣のみを使用する本発明の最も好ましい実施形態が適用される場合
、その組成が、ASTM D6866-06標準による試験法で決定して、
再生可能な天然源からの炭素を100%含むポリマーが得られる
。
他の補完的な一代替は、中でも、例えばナフサ、天然ガス、石炭、再生プラスチック及び熱電力発生設備からの燃焼ガスなどの合成ガス生成のための非天然(化石)由来の他の原料を使用することにあり
、但しASTM D6866-06標準による試験法で決定して、最終生成物(オレフィン及びそれらの公知の誘導体、並びに
ポリエチレン及びそのコポリマー
、ポリプロピレン及びそのコポリマー、並びにPVCなどのポリマー)が、再生可能な天然源からの炭素を少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%含む。」
(5)文献7:特表2011-506628号公報
「【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの
再生可能な天然原料からのエチレン-ブチレンコポリマーの製造のための統合された方法
に関する。より具体的には、
本発明はエチレン及びコモノマーとしての1-ブチレンのコポリマーの製造のための重合において使用されるエチレンモノマーがエタノールの脱水反応によって得られる方法に関し、このエタノールは糖類の発酵によって製造され、1-ブチレンは以下の反応の少なくとも1つによって得られる:(i)糖類の発酵段階において直接生成された1-ブタノールの脱水反応、(ii)エタノールから化学的経路を経て得られる1-ブタノールの脱水反応、このエタノールは糖類の発酵によって生成される、(iii)発酵から得られたエタノールの脱水によって生成されたエチレンの二量体化反応に続くここで形成された2-ブチレン異性体の異性化反応。
【0002】
こうして生成された
エチレン-ブチレンコポリマーは、完全に再生可能な天然原料に由来する炭素原子に基づいており
、これは燃焼させると非化石由来のCO
2
を生成する。
【背景技術】
【0003】
多くの異なる種類のポリエチレンは、世界中で最も広く生産され使用されている熱可塑性樹脂を包含する。これらは
エチレンのホモ重合又はエチレン及び少なくとも1つのコモノマーの共重合によって得られ、最も幅広く使用されているコモノマーは1-ブチレン、1-ヘキセン及び1-オクテンである(LLDPE
、Andra Borruso、CEH-2007年、Chemical Economics Handbook-SRI International)。
【0004】
最も重要なポリエチレン等級は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。しかし、その外に高密度、中密度及び超低密度のコポリマーがある。
【0005】
LLDPEは
特にフレキシブルな包装材料の製造において広い範囲の用途を有する。その主要な
用途の中には包装用フィルム
、工業用バッグ、衛生用ナプキン、冷却用包装材料及び他の幅広い製品群がある。
【0006】
それぞれには一例として、高密度ポリエチレンには、射出成形加工及びブロー成形加工によって作製されるフィルム及び部品において広範囲に及ぶ用途があり、中密度ポリエチレンは「回転成形」として知られている工業的熱可塑性変形加工において使用され、超低密度ポリエチレンはカートン紙包装材料のライニングにおいて及び接着性ライニング層において使用される。
【0007】
エチレンは主に石油精製の副生成物として水蒸気改質法又は接触分解法によって製造されるオレフィンである。エチレンの製造のために使用される別の経路は天然ガス中に存在するエタンの回収及び脱水素である。
【0008】
1-ブチレンも1種のオレフィンであり、その製造も同様に燃料誘導体に基づいている。」
(6)文献8:杉山英路 他1名,「地球環境に優しい「サトウキビ由来のポリエチレン」」,コンバーテック,2009年8月号,p.63~67
「地球環境にやさしい「サトウキビ由来のポリエチレン」」(タイトル)
「
2.サトウキビ由来ポリエチレンの製造工程
サトウキビ由来ポリエチレンの製造フローを図1に示す。サトウキビ畑より刈り取ったサトウキビを圧延ローラーで糖液を取り出し、・・・廃糖蜜を適切な濃度まで水で希釈して酵母菌により発酵させエタノールを作る。次にバイオエタノールを300°C~400°Cに加熱してアルミナ等の触媒により分子内脱水反応させると高い収率でエチレンが生成される。生成物にはエチレン以外に水分、有機酸、一酸化炭素等の不純物が含まれるので必要な純度までエチレンを精製して、次の工程のポリエチレン重合プラントへ導入する。・・・エチレンを高分子化(重合)してポリエチレンを生産する。・・・
3.サトウキビ由来ポリエチレンの同等性
・・・
(1)エチレン
・・・
(2)ポリエチレン
試験重合機に石油系エチレンとバイオマス系エチレンをそれぞれ投入し、同一条件でポリエチレン重合し、出来上がったポリマーの同等性を検討した。
この結果を表1に示す。多少の数値上の差異はあるが、テスト重合機の条件設定に影響されていると考えられ、
基本的にはいずれの用途グレードとも石油系、バイオマス系の品質は同等であることが確認できた
。
4.サトウキビ由来のポリエチレンの生産概要と生産予定グレード
サトウキビ由来のポリエチレンはBraskem社のトリウンフォ工場で、2011年から高密度ポリエチレン(HDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を合わせて年産20万トン生産される計画である。・・・
表2に生産予定の代表的なグレードを示すが、今後、ユーザーニーズにより変わる可能性がある。」(63頁中央欄1行~64頁右欄6行)
「
35
107
0001434085000001.jpg
39
82
0001434085000002.jpg
」(64頁表1、表2)
(7)参考文献A(「高分子大辞典」,丸善株式会社,平成6年9月20日,p.102)
「エチレンポリマー
・・・
置換基の全くないPEの密度は0.960~0.970gcm
-3
,・・・である.
これは,高密度ポリエチレンと呼ばれる
.ほとんどのPEは炭素数が2~8のアルキル置換基を含んでいる・・・
高密度PE(HDPE)には,ホモポリマーやα-オレフィン(1-ブテン,1-ヘキセン,1-オクテンなど)-エチレン共重合体が含まれる
.遷移金属触媒を用いて共重合すると,アルキル置換基が導入されて
密度0.941~0.958gcm
-3
のHDPE
が得られる.
低密度(0.915~0.940gcm
-3
)あるいはさらに低密度(0.890~0.915gcm
-3
)の線状の低密度PE(LDPE)共重合体
もつくることができる.」
(8)参考文献B(「ポリエチレン技術読本」,株式会社工業調査会,2001年7月1日初版発行,p.31~33,46~47)
「第1章 ポリエチレンの特徴
INTRODUCTION
ポリエチレンは
・・・。このため,日用の
各種包装材料
から工業材料に至るまで,幅広く使用されているのである。・・・
1.1 ポリエチレンの定義と分子構造
・・・表1.1に示したように,
密度により,高密度ポリエチレン(HDPE),中密度ポリエチレン(MDPE)および低密度ポリエチレン(LDPE)に分類される。・・・実際にはさらにα-オレフィン含量の高い超低密度ポリエチレン(VLDPE)など上記の定義以外のものもポリエチレンとして扱われている
。
40
95
0001434085000003.jpg
・・・
1.3.1 成形加工性
・・・
さらに
ポリエチレンでは
,・・・。また,ポリマーの融点分布(組成分布)を制御できるため,
包装材料として低温ヒートシール性
,高速成形性,耐熱性などを,要求に応じてバランスさせ最適化することが可能である。」(31頁タイトル~32頁本文2行、46頁下から3行~47頁下から5行)
(9)参考文献C(日本海水学会誌,1968年,第22巻,第3号,p.243~256)
「ポリエチレンフイルムのヒートシールについて
・・・
はじめに
プラスチックフイルムのヒートシールとは,加熱して圧着するだけのきわめて簡単な工程であるが,それだけにフィルムの特性,シーラの構造,シール条件など交絡し多くの問題がある.
ポリエチレンフィルムはとくにヒートシールが容易
なので実際の装置あるいは操作では経験あるいは勘のみにたよつているので,思わぬトラブルを引き起こすことがある.
以下,ヒートシールの要因についての考察とポリエチレンフイルムのヒートシール条件について述べる.」(243頁左欄1~11行)
(10)参考文献D(廃棄物学会論文誌,1996年,Vol.7,No.6,p.320~329)
「その後10年近くにわたって
高密度ポリエチレンフィルム製レジ袋
による角底紙袋市場の代替が進行,現在に至ったという(・・・)。 ・・・
ポリオレフィンフィルム工業組合によると平成5年度の
H.D.P.E.のレジ袋
の出荷量が46,539tであった。」(321頁右欄5~16行)
(1)文献1について
ア 文献1には、次の事項が記載されている。
なお、原文は英文なので訳文を示し、強調のために当審による下線を付した。
「1.バージン石油系化合物を実質的に含まない、持続可能でリサイクル可能な、2年の品質保持期間を有する物品であって、前記物品は、
(a)・・・を含む容器、
(b)・・・を含むキャップ、
(c)
インクと基材とを含むラベルであって、基材が
、
(i)
少なくとも約90%のバイオベースの含有量を有するポリエチレン、消費者使用後にリサイクルされたポリエチレン(PCR-PE)、産業廃棄物からリサイクルされたポリエチレン(PIR-PE)、紙及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー、
又は、
(ii)少なくとも約90%のバイオベースの含有量を有するポリエチレンテレフタレート、消費者使用後にリサイクルされたポリエチレンテレフタレート(PET)、産業廃棄物からリサイクルされたPET、粉砕再生PET、少なくとも約90%のバイオベースの含有量を有するフランジカルボン酸のポリエステル、消費者使用後にリサイクルされたフランジカルボン酸のポリエステル、産業廃棄物からリサイクルされたフランジカルボン酸のポリエステル、粉砕再生されたフランジカルボン酸のポリエステル、紙及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー、又は、
(iii)少なくとも約90%のバイオベースの含有量を有するポリプロピレン、消費者使用後にリサイクルされたポリプロピレン(PCR-PP)、産業廃棄物からリサイクルされたポリプロピレン(PIR-PP)、紙及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー、を含む、ラベル、
を含み、
前記
容器、キャップ、
PEラベル
及びPPラベル
は各々、約1g/mL未満の密度を呈し
、PET、フランジカルボン酸のポリエステル又はこれらの混合物を含む前記ラベルは約1g/mLを超える密度を呈する、物品。」(特許請求の範囲、請求項1)
「背景技術
[0002] プラスチック包装は、全てのポリマー製品のうちのほぼ40%を占め、そのほとんどは、パーソナルケア物品用の包装(例えば、シャンプー、コンディショナー及び石鹸のボトル)、及び家庭用の包装(例えば、洗濯洗剤及びクリーニング組成物用)など、消費者製品のために使用される。
プラスチック包装用途向けの、ポリエチレン、
ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレン
などのポリマーを製造するのに使用される材料の大部分は、モノマー(例えば、エチレン、
プロピレン、テレフタル酸、エチレングリコール)
から誘導され、これらは石油、
天然ガス及び石炭
などの化石系の再生不能資源
から得られる。それゆえに、
石油、
天然ガス及び石炭
原料ストックの価格及び入手しやすさは、最終的には、プラスチック包装材料に使用されるポリマーの価格に大きく影響する。
石油、天然ガス及び/又は石炭の国際価格が上昇すると、プラスチック包装材料の価格も上昇する。その上、多くの消費者は、石油化学物質に由来する製品の購入に対して嫌悪感を示す。場合によっては、消費者は、限りある再生不能資源(例えば、石油、天然ガス及び石炭)から製造された製品を購入するのを躊躇する。
他の消費者は、石油化学物質に由来する製品について“非天然”である又は環境に優しくないものであるとして嫌悪感を有している場合もある。
[0003] それに応じて、プラスチック包装の製造業者は、その包装の一部の製造について、再生可能資源から誘導されるポリマーを使用し始めている。例えば、・・・食品包装及びパーソナルケア製品を保持するのに使用される容器の一部もまた、再生可能資源から誘導されたポリエチレンから形成されている。
[0004] 当該技術分野における
現在のプラスチック包装は、再生可能な材料から誘導されるポリマーから部分的に構成され得るが、この現在の包装は、ポリエチレン、
ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレン
などの少なくとも一部のバージン石油系材料を含む少なくとも1つの構成要素(例えば、容器、キャップ、ラベル)を含有する。
現在のプラスチック包装の中で、バージン石油系化合物を実質的に含まず、100%持続可能であり、100%リサイクル可能であり、一方で、少なくとも2年の品質保持期間を有するものは全く存在しない。
[0005] 現在のプラスチック包装はまた、リサイクルの際に困難に直面し得る。典型的なリサイクル手順の最初の数工程において一般的に使用される比重分離プロセス(floatation process)は、密度に基づいて混合物中のポリマーを分離するために使用される。水よりも密度が高いポリエチレンテレフタレートなどのポリマーは溶液の底に沈み、一方、水よりも密度が低いポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリマーは溶液の上部に浮上する。高度に充填されているか又は一部の再生可能な材料からなる現在のプラスチック包装は、多くの場合、比重分離プロセス中に沈み、ポリエチレンテレフタレート流に混入する密度が高い材料(例えば、ポリ乳酸、高充填高密度ポリエチレン(highly filled high density polyethylene)、又は高充填ポリプロピレン)を含有するので、混入問題が頻繁に生じる。ポリエチエレンテレフタレート流は混入に対して非常に影響を受けやすく、一方、ポリエチレン流は典型的にはより頑強である。
[0006] したがって、
バージン石油系化合物を実質的に含まず、100%持続可能であり、100%リサイクル可能であり、長期にわたる品質保持期間を有し、リサイクルの際の混入を最小化又は排除することができる、プラスチック包装
を提供することが望ましい。」
「発明の概要
[0007] 本発明は、持続可能な材料から製造されるリサイクル可能な物品に関する。本物品は、少なくとも2年の品質保持期間を有し、バージン石油系化合物を実質的に含まない。
・・・
[0010] さらに、本発明のこの態様の物品は、
インク(例えば、大豆系、植物系又はこれらの混合物)と
、
少なくとも約90%、
好ましくは少なくとも約93%、より好ましくは少なくとも約95%、例えば、約100%
のバイオベースの含有量を有するポリエチレン
、消費者使用後にリサイクルされたポリエチレン(PCR-PE)、産業廃棄物からリサイクルされたポリエチレン(PIR-PE)、紙及びこれらの混合物からなる群から選択される
ポリマーを含む基材と、からなるラベル
を含む。・・・ラベルがポリエチレン又はポリプロピレンからなる場合には、ラベルは、約1g/mL未満の密度を有する。・・・」
「本発明の詳細な説明
[0017] バージン石油系化合物を実質的に含まない、容器、キャップ及びラベルを含む持続可能な物品が開発された。この物品の少なくとも約90重量%、好ましくは約95重量%、より好ましくは少なくとも約97重量%は、再生可能な(すなわち、再生可能資源から誘導された)材料とリサイクル材料、粉砕再生材料又はこれらの混合物との組み合わせから誘導される。この物品は、少なくとも2年の品質保持期間を有し、100%持続可能であり、バージン石油系原料から誘導される同様の物品についての現時点での製品耐用シナリオを全て満たすことができる。
・・・
[0020]
本発明の物品は、バージン石油系原料から製造された同様の物品と同じ外観及び感触、バージン石油系原料から製造された物品と同様の性能特性(例えば、同様の落下及び天井荷重)を有し
、同様に(例えば、物品をリサイクルすることにより)処分することができるので、有利であり、更には、本発明の物品は、バージン石油系原料に由来する物品よりも、持続可能性が改善されている。
[0021] 本発明の物品はまた、物品の製造に使用されるあらゆるバージンポリマーが再生可能資源から誘導されるので、有利である。本明細書で使用するとき、「再生可能資源」は、その消費速度と同程度の速度(例えば、100年以内の時間枠)で自然プロセスにより生産されるものである。この資源は、自然に又は農業技術を介して、補充することができる。再生可能資源の非限定例としては、植物(例えば、サトウキビ、テンサイ、トウモロコシ、ジャガイモ、柑橘果実、木本植物、リグノセルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体、セルロース廃棄物)、動物、魚、細菌、真菌及び林産物が挙げられる。これらの資源は、自然生成、ハイブリッド又は遺伝子組み換え生物であり得る。
生成に100年超かかる原油、石炭、天然ガス及び泥炭などの天然資源は、再生可能資源とは考えられない。
本発明の物品の少なくとも一部は二酸化炭素と切り離すことのできる再生可能資源に由来することから、
本物品の使用は地球温暖化の可能性及び化石燃料消費量を低減することができる。
・・・
[0026] 持続可能、リサイクル可能な物品
本明細書に記載の発明は、少なくとも約2年の品質保持期間を有し、100%リサイクル可能であり、バージン石油系材料を実質的に含まない(すなわち、物品の総重量に基づいて約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約3重量%未満のバージン石油系材料)、持続可能な物品に関する。本明細書で使用するとき、“バージン石油系”は、石油、天然ガス又は石炭などの石油原料から誘導され、産業的にも又は消費者廃棄流を通してのいずれでもリサイクルされていない材料を指す。
[0027] 本発明の持続可能な物品は、容器、キャップ及びラベルを含み、これらの構成要素は各々再生可能な材料、リサイクル可能な材料、粉砕再生材料又はこれらの混合物から誘導される。容器は、少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%、より好ましくは少なくとも約97重量%、例えば、約100重量%、のバイオポリマー、リサイクルされたポリマー、粉砕再生ポリマー又はこれらの混合物を含む。キャップは、少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%、より好ましくは少なくとも約97重量%、例えば、約100重量%、のバイオポリマー、リサイクルされたポリマー、粉砕再生ポリマー又はこれらの混合物を含む。ラベルは、少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%、より好ましくは少なくとも約97重量%、例えば、約100重量%、のバイオポリマー、リサイクルされたポリマー、粉砕再生ポリマー又はこれらの混合物を含む。
[0028]
再生可能な材料の例としては、バイオポリエチレン
、バイオポリエチレンテレフタレート及びバイオポリプロピレンが挙げられる。本明細書で使用するとき、特に指示がない限り、
“ポリエチレン”は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び超低密度ポリエチレン(ULDPE)を包含する。
本明細書で使用するとき、特に指示がない限り、“ポリプロピレン”は、ホモポリマーポリプロピレン、ランダムコポリマーポリプロピレン及びブロックコポリマーポリプロピレンを包含する。
[0029] 本明細書で使用するとき、“
リサイクルされた”材料は、消費者使用後にリサイクルされた(PCR)材料、産業廃棄物からリサイクルされた(PIR)材料及びこれらの混合物を包含する。
一部の実施形態では、本発明の容器及び/又はキャップは、リサイクルされた高密度ポリエチレン、リサイクルされたポリエチレンテレフタレート、リサイクルされたポリプロピレン、リサイクルされたLLDPE又はリサイクルされたLDPEからなり、好ましくはリサイクルされた高密度ポリエチレン、リサイクルされたポリエチレンテレフタレート又はリサイクルされたポリプロピレンからなり、より好ましくはリサイクルされた高密度ポリエチレン又はリサイクルされたポリエチレンテレフタレートからなる。一部の実施形態では、
ラベルは、容器からリサイクルされた高密度ポリエチレン
、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートからなる。
[0030] 本明細書で使用するとき、“粉砕再生”材料は、細断又は粒状化により再生された、スプルー、ランナー、作りすぎたパリソン材料、並びに、射出及び吹込成形及び押出作業からの不合格部品などの熱可塑性廃棄材料である。
[0031] 本明細書で使用するとき、
接頭辞“バイオ-”は、再生可能資源から誘導された材料を指定するために使用される
。
バイオ高密度ポリエチレン(Bio-High Density Polyethylene)
[0032] 一態様では、本発明の持続可能な物品は、バイオ高密度ポリエチレンを含む。バイオポリエチレンは、バイオエチレンの重合から製造され、バイオエチレンはバイオエタノールの脱水から形成される。バイオエタノールは、例えば、(i)サトウキビ、テンサイ又はモロコシ(sorghum)からの糖の発酵、(ii)トウモロコシ(maize)、コムギ又はキャッサバの糖化、及び(iii)セルロース系材料の加水分解から誘導することができる。米国特許出願公開第2005/0272134号(参照により本明細書に組み込まれる。)は、アルコール及び酸を形成するための糖の発酵を記載している。
[0033]
・・・
[0035]
好ましい実施形態では、バイオエチレンは、サトウキビから製造される。
サトウキビからのエチレン製造のライフサイクル段階は、(i)サトウキビを栽培すること、
(ii)サトウキビを発酵させてバイオエタノールを生成すること、及び(iii)バイオエタノールを脱水してエチレンを生成すること、を含む。
具体的には、サトウキビを洗浄し、ミルに移送し、そこで濾滓を残してサトウキビ汁を抽出する。残渣は肥料及びバガス(破砕後に得られたサトウキビの残留木質繊維)として使用される。バガスは焼却されて、蒸気及びサトウキビミルの動力に使用される電力を生じ、これにより、石油系燃料の使用を低減する。サトウキビ汁は、酵母を使用して発酵させると、エタノール及び水の溶液が生成される。エタノールを、水から蒸留すると、純度約95%のバイオエタノールが生成される。
バイオエタノールを触媒脱水(例えば、アルミナ触媒を用いる)にかけて、エチレンを製造し、これを続いて重合してポリエチレンを生成させる。
[0036] 有利なことに、サトウキビから製造されたエチレンのライフサイクルアセスメント及びインベントリは、一部の態様において、地球温暖化可能性、非生物枯渇及び化石燃料消費について、石油原料から製造されるエチレンよりも好ましい効果を示す。例えば、一部の研究は、前述したようにバージン石油系原料から約1トンのポリエチレンを製造した場合、環境に対して最大で約2.5トンの二酸化炭素の放出が生じることを示している。それゆえに、サトウキビなどの再生可能資源から製造されたポリエチレンを最大で約1トン使用した場合、石油系資源から誘導されたポリエチレンを1トン使用した場合と比較して、環境における二酸化炭素は最大で約5トン低減される。
[0037]
BRASKEMは、サトウキビからの高密度ポリエチレン(HDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造を実証した(HDPE製造についてHostalen/Basell技術を使用、LLDPEについてはSpherilene/Basell技術を使用)。
これらの触媒により(一部のケースでは)、バイオポリエチレンの加工性を優れたものにすることができ、他のプロセスにより製造される現行の樹脂よりも優れた調和性を有する製品が得られる。
・・・
[0045] C.ラベル
[0046] 本発明のこの態様におけるラベルは、
少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約93%、より好ましくは少なくとも約95%、例えば、約100%のバイオベースの含有量を有するポリエチレン
、消費者使用後にリサイクルされたポリエチレン(PCR-PE)、産業廃棄物からリサイクルされたポリエチレン(PIR-PE)、紙及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む基材からなる。
このポリエチレンとしては、LDPE、LLDPE又はHDPEを挙げることができる
。・・・
・・・
[0048] ラベルは、接着剤を使用して容器に固定することができる。一部の好ましい実施形態では、接着剤は、完全に生分解性及び堆肥化可能で、欧州規格EN 13432に従っており、FDAにより認可されているBerkshire Labels製のBioTAK(登録商標)などの、再生可能な接着剤であり、収縮スリーブを使用して、あるいは、
製造中に容器上でラベルを溶融することにより
、取り付けることができる。あるいは、ラベルは、プラスチック容器に直接成型することができる。」
「物質のバイオベースの含有量の評価
[0086] 本明細書で使用するとき、「バイオベースの含有量」は、生成物中の総有機炭素の重量(質量)の百分率としての、物質中のバイオ炭素の量を指す。例えば、ポリエチレンは、その構造単位中に2個の炭素原子を含有する。エチレンが再生可能資源由来である場合、ポリエチレンのホモポリマーは炭素原子の全てが再生可能資源に由来することになるため、理論上は100%のバイオベースの含有量を有する。ポリエチレンのコポリマーもまた、エチレン及びコモノマーの両方が各々再生可能資源由来である場合、理論上は100%のバイオベースの含有量を有し得る。
コモノマーが再生可能資源に由来しない実施形態では、HDPEは典型的には、わずか約1重量%~約2重量%の再生不能なコモノマーを含むことになり
、100%より若干低い理論上のバイオベースの含有量を有するHDPEをもたらす。・・・」
「[0135] C.ラベル
[0136] 本発明の
ラベルは、フィルム押出を使用して形成することができる。
フィルム押出では、熱可塑性材料を溶融し、連続外形に形成する。
一部の実施形態では、多層フィルム
を共押出する。フィルム押出及び共押出は、当業者に既知の任意の方法により行うことができる。」
「実施例5
[0150] 以下の例は、本発明のポリエチレン及びポリプロピレンラベルを形成するのに好適な組成物の代表例である。一部の好ましい実施形態では、インクは、前述のように、再生可能資源に由来する。
41
123
0001434085000004.jpg
1
BRASKEMによる開発段階(development grade)
2
KW/PCA製の101-150
3
BRASKEMによる開発段階(development grade)
4
WELLMARK製のWM054 」
イ 上記アの記載によれば、文献1には、バージン石油系化合物を実質的に含まず、持続可能でリサイクル可能な2年の品質保持期間を有する、インクと基材とを含む、約1g/mL未満の密度であるポリエチレンラベルが開示され(特許請求の範囲、請求項1、[0010])、当該ラベルを形成するのに好適な組成物として、実施例5([0150])の表には、「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)64重量%、リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)35重量%、インク1重量%からなる組成物」(表中のB)と、「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)59重量%、リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)40重量%、インク1重量%からなる組成物」(表中のC)が記載されている。
そうすると、文献1には、実質的に次の「文献1発明」が記載されていると認められる。
<文献1発明>
「インクと基材とを含むラベルであって、
インクが1重量%、
基材が、
バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)64重量%、リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)35重量%、又は、
バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)59重量%、リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)40重量%、
からなる組成物で形成された、約1g/mL未満の密度であるポリエチレンラベル。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と文献1発明とを対比する。
文献1発明の「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」は、サトウキビを発酵させて生成したバイオエタノールを脱水して得られたエチレンを重合して製造したものであると解されるから([0032]、[0035]、[0037])、本件発明1の「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレン」に相当する。
文献1発明の「ポリエチレンラベル」は、フィルム押出を使用してラベルを形成することが記載されているから([0136])、フィルム形状であると解され、また、レジ袋を形成するものではないことから、本願発明1の「樹脂フィルム(但し、レジ袋用フィルムを除く)」に相当する。
そうすると、本件発明1と文献1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンを含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルム(但し、レジ袋用フィルムを除く)。」
<相違点1a>
「樹脂組成物」について、本件発明1は「バイオマス由来のエチレンに由来する基を前記樹脂組成物全体に対して5~95質量%含」むのに対し、文献1発明は当該基の含有量は不明である点
<相違点1b>
「樹脂組成物」について、本件発明1は「化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィン」を含み、かつ、「リサイクルされたポリエチレンを含むものを除く」のに対し、文献1発明は「リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)」を含む点
<相違点1c>
「樹脂フィルム」について、本件発明1は「カルボニル化合物、アミンおよびアミノ酸の含窒素化合物からなる群より選択される1種または2種以上の不純物を含む」のに対して、文献1発明は当該不純物の有無が不明である点
<相違点1d>
本件発明1は、「樹脂組成物」が「0.915~0.96g/cm
3
の密度」を有するのに対し、文献1発明は、「樹脂フィルム(ラベル)」が「約1g/mL未満の密度」である点
<相違点1e>
「樹脂フィルム」について、本件発明1は「ヒートシール性」であるのに対して、文献1発明はヒートシール性か否か不明である点
<相違点1f>
「樹脂組成物」について、本件発明1は、「但し、前記樹脂組成物が、チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920~0.945g/cm
3
のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体との混合樹脂であって、密度0.920~0.941g/cm
3
の範囲にあるものを除く」ものであるのに対し、文献1発明は、そのような特定はない点
イ 判断
(ア)相違点1aについて
上記アのとおり、文献1発明の「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」は、サトウキビを発酵させて生成したバイオエタノールを脱水して得られたエチレンを重合して製造したポリエチレンであると解されるところ、文献1発明の「組成物」は、「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」を「64重量%」又は「59重量%」含む。
また、文献1には、ラベルに関し、少なくとも約90%のバイオベースの含有量を有するポリエチレンを含むことが記載されているから(請求項1、[0010]、[0046])、文献1発明の「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」も、少なくとも約90%バイオベースのエチレンを含むものと解され、文献1発明における「組成物」全体におけるバイオマス由来のエチレンに由来する基の含有量は、少なくとも、57.6重量%(=64重量%×0.9)又は53.1重量%(=59重量%×0.9)であり、本件発明1の「5~95質量%」の範囲内の数値となる。
したがって、相違点1aは、実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、バイオマス由来のエチレンに由来する基の含有量は、地球環境の観点から最適化可能な事項であるから、「5~95質量%」という幅広い範囲内の数値とすることは、当業者が容易になし得たことにすぎない。
(イ)相違点1bについて
a 文献1には、「リサイクルされた」材料とは消費者使用後にリサイクルされた材料、産業廃棄物からリサイクルされた材料を包含する旨の記載があるところ([0029])、背景技術として「プラスチック包装用途向けの、ポリエチレン」を製造するのに使用される材料の大部分は、モノマー(エチレン)から誘導され、これは石油などの化石系の再生不能資源から得られることが記載されている([0002])。
そうすると、文献1発明の「リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)」は、化石燃料由来のポリエチレンがリサイクルされたものであると解するのが合理的である。
b また、文献1には、現在、プラチック包装は、バージン石油系材料を含む少なくとも一つの構成要素(component)を含有するが([0004])、石油化学物質に由来する製品は、非天然である又は環境に優しくないものであるとして消費者が嫌悪感を有している場合もあることから([0002])、「バージン石油系化合物を実質的に含まず、100%持続可能であり、100%リサイクル可能である」プラスチック包装として([0006])、文献1発明が記載されている。
文献1の上記記載に接した当業者であれば、化石燃料由来のポリエチレンがリサイクルされたものと解される、文献1発明の「リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)」は、環境に配慮して、バージンポリエチレンではなくリサイクルされたポリエチレンを用いていると理解するといえる。
他方、本件出願時において、化石燃料由来のポリエチレンとして、バージンポリエチレンを用いるか、あるいは、環境に配慮してリサイクルされたポリエチレンを用いるかは、当業者が必要に応じて適宜選択可能なものであったといえるから、文献1発明における「リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)」に代えて(すなわち「リサイクルされたポリエチレンを含むものを除く」とし)、化石燃料由来のバージンポリエチレン(すなわちリサイクルされていない「化石燃料由来のエチレン」「が重合してなる化石燃料由来のポリオレフィン」)を用いて、相違点1bに係る本件発明1の構成を有するものとすることは、当業者が適宜なし得たことといえる。
(ウ)相違点1cについて
上記アのとおり、文献1発明の「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」は、サトウキビを発酵させて生成したバイオエタノールを脱水して得たエチレンを重合して製造したポリエチレンであると解されるところ、かかるバイオエタノールを脱水して得たエチレンには、発酵工程で混入したカルボニル化合物、アミン、アミノ酸などの不純物が含まれていることは本件出願時の技術常識であり(文献2、文献3)、当該不純物を完全に除去することは相当程度の工程を必要とするといえるから、文献1発明のポリエチレンラベルも、「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」に由来する上記不純物を、少なくとも微量含有すると解するのが合理的である。
したがって、相違点1cは実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、文献1発明において、発酵工程で混入したカルボニル化合物、アミン、アミノ酸などの不純物を、コスト低減の観点から完全に除去する精製工程を行わず、かかる不純物が微量含まれたままのバイオポリエチレンを用いることにより、相違点1cに係る本件発明1の構成を有するものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
(エ)相違点1dについて
文献1発明のポリエチレンラベルの密度は「約1g/mL未満」(約1g/cm
3
)であり、本件発明1の樹脂組成物の密度と重複する。
また、ポリエチレンには、低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)など密度の異なるものがあり、それらの密度は0.890~0.970g/cm
3
の範囲内であり得るが、一般的なポリエチレンの密度は、0.910~0.960g/cm
3
の範囲であることは、本件出願時の技術常識である(参考文献A、B)。
さらに、上記アのとおり、文献1発明の「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」は、サトウキビを発酵させて生成したバイオエタノールを脱水して得られたエチレンを重合して製造したポリエチレンであると解されるところ、文献8には、バイオマス由来のエチレンから製造したポリエチレンの品質と石油系エチレンから製造したポリエチレンの品質が同等であることが記載され、さらに、いずれのポリエチレンも密度が「0.915~0.96g/cm
3
」の範囲内の値であることが示されている。
そうすると、文献1発明においても、「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」及び「リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)」の密度、また、「リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)」に代えて用いるバージンポリエチレンのいずれの密度も、「0.915~0.96g/cm
3
」の範囲内の値である蓋然性が高く、「組成物」の密度も当該範囲内にあると推認される。
したがって、相違点1dは、実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、文献1発明の組成物の密度を、一般的なポリエチレンの密度とほぼ重複する「0.915~0.96g/cm
3
」の範囲内とし、相違点1dに係る本件発明1の構成を有するものとすることに、特段の創意工夫は見いだせない。
(オ)相違点1eについて
ポリエチレンが、加熱によって溶融・融着する性質である「ヒートシール性」を有することは、本件出願時の技術常識であり(参考文献B、C)、文献1には、「ラベル」は製造中に容器上でラベルを溶融することにより取り付けることができる旨の記載があるから([0048])、文献1発明の「ポリエチレンラベル」も「ヒートシール性」であるといえる。
したがって、相違点1eは実質的な相違点ではない。
(カ)相違点1fについて
文献1発明の組成物を構成する、バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)、リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)及びインクについて、文献1には、密度や詳細な製法は記載されておらず、相違点1fにおいて「除かれているもの」に相当すると理解できる根拠は見いだせないから、文献1発明の組成物は、当該「除かれているもの」ではないと理解するのが相当である。
したがって、相違点1fは実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、文献1には、ラベルに使用するポリエチレンとしてLDPE、LLDPE、HDPEといった幅広い密度のものが使用できることが記載され([0046])、それらの製法も特定されていないことから、文献1発明の組成物として、相違点1fにおいて「除かれているもの」以外のものを用いることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
(キ)効果について
a 本件発明1によって奏される「バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5重量%以上含んでなることで、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂フィルムを実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。」(本件明細書【0020】)という効果は、当業者が想定する程度のものにすぎない。
b 本件発明1によって奏される「本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂フィルムと比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来のポリオレフィン樹脂フィルムを代替することができる。」(本件明細書【0020】)という効果も、上記(エ)に説示したとおり、バイオマス由来のエチレンから製造したポリエチレンの品質と石油系エチレンから製造したポリエチレンの品質が同等であることが知られていることから(文献8)、当業者が予測し得る程度のことにすぎない。
c 本件明細書には、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名SHA7260)である実施例1、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名LC701)である比較例1、また、上記2種のポリエチレンを、50:50で混合した実施例2、33:67で混合した実施例3について、各組成物をPETフィルム上に押し出して得た積層フィルムを製造した場合の物性を確認した表1が記載されている。
【表1】
31
89
0001434085000005.jpg
また、バイオマス由来の直鎖状低高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名SLL318)である実施例4、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名LC600A)である比較例2、また、以下のように2種又は3種のポリエチレンを混合した実施例5~7について、PETフィルム上に押し出して得た積層フィルムを製造した場合の物性を確認した表2が記載されている。
実施例5
バイオマス由来の直鎖状低高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名SLL318):化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名LC600A)=33質量部:67質量部
実施例6
バイオマス由来の直鎖状低高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名SLL318):化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名LC600A):化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名KC573)=33質量部:37質量部:30質量部
実施例7
バイオマス由来の直鎖状低高密度ポリエチレン(Braskem社製、商品名SLL318):化石燃料由来の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名LC604):化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名KS560T)=33質量部:37質量部:30質量部
【表2】
37
89
0001434085000006.jpg
表1及び表2に示された、ドローダウン、ネックイン、モーター負荷、樹脂圧力、シール開始温度の各物性に関し、バイオマス由来と化石燃料由来のポリエチレンとを混合した実施例2、3、5~7(本件発明に対応)における数値と、バイオマス由来ポリエチレン単独又は化石燃料由来のポリエチレン単独の実施例1、4、比較例1、2における数値をみると、混合すると単独成分の中間的な数値となる物性がほとんどであり、バイオマス由来ポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンを混合することで、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するとはいえないし、また、これらの結果は、特定の成分を特定の成分比で混合したことによる効果を示すものであって、本件発明の全体にわたる効果を示すものとはいえない。
特に、表2の実施例5~7、比較例2で用いられた化石燃料由来のポリエチレンは、それぞれ異なる製品を用いていることから、単純に混合した場合の効果を把握することもできない。
加えて、表1及び表2に示された各物性は、文献1発明との効果の差を示すものではないから、本件発明1は、文献1発明に比べて当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するともいえない。
ウ 小括
以上によれば、本件発明1は、文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明2~10について
ア 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において、「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含む」ことを特定したものであり、本件発明2と文献1発明とは、相違点1a~1fに加え、上記の点(相違点1g)で更に相違する。
文献1には、ラベルは少なくとも約90%のバイオベースの含有量を有するポリエチレンを含むことが記載され(請求項1、[0010]、[0046])、また、コモノマーが再生可能資源に由来しない実施形態では、約1重量%~2重量%の再生不能なコモノマーを含むことになることが記載されている([0086])から、文献1には、バイオベースのポリエチレンとして、再生可能資源に由来しないエチレン又はコモノマーを含む場合についても記載されているといえる。
ここで、上記再生可能資源に由来しないエチレン又はコモノマーとは、文献1の記載([0021])によれば、化石燃料由来のエチレン又はコモノマーであると理解できる。
また、一般に、ポリエチレンにおいて、エチレンと、1-ブテン(ブチレン)、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィンとを共重合させて、密度などの物性を調整することは技術常識であり(参考文献A、B)、バイオポリエチレンにおいても、バイオエチレンと、α-オレフィンとを共重合させることは周知である(文献5、文献6、文献7【0001】、文献8の64頁表1(コモノマーとして「C4」(炭素数4のオレフィン)が記載されている。))。
したがって、文献1発明において、バイオベースのポリエチレンとして使用された「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」に代えて、モノマーとして、約10%未満の「石油燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィン」を含むものを使用したバイオベースのポリエチレンとし、相違点1gに係る本件発明2の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
イ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2において、「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含む」ことを特定したものであり、本件発明3と文献1発明とは、相違点1a~1gに加え、上記の点(相違点1h)で更に相違する。
バイオベースのポリエチレンとして、バイオマス由来のエチレンとバイオマス由来のα-オレフィンとを重合させることは周知である(文献6、文献7【0001】)。
したがって、文献1発明において、バイオベースのポリエチレンとして使用された「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」に代えて、コモノマーとしてバイオマス由来のα-オレフィンを含むものを使用し、相違点1hに係る本件発明3の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
ウ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明2又は3において、「α-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンである」ことを特定したものであり、本件発明4と文献1発明とは、相違点1a~1hに加え、上記の点(相違点1i)で更に相違する。
上記アのとおり、一般に、ポリエチレンにおいて、エチレンと、1-ブテン(ブチレン)、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィンとを共重合させて、密度などの物性を調整することは技術常識であり(参考文献A、B)、バイオポリエチレンにおいても、バイオエチレンと、α-オレフィンとを共重合させることは周知である(文献5、文献6、文献7【0001】、文献8の64頁表1(「C4」))。
また、上記アのとおり、バイオエチレンと重合させるコモノマーとして、ヘキセン、ブチレンなどのα-オレフィンは周知である(文献5~7、文献8の64頁表1(C4))。
したがって、文献1発明において、バイオベースのポリエチレンとして使用された「バイオポリエチレン(BRASKEMによる開発段階)」に代えて、化石燃料由来又はバイオマス由来のブチレン、ヘキセン又はオクテンを含むものを使用し、相違点1iに係る本件発明4の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
エ 本件発明5、6、8~10について
本件発明5、6、8~10は、それぞれ、本件発明1~4のいずれかのヒートシール性樹脂フィルムを備えた、「包装製品」、「シート成形品」、「蓋材」、「ラミネートチューブ」、「積層フィルム」に係るものであり、本件発明5、6、8~10と文献1発明とは、相違点1a~1iに加え、上記の点(相違点1j)で更に相違する。
文献1には、文献1発明のラベルを形成する組成物と同様にバイオベースのポリエチレンとリサイクルされたポリエチレンを含む組成物の用途として、容器、キャップ、多層フィルムが記載されている(請求項1、[0136])。
したがって、ポリエチレンラベルを形成するための文献1発明の組成物を、容器、キャップ、多層フィルムと同じか、類似の用途である、「包装製品」、「シート成形品」、「蓋材」、「ラミネートチューブ」、「積層フィルム」に適用し、相違点1jに係る本件発明5、6、8~10の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
オ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1~4のいずれかの「ヒートシール性樹脂フィルムを備えた、ラベル材料」に係るものであり、文献1発明の「ポリエチレンラベル」は、本件発明7の「ラベル材料」に相当するから、本件発明7と文献1発明との相違点は、相違点1a~1iであり、新たな相違点は存在しない。
カ 小括
以上によれば、本件発明2~10は、本件発明1と同様の理由により、文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)特許権者の主張について
ア 特許権者は、本件発明のように、リサイクルされた化石燃料由来のポリエチレンを用いずに、それに代えて、リサイクルされていない、単なる化石燃料由来のポリエチレン(化石燃料由来のバージンポリエチレン)とすることは、文献1の目的や技術思想に真っ向から反し、阻害要因があるから、文献1発明から本件発明1を想到することができないことは明らかである旨を主張する(令和7年2月10日提出の意見書6~10頁)。
特許権者が指摘するように、文献1は、「バージン石油系化合物を実質的に含まない」プラスチック包装を提供することを課題とするが、それは環境に配慮したためであると解される。
他方、本件出願時において、バージン石油系化合物を用いるか、あるいは、リサイクルされた石油系化合物を用いるかは、環境への配慮を重視するか否かで、当業者が必要に応じて適宜選択していたのであるから、文献1の記載に接した当業者であれば、文献1発明の「リサイクルされたポリエチレン(KW/PCA製の101-150)」に代えて、化石燃料由来のバージンポリエチレンを用いることは、阻害要因があるとはいえず、当業者が容易に想到することができたものである。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
イ 特許権者は、化学組成が異なれば、程度の差はあれど、その化学的性質に差異が生じることは自明であるから、相違点1cは実質的な相違点であり、この点に関して、あえて、カルボニル化合物、アミン及びアミノ酸の含窒素化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の不純物を含む、性能面で同一とはいえないことが容易に理解できるヒートシール性フィルムとする動機付けは見いだせず、本件発明1が文献1記載の発明に対して進歩性を有することは明らかである旨を主張する(令和7年2月10日提出の意見書10~11頁)。
しかしながら、相違点1cについて検討したとおり、相違点1cは実質的な相違点ではなく、仮に、実質的な相違点であるとしても、文献1発明において、発酵工程で混入したカルボニル化合物、アミン、アミノ酸などの不純物が微量ながら含まれたバイオポリエチレンを用いることにより、相違点1cに係る本件発明1の構成を有するものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
ウ 特許権者は、本件明細書の表1、2に示された、ドローダウン等の機械的特性の値に関して、単純に用いた樹脂の質量比で、「実施例1・比較例1、及び実施例4・比較例2の値を按分したときの実施例2、3、5の値」よりも、「実際の実験により得られた実施例2、3、5の値」の方が、大幅に低下しており、本件発明は、バイオマス由来のポリエチレンを、適切な割合で石油由来のポリエチレンと配合して用いることによる予測不能な顕著な効果を有する旨を主張する(令和7年2月10日提出の意見書23~25頁)。
しかしながら、低い方が好ましい樹脂圧力について、実施例2(按分値5.5MPa、実測値5.8MPa)、実施例3(按分値4.99MPa、実測値5.2MPa)は、実測値の方が按分値よりも劣っているように、必ずしも、特許権者が主張するような特性ばかりではない。
また、上記(2)イ(キ)に説示したように、表1、2に示された効果が当業者が予測し得ないものであるとしても、それは、本件明細書の実施例2、3、5~7において用いられた特定の製品を用いた場合の効果であって、本件発明の全体にわたって奏する効果であるとはいえない。
したがって、特許権者が主張する、按分値と実測値に関する主張を考慮しても、上記判断には影響しない。
エ 特許権者は、本件発明は、品質面で石油由来のポリエチレンに大きく劣り、そのままでは工業上の使用に耐えないバイオマス由来のポリエチレンを、適切な割合で石油由来のポリエチレンと配合して用いることで、圧力や負荷の上昇を抑えるなどして、工業上の使用に耐えるものとするという、予測不能な顕著な作用効果を有する旨を主張する(令和7年2月10日提出の意見書27頁)。
しかしながら、文献8の表1に、石油系とバイオマス系のポリエチレンは、樹脂評価(成形性、品質、外観)、樹脂物性(MFR、Density)に関し、ほぼ同等であることが示されていることからすれば、特許権者の「バイオマス由来のポリエチレン」は「品質面で石油由来のポリエチレンに大きく劣り、そのままでは工業上の使用に耐えない」旨の主張は、直ちに認めることができない。
また、バイオマス由来のポリマーと石油由来のポリマーを配合して使用することは、文献1の背景技術の欄に記載されるように、本件出願時には一般的となっていたことから、特許権者が主張する、バイオマス由来と石油由来のポリエチレンを配合して、工業上の使用に耐えるものとするという効果は、予測不能な顕著な作用効果ではない。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
オ 特許権者は、本件訂正により、樹脂組成物の密度の下限値を、0.91~0.96g/cm
3
から、0.915~0.96g/cm
3
と限定する構成を加えており、密度を作用効果の観点からより好ましい値に限定していることから、作用効果の点でより一層の顕著な効果を有している旨を主張する(令和7年2月10日提出の意見書27~28頁)。
しかしながら、上記のように密度の範囲をわずか0.005g/cm
3
狭めたことにより、より一層の顕著な効果を奏する臨界的な意義を有する範囲となったとはいえない。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
(5)取消理由2Aについてのまとめ
以上によれば、本件発明1~10は、文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(1)文献10について
ア 文献10には、次の事項が記載されている。
(摘記10ア)
「新しい汎用バイオプラスチックも登場する。レジ袋販売で大手の福助工業は2011年から
「バイオポリエチレン」製レジ袋を販売することを、エコプロダクツ2010で明らかにした。ブラジルBraskem社がサトウキビの廃糖蜜から生産したものを輸入して原料使用する。
既にレジ袋を試作して、スーパーマーケットなどにサンプル配布をしている。バイオポリエチレンの化学構造は石油由来と基本的に全く同じ。実際に、試作品の品質は、石油由来のポリエチレンと変わらなかったと福助の担当者は述べている。
レジ袋の販売価格は、バイオポリチレン100%なら石油由来の5割増し、25%なら1割増し程度になりそう。
2011年第1四半期内の販売開始を目指して準備を進めている。」(6頁右欄11~23行)
(摘記10イ)
「
Braskem社製のバイオポリエチレンを使って製造した、スーパーマーケットなどでの配布用レジ袋
を生産・販売すると2010年12月のエコプロダクツ2010で発表。2011年の第1四半期内の販売を目指す。バイオポリエチレン100%と、
石油系ポリエチレン75%+バイオポリエチレン25%
の2つを試作している。Braskem社からバイオポリエチレンのサンプルを得て商品を試作したところ、品質は石油由来のポリエチレンで製造したものと全く変わらなかった。ただしバイオポリエレン100%のレジ袋の価格は、石油系ポリエチレン100%比べて4割増し、バイオポリエチレン25%は1割増しになりそう。いずれの商品(100%、25%)でも、バイオプラスチックの認証マークを取得する方針。福助工業は、レジ袋の販売で国内シェアトップとみられる。」(7頁の「福助工業」欄)
(摘記10ウ)
「豊田通商と共同で、ブラジルBraskem社が生産する
バイオポリエチレンのプラスチック包装材料への活用
を検討している。「Bipro(ビプロ)」として発売し、自動車や電気製品向けの産業用包装材料を中心に、
ショッピングバッグ・レジ袋・ごみ袋
・液体容器
等の汎用包装材料
まで積極的に商品展開する。2011年に5000t/年の販売を目指すとしている」(7頁の「アイセロ化学」欄)
イ 上記アの記載(摘記10イ)によれば、文献10には、石油系ポリエチレン75%、バイオポリエチレン25%からなるポリエチレンを含む組成物で製造したレジ袋が記載されており、レジ袋は、ペレットをインフレーション成形でフィルム状とし、熱溶着及び裁断の工程を経て製造されることは、本件出願時の技術常識であるから、レジ袋用フィルムも記載されているといえる。
そうすると、文献10には、次の「文献10発明」が記載されていると認められる。
<文献10発明>
「石油系ポリエチレン75%、バイオポリエチレン25%からなるポリエチレンを含む組成物で製造したレジ袋用ポリエチレンフィルム。」
(2)本件発明1について
ア 対比
文献10発明の「バイオポリエチレン」は、バイオマス由来のエチレンを原料とし、これを重合して得たポリエチレンであるから、本件発明1の「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレン」に相当する。
文献10発明の「石油系ポリエチレン」は、化石燃料である石油由来のエチレンを原料とし、これを重合して得たポリエチレンであるから、本件発明1の「化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィン」に相当し、「リサイクルされたポリエチレン」には相当しない。
また、レジ袋は、高密度ポリエチレン(HDPE)から製造されていることが通常であり(参考文献D)、HDPEの一般的な密度(文献8:表1のフィルム成形のHDPE(0.945、0.947g/cm
3
)、表2のフィルム用HDPE(0.952g/cm
3
))を考慮すると、文献10発明の「組成物」は、本件発明1の「樹脂組成物(但し、前記樹脂組成物が、チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920~0.945g/cm
3
のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体との混合樹脂であって、密度0.920~0.941g/cm
3
の範囲にあるもの、並びにリサイクルされたポリエチレンを含むものを除く)」に相当する。
そして、上記3(2)イ(オ)に説示したように、ポリエチレンはヒートシール性を有することは技術常識であるから、文献10発明のポリエチレンフィルムは、本件発明1の「ヒートシール性樹脂フィルム」に相当する。
そうすると、本件発明1と文献10発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンと、を含んでなる樹脂組成物(但し、前記樹脂組成物が、チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920~0.945g/cm
3
のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体との混合樹脂であって、密度0.920~0.941g/cm
3
の範囲にあるもの、並びにリサイクルされたポリエチレンを含むものを除く)からなるヒートシール性樹脂フィルムである、ヒートシール性樹脂フィルム。」
<相違点10a>
「樹脂フィルム」について、本件発明1は、「但し、レジ袋用フィルムを除く」ものであるのに対し、文献10発明は、「レジ袋用ポリエチレンフィルム」である点
<相違点10b>
「樹脂組成物」について、本件発明1は「バイオマス由来のエチレンに由来する基を前記樹脂組成物全体に対して5~95質量%含んでな」るのに対し、文献10発明は当該基の含有量は不明である点
<相違点10c>
「樹脂フィルム」について、本件発明は「カルボニル化合物、アミンおよびアミノ酸の含窒素化合物からなる群より選択される1種または2種以上の不純物を含」むのに対して、文献10発明は当該不純物の有無が不明である点
<相違点10d>
「樹脂組成物」について、本件発明1は「0.915~0.96g/cm
3
の密度」であるのに対して、文献10発明はその密度が不明である点
イ 判断
(ア)相違点10aについて
文献10には、アイセロ化学が、Braskem社が生産するバイオポリエチレンを、プラスチック包装材料に適用し、ショッピングバッグ・レジ袋・ごみ袋などの汎用包装材料まで商品展開をしていることが記載されていることから(摘記10ウ)、文献10発明のレジ袋用ポリエチレンフィルムを、レジ袋以外のショッピングバッグやごみ袋などの汎用の包装材料用に用い、相違点10aに係る本件発明1の構成を有するものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
(イ)相違点10bについて
文献10発明は、バイオポリエチレンの原料に占めるバイオマス由来のエチレンの割合は特定されていないもの、相当程度のバイオマス由来のエチレンを含むものといえる。
バイオポリエチレンの原料に占めるバイオマス由来のエチレンが100質量%である場合には、「石油系ポリエチレン75%、バイオポリエチレン25%からなるポリエチレン」中のバイオマス由来のエチレンに由来する基は25質量%となり、また、バイオポリエチレンのバイオマス由来のエチレンが30質量%である場合には、当該基は7.5質量%となる。
文献10発明の組成物にポリエチレン以外の他の添加成分がある程度含まれている可能性を考慮しても、文献10発明の組成物におけるポリエチレン中のバイオマス由来のエチレンに由来する基は、上記の25質量%や7.5質量%より、若干低くなるものの、本件発明1の「樹脂組成物全体に対して5~95質量%」の範囲に含まれるといえる。
そうすると、相違点10bは、実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、文献10発明において、バイオポリエチレンの原料に占めるバイオマス由来のエチレンの割合を調節したり、あるいは、環境に配慮してバイオポリエチレンの含有量を25%より増やすなどして、組成物全体におけるバイオマス由来のエチレンに由来する基の含有量を「5~95質量%」の範囲内とし、相違点10bに係る本件発明1の構成を有するものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(ウ)相違点10cについて
上記3(2)イ(ウ)に説示したように、バイオマス由来のエチレンには、発酵工程で混入したカルボニル化合物、アミン、アミノ酸などの不純物が含まれていることは本件出願時の技術常識であるから、かかるエチレンを用いて得られたポリマーを含む文献10発明のフィルムも、上記不純物を少なくとも微量含有するとみるのが合理的である。
したがって、相違点10cは実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、文献10発明において、発酵工程で混入したカルボニル化合物、アミン、アミノ酸などの不純物をコスト低減の観点から完全に除去する精製工程を行わず、かかる不純物が微量含まれたままのバイオポリエチレンを用いることにより、相違点10cに係る本件発明1の構成を有するものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
(エ)相違点10dについて
レジ袋は、高密度ポリエチレン(HDPE)から製造されることが通常であり(参考文献D)、HDPEの一般的な密度(文献8:表1のフィルム成形のHDPE(0.945、0.947g/cm
3
)、表2のフィルム用HDPE(0.952g/cm
3
))を考慮すると、文献10発明の組成物がポリエチレン以外の添加剤を含む可能性を考慮しても、文献10発明の組成物は、本件発明1の密度を満たす蓋然性が高く、相違点10dは実質的な相違点でない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、文献10発明の組成物の密度を、HDPEの一般的な密度を包含する「0.915~0.96g/cm
3
」の範囲内とし、相違点10dに係る本件発明1の構成を有するものとすることに、特段の創意工夫は見いだせない。
(オ)効果について
上記3(2)イ(キ)に説示したものと同様の理由により、本件発明1は、文献10発明に比べて当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するともいえない。
ウ 小括
以上によれば、本件発明1は、文献10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1等において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが、「化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含む」こと(相違点10e)、「バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含む」こと(相違点10f)、「α-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンである」こと(相違点10g)を特定したものであり、本件発明2~4と文献10発明とは、相違点10a~10dに加え、相違点10e~10gで更に相違する。
一般に、ポリエチレンにおいて、エチレンと、1-ブテン(ブチレン)、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィンとを共重合させて、密度などの物性を調整することは技術常識であり(参考文献A、B)、バイオポリエチレンにおいても、バイオエチレンと、α-オレフィンを共重合させることは周知である(文献5、文献6、文献7【0001】、文献8の64頁表1(コモノマー「C4」))。
したがって、文献10発明のバイオポリエチレンにおいて、モノマーとして、石油由来又はバイオマス由来の1-ブテン(ブチレン)、1-ヘキセン等のα-オレフィンを用いて重合させて、相違点10e~10gに係る構成を有するものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、本件発明2~4において、相違点10e~10gの構成を有することにより、当業者が予測できない顕著な効果を奏するものでもない。
以上によれば、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、文献10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明5~10について
本件発明5~10は、それぞれ、本件発明1~4のいずれかのヒートシール性樹脂フィルムを備えた、「包装製品」、「シート成形品」、「ラベル材料」、「蓋材」、「ラミネートチューブ」、「積層フィルム」に係るものであり、本件発明5~10と文献10発明とは、相違点10a~10gに加え、上記の点(相違点10h)で更に相違する。
文献10には、アイセロ化学が、Braskem社が生産するバイオポリエチレンを、プラスチック包装材料に適用し、ショッピングバッグ・レジ袋・ごみ袋・液体容器などの汎用包装材料まで商品展開をしていることが記載されている(摘記10ウ)。
また、文献10と同様に、Braskem社のバイオポリエチレンを用いた物品が記載された文献1には、バイオポリエチレンを含む組成物の適用例として、容器、キャップ、ラベル、多層フィルム(請求項1、[0136])が記載されており、これらの適用例は、ポリエチレンの適用例として一般的なものである。
したがって、文献10発明を、レジ袋以外の、包装製品、シート成形品、ラベル材料、蓋材、ラミネートチューブ、積層フィルムに適用し、相違点10hに係る本件発明5~10の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
以上によれば、本件発明1~4と同様の理由により、本件発明5~10は、文献10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)特許権者の主張について
ア 特許権者は、文献10において、密度に着目し、本件発明1の密度要件を充足するように改変する動機付けはない旨を主張する(令和7年2月10日提出の意見書22頁)。
しかしながら、本件発明1の「0.915~0.96g/cm
3
」は、高密度ポリエチレン(HDPE)の一般的な密度(文献8:0.945、0.947、0.952g/cm
3
)を包含するものであり、上記(2)イ(エ)のとおり、密度をこの範囲とすることに特段の創意工夫は見いだせない。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
(6)取消理由2Dについてのまとめ
以上によれば、本件発明1~10は、文献10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
以上のとおりであるから、本件発明1~10は、文献1又は文献10に記載された発明に基づいて、当者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
また、請求項11は、本件訂正により削除されたので、請求項11に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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