結論テキスト
特許第7391987号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕、〔13-22〕について訂正することを認める。
特許第7391987号の請求項1-22に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024700534 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7391987号(以下「本件特許」という。)の請求項1~22に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)3月24日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張、外国庁受理2019年3月25日、2019年9月27日、いずれも米国)、令和5年11月27日にその特許権の設定登録がされ、同年12月5日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 6月 5日 : 特許異議申立人六條直樹(以下「申立人」
という。)による請求項1~22に係る特
許に対する特許異議の申立て
同年 9月24日付け: 取消理由通知書
同年12月20日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
令和7年 2月28日 : 意見書の提出(申立人)
同年 4月30日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
同年 8月 5日 : 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 9月19日 : 意見書の提出(申立人)
なお、令和6年12月20日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
令和7年8月5日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、この請求を「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第7391987号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~22について訂正することを求める。」というものであり、その内容は以下のとおりである。下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「認証情報装置に保存された認証情報を受信するべく前記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成された第1コントローラと、」
とあるのを、
「
前
記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用し
て認
証情報装置と通信
して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立
するように構成された第1コントローラと、」
に訂正する。請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記第2アンテナを介して第2通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成された第2コントローラであって、通信リンクを介して前記第1コントローラと通信するように構成される前記第2コントローラと、を備える読取器システム。」
とあるのを、
「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記第2アンテナを介して第2通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成された第2コントローラであって、通信リンクを介して前記第1コントローラと通信するように構成される前記第2コントローラと、を備え
、前記第2コントローラは、前記通信リンクを介して前記第1コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される、
読取器システム。」
に訂正する。請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項13に
「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記UWBアンテナを介してUWB通信を使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたUWBコントローラであって、通信リンクを介して前記読取器コントローラと通信するように構成された前記UWBコントローラと、を含む前記UWB回路と、を備えるシステム。」
とあるのを、
「
前
記読取器アンテナを介して低電力通信プロトコルを使用し
て認
証情報装置と通信
して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立
するように構成された読取器コントローラと、」
に訂正する。請求項13の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14~22も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請の範囲の請求項13に
「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記UWBアンテナを介してUWB通信を使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたUWBコントローラであって、通信リンクを介して前記読取器コントローラと通信するように構成された前記UWBコントローラと、を含む前記UWB回路と、を備えるシステム。」
とあるのを、
「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記UWBアンテナを介してUWB通信を使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたUWBコントローラであって、通信リンクを介して前記読取器コントローラと通信するように構成された前記UWBコントローラと、を含む前記UWB回路と、を備え
、前記UWBコントローラは、前記通信リンクを介して前記読取器コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される、
システム。」
に訂正する。
(1)本件訂正前の請求項1~12は、請求項2~12がそれぞれ訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるから、本件訂正前の請求項1~12に対応する本件訂正後の請求項1~12は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)本件訂正前の請求項13~22は、請求項14~22がそれぞれ訂正事項3によって記載が訂正される請求項13に連動して訂正されるから、本件訂正前の請求項13~22に対応する本件訂正後の請求項13~22は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「第1コントローラ」が、「前記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信
し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立する
ように構成された」ものとして、「第1コントローラ」が「認証情報を受信」することに加えて「認証情報装置と秘密を確立する」点を限定するものである。(下線は強調のために当審において付した。以下同様。)
また、訂正前の請求項2~12は直接的又は間接的に請求項1を引用するから、請求項1の訂正により、訂正後の請求項2~12も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の「第2コントローラ」が、「前記通信リンクを介して
前記第1コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する
ように構成される」ものとして、「第2コントローラ」が「認証情報装置に対する」「測距を実行する」条件として、「第1コントローラ」から「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信する」ことと、「前記秘密を使用」することを限定するものである。
また、訂正前の請求項2~12は直接的又は間接的に請求項1を引用するから、請求項1の訂正により、訂正後の請求項2~12も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項2の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の請求項13の「読取器コントローラ」が、「前記読取器アンテナを介して低電力通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信
し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立
するように構成された」ものとして、「読取器コントローラ」が「認証情報を受信」することに加えて「認証情報装置と秘密を確立する」点を限定するものである。
また、訂正前の請求項14~22は直接的又は間接的に請求項13を引用するから、請求項13の訂正により、訂正後の請求項14~22も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項3の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、本件訂正前の請求項13の「UWBコントローラ」が、「前記通信リンクを介して
前記読取器コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する
ように構成される」ものとして、「UWBコントローラ」が「認証情報装置に対する」「測距を実行する」条件が、「読取器コントローラ」から「秘密」及び「認証情報装置の識別子」を含む「データ」を「受信する」ことと、「秘密を使用」することであることを限定するものである。
また、訂正前の請求項14~22は直接的又は間接的に請求項13を引用するから、請求項13の訂正により、訂正後の請求項14~22も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項4の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
前記訂正事項1~4の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当しないから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、特許権の設定の登録がされた時点での願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面である。
(1)訂正事項1
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の段落【0020】には、「クレデンシャル装置が読取機システム108の閾値範囲内に到来した際に、
コントローラ406は、アンテナ408bを通じたBLEを利用してクレデンシャル装置との間でクレデンシャルを交換する
ことができる。
次いで、コントローラ406は
、UWB通信を使用した測距を可能にするべく
クレデンシャル装置との間で
スクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの
秘密を確立する
ことができる。」と記載されている。
そうすると、本件明細書等には、訂正事項1に係る、「第1コントローラ」が「前記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記
認証情報装置と秘密を確立する
ように構成された」ものであることが記載されているといえる。
よって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、上記1(1)での検討を踏まえると、訂正事項1の訂正は「第1コントローラ」に係る構成を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
本件明細書等の段落【0018】には、「読取機システム108は、
通信リンク404上
において
通信
するように構成された
読取機400及びUWBモジュール402
を含む。・・・
読取機400は、コントローラ406
・・・
を含む
。」と記載され、段落【0020】には、「コントローラ406は、
UWB通信を使用した測距を可能にするべくクレデンシャル装置との間でスクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの秘密を確立する
ことができる。
UWB測距は
、例えば、
UWBモジュール402のコントローラ426によって実行する
ことができる。これは、
コントローラ406からのデータの受取りの際に動作
しうる。
データは、STS
、PACS-IDなどの
クレデンシャルの識別子
及びこれらに類似したもの
を含みうる
。」と記載されている。
すなわち、本件明細書等には、「UWBモジュール402のコントローラ426」は、「通信リンク404上」における「通信」により、「読取機400」の「コントローラ406」からの、「スクランブルされたタイムスタンプ(STS)」「などの秘密」及び「クレデンシャルの識別子」を含む「データの受取りの際に」、「UWB測距」を「実行する」ことが記載されているところ、このとき、「UWB通信を使用した
測距を可能にするべく
クレデンシャル装置との間で」「STS」「などの
秘密を確立する
」ことから、「UWBモジュール402のコントローラ426」による「測距」の「実行」には当該「確立」された「(STSなどの)秘密」が必要であること、すなわち、「測距」の「実行」に「確立」された「(STSなどの)秘密」が使用されることは明らかであるといえる。
そうすると、本件明細書等には、訂正事項2に係る、「第2コントローラ」が「前記通信リンクを介して
前記第1コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する
ように構成される」ことが記載されているといえるから、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項2の訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、上記1(2)での検討を踏まえると、訂正事項2の訂正は、「第2コントローラ」が「認証情報装置に対する」「測距を実行する」ための条件として、「第1コントローラ」から「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信する」こと、及び、「前記秘密を使用」することを限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
本件明細書等の段落【0020】には、「クレデンシャル装置が読取機システム108の閾値範囲内に到来した際に、
コントローラ406は、アンテナ408bを通じたBLEを利用してクレデンシャル装置との間でクレデンシャルを交換する
ことができる。
次いで、コントローラ406は
、UWB通信を使用した測距を可能にするべく
クレデンシャル装置との間で
スクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの
秘密を確立する
ことができる。」と記載されている。
そうすると、本件明細書等には、訂正事項3に係る、「読取器コントローラ」が「前記読取器アンテナを介して低電力通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記
認証情報装置と秘密を確立する
ように構成された」ものであることが記載されているといえる。
よって、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、上記1(3)での検討を踏まえると、訂正事項3の訂正は、「読取器コントローラ」に係る構成を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4
本件明細書等の段落【0018】には、「読取機システム108は、
通信リンク404上
において
通信
するように構成された
読取機400及びUWBモジュール402
を含む。・・・
読取機400は、コントローラ406
・・・
を含む
。」と記載され、同段落【0020】には、「コントローラ406は、
UWB通信を使用した測距を可能にするべくクレデンシャル装置との間で
スクランブルされたタイムスタンプ(
STS
)
などの秘密を確立する
ことができる。
UWB測距は
、例えば、
UWBモジュール402のコントローラ426によって実行する
ことができる。これは、
コントローラ406からのデータの受取りの際に動作
しうる。
データは、STS
、PACS-IDなどの
クレデンシャルの識別子
及びこれらに類似したもの
を含みうる
。」と記載されている。
すなわち、本件明細書等には、「UWBモジュール402のコントローラ426」は、「通信リンク404上」における「通信」により、「読取機400」の「コントローラ406」からの、「STS」「などの秘密」及び「クレデンシャルの識別子」を含む「データの受取りの際に」、「UWB測距」を「実行する」ことが記載されているところ、このとき、上記段落【0020】の「UWB通信を使用した
測距を可能にするべく
クレデンシャル装置との間で」「STS」「などの
秘密を確立する
」との記載から、「UWBモジュール402のコントローラ426」による「測距」の「実行」のために、当該「確立」された「秘密」が使用されることも明らかである。
そうすると、本件明細書等には、訂正事項4に係る、「UWBコントローラ」が「前記通信リンクを介して
前記読取器コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する
ように構成される」ことが記載されているといえるから、訂正事項4に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項4の訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、上記1(4)の検討を踏まえると、訂正事項4の訂正は、「読取器コントローラ」が「認証情報装置に対する」「測距を実行する」条件が、「読取器コントローラ」から「秘密」及び「認証情報装置の識別子」を含む「データ」を「受信する」ことと、「秘密を使用」することであることを限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
本件特許異議の申立てにおいては、本件訂正前の請求項1~22について特許異議申立てがされているので、本件訂正後における請求項1~22に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
上記1~3より、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。
よって、上記結論のとおり、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕、〔13~22〕について訂正することを認める。
本件訂正前の請求項1~22に係る特許に対して、当審において令和6年9月24日付けで、特許権者に通知した取消理由の理由1及び理由2の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1、2、6、10に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記先行文献に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、2、6、10に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
本件特許の請求項1~22に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において発行された下記甲第1~甲第8号証及び先行文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~22に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
記
(各文献一覧)
甲第1号証 :特開2018- 71190号公報
甲第2号証 :特開2018-165450号公報
甲第3号証 :特表2017-538875号公報
甲第4号証 :特開2010-177205号公報
甲第5号証 :特開2008- 74157号公報
甲第6号証 :特開2016-165061号公報
甲第7号証 :特開2016- 82372号公報
甲第8号証 :特開平10 -210040号公報
(以下、申立人が提出した甲第1~8号証を、単に「甲1」~「甲8」という。)
先行文献 :米国特許出願公開第2019/0052314号明細書
(先行文献は、職権調査により発見したものである。)
上記第3で説示したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~22に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるとおりのものである。(以下、請求項の番号により「本件訂正発明1」等といい、これらを併せて「本件訂正発明」という。)
なお、下記第6の2以降の対比分析の議論のために、本件訂正発明1を構成1A~1Eに分説し、本件訂正発明13を構成2A~2Dに分説する。(なお、下線は本件訂正により訂正された部分を示す。)
「【請求項1】
1A アクセス制御システム用の読取器システムであって、
1B 第1及び第2アンテナと、
1C
前
記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用し
て認
証情報装置と通信
して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立
するように構成された第1コントローラと、
1D 前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記第2アンテナを介して第2通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成された第2コントローラであって、通信リンクを介して前記第1コントローラと通信するように構成される前記第2コントローラと、を備え
、
1E
前記第2コントローラは、前記通信リンクを介して前記第1コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される、
読取器システム。」
「【請求項13】
2A システムであって、
2B 読取器回路であって、
2B1 読取器アンテナと、
2B2
前
記読取器アンテナを介して低電力通信プロトコルを使用し
て認
証情報装置と通信
して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立
するように構成された読取器コントローラと、
を含む前記読取器回路と、
2C 超広帯域(UWB)回路であって、
2C1 UWBアンテナと、
2C2 前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記UWBアンテナを介してUWB通信を使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたUWBコントローラであって、通信リンクを介して前記読取器コントローラと通信するように構成された前記UWBコントローラと、
を含む前記UWB回路と、
を備え
、
2D
前記UWBコントローラは、前記通信リンクを介して前記読取器コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される、
システム。」
(1)甲1に記載された事項と甲1発明の認定
ア 甲1に記載された事項
甲1(特開2018-71190号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した。(以下同様。)
(ア)【0018】、【図1】
「【0018】
以下、電子キーシステムの一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示されるように、電子キーシステム1は、
運転者によって携帯される電子キー10と、車両2に配設される一つの車載機20
とを備えている。
電子キーシステム1
においては、
電子キー10と車載機20との間で自動的に相互通信が行われ、その相互通信が車外及び車内にて成立したことを条件としてドア錠の施解錠
及びエンジンの始動
が制御される
。」
「【図1】
97
144
0001434107000001.jpg
」
(イ)【0019】~【0026】
「【0019】
先ず電子キー10の構成について説明する。
電子キー10は、無線通信機能を有し、車載機20との相互通信を通じて、各種車載機器の制御を行う
。
電子キー10は、電子キー制御部11
と、UHF帯の要求信号を受信するUHF受信部12と、UHF帯の応答信号を送信するUHF送信部13と、LF帯の要求信号を受信するLF受信部14と、測距応答部としてのキー側UWB送受信ユニット15
を備えている
。キー側UWB送受信ユニット15は、超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)の測距要求信号Sdcを受信するUWB受信部16と、超広帯域の測距応答信号を送信するUWB送信部17とを有している。これらUHF受信部12、UHF送信部13、及びキー側UWB送受信ユニット15は、それぞれ電子キー制御部11に電気的に接続されている。
・・・(中略)・・・
【0022】
また、
電子キー制御部11には、不揮発性のメモリ11aが設けられ、そのメモリ11aには電子キー10に固有のIDコード、測距コード及び暗号鍵が記憶されている
。当該暗号鍵は、チャレンジ信号に含まれる暗号化されたチャレンジコードの復号化、及び測距応答信号Sdrの暗号化に利用される。なお、
チャレンジコードの暗号化に利用する暗号鍵、及び測距応答信号Sdrの暗号化に利用する暗号鍵は、同一鍵であっても
、別の鍵であっても
よい
。
【0023】
UHF受信部12は、
車載機20から送信される
UHF帯のビークルID信号Svi及び
チャレンジ信号Sccを受信すると
、これら信号Svi,Sccを復調する等、電気的に処理しつつ受信信号を生成し、これらの受信信号を電子キー制御部11へ出力する。電子キー制御部11は、UHF受信部12から受信信号が入力されると、その受信信号に含まれる受信データを読み取る。
【0024】
電子キー制御部11は、受信データに基づき受信した無線信号がビークルID信号Sviである旨認識すると、UHF送信部13を介してUHF帯のアック信号Sacを車両2側へ返信する。また、
電子キー制御部11は
、受信データに基づき受信した無線信号がチャレンジ信号Sccである旨認識すると、メモリ11aに登録された
IDコード及びレスポンスコードを含むレスポンス信号Sreを
UHF送信部13へ出力する。そして、UHF送信部13は、レスポンス信号Sre電気的に処理しつつUHF帯の無線信号に変調し、
車両2側へ送信する
。なお、
レスポンスコードはチャレンジコードを、暗号鍵を用いて演算して暗号化した
コードである。なお、UHF受信部12には、UHF受信アンテナ12aが一体で構成され、UHF送信部13には、UHF送信アンテナ13aが一体で構成される。
【0025】
UWB受信部16は、車載機20から送信された
インパルス信号からなる測距要求信号Sdcを受信
可能である。インパルス信号は、パルス幅が2ns以下で帯域幅が500MHz以上の非常に短いパルス信号として規定される。このインパルス信号を利用して距離の測定を行う場合について、電磁波の速さをC、帯域幅をBとすると、距離分解能△rは△r=C/2Bで表わされ、帯域幅として500MHzを選択すると、約0.3mの距離分解能が得られる。UWB受信部16は、
インパルス信号を受信すると
、その信号を復調する等、電気的に処理しつつ受信信号を生成し、この受信信号を電子キー制御部11に出力する。
【0026】
電子キー制御部11は
、UWB受信部16から受信信号が入力されると、自信のメモリ11aに記憶された測距コードを暗号化するとともに、この
暗号化した測距コード及び測距応答信号Sdrの生成に要した時間を示すデータを含む測距応答信号Sdrを生成し
、測距応答信号SdrをUWB送信部17に出力する。そして、UWB送信部17は、電子キー制御部11から測距応答信号Sdrが入力されると、この
測距応答信号Sdrを
電気的に処理しつつ超広帯域の無線信号に変調し、
車両2側に送信する
。なお、UWB受信部16には、UWB受信アンテナ16aが一体で構成され、UWB送信部17には、UWB送信アンテナ17aが一体で構成される。」
(ウ)【0027】~【0040】
「【0027】
次に車載機の構成について説明する。
車載機20は、各種車載機器を制御する車載制御部21と
、LF帯の信号を送信するLF送信部22と、
UHF送受信ユニット23と、測距要求部としての車載UWB送受信ユニット24とを備えている
。
UHF送受信ユニット23は、UHF帯の信号を送信するUHF送信部25と、UHF帯の信号を受信するUHF受信部26とを有する送受信アンテナユニットであり
、
車載UWB送受信ユニット24は超広帯域の信号を送信するUWB送信部27と、超広帯域の信号を受信するUWB受信部28とを有する送受信アンテナユニットである
。これらLF送信部22、UHF送受信ユニット23、及び車載UWB送受信ユニット24は、それぞれ車載制御部21に電気的に接続されている。
・・・(中略)・・・
【0033】
また、図1に示すように、
UHF送受信ユニット23及び車載UWB送受信ユニット24は、車外及び車内に存在する電子キー10との通信が可能である
。
UHF送信部25は
、車載制御部21からビークルID信号Svi及び
チャレンジ信号Scc
が入力されると、これらの信号Svi,
Sccを
電気的に処理しつつUHF帯の無線信号に変調し、予め設定された間欠周期で
UHF送信アンテナ25aを介して
車両2の周囲を広く覆う通信エリア(図示略)に
送信
する。
車載制御部21は、チャレンジ信号Sccを発信する際、自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを暗号化することにより、自らもレスポンスコードを生成する
。なお、
チャレンジ信号Sccは、乱数として用いるチャレンジコードを含む
。また、UHF受信部26は、UHF受信アンテナ26aを介して電子キー10から送信されるアック信号Sac及びレスポンス信号Sreを受信すると、これらの信号Sac,Sreを復調する等、電気的に処理しつつ受信信号を生成し、この受信信号を車載制御部21へ出力する。なお、
UHF送信部25にはUHF送信アンテナ25aが一体で構成され、UHF受信部26にはUHF受信アンテナ26aが一体で構成される
。
【0034】
UWB送信部27は、車載制御部21から測距応答信号Sdrが入力されると、この測距応答信号Sdrを電気的に処理しつつ超広帯域の無線信号に変調し、UWB送信アンテナ27aを介して車両2の周囲を広く覆う通信エリア(図示略)に送信する。また、
UWB受信部28は、UWB受信アンテナ28aを介して電子キー10から送信される測距応答信号Sdrを受信すると、この信号を復調する
等、電気的に処理しつつ受信信号を生成し、この受信信号を車載制御部21へ出力する。なお、
UWB送信部27には、UWB送信アンテナ27aが一体で構成され、UWB受信部28には、UWB受信アンテナ28aが一体で構成される
。
【0035】
車載制御部21は、不揮発性のメモリ21aを備え、メモリ21aには対応する電子キー10に設定されたIDコードと同一のIDコード、同じく電子キー10に設定された測距コードと同一の測距コード及び暗号鍵が記憶されている
。
暗号鍵は
、レスポンスコードの演算及び
測距応答信号Sdrの復号化に利用され
る。なお、
測距応答信号Sdrの復号化に利用する暗号鍵
と、
レスポンスコードの演算に利用される暗号鍵は、同一鍵
であっても、別の鍵であってもよい。そして、車載制御部21は、IDコード照合、レスポンス照合及び距離照合に基づいて電子キー10との間の正規通信か否かの正否判定を行う。
【0036】
具体的には、
車載制御部21は
、UHF送信部25を通じて送信したチャレンジ信号Sccに応答して
電子キー10から送信されたレスポンス信号Sre
がUHF受信部26を介して受信されると、そのレスポンス信号Sreに含まれるIDコードとメモリ21aに記録されたIDコードとのIDコード照合を行う。IDコード照合では、
レスポンス信号Sreに含まれるIDコードとメモリ21aに記録されたIDコードとが一致する場合に、照合成立と判断する
。
【0037】
また、車載制御部21は、レスポンス信号Sreに含まれるレスポンスコードと
、自身が暗号鍵を通じて演算したレスポンスコードとを照らし合わせて、レスポンス照合を行う。レスポンス照合では、レスポンス信号Sreに含まれるレスポンスコードと、
自身が暗号鍵を通じて演算したレスポンスコードとが一致する場合に、照合成立と判断する
。
【0038】
さらに、車載制御部21は、測距要求信号Sdc及び測距応答信号Sdrに基づいて演算される測定距離と、電子キー10が存在する通信エリア41に基づいて設定される閾値範囲42とを照らし合わせて距離照合を行う。
距離照合においては、車載制御部21は、
測距応答信号Sdrを受信すると、
測距応答信号Sdrに含まれる測距コード、及び電子キー10が測距要求信号Sdcを受信してから測距応答信号Sdrを発信するまでにかかった応答時間を暗号鍵を通じて演算する
。そして、車載制御部21は、
測距応答信号Sdrに含まれる測距コードと、自身のメモリ21aに記憶された測距コードとを照らし合わせて、測距応答信号Sdrが電子キー10からの応答により送信された信号であるか否かを判定する
。そして、測距応答信号Sdrが電子キー10からの応答により送信された
信号である場合には、測距要求信号Sdcの発信から測距応答信号Sdrの受信までにかかった往復時間、及び測距応答信号Sdrに含まれる応答時間に基づいて、車載UWB送受信ユニット24から電子キー10
(キー側UWB送受信ユニット15)
までの距離を測定する
。
距離照合では、測定距離が閾値範囲42内に含まれる場合に距離照合が成立したと判定する
。
【0039】
以上のようにして、電子キー10が車外に存在する旨判断される場合に上記正否判定において正規通信であると判定すると、車外照合が成立したとして、車両ドアは解錠可能状態とされる。この解錠可能状態において、車載制御部21はユーザがドアハンドルに触れたとドアハンドルセンサ32を通じて検知したとき、ドアロック装置34を介して車両ドアを解錠する。
【0040】
一方、電子キー10が車内に存在する旨判断される場合に上記正否判定において正規通信であると判定すると、車内照合が成立したとして、エンジン始動許可状態とされる。このエンジン始動許可状態において、運転席近傍に設置されるエンジンスイッチ33が操作されると、その操作信号が車載制御部21に出力される。車載制御部21はエンジン始動許可状態において前記操作信号を検知すると、エンジン制御装置35に指令信号を出力する。エンジン制御装置35は、当該指令信号に基づき、図示しないセルモータを駆動させてエンジン制御を開始する。」
(エ)【0041】~【0045】、【図4】
「【0041】
次に、電子キー10及び車載機20間での車外照合時における正否判定の処理手順について説明する。
図4に示すように、車載機20は、通信エリア41に電子キー10が存在するか否かを確認すべく、LF送信部22からLF帯のウェイク信号Swkを通信エリア41に断続的に発信させる(ステップS1)。電子キー10が通信エリア41に入り、ウェイク信号Swkを受信すると、電子キー10は待機状態から起動状態に動作状態が切り換わり、その旨を通知すべく車両2に向けてアック信号Sacを返信する(ステップS2)。
【0042】
車載機20は、アック信号Sacを受信すると、電子キー10が何れの通信エリア41に存在するかを判断し、UHF送信部25からビークルID信号Sviを送信する(ステップS3)。電子キー10は、ビークルID信号Sviを受け付けると、ビークルID信号Sviが自身に対応する車両2からのものであるか否かを確認するビークルID照合を通じて、車両2が正規の車両であるか否かの判定を行う。このように、ビークルID照合を行うことで、電子キー10の周囲に複数の車両が存在して、同複数の車両から要求信号を受信する状況になっても、正規車両のみとの間でビークルID信号Sviの受信以降の正否判定にかかる通信を行うことが可能になる。そして、電子キー10は、このビークルID照合が成立した事を認識すると、その旨を通知すべく車両2に向けてアック信号Sacを返信する(ステップS4)。
【0043】
車載機20は、ビークルID信号Sviを発信した後に正常にアック信号Sacを受信すると、電子キー10との間でビークルID照合が成立したと認識し、通信エリア41内に存在する電子キー10が自身とペアをなすものである旨認識する。このとき、車載機20は、電子キー10が存在する通信エリア41との間の距離に基づいて閾値範囲42を設定する。そして、車載機20は、次にチャレンジ信号SccをUHF送信アンテナ25aから送信する(ステップS5)。電子キー10は、車両2からチャレンジ信号Sccを受信すると、自身のメモリ11aに記憶されたIDコード及びレスポンスコードを含むレスポンス信号Sreを車両2側に返信する(ステップS6)。
【0044】
車載機20は、レスポンス信号Sreを受信すると、レスポンス信号Sreに含まれるIDコードと、自身のメモリ21aに記憶されたIDコードとを照らし合わせてID照合を行う。また、車載機20は、電子キー10のレスポンスコードと、自身が演算したレスポンスコードとを照らし合わせて、レスポンス照合を実行する。そして、
車載機20は、レスポンス照合及びIDコード照合が成立することを確認すると、UWB送信部27から測距コードを含む測距要求信号Sdcを送信する
(ステップS7)。電子キー10は、車両2から測距要求信号Sdcを受信すると、自身のメモリ11aに記憶された測距コード及び測距応答信号Sdrの生成に要した応答時間を含む測距応答信号Sdrを車両2側に返信する(ステップS8)。
【0045】
車載機20は、測距応答信号Sdrを受信すると、測距応答信号Sdrに含まれる測距コードと、自身のメモリ21aに記憶された測距コードとを照らし合わせて照合を行う。そして、これらの測距コードが一致した場合には、応答時間及び往復時間に基づいて電子キー10までの距離を測定し、距離照合を行う。これらID照合、レスポンス照合及び距離照合が成立したこと以て正規通信であるとして車外照合が成立し、車両ドアが解錠可能状態とされる(ステップS9)。なお、車内照合の場合も、基本的には車外照合と同様にして行われ、車内照合が成立した場合にはエンジン始動許可状態とされる。」
「【図4】
134
87
0001434107000002.jpg
」
イ 甲1発明の認定
上記アの記載事項を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲1発明>
a 運転者によって携帯される電子キー10と、車両2に配設される一つの車載機20との間で自動的に相互通信が行われ、その相互通信が車外及び車内にて成立したことを条件としてドア錠の施解錠が制御される電子キーシステム1の車載機20であって、(【0018】)
b 車載機20は、各種車載機器を制御する車載制御部21と、LF帯の信号を送信するLF送信部22と、UHF送受信ユニット23と、測距要求部としての車載UWB送受信ユニット24とを備えており、(【0027】)
車載機20のUHF送受信ユニット23は、UHF帯の信号を送信するUHF送信部25と、UHF帯の信号を受信するUHF受信部26とを有する送受信アンテナユニットであり、(【0027】)
UHF送信部25にはUHF送信アンテナ25aが一体で構成され、UHF受信部26にはUHF受信アンテナ26aが一体で構成され、(【0033】)
車載UWB送受信ユニット24は超広帯域の信号を送信するUWB送信部27と、超広帯域の信号を受信するUWB受信部28とを有する送受信アンテナユニットであり、(【0027】)
UWB送信部27には、UWB送信アンテナ27aが一体で構成され、UWB受信部28には、UWB受信アンテナ28aが一体で構成され、(【0034】)
UHF送受信ユニット23及び車載UWB送受信ユニット24は、車外及び車内に存在する電子キー10との通信が可能であり、(【0033】)
c1 電子キー10は、無線通信機能を有し、車載機20との相互通信を通じて、各種車載機器の制御を行い、電子キー10は、電子キー制御部11を備え、電子キー制御部11には、不揮発性のメモリ11aが設けられ、そのメモリ11aには電子キー10に固有のIDコード、測距コード及び暗号鍵が記憶されており、チャレンジコードの暗号化に利用する暗号鍵、及び測距応答信号Sdrの暗号化に利用する暗号鍵は、同一鍵であってもよく、(【0019】、【0022】)
c2 車載機20の車載制御部21は、不揮発性のメモリ21aを備え、メモリ21aには対応する電子キー10に設定されたIDコードと同一のIDコード、同じく電子キー10に設定された測距コードと同一の測距コード及び暗号鍵が記憶されており、(【0035】)
c3 車載機20のUHF送信部25は、乱数として用いるチャレンジコードを含むチャレンジ信号Sccを、UHF送信アンテナ25aを介して送信し、車載制御部21は、チャレンジ信号Sccを発信する際、自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを暗号化することにより、自らもレスポンスコードを生成し、(【0033】)
車載機20から送信されるチャレンジ信号Sccを受信すると、電子キー制御部11は、IDコード、及び、チャレンジコードを暗号鍵を用いて演算して暗号化したレスポンスコードを含む、レスポンス信号Sreを車両2側へ送信し、(【0023】、【0024】)
c4 車載機20の車載制御部21は、UHF送信部25を通じて送信したチャレンジ信号Sccに応答して電子キー10から送信されたレスポンス信号SreがUHF受信部26を介して受信されると、そのレスポンス信号Sreに含まれるIDコードとメモリ21aに記録されたIDコードとのIDコード照合を行い、IDコード照合では、レスポンス信号Sreに含まれるIDコードとメモリ21aに記録されたIDコードとが一致する場合に、照合成立と判断し、(【0036】)
また、車載制御部21は、レスポンス信号Sreに含まれるレスポンスコードと、自身が暗号鍵を通じて演算したレスポンスコードとを照らし合わせて、レスポンス照合を行い、レスポンス照合では、レスポンス信号Sreに含まれるレスポンスコードと、自身が暗号鍵を通じて演算したレスポンスコードとが一致する場合に、照合成立と判断し、(【0037】)
de 車載機20は、レスポンス照合及びIDコード照合が成立することを確認すると、UWB送信部27から測距コードを含む測距要求信号Sdcを送信し、(【0044】)
測距要求信号Sdcを受信すると、電子キー制御部11は、暗号化した測距コード及び測距応答信号Sdrの生成に要した時間を示すデータを含む測距応答信号Sdrを生成し、車両2側に送信し、(【0025】、【0026】)
UWB受信部28は、UWB受信アンテナ28aを介して電子キー10から送信される測距応答信号Sdrを受信すると、この信号を復調しつつ受信信号を生成し、この受信信号を車載制御部21へ出力し、(【0034】)
車載制御部21は、測距応答信号Sdrを受信すると、レスポンスコードの演算に利用される暗号鍵と同一鍵を利用して測距応答信号Sdrを復号化し、(【0035】)
距離照合においては、車載制御部21は、測距応答信号Sdrに含まれる測距コード、及び電子キー10が測距要求信号Sdcを受信してから測距応答信号Sdrを発信するまでにかかった応答時間を暗号鍵を通じて演算し、測距応答信号Sdrに含まれる測距コードと、自身のメモリ21aに記憶された測距コードとを照らし合わせて、測距応答信号Sdrが電子キー10からの応答により送信された信号である場合には、測距要求信号Sdcの発信から測距応答信号Sdrの受信までにかかった往復時間、及び測距応答信号Sdrに含まれる応答時間に基づいて、車載UWB送受信ユニット24から電子キー10までの距離を測定し、距離照合では、測定距離が閾値範囲42内に含まれる場合に距離照合が成立したと判定し、(【0038】)
車載制御部21は、IDコード照合、レスポンス照合及び距離照合に基づいて電子キー10との間の正規通信か否かの正否判定を行う、(【0035】)
車載機20。」
(2) 甲2に記載された事項と甲2技術事項の認定
ア 甲2に記載された事項
甲2(特開2018-165450号公報)には、以下の事項が記載されている。
(ア)【0001】、【0008】~【0009】
「【0001】
本発明は、
車両に備わる制御装置と、ユーザが所持する電子キーおよび携帯機とから構成される車両制御システムに関する
。」
「【0005】
・・・たとえば、スマートフォンと車両との間の通信には、Bluetooth(登録商標;以下同様)のような近距離無線が用いられるが、近距離無線はオープン規格であって仕様が公開されていることから、悪意のある第三者によってハッキングされやすい。特に、近距離無線では、待ち受け時に車両側からビーコン(Beacon)信号が高頻度で送信されるため、これを足掛かりにハッカーが攻撃対象の車両を特定し、ユーザが車両から離れたのを見計らって車両に接近しハッキングを行うリスクが高い。」
「【0008】
本発明による車両制御システムは、車両に搭載され当該車両を制御する車両制御装置と、ユーザにより所持され車両制御装置と通信が可能な電子キーと、ユーザにより所持され車両制御装置および電子キーと通信が可能な携帯機とを備えている。車両制御装置は、ユーザの乗車時または降車時に所定の条件が成立した場合に、電子キーとの通信に基づいて、当該電子キーの所在位置を判定する。そして、電子キーの所在位置が車内である場合は、車両制御装置は携帯機と直接通信を行う。また、電子キーの所在位置が車外である場合は、車両制御装置は、携帯機との通信を切断状態とするとともに、携帯機と電子キーとの間の通信を接続状態とし、電子キーを介して携帯機と通信を行う。
【0009】
このような車両制御システムによると、電子キーが車外にある場合は、車両制御装置は携帯機と直接通信を行わず、電子キーを介して携帯機と通信を行う。このため、電子キーがゲートウェイの役割を果たし、セキュリティ性が向上する。また、電子キーが車外にある場合に、車両制御装置と携帯機との間の通信が切断されるので、当該通信にセキュリティ性の低い近距離無線が用いられていても、第三者によるハッキングを未然に防止できる。したがって、携帯機を用いて様々な機能を実現できる利便性を保ちながら、携帯機を車両に接続する際のセキュリティリスクを低減することができる。また、携帯機が車内にあるか車外にあるかを判別し、携帯機の所在位置に応じて、車両制御装置と携帯機との間の通信ルートを切り替えるので、ユーザが特別な操作をしなくても、最適の通信ルートを自動的に選択することができる。」
(イ)【0019】、【0020】、【図1】
「【0019】
まず、車両制御システムの構成を、図1および図2を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示すように、車両制御システム100は、車両Vに搭載された車両制御装置1と、この車両制御装置1と無線通信が可能な電子キー2と、車両制御装置1および電子キー2と無線通信が可能な携帯機3とから構成される。携帯機3は、たとえばスマートフォンである。電子キー2と携帯機3は、車両Vの所有者であるユーザAが所持している。ユーザAは、電子キー2を用いて車両Vのドアの施錠・解錠などを行い、また、携帯機3を用いて、車載機器の設定や操作を行ったり、データやプログラムのダウンロードを行ったりする。」
「【図1】
130
97
0001434107000003.jpg
」
(ウ)【0025】~【0030】、【図2】
「【0025】
図2は、車両制御装置1、電子キー2、および携帯機3の具体的構成を示している。以下、それぞれについて詳細に説明する。」
「【図2】
164
125
0001434107000004.jpg
」
「【0026】
車両制御装置1は、第1制御部10A、第2制御部10B、および第3制御部10Cを備えている
。
第1制御部10Aには、LF(Low Frequency)送信部11、UHF受信部12、およびリクエストスイッチ13などが接続されている
。
第2制御部10Bには、近距離無線部14と長距離無線部15などが接続されている
。第3制御部10Cには、ドア制御部16と車載機器制御部17などが接続されている。車両制御装置1には、これら以外にも各種のブロックが含まれているが、本発明に直接関係しないため、それらの図示を省略してある。
【0027】
第1制御部10A、第2制御部10B、および第3制御部10Cは、それぞれ制御対象ごとに割り当てられたECU(Electronic Control Unit)からなり、CPUやメモリなどを備えている
。
第1制御部10Aは、キーレスエントリやパッシブエントリの動作を制御するECUであり、第2制御部10Bは、近距離無線通信や長距離無線通信を制御するECU
であり、第3制御部10Cは、車両本体に備わるドアや車載機器などを制御するECU
である
。
これらの制御部10A~10Cは、共通のバス50に接続されている
。
【0028】
LF送信部11は、電子キー2の所在位置を確認するためのLF信号(応答要求信号)を送信する。UHF受信部12は、電子キー2から送信される第1UHF信号(応答信号)を受信する。リクエストスイッチ13は、ドアのノブ付近に設けられてユーザの手の接触(または接近)を検出するパッシブエントリ用のスイッチである。
【0029】
近距離無線部14は、BLE(Bluetooth Low Energy)などの近距離無線によって電子キー2および携帯機3と通信を行うための、送受信回路やアンテナから構成される
。
長距離無線部15は、電子キー2との間でUHF通信を行うための、送受信回路やアンテナから構成される
。
【0030】
ドア制御部16は、車両のドアの施錠・解錠を行うドアロック装置や、ドアの開閉を行うドア開閉装置などからなる。車載機器制御部17は、シート、ミラー、ライト、空調装置、オーディオ装置、カーナビゲーション装置などの各種車載機器を駆動するための駆動回路や、この駆動回路の動作を制御する制御回路などから構成される。」
イ 甲2技術事項の認定
上記アの記載事項を総合すると、甲2には、次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<甲2技術事項>
「車両に備わる制御装置と、ユーザが所持する電子キーおよび携帯機とから構成される車両制御システムであって、(【0001】)
車両制御装置1は、第1制御部10A、第2制御部10B、および第3制御部10Cを備えており、第1制御部10Aには、LF(Low Frequency)送信部11、UHF受信部12およびリクエストスイッチ13などが接続されており、第2制御部10Bには、近距離無線部14と長距離無線部15などが接続されており、(【0026】)
近距離無線部14は、BLE(Bluetooth Low Energy)などの近距離無線によって電子キー2および携帯機3と通信を行うための、送受信回路やアンテナから構成され、長距離無線部15は、電子キー2との間でUHF通信を行うための、送受信回路やアンテナから構成され、(【0029】)
第1制御部10A、第2制御部10B、および第3制御部10Cは、それぞれ制御対象ごとに割り当てられたECU(Electronic Control Unit)からなり、CPUやメモリなどを備えており、第1制御部10Aは、キーレスエントリやパッシブエントリの動作を制御するECUであり、第2制御部10Bは、近距離無線通信や長距離無線通信を制御するECUであり、(【0027】)
これらの制御部10A~10Cは、共通のバス50に接続されている、(【0027】)
車両制御システム。」
(3)甲3に記載された事項と周知技術Bの認定
ア 甲3に記載された事項
甲3(特表2017-538875号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【背景技術】
【0003】
現在、ユーザは、例えばスマートフォンなどの、モバイル機器によって乗り物の機能の実行を制御することができる。問題となっている機能は、例えば、乗り物のロック/アンロック、乗り物の始動、自動駐車などの機能のうちの1つである。一部の用途では、これらの機能のうちの1つを実行できるようにするために、モバイル装置は、乗り物の少なくとも1つの機能の実行を許可する識別キーを予め記憶している必要がある。識別キーは、モバイル装置の安全な要素に、例えばそのSIMカードに、格納される。モバイル装置をユーザに保持することによって、ユーザは、例えば、乗り物の開放可能な本体部分のロックを解除することができる。この目的のために、識別キーに含まれるデータが、特に認証データが、モバイル装置と乗り物の電子モジュールとの間で交換され、それにより乗り物の識別キーが有効であるかどうかが判定される。有利な実施形態では、
これらのデータ交換は、BLE(Bluetooth Low Energy)プロトコルに従って実行される
。」
イ 周知技術Bの認定
甲3に例示されているように、次の事項は当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術B」という。)。
<周知技術B>
「データ交換を、BLE(Bluetooth Low Energy)プロトコルに従って行うこと。」
(4)甲4、5に記載された事項と周知技術Cの認定
ア 甲4に記載された事項
甲4(特開2010-177205号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、
自動車等の車両において、ユニットケースに収容される複数個の電子ユニット
を車両側回路に接続するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内に装備される複数個の電子ユニットをワイヤハーネスを介して車両側回路に接続するための技術として、例えば特許文献1の図1には、共通のユニットケースに収納されて特定箇所に保持された
複数のECU(電子制御ユニット)
のコネクタに対し、前記ワイヤハーネス側のコネクタをそれぞれ結合するものが開示されている。」
「【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態とは異なる参考例を図1~図8に基づいて説明する。
【0022】
ここに示すワイヤハーネス10は、多数本の電線が束ねられてなるワイヤハーネス本体12と、そのワイヤハーネス本体12の特定の電線13の端末に設けられた複数個(図例では3個)のハーネス側コネクタ14と、これらのハーネス側コネクタ14を保持するユニットケース16とを含んでいる。このユニットケース16には
複数個(図例では3個)の電子ユニット18が挿入可能であり
、その挿入状態で、各電子ユニット18に設けられているユニット側コネクタ20(図6~図8)がこれに対応するハーネス側コネクタ14と対峙して結合可能な位置に保持されるようになっている。」
「【0028】
前記各電子ユニット18は、略直方体状のケース32を備え
、そのケース32内に図6~図8に示すような回路基板34を収容している。そして、この回路基板34の後側端部(図6~図8では左側端部)に前記ユニット側コネクタ20が実装されるとともに、このユニット側コネクタ20をユニット後方に開放するための窓36が前記ケース32に形成されている。」
「【図1】
107
144
0001434107000005.jpg
」
「【図6】
92
144
0001434107000006.jpg
」
イ 甲5に記載された事項
甲5(特開2008-74157号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ECU搭載集中BOXの内部にECUケースを組み付ける構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、
車両内には、複数個のECUケースが搭載されている
。この搭載について詳述すると、複数個のECUケースは、区画された複数のスペースを有するECU集中搭載BOXの各スペース内にそれぞれ挿入されて組み付けられている。そして、このECU集中搭載BOXは、車両内の所定の場所に組み付けられている。」
ウ 周知技術Cの認定
甲4及び甲5に例示されているように、次の事項は当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術C」という。)。
<周知技術C>
「車両内には、複数のECU(電子制御ユニット)があり、各ECUはそれぞれケースに格納されていること。」
(5)甲6に記載された事項と周知技術Dの認定
ア 甲6に記載された事項
甲6(特開2016-165061号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、携帯端末キーにより通信相手と通信する携帯端末キーシステムに関する。」
「【0014】
以下、携帯端末キーシステムの一実施形態を図1~図3に従って説明する。
図1に示すように、車両1は、
携帯端末キー2を車両キーとして使用可能な携帯端末キーシステム3
を備える。携帯端末キー2は、例えば高機能携帯電話(スマートフォン)や専用携帯機にキー機能(専用のアプリケーション)を登録することによって実現される。携帯端末キーシステム3の通信には、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)が使用される。また、本例のブルートゥース通信には、通信の省電力化のために
BLE(Bluetooth Low Energy)
が使用されている。
【0015】
携帯端末キー2は、携帯端末キー2の動作を管理する制御部4と、携帯端末キー2において無線通信(
本例は
ブルートゥース通信)に準じた電波を送受信する通信部(アンテナ及び通信回路を含む)5と、外部からの解析攻撃に耐え得るセキュアエレメント6とを備える
。制御部4のメモリ7には、ブルートゥース通信のペアリングがなされた車両1との紐付けの証拠となるペアリング情報8が書き込み保存されている。
セキュアエレメント6には、携帯端末キー2により車両1と無線によるキー照合(ID照合)を行うときに使用されるキー情報9が書き込み保存されている
。キー情報9は、携帯端末キー2の固有のIDであるキーIDと、通信を暗号化するときに使用する暗号鍵とを含む。セキュアエレメント6は、例えばSIM(Subscriber Identity Module)カードであるとよい。」
「【図1】
160
116
0001434107000007.jpg
」
イ 周知技術Dの認定
甲6に例示されているように、次の事項は当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術D」という。)。
<周知技術D>
「ID照合を行うためのID情報を、セキュアエレメントに保存して、セキュリティを高めること。」
(6)甲7に記載された事項と甲7技術事項の認定
ア 甲7に記載された事項
甲7(特開2016-82372号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.構成]
図1は、本発明が適用された実施形態の電子キーシステムの構成を表すブロック図である。本実施形態の
電子キーシステムは、車両1に搭載された車両制御システム2と、車両1のユーザが携帯し得る携帯通信端末3とを備える
。
【0012】
[1-1.携帯通信端末の構成]
携帯通信端末3は、車両1の車両ドアの施錠解錠操作やエンジンの始動操作等を行うための電子キーとしての機能を備える電子機器であり、
例えば、いわゆるスマートフォンと呼ばれる高機能携帯電話等により具現化される。
携帯通信端末3は、制御部30、NFC通信回路31、BT通信回路32を備える
。また、図示しないが、画像撮像のためのアウトカメラ、インカメラ、音声出力を行うためのスピーカ、画像を表示するためのディスプレイ等を備える。
【0013】
制御部30は、図示しないCPU、ROM、RAM等を有するマイクロコンピュータを備える電子機器であり、携帯通信端末3の各種動作の制御を行う。制御部30(ROM)には、携帯通信端末3を車両1に予め登録された電子キー(以下、登録キーという)として機能させるための識別情報として、認証用のIDコードが記録されている。制御部30は、NFC通信回路31及びBT通信回路32に接続されており、車両1に搭載された車両制御システム2に対して、それぞれの通信回路を介して異なる通信方式の無線通信により、認証用のIDコードの送信を行う。
【0014】
NFC通信回路31は、車両1に搭載されたNFC通信機12との間で、近接場型の近距離無線通信(NFC)の通信規格に従ったNFC通信方式で無線通信を行う通信回路である。携帯通信端末3側に搭載されるNFC通信回路31には、NFCの通信機能のうち、少なくともカードエミュレーション機能が実装される。カードエミュレーション機能は、パッシブタイプの通信機能である。これにより、NFC通信回路31は、車両1に搭載されたNFC通信機12の通信可能範囲に携帯通信端末3が位置する場合、NFC通信機12から受信した搬送波から電力を得て起動し、認証用のIDコードをNFC通信機12に送信する。
【0015】
BT通信回路32は、車両1に搭載されたBT通信機16との間でBluetooth(登録商標)規格に従った通信方式(以下、BT通信方式という)で無線通信を行う通信回路である。なお以下では、Bluetoothを略して記載するための用語として、「BT」との表記を用いる。BT通信回路32は、車両1に搭載されたBT通信機16の通信可能範囲に携帯通信端末3が位置する場合、認証用のIDコードをBT通信機16に送信し、BT通信方式によるデータ通信を行う。
【0016】
つまり、
携帯通信端末3は、NFC通信回路31及びBT通信回路32のどちらによっても、少なくとも認証用のIDコードを車両制御システム2に送信できるようになっている
。
【0017】
[1-2.車両制御システムの構成]
車両制御システム2は、車両1に搭載され、
前述のように
携帯通信端末3と通信を行うことによって、少なくとも車両1の車両ドアの施錠解錠やエンジンの始動を行うためのシステムである
。
車両制御システム2は、BT通信機16、NFC通信機12、ロックセンサ21、アンロックセンサ22、エンジンスイッチ23、ボデーECU24、エンジンECU25、電源切替装置26、及び認証ECU11を備える
。
【0018】
BT通信機16は、携帯通信端末3に備えられたBT通信回路32との間でBT通信方式でデータ通信を行う
。BT通信機16は、車室内及び車両1周囲の予め定められた範囲、例えば車両1から約数m~数十mの範囲をカバーするエリアを通信可能範囲(以下、BT通信可能範囲)とする。BT通信機16は、BT通信可能範囲に存在する携帯通信端末3との間で、周知のBT通信方式の手続きに従って、BT通信方式による通信接続(以下、BT接続という)を確立することが可能である。BT接続が確立されることにより、BT通信機16は、携帯通信端末3との間で、BT通信方式によるデータ通信が可能となる。
【0019】
NFC通信機12は、携帯通信端末3に内蔵されたNFC通信回路31との間で、NFC通信方式で通信を行う
。車両1側に搭載されるNFC通信機12には、少なくともNFCのリーダライタ機能が実装される。また、カードエミュレーション機能、及びP2P機能が追加で実装されてもよい。これにより、NFC通信機12は、該NFC通信機12に電源が供給されている起動中は、携帯通信端末3のNFC通信回路31に電力を供給するための搬送波を断続的に発信し、この搬送波を受信することにより電力を得て起動したNFC通信回路31との間で、通信を行う。NFC通信機12は、NFCアンテナ15を備え、NFCアンテナ15にて受信された受信信号からデータを復調して認証ECU11へ出力する。」
「【図1】
133
116
0001434107000008.jpg
」
イ 甲7技術事項の認定
前記アの記載事項を総合すると、甲7には、次の技術事項(以下「甲7技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<甲7技術事項>
「車両1に搭載された車両制御システム2と、車両1のユーザが携帯し得る携帯通信端末3とを備える電子キーシステムであって、(【0011】)
携帯通信端末3は、車両1の車両ドアの施錠解錠操作やエンジンの始動操作等を行うための電子キーとしての機能を備える電子機器であり、制御部30、NFC通信回路31、BT通信回路32を備え、(【0012】)
携帯通信端末3は、NFC通信回路31及びBT通信回路32のどちらによっても、少なくとも認証用のIDコードを車両制御システム2に送信できるようになっており、(【0016】)
車両制御システム2は、車両1に搭載され、携帯通信端末3と通信を行うことによって、少なくとも車両1の車両ドアの施錠解錠やエンジンの始動を行うためのシステムであり、車両制御システム2は、BT通信機16、NFC通信機12、ロックセンサ21、アンロックセンサ22、エンジンスイッチ23、ボデーECU24、エンジンECU25、電源切替装置26、及び認証ECU11を備え、(【0017】)
BT通信機16は、携帯通信端末3に備えられたBT通信回路32との間でBT通信方式でデータ通信を行い、(【0018】)
NFC通信機12は、携帯通信端末3に内蔵されたNFC通信回路31との間で、NFC通信方式で通信を行う、(【0019】)
電子キーシステム。」
(7)甲8に記載された事項と周知技術Aの認定
ア 甲8に記載された事項
甲8(特開平10-210040号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明は、上記問題に鑑み、
車両内の電気機器を制御する電子制御装置間の配線が簡単化できる
車載用多重通信装置を提供することを目的とする。」
「【0013】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明に係る車載用無線多重通信装置の第1の例を説明する図である。本図(a)に示す如く従来の例では、例えば、配線1はエンジンルームのエンジン制御ECU2に接続されエンジンルームとフロントパネル側との間を隔離するしきいを貫通して他のECUへ接続される。これに対して、本図(b)に示す如く、本発明の車載用無線多重通信装置では、エンジン制御ECU2に無線機3が設けられ、しきいの反対側のフロントパネル側の配線1には無線機3と交信を行う無線機4が設けられる。
無線機3と4との間ではしきいを透過する電磁波で交信が行われるので、しきいには貫通穴を設ける必要がなくなり、さらに配線、組付け作業が不要となる
。」
「【図1】
112
144
0001434107000009.jpg
」
イ 周知技術Aの認定
甲8に例示されているように、次の事項は当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術A」という。)。
<周知技術A>
「車両内の制御装置間を無線で通信することで配線を簡単化すること。」
(8)甲9に記載された事項と周知技術Eの認定
ア 甲9に記載された事項
申立人が、令和7年2月28日に意見書に添付して提出した甲第9号証(特許第4145809号公報、以下単に「甲9」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0025】
移動端末2は、無線通信が可能でユーザが携帯する無線通信装置であり、例えば携帯電話である。第1、第2および第3通信部3,4,5は、図2に示すように、車両1の運転席側、助手席側、後部トランク側にそれぞれ設置される。なお、通信部の数や設置場所には特に制限はないが、通信部の数は2以上が望ましい。」
「【0029】
図1に戻って、無線強度測定部9は、第1、第2および第3通信部3,4,5がそれぞれ受信した携帯電話2からの受信信号の信号強度を測定する。そして、距離推定部10は、測定された信号強度に基づいて携帯電話2からの距離を推定する。距離推定部10は、3カ所で測定された信号強度に基づいて携帯電話2からの距離を推定する、いわゆる多点測拒を行うことで、距離の測定精度を高める。」
「【0048】
上述した第1の実施形態では、最初に携帯電話2と無線通信を行う車両1側の錠装置が携帯電話2からの
識別情報(デバイスアドレス)
要求を受信して応答する例を示したが、識別情報のやり取りの手順は上述したものに限定されない。
・・・。」
「【0050】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、
最初に携帯電話2と通信を行った最先通信部が他の通信部に携帯電話2のデバイスアドレスを伝達するものである
。
【0051】
図9は本発明の第2の実施形態に係る通信装置の内部構成を示すブロック図である。図9の通信装置は、図1の通信装置の構成に加えて、他の通信部に携帯電話2のデバイスアドレスを伝達するための識別情報伝達部12を備えている。」
「【図9】
111
121
0001434107000010.jpg
」
「【0052】
図10は図9の通信装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下では、図7のフローチャートと異なる部分を中心に説明する。ユーザがドアの開錠ボタンb1,b2,b3のいずれかを押すと(ステップS42)、開錠ボタンb1の近傍の第1通信部3は携帯電話2のデバイスアドレスの取得試行動作を開始する(ステップS43)。
【0053】
第1通信部3が携帯電話2のデバイスアドレスを取得すると、第1通信部3は取得したアドレスの携帯電話2と接続する(ステップS44)。そして、第1通信部3は携帯電話2からの無線信号強度を測定する(ステップS45)。次に、第1通信部3は、第2通信部4に対して、取得したデバイスアドレスを持つ携帯電話2との接続開始を指示する(ステップS46)。
【0054】
第2通信部4が携帯電話2とリンク接続ができると、無線信号強度を測定し(ステップS47~S49)、次に、第1通信部3は、第3通信部5に対して、取得したデバイスアドレスを持つ携帯電話2との接続開始を指示する(ステップS50)。第3通信部5が携帯電話2とリンク接続ができると(ステップS51,S52)、無線信号強度の測定結果に基づいて携帯電話2との距離を推定して、ドアを開錠するか否かを判断する(ステップS53~S55)。
【0055】
このように、第2の実施形態では、
最初に携帯電話2と通信を行った最先通信部が他の通信部に携帯電話2のデバイスアドレスを伝達し、他の通信部はこのデバイスアドレスを頼りに携帯電話2と通信を行うようにしたため、他の通信装置は最先通信部が通信した携帯電話以外の携帯電話と誤接続することがなくなり、確実にユーザの携帯電話2とだけ接続を行うことができるので、セキュリティ性が向上する
。」
【0056】
第2の実施形態では、最先通信部からデバイスアドレスを伝達された他の通信部は、このデバイスアドレスを持つ携帯電話2とリンク接続を行う例を示したが、リンク接続を行わずに、携帯電話2からの信号を単に受信してもよい。携帯電話2が信号を送信する際、その信号の中に自身のデバイスアドレスを含めることができる。したがって、他の通信部は、携帯電話2との間でリンク接続を行わなくても、携帯電話2からの信号を受信すれば、指示されたデバイスアドレスを持つ携帯電話2からの信号か否かを判断できる。」
「【0066】
上述した各実施形態では、車両1に搭載される通信装置について説明したが、本発明は車両1以外にも適用可能である。また、上述した各実施形態では、動作実行装置がドアの開錠を行う例を説明したが、動作実行装置が行う動作の種類は特に限定されない。例えば、車両1の窓の開閉、イグニッション制御、サイドミラー制御などにも適用可能である。あるいは、車両1以外の例としては、自動改札機などにも適用可能である。」
イ 周知技術Eの認定
甲9に例示されているように、次の事項は当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術E」という。)。
<周知技術E>
「車両に搭載される通信装置の技術分野において、複数の通信部が単一のデバイスと通信を行う場合、最先通信部が取得したデバイスの識別情報を他の通信部に伝達して、他の通信部が前記デバイスの識別情報を用いて通信を行うことで、他の通信部が、最先通信部と通信したデバイス以外のデバイスと誤接続することがないようにして、セキュリティ性を向上させること。」
(9)甲10に記載された事項
申立人が、令和7年9月19日に意見書に添付して提出した甲第10号証(特開2016-38332号公報、以下単に「甲10」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0018】
・・・図1に示すように、車両1は、電子キー2と無線によりID照合を行う電子キーシステム3を備える。電子キーシステム3は、車両1からの通信を契機に狭域無線(通信距離:1~数m)によりID照合を実行するキー操作フリーシステムである。なお、以降は、キー操作フリーシステムのID照合を「スマート照合」と記し、その通信を「スマート通信」と記す。
【0019】
車両1は、ID照合において電子キー2の正当性を確認する照合ECU(Electronic Control Unit)4と、車載電装品の電源を管理するボディECU5と、エンジン7を制御するエンジンECU6とを備える。これらECUは、車内の通信線8を通じて接続されている。通信線8は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)である。照合ECU4のメモリ9には、車両1に登録された電子キー2のIDとして電子キーIDが書き込み保存されている。」
「【0023】
車外送信機10が車外にLF電波の通信エリアを形成するとき、電子キー2がこの通信エリアに進入すると、車外スマート照合が実行される。
車外スマート照合には、車両1が持つ固有の車両コードを認証する車両コード照合と、暗号鍵を使用したチャレンジレスポンス認証と、電子キーIDを認証する電子キーID照合とが含まれる
。照合ECU4は、車外スマート照合のとき、車外に位置する電子キー2において、これら照合の全てが成立するか否かを確認する。一方、照合ECU4は、電子キー2が車内送信機11の通信エリアに進入すると、車内スマート照合を開始し、車外スマート照合と同様の各種照合を実行する。
【0024】
電子キーシステム3は、
通信マスタ19(
一例は
照合ECU4)と通信端末20(
一例は
電子キー2)との距離dを測定する距離測定システム21を備える
。本例の
距離測定システム21の動作の前提は
、通信マスタ19及び通信端末20の双方から、ランダムな送信パターンで
UWB(Ultra Wide Band)電波Suwbを送り合うこと
である。距離測定システム21は、電子キーシステム3のID照合の通信課程において、2者間の距離dを測定する。電子キーシステム3は、スマート照合(車外スマート照合、車内スマート照合)において、前述の各種照合(車両コード照合、チャレンジレスポンス認証、電子キーID照合)と、距離dが規定値以内か否かを判定する距離照合とが成立することを確認すると、スマート照合を成立として処理する。」
「【0030】
距離測定システム21は、タイミング情報Dtiを通信マスタ19及び通信端末20の片方に集める情報収集部31を備える。情報収集部31は、タイミング情報Dtiを相手に送る側の情報通知部31aと、情報通知部31aによって送られたタイミング情報Dtiを受け取る側の情報取得部31bとを備える。距離dを通信マスタ19で測定する場合、
情報通知部31aが通信端末20に設けられ
、情報取得部31bが通信マスタ19に設けられる。
情報通知部31aは、タイミング情報Dtiを暗号通信によって車両1に送信するとよい。暗号通信には、チャレンジレスポンス認証に使用する暗号鍵を使用するとよい
。」
「【0036】
図5に、本例の距離測定システム21の動作の手順を図示する。事前認証部33は、例えば定期又は不定期のあるタイミングにおいてスマート通信を実行することにより、車外送信機10(車内送信機11)から、電子キー2を起動させるウェイク信号Swkを断続的にLF送信する。電子キー2は、ウェイク信号Swkを受信すると待機状態から起動し、アック信号Sackを車両1にUHF送信する。事前認証部33は、ウェイク信号Swkを送信してから一定時間内にアック信号Sackを受信できると、スマート通信が確立すると判断し、車両コード照合、チャレンジレスポンス認証及び電子キーID照合等の各種照合を電子キー2と実行する。
車両1は、これらID照合が成立することを開始すると、距離照合に移行する
。
【0037】
なお、ここで課すID照合は、車両コード照合、チャレンジレスポンス認証、電子キーID照合に限定されず、これら照合のうちの1つのみ課してもよい。また、ここで課すID照合は、これら照合に限定されず、要は車両1と電子キー2とのペアリングを確認できる認証であればよい。なお、
距離照合を開始する事前に2者間の照合を実施しないのであれば、距離照合の過程の中で、車両1及び電子キー2のペアリング(電子キーID)を確認することが必要
である。」
(10)先行文献に記載された事項と先行発明の認定
ア 先行文献に記載された事項
本件特許の優先日前である2019年2月14日に公開された、前記先行文献(米国特許出願公開第2019/0052314号明細書)には、以下の事項が記載されている。なお、翻訳文は当審において作成した。
(ア) [0038]~[0055]、Fig.1
「[0038] The invention may apply to any type of contactless system where a portable contactless device is intended to establish a communication session with a contactless reader. The portable contactless device may be any device associated with a user. For example, the portable contactless device may be a mobile phone, a tablet, a wearable device (like a watch or a bracelet) or an Electronic Funds Transfer Terminal for payment. Preferably,
the contactless reader is a fixed device like access control machine for
transport network
or a building
.」
([0038] 本発明は、携帯型非接触デバイスが非接触リーダーとの通信セッションを確立することを目的とする、あらゆるタイプの非接触システムに適用することができる。携帯型非接触デバイスは、ユーザーに関連する任意のデバイスであってよい。例えば、携帯型非接触デバイスは、携帯電話、タブレット、(時計やブレスレットのような)ウェアラブルデバイス、又は支払い用の電子送金端末であってもよい。好ましくは、
非接触リーダーは、
交通網や
建物のアクセス制御装置のような固定装置である
。)
「[0039] The terms wireless unit and wireless device are considered to have the same meaning in this specification.」
([0039] 無線ユニットと無線デバイスという用語は、本明細書では同じ意味を持つものとする。)
「[0040] FIG. 1 shows an example of system SY including a contactless reader D1, a wireless unit D3 and a portable contactless device D2 according to the invention.」
([0040] 図1は、本発明による非接触リーダーD1、無線ユニットD3及び携帯型非接触デバイスD2を含むシステムSYの一例を示す。)
「
146
96
0001434107000011.jpg
」
「[0041]
The contactless reader D1 comprises a communication interface NFC-1 able to communicate according to a standard belonging to Near Field Communication domain
.
The contactless reader D1 may be a conventional NFC reader
.」
([0041]
非接触リーダーD1は、近距離無線通信(Near Field Communication)の分野に属する規格に従って通信可能な通信インターフェースNFC-1を含む
。
非接触リーダーD1は、従来のNFCリーダーであってもよい。
)
「[0042] In this example, a wireless unit D3 is fixed near the contactless reader D1. For instance, the wireless unit D3 may be a sticker placed on the contactless reader D1. Alternatively, the wireless unit D3 may be placed close to the contactless reader D1 or embedded in the contactless reader D1 itself.」
([0042] この例では、非接触リーダーD1の近傍に無線ユニットD3が固定されている。例えば、無線ユニットD3は、非接触リーダーD1に貼られたシールであってもよい。あるいは、無線ユニットD3は、非接触リーダーD1の近くに配置されてもよいし、非接触リーダD1自体に埋め込まれてもよい。)
「[0043]
The wireless unit D3 comprises a communication interface NFC-2 able to communicate according to the same standard as the communication interface NFC-1
.
Thus a communication channel C1 may be established using a NFC protocol between the interfaces NFC-1 and NFC-2
.」
([0043]
無線ユニットD3は、通信インターフェースNFC-1と同じ規格に従って通信できる通信インターフェースNFC-2を備えている
。
したがって、通信チャネルC1はインターフェースNFC-1とNFC-2の間でNFCプロトコルを使用して確立される
。)
「[0044]
The wireless unit D3 comprises a communication interface UWB-1 able to communicate according to another radio technology configured
:
[0045] to operate with a range greater than the range of the NFC technology,
[0046]
to detect the position of the portable device D2 with respect to the wireless unit D3
, and
[0047] to handle an anti-collision phase.」
([0044]
無線ユニットD3は、設定された別の無線技術に従って通信可能な通信インターフェースUWB-1から構成されることで、
:
[0045] NFC技術の範囲よりも広い範囲で動作する、
[0046]
無線ユニットD3に対する携帯機器D2の位置を検出する
[0047] 衝突防止フェーズを処理する。)
「[0048] The wireless unit D3 is set to establish a communication channel C2 with the portable contactless device D2 through the communication interface UWB-1.」
([0048] 無線ユニットD3は、通信インターフェースUWB-1を介して携帯型非接触デバイスD2と通信チャネルC2を確立するように設定されている。)
「[0049] The wireless unit D3 comprises a bridge agent M1 configured to establishing a bridge between the communications interfaces NFC-2 and UWB-1 only if the detected position of the portable device D2 matches with the contactless reader D1. In other words, the bridge agent M1 is adapted to establish a bridge between the contactless reader D1 and the portable device D2 through said first and second communication channels C1 and C2 only if the detected position of the portable device D2 matches with the location of the contactless reader D1.」
([0049] 無線ユニットD3は、検出された携帯機器D2の位置が非接触リーダーD1と一致する場合にのみ、通信インターフェースNFC-2とUWB-1との間にブリッジを確立するように構成されたブリッジエージェントM1を備える。言い換えれば、ブリッジエージェントM1は、携帯機器D2の検出位置が非接触リーダーD1の位置と一致する場合にのみ、前記第1及び第2の通信チャネルC1及びC2を介して非接触リーダーD1と携帯機器D2との間にブリッジを確立するように適合されている。)
「[0050]
The portable contactless device D2 comprises a communication interface NFC-3 able to communicate according to the same standard as the communication interface NFC-1
.
Thus a communication channel C3 may be established using a NFC protocol between the interfaces NFC-1 and NFC-3 when the portable contactless device D2 is placed close to the reader D1
.」
([0050]
携帯型非接触デバイスD2は、通信インターフェースNFC-1と同じ規格に従って通信できる通信インターフェースNFC-3を備えている
。
したがって、携帯型非接触デバイスD2がリーダーD1の近くに置かれたときに、インターフェースNFC-1とNFC-3の間でNFCプロトコルを使用して通信チャネルC3を確立することができる
。)
「[0051]
The portable contactless device D2 comprises a communication interface UWB-2 configured to communicate according to the same standard as the communication interface UWB-1
.
Thus a communication channel C2 may be established using a UWB
(Ultra-Wide Band or Ultra-Wideband)
protocol between the interfaces UWB-1 and UWB-2
.」
([0051]
携帯型非接触デバイスD2は、通信インターフェースUWB-1と同じ規格に従って通信するように構成された通信インタ-フェースUWB-2を備える
。
したがって、通信チャネルC2は、インターフェースUWB-1とUWB-2の間でUWB
(Ultra-Wide Band又はUltra-Wideband)
プロトコルを使用して確立することができる
。)
「[0052] The portable contactless device D2 comprises an applicative agent M2 able to run an applicative transaction with the contactless reader D1. For instance, the applicative agent M2 may be an application designed to transport access or a payment. The applicative agent M2 may be implemented in a conventional secure element embedded in the portable contactless device D2.」
([0052] 携帯型非接触デバイスD2は、非接触リーダーD1とアプリケーショントランザクションを実行できるアプリケーションエージェントM2から構成される。例えば、アプリケーティブエージェントM2は、交通機関へのアクセス又は支払いのために設計されたアプリケーションであってもよい。アプリケーションエージェントM2は、携帯型非接触デバイスD2に埋め込まれた従来のセキュアエレメントに実装することができる。)
「[0053] In this example, the portable contactless device D2 can access the contactless reader through two distinct ways: either using the conventional NFC scheme or via the wireless unit D3.」
([0053] この例では、携帯型非接触デバイスD2は、従来のNFC方式を使用するか、無線ユニットD3を介するかの二通りの方法で非接触リーダーにアクセスすることができる。)
「[0054] In another example, the portable contactless device D2 is devoid of the communication interface NFC-3 and can access the contactless
reader through only one way: through the wireless unit D3.」
([0054] 別の例では、携帯型非接触デバイスD2は、通信インターフェースNFC-3を欠いており、無線ユニットD3を介して、一方向のみで非接触リーダにアクセスすることができる。)
「[0055] UWB is defined by IEEE 802.15.4a standard. Conventional radio transmissions systems transmit information by varying the power level, frequency, and/or phase of a sinusoidal wave. Unlike Conventional radio transmissions systems, UWB transmit information by generating radio energy at specific time intervals and occupying a large bandwidth, thus enabling pulse-position or time modulation. The information can also be modulated on UWB signals (pulses) by encoding the polarity of the pulse, its amplitude and/or by using orthogonal pulses. UWB pulses can be sent sporadically at relatively low pulse rates to support time or position modulation.
An important aspect of UWB technology is the ability for a UWB radio system to measure the distance between two communicating objects and to detect the position of a communicating object relative to another communicating object with an accurate precision
.」
([0055] UWBは、IEEE802.15.4a規格で定義されている。従来の無線送信システムは、正弦波の電力レベル、周波数、及び/又は、位相を変化させることによって情報を送信する。従来の無線伝送システムとは異なり、UWBは、特定の時間間隔で無線エネルギーを生成し、広い帯域幅を占有することによって情報を伝送し、したがって、パルス位置又は時間変調を可能にする。情報は、パルスの極性、その振幅を符号化することによって、及び/又は、直交パルスを使用することによって、UWB信号(パルス)上で変調することもできる。UWBパルスは、時間又は位置変調をサポートするために比較的低いパルスレートで散発的に送信することができる。
UWB技術の重要な側面は、UWB無線システムが、二つの通信物体間の距離を測定し、正確な精度で別の通信物体に対する通信物体の位置を検出する能力である
。)
(イ) [0074]~[0078]、Fig.3
「[0074] FIG. 3 shows an example of an automatic fare collection system using an embodiment of the invention.」
([0074] 図3は、本発明の実施形態を用いた自動料金収受システムの一例を示す図である。)
「
125
96
0001434107000012.jpg
」
「[0075]
The automatic fare collection system comprises three gates which are configured to allow access only to authorized users
.
An authorized user is assumed to bring a personal token like the portable contactless device D2
. In this embodiment,
each gate comprises its own NFC reader (D1, D1A, respectively D1B) and its own wireless unit (D3, D3A, respectively D3B) placed near the NFC reader
.」
([0075]
自動料金収受システムは、許可された利用者のみがアクセスできるように構成された三つのゲートからなる
。
許可された利用者は、携帯型非接触デバイスD2のようなパーソナルトークを持参するものとする
。この実施形態では、
各ゲートは、それぞれ固有のNFCリーダー(D1、D1A、D1B)と、NFCリーダーの近くに置かれた、それぞれ固有の無線ユニット(D3、D3A、D3B)とを含む
。)
「[0076] When the user enters the range of the wireless unit D3, the step sequence described at FIG. 2 can be run. The wireless unit D3 can determine that the user is in front of the gate associated with the contactless reader D1, even if the user must still walk several meters to reach the gate. Thus the NFC transaction allows the system to anticipate the gate opening.」
([0076] ユーザーが無線ユニットD3の範囲に入ると、図2で説明したステップシーケンスを実行することができる。無線ユニットD3は、たとえユーザーがゲートに到達するまでにまだ数メートル歩かなければならなくても、ユーザーが
非接触リーダーD1
に関連付けられたゲートの前にいると判断することができる。このように、NFCトランザクションにより、システムはゲートが開くことを予期することができる。)
「[0077] No specific gesture is required from the user: he just has to bring the portable contactless device D2, in a pocket, a bag or as a wearable object for example.」
([0077] ユーザーに特別なジェスチャーを要求することなく、携帯用非接触型デバイスD2をポケットやバッグに入れたり、ウェアラブルなオブジェクトとして持ってくるだけでいい。)
「[0078] Advantageously, thanks to UWB features, the wireless unit D3 can also determine the movement direction of the portable contactless device D2 so as to take into account the walk direction of the user. Thus the selection of the relevant gate (i.e. relevant NFC reader) can be refined. The movement direction may be computed from a sequence of measures of the device position.」
([0078] 有利なことに、UWB機能のおかげで、無線ユニットD3 は、ユーザーの歩行方向を考慮するように携帯型非接触デバイスD2の移動方向を決定することもできる。こうして、関連するゲート(すなわち関連するNFCリーダー)の選択を改善することができる。移動方向は、装置位置の一連の測定値から計算することができる。)
(ウ) [0083]~[0086]、Fig.4
「[0083] FIG. 4 depicts schematically the architecture of the wireless unit D3 according to an example of the invention.」
([0083] 図4は、本発明の実施例による無線ユニットD3のアーキテクチャを概略的に示している。)
「
93
144
0001434107000013.jpg
」
「[0084] The wireless unit D3 (also named R-Link Reader Proxy) comprises an RF antenna configured to communicate through ISO/IEC 14443 standard with a conventional NFC reader.」
([0084] 無線ユニットD3(R-Link Reader Proxyとも呼ばれる)は、従来のNFCリーダーとISO/IEC14443規格を通じて通信するように構成されたRFアンテナで構成されている。)
「[0085] The wireless unit D3 comprises an Active Boost Contactless Front-End connected to the RF antenna. The Active Boost Contactless Front-End is configured to get energy from the electromagnetic field generated by the NFC reader (i.e. Power extractor feature). It is assumed that the extracted energy allows to power the wireless unit D3 (i.e. without battery). The Active Boost Contactless Front-End is configured to retrieve a clock reference (or frequency reference) from the electromagnetic field generated by the NFC reader (i.e. Clock extractor feature). The Active Boost Contactless Front-End is also configured to receive transaction messages from the NFC reader and to transmit response to the NFC reader by modulating the reader magnetic field as described in ISO/IEC 14443 standard.」
([0085] 無線ユニットD3は、RFアンテナに接続されたアクティブ・ブースト非接触フロントエンドから構成される。アクティブ・ブースト非接触フロントエンドは、NFCリーダーによって生成された電磁界からエネルギーを得るように構成されている(すなわち電力抽出機能)。抽出されたエネルギーにより、無線ユニットD3に電力が供給されることが想定される(すなわちバッテリなし)。アクティブ・ブースト非接触フロントエンドは、NFCリーダーによって生成された電磁界からクロック基準(又は周波数基準)を取り出すように構成されている(すなわちクロック抽出機能)。アクティブ・ブースト非接触フロントエンドはまた、NFCリーダーからトランザクション・メッセージを受信し、ISO/IEC 14443 規格に記載されているようにリーダーの磁界を変調することによってNFCリーダーに応答を送信するように構成されている。)
「[0086]
The wireless unit D3 comprises a UWB antenna and a UWB controller in charge of managing the UWB interface (R-Link interface)
. The UWB interface is configured with the following parameters and operating mode: an impulse Ultra wide band signal generated using short baseband pulses from 100 picosecond to 1 nanosecond, using pulse position modulation for data transmission or binary phase shift keying, where a non-uniform inter pulse spacing is used. The pulse repetition frequency (PRF) can range from hundreds of thousands to billions of pulse/seconds. This impulse Ultra wide band uses a predictable time hopping sequence technics (THS) where pulses appear random.」
([0086]
無線ユニットD3は、UWBアンテナと、UWBインターフェース(R-Linkインターフェース)の管理を担当するUWBコントローラを含む
。UWBインターフェースは、以下のパラメータと動作モードで構成される:100ピコ秒から1ナノ秒の短いベースバンドパルスを使用して生成されるインパルス超広帯域信号、データ伝送用のパルス位置変調、または不均一なパルス間間隔が使用されるバイナリ位相シフト・キーイングを使用する。パルス繰り返し周波数(PRF)は、数十万から数十億パルス/秒の範囲である。このインパルス超広帯域は、パルスがランダムに見える予測可能なタイムホッピングシーケンス技術(THS)を使用している。)
イ 先行発明の認定
上記アの記載事項を総合すると、先行文献には、次の発明(以下「先行発明」という。)が記載されているものと認められる。
<先行発明>
「携帯型非接触デバイスD2のようなパーソナルトークンを持参することで許可された利用者のみがアクセスできるように構成された三つのゲートからなり、各ゲートは、それぞれ固有のNFCリーダー(非接触リーダー)(D1、D1A、D1B)と、NFCリーダーの近くに置かれた、それぞれ固有の無線ユニット(D3、D3A、D3B)とを含む全自動料金収受システムであって、([0075]、 [0076])
非接触リーダーは、建物のアクセス制御装置のような固定装置であって、([0038])
非接触リーダーD1は、近距離無線通信(Near Field Communication)の分野に属する規格に従って通信可能な通信インターフェースNFC-1を含むNFCリーダーであり、([0041])
無線ユニットD3は、通信インターフェースNFC-1と同じ規格に従って通信できる通信インターフェースNFC-2を備え、通信チャネルC1は非接触リーダーD1のインターフェースNFC-1と無線ユニットD3のNFC-2の間でNFCプロトコルを使用して確立され、([0043])
無線ユニットD3は、無線ユニットD3に対する携帯型非接触デバイスD2の位置を検出するように構成された、別の無線技術に従って通信することができる通信インターフェースUWB-1を備え、([0044]、[0046])
携帯型非接触デバイスD2は、通信インターフェースNFC-1と同じ規格に従って通信できる通信インターフェースNFC-3を備えており、携帯型非接触デバイスD2がリーダーD1の近くに置かれたときに、インターフェースNFC-1とNFC-3の間でNFCプロトコルを使用して通信チャネルC3を確立することができ、([0050])
携帯型非接触デバイスD2は、通信インターフェースUWB-1と同じ規格に従って通信するように構成された通信インターフェースUWB-2を備え、通信チャネルC2は、インターフェースUWB-1とUWB-2の間でUWBプロトコルを使用して確立することができ、([0051])
UWB技術の重要な側面は、UWB無線システムが、二つの通信物体間の距離を測定し、正確な精度で別の通信物体に対する通信物体の位置を検出する能力であり、([0055])
無線ユニットD3は、UWBアンテナと、UWBインターフェース(R-Linkインターフェース)の管理を担当するUWBコントローラを含む、([0086])
全自動料金収受システム。」
(1)本件訂正発明1について
ア 甲1発明との対比
本件訂正発明1と甲1発明を対比する。
(ア)構成1Aについて
甲1発明aの「運転者によって携帯される電子キー10と、車両2に配設される一つの車載機20との間で自動的に相互通信が行われ、その相互通信が車外及び車内にて成立したことを条件としてドア錠の施解錠が制御される電子キーシステム1」は、車内へのアクセスを制御するものであるから、本件訂正発明1の「アクセス制御システム」に相当する。
また、甲1発明c4の「車載機20の車載制御部21」は、「電子キー10から送信されたレスポンス信号Sreに含まれるIDコード」を読み取って、「車載制御部21」の「メモリ21aに記録されたIDコードとのIDコード照合を行」うものであるから、甲1発明の「車載機20」は、本件訂正発明1の「アクセス制御システム用の読取器システム」に相当する。
したがって、本件訂正発明1と甲1発明は、「アクセス制御システム用の読取器システム」の発明である点において一致する。
(イ)構成1Bについて
甲1発明bの「UHF送信アンテナ25a」及び「UHF受信アンテナ26a」は、本件訂正発明1の「第1アンテナ」に相当する。
甲1発明bの「UWB送信アンテナ27a」及び「UWB受信アンテナ28a」は、本件訂正発明1の「第2アンテナ」に相当する。
したがって、本件訂正発明1と甲1発明は、「第1及び第2アンテナ」を備える点において一致する。
(ウ)構成1C及び1Dについて
(ウ-1)構成1Cについて
a 甲1発明bにおける、「UHF送信アンテナ25aが一体で構成」され「UHF帯の信号を送信するUHF送信部25」、及び、「UHF受信アンテナ26aが一体で構成」され「UHF帯の信号を受信するUHF受信部26」を有する「UFH送受信ユニット23」を用いた通信プロトコルは、本件訂正発明1の「第1通信プロトコル」に相当する。
b 甲1発明c4より、「車載機20の車載制御部21」は「電子キー10から送信されたレスポンス信号Sre」を「UHF受信部26を介して受信」するところ、この「レスポンス信号Sreに含まれるIDコード」は「電子キー制御部11」に設けられた「不揮発性のメモリ11a」に記憶された「電子キー10に固有のIDコード」(c1参照)であるから、この「固有のIDコード」及び「電子キー10」は、それぞれ本件訂正発明1の「認証情報」及び「認証情報装置」に相当する。
c 甲1発明c3の「車載機20」は、
(a)「乱数として用いるチャレンジコードを含むチャレンジ信号Sccを、UHF送信アンテナ25aを介して送信」するとともに、「車載制御部21」「自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを暗号化することにより、自らもレスポンスコードを生成し」た後、
(b)「チャレンジ信号Sccを受信した」「電子キー制御部11」が「チャレンジコードを暗号鍵を用いて演算して暗号化したレスポンスコードを含」んだ「レスポンス信号Sre」を、「UHF受信部26を介して受信」すると、
(c)「レスポンス信号Sreに含まれるレスポンスコードと、自身が暗号鍵を通じて演算したレスポンスコードとを照らし合わせて、レスポンス照合を行い、一致する場合に、照合成立と判断」するところ、
上記bでの検討を踏まえると、上記(c)の、「レスポンス信号Sre」に含まれる(電子キー制御部11が暗号鍵を用いて暗号化した)「レスポンスコード」と、(車載制御部機21自身が)「暗号鍵を通じて演算したレスポンスコード」とが「一致」し、「照合成立と判断」することは、本件訂正発明1の「認証情報装置と秘密を確立する」ことに相当し、かつ、甲1発明の「暗号鍵」が本件訂正発明1の「秘密」に相当するといえる。
d 上記a~cより、甲1発明において、「車載制御部21」が、「UHF受信アンテナ26aが一体で構成」された「UHF受信部26」を介して、「電子キー10から送信されたレスポンス信号Sre」を受信することで、「レスポンス信号Sre」に含まれる、「電子キー10」の「メモリ11a」に記憶された「固有のIDコード」を受信し、かつ、「レスポンス信号Sreに含まれる」、「電子キー10」の「電子キー制御部11」が「暗号鍵」によって暗号化した「レスポンスコード」と、「自身」が「暗号鍵を通じて演算したレスポンスコード」が「一致する場合に、照合成立と判断」することは、本件訂正発明1の「前記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立する」ことに相当する。
(ウ-2)構成1Dについて
a 甲1発明bにおける、「UWB送信アンテナ27aが一体で構成」され「超広帯域の信号を送信するUWB送信部27」、及び、「UWB受信アンテナ28aが一体で構成」され「超広帯域の信号を受信するUWB受信部28」を有する「車載UWB送受信ユニット24」を用いた通信プロトコルは、本件訂正発明1の「第2通信プロトコル」に相当する。
b 上記aを踏まえると、甲1発明deの「UWB受信アンテナ28aを介して電子キー10から送信される測距応答信号Sdrを受信」して、「車載制御部21」が、「測距応答信号Sdrに含まれる測距コード」及び「応答時間」、「測距要求信号Sdcの発信から測距応答信号Sdrの受信までにかかった往復時間」に基づいて、「車載UWB送受信ユニット24から電子キー10までの距離を測定」することは、本件訂正発明1の「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記第2アンテナを介して第2通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信する」ことに相当する。
c 甲1発明の「車載制御部21」と、本件訂正発明1の「第1コントローラ」及び「第2コントローラ」とは、「コントローラ」である点において共通する。
d 上記a~cの検討を踏まえると、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立するように構成されたコントローラ」、「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記第2アンテナを介して第2通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたコントローラ」を備える点において共通する。
(ウ-3)一方、本件訂正発明1と甲1発明は、構成1C及び構成1Dに関して、次に示す点において相違する。
「コントローラ」が、
本件訂正発明1においては、
「前記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立するように構成された第1コントローラ」と、「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記第2アンテナを介して第2通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成された第2コントローラ」とからなり、「前記第2コントローラ」が、「通信リンクを介して前記第1コントローラと通信するように構成される」のに対して、
甲1発明においては、
「車載制御部21」が、本件訂正発明1の「第1コントローラ」と「第2コントローラ」の機能を兼ね備えた単一の制御部であり、このため、本件訂正発明1における、「第2コントローラ」が「第1コントローラ」と通信するための「通信リンク」に相当する構成を備えていない点。
(エ)構成1Eについて
a 上記(ウ-1)c(c)での検討より、甲1発明の「暗号鍵」は本件訂正発明1の「秘密」に相当するといえ、また、上記(ウ-1)bで検討したように、甲1発明の「電子キー10に固有のIDコード」は、本件訂正発明1の「認証情報」に相当するとともに、本件訂正発明1の構成1Eの「認証情報装置の識別子」にも相当する。
b 上記(ウ-2)bを踏まえると、甲1発明deの「電子キー10から送信される測距応答信号Sdrを受信」して、「車載制御部21」が、「測距応答信号Sdrに含まれる測距コード」及び「応答時間」、「測距要求信号Sdcの発信から測距応答信号Sdrの受信までにかかった往復時間」に基づいて、「車載UWB送受信ユニット24から電子キー10までの距離を測定」することは、本件訂正発明1の「前記認証情報装置に対する測距を実行する」ことに相当するところ、当該「測距応答信号Sdrに含まれる測距コード」及び「応答時間」は、「電子キー1」の「電子キー制御部11」が「暗号化した」ものであるため、「測距応答信号Sdr」を受信した「車載制御部21」は、「レスポンスコードの演算に利用される暗号鍵と同一鍵を利用して測距応答信号Sdrを復号化し」、「測距コード」及び「応答時間」を「暗号鍵」を通じて演算し、「距離を測定」することから、甲1発明の「暗号鍵」が本件訂正発明1の「秘密」に相当することを踏まえると、このことは、本件訂正発明1における「前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」ことに相当するといえる。
c そして、甲1発明c1、c3、deにおいて、「車載制御部21」が、「電子キー10」から「固有のIDコード」及び「チャレンジコードを暗号鍵を用いて演算して暗号化したレスポンスコード」を含む「レスポンス信号Sre」を受信して「レスポンス照合及びIDコード照合が成立することを確認すると」、「車載機20」が「測距要求信号Sdcを」「電子キー1」に「送信」し、「電子キー1」の「電子キー制御部11」が「測距応答信号Sdrを生成し車両2側に送信」することで「車載制御部21」が「電子キー10までの距離を測定」するのであるから、このことは、本件訂正発明1の構成1Eについて、「コントローラ」が「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると」、「コントローラ」は「前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」点において共通する。
d 上記a~cの検討を踏まえると、本件訂正発明1と甲1発明は、「コントローラ」は、「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される」点において共通する。
e 一方、本件訂正発明1と甲1発明は、構成1Eに関して、次に示す点において相違する。
本件訂正発明1においては、
「第2コントローラ」が、「前記通信リンクを介して前記第1コントローラから」、「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される」のに対して、
甲1発明においては、
「車載制御部21」が単一の制御部であって、そのような「第1コントローラ」と「第2コントローラ」に分かれていないため、
「通信リンク」を介して「第1コントローラ」と「第2コントローラ」間で、「暗号鍵」(「秘密」に相当)及び「固有のIDコード」(「認証情報装置の識別子」に相当)を含むデータの送受信を行わない点。
イ 一致点及び相違点1
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件訂正発明1と甲1発明の一致点及び相違点1は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア)一致点
1A アクセス制御システム用の読取器システムであって、
1B 第1及び第2アンテナと、
1C’D’ 前記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立するように構成され、前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記第2アンテナを介して第2通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたコントローラと、を備え、
1E’ 前記コントローラは、前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される、
読取器システム
である点。
(イ)相違点1(構成1C~1E)
「コントローラ」が、
本件訂正発明1においては、
「認証情報装置に保存された認証情報を受信するべく前記第1アンテナを介して第1通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成された第1コントローラ」と、「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記第2アンテナを介して第2通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成された第2コントローラ」とからなり、「前記第2コントローラ」が、「通信リンクを介して前記第1コントローラと通信するように構成され」、
「第1コントローラ」が「前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立」し、
「前記第2コントローラ」が「前記通信リンクを介して前記第1コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される」のに対して、
甲1発明においては、
「車載制御部21」が、本件訂正発明1の「第1コントローラ」と「第2コントローラ」の機能を兼ね備えた単一の制御部であって、
「車載制御部21」が、「電子キー10」(「認証情報装置」に相当)から「固有のIDコード」(「認証情報」及び「認証情報装置の識別子」に相当)と「チャレンジコードを暗号鍵を用いて演算して暗号化したレスポンスコード」を含む「レスポンス信号Sre」を受信し、「IDコード」の「照合成立」とともに、「レスポンスコード」の「照合成立と判断」する(「秘密を確立する」に相当)と、「暗号鍵」(「秘密」に相当)を利用して「電子キー10までの距離を測定」するものの、
「車載制御部21」が本件訂正発明1のような「第1コントローラ」と「第2コントローラ」に分かれていないため、本件訂正発明1における「通信リンク」に相当する構成を備えず、「通信リンクを介して」、「暗号鍵」(「秘密」に相当)及び「固有のIDコード」(「認証情報装置の識別子」に相当)を含むデータを送受信しない点。
ウ 相違点1についての判断
上記相違点1について検討する。
(ア)甲2技術事項
a 上記1(2)イにおいて甲2技術事項として示したとおり、甲2には、次の技術事項が記載されている。
「車両に備わる制御装置と、ユーザが所持する電子キーおよび携帯機とから構成される車両制御システムであって、
車両制御装置1は、第1制御部10A、第2制御部10B、および第3制御部10Cを備えており、第1制御部10Aには、LF(Low Frequency)送信部11、UHF受信部12およびリクエストスイッチ13などが接続されており、第2制御部10Bには、近距離無線部14と長距離無線部15などが接続されており、
近距離無線部14は、BLE(Bluetooth Low Energy)などの近距離無線によって電子キー2および携帯機3と通信を行うための、送受信回路やアンテナから構成され、長距離無線部15は、電子キー2との間でUHF通信を行うための、送受信回路やアンテナから構成され、
第1制御部10A、第2制御部10B、および第3制御部10Cは、それぞれ制御対象ごとに割り当てられたECU(Electronic Control Unit)からなり、CPUやメモリなどを備えており、第1制御部10Aは、キーレスエントリやパッシブエントリの動作を制御するECUであり、第2制御部10Bは、近距離無線通信や長距離無線通信を制御するECUであり、
これらの制御部10A~10Cは、共通のバス50に接続されている、
車両制御システム。」
b 甲2技術事項は、甲1発明と同じ、車両ドアの施解錠が制御される電子キーシステムに関するものであり、甲2技術事項は「制御対象ごとに割り当てられたECU(Electronic Control Unit)」において、ECUごとに通信プロトコルを異ならせる技術、すなわち、「第1制御部10A」と、「第2制御部10B」を設け、それぞれで用いられる通信プロトコルを一部異ならせるとともに、「これらの制御部」を「共通のバス50に接続」し、両者間でデータ通信する構成を開示する。
しかしながら、甲2技術は、本件訂正発明1と甲1発明との相違点1に係る構成のうち、「第1制御部10A」と「第2制御部10B」(「第1コントローラ」と「第2コントローラ」に相当)の間で、「共通のバス50」(「通信リンク」に相当)を介して、「ユーザが所持する電子キーおよび携帯機」(「認証情報装置」に相当)と確立した「秘密」及び「ユーザが所持する電子キーおよび携帯機」の「識別子」を含むデータを送受信する構成については開示しない。
(イ)甲9に例示される周知技術E
一方、上記1(8)イにおいて周知技術Eとして示したとおり、次の事項は、本件優先日前に周知である。
「車両に搭載される通信装置の技術分野において、複数の通信部が単一のデバイスと通信を行う場合、最先通信部が取得したデバイスの識別情報を他の通信部に伝達して、他の通信部が前記デバイスの識別情報を用いて通信を行うことで、他の通信部が、最先通信部と通信したデバイス以外のデバイスと誤接続することがないようにして、セキュリティ性を向上させること。」
しかし、上記周知技術Eも、最先通信部が取得したデバイスの「識別情報」を他の通信部に伝達する技術は開示するものの、デバイスの「識別情報」に加えて、最先通信部がデバイスとの間で「確立した秘密」を含むデータを他の通信部に伝達する技術は開示していない。
(ウ)先行文献に記載された事項
また、上記1(10)において示した先行文献に記載された事項も、「無線ユニットD3」と「非接触リーダーD1」との間で、本件訂正発明1における「秘密」及び「認証情報装置の識別子」を含むデータに相当するデータを送受信することについては開示していない。
(エ)甲10に記載された事項
さらに、申立人が令和7年9月19日付け意見書とともに提出した甲10にも、上記1(9)に示したように、「UHFによるチャレンジレスポンス認証」と「UWBによる測距」とを実行する制御部(照合ECU4)が記載されるものの、当該単一の制御部を2つに分けた上で、「チャレンジレスポンス認証」を実行する制御部から「測距」を実行する制御部に、通信リンクを介して「暗号鍵」(「秘密」に相当)を送受信することについては記載されていない。
(オ)他の甲号証
加えて、他の甲3~8のいずれにも、本件訂正発明1における甲1発明との相違点1に係る、
「第1コントローラ」が「認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立」し、
「第2コントローラ」が「通信リンクを介して前記第1コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」こと
については、記載も示唆もされておらず、かつ、当該構成とすることが、本件特許の優先日前に、本件訂正発明1が属する技術分野において周知であったことを示す証拠もない。
(カ)相違点1に係る構成の技術的意義について
そして、相違点1に係る本件訂正発明1の構成の実施例として、本件明細書等の段落【0020】には、「コントローラ406」(第1コントローラ)が、「クレデンシャル装置」(認証情報装置)と「クレデンシャル」(認証情報)を交換し、次いで、「UWB通信を使用した測距を可能にするべく」「クレデンシャル装置」(認証情報装置)との間で「スクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの秘密」を確立し、「UWBモジュール402のコントローラ426」(第2コントローラ)が、「コントローラ406」(第1コントローラ)から、「STS」(秘密)、「クレデンシャルの識別子」(認証情報装置の識別子)を含みうる「データ」の受取りの際に「UWB測距」を実行しうることが記載されており、当該記載に接した当業者であれば、「クレデンシャルの識別子」(認証情報装置の識別子)のみを用いた場合に比較して、「識別子」に加えて「STS」(秘密)も使用することで、「測距」を実行する際の通信の安全性を向上させるという技術的意義を有するものであることが理解できるから、相違点1に係る本件訂正発明1の構成が、技術的意義のない単なる設計的事項であるともいえない。
(キ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1発明、甲2技術事項及び周知技術Eに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 先行発明との対比
本件訂正発明1と上記1(10)に挙げた先行発明とを対比すると、上記ウ(ウ)で指摘した点において、本件訂正発明1は先行発明と相違するから、本件訂正発明1は先行発明ではなく、かつ、先行発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件訂正発明2~12について
本件訂正発明2~12は本件訂正発明1を引用するものであり、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成を備えるものであるから、本件訂正発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明、甲2技術事項及び周知技術Eに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、同様に、本件訂正発明2、6、10は、先行発明ではなく、かつ、本件訂正発明2~12は、先行発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件訂正発明13について
ア 甲1発明との対比
本件訂正発明13と甲1発明を対比する。
(ア)構成2Aについて
上記(1)ア(ア)の本件訂正発明1の構成1Aとの対比において検討したことを踏まえれば、本件訂正発明13と甲1発明は、「システム」の発明である点において一致する。
(イ)構成2B~2C2について
(イ-1)構成2B1、2C1について
甲1発明の「UHF送信アンテナ25a」と「UHF受信アンテナ26a」、及び、「UWB送信アンテナ27a」と「UWB受信アンテナ28a」は、それぞれ、本件訂正発明13の構成2B1の「読取器アンテナ」、及び、構成2C1の「UWBアンテナ」に相当する。
(イ-2)構成2B2について
甲1発明bにおける、「UHF送信アンテナ25aが一体で構成」され「UHF帯の信号を送信するUHF送信部25」、及び、「UHF受信アンテナ26aが一体で構成」され「UHF帯の信号を受信するUHF受信部26」を有する「UFH送受信ユニット23」を用いた通信プロトコルと、本件訂正発明13の「低電力通信プロトコル」とは、「通信プロトコル」である点で共通する。
また、甲1発明の「車載制御部21」と、本件訂正発明13の「読取器コントローラ」は、「コントローラ」である点において共通する。
そうすると、上記(1)ア(ウ)(ウ-1)の、甲1発明と本件訂正発明1の構成1Cとの対比において検討したことを踏まえれば、本件訂正発明13と甲1発明は、
「前記読取器アンテナを介して通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立するように構成されたコントローラ」を含む点で共通する。
(イ-3)構成2C2について
a 甲1発明bにおける、「UWB送信アンテナ27aが一体で構成」され「超広帯域の信号を送信するUWB送信部27」、及び、「UWB受信アンテナ28aが一体で構成」され「超広帯域の信号を受信するUWB受信部28」を有する「車載UWB送受信ユニット24」を用いた通信プロトコルは、本件訂正発明13の「UWB通信」に相当する。
b 上記aを踏まえると、甲1発明deの「車載機20」が「UWB送信部27から測距コードを含む測距要求信号Sdcを送信し」、「UWB受信アンテナ28aを介して電子キー10から送信される測距応答信号Sdrを受信」して、「車載制御部21」が、「測距応答信号Sdrに含まれる測距コード」及び「応答時間」、「測距要求信号Sdcの発信から測距応答信号Sdrの受信までにかかった往復時間」に基づいて、「車載UWB送受信ユニット24から電子キー10までの距離を測定」することは、本件訂正発明13の「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記UWBアンテナを介してUWB通信を使用して前記認証情報装置と通信する」ことに相当する。
c 甲1発明の「車載制御部21」と、本件訂正発明13の「読取器コントローラ」及び「UWBコントローラ」は、「コントローラ」である点において共通する。
d 上記a~cの検討を踏まえると、本件訂正発明13と甲1発明は、「前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記UWBアンテナを介してUWB通信を使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたコントローラ」を含む点において共通する。
(イ-4)構成2B、2Cについて
甲1発明bの「車載制御部21」、「UHF送信アンテナ25a」と「UHF受信アンテナ26a」とを有する「UFH送受信ユニット23」、及び、「UWB送信アンテナ27a」と「UWB受信アンテナ28a」とを有する「車載UWB送受信ユニット24」と、本件訂正発明13の「読取器回路」及び「超広帯域(UWB)回路」とは、いずれも「回路」である点において共通する。
(イ-5)一方、本件訂正発明13と甲1発明は、構成2B~2C2に関して、次に示す点において相違する。
a 「コントローラ」が、
本件訂正発明13においては、
「読取器コントローラ」(構成2B2)及び「UWBコントローラ」(構成2C2)からなるのに対して、
甲1発明においては、
車載制御部21(本件訂正発明13の「コントローラ」に対応。)が単一の制御部であり、
b 「アンテナ」と「コントローラ」を含む「回路」が、
本件訂正発明13においては、
「2B 読取器回路であって、
2B1 読取器アンテナと、
2B2 認証情報装置に保存された認証情報を受信するべく前記読取器アンテナを介して低電力通信プロトコルを使用して前記認証情報装置と通信するように構成された読取器コントローラと、を含む前記読取器回路」
と、
「2C 超広帯域(UWB)回路であって、
2C1 UWBアンテナと、
2C2 前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記UWBアンテナを介してUWB通信を使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたUWBコントローラであって、通信リンクを介して前記読取器コントローラと通信するように構成された前記UWBコントローラと、を含む前記UWB回路」
とに分かれて備えられているのに対して、
甲1発明においては、
「車載制御部21」が単一の制御部であることから、「車載制御部21」、「UHF送信アンテナ25a」と「UHF受信アンテナ26a」とを有する「UFH送受信ユニット23」、及び、「UWB送信アンテナ27a」と「UWB受信アンテナ28a」とを有する「車載UWB送受信ユニット24」(本件訂正発明13の「アンテナ」と「コントローラ」を含む「回路」に対応。)が、そのような「読取回路」と「UWB回路」とに分かれておらず、
c 「認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立する」ときに「コントローラ」が使用する「通信プロトコル」が、
本件訂正発明13においては、「低電力通信プロトコル」であるのに対して、
甲1発明においては、「電子キー10」に記憶された「固有のIDコード」を受信し、「電子キー10」から「暗号鍵を通じて演算したレスポンスコード」を受信するときに「車載制御部21」が使用する「UFH送受信ユニット23」を用いた通信プロトコルが、そのような「低電力」の通信プロトコルであるか不明な点。
(ウ)構成2Dについて
上記(1)(エ)の本件訂正発明1の構成1Eとの対比における検討、及び、上記(イ-3)cでの検討を踏まえれば、本件訂正発明13と甲1発明は、構成2Dに関して、次に示す点において相違する。
本件訂正発明13においては、
「前記UWBコントローラ」が、「前記通信リンクを介して前記読取器コントローラから」、「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される」のに対して、
甲1発明においては、
「車載制御部21」が単一の制御部であって、そのような「読取器コントローラ」と「UWBコントローラ」に分かれていないため、
「通信リンク」を介して「読取器コントローラ」と「UWBコントローラ」間で、「暗号鍵」(「秘密」に相当)及び「固有のIDコード」(「認証情報装置の識別子」に相当)を含むデータの送受信を行わない点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件訂正発明13と甲1発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア)一致点
2A システムであって、
2B’2C’回路であって、
2B1 読取器アンテナと、
2C1 UWBアンテナと、
2B2’ 前記読取器アンテナを介して通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立するように構成され、
2C2’ 前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記UWBアンテナを介してUWB通信を使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたコントローラと、
を含む前記回路と、
を備え、
2D’ 前記コントローラは、前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される、
システム、である点。
(イ)相違点
a 相違点2(構成2B~2D)
「コントローラ」が、
本件訂正発明13においては、
「読取器コントローラ」(構成2B2)と「UWBコントローラ」(構成2C2)に分かれているのに対して、
甲1発明においては、
車載制御部21(本件訂正発明13の「コントローラ」に対応。)が単一の制御部であり、
「アンテナ」と「コントローラ」を含む「回路」が、
本件訂正発明13においては、
「2B 読取器回路であって、
2B1 読取器アンテナと、
2B2 前記読取器アンテナを介して低電力通信プロトコルを使用して認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立するように構成された読取器コントローラと、を含む前記読取器回路」
と、
「2C 超広帯域(UWB)回路であって、
2C1 UWBアンテナと、
2C2 前記認証情報装置に対する測距を実行するべく前記UWBアンテナを介してUWB通信を使用して前記認証情報装置と通信するように構成されたUWBコントローラであって、通信リンクを介して前記読取器コントローラと通信するように構成された前記UWBコントローラと、を含む前記UWB回路」
に分かれて備えられており、
「2D 前記UWBコントローラは、前記通信リンクを介して前記読取器コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される」
のに対して、
甲1発明においては、
「車載制御部21」が単一の制御部であってそのような「読取器コントローラ」及び「UWBコントローラ」に分かれていないことから、
「車載制御部21」、「UHF送信アンテナ25a」と「UHF受信アンテナ26a」とを有する「UFH送受信ユニット23」、及び、「UWB送信アンテナ27a」と「UWB受信アンテナ28a」とを有する「車載UWB送受信ユニット24」(「アンテナ」と「コントローラ」を含む「回路」に対応)も、そのような「読取器回路」と「UWB回路」とに分かれておらず、
また、本件訂正発明13における「通信リンク」に相当する構成を備えず、このため、本件訂正発明13のように「読取器コントローラ」と「UWBコントローラ」との間で「通信リンク」を介して「暗号鍵」(「秘密」に相当)及び「固有のIDコード」(「認証情報装置の識別子」に相当)を含むデータの送受信を行わない点。
b 相違点3(構成2B2)
「認証情報装置と通信して前記認証情報装置に保存された認証情報を受信し、かつ前記認証情報装置と秘密を確立する」ときに「コントローラ」が使用する「通信プロトコル」が、
本件訂正発明13においては、「低電力通信プロトコル」であるのに対して、
甲1発明においては、「電子キー10」に記憶された「固有のIDコード」を受信し、「電子キー10」から「暗号鍵を通じて演算したレスポンスコード」を受信する、「UHF送受信ユニット23」を用いた通信プロトコルが、そのような「低電力」の通信プロトコルであるか不明な点。
ウ 相違点についての判断
上記イ(イ)に記載した相違点のうち、まず、イ(イ)aの相違点2について検討する。
本件訂正発明13と甲1発明との相違点2に係る構成のうち、
本件訂正発明13が、
「2D 前記UWBコントローラは、前記通信リンクを介して前記読取器コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行するように構成される」ものである点については、
上記(1)ウの本件訂正発明1についての「相違点1についての判断」で示したとおり、甲1発明、甲2技術事項及び周知技術E、あるいは、先行文献及び甲3~8、10のいずれにも、2つのコントローラ間で「通信リンクを介して」「秘密」及び「認証情報装置の識別子」を含むデータを送受信することが開示されておらず、また、相違点2の当該構成が、技術的意義のない単なる設計的事項であるとも認められない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件訂正発明13は、甲1発明、甲2技術事項及び周知技術Eに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 先行発明との対比
また、上記(1)エの本件訂正発明1と先行発明との対比において検討したのと同様に、上記(1)ウ(ウ)で指摘した点において、先行発明は本件訂正発明13と相違するから、本件訂正発明13は先行発明ではなく、かつ、先行発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件訂正発明14~22について
本件訂正発明14~22は本件訂正発明13を引用するものであり、上記相違点2に係る本件訂正発明13の構成を備えるものであるから、本件訂正発明13と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明、甲2技術事項及び周知技術Eに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、同様に、本件訂正発明14~22は、先行発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(1)取消理由通知に採用した申立理由について
取消理由のうち、甲1発明を主引例とする進歩性欠如の取消理由2は、申立理由1を採用したものである。
そして、取消理由についての判断は、上記2において検討したとおりである。
よって、申立理由1によっては、本件訂正後の請求項1~22に係る特許を取り消すことはできない。
(2)取消理由通知に採用しなかった申立理由2(明確性)について
申立書の申立理由2として、申立人は、本件訂正発明10及び本件訂正発明20の「UWBフロントエンド回路の用語は、未定義で使用されており、具体的にどのようなものを意味するのか不明である」とともに、これらを引用する本件訂正発明11、12、21、22も同様であると主張している(申立書第7頁)。
ア 明確性の判断規範について
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下、この観点に立ち、本件訂正発明に対し申立人が明確性要件に違反すると指摘する点について検討する。
イ 当審の判断
a 本件明細書等の段落【0019】には、「UWBフロントエンド434は、アンテナ428a及び428bを通じた送受信のためにUWBメッセージをパッケージ化し且つ受け取るように構成された任意の回路であってよい。」との記載がある。
b また、アンテナ側の送受信端の回路部分を「フロントエンド」と呼び、当該「フロントエンド」に、アンテナで受信した受信信号を最初に処理する、または、送信信号をアンテナに送る直前で処理する機能を持たせることは、例を挙げるまでもなく、無線回路の技術分野における技術常識である。
c そうすると、上記aの本件明細書等の段落【0019】の記載及び上記bの技術常識に照らせば、本件訂正発明10の「前記第2コントローラと前記第2アンテナとの間に接続されたUWBフロントエンド回路」、あるいは、本件訂正発明20の「前記UWBコントローラと前記UWBアンテナとの間に接続されたUWBフロントエンド回路」との記載における「UWBフロントエンド回路」との用語は、「超広帯域(UWB)」通信プロトコルを使用する無線回路の「アンテナ」側の送受信端において、何らかの信号処理を行う回路部分を意味することは当業者であれば理解することができるから、当該「UWBフロントエンド回路」との用語が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
d よって、申立理由2によっては、本件訂正後の請求項10~12、20~22に係る特許を取り消すことはできない。
本件訂正後の本件訂正発明1及び13について、申立人は令和7年9月19日付け意見書(以下「意見書」という。)において下記の点を主張しているため、以下、検討する。
(1)明確性(特許法第36条第6項第2号)
意見書の第2頁「3-2」において、申立人は、本件訂正発明1及び13が、「前記認証情報装置と
秘密
を確立する」という事項と、「前記
秘密
及び前記認証情報装置の識別子
を含むデータ
を受信すると、前記
秘密
を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」という事項を含む」ところ、「前者では、「秘密」は確立されるものであるから、「秘密」の用語は、「秘密であること」あるいは「秘密の状態」といった事項を意味すると解される」が、「後者では、「秘密」はデータに含まれることから、「秘密」の用語は、「秘密な情報」を意味すると解され」、「前者の「秘密」と後者の「秘密」は互いに異なる概念である」から、本件訂正発明1及び13は、「全体として、何を意図しているのか不明である」と主張している。そこで、上記3(2)アの規範に基づき、以下、検討する。
ア 本件明細書等の記載について
本件訂正発明1及び13における、「前記認証情報装置と秘密を確立する」という事項と、「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」という事項に関し、本件明細書等には、以下の記載がある。
「【0014】
一例において、クレデンシャル装置を携帯するユーザは、読取機システム108に接近することができる。クレデンシャル装置が読取機システム108の閾値範囲内に到来した際に、例えば、
Bluetooth Low Energy(BLE)を使用
することにより、クレデンシャルを交換することができる。このクレデンシャル交換は、例えば、読取機302を使用して調整することができる。次いで、
読取機302は、UWB通信を使用した測距を可能にするべく、クレデンシャル装置との間で、スクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの秘密を確立する
ことができる。UWB測距は、例えば、UWBモジュール304を使用して実行することができる。これは、
読取機302からのデータの受取り
の際に動作しうる。
データは、STS
、PACS-IDなどのクレデンシャルの識別子及びこれらに類似したもの
を含みうる
。測距を使用することにより、意図トリガを識別するべく、ユーザの意図を導出するために、読取機302又はUWBモジュール304の1つ又複数を使用することができる。意図トリガが識別されたら、読取機302は、ユーザに対してアクセスを許容するべく、クレデンシャルを付与することができる。」
「【0018】
読取機システム108は、通信リンク404上において通信するように構成された読取機400及びUWBモジュール402を含む。・・・
読取機400は
、
コントローラ406
・・・
を含む
。・・・
【0020】
クレデンシャル装置が読取機システム108の閾値範囲内に到来した際に、コントローラ406は、アンテナ408bを通じた
BLEを利用して
クレデンシャル装置との間でクレデンシャルを交換することができる。次いで、
コントローラ406は、UWB通信を使用した測距を可能にするべくクレデンシャル装置との間でスクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの秘密を確立する
ことができる。
UWB測距は
、例えば、
UWBモジュール402のコントローラ426によって実行する
ことができる。これは、
コントローラ406からのデータの受取りの際に動作しうる
。
データは、STS
、PACS-IDなどのクレデンシャルの識別子及びこれらに類似したもの
を含みうる
。」
イ 「前記認証情報装置と秘密を確立する」という事項について
通信技術分野において、「秘密を確立する」とは、通信の安全性を確保するために、通信する当事者間で暗号鍵や認証情報を安全に生成し、これを共有することを意味することは、技術常識である。
当該技術常識を踏まえれば、上記アの本件明細書等の段落【0020】における、「BLEを利用」して、「読取機400」の「コントローラ406」が、「クレデンシャル装置との間でスクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの秘密を確立する」との記載から、本件訂正発明1及び13の「前記認証情報装置と秘密を確立する」とは、読取機400の「コントローラ406」が、BLE(Bluetooth Low Energy)通信プロトコル(低電力通信プロトコル)を用いて、クレデンシャル装置(認証情報装置)との間で、通信の安全性を確保するための「STS」などの「秘密」情報を「共有する」ことであると理解できる。
ウ 「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」という事項について
上記アの本件明細書等の段落【0018】、【0020】には、「読取機400」の「コントローラ406」は、「UWB通信を使用した
測距を可能にするべく
クレデンシャル装置との間で」「スクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの
秘密を確立
」し、「
UWBモジュール402のコントローラ426
」は、「
読取機400
」
の
「
コントローラ406からの
」、「
STS
」、「
クレデンシャルの識別子
及びこれらに類似したもの
を含みうる
」「
データの受取りの際に
」、「
UWB測距
」
を
「
実行する
」ことが記載されている。
そうすると、本件訂正発明1及び13の「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」とは、上記イの検討を踏まえれば、「読取機400」の「コントローラ406」が「クレデンシャル装置」(認証情報装置)との間で共有した「STS」(秘密)、及び「クレデンシャルの識別子」(認証情報装置の識別子)を含む「データ」を、(「読取機400」の「コントローラ406」から)「UWBモジュール402のコントローラ426」が受信すると、「クレデンシャル装置」に対する「UWB測距」を「実行する」ことであると理解できる。
エ 小括
上記イ、ウの検討より、本件訂正発明1及び13の「前記認証情報装置と秘密を確立する」という事項、「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」という事項における「秘密」との用語は、いずれも、「読取機400」の「コントローラ406」と「クレデンシャル装置」(認証情報装置)との間で、通信の安全性を確保するために共有された、「STS」などの「秘密」情報を意味することが当業者であれば理解できるから、当該「秘密を確立する」及び「秘密」を含む「データ」との用語が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(2)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)
意見書の第2頁「3-3」において、申立人は、本件訂正発明1及び13は、「「前記認証情報装置と秘密を確立する」という事項と、「前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」という事項とを含む」が、
(i) 本件明細書等の段落【0020】には「UWB通信を使用した測距を
可能にするべく
秘密を確立すると記載しているだけであり、UWB通信を使用した測距自体にその秘密を
使用する
とまでは記載していない」し、
(ii)「一般に、UWB通信を使用した測距」は、「パルス」の「飛行時間の算出にスクランブルされたタイムスタンプ(STS)が使用される」ことから、「発明の詳細な説明を善解」し、「受け取ったデータに含まれるSTSを、例えば、パルスの送信時刻として使用するということが考えられる」が、「秘密」の用語は「スクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの時刻を示す情報以外の情報も含み得る」
から、本件訂正発明1及び13は、「発明の詳細な説明にサポートされていない事項まで含む」と主張しているため、以下、検討する。
上記 (i) については、上記(1)アの本件明細書等の段落【0018】、【0020】に、「読取機400」の「コントローラ406」は、「UWB通信を使用した
測距を可能にするべく
クレデンシャル装置との間で」「スクランブルされたタイムスタンプ(STS)などの
秘密を確立
」し、「UWBモジュール402のコントローラ426」は、「読取機400」の「コントローラ406からの」、「
STS
」、「クレデンシャルの識別子及びこれらに類似したもの
を含みうる
」「
データの受取りの際に
」、「
UWB測距
」
を
「
実行する
」ことが記載されているから、「UWBモジュール402のコントローラ426」による「測距」の「実行」には、「読取機400」の「コントローラ406」が「クレデンシャル装置」(認証情報装置)との間で「確立」した「STS」などの「秘密」を含んだ「データの受取り」が必要であること、すなわち、上記(1)イでの検討を踏まえれば、「UWBモジュール402のコントローラ426」による「クレデンシャル装置」に対する「測距」の「実行」には、少なくとも通信の安全性を確保するために、「クレデンシャル装置」との間で「共有」(確立)された「STS」などの「秘密」が使用されることは明らかである。
また、上記(ii)については、そのような、通信の安全性を確保することを目的として使用される、「クレデンシャル装置」と「読取機400」の「コントローラ406」との間で「確立」(共有)される「秘密」は、必ずしも、「UWB測距自体」に技術的に不可欠な(「STS」などの)「時刻情報」に限られないことも、当業者であれば理解することができる。
以上より、本件訂正発明1及び13の「前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」という事項における「秘密を使用して」「測距を実行する」との事項は、本件明細書における発明の詳細な説明に記載されていたといえる。
(3)訂正要件違反(特許法第120条の5第9項により準用される特許法第126条第5項)
意見書の第4頁「3-3」において、申立人は、本件訂正が、特許法第120条の5第9項により準用される特許法第126条第5項に違反すると主張する。
しかし、上記第3の2(2)及び上記(2)で検討したとおり、本件訂正発明1及び13の「前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」という事項における「秘密を使用して」「測距を実行する」との事項は、本件明細書等の段落【0020】に記載された事項から、当業者であれば当然理解できる事項の範囲内であるといえるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件訂正は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)進歩性(特許法第29条第2項)
意見書の第4頁「3-4」において、申立人は、本件訂正発明1は、「今回の訂正により、(1)秘密の確立、(2)この秘密を含むデータの受信、(3)この秘密を使用した測距の実行といった事項を追加したものと認められる」ところ、甲10には、「車両1および電子キー2との間で、UHFによるチャレンジレスポンス認証を実行し、その後、UWBによる測距を実行するシステム」において「チャレンジレスポンス認証に暗号鍵を使用することと、測距にチャレンジレスポンス認証で使用した暗号鍵を使用すること」が記載されているから、「(1)秘密の確立、および、(3)この秘密を使用した測距の実行を開示しており、「(2)この秘密を含むデータの受信」については、「甲1発明に甲2技術事項を適用したものにおいては、「IDコード照合」を行う制御部(本件訂正発明1の「第1コントローラ」に相当)と、「距離照合」を行う制御部(本件訂正発明1の「第2コントローラ」に相当)が、同じ暗号鍵を使用してそれぞれIDコード照合と距離照合を行うところ、それらの照合に使われる暗号通信を適切に復号するという当然の課題を解決するために、「IDコード照合」を行う制御部から、「距離照合」を行う制御部に、暗号鍵(訂正請求項1の「秘密」に相当)を伝達するようにすることに、格別の困難性があるものではない」と主張する。
ここで、上記第6の1(1)イで認定した甲1発明は、甲10記載事項と同様に、レスポンス照合に暗号鍵を用いる(c3参照)とともに、距離照合(測距)にも暗号鍵を用いる(de参照)ものであるところ、単一のコントローラである「車載制御部21」が備える「不揮発性のメモリ21a」に、「対応する電子キー10に設定されたIDコードと同一のIDコード」、「電子キー10に設定された測距コードと同一の測距コード」及び「暗号鍵」が記憶されたものである(c3参照)。
一方、上記第6の1(2)イで認定した甲2技術事項は、「それぞれ制御対象ごとに割り当てられ」、それぞれが「CPUやメモリなどを備え」た、「第1制御部10A、第2制御部10B」を開示している。
そうすると、甲1発明に甲2技術事項を適用して、単一の「車載制御部21」(コントローラ)を、「IDコード照合」を行う制御部(「第1コントローラ」)と「距離照合」を行う制御部(「第2コントローラ」)とに分けた場合には、各制御部(「第1コントローラ」と「第2コントローラ」)にそれぞれメモリを備えさせ、各制御部のメモリそれぞれに、照合に必要なIDコードや暗号鍵を記憶させておくのが自然であるから、甲1発明に甲2技術事項を採用したものにおいては、「IDコード照合」を行う制御部(「第1コントローラ」)から、「距離照合」を行う制御部(「第2コントローラ」)に、暗号鍵(「秘密」)を伝達する必要がないと考えられる。
したがって、甲10記載事項と同様、「レスポンス照合に暗号鍵を用いる」とともに「距離照合(測距)にレスポンス認証で使用した暗号鍵を使用する」甲1発明1に、甲2技術事項を適用しても、本件訂正発明1の「前記第2コントローラは、前記通信リンクを介して前記第1コントローラから前記秘密及び前記認証情報装置の識別子を含むデータを受信すると、前記秘密を使用して前記認証情報装置に対する前記測距を実行する」との構成には到達し得ない。
さらに、上記2(1)ウにおいて述べたとおり、本件訂正発明1と甲1発明の相違点1に係る上記構成は、甲3~10、先行文献のいずれにも開示がなく、また、当該相違点1に係る本件訂正発明1の上記構成が、技術的意義のない単なる設計的事項であるともいえない。
以上のとおり、本件訂正後の請求項1~22に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件訂正後の請求項1~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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