結論テキスト
特許第7453487号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
特許第7453487号の請求項1-15に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024700901 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7453487号(以下「本件特許」ともいう。)についての出願は、令和5年9月14日(優先権主張 令和4年9月19日)を国際出願日とする出願であって、令和6年3月11日にその特許権の設定登録がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行された。その後の特許異議の申立ての手続の経緯は次のとおりである。
令和6年 9月19日 特許異議申立人 日向 ヨシ子(以下「申立
人」という。)による全請求項に係る特許に
対する特許異議の申立て
令和7年 1月15日付け 取消由通知書
同年 3月19日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年 3月26日付け 訂正請求があった旨の通知書
同年 4月24日 意見書(申立人)
同年 7月30日付け 理取消由通知書(決定の予告)
同年10月 2日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年10月15日付け 訂正請求があった旨の通知書
令和8年 1月 7日 手続補正書(補正対象は、令和7年10月2
日提出の訂正請求書)
なお、令和7年3月19日に提出された訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定より、取り下げられたものとみなされる。
また、令和7年10月15日付け通知(特許法120条の5第5項)に対して、期間内に申立人からの応答はなかった。
令和7年10月2日に提出され、令和8年1月7日提出の手続補正書により補正された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次の訂正事項1~6のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に
「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、」と記載されているのを、
「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に
「 X=α/β×300・・・式(1)
のXの値が、5以上であり、」と記載されているのを、
「 X=α/β×300・・・式(1)
のXの値が、
10
以上であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に
「カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560m
-1
~1600cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をG、1310m
-1
~1350cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をD」と記載されているのを、
「カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560
c
m
-1
~1600cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をG、1310
c
m
-1
~1350cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をD」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項1に
「G/D比が0.1~5である、」と記載されているのを、
「G/D比が0.1~5であ
り、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下であ
る、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
ア 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2に
「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、」と記載されているのを、
「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項2に
「 X=α/β×300・・・式(1)
のXの値が、5以上であり、」と記載されているのを、
「 X=α/β×300・・・式(1)
のXの値が、
10
以上であり、」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項3
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項3に
「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、」と記載されているのを、
「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項3に
「カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、」と記載されているのを、
「カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、
カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量γ(mmol/g)が0.01mmol/g以上であり、
」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項3-3
特許請求の範囲の請求項3に
「 Y=α/β/γ・・・式(2)
のYの値が、0.01以上であり、」と記載されているのを、
「 Y=α/β/γ・・・式(2)
のYの値が、
1
以上であり、」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項3-4
特許請求の範囲の請求項3に
「カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560m
-1
~1600cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をG、1310m
-1
~1350cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をD」と記載されているのを、
「カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560
c
m
-1
~1600cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をG、1310
c
m
-1
~1350cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をD」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
オ 訂正事項3-5
特許請求の範囲の請求項3に
「G/D比が0.1~5である、」と記載されているのを、
「G/D比が0.1~5であ
り、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下であ
る、」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~14も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項4に
「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、」と記載されているのを、
「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
」に訂正する(請求項4の記載を引用する訂正後の請求項6~10、12~14も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項4に
「カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、」と記載されているのを、
「カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、
カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量γ(mmol/g)が0.01mmol/g以上であり、
」に訂正する(請求項4の記載を引用する訂正後の請求項6~10、12~14も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項4-3
特許請求の範囲の請求項4に
「 Y=α/β/γ・・・式(2)
のYの値が、0.01以上であり、」と記載されているのを、
「 Y=α/β/γ・・・式(2)
のYの値が、
1
以上であり、」に訂正する(請求項4の記載を引用する訂正後の請求項6~10、12~14も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項4-4
特許請求の範囲の請求項4に
「溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下である、」と記載されているのを、
「溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下であ
り、
前記塩基性低分子量成分(E)がアミン化合物(E1)を含む、
」に訂正する(請求項4の記載を引用する訂正後の請求項6~10、12~14も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「塩基性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。」とあるのを、
「塩基性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含む、請求項1~
3
のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に
「アミン化合物(E1)のアミン価が、105mgKOH/g~1000mgKOH/gである、請求項5に記載の導電性顔料ペースト。」とあるうち、訂正前の請求項5で請求項4を引用するものについて、
「
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m
2
/g)、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量γ(mmol/g)が0.01mmol/g以上であり、下記式(2);
Y=α/β/γ/・・・式(2)
のYの値が、0.01以上であり、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下であり、
前記塩基性低分子量成分(E)がアミン化合物(E1)を含み、
アミン化合物(E1)のアミン価が、105mgKOH/g~1000mgKOH/gである
、
導電性顔料ペースト。」と記載し、新たに請求項15とする。
本件訂正前の請求項1~14において、請求項5~14は、独立形式で記載された請求項1~4のいずれか1項を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1~14は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、それらに対応する本件訂正後の請求項1~15も一群の請求項である。そうすると、訂正事項1~6による訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。なお、特許権者から、請求項15を別の訂正単位とする求めはない。
(1)訂正事項1-1、2-1、3-1、4-1について
ア 訂正の目的
訂正事項1-1、2-1、3-1、4-1は、本件訂正前の請求項1、2、3、4の「顔料分散樹脂(A)の極性官能基」の種類が「アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種」であることを限定するものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-1、2-1、3-1、4-1について、明細書の段落【0014】には「上記顔料分散樹脂(A)は、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基、エーテル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し」と記載されている。また、同【0095】の表2には、実施例で用いる顔料分散樹脂(A)が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有している顔料分散樹脂(A)であり、顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではないことが記載されている。
そうすると、訂正事項1-1、2-1、3-1、4-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同第6項に適合する。
(2)訂正事項1-2、2-2について
ア 訂正の目的
訂正事項1-2、2-2は、本件訂正前の請求項1、2の「Xの値が、5以上」であったものを「Xの値が、10以上」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-2、2-2について、明細書の段落【0012】には「Xの値としては、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり」と記載されているから、訂正事項1-2、2-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同第6項に適合する。
(3)訂正事項1-3、3-4について
訂正事項1-3、3-4は、請求項1、3の「1560m
-1
」及び「1310m
-1
」の単位の明らかな誤記を「1560cm
-1
」及び「1310cm
-1
」と訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項を変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同第6項に適合する。
(4)訂正事項1-4、3-5について
ア 訂正の目的
訂正事項1-4、3-5は、本件訂正前の請求項1、3の「溶媒(C)」について、「水分含有量が1.2質量%以下である」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-4、3-5は、明細書の段落【0049】及び【0050】の「溶媒(C)は、水や各種有機溶媒などを好適に用いることができる。・・・導電性顔料ペーストの顔料分散性や樹脂成分を変質又は加水分解させない観点から、実質的に水を含まないことが好ましい。ここで「実質的に水を含まない」とは、導電性顔料ペーストの全量を基準として、水の含有量が、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であることをいう。」との記載及び同【0108】の「<溶媒(C)>・・・NMP2:N-メチル-2-ピロリドン、SP値11.1、水分含有量1.2質量%、アミン含有量0質量%」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同第6項に適合する。
(5)訂正事項3-2、4-2について
ア 訂正の目的
訂正事項3-2、4-2は、本件訂正前の請求項3、4の「カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量γ(mmol/g)」について、「0.01mmol/g以上」であることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3-2、4-2は、明細書の段落【0039】の「上記カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量としては、分散性及び貯蔵性の観点から、例えば0.01mmol/g~0.5mmol/g・・・である。酸性基量が0.01mmol/g以上であれば分散性が良好となり、・・・」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同第6項に適合する。
(6)訂正事項3-3、4-3について
ア 訂正の目的
訂正事項3-3、4-3は、本件訂正前の請求項Yの値が、0.01以上」であったものを「Yの値が、1以上」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3-3、4-3について、明細書の段落【0013】には「Yの値としては、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは1以上であり」と記載されているから、訂正事項3-3、4-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同第6項に適合する。
(7)訂正事項4-4について
ア 訂正の目的
訂正事項4-4は、本件訂正前の請求項4の「塩基性低分子量成分(E)」について、「アミン化合物(E1)を含む」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4-4は、明細書の段落【0061】の「上記塩基性低分子量成分(E)は、導電性顔料のぬれ性及び/又は貯蔵安定性を上げる観点から、アミン化合物(E1)を含有することが好ましい。・・・」との記載及び訂正前の請求項5の「塩基性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同第6項に適合する。
(8)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5が引用する請求項から請求項4を削除することにより、引用する請求項の数を減らす訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項を変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同第6項に適合する。
(9)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項4を引用する請求項5を引用する請求項11を、独立形式の請求項に記載をあらためるとともに、訂正前の請求項4についてされた前記訂正事項4-1及び4-2に係る訂正が付加されたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」、及び同第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項を変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び同第6項に適合する。
なお、訂正後の請求項11において、請求項11が引用する請求項5は、前記(6)のとおり、請求項4を引用しないものに訂正されているため、訂正前の請求項4を引用する請求項5を引用する請求項11を独立形式の請求項に記載をあらためる訂正事項6は、増項補正に該当しない。
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~14に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第2号及び同第4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。
本件特許の請求項1~15に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m
2
/g)とした場合、下記式(1);
X=α/β×300・・・式(1)
のXの値が、10以上であり、
カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積が、100m
2
/g~800m
2
/gであり、カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560cm
-1
~1600cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をG、1310cm
-1
~1350cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をDとした際のG/D比が0.1~5であり、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下である、導電性顔料ペースト。
【請求項2】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m
2
/g)とした場合、下記式(1);
X=α/β×300・・・式(1)
のXの値が、10以上であり、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下である、導電性顔料ペースト。
【請求項3】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m
2
/g)、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量γ(mmol/g)が0.01mmol/g以上であり、下記式(2);
Y=α/β/γ・・・式(2)
のYの値が、1以上であり、
カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積が、100m
2
/g~800m
2
/gであり、カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560cm
-1
~1600cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をG、1310cm
-1
~1350cm
-1
の範囲内での最大ピーク強度をDとした際のG/D比が0.1~5であり、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下である、導電性顔料ペースト。
【請求項4】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m
2
/g)、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量γ(mmol/g)が0.01mmol/g以上であり、下記式(2);
Y=α/β/γ・・・式(2)
のYの値が、1以上であり、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下であり、
前記塩基性低分子量成分(E)がアミン化合物(E1)を含む、導電性顔料ペースト。
【請求項5】
塩基性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項6】
カーボンナノチューブ(B1)の体積換算のメディアン径(D50)が、10~250μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項7】
塩基性低分子量成分(E)の含有量が、導電性顔料(B)の固形分100質量%を基準として、12質量%以上、500質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項8】
カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量が、0.01mmol/g~0.5mmol/gである、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項9】
溶媒(C)のアミン化合物含有量が1質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項10】
塩基性低分子量成分(E)の重量平均分子量が、1000未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項11】
アミン化合物(E1)のアミン価が、105mgKOH/g~1000mgKOH/gである、請求項5に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項12】
溶媒(C)が、N-メチル-2-ピロリドンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストと電極活物質(F)を配合してなる合材ペースト。
【請求項14】
請求項13に記載の合材ペーストを用いて得られるリチウムイオン電池用電極。
【請求項15】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び塩基性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、
前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、
前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、カーボンナノチューブ(B1)の含有量100質量部に対する塩基性低分子量成分(E)の含有量をα(質量部)、カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積をβ(m
2
/g)、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量をγ(mmol/g)とした場合、カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量γ(mmol/g)が0.01mmol/g以上であり、下記式(2);
Y=α/β/γ・・・式(2)
のYの値が、0.01以上であり、
溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下であり、
前記塩基性低分子量成分(E)がアミン化合物(E1)を含み、
アミン化合物(E1)のアミン価が、105mgKOH/g~1000mgKOH/gである、導電性顔料ペースト。」
(1)申立理由1:甲1を主引例とした新規性
本件発明1、3、5、7~11、13、14は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2:甲1を主引例とした進歩性
本件発明1、3、5~11、13、14は、甲1に記載された発明、並びに甲1、甲4、甲5及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)申立理由3:甲2を主引例とした新規性
本件発明3、4、8、10、12~14は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(4)申立理由4:甲2を主引例とした進歩性
本件発明請求項3~14は、甲2に記載された発明、並びに甲1~甲3、甲5~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(5)申立理由5:甲3を主引例とした新規性
本件発明1~6、8~14は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(6)申立理由6:甲3を主引例とした進歩性
本件発明1~14は、甲3に記載された発明、並びに甲1、甲3、甲5~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(7)申立理由7:サポート要件
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、本件特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
溶解性パラメーターについて、顔料分散樹脂(A)と溶媒(C)の溶解性パラメーターの差が、実施例に示される3を超えて多大である場合まで課題を解決できるとはいえない。
(8)申立理由8:明確性要件
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものであるから、本件特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ア 顔料分散樹脂(A)の極性官能基の種類について、明細書に列挙された以外の極性官能基、例えばアミノ基等が含まれるのか否かが明確でない。
イ 顔料分散樹脂(A)の極性官能基の官能基濃度について、明細書に具体的な算出方法及び計算方法が記載されておらず、値を一義的に求めることができないから、当該濃度の値は明確でない。
(9)申立理由9:実施可能要件
本件特許に係る出願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、本件特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
Yの値(Eの含有量/BET比表面積/酸性基量)について、カーボンナノチューブが酸性基を有していない場合(=酸性基量が0の場合)にはその値を計算できないから、実施できない。
(1)令和7年1月15日付けの取消理由通知書
ア 取消理由1、2(前記1(1)、(2)に対応する、甲1を主引例とした新規性・進歩性):対象請求項は、請求項1、3、5~11、13、14。
イ 取消理由3、4(前記1(3)、(4)に対応する、甲2を主引例とした新規性・進歩性):対象請求項は、請求項3~14。
ウ 取消理由5、6(前記1(5)、(6)に対応する、甲3を主引例とした新規性・進歩性):対象請求項は、請求項1~14。
エ 取消理由7(前記(8)アの理由、及び当審による明確性違背
請求項3及び4の「Y=α/β/γ・・・式(2)のYの値が、0.01以上」との特定事項について、カーボンナノチューブが酸性基を有していない場合(酸性基量γ=0の場合)が含まれるのか否かが不明確
(2)令和7年7月30日付けの理取消由通知書(決定の予告)
ア 取消理由4(前記1(4)に対応する、甲2を主引例とした進歩性):対象請求項は、請求項4、6~10、12~15。
イ 取消理由6(前記1(6)に対応する、甲3を主引例とした進歩性):対象請求項は、請求項3~15。
ウ 取消理由10(当審によるサポート要件違背):
請求項1~4、15の顔料分散樹脂(A)の極性官能基について、官能基の種類によりその特性が異なることを考慮すれば、請求項1~4、15に列挙された極性官能基の全てについて、本件発明の課題を解決できると理解することはできない。
(1)特許異議申立書に添付
甲1:特開2021-190331号公報
甲2:国際公開第2022/050328号
甲3:特開2019-192537号公報
甲4:特開2021-175699号公報
甲5:特開平4-230246号公報
甲6:特開2020-105316号公報
甲7:特開2017-186445号公報
甲8:韓国登録特許第10-1831562号公報
(2)令和7年4月24日付けの意見書に添付
甲9:特開2011-70908号公報
なお、甲4は甲1の「導電材6A(JENOTUBE6A」のG/D比が0.80であることを示す文献であり、甲5はトリオクチルアミンの全アミン価を示す文献であり、甲6は甲2及び甲3の導電材「100T」の比表面積及びG/D比を示す文献であり、甲7は甲2及び甲3の導電材「100T」の平均粒子径を示す文献であり、甲8はカーボンナノチューブに対するアミノエタノールの添加量を示す文献であり、甲9は非イオン性界面活性剤をカーボンナノチューブの分散に用いる公知技術を示す文献であって、新規性や進歩性を判断する際に検討を要しない文献であるから、後記4における摘記を省略する。
(1)甲1には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、導電材分散体、およびそれを用いてなる二次電池電極用組成物、電極膜、二次電池、導電性塗料および導電性塗膜に関する。」
「【0030】
<導電材>
本発明の導電材は、少なくともカーボンナノチューブを含み、任意でその他の導電材を含んでもよい。・・・その他の導電材は、1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。その他の導電材を用いる場合、分散剤の吸着性能の観点から、カーボンブラックが好ましい。」
「【0039】
<分散剤>
本発明の分散剤は、(メタ)アクリロニトリルに由来するモノマー単位と、カルボキシル基含有モノマー単位を含む共重合体を含有する。(メタ)アクリロニトリルに由来するモノマー単位の含有量は、共重合体を構成する全モノマー単位の質量を基準として、40質量%以上99質量%以下である。本発明の分散剤は、(メタ)アクリロニトリルに由来する単位を高濃度に含有する。非水素結合性のシアノ基の強い分極と分散樹脂主鎖の炭素鎖が導電材への吸着性と分散媒への親和性を高め、導電材を分散媒中に安定に存在させることができる。」
「【0063】
<消泡剤>
本発明の導電材分散体は消泡剤を含むことが好ましい。消泡剤は、市販の消泡剤、湿潤剤、水溶性有機溶剤等、消泡効果を有するものであれば任意に用いることができ、1種類でも、複数を組み合わせて用いてもよい。
例えば、アルコール系・・・シリコーン系;ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン、フルオロシリコーン油等、または、アルコール系以外の水溶性有機溶剤としてN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。・・・」
「【0064】
<分散媒>
本発明の分散媒は水であるり、任意で、他の溶媒を含んでいてもよい。」
「【0065】
<導電材分散体>
本発明の導電材分散体は、導電材、分散剤、および水を含有することが好ましい。導電材分散体の用途は、例えば、蓄電デバイス、帯電防止材、電子部品、透明電極(ITO膜)代替、電磁波シールド等が挙げられる。蓄電デバイスは、例えば、二次電池用電極、電気二重層キャパシタ用電極、非水電解質キャパシタ用電極等が挙げられる。この場合、導電材は炭素材料が好ましい。帯電防止材は、プラスチックやゴム製品のICトレーや電子部品材料の成形体が挙げられる。」
「【0066】
本発明の導電材分散体は、無機塩基、無機金属塩、または有機塩基を含有できる。これにより被分散物の経時分散安定性がより向上する。無機塩基および無機金属塩としては、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物が好ましい。無機塩基および無機金属塩としては、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の、塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、モリブデン酸塩、ニオブ酸塩、ならびにホウ酸塩等が挙げられる。・・・アルカリ金属の炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。・・・
【0067】
有機塩基は、例えば、炭素数1~40の置換されていてもよいアルキル基を有する1級、2級、3級アルキルアミン、またはその塩基性窒素原子を含有する化合物が挙げられる。
・・・
【0073】
無機塩基、無機金属塩、および有機塩基の配合量の合計は、分散剤100質量部に対して、1~100質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。適量配合すると分散性がより向上する。」
「【0086】
<二次電池電極用組成物>
本発明の二次電池電極用組成物は、上記導電材分散体、およびバインダー樹脂を含むことが好ましい。二次電池電極用組成物は、導電材分散体と、バインダー樹脂とを混合することにより製造することができる。・・・
・・・
【0089】
二次電池電極用組成物は、正極活物質または負極活物質を含んでもよい。本明細書では、正極活物質および負極活物質を、単に「活物質」という場合がある。活物質とは、電池反応の基となる材料のことである。・・・」
「【0122】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。」
「【0130】
<分散剤の合成>
(合成例1)
(分散剤1の合成)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルエチルケトン100部、アクリロニトリル90.0部、アクリル酸10.0部、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール0.5部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70°Cに加熱してメチルエチルケトン10部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬製:V-65)0.4部からなる混合物を6時間かけて反応容器内に滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、70°Cで1時間反応させた後、V-65を0.1部添加し、さらに70°Cで1時間反応を続け目的物を沈殿物として得た。その後、不揮発分測定にて転化率が98%を超えたことを確認した。生成物を減圧濾過によって濾別し、酢酸エチル100部にて洗浄を行い、減圧乾燥によって溶媒を完全に除去して重合体(A-1)を得た。分散剤(A-1)の重量平均分子量(Mw)は52,000であった。また、酸価は78mgKOH/gであった。
【0131】
(合成例2~22)
(分散剤2~22の合成)
使用するモノマー、連鎖移動剤を表1に従って変更した以外は、合成例1と同様にして、それぞれ分散剤2~22の製造を作製した。各分散剤の重量平均分子量(Mw)、酸価は表1に示す通りであった。なお、分散剤の合成は、連鎖移動剤の添加、重合開始剤量の調整、および反応条件等を適宜変更してMwを調製した。
【0132】
190
95
0001434123000001.jpg
【表1】
【0133】
AA:アクリル酸
IA:イタコン酸
SAMA:2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート
β-CEA:β-カルボキシエチルアクリレート
a-1:無水マレイン酸のイソプロピルアルコール付加体(下記式(1))
a-2:2-アクリロイルオキシエチルサクシネート
a-3:ヒドロキシエチルアクリレートのオクテニルコハク酸無水物付加体(下記式(2))
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
【0134】
【化1】
27
139
0001434123000002.jpg
【0135】
【化2】
58
137
0001434123000003.jpg
【0136】
<実施例α:二次電池への適用>
【0137】
(導電材分散体の作製)
(実施例1α-1)
表2に示す組成に従い、ステンレス容器にイオン交換水、分散剤、添加剤、消泡剤(サーフィノール104E、日本信越工業製)を加えて、ディスパーで均一になるまで撹拌した。その後、導電材をディスパーで撹拌しながら添加し、ハイシアミキサー(L5M-A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,600rpmの速度で全体が均一になり、グラインドゲージにて分散粒度が250μm以下になるまでバッチ式分散を行った。このとき、グラインドゲージにて確認した分散粒度は180μmであった。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP-17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、メジアン径が100μm以下になるまで20回パス式分散処理を行った。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行った。さらに、目開き48μmのナイロンメッシュに3度通過させた後、磁気フィルター(トックエンジニアリング製)を介し、室温、磁束密度12,000ガウスの条件で濾過し、導電材分散体(分散体1α)を得た。濾過後の磁気フィルターには磁性を有する粒状の金属片の付着が見られた。また、表2に示す通り、分散体1αは低粘度かつ貯蔵安定性が良好であり、鉄、ニッケル、クロムからなる金属含有量は30ppmだった。
【0138】
(実施例1α-2~1α-33、比較例1α-1~1α-6)
表2に示す組成に従い、実施例1α-1と同様にして、各分散体(分散体2α~33α、比較分散体1α~6α)を得た。ただし、メジアン径が100μm以上である場合、追加で2パス分散処理を行い、再度測定し、メジアン径が100μm以下になるまで繰り返した。表2に示す通り、本発明の導電材分散体(分散体2α~33α)はいずれも低粘度かつ貯蔵安定性が良好であった。また、鉄、ニッケル、クロムからなる金属含有量は表2示す通りであった。」
「【0141】
【表2】
194
131
0001434123000004.jpg
【0142】
・6A:JENOTUBE6A(JEIO製、多層CNT、平均外径6nm、比表面積700m
2
/g、酸性基量0.27μmol/m
2
、190μmol/g)
・10B:JENOTUBE10B(JEIO製、多層CNT、平均外径10nm、比表面積230m
2
/g、酸性基量0.67μmol/m
2
、154μmol/g)
・TUBALL1:シングルウォールカーボンナノチューブ(OCSiAl製、平均外径1.7nm、純度80%、比表面積490m
2
/g、酸性基量0.38μmol/m
2
、186μmol/g)
・TUBALL2:シングルウォールカーボンナノチューブ(OCSiAl製、平均外径1.6nm、純度93%、比表面積975m
2
/g、酸性基量0.21μmol/m
2
、205μmol/g)
・100T:K-Nanos100T(Kumho Petrochemical製、多層CNT、平均外径13nm、比表面積240m
2
/g、酸性基量0.23μmol/m
2
、54μmol/g)
・EC-300J:ケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製、平均一次粒子径40nm、比表面積800m
2
/g、酸性基量0.27μmol/m
2
、219μmol/g)
・HS-100:デンカブラックHS-100(デンカ製、アセチレンブラック、平均一次粒子径48nm、比表面積39m
2
/g比表面積975m
2
/g、酸性基量0.21μmol/m
2
、205μmol/g)
・PVP:ポリビニルピロリドン K-30(日本触媒製、不揮発分100%、酸価0mgKOH/g)
・F01MC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 サンローズF F01MC(日本製紙製、不揮発分100%、酸価 NMPに不溶のため測定不可)」
「【0150】
(正極用合材組成物および正極の作製)
(実施例3α-1)
容量150cm
3
のプラスチック容器に導電材分散体(分散体1α)と、CMCと、水とを加えた後、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、その後、正極活物質としてLFPを添加し、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで150秒間撹拌した。さらにその後、PTFEを添加し、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、正極用合材組成物を得た。正極用合材組成物の不揮発分は75質量%とした。正極用合材組成物の不揮発分の内、LFP:導電材:PTFE:CMCの不揮発分比率は97:0.5:1:1.5とした。
【0151】
正極合材組成物を、アプリケーターを用いて、厚さ20μmのアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120°C±5°Cで25分間乾燥し、電極膜を作製した。その後、電極膜をロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、正極(正極1)を得た。なお、合材層の単位当たりの目付量が20mg/cm
2
であり、圧延処理後の合材層の密度は2.1g/ccであった。
【0152】
・LFP:リン酸鉄リチウム HED(商標)LFP-400(BASF製、不揮発分100%)
・PTFE:ポリテトラフルオロエチレン ポリフロン PTFE D-210C(ダイキン製、不揮発分60%)
・CMC:カルボキシメチルセルロース#1190(ダイセルファインケム製、不揮発分100%)
【0153】
(実施例3α-2~3α-33、比較例3α-1~3α-6)
導電材分散体を、表4に示す各分散体(分散体2α~33α)に変更した以外は、実施例3α-1と同様の方法により正極2~33および比較正極1~6を得た。」
「【0156】
【表4】
171
114
0001434123000005.jpg
」
(2)甲2には、次の記載がある。
「[0001] 本発明の一実施形態は、導電材分散体に関する。本発明の他の実施形態は、バインダー樹脂含有導電材分散体、及び電極膜用スラリーといった導電性組成物に関する。本発明のさらに他の実施形態は、上記導電性組成物を用いた電極膜、及び当該電極膜を備えた非水電解質二次電池に関する。」
「[0027]<導電材分散体>
本発明の一実施形態である導電材分散体は、炭素繊維を含む導電材と、共重合体Aを含む分散剤と、分散媒とを含有する。すなわち、導電材分散体は、共重合体Aと、溶媒と、炭素繊維とを少なくとも含有する。導電材分散材は、二次電池電極に配合され得る、塩基及び酸等の成分を更に含有してもよい。」
「[0028]<導電材>
導電材は、少なくとも炭素繊維を含み、必要に応じて、炭素繊維以外の導電材(以下、その他の導電材という)を含んでもよい。炭素繊維のなかでも、カーボンナノチューブ及び気相成長炭素繊維のような炭素超短繊維を含むことが好ましく、カーボンナノチューブを含むことがより好ましい。・・・」
「[0040]<分散剤>
分散剤は、脂肪族炭化水素構造単位と、ニトリル基含有構造単位とを含む共重合体Aを含有する。導電材分散体において、共重合体Aのムーニー粘度(ML
1+4
、100°C)は、40以上70以下であることが好ましい。
・・・
[0073] ニトリル基含有構造単位の含有量は、共重合体Aの質量を基準として(すなわち、共重合体Aの質量を100質量%とした場合に)、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。ニトリル基含有構造単位の含有量は、共重合体Aの質量を基準として(すなわち、共重合体Aの質量を100質量%とした場合に)、50質量%以下であることが好ましく、46質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
ニトリル基含有構造単位の含有量を上記範囲にすることで、被分散物への吸着性及び分散媒への親和性をコントロールすることができ、被分散物を分散媒中に安定に存在させることができる。また、共重合体Aの電解液への親和性もコントロールでき、電池内で共重合体Aが電解液に溶解して電解液の抵抗を増大させるなどの不具合を防ぐことができる。
[0074] 共重合体Aは、さらに任意の構造単位を含んでもよい。任意の構造単位として、アミド基含有構造単位;カルボキシル基含有構造単位;アルケニレン構造単位;アルキル構造単位;アルカントリイル構造単位、及びアルカンテトライル構造単位等の分岐点を含む構造単位などが挙げられる。分岐点を含む構造単位は、分岐状アルキレン構造を含む構造単位及び分岐状アルキル構造を含む構造単位とは異なる構造単位である。」
「[0101] 上記(5b)の方法としては、ニトリル基含有構造単位及び脂肪族炭化水素構造単位を含有する共重合体Aを調製する際に、塩基を添加して調整してもよい。また、既に調製されたニトリル基含有構造単位及び脂肪族炭化水素構造単位を含有する共重合体を、この共重合体を溶解できる溶媒に溶解させた後、塩基を添加して調整してもよい。添加する塩基としては、無機塩基、及び、有機水酸化物(有機塩基)からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
[0102] 無機塩基としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、モリブデン酸塩、ニオブ酸塩、又はホウ酸塩;及び、水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのなかでも、容易にカチオンを供給できる観点から、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が好ましい。・・・」
「[0178](製造例2:分散剤2含有液の作製)
ステンレス製容器1に、NaOH16部及びNMP84部を入れ、ディスパーにより1時間撹拌し、NaOHの懸濁液を調製した。ステンレス製容器2に、合成例2で得た共重合体2を9部、及びNMP91部を入れ、ディスパーにより1時間撹拌し、共重合体2の溶液を調製した。
続いて、NMPを除いた組成が表1に示す組成となるように、NaOHの懸濁液及び共重合体2の溶液をステンレス製容器に入れ、更にNMPを加えて濃度を調整し、ディスパーで2時間撹拌した。このようにして、共重合体2のムーニー粘度を調整し、分散剤2(NaOH懸濁液と混合後の共重合体2)と、NaOHと、NMPとを含む分散剤2含有液を得た。分散剤2のムーニー粘度(ML
1+4
、100°C)を測定したところ、42であった。
・・・
[0181] なお、表1のモノマー及び分子量調整剤の欄に記した略号は、以下を意味する。
BD:1,3-ブタジエン
MBD:2-メチル-1,3-ブタジエン
AN:アクリロニトリル
AAm:アクリルアミド
BA:ブチルアクリレート
TDM:t-ドデシルメルカプタン
・・・
[0186]
[表1]
110
48
0001434123000006.jpg
・・・
[0188]<2>導電材分散体の作製
(実施例1-1)
表2に示す組成に従い、ステンレス容器に、先に調製した分散剤含有液(分散剤、NMP、及び記載のある場合は塩基を含む)を加え、更にNMPを追加して濃度を調整した後、ディスパーで均一になるまで撹拌した。
その後、導電材をディスパーで撹拌しながら添加し、ハイシアミキサー(L5M-A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,500rpmの速度で全体が均一になり、グラインドゲージにて分散粒度が250μm以下になるまで、バッチ式分散を行った。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP-17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、25回パス式分散処理を行った。
上記分散処理は、シングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行った。さらに、目開き48μmのナイロンメッシュに3度通過させた後、磁気フィルター(トックエンジニアリング製)を介し、室温、磁束密度12,000ガウスの条件で濾過し、導電材分散体(分散体1)を得た。表2に示すように、得られた実施例1-1の導電材分散体の組成は、分散体の全質量を基準として、100Tを5%、及び分散剤1を1%含み、残りの94%はNMPである。
濾過後の磁気フィルターには、磁性を有する粒状の金属片の付着が見られた。また、表2に示す通り、分散体1は低粘度かつ安定性が良好であり、ICP分析法で測定したFe金属元素含有量は0.9ppmだった。
[0189](実施例1-2~1-21、比較例1-1~1-5、1-7~1~10)
表2に示す組成に従い、実施例1-1と同様にして、各分散体(分散体2~21、比較分散体1~5、7~10)を得た。表3に示す通り、本発明の導電材分散体(分散体2~21)はいずれも低粘度かつ安定性が良好であった。
・・・
[0191] なお、表2に記した略号は、以下を意味する。
・100T:K-Nanos 100T(Kumho Petrochemical株式会社製、多層CNT、外径10~15nm)
・Flotube9110:Cnano FT9110CNT(Cnano Technology Ltd製、多層CNT、平均外径11nm)
・BT1003M:LUCAN BT1003M(LG Chem Ltd製、多層CNT、平均外径13nm)
・8S:JENOTUBE8S(株式会社JEIO製、多層CNT、外径6~9nm)
・HS-100:デンカブラックHS-100(デンカ株式会社製、アセチレンブラック、平均一次粒子径48nm、比表面積39m
2
/g)
・PVP:ポリビニルピロリドンK-30(株式会社日本触媒製、固形分100%)
・H-NBR3:Zetpole(R)3300(日本ゼオン株式会社製、ムーニー粘度(ML
1+4
、100°C)80、アクリロニトリル含有量23.6%)
[0192]
[表2]
92
63
0001434123000007.jpg
」
(3)甲3には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、分散性、貯蔵安定性に優れたカーボンナノチューブ分散液に関する。また、該分散液を使用した電池電極合材層およびリチウムイオン二次電池に関する。」
「【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、カーボンナノチューブを溶剤に分散させる際に、分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP)および、添加剤としてアミン系化合物を使用すること、更にPVP使用量とアミン系化合物の使用量との間に、分散性に大きく寄与する臨界的範囲があることを見出した。またこれらが一定の範囲内である場合に高濃度、低粘度、かつ長期保存安定性が良好且つ、リチウムイオン電池の電極用途に好適なカーボンナノチューブ分散液を製造できることを見出し、本発明の完成に至った。」
「【0017】
<カーボンナノチューブ(A)>
本発明に用いるカーボンナノチューブ(A)は、平面的なグラファイトを円筒状に巻いた形状を有している。カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブまたは、単層カーボンナノチューブもしくはこれらが混在するものであってもよい。・・・」
「【0021】
<ポリビニルピロリドン(B)>
ポリビニルピロリドン(B)(以下、PVPともいう)としては、重量平均分子量(粘度測定法)が8000~300万の範囲のものが好ましく、具体的には、BASFジャパン社製、商品名:ルビテック(Luvitec)K17(K値:15.0~19.0、低分子量)、K30(K値27.0~33.0)、K80(K値74.0~82.0)、K85(K値84.0~88.0)、K90(K値88.0~92.0)、K90HM(K値92.0~96.0、高分子量)、ISP社製、K15、K30、K90、K120、日本触媒社製、商品名:ポリビニルピロリドンK30(K値27.0~33.0)、K85(K値84.0~88.0)、K90(K値88.0~96.0)などが挙げられる。ポリビニルピロリドンは、粘度上昇防止の観点から、好ましくは、K値が150以下、さらには、K値が100以下である。」
「【0022】
<N-メチル-2-ピロリドン(C)>
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)(C)は、分散液の分散媒として用いる。分散媒として、本発明では、PVPの分散剤としての性能、電池性能を損なわない範囲で、他の溶剤を1種類以上併用しても良いが、本発明の想定する産業上の利用可能性から、NMPを単独で用いることが好ましい。」
「【0023】
<アミン系化合物(D)>
本発明には、アミン系化合物(D)を用いる。アミン系化合物(D)としては、第1アミン(1級アミン)、第2アミン(2級アミン)、第3アミン(3級アミン)が用いられ、アンモニアや第4級アンモニウム化合物は含まない。アミン系化合物は、モノアミン以外にも、分子内に複数のアミノ基を有するジアミン、トリアミン、テトラミン、ポリアミンといったアミン系化合物を用いることができる。また、上記以外のものとして、アミノ酸や脂環式含窒素複素環化合物等も使用することができる。よって、本明細書中のアミノ基は1級、2級または3級の官能基である。」
「【0035】
<カーボンナノチューブ分散液の製造方法>
本発明の分散液は、ポリビニルピロリドン(B)を分散剤として、アミン系化合物(D)を添加剤または分散剤として用いてカーボンナノチューブ(A)をNMP(C)中に分散したものである。・・・」
「【0052】
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。本実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ表す。
実施例及び比較例で使用したカーボンナノチューブ(A)(「CNT」と略記することがある)、ポリビニルピロリドン(B)(「PVP」と略記することがある)、アミン系化合物(D)を以下に示す。
また、各表には、各原料の組成のみを記載しているが、特に記載の無い残りの成分は、全てN-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。
【0053】
<カーボンナノチューブ(A)>
・JENOTUBE8A:JEIO社製、多層CNT、外径6~9nm。
・K-Nanos 100T:Kumho Petrochemical社製、多層CNT、外径10~15nm、以下100Tと略記する。
・HCNTs10:SUSUN Sinotech New Materials社製、多層CNT、外径10~20nm。
【0054】
<ポリビニルピロリドン(B)>
・PVP K-120:ISP社製
・PVP K-90:ISP社製
・PVP K-30:日本触媒社製、K値27.0~33.0
【0055】
<アミン系化合物(D)>
・n-ブチルアミン:脂肪族1級アミン。C
4
H
9
NH
2
・n-オクチルアミン: 脂肪族1級アミン。分子式C
8
H
17
NH
2
。分子量129。以下、オクチルアミンと略記する。
・ステアリルアミン: 脂肪族1級アミン。分子式C
18
H
37
NH
2
。分子量269.5。
・ジエチルアミン:脂肪族2級アミン。分子式C
4
H
11
N。分子量73。
・ジステアリルアミン: 脂肪族2級アミン。分子式C
36
H
75
N。
・トリエチルアミン:脂肪族3級アミン。分子式C
6
H
15
N。分子量101。
・トリ-n-オクチルアミン: 脂肪族3級アミン。分子式C
24
H
51
N。分子量354。以下、トリオクチルアミンと略記する。
・エタノールアミン:アルカノールアミン系1級アミン。分子式C
2
H
7
NO、分子量61。
・トリエタノールアミン: アルカノールアミン系3級アミン。分子式C
6
H
15
NO
3
。pKa=7.6。
・アミート102(花王社製): ポリオキシエチレンドデシルアミン(平均EO=2モル付加、3級アミン)。
・アミート105(花王社製): ポリオキシエチレンドデシルアミン(平均EO=5モル付加、3級アミン)。
・アミート302(花王社製): ポリオキシエチレンオクタデシルアミン(平均EO=2モル付加、3級アミン)。
・アミート320(花王社製): ポリオキシエチレンオクタデシルアミン(平均EO=20モル付加、3級アミン)。
・ポリエチレンイミン 1200(純正化学社製): 分子量1200、アミン価19。以下、PEI1200と略記する。
・ポリエチレンイミン 1800(純正化学社製): 分子量1800、アミン価19。以下、PEI1800と略記する。
・ポリエチレンイミン 10000(純正化学社製): 分子量10000、アミン価18。以下、PEI10000と略記する。
・ヘキサメチレンテトラミン: 脂環式含窒素複素環化合物(3級アミン)。分子式C
6
H
12
N
4
。
・L-アスパラギン酸: 酸性アミノ酸。分子式C
4
H
7
NO
2
。以下、アスパラギン酸と略記する。
・L-アスパラギン1水和物: 中性アミノ酸。分子式C
4
H
8
N
2
O
3
。以下、アスパラギンと略記する。
【0056】
<カーボンナノチューブ分散液の評価>
実施例、比較例で得られたカーボンナノチューブ分散液の評価は、粘度を測定することにより行った。
【0057】
粘度値の測定は、B型粘度計(東機産業社製「BL」)を用いて、分散液温度25°C、B型粘度計ローター回転速度60rpmにて、分散液をヘラで充分に撹拌した後、直ちに行った。測定に使用したローターは、粘度値が100mPa・s未満の場合はNo.1を、100以上500mPa・s未満の場合はNo.2を、500以上2000mPa・s未満の場合はNo.3を、2000以上10000mPa・s未満の場合はNo.4のものをそれぞれ用いた。得られた粘度値が10000mPa・s以上の場合については、「>10000」と記載したが、これは評価に用いたB型粘度計では評価不可能なほどに高粘度であったことを表す。低粘度であるほど分散性が良好であり、高粘度であるほど分散性が不良である。
【0058】
貯蔵安定性の評価は、カーボンナノチューブ分散液を50°Cにて、10日間静置して保存した後の、粘度値の変化から評価した。変化の少ないものほど安定性が良好であることを示す。
【0059】
<カーボンナノチューブ分散液の調製>
[実施例1-1~実施例1-29]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にNMP(C)(三菱化学社製)と各種ポリビニルピロリドン(B)と各種アミン系化合物(D)を仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、各種カーボンナノチューブ(A)を加え、1.25mmφジルコニアビーズをメディアとして、ペイントシェーカーで7時間分散し、各カーボンナノチューブ分散液を得た。いずれも低粘度かつ、貯蔵安定性も良好であった。評価結果を表2に示した。
【0060】
[比較例1-1~比較例1-3]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にNMP(C)(三菱化学社製)と、ポリビニルピロリドン(B)としてK-30とを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、カーボンナノチューブ(A)として表1に示すCNTを加え、1.25mmφジルコニアビーズをメディアとして、ペイントシェーカーで7時間分散した。しかし、得られた分散液は、いずれも高粘度な状態であったことから、カーボンナノチューブを十分に分散する事が出来ていないことがわかる。評価結果を表2に示した。この結果から、PVPを分散剤として単独で用いた場合には、所望とする高濃度かつ低粘度のカーボンナノチューブ分散液を得る事ができないことが明らかとなった。
【0061】
【表1】
185
148
0001434123000008.jpg
【0062】
【表2】
217
94
0001434123000009.jpg
」
(1)甲1に記載された発明
本件発明1~4、15の「導電性顔料ペースト」は、本件発明13の「請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストと電極活物質(F)を配合してなる合材ペースト」とは異なり、電極活物質やバインダを添加する前の状態の「導電性顔料ペースト」であるから、甲1においても、正極活物質または負極活物質を添加する前の「導電材分散体」で発明を認定する。
甲1の【0141】の【表2】の「実施例1α-33」の「導電材分散体33α」に着目し、その組成や製造方法について、同【0122】、【0130】~【0138】、【0141】、【0142】及び【0150】~【0153】の記載を参酌すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「導電材6A(JENOTUBE6A(JEIO製、多層CNT、平均外径6nm、比表面積700m
2
/g、酸性基量0.27μmol/m
2
、190μmol/g))を1部と、分散剤2を0.6部と、Na
2
CO
3
を0.12部と、水を98.08部とを攪拌して得た導電材分散体33αであって、
分散剤2は、アクリロニトリルを84部と、アクリル酸を16部との重合体である、
導電材分散体33α。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「導電材6A」は、多層CNT(カーボンナノチューブ)であるから、本件発明1の「導電性顔料(B)」に相当する。
甲1発明の「分散剤2」は、導電材の分散剤として添加される重合体であるから、本件発明1の「顔料分散樹脂(A)」に相当する。
甲1発明の「Na
2
CO
3
」及び「水」は、本件発明1の「塩基性低分子量成分(E)」及び「溶媒(C)」に相当する。
甲1発明の「導電材分散体33α」は、導電性を有するカーボンナノチューブを含み、全体として塗布できる程度の粘性を有するものであるから、本件発明1の「導電性顔料ペースト」に相当する。
そうすると、両者は、少なくとも、次の点において相違する。
<相違点1>
導電性顔料ペーストの溶媒成分が、本件発明1は「溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下」であるのに対し、甲1発明は「水」のみからなる点。
相違点1について検討すると、甲1発明を認定した甲1の【0064】には、甲1発明の分散媒について、本発明の分散媒は水であり、任意で、他の溶媒を含んでいてもよいことが記載されているものの、他の溶媒の添加量等が具体的に示されてはいない。また、甲1の【0141】の【表2】に示された導電材分散体1αから33αは、いずれも分散媒として水のみを用いており、水以外の溶媒を添加したものは示されていない。
そうすると、甲1には、溶媒を水主体のものではないものとすることについて、記載も示唆もないのであるから、他の甲号証の記載を参酌したとしても、甲1発明において、溶媒の水分含有量を1.2質量%以下にすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明3
独立形式で記載された本件発明3は、本件発明1と同じく「溶媒(C)の水分含有量が1.2質量%以下」との発明特定事項を備えるものである。
そうすると、前記アと同じ理由により、本件発明3は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明5~11、13、14
本件発明5~11、13、14は、独立形式で記載された本件発明1、3のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記アの相違点1に係る特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明5~11、13、14は、前記アと同じ理由により、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(1)甲2に記載された発明
前記1(1)と同様の理由で、甲2の[0192]の[表2]の「実施例1-9」の導電材分散体である「分散体9」に着目し、「分散体9」について[0188]、[0189]、「0191]の記載を、「分散剤9」について[0119]、[0175]、[0176]、[0178]、[0181]、[0182]、[0186]の記載を参酌すれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2発明)
「分散剤9含有液(共重合体9、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)及びNaOHを含む)に、更にNMPを追加して濃度調整した後、導電材100T(K-Nanos 100T(Kumho Petrochemical株式会社製、多層CNT、外径10~15nm))を加えて得た、導電材100Tが5部、分散剤9が1部、NMPが94部からなる導電材分散体9であって、
分散剤9含有液は、共重合体9に対してNaOHを7%含む、共重合体9のNMP溶液と、NaOHのNMP懸濁液を混合したものであり、
共重合体9は、単量体の含有量比が、BD(1,3-ブタジエン):AN(アクリロニトリル):BA(ブチルアクリレート)=57:40:3である、
導電材分散体9。」
(2)対比・判断
ア 本件発明3
(ア)対比
本件発明3と甲2発明を対比すると、甲2発明の「導電材100T(K-Nanos 100T(Kumho Petrochemical株式会社製、多層CNT、外径10~15nm))」は、導電材である多層カーボンナノチューブであるから、本件発明4の「導電性顔料(B)」に相当する。
甲2発明の「共重合体8」は、導電材の分散剤として添加される重合体であるから、本件発明3の「顔料分散樹脂(A)」に相当する。
甲2発明の「NMP」は、本件発明3の「溶媒(C)」に相当する。
甲2発明の「導電材分散体9」は、本件発明3の「導電性顔料ペースト」に相当する。
そうすると、両者は、少なくとも、次の点において相違する。
<相違点2>
本件発明3は「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基」であるのに対し、甲2発明は、極性官能基として、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有するものではない点。
相違点2について検討すると、甲2発明を認定した甲2の[0040]には、分散剤はニトリル基含有構造単位を含むことが記載され、同[0073]には、ニトリル基含有構造単位の含有量は、共重合体Aの質量を100質量%とした場合に15質量%(2.83mmol/g)以上であることが好ましく、30質量%(5.65mmol/g)以上であることが更に好ましいことが記載されているものの、アミド基については、同[0074]に「共重合体Aは、さらに任意の構造単位を含んでもよい。任意の構造単位として、アミド基含有構造単位;カルボキシル基含有構造単位・・・などが挙げられる。」と記載されるのみである。
そして、甲2の[0186]の[表1]には、本件発明1の「アミド基、水酸基、スルホン酸基」に該当する極性官能基を有する唯一の例として、「分散剤8」(アクリルアミド由来のアミド基を有するもの)が記載されているが、このアミド基の濃度を、アクリルアミドの分子量を71.08として計算すると、重合体1gあたり、アミド基を1/71.08×1000×2/(68+30+2)≒0.281mmol/gとなるから、甲2に記載された「分散剤8」のアミド基の濃度は、本件発明3の「0.3mmol/g~23mmol/g」の範囲を満たすものではない。
そうすると、甲2には、ニトリル基含有構造単位を多く含むことが必須であることが記載され、アミド基含有単位の含有量を増やすことについては記載も示唆もないのであるから、他の甲号証の記載を参酌したとしても、甲2発明の極性官能基として、必須とされるニトリル基含有構造単位に代えて、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を採用したり、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基の官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであるようにすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明4、15
独立形式で記載された本件発明4、15は、本件発明3と同じく「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基」との発明特定事項を備えるものである。
そうすると、前記アと同じ理由により、本件発明4、15は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明5~14
本件発明5~14は、独立形式で記載された本件発明3、4のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記アの相違点2に係る特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明5~14は、前記アと同じ理由により、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(1)甲3に記載された発明
前記1(1)と同様の理由で、甲3の【0061】の【表1】の「実施例1-2」の「カーボンナノチューブ分散液」に着目し、その組成や製造方法について、同【0052】~【0055】、【0059】の記載を参酌すれば、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲3発明)
「NMP(C)(三菱化学社製)を93.75重量%と、PVP(B)K-30(PVP K-30:日本触媒社製、K値27.0~33.0)を1.00重量%と、アミン系化合物(D)n-オクチルアミン(脂肪族1級アミン。分子式C
8
H
17
NH
2
。分子量129)を0.25重量%とを仕込み、混合分散した後、カーボンナノチューブ(A)100T(K-Nanos 100T:Kumho Petrochemical社製、多層CNT、外径10~15nm)を5.0重量%加えて得たカーボンナノチューブ分散液である、実施例1-2のカーボンナノチューブ分散液。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲3発明を対比すると、甲3発明の「100T(K-Nanos 100T:Kumho Petrochemical社製、多層CNT、外径10~15nm)」は、本件発明1の「導電性顔料(B)」に相当する。
甲3発明の「PVP(B)K-30(PVP K-30:日本触媒社製、K値27.0~33.0)」は、甲3の【0021】に「ポリビニルピロリドン(B)(以下、PVPともいう)としては、重量平均分子量(粘度測定法)が8000~300万の範囲のものが好ましく」と記載される重合体であって、同【0035】に「本発明の分散液は、ポリビニルピロリドン(B)を分散剤として・・・用いてカーボンナノチューブ(A)をNMP(C)中に分散したものである。」と記載されるように、導電材の分散剤として添加されるものであるから、本件発明1の「顔料分散樹脂(A)」に相当する。
甲3発明の「アミン系化合物(D)n-オクチルアミン(脂肪族1級アミン。分子式C
8
H
17
NH
2
。分子量129)」は、本件発明1の「塩基性低分子量成分(E)」に相当する。
甲3発明の「NMP(C)」は、甲3の【0022】に「N-メチル-2-ピロリドン(NMP)(C)は、分散液の分散媒として用いる。」と記載されるように、溶媒として用いられるものであるから、本件発明1の「溶媒(C)」に相当する。
甲3発明の「実施例1-2のカーボンナノチューブ分散液。」は、本件発明1の「導電性顔料ペースト」に相当する。
そうすると、両者は、少なくとも、次の点において相違する。
<相違点3>
本件発明1は「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではな」いのに対し、甲3発明の分散剤は、ピロリドン基を有するポリビニルピロリドンである点。
相違点3について検討すると、甲3発明を認定した甲3の[0009]に「本発明者らは・・・カーボンナノチューブを溶剤に分散させる際に、分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP)および、添加剤としてアミン系化合物を使用すること、更にPVP使用量とアミン系化合物の使用量との間に、分散性に大きく寄与する臨界的範囲があることを見出した。またこれらが一定の範囲内である場合に高濃度、低粘度、かつ長期保存安定性が良好且つ、リチウムイオン電池の電極用途に好適なカーボンナノチューブ分散液を製造できることを見出し、本発明の完成に至った。」と記載されるように、甲3発明は、カーボンナノチューブの分散剤として、ポリビニルピロリドン(PVP)を用いることを念頭にしており、PVP以外の分散剤については記載も示唆もない。
そうすると、他の甲号証の記載を参酌したとしても、甲3発明において、分散剤として用いているPVPに代えて、極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であるものを採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明ではないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2~4、15
独立形式で記載された本件発明2~4、15は、本件発明1と同じく「顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、前記極性官能基が、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であり、前記顔料分散樹脂(A)が、ポリビニルピロリドンではなく」との発明特定事項を備えるものである。
そうすると、前記アと同じ理由により、本件発明2~4、15は、甲3発明ではないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明5~14
本件発明5~14は、独立形式で記載された本件発明1~4のいずれかの記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、前記アの相違点3に係る特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明5~14は、前記アと同じ理由により、甲3発明ではないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(1)顔料分散樹脂(A)の極性官能基の種類
本件発明1~4、15の「顔料分散樹脂(A)」は、前記第2で検討した本件訂正により、その極性官能基の種類が、「アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基」であることが特定された。
したがって、本件発明1~4、15の「顔料分散樹脂(A)」の極性官能基の種類は明確である。また、本件発明1~4を引用する形式で特定された本件発明5~14についても同様に明確である。
(2)導電性顔料(B)の酸性基量
本件発明3、4、15の「カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量γ(mmol/g)」は、前記第2で検討した本件訂正により、「酸性基量γ(mmol/g)が0.01mmol/g以上」であることが特定され、その結果、本件発明3、4、15の「Y=α/β/γ・・・式(2)のYの値が、0.01以上」との特定事項について、γ=0の場合が含まれないことが明確となった。
したがって、本件発明3、4、15の「Y=α/β/γ・・・式(2)のYの値が、0.01以上」は明確である。また、本件発明1~4を引用する形式で特定された本件発明5~14についても同様に明確である。
本件発明1~4、15の「顔料分散樹脂(A)」は、前記第2で検討した本件訂正により、その極性官能基が、「極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであり、アミド基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基であ」ることが特定された。
これに対し、本件明細書の【0092】の【表1】には、顔料分散樹脂として、官能基濃度18.1mmol/gのスルホン酸変性ポリビニルアルコールを用いた実施例1A、同9.9mmol/gのポリビニルアルコール(ケン化度60mol%)を用いた実施例2A、同12mmol/gのポリアクリルアミドを用いた実施例3A、同9mmol/gのポリビニルピロリドンを用いた実施例4Aと比べて、同0mmol/gのポリメチルメタクリレートを用いた比較例2Aは、分散性、初期粘度及び貯蔵安定性がいずれも劣ることが示されている。
そうすると、本件発明1~4、15は、それぞれの記載で特定される「顔料分散樹脂(A)」と、「導電性顔料(B)」と、「溶媒(C)」と、「フッ素樹脂(D)」と、「塩基性低分子量成分(E)」を含有することにより、本件発明の課題を解決できることを理解できるから、本件発明1~4、15は、サポート要件を満たさないものとはいえない。本件発明1~4を引用する形式で特定された本件発明5~14についても同様である。
(1)申立人の主張の概要
顔料分散樹脂(A)と溶媒(C)の溶解性パラメーターの差が、実施例に示される3を超えて多大である場合まで課題を解決できるとはいえない。
(2)当審の判断
本件特許の明細書の【0053】には「また、樹脂の溶解性の観点から、顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δA-δC|<2.0の関係であることが好ましい。・・・」と記載されるものの、本件発明1~4、15の「導電性顔料ペースト」は、それに含まれる「顔料分散樹脂(A)」、「導電性顔料(B)」、「フッ素樹脂(D)」及び「塩基性低分子量成分(E)」が「溶媒(C)」に溶解ないしは分散して「ペースト」の状態になったものであり、各請求項それぞれの記載により特定される「顔料分散樹脂(A)」と、「導電性顔料(B)」と、「溶媒(C)」と、「フッ素樹脂(D)」と、「塩基性低分子量成分(E)」を含有することにより、本件発明の課題を解決できることを理解できる。
そうすると、本件発明1~4、15は、サポート要件を満たさないものとはいえない。本件発明1~4を引用する形式で特定された本件発明5~14についても同様である。
(1)申立人の主張の概要
顔料分散樹脂(A)の極性官能基の官能基濃度について、明細書に具体的な算出方法及び計算方法が記載されておらず、値を一義的に求めることができないから、当該濃度の値は明確でない。
(2)当審の判断
顔料分散樹脂(A)の極性官能基の官能基濃度は、樹脂中の官能基の濃度を意味することが明らかであるから、文言として明確である。
また、その算出方法についても、例えば、請求人が申立書37頁(イ)欄で計算するように、原料モノマーの官能基の量から推計することができるものである。
そうすると、申立人の主張は採用できない。
(1)申立人の主張の概要
Yの値(Eの含有量/BET比表面積/酸性基量)について、カーボンナノチューブが酸性基を有していない場合(=酸性基量が0の場合)にはその値を計算できないから、実施できない。
(2)当審の判断
前記第5の4(2)で検討したとおり、本件発明3、4、15の「カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量γ(mmol/g)」は、前記第2で検討した本件訂正により、「酸性基量γ(mmol/g)が0.01mmol/g以上」であることが特定された。
その結果、本件発明3、4、15の「Y=α/β/γ・・・式(2)のYの値」は計算できるものとなったから、本件特許の明細書の記載は、本件発明3、4、15を実施できる程度に記載されたものといえる。
以上のとおり、本件発明1~15に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また他に取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
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