結論テキスト
特許第7505659号の請求項1~18に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024701219 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7505659号(以下「本件特許」という。)の請求項1~18に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)8月31日(優先権主張 令和4年9月8日)を国際出願日とする出願であって、令和6年6月17日にその特許権の設定登録がされ、令和6年6月25日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和6年12月20日に特許異議申立人 宮本 大介(以下「申立人」という。)から請求項1~18に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和7年 6月 3日付け:取消理由通知書
令和7年 8月 1日 :意見書の提出(特許権者)
令和7年10月 6日 :上申書の提出(申立人)
令和7年11月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和8年 1月 8日 :意見書の提出(特許権者)
本件特許の請求項1~18に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定される、下記のとおりのものと認められる(以下、それぞれ「本件特許発明1」などといい、本件特許の請求項1~18に係る発明を総称して「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)と、
感光剤(B)と、
を含む感光性樹脂組成物であって、
カールフィッシャー法により測定される水分量が0.5質量%以上10質量%以下であり、
有機溶剤をさらに含み、かつ、ワニス状である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記水分量が0.5質量%以上6質量%以下である、感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)中に含まれるイミド環基のモル数をIMとし、
前記ポリイミド(A)中に含まれるアミド基のモル数をAMとしたとき、
{IM/(IM+AM)}×100(%)で表されるイミド環化率が90%以上である、感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)の重量平均分子量が27000以上である、感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
シランカップリング剤(C)を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記シランカップリング剤(C)が、酸無水物基を含むシランカップリング剤、および/または酸無水物基由来の構造の一部が開環した構造を有するシランカップリング剤を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
エポキシ化合物をさらに含む、感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記エポキシ化合物が1分子内にエポキシ含有基および(メタ)アクリロイル基をそれぞれ1以上有する化合物を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物中の全固形分の濃度が10~50質量%である、感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
当該感光性樹脂組成物の硬化膜のガラス転移温度が、200°C以上である、感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
以下の方法による90度ピール強度変動数が70%以下である、感光性樹脂組成物。
(方法)
前記感光性樹脂組成物を、表面に3000Åのメッキ銅層を有した12インチシリコンウェハ上に乾燥後の膜厚が10μmとなるようにスピンコートにて塗布し、続いて120°Cで3分間加熱することで感光性樹脂膜を得る。次いで、前記感光性樹脂膜に、i線ステッパーにて幅6.5mm、長さ50mmの範囲が露光されるようにフォトマスクを介して300mJ/cm
2
の露光を行う。次いで、前記感光性樹脂膜をシリコンウェハごとスプレー現像機にてシクロペンタノンおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて現像し、更にスピンドライにて風乾後、120°Cで2分間、ホットプレート上で乾燥を行い、さらにその後、窒素雰囲気下、200°Cで90分間熱処理し、硬化膜を得る。次いで、幅6.5mm、長さ50mmの前記硬化膜が残るようにシリコンウェハをカットし、前記硬化膜の長手方向の端部(5mm)を2%フッ酸水溶液に23°Cで6時間浸漬後、水洗・乾燥し、端部のフィルムが剥離した評価用基板を得る。次いで、前記評価用基板を、90度ピール強度測定装置を用い、剥離速度20mm/分の条件で1cm剥離を行い、そのときの剥離強度の最大値をピール強度として測定する。そして、サンプル数10本を測定し、10本のピール強度の平均値をピール強度として算出し、下記式から計算されるサンプル10本の測定ばらつきを前記90度ピール強度変動数とする。
変動数[%]=(最大値-最小値)/平均値×100
【請求項12】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
当該感光性樹脂組成物の粘度をη
0
とし、
当該感光性樹脂組成物を23°Cで7日間静置した感光性樹脂組成物の粘度をη
1
としたとき、η
1
/η
0
の値が1.5以下である、感光性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記感光剤(B)が、光ラジカル発生剤を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
ネガ型感光性樹脂組成物である、感光性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂膜。
【請求項16】
請求項15に記載の樹脂膜を備える電子装置。
【請求項17】
分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)と、感光剤(B)を溶剤に溶解して感光性樹脂組成物を得る工程を含み、
前記感光性樹脂組成物を得る工程において、
カールフィッシャー法により測定される前記感光性樹脂組成物中の水分量が0.5質量%以上10質量%以下となるように調整する工程を有する、感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、更に
シランカップリング剤(C)と水とを含む水溶液を調製し、感光性樹脂組成物に添加する工程を含む、感光性樹脂組成物の製造方法。」
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)とともに証拠方法として、以下に示す甲第1号証~甲第8号証(以下、甲第1号証~甲第8号証を、それぞれ「甲1」~「甲8」という。)を提出した。
甲1:特開2021-162834号公報
甲2:特開2022-19609号公報
甲3:特開2021-193411号公報
甲4:特開2011-169980号公報
甲5:特開2019-53220号公報
甲6:国際公開第2022/045123号
甲7:国際公開第2022/145356号
甲8:特開2022-158138号公報
申立人は、概略、下記(1)~(5)の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当合議体が付与したものである。
(1)申立理由1(新規性・進歩性欠如)
本件特許発明1~18は、甲1~5に記載された発明と差異がないか、甲1~7に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである(申立書10~32ページ)。
(2)申立理由2(拡大先願)
本件特許発明1~17は、甲8に記載された発明と同一である(申立書33~40ページ)。
(3)申立理由3(実施可能要件違反)
本件特許明細書の発明の詳細な説明は当業者が本件特許発明1~18を実施できるように明確かつ十分に記載されたものではない(申立書40~42ページ)。
(4)申立理由4(サポート要件違反)
本件特許発明1~18は、発明の詳細な説明に記載したものではない(申立書42~45ページ)。
(5)申立理由5(明確性要件違反)
本件特許発明1~16は明確ではない(申立書45~46ページ)。
特許権者は、令和7年8月1日に提出された意見書に添付して以下の乙第1号証を提出した。
乙第1号証:「テクノロジーレポート 感光性ポリイミドの開発」,ARAKAWA News No.408,荒川化学工業株式会社, [online],[text],[取得日 令和7年7月13日],取得先<URL:https://www.arakawachem.co.jp/jp/technology/technologyreport20250417.pdf>,写し
甲1~甲8の記載事項は以下のとおりである。
甲1は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、甲1には、以下の記載がある。なお、下線は引用発明の認定及び判断で活用した箇所であって、当合議体で付したものである(以下同様)。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド環構造を有するポリイミド(A)と、
多官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、
感光剤(C)と、
溶剤(J)と、
を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)中に含まれるイミド基のモル数をIMとし、
前記ポリイミド(A)中に含まれるアミド基のモル数をAMとしたとき、
{IM/(IM+AM)}×100(%)で表されるイミド化率が90%以上である、感光性樹脂組成物。
・・・略・・・
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記感光剤(C)が、光ラジカル発生剤を含む、感光性樹脂組成物。
・・・略・・・
【請求項18】
請求項17に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、前記エポキシ樹脂(E)の硬化触媒(F)を含む、感光性樹脂組成物。
・・・略・・・
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
少なくとも前記ポリイミド(A)および前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、前記溶剤(J)に溶解したワニス状である、感光性樹脂組成物。」
(2)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物および電子デバイスの製造方法に関する。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
感光性樹脂組成物を用いて電子デバイス中に硬化膜を形成するにあたっては、通常、熱による硬化処理が行われる。具体的には、まず、感光性樹脂組成物を基板上に塗布して膜形成し、その膜を露光や現像によりパターニングする。そして、そのパターニングされた膜を熱処理することで、硬化膜を形成する。
上記のような加熱による硬化膜の形成においては、加熱による膜の収縮が抑えられていることが好ましい。特に、段差を有する基板上に平坦な硬化膜を形成することが近年求められている。しかし、膜が大きく収縮してしまうと、膜の平坦性が損なわれるなどの問題が生じることがある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の1つは、加熱による収縮が小さく、平坦性が良好な硬化膜を形成可能な感光性樹脂組成物を提供することである。
・・・略・・・
【0043】
ポリイミド(A)の重量平均分子量は、例えば5000~100000、好ましくは7000~75000、より好ましくは10000~50000である。
・・・略・・・
【0070】
(シランカップリング剤(G))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、シランカップリング剤(G)を含む。
・・・略・・・
【0079】
本実施形態の感光性樹脂組成物が水を含む場合、その量は、感光性樹脂組成物の全固形分(不揮発成分)100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部である。
【0080】
感光性樹脂組成物の水分量は、カールフィッシャー法により定量することができる。
・・・略・・・
【0084】
溶剤(J)を用いる場合は、感光性樹脂組成物中の全固形分(不揮発成分)の濃度が、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~45質量%となるように用いられる。この範囲とすることで、各成分を十分に溶解または分散させることができる。」
(3)「【実施例】
・・・略・・・
【0168】
<ポリマーの合成>
(ポリマー(A-1)の合成)
攪拌装置と撹拌翼を備えたガラス製の3Lのセパラブルフラスコに、TFMB<2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル>64.1g(0.20モル)、6FDA<4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物>97.7g(0.22モル)およびDMAc500gを仕込んで撹拌し、TFMBと6FDAをDMAcに溶解させた。さらに窒素気流下で、12時間室温で撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液を得た。
【0169】
得られたポリアミド酸溶液にピリジン16gを添加した後、室温で無水酢酸82gを滴下しながら投入した。その後、更に液温を20~100°Cに保って24時間撹拌を続けてイミド化反応を行い、ポリイミド溶液を得た。
【0170】
得られたポリイミド溶液を、5Lの容積の容器中で、撹拌しながら1,000gのメタノール中に投入して、ポリイミド樹脂を析出させた。その後、吸引濾過装置を用いて固体のポリイミド樹脂を濾別し、さらに1,000gのメタノールを用いて洗浄を行った。そして、真空乾燥機を用いて、100°Cで24時間乾燥を行い、更に200°Cで3時間乾燥させた。以上により、末端に酸無水物基を有するポリイミド粉体であるポリマー(A-1)を得た。
ポリマー(A-1)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
また、ポリマー(A-1)を
1
H-NMR測定し、ポリイミドの芳香環のピークに対するアミドピークの定量値から、イミド化率(定義は前述)を計算した。イミド化率は99%以上であった。
・・・略・・・
【0176】
<感光性樹脂組成物の調製>
後掲の表1に従い配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。その後、その溶液を
孔径0.2μmのナイロンフィルターで
濾過した。このようにして、ワニス状の感光性樹脂組成物を得た。
【0177】
表1における各成分の原料の詳細は下記のとおりである。
【0178】
<(A)ポリイミド>
(A-1)上記で合成したポリマー(イミド環構造含有ポリイミド樹脂)
・・・略・・・
【0179】
上記の各ポリマーの構造を以下に示す。
【0180】
【化4】
26
133
0001434134000001.jpg
・・・略・・・
【0181】
<(B)多官能(メタ)アクリレート化合物>
(B-1)ビスコート#802 (大阪有機工業株式会社製)
(アクリロイル基を5~10個有する化合物の混合物)
(B-2)A-9550 (新中村化学株式会社製)
(アクリロイル基を5~6個有する化合物の混合物)
(B-3)ビスコート#300 (大阪有機工業株式会社製)
(アクリロイル基を3~4個有する化合物の混合物)
(B-4)ビスコート#230 (大阪有機工業株式会社製)
(アクリロイル基を2個有する化合物)
【0182】
上記(B-1)~(B-4)の構造を以下に示す。
【0183】
【化5】
68
145
0001434134000002.jpg
54
145
0001434134000003.jpg
44
145
0001434134000004.jpg
【0184】
<(C)感光剤>
(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)
(C-2)アデカアークルズ NCI-730(株式会社ADEKA製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)
【0185】
<(D)熱ラジカル発生剤>
(D-1)パーカドックスBC(化薬ヌーリオン株式会社製、有機過酸化物、クミルパーオキサイド)
【0186】
<(E)エポキシ樹脂>
(E-1)TECHMORE VG3101L(株式会社プリンテック製)
(E-2)セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製)
【0187】
<(F)硬化触媒>
(F-1)テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート
上記硬化触媒(F-1)の合成方法は以下の通りである。
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに、4,4'-ビスフェノールS 37.5g(0.15mol)、メタノール100mLを仕込み、室温で撹拌溶解し、更に攪拌しながら予め50mLのメタノールに水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を溶解した溶液を添加した。次いで予め150mLのメタノールにテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1mol)を溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mLのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥した。以上により白色結晶の目的物を得た。
【0188】
<(G)シランカップリング剤>
(G-1)KBM-503(信越化学工業株式会社製)
(G-2)X-12-967C(信越化学工業株式会社製)
【0189】
<(H)界面活性剤>
(H-1)FC4432(3M社製、フッ素系)
【0190】
<(J)(溶剤)>
(J-1)乳酸エチル(EL)
(J-2)γ-ブチロラクトン(GBL)
・・・略・・・
【0199】
<絶縁信頼性の評価>
(絶縁信頼性用サンプルの作製)
酸化膜付きシリコンウェハ上に、幅5μm/ピッチ5μm、高さ5μmの櫛歯型のCu配線を形成したCu配線基板を作製した。
感光性樹脂組成物を、上記Cu配線基板上に、
スピンコートによって、
乾燥後の膜厚
(配線がない部分の厚み)
が10μmになるように塗布し、
120°C
で3分乾燥して感光性樹脂膜を形成した。
得られた感光性樹脂膜に、高圧水銀灯を用いて、300mJ/cm
2
の露光を行った。その後、シクロペンタノン中に30秒浸漬した。その後、窒素雰囲気下、170°Cで90分間熱処理して硬化膜を得た。
これを絶縁信頼性評価用サンプルとした。
【0200】
(絶縁信頼性評価)
上記(絶縁信頼性用サンプル作製)で作製した基板のCu配線の端部(Cu電極)と電極配線とを半田接続した、評価用の模擬的な電子デバイスを作製した。
・・・略・・・
【0201】
各組成物の原料の配合や上記評価結果について、表1にまとめて示す。
【0202】
【表1】
86
145
0001434134000005.jpg
」
(合議体注:【0202】【表1】を、時計回りに90°回転させている。)
甲2は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、甲2には、以下の記載がある。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久膜形成用の熱硬化性の感光性樹脂組成物であって、
樹脂と、感光剤とを含み、
波長780nmの光を用いた光散乱方式のパーティクルカウンターによる、流速3g/分での1分間の測定でカウントされる、直径0.5~20μmのパーティクル数が、100以下である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記樹脂は、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂からなる群より選ばれる1または2以上を含む、感光性樹脂組成物。
・・・略・・・
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
ネガ型である、感光性樹脂組成物。」
(2)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法、電子デバイスおよび感光性樹脂組成物の製造方法に関する。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子デバイスにおける永久膜には、様々な特性が求められる。例えば、永久膜は、良好な引っ張り伸び特性を有し、外力により破断しにくいことが求められる。永久膜がこのような特性を有することにより、電子デバイスの歩留まり向上、信頼性向上などにつながる。
・・・略・・・
【0047】
硬化膜の形成の際の収縮量を小さくする観点などから、本実施形態の感光性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂を含むことが好ましく、イミド環構造を有するポリイミド樹脂を含むことがより好ましい。
ポリイミド樹脂中に含まれるイミド基のモル数をIMとし、ポリイミド樹脂に含まれるアミド基のモル数をAMとしたとき、{IM/(IM+AM)}×100(%)で表されるイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。要するに、ポリイミド樹脂は、開環しているアミド構造が無いまたは少なく、閉環しているイミド構造が多い樹脂であることが好ましい。
・・・略・・・
【0059】
ポリアミド/ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、例えば5000~100000、好ましくは7000~75000、より好ましくは10000~50000である。
・・・略・・・
【0060】
ちなみに、ポリアミド/ポリイミド樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂と併用することが好ましい。
・・・略・・・
【0072】
別の例として、感光剤は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
・・・略・・・
【0092】
(密着助剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、密着助剤を含むことが好ましい。これにより、例えば基板との密着性をより高めることができる。
【0093】
密着助剤は、特に限定されない。例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤、ウレイド基含有シランカップリング剤、スルフィド基含有シランカップリング剤等のシランカップリング剤を用いることができる。
・・・略・・・
【0101】
(水)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、水を含んでもよい。水の存在により、例えば、シランカップリング剤の加水分解反応が進行しやすくなり、基板と硬化膜との密着性がより高まる傾向がある。
【0102】
本実施形態の感光性樹脂組成物が水を含む場合、その量は、感光性樹脂組成物の全固形分(不揮発成分)100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部である。
感光性樹脂組成物の水分量は、カールフィッシャー法により定量することができる。
【0103】
(溶剤/組成物の性状)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは溶剤を含む。これにより、基板に対して塗布法により感光性樹脂膜を容易に形成することができる。
溶剤は、通常、有機溶剤を含む。
上述の各成分を溶解または分散可能で、かつ、各構成成分と実質的に化学反応しないものである限り、溶剤は特に限定されない。
【0104】
溶剤の具体例としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル及びメチル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。溶剤は単独で用いられても複数組み合わせて用いられてもよい。
【0105】
本実施形態の感光性樹脂組成物が溶剤を含む場合、本実施形態の感光性樹脂組成物は、通常、ワニス状である。より具体的には、本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、樹脂と感光剤が溶剤に溶解した、ワニス状の組成物である。
・・・略・・・
【0106】
溶剤を用いる場合は、感光性樹脂組成物中の全固形分(不揮発成分)の濃度が、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~45質量%となるように用いられる。」
(3)「【実施例】
・・・略・・・
【0147】
<ポリアミド/ポリイミド樹脂使用の実施例>
(ポリマー(A-1)の合成)
はじめに、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(以下、TFMBとも示す)64.1g(0.20モル)と、ベンゾフェノン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAとも示す)70.9g(0.22モル)とを入れた。その後、反応容器に、さらにGBL500gを加えた。
窒素を10分間通気した後、撹拌しつつ温度60°Cまで上げ、1.5時間反応させた。その後、さらに180°Cで3時間反応させることで、ジアミンと酸二無水物を重合させ、ポリイミド溶液を作成した。
得られたポリイミド溶液を、アセトンで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液を水/メタノール=3/1の混合溶液に滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度120°Cで真空乾燥した。以上により、末端に酸無水物を有するポリイミド粉末であるポリマー(A-1)を得た。
ポリマー(A-1)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
また、ポリマー(A-1)を
1
H-NMR測定し、ポリイミドの芳香環のピークに対するアミドピークの定量値から、イミド化率(定義は前述)を計算した。イミド化率は99%以上であった。
【0148】
ポリマー(A-1)の化学式を以下に示す。
【0149】
【化7】
45
148
0001434134000006.jpg
【0150】
(感光性樹脂組成物の製造)
まず、
以下の各素材を均一に混合して、混合物を得た。
・樹脂
上記(A-1) 100質量部
・多官能(メタ)アクリレート化合物
ビスコート#802(大阪有機工業株式会社製、以下化学式で表される構造) 80質量部
【0151】
【化8】
75
153
0001434134000007.jpg
【0152】
・感光剤
Irugacure OXE02(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤) 10質量部
・熱ラジカル発生剤
パーカドックスBC(化薬ヌーリオン株式会社製、有機過酸化物、クミルパーオキサイド) 10質量部
・エポキシ樹脂
TECHMORE VG3101L(株式会社プリンテック製) 7質量部
セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製) 3質量部
・硬化触媒
テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート 3質量部
上記硬化触媒の合成方法は以下の通りである。
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに、4,4'-ビスフェノールS 37.5g(0.15mol)、メタノール100mLを仕込み、室温で撹拌溶解し、更に攪拌しながら予め50mLのメタノールに水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を溶解した溶液を添加した。次いで予め150mLのメタノールにテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1mol)を溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mLのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥した。以上により白色結晶の目的物を得た。
・密着助剤(シランカップリング剤)
KBM-503(信越化学工業株式会社製、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 5質量部
X-12-967C(信越化学工業株式会社製
、構造は前掲のとおり
) 2質量部
・界面活性剤
FC4432(3M社製、フッ素系) 0.1質量部
・水 2質量部
・溶剤(有機溶剤)
乳酸エチル(EL) 259質量部
γ-ブチロラクトン(GBL) 259質量部
【0153】
上記混合物を、以下実施例2-1
または比較例2-1のいずれかの
条件でろ過した。そして、感光性樹脂組成物を製造した。
・実施例2-1
混合物を、
株式会社キッツマイクロフィルターの
中空糸膜フィルター
(品番:F50C12T-L2、孔径:0.2μm、材質:ポリプロピレン、膜面積:20000cm
2
)
に
、50g/分の流速で
通してろ過した。
・・・略・・・
【0160】
上記のポリアミド/ポリイミド樹脂使用の感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウエハ上に、スピンコーターを用いて、乾燥後の膜厚が5μmになるように塗布した。その後、
ホットプレートにて
100°Cで3分間乾燥し、感光性樹脂膜を得た。
この感光性樹脂膜に、
凸版印刷社製マスク(テストチャートNo.1:幅0.5~50μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して、i線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いて、露光量を変化させながら
i線を照射した。
その後、現像液としてシクロペンタノンを用いて
30秒間
現像し
、2500回転で10秒間スピンし
乾燥した。
以上の工程により、樹脂膜に10μmΦのビアホールを開口させることができた。つまり、フォトマスクを用いた露光により、「パターン」を形成可能なことが確認された。」
甲3は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、甲3には、以下の記載がある。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂を含む感光性樹脂組成物であって、
当該感光性樹脂組成物を170°Cで2時間加熱して得られた硬化膜を、以下条件で動的粘弾性測定をしたときの、220°Cでの貯蔵弾性率E'
220
が0.5~3.0GPaである、感光性樹脂組成物。
[条件]
周波数:1Hz
温度:30~300°C
昇温速度:5°C/分
測定モード:引張りモード
・・・略・・・
【請求項3】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物であって、
イミド環構造を有するポリイミド樹脂を含む、感光性樹脂組成物。
・・・略・・・
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、感光剤を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記感光剤は、光ラジカル発生剤を含む、感光性樹脂組成物。
・・・略・・・
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、エポキシ樹脂を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8いずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
少なくとも前記ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂が溶剤に溶解したワニス状である、感光性樹脂組成物。」
(2)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法および電子デバイスに関する。より具体的には、ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂を含む感光性樹脂組成物、その感光性樹脂組成物を用いた電子デバイスの製造方法、その電子デバイスの製造方法により製造可能な電子デバイスに関する。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子デバイスの高度化・複雑化に伴い、電子デバイスには従来以上の信頼性が求められるようになってきている。そのため、硬化膜の改良(硬化膜を形成するための感光性樹脂組成物の改良)により、電子デバイスの信頼性を向上させることが求められている。
また、近年、半導体チップへの熱ダメージ低減のため、硬化膜を形成する際の加熱温度を比較的低くすること(例えば、170°C程度とすること)が求められてきている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の1つは、170°C程度の加熱により硬化させて硬化膜とすることにより、信頼性の高い電子デバイスを製造可能な感光性樹脂組成物を提供することである。
・・・略・・・
【0024】
(ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂を含む。E’
220
が0.5~3.0GPaとなる限り、ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂の構造、分子量、使用量などは限定されない。
【0025】
硬化の際の収縮量をより小さくする観点などから、本実施形態の感光性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂を含むことが好ましく、イミド環構造を有するポリイミド樹脂を含むことがより好ましい。
ポリイミド樹脂中に含まれるイミド基のモル数をIMとし、ポリイミド樹脂に含まれるアミド基のモル数をAMとしたとき、{IM/(IM+AM)}×100(%)で表されるイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。要するに、ポリイミド樹脂は、開環しているアミド構造が無いまたは少なく、閉環しているイミド構造が多い樹脂であることが好ましい。
・・・略・・・
【0050】
ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂の重量平均分子量は、例えば5000~100000、好ましくは7000~75000、より好ましくは10000~50000である。
・・・略・・・
【0079】
(シランカップリング剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、シランカップリング剤を含む。シランカップリング剤を用いることにより、例えば基板と硬化膜との密着性をより高めることができる。
【0080】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤、ウレイド基含有シランカップリング剤、スルフィド基含有シランカップリング剤、環状無水物構造を有するシランカップリング剤、などのシランカップリング剤を用いることができる。
・・・略・・・
【0089】
本実施形態の感光性樹脂組成物が水を含む場合、その量は、感光性樹脂組成物の全固形分(不揮発成分)100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部である。
感光性樹脂組成物の水分量は、カールフィッシャー法により定量することができる。
【0090】
(溶剤/組成物の性状)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは溶剤を含む。これにより、基板(特に、段差を有する基板)に対して塗布法により感光性樹脂膜を容易に形成することができる。
溶剤は、通常、有機溶剤を含む。
上述の各成分を溶解または分散可能で、かつ、各構成成分と実質的に化学反応しないものである限り、溶剤は特に限定されない。
【0091】
溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル及びメチル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。溶剤は単独で用いられても複数組み合わせて用いられてもよい。
【0092】
本実施形態の感光性樹脂組成物が溶剤を含む場合、本実施形態の感光性樹脂組成物は、通常、ワニス状である。より具体的には、本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、少なくともポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂が、溶剤に溶解した、ワニス状の組成物である。
本実施形態の感光性樹脂組成物がワニス状であることにより、塗布による均一な膜形成を行うことができる。また、ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂が、溶剤に「溶解」していることで、均質な硬化膜を得ることができる。
【0093】
溶剤を用いる場合は、感光性樹脂組成物中の全固形分(不揮発成分)の濃度が、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~45質量%となるように用いられる。」
(3)「【実施例】
・・・略・・・
【0129】
<ポリマーの合成>
(ポリマー(A-1)の合成)
攪拌装置と撹拌翼を備えたガラス製の3Lのセパラブルフラスコに、TFMB<2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル>64.1g(0.20モル)、6FDA<4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物>97.7g(0.22モル)およびDMAc500gを仕込んで撹拌し、TFMBと6FDAをDMAcに溶解させた。さらに窒素気流下で、12時間室温で撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液を得た。
【0130】
得られたポリアミド酸溶液にピリジン16gを添加した後、室温で無水酢酸82gを滴下しながら投入した。その後、更に液温を20~100°Cに保って24時間撹拌を続けてイミド化反応を行い、ポリイミド溶液を得た。
【0131】
得られたポリイミド溶液を、5Lの容積の容器中で、撹拌しながら1,000gのメタノール中に投入して、ポリイミド樹脂を析出させた。その後、吸引濾過装置を用いて固体のポリイミド樹脂を濾別し、さらに1,000gのメタノールを用いて洗浄を行った。そして、真空乾燥機を用いて、100°Cで24時間乾燥を行い、更に200°Cで3時間乾燥させた。以上により、末端に酸無水物基を有するポリイミド粉体であるポリマー(A-1)を得た。
ポリマー(A-1)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
また、ポリマー(A-1)を
1
H-NMR測定し、ポリイミドの芳香環のピークに対するアミドピークの定量値から、イミド化率(定義は前述)を計算した。イミド化率は99%以上であった。
・・・略・・・
【0135】
(ポリマー(A-5)の合成)
TFMB64.1g(0.20モル)の代わりに、1,4,-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン85.7g(0.20モル)を用いた以外は、ポリマー(A-1)と同様にポリマーを合成した。そして、末端に酸無水物基を有するポリイミド粉体であるポリマー(A-5)を得た。
ポリマー(A-5)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は25,000であった。また、ポリマー(A-5)のNMR測定によるイミド化率は99%以上であった。
【0136】
<
感光性樹脂組成物の調製>
後掲の表1に従い配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。その後、その溶液を
孔径0.2μmのナイロンフィルターで
濾過した。このようにして、ワニス状の感光性樹脂組成物を得た。
【0137】
表1における各成分の原料の詳細は下記のとおりである。
【0138】
<ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂>
(A-1)上記で合成したポリマー
・・・略・・・
(A-5)上記で合成したポリマー
【0139】
上記の各ポリマーの構造を以下に示す。
【0140】
【化6】
28
136
0001434134000008.jpg
・・・略・・・
28
145
0001434134000009.jpg
【0141】
<多官能(メタ)アクリレート化合物>
(B-1)ビスコート#802 (大阪有機工業株式会社製、1分子あたりアクリロイル基を5~10個有する化合物の混合物)
(B-2)NKエステルA-9550 (新中村化学株式会社製、1分子あたりアクリロイル基を5~6個有する化合物の混合物)
(B-3)ビスコート#300 (大阪有機工業株式会社製、1分子あたりアクリロイル基を3~4個有する化合物の混合物)
(B-4)ビスコート#230 (大阪有機工業株式会社製、1分子あたりアクリロイル基を2個有する化合物)
【0142】
上記(B-1)~(B-4)の構造を以下に示す。
【0143】
【化7】
125
145
0001434134000010.jpg
【0144】
<感光剤>
(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)
(C-2)アデカアークルズ NCI-730(株式会社ADEKA製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)
【0145】
<熱ラジカル発生剤>
(D-1)パーカドックスBC(化薬ヌーリオン株式会社製、有機過酸化物、ジクミルパーオキシド)
【0146】
<エポキシ樹脂>
(E-1)TECHMORE VG3101L(株式会社プリンテック製)
(E-2)セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製)
【0147】
<硬化触媒>
(F-1)テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート
上記硬化触媒(F-1)の合成方法は以下の通りである。
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに、4,4'-ビスフェノールS 37.5g(0.15mol)、メタノール100mLを仕込み、室温で撹拌溶解し、更に攪拌しながら予め50mLのメタノールに水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を溶解した溶液を添加した。次いで予め150mLのメタノールにテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1mol)を溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mLのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥した。以上により白色結晶の目的物を得た。
【0148】
<シランカップリング剤>
(G-1)KBM-503(信越化学工業株式会社製、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤)
(G-2)X-12-967C(信越化学工業株式会社製、環状無水物構造を有するシランカップリング剤)
【0149】
<界面活性剤>
(H-1)FC4432(スリーエム社製、フッ素系)
【0150】
<溶剤>
(J-1)乳酸エチル(EL)
(J-2)γ-ブチロラクトン(GBL)
・・・略・・・
【0156】
<絶縁信頼性の評価>
(絶縁信頼性用サンプルの作製)
酸化膜付きシリコンウェハ上に、幅5μm/ピッチ5μm、高さ5μmの櫛歯型のCu配線を形成したCu配線基板を作製した。
感光性樹脂組成物を、上記
Cu配線基板上に、
スピンコートによって、
乾燥後の膜厚
(配線がない部分の厚み)
が10μmになるように塗布し、120°Cで3分乾燥して感光性樹脂膜を形成した。
得られた感光性樹脂膜に、高圧水銀灯を用いて、300mJ/cm
2
の露光を行った。その後、シクロペンタノン中に30秒浸漬した。その後、窒素雰囲気下、170°Cで2時間熱処理して硬化膜を得た。
これを絶縁信頼性評価用サンプルとした。
【0157】
(絶縁信頼性評価)
上記(絶縁信頼性用サンプル作製)で作製した基板のCu配線の端部(Cu電極)と電極配線とを半田接続した、評価用の模擬的な電子デバイスを作製した。
・・・略・・・
【0163】
各組成物の原料の配合、測定/評価結果について、表1にまとめて示す。
【0164】
【表1】
124
145
0001434134000011.jpg
」
(合議体注:【0164】【表1】は、時計回りに90°回転させている。)
甲4は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、甲4には、以下の記載がある。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(A)感光性樹脂:100質量部、
(B)感光剤:1~40質量部、
(C)銅変色防止剤:0.05~20質量部、及び
(D)溶媒
を含有する感光性樹脂組成物であって、該感光性樹脂組成物中の水分含有量が0.6~10質量%である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記水分含有量が1.0~10質量%である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。」
(2)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の絶縁材料、並びに半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜及び層間絶縁膜等のレリーフパターンの形成に用いられる感光性樹脂組成物、それを用いた硬化レリーフパターンの製造方法、並びに半導体装置に関するものである。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
すなわち、従来の感光性樹脂組成物を用いて銅又は銅合金上でパターン形成をした場合、銅又は銅合金の変色が起こること、さらに感光性樹脂組成物の保存安定性が悪化するという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、銅又は銅合金の上でも変色を起こさず、感度、及び保存安定性に優れた感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いて樹脂レリーフパターンを形成する硬化レリーフパターンの製造方法、並びに半導体装置を提供することを目的とする。
・・・略・・・
【0014】
(A)感光性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリオキサゾール、ポリイミド前駆体、ポリオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、シロキサン樹脂、及びアクリル樹脂等を使用できる。これらの中でもポリイミド前駆体及びポリオキサゾール前駆体が、加工性及び耐熱性の点で好ましい。また、(A)感光性樹脂は、後述の(B)感光剤とともに、ネガ型又はポジ型のいずれの感光性樹脂組成物を調製するか等、所望の用途に応じて選択できる。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物における好ましい(A)感光性樹脂の1つの例は、下記一般式(1):
【化4】
50
145
0001434134000012.jpg
{式中、X
1
は、4価の有機基であり、Y
1
は、2価の有機基であり、nは、2~150の整数であり、R
1
及びR
2
は、それぞれ独立に、水素原子、又は下記一般式(2):
【化5】
28
145
0001434134000013.jpg
(式中、R
3
、R
4
及びR
5
は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の有機基であり、そしてmは、2~10の整数である。)で表される1価の有機基、又は炭素数1~4の飽和脂肪族基である。但し、R
1
及びR
2
の両者が同時に水素原子であることはない。}で表される構造を有するポリイミド前駆体である。ポリイミド前駆体は、加熱(例えば200°C以上)環化処理を施すことによってポリイミドに変換される。ポリイミド前駆体はネガ型感光性樹脂組成物用として好適である。
・・・略・・・
【0033】
上記エステル結合型及び上記イオン結合型のポリイミド前駆体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量で測定した場合に、8,000~150,000であることが好ましく、9,000~50,000であることがより好ましい。
・・・略・・・
【0047】
まずネガ型を所望する場合について説明する。この場合(B)感光剤としては光重合開始剤が用いられ、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類、ベンゾイルパークロライド等の過酸化物類、芳香族ビイミダゾール類、チタノセン類、α-(n-オクタンスルフォニルオキシイミノ)-4-メトキシベンジルシアニド等の光酸発生剤類等が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でもかまわない。上記の光重合開始剤の中では、特に光感度の点で、オキシム類がより好ましい。
・・・略・・・
【0065】
(D)溶媒
本発明に用いられる(D)溶媒について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)~(C)の各成分及び必要に応じて使用する後述の任意成分を(D)溶媒に溶解してワニス状にした感光性樹脂組成物として提供される。(D)溶媒としては、(A)感光性樹脂に対する溶解性の点から、極性の有機溶剤を用いることが好ましい。具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上の組合せで用いることができる。
【0066】
(D)溶媒は、感光性樹脂組成物の所望の塗布膜厚及び粘度に応じて、(A)感光性樹脂100質量部に対し、例えば30~1500質量部の範囲、好ましくは100~1000質量部の範囲で用いることができる。
・・・略・・・
【0069】
さらに、本発明においては、感光性樹脂組成物の感度及び保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物中に特定範囲の量の水を含有させる。本発明の特徴の一つである(C)銅変色防止剤は、銅と相互作用を持つようにするために、典型的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子をその分子骨格内に持つ。これらのヘテロ原子が存在する場合、それぞれの(C)銅変色防止剤は通常酸性又は塩基性を示す。本発明においては、感光性樹脂組成物中に十分な水分が存在することで、(C)銅変色防止剤(典型的には酸性又は塩基性を示すもの)の機能がより活性化され、期待される銅変色防止の性質を発現しやすくなるものと考えられる。さらに、十分な水分量があることで、感光性樹脂組成物全体の保存安定性が外的要因を受けにくい安定領域に達するものと考えられる。
【0070】
以上の観点から、感光性樹脂組成物中の水分含有量は0.6~10質量%であり、好ましくは1.0~10質量%である。水分は感光性樹脂組成物を構成するそれぞれの要素から副次的に導入されてもよいし、意図的に添加することもできる。水分含有量が0.6質量%以上であることにより、感光性樹脂組成物の感度及び保存安定性を確保するとともに(C)銅変色防止剤の機能をより活性化するという効果を十分に得ることができる。また水分含有量が10質量%以下であることにより、(A)感光性樹脂の(D)溶媒への溶解性を確保できる。本明細書に記載する、感光性樹脂組成物中の水分含有量は、カールフィッシャー法により測定される値である。
・・・略・・・
【0086】
また、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される膜と基材との接着性向上のために接着助剤を任意に配合することができる。
・・・略・・・
【0087】
これらの接着助剤のうちでは、接着力の点からシランカップリング剤を用いることがより好ましい。
・・・略・・・
【0091】
・・・略・・・接着助剤としては、例えば、アルキルイミダゾリン、酪酸、アルキル酸、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルメチルエーテル、t-ブチルノボラック、エポキシシラン、エポキシポリマー等、及び各種シランカップリング剤が挙げられる。
【0092】
シランカップリング剤の具体的な好ましい例としては、例えば、N-フェニル-3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、2-(トリアルコキシシリルエチル)ピリジン、3-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン及び3-アミノプロピルジアルコキシアルキルシラン並びに酸無水物及び酸二無水物の反応物、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン又は3-アミノプロピルジアルコキシアルキルシランのアミノ基をウレタン基又はウレア基に変換したもの等を挙げることができる。なお、この際のアルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基等が、酸無水物としてはマレイン酸無水物、フタル酸無水物等が、酸二無水物としてはピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物等が、ウレタン基としてはt-ブトキシカルボニルアミノ基等が、ウレア基としてはフェニルアミノカルボニルアミノ基等が挙げられる。」
(3)「【実施例】
・・・略・・・
【0107】
(2)水分含有量
各感光性樹脂組成物中の水分量はカール・フィシャー電量滴定法で測定した。測定は平沼微量水分測定装置AQ-200(平沼産業株式会社製)を用い、発生液にハイドラナールRアクアライトRS、対極液にアクアライトCNを選択した。シリンジを用い試料をおよそ1ml採取し0.0001gの位まで精秤することで試料量1とし、その後装置に注入し水分量を測定した(実測水分量)。注入後のシリンジの重さを0.0001gの位まで精秤し試料量2とした。感光性樹脂組成物中の水分含有量は以下の式で求めた。
水分含有量={実測水分量/(試料量1-試料量2)}×100(単位:%)
・・・略・・・
【0114】
<製造例1>((A)感光性樹脂としてのポリイミド前駆体A(ポリマーA)の合成)
4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ-ブチロラクトン400mlを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得た。反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、16時間放置した。
【0115】
次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン180mlに溶解した溶液を攪拌しながら40分かけて反応混合物に加え、続いて4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)93.0gをγ-ブチロラクトン350mlに懸濁したものを攪拌しながら60分かけて加えた。更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間攪拌し、次に、γ-ブチロラクトン400mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
【0116】
得られた反応液を3リットルのエチルアルコールに加えて粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5リットルに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28リットルの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリイミド前駆体A(以下、「ポリマーA」ともいう))を得た。ポリイミド前駆体Aの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は20,000であった。
【0117】
<製造例2>((A)感光性樹脂としてのポリイミド前駆体B(ポリマーB)の合成)
製造例1の4,4’-オキシジフタル酸二無水物155.1gに代えて、3,3’4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物147.1gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリイミド前駆体B(以下、「ポリマーB」ともいう)を得た。ポリイミド前駆体Bの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は22,000であった。
【0118】
<製造例3>((A)感光性樹脂としてのポリベンゾオキサゾール前駆体C(ポリマーC)の合成)
容量3Lのセパラブルフラスコ中で、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン183.1g(0.5モル)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)640.9g、ピリジン63.3g(0.8モル)を室温(25°C)で混合攪拌し、均一溶液とした。これに、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボニルクロリド118.0g(0.4モル)をジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)354gに溶解したものを滴下ロートより滴下した。この際、セパラブルフラスコは15~20°Cの水浴で冷却した。滴下に要した時間は40分、反応液温は最大で30°Cであった。
【0119】
滴下終了から3時間後反応液に1,2-シクロヘキシルジカルボン酸無水物30.8g(0.2mol)を添加し、室温で15時間撹拌放置し、ポリマー鎖の全アミン末端基の99%をカルボキシシクロヘキシルアミド基で封止した。この際の反応率は投入した1,2-シクロヘキシルジカルボン酸無水物の残量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で追跡することにより容易に算出することができる。その後上記反応液を2Lの水に高速攪拌下で滴下し重合体を分散析出させ、これを回収し、適宜水洗、脱水の後に真空乾燥を施し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した重量平均分子量9,000(ポリスチレン換算)の粗ポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。
【0120】
上記で得られた粗ポリベンゾオキサゾール前駆体をγ-ブチロラクトン(GBL)に再溶解した後、これを陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂にて処理し、それにより得られた溶液をイオン交換水中に投入後、析出したポリマーを濾別、水洗、真空乾燥することにより精製されたポリベンゾオキサゾール前駆体C(ポリマーC)を得た。
【0121】
<実施例1>
ポリイミド前駆体A(ポリマーA)及びポリイミド前駆体B(ポリマーB)を用いて以下の方法で感光性樹脂組成物を調製し、調製した組成物の評価を行った。ポリマーA50g及びポリマーB50g((A)感光性樹脂として)を、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)-オキシム((B)感光剤として)6g、1H-ベンゾトリアゾール((C)銅変色防止剤として)1g、更に、N-フェニルジエタノールアミン10g、7-ジエチルアミノ-3-エトキシカルボニルクマリン0.05g、ヘキサメトキシメチルメラミン4g、テトラエチレングリコールジメタクリレート8g、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸1.5g、及び2-ニトロソ-1-ナフト-ル0.05gと共に、N-メチルピロリドン(以下ではNMPという)80gと乳酸エチル20gからなる混合溶媒((D)溶媒として)に溶解した。得られた溶液の粘度を、少量の該混合溶媒及び水を更に加えることによって約35ポイズに調整し、感光性樹脂組成物とした。該感光性樹脂組成物中の水分含有率は0.6質量%であった。
【0122】
該組成物を、前述の方法に従ってシリコンウエハー及び銅基板に塗布して乾燥させ、露光、現像及び加熱処理して得たポリイミド塗膜の感度は150mJ/cm
2
と高感度であり、銅基板上においても変色・腐食は見られず変色・腐食評価は「良好」であった。さらに23°C1ヵ月放置後の塗膜溶解時間は初期溶解時間の115%で1ヶ月後の現像時間変化の評価は「良好」であり、感度は175mJ/cm
2
で1ヶ月後の感度の評価は「良好」であった。
【0123】
<実施例2~9>
表1に示す通りに各成分を添加した以外はそれぞれ実施例1と同様に感光性樹脂組成物の調製、塗膜形成及び評価を行った。いずれの場合においても、前述の方法に従って、感光性樹脂組成物をシリコンウエハー及び銅基板に塗布して乾燥させ、露光、現像及び加熱処理して得たポリイミド塗膜の感度は200mJ/cm
2
未満と高感度であり、銅基板上においても変色・腐食は見られず変色・腐食評価は「良好」であり、23°C1ヶ月放置後の塗膜溶解時間の延び(1ヶ月後の現像時間変化)及び1ヶ月後の感度の評価も「良好」であった。
【0124】
<実施例10>
ポリベンゾオキサゾール前駆体C(ポリマーC)を用いて以下の方法で感光性樹脂組成物を調製し、調製した組成物の評価を行った。ポリベンゾオキサゾール前駆体C((A)感光性樹脂として)100gを、下記式(15):
【化18】
60
145
0001434134000014.jpg
で表される、フェノール性水酸基の77%をナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化した感光性ジアゾキノン化合物(東洋合成社製、(B)感光剤として)20g、1H-ベンゾトリアゾール((C)銅変色防止剤として)1g、と共に、γ-ブチロラクトン((D)溶媒として)100gに溶解した。得られた溶液の粘度を、少量のγ-ブチロラクトン及び水を更に加えることによって約20ポイズに調整し、感光性樹脂組成物とした。該感光性樹脂組成物中の水分含有率は1.2質量%であった。
【0125】
該組成物を、前述の方法に従ってシリコンウエハー及び銅基板に塗布して乾燥させ、露光、現像及び加熱処理して得たポリベンゾオキサゾール塗膜の感度は175mJ/cm
2
と高感度であり、かつパターン精度も良好であり、銅基板上においても変色・腐食は見られず変色・腐食評価は「良好」であった。さらに23°C1ヵ月放置後の塗膜現像時間は初期現像時間の110%で1ヵ月後の現像時間変化の評価は「良好」であり、感度は200mJ/cm
2
で1ヵ月後の感度の評価は「良好」であった。
【0126】
<比較例1>
実施例1において水を添加しない以外は実施例1と同様の感光性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行った。該感光性樹脂組成物中の水分含有率は0.5質量%であった。前述の方法に従って、感光性樹脂組成物をシリコンウエハー及び銅基板に塗布して乾燥させ、露光、現像及び加熱処理して得たポリイミド塗膜の感度は200mJ/cm
2
と感度が低く、かつ23°C1ヵ月放置後の塗膜現像時間は初期現像時間の120%で1ヶ月後の現像時間の変化の評価は「不良」であり、感度も300mJ/cm
2
で1ヵ月後の感度の評価は「不良」であった。
【0127】
<比較例2>
実施例10において水を添加しない以外は実施例10と同様の感光性樹脂組成物を調製し、実施例10と同様の評価を行った。該感光性樹脂組成物中の水分含有率は0.3質量%であった。前述の方法に従って、感光性樹脂組成物をシリコンウエハー及び銅基板に塗布して乾燥させ、露光、現像及び加熱処理して得たポリベンゾオキサゾール塗膜の感度は200mJ/cm
2
と感度が低く、かつ23°C1ヵ月放置後の塗膜現像時間は初期現像時間の120%で1ヵ月後の現像時間の変化の評価は「不良」であり、感度も300mJ/cm
2
で1ヶ月後の感度の評価は「不良」であった。
【0128】
【表1】
42
153
0001434134000015.jpg
」
(当合議体注:【表1】は、時計回りに90°回転させたものである。)
甲5は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、甲5には、以下の記載がある。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、
架橋剤と、
感光剤と、
密着助剤と、
溶媒と、
を含む永久膜用の感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物中に含まれる水分量が0.01~10質量%であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂は、フェノール樹脂、ポリイミドおよびその前駆体、ポリベンゾオキサゾールおよびその前駆体、ならびにポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。」
(2)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、半導体装置および電子機器に関するものである。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、半導体素子の実装に用いられる樹脂膜には、半導体チップに対する密着性が求められる。このため、無機材料に対する密着性が重要とされる。
【0008】
しかしながら、従来の樹脂膜では、無機材料に対する密着性が低いため、実装後の信頼性を十分に高められないという問題があった。
【0009】
また、近年、半導体素子の小型化が顕著になっており、それに伴って樹脂膜のパターニング性のさらなる向上が求められている。
【0010】
本発明の目的は、無機材料に対する密着性およびパターニング性が良好な樹脂膜を形成可能な感光性樹脂組成物、前記樹脂膜を備える半導体装置、および、前記半導体装置を備える電子機器を提供することにある。
・・・略・・・
【0065】
≪感光性樹脂組成物≫
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、樹脂と、かかる樹脂と架橋可能な架橋剤と、感光剤と、密着助剤と、溶剤と、を含み、保護膜70のような永久膜に用いられる樹脂組成物である。このような感光性樹脂組成物は、含まれる水分量が0.01~10質量%であることを特徴とする。このような感光性樹脂組成物は、無機材料に対する密着性およびパターニング性が良好な保護膜70(樹脂膜)の形成を可能にする。
【0066】
(樹脂)
感光性樹脂組成物に用いられる樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
・・・略・・・
【0068】
一方、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(例えばナイロン等)、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリキノリン、ポリノルボルネン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、液晶ポリマー、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリイミド、またはこれらの樹脂の前駆体等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂では、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0069】
また、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用するようにしてもよい。
また、これらの樹脂は、特に、フェノール樹脂、ポリイミドおよびその前駆体、ポリベンゾオキサゾールおよびその前駆体、ならびにポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、無機材料に対する密着性が特に良好で、かつ耐熱性および機械的特性にも優れた保護膜70を形成可能な感光性樹脂組成物が得られる。このため、信頼性の高い半導体装置10が得られる。また、これらの樹脂は、パターニング性のさらなる向上にも寄与する。
・・・略・・・
【0078】
(感光剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、感光剤を有している。感光剤のパターニング性の方式としては、ポジ型またはネガ型から適宜選択される。
・・・略・・・
【0095】
加水分解性を有する化合物としては、シランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)が好ましく、官能基としてアミノ基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、ビニル基、ウレア基、ウレイド基、スルフィド基、カルボキシル基、アミド基等を含むアルコキシシラン化合物がより好ましい。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。このようなアルコキシシラン化合物は、官能基が樹脂と反応する一方、加水分解によって生じるシラノール基が無機材料と反応し、両者を強固に結合する。その結果、感光性樹脂組成物において無機材料に対する密着性を特に補強することができる。
・・・略・・・
【0109】
界面活性剤としては、例えば架橋性基を有するものが用いられる。界面活性剤に含有される架橋性基としては、例えば樹脂もしくは架橋剤と架橋する、または界面活性剤単独で架橋するものが挙げられる。特に架橋性基として、光または熱により架橋反応を起こすものが好ましく、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。この場合、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)等のラジカル重合開始剤を、感光性樹脂組成物中にさらに含むことにより、架橋をさらに効率的に行うことも可能である。
・・・略・・・
【0118】
溶媒の添加量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の全固形分の5~50質量%程度であるのが好ましく、10~40質量%程度であるのがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の粘度を最適化することができる。
【0119】
(水分)
また、感光性樹脂組成物は、適度な水分を含んでいる。具体的には、感光性樹脂組成物中に含まれる水分量が0.01~10質量%とされる。
【0120】
このように適度な水分が添加されることにより、例えば感光性樹脂組成物中にアルコキシ基が含まれている場合、それが加水分解してシラノール基等の生成が促進される。一方、無機材料の表面では、水酸基の導入が促進されることとなる。これにより、感光性樹脂組成物が硬化する際、それとともにシラノール基と水酸基とが脱水縮合する。その結果、感光性樹脂組成物の硬化膜は無機材料に対する優れた密着性を有するものとなる。すなわち、例えば半導体チップ20や電極パッド21に対する密着性が良好な保護膜70が得られる。
【0121】
また、適度な水分が添加されることにより、感光性樹脂組成物のパターニング性が良好になる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、考えられる理由の1つとして、水分子が感光剤の作用を促進することが挙げられる。
【0122】
なお、感光性樹脂組成物中に含まれる水分量は、好ましくは0.03~7質量%とされ、より好ましくは0.05~4質量%とされる。
【0123】
水分量が前記下限値を下回ると、水分量が不足するため、感光性樹脂組成物の無機材料に対する密着性が相対的に低下したり、パターニング性が低下したりするおそれがある。一方、水分量が前記上限値を上回ると、水分量が過剰になるため、無機材料に対する密着性およびパターニング性が低下するおそれがある。また、感光性樹脂組成物の経時安定性が低下するおそれがある。
【0124】
また、感光性樹脂組成物中に含まれる水分量は、前述した密着助剤の含有量の1~400質量%であるのが好ましく、20~200質量%であるのがより好ましく、30~120質量%であるのがさらに好ましい。密着助剤に対する水分量を前記範囲内に設定することにより、密着助剤の量と水の量とのバランスが最適化される。これにより、前述した効果が顕著になり、密着助剤の作用が増強されることになるため、無機材料に対する密着性を特に高めつつ、パターニング性もより高めることができる。
【0125】
なお、水分量が前記下限値を下回ると、密着助剤に対して水分量が不足するため、シラノール基等の生成が不足して、感光性樹脂組成物の無機材料に対する密着性が低下するおそれがある。また、密着性が低下することで、感光性樹脂組成物の定着性が阻害されるため、結果的にパターニング性が低下するおそれがある。一方、水分量が前記上限値を上回ると、密着助剤に対して水分量が過剰になるため、水分によって密着性が阻害され、それとともにパターニング性も阻害されるおそれがある。
【0126】
このような感光性樹脂組成物の水分量は、カールフィッシャー法により測定可能である。具体的には、例えば、カールフィッシャー水分率計「MKS-520」(商品名、京都電子工業(株)製)を用い、滴定試薬としてカールフィッシャー試薬「HYDRANAL(登録商標)-コンポジット5(商品名、Sigma-Aldrich製)」を用いて、JIS K 0113:2005に規定された容量滴定法に準拠して測定される。
【0127】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、一例として原料と溶媒とを均一に混合する方法が挙げられる。」
(3)「【実施例】
【0169】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.樹脂の合成
(合成例1)
<フェノール樹脂(A-2)の合成>
温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製丸底フラスコ内に、レゾルシノール110.10g(1.00mol)と、4,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル193.9g(0.8mol)と、硫酸ジエチル7.7g(0.05mol)と、582gのγ-ブチロラクトンとを仕込んだ後、窒素を流しながらかかる丸底フラスコを、油浴中で反応液を還流させながら100°Cで6時間の重縮合反応を行った。次に、得られた反応液を室温まで冷却した後、323gのアセトンを添加し均一になるまで撹拌混合した。その後、丸底フラスコ内にある反応液を水10Lに滴下混合することにより、樹脂成分を析出させた。次に、析出した樹脂成分を濾別して回収した後、60°Cでの真空乾燥を行うことにより、下記式(A-2)で表されるフェノール樹脂を得た。得られたフェノール樹脂(A-2)の重量平均分子量は、28,000であった。
【0170】
【化1】
23
107
0001434134000016.jpg
【0171】
(合成例2)
<フェノール樹脂(A-3)の合成>
温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製丸底フラスコ内に、4,4’-ビフェノール186.2g(1.00mol)と、p-クレゾール86.5g(0.8mol)とホルムアルデヒド24.0g(0.8mol)とシュウ酸・二水和物11.3g(0.09mol)と、308gのγ-ブチロラクトンとを仕込んだ後、窒素を流しながらかかる丸底フラスコを、油浴中で反応液を還流させながら100°Cで6時間の重縮合反応を行った。次に、得られた反応液を室温まで冷却した後、411gのアセトンを添加し均一になるまで撹拌混合した。その後、丸底フラスコ内にある反応液を水10Lに滴下混合することにより、樹脂成分を析出させた。次に、析出した樹脂成分を濾別して回収した後、60°Cでの真空乾燥を行うことにより、下記式(A-3)で表されるフェノール樹脂を得た。得られたフェノール樹脂(A-3)の重量平均分子量は、11,000であった。
【0172】
【化2】
22
128
0001434134000017.jpg
(式(A-3)において、ビフェノール構造に結合する結合手は、2つのベンゼン環のうちいずれか一方に結合している)。
【0173】
(合成例3)
<ポリアミド樹脂(A-4)の合成>
温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコ内に、206.6g(0.8mol)のジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸と245.0g(1.6mol)の1-ヒドロキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール・一水和物とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物422.8g(0.8mol)と、232.5g(0.9mol)の2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンと、23.2g(0.200mol)の3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールと、を入れた。その後、上記セパラブルフラスコ内に1583gのN-メチル-2-ピロリドンを加え、各原料成分を溶解させた。次に、オイルバスを用い、90°Cで5時間反応させた。次いで、上記セパラブルフラスコ内に68.9g(0.4mol)の4-エチニルフタル酸無水物と、68.9gのN-メチル-2-ピロリドンとを加え、90°Cで3時間攪拌しながら反応させた後、23°Cまで冷却して反応を終了させた。
【0174】
セパラブルフラスコ内にある反応混合物を濾過して得られた濾過物を、水/イソプロパノール=3/1(容積比)の溶液に投入した。その後、沈殿物を濾別し、水で充分洗浄した後に、真空条件下、かかる沈殿物を乾燥させた。このようにして、下記式(A-4)で表されるポリアミド樹脂を得た。また、得られたポリアミド樹脂(A-4)の重量平均分子量は、18,100であった。
【0175】
【化3】
20
145
0001434134000018.jpg
【0176】
(合成例4)
<ポリアミド樹脂(A-5)の合成>
温度計、攪拌機、原料投入口および乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコ内に、4,4’-オキシジフタル酸無水物310.2g(1.00mol)とメタクリル酸2-ヒドロキシエチル273.3g(2.1mol)およびハイドロキノン1.1g(0.01mol)をN-メチルピロリドン2379gに溶解し、トリエチルアミン10.1g(0.1mol)を添加後に、25°Cで48時間撹拌し、4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。得られた4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液2973gに氷冷下で塩化チオニル249.8g(2.10mol)を反応溶液温度が10度以下を保つように滴下した。その後、氷冷下で2時間反応を行い4,4’-オキシジフタル酸-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの酸クロリドの溶液を得た。次いで、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル220.3g(1.10mol)、ピリジン237.3g(3.00mol)、およびハイドロキノン0.40g(0.004mol)を含むN-メチルピロリドン溶液1830gを氷冷化で反応溶液の温度が10°Cを超えないように注意しながら滴下した。この反応液をメタノール/水(重量比:3/7)溶液に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによって下記式(A-5)で表されるポリアミド樹脂を得た。また、得られたポリアミド樹脂(A-5)の重量平均分子量は、38,100であった。
【0177】
【化4】
34
131
0001434134000019.jpg
【0178】
2.感光性樹脂組成物の調製
実施例1~21および比較例1~4のそれぞれについて、以下のように感光性樹脂組成物を調製した。まず、表1に従い配合された各成分を、調合後の粘度が約500mPa・sになるようにγ-ブチロラクトン(GBL)に溶解させて窒素雰囲気下で撹拌させた後、孔径0.2μmのポリエチレン製フィルターで濾過することにより、ワニス状感光性樹脂組成物を得た。表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中の単位は、質量部である。
【0179】
<樹脂>
(A-1)フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製 PR-50731、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=11,000)(フェノール樹脂1)
(A-2)上記合成例1により得られたフェノール樹脂(フェノール樹脂2)
(A-3)上記合成例2により得られたフェノール樹脂(フェノール樹脂3)
(A-4)上記合成例3により得られたポリアミド樹脂(ポリアミド樹脂1)
(A-5)上記合成例4により得られたポリアミド樹脂(ポリアミド樹脂2)
【0180】
<感光材>
(B-1)下記式(B-1)の構造のナフトキノン化合物(NQD1)
(B-2)CPI-210S(サンアプロ(株)製)
(B-3)IRGACURE OXE01(BASFジャパン(株)製)
【0181】
【化5】
105
129
0001434134000020.jpg
【0182】
<架橋剤>
(C-1)ニカラックMX-270(三和ケミカル(株)製)
(C-2)TML-BPA(本州化学(株)製)
(C-3)セロキサイド2021P((株)ダイセル製)
【0183】
【化6】
44
122
0001434134000021.jpg
【0184】
<密着助剤>
(D-1)KBM-403(信越シリコーン(株)製)
(D-2)KBM-303(信越シリコーン(株)製)
(D-3)KBM-9659(信越シリコーン(株)製)
(D-4)KBM-573(信越シリコーン(株)製)
(D-5)KBM-505(信越シリコーン(株)製)
(D-6)4-アミノ-1,2,4-トリアゾール(A1137)(東京化成工業(株)製)
【0185】
【化7】
57
145
0001434134000022.jpg
【0186】
<界面活性剤>
(E)F444(DIC(株)製)
【0187】
3.感光性樹脂組成物の評価
3.1 パターニング性の評価
3.1.1 ポジ型パターニング性
[1]実施例1~18および比較例1~4の感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコートした後、120°Cで3分間乾燥させ、膜厚10.0μmの乾燥膜を得た。
・・・略・・・
【0197】
3.2 密着性の評価
3.2.1 シリコン(Si)密着性の評価
[1]まず、各実施例および各比較例の感光性樹脂組成物を、シリコンウエハー上にスピンコートした後、120°Cで3分間乾燥させ、膜厚10.0μmの乾燥膜を得た。
【0198】
[2]ネガ型の組成物については、1000mJ/cm
2
の紫外線を照射し、120°Cで3分の加熱を行った。
【0199】
[3]次に、窒素雰囲気中において、200°Cで60分間加熱し、硬化膜を得た。
[4]次に、得られた硬化膜をプレッシャークッカー装置に入れ、125°C、2.3気圧の条件下で100時間処理した(PCT処理)。
【0200】
[5]次に、PCT処理を施した硬化膜と、それとは別に用意したPCT処理を施していない硬化膜と、について、JIS D 0202:2007に規定された碁盤目付着性を評価した。この評価には、JIS K 5600-5-6:1999に規定のクロスカット法を用いた。
【0201】
具体的には、まず、カッターナイフを用いて各硬化膜に切れ込みを入れた。この切れ込みは、1mm間隔で縦横に11本ずつ、硬化膜を貫通するように入れた。これにより、硬化膜から1mm角の正方形を全部で100個切り出した。
【0202】
次に、これらの100個の正方形に重ねるようにセロハン粘着テープを張り付けた。そして、セロハン粘着テープを剥がし、100個の正方形のうち、いくつ剥がれるかを数えた。そして、剥がれた数を表1、2に示す。すなわち、すべてが剥がれた場合は「100個」であり、1個も剥がれがない場合は「0個」である。
【0203】
評価結果を表1、2に示す。なお、表1、2では、PCT処理前の評価結果を「0h」とし、PCT処理後の評価結果を「100h」としている。
【0204】
3.2.2 窒化ケイ素(SiN)密着性の評価
シリコンウエハーに代えて、表面に窒化膜(窒化ケイ素膜)を形成したシリコンウエハーを用いるようにした以外は、3.2.1と同様にしてPCT処理前後の硬化膜の窒化ケイ素密着性を評価した。
評価結果を表1、2に示す。
・・・略・・・
【0214】
【表1】
148
145
0001434134000023.jpg
」
甲6は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、甲6には、以下の記載がある。
「技術分野
[0001] 本発明は、ポリイミド前駆体の製造方法、及び、硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
・・・略・・・
[0013] 一般的には、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物を反応させてアミド化合物を得る場合には、例えば室温(25°C)等において重合反応を行う。具体的には、例えば、ジカルボン酸化合物の溶液に対して、塩基性触媒及びジアミン化合物の溶液を氷冷下で添加した後、室温に戻して重合反応が行われている。
しかしながら、従来のように室温で重合することで、反応系中では樹脂のイミド化が進行し、イミド化率(樹脂中の環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量)が高いポリイミド前駆体が得られてしまう。」
甲7は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、甲7には、以下の記載がある。
「技術分野
[0001] 本発明は、樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、及び、半導体デバイスに関する。
・・・略・・・
[0011](樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物の一態様(以下、「樹脂組成物の第1の態様」ともいう。)は、環化樹脂又はその前駆体である樹脂、及び、重合開始剤を含み、上記樹脂が重合性基を含む側鎖を有し、上記樹脂の主鎖と上記重合性基が連結基を介して結合しており、上記連結基がウレア結合を含む。
・・・略・・・
[0191] ・・・略・・・
本発明の樹脂組成物は、パターン(硬化物)の弾性率制御に伴う反り抑制の観点から、ラジカル架橋剤として、単官能ラジカル架橋剤を好ましく用いることができる。単官能ラジカル架橋剤としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル等が好ましく用いられる。単官能ラジカル架橋剤としては、露光前の揮発を抑制するため、常圧下で100°C以上の沸点を持つ化合物も好ましい。
その他、2官能以上のラジカル架橋剤としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類が挙げられる。」
甲8は、本件特許の優先日である令和4年(2022年)9月8日の前の、令和3年(2021年)4月1日に出願された先願の公開特許公報であって、本件特許の優先日の後に出願公開された発明が記載されており、その発明者及び出願人が本件特許に係る出願の発明者及び出願人と同一でないところ、先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。
(1)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容体の製造方法、及び、樹脂組成物の保管方法に関する。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂組成物の経時安定性に優れた収容体の製造方法、及び、樹脂組成物の経時安定性に優れた樹脂組成物の保管方法を提供することを目的とする。
・・・略・・・
【発明を実施するための形態】
・・・略・・・
【0032】
<樹脂組成物>
本発明において用いられる樹脂組成物は、環化樹脂又はその前駆体である樹脂、並びに、オキシム系重合開始剤、及び、メタロセン系重合開始剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤を含む。
【0033】
・・・略・・・
また、本発明に係る樹脂組成物は、ネガ型現像に供される感光膜の形成に用いられることが好ましい。
・・・略・・・
【0035】
<特定樹脂>
本発明に係る樹脂組成物は、環化樹脂およびその前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂(特定樹脂)を含む。
環化樹脂は、主鎖構造中にイミド環構造又はオキサゾール環構造を含む樹脂であることが好ましい。
本発明において、主鎖とは、樹脂分子中で相対的に最も長い結合鎖を表す。
環化樹脂としては、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド等が挙げられる。
環化樹脂の前駆体とは、外部刺激により化学構造の変化を生じて環化樹脂となる樹脂をいい、熱により化学構造の変化を生じて環化樹脂となる樹脂が好ましく、熱により閉環反応を生じて環構造が形成されることにより環化樹脂となる樹脂がより好ましい。
環化樹脂の前駆体としては、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド前駆体等が挙げられる。
すなわち、本発明に係る樹脂組成物は、特定樹脂として、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミドイミド、及び、ポリアミドイミド前駆体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂(特定樹脂)を含むことが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物は、特定樹脂として、ポリイミド又はポリイミド前駆体を含むことが好ましい。
また、特定樹脂は重合性基を有することが好ましく、ラジカル重合性基を含むことがより好ましい。
特定樹脂がラジカル重合性基を有する場合、本発明に係る樹脂組成物は、後述のラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、後述のラジカル重合開始剤を含み、かつ、後述のラジカル架橋剤を含むことがより好ましい。さらに必要に応じて、後述の増感剤を含むことができる。このような本発明に係る樹脂組成物からは、例えば、ネガ型感光膜が形成される。
また、特定樹脂は、酸分解性基等の極性変換基を有していてもよい。
特定樹脂が酸分解性基を有する場合、本発明に係る樹脂組成物は、後述の光酸発生剤を含むことが好ましい。このような本発明に係る樹脂組成物からは、例えば、化学増幅型であるポジ型感光膜又はネガ型感光膜が形成される。
・・・略・・・
【0089】
ポリアミドイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000~500,000であり、より好ましくは5,000~100,000であり、更に好ましくは10,000~50,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは800~250,000であり、より好ましくは、2,000~50,000であり、更に好ましくは、4,000~25,000である。
・・・略・・・
【0100】
-イミド化率(閉環率)-
ポリアミドイミドのイミド化率(「閉環率」ともいう)は、得られる有機膜の膜強度、絶縁性等の観点からは、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましい。
・・・略・・・
【0108】
〔重合開始剤〕
本発明に係る樹脂組成物は、オキシム系重合開始剤、及び、メタロセン系重合開始剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤を含む。
・・・略・・・
【0109】
好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。本発明に係る樹脂組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物(オキシム系の光ラジカル重合開始剤)を用いることが好ましい。オキシム系の光ラジカル重合開始剤は、分子内に >C=N-O-C(=O)- の連結基を有する。
・・・略・・・
【0155】
<溶剤>
本発明に係る樹脂組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、環状炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、ウレア類、アルコール類などの化合物が挙げられる。
・・・略・・・
【0166】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、本発明に係る樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることが更に好ましく、20~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、塗膜の所望の厚さと塗布方法に応じて調節すればよい。
・・・略・・・
【0169】
〔シランカップリング剤〕
・・・略・・・
【0171】
他のシランカップリング剤としては、例えが、ビニルトリメトキシシラン 、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン 、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
・・・略・・・
【0228】
〔他の高分子化合物〕
他の高分子化合物としては、シロキサン樹脂、(メタ)アクリル酸を共重合した(メタ)アクリルポリマー、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂およびそれらの共重合体などが挙げられる。他の高分子化合物はメチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基などの架橋基が導入された変性体であってもよい。
・・・略・・・
【0231】
<樹脂組成物の含有物質についての制限>
本発明に係る樹脂組成物の含水率は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.5質量%未満であることがより好ましく、1.0質量%未満であることが更に好ましい。2.0%未満であれば、樹脂組成物の保存安定性が向上する。
水分の含有量を維持する方法としては、保管条件における湿度の調整、保管時の保管容器の空隙率低減などが挙げられる。」
(2)「【実施例】
・・・略・・・
【0244】
<PI前駆体-1の合成>
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸無水物と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、23.9gのピリジンと、250mLのジグリム(ダイグライム、ジエチレングリコールジメチルエーテル)とを混合し、60°Cの温度で4時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのジエステルを合成した。次いで、反応混合物を-10°Cに冷却し、温度を-10±5°Cに保ちながら、17.0gの塩化チオニルを60分かけて加えた。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mLのN-メチルピロリドンに12.6gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を、-10±5°Cで60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を室温で2時間撹拌した。その後、エタノール10.0gを添加して室温で1時間撹拌した。
次いで、6000gの水を加えてポリイミド前駆体を沈殿させ、沈殿物(水-ポリイミド前駆体混合物)を15分間撹拌した。撹拌後の沈殿物(ポリイミド前駆体の固体)をろ取し、テトラヒドロフラン500gに溶解させた。得られた溶液に6000gの水(貧溶媒)を加えてポリイミド前駆体を沈殿させ、沈殿物(水-ポリイミド前駆体混合物)を15分間撹拌した。撹拌後の沈殿物(ポリイミド前駆体の固体)を再びろ過して減圧下で、45°Cで3日間乾燥した。
乾燥後の粉体46.6gをテトラヒドロフラン419.6gに溶解させた後に、2.3gのトリエチルアミンを添加して室温で35分間撹拌した。その後、エタノール3000gを添加して、沈殿物をろ取した。得られた沈殿物をテトラヒドロフラン281.8gに溶解した。そこに水17.1gとイオン交換樹脂UP6040(AmberTec社製)46.6gを添加して、4時間撹拌した。その後、イオン交換樹脂をろ過で取り除き、得られたポリマー溶液をヘプタン4500gと酢酸エチル500gの混合溶液に加えて沈殿物を得た。沈殿物をろ取し、減圧下45°Cで24時間乾燥させることで、PI前駆体-1を45.1g得た。PI前駆体-1の重量平均分子量は22,000であった。また、PI前駆体-1は下記構造の繰返し単位を含む樹脂である。
【化27】
32
145
0001434134000024.jpg
【0245】
<PI前駆体-2の合成>
撹拌機、コンデンサー及び内部温度計を取りつけた平底ジョイントを備えた乾燥反応器中で水分を除去しながら、4,4’-ビフタル酸二無水物 18.98g(64.5ミリモル)をジグリム 140mL中に懸濁させた。2-ヒドロキシエチルメタクリレート 16.8g(129ミリモル)、ヒドロキノン 0.05g、純水 0.05g及びピリジン 10.7g(135ミリモル)を続いて添加し、60°Cの温度で18時間撹拌した。次いで、混合物を-20°Cまで冷却した後、塩化チオニル 16.1g(135.5ミリモル)を90分かけて滴下した。ピリジニウムヒドロクロリドの白色沈澱が得られた。
次いで、混合物を室温まで温め、2時間撹拌した後、ピリジン 9.7g(123ミリモル)及びN-メチルピロリドン(NMP) 25mLを添加し、透明溶液を得た。次いで、得られた透明溶液に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル 11.8g(58.7ミリモル)をNMP 100mL中に溶解させたものを、1時間かけて滴下により添加した。次いで、メタノール 5.6g(17.5ミリモル)と3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン 0.05gを加え、混合物を2時間撹拌した。次いで、4リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下、45°Cで3日間乾燥し、PI前駆体-2を得た。
PI前駆体-2の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は10000であった。PI前駆体-2は、下記繰返し単位を含む樹脂である。
【化28】
32
145
0001434134000025.jpg
【0246】
<PI前駆体-3の合成>
PI前駆体-2の合成において、4,4’-ビフタル酸二無水物を、4,4’-オキシジフタル酸二無水物と4,4’-ビフタル酸二無水物に変更した以外は、PI前駆体-2と同様の方法により合成を行い、PI前駆体-3を得た。
4,4’-オキシジフタル酸二無水物と4,4’-ビフタル酸二無水物の合計モル量はPI前駆体-2の合成における、4,4’-ビフタル酸二無水物のモル量と同じとし、4,4’-オキシジフタル酸二無水物と4,4’-ビフタル酸二無水物のモル比は1:1とした。
PI前駆体-3の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は22000であった。PI前駆体-3は、下記2種の繰返し単位を含む樹脂である。
【化29】
71
144
0001434134000026.jpg
【0247】
<PBOの合成>
2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン 28.0g(76.4ミリモル)をN-メチルピロリドン 200gに撹拌溶解した。続いて、ピリジン12.1g(153ミリモル)を加え、温度を-10~0°Cに保ちながら、N-メチルピロリドン75gに4,4’-オキシジベンゾイルクロリド 20.7g(70.1ミリモル)を溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。30分間撹拌した後、塩化アセチル 1.00g(12.7ミリモル)を加え、更に60分間撹拌した。次いで、6リットルの水の中でポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂を濾過して取得し、6リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリベンゾオキサゾール前駆体を減圧下で、45°Cで3日間乾燥し、PBOを得た。
【0248】
<閉環PIの合成>
撹拌機、コンデンサー及び内部温度計を取りつけた平底ジョイントを備えた乾燥反応器中で水分を除去しながら、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン 65.56g(179mmol)、及び、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン 2.48g(10mmol)をN-メチルピロリドン(NMP) 300gに溶解させた。続いて、オキシジフタル酸二無水物 62.04g(200mmol)を添加し、40°Cの温度で2時間撹拌した。次いで、トルエン 50mL及び3-アミノフェノール 2.18g(10mmol)を添加し、40°Cで2時間撹拌した。撹拌後、200ml/minの流量の窒素をフローしながら、温度を180°Cに昇温し、6時間撹拌した。
上記反応液を25°Cまで冷却した後、p-メトキシフェノール0.005gを加え、溶解した。この溶液に、2-イソシアナトエチルメタクリレート 24.82g(160mmol)を滴下し、25°Cで2時間撹拌した後、更に60°Cで3時間撹拌した。これを25°Cに冷却し、酢酸10gを加えて25°Cで1時間撹拌した。撹拌後、2リットルの水/メタノール=75/25(体積比)中で沈殿させ、2,000rpmの速度で30分間撹拌した。析出したポリイミド樹脂を濾過して取得し、1.5リットルの水でかけ洗いした後、濾物を2リットルのメタノールに混合して再度30分間撹拌し再び濾過し、ポリイミドを得た。得られたポリイミドを減圧下で、40°Cで1日間乾燥し、閉環PIを得た。
【0249】
<実施例及び比較例>
各実施例において、それぞれ、下記表に記載の成分を混合し、各樹脂組成物を得た。また、各比較例において、それぞれ、下記表に記載の成分を混合し、各比較用組成物を得た。
具体的には、溶剤以外の表に記載の各成分の含有量(配合量)は、表の「組成」中の各欄に記載の数値(質量部)とした。
溶剤の含有量(配合量)は、組成物の固形分濃度が表中の「固形分濃度(%)」の値(質量%)となるようにし、溶剤の全質量に対する各溶剤の含有量の比率(質量比)は、表の「溶剤」中の各欄に記載の数値による比率となるようにした。
得られた樹脂組成物及び比較用組成物を、細孔の幅が1.0μmのポリエチレン製である第一のフィルターと、細孔の幅が0.2μmのポリエチレン製である第二のフィルターを、この順番で用いて加圧ろ過した。また、表中、「-」の記載は該当する成分を組成物が含有していないことを示している。
【0250】
【表1】
215
144
0001434134000027.jpg
【0251】
【表2】
215
145
0001434134000028.jpg
【0252】
【表3】
223
123
0001434134000029.jpg
【0253】
表に記載した各成分の詳細は下記の通りである。
【0254】
〔樹脂〕
・PI前駆体-1~PI前駆体-3、PBO、閉環PI:上記合成例により得られたPI前駆体-1~PI前駆体-3、PBO、閉環PI
【0255】
〔重合禁止剤〕
・A-1~A-4:下記構造の化合物
【化30】
107
145
0001434134000030.jpg
【0256】
〔マイグレーション抑制剤〕
・B-1~B-2:下記構造の化合物
【化31】
51
115
0001434134000031.jpg
【0257】
〔シランカップリング剤〕
・C-1~C-2:下記構造の化合物
【化32】
40
145
0001434134000032.jpg
【0258】
〔重合開始剤〕
・D-1~D-12:下記構造の化合物
【化33】
217
145
0001434134000033.jpg
【0259】
〔重合性化合物〕
・E-1:下記構造の化合物
【化34】
28
145
0001434134000034.jpg
【0260】
〔熱塩基発生剤〕
・F-1:下記構造の化合物
【0261】
〔塩基性化合物〕
・G-1~G-2:下記構造の化合物
【化35】
50
145
0001434134000035.jpg
【0262】
〔増感剤〕
・H-1:下記構造の化合物
【化36】
52
97
0001434134000036.jpg
【0263】
〔溶剤〕
・S-1:N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
・S-2:乳酸エチル(EL)
・S-3:γ-ブチロラクトン(GBL)
・S-4:ジメチルスルホキシド(DMSO)
・S-5:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0264】
<評価>
〔組成物の粘度の測定〕
各実施例又は比較例において調製した樹脂組成物又は比較用組成物の粘度を、E型粘度計(東機産業製)を用いて測定した。測定結果は表の「物性」の「粘度」の欄に記載した。なお、1cp=1mPa・sである。また、測定温度は25°Cとした。
【0265】
〔組成物の含水率の測定〕
各実施例又は比較例において調製した樹脂組成物又は比較用組成物の含水率(組成物の全質量に対する水の含有質量)を、カールフィッシャー水分計を用いて測定した。測定結果は表の「物性」の「含水率」の欄に記載した。
【0266】
〔経時安定性の評価〕
E型粘度計(東機産業製)で、(a)調液直後の粘度と、(b)表に記載の保管温度にて2週間保管した液の粘度を測定した。粘度変化率(%)を下記式により算出し、下記評価基準に従って評価を行った。
粘度変化率(%)=((a)-(b))/(b)×100の絶対値
具体的には、各実施例又は比較例において、調製した樹脂組成物又は比較用組成物を、表の「容器」の「種類」の欄に記載の容器に充填し、収容体を製造した。各容器のi線透過率、及び、各容器のh線透過率はそれぞれ、表の「容器のi線透過率」、「容器のh線透過率」の欄に記載した。
また、充填時の容器の空隙率は表の「容器空隙率」の欄に記載の値とした。
容器の「種類」の欄に「A」と記載された例においては、容器として、アイセロ社製クリーンバリア(登録商標)ボトル(4L、茶)を使用した。
・・・略・・・
容器の「種類」の欄に「B」と記載された例においては、容器として、アイセロ社製クリーンバリア(登録商標)ボトル(4L、白)を使用した。上記容器は、外層に金属酸化物粒子を含むものである。
容器の「種類」の欄に「C」と記載された例においては、容器として、高橋化成製ポリエチレン細口手付瓶 材質 HDPE(高密度ポリエチレン) 容量 4000mLを使用した。
得られた収容体を、表1の「保管温度」の欄に記載の温度、白色光下の条件で2週間保管した。
保管前後の組成物の粘度から、上記式に従って粘度変化率を算出した。上記粘度変化率を指標値とし、下記評価基準に従って評価を行った。粘度の測定温度は25°Cとした。
評価結果は表の「経時安定性」の欄に記載した。粘度変化率が小さいほど、経時安定性に優れるといえる。
-評価基準-
A:上記粘度変化率(%)が、10%未満であった。
B:上記粘度変化率(%)が、10%以上30%未満であった。
C:上記粘度変化率(%)が、30%以上50%未満であった。
D:上記粘度変化率(%)が、50%以上であった。」
令和7年11月7日付け取消理由通知書(決定の予告)により特許権者に通知した取消しの理由の概要及び引用文献等は、次のとおりである。
取消理由1:(新規性)
本件特許の請求項1~3、5~7、9~17に係る発明は、先の出願前に日本国内または外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
取消理由2:(進歩性)
本件特許の請求項1~18に係る発明は、先の出願前に日本国内または外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項1~18に係る特許は、特許法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
引用文献等
甲1:特開2021-162834号公報
甲2:特開2022-19609号公報
甲3:特開2021-193411号公報
甲7:国際公開第2022/145356号
参考文献1:今井淑夫、ポリイミドの構造と物性 エレクトロニクス実装学会誌 Vol.4 NO.7(2001)、640~646頁
(当合議体注:甲1~3は、取消理由1及び2における主引用例である。また、甲7は、理由2における副引用例である。さらに、参考文献1は、ポリイミドのガラス転移温度を示す文献である。)
(1)甲1に記載された発明
上記第4の1(3)より、甲1には、実施例5として、以下の発明(以下「甲1-5組成物発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下のとおり配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌して、溶液を得、その溶液を濾過して得た、ワニス状の感光性樹脂組成物。
<(A)ポリイミド>
(A-1)以下の構造を有するポリマー(イミド環構造含有ポリイミド樹脂) 100質量部
26
133
0001434134000037.jpg
<(B)多官能(メタ)アクリレート化合物>
(B-1)ビスコート#802(大阪有機工業株式会社製) 40質量部
(アクリロイル基を5~10個有する化合物の混合物)
(B-2)A-9550(新中村化学株式会社製) 20質量部
(アクリロイル基を5~6個有する化合物の混合物)
(B-3)ビスコート#300(大阪有機工業株式会社製) 10質量部
(アクリロイル基を3~4個有する化合物の混合物)
<(C)感光剤>
(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤) 3質量部
(C-2)アデカアークルズ NCI-730(株式会社ADEKA製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤) 7質量部
<(D)熱ラジカル発生剤>
(D-1)パーカドックスBC(化薬ヌーリオン株式会社製、有機過酸化物、クミルパーオキサイド) 10質量部
<(E)エポキシ樹脂>
(E-1)TECHMORE VG3101L(株式会社プリンテック製) 7質量部
(E-2)セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製) 3質量部
<(F)硬化触媒>
(F-1)テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート 3質量部
<(G)シランカップリング剤>
(G-1)KBM-503(信越化学工業株式会社製) 5質量部
(G-2)X-12-967C(信越化学工業株式会社製) 2質量部
<(H)界面活性剤>
(H-1)FC4432(3M社製、フッ素系) 0.1質量部
(I-1)水 2質量部
<(J)溶剤>
(J-1)乳酸エチル(EL) 247質量部
(J-2)γ-ブチロラクトン(GBL) 247質量部」
(当合議体注:上記(A-1)のポリマーを、以下「ポリイミド樹脂(A-1)」という。)
また、甲1には、甲1-5組成物発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂(A-1)、感光剤、水及び溶剤を含む各原料を溶解して得たことが記載されており(【0176】)、これを甲1-5組成物製造方法発明という。
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1-5組成物発明を対比する。
(ア)ポリイミド(A)
甲1-5組成物発明のポリイミド樹脂(A-1)は、その化学構造からみて、本件特許発明1の「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」に相当する。
(イ)感光剤(B)
甲1-5組成物発明の「(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「感光剤(B)」に相当する。
(ウ)有機溶剤
甲1-5組成物発明の「(J-1)乳酸エチル(EL)」及び「(J-2)γ-ブチロラクトン(GBL)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「有機溶剤」に相当する。
(エ)感光性樹脂組成物
甲1-5組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、その組成からみて、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」に相当する。
また、甲1-5組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、ポリイミド樹脂(A-1)、「(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)」、「(J-1)乳酸エチル(EL)」及び「(J-2)γ-ブチロラクトン(GBL)」が配合された各原料を溶解して得た溶液を用いて得たものであるから、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」における「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)と、感光剤(B)と、を含」み、「有機溶剤をさらに含」む、という要件を満たすものである。
さらに、甲1-5組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、「ワニス状」のものであるから、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」における「ワニス状である」という要件を満たすものである。
イ 一致点・相違点
上記アより、本件特許発明1と甲1-5組成物発明の一致点と相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)と、
感光剤(B)と、
を含む感光性樹脂組成物であって、
有機溶剤をさらに含み、かつ、ワニス状である、感光性樹脂組成物。」
(相違点1-1)
本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」は、「カールフィッシャー法により測定される水分量が0.5質量%以上10質量%以下であ」るのに対し、甲1-5組成物発明の「感光性樹脂組成物」の水分量は、不明である点。
(以下、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」は、「カールフィッシャー法により測定される水分量が0.5質量%以上10質量%以下であ」るという要件を「本件水分量要件」、「カールフィッシャー法により測定される水分量」を「本件水分量」、「0.5質量%以上10質量%以下」という数値範囲を「本件数値範囲」という。)
ウ 判断
相違点1-1について、以下検討する。
(ア)新規性(実質的な相違点であるか否か)について
a 判断
甲1-5組成物発明の、有機溶剤を含む感光性樹脂組成物における、配合時に原料として加えた水(以下「原料水」という。)の含有量は、0.28質量%(2/(100+40+20+10+3+7+10+7+3+3+5+2+0.1+2+247+247)×100)である。
ここで、甲1-5組成物発明の感光性樹脂組成物に含まれる水には、技術的にみて、上記原料水の他に、各成分中に含まれる水分、溶剤に含まれる水分及び感光性樹脂組成物の調製時に混入する水分(感光性樹脂組成物に含まれる水のうち、原料水以外のものを「非原料水」という)によるものがある。
しかしながら、甲1-5組成物発明の感光性樹脂組成物における、例えばシランカップリング剤である信越化学工業株式会社製のKBM-503及びX-12-967Cに実際にどの程度水が含まれているのか等、各組成に実際に含まれている非原料水の含有量は不明である。また、甲1-5組成物発明の調製時に実際にどの程度の水が非原料水として混入するかも不明である。
そして、甲1-5組成物発明の(有機溶剤を含む)感光性樹脂組成物における非原料水が0.22質量%以上9.72質量%以下であると認めるに足りる証拠もない(当合議体注:本件明細書に記載された実施例における非原料水の含有量は不明であるから、当該実施例は甲1-5組成物発明の非原料水を推定する根拠にはならない。)。
してみると、甲1-5組成物発明において、(有機溶剤を含む)感光性樹脂組成物のカールフィッシャー法により測定される水分量が0.5質量%以上10質量%以下であるとはいえないから、相違点1-1は実質的な相違点である。
b 申立人の主張について
申立人は、令和7年10月6日に提出された上申書において、概略、ポリイミドを含むワニスには極性・親水性が高い溶剤が使用されており、通常の調製工程である程度の水分が混入すること及び甲5の【0214】【表1】に記載の水分含有量は、(カールフィッシャー法で測定したものではなく)配合時に原料として加えた水の量であって、甲5の実施例の感光性樹脂組成物は窒素雰囲気下で調整されていることから、甲1における感光性樹脂組成物の調製時に混入する水の量が甲5の感光性樹脂組成物の調製時に混入する水の量を同一であるとみなすことはできず、甲1の実施例において組成物調製時に混入する水分は無視できる程度に小さくない旨主張している。
しかしながら、甲1における感光性樹脂組成物の調製時に混入する水の量は、結局のところ、既に上記aで述べたとおり不明であるから、申立人の主張は採用できない。
c 小括
本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ) 相違点1-1に係る本件特許発明1の構成の容易想到性について
a 判断
甲1の【0079】には、「本実施形態の感光性樹脂組成物が水を含む場合、その量は、
感光性樹脂組成物の全固形分(不揮発成分)100質量部
に対して、好ましくは
0.1~5質量部
、より好ましくは
0.2~3質量部
、さらに好ましくは
0.5~2質量部
である。」との記載はあるものの、甲1には、
有機溶剤を含む感光性樹脂組成物中の水分量に着目し、本件水分量要件を満たすものとすることは
記載も示唆もされていない。
また、本件特許発明1は、相違点1-1の構成及び「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」を含むという要件を備えることにより、90度ピール強度(銅密着性)、90度ピール強度変動数及び常温粘度変化率に優れるとの効果(本願特許明細書の【0180】~【0209】の【実施例】(特に【0197】【表1】)の記載参照。)を奏すると理解できるところ、甲4(特に【0069】~【0070】、【0128】、【表1】)及び甲5(【0066】、【0067】、【0214】【表1】)には、本件水分量要件を満たすものとすることが記載されているものの、感光性樹脂組成物を、本件水分量要件を満たし、かつ、「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」を含むものとすることによって当該効果が得られることは記載も示唆もされていない。
さらに、甲2、3、6、7及び参考文献1には、本件水分量要件を満たすものとすることは記載も示唆もされていない。
そして、本件特許発明1の上記効果は、先の出願時に本件特許発明1の当該構成が奏するものとして、当業者が予測することができた範囲の効果を超える格別なものと判断される。
してみると、甲1-5組成物発明において、甲1~7及び参考文献1の記載に基づき、相違点1-1に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
b 申立人の主張について
申立人は、令和7年10月6日に提出された上申書において、概略、本件特許明細書の記載された実施例において、本件特許明細書で言うところの環境変化に対する「銅密着安定性」は確かめられていないため、本件水分量の下限値を0.5質量%以上とすることの技術的意味が不明であり、「銅密着安定性」は有利な効果として参酌されるべきでなない旨主張している。
しかしながら、本件特許明細書の【0013】の記載によれば、本件特許発明における「銅密着安定性」とは、「感光性樹脂組成物の樹脂膜と銅基材との密着力(90度ピール強度)の製造のバラツキを抑制」することであって、湿度環境の変化に対して銅密着を確保することではないといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
c 小括
本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
d 進歩性についてのまとめ
上記a~dより、本件特許発明1は、甲1-5組成物発明、甲1~7及び参考文献1の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 小括
以上より、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明17について
本件特許発明17と甲1-5組成物製造方法発明を対比すると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点1-17)
本件特許発明17の「感光性樹脂組成物の製造方法」は、「カールフィッシャー法により測定される水分量が0.5質量%以上10質量%以下であ」るのに対し、甲1-5組成物製造方法発明の「感光性樹脂組成物」の水分量は、不明である点。
ここで、相違点1-17は、相違点1-1と同内容のものであるから、その判断も相違点1-1についての判断と同じである。
したがって、本件特許発明17は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明2~16及び18について
本件特許発明2~16及び18はいずれも、請求項1又は17を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1又は17の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そうすると、上記(2)及び(3)で述べたとおり、本件特許発明1及び17は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明2~16及び18も、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立人の主張について
ア 主張の概略
申立人は、申立書において、概略、甲1の【0079】に本件水分量要件が記載されており、甲1には本件水分量要件を満たす発明が記載されている旨主張している。
イ 判断
甲1の【0079】には、「感光性樹脂組成物の全固形分(不揮発成分)100質量部に対する水分量」を、「好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部」とすることが記載されているものの、本件水分量要件を満たすものとすることは記載されていない。
また、甲1-5組成物発明及び甲1-5組成物製造方法発明が本件水分量要件を満たさないことは、上記(2)ウ(ア)及び(3)で述べたとおりであり、本件特許発明1~18が甲1-5組成物発明及び甲1-5組成物製造方法発明に対して進歩性を有することは、上記(2)ウ(イ)及び(3)で述べたとおりである。
さらに、甲1-5組成物発明は甲1に記載された実施例5であるところ、甲1に記載された、他の実施例(実施例1~4、6~17)及び比較例1における、感光性樹脂組成物(全成分)に含まれる水分量は、実施例5よりも少ないことから、これらに基づいて引用発明を認定してもその対比・判断は、上記(2)~(4)と同様である。
したがって、本件特許発明1~18は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)小括
以上のとおり、本件特許発明1~18は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(1)甲2に記載された発明
上記第4の2(3)より、甲2には、実施例2-1として、以下の発明(以下「甲2組成物発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下の各素材を均一に混合して、混合物を得、
上記混合物を、中空糸膜フィルターに通してろ過して製造した、感光性樹脂組成物。
・樹脂
以下の化学式のポリマー(A-1) 100質量部
45
148
0001434134000038.jpg
・多官能(メタ)アクリレート化合物
ビスコート#802(大阪有機工業株式会社製、以下化学式で表される構造)
80質量部
75
153
0001434134000039.jpg
・感光剤
Irugacure OXE02(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤) 10質量部
・熱ラジカル発生剤
パーカドックスBC(化薬ヌーリオン株式会社製、有機過酸化物、クミルパーオキサイド) 10質量部
・エポキシ樹脂
TECHMORE VG3101L(株式会社プリンテック製) 7質量部
セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製) 3質量部
・硬化触媒
テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート 3質量部
・密着助剤(シランカップリング剤)
KBM-503(信越化学工業株式会社製、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 5質量部
X-12-967C(信越化学工業株式会社製) 2質量部
・界面活性剤
FC4432(3M社製、フッ素系) 0.1質量部
・水 2質量部
・溶剤(有機溶剤)
乳酸エチル(EL) 259質量部
γ-ブチロラクトン(GBL) 259質量部」
(当合議体注:上記(A-1)のポリマーを、以下「ポリマー(A-1)」という。)
また、甲2には、甲2組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、甲2組成物発明の「混合物」を用いて製造したことが記載されており(【0153】)、これを甲2組成物製造方法発明という。
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2組成物発明を対比する。
(ア)ポリイミド(A)
甲2組成物発明の「ポリマー(A-1)」は、その化学構造からみて、本件特許発明1の「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」に相当する。
(イ)感光剤(B)
甲2組成物発明の「Irugacure OXE02(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「感光剤(B)」に相当する。
(ウ)有機溶剤
甲2組成物発明の「乳酸エチル(EL)」及び「γ-ブチロラクトン(GBL)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「有機溶剤」に相当する。
(エ)感光性樹脂組成物
甲2組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、その組成からみて、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」に相当する。
また、甲2組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、「ポリマー(A-1)」、「Irugacure OXE02(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)」、乳酸エチル(EL)」及び「γ-ブチロラクトン(GBL)」を含む「混合物」を用いて得たものであるから、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」における「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)と、感光剤(B)と、を含」み、「有機溶剤をさらに含」む、という要件を満たすものである。
イ 一致点・相違点
上記アより、本件特許発明1と甲2組成物発明の一致点と相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)と、
感光剤(B)と、
を含む感光性樹脂組成物であって、
有機溶剤をさらに含む、感光性樹脂組成物。」
(相違点2-1)
本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」は、本件水分量要件を満たすのに対し、甲2組成物発明の「感光性樹脂組成物」の水分量は不明である点。
(相違点2-2)
本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」は、「ワニス状である」のに対し、甲2組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、ワニス状であるか不明である点。
ウ 判断
(ア)新規性について
相違点2-1について検討する。
a 相違点2-1は、相違点1-1と同内容のものである。
そして、甲2組成物発明の感光性樹脂組成物は、イミド樹脂100質量部、水2質量部及び溶剤518質量部(乳酸エチル259質量部、γ-ブチロラクトン259質量部)を含有するものであるなど、その組成は、甲1-5組成物発明の感光性樹脂組成物の組成と類似するものである。
また、甲2組成物発明の感光性樹脂組成物における、原料水の含有量は、0.27質量%(2/(100+80+10+10+7+3+3+5+2+0.1+2+259+259)×100)である。
ここで、甲2組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、技術的にみて、非原料水を含むものであるといえるが、甲1-5組成物発明について述べた理由と同様の理由により、非原料水の含有量は、不明であり、また、これが0.23質量%以上9.73質量%以下であると認めるに足りる証拠はない。
してみると、相違点2-1は、実質的な相違点である。
b 小括
本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。
(イ)進歩性について
a 相違点2-1について
相違点2-1についての判断は、上記1(2)ウ(イ)と同様である。
すなわち、甲2の【0102】には、「感光性樹脂組成物の全固形分(不揮発成分)100質量部に対する水分量」を、「好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部」とする記載があるものの、有機溶剤を含む感光性樹脂組成物中の水分量に着目し、有機溶剤を含む感光性樹脂組成物を100(質量%)として、水分量を所定の範囲内(0.5質量%以上10質量%以下)のものとすることは記載も示唆もされていないから、甲2組成物発明の感光性樹脂組成物を、カールフィッシャー法により測定される水分量が0.5質量%以上10質量%以下である構成とする動機付けはない。
また、甲4(特に【0069】~【0070】、【0128】、【表1】)及び甲5(【0066】、【0067】、【0214】【表1】)には、本件水分量要件を満たすものとすることが記載されているものの、本件水分量要件及び「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」を含むという要件を備えるものとすることにより、90度ピール強度(銅密着性)、90度ピール強度変動数及び常温粘度変化率に優れるとの効果(本願特許明細書の【0180】~【0209】の【実施例】(特に【0197】【表1】)の記載参照。)を得ることについて記載も示唆もされていない。
さらに、甲2、3、6、7及び参考文献1には、本件水分量要件を満たすものとすることは記載も示唆もされていない。
そして、本件特許発明1の上記効果は、先の出願時に本件特許発明1の当該構成が奏するものとして、当業者が予測することができた範囲の効果を超える格別なものと判断される。
エ 小括
相違点2-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明17について
本件特許発明17と甲2組成物製造方法発明を対比すると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点2-17)
本件特許発明17の「感光性樹脂組成物の製造方法」は、「カールフィッシャー法により測定される水分量が0.5質量%以上10質量%以下であ」るのに対し、甲2組成物製造方法発明の「感光性樹脂組成物」の水分量は、不明である点。
ここで、相違点2-17は、相違点2-1と同内容のものであるから、その判断も相違点2-1についての判断と同じである。
したがって、本件特許発明17は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明2~16及び18について
本件特許発明2~16及び18はいずれも、請求項1又は17を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1又は17の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そうすると、上記(2)及び(3)のとおり、本件特許発明1及び17が、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明2~16及び18も、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立人の主張について
ア 主張の概略
申立人は、申立書において、概略、甲2の【0102】に本件水分量要件が記載されており、甲2には本件水分量要件を満たす発明が記載されている旨主張している。
イ 判断
甲2の【0102】には、「感光性樹脂組成物の全固形分(不揮発成分)100質量部に対する水分量」を、「好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部」とすることが記載されているものの、本件水分量要件を満たすものとすることは記載されていない。
また、甲2組成物発明及び甲2組成物製造方法発明が本件水分量要件を満たさず、本件特許発明1~18が甲2組成物発明及び甲2組成物製造方法発明に対して新規性・進歩性を有することは、上記(2)~(4)で述べたとおりである。
さらに、甲2組成物発明は、甲2に記載された実施例2-1であるところ、甲2に記載された比較例2-1の原料として用いた水の添加量は、実施例2-1と同一であり、甲2には、ポリイミドを用いた他の実施例は記載されていない。
したがって、本件特許発明1~18は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明並びに甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)小括
以上のとおり、本件特許発明1~18は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(1)甲3に記載された発明
上記第4の3(3)より、甲3には、実施例5及び比較例1として、以下の発明「以下それぞれ「甲3-5組成物発明」及び「甲3比較組成物発明」という。)が記載されていると認められる。
ア 甲3-5組成物発明
「以下のとおり配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌して、溶液を得、その溶液を濾過して得た、ワニス状の感光性樹脂組成物。
<ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂>
(A-1)以下の構造を有するポリマー 100質量部
<多官能(メタ)アクリレート化合物>
(B-1)ビスコート#802(大阪有機工業株式会社製、1分子あたりアクリロイル基を5~10個有する化合物の混合物) 40質量部
(B-2)NKエステルA-9550(新中村化学株式会社製、1分子あたりアクリロイル基を5~6個有する化合物の混合物) 20質量部
(B-3)ビスコート#300(大阪有機工業株式会社製、1分子あたりアクリロイル基を3~4個有する化合物の混合物) 10質量部
<感光剤>
(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤) 3質量部
(C-2)アデカアークルズ NCI-730(株式会社ADEKA製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤) 7質量部
<熱ラジカル発生剤>
(D-1)パーカドックスBC(化薬ヌーリオン株式会社製、有機過酸化物、クミルパーオキサイド) 10質量部
<エポキシ樹脂>
(E-1)TECHMORE VG3101L(株式会社プリンテック製) 7質量部
(E-2)セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製) 3質量部
<硬化触媒>
(F-1)テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート 3質量部
<シランカップリング剤>
(G-1)KBM-503(信越化学工業株式会社製) 5質量部
(G-2)X-12-967C(信越化学工業株式会社製) 2質量部
<界面活性剤>
(H-1)FC4432(3M社製、フッ素系) 0.1質量部
水 2質量部
<溶剤>
(J-1)乳酸エチル(EL) 247質量部
(J-2)γ-ブチロラクトン(GBL) 247質量部
28
136
0001434134000040.jpg
」
(当合議体注:上記(A-1)のポリマーを、以下「ポリマー(A-1)」という。)
イ 甲3比較組成物発明
「以下のとおり配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌して、溶液を得、その溶液を濾過して得た、ワニス状の感光性樹脂組成物。
<ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂>
(A-5)以下の構造を有するポリマー 100質量部
<多官能(メタ)アクリレート化合物>
(B-4)ビスコート#230(大阪有機工業株式会社製、1分子あたりアクリロイル基を2個有する化合物) 60質量部
<感光剤>
(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤) 5質量部
<シランカップリング剤>
(G-1)KBM-503(信越化学工業株式会社製) 5質量部
(G-2)X-12-967C(信越化学工業株式会社製) 2質量部
<界面活性剤>
(H-1)FC4432(3M社製、フッ素系) 0.1質量部
水 2質量部
<溶剤>
(J-1)乳酸エチル(EL) 203質量部
(J-2)γ-ブチロラクトン(GBL) 203質量部
28
145
0001434134000041.jpg
」
(当合議体注:上記(A-5)のポリマーを、以下「ポリマー(A-5)」という。)
また、甲3には、甲3-5組成物発明の感光性樹脂組成物及び甲3比較組成物発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂、感光剤、水及び溶剤を含む各原料を溶解して得たことが記載されており(【0136】)、これらをそれぞれ、甲3-5組成物製造方法発明及び甲3比較組成物製造方法発明という。
(2)本件特許発明1~18について
ア 甲3-5組成物発明等に基づく判断について
甲3-5組成物発明及び甲3-5組成物製造方法発明は、それぞれ、上記(1)に記載した、甲1-5組成物発明及び甲1-5組成物製造方法発明と同一、あるいは、略同一のものである。
そうすると、本件特許発明1~18についての判断は、上記1(2)ウ、(3)及び(4)に記載した判断と同様である。
イ 甲3比較組成物発明に基づく判断について
甲3比較組成物発明の感光性樹脂組成物は、甲3-5組成物発明の感光性樹脂組成物において、
ポリイミド樹脂である、ポリマー(A-1)100質量部を、ポリマー(A-5)100質量部に変更し、
多官能(メタ)アクリレート化合物である、(B-1)ビスコート#802(大阪有機工業株式会社製)40質量部、(B-2)A-9550(新中村化学株式会社製)20質量部及び(B-3)ビスコート#300(大阪有機工業株式会社製)質量部10を、(B-4)ビスコート#230(大阪有機工業株式会社製)60質量部に変更し、
感光剤である、(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)3質量部及び(C-2)アデカアークルズ NCI-730(株式会社ADEKA製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)7質量部を、(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)5質量部に変更し、
熱ラジカル発生剤、エポキシ樹脂及び硬化触媒を用いず、
溶剤である、(J-1)乳酸エチル(EL)及び(J-2)γ-ブチロラクトン(GBL)247質量部を203質量部に変更し、
その他は、甲3-5組成物発明と同一としたものである。また、甲3比較組成物製造方法発明についても、上記変更点以外は、甲3-5組成物製造方法発明と同様である。
そして、甲3比較組成物発明の感光性樹脂組成物における、原料水の含有量は、0.34質量%(2/(100+60+5+5+2+0.1+2+203+203)×100)である。
ここで、甲3比較組成物発明の感光性樹脂組成物は、技術的にみて、非原料水を含むものであるといえるが、甲1-5組成物発明と同様、非原料水の含有量は、不明であり、また、これが0.17質量%以上であると認めるに足りる証拠はない。
そうすると、本件特許発明1~18は、甲3比較組成物発明又は甲3比較組成物製造方法発明であるとはいえない。
さらに、甲3比較組成物発明又は甲3比較組成物製造方法発明に基づく本件特許発明1~18の進歩性についての判断は、甲1-5組成物発明及び甲1-5組成物製造方法発明に基づく容易相当性について述べた判断と同様である(上記1(2)ウ(イ)参照)。
(3)申立人の主張について
ア 主張の概略
申立人は、申立書において、概略、甲3の【0089】に本件水分量要件が記載されており、甲1には本件水分量要件を満たす発明が記載されている旨主張している。
イ 判断
甲3の【0089】には、「感光性樹脂組成物の全固形分(不揮発成分)100質量部に対する水分量」を、「好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部」とすることが記載されているものの、本件水分量要件を満たすものとすることは記載されていない。
また、甲3-5組成物発明及び甲3比較組成物発明が本件水分量要件を満たさず、本件特許発明1~18が甲3-5組成物発明及び甲3比較組成物発明に対して新規性・進歩性を有することは、上記(2)で述べたとおりである。
さらに、甲3-5組成物発明及び甲3比較組成物発明はそれぞれ甲3に記載された実施例5及び比較例1であるところ、甲3に記載された、他の実施例(実施例1~4、6~14)における感光性樹脂組成物(全成分)に含まれる水分量は、実施例5よりも少ないことから、これらに基づいて引用発明を認定してもその対比・判断は、上記(2)と同様である。
したがって、本件特許発明1~18は、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明並びに甲1~7の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおり、本件特許発明1~18は、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由により請求項1~18に係る特許を取り消すことはできない。
上記第5及び第6のとおり、取消理由通知書(決定の予告)において、上記第3に記載した申立理由1~5はいずれも採用しなかったところ、本件特許発明1~18についての特許は、以下において検討するとおり、これらによって取り消すことはできない。
(1)甲4に記載された発明に基づく新規性・進歩性の欠如について
ア 申立人の主張
申立人は、概略、甲4には、分子内にイミド環構造を有するポリイミドと、感光剤と、有機溶剤と、を含み、本件水分量が0.6~10質量%であるワニス状の感光性樹脂組成物が記載されている旨主張している。
イ 合議体の判断
(ア)本件特許発明1について
a 一致点・相違点
本件特許発明1と、実施例1の(ポリアミド前駆体を用いた)感光性樹脂組成物(以下「甲4-1組成物発明」という。)とを対比すると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点4-1)
本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」は、「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」を含むのに対し、甲4-1組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、分子内にイミド環構造を有しない「ポリイミド前駆体A(ポリマーA)」及び「ポリイミド前駆体B(ポリマーB)」を含む点。
(相違点4-2) ワニス状である点
本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」は、「ワニス状である」のに対し、甲4-1組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、ワニス状であるか不明である点。
b 新規性・進歩性の判断
(a)新規性について
相違点4-1は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲4に記載された発明ではない。
(b)進歩性について
甲4-1組成物発明は、甲4の【0006】~【0007】に記載されているとおり、銅又は銅合金上でも変色を起こさず、感度及び保存安定性に優れた感光性樹脂組成物を提供することを課題とし、【0009】、【0069】~【0070】に記載の技術的思想に基づき、本件水分量を0.6質量%(【0121】)とすることにより、塗膜の感度に優れ、銅基板の変色・腐食評価及び1ケ月後の現像時間変化・感度が良好となる(【0122】、【0128】【表1】)ものであるところ、【0014】には、感光性樹脂として、ポリイミド前駆体の他に、ポリイミド樹脂を使用できることが記載されている。
そうすると、甲4-1組成物発明の設計変更を試みる当業者は、甲4-1組成物発明において、感光性樹脂をポリイミド樹脂とし得る可能性はある。
しかしながら、本件特許明細書(特に【0197】参照)には、「ポリイミド樹脂(A-1)」を用い、本件水分量が5.0質量%である実施例は、実施例5における「ポリイミド樹脂(A-1)」を「ポリイミド樹脂<比較例用>」に変更したこと以外は実施例5と同様とした、比較例1に比して常温粘度変化率(保存安定性)に優れるとの効果が示されることが示されており、このような効果は、先の出願時に本件特許発明1の当該構成が奏するものとして、当業者が予測することができた範囲の効果を超える格別なものと判断される。
そうしてみると、本件特許発明1は、甲4-1組成物発明及び甲4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
甲1~3、5~7及び参考文献1を考慮に入れて検討したとしても、結論は同じである。
さらに、甲4-1組成物発明は甲4に記載された実施例1であるところ、甲4に記載された、他の実施例(実施例2~10)及び比較例1、2における、感光性樹脂組成物もポリイミド樹脂を含むものではないことから、これらに基づいて引用発明を認定してもその対比・判断は、上記と同様である。
c 申立人の主張について
上記a及びbで述べたとおり、「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」を含む本件特許発明1は、甲4に記載された発明ではなく、甲4に記載された発明に比して保存安定性に優れるという当業者が予測し得る範囲を超えた効果を奏するものである。
したがって、申立書における申立人の主張を採用することはできない。
d 小括
以上のとおりであるから、相違点4-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2~16
本件特許発明2~16はいずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そうすると、上記(ア)で述べたとおり、本件特許発明1は、甲4に記載された発明ではなく、甲4に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明2~16も、甲4に記載された発明ではなく、甲4に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明17~18
本件特許発明17~18と甲4の実施例1の記載から理解される甲4-1組成物製造法発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点4-17)
本件特許発明17の「感光性樹脂組成物の製造方法」は、「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」を「溶剤に溶解して感光性樹脂組成物を得る工程を含」むのに対し、甲4-1組成物製造方法発明の「感光性樹脂組成物の製造方法」は、分子内にイミド環構造を有しない「ポリイミド前駆体A(ポリマーA)」及び「ポリイミド前駆体B(ポリマーB)」を用いて調製するものである点。
ここで、相違点4-17は、相違点4-1と同内容のものであるから、その判断も相違点4-1についての判断と同じである。
したがって、本件特許発明17は、甲4に記載された発明ではなく、甲4に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件特許発明1~18は、甲4に記載された発明ではなく、甲4に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)甲5に記載された発明に基づく新規性・進歩性の欠如について
ア 申立人の主張について
申立人は、概略、甲5には、分子内にイミド環構造を有するポリイミドと、感光剤と、有機溶剤と、を含み、本件水分量が0.01~10質量%であるワニス状の感光性樹脂組成物が記載されている旨主張している。
イ 合議体の判断
(ア)本件特許発明1について
a 一致点・相違点
本件特許発明1と、実施例3の((A-1)フェノールノボラック樹脂を用いた)感光性樹脂組成物(以下「甲5-3組成物発明」という。)とを対比すると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点5-1)
本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」は、「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」を含むのに対し、甲5-3組成物発明の「感光性樹脂組成物」は、「(A-1)フェノールノボラック樹脂」を含む点。
b 新規性・進歩性の判断
(a)新規性について
相違点5-3は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲5に記載された発明ではない。
(b)進歩性について
甲5-3組成物発明は、甲5の【0007】~【0010】に記載されている、無機材料に対する密着性及びパターニング性が良好な樹脂膜を形成可能な感光性樹脂組成物を提供することを課題として、【0011】、【0119】~【0120】の思想に基づき、本件水分量を5.0質量%(【0214】【表1】)、とし、パターニング性、硬化膜の外観(ボイド)及び信頼性試験の評価が「○」であり、Si:SiN密着性の評価における剥がれた切れ込み数が0個であり、引張強度121MPa・引張弾性率3.3GPa・伸び率30%(【0214】【表1】)であるところ、【0066】~【0067】に、感光性樹脂組成物に用いられる樹脂として、フェノールノボラック樹脂の他に、ポリイミドを使用できることが記載されている。
そうすると、甲5-3組成物発明の設計変更を試みる当業者は、甲5-3組成物発明において、感光性樹脂をポリイミド樹脂とし得る可能性はある。
しかしながら、本件特許明細書(特に【0197】参照)には、「ポリイミド樹脂(A-1)」を用い、本件水分量が5.0質量%である実施例は、実施例5における「ポリイミド樹脂(A-1)」を「ポリイミド樹脂<比較例用>」に変更したこと以外は実施例5と同様とした、比較例1に比して常温粘度変化率(保存安定性)に優れるとの効果が示されることが示されており、このような効果は、先の出願時に本件特許発明1の当該構成が奏するものとして、当業者が予測することができた範囲の効果を超える格別なものと判断される。
そうしてみると、本件特許発明1は、甲5-3組成物発明及び甲5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
甲1~4、6~7及び参考文献1を考慮に入れて検討したとしても、結論は同じである。
さらに、甲5-3組成物発明は甲5に記載された実施例3であるところ、甲5に記載された、他の実施例(実施例1~2、4~21)及び比較例1~4における、感光性樹脂組成物もポリイミド樹脂を含むものではないことから、これらに基づいて引用発明を認定してもその対比・判断は、上記と同様である。
c 申立人の主張について
上記a及びbで述べたとおり、「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」を含む本件特許発明1は、甲5に記載された発明ではなく、また、甲5に記載された発明に比して保存安定性に優れるという当業者が予測し得る範囲を超えた効果を奏するものである。
したがって、申立書における申立人の主張を採用することはできない。
d 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲5に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件特許発明2~16
本件特許発明2~16はいずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。
そうすると、上記(ア)で述べたとおり、本件特許発明1は、甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許発明2~16も、甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件特許発明17~18
本件特許発明17~18と甲5の実施例3の記載から理解される甲5-3組成物製造法発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点5-17)
本件特許発明17の「感光性樹脂組成物の製造方法」は、「分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)」を「溶剤に溶解して感光性樹脂組成物を得る工程を含」むのに対し、甲5-3組成物製造方法発明の「感光性樹脂組成物の製造方法」は、「(A-1)フェノールノボラック樹脂」を用いて調製するものである点。
ここで、相違点5-17は、相違点5-1と同内容のものであるから、その判断も相違点5-1についての判断と同じである。
したがって、本件特許発明17は、甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件特許発明1~18は、甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明及び甲1~7、参考文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)申立理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~18は、特許法29条1項3号及び特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許の請求項1~18に係る特許は、特許法113条2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1~18に係る特許は、申立理由1によって取り消すことはできない。
(1)申立人の主張について
申立人は、概略、先願には、分子内にイミド環構造を有するポリイミドと、感光剤と、有機溶剤と、を含み、本件水分量が2.0質量%未満であるワニス状の感光性樹脂組成物が記載されている旨主張している。
(2)拡大先願についての判断
先願当初明細書等の【0249】~【0263】に記載された実施例1(以下「先願発明」という。)と本件特許発明1~17を対比すると、先願発明は分子内にイミド環構造を有するポリイミド(A)(閉環PI)成分を組成物が含有していない(【0249】、【0250】【表1】)点で少なくとも相違する。
以下、相違点について検討する。
先願当初明細書等の【0032】及び【0035】には、先願でいう本発明に用いられる樹脂組成物は環化樹脂及びその前駆体よりなる群から選ばれた1種の樹脂を含み、「環化樹脂は、主鎖構造中にイミド環構造又はオキサゾール環構造を含む樹脂であることが好ましい。」ことが記載されており、ポリイミドについては選択的に用いることが記載されているが、本件特許発明1~17の効果を踏まえると、上記相違点は設計上の微差とはいえない。実施例2~15、又は、比較例1~4を先願発明として検討しても同様である。
そうすると、上記1(1)の記載と同様の理由により、本件特許発明1~17と先願に記載された発明とが同一又は実質同一であるとはいえず、本件特許の請求項1~17に係る特許は特許法29条の2の規定に違反してされたものではないから、申立人の主張は採用できない。
(3)申立理由2についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~17は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許の請求項1~17に係る特許は、特許法113条2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1~17に係る特許は、申立理由2によって取り消すことはできない。
(1)申立人の主張について
申立人は、申立書において、概略、湿度環境の変化に対しても銅密着を確保するという「銅密着安定性」は本件特許明細書の実施例において効果が確かめられていない点(以下「主張1」という。)、感光性樹脂組成物中の水分がどのように作用して保管後の粘度変化を抑制でき、外観の経時劣化を抑制できるのか記載されておらず、そのメカニズムが不明であり、組成物調製時に混入した水分が分からない以上、当業者の過度な試行錯誤を要することなく「保管安定性」という課題を解決する感光性樹脂組成物を製造できるとはいえない点(以下「主張2」という。)を主張する。
(2)実施可能要件の判断基準
本件特許発明1~16は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすと言うことができる。
また、本件特許発明17及び18は、上記第2のとおり、「物を生産する方法」の発明であるところ、物を生産する方法の発明における実施とは、そのものを生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法2条3項3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
(3)実施可能要件についての判断
ア 上記判断基準に基づく判断
本件特許明細書の【0180】~【0209】には、実施例1~9として、少なくとも本件特許発明1の要件を全て満たす態様の感光性樹脂組成物及び本件特許発明1の要件を全て満たす態様の感光性樹脂組成物の製造方法が記載されている。
これらの記載からみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1~16において特定される「感光性樹脂組成物」、「樹脂膜」及び「電子装置」を生産することができる具体的な記載があり、また、本件特許発明17及び18において特定される「感光性樹脂組成物の製造方法」についての具体的な記載があるといえるから、本件特許発明1~18に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たすといえる。
イ 申立人の主張についての判断
(ア)主張1について
本件特許明細書の【0013】の記載によれば、本件特許発明における「銅密着安定性」とは、「感光性樹脂組成物の樹脂膜と銅基材との密着力(90°ピール強度)の製造のバラツキを抑制」することであって、湿度環境の変化に対して銅密着を確保することではないといえる。
仮に、本件特許発明における「銅密着安定性」が湿度環境の変化に対しても銅密着を確保するものであるとしても、上記アで検討したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、感光性樹脂組成物及びその製造方法についての具体的な記載があり、本件特許発明に該当する実施例1~9は、本件特許発明に該当しない比較例1~4に比して、「90度ピール強度(銅密着性)」が優れることが記載されており、例えば、密着性を評価した評価用基板を特定の湿度環境に所定時間静置した後に90度ピール強度を測定し、特定の湿度環境に所定時間静置することなく90度ピール強度を測定した評価基板と比較することよって効果を確かめることは、当業者が過度な試行錯誤を要することなく行えることである。
したがって、主張1は採用できない。
(イ)主張2について
感光性樹脂組成物中の水分が保管後の粘度変化及び外観の経時劣化を抑制に寄与するメカニズムが不明であっても、上記アで検討したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、感光性樹脂組成物及びその製造方法についての具体的な記載がある以上、当業者は、過度な試行錯誤を要することなく当該感光性樹脂組成物を製造できるといえる。
したがって、主張2は採用できない。
(4)申立理由3についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1~18に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法113条4号に該当しない。
(1) 申立人の主張について
ア 本件特許発明1~16について
申立人は、申立書において、概略、同一湿度条件においてピール強度の測定ばらつきを「銅密着性安定性」の評価としており、湿度条件を変えての変動を確かめていない点(以下「主張1」という。)、感光性樹脂組成物中の含水率を少なくすることで保存安定性の向上を図る技術が提案されているところ、保存安定性の観点からは感光性樹脂組成物中の水分量の下限が切り上げられた態様である本件特許発明において水分がどのように作用して保管後の粘度変化を抑制でき、外観の経時劣化を抑制できるのか、そのメカニズムが不明である点(以下「主張2」という。)を主張する。
イ 本件特許発明17及び18について
申立人は、申立書において、概略、本件特許明細書には、湿気等の保管環境によって水分量が所定の範囲内に落とし込まれる例を開示しておらず、湿気等の保管環境によって水分量が所定の範囲内に落とし込まれる例を含む本件特許発明17及び18が本件特許明細書の発明の詳細な説明に実質的に記載されたものであるとはいえない点(以下「主張3」という。)を主張する。
(2)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
(3)サポート要件についての判断
ア 上記判断基準に基づく判断
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、本件特許発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、「保管安定性」及び「銅密着安定性」と認められる(【0008】、【0013】)。
そして、本件特許明細書の【0180】~【0209】には、実施例1~9として、少なくとも本件特許発明1の全ての要件を満たす態様の感光性樹脂組成物が、本件特許発明に該当しない比較例1~4に比して、「90度ピール強度(銅密着性)」、「90度ピール強度変動数」、「常温粘度変化率」が優れることが記載されていることからみて、当該実施例1~9は、本件課題を解決できることを当業者は認識できるといえる。
そうすると、当業者は、本件特許発明が、発明の課題を解決できるものと認識できるというべきである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
イ 申立人の主張についての判断
(ア)主張1及び2について
上記3(3)イと同様である。
(イ)主張3について
甲1(「【0080】)、甲2(【0102】)、甲3(【0089】)並びに甲4(【0070】)における「感光性樹脂組成物の水分量は、カールフィッシャー法により定量することができる。」との記載、甲4(【0070】)における「水分は感光性樹脂組成物を構成するそれぞれの要素から副次的に導入されてもよいし、意図的に添加することもできる。」との記載及び甲5(【0126】)における「感光性樹脂組成物の水分量は、カールフィッシャー法により測定可能である。」との記載によれば、感光性樹脂組成物の水分量を湿気等の保管環境によって水分量を調整することは、本件特許の優先日前における技術常識であるといえる。
そうすると、湿気等の保管環境によって水分量を本件数値範囲内のものとした、本件特許発明17及び18は、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、主張3は採用できない。
(4)申立理由4についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1~18に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法113条4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1~18に係る特許は、申立理由4によって取り消すことはできない。
(1)申立人の主張について
申立人は、申立書において、概略、「ワニス状」にするために、樹脂の構造、有機溶剤の種類や量(特に有機溶剤の下限値)及びそれらの質量比等をいかに制御すればよいのかが明確でなく、樹脂に対して貧溶媒である「水」を多く含む本件特許発明において「ワニス状」を実現するために、樹脂の構造、有機溶剤の種類や量及びそれらの質量比等について一層厳格な制御が要されることは当業者に明らかであるから、樹脂の構造、有機溶剤の種類や量及びそれらの質量比等が当然規定されるべきである旨主張している。
(2)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(3)明確性要件についての判断
ア 上記判断基準に基づく判断
本件特許の技術的範囲は、上記第2において認定したとおりのものである。
そして、本件特許明細書の【0089】には、「本実施形態の感光性樹脂組成物がワニス状であることにより、塗布による均一な膜形成を行うことができる。」と記載されており、本件特許発明における「ワニス状」とは、塗布による均一な膜形成を行うことができるような状態を意味するといえる。
また、甲3の【0092】にも上記と同様のことが記載されている。
そうすると、本件特許発明における「ワニス状」の技術的意味は明確であり、本件特許の特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確にしているとはいえない。
よって、本件特許発明は明確である。
イ 申立人の主張についての判断
本件特許発明における「ワニス状」とは、上記アのとおり、塗布による均一な膜形成を行うことができる状態を意味するものというべきであるところ、このような状態とするために、樹脂の構造、有機溶剤の種類や量及びそれらの質量比等を特定のものとした、特定組成の感光性樹脂組成物が塗布による均一な膜形成を行うことができる状態か否かは、当該特定組成の感光性樹脂組成物を実際に調整することによって確認し得ることである。
したがって、上記主張は採用できない。
(4)申立理由5についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1~16に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法113条4号に該当しない。
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件特許発明1~18についての特許を取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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