結論テキスト
特許第7524942号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7524942号の請求項1~4,6に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700126 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件の特許第7524942号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2022-518532号。以下「本願」という。)は、2020年(令和 2年) 4月30日を国際出願日とする出願であって、令和 6年 7月22日にその特許権の設定登録がされ、同年 7月30日に特許掲載公報が発行されたものである。
本件は、その後、令和 7年 1月28日に、その請求項1~4、6に係る特許について、特許異議申立人である麻生 陽一郎(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、以降の本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 7年 6月 9日付け:取消理由通知書
令和 7年 8月 8日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
なお、申立人に対し、令和 7年10月 6日付けで期間を指定して訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの意見書の提出はなかった。
令和 7年 8月 8日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当合議体が下線を付した。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が4μm以下」と記載されているのを、「粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が
2
μm以下」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「前記d50が4μm以下であるかどうかを判定し、 前記d50が4μm以下である場合に、その表面改質酸化亜鉛粒子を選択する、」と記載されているのを、「前記d50が
2
μm以下であるかどうかを判定し、 前記d50が
2
μm以下である場合に、その表面改質酸化亜鉛粒子を選択する、」に訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「d50が4μm以下である表面改質酸化亜鉛粒子を得る分散工程と、」と記載されているのを、「d50が
2
μm以下である表面改質酸化亜鉛粒子を得る分散工程と、」に訂正する。
(1)訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無について
上記訂正事項1~3に係る訂正は、訂正前の請求項1、5、6における「表面改質酸化亜鉛粒子」の「粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径」である「d50」について、「4μm以下」と特定していたものを、本願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の【0026】の記載を根拠として、「2μm以下」と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえず、さらに、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から導き出される技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)独立特許要件について
ア 本件においては、本件訂正前の請求項1~4、6について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1~4、6に対応する、本件訂正後の請求項1~4、6については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
イ 本件訂正前の請求項5については特許異議の申立てがされておらず、上記(1)のとおり、請求項5に係る上記1(1)、(2)の訂正事項1、2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正前の請求項5に対応する本件訂正後の請求項5に係る発明については、独立特許要件が課される。しかし、同発明については、以下の第5の1(2)キ、2(3)、3(3)、4(6)ウ、5(1)ウ、5(2)ウに示すように、特許を取り消すべき理由は発見されず、他に特許を取り消すべき理由も存在しないため、独立特許要件を満たす。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~6は、本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~6は一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。
また、本件訂正について別の訂正単位とする求めはないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~6〕を訂正単位とする訂正を請求するものである。
(4)本件訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用又は読み替えて準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
令和 7年 8月 8日に提出された訂正請求書により特許権者が行った請求項1~6についての訂正は、上記第2で検討したとおり認められるものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の請求項1~6に係る発明を「本件発明1」~「本件発明6」といい、総称して、「本件発明」という。また、本件発明3のうち請求項1を引用するものを「本件発明3-1」、本件発明3のうち請求項2を引用するものを「本件発明3-2」等という。
「【請求項1】
アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であり、
以下の測定方法で、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下であることを特徴とする表面改質酸化亜鉛粒子。
(測定方法)
表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロキサン88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2gと、を混合して混合液を得て、
得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間分散処理した分散液を得て、
得られた分散液中の表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるようにシクロペンタシロキサンで希釈した測定液を作製し、
得られた測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置でd50を測定する。
【請求項2】
L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面改質酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有することを特徴とする分散液。
【請求項4】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項5】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法であって、
アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子を用意し、
前記表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロキサン88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2gと、を混合して混合液を得て、
得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間分散処理した分散液を得て、
得られた前記分散液中の前記表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるようにシクロペンタシロキサンで希釈した測定液を作製し、
得られた測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50を測定し、
前記d50が2μm以下であるかどうかを判定し、
前記d50が2μm以下である場合に、その表面改質酸化亜鉛粒子を選択する、表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子の製造方法であって、
アルコキシ基を有するシランカップリング剤と、溶媒と、酸化亜鉛粒子を、分散機に入れて、混合液を作製する作製工程と、
前記混合液を分散機で分散処理し、d50が2μm以下である表面改質酸化亜鉛粒子を得る分散工程と、
前記分散工程の後に、分散処理後の前記混合液を乾燥する乾燥工程と、を有し、
前記混合液を作製する作製工程において、前記混合液中の溶媒の含有量が40質量%以上95質量%以下であることを特徴とする、表面改質酸化亜鉛粒子の製造方法。」
申立人は、証拠方法として下記(7)の甲第1号証~甲第3号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~4、6に係る特許を取り消すべきものであることを主張している。
(1)申立理由1(同日出願、取消理由として不採用)
本件訂正前の本件発明1~4と、本願と同日出願された出願に係る特許である甲1の請求項1~4に係る発明とは同一の発明であり、かつ、本件訂正前の本件発明1~4も該甲1の請求項1~4に係る発明も特許されており協議を行うことができない。したがって、本件訂正前の本件発明1~4については、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件、取消理由として採用)
本件明細書の表1をみるに、実施例では粒径d50が0.18~0.28μmであり、比較例では4.95~9.86μmであって、本件訂正前の請求項1~4、6に係る発明における「d50が4μm以下」という数値に、何ら数値根拠も臨界的意義も認めることができない。また、本件明細書の表2に示された比較例3は、本件訂正前の請求項1~4、6に係る発明における「d50が4μm以下」との規定を満たすにもかかわらず、比較例とされている。
これらの点からみて、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~4、6の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(明確性、取消理由として不採用)
本件訂正前の請求項1~4、6は、「粒径d50が4μm以下」であることを特定するものであるが、上記(2)のとおり、本件明細書には「粒径d50が4μm以下」であっても、比較例となり得る旨が記載されているから、結局、本件訂正前の請求項1~4、6の範囲がどこからなのかが不明である。
したがって、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~4、6の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(発明該当性、取消理由として不採用)
上記(2)のとおり、本件訂正前の請求項1~4、6に係る発明における「粒径d50が4μm以下」との規定を満たしても、比較例3のように比較例となり得るのであるから、本件訂正前の本件発明1~4、6は必須の構成要件を欠いており、未完成発明といえる。
したがって、本件訂正前の請求項1~4、6に係る発明は、特許法第29条柱書きの規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(新規性)
ア 申立理由5-1(取消理由として不採用)
本件訂正前の本件発明1~4、6は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由5-2(取消理由として不採用)
本件訂正前の本件発明1~4、6は、甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由6(進歩性)
ア 申立理由6-1(取消理由として不採用)
本件訂正前の本件発明1~4、6は、甲2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由6-2(取消理由として不採用)
本件訂正前の本件発明1~4、6は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(7)証拠方法
甲1:特許第7524943号公報
甲2:特開2007-197412号公報
甲3:特開2007-161648号公報
令和 7年 6月 9日付けで通知した取消理由1の概要は、上記1(2)に示した申立理由2と同旨である。
当合議体は、以下に示すとおり、上記第4の申立理由及び取消理由によっては、本件特許の請求項1~4、6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
(1)本件明細書の記載
本件明細書には、以下の記載がある(なお、下線は当合議体が付したものである。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。
ア 「【0002】
酸化亜鉛は、紫外線遮蔽能に優れ、ガスバリア性が高く、さらに透明性が高いことが知られている。そのため、
酸化亜鉛を形成材料とする粒子(以下、「酸化亜鉛粒子」と称する。)は、紫外線遮蔽やガスバリア等の機能を有するとともに、透明性が必要とされる種々の素材の形成材料として用いられる
。このような素材としては、例えば、紫外線遮蔽フィルム、紫外線遮蔽ガラス、化粧料、ガスバリアフィルム等が挙げられる。
【0003】
上記の
種々の素材について、透明性を得るための方法としては、例えば、形成材料である酸化亜鉛粒子の一次粒子径を小さくする方法が挙げられる
。酸化亜鉛粒子の一次粒子径を小さくする方法としては、熱分解法や気相法等の種々の方法が検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
酸化亜鉛粒子を化粧料に適用する場合、酸化亜鉛粒子の表面を化粧品の性状に合わせたり、酸化亜鉛粒子の触媒活性を抑えたりするために、酸化亜鉛粒子の表面処理が行われている。
酸化亜鉛粒子を油性化粧料や、エマルションタイプの油相等に配合する場合には、アルコキシ基を有するシランカップリング剤等で表面処理し、アルコキシ基を表面に有する酸化亜鉛粒子が用いられる(例えば、特許文献3、4参照)。
以下の説明では、シランカップリング剤を表面に有する酸化亜鉛粒子を、表面改質酸化亜鉛粒子と称する。
【0005】
このような
表面改質酸化亜鉛粒子は、そのまま化粧料に配合されたり、分散媒に分散させた分散液の状態で化粧料に配合されたりしている
。」
イ 「【0007】
しかしながら、
シランカップリング剤を表面に有する酸化亜鉛粒子であっても、油性化粧料に配合するためには、多くの分散エネルギーが必要であった。また、油性化粧料に配合されても、透明性と紫外線遮蔽性が十分に得られない、という問題があった
。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、油性化粧料への配合が容易で、かつ、透明性と紫外線遮蔽性に優れる表面改質酸化亜鉛粒子を提供することを目的とする。また、このような表面改質酸化亜鉛粒子を含む分散液、化粧料を提供することを目的とする
。」
ウ 「【0018】
[表面改質酸化亜鉛粒子]
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子である。そして
前記粒子は、以下の測定方法で、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が、4μm以下である
。
(測定方法)
表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロキサン88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2gと、を混合して混合液を得て、得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間分散処理した分散液を得て、得られた分散液中の表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるようにシクロペンタシロキサンで希釈した測定液を作製し、得られた測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置でd50を測定する。
ここで、シクロペンタシロキサンは、ダウ・東レ社製の型番DOWSIL SH245 Fluidを用いてよく、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、信越化学社製のKF-6106を用いてよい。
【0019】
シクロペンタシロキサンは、油性化粧料で一般的に使用される溶媒である。そのため、シクロペンタシロキサンに容易に分散する表面改質酸化亜鉛粒子であれば、油性化粧料への分散が容易であると判断できる
。このため、評価の溶媒としてシクロペンタシロキサンを用いた。
ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、油性化粧料で一般的に使用される分散剤である。そのため、この分散剤2g(2質量%)を用いてシクロペンタシロキサンに容易に分散すれば、油性化粧料への分散が容易であると判断できる。
ここで、
容易に分散する、とは、弱い分散エネルギーで、分散粒子径が小さい分散液が得られることを意味する。分散粒子径が小さい表面改質酸化亜鉛粒子は、化粧料に配合されたときに、透明性と紫外線遮蔽性に優れる
。
評価において、表面改質酸化亜鉛粒子を10g(10質量%)とした理由は、分散液中における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が10質量%であれば、分散性を評価するのに十分で適当な量だからである。すなわち、分散液中における表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が10質量%未満とすると、分散させる表面改質酸化亜鉛粒子の量が少な過ぎて、差異が分かり難い場合がある。一方、表面改質酸化亜鉛粒子の含有量を、10質量%を超える量にしても、含有量が多すぎて適当な評価ができない、あるいは分散性の傾向は変わらないため、10質量%を超える量とする利点がない。」
エ 「【0026】
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、上記測定方法における、
粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(d50)(以下、「d50」と略記する場合がある。)が4.00μm以下であることが好ましく、
1.00μm以下であることがより好ましく、0.60μm以下であることがさらに好ましく、0.40μm以下であることが特に好ましい。これら値は、必要に応じて、
2.00μm以下
や、0.50μm以下や、0.30μm以下や、0.20μm以下や、0.10μm以下や、0.08μm以下
であってもよい
。
d50は小さい方が好ましい
が、表面改質酸化亜鉛粒子の一次粒子径以下にはできない。そのため、d50の下限値は、0.02μmであってもよく、0.05μmであってもよく、0.10μmであってもよい。前記下限は、必要に応じて、0.03μmや、0.06μmや、0.08μmであってもよい。・・・」
オ 「【0028】
以下に、上記測定方法の評価で、
d50が4μm以下となる、表面改質酸化亜鉛粒子が、油性化粧料に少ないエネルギーで分散することができ、かつ、紫外線遮蔽性に優れる理由について、説明する
。
【0029】
本発明者等は、酸化亜鉛粒子に、アルコキシ基を有するシランカップリング剤(以下、「シランカップリング剤」と略記する場合がある。)を表面処理する際に、ビーズミル等の分散エネルギーが大きい分散機を用いて、酸化亜鉛粒子と前記シランカップリング剤を、高エネルギーで分散処理することにより、その結果、シリコーンを含む化粧料に容易に分散できる、優れた表面改質酸化亜鉛粒子が得られることを見出した
。ここで、上記分散エネルギーとは、シランカップリング剤を用いて、酸化亜鉛粒子を溶媒に分散させるために要するエネルギーのことである。言い換えると、凝集していた酸化亜鉛粒子がほぐれる程度のエネルギーである。
そのメカニズムの詳細は以下のように推測される。
【0030】
比表面積が1.5m
2
/g以上かつ50m
2
/g以下である酸化亜鉛粒子は、粒子同士が凝集しやすい。特に、比表面積が20m
2
/g以上かつ50m
2
/gである酸化亜鉛粒子は、粒子同士がより凝集しやすい。そのため、従来では、凝集した状態でシランカップリング剤による表面処理がなされていた。しかしながら、このような従来の粒子同士が凝集した状態で表面処理がされた粒子と、油性化粧料の油成分とが混合されると、粒子が凝集した状態のままで分散する。このため、凝集に起因して、透明性と紫外線遮蔽性が悪化する。前述のような悪化を防止するために、前記粒子の凝集をほぐす必要があり、油性化粧料を作製する際には、より多くの分散エネルギーが必要となっていた。しかしながら、高エネルギーで凝集をほぐすことで透明性と紫外線遮蔽性が改善されても、凝集した状態のまま表面処理された凝集体の凝集がほぐれたために、ほぐれた酸化亜鉛粒子の表面の表面処理の状態が不均一となった。その結果、油性化粧料中の表面改質酸化亜鉛粒子の分散安定性が損なわれていた。
【0031】
しかしながら
、酸化亜鉛粒子を高エネルギーで溶媒に分散させることで、酸化亜鉛粒子の凝集がほぐれた状態で、シランカップリング剤で表面処理することができ、酸化亜鉛粒子の表面全体に、略均一にシランカップリング剤が存在することができる
、と推測される。そのため、
このような状態の表面改質酸化亜鉛粒子と、油成分と、が混合されると、酸化亜鉛粒子表面のどの部分も、油成分との馴染みがよく、低エネルギーで前記粒子が油成分に分散できる。また、酸化亜鉛粒子表面に、略均一にシランカップリング剤が存在するため、表面改質酸化亜鉛粒子同士の凝集も抑制され、透明性と紫外線遮蔽性と分散安定性に優れる、化粧料を得ることができる
、と推測される。
【0032】
しかしながら、シランカップリング剤が、酸化亜鉛粒子表面に均一に存在していることを直接確認することは非常に難しい。本実施形態において、表面改質酸化亜鉛粒子を溶媒に容易に分散できるようになったという効果は、多数の要因の複雑な絡み合いによって、具体的には、酸化亜鉛粒子の形状、比表面積、粒度分布や、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の加水分解度合いや、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の酸化亜鉛粒子に対する付着の具合や、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の酸化亜鉛粒子への付着率等の、多数の要因の複雑な絡み合いによって、発現していると推察される。そのため、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子の特徴を、アルコキシ基を有するシランカップリング剤によって表面修飾された酸化亜鉛粒子の表面の状態により、直接特定することは、およそ不可能であると考えられる。
そこで、本発明者等は、様々な検討を行った結果、
上記測定方法で、d50が4μm以下となるまで、すなわち、目的の分散性を達成するように、シランカップリング剤による酸化亜鉛粒子の表面処理を高エネルギーで行うことにより、油性化粧料に容易に分散し、紫外線遮蔽性に優れる表面改質酸化亜鉛粒子が得られることを見出した。言い換えると、上記測定方法で得られるd50の値は、シランカップリング剤が酸化亜鉛粒子表面に均一に存在しているかどうかの指標と考えて良い
。」
カ 「【0123】
[実施例1]
「表面改質酸化亜鉛粒子の作製」
比表面積が21.3m
2
/g、b
*
が3.33の酸化亜鉛粒子(住友大阪セメント社製)を33.3質量部と、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、製品名:KBE-3083)を2.0質量部と、純水0.4質量部と、イソプロピルアルコール64.3質量部と、を混合した。
次いで、この混合液を、ビーズミルを用いて、3時間分散させた。分散条件は、回転数を2500rpm、温度を20°Cとした。
ビーズを除去した分散液を、固液分離し、80°Cで2時間乾燥し、実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を得た
。
【0124】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子の比表面積を、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model-1201、マウンテック社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
またこの粒子のd50やb
*
も下記に述べる方法で測定した。
・・・
【0126】
「分散液の作製」
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロキサン(ダウ・東レ社製、型番:DOWSIL SH245 Fluid)88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(信越化学工業社製、型番:KF-6106)2gと、を混合して混合液を得た。
次いで、この混合液を、ホモジナイザー(IKA社製、ULTRA-TURRAX(登録商標)シリーズ:T25basic)を用いて、9500rpmで5分間分散処理し、実施例1の分散液を得た。
【0127】
「粒度分布による分散性の評価」
実施例1の分散液において、表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるように、シクロペンタシロキサンで希釈して測定液を作製した。
この測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、型番:LA-920)を用いてd50を測定した。結果を表1に示す
。
また、粒度分布の累積体積百分率が10%のときの粒径(d10)と、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(d90)を、d50と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0128】
「分散液の透明性の評価」
実施例1の分散液において、表面改質酸化亜鉛粒子の濃度が0.005質量%となるように、シクロペンタシロキサンで希釈した。
この希釈液の360nmと550nmにおける直線透過率T1(%)と、360nmと550nmにおける全透過率T2(%)を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、型番:V-770)を用いて測定した。結果を表1に示す。
360nmにおける透過率が低いことは、紫外線遮蔽性が高いことを示す。このため、360nmにおける透過率は、低いことが好ましい。
550nmにおける透過率が高いことは、透明性が高いことを示す。このため、550nmにおける透過率は、高いことが好ましい
。
【0129】
[実施例2]
実施例1において、比表面積が21.3m
2
/g、b
*
が3.33の酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比表面積が24.2m
2
/g、b
*
が3.60の酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積とb
*
を測定した。結果を表1に示す。
【0130】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例2の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0131】
[実施例3]
実施例1において、比表面積が21.3m
2
/g、b
*
が3.33の酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比表面積が38.2m
2
/g、b
*
が3.42の酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積とb
*
を測定した。結果を表1に示す。
【0132】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例3の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0133】
[実施例4]
実施例3において、3時間分散処理する替わりに9時間分散処理した以外は実施例3と同様にして、実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
分散時における遠心力と分散時間の積(力積)は、実施例1の約3倍であった。実施例1と同様にして、比表面積とb
*
を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0135】
[比較例1]
実施例3において、3時間分散処理する替わりに、5分分散処理した以外は実施例3と同様にして、比較例1の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
分散時における遠心力と分散時間の積(力積)は、実施例1の約40分の1であった。実施例1と同様にして、比表面積とb
*
を測定した。結果を表1に示す。
【0136】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0137】
[比較例2]
比表面積が38.2m
2
/g、b
*
が3.42の酸化亜鉛粒子100質量部をヘンシェルミキサーに投入した。酸化亜鉛粒子をヘンシェルミキサーで酸化亜鉛粒子を撹拌しながら、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE-3083、信越化学社製)5質量部、純水0.375質量部、およびイソプロピルアルコール7.125質量部の混合液を添加した。これらの混合物をヘンシェルミキサー内で混合し、1時間撹拌した。
次いで、得られた混合物をジェットミルで粉砕し、この粉砕粉を100°Cで乾燥することにより、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積とb
*
を測定した。結果を表1に示す。
【0138】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
39
119
0001434139000001.jpg
【0140】
表1の結果から、
実施例1~実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子は、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子と比較して、d50が小さく、紫外線遮蔽性に優れるとともに、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子と同等以上の透明性を有することが確認された
。
【0141】
[実施例5]
実施例1において、比表面積が21.3m
2
/g、b
*
が3.33の酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比表面積が5.1m
2
/g、b
*
が2.51の酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積とb
*
を測定した。結果を表2に示す。
【0142】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例5の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90を測定した。結果を表2に示す。
【0143】
[実施例6]
実施例1において、比表面積が21.3m
2
/g、b
*
が3.33の酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比表面積が7.4m
2
/g、b*が7.98の酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積とb
*
を測定した。結果を表2に示す。
【0144】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例6の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90を測定した。結果を表2に示す。
【0145】
[比較例3]
実施例5において、3時間分散処理する替わりに、5分分散処理した以外は実施例5と同様にして、比較例3の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
分散時における遠心力と分散時間の積(力積)は、実施例1の約40分の1であった。実施例1と同様にして、比表面積とb
*
を測定した。結果を表2に示す。
【0146】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例3の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90を測定した。結果を表2に示す
。
【0147】
【表2】
30
116
0001434139000002.jpg
【0148】
実施例5、実施例6の表面改質酸化亜鉛粒子は、比較例3の表面改質酸化亜鉛粒子と比較して、d50が小さいことが確認された。また、実施例5、実施例6の表面改質酸化亜鉛粒子は、比較例3よりも紫外線遮蔽性に優れ、比較例3と同等以上の透明性を有することが確認された
。
【0149】
「易分散性の評価」
実施例1~実施例6、比較例1~比較例3の表面改質酸化亜鉛粒子1gを、それぞれシクロペンタシロキサン20gが入ったスクリュー管に、静かに添加し、20分後のスクリュー管の様子を観察した。
その結果、実施例1~実施例6は、表面改質酸化亜鉛粒子が、全体的に分散しているのに対して、比較例1~比較例3の表面改質酸化亜鉛粒子は、多くの粒子が沈降しているのが確認された
。実施例4と比較例2の結果を、図1に示す。図1の右側のスクリュー管が実施例4で得られた表面改質酸化亜鉛粒子を含み、図1の左側のスクリュー管が比較例2で得られた表面改質酸化亜鉛粒子を含む。図1に示すように、実施例4では、表面改質酸化亜鉛粒子が、全体的に分散していることが確認された。一方、比較例2では、多くの表面改質酸化亜鉛粒子が沈降しているのが確認された。
すなわち、所定の条件で作製した分散液のd50が4μm以下となる、実施例1~実施例6の表面改質酸化亜鉛粒子は、化粧料を作製する時の分散エネルギーが小さくても、容易に分散媒中に分散することが分かった。」
(2)サポート要件についての判断
ア 上記(1)ア、イの記載からすると、本件発明において解決すべき課題(以下、単に「課題」という。)は、油性化粧料への配合が容易で、かつ、透明性と紫外線遮蔽性に優れる表面改質酸化亜鉛粒子を提供することと認められる。
イ ここで、上記第2に摘記したとおり、本件発明1は、「表面改質酸化亜鉛粒子」において、所定の方法で測定したときの粒径「d50」(以下、単に「d50」という。)が「2μm以下」であることを特定事項として含むものである。
ウ そして、上記(1)カに摘記した事項(特に、【0139】~【0140】、【0147】~【0149】)からすると、本件明細書に記載された実施例1~6は、いずれもオクチルトリエトキシシランで表面改質された酸化亜鉛粒子であって、d50は、いずれも2μm以下の0.18~0.48μmであるが、これらは紫外線遮蔽性及び透明性に優れ、かつ、油性化粧料において一般的に使用される溶媒であるシクロペンタシロキサン中に全体的に分散するものであるから、上記アに示した課題を解決することができるものと認められる。
エ 一方、本件明細書に記載された比較例1~3は、オクチルトリエトキシシランで表面改質された酸化亜鉛粒子であって、d50が2μmを超える、3.54~9.86μmであるが、比較例1、2は紫外線の透過率が高く、紫外線遮蔽性に劣ることが明らかである(【0139】~【0140】)。また、比較例1~3は、上記シクロペンタシロキサン中への分散を試みた際に、多くの粒子の沈降が生じるものであり(【0149】)、油性化粧料への配合が困難であることが明らかである。つまり、比較例1~3は、上記アに示した課題を解決することができないものと認められる。
オ また、上記(1)エ、オに示した【0026】や【0031】~【0032】には、表面に均一にシランカップリング剤が存在することで、透明性、紫外線遮蔽性、分散安定性に優れた酸化亜鉛粒子が得られること、d50の値はシランカップリング剤が酸化亜鉛粒子表面に均一に存在しているかどうかの指標と考え得ること、d50は小さい方が好ましいことが記載されており、本件明細書の記載から、d50が所定以下の表面改質酸化亜鉛粒子であれば、透明性、紫外線遮蔽性、分散安定性に優れたものとなることが理解される。
カ そして、本件発明1において特定された「d50が2μm以下」である表面改質酸化亜鉛粒子は、d50が課題を解決できない比較例として示された3.54μmを下回る2μmという上限値であるから、油性化粧料への配合が容易で、かつ、透明性と紫外線遮蔽性に優れるという上記課題を解決できることが推定され、本件発明1は、発明の詳細な説明において、上記アの課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
キ 上記カの点は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件発明2~6についても同様である。
(3)小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4、6の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由2、取消理由1によって、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
(1)請求項1には、「アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有」し、「前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であ」り、「粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下である」と、「表面改質酸化亜鉛粒子」なる物を特定するための事項が明確に記載されている。
また、上記「粒径d50」の測定方法についても、同請求項1に「表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロサン88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2gと、を混合して混合液を得て、 得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間分散処理した分散液を得て、 得られた分散液中の表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるようにシクロペンタシロキサンで希釈した測定液を作製し、得られた測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置でd50を測定する」と明確に記載されている。
したがって、本件特許の請求項1は、「表面改質酸化亜鉛粒子」なる物を特定するための事項が明確に記載されたものである。
(2)申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1の記載は「d50が4μm以下」であることを特定するものであるが、本件明細書には「d50が4μm以下」であっても、比較例3のように比較例となり得る旨が記載されているから、結局、本件発明1の権利範囲がどこからなのか不明であることを主張している。
しかし、上記(1)で述べたのと同様に、そもそも、本件訂正前の請求項1の記載は明確であったといえるし、本件訂正により請求項1の記載は「d50が2μm以下」であることを特定するものとなり、上記比較例3が本件発明1の特定事項を充足しないものとなったことも併せて考慮すれば、申立人の上記主張は、根拠を欠くものであるから採用することができない。
(3)上記(1)、(2)の点は、請求項1を直接または間接的に引用する本件発明2~6についても同様である。
(4)小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4、6の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由3によって、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
(1)本件発明1は、「粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下」という発明特定事項を備えた「表面改質酸化亜鉛粒子」に関するものである。そして、本件明細書の上記1(1)エ、オの【0026】、【0028】~【0032】等をみるに、「表面改質酸化亜鉛粒子」の粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50を、所定程度以下とするという技術内容により、「油性化粧料への配合が容易かつ透明性と紫外線遮蔽性に優れる」(【0150】)という効果を奏するものであることが把握され、当該技術内容が、当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的、客観的なものとして構成されていることは明らかであるから、未完成発明であるとはいえず、しかも、産業上利用することができるものであることは明らかであるから、本件発明1は、特許法第29条第1項柱書にいう「産業上利用することができる発明」に該当するものといえる。
(2)申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1に記載された「粒径d50が4μm以下」との規定を満たす表面改質酸化亜鉛粒子であっても、本件明細書の比較例3のように比較例となり得るものであり、本件訂正前の請求項1に係る発明は必須の構成要件を欠いており、未完成発明といえることを主張している。
しかし、上記(1)で述べたのと同様に、そもそも、本件訂正前の請求項1に係る発明は、未完成発明であったとはいえないし、本件訂正により、本件発明1は、「d50が2μm以下」である表面改質酸化亜鉛粒子に関するものとなり、上記比較例3が本件発明1の特定事項を充足しないものとなったことも併せて考慮すれば、申立人の上記主張は、根拠を欠くものであるから採用することができない。
(3)上記(1)、(2)の点は、請求項1を直接または間接的に引用する本件発明2~6についても同様である。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1~4、6は、産業上利用することができる発明に該当するものであり、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、申立理由4によって、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
(1)甲1発明
甲1に係る出願は、本願と同日に同一出願人により国際出願され、令和 6年 7月22日にその特許権の設定登録がされ、同年 7月30日に特許掲載公報が発行されたものである。そして、甲1の請求項1~6に係る発明は、甲1の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、以下において、甲1の請求項1~6に係る発明を、それぞれ、「甲1発明1」~「甲1発明6」といい、甲1発明3のうち請求項1を引用するものを「甲1発明3-1」、甲1発明3のうち請求項2を引用するものを「甲1発明3-2」等という。
「【請求項1】
アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であり、
下記式(1)中のAで示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下であることを特徴とする表面改質酸化亜鉛粒子。
W
2
=A・t (1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
【請求項2】
L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面改質酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有することを特徴とする分散液。
【請求項4】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項5】
アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子を用意する工程と、
前記表面改質酸化亜鉛粒子を評価して、下記式(1)中でAとして示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aを得て、前記Aが5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下の範囲内であるかどうか判定する工程と、
W
2
=A・t (1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
前記Aが前記範囲内である場合に、その表面改質酸化亜鉛粒子を選択する工程とを有する、請求項1の表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法。
【請求項6】
前記判定する工程が、
底面が濾紙である直径36mmの円筒セルと、シクロペンタシロキサンをいれた容器と、前記容器を昇降して前記シクロペンタシロキサンと前記濾紙に接触させる部材と、前記円筒セル又は前記シクロペンタシロキサンの重量の変化とその経過時間とを検知する装置と、を用意する工程と、
前記円筒セルに10gの表面改質酸化亜鉛粒子を入れた後に、シクロペンタシロキサンを前記濾紙に接触させて、前記セル又は前記シクロペンタシロキサンの重量変化とその経過時間とを測定する工程と、
前記重量変化、前記経過時間、及び前記式(1)から、Aの値を得る工程を含む、請求項
5
に記載の表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、両者は、
「アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である表面改質酸化亜鉛粒子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件発明1は「レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1はそのような特定をしていない点。
<相違点1-2>
甲1発明1は「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下である」と特定しているのに対し、本件発明1はそのような特定をしていない点。
イ 判断
(ア)上記相違点1-1について検討するに、甲1発明1においては、d50は不明であり、甲1の記載や出願時の技術常識を考慮しても、甲1発明1が本件発明1と同等のd50を備えたものと認められる根拠を見出せないことから、この点は実質的な相違点と認められる。
また、該相違点1-1が、前記1(2)アに示した課題を解決するための具体化手段における微差であるともいえない。
(イ)上記相違点1-2について検討するに、本件発明1においては、表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aは不明であり、本件明細書の記載や出願時の技術常識を考慮しても、本件発明1が甲1発明1と同等の浸透速度係数Aを備えたものと認められる根拠を見出せないことから、この点は実質的な相違点と認められる。
また、該相違点1-2が、前記1(2)アに示した課題を解決するための具体化手段における微差であるともいえない。
(ウ)申立人は、特許異議申立書において、本件特許において示された実施例1~4、及び、甲1に示された実施例1~4は、いずれも同一の手法で製造された表面改質酸化亜鉛粒子であり、測定されたd50、色度、直線透過、全透過についても全く同一であること等を挙げ、同じ表面改質酸化亜鉛粒子を、本件発明1では「d50」が所定範囲と特定し、甲1発明1では「浸透速度係数A」が所定範囲と特定したにすぎないことを主張している。
しかし、上記実施例は、本件発明1、甲1発明1に含まれる態様の一例を表すものにすぎず、本件発明1、甲1発明1には、これらの実施例以外にも様々な態様が含まれるものであるから、実施例が同一であることをもって、少なくとも、本件発明1と甲1発明1とが、共に「レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下である」なる特定事項、または、「シクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下」なる特定事項を備えているとはいえない。
(エ)したがって、本件発明1は甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1は本件発明1であるともいえない。
(オ)本件発明1と甲1発明2~4とを対比すると、以下の点で相違する。
<相違点1-3>
本件発明1は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に関し、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下である」と特定しているのに対し、甲1発明2~4は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-4>
甲1発明2~4は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に関し、「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下である」と特定しているのに対し、本件発明1は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-5>
本件発明1は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に係るものであるのに対し、甲1発明3は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する」「分散液」に係るものである点。
<相違点1-6>
本件発明1は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に係るものであるのに対し、甲1発明4は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有する」「化粧料」に係るものである点。
<相違点1-7>
甲1発明2、3-2、4-2は、「L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下である」と特定しているのに対し、本件発明1は、そのような特定をしていない点。
(カ)事案に鑑み、上記相違点1-3、1-4について検討するに、該相違点1-3、1-4は、それぞれ、上記相違点1-1、1-2と同様なものであるから、上記(ア)~(ウ)と同様に、実質的な相違点である。また、課題を解決するための具体化手段における微差であるともいえない。
(キ)したがって、相違点1-5~1-7について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明2~4であるとはいえないし、甲1発明2~4は本件発明1であるともいえない。
(3)本件発明2について
ア 本件発明2と甲1発明1~4とを対比すると、以下の点で相違する。
<相違点1-8>
本件発明2は「表面改質酸化亜鉛粒子」に関し、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1~4はそのような特定をしていない点。
<相違点1-9>
甲1発明1~4は「表面改質酸化亜鉛粒子」に関し、「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下である」と特定しているのに対し、本件発明2はそのような特定をしていない点。
<相違点1-10>
本件発明2は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に係るものであるのに対し、甲1発明3は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する」「分散液」に係るものである点。
<相違点1-11>
本件発明2は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に係るものであるのに対し、甲1発明4は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有する」「化粧料」に係るものである点。
<相違点1-12>
本件発明2は、「L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1、3-1、4-1は、そのような特定をしていない点。
イ 事案に鑑み、上記相違点1-8、1-9について検討するに、該相違点1-8、1-9は、それぞれ、上記相違点1-1、1-2と同様なものであるから、上記(2)イ(ア)~(ウ)と同様に、実質的な相違点であって、課題を解決するための具体化手段における微差であるともいえない。
ウ したがって、相違点1-10~1-12について検討するまでもなく、本件発明2は甲1発明1~4であるとはいえないし、甲1発明1~4は本件発明2であるともいえない。
(4)本件発明3について
ア 本件発明3と甲1発明1~4とを対比すると、以下の点で相違する。
<相違点1-13>
本件発明3は「表面改質酸化亜鉛粒子」に関し、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1~4はそのような特定をしていない点。
<相違点1-14>
甲1発明1~4は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に関し、「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下である」と特定しているのに対し、本件発明3は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-15>
本件発明3は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する」「分散液」に係るものであるのに対し、甲1発明1、2は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に係るものである点。
<相違点1-16>
本件発明3は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する」「分散液」に係るものであるのに対し、甲1発明4は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有する」「化粧料」に係るものである点。
<相違点1-17>
本件発明3-2は、「L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1、3-1、4-1は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-18>
甲1発明2、3-2、4-2は、「L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下である」と特定しているのに対し、本件発明3-1は、そのような特定をしていない点。
イ 事案に鑑み、上記相違点1-13、1-14について検討するに、該相違点1-13、1-14は、それぞれ、上記相違点1-1、1-2と同様なものであるから、上記(2)イ(ア)~(ウ)と同様に、実質的な相違点であって、課題を解決するための具体化手段における微差であるともいえない。
ウ したがって、相違点1-15~1-18について検討するまでもなく、本件発明3は甲1発明1~4であるとはいえないし、甲1発明1~4は本件発明3であるともいえない。
(5)本件発明4について
ア 本件発明4と甲1発明1~4とを対比すると、以下の点で相違する。
<相違点1-19>
本件発明4は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に関し、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1~4は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-20>
甲1発明1~4は、「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下である」と特定しているのに対し、本件発明4はそのような特定をしていない点。
<相違点1-21>
本件発明4は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有する」「化粧料」に係るものであるのに対し、甲1発明1、2は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に係るものである点。
<相違点1-22>
本件発明4は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有する」「化粧料」に係るものであるのに対し、甲1発明3は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する」「分散液」に係るものである点。
<相違点1-23>
本件発明4-2は、「L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1、3-1、4-1は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-24>
甲1発明2、3-2、4-2は、「L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下である」と特定しているのに対し、本件発明4-1は、そのような特定をしていない点。
イ 事案に鑑み、上記相違点1-19、1-20について検討するに、該相違点1-19、1-20は、それぞれ、上記相違点1-1、1-2と同様なものであるから、上記(2)イ(ア)~(ウ)と同様に、実質的な相違点であって、課題を解決するための具体化手段における微差であるともいえない。
ウ したがって、相違点1-21~1-24について検討するまでもなく、本件発明4は甲1発明1~4であるとはいえないし、甲1発明1~4は本件発明4であるともいえない。
(6)本件発明5について
ア 本件発明5と甲1発明1~6とを対比すると、以下の点で相違する。
<相違点1-25>
本件発明5は、「表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法」の対象となる「表面改質酸化亜鉛粒子」が「レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1~6は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-26>
甲1発明1~6は、「表面改質酸化亜鉛粒子」(甲1発明5、6における「表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法」の対象)が「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下である」と特定しているのに対し、本件発明5は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-27>
本件発明5は、「
表
面改質酸化亜鉛粒子の選択方法」において「アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子を用意し、前記表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロキサン88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2gと、を混合して混合液を得て、得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間分散処理した分散液を得て、得られた前記分散液中の前記表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるようにシクロペンタシロキサンで希釈した測定液を作製し、得られた測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50を測定し、前記d50が2μm以下であるかどうかを判定し、前記d50が2μm以下である場合に、その表面改質酸化亜鉛粒子を選択する」と特定しているのに対し、甲1発明1~6は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-28>
甲1発明5、6は、「
表
面改質酸化亜鉛粒子の選択方法」において「式(1)中でAとして示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aを得て、前記Aが、5.0×10
-2
g
2
/s以上かつ1.0×10
2
g
2
/s以下の範囲内であるかどうか判定する工程と、W
2
=A・t (1)(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)前記Aが前記範囲内である場合に、その表面改質酸化亜鉛粒子を選択する工程とを有する」と特定しているのに対し、本件発明5は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-29>
甲1発明6は、「表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法」において「前記判定する工程が、底面が濾紙である直径36mmの円筒セルと、シクロペンタシロキサンをいれた容器と、前記容器を昇降して前記シクロペンタシロキサンと前記濾紙に接触させる部材と、前記円筒セル又は前記シクロペンタシロキサンの重量の変化とその経過時間とを検知する装置と、を用意する工程と、前記円筒セルに10gの表面改質酸化亜鉛粒子を入れた後に、シクロペンタシロキサンを前記濾紙に接触させて、前記セル又は前記シクロペンタシロキサンの重量変化とその経過時間とを測定する工程と、前記重量変化、前記経過時間、及び前記式(1)から、Aの値を得る工程を含む」と特定しているのに対し、本件発明5は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-30>
本件発明5は、「表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法」に係るものであるのに対し、甲1発明1、2は、「表面改質酸化亜鉛粒子」に係るものである点。
<相違点1-31>
本件発明5は、「表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法」に係るものであるのに対し、甲1発明3は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有する」「分散液」に係るものである点。
<相違点1-32>
本件発明5は、「表面改質酸化亜鉛粒子の選択方法」に係るものであるのに対し、甲1発明4は、「表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有する」「化粧料」に係るものである点。
<相違点1-33>
本件発明5-2は、「L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1、3-1、4-1、5、6は、そのような特定をしていない点。
<相違点1-34>
甲1発明2、3-2、4-2は、「L
*
a
*
b
*
表色系色度図におけるb
*
が4.0以上かつ18以下である」と特定しているのに対し、本件発明5-1は、そのような特定をしていない点。
イ 事案に鑑み、上記相違点1-25、1-26について検討するに、該相違点1-25、1-26は、それぞれ、上記相違点1-1、1-2と実質同様なものであるから、上記(2)イ(ア)~(ウ)と同様に、実質的な相違点であって、課題を解決するための具体化手段における微差であるともいえない。
ウ したがって、相違点1-27~1-34について検討するまでもなく、本件発明5は甲1発明1~6であるとはいえないし、甲1発明1~6は本件発明5であるともいえない。
(7)小括
以上のとおり、本件発明1~4は、本願と同日出願された出願に係る特許である甲1の請求項1~4に係る発明と同一の発明であるとはいえないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
したがって、申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
(1)申立理由5-1、申立理由6-1(甲2を主たる引用文献とする新規性、進歩性)について
ア 甲2の記載事項、及び甲2に記載された発明
(ア)甲2の記載事項
本願の出願前に公知となった甲2には、「有機珪素化合物による処理粉体」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。
a 「【請求項1】
下記(1)~(3)から選ばれる有機珪素化合物で表面処理されている粉体粒子を、過熱水蒸気と接触させてなることを特徴とする処理粉体。
(1) Si-H基を1つ以上有するシリコーン化合物
(2) (1)のシリコーン化合物と、Si-H基を有していないシリコーン化合物との混合物
(3) 下記一般式(II)にて表されるアルコキシシラン:
R
n
Si(OR’)
4-n
(II)
[式中、Rは、炭素原子数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、フェニル基、又は、水素原子を表し、R’は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のヒドロキシアルキル基を表し、nは、1~3の数を表す]
・・・
【請求項6】
上記アルコキシシラン(II)が、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、又は、オクタデシルトリエトキシシランであることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の処理粉体。」
b 「【0001】
本発明は、特定の製造工程を経て得られる有機珪素化合物による処理粉体に関する発明である。当該処理粉体は、化粧料等の外用組成物の配合成分として非常に有益である。」
c 「【0009】
本発明が解決すべき課題は、上述のように、種々の問題を引き起こすことが知られている、有機珪素化合物による処理粉体におけるSi-H基や、アルコキシシランを用いた場合に残存するアルコキシ基の効率的な消去手段を確立して、いっそう優れた処理粉体を提供する手段を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題の解決のために鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、近年、調理分野で利用されつつある過熱水蒸気を用いることで、粉体に残存するSi-H基やアルコキシ基を効率的に消去し得ることを見出して本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
下記(1)~(3)から選ばれる有機珪素化合物で表面処理されている粉体粒子
を、過熱水蒸気と接触させてなることを特徴とする処理粉体(以下、本処理粉体ともいう)を提供する発明である。
(1) Si-H基を1つ以上有するシリコーン化合物
(2) (1)のシリコーン化合物と、Si-H基を有していないシリコーン化合物との混合物
(
3) 下記一般式(II)にて表されるアルコキシシラン:
R
n
Si(OR’)
4-n
(II)
[式中、Rは、炭素原子数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、フェニル基、又は、水素原子を表し、R’は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のヒドロキシアルキル基を表し、nは、1~3の数を表す]
【発明の効果】
【0012】
本処理粉体は、表面処理を行う有機珪素化合物として、上記(1)~(2)を用いた場合は、粉体に残存するSi-H基が効率的に消去され、(3)を用いた場合には、同アルコキシ基が効率的に消去される。その結果、本処理粉体においては、水素発生や臭いの発生が抑制されて、製品中における安定性に優れた疎水化処理粉体として用いることができるだけではなく、製造作業の環境を向上させることが可能である。さらに、本処理粉体は、それ自体、撥水性にも優れている。」
d 「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
核粒子
本発明では、有機珪素化合物(1)~(3)にて表面処理する対象となる粉体粒子を「核粒子」という。
【0014】
本発明で用いる核粒子の粒子径は、特に制限されるものではないが、一般に平均粒子径150μm以下(150μmより大きいものも含まれることがある)の任意に選択される種類の粉体粒子である。また、平均粒子径が0.02μm以下の超微粉体粒子を選択することも可能である(例えば、二酸化チタン粒子であれば、平均粒子径が0.001~1μm程度であることが好適である)。
【0015】
上記
核粒子の素材も特に制限されず、例えば、無機系粉体であれば、
タルク、セリサイト、マイカ、無水ケイ酸、窒化ホウ素、合成マイカ、二酸化チタン、低次酸化チタン、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、赤酸化鉄、雲母チタン、雲母、黒酸化チタン、コンジョウ、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、
酸化亜鉛
、アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、チタン酸鉄、チタン酸コバルト、リチウムコバルトチタネート、アルミン酸コバルト、オキシ酸ビスマス
、等が挙げられる
。有機系粉体であれば、例えば、セルロース末、デンプン、シルク末、ナイロン末、ポリアクリル酸、アルキル末、ポリエチレン末、金属石鹸、ポリスチレン末、シリコーン末、弾性ゴム粉末、シリカアルミナ、魚鱗末、色素(タール系色素、レーキ:染料・顔料)が挙げられる。」
e 「【0022】
(3)
有機珪素化合物(3)は、上述したように、下記一般式(II)にて表されるアルコキシシランである。
R
n
Si(OR’)
4-n
(II)
[式中、Rは、炭素原子数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、フェニル基、又は、水素原子を表し、R’は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のヒドロキシアルキル基を表し、nは、1~3の数を表す]
【0023】
Rは、直鎖のアルキル基であることが好適であり、特に、炭素原子数が6以上であることが好適である。また、R’は、メチル基又はエチル基が好適である。nは、1であることが好適である。
【0024】
アルコキシシラン(II)のさらなる具体例としては、
例えば、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、
オクチルトリエトキシシラン
、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン
を挙げることができる
。
【0025】
有機珪素化合物による表面処理
核粒子に対する上記有機珪素化合物(1)~(3)による表面処理は、常法に従って行うことができる。すなわち、有機珪素化合物(1)~(3)を、それ自体の蒸気の形態、適当な溶媒に溶かした溶液の形態、またはそれ自体の液体の形態で、核粒子と接触させることにより、シリコーンの表面処理粉体を製造することができる。
・・・
【0028】
有機珪素化合物(1)~(3)を、溶液として核粒子と接触させる場合、例えば、アルコール類、水、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の溶媒中に、当該有機珪素化合物を0.3~50重量%を含有する溶液を調製し、その中に核粒子を分散後加熱して、溶媒を蒸発させると共に有機珪素化合物を、核粒子の表面上で重合させることにより処理可能であり、かかる工程は、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、ニーダー、媒体攪拌ミル(ビーズミル等)等を用いて行うことができる。」
f 「【0088】
実施例4-1
テフロン(登録商標)製1Lカップに、
微粒子二酸化チタン(平均粒子径:0.01μm)100g、イソプロピルアルコール300g、オクチルトリエトキシシラン7g及びビーズミル(直径1mmΦのジルコニアビーズ)を200g入れ、ラボ分散機(VMA-GETZMANN GMBH製、DISPERMAT)にて室温で1時間攪拌・混合した。その後、ジルコニアビーズを篩い分けしたスラリーをヘンシェルミキサーに入れ、さらに減圧しながら攪拌することで溶媒であるイソプロピルア ルコールを蒸発させた
。その後、第一高周波工業製、DHF-Super-Hiにより150°Cに調整した過 熱水蒸気を、5kg/hで当該容器に導入し、そのまま容器内を120~150°Cに保ち攪拌しながら2時間処理することで、処理粉体を得た。
【0089】
実施例4-2
実施例4-1の粉体を微粒子酸化亜鉛(平均粒子径:0.05μm)に代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た
。」
(イ) 甲2に記載された発明
上記(ア)に摘記した記載事項を総合勘案し、特に、実施例4-2として記載された処理粉体に着目すると、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。
「平均粒子径0.05μmの微粒子酸化亜鉛100g、イソプロピルアルコール300g、オクチルトリエトキシシラン7g及びビーズミル(直径1mmΦのジルコニアビーズ)を200g入れ、ラボ分散機にて室温で1時間攪拌・混合し、その後、ジルコニアビーズを篩い分けしたスラリーをヘンシェルミキサーに入れ、さらに減圧しながら攪拌することで溶媒であるイソプロピルアルコールを蒸発させ、その後、150°Cに調整した過熱水蒸気を、5kg/hで導入し、120~150°Cに保ち攪拌しながら2時間処理することで得た処理粉体。」(以下「甲2発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明の「オクチルトリエトキシシラン」は、本件発明1の「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」であって、「前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であ」るものに相当する。
b 甲2発明の「処理粉体」は、微粒子酸化亜鉛を、イソプロピルアルコール、オクチルトリエトキシシラン及びビーズミルとともに、ラボ分散機にて室温で1時間攪拌・混合し、その後、ジルコニアビーズを篩い分けしたスラリーをヘンシェルミキサーに入れ、さらに減圧しながら攪拌することで溶媒であるイソプロピルアルコールを蒸発させ、その後、150°Cに調整した過熱水蒸気下で攪拌しながら2時間処理されることで形成されるものであり、上記攪拌・混合等の処理により、微粒子酸化亜鉛の表面には、オクチルトリエトキシシランが存在し、該オクチルトリエトキシシランによって改質された状態となっているものと認められる。
したがって、甲2発明の「処理粉体」は、「オクチルトリエトキシシラン」、すなわち「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」を「表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子」に相当する。
c そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする表面改質酸化亜鉛粒子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件発明1では、「以下の測定方法で、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下であ」り、「(測定方法) 表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロキサン88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2gと、を混合して混合液を得て、 得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間分散処理した分散液を得て、 得られた分散液中の表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるようにシクロペンタシロキサンで希釈した測定液を作製し、 得られた測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置でd50を測定する。」と特定されているのに対して、甲2発明では、d50に関するそのような特定がなされていない点。
(イ)相違点についての判断
a 相違点2-1が実質的な相違点であるかについて
(a)上記1(1)カをみるに、本件明細書には、本件発明1の「d50が2μm以下である」「表面改質酸化亜鉛粒子」は、比表面積5.1~43.6m
2
/gの酸化亜鉛粒子を、オクチルトリエトキシシラン、純水、イソプロピルアルコールと混合し、回転数2500rpmで3~9時間ビーズミルで撹拌した後、ビーズを除去、乾燥して製造されることが記載されている。
(b)一方、上記ア(ア)fをみるに、甲2には、甲2発明の「処理粉体」は、平均粒子径0.05μmの微粒子酸化亜鉛を、オクチルトリエトキシシラン、イソプロピルアルコールと混合し、1時間ビーズミルで撹拌・混合した後、ビーズを除去、乾燥する工程を経て製造されることが記載されている。
ここで、甲2発明の上記微粒子酸化亜鉛が略球形であると仮定すれば、その比表面積は約21.4m
2
/gとなり、上記(a)で示した本件明細書の実施例に記載された態様の数値範囲に含まれる。しかし、甲2発明の上記撹拌・混合の際におけるビーズミルの回転速度は不明である上、表面処理溶液の組成も異なっており、撹拌時間についても、本件明細書に記載されたものよりも短いから、このような手法により製造された甲2発明の「処理粉体」が、本件発明1と同様なd50を有しているとはいえない。
したがって、上記相違点2-1は、実質的な相違点である。
(c)以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明であるとはいえない。
b 相違点2-1の容易想到性について
(a)甲2には、処理前の粉体の粒子径につき「一般に平均粒子径150μm以下(150μmより大きいものも含まれることがある)」との記載はある(【0014】)が、表面処理された後における酸化亜鉛粒子のd50に着目した記載は見当たらないし、本願出願時の技術常識を考慮しても、表面処理された後における上記d50を所定値以下に設定する動機付けがあるとはいえない。
また、甲2の記載や本願出願時における技術常識を考慮しても、上記(イ)bにおける撹拌・混合に際して、その回転数や表面処理溶液の組成、時間を変更する動機付けも特段存在しない。
そうすると、甲2発明において、上記相違点2-1に係る特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(b)したがって、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明2~6について
本件特許の請求項2~6は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。
そして、上記イのとおり、本件発明1が甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、同様に、本件発明2~6も、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(2)申立理由5-2、申立理由6-2(甲3を主たる引用文献とする新規性、進歩性)について
ア 甲3の記載事項、及び甲3に記載された発明
(ア)甲3の記載事項
本願の出願前に公知となった甲3には、「微粒子酸化亜鉛分散物及びそれを含む化粧料」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。
a 「【請求項1】
一次粒子径15~55nmである微粒子酸化亜鉛が、疎水性分散媒中に平均分散粒子径70~140nmで分散していることを特徴とする微粒子酸化亜鉛分散物。」
b 「【0001】
本発明は微粒子酸化亜鉛分散物及びそれを含む化粧料、特に微粒子酸化亜鉛を油性分散媒中に分散させた微粒子酸化亜鉛分散物に関する
。」
c 「【0005】
しかしながら、可視光の散乱能が小さい粒子径範囲では、可視光のみならず紫外線散乱能も小さいことが多く、高い透明性と優れた紫外線遮蔽能とを両立させることは困難であった。
また、微粒子酸化亜鉛は粒子間の凝集力が強く、いくら一次粒子径を細かくしても、組成物中で凝集して大きな二次粒子を形成してしまうことが多く、化粧料に使用すると色がくすんで透明感が損なわれたり、塗布時の伸びが悪くなったり、あるいは例え配合量を増加させても期待する紫外線防止効果が得られないことがあった。
本発明の目的は、透明感のある自然な仕上がり感が得られ、UVA・UVB両域において優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性の良い微粒子酸化亜鉛分散物を提供する
ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情を鑑み、本発明者等が鋭意検討を行った結果、一次粒子径と分散粒子径の両方を特定することにより、透明感を有しながらもUVA・UVB両域における紫外線防御能に優れ、しかも再凝集を生じにくく経時安定性の良い微粒子酸化亜鉛分散物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の主題は、一次粒子径が15~55nmである微粒子酸化亜鉛が、疎水性分散媒中に平均分散粒子径70~140nmで分散していることを特徴とする微粒子酸化亜鉛分散物である。」
d 「【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
1.微粒子酸化亜鉛分散物
本発明の微粒子酸化亜鉛分散物は、一次粒子径15~55nmの微粒子酸化亜鉛を、疎水性分散媒中に平均分散粒子径70~140nmで分散させたものである。
[微粒子酸化亜鉛]
本発明における微粒子酸化亜鉛は、一次粒子径15~55nmであることを特徴とする。これより大きくても小さくても紫外線遮蔽効果が低くなり、配合量を増量する必要がでてくる。また、粒子径が小さすぎると、粒子間の凝集力が強く、分散が困難になる。
微粒子酸化亜鉛の形状及び結晶状態は任意であり、目的に応じて選択すればよい。例えば、粒(球)状、板状、薄片状等の形状のものを適宜使用できる。また、フランス法、アメリカ法、湿式法、その他何れの方法で製造された酸化亜鉛であってもよい。
微粒子酸化亜鉛の一次粒子径として、さらに好ましくは20~50nmである。
【0010】
微粒子酸化亜鉛は、必要に応じて公知の方法にて表面を疎水化して用いることもできる
。
疎水化処理剤としては、特に限定されず、
通常公知の疎水化処理剤を用いることができる。具体的には、
ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン化合物;パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル基を有する重合体等のフッ素化合物;流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等の油剤;ラウリン酸、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート等の有機チタネート化合物;パーフルオロアルキルシラン、
オクチルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる
。」
e 「【0033】
試験例1 粒子径
下記分散用組成で、
各種の一次粒径を有する市販の疎水化処理酸化亜鉛1~7を用い、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製、メディアに直径0.3mmのジルコニアビーズを使用)、又はホモミキサー処理[TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社)]で分散処理を行った。
分散用組成(1):
デカメチルシクロペンタシロキサン 50質量%
分散剤(両末端シリコーン化ポリグリセリン) 10
酸化亜鉛 40
計100
【0034】
得られた分散物をデカメチルシクロペンタシロキサンで酸化亜鉛濃度が10質量%となるように希釈して、評価を行った。結果を表1に示す。なお、試験例1-1~1-7はペイントシェーカー処理、試験例1-8は試験例1-1と同じ組成でホモミキサー処理した結果である。
(表1)
49
116
0001434139000003.jpg
【0035】
一次粒径が大きい場合(試料1-6~1-7)には透明性が低かった。これらにおいて、透明性を得ようとして分散時間を長くしても、分散粒子径はほとんど変化せず、透明性も低いままであった。
また、試料1-8のように、ホモミキサー処理のような分散力に欠ける処理であると、一次粒子径が小さくても分散が不十分で平均分散粒子径が大きいままとなり、やはりUV防御能や透明性において十分な効果が得られなかった。
また、何れの試験例においても、平均分散粒子径を70nm未満とするには、分散時間がかかりすぎて現実的でなく、かえって再凝集することがあった。
これらの結果から、一次粒子径が15~55nmの範囲の微粒子酸化亜鉛を、分散粒子径が70~140nmとした場合に、優れた透明感と、高いUV-B・UV-A防御能とを両立した安定な微粒子酸化亜鉛分散物を得られることが示唆された。
【0036】
微粒子酸化亜鉛の一次粒子径が上記範囲よりも小さい場合には、分散粒子径を70~110nmとしてもUVA遮蔽力が十分でない。また、粒子間の凝集力も強くなる。一方、微粒子酸化亜鉛の一次粒子径が上記範囲よりも大きい場合には、一次粒子にまで分散して分散粒子径70~110nmとすることが現実的に困難となり、透明性やUV遮蔽力も十分でない。
透明感と紫外線防御効果とを両立させようとする場合、酸化亜鉛の一次粒子径をなるべく細かくして高分散させ、化粧料中に多量に配合できるようにするのが一般的な技術である。これに対して本発明においては、一定範囲の一次粒子径を有する微粒子酸化亜鉛を適度に分散させることにより、例え少量の配合でも透明感と紫外線防御効果との両立に成功したものである。」
(イ)甲3に記載された発明
上記(ア)dに示した【0010】の「微粒子酸化亜鉛は、必要に応じて公知の方法にて表面を疎水化して用いることもできる」なる記載や、「疎水化処理剤としては、特に限定されず、通常公知の疎水化処理剤を用いることができる」なる記載、出願時の技術常識を併せて鑑みるに、甲3に試験例1として記載された「市販の疎水化処理酸化亜鉛」は、何らかの疎水化処理剤で疎水化された酸化亜鉛と解される。
したがって、上記(ア)に摘記した記載事項を総合勘案し、特に、試験例1として記載された疎水化処理酸化亜鉛に注目すると、甲3には、次の発明が記載されていると認められる。
「一次粒子径15~55nmであり、疎水化処理剤で疎水化された微粒子酸化亜鉛。」(以下「甲3発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
a 甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」は、本件発明1の「酸化亜鉛粒子」に相当する。
b 甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」は、何らかの疎水化処理剤で疎水化されたものであり、その表面が疎水化処理剤の存在により改質されていると認められる。したがって、甲3発明の「疎水化処理剤で疎水化された微粒子酸化亜鉛」は、何らかの「剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子」である点で、本件発明1と共通するものである。
c そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件発明1では、酸化亜鉛粒子表面に「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」を有し、「前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であ」るのに対し、甲3発明では、そのような特定がなされていない点。
<相違点3-2>
本件発明1では、「以下の測定方法で、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下であ」り、「(測定方法) 表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロキサン88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2gと、を混合して混合液を得て、 得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間分散処理した分散液を得て、 得られた分散液中の表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるようにシクロペンタシロキサンで希釈した測定液を作製し、 得られた測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置でd50を測定する。」と特定されているのに対して、甲3発明では、d50に関するそのような特定がなされていない点。
(イ)相違点についての判断
a 相違点3-1が実質的な相違点であるかについて
(a)甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」は、何らかの疎水化処理剤で表面が疎水化されたものであるが、該「疎水化処理剤」が何であるのかは不明である。
(b)ここで、該「疎水化処理剤」に関し、甲3には、上記ア(ア)dに示したように、「特に限定されず、通常公知の疎水化処理剤を用いることができる」こと、及び、「具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン化合物;パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル基を有する重合体等のフッ素化合物;流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等の油剤;ラウリン酸、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート等の有機チタネート化合物;パーフルオロアルキルシラン、オクチルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる」ことが記載されている。
しかし、試験例1に基づいて認定した甲3発明において、これらのうちどのような疎水化処理剤が用いられたのかは全く不明である。
(c)したがって、上記相違点3-1は、実質的な相違点である。
b 相違点3-1の容易想到性について
(a)甲3には、上記ア(ア)dに示されるように、「疎水化処理剤」に関し、本件発明1の「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」であって「前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であ」るもののうち、「オクチルトリエトキシシラン」が例示されている。
しかし、甲3の記載や本願出願時における技術常識を考慮しても、甲3発明において、甲3に例示された疎水化処理剤のうち、「オクチルトリエトキシシラン」を選択して用いようとする動機付けは特段存在しない。
(b)そうすると、甲3発明において、上記相違点3-1に係る特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
c 相違点3-2が実質的な相違点であるかについて
(a)甲3には、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が2μm以下であ」ることについて特段の記載がなく、本願出願時の技術常識を考慮しても、甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」が上記相違点3-2に係る本件発明1の特定事項を備えているとは認められない。
(b)この点につき、さらに検討するに、上記1(1)カをみるに、本件明細書には、本件発明1の「d50が2μm以下」である「表面改質酸化亜鉛粒子」は、比表面積5.1~43.6m
2
/gの酸化亜鉛粒子を、オクチルトリエトキシシラン、純水、イソプロピルアルコールと混合し、回転数2500rpmで3~9時間ビーズミルで撹拌した後、ビーズを除去、乾燥して製造されることが記載されている。
(c)一方、上記ア(ア)dをみるに、甲3には、甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」が、何らかの疎水化処理剤で疎水化されたものであり、その表面が疎水化処理剤の存在により改質されているものであることは示されている。しかし、該疎水化に際しての処理条件は全く不明であり、このことからも、甲3発明が本件発明1と同様なd50を有しているとはいえない。
(d)したがって、上記相違点3-2は、実質的な相違点である。
d 相違点3-2の容易想到性について
甲3には、疎水化処理された微粒子酸化亜鉛の「d50」に着目した記載は見当たらないし、本願出願時の技術常識を考慮しても、上記「d50」を所定の範囲にする設定する動機付けがあるとはいえない。
また、甲3の記載や本願出願時における技術常識を考慮しても、疎水化処理の諸条件を変更する動機付けも特段存在しない。
そうすると、甲3発明において、上記相違点3-2に係る特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
e 上記a~dにより、本件発明1は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
ウ 本件発明2~6について
本件特許の請求項2~6は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。
そして、上記イのとおり、本件発明1が甲3発明ではなく、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、同様に、本件発明2~6も、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~4、6は、甲2または甲3に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しないものである。
また、本件発明1~4、6は、甲2または甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
したがって、申立理由5、6によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
以上のとおりであるから、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~4、6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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