sokuhyo

Trademark Appeal Case

特許訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700193
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7541611号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第7541611号の請求項1-4、6に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7541611号の請求項1~6に係る特許(以下、「本件特許」ともいう。)についての出願は、令和2年 6月 2日を出願日とする特願2020-96051号の一部を新たな特許出願として令和5年12月22日に出願されたものであり、令和6年 8月20日にその特許権の設定登録がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行された。

本件特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和7年 2月13日 :特許異議申立人 山田 彰彦(以下、「異議申立人1」という。)による請求項1~4、6に係る特許に対する特許異議の申立て

令和7年 2月28日 :特許異議申立人 平居 博美(以下、「異議申立人2」という。)による請求項1~4、6に係る特許に対する特許異議の申立て

同年 5月 9日付け:取消理由通知

同年 7月10日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出

同年 7月17日 :特許権者による訂正請求書に対する手続補正書(方式)の提出

同年 8月28日 :異議申立人1による意見書の提出

なお、令和7年 7月10日提出の訂正請求書に対して、異議申立人1、異議申立人2に期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、異議申立人2からは指定期間内に意見書は提出されなかった。

第2 本件訂正の適否についての判断

1 本件訂正の内容

令和7年 7月10日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「前記低誘電シリカ粉体の最大粒径が100μm以下であり、カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものであることを特徴とする低誘電シリカ粉体(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体を除く)。」と記載されているのを、「前記低誘電シリカ粉体の最大粒径が100μm以下であり、カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものであ

り、石英由来であ

ることを特徴とする低誘電シリカ粉体(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体

、及び中空シリカ粒子

を除く)。」に訂正する。

(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する。)

2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正事項1の「石英由来である」について

(ア)本件訂正後の請求項1で「低誘電シリカ粉体」を「石英由来である」ものに限定することは、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)本件明細書の【0044】の「本発明の低誘電シリカ粉体の原料となるシリカ粉体としては、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末を2000°C程度の高温の火炎中を通すことで球状化した溶融シリカ粉体、水ガラスを原料として高純度化し高温で焼結させ粉砕したシリカ粉体、などが使用可能であるが、シリカ粉体であれば特に上記した製法に関係なく使用することができる。」との記載によれば、低誘電シリカ粉体は、石英由来であることが記載されているといえる。

そうすると、訂正事項1の「石英由来である」については、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

イ 訂正事項1の「中空シリカ粒子を除く」について

(ア)本件訂正後の請求項1で「低誘電シリカ粉体」を「前記低誘電シリカ粉体のうち、」「

中空シリカ粒子

を除く」ものに限定することは、「低誘電体シリカ粉体」から、低誘電体シリカ粉体に含まれる「中空シリカ粒子」を除いて低誘電シリカ粉体を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)異議申立人2から提出された甲第2号証(特開2012-136363号公報)には、下記の第7の1(2)アの【請求項1】に「レーザ回折/散乱法によって測定される体積平均粒子径が0.05~0.45μmで、最大粒子径が体積平均粒子径の5倍以内であり、空孔率が20~70体積%、BET比表面積が30m

2

/g未満、98質量%以上がSiO

2

である中空シリカ粒子。」との記載がある。

そして、上記(ア)で検討したとおり、訂正事項1の「中空シリカ粒子を除く」については、「低誘電体シリカ粉体」から、低誘電体シリカ粉体に含まれる「中空シリカ粒子」を除いて低誘電シリカ粉体を限定するものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

3 特許出願の際に独立して特許を受けることができること

訂正事項1は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~6についても同様に訂正するものであるが、そのうちの請求項5については、特許異議の申し立てがされていない請求項であるから、特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて検討する。

下記の第9で述べるように、訂正後の請求項5が引用する訂正後の請求項1に係る特許を取り消すべき理由は発見されず、また他に訂正後の請求項5に係る特許を取り消すべき理由も発見しないから、訂正後の請求項5に係る発明が、独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。

4 まとめ

本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正を認める。

第3 本件発明

本件訂正の請求により訂正された請求項1~4、6の特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明4」、「本件発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4、6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】

平均粒径が0.1~30μmであり、誘電正接(10GHz)が0.0004以下の低誘電シリカ粉体であって、

前記低誘電シリカ粉体の最大粒径が100μm以下であり、カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものであり、石英由来であることを特徴とする低誘電シリカ粉体(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体、及び中空シリカ粒子を除く)。

【請求項2】

前記低誘電シリカ粉体の内部及び表面に、アルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属及び/又はその酸化物がそれぞれ金属質量換算で200ppm以下、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のそれぞれが質量換算で10ppm以下のものであることを特徴とする請求項1に記載の低誘電シリカ粉体。

【請求項3】

前記低誘電シリカ粉体の水酸基(Si-OH)含有量が300ppm以下のものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の低誘電シリカ粉体。

【請求項4】

Bの含有量が1ppm以下、Pの含有量が1ppm以下、UおよびThの含有量がそれぞれ0.1ppb以下のものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の低誘電シリカ粉体。」

「【請求項6】

請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の低誘電シリカ粉体と樹脂との混合物であることを特徴とする低誘電シリカ粉体含有樹脂組成物。」

第4 申立理由の概要

1 異議申立人1による特許異議の申立理由の概要

異議申立人1は、証拠として甲第1号証、甲第1号証の公表公報、甲第2号証~甲第9号証を提出し、以下の理由により、設定登録時の請求項1~4、6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1)申立理由1(拡大先願)(以下、「申立理由1-1」という。)

設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、本件特許の出願日前を優先日とする他の特許出願(甲第1号証)であって、本件特許の出願日後に国際公開(国際公開第2021/164124号)がされた他の特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

[証拠方法]

甲第1号証 :国際公開第2021/164124号(先願:PCT/CN2020/086980号)

甲第1号証の公表公報:特表2023-514317号公報

甲第2号証 :特開2012-6783号公報

甲第3号証 :特開2003-192332号公報

甲第4号証 :特開2003-277044号公報

甲第5号証 :特開2012-206870号公報

甲第6号証 :国際公開第2019/167618号

甲第7号証 :特開2007-70159号公報

甲第8号証 :特開平9-89224号公報

甲第9号証 :特開平5-170483号公報

以下、異議申立人1により提出された甲第1号証、甲第2号証などを「甲1-1」、「甲2-1」などという。

2 異議申立人2による特許異議の申立理由の概要

異議申立人2は、証拠として甲第1号証~甲第4号証を提出し、以下の理由により、設定登録時の請求項1~4、6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1)申立理由1(実施可能要件及びサポート要件)(以下、「申立理由1-2」という。)

本件特許明細書の発明の詳細な説明は、後述する第8の1の点で不備のため、当業者が設定登録時の請求項1~4、6に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

また、設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、後述する第8の1の点で不備のため、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(2)申立理由2(新規性及び進歩性)(以下、「申立理由2-2」という。)

設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、設定登録時の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、設定登録時の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)申立理由3(新規性及び進歩性)(以下、「申立理由3-2」という。)

設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、設定登録時の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、設定登録時の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)申立理由4(進歩性)(以下、「申立理由4-2」という。)

設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、及び甲第4号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、設定登録時の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

[証拠方法]

甲第1号証 :国際公開第2018/096876号

甲第2号証 :特開2012-136363号公報

甲第3号証 :特許6564517号公報

甲第4号証 :特開2020-079165号公報

以下、異議申立人2により提出された甲第1号証、甲第2号証などを「甲1-2」、「甲2-2」などという。

第5 取消理由の概要

当審において、令和7年 5月 9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1 取消理由1(新規性欠如)

設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、甲2-2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、設定登録時の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

2 取消理由2(進歩性欠如)

設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、甲2-2に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、設定登録時の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 取消理由3(拡大先願)

設定登録時の請求項1~4、6に係る発明は、本件特許の出願日前を優先日とする他の特許出願(甲1-1)であって、本件特許の出願日後に国際公開(国際公開第2021/164124号)がされた他の特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第6 拡大先願(取消理由3、申立理由1-1)についての当審の判断

1 異議申立人1により提出された甲1-1~甲9-1に記載された事項

(1)甲1-1に記載の事項

甲1-1である先願(PCT/CN2020/086980号)は、2020年 4月26日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2020年 2月17日 中国(CN))を国際出願日として出願され、本件特許の出願日後の2021年8月26日に国際公開され(国際公開第2021/164124号)、その後、特許法184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願であって、その国際出願日における明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。そして、上記国際公開の記載は、国際出願日における「先願明細書等」の記載と一致しているといえるので、以降、当該国際公開の記載を「先願明細書等」とする。

また、本件特許の発明者が先願に係る発明をした者と同一の者ではなく、また本件特許の出願の時に、その出願人が先願の出願人と同一の者でもない。

以下に記載した先願明細書等に記載された事項については、先願明細書等の翻訳文が記載されている特表2023-514317号公報(甲1-1の公表公報)の段落番号を【・・・】と訳文をもって示した。なお、先願明細書等である甲1-1における該当する段落番号と、甲1-1の公表公報の段落番号は一致している。

甲1-1の公表公報には、「球状シリカ粉末充填剤の調製方法、これによって得られた粉末充填剤およびその使用」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

ア 「【請求項1】

球状シリカ粉末充填剤の調製方法であって、

当該調製方法は、

R

1

SiX

3

の加水分解凝縮反応によって、T単位を含む球状ポリシロキサン(polysiloxane)を提供し、ここで、R

1

は、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な有機基であり、Xは、加水分解性基であり、T単位は、R

1

SiO

3

-である段階S1と、および

乾燥酸化ガス雰囲気条件下で球状ポリシロキサンをか焼し、か焼温度は、850度~1200度の間であり、低ヒドロキシル基含有量の球状シリカ粉末充填剤を得、当該球状シリカ粉末充填剤は、Q

1

単位、Q

2

単位、Q

3

単位およびQ

4

単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q

1

単位は、Si(OH)

3

O-であり、Q

2

単位は、Si(OH)

2

O

2

-であり、Q

3

単位は、SiOHO

3

-であり、Q

4

単位は、SiO

4

-であり、Q

4

単位の含有量は、95%より大きいか同じである段階S2とを含むことを特徴とする、調製方法。

【請求項2】

加水分解性基は、アルコキシ基(alkoxy group)またはハロゲン(halogen)原子であることを特徴とする

請求項1に記載の調製方法。

【請求項3】

酸化ガスには酸素ガスが含まれて、ポリシロキサン中の有機物を完全に酸化させることを特徴とする

請求項1に記載の調製方法。

【請求項4】

電気加熱またはガス間接加熱によって、球状ポリシロキサンのか焼を達成することを特徴とする

請求項1に記載の調製方法。

【請求項5】

か焼温度は、850度~1100度の間であり、か焼時間は、6時間~12時間の間であることを特徴とする

請求項1に記載の調製方法。

【請求項6】

当該球状ポリシロキサンは、Q単位、D単位、および/またはM単位をさらに含み、ここで、Q単位=SiO

4

-であり、D単位=R

2

R

3

SiO

2

-であり、M単位=R

4

R

5

R

6

SiO

2

-であり、R

2

、R

3

、R

4

、R

5

およびR

6

は、それぞれ、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な炭化水素基であることを特徴とする

請求項1に記載の調製方法。

【請求項7】

当該調製方法は、処理剤を加えて球状シリカ粉末充填剤に対して表面処理を実行する段階をさらに含み、当該処理剤は、シランカップリング剤(Silane coupling agent)および/またはジシラザン(Disilazane)を含み、当該シランカップリング剤は、(R

7

)

a

(R

8

)

b

Si(M)

4-a-b

であり、R

7

およびR

8

は、炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な炭化水素基、水素原子、または官能基によって置換された炭素原子が1乃至18である炭化水素基であり、当該官能基は、ビニル基(vinyl group)、アリル基(allyl group)、スチリル基(styryl group)、エポキシ基(epoxy group)、脂肪族アミノ基(aliphatic amino group)、芳香族アミノ基(aromatic amino group)、メタクリロキシプロピル基(methacryloxypropyl group)、アクリロキシプロピル基(acryloxypropyl group)、ウレイドプロピル基(ureidopropyl group)、クロロプロピル基(chloropropyl group)、メルカプトプロピル基(mercaptopropyl group)、ポリスルフィド基(Polysulfide group)およびイソシアナートプロピル基(isocyanate propyl group)のような有機官能基からなる群から少なくとも一つが選択され、Mは、炭素原子が1乃至18であるアルコキシ基またはハロゲン原子であり、a=0、1、2または3であり、b=0、1、2または3であり、a+b=1、2または3であり、当該ジシラザンは、(R

9

R

10

R

11

)SiNHSi(R

12

R

13

R

14

)であり、R

9

、R

10

、R

11

、R

12

、R

13

およびR

14

は、炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な炭化水素基または水素原子であることを特徴とする

請求項1に記載の調製方法。

【請求項8】

請求項1~7のいずれか1項に記載の調製方法によって得られた球状シリカ粉末充填剤であって、

当該球状シリカ粉末充填剤のヒドロキシル基の含有量は、低く、球状シリカ粉末充填剤の平均粒子径は、0.1μm~5μmの間であることを特徴とする、球状シリカ粉末充填剤。

【請求項9】

請求項8に記載の球状シリカ粉末充填剤の使用であって、

異なる粒子径の球状シリカ粉末充填剤を樹脂に緊密に充填およびグラデーション(gradation)して、回路基板材料および半導体パッケージング材料に適した複合材料を形成することを特徴とする、球状シリカ粉末充填剤の使用。

【請求項10】

当該使用は、乾式または湿式のふるい分けまたは慣性分級を使用して、球状シリカ粉末充填剤中の1μm、3μm、5μm、10μm、20μm以上の粗大粒子を除去することを特徴とする

請求項9に記載の球状シリカ粉末充填剤の使用。」

イ 「【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

従来技術におけるシリカ粉末充填剤中のより高いヒドロキシル基含有量を有するシリカ粒子の問題を解決するために、本発明は、球状シリカ粉末充填剤の調製方法、これによって得られた粉末充填剤およびその使用を提供する。

【課題を解決するための手段】

【0005】

本発明は、R

1

SiX

3

の加水分解凝縮反応によって、T単位を含む球状ポリシロキサン(polysiloxane)を提供し、ここで、R

1

は、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な有機基であり、Xは、加水分解性基であり、T単位は、R1SiO

3

-である段階S1と、および乾燥酸化ガス雰囲気条件下で球状ポリシロキサンをか焼し、か焼温度は、850度~1200度の間であり、低ヒドロキシル基含有量の球状シリカ粉末充填剤を得、当該球状シリカ粉末充填剤は、Q

1

単位、Q

2

単位、Q

3

単位およびQ

4

単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q

1

単位は、Si(OH)

3

O-であり、Q

2

単位は、Si(OH)

2

O

2

-であり、Q

3

単位は、SiOHO

3

-であり、Q

4

単位は、SiO

4

-であり、Q

4

単位の含有量は、95%より大きいか同じである段階S2とを含む、球状シリカ粉末充填剤の調製方法を提供する。

【0006】

好ましくは、加水分解性基Xは、メトキシ基(methoxy group)、エトキシ基(ethoxy group)、プロポキシ基(propoxy group)等のアルコキシ基(alkoxy group)、または塩素原子等のハロゲン原子である。加水分解凝縮反応の触媒は、塩基および/または酸であり得る。

【0007】

好ましくは、酸化ガスには酸素ガスが含まれて、ポリシロキサン中の有機物を完全に酸化させる。コストの観点から、当該酸化ガスは、好ましくは空気である。か焼後のシリカのヒドロキシル基含有量を減少させるために、空気中の水分含有量が低いほど良い。コストの観点から、空気を圧縮した後に凍結乾燥機で水分を除去することは、本発明のか焼雰囲気ガスに適する。具体的には、前記段階S2は、球状ポリシロキサン粉末をマッフル炉に入れて、乾燥空気をその中に入れてか焼する段階を含む。

【0008】

好ましくは、電気加熱またはガス間接加熱によって、球状ポリシロキサンのか焼を達成する。本発明は加熱方法に特に制限しないが、ガスの燃焼ガスに水分が含まれているため、本発明は、好ましくは、ガス炎による直接加熱を極力避ける。か焼する際に温度を徐々に上げることができ、850度未満の温度および室温でゆっくりと加熱すると、有機基の遅延的分解に有利し、最終的なか焼後のシリカの炭素残留物が減少する。炭素残留量が多いと、シリカの白色度は低下する。

【0009】

好ましくは、か焼温度は、850度~1100度の間であり、か焼時間は、6時間~12時間の間である。

【0010】

好ましくは、当該球状ポリシロキサンは、Q単位、D単位、および/またはM単位をさらに含み、ここで、Q単位=SiO

4

-であり、D単位=R

2

R

3

SiO

2

-であり、M単位=R

4

R

5

R

6

SiO

2

-であり、R

2

、R

3

、R

4

、R

5

およびR

6

は、それぞれ、水素原子または炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な炭化水素基である。例えば、好ましい実施例において、Si(OC

2

C

3

)

4

およびCH

3

CH

3

Si(OCH

3

)

2

は、CH

3

Si(OCH

3

)

3

と混合して使用することができる。

【0011】

好ましくは、当該調製方法は、処理剤を加えて球状シリカ粉末充填剤に対して表面処理を実行する段階をさらに含み、当該処理剤は、シランカップリング剤(Silane coupling agent)および/またはジシラザン(Disilazane)を含み、当該シランカップリング剤は、(R

7

)

a

(R

8

)

b

Si(M)

4-a-b

であり、R

7

およびR

8

は、炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な炭化水素基、水素原子、または官能基によって置換された炭素原子が1乃至18である炭化水素基であり、当該官能基は、ビニル基(Vinyl group)、アリル基(allyl group)、スチリル基(styryl group)、エポキシ基(epoxy group)、脂肪族アミノ基(aliphatic amino group)、芳香族アミノ基(aromatic amino group)、メタクリロキシプロピル基(methacryloxypropyl group)、アクリロキシプロピル基(acryloxypropyl group)、ウレイドプロピル基(ureidopropyl group)、クロロプロピル基(chloropropyl group)、メルカプトプロピル基(mercaptopropyl group)、ポリスルフィド基(Polysulfide group)およびイソシアナートプロピル基(isocyanate propyl group)のような有機官能基からなる群から少なくとも一つが選択され、Mは、炭素原子が1乃至18であるアルコキシ基またはハロゲン原子であり、a=0、1、2または3であり、b=0、1、2または3であり、a+b=1、2または3であり、当該ジシラザンは、(R

9

R

10

R

11

)SiNHSi(R

12

R

13

R

14

)であり、R

9

、R

10

、R

11

、R

12

、R

13

およびR

14

は、炭素原子が1乃至18である独立して選択可能な炭化水素基または水素原子である。

【0012】

本発明は、ヒドロキシル基含有量が低く、球状シリカ粉末充填剤の平均粒子径が0.1μm~5μmの間である、上記の調製方法に従って得られた球状シリカ粉末充填剤を提供する。より好ましくは、球状シリカ粉末充填剤の平均粒子径は、0.15μm~4.5μmの間である。

【0013】

本発明は、異なる粒子径の球状シリカ粉末充填剤を樹脂に緊密に充填およびグラデーション(gradation)して、回路基板材料および半導体パッケージング材料に適した複合材料を形成する、球状シリカ粉末充填剤の使用をさらに提供する。好ましくは、当該球状シリカ粉末充填剤は、高周波および高速回路基板材料、プリプレグ(prepreg)、銅張積層板(copper clad laminate)および低誘電損失を必要とする他の半導体パッケージング材料に使用される。

【0014】

好ましくは、当該使用は、乾式または湿式のふるい分けまたは慣性分級を使用して、球状シリカ粉末充填剤中の1μm、3μm、5μm、10μm、20μm以上の粗大粒子を除去する。

【発明の効果】

【0015】

本発明による球状シリカ粉末充填剤のヒドロキシル基含有量は、低く、低誘電損失および低熱膨張係数を有し、高周波および高速回路基板、プリプレグまたは銅張積層板等に使用される。

【発明を実施するための形態】

【0016】

以下、本発明の好ましい実施例を示し、詳細に説明する。

【0017】

実施例に関する検出方法は、以下の内容を含む。

【0018】

平均粒子径は、HORIBA社のレーザー粒度分析機器LA-700によって測定される。

【0019】

球状シリカ粉末充填剤のQ

1

単位、Q

2

単位、Q

3

単位およびQ

4

単位の含有量は、29Si固体NMR核磁気共鳴分光法で分析され、Q

1

単位、Q

2

単位、Q

3

単位およびQ

4

単位のNMR吸収ピーク面積二従って算出する。Q

4

単位の含有量(%)=(Q

4

単位のピーク面積/(Q

1

単位のピーク面積+Q

2

単位のピーク面積+Q

3

単位のピーク面積+Q

4

単位のピーク面積))×100;

【0020】

誘電損失の試験方法は、異なる体積分率のサンプル粉末およびパラフィンを混合して試験サンプルを作成し、市販の高周波誘電損失計を使用して10GHzの条件下で誘電損失を測定することである。次に誘電損失を縦座標としてプロットし、サンプルの体積分率を横座標としてプロットし、勾配からサンプルの誘電損失を得る。誘電損失の絶対値を求めることは一般に難しいが、本出願の実施例および比較例の誘電損失は、少なくとも相対的に比較することができる。

【0021】

本明細書において、「度」とは、「摂氏度」、即ち、°Cを指す。

【0022】

在明細書において、平均粒子径は、粒子の体積平均直径を指す。

【0023】

例1

【0024】

室温下で、一定重量部の脱イオン水を取り、攪拌機が備えられた反応ケトルに入れ、攪拌を開始し、80重量部のメチルトリメトキシシランおよび少量の酢酸を加えてPHを約5に調節する。メチルトリメトキシシランを溶解させた後に、25重量部の5%アンモニア水を加えて10秒間攪拌してから攪拌を停止する。1時間静置した後にろ過し、乾燥させて球状ポリシロキサンを得る。ポリシロキサン粉末をマッフル炉に入れ、乾燥空気をその中に入れてか焼し、最終的なか焼温度は、850度、1000度または1100度であり、か焼時間は、12時間である。サンプルの分析結果は、以下の表1に示される。

【0025】

【表1】

85

120

0001434142000001.jpg

・・・

【0035】

上記の実施例1~実施例6で得られた実施例のサンプルは、表面処理を実行することができることを理解されたい。具体的には、必要に応じて、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリングおよびジシラザン等の処理を実行することができる。必要に応じて、複数の上記の種類の処理を実行することもできる。

【0036】

当該調製方法は、乾式または湿式のふるい分けまたは慣性分級を使用して、充填剤中の1、3、5、10、20μm以上の粗大粒子を除去する段階を含むことを理解されたい。

【0037】

異なる粒子径の球状シリカ充填剤を樹脂に緊密に充填およびグラデーション(gradation)して、複合材料を形成することを理解されたい。

【0038】

上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の上記実施例に様々な変更を加えることができる。即ち、本発明の特許請求の範囲および明細書の内容に従ってなされたすべての単純、同等の変更および修正は、いずれも本発明の特許の保護範囲に含まれる。本発明で詳述しない内容は、従来の技術内容である。」

(2)甲2-1に記載の事項

甲2-1には、「多孔質無機酸化物およびその製法」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

ア「【請求項1】

キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下である多孔質無機酸化物。」

イ「【発明を実施するための最良の形態】

【0007】

本発明を以下詳細に説明する。

(多孔質無機酸化物)

多孔質無機酸化物とは、0.1nm~100nm程度の微細孔を有する無機酸化物をいう。微細孔径は1nm~50nmが好ましい。

無機酸化物としては、二酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などをあげることができ、二酸化珪素であることが好ましい。

【0008】

(キュービック型細孔構造)

多孔質体の細孔構造は、小角X線回折(SAXS)及び透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察で確認することができる。本発明の多孔質体から得られた回折像は、複数の円環状のパターンを有し、キュービック相構造を有することを示す。キュービック型細孔構造を持つ多孔質無機酸化物の作り方を以下に説明する。公知の方法により、無機酸化物のゾルゲルと、テンプレートとして界面活性剤を用い、乾燥後に、テンプレートを焼成除去して多孔質の無機酸化物を得ることができる。

・・・

【0014】

(多孔質無機酸化物の製造方法)

本発明の酸化物多孔体は、テンプレート(好ましくは式(1)で示される末端分岐型共重合体)粒子と無機酸化物の有機無機複合体を形成した後、テンプレートを除去することにより製造される。具体的には、以下の工程を含む。

【0015】

工程(a):上述の末端分岐型共重合体粒子の存在下で、無機物を形成する元素のアルコキシド(以下、ケイ素も含めて金属アルコキシドと呼ぶことがある)および/またはその部分加水分解縮合物のゾル-ゲル反応を行う;

工程(b):前記工程(a)において得られた反応溶液を乾燥し、ゾル-ゲル反応を完結し有機無機複合体を得る;

工程(c):前記有機無機複合体からテンプレートを除去し、酸化物多孔質体を調製する。」

ウ「【0038】

(比表面積)

多孔質体の比表面積は、窒素吸着によって求めることができる。粒子の窒素吸脱着測定を、オートソーブ3(カンタクローム社製)を用いて測定し、比表面積をBET(Brunauer-Emmett-Teller)法で、細孔容積をBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により算出した。

【0039】

(本発明の多孔質体)

本発明に係る、比表面積が10m

2

/g以下である多孔質無機酸化物は、以下のように調製することができる。すなわち、前述したキュービック相構造を有するメソポーラス材料は無機酸化物のゾルゲルを300~600°C程度で焼成することにより得られるものであるが、この段階では比表面積が通常200~1000m

2

/gとなっている。このような多孔質無機酸化物をさらに800°C以上、好ましくは850~1000°Cで焼成することにより、本発明の多孔質無機酸化物が得られる。

焼成温度が800°C未満では、比表面積が10m

2

/gを上回る場合があり、焼成温度が1000°Cを超えると、無機酸化物自体の構造が変化して細孔が失われるおそれがある。」

(3)甲3-1に記載の事項

甲3-1には、「表面改質球状シリカ及び半導体封止用樹脂組成物」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

「【0040】湿式法で得られたシリカ粒子の表面には多数のシラノール基(≡Si-OH)が存在し、これが大気中の水分と結合して前記結合水となる。このシラノール基は、工程-2で得られたシリカを1000°C以上の温度で焼成処理することにより、除去することができる。この処理によって、比表面積の小さな緻密な球状シリカを得ることができる。」

「【0049】焼成して得られたシリカ粒子について分析したところ、Na,K,Liなどのアルカリ金属、Ca,Mgなどのアルカリ土類金属およびCr,Fe,Cuなどの遷移金属の各元素の濃度はそれぞれ1ppm以下であり、また、UおよびThの放射性元素の合計は1ppb以下であった。また、前記の方法で測定した、シリカ粒子の煮沸浸出抽出水の電気伝導度は、1.8μS/cmであった。」

(4)甲4-1に記載の事項

甲4-1には、「球状シリカの製造方法」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

「【0021】一般に球状シリカ表面のシラノール基が多いほど樹脂配合粘度が高くなる傾向にあるため、低シラノール化させる必要がある。焼成温度により球状シリカ表面のシラノール基量が変化するため、低シラノール化させるためには、焼成温度は1000~1300°Cが好ましい。特に樹脂配合時の流動特性を極限まで高めるためには1150~1250°Cが好ましい。」

「【0034】焼成して得られた球状シリカについて分析したところ、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属及びCr、Fe、Cu等遷移金属の各元素の濃度は1ppm以下であり、また、UおよびThの放射性元素の合計は0.1ppb以下であった。」

(5)甲5-1に記載の事項

甲5-1には、「球状シリカ粉体の製造方法及び半導体封止材の製造方法」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

「【背景技術】

【0002】

半導体封止材は高い性能を付与する目的で球状シリカ粉体が配合されていることが多い。その場合に球状シリカ粉体中に含まれる不純物の存在は半導体封止材が適用される半導体に大きな影響を与えることになる。」

(6)甲6-1に記載の事項

甲6-1には、「溶融球状シリカ粉末およびその製造方法」(発明の名称)に関して、次の各記載がある

「[0032]本発明の溶融球状シリカ粉末は、半導体封止材の充填材等として使用することを考慮すると、不純物含有量が以下の範囲であることが好ましい。即ち、Feが10ppm以下、好ましくは7ppm以下、Alが0.7ppm以下、好ましくは0.6ppm以下、U及びThは各々0.1ppb以下、Na及びKが各々1ppm以下、Clが1ppm以下である。」

(7)甲7-1に記載の事項

甲7-1には、「球状金属酸化物粉末、その製造方法及び用途」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

「【特許請求の範囲】

【請求項1】

金属粉末及び/又は金属酸化物粉末の火炎による熱処理物であって、平均粒子径0.1~2μm、比表面積2~30m

2

/g、15μm以上の粗大粒子数が300個/g以下であることを特徴とする球状金属酸化物粉末。

【請求項2】

15μm以上の金属粒子数が10個/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の球状金属酸化物粉末。

【請求項3】

球状金属酸化物粉末がシリカであり、アルミナ、酸化鉄、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムの含有量がそれぞれ50ppm以下であることを特徴とする請求項2に記載の球状金属酸化物粉末。」

「【0010】

15μm以上の粗大粒子数が300個/g以下であっても、15μm以上の金属粒子が10個/g以下であることが好ましく、これによってシリカガラス焼結体の透明性が極度に低下するの防ぐことができる。また、樹脂基板や封止材の電気的信頼性の低下を防ぐことができる。ここで、15μm以上の金属粒子の金属種は、シリコン、アルミニウム、鉄、クロム及びニッケルである。極度な透明性の低下ないしは部分的な熱膨張率差にもとづくクラック発生の予防の観点から、球状金属酸化物粉末がシリカである場合、アルミナ、酸化鉄、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムの含有量がそれぞれ50ppm以下であることが望ましく、また球状金属酸化物粉末がアルミナである場合、シリカ、酸化鉄、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムの含有量がそれぞれ50ppm以下であることが望ましい。」

「【0028】

【表1】

54

153

0001434142000002.jpg

(8)甲8-1に記載の事項

甲8-1には、「球状シリカ微粒子製造用バーナー」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

「【0002】

【従来の技術】シリカ微粒子、特に実質的に塩素を含まず、ケイ素以外の金属不純物が1.0ppm以下であり、比表面積が10~30m

2

/gで粒度分布が10~500nmである非晶質球状シリカ微粒子は、IC用エポキシ樹脂封止剤の充填剤として有用である。」

(9)甲9-1に記載の事項

甲9-1には、「繊維強化プラスチック用ガラス繊維および繊維強化プラスチック製品」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

「【0012】本発明者らは、プリント基板の電気的特性、特に誘電損失の低減を図るため、シリカガラス繊維の低誘電損失化について鋭意研究を重ねてきた。その結果、図1に示す如くシリカガラス中に含まれる水分量がかかる誘電損失に大きな影響を及ぼすことを見いだし、プリント基板、レドーム用基板等のプラスチック強化用シリカガラス繊維としては、その水分量を1000ppm以下に抑えれば良いことを見いだした。ここでいう含有水分量は赤外分光分析装置(Nicolet社製20DXC)を使用し拡散反射IR法で測定したチャート中のシラノールのピーク(3660cm

-1

)とシロキサン結合のピーク(1860cm

-1

)の高さの比を含有水分量既知のサンプルの値と比較して算出したものである。

【0013】本発明において、シリカガラス繊維に含有される水分量は1000ppm以下であることが好ましく、これより水分量が高い場合には高周波での電気的特性が低下するため好ましくない。また、繊維強度は50kg/mm

2

以上であることが好ましく、これより低い強度では補強材としての特性が劣るため好ましくない。特に好ましくは、60~150kg/mm

2

である。これより高い強度を持つ場合にはプリント基板の作成の際の加工性が低下するため好ましくない。」

「【図面の簡単な説明】

【図1】シリカガラス中の水分量と10GHzにおける誘電損失の関係を示すグラフ。」

「【図1】

101

138

0001434142000003.jpg

2 先願明細書等に記載された発明

上記1(1)アによると、先願明細書等の「球状シリカ粉末充填剤」は、平均粒子径が0.1μm~5μmの間であり、20μm以上の粗大粒子が除去され(【請求項8】、【請求項10】)、Q

1

単位、Q

2

単位、Q

3

単位およびQ

4

単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q

1

単位は、Si(OH)

3

O-であり、Q

2

単位は、Si(OH)

2

O

2

-であり、Q

3

単位は、SiOHO

3

-であり、Q

4

単位は、SiO

4

-であり、Q

4

単位の含有量は、95%より大きいか同じである(【請求項1】)と記載されている。

そうすると、先願明細書等には、次の発明(以下、「甲1-1先願発明」という。)が記載されていると認められる。

〔甲1-1先願発明〕

平均粒子径が0.1μm~5μmの間であり、20μm以上の粗大粒子が除去された球状シリカ粉末であって、Q

1

単位、Q

2

単位、Q

3

単位およびQ

4

単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q

1

単位は、Si(OH)

3

O-であり、Q

2

単位は、Si(OH)

2

O

2

-であり、Q

3

単位は、SiOHO

3

-であり、Q

4

単位は、SiO

4

-であり、Q

4

単位の含有量は、95%より大きいか同じである球状シリカ粉末充填剤。

3 本件発明1について

(1)本件発明1と甲1-1先願発明との対比

ア 甲1-1先願発明の「球状シリカ粉末」は、本件発明1の「シリカ粉体」に相当する。

イ 甲1-1先願発明の「平均粒子径が0.1μm~5μmの間であり、20μm以上の粗大粒子が除去された」は、「平均粒径が0.1~30μmであり」、「最大粒径が100μm以下であり」に相当する。

ウ 先願明細書等には、甲1-1先願発明に係る球状シリカ粉末が「キュービック型細孔構造」を有するものと記載されていない。

そうすると、甲1-1先願発明は、「除く」とされている「前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」に合致するものではない。

なお、上記1(2)によると、甲2-1には、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下である多孔質無機酸化物が記載され、多孔質無機酸化物として二酸化珪素を用い、キュービック型細孔構造を得るために、末端分岐型共重合体からなるテンプレート粒子と無機酸化物の有機無機複合体を形成した後、テンプレートを除去することで得られること(【0039】)が記載されている。

そして、本件発明1の「(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」「を除く)」は、甲2-1に記載の発明を除いているものといえる。

そうすると、甲1-1先願発明の「球状シリカ粉末」は、本件発明1の「(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」「を除く)」の要件を満たすものである。

エ 先願明細書等には、甲1-1先願発明に係る球状シリカ粉末が「中空シリカ粒子」を有するものと記載されていない。

そうすると、甲1-1先願発明は、「除く」とされている「中空シリカ粒子」に合致するものではない。

なお、後述する第7の1(2)アによると、甲2-2には、「レーザ回折/散乱法によって測定される体積平均粒子径が0.05~0.45μmで、最大粒子径が体積平均粒子径の5倍以内であり、空孔率が20~70体積%、BET比表面積が30m

2

/g未満、98質量%以上がSiO

2

である中空シリカ粒子。」(【請求項1】)が記載されている。

そして、本件発明1の本件発明1の「(ただし、」「中空シリカ粒子を除く)」は、甲2-2に記載の発明を除いているものといえる。

そうすると、甲1-1先願発明の「球状シリカ粉末」は、本件発明1の「(ただし、」「中空シリカ粒子を除く)」の要件を満たすものである。

オ 本件発明1と甲1-1先願発明は、「平均粒径が0.1~30μmであり、」「前記低誘電シリカ粉体の最大粒径が100μm以下であ」「る」「シリカ粉体(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体、及び中空シリカ粒子を除く)」の点で一致し、以下の点で相違する。

(ア)本件発明1は、「誘電正接(10GHz)が0.0004以下の低誘電シリカ粉体であって、」「カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものであ」る「ことを特徴とする低誘電シリカ粉体」であるのに対し、甲1-1先願発明は「Q

1

単位、Q

2

単位、Q

3

単位およびQ

4

単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q

1

単位は、Si(OH)

3

O-であり、Q

2

単位は、Si(OH)

2

O

2

-であり、Q

3

単位は、SiOHO

3

-であり、Q

4

単位は、SiO

4

-であり、Q

4

単位の含有量は、95%より大きいか同じである球状シリカ粉末」である点(以下、「相違点1-1」という。)で、相違する。

(イ)本件発明1は、「石英由来である」低誘電シリカ粉体であるのに対し、甲1-1先願発明は、それを特定していない点(以下、「相違点1-2」という。)で、相違する。

(2)相違点の検討

事案に鑑み、先に相違点1-2について検討する。

上記1(1)アによると、先願明細書等の「球状シリカ粉末充填剤」は、「R

1

SiX

3

の加水分解凝縮反応」によって得られるものと記載されている。そうすると、先願明細書等には、石英由来である球状シリカ粉末は記載されているとはいえない。

そして、甲1-1先願発明の「Q

1

単位、Q

2

単位、Q

3

単位およびQ

4

単位から選択される少なくとも一つから構成され、ここで、Q

1

単位は、Si(OH)

3

O-であり、Q

2

単位は、Si(OH)

2

O

2

-であり、Q

3

単位は、SiOHO

3

-であり、Q

4

単位は、SiO

4

-であり、Q

4

単位の含有量は、95%より大きいか同じである」は、縮合によって製造されたシリカ粉末に特有の構造といえ、「石英由来である」と特定される本件発明1にはこのような構造があるとはいえない。

また、本件明細書の【0044】には、「本発明の低誘電シリカ粉体の原料となるシリカ粉体としては、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末を2000°C程度の高温の火炎中を通すことで球状化した溶融シリカ粉体、水ガラスを原料として高純度化し高温で焼結させ粉砕したシリカ粉体、などが使用可能であるが、シリカ粉体であれば特に上記した製法に関係なく使用することができる。」と記載されているところ、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末を2000°C程度の高温の火炎中を通すことで得られたシリカ粉末は、シリカ粉末の結晶性や天然由来の不可避不純物等の点について、少なくとも甲1-1先願発明の加水分解凝縮反応を経て得られたシリカ粉末と、同じ構成を備えているとはいえない。

また、上記1(2)~(9)で摘記した甲2-1~甲9-1の記載を踏まえても、上記相違点1-2に係る本件発明1の構成は、技術常識であるとはいえないから、本件発明1は、甲1-1先願発明が石英由来であるシリカ粉末であるとはいえない。

したがって、相違点1-2は実質的なものである。

よって、本件発明1は、甲1-1先願発明ではない。

(3)令和7年 8月28日に提出された意見書における異議申立人1の主張について

異議申立人1は、令和7年 8月28日に提出された意見書の第2頁第13行~第19行において、「「石英由来」であるとの規定は低誘電シリカの「原料」を規定しているに過ぎず、「石英由来の低誘電シリカ」がどのような特徴を有するものであるのかを規定するものではない。「石英由来の低誘電シリカ」がどのような特徴を有するものであるのかを何ら特定していない本件請求項1の記載では、「石英由来」のシリカと、「R

1

SiX

3

加水分解物由来」のシリカとを物として区別することができない。よって、訂正後の本件発明1は、依然として甲1先願発明1と実質的に同一である。」と主張する。

しかしながら、上記(2)で検討したとおり、本件明細書の【0044】の記載を踏まえると、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末を2000°C程度の高温の火炎中を通すことで得られたシリカ粉末と、加水分解凝縮反応で得られたシリカ粉末が同じ構成を備えるとはいえない。

よって、異議申立人1の上記主張は採用できない。

(4)小括

以上から、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1先願発明ではない。

4 本件発明2~4、6について

請求項1の記載を引用する本件発明2~4、6も、上記3と事情は同じである。

したがって本件発明2~4、6は、甲1-1先願発明ではない。

5 まとめ

以上の検討のとおり、取消理由3、申立理由1-1には理由がない。

第7 新規性欠如、進歩性欠如(取消理由1、2、申立理由1-2、2-2、3-2)についての当審の判断

1 異議申立人2により提出された甲1-2~甲4-2に記載された事項

(1)甲1-2に記載の事項

甲1-2には、「ゾルゲルシリカ粉末、およびその製造方法」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。(下線は、当審が付与した。以下、同様である。)

ア「課題を解決するための手段

[0012] 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねてきた。その結果、ゾル-ゲル法において、前記の如く単分散性に優れるよう制御してシリカ合成を実施し、さらには得られたシリカ粒子分散液に特定の凝集剤を添加して、レーザー回折散乱法による粒度分布測定では未検出になるほどに、凝集塊としての粗粒が低減化されたゾルゲルシリカ粉末を得ても、このものには上記レーザー回折散乱法よりも検出感度が高くなる湿式篩法(目開き5μmの電成篩使用)で測定すると、篩上残が有意量存在する知見を得た。そして、この粗粒が、前記電子材料用樹脂組成物の充填剤に求められるような高度な流動性を獲得する上での阻害要因になっている事実を突き止めた。

[0013] そして、更に検討を深めた結果、この粗粒は、上記乾燥工程等の後工程で生じる凝集塊ではなく、ゾル-ゲル法によるシリカ合成時に不可避的に生成する、粗大な独立一次粒子が主であること、及びこの粗大独立一次粒子はゾル-ゲル法によるシリカ合成後、得られるシリカ粒子分散液を湿式ろ過すれば効率的に除去できることを見出し、上記課題が解決された新規なゾルゲルシリカ粉末を提案するに至った。

[0014] 即ち、本願発明のゾルゲルシリカ粉末は、レーザー回折散乱法による平均粒子径が0.05μm以上2.0μm以下であり、粒径分布の広がりを示す変動係数が40%以下であって、水の中に5質量%の量を、出力40W、照射時間10分という条件により超音波により分散させた分散液において、目開き5μmの電成篩を用いた湿式篩法により篩分けした際の篩上残量が10ppm以下であることを特徴とする、ゾルゲルシリカ粉末である。

・・・

[0017] (実施形態)

本実施形態のゾルゲルシリカ粉末は、

ゾル-ゲル法、即ち、反応媒体中で原料となる珪素アルコキシドを加水分解および重縮合してシリカゾルを生成させ、これをゲル化させたのち、生成した固形分を取り出し、乾燥して得られるシリカ粉末

である。本実施形態において、乾燥して得られたシリカ粉末は、必要に応じて焼成することも出来る。一般にゾル-ゲル法により得られるシリカ粒子は、球形度が0.9以上の独立球状粒子である。

[0018] 本実施形態のゾルゲルシリカ粉末は、レーザー回折散乱法による平均粒子径が0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1.5μm以下であることがより好ましい。上記範囲を超えて大きいと、後工程において凝集塊を精度良く低減するのが難しくなる他、電子材料用樹脂組成物への充填用として適さない大きさになる。また、一般に粒子径が小さく比表面積が大きい粒子は凝集しやすい性質があって、平均粒子径が上記範囲より小さい場合には、凝集塊の生成を抑えることが難しく、生成した凝集塊を解砕することが困難であり粗粒の原因となる。また、このような粒径の小さい粒子は、樹脂等に充填した際に粘度が上昇し流動性が低下する。

[0019] また、本実施形態のゾルゲルシリカ粉末は、水の中にシリカ粉末を5質量%の量を、出力40W、照射時間10分という条件により超音波により分散させた分散液において、目開き5μmの電成篩を用いた湿式へ篩法により篩分けした際の篩上残量が10ppm以下であり、5ppm以下であることが好ましい。本実施形態のゾルゲルシリカ粉末は、後述する製造方法等により得られることに起因して、個々のシリカ粒子は凝集していたとしても、それは弱い力の凝集体であるため、簡単な解砕処理で良好に解すことができる。従って、上記シリカ粉末の5質量%分散液において、出力40W、照射時間10分の超音波分散で、該弱い凝集体は一次粒子に解砕でき、この条件で解砕できることは、例えば、樹脂や溶剤に分散させる際の分散機のシェアで良好に解せることを意味している。」

イ「[0145]実施例1

内容積1000Lのジャケット付きガラスライニング製反応器(内径1200mm)に、マックスブレンド翼(翼径345mm)を有した反応器を使用し、反応媒体としてメタノール75kg、イソプロパノール30kgおよびアンモニア水(25質量%)25kgを仕込み(反応媒体量:150L)、反応温度を40°Cに設定し、52rpmで攪拌した。その後、原料としてテトラエトキシシラン3.0kgとメタノール7.0kg、イソプロパノール2.0kgの混合物を反応媒体に投入し、シリカの種粒子を作製した。次にテトラメトキシシラン350kgとメタノール100kgの原料を51mm/sの吐出線速度で反応媒体中に供給し、同時に150kgのアンモニア水(25質量%)を0.8kg/minの速度で供給し、ゾルゲルシリカ粒子を成長、合成させた。このときの無次元混合時間nθmは78であった。

[0146]供給終了後1時間攪拌を続けた後、このシリカ粒子分散液を、目開き3μmのポリプロピレン製ろ過フィルターを用いて湿式ろ過を行って粗大粒子を取り除いた。その後、ドライアイス3kgを投入後、20時間放置した。20時間経過した段階でゾルゲルシリカ粒子は沈降しており、定量ろ紙(保持粒径6μm)を使用し、固液分離後、190kg(シリカ濃度74質量%)の濃縮物を得た。ろ液は透明であり、ろ液漏れは確認されなかった。更に、100°Cで15時間減圧乾燥を行い、132kgの

ゾルゲルシリカ粉末

を得た。続けて、空気雰囲気下、

800°Cで10時間焼成を行った。

焼成後に焼結している様子はなく、124kgのゾルゲルシリカ粉末を得た。

[0147]

得られたゾルゲルシリカ粉末は、平均粒子径0.74μm、

変動係数20.7%、球形度0.96であり、

レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は検出されなかった。

また、目開き5μm及び目開き3μmの電成篩を用いた湿式篩法での篩上残量はそれぞれ5ppm及び6ppmであった。コールターカウンター法における5μm及び3μm以上の粗粒量は4ppm未満及び8ppmであった。

[0148]α線量は0.002c/cm

2

・h、金属不純物量は、Uが0.02ppb、Thが0.02ppb、Feが0.1ppm、Alが0.1ppm、Naが0.2ppm、Kが0.0ppm、Caが0.1ppm、Crが0.0ppm、Niが0.0ppm、Tiが0.0ppm、Cl

-

が0.0ppmであった。比表面積が4m

2

/g、表面シラノール基量が3個/nm

2

、また、フローマークは見られなかった。

[0149]実施例2

実施例1で得られたゾルゲルシリカ粉末をジェットミルを用い、解砕処理を施した。得られたゾルゲルシリカ粉末は、平均粒子径0.73μm、変動係数19.1%、球形度0.96であり、レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は検出されなかった。また、目開き5μm及び目開き3μmの電成篩を用いた湿式篩法での篩上残量は共に5ppm未満(定量下限未満)であった。コールターカウンター法における5μm及び3μm以上の粗粒量は共に4ppm未満であった。

[0150]α線量は0.002c/cm

2

・h、金属不純物量は、Uが0.02ppb、Thが0.02ppb、Feが0.4ppm、Alが2.1ppm、Naが0.2ppm、Kが0.0ppm、Caが0.1ppm、Crが0.0ppm、Niが0.1ppm、Tiが0.0ppm、Cl

-

が0.0ppmであった。比表面積が4m

2

/g、表面シラノール基量が3個/nm

2

、また、フローマークは見られなかった。

[0151]実施例3

実施例1で得られたゾルゲルシリカ粉末をボールミルを用い、解砕処理を施した。得られたゾルゲルシリカ粉末は、平均粒子径0.74μm、変動係数21.6%、球形度0.95であり、レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は検出されなかった。また、目開き5μm及び目開き3μmの電成篩を用いた湿式篩法での篩上残量は共に5ppm未満(定量下限未満)であった。コールターカウンター法における5μm及び3μm以上の粗粒量は共に4ppm未満であった。

[0152]α線量は0.002c/cm

2

・h、金属不純物量は、Uが0.02ppb、Thが0.02ppb、Feが0.2ppm、Alが0.4ppm、Naが0.2ppm、Kが0.1ppm、Caが0.1ppm、Crが0.0ppm、Niが0.1ppm、Tiが0.0ppm、Cl

-

が0.1ppmであった。比表面積が4m

2

/g、表面シラノール基量が3個/nm

2

、また、フローマークは見られなかった。

[0153]実施例4

実施例1において、原料吐出線速度を263mm/sと変えた。他は実施例1と同様にしてゾルゲルシリカ粒子の合成および評価を行った。焼成後に得られたゾルゲルシリカ粉末は122kgであった。

[0154]得られたゾルゲルシリカ粉末は、平均粒子径0.75μm、変動係数20.3%、球形度0.97であり、レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は粗粒は検出されなかった。また、目開き5μm及び目開き3μmの電成篩を用いた湿式篩法での篩上残量はそれぞれ5ppm未満(定量下限未満)及び6ppmであった。コールターカウンター法における5μm及び3μm以上の粗粒量は4ppm未満及び8ppmであった。

[0155]α線量は0.001c/cm

2

・h、金属不純物量は、Uが0.02ppb、Thが0.01ppb、Feが0.1ppm、Alが0.1ppm、Naが0.1ppm、Kが0.0ppm、Caが0.1ppm、Crが0.0ppm、Niが0.0ppm、Tiが0.0ppm、Cl

-

が0.1ppmであった。比表面積が4m

2

/g、表面シラノール基量が3個/nm

2

、また、フローマークは見られなかった。

[0156]実施例5

実施例1において、ドライアイスを炭酸水素アンモニウム3kgと変えた。他は実施例1と同様にしてゾルゲルシリカ粒子の合成及び評価を行った。焼成後に得られたゾルゲルシリカ粉末は122kgであった。

[0157]得られたゾルゲルシリカ粉末は、平均粒子径0.72μm、変動係数18.1%、球形度0.97であり、レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は検出されなかった。また、目開き5μm及び目開き3μmの電成篩を用いた湿式篩法での篩上残量はそれぞれ5ppm及び6ppmであった。コールターカウンター法における5μm及び3μm以上の粗粒量は5ppm及び8ppmであった。

[0158]α線量は0.001c/cm

2

・h、金属不純物量は、Uが0.01ppb、Thが0.01ppb、Feが0.1ppm、Alが0.1ppm、Naが0.1ppm、Kが0.1ppm、Caが0.1ppm、Crが0.0ppm、Niが0.0ppm、Tiが0.0ppm、Cl

-

が0.0ppmであった。比表面積が4m

2

/g、表面シラノール基量が3個/nm

2

、また、フローマークは見られなかった。

[0159]実施例6

実施例1において、シリカの種粒子を作製後の原料を、テトラメトキシシラン90kg、メタノール25kg及びアンモニア水(25質量%)40kgと変えた。他は実施例1と同様にしてゾルゲルシリカ粒子の合成及び評価を行った。焼成後に得られたゾルゲルシリカ粉末は35kgであった。

[0160]得られたゾルゲルシリカ粉末は、平均粒子径0.43μm、変動係数14.8%、球形度0.98であり、レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は検出されなかった。また、目開き5μm及び目開き3μmの電成篩を用いた湿式篩法での篩上残量は共に5ppm未満(定量下限未満)であった。コールターカウンター法における5μm及び3μm以上の粗粒量は共に4ppm未満であった。

[0161]α線量は0.002c/cm

2

・h、金属不純物量は、Uが0.01ppb、Thが0.01ppb、Feが0.1ppm、Alが0.1ppm、Naが0.1ppm、Kが0.0ppm、Caが0.1ppm、Crが0.0ppm、Niが0.0ppm、Tiが0.0ppm、Cl

-

が0.0ppmであった。比表面積が7m

2

/g、表面シラノール基量が3個/nm

2

、また、フローマークは見られなかった。

[0162]実施例7

実施例1において、反応器を4000Lと変え、シリカの種粒子を作製後の原料を、テトラメトキシシラン1750kg、メタノール500kg及びアンモニア水(25質量%)750kgと変えた。他は実施例1と同様にしてゾルゲルシリカ粒子の合成及び評価を行った。焼成後に得られたゾルゲルシリカ粉末は674kgであった。

[0163]得られたゾルゲルシリカ粉末は、平均粒子径1.14μm、変動係数22.4%、球形度0.96であり、レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は検出されなかった。また、目開き5μm及び目開き3μmの電成篩を用いた湿式篩法での篩上残量はそれぞれ6ppm、8ppmであった。コールターカウンター法における5μm及び3μm以上の粗粒量は8ppm及び12ppmであった。

[0164]α線量は0.001c/cm

2

・h、金属不純物量は、Uが0.01ppb、Thが0.02ppb、Feが0.1ppm、Alが0.1ppm、Naが0.2ppm、Kが0.1ppm、Caが0.1ppm、Crが0.0ppm、Niが0.0ppm、Tiが0.0ppm、Cl

-

が0.0ppmであった。比表面積が3m

2

/g、表面シラノール基量が3個/nm

2

、また、フローマークは見られなかった。

[0165]実施例8

実施例1において、反応器を10000Lと変え、シリカの種粒子を作製後の原料を、テトラメトキシシラン4200kg、メタノール1200kg及びアンモニア水(25質量%)1800kgと変えた。他は実施例1と同様にしてゾルゲルシリカ粒子の合成及び評価を行った。焼成後に得られたゾルゲルシリカ粉末は1608kgであった。

[0166]得られたゾルゲルシリカ粉末は、平均粒子径1.54μm、変動係数24.3%、球形度0.96であり、レーザー回折散乱法において5μm以上の粗粒は検出されなかった。また、目開き5μm及び目開き3μmの電成篩を用いた湿式篩法での篩上残量はそれぞれ8ppm、10ppmであった。コールターカウンター法における5μm及び3μm以上の粗粒量は8ppm及び16ppmであった。

[0167]α線量は0.001c/cm

2

・h、金属不純物量は、Uが0.01ppb、Thが0.01ppb、Feが0.1ppm、Alが0.1ppm、Naが0.2ppm、Kが0.0ppm、Caが0.1ppm、Crが0.0ppm、Niが0.0ppm、Tiが0.0ppm、Cl

-

が0.1ppmであった。比表面積が2m

2

/g、表面シラノール基量が3個/nm

2

、また、フローマークは見られなかった。」

ウ「[請求項1]レーザー回折散乱法による平均粒子径が0.05μm以上2.0μm以下であり、粒径分布の広がりを示す変動係数が40%以下であって、

水の中に5質量%の量を、出力40W、照射時間10分という条件により超音波により分散させた分散液において、目開き5μmの電成篩を用いた湿式篩法により篩分けした際の篩上残量が10ppm以下であることを特徴とする、ゾルゲルシリカ粉末。

・・・

[請求項8]請求項1から7のいずれか1項に記載のゾルゲルシリカ粉末が分散されてなる樹脂組成物。」

(2)甲2-2に記載の事項

甲2-2には、「中空シリカ粒子」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

ア 「【請求項1】

レーザ回折/散乱法によって測定される

体積平均粒子径が0.05~0.45μmで、最大粒子径が体積平均粒子径の5倍以内であり

、空孔率が20~70体積%、

BET比表面積が30m

2

/g未満

、98質量%以上がSiO

2

である中空シリカ粒子。

【請求項2】

粉末X線回折測定において、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さない、請求項1に記載の中空シリカ粒子。

【請求項3】

50%破壊圧力が100MPa以上である、請求項1又は2に記載の中空シリカ粒子。

【請求項4】

固体29Si-NMRスペクトルによるQ

2

+Q

3

+Q

4

のシグナル面積に対する(Q

2

×2+Q

3

)のシグナル面積の比(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]が0.15以下である

、請求項1~3のいずれかに記載の中空シリカ粒子。

【請求項5】

誘電率が1.2~2.0、

誘電正接が0.01以下である

、請求項1~4のいずれかに記載の中空シリカ粒子。

【請求項6】

下記工程(I)~(III)を有する請求項1~5のいずれかに記載の中空シリカ粒子の製造方法。

工程(I):疎水性有機化合物(a)と、第四級アンモニウム塩(b)、及び加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源(c)を含有する水溶液を調製する工程

工程(II):工程(I)で得られた水溶液を10~100°Cの温度で撹拌して、シリカから構成される外殻を有し、かつ核に疎水性有機化合物(a)を有するコアシェル型シリカ粒子の水分散液を調製する工程

工程(III):工程(II)で得られた水分散液からコアシェル型シリカ粒子を分離し、950°C以上の温度で焼成して、中空シリカ粒子を得る工程

【請求項7】

疎水性有機化合物(a)が炭素数7以上の炭化水素である、請求項6に記載の中空シリカ粒子の製造方法。」

イ 「【0007】

[中空シリカ粒子]

本発明の中空シリカ粒子は、レーザ回折/散乱法によって測定される体積平均粒子径が0.05~0.45μmで、最大粒子径が体積平均粒子径の5倍以内であり、空孔率が20~70体積%、BET比表面積が30m

2

/g未満、98質量%以上がSiO

2

であることを特徴とする。

本発明の中空シリカ粒子は、その98質量%以上、好ましくは99質量%以上がSiO

2

である。シリカ以外の成分としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、カルシア等が挙げられるが、強度、低熱膨張性、電気絶縁性の観点から、中空シリカ粒子の純度は98質量%以上であることが必要である。シリカ純度は、例えばプラズマ発光分光分析装置(ICP)、蛍光X線分析装置(XRF)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、原子吸光光度計(AAS)等を用いて測定することができる。

なお、中空シリカ粒子の物性は、実施例記載の方法により測定される。

【0008】

中空シリカ粒子の体積平均粒子径は0.05~0.45μmであるが、低誘電特性等の観点から、好ましくは0.08~0.42μm、より好ましくは0.10~0.40μm、更に好ましくは0.15~0.40μmである。

また、中空シリカ粒子の最大粒子径は、体積平均粒子径の5倍以内であり、好ましくは4.5倍以内、より好ましくは4倍以内、更に好ましくは3.5倍以内である。

体積平均粒子径の測定には、株式会社堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA-920」、ベックマンコールター社製のレーザー回折散乱法粒度分布測定装置「LS 13 320」等が使用できる。

中空シリカ粒子としては、充填率を向上させるために体積平均粒子径の異なる複数種の中空粒子を混合して、粒子径分布を広くして使用することもできるし、強度等の観点から粒子径分布の狭いものを複数組み合わせて使用することもできる。

・・・

【0011】

中空シリカ粒子のBET比表面積は30m

2

/g未満であり、低誘電特性等の観点から、好ましくは25m

2

/g以下、より好ましくは20m

2

/g以下、更に好ましくは18m

2

/g以下である。

・・・

【0012】

本発明の中空シリカ粒子は、固体

29

Si-NMRスペクトルによるQ

2

+Q

3

+Q

4

のシグナル面積に対する(Q

2

×2+Q

3

)のシグナル面積の比[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]が0.15以下であることが好ましい。

Q

2

、Q

3

、及びQ

4

のシグナル面積は、固体

29

Si-NMR測定を行い、その結果に基づいて算出する。固体

29

Si-NMR測定データの解析(ピーク位置の決定)は、例えば、ガウス関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行うことができる。より具体的には、実施例記載の方法により行うことができる。

上記のようにピーク分割して求めた化学シフトを以下のように帰属させる

Q

2

:-88~-94ppmに発現するピークのシグナル面積

Q

3

:-94~-103ppmに発現するピークのシグナル面積

Q

4

:-103~-115ppmに発現するピークのシグナル面積

ここで、Q

2

に帰属するピークは、ケイ素原子に4個の酸素原子が結合しており、2個の酸素原子がシロキサン結合、2個の酸素原子がシラノール基であることに由来する。

Q

3

に帰属するピークは、ケイ素原子に4個の酸素原子が結合しており、3個の酸素原子がシロキサン結合、1個の酸素原子がシラノール基であることに由来する。

Q

4

に帰属するピークは、ケイ素原子に4個の酸素原子が結合しており、4個の酸素原子がシロキサン結合であることに由来する。つまり[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]はOH/Siを意味すると考えられる。

上記により得られたQ

2

、Q

3

、及びQ

4

の各シグナルの面積を用い、その比[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]を算出する。

[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]の比は、低誘電特性等の観点から出来る限り小さいことが望ましく、好ましくは0.15以下、より好ましくは0~0.14、更に好ましくは0~0.13である。

【0013】

本発明の中空シリカ粒子は、前記特定の構造を有することにより、その誘電率、誘電正接の低下が図られる。

中空シリカの誘電率は、例えば、5.8GHzの周波数では、2.8以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.3以下が更に好ましく、1.2~2.0が特に好ましい。なお、誘電率の測定は、空洞共振器摂動法等を用いて、常法により行うことができる。

また、中空シリカの誘電正接は、例えば、実施例に記載の測定条件において、0.01以下が好ましく、0.009以下がより好ましく、0.008以下が更に好ましい。

【0014】

[中空シリカ粒子の製造方法]

本発明の中空シリカ粒子の製造方法に特に制限はないが、下記の工程(I)~(III)を有する方法によれば、効率的に製造することができる。

工程(I):疎水性有機化合物(a)と、第四級アンモニウム塩(b)、及び加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源(c)を含有する水溶液を調製する工程

工程(II):工程(I)で得られた水溶液を10~100°Cの温度で撹拌して、シリカから構成される外殻を有し、かつ核に疎水性有機化合物(a)を有するコアシェル型シリカ粒子の水分散液を調製する工程

工程(III):工程(II)で得られた水分散液からコアシェル型シリカ粒子を分離し、950°C以上の温度で焼成して、中空シリカ粒子を得る工程

以下、工程(I)~(III)の詳細とそこで用いる各成分等について説明する。

・・・

【0024】

・・・

本発明の中空シリカ粒子は、低誘電膜や低誘電膜用コーティング剤等の原料として、各種のマトリクス樹脂に分散させることができる。」

ウ 「【実施例】

【0025】

以下の実施例及び比較例において、「%」は「質量%」である。

実施例、比較例で得られた中空シリカ粒子の各種測定は、以下の方法により行った。

(1)中空シリカ粒子の体積平均粒子径、最大粒子径

中空シリカ粒子のエタノール分散液を測定試料とし、株式会社堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA-920」を用いて湿式法で測定した。解析には装置に付属のHORIBA LA-920 WET(LA-920) Version 3.02を用い、0.020μmから2000μmの範囲を測定した。分散媒としてエタノールを用い、透過率を70から95%となるようにサンプル導入し、相対屈折率をシリカ/エタノールに相当する1.08と設定し、粒子径基準を体積とし解析した。体積平均粒子径は累計50%に相当するメジアン径とし、最大粒子径は累計100%となる粒子径とした。

・・・

(3)中空シリカ粒子のBET比表面積

株式会社島津製作所製の比表面積・細孔分布測定装置「ASAP2020」を用いて、液体窒素を用いた多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。

・・・

【0028】

(7)中空シリカ粒子の[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

]]比率

Bruker社製、固体

29

Si-NMR装置「NMR AVANCE300」を用いて、

29

Si核(59.6MHz)の測定を行った。測定試料約100mgは、ジルコニア製7.5mmφローターへ密に詰めた。NMR測定法にはDDMAS法(3kHz)を用い、積算回数は640回、待ち時間は120秒とし、基準物質にはヘキサメチルシクロトリシロキサン(-9.66ppm)を用いた。

得られたスペクトルについて波形解析を行い、各シグナルの化学シフト及び積分値を求めた。この化学シフトからQ

2

、Q

3

、及びQ

4

の帰属を行い、各成分の積分値から面積百分率を算出した。この値を用い、[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]比率を算出した。

【0029】

(8)誘電率、誘電正接

(i)中空シリカ粒子の誘電率及び誘電正接は、粒子とエポキシ樹脂からなるコンポジットの誘電率、誘電正接を測定し、以下のMaxwell-Garnet式に基づき粒子そのものの物性値を算出した。

【0030】

【数1】

17

153

0001434142000004.jpg

【0031】

式中のεpは中空シリカ粒子の複素誘電率、εmは樹脂の複素誘電率、εavはコンポジットの複素誘電率、fは粒子の体積分率を意味している。粒子の体積分率は、コンポジットの組成、樹脂の密度、中空シリカの密度より算出できる。また誘電率は複素誘電率の実数部(εr)とし、誘電正接tan dは、複素誘電率の虚数部(εi)と複素誘電率の実数部(εr)の比として下記式により算出できる。

【0032】

【数2】

11

153

0001434142000005.jpg

【0033】

(ii)コンポジットの誘電率、誘電正接の測定は以下の手順で行った。

中空シリカ粒子0.6gをビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、液状タイプ、グレード:828(2~3量体)、粘度:12~15Pa・s(25°C)、エポキシ当量:184~194)、エポキシ樹脂硬化剤(ジャパンエポキシレジン株式会社製、酸無水物グレード:YH306)、硬化促進剤(ジャパンエポキシレジン株式会社製、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール、グレード:EMI24)を5:6:0.05の質量比で混合したマトリックス樹脂1.4gと混練し、樹脂組成物を製造した。この組成物をテフロン(登録商標)樹脂に幅2mm、深さ1.5mm、長さ120mmの溝を掘った鋳型に流し込み、加熱硬化させ、冷却後、鋳型から取り出し測定サンプルを得た。なお樹脂組成物の硬化は、電気乾燥機中で80°C、3時間加熱、さらに120°Cで6時間加熱し行った。

誘電特性評価は、アジレント社製のPNAマイクロ波ネットワーク・アナライザ「E8361A」(10MHz~67GHz)に、株式会社関東電子応用開発製の誘電率測定装置(共振器、5.8GHz)を接続した装置を使用して、空洞共振器摂動法を用いて、5.8GHzにて測定した。

【0035】

実施例1

500mLフラスコにメタノール(和光純薬工業株式会社製、特級)100g、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成工業株式会社製)1.7g、ドデカン(疎水性有機化合物、和光純薬工業株式会社製)1gを入れて撹拌し、A液を調製した。また、500mLフラスコに水300g、25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(和光純薬工業株式会社製)0.825gを入れて撹拌し、B液を調製した。

得られたA液を25°Cで撹拌しながらB液を添加し、次いでテトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)1.7g(C液)を加え、25°Cで5時間撹拌した。得られた白濁水溶液を5Cのろ紙でろ別し、水洗後、100°Cで乾燥機(アドバンテック製、DRM420DA)にて乾燥することにより白色粉末を得た。

得られた白色粉末を、高速昇温電気炉(株式会社モトヤマ製、商品名:SK-2535E)を用いて、エアーフロー(3L/min)しながら1°C/分の速度で600°Cまで昇温し、600°Cで2時間焼成することにより有機成分を除去し、中空シリカ粒子を得た。このシリカ粒子をアルミナ製るつぼに移し、前記電気炉を用いて、空気下1000°Cで72時間焼成した。結果を表1に示す。

・・・

【表1】

79

112

0001434142000006.jpg

【0038】

表1から、本発明の中空シリカ粒子を含有する実施例1及び2のエポキシ樹脂をマトリクス樹脂として含む低誘電樹脂組成物は、誘電率および誘電正接が十分低く、さらに比較例1及び2より平滑性の高い薄膜を形成可能であることが分かる。」

(3)甲3-2に記載の事項

甲3-2には、「電子材料用フィラー及びその製造方法、電子材料用樹脂組成物の製造方法、高周波用基板、並びに電子材料用スラリー」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

ア 「【請求項8】

粒径が100nm~2000nmであるか又は比表面積が2m

2

/g~35m

2

/gであり、200°Cで加熱したときに生成する水分量が表面積1m

2

あたり40ppm以下であり、

ビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基を有するシラン化合物にて表面処理されているシリカ粒子材料である電子材料用フィラー。

【請求項9】

粒径が100nm~2000nmであるか又は比表面積が2m

2

/g~35m

2

/gであり、200°Cで加熱したときに生成する表面積1m

2

あたり40ppm以下であり、式(A):-OSiX

1

X

2

X

3

で表される官能基と、式(B):-OSiY

1

Y

2

Y

3

で表される官能基とを表面にもち、表面にOH基を実質的に有さないシリカ粒子材料である電子材料用フィラー。

(上記式(A)、(B)中;X

1

はビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基であり;X

2

、X

3

は-OSiR3及び-OSiY

4

Y

5

Y

6

よりそれぞれ独立して選択され;Y

1

はRであり;Y

2

、Y

3

はR及び-OSiY

4

Y

5

Y

6

よりそれぞれ独立して選択される。Y

4

はRであり;Y

5

及びY

6

は、R及び-OSiR3からそれぞれ独立して選択され;Rは炭素数1~3のアルキル基から独立して選択される。なお、X

2

、X

3

、Y

2

、Y

3

、Y

5

、及びY

6

の何れかは、隣接する官能基のX

2

、X

3

、Y

2

、Y

3

、Y

5

、及びY

6

の何れかと-O-にて結合しても良い。)

【請求項10】

前記シリカ粒子材料は粒径が600nm以下であり、比表面積が5m

2

/g以上である請求項8又は9に記載の電子材料用フィラー。

【請求項11】

請求項8~10のうちの何れか1項に記載の電子材料用フィラーと、

前記電子材料用フィラーを分散する樹脂材料と、

を有する高周波用基板。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】

【0006】

本発明者らは、金属酸化物粒子材料を電子材料用フィラーに応用するに当たって、物理吸着水の量以外にも含有する水(結合水など)についても減少させることによって電気的特性(例えば誘電正接:Df)を向上することができるとの知見を得た。

・・・

【0008】

本発明者らは、物理吸着水以外に含有する水分の量を減少することにより電気的特性に優れた電子材料用フィラー及びその製造方法、電子材料用樹脂組成物の製造方法、高周波用基板、並びに電子材料用スラリーを提供することを解決すべき課題とする。

・・・

【発明の効果】

【0025】

本発明の電子材料用フィラーの製造方法は、上記構成を有することによりDf値などの電気的特性に優れた電子材料用フィラーを提供することができる。」

ウ 「【0048】

・その他の工程(加熱工程)

加熱工程は加熱により電子材料用フィラー中に含有する水分を除去する工程である。加熱工程後の水分量としては前述の本実施形態の電子材料用フィラーにおいて説明した水分量になるように加熱条件を設定する。なお、表面積1m

2

あたりの生成水量200°Cの値を満足するようにするために行う加熱工程は200°C以上での加熱を行うことが、表面積1m

2

あたりの生成水量500°Cの値を満足するようにするために行う加熱工程は500°C以上での加熱を行うことが好ましい。加熱工程はシリカ粒子材料が溶融したり、焼結したりしない程度の温度で行うことができる。

【0049】

加熱を行うのは製造工程中の何時でも良いが、特に調製工程にてシリカ粒子材料を調製するのと同時に加熱を行うことが好ましい。加熱の条件としては粒子の間が加熱により凝集しない程度の温度及び時間の組み合わせで行うことができる。特に200°C以上で加熱することが好ましく、400°C以上、更には500°Cにて加熱することがより好ましい。加熱時間は特に限定されないが、前述した水分量に到達するまで行うことが好ましい。」

エ 「【0065】

(試験1:加熱工程における加熱温度の評価)

金属ケイ素からなる粉粒体を酸化雰囲気ガス中にて燃焼させることでシリカ粒子材料を製造した(VMC法

:シリカ粒子材料製造工程)。製造したシリカ粒子材料は体積平均粒径が0.3μm、比表面積が16m

2

/gであった。なお、実施例においてシリカ粒子材料を製造した方法として「乾式法」と記載している場合にはVMC法にて製造している。

・・・

【0074】

(試験3:表面処理に用いるシラン化合物の評価及びシリカ粒子材料の粒径の評価)

シリカ粒子材料製造工程(調製工程)でのVMC法の製造条件を変更することにより体積平均粒径0.5μmのシリカ粒子材料(試験例12~16)、体積平均粒径0.2μmのシリカ粒子材料(試験例17)、体積平均粒径0.1μmのシリカ粒子材料(試験例18)、体積平均粒径2μmのシリカ粒子材料(試験例19)を製造し、それぞれ加熱工程として800°Cで加熱を行った。

【0075】

試験例14、17~19については試験例7~11と同様にビニルシラン及びHMDSにて第1表面処理工程及び第2表面処理工程を行い第2表面処理済粒子材料を製造し、各試験例の試験試料とした。試験例12、13、15、16については第1表面処理工程としてそれぞれフェニルアミノシラン、フェニルシラン、ヘキシルシラン、デシルシランにて表面処理を行った。第1表面処理済工程における表面処理は表面シラノール基量の2倍当量程度の量にて処理を行った。得られた試験試料について生成水量200°C及び誘電正接を試験1の方法で測定した。結果を表3に示す。

【0076】

【表3】

57

153

0001434142000007.jpg

(4)甲4-2に記載の事項

甲4-2には、「中空シリカ粒子及びその製造方法」(発明の名称)に関して、次の各記載がある。

ア 「【背景技術】

【0002】

内部空間を形成する外殻部を備え、外殻部がシリカを含む成分から構成される中空シリカ粒子は、低屈折率、低誘電率、低熱伝導率、低密度などの特性を有することから、反射防止材、低誘電材、断熱材、低密度フィラーとしての応用が期待でき注目を集めている。」

イ 「【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

特許文献5に開示される製造方法では、アルカリ金属含有量が低減された中空シリカ粒子を簡便に得ることができるものの、得られた中空シリカ粒子の吸水性が高く、長期保管すると空気中の水分を吸収して低誘電率を維持することができず、電気特性が悪化してしまう問題がある。また、プリント配線基板やパッケージ基板などの電子材料に用いられる封止材、絶縁膜等に吸水性の高いフィラーを用いると、フィラー起因で樹脂が吸水してしまい、電子材料の電気特性の悪化や誤作動の原因となることがある。よって、吸水性の低いフィラーが求められている。

・・・

【0017】

本開示の効果が発現するメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推定される。

特許文献5に開示される製造方法では、アルカリ金属含有量が低減された中空シリカ粒子を簡便に得ることができる。しかし、特許文献5の焼成条件では、外殻部に形成される閉気孔は水分を吸着しやすく、高湿度雰囲気下に曝されると吸水率が高い中空シリカ粒子となってしまい誘電正接を上昇させ電気特性を悪化させてしまう。

本開示では、焼成時間及び焼成温度を特定の範囲内にすることで、外殻部の微細で均一な閉気孔が減少あるいは消失、もしくは水分が吸着しにくい構造に変化し、水分が吸着しにくくなり、低吸水性の中空シリカ粒子が得られると推定される。

ただし、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。

・・・

【0041】

工程(2)の条件1において、吸水性低減の観点から、焼成温度は、1100°C以上1150°C未満であって、1100°C以上1140°C以下が好ましく、1100°C以上1130°C以下がより好ましく、1100°C以上1120°C以下が更に好ましい。同様の観点から、焼成時間は、3時間以上であって、3時間以上40時間以下が好ましく、3時間以上20時間以下がより好ましく、3時間以上10時間以下が更に好ましい。

・・・

【0058】

本開示の中空シリカ粒子は、中空シリカ粒子を利用可能な各種分野で用いることができ、例えば、触媒担体;酵素担体;吸着材料;分離材料;光学材料;電子回路の多層配線構造に用いられる絶縁材料;半導体封止材料;電子材料;低誘電膜や低誘電膜用コーティング剤等に用いられる低誘電率材料;断熱材用材料;遮蔽性材料;建築材料;スキンケア化粧料、メークアップ化粧料、ボディケア化粧料、フレグランス化粧料等の化粧料用材料;として用いられうる。」

2 甲1-2に記載された発明を主たる証拠とする新規性欠如及び進歩性欠如に関する、申立理由2-2について

(1)甲1-2に記載された発明

上記1(1)によると、甲1-2の実施例1では、「ゾルゲルシリカ粉末」を800°Cで10時間焼成を行い、平均粒子径0.74μmであり、レーザー解析散乱法において5μm以上の粗粒が検出されないことが記載されている。

そうすると、甲1-2には次の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されていると認められる。

〔甲1-2発明〕

平均粒子径が0.74μm、レーザー解析散乱法において5μm以上の粗粒が検出されないゾルゲルシリカ粉末。

(2)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1-2発明との対比

(ア)甲1-2発明の「ゾルゲルシリカ粉末」は、本件発明1の「シリカ粉体」に相当する。

(イ)甲1-2には、甲1-2発明に係る「ゾルゲルシリカ粉末」が「キュービック型細孔構造」を有するものと記載されていない。

そして、上記第6の3(1)ウで検討した内容と同様に、甲1-2発明においても、「除く」とされている「前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」に合致するものではない。

そうすると、甲1-2発明の「ゾルゲルシリカ粉末」は、本件発明1の「(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」「を除く)」の要件を満たすものである。

(ウ)甲1-2には、甲1-2発明に係る「ゾルゲルシリカ粉末」が「中空シリカ粒子」を有するものと記載されていない。

そして、上記第6の3(1)エで検討した内容と同様に、甲1-2発明においても、「除く」とされている「中空シリカ粒子」に合致するものではない。

そうすると、甲1-2発明の「ゾルゲルシリカ粉末」は、本件発明1の「(ただし、」「中空シリカ粒子を除く)」の要件を満たすものである。

(エ)甲1-2発明の「平均粒子径が0.74μm」、「レーザー解析散乱法において5μm以上の粗粒が検出されない」は、それぞれ本件発明1の「平均粒径が0.1~30μm」、「最大粒径が100μm以下」に相当する。

(オ)本件発明1と甲1-2発明は、「平均粒径が0.1~30μmであり。」「シリカ粉末の最大粒径が100μm以下であ」る「シリカ粉体(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体、及び中空シリカ粒子を除く)。」の点で一致し、以下の点で相違する。

a 本件発明1は、「誘電正接(10GHz)が0.0004以下の低誘電シリカ粉体であって、」「カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものである」「低誘電シリカ粉体」であるのに対し、甲1-2発明は、それを特定していない点(以下、「相違点2-1」という。)で相違する。

b 本件発明1は、「石英由来である」シリカ粉体であるのに対し、甲1-2発明は、「ゾルゲルシリカ粉末」である点(以下、「相違点2-2」という。)で、相違する。

イ 相違点の検討

(ア)まず、相違点2-1について検討する。

上記1(1)によると、甲1-2には、「ゾルゲルシリカ粉末」において、「誘電正接(10GHz)」の測定を行うことが記載されていない。そうすると、甲1-2には、「誘電正接(10GHz)が0.0004以下の低誘電シリカ粉体であって、」「カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものである」「低誘電シリカ粉体」について記載されているとはいえないことから、相違点2-1は実質的なものである。

また、上記1(2)~(4)に摘記した甲2-2~甲4-2の記載を踏まえても、甲1-2発明の「ゾルゲルシリカ粉末」の「誘電正接(10GHz)」の値がどの程度であるかを理解することはできず、また、「誘電正接(10GHz)が0.0004以下の低誘電シリカ粉体であって、」「カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものである」「低誘電シリカ粉体」とすることが当業者であれば容易であるともいえない。

(イ)次に、相違点2-2について検討する。

上記1(1)アによると、甲1-2の「ゾルゲルシリカ粉末」は、ゾル-ゲル法、即ち、反応媒体中で原料となる珪素アルコキシドを加水分解および重縮合してシリカゾルを生成させ、これをゲル化させたのち、生成した固形分を取り出し、乾燥して得られるシリカ粉末と記載されている。そうすると、甲1-2には、石英由来である球状シリカ粉末は記載されているとはいえない。

そして、本件明細書の【0044】には、「本発明の低誘電シリカ粉体の原料となるシリカ粉体としては、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末を2000°C程度の高温の火炎中を通すことで球状化した溶融シリカ粉体、水ガラスを原料として高純度化し高温で焼結させ粉砕したシリカ粉体、などが使用可能であるが、シリカ粉体であれば特に上記した製法に関係なく使用することができる。」と記載されているところ、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末を2000°C程度の高温の火炎中を通すことで得られたシリカ粉末は、シリカ粉末の結晶性や天然由来の不可避不純物等の点について、少なくとも甲1-2発明のゾル-ゲル法を経て得られたゾルゲルシリカ粉末と、同じ構成を備えているとはいえない。

したがって、相違点2-2は実質的なものである。

また、上記1(1)アによると、甲1-2の課題を解決するための手段欄の[0013]には、「ゾル-ゲル法によるシリカ合成時に不可避的に生成する、粗大な独立一次粒子が主であること、及びこの粗大独立一次粒子はゾル-ゲル法によるシリカ合成後、得られるシリカ粒子分散液を湿式ろ過すれば効率的に除去できることを見出し、上記課題が解決された新規なゾルゲルシリカ粉末を提案するに至った。」と記載されており、甲1-2発明は「ゾルゲルシリカ粉末」であることを前提としているといえ、これをゾルゲルシリカ粉末でない石英由来のシリカ粉体に置き換えることは、甲1-2発明を成り立たなくするものであるから、阻害要因があるものといえる。

そして、上記1(2)~(4)に摘記した甲2-2~甲4-2の記載を踏まえても、甲1-2発明を「ゾルゲルシリカ粉末」を「石英由来の」「シリカ粉体」とすることが当業者であれば容易であるとはいえない。

ウ 小括

以上から、本件発明1は、甲1-2に記載されている発明ではなく、また甲1-2に記載されている発明、及び甲2-2~甲4-2に記載されている事項に基づいて当業者であれば容易に発明し得たものではない。

(3)本件発明2-4、6について

請求項1の記載を引用する本件発明2~4、6も、上記(2)と事情は同じである。

したがって本件発明2~4、6は、甲1-2に記載されている発明ではなく、また甲1-2に記載されている発明、及び甲2-2~甲4-2に記載されている事項に基づいて当業者であれば容易に発明し得たものではない。

(4)まとめ

以上の検討のとおり、申立理由2-2には理由がない。

3 甲2-2に記載された発明を主たる証拠とする新規性欠如及び進歩性欠如に関する、取消理由1、2、申立理由3-2について

(1)甲2-2に記載された発明

上記1(1)によると、甲2-2の「中空シリカ粒子」は、体積平均粒子径が0.05~0.45μm、最大粒子径が体積平均粒子径の5倍以内、BET比表面積が30m

2

/g未満であり(【請求項1】)、固体

29

Si-NMRスペクトルによるQ

2

+Q

3

+Q

4

のシグナル面積に対する(Q

2

×2+Q

3

)のシグナル面積の比[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]が0.15以下であり(【請求項4】)、誘電正接が0.01以下である(【請求項5】)。

そうすると、甲2-2には次の発明(以下、「甲2-2発明」という。)が記載されていると認められる。

〔甲2-2発明〕

体積平均粒子径が0.05~0.45μm、最大粒子径が体積平均粒子径の5倍以内、BET比表面積が30m

2

/g未満、固体

29

Si-NMRスペクトルによるQ

2

+Q

3

+Q

4

のシグナル面積に対する(Q

2

×2+Q

3

)のシグナル面積の比[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]が0.15以下であり、誘電正接が0.01以下である中空シリカ粒子。

(2)本件発明1について

ア 本件発明1と甲2-2発明との対比

(ア)甲2-2発明の「中空シリカ粒子」は、本件発明1の「シリカ粉体」に相当する。

(イ)甲2-2には、甲2-2発明に係る中空シリカ粒子が「キュービック型細孔構造」を有するものと記載されていない。

そして、上記第6の3(1)ウで検討した内容と同様に、甲2-2発明においても、「除く」とされている「前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」に合致するものではない。

また、上記1(2)ウによると、甲2-2の実施例1(【0035】~【0037】)には、ゾルゲルシリカ粉末のBET比表面積が「18m

2

/g」と記載されていることから、甲2-2発明には、比表面積が10m

2

/g以下でない範囲も含まれている。

そうすると、甲2-2発明の「中空シリカ粉子」は、本件発明1の「(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」「を除く)」の要件を満たすものである。

(ウ)本件発明1と甲2-2発明は、「シリカ粉体(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」「を除く)」の点で一致し、以下の点で相違する。

a 甲2-2発明の中空シリカ粒子の「体積平均粒子径」、「最大粒子径」は、それぞれ本件発明1のシリカ粉体の「平均粒径」、「最大粒径」に相当する。

そうすると、本件発明1は、平均粒径が「0.1~30μm」であるのに対し、甲2-2発明は、「0.05~0.45μm」である点、及び本件発明1は、最大粒径が「100μm以下」であるのに対し、甲2-2発明は、平均粒径の「5倍以内」である点(以下、「相違点3-1」という。)で、相違する。

b 本件発明1は、「誘電正接(10GHz)が0.0004以下の低誘電シリカ粉体であって、」「カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものである」「低誘電シリカ粉体」であるのに対し、甲2-2発明は「固体

29

Si-NMRスペクトルによるQ

2

+Q

3

+Q

4

のシグナル面積に対する(Q

2

×2+Q

3

)のシグナル面積の比[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]が0.15以下であり、誘電正接が0.01以下である」「中空シリカ粒子」である点(以下、「相違点3-2」という。)で、相違する。

c 本件発明1は、「石英由来である」シリカ粉体であるのに対し、甲2-2発明は、それが特定されていない点(以下、「相違点3-3」という。)で、相違する。

d 本件発明1は、「低誘電シリカ粉体(ただし、・・・中空シリカ粒子を除く。)」であるのに対し、甲2-2発明は、「中空シリカ粒子」である点(以下、「相違点3-4」という。)で、相違する。

イ 相違点の検討

(ア)事案に鑑み、まず相違点3-4について検討する。

甲2-2発明は、「中空シリカ粒子」であるから、本件発明1の「低誘電シリカ粉体(ただし、・・・中空シリカ粒子を除く。)」とは、実質的な相違点である。

そして、上記1(2)イによると、甲2-2の「中空シリカ粒子」において、【0007】には、「本発明の中空シリカ粒子は、レーザ回折/散乱法によって測定される体積平均粒子径が0.05~0.45μmで、最大粒子径が体積平均粒子径の5倍以内であり、空孔率が20~70体積%、BET比表面積が30m

2

/g未満、98質量%以上がSiO

2

であることを特徴とする。」と記載され、【0013】には、「本発明の中空シリカ粒子は、前記特定の構造を有することにより、その誘電率、誘電正接の低下が図られる。」と記載されている。

つまり、甲2-2の「中空シリカ粒子」の空孔率の構造や、中空という特定の構造によって誘電正接の低下が図られているといえることから、「中空シリカ粒子」であることを前提としている甲2-2発明において、中空シリカ粒子を中空シリカ粒子以外の構成に置き換えることは、甲2-2に記載の誘電正接の低下等の効果を奏する必須の構成を変更し、甲2-2発明を成り立たなくするものであるから阻害要因があるといえる。

また、上記1(1)、(3)、(4)に摘記した甲1-2、甲3-2、甲4-2の記載は、上記相違点3-4に係る事項について記載するものではないから、これらの記載を踏まえても、甲2-2発明の「中空シリカ粒子」をそれ以外のシリカ粒子に置き換えることが当業者であれば容易であるともいえない。

(イ)次に、相違点3-3について検討する。

上記(ア)で検討したとおり、甲2-2発明は、「中空シリカ粒子」であることを前提としている。そして、上記1(2)によると、甲2-2の【0014】には、「[中空シリカ粒子の製造方法] 本発明の中空シリカ粒子の製造方法に特に制限はないが、下記の工程(I)~(III)を有する方法によれば、効率的に製造することができる。

工程(I):疎水性有機化合物(a)と、第四級アンモニウム塩(b)、及び加水分解によりシラノール化合物を生成するシリカ源(c)を含有する水溶液を調製する工程

工程(II):工程(I)で得られた水溶液を10~100°Cの温度で撹拌して、シリカから構成される外殻を有し、かつ核に疎水性有機化合物(a)を有するコアシェル型シリカ粒子の水分散液を調製する工程

工程(III):工程(II)で得られた水分散液からコアシェル型シリカ粒子を分離し、950°C以上の温度で焼成して、中空シリカ粒子を得る工程」と記載され、「中空シリカ粒子」を得るための製造方法について記載されている。

一方、「石英由来である」と特定される本件発明1には「中空シリカ粒子」を得るための製造方法であるとは必ずしもいえない。

また、本件明細書の【0044】には、「本発明の低誘電シリカ粉体の原料となるシリカ粉体としては、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末を2000°C程度の高温の火炎中を通すことで球状化した溶融シリカ粉体、水ガラスを原料として高純度化し高温で焼結させ粉砕したシリカ粉体、などが使用可能であるが、シリカ粉体であれば特に上記した製法に関係なく使用することができる。」と記載されているところ、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末を2000°C程度の高温の火炎中を通すことで得られたシリカ粉末は、シリカ粉末の結晶性や天然由来の不可避不純物等の点について、少なくとも甲2-2発明の「中空シリカ粒子」と、同じ構成を備えているとはいえない。

したがって、相違点3-3は実質的なものである。

また、上記(ア)で検討したとおり、甲2-2発明は「中空シリカ粉末」であることを前提としているといえ、これを「中空シリカ粉末」を得られるとは限らない石英由来のシリカ粉体に置き換えることは、甲2-2発明を成り立たなくするものであるから、阻害要因があるものといえる。

また、上記1(1)、(3)、(4)に摘記した甲1-2、甲3-2、甲4-2の記載は、上記相違点3-3に係る事項について記載するものではないから、これらの記載を踏まえても、甲2-2発明の「中空シリカ粒子」を「石英由来」とすることが当業者であれば容易であるともいえない。

(ウ)次に、相違点3-2について検討する。

上記1(2)イによると、甲2-2には、[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]がOH/Siを意味すると記載されており、[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]を低減させることは、誘電正接の低下が図られると記載されている(【0012】~【0013】)。

そして、上記1(2)ウによると、甲2-2の実施例1には、[(Q

2

×2+Q

3

)/(Q

2

+Q

3

+Q

4

)]が0と記載され、また誘電正接(5.8GHz)が0.0006と記載されている(【0035】~【0037】)。

しかしながら、誘電正接の値は測定条件となる周波数によって変化するものであるところ、甲2-2では、誘電正接を10GHzで測定しておらず、誘電正接(5.8GHz)が0.0006である例をもって、誘電正接(10GHz)が0.0004以下を満たしているとは必ずしもいえない。

よって、相違点3-2は、実質的なものである。

また、上記1(d1)、(3)、(4)に摘記した甲1-2、甲3-2、甲4-2の記載は、上記相違点3-2に係る事項について記載するものではないから、これらの記載を踏まえても、甲2-2発明の「中空シリカ粒子」において、誘電正接(10GHz)が0.0004以下とすることが当業者であれば容易であるともいえない。

ウ 小括

以上から、相違点3-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-2に記載されている発明ではなく、また甲2-2に記載されている発明、及び甲1-2、甲3-2、甲4-2に記載されている事項に基づいて当業者であれば容易に発明し得たものではない。

(3)本件発明2-4、6について

請求項1の記載を引用する本件発明2~4、6も、上記(2)と事情は同じである。

したがって本件発明2~4、6は、甲2-2に記載されている発明ではなく、また甲2-2に記載されている発明、及び甲1-2、甲3-2、甲4-2に記載されている事項に基づいて当業者であれば容易に発明し得たものではない。

(4)まとめ

以上の検討のとおり、取消理由1、2、申立理由3-2には理由がない。

4 甲3-2に記載された発明を主たる証拠とする進歩性欠如に関する、申立理由4-2について

(1)甲3-2に記載された発明

上記1(2)によると、甲3-2の試験例19(【0065】、【0074】~【0076】【表3】)には、金属ケイ素からなる粉粒体を酸化雰囲気ガス中にて燃焼させることで製造された体積平均粒子径2μmのシリカ粒子であって、

ビニルシランにより第1表面処理を行い

、誘電正接(1GHz)が0.0004のシリカ粒子が記載されている。

そうすると、甲3-2には次の発明(以下、「甲3-2発明」という。)が記載されていると認められる。

〔甲3-2発明〕

体積平均粒子径が2μm、ビニルシランによる第1表面処理を行った後の誘電正接(1GHz)が0.0004であり、金属ケイ素からなる粉粒体を酸化雰囲気ガス中にて燃焼させることで製造されたシリカ粒子。

(2)本件発明1について

ア 本件発明1と甲3-2発明との対比

(ア)甲3-2発明の「シリカ粒子」は、本件発明1の「シリカ粉体」に相当する。

(イ)甲3-2には、甲3-2発明に係る中空シリカ粒子が「キュービック型細孔構造」を有するものと記載されていない。

そして、上記第6の3(1)ウで検討した内容と同様に、甲3-2発明においても、「除く」とされている「前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」に合致するものではない。

そうすると、甲3-2発明の「中空シリカ粉子」は、本件発明1の「(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体」「を除く)」の要件を満たすものである。

(ウ)甲3-2には、甲3-2発明に係る「シリカ粒子」が「中空シリカ粒子」を有するものと記載されていない。

そして、上記第6の3(1)エで検討した内容と同様に、甲3-2発明においても、「除く」とされている「中空シリカ粒子」に合致するものではない。

そうすると、甲3-2発明の「シリカ粒子」は、本件発明1の「(ただし、」「中空シリカ粒子を除く)」の要件を満たすものである。

(エ)甲3-2発明のシリカ粒子の「体積平均粒子径が2μm」は、本件発明1のシリカ粉体の「平均粒径が0.1~30μm」に相当する。

(オ)本件発明1と甲3-2発明は、「平均粒径が0.1~30μmであ」る「シリカ粉体(ただし、前記低誘電シリカ粉体のうち、キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m

2

/g以下であるシリカ粉体、及び中空シリカ粒子を除く)」の点で一致し、以下の点で相違する。

a 本件発明1は、シリカ粉体の最大粒径が「100μm以下」であるのに対し、甲3-2発明は、最大粒径が特定されていない点(以下、「相違点4-1」という。)で、相違する。

b 本件発明1は、「誘電正接(10GHz)が0.0004以下の低誘電シリカ粉体であって、」「カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものである」「低誘電シリカ粉体」であるのに対し、甲3-2発明は「ビニルシランによる第1表面処理を行った後の誘電正接(1GHz)が0.0004」である「シリカ粒子」である点(以下、「相違点4-2」という。)で、相違する。

c 本件発明1は、「石英由来である」シリカ粉体であるのに対し、甲3-2発明は、「金属ケイ素からなる粉粒体を酸化雰囲気ガス中にて燃焼させることで製造された」シリカ粒子である点(以下、「相違点4-3」という。)で、相違する。

イ 相違点の検討

事案に鑑み、まず相違点4-2について検討する。

甲3-2発明は、「ビニルシランによる第1表面処理を行った後の誘電正接(1GHz)が0.0004であ」る「シリカ粒子。」であるところ、甲3-2には、第1表面処理を行う前のシリカ粒子の誘電正接の値は記載されていない。

そして、シリカ粒子にビニルシランによる第1表面処理を行うことは、シリカ粒子の表面の誘電正接に影響を与えるものであるといえるから、第1表面処理を行う前のシリカ粒子の誘電正接の値がどの程度の値であるかは明らかでなく、「カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下のものである」との構成を満たしているものとはいえない。

したがって、相違点4-2は実質的なものである。

また、上記1(1)、(2)、(4)に摘記した甲1-2、甲2-2、甲4-2の記載は、上記相違点4-2に係る事項について記載するものではないから、これらの記載を踏まえても、甲3-2発明の「シリカ粒子」において、「カップリング剤による表面処理前の誘電正接(10GHz)が0.0004以下」とすることが当業者であれば容易であるともいえない。

ウ 小括

以上から、相違点4-1、4-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3-2に記載されている発明ではなく、また甲3-2に記載されている発明、及び甲1-2、甲2-2、甲4-2に記載されている事項に基づいて当業者であれば容易に発明し得たものではない。

(3)本件発明2-4、6について

請求項1の記載を引用する本件発明2~4、6も、上記(2)と事情は同じである。

したがって本件発明2~4、6は、甲3-2に記載されている発明ではなく、また甲3-2に記載されている発明、及び甲1-2、甲2-2、甲4-2に記載されている事項に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものではない。

(4)まとめ

以上の検討のとおり、申立理由4-2には理由がない。

第8 実施可能要件違反、サポート要件違反(申立理由1-2)についての当審の判断

1 申立理由1-2の内容

異議申立人2が提出した特許異議申立書の第8頁下から6行~第9頁第17行における理由は、以下のとおりである。

「(4-2-1)実施可能要件違反(36条4項1号)について

本件特許発明は、誘電正接(10GHz)が0.0004以下であることを特定しているところ、上記した上申書における特許権者の主張を参照しつつ発明の詳細な説明を解釈すると、本件特許明細書に開示されるシリカ粒子は、原料となるシリカ粉体を加熱し、更にエッチング処理した後の誘電正接が0.0004以下であるシリカ粒子である。請求項1に係る本件特許発明(以下、本件特許発明1と呼ぶ。請求項2以降についても同様)、本件特許発明2~4及び6のいずれも、エッチドシリカ粉体ではない低誘電シリカ粉体も含んでいるが、エッチドシリカ粉体に限定されない態様において、誘電正接(10GHz)を0.0004以下にする方法について、本件特許明細書には何ら記載されていない。

従って、本件特許発明1~4及び6は、実施可能でない範囲を含んでおり、実施可能要件違反である。

(4-2-2)サポート要件違反(36条6項1号)について

また、本件特許発明は、誘電正接が非常に小さいシリカ粉体を得ることを課題としているところ(段落0001)、本件特許発明1~4及び6はこの達成すべき結果により特定された発明である。しかし、上記した上申書における特許権者の主張を参照しつつ、発明の詳細な説明を解釈すると、本件特許明細書には、エッチドシリカとする特定の手段によってこの課題を達成した発明が記載されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

従って、本件特許発明1~4及び6はサポート要件違反である。」

2 本件特許明細書の記載

本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【0083】

[実施例1-4、比較例1-3]

以下のように樹脂組成物を調製し、得られた樹脂組成物の硬化物について誘電正接を測定した。結果を表2、3に示す。

【0084】

(実施例1)

平均粒径15μm、誘電正接0.0006、水酸基含有量370ppmのシリカ粉体A1(龍森社製 RS8225)5Kgをアルミナ容器に入れマッフル炉(アズワン社製)において空気中で900°C、5時間加熱後、室温まで6時間かけて冷却した。加熱処理後のシリカ粉体をアルカリ電解水(pH13)20リットルの入ったプラスチック容器に入れて60°Cに加熱しながら2時間攪拌することで粒子表面の歪層を除去した。その後、遠心分離装置でシリカ粉体を分離した後、メタノールで洗浄して乾燥した。乾燥したシリカ粉体をボールミルで解砕し、150メッシュの篩で粗粒をカットしたシリカ粉体LK-1の水酸基含有量は270ppmと減少し、誘電正接は0.0002であった。

・・・

【0087】

(実施例4)

平均粒径15μm、誘電正接0.0006のシリカ粉体A1(龍森社製 RS8225)5Kgをアルミナ容器に入れマッフル炉(アズワン社製)において表3に記載の温度、時間、雰囲気で加熱処理した。加熱後、室温まで6時間かけて冷却しシリカ粉体LK-4,LK-5,LK-6,LK-7、LK-8を得た(実施例4-1~4-5)。加熱処理したシリカ粉体をボールミルで解砕し、150メッシュの篩で粗粒をカットしたそれぞれのシリカ粉体について誘電正接(10GHz)と水酸基含有量を測定し表3に示した。

・・・

【0091】

【表2】

58

153

0001434142000008.jpg

【0092】

【表3】

50

149

0001434142000009.jpg

・・・

【0100】

表2,3から明らかなように、本発明のシリカ粉体(実施例1-3、実施例4の1-5)は、未処理のシリカ粉体よりも大幅に誘電正接(tanδ)が低下する。一方、熱処理温度が低いもの(比較例1)や、熱処理が不十分(処理時間が短い)もの(比較例3)では、誘電正接の改善は見られなかった。また、熱処理温度が高過ぎると部分的に融着し解砕できなくなる(比較例2)。熱処理の雰囲気は、空気でも、窒素でも十分に誘電正接が改善されるが、窒素雰囲気で高温処理すると、粉体中の水酸基量がより少なくなる傾向がある(実施例4の4,5)。このように、適切な熱処理をシリカ粉体に施すことで望ましい低誘電正接のシリカ粉体を得ることができる。

【0101】

実施例1(LK-1)と実施例4の3(LK-6)の結果より、エッチング処理の前後で粉体の誘電正接と水酸基量はほとんど変化しないことがわかる。一方、それぞれを樹脂に配合して得られた組成物の硬化物を破壊して破断面を観察すると、前者(実施例5)では、樹脂とシリカ粉体が強固に結合しているため、樹脂部分での破壊が多くみられるのに対し、後者(実施例6)では、シリカ粉体と樹脂の界面で破壊していた。このことから、エッチング処理は、熱処理後の粉体の誘電正接にほとんど影響を与えずに樹脂との接着強度を向上させる作用があることがわかる。」

3 判断

前記2によると、本件明細書の【0084】、【0091】【表2】には、実施例1はアルカリ電解水を用いてエッチング処理を行うことが記載されており、誘電正接(10GHz)は0.0002であると記載されている。また本件明細書の【0087】、【0092】【表3】には、実施例4はエッチング処理を行うとの記載はなく、誘電正接(10GHz)は0.0002~0.0004であると記載されている。

そして、本件明細書の【0101】には、「実施例1(LK-1)と実施例4の3(LK-6)の結果より、エッチング処理の前後で粉体の誘電正接と水酸基量はほとんど変化しないことがわかる。」と記載されていることを踏まえると、実施例4は、エッチング処理を行っていないものといえる。

つまり、本件明細書には、エッチング処理を行っていない粉体であって、誘電正接(10GHz)が0.0002~0.004である例が実施例として記載されているといえる。

そうすると、上記1の「請求項1に係る本件特許発明(以下、本件特許発明1と呼ぶ。請求項2以降についても同様)、本件特許発明2~4及び6のいずれも、エッチドシリカ粉体ではない低誘電シリカ粉体も含んでいるが、エッチドシリカ粉体に限定されない態様において、誘電正接(10GHz)を0.0004以下にする方法について、本件特許明細書には何ら記載されていない。」、「本件特許明細書には、エッチドシリカとする特定の手段によってこの課題を達成した発明が記載されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」との点は、本件明細書に記載された内容に基づいておらず、正しくない。

4 まとめ

以上の検討のとおり、申立理由1-2には理由がない。

5 令和7年 8月28日に提出された意見書における異議申立人1の主張について

異議申立人1が付記として主張する、令和7年 8月28日に提出された意見書の第3頁第15行~第4頁第1行における理由は、以下のとおりである。

「本件明細書の段落【0045】には、「アルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属やこれらの金属酸化物の含有量がそれぞれ金属質量換算で200ppm以下であれば、加熱処理の工程で容易に結晶化せず、目的とする低誘電のシリカ粉体を得ることができる」と記載されている。

すなわち、本件明細書には、アルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属及びそれらの金属酸化物が200ppmを超えて存在すると、加熱処理の工程で容易に結晶化しやすく、目的とする低誘電のシリカ粉体が得られないことが示唆されているといえる。よって、「石英由来」であることのみが特定されており、アルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属及びそれらの金属酸化物の含有量の上限値について規定されていない本件請求項1に係る低誘電のシリカ粉体をどのように製造できるのか、当業者であっても理解することができない。したがって、「石英由来」であることのみが特定されている本件請求項1は、実施可能要件についての問題も包含している。」

上記主張は、本件発明1の実施可能要件を問題とするところ、実施可能要件の判断は、「特許法第36条第4項第1号には、発明の詳細な説明の記載について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることが規定されるところ、「物の発明」である本件発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえるためには、発明の詳細な説明の記載及び本件特許出願時の技術分野における技術常識を参照した当業者が、過度の試行錯誤を要することなく、その物を作り、かつ、その物を使用できることが必要である。」との観点によって判断するとされていることから、「石英由来の」シリカ粉体において、「アルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属やこれらの金属酸化物の含有量がそれぞれ金属質量換算で200ppm以下」のものを得られるか否かについて検討する。

上記第6の3(2)で検討したとおり、本件明細書の【0044】の記載を踏まえると、「石英由来の」シリカ粉体とは、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末を2000°C程度の高温の火炎中を通すことで得られたものといえる。そして、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末には、アルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属やこれらの金属酸化物の含有量が一定量含まれているものといえる。

そして、本件明細書の【0045】には、シリカ粉末に「金属質量換算で200ppm以下」とすることにより「目的とする低誘電のシリカ粉体を得ることができる」ことが記載されていることから、当業者であれば、石英由来のシリカ粉体において含まれる金属酸化物の含有量を低減できる周知な技術を適用することで、本件発明を実施することは可能であるといえる。

また、天然に産出する結晶性の石英を粉砕した粉末には、アルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属やこれらの金属酸化物の含有量が一定量含まれているものとしても、金属質量換算で200ppm以下の石英を原料として用いることも可能であるといえる。

そうすると、「石英由来の」シリカ粉体において、「アルミニウム、マグネシウム及びチタンから選ばれる金属やこれらの金属酸化物の含有量がそれぞれ金属質量換算で200ppm以下」のものを得ることは、当業者にとって過度の試行錯誤なく、実施できるものであるといえる。

そして、このようにして得られるシリカ粉体は、低誘電のものであるといえる。

よって、異議申立人1の上記主張は採用できない。

第9 むすび

以上のとおりであるから、本件特許1~4、6は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。

また、他に本件特許1~4、6を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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