結論テキスト
特許第7566082号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第7566082号の請求項1に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700341 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7566082号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね、次のとおりである。
平成29年 2月20日 原出願(特願2021-56996号(
優先日 平成28年3月23日))
令和 5年 6月20日 出願
令和 6年10月 3日 特許権の設定登録
令和 6年10月11日 特許掲載公報
令和 7年 3月25日 特許異議申立人河村貴子による特許異議
の申立て
令和 7年 5月 9日 特許異議申立人による手続補正書(方式
)の提出
令和 7年 6月27日付け 取消理由通知書
令和 7年 8月26日 特許権者による意見書及び訂正請求書の
提出
令和 7年 9月 8日 特許権者による手続補正書(方式)の提
出
令和 7年 9月17日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 7年10月24日 特許異議申立人による意見書の提出
以下、令和7年9月8日付け手続補正書(方式)により補正された令和7年8月26日付け訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。
本件訂正の請求は、特許第7566082号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1において、「化粧道具に付着させるものである」と記載されているのを、「化粧道具に付着させるものであ
り、
」との記載に訂正した上で、その後に、「
下記の(1)~(7)の少なくとも一つを満足する
」との記載を加え、さらに末尾の「化粧料容器。」との記載の後に、以下の事項を追加する。
「
(1)前記芯鞘構造の繊維は、芯部分が鞘部分よりも融点の高い熱可塑性樹脂で構成されている
(2)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、芯鞘構造の繊維が鞘部分の一部で融着している
(3)前記芯鞘構造の繊維が螺旋形状である偏心芯鞘型複合繊維を含んでいる
(4)前記芯鞘構造の繊維の太さが2.0~15dtexである
(5)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、見掛け密度が0.04~0.10g/cm
3
である
(6)前記化粧料容器は、収納容器と、該収納容器に開閉可能に組み合わされた蓋体とを備える
(7)前記紫外線吸収剤が、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルである
」
(1) 訂正の目的
訂正事項1は、「化粧料容器」について、「芯鞘構造の繊維」に係る「(1)前記芯鞘構造の繊維は、芯部分が鞘部分よりも融点の高い熱可塑性樹脂で構成されている」、「(2)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、芯鞘構造の繊維が鞘部分の一部で融着している」、「(3)前記芯鞘構造の繊維が螺旋形状である偏心芯鞘型複合繊維を含んでいる」、「(4)前記芯鞘構造の繊維の太さが2.0~15dtexである」、「(5)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、見掛け密度が0.04~0.10g/cm
3
である」との事項、「化粧用容器」に係る「(6)前記化粧料容器は、収納容器と、該収納容器に開閉可能に組み合わされた蓋体とを備える」との事項、「紫外線吸収剤」に係る「(7)前記紫外線吸収剤が、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルである」との事項について、「少なくとも一つを満足する」ものであると、より具体的に特定するものである。
よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 新規事項の追加の有無
ア 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、次の記載がある。
・「【0007】
第2の態様は、
第1の態様において、前記芯鞘構造の繊維は熱可塑性樹脂からなり、かつ芯部分が鞘部分よりも融点の高い熱可塑性樹脂で構成され
、
前記芯鞘構造の繊維の集合体は、前記芯鞘構造の繊維が前記鞘部分の一部で融着している
ことを特徴とする。
【0008】
第3の態様は、
第1または第2の態様において、
請求項1または2において、
前記芯鞘構造の繊維は螺旋形状である偏心芯鞘型複合繊維が含まれている
ことを特徴とする。
【0009】
第4の態様は、第1から第3の態様の何れか一の態様において、前記芯鞘構造の繊維の芯部及び鞘部共にポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする。
【0010】
第5の態様は、
第1から第4の態様の何れか一の態様において、前記芯鞘構造の繊維は太さが2.0~15dtexである
ことを特徴とする。なお、dtex(デシテックス)は、長さ10000mの糸の重量(グラム単位)を表す。
【0011】
第6の態様は、
第1から第5の態様の何れか一の態様において、前記芯鞘構造の繊維の集合体は、見掛け密度(JIS K 6400-1準拠)が0.03~0.10g/cm
3
である
ことを特徴とする。
【0012】
第7の態様は、第1から第6の態様の何れか一の態様の化粧料保持体が収納された化粧料容器を特徴とする。」
・「【0014】
第2の態様によれば、
芯鞘構造の繊維の集合体は、芯鞘構造の繊維が鞘部分の一部で融着している
ため、繊維間に隙間を形成することができ、化粧料の含浸保持性を良好なものにできる。
【0015】
第3の態様によれば、
芯鞘構造の繊維が螺旋形状である偏心芯鞘型複合繊維を含んでいる
ため、繊維集合体の弾力性および形状変形後の戻り性に優れ、継続使用が良好となる。」
・「【0017】
第5の態様によれば、
芯鞘構造の繊維を太さが2.0~15dtexとする
ことにより、化粧料保持体に化粧料が含浸しやすく、必要とされる容量を保持することができる。
【0018】
第6の態様によれば、
芯鞘構造の繊維の集合体は、見掛け密度が0.03~0.10g/cm
3
とする
ことにより、化粧料の塗布部材で化粧料を移し取るのに適度な弾力性を与えることができる。」
・「【0021】
...芯鞘構造の繊維は熱可塑性樹脂からなり、かつ
芯部分が、鞘部分よりも融点の高い熱可塑性樹脂で構成されたものが好ましい。
...
【0022】
...また、
前記芯鞘構造の繊維は、太さが2.0~15dtexのものが、化粧料の含浸保持の点からより好ましい。
【0023】
また、前記芯鞘構造の繊維は、立体捲縮を発現している顕在捲縮、又は加熱することにより立体捲縮を発現する潜在捲縮のいずれでも良く、
捲縮は波形状もしくは螺旋形状のいずれでも良い。
なかでも螺旋形状および波形形状が混合された繊維が、繊維集合体の弾力性および形状変形後の戻り性に優れており好ましい。
さらに、
偏心芯鞘型複合繊維が、立体捲縮するうえで好ましい。
...」
・「【0024】
...特に
前記芯鞘構造の繊維における鞘部分の一部で融着したものが前記芯鞘構造の繊維の集合体としてより好ましい。
...
【0025】
また、
前記芯鞘構造の繊維の集合体は、見掛け密度(JIS K 6400-1準拠)が0.03~0.10g/cm
3
のものが、化粧料の含浸保持性の点からより好ましい。
...
【0026】
...
前記容器本体は、容器本体となる収納容器と、該収納容器に開閉可能に組み合わされた蓋体とからなる。
...」
・「【0030】
実施例1:芯鞘構造の繊維は、芯部分がPP(ポリプロピレン)、鞘部分がPE(ポリエチレン)、太さ2.2dtexからなり、芯鞘構造の繊維の集合体は、品名:バフター、イノアックコーポレーション製、
見掛け密度が0.04g/cm
3
であり、表1の浸漬前のサイズからなる。なお、体積は寸法から計算した(以下同様である)。
...
実施例4:芯鞘構造の繊維は、芯部分がPP(ポリプロピレン)、鞘部分がPE(ポリエチレン)、太さ6.7dtexからなり、芯鞘構造の繊維の集合体は、
見掛け密度が0.04g/cm
3
であり、表1の浸漬前のサイズからなる。
...
実施例7:芯鞘構造の繊維は、芯部分がPP(ポリプロピレン)、鞘部分がPB(ポリブテン-1)、太さ6.7dtexからなり、
偏芯率25%、断面形状は、重心位置がずれた二重円、螺旋形状の捲縮繊維である。
芯鞘構造の繊維の集合体は、品名:バフター、イノアックコーポレーション製、
見掛け密度が0.04g/cm
3
であり
、表1の浸漬前のサイズからなる。」
・「【0035】
また、前記紫外線吸収剤に代えて、紫外線吸収剤が含有された市販の化粧料を用いて前記実施例及び比較例に対して耐膨潤性を調べた。
使用した化粧料は、品名:B.Aザクリーミィファンデーション(B3)、ポーラ(株)製、含有されている
紫外線吸収剤は、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルである。
...」
以上のような本件明細書等の記載を総合すると、本件明細書等には、「化粧料容器」について、「芯鞘構造の繊維」に係る「(1)前記芯鞘構造の繊維は、芯部分が鞘部分よりも融点の高い熱可塑性樹脂で構成されている」、「(2)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、芯鞘構造の繊維が鞘部分の一部で融着している」、「(3)前記芯鞘構造の繊維が螺旋形状である偏心芯鞘型複合繊維を含んでいる」、「(4)前記芯鞘構造の繊維の太さが2.0~15dtexである、「(5)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、見掛け密度が0.04~0.10g/cm3である」との事項、「化粧用容器」に係る「(6)前記化粧料容器は、収納容器と、該収納容器に開閉可能に組み合わされた蓋体とを備える」との事項、「紫外線吸収剤」に係る「(7)前記紫外線吸収剤が、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルである」との事項について、「少なくとも一つを満足する」ものである点について、記載されていると認められる。
そうすると、訂正事項1に係る本件訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、新規事項を追加するものではない。
イ 異議申立人は、「上記の(1)~(7)の少なくとも一つを満足する」場合の数は、計算上、127通りとなるが、本件明細書等(【0007】、【0008】、【0010】、【0011】、実施例1に関する記載、【0026】、【0035】等)は、(1)~(7)の7要件の1以上を選択し得ることとする根拠にならない、などと主張しているが(令和7年10月24日付け意見書)、本件明細書等の記載を総合すると、訂正事項1に係る事項は、新規事項を追加するものとは認められない。
(3) 訂正事項1に係る本件訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された事項をより具体的にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(4) まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであって、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりである。
【請求項1】
紫外線吸収剤を含有し、
流動性を有する化粧料と、
前記化粧料を含浸保持した化粧料保持体と、
を収納した化粧料容器において、
前記化粧料保持体は、芯鞘構造の繊維の集合体であり、前記化粧料保持体の表面が化粧道具で擦られて前記流動性を有する化粧料を化粧道具に付着させるものであり、
下記の(1)~(7)の少なくとも一つを満足することを特徴とする化粧料容器。
(1)前記芯鞘構造の繊維は、芯部分が鞘部分よりも融点の高い熱可塑性樹脂で構成されている
(2)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、芯鞘構造の繊維が鞘部分の一部で融着している
(3)前記芯鞘構造の繊維が螺旋形状である偏心芯輪型複合繊維を含んでいる
(4)前記芯の繊維の太さが2.0~15dtexである
(5)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、見掛け密度が0.04~0.10g/cm
3
である
(6)前記化粧料容器は、収納容器と、該収納容器に開閉可能に組み合わされた蓋体とを備える
(7)前記紫外線吸収剤が、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルである
(1) 取消理由1(拡大先願)
本件発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた後記2の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものである。
(2) 取消理由2(サポート要件)
請求項1に係る特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。すなわち、特定の「紫外線吸収剤を含有し、流動性を有する化粧料」と「芯鞘構造の繊維」の組み合わせしか開示されていない発明の詳細な説明の記載から化粧料と繊維について何ら特定していない本件発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえず、特定の化粧料の耐膨潤性の結果から、本件発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
取消理由通知で引用した引用例は以下のとおりである(括弧内は、引用例に対応する、特許異議申立人が提出した証拠方法である。)。
引用例1(甲第1号証):特願2015-150332号(特開2017-29268号公報)
引用例2(甲第2号証):アットコスメ>インテグレート>ミネラルウォータリーファンデーションの商品情報ページ,[online],インターネット,<URL:https://www.cosme.net/products/10016959/>
引用例3(甲第3号証):Cosmetic-Info.jpの全成分リストのページ、商品詳細 インテグレート ミネラルウォータリーファンデーション(オークル10),[online],インターネット,<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=20570>
引用例4(甲第4号証):Cosmetic-Info.jpの全成分リストのページ、商品詳細 インテグレート ミネラルウォータリーファンデーション(オークル20),[online],インターネット,<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=20571>
引用例5(甲第5号証):Cosmetic-Info.jpの全成分リストのページ、商品詳細 インテグレート ミネラルウォータリーファンデーション(オークル30),[online],インターネット,<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=20572>
引用例6(甲第7号証):Cosmetic-Info.jpの原料のページ、製品詳細 Uvinul(登録商標) A Plus B,[online],インターネット,<URL:https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=2387>
引用例7(甲第8号証):Cosmetic-Info.jpの原料のページ、製品詳細 Uvinul(登録商標) MC80,[online],インターネット,<URL:https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=2389>
引用例8(甲第9号証):Cosmetic-Info.jpの原料のページ、製品詳細 Uvinul(登録商標) A Plus Granular,[online],インターネット,<URL:https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.ph?id=2386>
引用例9(甲第10号証):Cosmetic-Info.jpの全成分リストのページ、商品詳細 B. A ザ クリーミィファンデーション (B3),[online],インターネット,<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=33083>
引用例10(甲第11号証):中條澄,「エンジニアのためのプラスチック教本」,株式会社 工業調査会,1997年12月1日,初版第1刷,表紙,p.229-235,奥付
引用例11(甲第12号証):桜内雄二郎,「全面改訂版 プラスチック技術読本」,株式会社 工業調査会,1993年12月10日、全面改訂版第1刷,表紙,巻頭,p.52-55,奥付
引用例12(甲第13号証):鈴木正人,「機能性化粧品の開発II」,株式会社 シーエムシー出版,2006年8月22日,普及版第1刷発行,表紙,p.92-93,奥付
(1) 引用例1には、次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
不織布の表面に、多孔性シートを積層させてなる液体化粧料保持・供給用パッド。
【請求項2】
該多孔性シートがオレフィン系樹脂からなる請求項1に記載の液体化粧料保持・供給用パッド。
【請求項3】
該不織布を構成する繊維がPP/PE鞘芯構造を有する繊維である
請求項1又は2に記載の液体化粧料保持・供給用パッド。
【請求項4】
該不織布は密度が8,000~45,000g/m
3
の不織布である
請求項1~3のいずれかに記載の液体化粧料保持・供給用パッド。」
・「【0001】
本発明は、
液体化粧料を含浸・保持し、化粧料塗布具に液体化粧料を転写させて供給するためのパッドに関する。
」
・「【0002】
液体化粧料を塗布する際に化粧品容器に組み込んで使用する、液体化粧料を含浸・保持し化粧料塗布具に供給するための基材として、網状型構造を有するポリエーテル系ウレタンフォームを採用することは特許文献1に記載されており、そのポリエーテル系ウレタンフォームは、液体化粧料を十分に含浸させることができ、液体化粧料含浸後も優れた耐久性及び安定性を維持しており、液体化粧料の使用感及び塗布感を増大させることができるとされている。
...
【0004】
上記の背景技術に記載されているように、パフ等の化粧料塗布具に液体化粧料を転写させて供給し肌に塗布するための、液体化粧料を含浸・保持するポリエーテル系ウレタンフォームは知られているが、液体化粧料を含浸・保持させたポリエーテル系ウレタンフォームは耐久性・安定性に優れ、さらにこれを使用し化粧料塗布具に液体化粧料を転写させて供給し化粧した際の使用感及び塗布感に優れるとされるに留まる。そして、さらに化粧料塗布具に液体化粧料を転写させて供給する機能性、すなわち液体化粧料の含浸量の変化や化粧料塗布具での塗布可能回数等、
保存による膨潤
や劣化、残存する化粧料をより削減すること
について何ら考慮していない。
本発明は、液体化粧料の含浸・保持量が多く、かつ一旦含浸・保持した液体化粧料のうちの可能な限り多くの液体化粧料を、使用開始から終了にかけて均一に安定して化粧料塗布具に転写させて供給するための液体化粧料保持・供給用パッドを得ることを課題とする。」
・「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明において、上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.
不織布の表面に、多孔性シートを積層させてなる液体化粧料保持・供給用パッド。
2.該多孔性シートがオレフィン系樹脂からなる1に記載の液体化粧料保持・供給用パッド。
3.
該不織布を構成する繊維がPP/PE鞘芯構造を有する繊維である
1又は2に記載の液体化粧料保持・供給用パッド。
4.
該不織布は密度が8,000~45,000g/m
3
の不織布である
1~3のいずれかに記載の液体化粧料保持・供給用パッド。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液体化粧料のより多くの量を含浸・保持させることができ、化粧料塗布具を介して一旦含浸・保持した液体化粧料を使用開始から終了にかけてより軽い力で使用でき、かつ均一に安定して肌に塗布することができる。また
液体化粧料を含浸・保持した状態から使用につれてその含浸量が減少しても、液体化粧料保持・供給用パッドは膨潤せず
、その体積変化が少ないので、
容器内に確実に収納でき
、かつ劣化を防止できると共に使用後に残存する化粧料を削減できるという利点もある。」
・「【0007】
(不織布)
本発明にて使用する不織布は、PET等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなる繊維のものを採用することができる。本発明にて使用される不織布としては、不織布を構成する繊維自体が吸水性を有しないものの方が好ましい。
なかでも、
PP/PE鞘芯構造を有する繊維からなる不織布を採用する
ことにより、シートの積層強度を維持することができる。この
PP/PE鞘芯構造は、ポリエチレンを芯とし、そのポリエチレンの周囲にポリプロピレンを鞘として被覆してなる構造である。
不織布の密度は8,000~45,000g/m
3
が好ましく
、さらに10,000~45,000g/m
3
が好ましい。」
・「【0008】
(多孔性シート)
本発明にて使用する多孔性シートとしては、不織布ではない公知の多孔性ネット又は多孔性フィルムと称する表面から裏面への貫通孔を有する多孔性シートを使用することができる。
なかでもポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等オレフィン樹脂からなる吸水性を有さない多孔性シートを使用することが好ましい。そして、この多孔性シートに化粧用塗布具を押し当て液体化粧料を転写させて使用することにより、使用開始から終了までの間、化粧料塗布具に転写される液体化粧料の量にムラが発生せず、肌に対して均一に安定して液体化粧料を塗布することができる。
この多孔性シートを使用しないと化粧料塗布具に転写される液体化粧料の量にムラが発生することになり、特に使用開始直後において化粧料塗布具に対し過剰に液体化粧料を供給する傾向を示すこととなる。
」
・「【0009】
(液体化粧料)
本発明の液体化粧料保持・供給用パッドには、水性及び油性のいずれの液体化粧料を含浸させても良い。
ただ、液体化粧料保持・供給用パッドに液体化粧料を含浸させて化粧品容器内に収納したとき、そのパッド表面から化粧料塗布具に転写することができ、肌に対して塗布することができる液体化粧料であることが必要である。」
・「【0010】
(使用方法)
本発明の液体化粧料保持・供給用パッドは、化粧品容器に装着する
などして、液体化粧料をスポンジ等に吸収させてなる従来のパッドと特に変わらない方法で使用できる。」
・「【0011】
本発明の液体化粧料保持・供給用パッドと比較例のパッドを皿状容器に装着し、それらのパッドに液体化粧料を含浸・保持させた。
次に、
液体化粧料を含浸・保持させた各パッドの表面に化粧料塗布具を押し当てて化粧料塗布具に液体化粧料を転写した。
そして、この液体化粧料を転写した化粧料塗布具の塗布面を、別に用意した不織布の表面に押し当てるという動作を繰り返して液体化粧料の塗布試験を行った。
下記表1~4において、
「不織布」とは、多孔性シートを積層させていない本発明と同様の不織布のみからなるパッドを使用した例であり、
「不織布+多孔性シート」とは、本発明のパッドを使用した例であり、
「NBR」とは、合成ゴムNBRの多孔質スポンジからなるパッドを使用した例である。
なお、
不織布としては、PP/PE鞘芯構造を有する繊維 20D 100% 390g/m
2
のものを使用した。
【0012】
本実施例で使用する各パッドの乾燥時のサイズを測定した。そして、測定したサイズから各パッドの容積を算出した。この結果を表1に示す。
【表1】
34
112
0001434151000001.jpg
【0013】
各パッドを皿状容器(直径60mm×高さ5mm)に装着して
パッド装着皿状容器の重量を測定した。次に、
各皿状容器に装着したこれらのパッドに液体化粧料(資生堂製「インテグレート ミネラルウオータリーファンデーション」)を含浸・保持させて
、液体化粧料含浸・保持パッド装着皿状容器の重量を測定した。なお、パッドに液体化粧料を含浸・保持させる際には、皿状容器に装着したパッドに液体化粧料を徐々に染み込ませ、パッドを軽く押さえて液体化粧料が滲み出る状態になるまで含浸・保持させる操作を行った。
そして、パッド装着皿状容器重量と液体化粧料含浸・保持パッド装着皿状容器重量とからパッド液体化粧料含浸・保持重量を算出し、パッド液体化粧料含浸・保持重量と乾燥時パッド容積とからパッド容積当たり液体化粧料含浸・保持重量を算出した。これらの結果を表2に示す。
【0014】
【表2】
39
111
0001434151000002.jpg
【0015】
これらの結果、
スポンジ系のパッドで最も液体化粧料の含浸・保持量が多いことを確認していたNBRパッドよりも不織布を使用したパッドの方が液体化粧料の含浸・保持量の多いことがわかった。
そして、不織布の表面に多孔性シートを積層させたパッドの方が、その積層時に若干加圧されるので、単位体積当たりの保持量が増加することを反映して、不織布のみのパッドより液体化粧料の含浸・保持量の多いこともわかった。
【0016】
これらの皿状容器に装着して液体化粧料を含浸・保持させたパッドについて、化粧料塗布具による連続塗布による評価を行った。
具体的には、
液体化粧料を含浸・保持させた各パッドに化粧料塗布具の塗布面を1回押し当てて、化粧料塗布具の塗布面に液体化粧料を転写させた後、別に用意した不織布の表面に液体化粧料を転写させた化粧料塗布具の塗布面を軽い力で押し当てた。
この一連の操作を1回とカウントして、不織布の表面に液体化粧料が塗布できなくなる(塗布終了)までこの一連の操作を繰り返した。
塗布終了後、液体化粧料が残存するパッド装着皿状容器の重量(液体化粧料塗布終了後パッド装着皿状容器重量)を測定した。そして、液体化粧料含浸・保持パッド装着皿状容器重量と液体化粧料塗布終了後パッド装着皿状容器重量とからパッド液体化粧料供給重量を算出し、パッド液体化粧料供給重量とパッド液体化粧料含浸・保持重量とからパッド液体化粧料供給率を算出した。これらの結果を表3に示す。
【0017】
【表3】
39
111
0001434151000003.jpg
【0018】
また、パッド液体化粧料含浸・保持重量とパッド液体化粧料供給重量とからパッド液体化粧料残存率を算出した。これらの結果を表4に示す。
【0019】
【表4】
45
111
0001434151000004.jpg
【0020】
これらの結果、NBRパッドよりも不織布を使用したパッドの方が液体化粧料の供給率が遥かに高く、また液体化粧料の残存率が遥かに低かった。
また、本実験における、塗布終了までの操作回数を測定した結果を表5に示す。
【0021】
【表5】
50
112
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【0022】
これらの結果、NBRパッドよりも不織布を使用したパッドの方が持続して液体化粧料を供給できることがわかった。
そして、不織布を使用したパッドよりも、不織布の表面に多孔性シートを積層させたパッドの方が不織布のみのパッドより塗布終了までの操作回数が多いことから、持続性が優れ、かつ均一に安定して供給できることがわかった。
【0023】
さらに、各パッドの形状変化を確認する目的で、塗布終了後の各パッドのサイズを測定して、
乾燥時パッドサイズと塗布終了後パッドサイズとから各パッドの線膨潤率を算出した。
【0024】
【表6】
50
112
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※線膨潤率はタテ及びヨコのサイズで算出した。厚みのサイズは考慮していない。
【0025】
これらの結果、NBRパッドよりも不織布を使用したパッドの方が遥かに線膨潤率の低いことがわかった。
そして、不織布の表面に多孔性シートを積層させたパッドの方が、不織布の膨潤を多孔性シートが規制することもあり、不織布のみのパッドより線膨潤率の低いことがわかった。ここで
線膨潤率が低いということはパッド自体の変形が少ないことを意味するので、保存時の変形・劣化防止という面でも優れていることがわかる。
上記した液体化粧料の塗布試験の結果、本発明の液体化粧料保持・供給用パッドは、不織布を使用することにより、スポンジ系のパッドより高い含浸・保持能を有するとともに液体化粧料の高い供給能を有しており、
さらに不織布の表面に多孔性シートを積層することにより、不織布のみのパッドより液体化粧料を均一に安定して供給することができると共にパッド自体の変形や劣化が少ないという特徴を有することがわかった。
したがって、本発明の液体化粧料保持・供給用パッドは、化粧容器等に装着して液体化粧料を含浸・保持させる基材として安定的かつより多くの量の化粧料を供給でき、かつ保存によっても膨潤や劣化することなく、化粧容器内に確実に保持される点において有用である。」
(2) 引用例1に記載の不織布は、密度が8000~45000g/m
3
であるから(【請求項4】)、換算すると0.008~0.045g/cm
3
であることが分かり、表1等に示される「不織布」は、乾燥時のサイズ(30×30×11.80(mm))、目付量(390g/m
2
)から、密度が0.033g/cm
3
であることが分かる。
そして、引用例1に記載の表1等に示される「不織布」、「不織布+多孔性シート」、及び「NBR」の実施例のうち、「不織布」の例は、「不織布+多孔性シート」の例よりも性能が劣るとしても、「NBR」の例に対し、液体化粧料の含浸・保持量、液体化粧料の供給率、塗布終了までの操作回数、線膨潤率、保存時の変形・劣化防止の点で優位性を示しており、スポンジ系のパッドより高い含浸・保持能を有するとともに液体化粧料の高い供給能を有しているものであるから(【0025】)、一つの発明であると認められる。
そうすると、引用例1の記載、特に、表1等に示される「不織布」、「不織布+多孔性シート」、及び「NBR」の実施例のうち、「不織布」の実施例に関する記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「液体化粧料である資生堂製「インテグレート ミネラルウオータリーファンデーション」と、
前記液体化粧料を含浸・保持させたパッドと、
が装着される化粧品容器において、
前記パッドは、PP/PE鞘芯構造を有する繊維から構成された不織布であり、液体化粧料を含浸・保持させた各パッドに化粧料塗布具の塗布面を1回押し当てて、化粧料塗布具の塗布面に液体化粧料を転写させるものであり、
前記不織布は密度が0.008~0.045g/cm
3
であり、実施例の不織布の密度が0.033g/cm
3
であり、
前記化粧料容器は、皿状容器を備える、
化粧品容器。」
(1) 引用例2
・「
174
144
0001434151000007.jpg
185
144
0001434151000008.jpg
149
145
0001434151000009.jpg
」
(2) 引用例3
・「
186
145
0001434151000010.jpg
189
149
0001434151000011.jpg
190
150
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189
150
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69
148
0001434151000014.jpg
」
(3) 引用例4
・「
206
145
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205
148
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206
147
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209
149
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74
144
0001434151000019.jpg
」
(4) 引用例5
・「
174
144
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171
147
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174
144
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172
144
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63
144
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」
(1) 本件発明と引用発明とを、その有する機能に照らして対比する。
ア 引用発明の「液体化粧料である資生堂製「インテグレート ミネラルウオータリーファンデーション」」は、本件発明の「流動性を有する化粧料」に相当し、引用発明の「前記液体化粧料を含浸・保持させたパッド」は、本件発明の「前記化粧料を含浸保持した化粧料保持体」に相当する。
イ 引用発明は、「液体化粧料」と「前記液体化粧料を含浸・保持させたパッド」が「化粧品容器」に「装着される」ものであるところ、引用発明の「化粧品容器」は、本件発明の「化粧料容器」に相当する。
そして、引用発明の「化粧品容器」は、「皿状容器」を備え、「液体化粧料」と「前記液体化粧料を含浸・保持させたパッド」を「化粧品容器」の「皿状容器」に装着する点は、その態様からして「化粧品容器」に収容するといえるから、引用発明の「化粧品容器」は、本件発明の「化粧料容器」と、「流動性を有する化粧料と」、「前記化粧料を含浸保持した化粧料保持体と」、「を収納した化粧料容器」である点で共通する。
ウ 引用発明の「前記パッドは、PP/PE鞘芯構造を有する繊維から構成された不織布」である点は、本件発明の「前記化粧料保持体は、芯鞘構造の繊維の集合体」である点に相当する。
エ 引用発明の「液体化粧料を含浸・保持させた各パッドに化粧料塗布具の塗布面を1回押し当てて、化粧料塗布具の塗布面に液体化粧料を転写させるもの」である点は、本件発明の「前記化粧料保持体の表面が化粧道具で擦られて前記流動性を有する化粧料を化粧道具に付着させるもの」である点に相当する。
オ 引用発明の「化粧料容器」は、「皿状容器を備える」ものであるから、本件発明と、「前記化粧料容器は、収納容器」を備える点で共通する。
(2) そうすると、本件発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
(一致点)
「流動性を有する化粧料と、
前記化粧料を含浸保持した化粧料保持体と、
を収納した化粧料容器において、
前記化粧料保持体は、芯鞘構造の繊維の集合体であり、前記化粧料保持体の表面が化粧道具で擦られて前記流動性を有する化粧料を化粧道具に付着させるものであり、
前記化粧料容器は、収納容器を備える、化粧料容器。」
(相違点1)
本件発明は、化粧料が「紫外線吸収剤を含有」するのに対し、引用発明の「資生堂製「インテグレート ミネラルウオータリーファンデーション」」が紫外線吸収剤を含有するか否か不明な点。
(相違点2)
本件発明は、「(1)前記芯鞘構造の繊維は、芯部分が鞘部分よりも融点の高い熱可塑性樹脂で構成されている」、「(2)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、芯鞘構造の繊維が鞘部分の一部で融着している」、「(3)前記芯鞘構造の繊維が螺旋形状である偏心芯輪型複合繊維を含んでいる」、「(4)前記芯の繊維の太さが2.0~15dtexである」、「(5)前記芯鞘構造の繊維の集合体は、見掛け密度が0.04~0.10g/cm
3
である」、「(6)前記化粧料容器は、収納容器と、該収納容器に開閉可能に組み合わされた蓋体とを備える」、「(7)前記紫外線吸収剤が、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルである」の「少なくとも一つを満足する」のに対し、引用発明は、「前記不織布は密度が0.008~0.045g/cm
3
であり、実施例の不織布の密度が0.033g/cm
3
であり」、「前記化粧料容器は、皿状容器を備える」点。
事案に鑑み、相違点1についてみるに、引用例1には、引用発明の液体化粧料である「資生堂製「インテグレート ミネラルウオータリーファンデーション」」について、詳細が記載されていない。
ところで、引用例2には、資生堂製の「インテグレート ミネラルウオータリーファンデーション」について、「SPF23・PA++」と記載されていることから、当該液体化粧料が紫外線を防御する効果があることが分かる。
そして、引用例2によれば、当該液体化粧料が2011年2月21日に発売され、その当時から紫外線を防御する効果があるものとして知られていたものと解されるが、紫外線吸収剤を含有するものとして知られていたかは明らかでない。
この点、引用例3~5には、当該液体化粧料が紫外線吸収剤である「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」を含有する点が記載されているが、引用例3~5には、2023年9月21日発売の類似商品が掲載されていること、「この全成分リストは、...公式情報ではありません。全成分リストはマイナーチェンジなどで予告なく変更になっている場合もあります。」などといった記載があることからすると、引用例3~5の記載をもって、引用発明の当該液体化粧料が紫外線吸収剤を含有するものであることが、引用例1に係る出願当時に技術常識であったと解することは困難である。
そうすると、引用例1に係る出願当時の技術常識を参酌しても、引用発明の当該液体化粧料が紫外線吸収剤を含有するものであるかは不明であって、引用例1に記載されている事項であるとは認められない。
よって、本件発明は、少なくとも相違点1の点で引用発明と相違し、この点は実質的なものであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明は、引用発明と同一であるとは認められない。
そして、本件発明は、「化粧料保持体を芯鞘構造の繊維の集合体で構成したことにより、化粧料保持体に含浸した化粧料と接触するのは繊維の外周を構成する鞘部分であり、鞘で包囲された内側の芯部分については化粧料と接触しないため、少なくとも芯部分については化粧料による影響を防ぐことができ、化粧料保持体全体の膨潤を抑えることができる。」(【0013】)といった効果を奏するものである。
このように、本件発明は、少なくとも、化粧料保持体を芯鞘構造の繊維の集合体で構成したことにより、膨潤に関し所定の効果を奏し、もって、課題を解決することができるものと認められる。
・実施例1~6:芯部分がポリプロピレン、鞘部分がポリエチレンの芯鞘構造の繊維の集合体である化粧料保持体
・実施例7:芯部分がポリプロピレン、鞘部分がポリブテン-1の芯鞘構造の繊維の集合体である化粧料保持体
・比較例1:ポリプロピレン樹脂からなる単一熱可塑性樹脂繊維と、ポリプロピレン/ポリエチレン樹脂からなる芯鞘構造の熱可塑性樹脂繊維とを、重量比7:3として、サーマルボンド法により製造された繊維の集合体である化粧料保持体
・比較例2:ポリエーテル系ウレタンフォーム(セル膜が除去された網状型タイプ)からなる化粧料保持体
・比較例3:ポリエステル系ウレタンフォーム(セル膜が除去された網状型タイプ)からなる化粧料保持体
そして、紫外線吸収剤(品名:ユビナール(登録商標)AプラスB、BASF ジャパン製)、化粧料(品名:B.Aザクリーミィファンデーション(B3)、ポーラ(株)製、含有されている紫外線吸収剤は、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル)に対する24時間浸漬した前後の変化率は、実施例1~7が比較例1~3に比べ、いずれの場合も小さく、このような結果から、紫外線吸収剤を含有し流動性を有する化粧料に関する耐膨潤性に優れていたことが分かる。
すなわち、実施例1~6と比較例1の結果から、集合体中における、芯部分がポリプロピレン、鞘部分がポリエチレンの芯鞘構造の繊維の量が、化粧料保持体の耐膨潤性に影響を及ぼしていることが分かり、実施例1~7と比較例2、3の結果から、芯部分がポリプロピレン、鞘部分がポリエチレン又はポリブテン-1の芯鞘構造の繊維の集合体である化粧料保持体が、ポリエーテル系又はポリエステル系ウレタンフォームウレタンフォームからなる化粧料保持体に比べると、耐膨潤性に優れていることが分かり、これは化粧料保持体を芯鞘構造の繊維の集合体で構成したことによることを裏付ける結果である。
そして、これら実施例1~7に係る耐膨潤性の効果が、芯部分がポリプロピレン、鞘部分がポリエチレン又はポリブテン-1の芯鞘構造の繊維の集合体である化粧料保持体に限定され、その他の材質の芯鞘構造のものには期待することができないとする理由は特段認められない。
さらに、使用された化粧料も、紫外線吸収剤を含有し流動性を有する化粧料の一例と解され、その他同様の化粧料であっても同様の耐膨潤性の結果が期待できるものと解され、それを否定する理由も特段認められない。「なお、一部の実施例で変化率が負の値となるのは、繊維の集合体が水分により収縮したからである。」との記載(【0034】)から、紫外線吸収剤を含有し流動性を有する化粧料のうち紫外線吸収剤以外の成分も耐膨潤性に影響し得ると認められるが、実施例1~7に係る耐膨潤性の効果を否定するほどの特段の事情は認められない。
また、プラスチックの化学構造が、耐薬品性、溶解性に影響を及ぼすこと(引用例10の6.6.2 耐薬品性及び6.6.3 溶解性、引用例11の3.7.1 耐薬品性の記載等参照。)、化粧料における紫外線吸収剤にはパラアミノ安息香酸系、ケイヒ酸系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、その他、と多種の異なる化合物が用いられていること(引用例12)が技術常識であるとしても、紫外線吸収剤を含有し流動性を有する化粧料に関する耐膨潤性に関し、これら実施例1~7の結果から、本件発明の範囲まで拡張ないし一般化することができないとする理由は特段認められない。
以上のとおりであるから、本件発明が、発明の詳細な説明に記載された発明ではないとは認められない。
(1) 甲6には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
-
スクリーン網(4)
、
-
化粧品組成物を含浸させた繊維担体(3)
を備える含浸化粧用品(2)
であって、
- 1mmから200mmの間の範囲の厚さ、
- 30g/m
2
から5500g/m
2
の間の表面密度、
- 50%から100%の間の弾性度
を有する、含浸化粧用品(2)。
【請求項2】
前記繊維担体(3)が不織布材を含む
、請求項1に記載の含浸化粧用品(2)。
【請求項3】
前記繊維担体(3)が、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、またはそれらの混合物により作られている
、請求項1または2に記載の含浸化粧用品(2)。
...
【請求項11】
前記化粧品組成物が、UV吸収薬剤または防腐剤を含む
、請求項1から10のいずれか一項に記載の含浸化粧用品(2)。
...
【請求項14】
-
請求項1から12のいずれか一項に記載の含浸化粧用品(2)
、
-
前記含浸化粧用品(2)のための容器(5)
を備える、化粧品(10)
。
【請求項15】
前記化粧品組成物を取り上げるための化粧品道具をさらに備える
、請求項14に記載の化粧品(10)。」
・「【0035】
「表面密度」は、スクリーン網の外表面によって分割された組成物の含浸前の用品の質量と定義される。スクリーン網の外表面は、用品の長手方向軸に垂直である。
スクリーン網の外表面は、指もしくは化粧品道具と全体的にまたは部分的に接触する。
」
・「【0062】
図1に示されている化粧品1は、コンパクト型の液体ファンデーションシステムである。
化粧品1は、繊維担体3、および繊維担体3の外表面(上側表面)をカバーするスクリーン網4を備える含浸用品2と、用品2のための容器5と、封止部材6とを含む。繊維担体3は、液体、クリーム、ジェルの組成物などの、化粧品流体組成物を含浸させる。
「流体」という用語は、ここでは、
化粧品組成物が、その形状を変化させる力に作用されたときに、安定した速度で流れ、その形状を変えることができ、好ましくは、20°Cから40°Cまでの温度、好ましくは、周囲温度、すなわち25°Cで液体である
ことを意味する。」
・「【0068】
繊維の材料は限定されない。好ましくは、
繊維材料は不織布を含む。
繊維は、ポリオレフィン(具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリエステル、ならびにポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂、または綿、セルロース、およびシルクなどの天然繊維から用意され得る。好ましくは、繊維担体3は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、またはそれらの混合物により作られている。これにより、たとえ化粧品流体組成物がUVフィルタまたは防腐剤を含んでいるとしても、これらの繊維は、UVフィルタまたは防腐剤を全くまたはほとんど吸収できないので、日焼け防止SPFレベルも、防腐剤の効果も低下することがない。好ましくは、
化粧品組成物は、UV吸収薬剤または防腐剤を含む。
」
・「【0070】
化粧品1の
使用者は、パフなどの道具を用いて繊維担体3から化粧品流体組成物を取ることができる。
たとえば、道具を繊維担体3に押し付けながら、または押し付けることなく、
道具を繊維担体3上に当てることによって、繊維担体3の中の組成物を担体から道具に移すことができる。
使用者は、自分の手を用いて化粧品流体組成物を繊維担体3から取ってもよい。」
・「【0086】
含浸前の用品の説明
繊維担体
繊維担体は、内側がPP、外側がPEで作られている。
...
【0088】
スクリーン網
スクリーン網は、コポリマーエチレン酢酸ビニル(EVA)の熱溶融層によりカバーされたポリオレフィンで作られている。
...
【0098】
化粧品組成物
化粧品組成物は、
- 低粘度組成物: シューウエムラ(Shu Uemura)のスキンピュリファイアーブランクロマブライトニング&ポリッシュジェントルクレンジングオイル(skin Purifier blanc chroma brightening and polishing gentle cleansing oil)(登録商標)と呼ばれるシューウエムラTMクレンジングオイル(登録商標)(61±5UD(M1))、
- 高粘度組成物: ランコム(Lancome)のブランエクスペールクッション(Blanc Expert Cushion)(登録商標)カバー力高
SPF50(30~40UD(M1))
であった。
【0099】
用品の様々な表面密度および厚さについての試験の結果は、[表1]~[表3]に示されている。
これらの表においては、「トップコート」という用語は、「スクリーン網の外表面」という意味である。」
(2) 前記(1)の記載からすると、甲6には次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲6発明)
「UV吸収薬剤または防腐剤を含み、
その形状を変化させる力に作用されたときに、安定した速度で流れ、その形状を変えることができ、好ましくは、20°Cから40°Cまでの温度、好ましくは、周囲温度、すなわち25°Cで液体である化粧料組成物と、
前記化粧料組成物を含浸させた繊維担体と、
前記繊維担体の外表面をカバーするスクリーン網と
を有する含浸化粧用品を容器に収納した化粧品において、
前記繊維担体は、内側がPP、外側がPEで作られており、前記スクリーン網の表面が指もしくは化粧品道具と接触して前記化粧料組成物を化粧道具に移すものである、化粧品。」
本件発明と甲6発明とを、その機能に照らして対比すると、両者は、少なくとも、次の点で相違する。
(相違点)
本件発明は、「前記化粧料保持体の表面が化粧道具で擦られて前記流動性を有する化粧料を化粧道具に付着させるもの」であるのに対し、甲6発明は、「前記繊維担体の外表面をカバーするスクリーン網」を有し、「前記スクリーン網の表面が指もしくは化粧品道具と接触して前記化粧料組成物を化粧道具に移すもの」である点。
このように、本件発明と甲6発明とは、上記の点で相違しており、前提とする構成が異なる。
そして、この点は実質的な相違点であるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明は、甲6発明と同一であるとは認められない。
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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