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Trademark Appeal Case

不使用取消審判の要件

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023300509
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第522625号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「Secret Key」の欧文字と「シークレット・キー」の片仮名を2段に表してなり、昭和32年6月20日に登録出願、同33年6月26日に第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品として設定登録され、平成21年1月7日に、指定商品を第3類「香料類(薫料・香精・天然じゃ香・芳香油を除く。),化粧品(化粧用染料・化粧用顔料・染歯料・紅を除く。)」とする書換登録がなされ、その商標権は現に有効に存続しているものである。

そして、本件審判の請求の登録は、令和5年8月7日になされたものであり、この登録前3年以内の期間(令和2年8月7日~令和5年8月6日)を以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張

請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とするとの審決を求め、審判請求書、令和5年11月13日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同6年1月29日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)、同年12月27日付け意見書(以下「意見書1」という。)及び同7年4月18日付け意見書(以下「意見書2」という。)にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。

なお、以下、証拠の表記に当たっては、乙第1号証を「乙1」のように省略して表示する場合があり、枝番号を含む号証で、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)乙号証の検討

乙第1号証には、本件審判の予告登録日が令和5年8月7日であることが記載されている。

乙第2号証には、商標権者グループの歴史、取扱商品分野などが記載されているようであるが、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標の使用についての記載はない。

乙第3号証には、Max Factorや、SK-IIの前身である化粧品「シークレットキイ」から「SK-II」誕生までの歴史などが記載されているとしても、これは英文であるため、日本での公開を目的としておらず、日本国内での本件商標と同一又は社会通念上同一の商標の使用についての記載もない。

乙第4号証には、「シークレットキイ II フェイシャルトリートメントエッセンス」の発売についての記載があるとしても、要証期間での本件商標と同一又は社会通念上同一の商標の使用を示すものではない。

乙第5号証には、化粧品ブランド「SK-II」について、「SKはシークレット・キー、秘密の鍵を意味する」との記載があり、「シークレット・キー」の文字が記載されているものの、当該文字は、化粧品ブランド「SK-II」の説明に使用されており、本件審判請求に係る指定商品(以下「取消請求商品」という。)の商標として使用されるものではない。

乙第6号証には、SK-IIの製品「フェイシャルトリートメントエッセンス」についての記載があるようであるが、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標の使用についての記載はない。

乙第7号証には、SK-IIの開催記念イベント「World Pitera Day」が開催されたことが記載されているようであるが、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標の使用についての記載はない。

乙第8号証、乙第9号証及び乙第10号証には、イベント「SK-IIシークレットキーハウス」(以下「シークレットキーハウス」という。)について記載されているようであるが、これは、イベントの報道記事であり、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことを示すものではないし、イベント会場の写真があるが、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を確認することができない。

乙第11号証には、シークレットキーハウスについて記載され、「SK-IIの名前の由来は「Secret Key(シークレットキー)」の頭文字である「S」と「K」。」との記載があり、「Secret Key」の文字が記載されているものの、これは、イベントの報道記事であり、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことを示すものではない。

乙第12号証には、シークレットキーハウスについて記載されているようであるが、これは、イベントの報道記事であり、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことを示すものではないし、イベント会場の写真があるが、登壇者によって文字が隠れてしまって、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を確認することができない。

乙第13号証には、シークレットキーハウスについて記載されているようであるが、これは、イベントの報道記事であり、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことを示すものではない。

乙第14号証には、「シークレットキーII」のボトルがあるようであるが小さくて確認することができず、登壇者が「SK-II」ブランドと「シークレットキーII」ブランドとの関係を説明しているだけのようであり、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第15号証の1には、「SK-II」「THE」「SECRET」「KEY」「HOUSE」の文字があるが、これはシークレットキーハウスの施設の入り口にあるイベント名称表示であり、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第15号証の2には、「SECRET」「KEY」「II」の文字があるが、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第15号証の3には、「THE SECRET KEY」の文字があるが、当該文字は「SK-II」及び「PITERA」の文字と一体的になって同心円に沿って多数段で規則的に繰り返して配列されて装飾模様になっており、個々の「THE SECRET KEY」の文字部分を分離して認識すべき特段の事情は見当たらない。

乙第15号証の4には、「PITERA」「SK-II」「SECRET」「KEY」の文字があるが、当該文字は多数段で規則的に繰り返して配列されて装飾模様になっており、しかも断片的になっており、個々の「SECRET KEY」の文字部分を分離して認識すべき特段の事情は見当たらない。

乙第15号証の5には、「THE SECRET KEY」の文字があるが、当該文字は多数段で規則的に繰り返して配列されて装飾模様になっており、個々の「THE SECRET KEY」の文字部分を分離して認識すべき特段の事情は見当たらない。

乙第15号証の6には、四段併記の「THE」「SEC」「RET」「KEY」の文字があるが、英語の一単語を二段に分離して併記することは一般的ではないので「SEC」及び「RET」文字部分から「SECRET」を認識することはできず、しかも、これはシークレットキーハウスの施設の入り口にあるイベント名称表示であって、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第15号証の7には、「SECRET KEY」の文字があるが、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第15号証の8には、「THE SECRET KEY」の文字があるが、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第15号証の9には、「THE SECRET KEY HOUSE」の文字があるが、これはシークレットキーハウスの入り口にあるイベント名称表示であり、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第15号証の10には、「THE」「SECRET」「KEY」の文字があるが、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第15号証の11には、「SK-II SECRET KEY」の文字があるが、複数段で規則的に繰り返して配列されて壁面の装飾模様になっており、当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第15号証の12には、「SECRET KEY」の文字があるが、当該文字は壁面の装飾模様になっており、しかも切り欠かれて断片的になっており、個々の「SECRET KEY」の文字部分を分離して認識すべき特段の事情は見当たらない。

乙第15号証、乙第16号証及び乙第17号証には、シークレットキーハウスの外装及び内装の様子が示されているようであるが、その撮影日、撮影者及び撮影場所の提示を求める。

乙第18号証には、「登録商標の使用と認められる事例」が記載されている。

乙第19号証には、映画「ターミネーター」の原題が「The Terminator」であることが記載されているとしても、不使用取消審判の「社会通念上同一」の判断で、登録商標の前に「THE」を付加することが許容されるかどうかの参考にはならない。

乙第20号証には、映画「ネバーエンディング・ストーリー」の英語題名が「The Never Ending Story」であることが記載されているとしても、不使用取消審判の「社会通念上同一」の判断で、登録商標の前に「THE」を付加することが許容されるかどうかの参考にはならない。

乙第21号証には、ローマ数字「II」は識別力に乏しいことが記載されているとしても、これは、商標法第4条第1項第11号の判断基準であり、不使用取消審判の「社会通念上同一」の判断基準ではない。

乙第22号証には、ローマ数字「II」は識別力に乏しいことが記載されているとしても、これは、商標法第3条第1項第6号の判断基準であり、不使用取消審判の「社会通念上同一」の判断基準ではない。

乙第23号証には、横一連の登録商標を、二段又は三段書きにして使用した商標について、社会通念上同一性が認められたことが記載されているとしても、使用商標のデザイン化によって一連の文字であると認められたともいえるので、本件審判とは事情が異なる。

乙第24号証には、「SK-II」ブランドのウェブサイトに「Secret Key」のページがあることが示されているようであるが、要証期間での本件商標と同一又は社会通念上同一の商標の使用を示すものではないし、「Secret Key」の文字は見出しとしてのみ使用されているので、そもそも当該文字が取消請求商品の商標として使用されたことは示されていない。

乙第25号証には、「SK-II」のウェブサイトの動画で「THE SECRET KEY」の文字が使用されていることが示されているようであるが、要証期間での本件商標と同一又は社会通念上同一の商標の使用を示すものではない。

(2)「SK-II」ブランド

被請求人は、答弁書において、「SK-II」が我が国において人気が高い化粧品ブランドであることを述べており、この点につき全く異論はない。

(3)「SECRET KEY」の文字と「SK-II」の関係

被請求人は、答弁書で、「マックスファクター日本支社は、1980年12月からこの「シークレット キイ II フェイシャルトリートメントエッセンス」の発売を開始した」と述べ、さらに、「当該化粧品ブランド名を「シークレット キイ II/SECRET KEY II」から、その頭文字(SECRETの「S」と、「KEY」の「K」)を組み合わせた「SK-II」に変更した」と述べている。

また、答弁書には、「『SK-II』は、最初は『SECRET KEY II』という名称で販売されており、これは『美肌への秘密の鍵』という意味になっている」との記載がある。

これらのことから、「SECRET KEY」の文字は、「SK-II」と密接に結びついているものと理解される。

(4)シークレットキーハウス

被請求人は、ポップアップイベントであるシークレットキーハウス及びシークレットキーハウスの「オープン記念イベント」(以下「オープン記念イベント」という。)で、「SECRET KEY」(使用商標1)、「THE SECRET KEY」(使用商標2)及び「SECRET/KEY/II」(使用商標3)を使用したと主張しているので、これらにつき検討した。

使用商標1及び使用商標2は、いずれも「SK-II」の文字とともに使用されており、上述したように「SK-II」は我が国において人気が高い化粧品ブランドであって、取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与え、それとの対比において使用商標1又は使用商標2の印象が薄いので、「SK-II」と結合して使用されたというべきで、単独で使用されたとはいえない。

使用商標3は、展示されたボトルに書された文字であり、「会場を訪れたSK-IIブランドの愛用者(需要者)に、ブランドの歴史を感じてもらい、より一層SK-II化粧品への愛着を持ってもらいたいという意図が込められている」そうである(答弁書)。このことから、使用商標3も「SK-II」と結合して使用されたというべきで、単独で使用されたとはいえない。

あるいは、答弁書で述べられているように、「「SECRET KEY」の語は、「SK-II」ブランドのイメージや世界観を表すキーワードとして、現在も「SK-II」ブランドに大切に受け継がれている」わけであるから、使用商標1ないし使用商標3のそれぞれは、「SK-II」ブランドの「キーワード」にすぎず、識別表示として使用されておらず、商品の性質や成分の記載と何ら変わらない。

(5)「SK-II」ブランドのウェブサイト

被請求人は、答弁書で、「SK-II」ブランドのウェブサイト(乙24)において、「secret-key」、「Secret Key」及び「THE SECRET KEY」が使用されていると主張しているが、「secret-key」はURLである「https://www.sk-ii.jp/secret-key」の一部にすぎず、「Secret Key」はタブ名称にすぎず、「THE SECRET KEY」は、「SK-II」の文字とともに使用されており、上記(4)で述べたのと同じ理由で、単独で使用されたとはいえず、あるいは識別表示として使用されていないので、取消請求商品の商標として使用されていない。

なお、「SK-II」ブランドのウェブサイトに関する乙第24号証及び乙第25号証は、上記文字が使用された時期が要証期間の範囲内であることを証明していない。

(6)まとめ

被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求商品について、本件商標と同一又は社会通念上同一の商標の使用をしたことを証明していないので、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。

3 意見書1による主張

令和6年7月4日付け回答書(以下「回答書」という。)に対して以下のとおり意見を述べる。

(1)令和6年5月9日付け審尋(以下「審尋」という。)の要点

シークレットキーハウス及びオープン記念イベントの開催主体が、商標権者又は商標権者から本件商標の使用の許諸を受けている者であることが把握できる証拠は提出されていない。

(2)回答書の要点

審尋に対する回答として、回答書において、シークレットキーハウス及びオープン記念イベントの開催主体は、商標権者の孫会社のシンガポール支社(通常使用権者)であり、その証拠は乙第26号証ないし乙第30号証拠であると述べており、「SK-II」ブランドのウェブサイトにおける本件商標の使用について述べており、弁駁書に対する反論として、回答書において、乙第15号証の撮影者及び撮影日について述べ、シークレットキーハウス及びオープン記念イベントについて述べている。

(3)意見の内容

ア 開催主体並びに商標権者及び開催主体の関係

(ア)乙第26号証及び乙第27号証

シークレットキーハウス及びオープン記念イベントは、「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル・オペレーションズSA」(以下「SA社」という。)のシンガポール支社(以下「シンガポール支社」という。)が開催し、SA社は、商標権者の100%子会社である「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナルSARL」(以下「SARL社」という。)の100%子会社である、と被請求人は述べている。

ここで、開催主体が、SA社ではなく、シンガポール支社であるということは、シンガポール支社が法人格を有することを前提としているようであるが、その証明がされていない。

また、シンガポール支社が法人格を有するのであれば、SA社との関係が証明されていない。

そもそも、乙第26号証及び乙第27号証は、被請求人が作成した書面にすぎず、被請求人の主張を裏付ける証拠とはなり得ない。仮に、これらによって、SA社がSARL社の子会社であり、SARL社が商標権者の子会社であることが証明されたとしても、それぞれが「100%子会社」であることは証明されていないし、したがって、シンガポール支社が商標権者の支配下にあることは証明されていない。

(イ)乙第28号証及び乙第29号証

乙第28号証として、F氏の署名入り宣誓書が提出されているが、同氏が実在することの証明、同氏が全世界のSK-IIブランドに関する上級広報責任者であることの証明、署名が真正なものであることの証明がされていない。

また、乙第28号証の宣誓書は、商標権者の支配下にある立場から作成されたものであるならば、その内容には偏りや利害関係が反映されている可能性があり、反対尋問を経ていないため、その信ぴょう性には疑問が残る。

乙第29号証として、国際PRアワード「PR Awards Asia-Pacific 2024」の記事とその訳文が提出されており、シークレットキーハウスが「Fashion & Beauty」部門でゴールド、「PR Event」部門でブロンズを受賞したようであるが、受賞記事の「Market」(市場)欄が「Singapore」となっているのに実際にはイベントが東京で開催されたことの証明がされていないし、そもそも、当該記事が真正なものであることの証明がされていない。

(ウ)乙第30号証

乙第30号証として、ライセンス契約書の変更契約書が提出されているが、シンガポール支社が商標権者の支配下にあるならば本件商標の使用許諾は当然であることから、逆に、このような契約をしているというのは、シンガポール支社が商標権者の支配下にない可能性があり、そうであれば、包括的な使用許諾に関する契約書にすぎない乙第30号証は、本件商標の使用を具体的に許諾したことの証拠にはならない。

(エ)乙第28号証による裏付け

乙第28号証においてシンガポール支社が本件商標の使用許諾を商標権者から得ていると述べられていても、前述のとおり、乙第28号証の証明力には疑義がある。

(オ)黙示の使用許諾

乙第30号証の契約書は、黙示の使用許諾を裏付ける証拠としても提出されたようであるが、もしシンガポール支社が商標権者の支配下にあるのであれば、黙示の使用許諾は通常行われるものであり、特段主張する必要性はないし、むしろ、これらの主張により、シンガポール支社が商標権者の支配下にない疑いが生じ、そうであれば、黙示の使用許諾もあり得ない。

イ 「SK-II」ブランドのウェブサイトにおける本件商標の使用

(ア)被請求人は、要証期間中にSK-IIブランドのウェブサイトに「Secret Key」のページ(乙24、乙25)がアップされたことの証拠は、乙第28号証であると述べている。しかし、前述のとおり、乙第28号証の証明力には疑義があり、このため、当該ウェブサイトの提供者、本件商標権者と当該提供者との関係、当該ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

(イ)被請求人は、ウェブサイトには「Secret Key」(使用商標4)のタブがあり、タブをクリックすると、動画が再生され、動画内に「THE/SECRET KEY」(使用商標5)、「THE/SECRET/KEY」(使用商標6)が表示され、ウェブページ下部にはSK-II商品の説明や購入ページも表示されると述べている。しかし、当該ウェブサイトの提供者、商標権者と当該提供者との関係、当該ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

(ウ)使用商標4

被請求人は、使用商標4の「Secret Key」は本件商標の欧文字部分と同じつづり、同じ称呼、同じ観念を持ち、書体が異なり、片仮名文字がない点でも本件商標と異なるが、書体の変更は登録商標の使用と認められ、「Secret Key」は、本件商標の二段併記の上段部分であるため、社会通念上同一と認められると述べている。しかし、当該ウェブサイトの提供者、商標権者と当該提供者との関係、当該ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

(エ)使用商標5

被請求人は、使用商標5の「THE/SECRET KEY」は、「THE」が小さく書かれているため、実質的に「SECRET KEY」の使用とみなされ、書体が異なり、片仮名文字がない点や全体が大文字である点でも本件商標と異なるが、書体の変更と大文字・小文字の変更は社会通念上同一と認められ、「シークレットキー」の称呼、及び「秘密の鍵」の観念は共通しており、社会通念上同一と認められると述べている。しかし、当該ウェブサイトの提供者、商標権者と当該提供者との関係、当該ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

(オ)使用商標6

被請求人は、使用商標6の「THE/SECRET/KEY」は三段表記であるが、「THE」は自他商品識別機能を発揮しないため、「SECRET KEY」が要部であり、書体が異なり、片仮名文字がない点や、全体が大文字である点や、「SECRET」と「KEY」の二段表記である点でも本件商標と異なるが、これらの差異は社会通念上同一と認められ、「シークレットキー」の称呼、及び「秘密の鍵」の観念は共通しており、社会通念上同一と認められると述べている。しかし、当該ウェブサイトの提供者、商標権者と当該提供者との関係、当該ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

(カ)被請求人は、使用商標4ないし使用商標6は、「SK-II」のウェブサイトで要証期間以降、「化粧品」の宣伝広告のために使用され、これは「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当し、シンガポール支社は、通常使用権者として当該ウェブサイトで商標を使用していると述べている。しかし、当該ウェブサイトの提供者、商標権者と当該提供者との関係、当該ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

(キ)被請求人は、ウェブサイトで「SECRET KEY」が単独で使用されており、使用商標4のタブをクリックすることでSK-II商品の説明や購入ページにつながるため、自他商品識別機能を発揮していると主張している。しかし、当該ウェブサイトの提供者、商標権者と当該提供者との関係、当該ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

(ク)以上のとおり、シンガポール支社が、要証期間内にSK-IIウェブサイトで本件商標と社会通念上同一の商標(使用商標4~使用商標6)を使用した事実は証明されていない。

ウ シークレットキーハウスの会場内外を撮影した写真

回答書の主張は、シークレットキーハウスの会場内外を撮影した写真(乙15)は、シンガポール支社が専門のカメラマンに依頼して撮影したもので、カメラマンは5名であり、撮影期間は2023年7月28日から8月2日であり、各カメラマンの撮影日時は、乙第33号証の各カメラマンのページに記載されているというものである。

しかし、乙第33号証には各カメラマンの紹介やスケジュールの記載があるものの、そのスケジュールが何を指すのかは不明である。また、シークレットキーハウスの会場と思われる写真が掲載されていたとしても、その説明が一切ないため、乙第15号証の各枝番号に係る写真の撮影日及び撮影者を証明するものとはならない。

なお、乙第16号証及び乙第17号証の写真については、回答書で「当該証拠の写真はインターネット上で一般的に公開されている個人のブログを引用した証拠であるから、被請求人がこれを特定することは困難である。」と述べて、撮影者及び撮影日の証明を断念している。

エ 単独の使用

回答書の主張は、イベントがSK-IIのプロモーションであるため、SK-IIとの関連付けは当然であり、使用商標1ないし使用商標3はそれぞれ単独で使用されているというものであるが、これは誤りである。

使用商標1について、被請求人は、使用商標1がパネル前面に大きく表示され、側面に小さく表示された「SK-II」とは視覚的に分離していると主張するが、イベント全体がSK-IIブランドのプロモーションであり、パネル全体としてもSK-IIのブランドイメージを構成する一部であることは明らかである。したがって、使用商標1は、SK-IIブランドの一環として認識されるものであり、独立した商標として認識されるものではない。

使用商標2について、被請求人は、使用商標2が「SK-II」よりも文字数が多く目立つように書かれていると主張するが、これもSK-IIブランドのプロモーションの一環として意図的にデザインされたものであり、使用商標2が独立した商標として認識されることを意味するものではない。

使用商標3について、被請求人は、使用商標3が「SK-II」の文字と離れて展示されていると主張するが、イベント全体がSK-IIブランドのプロモーションであることを考慮すれば、使用商標3もSK-IIブランドに関連付けて認識されるのは当然である。物理的な距離のみをもって、単独で使用されていると結論付けることはできない。

したがって、使用商標1ないし使用商標3は、イベント全体、及び個別の展示物においても、SK-IIブランドと密接不可分に結びついて認識されており、単独で使用されているとは到底いえない。

オ 出所表示

回答書の主張は、「SECRET KEY」がキーワードであるとしても、出所表示としての使用を否定するものではないというものであるが、これも誤りである。「SECRET KEY」がキーワードである場合、それは商品の内容や特徴を説明するものであり、出所を識別する機能は乏しいといわざるを得ない。

宣伝広告に使用されたとしても、それが必ずしも出所識別標識としての使用を意味するものではない。宣伝広告では、商品の魅力を伝えるための様々な表現が用いられるが、その全てが出所を識別するための商標として認識されるわけではない。

被請求人は、使用商標1ないし使用商標3が商品の性質等を直接的に表す語ではなく、第三者が広く使用している語でもないと主張するが、これは「SECRET KEY」という言葉が、化粧品関連の宣伝において、決して一般的でないとはいい切れない点を看過している。

被請求人は、展示態様からも出所表示として使用されていると認識するのが自然であると主張するが、イベント全体がSK-IIのプロモーションである以上、SK-IIのブランドイメージを強化する目的で表示されたものと解釈するのが自然である。

被請求人は、セールチラシの例を挙げているが、これは個別の事例であり、本件にそのまま当てはめることはできない。

以上の点から、「SECRET KEY」は、シークレットキーハウスにおいて、出所表示として使用されているとは到底いえない。

カ 商標法第50条の解釈

商標法第50条は、長期間使用されていない商標による弊害を防ぐことを目的としている。この条文における「使用」とは、指定商品又は指定役務に対して商標が何らかの態様で使用されていれば十分であり、必ずしもその商標が商品の出所を示す機能を果たしている必要はないと解釈されている。

ただし、「何らかの態様で」といっても、商標が単独で使用されている場合に限られる。他の商標と組み合わせて使用されている場合は、商標法第50条における「使用」として認められない。

これまでの判例において、登録商標が単独で使用されていない場合に商標法第50条の「使用」と判断された例は存在しない。

4 意見書2による主張

令和6年12月12日付け上申書(以下「上申書」という。)に対して以下のとおり意見を述べる。

(1)シンガポール支社が開催主体であることの裏付け

被請求人は、シークレットキーハウスの開催場所使用料に関する請求書の写し(乙37)を追加提出している。しかし、この請求書は、文字・記号・線のみで構成された電子データであり、誰でも容易に作成でき、発行者の実在すら証明していないため、客観的な信ぴょう性に欠ける。

さらに、請求書の発行日は2023年5月22日であり、オープン記念イベント及びシークレットキーハウスが開催された期間(2023年7月28日~同月30日)よりもかなり前の日付である。そのため、実際に支払いが行われたかは不明であり、ましてや、オープン記念イベント及びシークレットキーハウスが実際に開催されたことを証明するものではない。

また、請求書の「Product Name」に記載された「BATSU」及び「STANDBY」がシークレットキーハウスの開催場所であると乙第8号証に記載されているとしても、乙第8号証の発行者の会社情報が不明確であるため証拠能力に欠ける。

乙第38号証についても発行者が不明であることから、証拠能力は認められない。

したがって、これらの証拠からは、シンガポール支社がオープン記念イベント及びシークレットキーハウスの開催主体であることを裏付けることはできない。

なお、商標法第50条は、商標登録の取消し要件として「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないとき」と規定している。

しかし、シンガポール支社が法人であることは証明されておらず、そのため専用使用権者又は通常使用権者になり得ない。仮にシンガポール支社が登録商標を使用していたとしても、それは専用使用権者又は通常使用権者による使用とはみなされず、本件における商標の使用実績を証明するものとはならない。

(2)インスタグラムの投稿

被請求人は、「SK-II」の公式インスタグラムの投稿(乙39、乙40)を提出している。しかし、当該アカウントの管理者が明らかにされておらず、当該アカウントの管理者が被請求人と関連している可能性があり、そうであれば投稿内容が独立した第三者の証拠とはいい難く、主観的な要素が含まれる可能性があり、反対尋問を経ていないため、信ぴょう性に疑問が残る。

被請求人は、乙第39号証の写真が乙第15号証の2及び乙第15号証の3と同一の内装を撮影したものであり、また乙第40号証の写真が乙第15号証の5とほぼ同一であると主張している。しかし、商標権者が世界的企業であることを考慮すると、これらの写真が日本国外で撮影された可能性も否定できず、シークレットキーハウス会場の写真であることは証明されていない。

さらに、乙第40号証の投稿は、本件審判の予告登録日(2023年8月7日)よりも後の2023年8月11日に行われたものであるため、投稿自体を証拠とすることはできないし、投稿内容を検証するためにはインスタグラムの管理者を明らかにする必要があるが、その点についての証明はなされていない。

また、被請求人は個人のインスタグラム投稿(乙41)を提出しているが、当該アカウントの管理者を第三者が特定することはできないので、乙第41号証は証拠能力に欠ける。

以上の点から、乙第39号証ないし乙第41号証にかかるインスタグラムの投稿をもって、乙第15号証に示されたシークレットキーハウスの内装が、シークレットキーハウス期間中にその会場に実際に存在していたことを証明することはできない。

第3 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書、審尋に対する回答書及び上申書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第41号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 答弁の理由

以下に述べるとおり、本件商標と社会通念上同一の商標が、商標権者により、要証期間に、請求に係る指定商品中、第3類「化粧品(化粧用染料・化粧用顔料・染歯料・紅を除く。)」に含まれる「化粧水」について、我が国内で使用されている。

(1)商標権者、及び商標権者が展開するグローバルスキンケアブランド「SK-II」について

ア 商標権者は、米国の本社を置く世界的な大企業であり、我が国も含め、世界180カ国以上の国・地域において、衣料用洗剤、衣料用柔軟剤、台所用洗剤、エアケア製品、化粧品・スキンケア製品、ヘアケア製品、シェービング用品、電気シェーバー・ビューティーケア製品、乳幼児用紙おむつ、吸水ケア製品など、日常生活に欠かせない多種多様な製品を、180年以上の長きにわたり、製造・販売している企業である(乙2)。

商標権者が製造販売する化粧品・スキンケア製品のうち、特に我が国において人気が高い化粧品ブランドとして、「SK-II」が挙げられる。以下に、「SK-II」誕生の歴史を簡単に説明する。

イ 米国企業のマックスファクター社は、1957年から「シークレット キイ/SECRET KEY」という化粧品ブランドを展開していた(乙3)。

ここで、マックスファクター社の日本支店が、たまたま酒の醸造所で、年を重ねた杜氏の手が驚くほど柔らかく美しいのを目の当たりにしたことから、その研究を開始し、その後、酵母から作られる発酵代謝物成分(商標権者は後にこれを「ピテラ」と命名し、商標登録もしている。)を化粧品に使用することで誕生したのが、「SK-II」ブランドの前身である「シークレット キイ II/SECRET KEY II」である(乙3~乙5)。

マックスファクター日本支社は、1980年12月からこの「シークレット キイ II フェイシャルトリートメントエッセンス」の発売を開始した(乙4)。このエッセンスには、「SK-II ピテラ」と名付けられた発酵代謝物成分が使用されており、肌荒れや小じわ、衰えが気になる需要者向けの基礎化粧品として、中高年の女性向けに、まずローション単品で販売されたもので、今でいうところのいわゆる「エイジング用化粧品」の先駆けの商品といえる。

その後、1991年に、マックスファクター・アンド・カンパニーが、商標権者グループ(P&Gグループ)に加わり(乙2)、遅くともその時点で、当該化粧品ブランド名を「シークレット キイ II/SECRET KEY II」から、その頭文字(SECRETの「S」と、「KEY」の「K」)を組み合わせた「SK-II」に変更した。

「SK-II」の化粧品は、種類が多岐にわたるが、「SECRET KEY II」の時代から、看板商品は一貫して「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)であり、現在のSK-IIブランドにおいても、長年にわたり最も支持されているベストセラー商品である(乙4、乙5)。

「SECRET KEY II」及び現在の「SK-II」の「フェイシャルトリートメントエッセンス」には、半透明白色の円柱形の胴体部と、光沢がありながらもきらびやかになりすぎない重厚感を持つシルバーの蓋部からなる容器が継続して使用されており(乙6)、このボトルが「SECRET KEY II」及び「SK-II」の「フェイシャルトリートメントエッセンス」の象徴となっている。

(2)商標権者による本件商標の使用について(シークレットキーハウスについて)

ア イベントの概要

化粧品「SK-II」ブランドを展開する商標権者は、令和4年(2022年)から、「ワールドピテラデー(The World Pitera Day)」というグローバルイベントを開催し、「SK-II」製品に使用されている独自の成分「ピテラ」の魅力を発信している。

令和4年は、7月13日に高田馬場(東京都新宿区)で当該イベントが行われた(乙7)。

令和5年は、このイベントの名称を「ワールドピテラマンス」とし、この一環として、7月29日(土)及び同月30日(日)に、入場無料のポップアップイベントであるシークレットキーハウスを、東京表参道の「Standby Harajuku,Batsu Art Gallery」(住所:東京都渋谷区神宮前5丁目11-5)で開催した(乙8、乙9)。

このイベントは、参加者に、五感を通じて「ピテラ」(SK-II製品に使用されている独自の成分)の10の秘密を知ってもらい、SK-II製品(化粧品)の素晴らしさを広めることを目的とした宣伝広告イベント(プロモーションイベント)であり、当該イベントでは、SK-IIの名前の秘密から始まり、「ピテラ」の製造過程の秘密などに関するコンテンツ、肌測定器による肌診断コーナーや、「ピテラ」が90%以上含まれているSK-IIの看板商品「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)をはじめとするSK-II製品がお試しできるブース等の体験型コンテンツも用意されていた(乙8~乙11)。

参加希望者は、事前に「SK-II」のウェブサイト(https://www.sk-ii.jp/secret-key-house-event)より予約を行い、参加するしくみであった(乙8)。

イ オープン記念イベント

また、シークレットキーハウスの開催前日である令和5年7月28日には、オープン記念イベントが開かれ、SK-II製品のグローバルアンバサダーを務めるA氏が登壇した(乙12)。

このオープン記念イベントの様子を収めた動画が、YouTubeにて公開されており(https://www.youtube.com/watch?v=JOpKXsg9FRc)(乙13)、その動画の複数の画像をキャプチャし、併せて司会及びA氏の発言を記載したものを、乙第14号証として提出する。

乙第14号証に表れるとおり、まずA氏が登壇する前、壁に書された「SK-II」と「THE SECRET KEY」の文字が写されている。そこにA氏が登壇すると、用意された箱の中から化粧品ボトルを取り出し、手に持ったボトルを見ながら「シークレットキーと書いてあります。」とコメントしている(手に持ったボトルには、「SECRET/KEY/II」の文字が付されている。)。これは、「SK-II」の前身「SECRET KEY II」のボトルであり、このボトルを見ながら、「『SK-II』は、最初は『SECRET KEY II』という名称で販売されており、これは『美肌への秘密の鍵』という意味になっている」というような話が展開されている(乙14)。その後、A氏の肌年齢や美容の秘訣等の話があり、最後にA氏が現在の「SK-II」の看板商品「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)のボトルを手にして、写真撮影に応じるところでイベントの動画は終了している。

ウ シークレットキーハウスのイベントの内容、及び会場ディスプレイやオープニングイベントにおける本件商標の使用

シークレットキーハウスは、上述のとおり、SK-IIの看板商品である「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)や、その他のSK-IIの化粧品を宣伝広告するためのプロモーションイベントである。

既に説明したとおり、「SK-II」は、もともと「SECRET KEY II」の商品名で発売されていたもので、「SK-II」の「SK」とは「SECRET KEY」の頭文字に由来しており、「美肌への秘密の鍵」を意味する、この「SECRET KEY」の語は、「SK-II」ブランドのイメージや世界観を表すキーワードとして、現在も「SK-II」ブランドに大切に受け継がれているものである。

このイベントにおいては、そういった初代「SECRET KEY II」へのオマージュも込めて、会場のいたるところに「SECRET KEY」の文字をあしらったディスプレイや内装が使用されていた。

乙第15号証として、イベント会場の外装及び内装の様子を撮影した写真を提出する。

また、こういったディスプレイや内装は、シークレットキーハウスのイベント参加者が、後日、参加レポートとしてその内容に関する記事を上げているウェブサイトやブログの写真でも、確認することができる。

その一例として、まず、当該イベント参加者によるブログ記事を、乙第16号証として提出する。乙第16号証のブログ記事には、イベント会場内で撮影した内装ディスプレイの動画が掲載されている。

乙第16号証内に、黄色の矢印で印をつけた動画の画像キャプチャを、乙第17号証として提出する。

横一連に書した「SECRET KEY」の文字を、反時計回りに90度回転させた態様(欧文字が下から上に読まれるように記載された態様)で、赤色のパネルに白抜きで書されているものが、イベント会場にディスプレイされていた(乙16、乙17。以下、当該ディスプレイに現れる商標を「使用商標1」という。)。なお、このディスプレイは、乙第15号証の5の写真右側にも写っている。また、乙第15号証の7には、これと色違い(白色のパネルに赤色で文字が書されている)のディスプレイが写っている。

次に、上述のとおり、オープン記念イベントにおいては、二段に書された「SK-II」と「THE SECRET KEY」の標章が白抜きで表示されている赤色のパネルの前で、SK-II製品のグローバルアンバサダーであるA氏が、SK-II製品に関する話をし、最後にはSK-IIの看板商品である「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)のボトルを手にして写真撮影に応じている(乙13、乙14)。

さらに、シークレットキーハウスのイベント会場おいても、乙第16号証において黄色の矢印で印をつけた写真に表れるとおり、赤色の壁に「THE SECRET KEY」の文字が、白抜きで上段に5行、下段に6行書されており、その間に「SK-II」の文字が白抜きで大きく書されている内装が施されていた(乙17。以上に使用されている「THE SECRET KEY」の標章を、まとめて「使用商標2」という。)。

なお、この内装は、乙第15号証の5にも写っており、「THE SECRET KEY」の文字は、赤色の床にも繰り返し、白抜きで記載されていることがわかる。

さらに、シークレットキーハウスのイベント会場には、赤色の円柱状の土台の上に飾った、「SK-II」の前身である「SECRET KEY II」の「フェイシャルトリートメントエッセンス」のボトルを、透明なドーム型で覆ったディスプレイも展示されていた(乙10、乙16)。

このディスプレイは、乙第15号証の2及び乙第15号証の3にも写っている。

このディスプレイの円柱状の赤色の土台の周囲には、「SK-II」「PITERA」及び「THE SECRET KEY」の文字が円環状に一周、白抜きで書されており、その下の赤色の地面にも、このディスプレイを囲むように、「THE SECRET KEY」と「PITERA」の文字が、中心の小さな文字から外側の大きな文字へと文字の大きさを変えながら、白抜きで何周にも書されている。そして、この透明なドーム内に展示されたボトル上には、「SECRET/KEY/II」の文字が、三段に書されている(以下、このボトル上に表示された商標を「使用商標3」という。)。

このようなボトルを展示することで、会場を訪れたSK-IIブランドの愛用者(需要者)に、ブランドの歴史を感じてもらい、より一層SK-II化粧品への愛着を持ってもらいたいという意図が込められている。

エ 以上のとおり、シークレットキーハウスの会場では、少なくとも、使用商標1「SECRET KEY」、使用商標2「THE SECRET KEY」及び使用商標3「SECRET/KEY/II」が、「SK-II」の看板商品「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)や、その他のSK-IIの化粧品と関連付けられて、これらの「SK-II」ブランドの化粧品の宣伝広告のために表示されていた。

(3)使用商標について(登録商標と社会通念上同一の商標)

ア 使用商標1

シークレットキーハウスのイベント会場のディスプレイに使用されていた使用商標1「SECRET KEY」(乙15の5、乙16、乙17)は、欧文字「Secret Key」と片仮名文字「シークレット・キー」の二段併記からなる本件商標の欧文字部分と、同じつづりからなる。

両商標は「シークレットキー」の称呼、及び「秘密の鍵」の観念において同一である。

一方、使用商標1は片仮名文字を含んでいない点、下から上に読むように表記されている点、すべての欧文字が大文字表記である点及び書体において、片仮名文字を含む二段書きであり、欧文字部分は単語の語頭のみ大文字表記の本件商標とは異なっている。

ここでまず、審判便覧「登録商標の不使用による取消審判53-01」(乙18)には、「その他社会通念上同一と認められる例」の「例2」として、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」の記載がある。

本件においては、登録商標は「Secret Key」と「シークレット・キー」の二段併記であり、上段と下段の各部は、いずれも「秘密の鍵」という観念を同一にするから、その一方(上段の欧文字)のみからなる使用商標1は、本件商標と社会通念上同一と認められ得る。

また、同「例3」として、「縦書きによる表示態様とこれに対応すると認められる左横書き又は右横書き(ローマ字にあっては、右横書きを除く)による表示態様の相互間の使用」の記載がある。

これに基づけば、左横書きの欧文字商標を反時計回りに90度回転させて縦に表示する態様である使用商標1と、左横書きのローマ字(欧文字)表記である本件商標は、「縦書きによる表示態様とこれに対応すると認められる左横書きによる表示態様の相互間の使用」に該当(若しくは同一視)し得るから、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものと考えられる。

さらに、乙第18号証中「ア 登録商標の使用と認められる事例」の「(ア)書体にのみに変更を加えた同一の文字からなる商標」において、様々な書体の相互間の使用は登録商標の使用と認められており、かつ「例5」において「ローマ字の大文字と小文字の相互間の使用」が、登録商標の使用と認められている。

そうすると、本件商標欧文字部分とは若干異なる書体(フォント)であり、かつすべての文字が大文字で書された使用商標1についても、本件商標とは社会通念上同一の商標と認められ得る。

以上のとおり、使用商標1は、片仮名文字の有無や、横書きと縦に表示されている等の点で本件商標と違いはあるが、称呼及び観念において同一であり、両商標は要部において大きな差異はないことから、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標と認められると考える。

イ 使用商標2

シークレットキーハウスのイベント会場のディスプレイに使用されていた使用商標2「THE SECRET KEY」(乙13、乙14、乙15の5、乙16、乙17)は、本件商標の欧文字部分と同じつづりからなり、横一連に書されている点も同一である。一方、使用商標2は、語頭に「THE」が付加されている点で、両者は異なる。

ここで、上下の語が同じ観念を有する二段併記の登録商標について、その一方のみの使用や、書体の変更及び大文字・小文字を相互に変更した商標の使用が、登録商標の社会通念上同一の商標の使用と判断され得る点については、上述のとおりである(乙18)。

さらに、使用商標2に含まれる「THE」は、英語の定冠詞であり、我が国においては中学校の英語授業の初期段階で学習する初歩的な英単語である。

「THE」は、直接的に該当する日本語が存在しないこともあり、翻訳する場合、「THE」の存在は、原則として観念に影響を及ぼさない(もちろん、翻訳の際に考慮はされ得る。)。特に、文章において使用される場合に比べ、単語に付される場合、日本人の感覚として「THE」の有無が観念に与える影響はあまりなく、翻訳においては考慮されないことも多々ある。

また、米国で制作された映画のタイトルに「THE」が含まれていても(タイトルが「THE」から始まっていても)、日本では、「THE」を表す「ザ」の音を映画タイトルに含めないことが一般的に行われていること等からも、「THE」の語が日本語において重視されない語であることは、明らかである。例えば、日本で上映された映画「ターミネーター」の英語のタイトルは「The Terminator」(乙19)であり、映画「ネバーエンディング・ストーリー」の英語のタイトルは「The NeverEnding Story」(乙20)である。

このような、我が国における「THE」の取り扱いを考慮すると、一般論として、「THE」の語は、我が国においてはさほど重要視されておらず、基本的には自他商品識別機能を発揮しない、と考えることが妥当である。

よって、使用商標2「THE SECRET KEY」においても、「THE」は自他商品識別機能を発揮しておらず、使用商標2における要部は「SECRET KEY」の部分と考えられる。

以上から、使用商標2は、本件商標の欧文字部分「Secret Key」と同じ欧文字を要部とするものであり、称呼及び観念が共通することから、使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標と判断されるべきと考える。

ウ 使用商標3

シークレットキーハウスのイベント会場においては、「SK-II」の前身「SECRET KEY II」ヘのオマージュとして、「SECRET KEY II フェイシャルトリートメント」のボトルを展示しており(乙10、乙15の2、乙15の3、乙16)、ボトル上には、「SECRET/KEY/II」(使用商標3)の文字が三段に書されている。

使用商標3と本件商標を比較すると、本件商標は欧文字と片仮名文字が二段併記されているのに対し、使用商標3は「SECRET」「KEY」が二段に書されており、かつ語尾に「II」のローマ数字が付加されている点で異なっている。

ここで、上下の語が同じ観念を有する二段併記の登録商標について、その一方のみの使用や、書体の変更及び大文字・小文字を相互に変更した商標の使用が、登録商標の社会通念上同一の商標の使用と判断され得る点については、上述のとおりである(乙18)。

さらに、商標は、商標を付す対象に応じて(例えば物理的な表示スペースの大きさや形状等に応じて)、適宜変更して使用されるのが一般的である。

本件商標の欧文字部分は横一連に書された態様であるが、これを縦長の化粧品ボトル上に表示しようとするとき、正面から見て文字がすべて見えるようにするためには、かなり小さな文字で表示することとなる。商標をより目立たせようとする場合、ボトルのような細長い物体が対象であれば、これを二段あるいは三段に書するということは、通常の企業活動において行われる範ちゅうであるといえる。

加えて、使用商標3における「II」は、算用数字の「2」を表すローマ数字であり、各種商品を取り扱う業界においては、商品の型式、規格、品番等を表す記号、符号等として、原則として識別力に乏しいと判断されるものである。

参考までに、商標中に含まれる「II」部分の識別力を判断した審決を、乙第21号証及び乙第22号証として提出する。

そうすると、使用商標3「SECRET/KEY/II」において、自他商品識別機能を発揮している要部は「SECRET/KEY」部分であると考えられる。そして、当該要部は二段に併記されているものの、右側の語尾部分を揃えて、全体としてまとまりよく一体的に書されており、かつ本件商標とは「シークレットキー」の称呼、及び「秘密の鍵」の観念も共通する。

したがって、使用商標3は、本件商標と社会通念上同一の商標と判断されるべきものである。

参考までに、横一連の登録商標「電撃Hobbymagazine」について、「電撃」、「HOBBY」及び「MAGAZINE」の各文字の大きさ、書体、色彩を変更し、また「HOBBY」と「MAGAZINE」を二段に書して使用した商標を、社会通念上同一と認めた審決を提出する(乙23)。このような審決からも、上記のように判断すべきとの被請求人の主張の妥当性が裏付けられるものと思料する。

エ 以上のとおりであるから、使用商標1ないし使用商標3は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるべきである。

(4)使用商品及び使用の行為について

以上述べたとおり、SK-IIブランドの「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)やその他の「化粧品」を宣伝広告するプロモーションイベントであるシークレットキーハウスや、そのオープニングイベントで、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標1ないし使用商標3が使用されていることから、商標権者によるこのような行為は、「商品(化粧品)に関する広告に標章を付して展示する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するといい得る。

よって、商標権者は第3類「化粧品(化粧用染料・化粧用顔料・染歯料・紅を除く。)」に含まれる「化粧水」に、本件商標と社会通念上同一の商標を使用しているといえる。

(5)要証期間内における使用

以上の証拠から明らかなように、商標権者は、令和5年(2023年)7月28日にオープニングイベントを、同月29日及び同月30日にシークレットキーハウスのイベントを、我が国において開催した。

すなわち、本件商標と社会通念上同一である使用商標1ないし使用商標3が使用された、化粧水その他の化粧品の宣伝広告イベント及びそのオープニングイベントが、要証期間内である令和5年7月28日から同月30日までの間、我が国において行われた。

(6)その他

商標権者は、運営する「SK-II」ブランドのウェブサイトにおいて、令和5年6月30日頃から現在に至るまで、「Secret Key」のページ(https://www.sk-ii.jp/secret-key)を公開している(乙24)。

このページのURL中には「secret-key」の文字を使用し、サイト中に「Secret Key」のタブを表示し、そのページ中で「THE SECRET KEY」の文字が表示される動画をアップしている(乙24、乙25)。

(7)以上より、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が第3類「化粧品」に含まれる「化粧水」や第3類「化粧品」に使用した結果、業務上の信用が化体しているものであり、本件審判の取消の対象とはなり得ない商標である。

このような商標登録を取消すことは業務上の信用の化体しない商標の整理を図るという不使用取消審判制度の趣旨に反するだけではなく、業務上の信用の保護という法目的にも反するものである。

したがって、請求の趣旨のとおりの審決を求めるものである。

2 回答書による主張

(1)シークレットキーハウス及びオープン記念イベントの開催主体、及び商標権者と開催主体の関係について

ア 令和5年7月29日及び同月30日に開催されたシークレットキーハウス、及び同月28日に開催されたオープン記念イベントの開催主体は、いずれも商標権者のSubsidiary(子会社)であるシンガポール支社(Singapore Branch)である。

SA社は、商標権者の100%子会社であるSARL社の100%子会社である。

商標権者、SARL社、SA社及びシンガポール支社の関係を示す書類として、乙第26号証を提出する。

また、SARL社とSA社が、商標権者の子会社であることの証拠として、商標権者が2021年に作成し、米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission/通称SEC)に提出したSubsidiaries(子会社)のリスト(商標権者のスタンプ付き)を、乙第27号証として提出する。

乙第27号証リストには、両社が記載されている。なお、このリストは、SECのデータベース「SECEDGAR」(https://www.sec.gov/edgar/search/#)から、誰でも取得できる。

シンガポール支社は、アジア太平洋地域の地域企業として、ブランドデザインとエクイティ、製品供給、消費財のマーケティングと流通を含む、商標権者に係るブランド全般の事業戦略と計画を策定することである。これには、商標権者に係る化粧品ブランド「SK-II」の事業展開も含まれるため、シークレットキーハウスやオープン記念イベントは、シンガポール支社が開催主体となり、日本において開催したものである。

また、その際、シンガポール支社は、商標権者より本件商標(及びこれと社会通念上同一の商標)の使用に関する許諾を受け、通常使用権者として使用商標1ないし使用商標3を同イベントにおいて「化粧品」について使用した。

イ シンガポール支社が上記イベントの開催主体であることを示す証拠として、シンガポール支社における、全世界のSK-IIブランドに関する上級広報責任者(Senior Communications Director,Global SK-II)であるF氏署名の宣誓書及びその訳文を提出する(乙28)。

同氏は、シークレットキーハウスとオープン記念イベントの企画担当者(宣誓書の項目5)であり、これらのイベントが、シンガポール支社により開催されたことを述べている(宣誓書の項目4)。乙第28号証においては、SA社が、商標権者の子会社であることも述べられている(宣誓書の項目2)。

また、シンガポール支社がイベントの開催主体であることを間接的に裏付ける証明する証拠として、国際PRアワードである「PRAwards Asia-Pacific 2024」(開催日:2024年6月12日(水)、開催国:香港)の結果(受賞者)を伝える記事とその訳文を提出する(乙29)。

「PRAwards Asia-Pacific」は、主として前年のアジア太平洋地域におけるPR業界の優れたキャンペーン等を表彰するアワードである。このアワードでは、2023年に行われたシークレットキーハウスが、「Fashion&Beauty」と「PR Event」の部門で、それぞれゴールドとブロンズの賞を獲得した。その際、当該イベントが東京で行われているにもかかわらず、「Market」(市場)の欄が「Singapore」となっているのは、このイベントの開催主体がシンガポール支社だからである。

ウ 次に、シンガポール支社が本件商標の使用に関して使用許諾を受けている点(本件商標の通常使用権者である点)を示す証拠として、商標権者とSA社の間で交わされた使用許諾契約書と訳文を提出する(乙30)。なお、乙第30号証中、本件審判には直接的に関係しない箇所は、黒塗りしている。

具体的には、乙第30号証の契約書は、2005年7月1日に締結された、商標権者の美容、健康、家庭用ケア製品に関するライセンス契約書の変更契約書であり、商標権者(ライセンサー)とSA社(ライセンシー)の間で交わされ、2014年7月1日に効力が発生したものである。

契約書1.10において、本契約書の対象となる商標につき、「プロクターアンドギャンブルが、直接的または間接的に所有し、現在存在しまたは契約期間においてこれ以降開発もしくは取得する、すべての商標、商号、トレードドレス、関連するインターネットドメイン名、その他の類似の財産及びすべての登録、出願、権利。」と規定しており、本件商標が含まれることは明らかである。

また、契約書2「ライセンスの付与」として、「ライセンサーはライセンシーに対し、その権利の範囲内において、本件製品をあらゆる国において製造し、加工し、包装しまたは製造させ、加工させ、包装させることができる通常使用権を付与し、第11.2条に従い、ライセンシーまたはその他の当事者が製造しまたは製造させた本件製品を、所有権情報を表示した適切な本件商標を使用して、並びに適切な特許および特許出願の下に、テリトリーの範囲内において流通・販売する(または提携/非提携販売業者を雇用し流通・販売させる)独占的権利を付与する」と規定しており、ライセンサー(商標権者)が、ライセンシー(SA社)に対し、本件製品の製造や販売に対して、通常使用権等を付与している。

なお、「本件製品」とは、契約書1.6により、「本件商標を使用してテリトリー内で販売される添付資料1の記載の製品カテゴリーに含まれる製品」と定義されており、添付資料1によれば「美容」「高級スキンケア」が列記されていることから、「SK-II」の化粧品が含まれることは明らかである。

また、「テリトリー」とは、契約書1.9により、「ライセンシー、サブライセンシー、ライセンシーもしくはサブライセンシーが雇用する提携/非提携販売業者が、本件製品を本契約に基づき第三者に販売することを許可されたテリトリーは、米国、カナダ、プエルトリコを除く全ての国を指す。」としており、日本が含まれる。

そして、契約書3「本件商標および名義」の3.1「使用」により、「ライセンシーは、本件商標を、本契約の条件の下でのみ使用するものとし、本件商標が使用される本件製品の本契約に基づく製造、加工、広告、販売および流通に関連してのみ使用するものとする。」と定められており、ライセンシーであるSA社が、「SK-II」化粧品についての宣伝広告活動として、シークレットキーハウスやオープン記念イベントを行い、当該イベントにおいて本件商標(と社会通念上同一の商標)を使用したことがわかる。

なお、契約書16「契約期間」の16.1において、「本契約は、当初の契約期間である発効日から2020年6月30日までの間有効に存続するものとする。本契約は、いずれかの当事者から当初の契約期間もしくは更新後の契約期間の満了日から24ヶ月前に書面による通知により契約解除の申し出がない限り、その後の継続する1年間の各年度の終了日を6月30日とし、1年毎に自動的に更新されるものとする。」と定められており、本契約は現在も有効に継続している。

エ 乙第30号証は、包括的な使用許諾に関する契約書なので、本件商標の登録番号を特定した上で、使用許諾がなされているわけではない。しかしながら、商標権者のように、世界中の多数の国で、多岐にわたる事業を展開している世界的企業の場合、各国で登録している商標の数は膨大であり、かつ日々増えていくため、それらに1つずつ登録番号を記載した上で使用許諾の契約書を交わすことは現実的でなく、乙第30号証のような包括的使用許諾契約書を交わすことが商慣行上行われている。

また、乙第28号証の宣誓書において、シンガポール支社が本件商標について、商標権者から使用許諾を得て、ライセンシーとして本件商標(社会通念上同一の商標も含む)を上記イベントにおいて使用したことが述べられている(項目6、項目7)。このことからも、商標権者とシンガポール支社の間に本件商標に関する使用許諾があったことが認められる。

オ 一方、仮に乙第30号証の契約書及び乙第28号証の宣誓書では、シンガポール支社が、商標権者から本件商標の使用に関する許諾を受けていたこと(シンガポール支社が通常使用権者であること)が認定できない場合であっても、通常使用権の許諾は、明文の契約に限らず、黙示の契約によっても可能であるから(乙31)、以下の点から、商標権者はシンガポール支社に対し、黙示の使用許諾を与えていた(シンガポール支社は、商標権者から黙示の使用許諾を受けていた)と考えることができる。

上述のとおり、SA社は商標権者の子会社であるから、そのシンガポール支社が、アジア太平洋地域において化粧品ブランド「SK-II」の事業を展開していくに当たり、商標権者から、広告宣伝活動において本件商標を使用する(黙示の)許諾を受けていた、ということは十分に考えられることである。乙第30号証の契約書や、乙第28号証の宣誓書からも、使用許諾の存在が裏付けられている。

そして、このような状況において、SA社やシンガポール支社が、本件商標の使用について、商標権者から許諾を受けていなかった(商標権者が、シンガポール支社に本件商標の使用を許諾していなかった)と考えるべき、合理的な根拠や理由もない。

カ 以上のとおり、シークレットキーハウス及びオープン記念イベントの開催主体は、商標権者の子会社であるシンガポール支社であり、シンガポール支社は当該イベントにおいて、商標権者から本件商標の使用許諾を受け、通常使用権者として要証期間内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と判断される使用商標1ないし使用商標3を使用したものである。

最後に、「P&Gプレステージ合同会社」は、日本における化粧品・ビューティーケア製品・医薬品などの販売、輸出入を行う、商標権者の日本のグループ会社の1つである(乙2、乙32)。そのため、乙第8号証や乙第12号証等のプレスリリースは、同社の名称にて発表された。

(2)「SK-II」ブランドのウェブサイトにおける本件商標の使用について

ア 「SK-II」ブランドのウェブサイトでは、令和5年(2023年)6月30日に、乙第24号証及び乙第25号証として提出した「Secret Key」(https://www.sk-ii.jp/secret-key)のページがアップされた。このことを証明する証拠として、乙第28号証の宣誓書を提出する。

当該宣誓書では、シンガポール支社が、2023年6月30日に、「SK-II」の日本語ウェブサイト(https://www.sk-ii.jp/secret-key)において、「Secret Key」に関連するウェブページの掲載を開始したこと、及びこのページは乙第24号証及び第25号証と同一であること、が述べられている(項目8)。

イ このウェブサイトにおいては、タブに「Secret Key」(以下「使用商標4」という。)の文字が表示されており(乙24)、当該タブをクリックすると乙第25号証に示す動画が再生され、動画の中で「THE/SECRET KEY」(乙25のキャプチャ3番目。以下「使用商標5」という。)、及び「THE/SECRET/KEY」(乙25のキャプチャ5番目。以下、「使用商標6」という。)の文字が表示される。

そして、当該ウェブページの下部では、「SK-II」の各種商品の説明が記載され、さらに購入のためのページも表示される(乙24)。

以下、使用商標4ないし使用商標6について述べる。

ウ 使用商標4

使用商標4「Secret Key」は、本件商標の欧文字部分と同じつづりであり、かつ「シークレットキー」の称呼及び「秘密の鍵」の観念は本件商標と同一である。

一方、本件商標4は、書体、及び本件商標に含まれる片仮名文字を含んでいない点で本件商標とは異なる。

しかしながら、乙第18号証の審判便覧「登録商標の不使用による取消審判53-01」の「(2)登録商標の使用の認定に関する運用の事例/ア 登録商標の使用と認められる事例/(ア)書体にのみ変更を加えた同一の文字からなる商標」において、様々な書体の相互間の使用は登録商標の使用と認められている。

また、同審判便覧の「(エ)その他社会通念上同一と認められる例」の「例2」として、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一にするときに、その一方の使用」の記載がある。本件商標「Secret Key」と「シークレット・キー」の二段併記であり、上段と下段の各部は、いずれも「秘密の鍵」という観念を同一にするから、その一方(上段の欧文字)のみからなる使用商標4は、本件商標と社会通念上同一と認められる。

エ 使用商標5

次に使用商標5「THE/SECRET KEY」については、「THE」が極端に小さく書されていることから、実質的に「SECRET KEY」の使用と考えられるところ、本件商標とは、書体、片仮名文字が含まれていない点、及び本件商標の欧文字部分は「S」と「K」のみが大文字である点で異なる。

しかしながら、書体及び片仮名文字が含まれていない点については、使用商標4に述べた内容と同じように社会通念上同一と認められ得るものである。

また、使用商標5においては全文字が大文字であるが、乙第18号証の審判便覧「(2)登録商標の使用の認定に関する運用の事例/ア 登録商標の使用と認められる事例/(ア)書体にのみ変更を加えた同一の文字からなる商標」の例5によれば、大文字・小文字を相互に変更した商標の使用は、社会通念上同一の商標の使用と判断され得る。

すなわち、これらの差異点は、両商標の要部や自他商品識別標識としての機能に与える影響が極めて小さく、一方で両者は、これらの機能において重要な「シークレットキー」の称呼、及び「秘密の鍵」の観念が共通している。

よって、使用商標5は、本件商標と社会通念上同一と認められる。

オ 使用商標6

最後に使用商標6については、「THE/SECRET/KEY」を三段に書した態様であるところ、まず語頭の「THE」については答弁書において述べたとおり、我が国において「THE」の語はさほど重要視されておらず、基本的には自他商品識別機能を発揮しない、と考えることが妥当であるから、使用商標6における要部は「SECRET KEY」部分であると考えられる。

そして、使用商標6は、書体、片仮名文字が付されていない点、全文字が大文字である点、及び「SECRET」と「KEY」が二段に書されている点で本件商標とは異なっている。

しかしながら、これらの差異点については、上記エで述べたとおり、乙第18号証の審判便覧の記載によれば、社会通念上同一と認められ得るものである。すなわち、これらの差異点は、両商標の要部や自他商品識別標識としての機能に与える影響が極めて小さく、一方で両者は、これらの機能において重要な「シークレットキー」の称呼、及び「秘密の鍵」の観念が共通している。

よって、使用商標6は、本件商標と社会通念上同一と認められる。

カ 使用商標4ないし使用商標6は、いずれも化粧品ブランド「SK-II」のウェブサイトにおいて、要証期間内である令和5年6月30日以降、「化粧品」の宣伝広告のために使用されているから、「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。

また、シンガポール支社は、通常使用権者として当該ウェブサイトにおいて、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標4ないし使用商標6を使用している(乙28、乙30)。

キ なお、請求人は、弁駁書において、ウェブサイト中で「SECRET KEY」は単独で使用されておらず(「SK-II」と共に使用されている)、あるいは識別表示として使用されていない、と述べているが、以下のとおり妥当でない。

まず、当該ウェブサイトが、「SK-II」ブランドの宣伝広告や販売のためのサイトであることを考えれば、使用商標4ないし使用商標6がいずれも「SK-II」の近くで(或いは、共に)使用されていることは当然である。しかしながら、当該ウェブサイトにおける使用態様においては、「Secret Key」「SECRET KEY」は、「SK-II」とは物理的に分離しているから、使用商標4ないし使用商標6は単独で使用されているといえる。

また、請求人は、使用商標4はタブ名称にすぎないと述べているが、当該タブをクリックすることで、「SK-II」の化粧品についての説明や、購入の記載にたどり着けるのであるから(乙24)、使用商標4はまさに「SK-II」の化粧品の宣伝広告のために使用されており、自他商品識別機能を発揮している。

ク 以上のとおり、本件商標の通常使用権者であるシンガポール支社が、要証期間内である令和5年6月30日から現在まで、本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標4ないし使用商標6を、化粧品ブランド「SK-II」のウェブサイトにおいて使用している。これは、「商品(化粧品)に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当し、本件商標は指定商品について要証期間内に通常使用権者により使用されているといえるから、本件商標登録は取り消されるべきではない。

(3)弁駁書に対して

ア 乙第15号証の撮影者及び撮影日について

乙第15号証は、シークレットキーハウスの会場内外の様子を撮影した写真であるが、これはシンガポール支社が、記録等のために専門のカメラマンに撮影を依頼したものである。

具体的には、シンガポール支社作成に係るカメラマンに関する資料(乙33)に掲載されているプロのカメラマン5名が、令和5年7月28日から同年8月2日の間に、シークレットキーハウスの会場内外の様子を撮影したものである。各カメラマンの活動日時(撮影日時)は、乙第33号証の各カメラマンのページに右上に記載されている。なお、乙第15号証の各写真を、具体的にどのカメラマンが撮影したかまでは、特定できていない。

また、請求人は、弁駁書において、乙第16号証及び乙第17号証の写真の撮影者や撮影日の提示を求めているが、当該証拠の写真はインターネットで一般的に公開されている個人のブログを引用した証拠であるから、被請求人がこれを特定することは困難である。一般的には、ブログ作成者が、当該ブログ内に記載された日にちにイベントに参加し、そこで撮影したと考えることが妥当と思われる。

イ 弁駁書について

(ア)請求人は、弁駁書において、以下のように述べている。

a 使用商標1及び使用商標2は、いずれも「SK-II」の文字と共に使用されており、上述したように「SK-II」は我が国において人気が高い化粧品ブランドであって、取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与え、それとの対比において使用商標1及び使用商標2の印象が薄いので、「SK-II」と結合して使用されたというべきで、単独で使用されたとはいえない。

使用商標3は、展示されたボトルに書された文字であり、(中略)このことから、使用商標3も「SK-II」と結合して使用されたというべきで、単独で使用されたとはいえない。

b (前略)使用商標1ないし使用商標3のそれぞれは、「SK-II」ブランドの「キーワード」にすぎず、識別表示として使用されておらず、商品の性質や成分の記載と何ら変わらない。

(イ)上記(ア)aの主張は、使用商標1ないし使用商標3は、いずれも「SK-II」と共に使用されているから(単独で使用されていないから)、本件商標と社会通念上同一の商標と認められない、との主張と理解する。同bの主張は、使用商標1ないし使用商標3は、出所表示機能を発揮する態様で使用されていない(出所識別標識として使用されていない)、との主張と理解する。

以下に、この点につき反論する。

(ウ)まず、上記(ア)aの主張に対しては、使用商標1ないし使用商標3が使用されたイベントは、いずれも商標権者の化粧品ブランド「SK-II」の広告宣伝のためのプロモーションイベントであるため、使用商標1ないし使用商標3が、「SK-II」のブランド名と関連付けられて使用されていることは否定しない。

しかしながら、使用商標1が現れるパネル前面には、「SECRET KEY」の文字が反時計回りに90度回転した態様で、赤地に白抜きで書されており、「SK-II」の文字はそのパネル側面に、「SECRET KEY」よりかなり小さな文字で書されているにすぎない。

よって、使用商標1は、「SK-II」とは視覚的に分離独立して認識される態様で使用されており、いかに「SK-II」が著名な商標であるとしても、これほど文字の大きさに差があり(「SECRET KEY」がこれほど大きく書されており)、かつ表示場所が離れていれば、「SK-II」と一緒に使用されているとはいえず、また使用商標1の印象が薄い、とも到底いえないと考える。

また、使用商標2「THE SECRET KEY」については、上段に同じサイズの文字で「SK-II」がセンタリングして書されているところ、使用商標2「THE SECRET KEY」は「SK-II」より文字数が多く長いため、非常に目立つ態様で書されているといえる。

よって、いかに「SK-II」が著名商標であるとしても、下段に書された使用商標2の印象が薄い、とは思われない。

さらに、使用商標3「SECRET/KEY/II」については、これが書されたボトルが展示された土台部分に「SK-II」の文字が書されているものの、相当程度離れており、「SK-II」の文字と共に使用されている、とはいえない。

以上のとおりであるから、使用商標1ないし使用商標3は、本件商標と社会通念上同一の商標である「SECRET KEY」「THE SECRET KEY」「SECRET/KEY/II」が、それぞれ単独で使用されているといえるから、請求人による前者の主張は失当である。

(エ)次に、上記(ア)bの主張については、確かに被請求人は、「SECRET KEY」の語は、「SK-II」ブランドのイメージや世界観を表すキーワードとして、現在も「SK-II」ブランドに大切に受け継がれているものである旨、答弁書にて述べた。

しかしながら、これは「SECRET KEY」の語が持つ歴史的意味や重要性を述べたにすぎず、使用商標1ないし使用商標3が出所表示であること(出所表示として使用されていること)を否定するものではない。当該語がキーワードであることと、出所表示として使用されていることは、矛盾せず両立する。

「SECRET KEY」の語が、「SK-II」ブランドのイメージや世界親を表すキーワードであったとしても、指定商品(化粧品)との関係で、商品の内容や特徴を直接的、具体的に表示する記述的な語ではない以上、宣伝広告への使用であっても出所識別標識として使用されていると判断されるべきである。

また、「キーワード」とは、そのブランドのイメージや世界観などを表す語である点で、企業理念や経営方針などを表すスローガンやキャッチフレーズに近いと考えられるが、例えばスローガンやキャッチフレーズであったとしても、商品・役務との関係で直接的、具体的な意味合いが認められない場合や、当該スローガン等が自他商品識別標識として使用されている一方で、第三者が当該スローガンと同一又は類似の語句を宣伝広告として使用していない場合には、自他商品・役務識別機能を有するものとして、特許庁において登録が認められ得るものである(乙34)。

シークレットキーハウスやオープン記念イベントで使用された使用商標1ないし使用商標3は、使用商品「フェイシャルトリートメントエッセンス(化粧水)」やその他の「化粧品」との関係で、商品の性質や成分、その他のいかなる内容や特徴等を直接的、具体的に表す語ではなく、また第三者により商品の宣伝広告に広く使用されている語でもない。むしろ、使用商標1のように、目立つ態様で「SECRET KEY」の語が記載されたパネルがディスプレイされている点、使用商標2のように、「SK-II」と同じ文字の大きさで目立つように書されている点、あるいは使用商標3のように化粧品ボトルに記載された態様で展示されている点から、これらは出所表示として使用されている(商標的使用態様である)と認識されると考える方が自然である。

なお、参考までに、指定商品自体に登録商標は付されておらず、指定商品に関するセール(謝恩大廉売会)を知らせるチラシに登録商標を記載したこと(セールの名称として登録商標を使用したこと)につき、指定商品に関する登録商標の使用と認めた審決が存在する(乙35)。このような審決からも、宣伝広告への登録商標の使用が、指定商品に関する出所識別標識としての使用と認められ得ることが裏付けられる。

(オ)一方、仮に使用商標1ないし使用商標3が出所表示として使用されていない(自他商品識別機能を発揮していない)と判断され得るとしても、以下の点から、本件商標登録は取り消されるべきではない。

商標法第50条の主な趣旨は、登録された商標には、その使用の有無にかかわらず、排他独占的な権利が発生することから、長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは、当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め、国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので、一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求することができるというものである。

上記趣旨に鑑みれば、商標法50条所定の「使用」は、当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきである(乙36及び東京高判平成3.2.28判時1389号128頁「POLA」事件)。

よって、使用商標1ないし使用商標3の使用が、「商品(化粧品)に関する広告に標章を付して展示する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する以上、出所表示機能を果たす態様であるか否かにかかわらず、本件商標は指定商品について要証期間内に通常使用権者により使用されているといえるから、本件商標登録は取り消されるべきではない。

(4)以上のとおりであるから、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者の通常使用権者が、第3類「化粧品(化粧用染料・化粧用顔料・染歯料・紅を除く。)」に含まれる「化粧水」に、本件商標と社会通念上同一の商標を使用した結果、業務上の信用が化体しているものであり、本件審判の取消の対象とはなり得ない商標である。

3 上申書による主張

(1)シンガポール支社がオープン記念イベント及びシークレットキーハウスの開催主体であることを示す証拠として、シンガポール支社宛に発行された、シークレットキーハウスの開催場所使用料の請求書写し(乙37)を追加で提出する。

乙第37号証の請求書について、発行者であるE社は、シークレットキーハウスの開催場所である「Standby Harajuku,Batsu Art Gallery」等の貸しスペース(ギャラリーやイベント会場)を運営する会社である(乙38)。

請求項目(Product Name)として、「BATSU,MASS,STANDBY,TERRACE Usage fee 7/23(Sun)-8/4(Fri),2023 for 13 days」の記載がある。

この「BATSU」「MASS」「STANDBY」は、同社が運営している貸し出しスペース(ギャラリーやイベント会場)の名称で、「BATSU」は「BATSU Art Gallery」を示しており、「STANDBY」と共に、シークレットキーハウスの開催場所となっていた(乙8)。

なお、「MASS」はシークレットキーハウスの開催場所として、乙第8号証等に記載はされていないが、乙第38号証に記載のとおり、これらのスペースは同じ並びに位置し、近接していることから、シークレットキーハウス開催に当たりまとめて賃借したものと思料される。

そして、使用期間として2023年7月23日ないし同年8月4日と記載されているところ、オープン記念イベント及びシークレットキーハウスは、2023年7月28日ないし同月30日に開催されたものであるから、準備期間や撤収期間を考慮すれば、上記賃借期間に特に不審な点はない。

以上の証拠からも、シンガポール支社が、オープン記念イベント及びシークレットキーハウスの開催主体であることが裏付けられるものと思料する。

(2)次に、回答書で述べたとおり、現時点で、乙第15号証の各写真が、乙第33号証のどのカメラマンにより、何日に撮影されたか、を特定することはできていないものの、当該各写真に現れるシークレットキーハウスの内装、特に乙第15号証の2、乙第15号証の3及び乙第15号証の5に写る内装が、シークレットキーハウス期間中に、その会場において存在していたことを示す証拠として、写真・動画投稿を行うSNS「Instagram(インスタグラム)」の以下の投稿を追加で提出する。

ア 「SK-II」の公式インスタグラム 2023年8月2日の投稿(https://www.instagram.com/skii/p/Cvb5Wo30z-a/?irng_index=3)(乙39)

ハッシュタグ「#SKIISECRETKEYHOUSE」、及び説明文に「Secret Key House」と記載されていることから、同投稿の写真が、シークレットキーハウスの写真であることがわかる。

投稿された3枚の写真は、乙第15号証の2及び乙第15号証の3と、多少角度は異なるものの、同一の内装を写したものである。

これらの写真から、使用商標3が付された化粧品用ボトルが、シークレットキーハウスにおいて展示されていたことがわかる。

イ 「SK-II」の公式インスタグラム 2023年8月11日の投稿(https://www.instagram.com/skii/p/CvzObSCSCpO/?hl=af&img_index=l)(乙40)

本件写真は、2023年8月11日に投稿されたものであるが、ハッシュタグ「#SKIISECRETKEYHOUSE」の記載等から、同投稿の写真がシークレットキーハウスの写真であることは明らかである。投稿された3枚の写真の内、最初の1枚は、乙第15号証の5とほぼ同一であり、使用商標2に係る内装がシークレットキーハウスにおいて施されていたことがわかる。また、1枚目の写真右側に写っている縦長の広告物(縦に下から上に「SECRET KEY」の文字が書された態様の使用商標1が付されている。)のディスプレイは、乙第16号証及び乙第17号証に現れるものであるが、本件投稿の2枚目及び3枚目の投稿写真にも同様のディスプレイが写っている。これらの写真から、使用商標1が付された広告物が、シークレットキーハウスにおいてディスプレイされていたことがわかる。

ウ 個人のインスタグラム2023年8月7日の投稿(乙41)

上記インスタグラムの投稿は、シークレットキーハウスに参加した個人によるものである。

説明文章に「SK IIのTHE SECRET KEYのイベントヘ行ってきました。」との記載があり、2023年8月7日に投稿されたものであるから、シークレットキーハウスに参加したと考えられる。

乙第41号証として提出する画像は、同投稿中の動画(静止画の自動再生)のうちの1つの静止画である。壁の出っ張りに腰かけている女性の後ろに鏡があり、そこに向かい側のディスプレイ(縦に下から上に「SECRET KEY」の文字が書されている。)が反転して写っている。この撮影場所は、乙15号証の5に写っているシークレットキーハウス中の1つのコーナーである。

乙第15号証の5の写真では、向かって左側に鏡が写っており、向かい側に乙第17号証の広告物(使用商標1が付されているもの)がディスプレイされている。これは乙第40号証の写真とも矛盾しない。

そして、同投稿の静止画から、使用商標1が付された広告物が、シークレットキーハウスにおいてディスプレイされていたことがわかる。

以上、乙第39号証ないし乙第41号証に係るInstagramの投稿写真からも、乙第15号証の写真に現れるシークレットキーハウスの内装、特に乙第15号証の2、乙第15号証の3及び乙第15号証の5に写る内装が、シークレットキーハウス期間中に、その会場において撮影されたもの(このような内装が存在していたこと)が証明されたものと思料する。

第4 当審の判断

1 事実認定

(1)被請求人の主張及び乙各号証によれば、以下の事実が確認できる。

ア 乙第5号証

乙第5号証は、被請求人が、「THE NIKKEI MAGAZINE」の2022年10月5日付の記事と主張するものであり、1葉目において、上部に、「THE NIKKEI MAGAZINE」の記載、その下に、「日本発スキンケア「SK-II」 年間世界売上高10億ドル」の記載、その下に、「2022.10.5」の記載、その下の記事の文面中に、「SK-II(エスケーツー)はP&Gが世界12の国・地域に出荷するスキンケア化粧品だ。」、「SK-IIは化粧品を手掛ける米マックスファクターの日本法人から誕生したブランドだ。日本酒を造る高齢の杜氏(とうじ)の手がつややかで若々しいことに着目し、それが酵母の効果だと確認した。この酵母が発酵する過程で発生する成分を「ピテラ」と名付け、これを使った化粧品ブランドとしてSK-IIを立ち上げた。SKはシークレット・キー、秘密の鍵を意味する。91年にP&Gがマックスファクターを買収したことで、ブランドと滋賀工場はP&Gの傘下に入った。」及び「新しく稼働した工場のラインでは、ブランドを代表する化粧水「フェイシャルトリートメントエッセンス」などを最新の自動化設備で充填・梱包し、世界に送り出す。」の各記載がある。

イ 乙第8号証

乙第8号証は、被請求人が、「PRTIMES」に掲載されたシークレットキーハウスのイベント開催に関するP&Gプレステージ合同会社のプレスリリースと主張するものであり、1葉目において、左上に、「PR TIMES」の記載、その下に、「SK-IIが新・体験型イベント「シークレットキーハウス」を開催 ピテラTMとともにクリアな素肌へ」(審決注:「TM」は上付文字である。以下同じ。)の記載、その下に、「美肌への秘密の鍵を手に入れるイベント」の記載、その下に、「P&Gプレステージ合同会社」の記載、その下に、「2023年7月13日 21時09分」の記載、その下に、「グローバルプレステージスキンケアブランドSK-II は今夏、ピテラTM、そしてピテラTMがもたらすクリアな素肌の秘密を解き明かすポップアップイベント「SK-II シークレットキーハウス」を東京・表参道で開催します。ピテラTMは、特別な酵母の株から、独自のプロセスで発酵させ生み出したSK-II独自の天然由来成分です。そんなピテラTMを90%以上含むフェイシャル トリートメント エッセンス(通称ピテラTMエッセンス)は世界中で数百万人の人々をクリアな素肌に導いてきました。」の記載がある。

また、本号証の2葉目において、上部に、「【イベント概要】」の記載、その下に、「名称:SK-II シークレットキーハウス」、「日時:7月29(土)11:00-21:00/7月30日(日)11:00-21:00(最終受付 19:45)」、「場所:STANDBY,BA-TSU ART GALLERY 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-11-1」及び「ギフト:SK-II 公式アカウントのLINE友だち登録いただいた方には8月20日に発売する新商品「スキンパワー アドバンスト クリーム」の2.5g、化粧水「フェイシャル トリートメント エッセンス」の10mL サイズ入りのサンプルボックスをプレゼントします。」の各記載がある。

ウ 乙第16号証

乙第16号証は、被請求人が、ブログに掲載されたシークレットキーハウスのイベントに関するブログ記事と主張するものであり、1葉目において、「『SK-IIシークレットキーハウス』@BATSU-ART GALLERY」の記載、その下に、「2023-08-01 06:40:00」の記載、その下に、「原宿・表参道にあるBATSU-ART GALLERYにて化粧品ブランド、SK-IIのPOPUP『SK-IIシークレットキーハウス』が期間限定オープンしていました。」の記載、その下に、「日時:7月29日(土曜日)、16:30」、「場所:STANDBY,BA-TSU ART GALLERY」及び「イベント名:『sk-iiシークレットキーハウス』」の各記載がある。

また、2葉目ないし8葉目に複数の写真が提示されており、このうち、4葉目における最も下の写真から、別掲2に示すとおり、赤地に白色の文字が表示された円柱状の展示物が縦方向に赤色の壁面に取り付けられており、当該展示物に表示された文字は、比較的大きな「SECRET KEY」の欧文字及びその上下に配された多数の比較的小さな「SK-II」の文字を、まとめて反時計回りに90度回転してなる商標を構成していることが見て取れる。

また、当該写真には、右向きの三角形にこれを囲む円を組み合わせた白色の図形が、重ねて表示されていることが見て取れる。

エ 乙第26号証

乙第26号証は、被請求人が、商標権者と子会社の関係を示す資料と主張するものであり、「The Procter & Gamble Company(U.S)」すなわち商標権者の社名等がそれぞれの内部に記載された複数の四角枠が、直線で接続された図が提示されている。

そして、各四角枠の配置の上下関係によれば、商標権者は、SARL社よりも上位であり、SARL社はSA社よりも上位であり、SA社は「Procter & Gamble International Operations SA Singapore Branch(Singapore)」よりも上位である。

オ 乙第30号証

乙第30号証は、被請求人が、使用許諾に関する変更契約書と主張するものであり、これと併せて提出された本号証抄訳によれば、1葉目において、上部に、「プロクター・アンド・ギャンブルの美容・健康・家庭用ケア製品に関する変更契約書」の記載、その下に、「本契約書は、アメリカ合衆国・・・に登記上の事務所を有するザ プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー(以下「ライセンサー」)と、スイス国・・・に登記上の事務所を有するプロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル・オペレーションズ・SA(以下「ライセンシー」)との間で、2014年7月1日(以下「発効日」)に締結された。」の記載、その下に、「ライセンサー及びライセンシーは、原契約書をここに変更することを望んでいる。よって、本契約書に基づき次の通り合意する:」の記載があり、以降、13葉目にかけて条項の一覧が記載されている(審決注:一部マスキングされている。)。

そして、当該一覧中、項番「1.6」に、「本件製品:本件製品とは、個別に及び/または総称して、本件商標を使用してテリトリー内で販売される添付資料1に記載の製品カテゴリーに含まれる製品をいう。」の記載、項番「1.9」に、「ライセンシー、サブライセンシー、ライセンシーもしくはサブライセンシーが雇用する提携/非提携販売業者が、本件製品を本契約に基づき第三者に販売することを許可されたテリトリーは、米国、カナダ、プエルトリコを除く全ての国を指す。」の記載、項番「1.10」に、「本件商標:プロクター アンド ギャンブルが、直接的または間接的に所有し、現在存在しまたは契約期間においてこれ以降開発もしくは取得する、すべての商標、商号、トレードドレス、関連するインターネットドメイン名、その他の類似の財産及びすべての登録、出願、権利。」の記載、項番「3.1」に、「使用:ライセンシーは、本件商標を、本契約の条件の下でのみ使用するものとし、本件商標が使用される本件製品の本契約に基づく製造、加工、広告、販売および流通に関連してのみ使用するものとする。」の記載、項番「16.1」に、「期間: 第16.2条、16.3条、16.4条もしくは17条に基づく事前の契約解除の場合を除き、本契約は、当初の契約期間である発効日から2020年6月30日までの間有効に存続するものとする。本契約は、いずれかの当事者から当初の契約期間もしくは更新後の契約期間の満了日から24ヶ月前に書面による通知により契約解除の申し出がない限り、その後の継続する1年間の各年度の終了日を6月30日とし、1年毎に自動的に更新されるものとする。」の記載がある。

また、本号証の13葉目に、「プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニーを代表して署名:」の記載、その下に、いずれも手書きによる署名及び「10/6/14」の日付の記載、その下に、「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル・オペレーションズSAを代表して署名:」の記載、その下に、いずれも手書きによる署名及び「9/16/2014」の日付の記載がある。

さらに、本号証の14葉目は、「添付資料1」であり、「以下は本契約の一部を構成する:ライセンシーは、下記ライセンス製品の・・・使用料をライセンサーに支払うものとする。」の記載があり、その下に、「製品カテゴリー:」の一覧が提示され、この中に、「・美容」及び「・高級スキンケア」の記載がある。

カ 乙第37号証

乙第37号証は、被請求人が、シークレットキーハウスの開催場所使用料の請求書と主張するものであり、左上に、「Date of issue 2023/5/22」の記載、その右に、「Invoice」の記載、その左下に、「Attention: Procter & Gamble International Operations SA Singapore Branch」の記載、その右下に、E社の社名の記載があり、その下に提示された表中、項番「1」に対応する「Product Name」欄に、「BATSU,MASS,STANDBY,TERRACE Usage fee 7/23(Sun)-8/4(Fri),2023 for 13 days」の記載、同「Amount」欄に金額の記載がある。

キ 乙第38号証

乙第38号証は、被請求人が、「【】TECTURE MAG」に2023年8月29日に掲載された記事と主張するものであり、1葉目において、上部に、「【】TECTURE MAG」の記載、その下に、「PROJECT」の記載、その左下に、「PROJECT|2023.08.29」の記載、その下に、「東京、渋谷原宿を拠点に数々のギャラリーやイベント会場、飲食店などを運営し、アートシーンのみならずストリートカルチャーに常に新鮮な影響を与え続けるE社。そんなE社が新たに立ち上げるベニューは、表参道から1本通りに入ったところにある、同社が運営する<Stand by><The Mass><BATSU art gallery>の並びに位置する。」の記載がある。

(2)上記(1)アないしキによれば、次の事実を認めることができる。

ア 商標権者は、ブランド名が「SK-II」の、「フェイシャル トリートメント エッセンス」と称する化粧水の製造、販売に関わる会社である(乙5)。

イ シークレットキーハウス(「SK-IIシークレットキーハウス」と称するイベント)が、2023年7月29日及び同月30日に、東京都内の「STANDBY,BA-TSU ART GALLERY」を会場として開催され(乙8、乙16)、当該会場においては、赤色の壁面に、比較的大きな「SECRET KEY」の欧文字及びその上下に配された多数の比較的小さな「SK-II」の文字を、まとめて反時計回りに90度回転してなる商標が表示された、円柱状の展示物が掲出されていた(乙16)。

ここで、乙第16号証における当該展示物の写真は、右向きの三角形にこれを囲む円を組み合わせた白色の図形が重ねて表示されているが、これは、本号証のブログ記事において、当該写真が動画へのリンクとして使用され、再生ボタンの機能が付加されていることによるものと解される。

ウ 乙第8号証及び乙第16号証の記載によれば、シークレットキーハウスの目的には、ブランド名が「SK-II」の、「フェイシャル トリートメント エッセンス」と称する化粧水の宣伝広告が含まれていたものと解される。

エ SA社は、商標権者の傘下にある会社であり、2014年7月1日以降、商標権者が保有する商標の使用について、商標権者から許諾を受けている(乙26、乙30)。

ここで、乙第26号証における「Procter & Gamble International Operations SA Singapore Branch(Singapore)」は、特に「Singapore Branch」の記載から、(SA社の)シンガポール支社と理解できる。

オ E社は、2023年5月22日付けで、2023年7月23日から同年8月4日までの「BATSU,MASS,STANDBY,TERRACE Usage fee」、すなわち「BATSU,MASS,STANDBY,TERRACE」の使用料についての「Invoice」、すなわち請求書(以下「本件請求書」という。)を発行した(乙37)。

ここで、本件請求書の「Attention: Procter & Gamble International Operations SA Singapore Branch」の記載は、本件請求書が、シンガポール支社宛であることを示すものと解される。

カ E社は、「Stand by」、「The Mass」及び「BATSU art gallery」の各設備を運営する会社であり(乙38)、ここで、上記オの「BATSU」が「BATSU art gallery」に、同「STANDBY」が「Stand by」に、それぞれ対応しているものと解され、シークレットキーハウスの会場として乙第8号証等に記載されている上記イの「STANDBY,BA-TSU ART GALLERY」は、これらの設備をまとめて指しているものと解される。

また、この点に加え、本件請求書に記載の2023年7月23日から同年8月4日までの期間中に上記イで述べたシークレットキーハウスの開催日が含まれていることから、本件請求書が、シークレットキーハウスの会場に用いた設備の使用料を請求する趣旨であることは明らかである。

キ 上記アないしカを総合的に検討すると、シークレットキーハウスは、シンガポール支社が開催したものとみて差し支えなく、具体的には、シンガポール支社は、E社に会場使用料の支払いを行った上で、2023年7月29日及び同月30日に東京都内で、シークレットキーハウスを、商標権者がその製造、販売に関わる、ブランド名が「SK-II」の「フェイシャル トリートメント エッセンス」と称する化粧水の宣伝広告を目的として開催し、シークレットキーハウスの会場において、比較的大きな「SECRET KEY」の欧文字及びその上下に配された多数の比較的小さな「SK-II」の文字を、まとめて反時計回りに90度回転してなる商標(以下「使用商標」という。)が表示された展示物を掲出したものといえる。

また、シンガポール支社は、商標権者の傘下にあるSA社のシンガポールにおける支社であり、SA社は商標権者が保有する商標の使用について、商標権者から許諾を受けているから、シンガポール支社によるシークレットキーハウスの開催は、商標権者による本件商標の使用許諾の下で行われたものといえる。

よって、本件商標の通常使用権者は、2023年7月29日及び同月30日に、東京都内で開催されたシークレットキーハウスにおいて、商品「化粧水」(以下「使用商品」という。)に関する広告に、使用商標を付して、展示したことが認められる。

2 判断

上記1(2)キの行為について、次のとおり判断できる。

(1)使用商標について

本件商標は、「Secret Key」の欧文字と「シークレット・キー」の片仮名を上下2段に表してなるところ、上段の文字が「秘密の鍵」を意味する英語であり、下段の文字は、上段の文字の読みを特定したものと容易に理解できるものである。

これに対し、使用商標の構成中、「SECRET KEY」は、その上下に多数配された「SK-II」よりも文字のサイズが圧倒的に大きく、その相違から視覚的にも分離して認識される上、シークレットキーハウスへの来訪者である使用商標の看者が、「SK-II」がブランド名であることを容易に理解することは明らかであるから、かかる使用態様からは、多数の「SK-II」とは独立して、個別の出所識別標識として認識されるものといえる。

そして、使用商標の構成中の「SECRET KEY」と、本件商標の構成中の「Secret Key」は、同じつづりについての大文字と小文字の相互間の使用であり、その一方で、使用商標の表示態様が、その構成中の各文字がまとめて反時計回りに90度回転されたものであることは、本件商標との同一性においては考慮すべき要素ではないといえる。

以上から、使用商標は、実質的に、本件商標における観念を同一とする上段の欧文字及び下段の片仮名のうち、前者を使用したものであり、本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。

(2)使用商品について

使用商品は、「化粧水」であって、本件商標の指定商品中、「化粧品(化粧用染料・化粧用顔料・染歯料・紅を除く。)」の範ちゅうに属する商品といえる。

(3)使用者、使用時期及び使用行為について

使用商標の使用者は、本件商標の通常使用権者であり、使用時期は、要証期間の2023年7月29日及び同月30日であり、使用商品に関する広告に使用商標を付して展示する行為は、日本国内において行われたものであって、商標法第2条第3項第8号にいう、商品に関する広告に標章を付したものを展示する行為に該当する。

(4)請求人の主張について

ア 請求人は、意見書1において、シークレットキーハウスの開催主体が、SA社ではなく、シンガポール支社であるということは、シンガポール支社が法人格を有することを前提としているようであるが、その証明がされていない旨主張する。

また、乙第26号証及び乙第27号証は、被請求人が作成した書面にすぎず、被請求人の主張を裏付ける証拠とはなり得ず、仮に、これらによって、SA社がSARL社の子会社であり、SARL社が商標権者の子会社であることが証明されたとしても、それぞれが「100%子会社」であることは証明されていないし、したがって、シンガポール支社が商標権者の支配下にあることは証明されていない旨主張する。

イ 請求人はさらに、意見書2において、本件請求書(乙37)は、証拠として客観的な信ぴょう性に欠け、乙第8号証の発行者の会社情報が不明確であるため証拠能力に欠け、また、乙第38号証は、発行者が不明であることから証拠能力が認められない旨主張する。

ウ しかしながら、乙各号証のそれぞれの内容に特段不審な点や、相互に矛盾する点は見いだせず、上記1(2)キのとおり、各証拠から認定できる事項を総合的に検討すると、シークレットキーハウスは、シンガポール支社が開催したものとみて差し支えなく、シンガポール支社によるシークレットキーハウスの開催は、商標権者による本件商標の使用許諾の下で行われたものといえ、この点について、シンガポール支社が法人格を有することの証明、SARL社、SA社がそれぞれ商標権者、SARL社の100%子会社であることの証明、さらには乙第8号証、乙第26号証、乙第27号証、乙第37号証及び乙第38号証に代わる証拠を要するとまでは認められない。

よって、請求人の主張は採用できない。

(5)小括

上記(1)ないし(3)によれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間に日本国内において、その指定商品の範ちゅうに含まれる使用商品に関する広告に、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる使用商標を付して展示する、商標法第2条第3項第8号に該当する行為を行ったことが認められる。

3 まとめ

以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の通常使用権者が、その指定商品の範ちゅうに含まれる商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したということができる。

したがって、本件商標の登録は、その指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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