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Trademark Appeal Case

商品の立体的形状の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024019426
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

1 手続の経緯

本願は、令和5年5月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和5年12月 8日付け:拒絶理由通知書

令和6年 2月20日 :意見書、手続補正書の提出

令和6年 2月21日 :手続補足書の提出

令和6年 6月28日 :上申書の提出

令和6年 7月 1日 :手続補足書の提出

令和6年 8月29日付け:拒絶査定

令和6年12月 3日 :審判請求書の提出

令和6年12月 4日 :手続補足書の提出

令和7年11月 6日 :審尋

2 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、別掲2のとおりに商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を記載して、第21類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、令和5年5月23日に立体商標として登録出願されたものである。

その後、指定商品については、原審における令和6年2月20日の手続補正により、第21類「コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),コーヒーサーバー(電気式のものを除く。),手動式コーヒー抽出器及びその部品,コーヒーろ過器(電気式のものを除く。),コーヒードリッパー(電気式のものを除く。),コーヒーフィルター用ホルダー」と補正されたものである。

3 原査定の拒絶の理由(要旨)

原査定は、「本願商標は、その立体的形状が「コーヒードリッパー」の形状と、基本的特徴(本体の形、溝があること、底に穴があることなど)を共通にすることから、「コーヒードリッパー」の通常採用し得る商品の形状の一形態を表したものと理解されるものである。コーヒーには様々な抽出方法があり、抽出器具の種類や形状も、機能や美感等に即して様々であるところ、「コーヒードリッパー」も同様に、機能に資することを目的として、又は、美感に資することを目的として、様々な形状のものが製造、販売されている。そして、例えば、円錐型のもの、溝がスパイラルのものや横巻きのもの、底辺の穴が1つであるなど、様々な形状のコーヒードリッパーが、独立して取引され、又は、サーバーに装着されて取引されている。加えて、抽出の量を調整するなどのため、弁やスイッチなどが付されたコーヒードリッパーも、販売されている。以上を踏まえると、本願商標の立体的形状は、「コーヒードリッパー」について機能に資することを目的として採用されたもの、又は、美感に資することを目的として採択されたものとみるのが妥当であり、その機能上又は美感上の理由による形状の選択で予測し得る範囲のものと判断するのが相当である。そうすると、本願商標は、その指定商品中の「コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),コーヒーサーバー(電気式のものを除く。),手動式コーヒー抽出器及びその部品,コーヒーろ過器(電気式のものを除く。),コーヒードリッパー(電気式のものを除く。),コーヒーフィルター用ホルダー」との関係において、商品の形状であることを認識させるにすぎないものであり、商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、また、出願人(請求人)が提出した資料によっても、使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているともいえない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

4 当審における審尋

当審において、令和7年11月6日付け審尋により、別掲3及び別掲4に掲げる事実を提示した上で、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当し、また同条第2項の要件を具備しないとの暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、請求人に対し、意見を求めた。

請求人は、当該審尋に対し、指定した期間を経過するも、何ら回答していない。

5 当審の判断

(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は、別掲1及び別掲2のとおり、らせん状の溝が施された上方が開口した円すい状の開口部を有するコーヒードリッパーの本体部及びコーヒーの抽出機能のスイッチを有するホルダー部より構成される立体的形状からなるものである。

そして、別掲3にみられるように、コーヒードリッパー商品においては、コーヒーの味や濃さ等に影響するものとして、コーヒードリッパー部の本体の形状と溝に複数の種類があるところ、本願商標同様に、円すい状の本体部とらせん状の溝を有するものも、その一類型として一般的であることが認められる。

そして、請求人の提出した請求人商品の説明(甲第2号証等(以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。))にもあるように、コーヒーの粉をお湯に浸漬してから、スイッチを押してドリップする方式のコーヒードリッパーが存在するところ、スイッチを有するホルダー部も浸漬式のコーヒーの抽出に必要な機能ということができる。

加えて、原審で示した事例に加え、別掲4にみられるように、請求人商品以外にも、上記の円すい状の形状でらせん状の溝が施された本体部及びコーヒーの抽出機能のスイッチを有するホルダー部の双方を有する浸漬式のコーヒードリッパー商品が一般に販売されている実情がある。

以上の取引の実情を踏まえると、本願商標の立体的形状は、その指定商品である「コーヒードリッパー」等の関係において、コーヒーの抽出という機能に資すること、又は、美感に資することを目的として採択されたものとみるのが自然であり、取引者、需要者に、機能又は美感向上のための形状であるとの印象を与えるにとどまるものというのが相当である。

そうすると、本願商標を構成する立体的形状は、同種の商品が、その機能又は美感上の理由から採用すると予測される範囲のものであり、その範囲を超えた形状であると認めるに足りる特段の事情は存在しないというべきである。

したがって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)商標法第3条第2項について

請求人は、「本願商標は使用による「識別性(識別力)」を獲得しており、本願商標は、請求人による継続的な使用の結果、需要者が何人か(審判請求人)の業務に係る商品であることを認識することができるに至っているもので、商標法第3条第2項の要件を具備する。」旨主張しているので以下検討する。

ア 請求人の主張及び提出に係る証拠(甲1~甲50)によれば、以下の事実が認められる。

(ア)2019年3月頃以降、本願商標と同一視できる立体的形状を有する商品(以下「本件商標」という。)が販売され、現在に至るまで継続して販売されている(甲2、甲10~甲13、甲45等)。

(イ)本件商品は、高島屋等の百貨店に代表される実店舗、並びにAmazon及び楽天市場に代表されるインターネット上のマーケットプレイスなどを介して販売されており、日本全国を販売地域として販売されている(甲5~甲9、甲40~甲44)。

(ウ)本件商品は2019年から2024年の約6年間に、計約310,000個を販売し、約500,000,000円の売り上げを挙げたとされる(請求人の主張)。

(エ)宣伝広告について、請求人は、本件商品について、自社カタログ(甲10~甲13、甲45)、新聞(甲14~甲35、甲46~甲49)、雑誌(甲36~甲39)、自社及び第三者のウェブサイトにおいて本件商標画像とともに商品紹介が掲載されている。また、2019年に本件商品でグッドデザイン賞を受賞している(甲2)。

(オ)請求人は、本願商標と同一視できる形状について、2018年11月9日に意匠登録出願をしており、2019年9月6日に意匠登録第1642484号として意匠登録されて、現在も権利が存続している。

(カ)別掲4のとおり、本願商標同様に、円すい状の形状でらせん状の溝が施された本体部及びコーヒーの抽出機能のスイッチを有するホルダー部を有するコーヒードリッパー商品が一般に販売されている。

(キ)請求人が実施した2024年10月29日付けアンケート調査結果(以下、「本件アンケート調査」という。)(甲50)によれば、以下のとおりである。

a 調査対象者は、全国の20代以上の男女である。

b 調査方法は、インターネットの質問により、全母数の9,049名のうち、前段の質問で、「週1回以上コーヒーを飲む」、「ハンドドリップ抽出でいれたコーヒーを飲む」、及び「「浸漬式ドリッパー スイッチ」の形状を知っている※」(※合議体注:請求人商品の名称。請求人商品の画像を見せてこの器具の形状を尋ねている)と回答した966名に対して、本調査として請求人商品の画像の製造メーカーを多肢選択式で尋ねている。

c その結果、この966名のうち、回答率の高い順に、請求人と答えた者が34.6%、以下「分からない」が21.8%、「カリタ」と答えた者が14.4%、「UCC」と答えた者が11.7%(以下省略)と続く。

イ 検討

上記アによれば、請求人は、2019年3月頃から現在に至るまで、本件商品を継続的に全国的に販売しており、一定の売上げを有し、2019年に本件商品でグッドデザイン賞を受賞するとともに、新聞、雑誌、自社カタログ及びウェブサイト等で商品紹介がされていることは確認できる。

しかしながら、本件商品の販売個数及び売上高については、客観的な資料がなく、また、本願指定商品である「コーヒードリッパー」等の需要者は、広く一般の需要者であるところ、請求人の主張する本件商品の販売数量及び売上高については、本件商品の分野の市場占有率が確認できないから、本件商品の販売数量及び売上高の多寡を具体的に評価することはできず、一般に各種のコーヒードリッパー商品が全国的に販売されていることを踏まえると、広く一般の需要者が本件商品に触れる機会があるほどの販売・提供実績があるとはいい難いものである。

また、請求人が行った本件アンケート調査については、前段の質問において、「週1回以上コーヒーを飲む」、「ハンドドリップ抽出でいれたコーヒーを飲む」の回答に加え、請求人商品の画像を見せてこの器具の形状を知っていると回答した者を対象に製造メーカーを尋ねる本調査を行っているところ、本願指定商品が「コーヒードリッパー」等であることを踏まえると、本願指定商品の需要者における認識の調査としては、対象者の絞り込みが適切とは言い難く、この調査結果をもって、需要者の認識を判断する証拠としては採用し難いものであるとともに、仮に対象者が適切であるとしても、製造メーカーが請求人と答えた者が34.6%であるという数字も需要者の認識度が高いとは評価できないもので、本願商標が需要者・取引者一般に対して識別力を獲得するに至っているとはいい難いものである。

そして、上記(1)のとおり、本願商標の立体的形状は、その指定商品である「コーヒードリッパー」等の関係において、コーヒーの抽出という機能に資すること、又は、美感に資することを目的として採択されたものとみるのが自然であり、取引者、需要者に、機能又は美感向上のための形状であるとの印象を与えるにとどまるものといえ、その上、別掲4にみられるように、請求人商品以外にも、上記の円すい状の形状でらせん状の溝が施された本体部及びコーヒーの抽出機能のスイッチを有するホルダー部の双方を有する浸漬式のコーヒードリッパー商品が一般に販売されている実情がある。

加えて、本件商品は、グッドデザイン賞、新聞、雑誌等において商品紹介されているが、本願指定商品の需要者は、広く一般の需要者であるところ、その商品紹介等の規模は明らかでなく、提出された証拠の商品紹介回数等を考慮しても、本願商標の指定商品に係る我が国における一般需要者層に広く行き渡るほどの広告等の実績があるとは評価し難いものである。その上、これら商品紹介においては、「デザインのポイント/1 お湯の注ぎ方に左右されないので、誰でも簡単に均一なコーヒー抽出ができます。」(甲2(グッドデザイン賞))、「スイッチ式のドリッパー/ガラスメーカーのハリオ(東京)は、本格的なコーヒーを簡単に抽出できるコーヒードリッパー「浸漬(しんし)式ドリッパー スイッチ」・・・を発売した。コーヒー粉に湯を注ぎ、約2分待ってからボタンを押すだけの簡単な使い方が特徴だ。」(甲21(北日本新聞))、「浸漬式のドリッパー/コーヒー粉をお湯に浸漬(しんし)してから抽出するドリッパー。スイッチを押してドリップするので、どなたでも抽出が可能です。」(甲45(請求人2024年カタログ))と、スイッチ式の機能が大きく取り上げられており、本願商標の立体的形状が他者と差別化されて特徴があるとの記載は見受けられないものであるとともに、商品紹介においては、請求人名称と商品名である「浸漬式ドリッパー スイッチ」とともに商品が紹介されていることから、このスイッチ式の機能と請求人名称と当該商品名が需要者の印象に残るものとみるのが自然であり、これらの商品紹介の記事情報から、本願商標に係る立体的形状それ自体の需要者の認識度は判断し難いものである。

これらを合わせて考慮すると、本願商標は、本願商標に係る立体的形状それ自体のみで、請求人に係る固有の商標として本願指定商品に係る全国の一般需要者の間で広く知られており自他商品識別力を獲得するに至っているとは評価できない。

したがって、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備していると認めることはできない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、また同条第2項の要件を具備しないものであるから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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