sokuhyo

Trademark Appeal Case

使用証拠の有効性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024670026
審判種別記載はありません。
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

結論
国際商標登録第1415306号商標の指定商品中、第33類「whisky」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

理由

第1 本件商標

本件国際登録第1415306号商標(以下「本件商標」という。)は、「UKIYO」の文字を横書きしてなり、2018年6月20日に英国(GB)においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同月25日に国際商標登録出願、第33類「Spirits;gin;vodka;rum;whisky.」を指定商品として、令和2年(2020年)1月17日に設定登録されたものである。

そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年(2024年)6月4日である。

なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和3年(2021年)6月4日ないし令和6年(2024年)6月3日である(以下「要証期間」ということがある。)。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の指定商品中、第33類「whisky」(訳:ウイスキー)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書及び審判事件弁駁書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(以下、証拠の記載に当たっては「甲(乙)〇」と表記する。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品中、第33類「whisky」(訳:ウイスキー)(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)乙11ないし乙13について

ア 商標の使用者

本件商標権者(被請求人)は、審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)において、乙11ないし乙13をもって、「DKGグループは、ウェブサイト「kirkergree.com」(審決注:「kirkergreer.com」の誤記と認める。)(以下、「kirkergreerサイト」という。)において、遅くとも2020年9月21日より現在に至るまで、本件商標を、日本で製造されたスピリッツ(蒸留酒)に、使用をしている。」と主張している。

しかしながら、kirkergreerサイトには、所有者について「ABOUT US Kirker Greer Spirits was founded in 2009 and is 100% independently owned.」、すなわち「2009年に設立され、100%独立経営のKirker Greer Spirits」と記載されているから(甲1及びその抄訳文)、本件商標を使用した「ジン」及び「ウォッカ」を販売しているのはKirker Greer Spiritsであり本件商標権者ではない。

なお、本件商標権者は答弁書において、当該ウェブサイトについて、KIRKER GREER & COLTD(2022年10月28日設立)(以下「KIRKER&CO社」という。)のサイトであると述べているが、乙11及び当該ウェブサイトの各ページには、Kirker Greer SpiritsとKIRKER&CO社が同一法人であることを示す記載はない。仮に、Kirker Greer SpiritsとKIRKER&CO社とが同一法人であったとしても、答弁書において本件商標権者及びKIRKER&CO社が共に「DKGグループに属する法人」と一言説明されているだけで、両者の間に本件商標について使用許諾契約が存在することを示す証拠は何ら提出されていない。

したがって、乙11ないし乙13は、「本件商標権者による使用証拠」とは認められないものである。

イ 使用に係る商品

乙11として提出されたウェブページの写しにおいて商標「UKIYO」が用いられているのは「ジン」及び「ウォッカ」であり、請求に係る指定商品(ウイスキー)ではない。そして、乙11ないし乙13には、商標「UKIYO」がウイスキーに用いられていることは何ら示されていない。

したがって、乙11ないし乙13は、「請求に係る指定商品の使用証拠」とは認められないものである。

ウ 日本国内での使用

ウェブサイトは、アクセス制限をかけない限り、世界のいずれにおいてもアクセス可能であり、日本からでも検索可能であるため、「日本における需要者・取引者」を対象としたものでなければ、日本における使用とは認められない。この点について、知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10095号(PAPAJOHN’S事件)では、「ウェブページによる広告」に関し、「上記ウェブページは,米国サーバーに設けられたものである上,その内容もすべて英語で表示されたものであって,日本の需要者を対象としたものとは認められない。上記ウェブページは日本からもアクセス可能であり,日本の検索エンジンによっても検索可能であるが,このことは,インターネットのウェブページである以上当然のことであり,同事実によっては上記ウェブページによる広告を日本国内による使用に該当するものということはできない」として、日本における使用と認められなかった(甲2)。

本件商標権者が使用を主張しているkirkergreerサイトは、英国に設置されたサーバー上にあり(甲3)、全て英語で記載されていることから、日本の需要者・取引者を対象にしていないことは明らかである。kirkergreerサイトに本件商標を使用した商品を掲載したとしても、日本国内での使用には該当しない。

また、本件商標権者は、乙11の記載を根拠に、「遅くとも2020年9月21日より現在に至るまで、本件商標を、日本で製造されたスピリッツ(蒸留酒)に、使用をしている」と主張しているが、当該ウェブページに「Ukiyo Japanese spirits are born in Chiba,east Tokyo,and are made with rice that is masterfully distilled into our Gin and Vodka expressions.」、すなわち「東京の東に当たる千葉で誕生したUkiyo Japanese spiritsは、米を原料とし、巧みに蒸留されてジンとウォッカに仕上げられている。」と記載されているだけでは、本件商標を使用した商品が日本で製造されていたことの証明にはならない。

したがって、乙11ないし乙13は、「日本における使用証拠」とは認められないものである。

(2)乙14ないし乙17について

ア 商標の使用者

本件商標権者は、答弁書において、乙14ないし乙17をもって、kirkergreerサイトに表示されている商品は、例えばWebサイト「masterofmalt.com」(以下「MMサイト」という。)において、遅くとも2021年9月24日より、販売をされている。」と主張している。

しかしながら、MMサイトは、イギリスのウイスキーショップが運営する酒類の販売サイトであり、本件商標権者とは何ら関係のないウェブサイトである。また、乙14ないし乙17には、商標「UKIYO」が付された容器で「ジン」及び「ウォッカ」が販売されていることが示されているが、本件商標権者がそれらの商品を製造・販売したことを示す記載はどこにもない。

唯一、MMサイトで販売されている「ジン」及び「ウォッカ」のラベルに「浮世 スピリッツ株式会社」という会社名が記載されているが、日本にはこのような名前の会社は実在していない(甲4)。

したがって、乙11ないし乙17は、「本件商標権者による使用証拠」とは認められないものである。

イ 使用に係る商品

乙14として提出されたウェブページの写しにおいて商標「UKIYO」が用いられているのは「ジン」及び「ウォッカ」であり、請求に係る指定商品(ウイスキー)ではない。そして、乙14ないし乙17には、商標「UKIYO」が付されたウイスキーが販売されていることは全く示されていない。

したがって、乙14ないし乙17は、「請求に係る指定商品の使用証拠」とは認められないものである。

ウ 日本国内での使用

ウェブサイトヘの掲載の場合、「日本における需要者・取引者」を対象としたものでなければ、「日本における使用」とは認められない(甲2)。

また、MMサイトの所有者はイギリスのウイスキーショップで、各ウェブページは全て英語で表記されている。この点について、本件商標権者は、乙17をもって、「商品の購入者は、MMサイトで販売されている商品を、日本円で購入することができて、日本国内で受け取ることができる。」と主張しているが、乙17として提出されたウェブページの写しには、印刷年月日の記載がなく、どの時点での情報か不明である。

また、MMサイトのウェブページには、「The prices currently being shown in JPY(change) are approximate,and should be used for illustrative purposes only.All prices are in GBP and all orders are charged in GBP.The order total - the amount you will actually be charged - will be displayed in GBP before you place your order.」、すなわち「現在日本円で表示されている価格はおおよそのものであり、説明の目的のみにご利用ください。すべての価格はイギリスポンドで表示され、すべての注文はイギリスポンドで請求されます。ご注文の合計金額(実際に請求される金額)は、ご注文前にイギリスポンドで表示されます。」と記載されており(甲5)、「日本円で購入することができる」という本件商標権者の主張は失当である。また、2024年10月4日現在、MMサイトでは、日本への配送を扱っているが、個人輸入の扱いとなるため、関税手続き等は購入者が行う必要があり、日本における一般の需要者・取引者が日常的に利用するサイトではない。実際、被請求人から、本件商標が付された商品について、日本国内からの注文実績等の証拠は提出されていない。

したがって、乙17は、要証期間内における「日本における使用証拠」とは認められないものである。

(3)乙18ないし乙20について

ア 商標の使用者

本件商標権者は、答弁書において、乙18ないし乙20をもって、「DKGグループは、ウェブサイト「ukiyospirits.com」(以下「UKIYOサイト」という場合がある。)において、遅くとも2021年1月24日より現在に至るまで、本件商標を、日本で製造されたスピリッツ(蒸留酒)に、使用をしている。」と主張している。

しかしながら、乙18ないし乙20には、前述した「浮世 スピリッツ株式会社」という実在しない架空の会社名(甲4)が記載されているだけで、当該サイトの所有者に関する表示も、本件商標権者に関する記載もない。そして、当然ながら、架空会社である「浮世 スピリッツ株式会社」と本件商標権者との間に、本件商標について使用許諾契約が存在することを示す証拠は何ら提出されていない。

このように、所有者も不明で、架空の会社名が大きく表示されており、需要者や取引者が「浮世 スピリッツ株式会社」のサイトであると誤認する可能性が高いウェブサイト「ukiyospirits.com」は、信憑性が低く、商標の使用の証拠として不適格である。

したがって、乙18ないし乙20も、「本件商標権者による使用証拠」とは認められないものである。

イ 使用に係る商品

乙18ないし乙20として提出されたウェブページの写しにおいて商標「UKIYO」が用いられているのは「ジン」及び「ウォッカ」であり、請求に係る指定商品(ウイスキー)ではない。そして、乙18ないし乙20には、商標「UKIYO」が付されたウイスキーは紹介されていない。

したがって、乙18ないし乙20は、「請求に係る指定商品の使用証拠」とは認められないものである。

(4)乙21ないし乙31について

本件商標権者は、答弁書において、乙21ないし乙31をもって、「本件商標権者は、DKGグループ内の法人を通じて、日本国内に所在するTL Enterprises株式会社(以下「TL社」という場合がある。)に、本件商標が付された商品の製造を委託(注文)して、本件商標が付された商品の引渡を受けている。本件商標権者の上記行為は、商標法第2条第3項第1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」や同項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。」と主張している。

しかしながら、乙21及び乙22として提出されたウェブページは、「TLピアス蒸留所(TL PEARCE DISTILLERY)」の紹介であり、本件商標の使用を証明するものではない。

また、乙23として提出された書類の写しは、大部分が黒塗りされており、本件商標権者による「UKIYO SPIRITS LIMITED(以下「UKIYO社」という場合がある。)は、本件商標が付された商品の製造の委託に関する契約(以下「本製造委託契約」という。)を、TL社との間で締結している。本製造委託契約は、UKIYO社が第三者を通じて注文や支払うことを規定する。」という主張を裏付ける記載は何ら確認できない。かろうじて確認できる内容は、ア 締結日が2023年10月24日であること、イ 千葉県野田市に事業所を有するTL社と、北アイルランドで法人登記されたUKIYO社との契約であること、ウ UKIYO社がTL社に製品の製造を委託すること、エ UKIYO社は、発注や支払いを行う第三者を指定できることのみであり(甲6)、乙23によっては、TL社に製造を委託している商品が、本件商標が付された商品であることを証明することはできない。

そもそも、契約の当事者に本件商標権者は含まれていない。また、乙8によれば、契約当事者であるUKIYO社は、「Dormant Company(休眠会社)」であり(甲7)、実際に営業しているのか不明である。仮に、UKIYO社が営業活動を行っていたとしても、UKIYO社と本件商標権者は別法人であり、両者の間に本件商標について使用許諾契約が存在することを示す証拠は何ら提出されていない。

さらに、乙25ないし乙28には、TL社から、契約外の第三者であるDrinksology Kirker Greer(以下「Drinksology社」という場合がある。)宛に請求書が発行され、Drinksology社が支払いを行ったことが示されているが、Drinksology社は、支払いの代理人又は仲介者にすぎず、本件商標の使用者ではない。そして、Drinksology社についても、本件商標権者との間に本件商標の使用許諾契約が存在することを示す証拠は何ら提出されていない。

それに加えて、乙25に記載されている商品は「Gin Base(75% ABV)」であり、乙11、乙14及び乙18において、本件商標を使用していると示されている「ジン(40% ABV)」ではない。そうすると、TL社が製造を委託されているのは、本件商標が付された商品としての「ジン(40% ABV)」ではなく、その原料となる「Gin Base(75% ABV)」であり、「ジン(40% ABV)」への加工(商品としてのジンの製造)及び商標が付された容器への充填は、英国国内で行っていると考えられる。その場合、日本国内においては、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」や「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」は行っていないことになるため、日本国内における本件商標の使用には該当しない。

なお、乙24で提出された黒塗りのメールは、中身が全くわからないため、証拠として意味がない。

また、乙29及び乙30として提出されたR氏の搭乗券及び写真が表示された端末のスクリーンショットも、本件商標の使用を証明するものではない。

さらに、乙31として提出された写真も、撮影日が不明であるから、TLピアス蒸留所において、要証期間内に、本件商標が付された商品が生産されていたことは証明できない。そして、TLピアス蒸留所において,商標「UKIYO」が付されたウイスキーが製造されていることを示す証拠はなんら提出されておらず、TLピアス蒸留所のウェブサイトにおいても、ウイスキーを製造していることを示す記載はない。

したがって、乙21ないし乙31は、「本件商標権者により、本件商標が、要証期間内に、日本国内において、請求に係る指定商品(ウイスキー)について使用されていた証拠」とは認められないものである。

(5)その他

本件商標権者が、答弁書において、本件商標に係る商品の製造を委託していると述べているTLピアス蒸留所は、酒類製造免許の取得が2022年6月17日(甲8)であり、UKIYO社と本製造委託契約を結んだのが2023年10月24日である。

一方、本件商標権者は、「遅くとも2020年9月21日より、本件商標を、日本で製造されたスピリッツ(蒸留酒)に使用している。」及び「浮世スピリッツは千葉で誕生した」と主張している。これらの主張によれば、本件商標権者は、TL社に製造を委託する以前にも、千葉県内において本件商標を付した「ジン」や「ウォッカ」を製造していたことになるが、本件商標権者からはそれらを示す証拠が提出されていない。

したがって、「遅くとも2020年9月21日より、日本国内において、本件商標を使用している。」という本件商標権者の主張には信憑性がない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、との審決を求め、答弁書、当審からの令和6年12月12日付け及び同7年3月7日付け審尋に対する同年2月17日付け及び同年4月16日付け回答書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙39(枝番号を含む。枝番号を全て引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。

1 答弁の理由

本件商標権者は、本件商標をその指定商品「Class 33 whisky(第33類 ウイスキー)」について、要証期間内に、日本国内において使用をしている。

(1)本件商標権者について

ア 本件商標権者は、2017年10月5日に設立された英国に所在する法人であり、住所は、13 Lombard Street,Belfast,Northern Ireland,BT1 1RB(13 ロンバードストリート、ベルファスト、北アイルランド、BT1 1RB)である(乙1)。そして、Drinksology Kirker Greer Group(以下「DKGグループ」という。)に属する。

イ 本件商標権者の取締役はS氏とR氏である(乙2)。DKGグループに属する各社は、複数のブランドの下、ジン、ウォッカ、ラム、ウイスキーなどのスピリッツ(蒸留酒)の製造・販売をしている(乙3~乙5)。

ウ DKGグループは、同グループに属する法人として、本件商標権者のほかに、Drinksology社、KIRKER&CO社、UKIYO社を含む(乙6~乙8)。

(2)UKIYO社について

UKIYO社は、2020年8月4日に設立された法人で、住所は本件商標権者の住所と同じである(乙8)。

UKIYO社の取締役は、S氏とR氏の2人のみであり(乙33)、本件商標権者の取締役と同じである。同取締役それぞれは、UKIYO社と本件商標権者のそれぞれにおいて、株式の25%以上50%以下と、議決権の25%以上50%以下を有している(乙32、乙34)。

ア UKIYO社(乙8)の事業内容の項の「Dormant Company(休眠会社)」について

(ア)北アイルランドが属する英国の法律「2006年会社法」では、以下の規定がある(乙37、乙38)。

第1169条[1]会社法の目的上、会社は、重要な会計取引がない期間中は「休眠状態」にある。

同条[2]「重要な会計取引」とは、第386条により会社の会計記録に記載することが義務付けられている取引を意味する(乙37の1)。

第386条[1]すべての会社は、適切な会計記録を保持する必要がある。

同条[2]「適切な会計記録」とは、次の十分な記録を意味する。(a)会社の取引を表示し、説明するもの(b)いつでも、その時点での会社の財務状況を合理的な正確さで開示するもの(c)作成が必要な勘定科目が本法の要件に準拠していることを取締役が確認できるようにするもの

同条[3]会計記録には、特に、次の事項を記載しなければならない。(a)会社が受領し支出したすべての金額の日々の記録、並びに受領及び支出が行われた事項(b)当該会社の資産及び負債に関する記録」(乙38の1)。

(イ)英国政府のウェブサイトにおいて、「休眠会社」は、「通常報告するような「重要な」取引が会計年度中になかった場合、登記所(Companies House)によって「休眠」と呼ばれ」る、と説明されている(乙39の1)。

(ウ)このように、UKIYO社が設立された北アイルランドが属する英国において、「休眠会社」は会計年度中に重要な会計取引がなかった会社であり、営業活動を事実上廃止している会社ではない。

また、上記(ア)の法律には、「休眠会社」として存続可能な期間や「みなし解散」などの規定はないから、英国において「休眠会社」は、取引も再開することができ、契約もできるものである。

(3)ウェブサイトの使用について

ア (ア)ウェブサイト「kirkergreer.com」(kirkergreerサイト)は、本件商標権者の名称の一部である「Kirker Greer」をドメイン名に使用したウェブサイトであり、本件商標権者が運営している(乙3、乙4、乙11~乙13)。

本件商標権者が運営する当該ウェブサイトにおいて、同会社の名称のうち、会社等の種類名を表す文字(例えば、株式会社、有限会社、LIMITEDなど)を除く部分がドメイン名に使用されている実情は、証拠を提出するまでもなく、明らかであるから、kirkergreerサイトは本件商標権者のウェブサイトである。

(イ)MMサイトにおいて、kirkergreerサイトに表示されている商品は、遅くとも2021年9月24日より販売されている(乙14~乙16)。商品の購入者はMMサイトで販売されている商品を、日本円で購入することができて、日本国内で受け取ることができる(乙17)。

(ウ)本件商標権者は、kirkergreerサイトにおいて、遅くとも2020年9月21日より現在に至るまで、請求に係る指定商品(ウイスキー)に関する広告を内容とする情報に本件商標を付したものと、UKIYOサイトに掲載されているスピリッツと同じスピリッツに関する広告を内容とする情報に本件商標を付したものを掲載している(乙12)。また、同サイトにおいて、遅くとも2022年9月28日から現在に至るまで、UKIYOサイトに掲載されているスピリッツの包装に本件商標を付したものを掲載している(乙13)。

このようにkirkergreerサイトとUKIYOサイトは対応しており、本件商標権者とUKIYO社は密接な関係を有しているから、本件商標権者は、UKIYO社がスピリッツの包装に本件商標を付したものを掲載及び販売した2021年1月24日(乙19)以後、UKIYO社に日本の需要者を対象にスピリッツの包装に本件商標を付したものを販売することを黙示的に許諾している。

(エ)本件商標権者のkirkergreerサイトにおいて、「UKIYO 吉原 ウイスキー アルコール度数:40% アルコール濃度:70cl」が記載されている(乙12の1)。また、広告が商品写真の掲載を要件とする実情はない。

本件商標権者は、遅くとも2020年9月21日から現在に至るまで、請求に係る指定商品に関する広告を内容とする情報に本件商標を付したものを掲載している。

本件商標権者の上記行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。

イ 「ukiyospirits.com」(UKIYOサイト)について

(ア)UKIYO社は、ウェブサイト「ukiyospirits.com」(UKIYOサイト)において、遅くとも2021年1月24日より現在に至るまで、スピリッツ(蒸留酒)の包装に本件商標を付したものを掲載及び販売している(乙18~乙20)。

同サイトは、日本語の記載があるから、日本の需要者を対象とするものである。

(イ)なお、当該サイトにおいて「Ukiyo Spirits Limited」を「浮世 スピリッツ株式会社」と訳すことは、一般的及び恒常的な取引の実情の範疇である。また、UKIYOサイトのドメイン名は、UKIYO社の名称である「UKIYO SPIRITS LIMITED」の一部である「UKIYO SPIRITS」が使用されている。さらに、UKIYOサイトのプライバシーポリシーには、「Ukiyo Spirits」とその住所が記載されており(乙35)、その住所はUKIYO社の住所と同じである。

(4)UKIYO社の商標使用許諾契約について

UKIYO社は、本件商標権者との間で、商標使用許諾契約(以下「本商標契約」という。)を締結している(乙36)。本商標契約において、本件商標権者は、UKIYO社に対して、商標「Ukiyo」(以下「Ukiyo商標」という。)を商品「spirit alcohol products(蒸留酒製品)」について使用する非独占的な権利を許諾している。本商標契約の対象地域は、日本国を含む全世界であり、契約期間は、2022年3月1日から10年間である。Ukiyo商標は、本件商標と社会通念上同一の商標であり、また、契約の商品は、請求に係る指定商品を含むものである。

このように、UKIYO社が「本件商標権者から、要証期間において、日本国内における請求に係る指定商品についての本件商標の使用について、使用許諾を受けた通常使用権者」であることは、明らかである。

(5)TRIPS協定19条2項について

WTO加盟国である日本国を拘束し、法律に反映しなければならないとされている多国間協定であるTRIPS協定19条2項は、「他の者による商標の使用が商標権者の管理の下(subject to the control of its owner)にある場合には、当該使用は、登録を維持するための使用として認められる。」と規定している。

前述のとおり、本件商標権者と同じ取締役のみにより経営されるUKIYO社の経営は、本件商標権者の管理の下にあるから、UKIYO社による商標の使用は、TRIPS協定19条2項に規定されている、登録を維持するための使用としても認められる。

(6)UKIYO社の使用について

UKIYO社は、日本の需要者を対象とするUKIYOサイトにおいて、遅くとも2021年1月24日から現在に至るまで請求に係る指定商品の包装に本件商標を付したものを販売している(乙18~乙20)。そして、通常使用権者であるUKIYO社のこの行為は、商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。

第4 当審の判断

1 被請求人及び請求人提出の証拠並びに各人の主張によれば、以下のとおりである。

(1)本件商標権者について

本件商標権者の代表取締役とUKIYO社の代表取締役はS氏とR氏であり、2社は同じ住所である(乙1、乙2、乙8、乙32~乙34)。

(2)商標使用許諾契約書について

2022年3月1日付けで、本件商標権者は、UKIYO社に対して、Ukiyo商標を蒸留酒製品について使用する権利を許諾する商標使用許諾契約を締結している。契約期間は2022年3月1日から10年間である(乙36)。

(3)ウェブサイトについて

ア kirkergreer.com(kirkergreerサイト)について(乙11~乙13)

(ア)kirkergreerサイト(乙11)の「1/6」ページには、写真の中央の上側に白抜き文字で「浮世」「UKIYO」の文字が記載され、「2/6」ページには飲料のボトルの商品容器の写真が掲載されており、その商品容器のボトルのラベルには、上から「浮世」「UKIYO」「TOKYO」「DRY GIN」(以下「使用商品1」という。)の文字が記載されており、「3/6」ページ及び「4/6」ページにも、それぞれの飲料のボトルの商品容器の写真が掲載されており、それらのボトルのラベルには、上から「浮世」「UKIYO」「JAPANESE」「BLOSSOM GIN」の文字、同じく上から「浮世」「UKIYO」「JAPANESE」「YUZU GIN」の文字が記載されている(以下、それぞれ「使用商品2」及び「使用商品3」という。)。さらに「5/6」ページにも、飲料のボトルの商品容器の写真が掲載されており、そのボトルのラベルには、「浮世」「UKIYO」「JAPANESE」「RICE VODKA」の文字が記載されている(以下「使用商品4」という。以下「使用商品1」ないし「使用商品4」をまとめていうときは単に「使用商品」という。また使用商品に付された「UKIYO」を「使用商標」という場合がある。)。そしてkirkergreerサイトは上記「浮世」の漢字以外は全て英語で記載されている。

(イ)kirkergreerサイトには、「UKIYO YOSHIWARA WHISKEY ABV;40% VOL:70cl」の英語の記載がある(日本語訳 UKIYO 吉原 ウイスキー アルコール度数:40% アルコール濃度:70cl)(乙12)。

(ウ)kirkergreerサイトは、2020年9月21日及び2022年9月28日には存在していた(乙12、乙13)。

(エ)kirkergreerサイトは、「ABOUT US Kirker Greer Spirits was founded in 2009 and is 100% independently owned.」(甲1)との記載から、「Kirker Greer Spirits」が所有するものと推認できる。

(オ)そして、使用商品は、MMサイトにおいて販売されており、日本円で決済することで購入が可能である(乙14、乙17、被請求人主張)。

イ 「ukiyospirits.com」ウェブサイト(UKIYOサイト)について(乙18~乙20、乙35)

(ア)UKIYOサイト(乙18)には、「浮世」「日本製 浮世スピリッツ株式会社」の日本語の記載があり、その他の商品説明等は全て英語で記載されている。また、「4/10」ページには使用商品1の飲料ボトル、「5/10」ページには使用商品2の飲料ボトル、「6/10」ページにも使用商品3の飲料のボトルが掲載されており、それら使用商品1ないし3のボトルの写真の横には、縦書きで「40% ABV」と記載されている。

(イ)UKIYOサイトは、2021年1月24日及び2023年6月5日には存在していた(乙19、乙20)。

(ウ)UKIYOサイトのPrivacy&Cookie Policy(乙35)の「CONTROLLING YOUR PERSONAL INFORMATION(個人情報の管理)」の項には、「If you would like a copy of the information held on you please write to Ukiyo Spirits,Kirker Greer Spirits,13 Lombard Street Belfast,BT1 1RB,Northern Ireland.(日本語訳 あなたに関する情報のコピーが必要な場合は、ウキヨスピリッツ、カーカーグリアスピリッツ・・・までご連絡ください。)」の記載がある。

2 判断

上記1によれば、以下のように判断できる。

(1)ウェブサイトにおける商標の使用について

ア (ア)kirkergreer.com(kirkergreerサイト)は、使用商品のラベルに「UKIYO」の文字が使用されており、これらは本件商標の使用といえるのかもしれないが、当該ラベルに「GIN」及び「VODKA」の文字が記載されていることから、商品はアルコール飲料の「ジン」及び「ウォッカ」といえるものであり、請求に係る指定商品(ウイスキー)の使用ということはできない。

(イ)kirkergreerサイトには「UKIYO YOSHIWARA WHISKEY ABV;40% VOL:70cl」の文字が記載されているから、当該商品はアルコール飲料の「ウイスキー」であることは推認され、請求に係る指定商品の使用といえるものであるのかもしれないが、乙12は2020年9月21日のものであり、要証期間外である。そして、乙12以外に請求に係る指定商品(ウイスキー)に関する記載は見いだせない。また、「UKIYO YOSHIWARA WHISKEY ABV;40% VOL:70cl」の英語記載のみでは、どのような商標が付された商品であるのか、商品ウイスキーが存在しているのか否かを確認することができないばかりか、kirkergreerサイトは、「浮世」の漢字以外は全て英語で記載されている英語のページであることから、英語によるウェブサイトであるとみるのが相当であり、日本の需要者を対象にしたものとは認められない。

さらに、使用商品について、被請求人はMMサイトにおいて日本円で購入可能であると主張しているが、このウェブサイトは英語のサイトであり、甲5の英語記載の抄訳によれば、「日本円で表示されている価格はおおよそのものであり、説明の目的のみにご利用ください。全ての価格は、イギリスポンドで表示され、全ての注文はイギリスポンドで請求されます。」と記載されているものであるから、日本円で購入可能ということはできず、日本の需要者を対象とした商品の購入ウェブサイトということはできない。

(ウ)そして、kirkergreerサイトは、「Kirker Greer Spirits」の所有であるといえるものであり、本件商標権者が使用をするものということはできない。

なお、被請求人は、kirkergreerサイトについて、答弁書ではKIRKER&CO社のウェブサイトであると説明し、令和7年2月17日付け回答書では本件商標権者のウェブサイトであると説明しているところ、その理由として「kirkergreer」が本件商標権者の社名の一部であり、ドメイン名である旨説明しているが、「kirkergreer」は、KIRKER&CO社(KIRKER GREER & COLTD)の名称の一部ともいえるものであり、kirkergreerサイトの運営者に関する客観的な証拠の提出もしていないことから、被請求人の主張は採用できない。

(エ)したがって、kirkergreerサイトに「UKIYO YOSHIWARA WHISKEY ABV;40% VOL:70cl」の文字が記載されていたとしても、要証期間における本件商標権者による本件商標を付した請求に係る指定商品の使用とは認められない。

イ 「ukiyospirits.com」ウェブサイト(UKIYOサイト)について

(ア)UKIYOサイトは、上記1(3)イ(ウ)によれば、UKIYO社が関わっているウェブサイトであることはうかがえる。また、上記1(2)によれば、UKIYO社は2022年3月1日から10年間、本件商標権者からUkiyo商標の使用許諾を受けた通常使用権者と認められる。

そして、UKIYOサイトにおいて使用商品に関する広告を内容とする情報を2023年6月5日には掲載しているところ、使用商品は「GIN」の表示からアルコール飲料の「ジン」といえるものであるから、請求に係る指定商品(ウイスキー)の使用とは認められない。

(イ)UKIYOサイトは、上記1(3)イ(ア)のとおり、商品の説明等が英語で表示されていることから、英語によるウェブサイトであるとみるのが相当である。また、「浮世」「日本製 浮世スピリッツ株式会社」の日本語表記が縦書きでやや大きな文字でウェブサイト内の各ページの同じ箇所に配置されているところ、これらの日本語表記は、日本の需要者向けというよりは、日本の会社による日本製の商品であることをうかがわせるために、外国の需要者向けにウェブサイトのデザイン的に記載されているというのが相当であるから、UKIYOサイト内のこれら広告を内容とする情報は、一部に日本語の表示があるとしても、日本の需要者を対象としたものとは認められない。

(2)小括

上記(1)ア及びイより、「Kirker Greer Spirits」の所有と認められるkirkergreerサイト及び通常使用権者であるUKIYO社に係るUKIYOサイトにおける使用商品に関する広告を内容とする情報は、日本国内における商標の広告的使用(商標法第2条第3項第8号)に該当するものということはできない。また、上記(1)アにはウイスキーに関する表記があるとしても、当該ウェブサイトの証拠は要証期間外であるから採用することができない。また、商品ウイスキーに付された商標の態様が不明であり、本件商標の使用と判断することもできない。

さらに、kirkergreerサイトに掲載されているその他の使用商品は、アルコール飲料の「ジン」及び「ウォッカ」であり、UKIYOサイトに掲載されている使用商品1ないし3はアルコール飲料の「ジン」であるから、請求に係る指定商品(ウイスキー)の使用とも認められない。

したがって、上記(1)のウェブサイト情報が我が国において広告的な効果を発生させたものということはできず、本件商標権者あるいは通常使用権者が要証期間に日本国内において「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」を行ったことを認めることはできない。

なお、被請求人は、さらなる証拠の提出の準備がある旨述べているが、すでに2回の審尋に対応する機会があり、使用の事実を立証するための十分な期間が与えられているものと考えられるから、これ以上の機会を与えることなく審理を進めるのが適当であると判断した。

(3)被請求人の主張について

被請求人は、TRIPS協定19条2項をあげて、本件商標権者と同じ取締役のみにより経営されるUKIYO社の経営は、本件商標権者の管理の下にあるから、本件商標権者の管理の下にあるUKIYO社による登録商標の使用は、TRIPS協定19条2項に規定されている、登録を維持するための使用としても認められる旨主張している。

しかしながら、UKIYO社が本件商標権者の管理下にある通常使用権者として認められるとしても、上記2(1)のとおり、UKIYOサイトにおける使用は日本の需要者向けとはいえず、日本国内の使用とは認められない。

したがって、上記被請求人の主張は採用できない。

3 まとめ

上記のとおり、被請求人は、その提出証拠によって、要証期間に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定商品について、本件商標を使用していることを証明したということができない。

また、被請求人は、請求に係る指定商品について、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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