sokuhyo

Trademark Appeal Case

商標の類否判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900032
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6869376号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

1 本件商標

本件登録第6869376号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2023年(令和5年)7月19日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、令和6年1月18日に登録出願、第9類、第18類、第24類、第25類、第28類及び第35類に属する商標登録原簿の記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年11月18日に登録査定、同月27日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりであって、その商標権は現に有効に存続している。以下、これらをまとめて「引用商標」という。

(1)国際登録第593987号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の構成:別掲2のとおり

指定商品:第21類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品

国際商標登録出願日(事後指定):2016年(平成28年)2月23日

設定登録日:平成29年4月14日

(2)国際登録第1460071号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定商品:第9類及び第14類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品

優先権主張日:2018年(平成30年)9月6日(Germany)

国際商標登録出願日:2018年(平成30年)11月29日

設定登録日:令和3年3月26日

(3)国際登録第1470161号商標(以下「引用商標3」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定商品:第21類及び第26類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品

優先権主張日:2018年(平成30年)11月26日(Germany)

国際商標登録出願日:2019年(平成31年)2月4日

設定登録日:令和3年2月19日

(4)国際登録第1531918号商標(以下「引用商標4」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定商品:第9類、第20類及び第28類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品

国際商標登録出願日:2020年(令和2年)2月21日

設定登録日:令和4年1月7日

(5)登録第1884350号商標(以下「引用商標5」という。)

商標の構成:別掲4のとおり

指定商品:第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(平成19年11月14日書換登録)

登録出願日:昭和47年3月25日

設定登録日:昭和61年8月28日

(6)登録第1949358号商標(以下「引用商標6」という。)

商標の構成:別掲2のとおり

指定商品:第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(平成19年9月12日書換登録)

登録出願日:昭和47年7月21日

設定登録日:昭和62年4月30日

(7)登録第2068537号商標(以下「引用商標7」という。)

商標の構成:別掲2のとおり

指定商品:第6類、第8類、第9類、第15類、第18類ないし第22類、第24類、第25類、第27類、第28類及び第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(平成21年6月24日書換登録)

登録出願日:昭和47年6月27日

設定登録日:昭和63年7月22日

(8)登録第2602056号商標(以下「引用商標8」という。)

商標の構成:別掲5のとおり

指定商品:第18類、第21類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(平成17年2月2日書換登録後、平成25年11月19日にされた商標権の存続期間の更新登録において、商品の区分を減縮したもの)

登録出願日:平成3年9月30日

設定登録日:平成5年11月30日

(9)登録第2661951号商標(以下「引用商標9」という。)

商標の構成:別掲5のとおり

指定商品:第9類、第20類ないし第22類、第25類、第27類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(平成17年8月31日書換登録後、平成26年2月12日にされた商標権の存続期間の更新登録において、商品の区分を減縮したもの)

登録出願日:平成3年9月30日

設定登録日:平成6年5月31日

(10)登録第3248427号商標(以下「引用商標10」という。)

商標の構成:別掲5のとおり

指定商品:第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成6年6月14日

設定登録日:平成9年1月31日

(11)登録第4040397号商標(以下「引用商標11」という。)

商標の構成:別掲5のとおり

指定商品:第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成7年11月16日

設定登録日:平成9年8月8日

(12)登録第4637003号商標(以下「引用商標12」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定商品:第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成14年4月24日

設定登録日:平成15年1月17日

(13)登録第5197663号商標(以下「引用商標13」という。)

商標の構成:別掲5のとおり

指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:平成20年6月19日

設定登録日:平成21年1月16日

(14)登録第6771763号商標(以下「引用商標14」という。)

商標の構成:別掲3のとおり

指定商品:第10類、第21類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

登録出願日:令和4年9月9日

設定登録日:令和6年1月19日

3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第141号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 本件商標

本件商標の構成中の「S」、「D」、「R」の各欧文字は、互いに離れた位置に配されており、外観上一体のものと看取し難く、全体として特定の意味合いを有する語と認識されないことから、当該文字部分は、出所識別標識としての明確な称呼及び観念が生じ得ない。このため、本件商標の図形部分(以下「本件図形」という。)を分離抽出し、当該図形部分だけを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許される。

イ 引用商標

引用商標は、いずれも、左方に向かって跳び上がるように前進するピューマのシルエット風図形からなる。

ウ 本件商標と引用商標との類否

本件図形と引用商標とは、耳がある頭部を有し、頭部と前肢の間に間隔があり、全体に細く、長く伸びた尻尾を有するネコ科の四足動物が、跳び上がるように、前肢と後肢を前後に大きく開いている様子を、側面から見た姿をシルエット風に描いた構成において、共通している。尻尾の向きや縦縞の模様の有無において差異が認められるものの、当該差異は、共にネコ科の四足動物が跳躍する姿を連想、想起せしめるという共通点に比して僅かなものであり、周知著名な引用商標の特徴的な基本的構成と一致し、外観全体の印象が似通っているため、看者に共通した印象・記憶を与える。

また、本件商標に係る指定商品及び指定役務は、引用商標に係る指定商品と同一又は類似する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

ア 申立人のスポーツ用品等を表示する周知著名な引用商標

申立人は、引用商標の商標権者であり、シューズ、スポーツウェア、各種スポーツ用品等を世界的に製造販売している多国籍企業である(甲5~甲8)。

引用商標のデザインは、1967年に考案され、今日に至るまで、申立人の事業において継続して使用されており、申立人の取扱いに係るシューズ、スポーツウェア、被服、帽子、各種スポーツ用品をはじめとするほぼ全ての商品に使用されている(甲7~甲105)。

引用商標を継続して使用する中で、申立人は時代の流行やファッション、需要者の嗜好に合わせ、シルエット風の特徴を残しつつ、内部の模様や向き、色合いにバリエーションを持たせた引用商標を付した商品も販売している(甲101~甲105)。

プーマジャパンの業務に係るスポーツ用品について、「スポーツ産業白書(2003年~2018年版)」(甲6)によると、国内での売上高及び企業別順位は、スポーツ用品メーカー(スポーツ関連売上高10億円以上)として、プーマジャパンが9位にランキングされ、該売上高は、約393.2億円(予測)である。国内売上高は、毎年ほぼ400億円を超えている。

プーマジャパンの業務に係るスポーツシューズについて、「スポーツシューズビジネス(2003年~2018年版)」(甲5)によると、国内での出荷額、企業別順位、市場占有率は、2013年は、179億5,500万円、6位、5.9%、2014年は、177億8,000万円、6位、5.4%、2015年は、184億4,000万円、6位、5.2%であり、出荷額は、毎年170億円を超え、5%を超える市場占有率を有している。

さらに、「スポーツアパレル市場動向調査(2015年~2018年版)」(甲7)によると、スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキングでは、2012年は、4位、2013年から2017年は、5位であり、2018年は、8位と順位を若干落としているが、2018年出荷金額(見込み)は、約231.6億円(市場占有率4.2%)と、前年より金額は増えている。

上述した引用商標の使用実績について、知的財産高等裁判所は、2019年の判決において、引用商標2~4、12~14は、「申立人の業務に係る「PUMA」ブランドの被服、帽子等を表示する商標のひとつとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されて周知著名な商標となっていたことが認められる。」と認定し、特許庁も認定した(甲106、甲107)。

また、J-PlatPat「日本国周知著名商標検索」には、上記以外の引用商標が周知著名商標として掲載されている(甲4)。

このように、申立人は、1967年から現在に至るまで、半世紀以上にわたり、引用商標を申立人のブランドとして、申立人商品のほぼ全てに使用し(甲9~甲105)、我が国においては、1970年代から販売してきたこと(甲11~甲53)、かつ、2013年ないし2017年における申立人の国内売上高も堅調に推移しており、「スポーツシューズメーカー別国内出荷金額」及び「スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキング」においても常に上位に位置していることから(甲5~甲7)、引用商標が、本件商標の登録出願時以前より、申立人商品に用いる各種スポーツ用品、シューズ等を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されている。

イ 本件商標と引用商標との類似性の程度

スポーツ用品及びファッション業界においては、しばしば、図形商標がワンポイントマークとして小さく用いられる上、図形の位置や向きなどを変えた様々なパターンの商標を商品に付して使用している実情が存在し(甲110~甲118)、現に、本件図形も、ワンポイントマークとして小さく用いられたり、図形だけで使用されたり、また、その向きを変えた態様で使用されている(甲133~甲135)。このため、周知著名な引用商標が数多く並ぶスポーツ用品店等に陳列された場合、これを目にした通常の注意力を有する本件商標の指定商品及び指定役務に係る需要者であれば、その外観の相紛らわしさ、印象の酷似性により、両商標を誤認する可能性は、より高まる。

本件図形を反転して右に29°程回転させたものと引用商標とを対比してみると、耳がある頭部を有し、頭部と前肢の間に間隔があり、全体に細く、長く伸びた尻尾を有するネコ科の四足動物が、右から左に向かって、跳び上がるように、頭部及び前肢が後肢より左上の位置になる形で、前肢と後肢を前後に大きく開いている様子を、側面から見た姿をシルエット風に描いた構成において、共通している。

尻尾の向きや縦縞の模様の有無において差異が認められるものの、当該差異は、共にネコ科の四足動物が跳躍する姿を連想、想起せしめるという共通点に比して僅かなものというべきである。

濃淡(色)のみを変え、本件図形と引用商標を重ねてみると、両者は共通点において構成の軌を一にすることから、本件図形は、ピューマをスケルトン風又は縦縞模様に表したのであるかのごとき印象を看者に与える。

AIによる画像類似度測定を行ったところ、本件図形と引用商標との類似度は、74.24%との結果を得た(甲121)。この測定結果が、両商標の高い類似性を示すことは、知財高裁が図形商標の類似性を認めた事例における類似度の測定結果(甲122~甲124)からも裏付けられる。

ウ 本件商標の指定商品・役務は、引用商標が長年使用されてきた申立人商品と同一、又は、用途・目的・品質・販売場所等を同じくし、関連性の程度が極めて高く、商標やブランドについて詳細な知識を持たず、商品の選択・購入に際して払う注意力が高いといえない一般消費者を需要者とする点でも共通するだけでなく、衣類や靴等では、商標をワンポイントマークとして小さく表示する場合も少なくなく、その場合、商標の些細な相違点に気付かないことも多いことを考慮すると(甲120、甲125、甲126、甲137)、本件商標がワンポイントマークとして使用された商品が、周知著名な引用商標が数多く並ぶスポーツ用品店等に陳列された場合、これを目にした通常の注意力を有する本件商標の指定商品・役務に係る需要者であれば、その外観の相紛らわしさ、印象の酷似性により、両商標を誤認する可能性は、より高まる。

現に、メキシコ、サウジアラビア、モロッコ、ポルトガルといった諸外国での審査において、本件商標は、周知著名な引用商標と類似し、出所混同のおそれがあるとの指摘がなされており(甲127~甲131)、また、本件商標が現に使用されている地域の需要者の中には、申立人又は引用商標を想起するとの意見がSNSを通じて拡散されるに至っており(甲132)、この事態を受け、被異議申立人が、同社のウェブサイト及びSNSから本件図形を一時削除したことが報道されている(甲141)。

国外での事情が、直ちに、我が国での商標の類否判断に影響を及ぼすものではないが、引用商標が申立人の周知著名商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されており、また、有名商標に対しては、より手厚い保護を認める商標法の趣旨に照らすと、本件異議申立においても、当該事情は十分に参酌されるべきである。

エ 取引者及び需要者の共通性その他取引の実情

本件商標の指定商品には、日常的に利用される性質の商品が含まれ、スポーツ関連商品を含む本件商標が使用される商品の主たる需要者は、スポーツの愛好家を始めとして、広く一般の消費者を含むものということができ、商品の選択・購入に際して払う注意力が高いといえない一般消費者を需要者とする点でも共通する(甲121、甲125、甲126)。

さらに、衣類や靴等では、商標をワンポイントマークとして小さく表示する場合も少なくなく(甲120、甲125、甲126、甲137)、その場合、ワンポイントマークは、比較的小さいものであるから、そのような態様で付された商標の構成は視認しにくい場合があるといえる。

また、マーク自体に詳細な図柄を表現することは容易であるとはいえないから、スポーツシャツ等に刺繍やプリントなどを施すときは、商標の微細な点まで表されず、需要者が商標の全体的な印象に圧倒され、些細な相違点に気付かず、内側における差異が目立たなくなることが十分に考えられるのであって、その全体的な配置や印象が引用商標と比較的類似していることから、ワンポイントマークとして使用された場合などに、本件商標は、引用商標と、より類似して認識されるとみるのが相当である。

さらに、スポーツ用品及びファッション業界においては、図形の位置や向き等を変えた様々なパターンの商標を商品に付して使用している実情が存在する(甲110~甲118)。現に、本件図形も、ワンポイントマークとして小さく用いられたり、図形だけで使用されたり、また、その向きを変えた態様で使用されている(甲133~甲135)。

さらにまた、申立人は、引用商標について、シルエット風の特徴を残しつつ、内部の模様や向き、色合いにバリエーションを持たせた態様の引用商標も使用している(甲101~甲105)。

そうすると、これらの事情に馴染みある我が国の需要者であれば、引用商標に模様を施し、その角度や向きを変えた態様のネコ科動物の図形が、本件商標の指定商品・役務に使用された場合、周知著名な申立人の引用商標を連想する蓋然性は極めて高いものである。

オ 混同を生ずるおそれ

上記の事情を総合すると、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、スポーツ用品やファッション(アパレル)関連の商品分野において、著名性を有していたことに照らせば、両商標の具体的構成に差異が存在するとしても、引用商標と基本的構成が共通し、そのため、外観の印象が近似する本件図形が申立人商品と同一又はこれと深く関連する本件商標の指定商品・役務に付して使用された場合、また、これをワンポイントマークとして使用された場合などには、一般消費者の注意力などをも考慮すると、これに接する取引者、需要者は、その外観構成に着目し、周知著名となっている引用商標を連想、想起して、当該商品・役務が申立人又は申立人との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるというべきである。

カ 小括

以上を按ずるに、本件商標が、その指定商品及び指定役務について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、本件商標の登録出願前から、申立人の業務に係るシューズ、スポーツウェア、被服、帽子、バッグ、各種スポーツ用品等を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間で広く認識された引用商標を連想、想起し、当該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第19号について

申立人は、1967年から現在に至るまで、半世紀以上にわたり、引用商標を申立人のブランドとして、申立人商品のほぼ全てに使用し(甲9~甲105)、我が国においては、1970年代から販売してきたこと(甲11~甲53)、かつ、2013年ないし2017年における申立人の国内売上高も堅調に推移しており、「スポーツシューズメーカー別国内出荷金額」及び「スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキング」においても常に上位に位置していることから(甲5~甲7)、引用商標が、本件商標の登録出願時以前より、申立人商品を表示する商標として、全国的に著名となっている。

引用商標は、ピューマ(ネコ科の哺乳動物)が跳び上がるように前進する姿をシルエット風に描いた構成において顕著な特徴を有しており、上述したとおり、本件図形と引用商標とを対比してみると、耳がある頭部を有し、頭部と前肢の間に間隔があり、全体に細く、長く伸びた尻尾を有するネコ科の四足動物が跳び上がるように、前肢と後肢を前後に大きく開いている様子を、側面から見た姿をシルエット風に描いた構成において、共通している。尻尾の向きや縦縞の模様の有無において差異が認められるものの、共にネコ科の四足動物が跳躍する姿を連想、想起せしめるという共通点に比して僅かなものであり、周知著名な引用商標の特徴的な基本的構成と一致し、外観全体の印象が似通っているため、看者に共通した印象・記憶を与える。

以上より、本件図形が偶然に周知著名な引用商標と一致したものと認め難いから、本件商標は不正の目的をもって使用をするものと推認される。

したがって、本件商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似しており、不正の目的をもって使用をするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第7号について

上述したとおり、本件図形は、周知著名な引用商標の特徴的な基本的構成と一致し、外観全体の印象が似通っているため、看者に共通した印象・記憶を与える。

本件商標の権利者が、世界的に知られたプーマ社及び半世紀以上もシューズ、被服、各種スポーツ用品等に使用している引用商標のことを知らないはずはなく、周知著名な引用商標を巧みに改変し、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする、あるいは、引用商標の出所表示機能を希釈化するなどの目的で本件商標を採択・出願した可能性が否定できず、本件商標の採択、出願において、不正の目的はなかったと捉えることの方が、むしろ不自然といわざるを得ない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断

(1)引用商標の周知著名性について

ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。

(ア)申立人は、シューズ、スポーツウェア、各種スポーツ用品等を世界的に製造販売している企業であって(甲5~甲7)、飛び跳ねるプーマを模した引用商標1、6、7は、1967年に考案され、1979年以降、引用商標2~4、12、14は「PUmA」のロゴの右上に配されていた(甲8)。そして、引用商標は、いずれも、左方に向かって飛び跳ねる四足動物のシルエット風図形からなるものである。

(イ)プーマジャパンの業務に係るスポーツ用品について、「2018年版スポーツ産業白書」(甲6の6)によると、国内での売上高及び企業別順位は、スポーツ用品メーカー(スポーツ関連売上高10億円以上)として、プーマジャパンが9位にランキングされ、該売上高は、約393.03億円(2018年(予測))であり、2015年ないし2017年(見込)における国内売上高は、毎年ほぼ400億円である。

また、プーマジャパンの業務に係るスポーツシューズについて、「スポーツシューズビジネス(2003年~2018年版)」(甲5)によると、国内での出荷額、企業別順位、市場占有率は、2013年は、179億5,500万円、6位、5.9%、2014年は、177億8,000万円、6位、5.4%、2015年は、184億4,000万円、6位、5.2%であり、出荷額は、毎年170億円を超え、5%を越える市場占有率を有している。

さらに、「スポーツアパレル市場動向調査(2015年~2018年)」(甲7)によると、スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキングでは、2012年及び2013年は4位、2014年から2016年は5位、2017年及び2018年は7位(予測)と順位を若干落としているが、2018年出荷金額(予測)は、約219億円(市場占有率4%)と、前年より金額は増えている。

(ウ)本件商標の登録出願前の申立人の商品カタログ(甲11~甲53)及び雑誌(甲71~甲84、甲86~甲98、甲100)には、スポーツシューズ、スポーツウェア、Tシャツ等に引用商標と同様の図形及び「PUmA」の文字の近辺に引用商標と同様の図形が付されている。

(エ)通販サイトでは、引用商標と同様の図形が付された眼鏡、傘、縄跳び、靴下、バッグ等が販売されている(甲54~甲70)。

イ 上記ア(ア)ないし(エ)より、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る「PUMA」ブランドのスポーツシューズ、バッグ、被服、帽子等を表示する商標の一つとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認められる。

(2)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 本件商標

本件商標は、別掲1のとおりの構成からなり、その構成中の「S」、「D」、「R」の各欧文字と図形部分は、視覚的に分離して看取されるというべきである。

そこで、本件図形について、申立人は、跳躍又は疾走する姿の尻尾の長いネコ科の四足動物を想起させる図形からなる旨主張しているが、本件図形は、別掲1のとおり、線描によるかなり抽象化された構成からなり、何を表したものか特定することのできないものというべきであるから、特定の称呼及び観念は生じない。

イ 引用商標

引用商標は、別掲2ないし5のとおり、いずれも左方に向かって跳び上がるような四足動物をシルエット風に描いた白抜き又は黒塗りの図形からなり、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る「PUMA」ブランドとして、広く認識されていることから、引用商標からは、「PUMA」ブランドの観念が生じ、「プーマ」の称呼が生じる。

ウ 本件商標と引用商標との類否

本件図形は、線描による構成であって何を表したものか特定のできないものであり、特定の称呼及び観念は生じないのに対して、引用商標は、跳び上がるような四足動物をシルエット風に描いた白抜き又は黒塗りの図形からなり、上記イのとおり、引用商標から「プーマ」の称呼、「PUMA」ブランドの観念が生じるといえることから、両者の外観、称呼及び観念のいずれにおいても区別できるものである。

また、本件商標と引用商標とは、欧文字の有無によってより相違するものといえる。

そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において区別でき、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

エ 小括

したがって、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(3)商標法第4条第1項第15号について

本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても区別できる非類似の商標であって、全体の印象が大きく異なる別異の商標であるから、両者の類似性の程度は高いものとはいえない。

なお、申立人は、本件図形と引用商標の類似性の程度について、ワンポイントマークとして小さく用いられること、本件図形を反転して右に29°程回転させたものと引用商標との対比において、共にネコ科の四足動物が跳躍する姿を連想、想起するという共通点があること、AI画像類似度測定において74.24%との結果を得たことを主張しているが、上記(2)のとおり、本件図形は、何を表したものか特定のできないものというべきであり、かつ、本件図形を反転し回転させたものを引用商標と比較することは必ずしも妥当とはいえないことから、申立人の当該主張は採用することができない。

そうすると、引用商標が申立人の業務に係る商品(スポーツシューズ、被服など)を表示するものとして需要者の間に広く認識され、その使用に係る商品と本件商標の指定商品とが、需要者を共通とし関連性を有するとしても、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であって、別異の商標であるから、本件商標権者がこれをその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品及び役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。

その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(4)商標法第4条第1項第19号について

申立人は、本件図形と引用商標が類似することを前提に不正の目的がある旨を主張しているが、本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、類似しないものであって、かつ、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

(5)商標法第4条第1項第7号該当性について

本件商標は、別掲1のとおり、文字と図形との組み合わせの構成からなり、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような構成態様からなるものではない。

また、上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって別異の商標であるから、本件商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものであって、かつ、引用商標の信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれもないものである。

その他、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であると認めるに足る具体的な証拠の提出はない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

(6)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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