結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第31372号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
1本件商標
本件登録第499931号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和31年4月19日に登録出願され、別掲のとおりの構成よりなり、第36類「被服、手巾、釦鈕及び装身用『ピン』の類」を指定商品として、昭和32年4月15日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、甲第2号証に示すように「片倉ハドソン靴下株式会社」により出願され、後に同社を吸収合併した「片倉工業株式会社」がその権利者となっているものである(甲第1号証及び甲第3号証)。したがって、同商標は主に靴下等について使用する目的で出願され、現在も靴下等について使用されているものと推定される。
このため、本件商標の指定商品中「ブラウス,ワイシャツ,ナイトガウン,パジャマ,コルセット,シャツ,スリップ,ブラジャー,ペチコート,水泳着,及びこれらに類似する商品」についての本件商標の不使用は明らかである。
よって、本件商標は、その指定商品中請求に係る商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)平成11年3月24日付けの審判事件答弁書に対して次のとおり弁駁する。
第一に、本件商標に係る指定商品の類否判断に関して、本件商標登録当時の「類似商品例集」における類否基準に固執するのは、妥当性を欠くものである。
なぜなら、「類似商品例集」も述べるとおり、商標法における商品の類否の判定は根本的には商品取引の実情によるべきものであるから、商品の類否の範囲は時とところを異にすることによって変わるべきことは当然であり、一旦定められた類否判定の基準を墨守することは、かえって商標権の保護を不充分なものとし、かつ商標による不正競争を起こす原因ともなり又需要者側における商標による商品の誤認、混同の因ともなるからである。
実際、昭和35年の新商標法の施行に伴い、抜本的に改正された商品分類(以下「旧商品分類」という)に基づいて、昭和36年には「類似商品審査基準」が「類似商品例集」に代わるものとして発行されている。甲第4号証は、その改訂版として昭和49年に発行されたものであるが、かかる「類似商品審査基準(改訂版)」においては、旧々第36類「被服」に含まれる「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、下着、ねまき類、くつ下」等は、旧第17類に属するものとなり、「洋服、コート」と「セーター類、ワイシャツ類、下着、ねまき類」と「くつ下」とは、互いに非類似であると推定されている。これは、「類似商品審査基準(改訂版)」が取引市場の実情を鑑みて、従来偏重されていた材料主義・生産者主義と用途主義・販売店主義との衝平を図るべく産業界、関係団体の意見や、商標の商品取引における使用の実態を考慮した結果である。
かかる判断思想は、現行法下の「類似商品・役務審査基準(改訂第8版)」においても受け継がれており、新第25類において、「洋服、コート」(類似群コード:17A01)と「セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着」(類似群コード:17A02)と「靴下」(類似群コード:17A04)とは、互いに非類似であると推定されている(甲第5号証)。なお、被請求人は、答弁書において「パンティストッキング」を「靴下」とみなして使用の証明をせんとするものであるが、登録例によると、「パンティストッキング」にも「靴下」と同じ類似群コード:17A04が付与されており、いずれにしても、「洋服、コート」及び「セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着」とは非類似と推定される商品である(甲第6号証の1及び同号証の2)。
以上から、本件商標は旧々商品区分により登録されたものであるから、その指定商品の類否も商標登録当時の「類似商品例集」に基づいて判断されるべき旨の被請求人の主張は、「指定商品の類否の判断も商標登録原簿謄本の指定商品の記載にもとづいて、客観的に判断されるべき」か否かの問題と直接的な関係を持たないばかりか、上述の取引事情の推移に伴う類否判断基準の変遷を無視するものであり認めることができない。
第二に、被請求人は、上記主張が認められなければ、過去の審査結果を覆すことともなり、取引秩序の維持を図ることが困難なものとなる旨を述べる。
しかしながら、商標法は、一旦、広範囲の指定商品に係る商標登録を認めたという理由のみによって、全ての指定商品について半永久的な権利の存在を保証することを予定するものではない。つまり、商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であるから、不使用の指定商品に対してまで、排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標選択の余地を狭めることとなる。かかる事態を回避すべく、不使用取消審判制度が設けられているものである。
さて、本件商標は、審査の結果、旧々第36類の全類にわたる指定商品「被服、手巾、釦鈕及び装身用『ピン』の類」に係る登録を認められているものである。
仮に、本件審判において、指定商品の類否判断の論拠を、取引社会の現状に沿わない過去の審査基準に求めようとする被請求人の主張が認められるならば、現在の取引実情においては権利者が使用しているとはいえない指定商品群についてまで商標の使用が認められることとなり、請求人の商標選択の余地が不当に狭められるばかりか、現実的な信用の化体しない排他独占的な権利の存在によって国民一般の利益が侵害されることになる。
したがって、商品「靴下」及び「パンティストッキング」はいずれも、請求に係る指定商品「ブラウス,ワイシャツ,ナイトガウン,パジャマ,コルセット,シャツ,スリップ,ブラジャー,ペチコート,水泳着,及びこれらに類似する商品」とは認められず、被請求人が、答弁書において、「パンティストッキング」への使用を「靴下」への使用とみなした上で「指定商品中取消請求に係る商品『靴下』について使用されていたものである。」ことを証明せんとする主張は意味をなさない。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
本件商標の指定商品は、大正10年商標法の商品分類(以下「旧々商品分類」という)にもとづくものであるが、乙第1号証の「類似商品例集」によれば、本件商標の指定商品旧々商品分類第36類には「被服、手巾、釦紐及装身用『ピン』の類」として大概念に属する商品が明示され、次に中概念表示として、その下に各記号(一)〜(四)の記号が付され、各記号毎にその中に含まれる商品が例示され、各記号毎中に含まれる商品は一応類似商品であると推定するとされ、記号(三)「肌衣類」の中には「ズボン下類(シャツ、ズボン下、ホワイトシャツ...海水衣、パンツ、儒袢)、足巻紐類、手袋、足袋、靴下」等の下位概念に含まれる商品が例示され、これら商品が類似商品である旨推定されると明記されている。
請求人は、本件商標の指定商品が旧々商品区分において登録されているにもかかわらず、現行法の商品区分に規定される指定商品を列記し、本件商標の指定商品について不使用による登録取消を請求せんとするものであるが、本件商標は、あくまでも旧々商品区分により登録されたものであり、その指定商品の類否の判断も商標登録原簿謄本の指定商品の記載にもとづいて、客観的に判断されるべきものであり、かかる判断が行なわれない場合においては、過去の審査結果を覆すことともなり、取引秩序の維持を図ることが困難なものとなる。
してみれば、本件商標の指定商品中記号(三)の中概念「肌着類」に含まれる「シャツ、ズボン下、スリップ、水泳着」と「靴下」は類似する商品と推定されるものであり、本件商標の指定商品中「靴下」は、請求人が取消しを請求した「ブラウス,ワイシャツ,ナイトガウン,パジャマ,コルセット,シャツ,スリップ,ブラジャー,ペチコート,水泳着,及びこれらに類似する商品」に含まれているものと認定せざるをえないところである。
また、乙第2号証及び乙第3号証ないし乙第10号証によって、被請求人が、本件商標を請求人が取消しを求める指定商品に類似する商品「靴下」について、請求の登録前3年以内に使用していたことが証明されるものと確信する。
以上、本件商標は、本件審判の請求の予告登録前3年以内に被請求人たる商標権者により、日本国内において本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、指定商品中取消請求に係る商品「靴下」について使用していたものであるから、本件商標は商標法第50条第1項の規定により取り消されるいわれはないものである。
本件審判請求書の「5.請求の趣旨」の項には、「商標法第50条の規定により、登録第499931号商標の指定商品中、「第36類ブラウス,ワイシャツ,ナイトガウン,パジャマ,コルセット,シャツ,スリップ,ブラジャー,ペチコート,水泳着,及びこれらに類似する商品」についてその登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と記載されているものであり、この記載中「これらに類似する商品」については、現在における「これらに類似する商品」を指すのか、または本件商標が登録された当時における「これらに類似する商品」を指すのかは明示されていない。
しかし、請求人の主張によれば、請求人の意図は、現在における「これらに類似する商品」を指すものとして、このように記載したことは明らかである。
また、自己の商標登録の妨げになる他人の商標登録を不使用による商標登録の取消し審判を請求して取り消そうとする場合、自分が使用したい商品のみを取り消しても、これと類似する商品(現在において類似する関係にある商品)がその他人の商標登録の指定商品中に残っている限り、商標法第4条第1項第11号に該当するものとして商標登録出願は拒絶されることになるから、使用したい商品とあわせてこれと類似する商品についても取消しを請求する場合が多いことは当庁に顕著な事実である。
以上のようにみてくると、本件審判請求書の「5.請求の趣旨」の項中に記載されている「これらに類似する商品」は、「ブラウス,ワイシャツ,ナイトガウン,パジャマ,コルセット,シャツ,スリップ,ブラジャー,ペチコート,水泳着」と現在において類似する商品を指しているものと認めることができる。
ところで、被請求人は、乙第1号証(特許庁編発明協会発行「類似商品例集」)によれば、本件商標が登録された当時、「シャツ、ズボン下、スリップ、水泳着」と「靴下」は類似する商品と推定されていることを根拠に、本件商標の指定商品中「靴下」は、本件取消し請求に係る指定商品である「ブラウス,ワイシャツ,ナイトガウン,パジャマ,コルセット,シャツ,スリップ,ブラジャー,ペチコート,水泳着,及びこれらに類似する商品」に含まれているものと主張している。
しかし、請求人が本件審判請求において何を求めているかは、本件審判請求書の「5.請求の趣旨」の項の記載及び請求書の記載内容全体から客観的に理解される請求人の意図によって決定されるべきであり、その記載によれば、前記認定のとおり、「5.請求の趣旨」の項中の「これらに類似する商品」は、「ブラウス,ワイシャツ,ナイトガウン,パジャマ,コルセット,シャツ,スリップ,ブラジャー,ペチコート,水泳着」と現在において類似する商品を指しているものである。
そうすると、乙第1号証に示されている前記の本件商標が登録された当時の商品の類似関係についての推定は、本件審判の請求の趣旨と何ら関係がないものであるから、被請求人の前記主張は失当であって、採用できない。
そして、被請求人が、本件商標を使用しているとするパンティストッキング(本件商標が登録された当時には、存在しなかった商品と考えられる。)を含む靴下と「ブラウス,ワイシャツ,ナイトガウン,パジャマ,コルセット,シャツ,スリップ,ブラジャー,ペチコート,水泳着」は、品質、使用目的、製造法を異にする商品であって、製造者も一致しない場合が多く、現在において類似しない商品とみるのが相当である。
そうすると、パンティストッキングを含む靴下は、本件審判請求書の「5.請求の趣旨」の項中に記載されている「これらに類似する商品」には含まれていない商品であって、結局、パンティストッキングを含む靴下は、本件取消し請求に係る指定商品に含まれていない商品と認められる。
ところが、被請求人は、本件商標をパンティストッキングを含む靴下に使用していると主張して、その事実を立証する証拠を提出するのみで、他に本件商標を使用している事実を立証せず、また、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中、本件取消し請求に係る指定商品についての商標登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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