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Trademark Appeal Case

特許訂正請求の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024700953
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7460770号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~14〕、〔15~22〕、〔23~26〕について訂正することを認める。
特許第7460770号の請求項1~6に係る特許を維持する。
特許第7460770号の請求項7~26に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7460770号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~26に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年12月20日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和6年3月25日にその特許権の設定登録がされ、同年4月2日に特許掲載公報が発行され、その後、令和6年10月1日に、請求項1~26に係る特許について、特許異議申立人 磯崎 紀雄(以下、「申立人」という。)により、甲第1~5号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、令和7年3月31日付で当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月7日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年8月13日に申立人より甲第6~9号証を添付して意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出され、同年9月30日付けで当審より取消理由(決定の予告)が通知され、令和8年1月14日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。

なお、令和8年1月14日に特許権者により訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたので、令和7年7月7日にされた訂正の請求(以下、「先の訂正請求」という。)については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

また、申立人には、先の訂正請求に対する意見書の提出の機会が与えられており、本件訂正請求による訂正の内容は、後記第2の1のとおり、先の訂正請求による訂正の内容と同じ内容の訂正である訂正事項1、3及び4に、訂正事項2及び5~24を加えたものであって、前記訂正事項2に係る訂正は、前記訂正事項1により減縮された特許請求の範囲の請求項1を更に減縮するものであり、前記訂正事項5~24に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項7~26を削除するものであるから、本件訂正請求については、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別な事情があるといえるので(特許法第120条の5第5項ただし書)、申立人に再度の意見書を提出する機会を与えなかった。

第2 本件訂正請求による訂正の適否

1 訂正の内容及び一群の請求項について

本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を、「特許第7460770号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~26について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。

(1) 訂正事項1

訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であり、」との記載の後に、「前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有し、」との記載を追記する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。

(2) 訂正事項2

訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であり、」との記載の後であって、前記訂正事項1により追記した「前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有し、」との記載の前に、更に「前記リリーサー媒体はまた、前記コレクター媒体を包囲するように、より大きい前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ、」との記載を追記する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。

(3) 訂正事項3

訂正前の特許請求の範囲の請求項3の「多孔質固体要素は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む、」との記載を、「多孔質固体要素は、触媒

及び

吸着

剤の

少なくとも1つを含む、」に訂正する。

(4) 訂正事項4

訂正前の特許請求の範囲の請求項6の「前記リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む、」との記載を、「前記リリーサー媒体は、触媒

及び

吸着

剤の

少なくとも1つを含む、」に訂正する。

(5) 訂正事項5

特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(6) 訂正事項6

特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(7) 訂正事項7

特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(8) 訂正事項8

特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(9) 訂正事項9

特許請求の範囲の請求項11を削除する。

(10) 訂正事項10

特許請求の範囲の請求項12を削除する。

(11) 訂正事項11

特許請求の範囲の請求項13を削除する。

(12) 訂正事項12

特許請求の範囲の請求項14を削除する。

(13) 訂正事項13

特許請求の範囲の請求項15を削除する。

(14) 訂正事項14

特許請求の範囲の請求項16を削除する。

(15) 訂正事項15

特許請求の範囲の請求項17を削除する。

(16) 訂正事項16

特許請求の範囲の請求項18を削除する。

(17) 訂正事項17

特許請求の範囲の請求項19を削除する。

(18) 訂正事項18

特許請求の範囲の請求項20を削除する。

(19) 訂正事項19

特許請求の範囲の請求項21を削除する。

(20) 訂正事項20

特許請求の範囲の請求項22を削除する。

(21) 訂正事項21

特許請求の範囲の請求項23を削除する。

(22) 訂正事項22

特許請求の範囲の請求項24を削除する。

(23) 訂正事項23

特許請求の範囲の請求項25を削除する。

(24) 訂正事項24

特許請求の範囲の請求項26を削除する。

(25) 一群の請求項について

訂正前の請求項1は独立請求項であり、訂正前の請求項2~8はいずれも訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~8は一群の請求項であるので、訂正事項1~6による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項1~8について請求されたものである。

訂正前の請求項9は独立請求項であり、訂正前の請求項10~14はいずれも訂正前の請求項9を引用するものであるから、訂正前の請求項9~14は一群の請求項であり、訂正事項7~12による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項9~14について請求されたものである。

訂正前の請求項15は独立請求項であり、訂正前の請求項16~22はいずれも訂正前の請求項15を引用するものであるから、訂正前の請求項15~22は一群の請求項であり、訂正事項13~20による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項15~22について請求されたものである。

訂正前の請求項23は独立請求項であり、訂正前の請求項24~26はいずれも訂正前の請求項23を引用するものであるから、訂正前の請求項23~26は一群の請求項であり、訂正事項21~24による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項23~26について請求されたものである。

そして、本件訂正は、特許法第120条の5第4項所定の規定に従い、一群の請求項ごとにされたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について

(1) 訂正事項1について

訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1における「複数のコレクター媒体」及び「複数のリリーサー媒体」について、「前記交換層中のコレクター媒体の各々」を、「リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」するものとして、その構成を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、訂正事項1による訂正は、前記「複数のコレクター媒体」及び「複数のリリーサー媒体」を明確に区別することができなかったことから、これらの構成が不明確であったのを明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。

そして、本件特許明細書の段落【0007】(下記第6の1(2)イ)には、「交換層内のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有し得る。」と記載されているから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2) 訂正事項2について

訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項1における「複数のコレクター媒体」及び「複数のリリーサー媒体」について、「前記リリーサー媒体はまた、前記コレクター媒体を包囲するように、より大きい前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ」るものとして、その構成を更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、訂正事項2による訂正は、前記「複数のコレクター媒体」及び「複数のリリーサー媒体」を明確に区別することができなかったことから、これらの構成が不明確であったのを明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。

そして、本件特許明細書の段落【0069】(下記第6の1(2)ウ)には、「リリーサー媒体30はまた、コレクター媒体20を包囲するように、より大きいコレクター媒体20の間の空間内に詰め込まれ得る。」と記載されているから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2) 訂正事項3について

訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3「多孔質固体要素」が、「触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む」ものであったのを、「反応体」を削除して、「触媒及び吸着剤の少なくとも1つを含む」ものとするものであるから、選択的発明特定事項の一部を削除するものといえるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、訂正事項3による訂正は、前記「反応体」の意味が不明確であったのを、これを削除して、「多孔質固体要素」の構成を明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。

そして、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3) 訂正事項4について

訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項6の「リリーサー媒体」が、「触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む」ものであったのを、「反応体」を削除して、「触媒及び吸着剤の少なくとも1つを含む」ものとするものであるから、選択的発明特定事項の一部を削除するものといえるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、訂正事項4による訂正は、前記「反応体」の意味が不明確であったのを、これを削除して、「リリーサー媒体」の構成を明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。

そして、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(4) 訂正事項5~24について

訂正事項5~24による訂正は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項7~26を削除するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(5) 独立特許要件について

本件特許異議の申立てにおいては、訂正前の請求項1~26に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1~6に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)は適用されない。

3 小括

したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~14〕、〔15~22〕、〔23~26〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件特許の請求項1~6に係る発明は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)。

「【請求項1】

反応体に乏しい液相を加工容器内で処理する方法であって、

反応体に乏しい液相、及び反応体を含む気相を、加工容器内の交換層に並流的に通過させることと;

気相からの反応体の少なくとも一部を、交換層内の反応体に乏しい液相中に拡散させて、反応体に富んだ液相を形成することと、を含み、

前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含み、コレクター媒体は、反応体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含み、

前記リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であり、

前記リリーサー媒体はまた、前記コレクター媒体を包囲するように、より大きい前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ、

前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有し、

前記薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され、

前記反応体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含む、

方法。

【請求項2】

前記加工容器は、固体要素の固定床と反応器を通して並流的に流れる流体相とを含む多相反応器であるトリクルベッド反応器である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】

前記反応体に富んだ液相を、交換層に続く多孔質固体要素の床に通過させることをさらに含み、多孔質固体要素は、触媒及び吸着剤の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。

【請求項4】

望ましくない種を液相から除去するために加工容器内で処理加工を行うことをさらに含み、処理加工は、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素化、水素化脱芳香族化、水素化脱酸素、水素化脱金属、及び異性化の少なくとも1つを含み、前記望ましくない種は、硫黄、窒素、酸素、芳香族、オレフィン、ニッケル、バナジウム、鉄、ケイ素又はヒ素の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。

【請求項5】

前記反応体に富んだ液相は、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。

【請求項6】

前記リリーサー媒体は、触媒及び吸着剤の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。

【請求項7】

(削除)

【請求項8】

(削除)

【請求項9】

(削除)

【請求項10】

(削除)

【請求項11】

(削除)

【請求項12】

(削除)

【請求項13】

(削除)

【請求項14】

(削除)

【請求項15】

(削除)

【請求項16】

(削除)

【請求項17】

(削除)

【請求項18】

(削除)

【請求項19】

(削除)

【請求項20】

(削除)

【請求項21】

(削除)

【請求項22】

(削除)

【請求項23】

(削除)

【請求項24】

(削除)

【請求項25】

(削除)

【請求項26】

(削除)」

第4 特許異議申立理由の概要

1 はじめに

本件訂正により請求項7~26は削除されたため、これらの請求項に係る特許に対する特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下されるものとなった。

このため、これらの請求項に係る特許に対する特許異議の申立ては、検討の対象としない。

2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について

(1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明について

ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における「反応体に乏しい液相」、「反応体に富んだ液相」での「液相」がどういうものであり、何を含み、何を含まないのかが明らかでないから、前記請求項1に係る発明は不明確である。

イ 前記請求項1に係る発明における「反応体に乏しい」、「反応体に富んだ」とは、「乏しい」、「富んだ」の基準が明らかでないから、前記請求項1に係る発明は不明確である。

ウ 前記請求項1に係る発明における「コレクター媒体」について、「多孔質固体材料」と特定されているだけであり、「多孔質固体材料」には何が含まれ、何が含まれないのかが明らかでないし、その大きさや形状も明らかでないから、前記請求項1に係る発明は不明確である。

エ 前記請求項1に係る発明における「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」とは、同じものをいうのか異なるものというのかが明らかでない。また、本件特許明細書の段落【0064】(下記第6の1(2)ウ)の記載によれば、これらが同じものであることを排除していないが、同じものを異なる名称とすることにより、発明特定事項が明確でなくなるから、前記請求項1に係る発明は不明確である。

オ 前記請求項1に係る発明における「リリーサー媒体」について、「多孔質固体材料」と特定されているだけであり、「多孔質固体材料」には何が含まれ、何が含まれないのかが明らかでないし、その大きさや形状も明らかでなく、「コレクター媒体」の「多孔質固体材料」との異同も明らかでないから、前記請求項1に係る発明は不明確である。

カ 前記請求項1に係る発明における「薄膜」がどのような膜をいうのかが明らかでない。また、「薄膜」の周りには「液相」や「液体」が存在していると解され、「薄膜」はこれら「液相」や「液体」とは異なるものと解されるが、「液相」や「液体」とは異なる「薄膜」がどのようなものであるのかが明らかでない。更に、前記請求項1に係る発明においては、「前記薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され、」と特定されているが、「液相から液体が放出される」ときの「液相」と「液体」の関係も明らかでないから、前記請求項1に係る発明は不明確である。

キ 前記請求項1に係る発明における「収集された液相から液体が放出される」との発明特定事項について、「液相」が何によって収集された「液相」であるのかが明らかでなく、「液相から液体が放出される」の意味も明らかでないから、前記請求項1に係る発明は不明確である。

ク 前記請求項1に係る発明における「反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進する」との発明特定事項は、「反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散」をどの程度「促進する」ものであるのかが明らかでないから、前記請求項1に係る発明は不明確である。

(2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項3に係る発明について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項3に係る発明における「触媒」、「吸着剤」及び「反応体」の意味が明らかでないから、前記請求項3に係る発明は不明確である。

(3) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項6に係る発明について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項6に係る発明における「触媒」、「吸着剤」及び「反応体」の意味が明らかでないし、これらと「多孔質固体材料」の関係も明らかでないから、前記請求項6に係る発明は不明確である。

3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について

本件特許に係る発明の課題は、本件特許明細書の段落【0006】(下記第6の1(2)イ)の記載によれば、「1つ以上の液体ストリームとのガス交換及び化学反応を可能とするための方法」の提供にあるといえる。

ところが、本件特許明細書には、各種の「例示的な対応」が一般的な用語を用いて記載されているが、いずれも具体的な数値を伴った結果を含めて記載されておらず、それらの各態様が、実際に「ガス交換及び化学反応を可能」にする方法であったのか、あるいは、どの程度の達成率で行うことができたのかを一切確認できないから、前記各種の「例示的対応」により、前記課題を解決できるものとはいえない。

仮に、特定の「反応体」に乏しい特定の「液相」を特定の「加工容器」で処理する際に、特定の「反応体」を含む気相、特定の素材、特定の大きさ、特定の形状の複数の「多孔質固体材料」を含む「コレクター材料」、特定の態様の「薄膜」が表面に形成されている、特定の素材、特定の大きさ、特定の形状の複数の「固体材料」を使用して、特定の濃度、特定の圧力など特定の条件で処理することによって、特定の「反応体」に乏しい特定の「液相」が特定の「反応体」を含むものとなったとしても、これを設定登録時の特許請求の範囲の請求項1の範囲まで拡張ないし一般化することはできないから、設定登録時の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。

4 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について

(1) 「コレクター材料」及び「固体材料」について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を実施する場合、「多孔質固体材料」を含む「コレクター材料」や「薄膜」が表面に形成されている「固体材料」の選択には、素材、大きさ、形状の観点から、適切なものを選択するのに過度の試行錯誤を要するし、反応条件の選択について検討しても事情は同じであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たさない。

(2) 「薄膜」について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項1には、リリーサー媒体の外表面に形成されている「薄膜」に関し、「収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成される」ことが特定されているが、どのようにしたら、加工容器内で、液相と区別できる形で、そのような薄膜を製造できるのかが不明であるから、前記「薄膜」の形成のためには過度の試行錯誤を要するので、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たさない。

5 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について

(1) 甲第1号証を主引用例とした場合について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 甲第5号証を主引用例とした場合について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 証拠方法

甲第1号証:特表2006-523139号公報

甲第2号証:(社)石油学会編,「石油精製プロセス」,第1刷,株式会社講談社,1998年5月20日,p.37-52

甲第3号証:触媒学会編,「触媒講座第6巻(工学編2)触媒反応装置とその設計」,第1刷,株式会社講談社,1985年12月20日,p.163-171

甲第4号証:加部利明監修,「水素化精製-Science & Technology-」,株式会社 アイピーシー,2000年10月20日,p.6

甲第5号証:特表2008-545527号公報

第5 取消理由の概要

1 令和7年3月31日付けの取消理由通知書の取消理由の概要

令和7年3月31日付けの取消理由通知書の取消理由の概要は、以下のとおりである。

(1) 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項9に係る発明においては、「薄膜」が「リリーサー媒体上に形成」されることが特定されていないから、前記請求項9に係る発明は、前記発明の詳細な説明に記載された本件特許に係る発明の課題を達成することができる発明の範囲を超えるものである。

更に、前記請求項9に従属する設定登録時の特許請求の範囲の請求項10~14に係る発明について検討しても事情は同じである。

(2) 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について

ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~26に係る発明について

「コレクター媒体」が「多孔質固体材料」及び「リリーサー媒体」が「固体材料」であることが特定され、それぞれの機能の特定事項はあるが、材質、形状、構造等は特定されていない。

また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0064】(下記第6の1(2)ウ)には、「コレクター媒体20及びリリーサー媒体30は、多孔質媒体を含む、高い幾何学的表面積の媒体であり得る。」とされ、同一の材料であることを含み、単に機能の特定のみでは、「加工容器内」に配置された状態において両者を明確に区別することができないから、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~26に係る発明は明確でない。

イ 設定登録時の特許請求の範囲の請求項3、6、11、14、16、20、23、24に係る発明について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項3において、「多孔質固体要素」は、「触媒、吸着剤及び反応体の少なくとも1つを含む」と特定されている。

「多孔質固体要素」は、「固体」である「触媒」及び「吸着剤」を備えていることは理解できるが、「反応体」を「含む」とは、引用する設定登録時の特許請求の範囲の請求項1の「反応体」との関係が不明であり、また、これらは加工容器内で「固体」であるとはいえず、発明の詳細な説明に具体的な説明がないことから、当該特定事項がどのような状態であるのか不明りょうである。

更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項6、11、14、16、20、23及び24について検討しても事情は同じである。

ウ 設定登録時の特許請求の範囲の請求項7、9、21、25に係る発明について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項7に係る発明において、「前記リリーサー媒体のサイズは、コレクター媒体のサイズの1/4以下である」と特定されているが、これらの「媒体」の形状、構造が明らかでなく、発明の詳細な説明に「サイズ」の具体的な定義もされていないから、これらの媒体の大きさのどのような関係を特定しているのか不明りょうである。

更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項9、21、25について検討しても事情は同じである。

エ 設定登録時の特許請求の範囲の請求項9~26について

設定登録時の特許請求の範囲の請求項9に係る発明において、「生成物」及び「反応生成物」が特定されている。これらの特定事項について、以下の点で不明りょうである。

更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項10~26について検討しても事情は同じである。

(ア) 「生成物」及び「反応生成物」の定義が不明であり、このため、「生成物に富んだ液相」及び「反応生成物に富んだ液相」がどのような工程により生成したのか不明りょうである。

(イ) 前記請求項9において、「反応生成物」として「水」が特定され、前記請求項9を引用する請求項13では、「生成物に乏しい液相」として「液体水」が特定されており、「生成物」と「反応生成物」との定義が不明であるから、前記請求項9に係る発明と前記請求項13に係る発明との関係が不明りょうである。

更に、設定登録時の特許請求の範囲の請求項15、18、23及び26について検討しても事情は同じである。

オ 設定登録時の特許請求の範囲の請求項19について

「ガスストリーム」及び「液体ストリーム」が特定されているが、設定登録時の特許請求の範囲の請求項19が引用する請求項15には、これらの特定事項の記載がないから、前記請求項15の何を特定しているのか明確でない。

(3) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)

設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~7、15~21に係る発明は,甲第1号証に記載された発明及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 令和7年9月30日付けの取消理由通知書の取消理由の概要

令和7年9月30日付けの取消理由通知書の取消理由の概要は、以下のとおりである。

(1) 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について

ア 「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」について

先の訂正により訂正された本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明における「コレクター媒体」と「リリーサー媒体」を明確に区別することができないから、前記請求項1の「前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」する、との発明特定事項を理解することができないので、前記請求項1に係る発明は明確でない。

イ 「反応体」、「生成物」、「反応生成物」及び「望ましくない種」について

先の訂正により訂正された本件特許請求の範囲の請求項15に係る発明おける「反応体」、「生成物」及び「反応生成物」が明確でないから、前記請求項15に係る発明は明確でないし、先の訂正により訂正された本件特許請求の範囲の請求項23に係る発明おける「反応体」、「生成物」、「反応生成物」及び「望ましくない種」が明確でないから、前記請求項23に係る発明も明確でない。

第6 特許異議申立理由及び取消理由についての当審の判断

事案に鑑み、前記第4の特許異議申立理由及び第5の取消理由についてまとめて判断する。

1 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について

(1) 明確性要件の判断手法

特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるので、以下、この観点に立って検討する。

(2) 本件特許明細書の記載事項

本件特許明細書には、以下のア~ウの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。

ア 「【0002】

発明の分野

本明細書に開示する主題は、一般に反応加工容器(以下、「反応プロセス容器ともいう」)に関し、より詳細には、反応プロセス容器に含まれる1つ以上の液体ストリーム又は相とのガス交換及び化学反応を可能にすることに関する。

【背景技術】

【0003】

先行技術の記載

現場内の加工容器(以下、「プロセス容器」ともいう)は、多くの場合、そのような容器に進入し、該容器を通過し、及び該容器を退出する流体ストリーム又は相を有する垂直円筒構造である。

工業用容器は、直径が6インチ~20フィート超、高さが2~100フィート超である。反応系を含む容器は、化学反応を促進するために使用され得る。

【0004】

多くの従来の容器内には、材料の異なる相が含まれている。固相は、固体要素の1つ以上の床を含む。容器に含まれる他の相は、1つ以上の液相及び1つ以上の気相を含む流体相を含む。多数の流体相が流体ストリームに含まれ得る。相の状態は、それらの操作条件に依存し得る。

容器への典型的な液体スループットは、1日当たりのバレルで測定される。典型的なガス体積は、標準立法フィート(SCF)で測定される。容器へのガスのスループットは、典型的には、液体フィードの1バレル当たりの標準立方フィートで測定される。

【0005】

この分野における改良が必要とされている。

イ 「【発明の概要】

【課題を解決するための手段】

【0006】

本明細書に開示される主題によれば、反応プロセス容器に含まれる1つ以上の液体ストリームとのガス交換及び化学反応を可能にするための方法の様々な例示的な態様が、本明細書に提供される。

【0007】

特定の例示的な態様では、反応体に乏しい(reactant-lean)液相を加工容器内で処理する方法が提供される。反応体に乏しい液相及び気相を、プロセス容器内の交換層に並流的に通過させ得る。気相は反応体(以下、「反応関与体」ということもある)を含む。気相からの反応関与体の少なくとも一部を、交換層内の反応関与体に乏しい液相中に拡散させて、反応関与体に富んだ液相を形成し得る。

交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含むことができ、コレクター媒体は、反応関与体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含むことができる。リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含むことができ、該薄膜は、反応関与体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能である。薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され得る。・・・

反応関与体に富んだ液相は、ナフサ、ガソリン、灯油灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含むことができる。ガスストリームから反応関与体に乏しい液体ストリーム中に拡散する反応関与体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含むことができる。

リリーサー媒体は、触媒、吸着剤及び反応関与体の少なくとも1つを含むことができる。特定の局面では、リリーサー媒体のサイズは、コレクター媒体のサイズの1/4以下であり得る。特定の局面では、

交換層内のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有し得る。

ウ 「【0064】

特定の例示的な態様では、

コレクター媒体20及びリリーサー媒体30は、多孔質媒体を含む、高い幾何学的表面積の媒体であり得る。多孔質媒体は、媒体に進入し、及び/又は媒体を通過する細孔を有する固体として定義される。多孔質媒体は、網状体、ハニカムモノリス(honeycomb monolith)、マクロ多孔質材料、亀裂(fissured)材料、粒子パッキングの凝集体(agglomerates of particle packing)、及び繊維メッシュを含むことができる。これらの多孔質媒体は、球体、円柱、環、ブリケット(briquette)、楕円体、角柱、立方体、平行6面体、超直方体、鞍(saddle)、荷馬車の車輪、大メダル(medallion)、ローブ押出物(lobed extrudate)などとして成形され得る。

多孔質媒体は、ポリープ、小繊維、繊維、毛、隆起、丸い突出部、細長い窪み、フィンなどの凹凸を含む表面フィーチャを有してもよい。

多孔質媒体は、金属、セラミック、ポリマー又はこれらの組み合わせであってもよい。多孔質媒体は、酸化物、窒化物、炭化物などであってもよい。

・・・

【0066】

特定の例示的な態様では、

コレクター媒体20は、液相を含み又は保持することができる。コレクター媒体20は、12~200ミリメートルの範囲の個々のサイズを有してもよい。コレクター媒体20は、1ミクロン~20ミリメートルの範囲の直径を有する細孔経路を有してもよい。細孔経路から構成されるコレクター媒体20の内部空隙は、コレクター媒体20の体積の20%~95%を占めることができる。コレクター媒体20は、コレクター媒体20の1立方フィート当たり100~6,000平方フィートの範囲の内部空隙を有することができる。

交換層140内で、コレクター媒体20は、30%~70%の詰め効率を達成するように詰め込まれ得る。細孔径を制御することにより、

コレクター媒体20はそれらの内部空隙内で100%までの液体収集を達成することができる。

液体収集は、詰め効率と内部空隙を掛けることにより決定され得る。記載される詰め効率及び内部空隙の場合、コレクター媒体20の液体収集は、交換層140の体積の6%~66.5%の範囲であり得る。この範囲は、液体収集を遥かにより高い程度まで制御する能力を提供する。液体収集の好ましい量は、前述した要素125の液体ホールドアップを超える、交換層140の体積の20%~66.5%の範囲であろう。これは、記載した詰め効率及び内部空隙のいずれかの組み合わせによって達成され得る。

・・・

【0068】

特定の例示的な態様では、

リリーサー媒体30は、コレクター媒体20から放出された液体を受容し得る。

リリーサー媒体30は、細孔経路により消費される体積によって画定される隙間空隙を有することができ、これは気相流体に対して透過性である。

リリーサー媒体30上の液体としての薄膜35の形成と連結して、隙間空隙中のガス流が薄膜35上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し得る。

リリーサー媒体30は、コレクター媒体20によって形成される空間に適合するように、リリーサー媒体30が包囲するコレクター媒体20のサイズ以下であってもよい。・・・

【0069】

特定の例示的な態様では、

リリーサー媒体30は、800ミクロン~12.7ミリメートルの範囲のサイズを有することができる。リリーサー媒体30は、リリーサー媒体30の1立方フィート当たり60~1000平方フィートの範囲の幾何学的表面積を有することができる。リリーサー媒体30はまた、コレクター媒体20を包囲するように、より大きいコレクター媒体20の間の空間内に詰め込まれ得る。

リリーサー媒体30は、コレクター媒体20を包囲する空間内で>50%の詰め効率を達成することができる。リリーサー媒体30とコレクター媒体20との接触範囲は、隣接コレクター媒体20からの液体を受容する放出点として機能し得る。・・・低体積の流出の性質と、コレクター媒体20を退出する液相相に利用可能な記載された高表面積に起因して、液体は薄膜35としてリリーサー媒体30に沿って移動することができる。リリーサー媒体30は、気相に曝露されて、これらの薄膜35によってガス成分の液体中への拡散を促す。

リリーサー媒体30との接触中、薄膜35液相中へのガス交換の量は、薄膜35の高表面積による高い拡散率によって増加され得る。

(3) 本件発明1について

ア 始めに、前記第4の2(1)ア及びイの特許異議申立理由について検討すると、本件特許明細書の前記(2)イの記載によれば、本件発明は、反応体に乏しい(reactant-lean)液相を加工容器内で処理する方法を提供するものであって、反応体に乏しい液相及び気相を、プロセス容器内の「交換層」に並流的に通過させるものであり、気相は反応体(以下、「反応関与体」ということもある)を含むものであり、気相からの反応関与体の少なくとも一部を、「交換層」内の反応関与体に乏しい液相中に拡散させて、反応関与体に富んだ液相を形成するものである。

また、反応関与体に富んだ液相は、ナフサ、ガソリン、灯油、ジェット、ディーゼル、軽油、植物油、動物獣脂、及び液体水の少なくとも1つを含むことができ、ガスストリームから反応関与体に乏しい液体ストリーム中に拡散する反応関与体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含むことができるものである(段落【0007】)。

イ 前記アによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1における「反応体に乏しい液相」が、気相中のメタン、ブタン、プロパンといった「反応体」が拡散する前の、ナフサ、ガソリン、灯油等の「液相」をいい、「反応体に富んだ液相」が、気相中のメタン、ブタン、プロパンといった「反応体」が拡散した後の、ナフサ、ガソリン、灯油等の「液相」をいうことを理解できるから、「反応体に乏しい液相」、「反応体に富んだ液相」での「液相」がどういうものであるかを理解できるし、「反応体に乏しい」、「反応体に富んだ」、との発明特定事項が、何らかの基準に基づくものではなく、「反応体」が拡散する前及び後の「液相」の状態をいうものであることも理解することができる。

してみれば、「反応体に乏しい液相」及び「反応体に富んだ液相」について、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合するから、前記第4の2(1)ア及びイの特許異議申立理由はいずれも理由がない。

ウ 次に、前記第4の2(1)ウ~オの特許異議申立理由、第5の1(2)ア及び同2(1)アの取消理由について検討すると、これらの特許異議申立理由及び取消理由は、総じて、本件発明1における「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」の材料や構成が明確でなく、「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」を区別することもできないことをいうものといえる。

エ ところが、本件発明1は、「前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含み、コレクター媒体は、反応体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含み、前記リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であり、前記リリーサー媒体はまた、前記コレクター媒体を包囲するように、より大きい前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ、前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」する、との発明特定事項を有するものである。

前記発明特定事項によれば、当業者は、本件発明1における「コレクター媒体」は、「反応体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含」むものであり、「リリーサー媒体」は、「その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であ」るものであり、「前記リリーサー媒体」はまた、「前記コレクター媒体」を「包囲するように、より大きい前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ」て、「前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」するものであることを理解できるから、「コレクター媒体」と「リリーサー媒体」とを区別することができる。

更に、本件特許明細書の前記(2)ウの記載によれば、前記「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」は、多孔質媒体を含むものであり、多孔質媒体は、媒体に進入し、及び/又は媒体を通過する細孔を有する固体として定義されるものであって、金属、セラミック、ポリマー又はこれらの組み合わせであってもよく、酸化物、窒化物、炭化物などであってもよいものであり(段落【0064】)、「コレクター媒体」は、液相を含み又は保持することができるものであり、12~200ミリメートルの範囲の個々のサイズを有してもよいものであり、1ミクロン~20ミリメートルの範囲の直径を有する細孔経路を有してもよいものであり、細孔経路から構成される「コレクター媒体」の内部空隙は、「コレクター媒体」の体積の20%~95%を占めることができ、「コレクター媒体」は、「コレクター媒体」の1立方フィート当たり100~6,000平方フィートの範囲の内部空隙を有することができるものであり(段落【0066】)、「リリーサー媒体」は、「コレクター媒体」から放出された「液体」を受容し得るものであり(段落【0068】)、800ミクロン~12.7ミリメートルの範囲のサイズを有することができ、「リリーサー媒体」の1立方フィート当たり60~1000平方フィートの範囲の幾何学的表面積を有することができる(段落【0069】)ものであることを理解できる。

オ 前記エによれば、当業者は、本件発明1における「コレクター媒体」と「リリーサー媒体」とを区別することができるし、更にこれらの材料や構成も理解することができるから、前記「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」について、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合するので、前記第4の2(1)ウ~オの特許異議申立理由、第5の1(2)ア及び同2(1)アの取消理由も、いずれも理由がない。

カ 次に、前記第4の2(1)カ及びキの特許異議申立理由について検討すると、これらの特許異議申立理由は、総じて、本件発明1における「薄膜」、「液相」及び「液体」の意味が不明確であることをいうものといえる。

キ ところが、本件特許明細書の前記(2)イの記載によれば、本件発明1においては、反応体に乏しい(reactant-lean)「液相」が、「加工容器」内で処理されるものであって(段落【0007】)、同ウの記載によれば、「コレクター媒体」は、「液相」を含み又は保持することができ、それらの内部空隙内で100%までの「液体」収集を達成することができるものであり(段落【0066】)、「リリーサー媒体」は、「コレクター媒体」から放出された「液体」を受容し得るものであり、「リリーサー媒体」上の「液体」としての「薄膜」の形成と連結して、隙間空隙中のガス流が「薄膜」上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し得るものであり(段落【0068】)、「リリーサー媒体」との接触中、「薄膜」「液相」中へのガス交換の量は、「薄膜」の高表面積による高い拡散率によって増加され得るものである(段落【0069】)。

ク 前記キによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1における「液相」は、「加工容器」内で処理されるものであって、「コレクター媒体」に「液体」として収集されて、含まれ又は保持されるものであり、「コレクター媒体」から放出された「液体」が、「リリーサー媒体」上で「薄膜」の「液相」を形成するものであることを理解することができる。

してみれば、当業者は、本件発明1における「薄膜」、「液相」及び「液体」の意味を理解することができるから、「薄膜」、「液相」及び「液体」について、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合するので、前記第4の2(1)カ及びキの特許異議申立理由も、いずれも理由がない。

ケ 次に、前記第4の2(1)クの特許異議申立理由について検討すると、前記キによれば、本件発明1においては、「リリーサー媒体」は、「コレクター媒体」から放出された「液体」を受容し得るものであり、「リリーサー媒体」上の「液体」としての「薄膜」の形成と連結して、隙間空隙中のガス流が「薄膜」上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し得るものであり、「リリーサー媒体」との接触中、「薄膜」「液相」中へのガス交換の量は、「薄膜」の高表面積による高い拡散率によって増加され得るものである。

コ 前記ケによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の「反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進する」との発明特定事項は、「反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散」を、「コレクター媒体」から放出された「液体」が「薄膜」を形成し、隙間空隙中のガス流が「薄膜」上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し、「リリーサー媒体」との接触中、「薄膜」「液相」中へのガス交換の量は、「薄膜」の高表面積による高い拡散率によって増加されて、ガス成分の「液相」中への拡散を促すものであることを理解できるから、前記「反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進する」ことについて、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合するので、前記第4の2(1)クの特許異議申立理由も、理由がない。

(4) 本件発明3及び6について

ア 前記第4の2(2)及び(3)の特許異議申立理由及び前記第5の1(2)イの取消理由について検討すると、前記第4の2(2)及び(3)の特許異議申立理由は、総じて、設定登録時の特許請求の範囲の請求項3及び6に係る発明における「触媒」、「吸着剤」及び「反応体」の意味が明らかでないことをいうものといえ、前記第5の1(2)イの取消理由は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項3及び6に係る発明における「反応体」の意味が明らかでないことをいうものといえる。

イ ところが、「触媒」及び「吸着剤」の意味は、技術常識からみて明らかであるし、本件発明3及び6は「反応体」を含むものではないから、「触媒」、「吸着剤」及び「反応体」の意味について、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合するので、前記第4の2(2)及び(3)の特許異議申立理由及び前記第5の1(2)イの取消理由も、いずれも理由がない。

(5) そのほかの取消理由について

前記第5の1(2)ウ~オの取消理由は、設定登録時の請求項7及び9~26に係る発明を対象としたものであり、同2(1)イの取消理由は、先の訂正により訂正された請求項15~18、20、22~24及び26に係る発明を対象としたものであるが、本件訂正により請求項7及び9~26は全て削除されたので、前記第5の1(2)ウ~オの取消理由及び同2(1)イの取消理由も、いずれも理由がない。

(6) 小括

したがって、特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)についての特許異議申立理由及び取消理由はいずれも理由がない。

2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について

(1) サポート要件の判断手法

特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点により検討する。

(2) 本件発明の課題

ア 本件特許明細書の前記1(2)アの記載によれば、本件発明は、一般に反応加工容器(以下、「反応プロセス容器ともいう」)に関し、より詳細には、反応プロセス容器に含まれる1つ以上の液体ストリーム又は相とのガス交換及び化学反応を可能にすることに関するものであって(段落【0002】)、現場内の加工容器(以下、「プロセス容器」ともいう)は、多くの場合、そのような容器に進入し、該容器を通過し、及び該容器を退出する流体ストリーム又は相を有する垂直円筒構造であり(段落【0003】)、多くの従来の容器内には、材料の異なる相が含まれており、固相は、固体要素の1つ以上の床を含み、容器に含まれる他の相は、1つ以上の液相及び1つ以上の気相を含む流体相を含み、多数の流体相が流体ストリームに含まれ得るものであり、相の状態は、それらの操作条件に依存し得るものであるが(段落【0004】)、この分野における改良が必要とされているものである(段落【0005】)。

イ 前記アによれば、本件発明は、固体要素の1つ以上の床を含み、容器に含まれる他の相は、1つ以上の液相及び1つ以上の気相を含む流体相を含み、多数の流体相が流体ストリームに含まれ得る、反応加工容器に含まれる1つ以上の液体ストリーム又は相とのガス交換及び化学反応の分野において、その改良が必要とされている、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものといえる。

(3) サポート要件の判断

ア 始めに、前記第4の3の特許異議申立理由について検討すると、本件特許明細書の前記1(2)イの記載によれば、本件発明により、反応プロセス容器に含まれる1つ以上の液体ストリームとのガス交換及び化学反応を可能にするための方法の様々な例示的な態様が提供されるものであり(段落【0006】)、気相は反応体(以下、「反応関与体」ということもある)を含むものであり、気相からの反応関与体の少なくとも一部を、「交換層」内の反応関与体に乏しい液相中に拡散させて、反応関与体に富んだ液相を形成し得るものである(段落【0007】)。

そして、本件特許明細書の前記1(2)ウの記載によれば、本件発明における「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」は多孔質媒体を含み(段落【0064】)、「コレクター媒体」は、「液相」を含み又は保持することができ、それらの内部空隙内で100%までの「液体」収集を達成することができるものであり(段落【0066】)、「リリーサー媒体」は、「コレクター媒体」から放出された「液体」を受容し得るものであり、「リリーサー媒体」上の「液体」としての「薄膜」の形成と連結して、隙間空隙中のガス流が「薄膜」上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し得るものであり(段落【0068】)、「リリーサー媒体」との接触中、「薄膜」「液相」中へのガス交換の量は、「薄膜」の高表面積による高い拡散率によって増加され得るものである(段落【0069】)。

イ 前記アによれば、本件発明においては、反応プロセス容器に含まれる1つ以上の液体ストリームとのガス交換において、気相からの反応関与体の少なくとも一部を、「交換層」内の反応関与体に乏しい液相中に拡散させて、反応関与体に富んだ液相を形成する際に、「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」を多孔質媒体を含むものとし、「コレクター媒体」を、「液相」を含み又は保持することができ、それらの内部空隙内で「液体」収集を達成することができるものとし、「リリーサー媒体」を、「コレクター媒体」から放出された「液体」を受容し得るものとし、「リリーサー媒体」上の「液体」としての「薄膜」の形成と連結して、隙間空隙中のガス流が「薄膜」上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し、「リリーサー媒体」との接触中、「薄膜」「液相」中へのガス交換の量を、「薄膜」の高表面積による高い拡散率によって増加させることで、必要とされる前記改良がなされ、本件課題を解決するものといえる。

これに対して、本件発明1は、「気相からの反応体の少なくとも一部を、交換層内の反応体に乏しい液相中に拡散させて、反応体に富んだ液相を形成することと、を含み、前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含み、コレクター媒体は、反応体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含み、前記リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であり」、「前記薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され」る、との発明特定事項を有するものである。

そして、「コレクター媒体は、反応体に乏しい液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含」む、との発明特定事項から、当業者は、本件発明1における「コレクター媒体」が、「液相」を含み又は保持することができ、それらの内部空隙内で「液体」収集を達成することができるものであることを理解でき、「前記リリーサー媒体は、その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能であり」、「前記薄膜は、収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され」る、との発明特定事項から、当業者は、本件発明1における「リリーサー媒体」が、「コレクター媒体」から放出された「液体」を受容し得るものであり、「リリーサー媒体」上の「液体」としての「薄膜」の形成と連結して、隙間空隙中のガス流が「薄膜」上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し、「リリーサー媒体」との接触中、「薄膜」「液相」中へのガス交換の量を、「薄膜」の高表面積による高い拡散率によって増加させることができるものであることを理解できる。

更に、これらの「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」を有する本件発明1は、必要とされる前記改良がなされて、本件課題を解決できるものである。

ウ 前記イによれば、本件特許明細書に記載された各種の「例示的な対応」が、具体的な数値を伴った結果を含めて記載されておらず、それらの各態様が、実際に「ガス交換及び化学反応を可能」にする方法であったのか、あるいは、どの程度の達成率で行うことができたのかを一切確認できないとしても、当業者は、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。

エ また、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができることからみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を、本件発明1の範囲まで拡張ないし一般化することはできないということもできない。

オ したがって、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するから、前記第4の3の特許異議申立理由は理由がない。

カ 次に、前記第5の1(1)の取消理由について検討すると、前記取消理由は、設定登録時の請求項9~14に係る発明を対象としたものであるが、本件訂正により請求項9~14は全て削除されたので、前記第5の1(1)の取消理由は理由がない。

(3) 小括

よって、特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)についての特許異議申立理由及び取消理由はいずれも理由がない。

3 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について

(1) 実施可能要件の判断手法

特許法第36条第4項第1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定める。そして、方法の発明における発明の実施とは、その方法を使用する行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、同法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」とは、その方法を使用できることであり、明細書にその方法を使用することについての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者がその方法を使用できるのであれば、実施可能要件を満たすということができるので、以下、この観点に立って検討する。

(2) 前記第4の4(1)の特許異議申立理由について

ア 本件特許明細書の前記1(2)イの記載によれば、本件発明においては、反応体に乏しい液相及び気相を、プロセス容器内の「交換層」に併流的に通過させるものであり、気相は反応体(反応関与体)を含み、気相からの反応関与体の少なくとも一部を、「交換層」内の反応関与体に乏しい液相中に拡散させて、反応関与体に富んだ液相を形成するものである(段落【0007】)。

そして、当業者は、本件発明1における「交換層」に含まれる「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」の材料や構成を理解することができることは、前記1(3)オに記載したとおりであるし、また、「反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進する」際の反応は、「反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散」を、「コレクター媒体」から放出された「液体」が「薄膜」を形成し、隙間空隙中のガス流が「薄膜」上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し、「リリーサー媒体」との接触中、「薄膜」「液相」中へのガス交換の量は、「薄膜」の高表面積による高い拡散率によって増加されて、ガス成分の「液相」中への拡散を促すものであることを理解できることは、前記1(3)コに記載したとおりである。

イ 前記アによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1における「リリーサー媒体」や「コレクター媒体」の適切な素材、大きさ、形状を、過度の試行錯誤を要することなく選択することができるし、気相からの反応関与体の少なくとも一部を「交換層」内の反応関与体に乏しい液相中に拡散させて、反応関与体に富んだ液相を形成する際の反応条件も、過度の試行錯誤を要することなく選択することができるから、本件発明1に係る「方法」を、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、使用できるものである。

そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たすといえるから、前記第4の4(1)の特許異議申立理由は理由がない。

(3) 前記第4の4(2)の特許異議申立理由について

前記(2)イに記載したのと同様の理由により、本件特許明細書の記載に接した当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1における「リリーサー媒体」が「コレクター媒体」から放出された液体を受容して、隙間空隙中のガス流が「薄膜」上での高度の混合及び液体-ガス交換の機会を作り、ガス交換を改善し得るように、「薄膜」を形成することができるから、前記「薄膜」の形成のために過度の試行錯誤を要するとはいえないので、本件発明1に係る「方法」を、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、使用できるものである。

そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たすといえるから、前記第4の4(2)の特許異議申立理由も理由がない。

(4) 小括

したがって、特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)についての特許異議申立理由はいずれも理由がない。

4 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について

(1) 甲各号証の記載事項等

ア 甲第1号証に記載された事項及び甲第1号証に記載された発明

(ア) 甲第1号証には、以下のa~dの記載がある。

a 「【特許請求の範囲】

・・・

【請求項26】

プロセス装置の中で垂直流れ分配を起こさせる方法

であって、

(a)垂直流れ分配を助長する流路を限定している多数のウエブ材を有するプロセス装置の中に多数の網状要素を供給し、そして

(b)プロセス流れを前記網状要素の領域に接触させ、そして

(c)前記プロセス流れを前記多数の網状要素のウエブ材が限定している前記多数の流路の中に通すことで前記プロセス流れを垂直方向に有意に分散させることによって前記プロセス流れを多数のより小さい流体流れに細分する、

段階を含んで成る方法。」

b 「【0018】

本発明は、また、有利には、プロセス装置の中で垂直流れ分配を起こさせる方法も提供する。

本垂直流れ分配方法は、1個以上の網状要素を当該プロセス装置の中に供給することを包含する。

用いる網状要素が1個のみの場合には、典型的に、それの大きさが有効に当該プロセス装置の全長に及ぶようにする。

用いる網状要素が多数の場合には、それらを典型的には無作為に詰め込まれた床の状態に配置する

。そのような網状要素の形態に関係なく、各網状要素は、この網状要素の全体を貫く多数の流路を限定している多数のウエブ材(web members)を有する。従って、

プロセス流れが各網状要素のウエブ材で限定されている多数の流路を通ることによって前記プロセス流れが前記多数の網状要素と接触するとそれらは多数のより小さい流体流れに細分される。前記プロセス流れの流れが前記網状要素の中の流路の中を通りかつ使用する網状要素が多数の時には前記網状要素の間に存在する隙間を通ることで、前記プロセス装置の中を通る前記プロセス流れの流れに対して垂直な有効な流れ分配がもたらされる。

本方法は当該プロセス装置の中に入って来るプロセス流れが入り込む地点が当該プロセス装置の中の任意地点であるか、プロセス装置の出口であるか或はそのような場所の任意組み合わせであるいずれにも適用可能である。・・・

【0019】

本発明の追加的特徴は、

いろいろな形状の網状要素を用いる段階を包含し得る。そのような形状には、とりわけ、実質的に球形の球、

モノリス、正方形、ラシッヒリング、サドル、中空円柱、穴開き盤、盤、単一シートおよび固形円柱(solid cylinder)

が含まれ得る。

各形状物の大きさを個々の仕様に合わせることができる。

使用する形状物の大きさには、直径が約1/8から2インチの実質的に球形の球、

幅が約1/8から2インチで長さが約1/8から2インチのモノリス、・・・および直径が約1/8から1インチで高さが約1/4から2インチの固形円柱

が含まれ得る。

特注のワンピース盤または単一シート構造物を反応槽の物理的形態に特別に適合させてもよい。・・・

・・・

【0026】

図1を参照して、

プロセス流れを処理する目的で、実質的に球形の球122(図11)の形状の網状要素15を用いた単一触媒固定床プロセス装置

22を記述するが、この上で考察したように、他の形状の網状要素15ばかりでなく他のプロセス装置も使用可能である。プロセス装置22が下降流形態の場合、汚染されているプロセス流れ20は入り口24の所でプロセス装置22の中に入る。本発明は固定床または流動床のいずれのプロセス装置でも使用可能である。好適には、本発明を上昇流または下降流または放射状流形態のいずれかの1個以上の固定床で用いる。

そのような触媒床プロセス装置には、好適には、水素添加処理装置、水素添加精製装置、水素添加分解装置、改質装置、アルキル置換反応槽、脱アルキル反応槽、異性化反応槽、エステル化反応槽および重合反応槽が含まれる。

供給流れに典型的に存在する汚染物には、典型的には、埃、酸化鉄、硫化鉄、アスファルテン、コークス微細物、煤、触媒微細物、沈澱物、または連行された他の外来粒状物、蒸留塔の中の塩、気体流れの中の粒子、排ガス装置に由来する硫黄または硫化物、または重合体前駆体、例えばジオレフィンなどが含まれる。・・・

・・・

【0040】

本発明の別の特徴では、

有利に、多数の網状要素15をプロセス装置の長さ全体に渡って装備することを提供する。そのような多数の網状要素15を

図22に示すように

プロセス装置全体に渡って触媒19と混合しておいてもよい。

c 「【図1】

119

64

0001435163000001.jpg

d 「【図22】

102

51

0001435163000002.jpg

(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には、プロセス装置の中で垂直流れ分配を起こさせる方法が記載されており、前記(ア)b~dの記載によれば、前記方法は、1個以上の網状要素を当該プロセス装置の中に供給することを包含するものであって、用いる網状要素が多数の場合には、それらを典型的には無作為に詰め込まれた床の状態に配置するものであり、プロセス流れが各網状要素のウエブ材で限定されている多数の流路を通ることによって前記プロセス流れが前記多数の網状要素と接触するとそれらは多数のより小さい流体流れに細分されるものであり、前記プロセス流れの流れが前記網状要素の中の流路の中を通りかつ使用する網状要素が多数の時には前記網状要素の間に存在する隙間を通ることで、前記プロセス装置の中を通る前記プロセス流れの流れに対して垂直な有効な流れ分配がもたらされるものであり(段落【0018】)、また、前記方法においては、いろいろな形状の網状要素を用い得るものであり、そのような形状には、実質的に球形の球が含まれ得るものであり、使用する形状物の大きさには、直径が約1/8から2インチの実質的に球形の球が含まれ得るものである(段落【0019】)。

更に、前記プロセス装置は、プロセス流れを処理するための、実質的に球形の形状の網状要素を用いた単一触媒固定床プロセス装置であり、そのような単一触媒固定床プロセス装置には、好適には、水素添加処理装置、水素添加精製装置、水素添加分解装置、改質装置、アルキル置換反応槽、脱アルキル反応槽、異性化反応槽、エステル化反応槽及び重合反応槽が含まれるものであり、多数の網状要素をプロセス装置の長さ全体にわたって装備することを提供するものであり(段落【0026】)、有利には、そのような多数の網状要素をプロセス装置全体にわたって触媒と混合しておいてもよいものである(段落【0040】)。

(ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。

「プロセス装置の中で垂直流れ分配を起こさせる方法であって、

前記方法は、1個以上の網状要素を当該プロセス装置の中に供給することを包含するものであり、用いる網状要素が多数の場合には、それらを典型的には無作為に詰め込まれた床の状態に配置するものであり、

プロセス流れが各網状要素のウエブ材で限定されている多数の流路を通ることによって前記プロセス流れが前記多数の網状要素と接触するとそれらは多数のより小さい流体流れに細分されるものであり、前記プロセス流れの流れが前記網状要素の中の流路の中を通りかつ使用する網状要素が多数の時には前記網状要素の間に存在する隙間を通ることで、前記プロセス装置の中を通る前記プロセス流れの流れに対して垂直な有効な流れ分配がもたらされるものであり、

前記方法においては、いろいろな形状の網状要素を用い得るものであり、そのような形状には、実質的に球形の球が含まれ得るものであり、使用する形状物の大きさには、直径が約1/8から2インチの実質的に球形の球が含まれ得るものであり、

前記プロセス装置は、プロセス流れを処理するための、実質的に球形の形状の網状要素を用いた単一触媒固定床プロセス装置であり、そのような単一触媒固定床プロセス装置には、好適には、水素添加処理装置、水素添加精製装置、水素添加分解装置、改質装置、アルキル置換反応槽、脱アルキル反応槽、異性化反応槽、エステル化反応槽及び重合反応槽が含まれるものであり、

多数の網状要素をプロセス装置の長さ全体にわたって装備することを提供するものであり、有利には、そのような多数の網状要素をプロセス装置全体にわたって触媒と混合しておいてもよいものである、方法。」(以下、「甲1発明」という。)

イ 甲第5号証に記載された事項及び甲第5号証に記載された発明

(ア) 甲第5号証には、以下のa~dの記載がある。

a 「【特許請求の範囲】

【請求項1】

成分分離装置において、少なくも一つのプロセス流を、希望の組成を有する一つ又はそれ以上の成分プロセス流に分離する方法

であって:

(a)固体構成要素及び一つ又はそれ以上のセルを有する3次元のセル状固体材料を装置内に準備し;

(b)セル状固体材料を装置の少なくも一つの区域内に位置決めし;

(c)少なくも一つのプロセス流の二つ又はそれ以上の相を、セル状固体材料を収容している区域内に導き;

(d)質量移動を容易にするためにセル状固体材料の表面において二つ又はそれ以上の相を接触させ;

(e)少なくも一つの成分プロセス流から一つ又はそれ以上の相の少なくも一部分を少なくも一つの成分プロセス流として回収し、少なくも一つの成分プロセス流が希望の組成を持つ

諸段階を含む方法。」

b 「【0030】

本発明は、プロセス装置における直角流の分布方法も有利に提供する。この直角流の分布方法は、

プロセス装置内における1個又はそれ以上の網状要素の提供を含む。

網状要素がただ1個だけ使用される場合は、これは、プロセス装置の断面を効果的に満たすに十分に大きいことが典型的である。

多くの網状要素が使用される場合は、これらは不規則に詰め込まれた床に配列されることが典型的でる。網状要素の形状に拘わらず、各網状要素は、網状要素を通る複数の通路を定める複数のウエブ部材を持つ。従って、プロセス流は、各網状要素のウエブ部材により定められた複数の流路を通過するので、複数の網状要素と接触したプロセス流はより小さい複数の流体流に細分される。網状要素が使用されたとき、網状要素内の流路を通るプロセス流の流れ及び網状要素間の空虚な空間を通るプロセス流の流れが、プロセス装置を通るプロセス流の流れに対して直角方向の効果的な流れの分布を提供するために使用される。

この方法は、プロセス装置内の適宜の位置において、プロセス装置からの出口において、又はこれら位置の適宜の組合せにおいて、プロセス装置に流入するプロセス流に対して提供することができる。この方法は、プロセス流からの汚染物質の除去と同時にプロセス流に適用することができる。この方法は、プロセス流内の希望の化学物質を部分的に又は全部を除去し又は変換させるために触媒反応を遂行すると同時に適用することができる。

【0031】

本発明の追加の特徴は、

種々の形状で網状要素を使用する段階を含む。形状は、

例えば、

実質的に球状にされたボール

、モノリス、正方形、ラッシヒリング、サドル、中空円筒体、孔空き円板、円板、単一シート、及び中実円筒体を

含む。

各形状は個々の仕様に応じた寸法とすることができる。

使用し得る形状に対する寸法は、直径が約3.18から50.8mm(1/8から2インチ)の実質的に球状のボール

;幅が約3.18から50.8mm(1/8から2インチ)で長さが約3.18から50.8mm(1/8から2インチ)のモノリス;・・・及び直径が約3.18から25.4mm(1/8から1インチ)で高さが約6.35から50.8mm(1/4から2インチ)の中実円筒体

を含むことができる。

特別注文の一体型円板又は単一シート構造は、反応装置の物理的形状に特別に適合させることができる。・・・

・・・

【0050】

図1を参照し、

プロセス流を処理するための、実質的に球状のボール122の形の網状要素15(図11)を有する単一固定触媒床式のプロセス装置

22が説明される。ただし、前述のようにその他の形状の網状要素15及びその他のプロセス装置を使用することができる。プロセス装置22が下降流方式のものである場合は、汚染されたプロセス流20は入口24からプロセス装置22に入るであろう。本発明は、固定触媒床式又は流動触媒床式のプロセス装置のいずれにも使用することができる。本発明は、下降流又は上昇流或いは半径流のいずれの方式においても1個又はそれ以上の固定床で使用されることが好ましい。

触媒床式プロセス装置は、好ましくは、水素化清浄装置、水素化精製装置、水素化分解装置、改質装置、アルキル化装置、脱アルキル装置、異性化装置、エステル化装置、及び重合装置を含む。

供給流に典型的に見いだされる汚染物質は、塵埃、酸化鉄、硫化鉄、アスファルト、炭塵、煤煙、触媒粉末、沈降物又はその他の粒子状異物、蒸留塔内の塩類、気体流内の粒子、排出ガス装置からの硫黄又は硫化物、或いはジオルフィンのようなポリマー前駆物質を含む。・・・

・・・

【0065】

本発明の別の特徴により、

プロセス装置に全長にわたって複数の網状要素15を有利に設けることが提供される。

図22に示されるように、

複数の網状要素15が、触媒19をプロセス装置全体に混在させることができる。

c 「【図1】

122

64

0001435163000003.jpg

d 「【図22】

97

51

0001435163000004.jpg

(イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第5号証には、成分分離装置において、少なくも一つのプロセス流を、希望の組成を有する一つ又はそれ以上の成分プロセス流に分離する方法が記載されており、前記(ア)b~dの記載によれば、前記方法は、プロセス装置内における1個又はそれ以上の網状要素の提供を含むものであって、多くの網状要素が使用される場合は、これらは不規則に詰め込まれた床に配列されることが典型的であり、網状要素の形状に拘わらず、各網状要素は、網状要素を通る複数の通路を定める複数のウエブ部材を持つものであり、このため、プロセス流は、各網状要素のウエブ部材により定められた複数の流路を通過するので、複数の網状要素と接触したプロセス流はより小さい複数の流体流に細分されるものであり、網状要素が使用されたとき、網状要素内の流路を通るプロセス流の流れ及び網状要素間の空虚な空間を通るプロセス流の流れが、プロセス装置を通るプロセス流の流れに対して直角方向の効果的な流れの分布を提供するために使用されるものであり(段落【0030】)、また、前記方法においては、種々の形状で網状要素を使用する段階を含むものであり、そのような形状には、実質的に球状にされたボールを含むものであり、使用し得る形状に対する寸法は、直径が約3.18から50.8mm(1/8から2インチ)の実質的に球状のボールを含むことができるものである(段落【0031】)。

更に、プロセス流を処理するための、実質的に球状のボールの形の網状要素を有する単一固定触媒床式のプロセス装置は、好ましくは、水素化清浄装置、水素化精製装置、水素化分解装置、改質装置、アルキル化装置、脱アルキル装置、異性化装置、エステル化装置、及び重合装置を含むものであり(段落【0050】)、プロセス装置に全長にわたって複数の網状要素を有利に設けることが提供されるものであり、複数の網状要素が、触媒をプロセス装置全体に混在させることができるものである(段落【0065】)。

(ウ) 前記(イ)によれば、甲第5号証には、以下の発明が記載されているといえる。

「成分分離装置において、少なくも一つのプロセス流を、希望の組成を有する一つ又はそれ以上の成分プロセス流に分離する方法であって、

前記方法は、プロセス装置内における1個又はそれ以上の網状要素の提供を含むものであり、多くの網状要素が使用される場合は、これらは不規則に詰め込まれた床に配列されることが典型的であり、

網状要素の形状に拘わらず、各網状要素は、網状要素を通る複数の通路を定める複数のウエブ部材を持つものであり、このため、プロセス流は、各網状要素のウエブ部材により定められた複数の流路を通過するので、複数の網状要素と接触したプロセス流はより小さい複数の流体流に細分されるものであり、

網状要素が使用されたとき、網状要素内の流路を通るプロセス流の流れ及び網状要素間の空虚な空間を通るプロセス流の流れが、プロセス装置を通るプロセス流の流れに対して直角方向の効果的な流れの分布を提供するために使用されるものであり、

前記方法においては、種々の形状で網状要素を使用する段階を含むものであり、そのような形状には、実質的に球状にされたボールを含むものであり、使用し得る形状に対する寸法は、直径が約3.18から50.8mm(1/8から2インチ)の実質的に球状のボールを含むことができるものであり、

プロセス流を処理するための、実質的に球状のボールの形の網状要素を有する単一固定触媒床式のプロセス装置は、好ましくは、水素化清浄装置、水素化精製装置、水素化分解装置、改質装置、アルキル化装置、脱アルキル装置、異性化装置、エステル化装置、及び重合装置を含むものであり、

プロセス装置に全長にわたって複数の網状要素を有利に設けることが提供されるものであり、複数の網状要素が、触媒をプロセス装置全体に混在させることができるものである、方法。」(以下、「甲5発明」という。)

なお、そのほかの甲号証の摘記は省略する。

(2) 甲第1号証を主引用例とした場合について

ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「プロセス装置」は、本件発明1における「加工容器」に相当し、前記「プロセス装置」が、「単一触媒固定床プロセス装置」であり、「好適には、水素添加処理装置、水素添加精製装置、水素添加分解装置、改質装置、アルキル置換反応槽、脱アルキル反応槽、異性化反応槽、エステル化反応槽及び重合反応槽が含まれる」ことからみれば、甲1発明における「プロセス装置の中で垂直流れ分配を起こさせる方法」は、本件発明1における「液相を加工容器内で処理する方法」に相当する。

また、甲1発明における「単一触媒固定床」は、本件発明1における「交換層」に相当し、甲1発明における「プロセス装置」が、「好適には、水素添加処理装置、水素添加精製装置、水素添加分解装置、改質装置、アルキル置換反応槽、脱アルキル反応槽、異性化反応槽、エステル化反応槽及び重合反応槽が含まれる」ことからみれば、甲1発明における「プロセス装置の中で垂直流れ分配を起こさせる方法」は、本件発明1において、「液相」「を、加工容器内の交換層に」「通過させること」「を含」むことを満たす。

更に、甲1発明における「網状要素」は、「前記プロセス流れの流れが前記網状要素の中の流路の中を通りかつ使用する網状要素が多数の時には前記網状要素の間に存在する隙間を通ることで、前記プロセス装置の中を通る前記プロセス流れの流れに対して垂直な有効な流れ分配がもたらされる」ものであることからみれば、本件発明1における「コレクター媒体」に相当し、更に「液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含」むことを満たす。

また、甲1発明における「触媒」は、「多数の網状要素をプロセス装置全体にわたって触媒と混合しておいてもよいものである」ことからみれば、本件発明1における「リリーサー媒体」に相当し、更に「固体材料を含み」、「前記コレクター媒体を包囲するように」、「前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ」ることを満たす。

そして、甲1発明における「網状要素」及び「触媒」は、「単一触媒固定床」に含まれるものといえるから、前記「単一触媒固定床」は、本件発明1において「前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含」むことを満たす。

更に、甲1発明における「プロセス装置」が、「好適には、水素添加処理装置、水素添加精製装置、水素添加分解装置、改質装置、アルキル置換反応槽、脱アルキル反応槽、異性化反応槽、エステル化反応槽及び重合反応槽が含まれる」ことからみれば、甲1発明は、本件発明1において、「反応体」が「メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含む」ことを満たす。

イ 前記アによれば、本件発明1と甲1発明とは、

「液相を加工容器内で処理する方法であって、

液相を、加工容器内の交換層に通過させること、を含み、

前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含み、コレクター媒体は、液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含み、

前記リリーサー媒体は、固体材料を含み、

前記リリーサー媒体はまた、前記コレクター媒体を包囲するように、前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ、

反応体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含む、

方法。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1:本件発明1は、「液相を加工容器内で処理する方法」が、「反応体に乏しい液相を加工容器内で処理する方法」であって、「反応体に乏しい液相、及び反応体を含む気相を、加工容器内の交換層に並流的に通過させることと;気相からの反応体の少なくとも一部を、交換層内の反応体に乏しい液相中に拡散させて、反応体に富んだ液相を形成することと、を含」むのに対して、甲1発明は、「反応体に乏しい液相を加工容器内で処理する方法」であるとはいえず、「反応体に乏しい液相、及び反応体を含む気相を、加工容器内の交換層に並流的に通過させることと;気相からの反応体の少なくとも一部を、交換層内の反応体に乏しい液相中に拡散させて、反応体に富んだ液相を形成することと、を含」むものともいえない点。

・相違点2:本件発明1は、「液相を加工容器内で処理する方法」における「前記リリーサー媒体」が、「その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能」であるのに対して、甲1発明は、「触媒」が「その外表面上」に「薄膜」を「形成」するものとはいえず、「該薄膜」が、「反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能」であるともいえない点。

・相違点3:本件発明1は、「液相を加工容器内で処理する方法」における「前記リリーサー媒体」が、「より大きい前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ、前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」するのに対して、甲1発明は、「網状要素」の大きさが「触媒」の大きさと比較して「より大きい」とはいえず、「網状要素」の「各々」が、「触媒」「により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」するものともいえない点。

・相違点4:本件発明1は、「液相を加工容器内で処理する方法」における「前記薄膜」が、「収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され」るのに対して、甲1発明は、「触媒」が「その外表面上」に「薄膜」を「形成」するものとはいえない点。

なお、「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」の大きさと、これらの「接触点」の数とは、密接に関連する一体不可分の特定事項といえるから、「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」の大きさとこれらの「接触点」の数について、一体のものとして前記相違点3のとおりに認定した。

ウ 事案に鑑み、始めに、前記イの相違点3の容易想到性から検討すると、甲1発明は、「網状要素」として、「直径が約1/8から2インチの実質的に球形の球が含まれ得る」ものである。

そして、1インチが約25.4mmであることからみれば、甲1発明における「網状要素」は、直径が約3.2mm~約50.8mmのものが想定されるものである。

ところが、甲1発明における「触媒」の直径は明らかでない。そして、甲1発明において、「網状要素」の大きさを「触媒」の大きさより「より大きい」ものとし、更に「網状要素」の「各々」を、「触媒」「により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」するものとする動機付けは存在しない上、そうすることを開示した証拠もないから、甲1発明を、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。

してみれば、前記イのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2~4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないし、甲1発明及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~6について検討しても事情は同じである。

(3) 甲第5号証を主引用例とした場合について

ア 本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明における「プロセス装置」は、本件発明1における「加工容器」に相当し、前記「プロセス装置」が、「単一固定触媒床式のプロセス装置」であり、「好ましくは、水素化清浄装置、水素化精製装置、水素化分解装置、改質装置、アルキル化装置、脱アルキル装置、異性化装置、エステル化装置、及び重合装置を含む」ものであることからみれば、甲5発明における「成分分離装置において、少なくも一つのプロセス流を、希望の組成を有する一つ又はそれ以上の成分プロセス流に分離する方法」は、本件発明1における「液相を加工容器内で処理する方法」に相当する。

また、甲5発明における「単一触媒固定床」は、本件発明1における「交換層」に相当し、甲5発明における「プロセス装置」が、「好ましくは、水素化清浄装置、水素化精製装置、水素化分解装置、改質装置、アルキル化装置、脱アルキル装置、異性化装置、エステル化装置、及び重合装置を含む」ものであることからみれば、甲5発明における「成分分離装置において、少なくも一つのプロセス流を、希望の組成を有する一つ又はそれ以上の成分プロセス流に分離する方法」は、本件発明1において、「液相」「を、加工容器内の交換層に」「通過させること」「を含」むことを満たす。

更に、甲5発明における「網状要素」は、「網状要素を通る複数の通路を定める複数のウエブ部材を持つものであり、このため、プロセス流は、各網状要素のウエブ部材により定められた複数の流路を通過するので、複数の網状要素と接触したプロセス流はより小さい複数の流体流に細分される」ものであることからみれば、本件発明1における「コレクター媒体」に相当し、更に「液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含」むことを満たす。

また、甲5発明における「触媒」は、「複数の網状要素が、触媒をプロセス装置全体に混在させることができるものである」ことからみれば、本件発明1における「リリーサー媒体」に相当し、更に「固体材料を含み」、「前記コレクター媒体を包囲するように」、「前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ」ることを満たす。

そして、甲5発明における「網状要素」及び「触媒」は、「単一触媒固定床」に含まれるものといえるから、前記「単一触媒固定床」は、本件発明1において「前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含」むことを満たす。

更に、甲5発明における「プロセス装置」が、「好ましくは、水素化清浄装置、水素化精製装置、水素化分解装置、改質装置、アルキル化装置、脱アルキル装置、異性化装置、エステル化装置、及び重合装置を含む」ものであることからみれば、甲5発明は、本件発明1において「反応体」が「メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含む」ことを満たす。

イ 前記アによれば、本件発明1と甲5発明とは、

「液相を加工容器内で処理する方法であって、

液相を、加工容器内の交換層に通過させること、を含み、

前記交換層は、複数のコレクター媒体及び複数のリリーサー媒体を含み、コレクター媒体は、液相をコレクター媒体内に収集することが可能な多孔質固体材料を含み、

前記リリーサー媒体は、固体材料を含み、

前記リリーサー媒体はまた、前記コレクター媒体を包囲するように、前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ、

反応体は、メタン、ブタン、プロパン、ブタレン、プロピレン、水素、アンモニア、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸化硫黄、酸化窒素、水ガス、酸素、及び窒素の少なくとも1つを含む、

方法。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1’:本件発明1は、「液相を加工容器内で処理する方法」が、「反応体に乏しい液相を加工容器内で処理する方法」であって、「反応体に乏しい液相、及び反応体を含む気相を、加工容器内の交換層に並流的に通過させることと;気相からの反応体の少なくとも一部を、交換層内の反応体に乏しい液相中に拡散させて、反応体に富んだ液相を形成することと、を含」むのに対して、甲5発明は、「反応体に乏しい液相を加工容器内で処理する方法」であるとはいえず、「反応体に乏しい液相、及び反応体を含む気相を、加工容器内の交換層に並流的に通過させることと;気相からの反応体の少なくとも一部を、交換層内の反応体に乏しい液相中に拡散させて、反応体に富んだ液相を形成することと、を含」むものともいえない点。

・相違点2’:本件発明1は、「液相を加工容器内で処理する方法」における「前記リリーサー媒体」が、「その外表面上に形成されている薄膜を有する固体材料を含み、該薄膜は、反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能」であるのに対して、甲5発明は、「触媒」が「その外表面上」に「薄膜」を「形成」するものとはいえず、「該薄膜」が、「反応体に乏しい液相と気相との間の接触及び拡散を促進することが可能」であるともいえない点。

・相違点3’:本件発明1は、「液相を加工容器内で処理する方法」における「前記リリーサー媒体」が、「より大きい前記コレクター媒体の間の空間内に詰め込まれ、前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」するのに対して、甲5発明は、「網状要素」の大きさが「触媒」の大きさと比較して「より大きい」とはいえず、「網状要素」の「各々」が、「触媒」「により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」するものともいえない点。

・相違点4’:本件発明1は、「液相を加工容器内で処理する方法」における「前記薄膜」が、「収集された液相から液体が放出される結果、処理中にリリーサー媒体上に形成され」るのに対して、甲5発明は、「触媒」が「その外表面上」に「薄膜」を「形成」するものとはいえない点。

なお、前記(2)イに記載したのと同様の理由により、「コレクター媒体」及び「リリーサー媒体」の大きさとこれらの「接触点」の数について一体のものとして、前記相違点3’のとおりに認定した。

ウ 事案に鑑み、始めに、前記イの相違点3’の容易想到性から検討すると、甲5発明は、「網状要素」として、「直径が約3.18から50.8mm(1/8から2インチ)の実質的に球状のボールを含むことができる」ものであるから、甲5発明における「網状要素」は、直径が約3.18mm~50.8mmのものが想定されるものである。

ところが、甲5発明における「触媒」の直径は明らかでない。そうすると、前記(2)ウに記載したのと同様の理由により、甲5発明を、前記相違点3’に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。

してみれば、前記イのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明及び甲第2~4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~6について検討しても事情は同じである。

(4) 申立人の主張について

ア 申立人意見書における本件発明の進歩性欠如についての主張の概要は、以下のとおりである。

甲第6号証には、甲第1号証に記載された「網状要素」と物理的性質が重複するとともに、本件発明における「コレクター媒体」の要件を満たすCat Trap(登録商標)が記載されており、甲第1号証に記載された発明において、「網状要素」としてCat Trap(登録商標)を使用することに困難性は存在しない。

一方、「リリーサー媒体」として利用可能な水素化処理触媒の粒径が約0.8~6mmであることは、甲第2号証の記載(46ページ、表3.4)からみれば、当業者にとって周知の技術的事項である。

そして、前記Cat Trap(登録商標)のうち、直径が最も小さい38mmであるCat Trap(登録商標)50の片面に対して粒径6mmの触媒粒子が接触する場合、単純計算で約40個相当となるし、甲第7~8号証の記載から、Cat Trap(登録商標)はその表面が視認できるほどの巨孔からなる多孔体であることが理解でき、このことからみれば、その底面だけでも触媒粒子との接触点数が40個を超えることは明らかである。

甲第1号証に記載された発明において、「網状要素」及び「触媒」の大きさは、当業者が適宜決定する事項にすぎないところ、当業者が通常選択する「網状要素」及び「触媒」の大きさの範囲からみれば、甲第1号証の【図22】を参照して「網状要素」及び「触媒」を充填することで、「前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」する状態となることは、当然の結果にすぎないから、当業者が容易になし得ることであるので、本件発明は進歩性を有しない。

甲第6号証:Crystaphase Technologies Inc., 「TECHNICAL MANUAL Cat Trap

(R)

TECHNOLOGY」, 2011年11月

甲第7号証:UOP LLC,「ADVANCING PRESSURE DROP MITIGATION THROUGH COLLABORATION」,2019年(https://uop.honeywell.com/content/dam/uop/en-us/documents/downloads/pecs/kme/Hydroprocessing%20Reactor%20Internals%20(PDM%20Tray%20With%20Crystaphase)%20Brochure.pdf),2025年6月9日検索

甲第8号証:Crystaphase Technologies Inc., 「Cat Trap

(R)

TECHNOLOGY COMMERCIAL RESULTS: BEFORE AND AFTER」, 2010年4月

(当審注:甲第6号証及び甲第8号証の(R)は○にRである。)

イ 以下、前記アの主張について検討すると、前記主張は、甲第1号証に記載された「網状要素」として、甲第6号証に記載されたCat Trap(登録商標)を使用することを前提として、前記Cat Trap(登録商標)のうち、直径が最も小さい38mmのものを使用しても、「リリーサー媒体」として利用可能な水素化処理触媒の粒径が約0.8~6mmであることから、甲第1号証に記載された発明において、「前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」する状態となることは明らかであることをいうものといえる。

ところが、甲第1号証に記載された発明においては、「網状要素」として、「直径が約1/8から2インチの実質的に球形の球が含まれ得る」ものであり、1インチが約25.4mmであることからみれば、前記「網状要素」は、直径が約3.2mm~50.8mmのものが想定されることは、前記(2)ウに記載したとおりである。

そうすると、甲第1号証に記載された発明においては、前記Cat Trap(登録商標)のうち最も小さい直径である38mmよりも、更に小さい約3.2mmの直径の「網状要素」を使用することが想定されるのであるから、甲第1号証に記載された「網状要素」として、甲第6号証に記載されたCat Trap(登録商標)を使用することを前提とすることはできないので、前記主張は前提において誤っている。

そして、甲第1号証に記載された発明において、前記「網状要素」は、直径が約3.2mm~約50.8mmのものが想定されることからみれば、仮に、「リリーサー媒体」として利用可能な水素化処理触媒の粒径が約0.8~6mmであるとしても、甲第1号証に記載された発明において、「前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」する状態となることが明らかであるということはできない。

更に、甲第1号証に記載された発明において、「網状要素」の大きさを「触媒」の大きさより「より大きい」ものとし、更に「網状要素」の「各々」を、「触媒」「により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」するものとする動機付けは存在しない上、そうすることを開示した証拠もないことは、前記(2)ウに記載したとおりであるから、「前記交換層中のコレクター媒体の各々は、リリーサー媒体により接触される少なくとも20個の接触点をその外表面に有」するものとすることは、当業者が容易になし得ることとはいえないので、前記アの主張は採用できない。

また、甲第5号証に記載された発明について検討しても事情は同じである。

(5) 小括

したがって、本件発明1~6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないし、甲第5号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第4の5の特許異議申立理由及び前記第5の1(3)の取消理由はいずれも理由がない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、本件訂正により請求項7~26は削除されたから、請求項7~26に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しなくなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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