sokuhyo

Trademark Appeal Case

特許訂正の適否判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700427
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7567628号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7567628号の請求項3~8に係る特許を維持する。
特許第7567628号の請求項1~2に係る特許についての特許異議申し立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7567628号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和3年4月1日に出願され、令和6年10月7日にその特許権の設定登録がされ、同月16日に特許掲載公報が発行された。

その後、請求項1~8に係る特許に対し、令和7年4月15日に、特許異議申立人鈴木 好憲(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。

本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和7年 4月15日 :申立人による本件特許に対する特許異議の申立て

同年 6月25日付:取消理由通知(発送日:同年7月2日)

同年 8月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

同年11月27日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

令和7年8月28日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第7567628号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものであり、その内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置が前記対象物に対して所定範囲内である場合に、前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、請求項2に記載の対象物制御装置。」と記載されているのを、「

対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、前記対象物において、指示に対応する制御を行う対象物制御装置(10)であって、前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)と、前記送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する前記情報端末の位置を判定する位置判定部(16)を備え、

前記ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、前記対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いられ、前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置が前記対象物に対して所定範囲内である場合に、前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する

、対

象物制御装置。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4~8も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4に「前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準とするエリア内において、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、請求項2又は3に記載の対象物制御装置。」と記載されているのを、「前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準とするエリア内において、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、請求項

3

に記載の対象物制御装置。」に訂正する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5に「前記送受信部は、電波が受信された際に、受信電波に応じた受信信号を一時的に保持する受信バッファ(14)を備える、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の対象物制御装置。」と記載されているのを、「前記送受信部は、電波が受信された際に、受信電波に応じた受信信号を一時的に保持する受信バッファ(14)を備える、請求項

3又は4

に記載の対象物制御装置。」に訂正する。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項7に「前記対象物は、車両であって、ユーザによって実行指示される制御は、車両ドアの解錠、車両ドアの開扉、車両トランクの解錠、車両トランクの開扉、及び車両に搭載された車載装置の動作開始の少なくとも1つである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の対象物制御装置。」と記載されているのを、「前記対象物は、車両であって、ユーザによって実行指示される制御は、車両ドアの解錠、車両ドアの開扉、車両トランクの解錠、車両トランクの開扉、及び車両に搭載された車載装置の動作開始の少なくとも1つである、請求項

3

乃至6のいずれか1項に記載の対象物制御装置。」に訂正する。

(7)訂正事項7

明細書の段落【0006】に「上記目的を達成するために、本開示による対象物制御装置(10)は、対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)と、送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、前記送受信部が受信した反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、を備え、ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いられることを特徴とする。」と記載されているのを、「上記目的を達成するために、本開示による対象物制御装置(10)は、前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)と、送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、前記送受信部が受信した反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、

送受信部が情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、対象物に対する情報端末の位置を判定する位置判定部(16)と、

を備え、ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いられ

、ジェスチャ検出部は、位置判定部によって判定された情報端末の位置が対象物に対して所定範囲内である場合に、反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する

ことを特徴とする。」に訂正する。

(8)一群の請求項についての説明

訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

訂正事項1は訂正前の請求項1を削除するものである。

したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項1は訂正前の請求項1を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」ということがある。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項1は訂正前の請求項1を削除するのみであるから、訂正前の請求項1の記載について、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項1に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。

したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的

訂正事項2は訂正前の請求項2を削除するものである。

したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に

規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項2は訂正前の請求項2を削除するものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項2は訂正前の請求項2を削除するのみであるから、訂正前の請求項2の記載について、訂正前の請求項2に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項2に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。

したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3について

ア 訂正の目的について

訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項2の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項2が削除されて請求項2を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正である。したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項3は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であり、当該訂正により訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項3に記載された発明の対象や目的を変更するものではない。

したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項3は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正であり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4について

ア 訂正の目的について

訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項2又は3の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした(引用請求項の削減)上で、請求項2を引用するものについての請求項間の引用関係を解消するための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項4は、訂正前の請求項4が引用していた請求項2の引用を削除したものであり、当該訂正により訂正前の請求項4に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項4に記載された発明の対象や目的を変更するものではない。

したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項4は、上記アのとおり引用請求項数を削減したことで、訂正前の請求項4の記載を減縮するものであるから、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項5について

ア 訂正の目的について

訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項2乃至4の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした(引用請求項の削減)上で、請求項2を引用するものについての請求項間の引用関係を解消するための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項5は、訂正前の請求項5が引用していた請求項2の引用を削除したものであり、当該訂正により訂正前の請求項5に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項5に記載された発明の対象や目的を変更するものではない。

したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項5は、上記アのとおり引用請求項数を削減したことで、訂正前の請求項5の記載を減縮するものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(6)訂正事項6について

ア 訂正の目的について

訂正事項6は、訂正前の請求項7が請求項1乃至6の記載を引用する記載であるところ、請求項1及び2を引用しないものとした(引用請求項の削減)上で、請求項1又は2を引用するものについての請求項間の引用関係を解消するための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項6は、訂正前の請求項7が引用していた請求項1及び2の引用を削除したものであり、当該訂正により訂正前の請求項7に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項7に記載された発明の対象や目的を変更するものではない。

したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項6は、上記アのとおり引用請求項数を削減したことで、訂正前の請求項7の記載を減縮するものであるから、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(7)訂正事項7について

訂正事項7は、訂正事項3に係る訂正により、特許請求の範囲の訂正を行った結果、記載表現が一致しなくなった本件明細書等の【0006】の記載を、訂正後の請求項3の記載に整合させるために行う訂正である。

よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

また、上記(3)の検討をふまえると、訂正事項7に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び6項の規定に適合する。

3 独立特許要件について

本件においては、訂正前の全ての請求項1~8について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

4 小括

以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。

第3 訂正後の特許発明

上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明8」という。符号「A」等は、分説のため当審で付した。以下「A」等が付された事項を「特定事項A」等という。)。)。

「【請求項1】(削除)

【請求項2】(削除)

【請求項3】

A 対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、前記対象物において、指示に対応する制御を行う対象物制御装置(10)であって、

B 前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)と、

C 前記送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、

D 前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、

F 前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する前記情報端末の位置を判定する位置判定部(16)と、を備え、

E 前記ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、前記対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いられ、

G 前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置が前記対象物に対して所定範囲内である場合に、前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、対象物制御装置。

【請求項4】

前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準とするエリア内において、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、請求項3に記載の対象物制御装置。

【請求項5】

前記送受信部は、電波が受信された際に、受信電波に応じた受信信号を一時的に保持する受信バッファ(14)を備える、請求項3又は4に記載の対象物制御装置。

【請求項6】

前記受信バッファは、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置が前記対象物に対して所定範囲内となったことに応じて、受信信号の一時的な保持を実行する、請求項5に記載の対象物制御装置。

【請求項7】

前記対象物は、車両であって、

ユーザによって実行指示される制御は、車両ドアの解錠、車両ドアの開扉、車両トランクの解錠、車両トランクの開扉、及び車両に搭載された車載装置の動作開始の少なくとも1つである、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の対象物制御装置。

【請求項8】

前記送受信部は、電波を介して信号を送受信するために、車両の外周近傍に設けられた複数のアンテナを有する、請求項7に記載の対象物制御装置。」

第4 特許異議申立理由の概要、証拠方法及び取消理由通知において通知した取消理由の概要

1 特許異議申立理由の概要

申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として下記2に示す甲号証を提出している。

(1)特許法第29条第1項第3号について (同法第113条第2号)

本件特許発明1~3、5、7~8は、その出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明と同一のものである。

したがって、本件特許発明1~3、5、7~8は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(2)特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)

本件特許発明4、6は、その出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 証拠方法

(1)甲第1号証:独国特許出願公開第102019214496号明細書

(2)甲第2号証:特表2022-549287号公報

(以下、「甲1」等ということがある。)

なお、甲2は、甲1に係る特許出願を優先権主張の基礎とした、日本を指定国とした外国語国際特許出願の公表特許公報であり、甲1の記載事項の理解のために提出されたものである。

3 取消理由通知において通知した取消理由の概要

当審において令和7年6月25日付け取消理由通知(以下、単に「取消理由通知」という。)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(新規性)請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(進歩性)請求項1~8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

刊行物等:甲1 独国特許出願公開第102019214496号明細書

なお、取消理由通知書に記載した上記取消理由は、申立人が申し立てた理由と同趣旨であり、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

第5 証拠について

1 甲1について

(1)甲1の記載

甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。また、括弧書きの仮訳は、甲1における申立人が作成した訳文を参考に合議体が作成した。)。

37

116

0001435189000001.jpg

([0001] 本発明は、請求項1の一般項に記載の

車体に対する車両ドアの非接触調整システム

および車体に対する車両ドアの非接触調整方法に関する。)

89

116

0001435189000002.jpg

([0042]

システムは、通信装置、例えば無線キーや携帯電話などのモバイル装置と組み合わせることもでき

る。

[0043] 例えば、

通信装置が車両通信システムによって認識されると、

レーダーセンサシステムは、第2の動作モードに直接切り替えることができる。

無線キーなどの通信装置の検出に応じて、レーダーセンサシステムは、第1の動作モードで接近するユーザの検出とは無関係に、ジェスチャ認識を可能にするために第2の動作モードに切り替えることができる

。)

77

117

0001435189000003.jpg

([0054]

制御装置4は、調整装置2を制御するために使用され

る。

[0055]

車両ドア11上の検出領域EにおけるユーザUの接近を認識し、ユーザが車両ドア11の領域において所定のジェスチャ

、例えば足で蹴るジェスチャ(図2参照)

を行った場合、制御装置4を作動させて調整装置2を制御することにより、車両ドア11の調整、例えば車両ドア11の開放を開始するために、レーダーセンサシステム3を介して信号を検出することができる

。)

184

117

0001435189000004.jpg

([0057] 図4による

レーダーセンサシステム3は、

車両1の電源8、例えば車両バッテリに接続され、

送受信装置30と制御・ 評価装置31を備え

ている。

[0058]

送受信装置30は、

例えば、

検出領域Eにおいて信号T,Rを送受信するための所定の指向特性を有する例えばパッチアンテナの形態のアンテナ、並びに信号T,Rを送受信するための信号増幅及び信号フィルタリングのための電気回路を有することができ

る。特に、

送信信号Tは所定の周波数範囲で送信することができ、受信信号Rは送受信装置30を介して受信することができ

る。

[0059] レーダーセンサシステム3は、例えば、24GHz付近または77~81GHzの周波数範囲で動作し、異なるチャネルで信号Tを送受信 し、関連する受信信号Rを処理することができる。

[0060]

制御・評価ユニット31は、

例えば、

送信信号Tを変調し、受信信号Rを評価するために使用され、受信信号Rに基づいて、検出領域E内の物体の移動および位置に関する情報を導出

する。)

90

118

0001435189000005.jpg

41

118

0001435189000006.jpg

178

117

0001435189000007.jpg

([0062]

第1の動作モード32では、例えばドップラー周波数を用いて物体の動きを測定

することができる。したがって、図3に示すように、送信号Tを所定の周波数f1例えば79GHzで送信することができる。

移動する物体からの送信信号Tの反射に基づいて、受信信号R1,R2にいわゆるドップラーシフトが発生し、

受信信号R1,R2は送信信号Tに対して周波数差を持つようになる。例えば、半径方向に遠ざかる物体は、受信信号R2に周波数fD2を低下させる周波数シフトを引き起こす。これとは対象的に、

物体が近づくと、受信信号R1は周波数fD1が上昇する方向に周波数がシフト

する。(レーダーセンサシステム3に対する半径方向の)速度は、周波数シフ卜の大きさから決定することができるため、

レーダーセンサシステム3に対する物体の速度は、ドップラー周波数測定を使用して測定することができ

る。

[0063]

第1の動作モード32において、車両ドア11へのユーザUの接近が検出されると、レーダーセンサシステム3は、ジェスチャ検出が実行される第2の動作モード33に切り替わ

る。

[0064] 第1動作モード32では、エネルギー消費が低減される。これ は、例えば、

第1の動作モード32において低減された周波数で測定を実施

することによって達成することができ、さらに、空間分解能が制限され、レーダーセンサシステム3が例えば連続波レーダとして動作し、例えば速度情報のみが測定されるように動作モードUが簡略化される。

[0065]

一方、第2の動作モード33では、測定が高い時間分解能および空間分解能で実行されるため、

例えば、所定の空間範囲内で足Fを動かす

ユーザUによって実行されるジェスチャを十分な精度で認識することができ、そのようなジェスチャ認識に基づいて車両ドア11を移動させることができ

る。第2の動作モード33では、例えば測定周波数が増加し、周波数範囲も増加し、より複雑な信号処理が行われるため、必要なエネルギーが増加する。)

42

117

0001435189000008.jpg

([0082]

車両ドアは、テールゲート、車両サイドドア、ボンネット、(例えばピックアップトラックの)収納用カバー等とすることができる

。この種 の車両ドアは旋回可能であるが、移動できるように車体に配置することもできる。)

(2)甲1の認定事項

上記(1)には、「車体に対する車両ドアの非接触調整システム」([0001])について、「車両ドア11上の検出領域EにおけるユーザUの接近を認識し、ユーザが車両ドア11の領域において所定のジェスチャ」「を行った場合、制御装置4を作動させて調整装置2を制御することにより、車両ドア11の調整、例えば車両ドア11の開放を開始するために、レーダーセンサシステム3を介して信号を検出することができる」([0055])と記載されている。

これによれば、甲1に記載された「制御装置4」は、「レーダーセンサシステム3を介して信号を検出し、車両ドア11上の検出領域EにおけるユーザUの接近を認識し、ユーザが車両ドア11の領域において所定のジェスチャを行った場合、調整装置2を制御することにより、車両ドア11の調整、例えば車両ドア11の開放を開始するために作動する制御装置4」であり、甲1には、上記「制御装置4を備えた車体に対する車両ドアの非接触調整システム」が記載されていると認められる(認定事項)。

(3)甲1に記載された発明

上記(1)、(2)からみて、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(なお、「a」等の符号は、当審で分説の上、付した。以下、「a」等を付した事項を「構成a」等という。また、「車両」、「車両ドア」、「ユーザ」、「レーダーセンサシステム」、「第1の動作モード」、「第2の動作モード」を、それぞれ、「車両1」、「車両ドア11」、「ユーザU」、「レーダーセンサシステム3」、「第1の動作モード32」、「第2の動作モード33」とし、用語を統一した。)。

「a レーダーセンサシステム3を介して信号を検出し、車両ドア11上の検出領域EにおけるユーザUの接近を認識し、ユーザUが車両ドア11の領域において所定のジェスチャを行った場合、調整装置2を制御することにより、車両ドア11の調整、例えば車両ドア11の開放を開始するために作動する制御装置4を備えた、車体に対する車両ドア11の非接触調整システムであって(認定事項)、

b レーダーセンサシステム3は、送受信装置30と制御・評価装置31を備え([0057])、

送受信装置30は、検出領域Eにおいて信号T,Rを送受信するための所定の指向特性を有する例えばパッチアンテナの形態のアンテナ、並びに信号T,Rを送受信するための信号増幅及び信号フィルタリングのための電気回路を有することができ、送信信号Tは所定の周波数範囲で送信することができ、受信信号Rは送受信装置30を介して受信することができ([0058])、

制御・評価ユニット31は、送信信号Tを変調し、受信信号Rを評価するために使用され、受信信号Rに基づいて、検出領域E内の物体の移動および位置に関する情報を導出し([0060])、

移動する物体からの送信信号Tの反射に基づいて、受信信号R1,R2にいわゆるドップラーシフトが発生し、物体が近づくと、受信信号R1は周波数fD1が上昇する方向に周波数がシフトし、第1の動作モード32では、ドップラー周波数を用いて物体の動きを測定し、([0062])、

第1の動作モード32において、車両ドア11へのユーザUの接近が検出されると、レーダーセンサシステム3は、ジェスチャ検出が実行される第2の動作モード33に切り替わり([0063])、

第1の動作モード32において低減された周波数で測定を実施し([0064])、

一方、第2の動作モード33では、測定が高い時間分解能および空間分解能で実行されるため、ユーザUによって実行されるジェスチャを十分な精度で認識することができ、そのようなジェスチャ認識に基づいて車両ドア11を移動させることができ([0065])、

c システムは、通信装置、例えば無線キーや携帯電話などのモバイル装置と組み合わせることもでき([0042])、

通信装置が車両通信システムによって認識されると、無線キーなどの通信装置の検出に応じて、レーダーセンサシステム3は、第1の動作モードで接近するユーザの検出とは無関係に、ジェスチャ認識を可能にするために第2の動作モードに切り替えることができ([0043])、

d 車両ドア11は、テールゲート、車両サイドドア、ボンネット、(例えばピックアップトラックの)収納用カバー等とすることができる([0082])、

非接触調整システム([0001])。」

第6 取消理由通知に記載した取消理由についての検討

1 本件特許発明3(新規性、進歩性)

本件特許発明3と甲1発明とを対比・判断する。

(1)特定事項Aについて

甲1発明の「車両ドア11」、「ユーザU」は、それぞれ、本件特許発明3の「対象物」、「ユーザ」に相当する。

甲1発明(構成b)において、「レーダーセンサシステム3」は「ジェスチャ検出が実行される第2の動作モード33」で、「ユーザUによって実行されるジェスチャ」の「ジェスチャ認識に基づいて車両ドア11を移動させる」ところ、「ユーザUによって実行されるジェスチャ」は、「車両ドア11を移動させる」という制御の実行を指示するものといえるから、本件特許発明3の「ユーザによる制御の実行指示」に相当する。また、甲1発明において「ジェスチャ認識」すなわち「ジェスチャ検出」することは、本件特許発明3の「ユーザによる制御の実行指示を検出」することに相当する。

そして、甲1発明(構成a)において、「ユーザUが車両ドア11の領域において所定のジェスチャを行った場合、調整装置2を制御することにより、車両ドア11の調整、例えば車両ドア11の開放を開始するために作動する制御装置4を備えた」「非接触調整システム」を構築する装置は、上記の「ユーザによる制御の実行指示」についての検討を踏まえると、本件特許発明3の「対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、前記対象物において、指示に対応する制御を行う対象物制御装置(10)」に相当する。

したがって、甲1発明は、本件特許発明3の特定事項Aに相当する事項を備える。

(2)特定事項B、Cについて

ア 本件特許発明3の「送受信部(12~15)」の意味するものについて

本件特許発明3の「送受信部(12~15)」について、発明の詳細な説明には、次のように記載されている。

「【0023】

なお、図1には、車両制御装置10内に、1組の信号送信部12及びアンテナ13だけが図示されている。しかし、実際には、情報端末20の位置を検出するなどのために、信号送信部12およびアンテナ13は、後述する受信バッファ14及び信号受信部15とともに、車両の各ドアの近傍、車両のトランクの近傍、あるいは車両の四隅など、車両の複数箇所に設けられている。

信号送信部12,アンテナ13、受信バッファ14、および信号受信部15が、請求の範囲における送受信部に相当する

。」

そうすると、本件特許発明3の「送受信部(12~15)」は、発明の詳細な説明の記載によれば、単一の部分からなる「送受信部」を意味するのではなく、「信号送信部12」、「アンテナ13」や「信号受信部15」といった複数の部分からなるものを意味すると解するのが相当である。

イ 甲1発明(構成c)の「通信装置、例えば無線キーや携帯電話などのモバイル装置」は、本件特許発明3の「ユーザが携帯する情報端末(20)」に相当する。

甲1発明における上記「無線キーや携帯電話などのモバイル装置」といった「通信装置」と通信する「車両通信システム」は、当該「通信装置」との間で電波を介して信号を送受信し、そのための送受信部を備えることが技術常識であるから、甲1発明の「車両通信システム」は、本件特許発明3の「前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)」に相当する構成を含むと理解される。

ウ 甲1発明(構成b)において、「レーダーセンサシステム3」の「送受信装置30は、検出領域Eにおいて信号T,Rを送受信するための」「アンテナ」を有し、「移動する物体からの送信信号Tの反射に基づいて」、「第1の動作モード32では、ドップラー周波数を用いて物体の動きを測定し」、「物体からの送信信号Tの反射に基づいて」「受信信号R1」が「周波数fD1が上昇する方向に周波数がシフト」することで物体の接近を検出する、すなわち、ユーザUの体からの送信信号Tの反射電波に基づいて「車両ドア11へのユーザUの接近」を「検出」すると理解されるところ、甲1発明の「送受信装置30」は、本件特許発明3の「送受信部」と、「送信した電波がユーザの体で反射した反射電波」を「受信可能」な点で共通する。

エ 上記アの理解を踏まえると、上記イ、ウから、甲1発明の「通信システム」の送受信部と「送受信装置30」を合わせた部分は、本件特許発明3の「送受信部」に相当し、甲1発明は、本件特許発明3の特定事項Bの「前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部」、及び、特定事項Cの「前記送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能」に相当する事項を備える。

したがって、甲1発明は、本件特許発明3の特定事項B及びCに相当する事項を備える。

(3)特定事項Dについて

甲1発明(構成b)において、上記(2)ウのユーザUの体で反射した反射電波についての検討を踏まえると、「物体からの送信信号Tの反射」による電波は、本件特許発明3の特定事項Dの「前記反射電波」に相当する。また、甲1発明の「所定の」「ジェスチャ」は、本件特許発明3の「所定のジェスチャ」に相当する。

そして、甲1発明は、(ジェスチャ検出が実行される)「第2の動作モード33」においても、ユーザの体で反射した反射電波が用いられるものと理解されるから、甲1発明における「レーダーセンサシステム3」の「ジェスチャ検出」を行う部分は、本件特許発明3の「前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)」に相当する。

したがって、甲1発明は、本件特許発明3の特定事項Dに相当する事項を備える。

(4)特定事項Fについて

甲1発明(構成c)において、「通信装置が車両通信システムによって認識されると」、「ジェスチャ認識を可能にするために第2の動作モードに切り替える」とされているところ、上記の「通信装置」が認識されることは、「情報端末」の位置が、当該「情報端末」を携帯する「ユーザU」が「ユーザUが車両ドア11の領域」(構成a)にある場合と理解される。

また、上記の「通信装置」が認識されることは、「車両通信システム」の「送受信部」と「情報端末」との間で送受信した「送受信結果」に基づいてなされることが明らかであり、かつ、上記「送受信結果」を通じて甲1発明は、冒頭で述べた、「情報端末」の位置が、当該「情報端末」を携帯する「ユーザU」が「ユーザUが車両ドア11の領域」にあることを検知している、すなわち、「前記対象物に対する前記情報端末」がある領域にあることを「判定」しているということができる。

そうすると、甲1発明の「通信装置が車両通信システムによって認識」される装置と、本件特許発明3の特定事項Fの「前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する前記情報端末の位置を判定する位置判定部(16)」とは、「前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する前記情報端末」の場所について「判定する」部分を備える点で共通する。

(5)特定事項Eについて

上記(1)の「ユーザによる制御の実行指示」、「対象物制御装置(10)」についての検討、及び、上記(3)の「ジェスチャ検出部」についての検討を踏まえると、甲1発明(構成a)の「制御装置4を備えた」「非接触調整システム」は、本件特許発明3の「対象物制御装置」と、「前記ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、前記対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いられる」点でも共通する。

したがって、甲1発明は、本件特許発明3の特定事項Eに相当する事項を備える。

(6)特定事項Gについて

上記(4)で検討したように、甲1発明(構成c)における「通信装置」の認識は、「情報端末」の位置が、当該「情報端末」を携帯する「ユーザU」が「ユーザUが車両ドア11の領域」(構成a)にある場合になされる、すなわち、「ユーザU」に携帯される「情報端末の位置が前記対象物に対して所定範囲内である場合」になされると理解される。

そうすると、上記(1)の「対象物制御装置(10)」についての検討、上記(3)の「ジェスチャ検出部(18)」についての検討、上記(4)の「位置判定部(16)」についての検討を踏まえると、甲1発明の「非接触調整システム」を構築する装置と、本件特許発明3の特定事項Gの「前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置が前記対象物に対して所定範囲内である場合に、前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、対象物制御装置」とは、「前記ジェスチャ検出部は」前記「判定された情報端末」が「前記対象物に対して所定範囲内である場合に、前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、対象物制御装置」の点で共通する。

(7)一致点・相違点

以上のことから、本件特許発明3と甲1発明は、

「A 対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示を検出して、前記対象物において、指示に対応する制御を行う対象物制御装置(10)であって、

B 前記対象物に設けられ、ユーザが携帯する情報端末(20)との間で、電波を介して信号を送受信する送受信部(12~15)と、

C 前記送受信部は、送信した電波がユーザの体で反射した反射電波も受信可能であり、

D 前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出するジェスチャ検出部(18)と、

F’前記送受信部が前記情報端末との間で送受信した送受信結果に基づいて、前記対象物に対する前記情報端末の場所について判定する部分と、を備え、

E 前記ジェスチャ検出部によるユーザが所定のジェスチャを行ったことの検出が、前記対象物に対する、ユーザによる制御の実行指示の検出として用いられ、

G’前記ジェスチャ検出部は、前記判定された情報端末が前記対象物に対して所定範囲内である場合に、前記反射電波に基づいて、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、対象物制御装置。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](特定事項F)

「前記対象物に対する前記情報端末」の場所について「判定する」部分について、本件特許発明3は、「前記対象物に対する前記情報端末の位置を判定する位置判定部」であるのに対し、甲1発明は、「前記対象物に対する前記情報端末」の場所が、ある領域にあることを判定するものであり、「位置を判定する位置判定部」ではない点。

[相違点2](特定事項G)

「ジェスチャ検出部」が「ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する」場合の「情報端末の位置」について、本件特許発明3は、「前記位置判定部によって判定された情報端末の位置」であるのに対し、甲1発明は、「判定された情報端末の位置」であるものの、「前記位置判定部によって判定された」ものとまでは特定されていない点。

(8)相違点について当審の判断

相違点1(特定事項F)について

ア 上記(4)に記載したように、甲1発明は、「情報端末」の位置が、当該「情報端末」を携帯する「ユーザU」が「ユーザUが車両ドア11の領域」にあることを検知する、すなわち、「前記対象物に対する前記情報端末」がある領域にあることを「判定」するものである。

イ 一方、本件特許発明3の「位置判定部」は、「前記対象物に対する前記情報端末の位置を判定する」ものである。

ここで、本件特許発明3の「前記対象物に対する前記情報端末の位置」について、本件明細書等の【0029】、【0048】及び請求項4には、次のように記載されている。

・「【0029】

位置判定部16は、車両の複数箇所に設けられた複数の信号受信部15から、情報端末20との間で送受信される電波信号の伝播時間及び/又は到来方向を受け取り、それら複数の伝播時間及び/又は到来方向に基づいて、情報端末20の位置を取得する。例えば、位置判定部16は、情報端末20との間で送受信される電波信号の伝播時間に基づいて、車両の各所に設けられた各々のアンテナ13から情報端末20までの距離を算出する。このように、

複数のアンテナ13から情報端末20までの距離が算出できれば、いわゆる三辺測量法などにより、車両に対する情報端末20の位置を求めることができる

。あるいは、

位置判定部16は、情報端末20から送信される電波信号の複数のアンテナ13の各々への到来方向に基づいて、いわゆる三角測量法などにより、車両に対する情報端末20の位置を求めることも可能である

。」

・【0048】

ステップS130において、解錠制御部11は、車両に接近している情報端末20から無線通信を通じて認証用データを取得するとともに、

取得した認証用データに基づいて、情報端末20の認証の可否を判定する

さらに、位置判定部16は、情報端末20との間で送受信される電波信号の伝播時間及び/又は情報端末20から送信された電波信号の到来方向に基づいて、情報端末20の位置を検出する

・「【請求項4】

前記ジェスチャ検出部は、前記位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準とするエリア内において、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する、請求項3に記載の対象物制御装置。」

ウ 上記【0029】の記載から、車両に対する情報端末20の位置は、三辺測量法あるいはる三角測量法などにより求められるもの、すなわち、情報端末20が存在する特定の一点を意味するものと理解される。

このことは、上記【0048】において、情報端末20の認証と位置の検出が区別されていること、及び、請求項4において、「前記位置判定部によって判定された情報端末の位置を基準とするエリア内において、ユーザが所定のジェスチャを行ったことを検出する」ときに、基準となる「情報端末の位置」は、範囲(対象物に対して所定範囲内)で規定されるべきものではなく、当該「情報端末の位置を基準とするエリア」内であるか否かを把握するために、特定の一点で規定されることが必要であることとも、整合する。

エ そうすると、甲1発明は、「情報端末」の位置が、当該「情報端末」を携帯する「ユーザU」が「ユーザUが車両ドア11の領域」にあることを検知するものでるから、甲1発明には、上記ウの意味における、本件特許発明3の特定事項Fの「前記対象物に対する前記情報端末の位置を判定する位置判定部」について記載されておらず、また、示唆もされていない。

そして、本件特許発明3は、「前記対象物に対する前記情報端末の位置を判定する位置判定部」を備えることにより、情報端末を携帯しないユーザによるジェスチャを誤って検出する誤検出を防止することができる効果を奏する。

したがって、甲1発明に基づいて、上記相違点1に係る本件特許発明3の構成に到達することが、当業者にとって容易であるとはいえない。

オ 相違点1(特定事項F)に係る点についての申立人の主張について

(ア)申立人は、本件訂正請求がなされた後、令和7年11月27日に提出した意見書の「3 意見の内容 (5)「位置判定部」に係る構成について」において、相違点1(特定事項F)に係る「位置判定部(16)」について、甲1発明には「・・・通信装置が車両通信システムによって認識されると・・・・」([0043])及び「・・・車両通信システムの受信領域で通信装置が認識され、ユーザが認証されると・・・」([0045])と記載され、車両通信システムの受信領域において通信装置を認識して、ユーザの認証をしていることから、車両通信システムは、通信装置が受信領域に位置していることの判定を行っている、若しくは、判定が実質的に可能であることは明白であると理解できる旨主張している。

(イ)しかしながら、上記ウで述べたとおり、本件特許発明3の特定事項Fの「位置判定部」において、車両に対する情報端末20の位置は、情報端末20が存在する特定の一点を意味するものと理解されるところ、甲1発明は、「情報端末」を携帯する「ユーザU」が「ユーザUが車両ドア11の領域」にあることを検知するものであって、甲1発明には、上記の意味における「前記対象物に対する前記情報端末の位置を判定する位置判定部」は記載されておらず、また、示唆もされていないから、甲1発明から上記相違点1(特定事項F)に係る構成に到達することが、当業者にとって容易であるとはいえない。

よって、請求人の上記主張は採用できない。

(9)小括

したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものではない。

2 本件特許発明4~8(新規性、進歩性)

本件特許発明4~8は、本件特許発明3を引用するものであり、本件特許発明3と同様の構成を有するから、甲1発明とは、少なくとも上記相違点1で相違する。

そして、上記相違点1は、上記1(8)において検討したとおりである。

よって、本件特許発明4~8は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて、当業者が容易になし得たものではない。

第7 むすび

以上のとおり、本件特許発明3~8に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。

また、他に本件特許発明3~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。