sokuhyo

Trademark Appeal Case

特許異議訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700619
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7605239号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7605239号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7605239号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許は、令和5年4月6日を出願日とする特願2023-62220号に係る特許であって、令和6年12月16日に特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行されたものである。

その後、その特許に対し、令和7年6月12日に特許異議申立人 大森 隆一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~5(全請求項))がされたものである。

以降の手続は以下のとおりである。

令和7年 8月28日付け 取消理由通知

同年10月23日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)

同年11月 7日付け 訂正請求があった旨の通知

同年12月 2日 意見書の提出(申立人)

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

令和7年10月23日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7605239号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものであって、その内容は以下のとおりである。

<訂正事項1>

特許請求の範囲の請求項1に「ゴム質重合体(a1)30~80質量%」と記載されているのを「ゴム質重合体(a1)

35

~80質量%」と訂正する。

<訂正事項2>

特許請求の範囲の請求項1に「ビニル系単量体混合物(a2)20~70質量%」と記載されているのを「ビニル系単量体混合物(a2)20~

65

質量%」と訂正する。

<訂正事項3>

特許請求の範囲の請求項1に「ゴム含有グラフト共重合体(A)10~50質量部」と記載されているのを「ゴム含有グラフト共重合体(A)10~

45

質量部」と訂正する。

<訂正事項4>

特許請求の範囲の請求項1に「その他の樹脂50~90質量部」と記載されているのを「その他の樹脂

55

~90質量部」と訂正する。

なお、訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の目的の適否についての判断

(1)訂正事項1

訂正事項1は、請求項1の「ゴム質重合体(a1)30~80質量%」との発明特定事項を、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0022】に「ゴム質重合体(a1)の割合は、好ましくは35~70質量%」と記載されていることに基づいて、「ゴム質重合体(a1)35~80質量%」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。

(2)訂正事項2

訂正事項2は、請求項1の「ビニル系単量体混合物(a2)20~70質量%」との発明特定事項を、本件明細書の【0022】に「ビニル系単量体混合物(a2)の割合は好ましくは30~65質量%」と記載されていることに基づいて、「ビニル系単量体混合物(a2)20~65質量%」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。

(3)訂正事項3

訂正事項3は、請求項1の「ゴム含有グラフト共重合体(A)10~50質量部」との発明特定事項を、本件明細書の【0029】に「本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分(A)とその他の樹脂よりなる樹脂成分の合計100質量部中の成分(A)の含有量は、10~50質量部であり、好ましくは12~45質量部」と記載されていることに基づいて、「ゴム含有グラフト共重合体(A)10~45質量部」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。

(4)訂正事項4

訂正事項4は、請求項1の「その他の樹脂50~90質量部」との発明特定事項を、本件明細書の【0032】に「本発明の熱可塑性樹脂組成物において、成分(A)とその他の樹脂よりなる樹脂成分の合計100質量部中のその他の樹脂の含有量は、50~90質量部であり、好ましくは55~88質量部」と記載されていることに基づいて、「その他の樹脂55~90質量部」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。

(5)独立特許要件について

本件においては、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~4につき、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

3 訂正についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認める。

第3 本件発明について

上記第2のとおり、本件訂正が認められたため、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】

樹脂成分100質量部中に、

ゴム質重合体(a1)35~80質量%に、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a2)20~65質量%(ただし、ゴム質重合体(a1)とビニル系単量体混合物(a2)の合計を100質量%とする。)をグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10~45質量部と、

その他の樹脂55~90質量部とを含むめっき用熱可塑性樹脂組成物であって、

該めっき用熱可塑性樹脂組成物に含まれるアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が、全アセトン可溶分中の20~40質量%であり、

該めっき用熱可塑性樹脂組成物中の金属酸化物(D)の含有量が0ppmを超えて4500ppm以下であることを特徴とするめっき用熱可塑性樹脂組成物。

【請求項2】

前記その他の樹脂として、AS系樹脂(B)および/又は芳香族ポリカーボネート樹脂(C)を含む請求項1に記載のめっき用熱可塑性樹脂組成物。

【請求項3】

前記その他の樹脂として、リサイクルされた樹脂(E)を含む請求項1に記載のめっき用熱可塑性樹脂組成物。

【請求項4】

請求項1ないし3のいずれかに記載のめっき用熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。

【請求項5】

請求項4に記載の樹脂成形品の一部または全体に、めっきが施されためっき部品。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由、取消理由の概要、証拠方法

1 申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要

申立書に記載された申立理由は、以下のとおりである。

(1)申立理由1

本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4、5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2~4号証に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由2

本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 取消理由通知書に記載した取消理由の概要

令和7年8月28日付けの取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。

(1)取消理由1

本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4、5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)取消理由2

本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 申立人が申立書に添付して提出した証拠方法

・甲第1号証:特表2022-552971号公報

・甲第2号証:特開2019-19282号公報

・甲第3号証:特開2001-302872号公報

・甲第4号証:特開2010-126631号公報

第5 当審の判断

1 取消理由1(甲第1号証に基づく新規性欠如)、取消理由2(甲第1号証に基づく進歩性欠如)、申立理由1(甲第1号証に基づく新規性、進歩性欠如)について

取消理由1、取消理由2、申立理由1は、いずれも、甲第1号証に基づくものであるから、これらについてまとめて判断する。

(1)甲第1号証の記載事項

甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】

無電解めっき用組成物であって、

9~29重量パーセント、好ましくは9.7~29重量パーセント、より好ましくは10~29重量パーセントの第1のグラフトゴム共重合体であって、重合した形態の少なくとも1種の共役ジエン単量体を含む骨格と、骨格にグラフトされた、モノビニル芳香族単量体、アクリル単量体、およびそれらの組み合わせから選択される重合した形態の少なくとも1種の単量体とを有し、好ましくは、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンゴムを含む、第1のグラフトゴム共重合体、

70~90重量パーセント、好ましくは70~89.7重量パーセント、より好ましくは70~85重量パーセントのグラフトされていないスチレン重合体であって、好ましくはポリ(スチレンアクリロニトリル)を含む、グラフトされていないスチレン重合体、

0.1~10重量パーセントの、100~500nmの粒径を有するコア/シェル型ジエン系ゴム、

0.1~5重量パーセントの総量の、安定剤および/または酸化防止剤の1種以上、

0.1~2重量パーセントの量の脂肪酸または脂肪酸の塩であって、好ましくは8~36個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪酸の塩、

0~5重量パーセントの離型剤、好ましくは8~80個の炭素原子を有するカルボン酸アミドまたはカルボン酸エステル、

0~1重量パーセントの金属酸化物、好ましくは酸化マグネシウム、酸化亜鉛、または酸化カルシウム、より好ましくは酸化マグネシウム、

0~3重量パーセントの滑剤、好ましくはシリコーン油、

0~20重量パーセントのポリカーボネート、好ましくは0~10重量パーセントの前記ポリカーボネート、より好ましくは0~5重量パーセントの前記ポリカーボネート、さらにより好ましくは0~1重量パーセントの前記ポリカーボネート、最も好ましくは0重量パーセントの前記ポリカーボネートを含み、

重量パーセントおよびppmが前記組成物の総重量に基づくものである、無電解めっき用組成物。」

「【請求項10】

表面を有する形状に形成された、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を含む物品であって、前記表面の一部分の上に金属コーティングが無電解めっきされた物品。

【請求項11】

ASTM B533-85による金属層剥離強さが1401~3502N/mであること;

前記物品が、-40°Cの環境に1時間置かれ、次いで93°Cの環境に1時間置かれ、前記環境間が2分以内であるというサイクルに、金属コーティングの目に見える層間剥離、気泡、亀裂、または欠陥を有することなく6サイクルより多く耐えること;の1つ以上によって特徴付けられる、請求項10に記載の物品。

【請求項12】

前記金属コーティングが、前記組成物の表面から開始して順にニッケル層およびクロム層を含む、請求項10または11に記載の物品。

【請求項13】

自動車の構成部品である、請求項10~12のいずれか一項に記載の物品。

【請求項14】

前記組成物をある形状に形成すること、前記形状を酸化酸でエッチングすること、および前記形成され、エッチングされた組成物の一部分の上に1種以上の金属を無電解めっきすることを含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の物品を作製するための方法。」

「【0014】

グラフト共重合体の調製において、高分子骨格(例えば、共役ジエン単量体ならびに任意選択のモノビニル芳香族共重合用単量体および/またはアクリル共重合用単量体から誘導されたもの)は、グラフト共重合体組成物の総重量の少なくとも15重量パーセント、または少なくとも20重量パーセント、65重量パーセントまで、または60重量パーセントまで、または50重量パーセントまでを構成することができる。例えば、グラフト共重合体組成物は、グラフト共重合体組成物の総重量に基づいて15~65重量パーセント、または15~60重量パーセント、または15~50重量パーセント、または20~65重量パーセント、または20~60重量パーセント、または20~50重量パーセントの、共役ジエン単量体から誘導される高分子骨格を含むことができる。スチレンおよびアクリロニトリルによって例示される、高分子骨格の存在下で重合させた単量体は、総グラフト重合体組成物の総重量に基づいて35重量パーセントから、または40重量パーセントから、または50重量パーセントから、85重量パーセントまで、または80重量パーセントまでを構成することができる。例えば、グラフト共重合体組成物は、35~85重量パーセント、または40~90重量パーセントの、モノビニル芳香族単量体およびアクリル単量体から選択される1種以上の共重合用単量体を含むことができる。グラフト重合体組成物の、アクリロニトリルによって例示されるアクリル単量体は、総グラフト共重合体組成物5重量%~40重量%を構成することができる。スチレンによって例示されるモノビニル芳香族炭化水素は、総グラフト共重合体の10~70重量を構成することができる。」

「【0033】

スチレン共重合体に存在する共重合用単量体(複数可)の量は変動し得る。・・・10~50重量パーセントの重合した共重合用単量体(アクリロニトリルによって例示される)を含むことができる。」

「【0048】

・・・ある特定の金属酸化物を使用して、脂肪酸またはそれらの塩およびある特定の他の滑剤または可塑剤のジューシング(すなわち、金型上への沈着)を最小限に抑えるのを助けることができる。そのような金属酸化物の例として、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、および酸化亜鉛(ZnO)が挙げられる。・・・金属酸化物は、組成物の総重量に基づいて0重量パーセントから、または0.1重量パーセントから、1重量パーセントまで、または0.5重量パーセントまで、例えば0.1~1重量パーセントの範囲内で使用することができる。」

「【0050】

本明細書に開示する組成物は、組成物の総重量に基づいて20重量パーセント未満、または10重量パーセント未満、または5重量パーセント未満、または3重量パーセント未満、または1重量パーセント未満のポリカーボネートを含有することができる。組成物は、ポリカーボネートを含まなくてもよい(すなわち、ポリカーボネートを含有しなくてもよい)。」

「【実施例】

【0072】

以 下の材料を実施例に使用した:

・スチレン/アクリロニトリル(SAN) - スチレン72wt%/アクリロニトリル28wt%、重量平均分子量(Mw)150,000g/mol、数平均分子量(Mn)70,000g/mol。Galata ChemicalsからBlendex(商標)576として市販されている。

・アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物 - アクリロニトリル21部、ブタジエン31部、スチレン46部、メタクリル酸メチル2部。ABSゴムは、不溶性のグラフトされたゴム部分と、グラフトされていない硬質のSAN部分とを含む。グラフトされたSAN/ゴム=グラフトゴム組成物の52wt%。グラフトされていない(硬質抽出性)SANは、ABSグラフトゴム組成物の48重量パーセントを構成し、重量平均分子量(Mw)=120,000g/mol、および数平均分子量(Mn)=35,000g/molを有する。MwおよびMnは、ポリスチレン標準を使用してGPCによって決定した。ゴム粒径は300nmであり、粒径分布は広い。該ABSグラフトゴムは、ABSゴムの重量で6300ppmの獣脂脂肪酸(TFA)を含む。TFAは、ミリスチン酸、リノール酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、およびステアリン酸を含む飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の混合物である。

・メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン(MBS)コアシェルゴム - メタクリル酸メチル13部/ブタジエン68部/スチレン17部 - 粒径175nm。TheDow Chemical Co.からParaloid EXL2961Aとして市販されている。

・エチレンビス-ステアロアミド、MW 539g/mol、融点(MP) 145°C。

・ステアリン酸マグネシウム、Mw 697g/mol、MP 155°C。

・安定剤としてのペンタエリスリトールジホスファイト、MW 605g/mol。MP 175°C。Addivant Co.からUltranox 626として市販されている。

・ヒンダードフェノール酸化防止剤。OmnovaからのWingstay L。MW650g/mo。MP 118°C。

・ジメチルシロキサン重合体 - 1000センチポアズ粘度(Momentive)。

・酸化マグネシウム(MgO) 390ppm。粒径 1マイクロメートル未満。表面積 160~200平方メートル/グラム、粒子の99%が325メッシュを通過する。

・カーボンブラック 顔料グレード、0.035wt%。

【0073】

成分は、ペイントシェーカー内で以降の表1に示す重量部の量で合わせ、次いで約400rpmの共回転式二軸スクリュー押出機で真空をかけながら180~250°Cでペレットに押出した。組成物のペレットを、220°Cでのメルトフローレート(MFR)について評価した。ペレットについて試験部品を射出成形した。ペレットは95°Cで2時間乾燥させ、25秒のサイクルタイムで220~250°Cで成形した。上述ならびに表2および3の試験方法に従って、アイゾッド衝撃、引張り係数および(降伏)強さ、加熱撓み温度(HDT)、熱膨張係数(CTE)を測定した。試料は、試験前に少なくとも2日間、相対湿度50%、23°Cで状態調節した。

【0074】

物品は、実質的に以下のプロセスに従って無電解めっきし、各薬浴の間に槽のエアレーションおよび主に水での部分的なすすぎ洗浄を行う:

・Trimax LSAC 349中での10分間の浸漬洗浄、

・159°FおよびpH<10での10分間のクロム硫酸エッチング、

・六価クロムを低減させるための1分間のAdhemax Neutralizer CR

・HCl濃度を維持するための1分間の事前活性化

・プラスチック表面上にPdの核を形成するための4分間のAdhemax Activator SF

・Pdの吸着を加速するための2分間のAdhemax Accelerator

・無電解ニッケルを沈着させるための10分間のAdhemax EN

・無電解銅層を付加するための2分間のCopper Immersion

・2~3マイクロメートルの銅層を付加するための電解銅ストライク

・追加の金属層のための標準的な電気めっきプロセス。

【0075】

次いで、射出成形された3次元の試料板を上記のように金属化し、上述の熱サイクル試験に従って熱衝撃について試験した。射出成形した平らな試料板は、上記のように金属化した。熱サイクル試験に使用した試料については、電気めっきによって(すなわち、電解コーティングして)以下の金属層を付加した:25~40マイクロメートルの銅、半光沢ニッケル(10~15マイクロメートル)、光沢ニッケル(8~15マイクロメートル)、ミクロポーラスニッケル(0.5~3.0マイクロメートル)、およびクロム(0.25マイクロメートル)。着性試験については、電気めっきした(すなわち、電解コーティングした)金属は、40~80マイクロメートルの銅層であった。接着性は、剥離強さの試験方法ASTM B533-85によって決定した。表2に見られるように、MBSコアシェル型ゴムを含む試料1および2は、6サイクルで破損した1種類のゴムのみを有する比較試料Aと比較すると、破損するまで約2倍(11および12サイクル)の熱衝撃サイクルに耐える。

【表1】

142

147

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(2)甲第1号証に記載された発明

上記(1)に示した甲第1号証の記載事項のうち、特に、請求項1と【0072】、【0073】、表1を参照し、酸化マグネシウムについては、表1には記載されていないものの、実施例に使用した各成分の説明として、【0072】に配合量(390ppm)とともに記載されていることを勘案の上、実施例1に着目すると、甲第1号証には以下の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)。から、当該配合量で配合されているものと認められる。

「以下の成分をペイントシェーカー内で合わせ、次いで約400rpmの共回転式二軸スクリュー押出機で真空を掛けながら180~250°Cでペレットに押出した無電解めっき用組成物。

・スチレン/アクリロニトリル(スチレン72wt%/アクリロニトリル28wt%、重量平均分子量(Mw)150,000g/mol、数平均分子量(Mn)70,000g/mol。Galata ChemicalsからBlendex(商標)576として市販されている。)を48.0重量部

・アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物(アクリロニトリル21部、ブタジエン31部、スチレン46部、メタクリル酸メチル2部。ABSゴムは、不溶性のグラフトされたゴム部分と、グラフトされていない硬質のSAN部分とを含む。グラフトされたSAN/ゴム=グラフトゴム組成物の52wt%。グラフトされていない(硬質抽出性)SANは、ABSグラフトゴム組成物の48重量パーセントを構成し、重量平均分子量(Mw)=120,000g/mol、および数平均分子量(Mn)=35,000g/molを有する。MwおよびMnは、ポリスチレン標準を使用してGPCによって決定した。ゴム粒径は300nmであり、粒径分布は広い。該ABSグラフトゴムは、ABSゴムの重量で6300ppmの獣脂脂肪酸(TFA)を含む。TFAは、ミリスチン酸、リノール酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、およびステアリン酸を含む飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の混合物である。)を48.5重量部

・メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン(MBS)コアシェルゴム(メタクリル酸メチル13部/ブタジエン68部/スチレン17部 - 粒径175nm。TheDow Chemical Co.からParaloid EXL2961Aとして市販されている。)を3.5重量部

・エチレンビス-ステアロアミド(MW 539g/mol、融点(MP) 145°C。)を1.0重量部

・ステアリン酸マグネシウム(Mw 697g/mol、MP 155°C。)を0.3重量部

・安定剤としてのペンタエリスリトールジホスファイト(MW 605g/mol。MP175°C。Addivant Co.からUltranox 626として市販されている。)を0.1重量部

・ヒンダードフェノール酸化防止剤(OmnovaからのWingstay L。MW650g/mo。MP 118°C。)を0.1重量部

・ジメチルシロキサン重合体(1000センチポアズ粘度(Momentive)。)を0.2重量部

・酸化マグネシウム(MgO)(粒径 1マイクロメートル未満。表面積160~200平方メートル/グラム、粒子の99%が325メッシュを通過する。)を390ppm

・カーボンブラック(顔料グレード)を0.0345重量部」

(3)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「スチレン」、「アクリロニトリル」は、それぞれ、本件発明1の「芳香族ビニル系単量体」、「シアン化ビニル系単量体」に相当する。その上で、本件明細書の【0023】には「ゴム含有グラフト共重合体(A)は、ビニル系単量体混合物(a2)の全量がグラフトしている必要はなく、通常はグラフトしていない共重合体との混合物として得られたものを使用する。この混合物は本来、組成物であるが、本発明においては、ゴム含有グラフト共重合体(A)に含まれる。」と記載されていることから、甲1発明の「アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物(アクリロニトリル21部、ブタジエン31部、スチレン46部、メタクリル酸メチル2部。ABSゴムは、不溶性のグラフトされたゴム部分と、グラフトされていない硬質のSAN部分とを含む。グラフトされたSAN/ゴム=グラフトゴム組成物の52wt%。グラフトされていない(硬質抽出性)SANは、ABSグラフトゴム組成物の48重量パーセントを構成し、重量平均分子量(Mw)=120,000g/mol、および数平均分子量(Mn)=35,000g/molを有する。MwおよびMnは、ポリスチレン標準を使用してGPCによって決定した。ゴム粒径は300nmであり、粒径分布は広い。該ABSグラフトゴムは、ABSゴムの重量で6300ppmの獣脂脂肪酸(TFA)を含む。TFAは、ミリスチン酸、リノール酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、およびステアリン酸を含む飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の混合物である。)」は、本件発明1の「ゴム質重合体(a1)に、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a2)をグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)」に相当する。

(イ)また、甲1発明の「スチレン/アクリロニトリル(スチレン72wt%/アクリロニトリル28wt%、重量平均分子量(Mw)150,000g/mol、数平均分子量(Mn)70,000g/mol。Galata ChemicalsからBlendex(商標)576として市販されている。)」、「メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン(MBS)コアシェルゴム(メタクリル酸メチル13部/ブタジエン68部/スチレン17部 - 粒径175nm。TheDow Chemical Co.からParaloid EXL2961Aとして市販されている。)」、「ジメチルシロキサン重合体(1000センチポアズ粘度(Momentive)。)」は、本件発明1の「その他の樹脂」に相当する。

(ウ)さらに、甲1発明に含まれる樹脂成分はいずれも熱可塑性樹脂であるから、甲1発明の「無電解めっき用組成物」は、本件発明1の「めっき用熱可塑性樹脂組成物」に相当する。

(エ)加えて、甲1発明の「酸化マグネシウム(MgO)(粒径 1マイクロメートル未満。表面積160~200平方メートル/グラム、粒子の99%が325メッシュを通過する。)390ppm」は、本件発明1の「金属酸化物(D)の含有量が0ppmを超えて4500ppm以下」に相当する。

(オ)甲1発明はアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が明示されていない点について検討する。

a まず、甲1発明において、「アセトン可溶分」に該当するのは、「スチレン/アクリロニトリル」と「アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物のうちグラフトされていない硬質のSAN部分」である。

それぞれの含有量を計算すると、「スチレン/アクリロニトリル」は48.0重量部含まれる。また、「グラフトされていない(硬質抽出性)SANは、ABSグラフトゴム組成物の48重量パーセントを構成」することから、「アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物のうちグラフトされていない硬質のSAN部分」は48.5×0.48=23.3重量部含まれる。両者を合計すると、甲1発明における「アセトン可溶分」の含有量は71.3重量部となる。

b 次に、甲1発明において「アセトン可溶分」に含まれる「シアン化ビニル単量体成分」の含有量を計算する。

「スチレン/アクリロニトリル(スチレン72wt%/アクリロニトリル28wt%・・・)」であることから、「スチレン/アクリロニトリル」に含まれる「アクリロニトリル」の含有量は48.0×0.28=13.4重量部である。

c また、「アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物」を構成するモノマーは「アクリロニトリル21部、ブタジエン31部、スチレン46部、メタクリル酸メチル2部」であり、このうち、「ブタジエン」は全て「不溶性のグラフトされたゴム部分」に含まれ、それ以外の「アクリロニトリル21部、スチレン46部、メタクリル酸メチル2部」が「グラフトされていない硬質のSAN部分」を構成するから、「アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物のうちグラフトされていない硬質のSAN部分」に含まれる「アクリロニトリル」の含有量は、23.3×21/(21+46+2)=7.1重量部であると推認される。

d 以上より、甲1発明において「アセトン可溶分」に含まれる「シアン化ビニル単量体成分」は、13.4+7.1=20.5重量部含まれると計算される。

e そうすると、「アセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量」を計算すると、20.5÷71.3×100=28.8重量%となり、本件発明1の「20~40質量%」に一致する。

(カ)上記(ア)~(オ)より、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致する。

「ゴム質重合体(a1)に、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a2)をグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)と、

その他の樹脂とを含むめっき用熱可塑性樹脂組成物であって、

該めっき用熱可塑性樹脂組成物に含まれるアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が、全アセトン可溶分中の20~40質量%であり、

該めっき用熱可塑性樹脂組成物中の金属酸化物(D)の含有量が0ppmを超えて4500ppm以下であることを特徴とするめっき用熱可塑性樹脂組成物。」

(キ)そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点1> ゴム含有グラフト共重合体が、本件発明1は「ゴム質重合体(a1)35~80質量%に、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a2)20~65質量%(ただし、ゴム質重合体(a1)とビニル系単量体混合物(a2)の合計を100質量%とする。)をグラフト重合した」ものであるのに対し、甲1発明は「アクリロニトリル21部、ブタジエン31部、スチレン46部、メタクリル酸メチル2部を共重合」して得られたものである点

<相違点2> ゴム含有グラフト共重合体、及び、その他の樹脂の配合量が、本件発明1は「樹脂成分100質量部中、10~45質量部」、及び、「55~90質量部」であるのに対し、甲1発明は「樹脂成分100.2重量部中、48.5重量部」、及び、「51.7重量部」である点

<相違点3> 本件発明1は「めっき用熱可塑性樹脂組成物に含まれるアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が、全アセトン可溶分中の20~40質量%」であるのに対し、甲1発明はアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が明示されていない点

イ 検討

相違点1について検討する。

(ア)甲1発明における「アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物」を構成するモノマーは「アクリロニトリル21部、ブタジエン31部、スチレン46部、メタクリル酸メチル2部」であり、ポリブタジエン31重量部に対して、アクリロニトリル21部、スチレン46部、メタクリル酸メチル2部をグラフト重合したもの、つまり、ゴム質重合体31重量%に、スチレン、アクリロニトリルを含むビニル系単量体混合物を69重量%グラフト重合したものであると認められ、「ゴム質重合体(a1)35~80質量%に、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a2)20~65質量%(ただし、ゴム質重合体(a1)とビニル系単量体混合物(a2)の合計を100質量%とする。)をグラフト重合」することを要件とする本件発明1におけるゴム含有グラフト共重合体ではないから、相違点1は実質的な相違点である。

(イ)甲第1号証には、共役ジエン単量体から誘導される高分子骨格を20~65重量%、高分子骨格の存在下で重合させた単量体を80~35重量%などとすることが記載され(【0014】)、本件発明1の「ゴム質重合体(a1)30~80質量%」、「ビニル系単量体混合物(a2)20~65質量%」という数値範囲と重複する範囲が記載されている。

ここで、通常、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物を構成するモノマーの共重合割合を変更すれば、それに含まれるアセトン可溶分の割合や、アセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量は変化する蓋然性が高く、上記範囲内で共重合割合を変更したとしても、甲1発明のアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量は維持される、とはいえない。

また、甲第1号証には、組成物全体におけるアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量を所定範囲内のものとすることは記載も示唆もされていないから、上記(ア)~(エ)のとおり甲1発明が備える「めっき用熱可塑性樹脂組成物に含まれるアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が、全アセトン可溶分中の20~40質量%」という相違点3に係る構成を維持したまま、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)グラフトゴム組成物におけるブタジエンを31部から35~80部とし、アクリロニトリル等のビニル系単量体混合物の合計量を69部から65~20部へと変更する動機付けがあるともいえない。甲第2~4号証にも、そのような記載はない。

その上で、本件明細書の【0011】には、本件発明1により「熱可塑性樹脂組成物よりなる樹脂成形品に対して、めっき膜の厚さや形成箇所によらず、めっき膜の外観不良(特にブツ、めっきのムラ)がなく、めっき性に優れ、冷熱サイクル後でも、優れた外観及び高い密着強度のめっき膜を形成することが可能となる。」と記載され、実施例によりその効果が実証されているところ、甲第1号証には、めっき膜の外観等に関する記載はなく、当業者であっても、本件発明1の効果を予測し得たとは認められない。

ウ 小括

そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

なお、甲第1号証に記載された実施例2を引用発明としたとしても、本件発明1との間には、相違点1が実質的な相違点として存在し、上記と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)本件発明2~5について

本件発明2~5は、いずれも本件発明1を直接ないし間接的に引用した上で、さらにこれを特定するものであるから、上記(3)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)申立人の主張について

申立人は、本件発明1~5に対し、令和7年12月2日付け意見書において、以下の旨を主張している。

<主張1> 本件発明と甲第1号証に記載の発明とは、数値範囲が重複し、両者は一致する

<主張2> 本件発明における熱可塑性樹脂組成物は、甲第2号証の実施例1~6、8~16、甲第3号証の実施例1~29、甲第4号証の実施例1~12に例示される周知の樹脂組成物と一致し、周知の樹脂組成物により甲1発明を置き換えることは容易であり、本件発明の効果も周知の課題に関連するから予測可能なものである

ア 主張1について検討する。

令和7年12月2日付け意見書には、申立人が想定する甲第1号証に記載された発明は示されていないため、申立書(p.12~13)を参照すると、申立人は、甲第1号証に

「A 樹脂成分100質量部中に、ゴム質重合体(a1)30~80質量%に、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a2)20~70質量%(ただし、ゴム質重合体(a1)とビニル系単量体混合物(a2)の合計を100質量%とする。)をグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10~50質量部と、

B (樹脂成分100質量部中に、)その他の樹脂50~90質量部とを含むめっき用熱可塑性樹脂組成物であって、

C 該めっき用熱可塑性樹脂組成物に含まれるアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が、全アセトン可溶分中の20~40質量%であり、

D 該めっき用熱可塑性樹脂組成物中の金属酸化物(D)の含有量が0ppmを超えて45000ppm以下である

ことを特徴とする

E めっき用熱可塑性樹脂組成物。」

が記載されていると述べていると解されるが、そのような発明が記載されているとは認められない。

そうすると、当該発明が甲第1号証に記載されていることを前提とする主張1は、その前提において誤りがあり、このことは、甲第1号証の【0014】を参酌しても変わらないから、採用できない。

イ 主張2について検討する。

(ア)甲第2号証、甲第4号証には、アセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が示されておらず、かつ、これを算出するための根拠となる記載も存在しないことから、甲第2号証の実施例1~6、8~16、甲第4号証の実施例1~12に記載された樹脂組成物が、本件発明1における熱可塑性樹脂組成物と一致するとはいえない。そうすると、甲第3号証のみをもって、本件発明における熱可塑性組成物が周知であるとまではいえない。

(イ)加えて、甲第3号証には、レーザーマーキング用樹脂組成物が記載されているのに対し、甲1発明は無電解めっき用組成物であることから、両者の用途は異なり、甲1発明の樹脂組成物を、甲第3号証に記載された樹脂組成物により置き換える動機付けはない。

(ウ)以上より、申立人の主張2は採用できない。

(6)取消理由1、取消理由2、申立理由1(甲第1号証に基づく新規性、進歩性欠如)のまとめ

上記(3)~(4)に示したとおり、本件発明1~5は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

2 申立理由2(甲第3号証に基づく進歩性欠如)について

(1)甲第3号証の記載事項

甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】 ゴム質重合体(a)の存在下に、シアン化ビニル系単量体(b)、芳香族ビニル系単量体(c)及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(d)から選ばれる少なくとも1種以上の単量体をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体(I)10~50重量部、シアン化ビニル系単量体(b)5~45重量%、芳香族ビニル系単量体(c)40~90重量%及びマレイミド系単量体(e)5~55重量%からなる単量体混合物を重合してなるマレイミド系共重合体(II)0~50重量部、並びに、シアン化ビニル系単量体3~45重量%、芳香族ビニル系単量体90~20重量%及びこれらと共重合可能な他のビニル系共重合体0~80重量%からなる単量体混合物を重合してなるシアン化ビニル系共重合重合体(III)5~90重量部、からなる熱可塑性樹脂100重量部に対し、平均粒子径が50~200nmのカーボンブラック(IV)を0.1~10ppm、ルチル型二酸化チタン(V)0.01~0.5重量部、並びに、アンスラキノン系着色剤、モノアゾ系着色剤、ジアゾ系着色剤及びフタロシアニン系着色剤から選ばれる少なくとも1種のその他着色剤(VI)0~5重量部を含有させてなるレーザーマーキング用樹脂組成物。」

「【請求項4】 請求項1~3のいずれかに記載のレーザーマーキング用樹脂組成物を成形してなる成形品。」

「【0003】ところが、近年になって、レーザー光線によるマーキング手法が簡便かつ効率的に行えるため、注目を集めている。これはレーザー光線の照射時に樹脂が発泡・分解または樹脂表面が炭化することにより、マーキングが可能となる技術である。」

「【0015】本発明におけるゴム含有グラフト共重合体(I)におけるゴム質重合体(a)の含有率は、耐衝撃性の点で10~80重量%が好ましく、40~70重量%がさらに好ましい。また、ゴム含有グラフト共重合体(I)におけるシアン化ビニル系単量体(b)の含有率は、3~70重量%が色調安定性の点で好ましく、さらには10~40重量%が好ましい。さらに、ゴム含有グラフト共重合体(V)における芳香族ビニル系単量体(c)の含有率は、10~80重量%が色調安定性の点で好ましく、さらには20~50重量%が好ましい。またグラフト率は10~80%が、グラフト成分の共重合体の還元粘度は、0.2~0.8dl/gが耐衝撃性の点で好ましい。」

「【0033】これらの成形品の用途については、電気、電子、自動車、機械、雑貨など特に制限はないが、本発明の成形品の特徴から、文字や記号等が印字・表示される用途に有効である。なかでもOA機器・電気・電子製品のハウジングおよび冷蔵庫の構造体部品、パチンコの受け皿等の雑貨用途、トイレ・台所等のサニタリー用途、自動車用内外装材の文字や記号等を印字・表示される部位に適用することができる。」

「【0045】[参考例1]ゴム含有グラフト共重合体(I)の製造

窒素置換した反応器に純水120部、ブドウ糖0.5部、ピロリン酸ナトリウム0.5部、硫酸第一鉄0.005部およびポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm,ゲル含有率85%)50部(固形分換算)を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65°Cに昇温した。内温が65°Cに達した時点を重合開始としてモノマ(スチレン35部,アクリロニトリル15部)およびt-ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物を5時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部,オレイン酸カリウム2.5部および純水25部からなる水溶液を7時間かけて連続滴下し、反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和後、洗浄、濾過、乾燥してゴム含有グラフト共重合体(I)を得た。このグラフト共重合体(I)のグラフト率は45%、樹脂成分のηsp/cは0.68dl/gであった。」

「【0047】[参考例3]シアン化ビニル系共重合体(III)の製造

容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45-24151号公報記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次にアクリロニトリル32部、スチレン4.0部、t-ドデシルメルカプタン0.46部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.39部,2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.05部の混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58°Cに昇温し重合を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプからのスチレン64部を110分かけて添加した。この間、反応温度を65°Cまで昇温した。スチレンの反応系への添加終了後、50分かけて100°Cまで昇温した。以降は、通常の方法に従って、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、アクリロニトリル10重量%、スチレン50重量%のシアン化ビニル系共重合体(III)を得た。このシアン化ビニル系共重合体(III)のηsp/cは0.55dl/gであった。

【0048】[参考例4]カーボンブラック(IV)

A:三菱化学社製 C.B.#30 (平均粒子径84nm)

B:三菱化学社製 C.B.#850 (平均粒子径18nm)

[参考例5]二酸化チタン(V)

A:二酸化チタン(製法;硫酸法、結晶系;ルチル)

B:二酸化チタン(製法;塩素法、結晶系;ルチル)

C:二酸化チタン(製法;硫酸法、結晶系;アナターゼ)

[参考例6]その他着色剤(VI)

A:有本化学工業社製“Plast Yellow”8000(アンスラキノン有機染料)

B:有本化学工業社製“Plast Red”8370 (アンスラキノン有機染料)

C:有本化学工業社製“Plast Blue”8520(アンスラキノン有機染料)

D:Pigment Yellow 183 (モノアゾ有機顔料)

E:Pigment Red 170 (モノアゾ有機顔料)

F:Pigment Blue 15;3 (フタロシアニン有機顔料)

G:川村化学社製 YW505 (黄色無機顔料)

H:川村化学社製 MD100 (緑色無機顔料)

[実施例1~29、比較例1~14]参考例1~6記載のゴム含有グラフト共重合体(I)、マレイミド系共重合体(II)、シアン化ビニル系共重合体(III)、カーボンブラック(IV)、二酸化チタン(V)及びその他着色剤(VI)を、表1~4に記載の種類、量で配合し、さらに必要に応じて表3記載の難燃剤を配合して、ヘンシェルミキサーで均一に混合した後、小型押出機を用いてペレット化して樹脂組成物を得た。その評価結果は表1~4に示すとおりである。」

「【0050】

【表1】

203

147

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(2)甲第3号証に記載された発明

上記(1)に示した甲第3号証の記載事項のうち、特に、請求項1と【0045】、【0047】~【0048】、表1を参照の上、実施例9に着目すると、以下の発明が記載されているものと認められる(以下「甲3発明」という。)。

「以下に詳細を示すゴム含有グラフト共重合体(I)を25部、以下に詳細を示すシアン化ビニル系共重合体(III)を75部、カーボンブラックA(三菱化学社製 C.B.#30(平均粒子径84nm))を5ppm、二酸化チタンB(製法;塩素法、結晶系;ルチル)を0.3部配合して得られるレーザーマーキング用樹脂組成物。

<ゴム含有グラフト共重合体(I)の詳細>

窒素置換した反応器に純水120部、ブドウ糖0.5部、ピロリン酸ナトリウム0.5部、硫酸第一鉄0.005部およびポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm,ゲル含有率85%)50部(固形分換算)を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65°Cに昇温した。内温が65°Cに達した時点を重合開始としてモノマ(スチレン35部,アクリロニトリル15部)およびt-ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物を5時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25部,オレイン酸カリウム2.5部および純水25部からなる水溶液を7時間かけて連続滴下し、反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和後、洗浄、濾過、乾燥してゴム含有グラフト共重合体(I)を得た。このグラフト共重合体(I)のグラフト率は45%、樹脂成分のηsp/cは0.68dl/gであった。

<シアン化ビニル系共重合体(III)の詳細>

容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45-24151号公報記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次にアクリロニトリル32部、スチレン4.0部、t-ドデシルメルカプタン0.46部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.39部,2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.05部の混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58°Cに昇温し重合を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプからのスチレン64部を110分かけて添加した。この間、反応温度を65°Cまで昇温した。スチレンの反応系への添加終了後、50分かけて100°Cまで昇温した。以降は、通常の方法に従って、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、アクリロニトリル10重量%、スチレン50重量%のシアン化ビニル系共重合体(III)を得た。このシアン化ビニル系共重合体(III)のηsp/cは0.55dl/gであった。」

(3)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲3発明とを対比する。

(ア)甲3発明のゴム含有グラフト共重合体(I)は、ポリブタジエンラテックス50部(固形分換算)に対して、モノマ(スチレン35部,アクリロニトリル15部)をグラフト重合したものであるから、本件発明1の「ゴム質重合体(a1)35~80質量%に、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a2)20~65質量%(ただし、ゴム質重合体(a1)とビニル系単量体混合物(a2)の合計を100質量%とする。)をグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)」に相当する。

(イ)甲3発明のシアン化ビニル系共重合体(III)は、本件発明1の「その他の樹脂」に相当する。

(ウ)甲3発明において、ゴム含有グラフト共重合体(I)は25部、シアン化ビニル系共重合体は75部配合されていることから、本件発明1の「ゴム含有グラフト共重合体(A)10~45質量部と、その他の樹脂55~90質量部」に相当する。

(エ)甲3発明の二酸化チタンBは0.3部配合されており、組成物全体(25部+75部+5ppm+0.3部)に対して、約3000ppm配合されているから、本件発明1の「金属酸化物(D)の含有量が0ppmを超えて4500ppm以下である」に相当する。

(オ)甲3発明に含まれる樹脂成分はいずれも熱可塑性樹脂であり、甲3発明は熱可塑性樹脂組成物であると認められるから、本件発明1の「熱可塑性樹脂組成物」と一致する。

(カ)そうすると、本件発明1と甲3発明とは以下の点で一致する。

「樹脂成分100質量部中に、

ゴム質重合体(a1)35~80質量%に、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(a2)20~65質量%(ただし、ゴム質重合体(a1)とビニル系単量体混合物(a2)の合計を100質量%とする。)をグラフト重合したゴム含有グラフト共重合体(A)10~45質量部と、

その他の樹脂55~90質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、

該熱可塑性樹脂組成物中の金属酸化物(D)の含有量が0ppmを超えて4500ppm以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。」

(キ)そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点1> 樹脂組成物の用途が、本件発明1は「めっき用」であるのに対し、甲3発明は「レーザーマーキング用」である点

<相違点2> 本件発明1は「めっき用熱可塑性樹脂組成物に含まれるアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が、全アセトン可溶分中の20~40質量%」であるのに対し、甲3発明はアセトン可溶分中のシアン化ビニル単量体成分の含有量が明示されていない点

イ 検討

相違点1について検討する。

まず、甲第3号証には、甲3発明をめっき用とすることは記載されていない。また、甲第1~4号証のいずれにも、レーザーマーキング用組成物をめっき用組成物とすることは記載されていない。その他、レーザーマーキング用組成物をめっき用組成物とする動機付けの存在は確認できないから、甲3発明をめっき用とする動機付けはなく、上記相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものでない。

ウ 小括

そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、甲第3号証に記載されたその他の実施例を引用発明としたとしても、本件発明1との間には、相違点1が存在し、上記と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2~5について

本件発明2~5は、いずれも本件発明1を直接ないし間接的に引用した上で、さらにこれを特定するものであるから、上記(3)と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、申立書に記載した取消理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、上記結論のとおり決定する。

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