結論テキスト
登録第6648840号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2023890063 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理 由
本件登録第6648840号商標(以下「本件商標」という。)は、「Noctua」の文字を標準文字で表してなり、令和4年2月11日に登録出願、第9類「コンピュータ用ケーブル,コンピュータ用電源,電源アダプター,電線及びケーブル」を指定商品として、同年11月22日に登録査定、同年12月6日に設定登録されたものである。
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、「noctua」、「Noctua」及び「NOCTUA」の文字からなる商標並びに別掲の図形と文字から構成される商標(以下、別掲の商標を「別掲商標」といい、別掲商標を含むこれらをまとめて「引用商標」という。)であって「コンピュータ用冷却ファン用ケーブル、電源変換アダプタケーブル、延長ケーブル、コンピュータ用冷却ファン、CPUクーラー」等(以下、請求人(請求人が設立した合弁会社を含む。)の業務に係るこれら商品を「請求人商品」という。)について使用して、我が国及び外国の取引者及び需要者に間に広く認識されていると主張するものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び令和7年6月27日付け回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第28号証を提出した(以下、各甲(乙)号証の記載は、「甲(乙)○」のように省略する場合がある。なお、請求人の提出に係る甲18は、知的財産高等裁判所令和6年(行ケ)第10092号事件(無効2023-890062に係る審決取消訴訟)において、請求人が同裁判所へ提出した証拠説明書及び甲号証であるところ、当該甲号証(甲1~甲96)については、以下、当該「甲1」を「甲18-1」のように記載する。)。
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすべきものである。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 本件商標について
本件商標は、「Noctua」の殴文字を標準文字で書してなるものであるから「ノクチュア」の称呼を生じ、コキンメフクロウの学名であるAthene noctuaに由来する観念を生ずる。
イ 引用商標について
引用商標は、「noctua」、「Noctua」、「NOCTUA」の欧文字より「ノクチュア」の称呼を生じ、コキンメフクロウの学名であるAthene noctuaに由来する観念を生ずる。
ウ 商標の類否
本件商標と引用商標とは、「ノクチュア」の称呼が共通であるとともに、コキンメフクロウの学名であるAthene noctuaに由来する観念も共通であるので、同一又は類似のものである。
エ 商品の類否
本件商標に係る指定商品中の第9類「コンピュータ用ケーブル、電源アダプター、電線及びケーブル」と、引用商標に係る商品中の「コンピュータ用冷却ファン用ケーブル、電源変換アダプタケーブル、延長ケーブル」、及び「冷却ファン(CPUクーラー)」の構成部品に含まれるケーブルとは、ケーブル、アダプタ又は電線を備える点で共通であるとともに、類似群コード「11A01」又は「11A05」に属するので、同一又は類似のものである。
オ 他人
引用商標使用者は、本件商標権者と同一人でなく、本件商標権者との間で使用許諾関係がないので、本件商標権者の他人である。
なお、引用商標使用者は、国際登録第900445号の商標権者(オーストラリア、イスラエル、アメリカ、ドイツ、スペイン、フランス、ウクライナを指定、日本指定なし。)である(甲6)。
カ 引用商標の周知著名性
引用商標は、本件商標の出願前(令和4年2月11日前)の2005年から引用商標使用者であるラスコム社によって世界的に使用されていることが取引者や需要者に広く認識されており、引用商標に係る冷却ファンは、優れた静粛性、卓越した性能、徹底的な品質で国際的に有名であることが取引者や需要者に認識されている(甲7、甲8)。
引用商標は、我が国においてもラスコム社の業務に係るコンピュータ用冷却ファン及びその関連商品(ケーブル類を含む。)について多く使用されており、2023年7月29日時点で、インターネット小売サイトで著名なアマゾンにおける引用商標に係る商品の検索ヒット件数は329件であり(甲9)、インターネット小売サイトで著名な楽天市場における引用商標に係る商品の検索ヒット件数は682件であり(甲10)、それらの中で本件商標の出願前にアマゾンや楽天市場で取扱いが開始されたものが多数存在する(例えば、甲2~甲5)。
引用商標に係るコンピュータ用冷却ファンは、本件商標の出願前において、世界的に著名なASUS社のオールインワン型水冷ユニット「ROG RYUJIN II 360」にも採用されている(甲11)。
引用商標に係るコンピュータ用冷却ファンは、大手のハードウェアウェブサイトや雑誌から6,000以上の賞を受賞し、推薦を受けており、本件商標の出願前に受賞しているものが多数存在する(甲7、甲12、甲13)。
したがって、引用商標は、本件商標の出願前から現在においても、引用商標使用者であるラスコム社の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国において需要者の間に広く認識されたもの(周知著名商標)である。
キ まとめ
以上のことから、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用をするものであるので、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 出所混同について
本件商標と引用商標とは、同一又は類似のものである。
引用商標は、本件商標の出願前から現在においても、引用商標使用者であるラスコム社の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国において需要者の間に広く認識されたもの(周知著名商標)である。
引用商標使用者は、本件商標権者の他人である。
本件商標に係る指定商品のうち商品「コンピュータ用電源」は、周知著名商標である引用商標に係る商品「コンピュータ用冷却ファン用電源変換アダプタケーブル」が接続される装置であり、引用商標に係る商品「コンピュータ用冷却ファン用電源変換アダプタケーブル」と密接に関連し、それら商品の取引者や需要者が共通するので、本件商標権者が指定商品「コンピュータ用電源」に本件商標を使用すると、引用商標使用者又はその関連会社の業務に係る商品と誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、引用商標使用者であるラスコム社の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものである。
イ まとめ
以上のことから、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものであるので、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標は、同一又は類似のものである。
イ 引用商標の周知著名性
引用商標は、上記(1)カのとおり、本件商標の出願前から現在においても、引用商標使用者であるラスコム社の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国において需要者の間に広く認識されたもの(周知著名商標)である。
ウ 不正の目的
引用商標使用者は、上記(1)オのとおり、本件商標権者の他人である。
引用商標は、本件商標の出願前から現在においても、周知著名商標である引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を有する。
本件商標権者が本件商標を使用した場合、周知著名商標である引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがある。
本件商標の出願前から引用商標使用者(ラスコム社)の日本代理店である株式会社サーフゲイト(以下「サーフゲイト社」という。)は(甲14、甲15)、令和5年5月22日に、本件商標権者から、引用商標に係る商品への引用商標の使用の中止が求められているので(甲16)、これは、本件商標権者が引用商標使用者(ラスコム社)に損害を与えようとするものである。
エ まとめ
以上のことから、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるので、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(1)引用商標の周知性について
ア 被請求人は、東京高裁平成13年(行ケ)第430号判例を引用し、引用商標は「全国的にかなり知られているか、全国的でなくとも、数県にまたがる程度の相当に広い範囲で多数の取引者・需要者に知られていることが必要」とする一般的基準を満たさないため、周知性を欠くと主張していると考えられる。
しかし、請求人は別件無効審判(無効2023-890062)及びその審決取消訴訟(知財高裁令和6年(行ケ)第10092号)で主張したとおり(甲17、甲18)、引用商標には上記裁判例(乙1)のいう「特別の事情」に基づく周知性が認められる。
具体的には、東京高裁平成3年(行ケ)第29号(別件訴訟甲18-3)において示されているように、商標の周知性は必ずしも全国民的に認識されていることを要せず、商品の性質上需要者が限定される場合には、その範囲で広く認識されていれば足りる。請求人商品である「CPUクーラー」、「冷却ファン」等は全国的に流通する日常使用の一般商品ではなく、被請求人も認めるとおり(乙5)、小規模な隙間分野に属する商品である。このような商品の需要者は、自作PCユーザーやPCパーツショップ等の取引者から構成される需要者(以下「特定需要者」という。)に限られる。引用商標は、これら特定需要者の間で、10年以上前から2024年まで、我が国で広く認識されており、出願時(令和4年2月11日)及び登録査定時(同年11月22日)においても周知性を有していたことは明らかである。
したがって、被請求人の周知性否定の主張は失当である。
イ 請求人は、審判請求書において「引用商標はその登録出願前から現在に至るまで、我が国及び外国で需要者の間に広く認識された周知著名商標である」旨を述べている。甲7には「世界中の何十万もの満足している顧客にサービスを提供」とあり、甲8には「世界的に数十万人以上のユーザーがいる有名なメーカー」とある。これは、全世界の人口に対し、顧客は僅か0.01%程度であり、需要者層が極めて限定されていることを示す。すなわち、引用商標は特定需要者の間で広く知られているという意味である。
にもかかわらず、被請求人は請求人の主張を形式的に捉え、上記裁判例(乙1)で示されている一般基準に照らして周知性を否定しているが、これも失当である。
(2)商品の類否について
ア 被請求人は、答弁書において、本件商標の指定商品と引用商標に係る使用商品は類似群コードが異なるため非類似であると主張している。具体的には、引用商標に係る使用商品「ファン用ケーブル」(甲2)、「電源変換アダプタケーブル」(甲3)、「延長ケーブル」(甲4)及び「冷却ファン」(甲5)は「11C01」に属し、本件商標の指定商品「コンピュータ用ケーブル,コンピュータ用電源,電源アダプター,電線及びケーブル」は「11A01」又は「11A05」に属するとしている。
しかし、「コンピュータ」は「電子計算機」であり、「電子計算機」は「電子応用機械器具」に含まれるため、類似群コードは「11C01」である。したがって、本件指定商品のうち「コンピュータ用ケーブル」、「コンピュータ用電源」及び「電源アダプター」は、「電子応用機械器具」の部品・附属品に該当し、類似群コードは「11C01」となる。よって、非類似とする被請求人の主張は失当である。
さらに、引用商標の使用商品「ファン用ケーブル」、「電源変換アダプタケーブル」、「延長ケーブル」は「ケーブル」であり、「電線及びケーブル」の範ちゅうに属するため、類似群コードは「11A05」である。したがって、本件指定商品の「電線及びケーブル」も引用商標の商品と類似する。
以上から、類似群コードに基づく形式的観点でも、両商品は類似するといえる。
イ 加えて、類似群コードは審査便宜のための推定基準にすぎず、コードが異なるからといって非類似とは限らない。商品の類否は、同一営業主による製造・販売と誤認されるおそれがあるかで判断され、(1)生産部門、(2)販売部門、(3)原材料・品質、(4)用途、(5)需要者範囲、(6)完成品と部品の関係を総合考慮すべきである。
本件では、販売部門(2)と需要者範囲(5)は一致する。例えば、引用商標「Noctua」の商品を扱う九十九電機(甲19)、パソコン工房(甲20、甲21)、パソコンSHOPアーク(甲22)、ドスパラ(甲23)は、いずれも「CPUクーラー」、「ファン」、「電源」、「ケーブル」等を取り扱うPCパーツ専門店である。また、用途(4)も一致し、両商品はPC関連製品である。
さらに、請求人は冷却ファン(甲5)に加え、ケーブル類(甲2~甲4)、電源(甲24)も製造販売しており、他のメーカーも同様にクーラーと電源・ケーブル類を併売している(Cooler Master社:甲25、甲26、ASUS社:甲27)。よって、生産部門(1)も一致する。
以上から、実質的にも両商品は類似し、被請求人の非類似主張は失当である。
(3)「不正の目的」について
被請求人は、通知書(甲16)を根拠に請求人が「損害を与えようとした」と主張するのは見当違いであり、商標権侵害者に使用中止を求める行為は正当な権利行使であると述べている。
しかし、被請求人自身、引用商標を請求人商品に使用する行為は本件商標権の侵害に該当しないと認識しているはずである。それにもかかわらず、請求人代理店に対し「侵害罪(商標法第78条)として刑事罰の対象となるおそれもある」と脅迫的な警告を行ったことは、権利の濫用であり、正当な権利行使とはいえない。
このような行為は、出願時から「不正の目的」があったことを示すものである。すなわち、引用商標が特定需要者の間で広く知られていたにもかかわらず未登録であったことを利用し、商標権を取得して高額な譲渡代金やライセンス料を得ようとする意図があったと推認される。
さらに、被請求人は「幸石ストア」としてPC関連製品を販売していたと主張するが、乙9、乙10によれば「Noctua PCケーブル」の注文は僅か3個、単価120円にすぎない。この事実からも、引用商標の信用・名声にただ乗り(フリーライド)する目的で出願したことは明らかである。
加えて、被請求人は「noctuaは夜行性を意味し、使命感を込めて選択した」と述べるが、同人は中国籍であり、他方で中国の著名企業「xiaomi」についても商標出願(商願2024-7809)している。このような行為から、殊勝な意図などなく、本件出願は不正の目的によるものであることは疑いない。
したがって、「不正の目的を有していなかった」とする被請求人の主張は失当である。
なお、被請求人は、引用商標に係る請求人商品と本件指定商品は非類似であると認識している以上、今後、請求人や代理店に対し「正当な権利行使」を行うことは信義に反し、許されない。
(4)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 請求人と被請求人は別人であり、引用商標は本件出願時(令和4年2月11日)及び登録査定時(同年11月22日)に、我が国の特定需要者の間で広く認識されていた。さらに、引用商標と本件商標は類似し、引用商標に係る商品と本件指定商品も類似する。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当することは明らかである。
イ 被請求人は「引用商標が知られているのは冷却ファンのみであり、本件指定商品には及ばない」と主張する。しかし、同号は「類似する商品」も対象としている。引用商標に係る冷却ファンと本件指定商品(コンピュータ用ケーブル、電源等)は、生産部門・販売部門・用途・需要者範囲の観点から類似するため、被請求人の主張は失当である。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 請求人と被請求人は別人であり、引用商標は出願時(令和4年2月11日)及び査定時(同年11月22日)に特定需要者の間で広く認識されていた。引用商標と本件商標は類似し、商品も類似するため、本件商標は「混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。
イ 請求人の商品は特徴的なカラーリング(ベージュ×ブラウン)を有し、色だけで「Noctua」と認識されるほどである(別件訴訟甲18-5、甲18-17等)。特定需要者は、冷却ファン以外の製品(例:スクリュードライバー)でも同色なら「Noctua」と判断する(甲18-68)。したがって、本件指定商品に「Noctua」が使用されれば、請求人の商品と混同するのは必然である。
以上、取引の実情からも、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 請求人と被請求人は別人であり、引用商標は本件出願時(令和4年2月11日)及び登録査定時(同年11月22日)に、我が国の特定需要者の間で請求人商品を表示するものとして広く認識されていた。さらに、引用商標と本件商標は類似し、出願時及び査定時に「不正の目的」があったことから、本件商標登録は商標法第4条第1項第19号に該当することは明らかである。
イ 被請求人は「Facebookフォロワー数760人、YouTube登録者数130人という少なさから、引用商標の外国での周知性は否定される」と主張する。しかし、この少なさは、請求人商品のユーザーが自作PCマニア等の特定需要者に限定されていることを示すものであり、むしろ請求人の主張を裏付ける。
(7)結語
ア 以上のとおり、被請求人の主張は商標の類似を除き全て失当であり、本件商標の登録は商標法第4条第1項第10号、同項第15号、同項第19号により無効とされるべきである。
イ なお、別件訴訟は和解により終了し、請求人は実費(出願料+登録料)のみを支払い、登録第6628861号の商標権を譲り受けた(甲28)。高額な譲渡代金を支払ったわけではないことに留意されたい。
ウ また、別件無効審判は和解成立により請求不成立となったが、和解後は商標権者と請求人が同一人となり、自己の商標登録に対する無効審判請求という不適法状態であった。本来は補正不能として審決却下されるべきであり、和解成立をもって直ちに審決確定とするのは妥当でない。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、令和5年10月11日付け答弁書及び同7年10月30日付け答弁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証から乙第10号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 引用商標の周知性
東京高裁における平成13年(行ケ)第430号に係る判例(乙1)によれば、「商標法4条1項10号,15号による周知商標の保護は,登録主義をとる我が国の商標法の下で,例外的に,未登録商標であっても,それが周知である場合には,既登録商標と同様に,これとの間で出所の混同のおそれを生じさせる商標の登録出願を排除することを認めようとするものである。しかも,商標登録出願が排除されると,出願人は,当該出願商標を,我が国のいずこにおいても,登録商標としては使用することができなくなる,という意味において,排除の効力は全国に及ぶものである。これらのことに鑑みると,周知であるといえるためには,特別の事情が認められない限り,全国的にかなり知られているか,全国的でなくとも,数県にまたがる程度の相当に広い範囲で多数の取引者・需要者に知られていることが必要であると解すべきである」旨、判示されているところ、請求人の主張及び甲各号証について以下検討する。
(ア)甲7について
甲7は、「株式会社サイズ」(以下「サイズ社」という。)のウェブサイト情報であり、同社は請求人の正規代理店と推測される。したがって、記載内容は利害関係者の主観的認識にすぎず、引用商標の周知性を客観的に示すものではない。さらに、記載は商品「冷却ファン」に関するもので、本件商標の指定商品「コンピュータ用ケーブル等」とは非類似である。
(イ)甲8について
甲8は、パソコン情報サイトの記事で、掲載が2023年5月8日と最近である。当該記事は、引用商標の使用事実を示すにとどまり、広範な周知性については不明である。また、引用商標を使用した商品は「冷却ファン」であり、本件商標の指定商品とは非類似である。
(ウ)甲9・甲10について
甲9はアマゾン及び甲10は楽天市場での検索結果で、表示されている商品は全て「冷却ファン」である。当該記事は、引用商標の使用事実を示すにとどまり、また、引用商標を使用した商品対象は「冷却ファン」であり、本件商標の指定商品とは非類似である。さらに、当該記事における検索結果のヒット件数(329件、682件)は、検索ワード使用の事実を示すのみで、周知性獲得の根拠とはならない。当該検索の条件も不明で、他社商品を含む可能性があり、件数のみで周知性の根拠とするのは失当である。さらに、甲2ないし甲5で示す商品も「PCファン用ケーブル」や「冷却ファン」であり、本件商標の指定商品とは非類似である。
(エ)甲11について
甲11は、ニュースサイトの記事で、投稿者はASUS JAPAN株式会社である。同記事は引用商標の使用事実を示すのみで、周知性獲得の根拠とはなり得ない。引用商標を使用した商品は「冷却ファン」であり、本件商標の指定商品とは非類似である。
(オ)甲12について
甲12は、「サイズ社」のニュース記事で、引用商標が「CPUクーラー」に使用されていることを示すのみで、本件商標の指定商品とは非類似であり、周知性獲得の根拠とはなり得ない。
(カ)甲13について
甲13は、欧州ハードウェア協会における受賞歴で、日本での周知性獲得の根拠とはならない。引用商標を使用した商品は「CPUクーラー」であり、本件商標の指定商品とは非類似である。
(キ)判例等
知財高裁平成23年(行ケ)第10450号判決(乙2)には、「本件施設が掲載されているウェブページについては,その閲覧数等が不明である以上,当該ウェブページに本件施設が紹介されていることをもって,原告使用標章の周知性を認めることはできない」旨、判示されている。
これを本件に当てはめるに、甲2ないし甲5、甲7ないし甲13も、ウェブサイトや検索結果の閲覧数等が不明である以上、掲載事実のみで引用商標の周知性獲得を裏付ける証拠とはならない。
(ク)日本国周知・著名商標検索
特許情報プラットホームによる日本国周知・著名商標検索画面において、「Noctua」及び「ノクチュア」を検索したところ、令和5年10月4日現在、検索ヒット数は0件である。
(ケ)乙5について
乙5は、インターネット百科事典「ウィキペディア」による「Noctua」の検索結果であり、当該記載には「日本では高価格帯」、「ニッチなカテゴリ」「大手量販店などでもあまり取り扱いはなく」、「取り扱いショップは・・・数社のみ」とあり、請求人商品は高価で入手困難なニッチ商品であることが分かる。
このような一般的記述からも、引用商標の周知性獲得は否定される。
(コ)周知性のまとめ
請求人提出の証拠から分かることは、引用商標が「冷却ファン並びにその部品及び附属品」に使用されている事実のみであり、販売数量などは不明であるため、周知性を裏付ける証拠とはならない。
引用商標の周知性は、単なるウェブサイト掲載ではなく、全国又は特定の地域を超えた相当広範囲の地域で需要者・取引者がどの程度認識しているかによって判断されるべきところ請求人提出の証拠からは、その点が不明である以上、引用商標の周知性獲得は否定されるべきである。
イ 商標の類否
本件商標と引用商標とは、外観は明らかに非類似であるものの、共に「ノクチュア」の称呼が生ずるため、少なくとも両者は類似するといえる。
なお、請求人は、両者の観念について、コキンメフクロウの学名由来である点で共通する旨述べているが、取引者・需要者をしてコキンメフクロウの学名を普通に知るはずもなく、かつ、当該観念を想起する文言として一般的に使用されてもいないことから、両商標から特定の観念が生じ得るものではない。
ウ 商品の類否
請求人は、引用商標の使用商品として「ファン用ケーブル」(甲2)、「電源変換アダプタケーブル」(甲3)、「延長ケーブル」(甲4)、「冷却ファン」(甲5)を挙げている。これらはいずれも電子応用機械器具並びにその部品及び附属品に属し、類似群コードは「11C01」である。また、甲3及び甲4は「ファン用」と明記されており、実質的に「ファン用ケーブル」であることは明らかである。
一方、本件商標の指定商品は「コンピュータ用ケーブル,コンピュータ用電源,電源アダプター,電線及びケーブル」であり、類似群コードは「11A01」及び「11A05」である。
以上から、引用商標の使用商品と本件商標の指定商品は明らかに非類似である。
エ 小括
以上のとおり、引用商標の周知性は明らかに否定され、本件商標の指定商品と引用商標に係る使用商品も非類似であるから、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標と引用商標との類否については、上記(1)イのとおり、少なくとも両者は類似する。
また、引用商標の周知著名性については、上記(1)アのとおり、明らかに否定されるものである。
以上のとおり、本件商標と引用商標との「類似性」の要件は容認されるものの、引用商標の「周知著名性」の要件については否定される。
そして、引用商標が、代理店を含む請求人により継続的に使用されていたとしても、引用商標が請求人の使用するものとして周知著名性を獲得していないことからすれば、本件商標が請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるものということはできない。
したがって、本件商標が引用商標と混同を生ずることはありえず、故に、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 引用商標の周知性について
引用商標の国内における周知性については、上記(1)アのとおり、明らかに否定されるものである。
次に、引用商標の外国における周知性について、請求人提出に係る証拠(甲7、甲8、甲13)及び同人による申述について、以下に検討する。
(ア)甲7について
甲7は、我が国における請求人の正規販売代理店と推測される「サイズ社」のウェブサイト情報であり、これは利害関係者の主観的認識にすぎず、引用商標が外国で周知であることを客観的に示すものではない。また、当該証拠には、「国際的に有名」、「6000以上の賞を受賞」、「世界中の何十万もの満足している顧客」、「30カ国以上に存在」などの記載はあるが、それらの具体的根拠や国別の顧客数・シェア率は不明である。
したがって、甲7をもって引用商標の外国での周知性を裏付けることはできない。
(イ)甲8について
甲8は、「世界的に数十万人のユーザーがいる有名メーカー」との記載があるが、その根拠や国別のユーザー数、シェア率は示されていない。
したがって、甲8も引用商標の外国での周知性を証明するものではない。
(ウ)甲13について
甲13は、「欧州ハードウェア協会」が運営するサイトに掲載された受賞歴であるが、同協会は設立が浅く、Facebookフォロワーは約760人、YouTube登録者は約130人にすぎない。また、オーディエンスが22万人いるとの記載も信頼性に欠け、国別の内訳や周知性の程度は不明である。
よって、甲13によって引用商標の外国での周知性を認めることはできない。
(エ)判例等
知財高裁令和4年(行ケ)第10074号判決(乙4)によれば、「書面の内容については、具体的な根拠が何ら示されていないから、上記内容を事実として認めることはできない。また、仮にそれが事実であるとしても、原告の商品について引用商標がどのような態様で表示されていたかは明らかでなく、各国における原告の商品のシェアも不明であることからすれば、上記書面によって、引用商標が外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない」旨、判示されている。
これを本件に当てはめるに、甲7、甲8、甲13も記載内容に具体的根拠がなく、各国での請求人商品のシェアも不明である以上、これらをもって引用商標が外国で広く認識されていたとは認められない。
(オ)周知性のまとめ
請求人提出の証拠は、いずれも記載内容の具体的根拠を欠き、外国における請求人商品のシェアも不明であるため、引用商標の周知性獲得を裏付けるものではない。
引用商標の周知性は、単なるウェブサイト掲載ではなく、外国の需要者・取引者がどの程度認識しているかによって判断されるべきところ、その点が不明である以上、引用商標が外国で周知性を獲得しているとは到底認められない。
イ 商標の類否
本件商標と引用商標との類否については、上記(1)イのとおり、少なくとも両者は類似する。
ウ 不正の目的
知財高裁平成23年(行ケ)第10450号判決(乙2)によれば、「原告使用標章は,原告の出所を示す標章として周知性を有するものではなく,本件商標について,登録出願当時原告の業務に係る役務とその出所について混同を生ずるおそれを認めることができない以上,「不正の目的」の有無について検討するまでもなく,本件商標は,商標法4条1項19号に該当するものと認めることができない。」旨、判示されている。
したがって、既に検討したとおり、引用商標の外国における周知性は否定されることから、「不正の目的」の有無を検討するまでもなく、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当しないことは明らかである。
上記(1)ア及びアのとおり、引用商標には、我が国及び外国における周知性獲得の事実は認められない。したがって、引用商標に大きな信用や名声、顧客吸引力が存在するとはいえず、被請求人がその顧客吸引力等を利用したり、希釈化・毀損させるなどの不正の目的を有するはずもない。
また、請求人は、被請求人からサーフゲイト社宛ての通知書(甲16)を根拠に、被請求人が請求人に損害を与えようとしたと主張する。しかし、自己の商標権を侵害する者に対し、登録商標の使用中止を求める行為は、商標法上認められた正当な権利である。この正当な権利行使を、請求人に損害を与える行為とするのは全くの誤りである。
そもそも被請求人は、事業名称を「幸石ストア」とし、PC関連製品を始め各種電化製品を販売する個人事業者であり、指定商品である「コンピュータ用ケーブル,電線及びケーブル」について、本件商標の出願前から本件商標を付して販売していた(乙9、乙10)。すなわち、被請求人は自ら使用するために本件商標を出願・登録したのであり、これは商標法上何人にも認められた権利であって、登録によって不正の利益を得たり、請求人に損害を与える目的はない。
なお、被請求人が本件商標を選択した理由は、英語で「noctua」が「夜行性」を意味するためであり、コキンメフクロウの学名に由来するものではない。被請求人はコキンメフクロウの存在を知らず、「noctua」がその学名であることも認識していなかった。本件商標の指定商品である「コンピュータ用ケーブル,コンピュータ用電源,電源アダプター,電線及びケーブル」は、目立たないが確実に必要な商品であり、その性質を商標で表現するため、「夜行性」という言葉に「見えない闇の中で確実に存在し、使命を果たす」という意味を込めて本件商標を選択した。
以上のとおり、被請求人が本件商標の登録出願時に不正の目的を有していなかったことは明らかである。
以上によれば、本件商標と引用商標との「類似性」は認められるものの、引用商標の「周知著名性」及び被請求人の「不正の目的」は否定される。
(1)商標法第4条第1項第10号(周知性)について
請求人は、Noctuaブランドが「自作PCユーザーやPCパーツショップ等の特定需要者に広く認識されている」と主張し、甲17及び甲18を提出する。
しかし、これらは別件訴訟の準備書面・証拠説明書にすぎず、販売実績や広告活動を示す客観的資料ではない。請求人は「特別の事情」として特定需要者内での認知度を挙げるが、需要者数や販売シェア等の具体的データは示されていない。
前件審判でも周知性を裏付ける資料がないとして退けられており、本件も同様である。
さらに、請求人の「一般教養を有する通常人なら理解するはず」との記載は、法的主張として不適切であり、感情的推論にすぎない。
なお、請求人は周知性を前提に商標法第4条第1項第15号(混同のおそれ)を論じるが、前提自体が立証されていない以上、混同のおそれも成立しない。
(2)商標法第4条第1項第15号(混同のおそれ)について
請求人は、甲19ないし甲24を引用し、Noctua製品と被請求人の業務に係る商品が同一ショップで販売されていることから、販売経路・需要者層の共通性を主張する。
しかし、甲19(TSUKUMO)や甲21ないし甲23を確認すると、掲載は「PCパーツ総合カテゴリ」内の並列表示にすぎず、販売部門や担当部署の同一性を示す資料はない。各ショップでは商品区分が明確であり、販売経路の共通性は認められない。
また、甲24の「NV-PS1」はファン用補助電源であり、一般的なPC電源ユニットとは用途・流通経路が異なる。これをもって「電源分野への展開」とする請求人の主張は誇張である。
さらに、請求人が挙げる販売サイトは多様なメーカーの商品を掲載する一般的構成であり、同一ショップでの掲載のみで混同を導くのは法理上の拡張解釈にすぎない。
以上より、請求人の主張は周知性と販売経路の表面的共通性に依拠するが、いずれも立証されておらず、混同のおそれは認められない。
(3)商標法第4条第1項第19号(不正の目的)について
請求人は、甲28の知財高裁和解調書を引用し、被請求人が過去に別件商標を譲渡した経緯をもって「不正の目的による登録」と主張する。
しかし、同和解は請求人と宮川製作所との間で締結されたもので、本件被請求人とは無関係である。対象も当該事件の商標に限定されており、本件商標の登録の動機を推認する根拠とはならない。
むしろ和解の存在は、請求人が過去に類似紛争を繰り返していることを示すにとどまり、被請求人の不正目的を裏付ける事情ではない。
また、「商標権侵害の警告が不正目的を示す」との主張は、正当な権利行使を否定するものであり、法的に相当でない。警告は権利者の当然の行為であり、これをもって不正目的とみなすことはできない。
(1)請求人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人
請求人は、2000年に設立されたオーストリアの企業であり、2005年に、他の企業との合弁会社として「Noctua」という社名の、「CPUクーラー」や「ケースファン」(コンピュータ用冷却ファンのこと。職権調査。以下同じ。)等を手がけるコンピュータ・ハードウェアメーカーを設立した(甲18-5)。
そして、「CPUの冷却装置」に関するWikipediaのウェブサイトには、「冷却装置(CPUクーラー)の著名メーカー」の一つとして「Noctua」が記載されている(甲18-4)。
イ 発売時期
請求人商品のうち、「CPUクーラー」と「ケースファン」の我が国における発売時期は、「CPUクーラー」の「NH-D15」が2014年4月頃であり、「ケースファン」の「NF-A14 PWM」が2013年6月頃、「NF-A12×25 PWM」が2018年5月頃である(甲18-39、甲18-48~甲18-50)。
ウ 請求人商品及び需要者
請求人商品のうち、「CPUクーラー」(CPU冷却装置)は、その需要者である自作PCやBTOのPCのユーザーが、冷却能力・静音性を重視して選択する場合が多い商品といえる(甲18-4、請求人の主張)。
また、請求人商品のうち、「CPUクーラー」又は「ケースファン」の評価については、例えば、「PC USER」のウェブサイトでは「空冷パーツ最強とも評価される有名ブランド「Noctua」」、「冷却パーツのプレミアムブランド」(甲18-38)、「高静圧ファンの代表例としてよく挙げられるNoctua」(甲18-39)、「PC Watch」のウェブサイトでは「NoctuaのCPUクーラーといえば、ほかに類を見ないほどの高品質で高性能」(甲18-56)、「ASCII.jp」のウェブサイトでは「世界中の自作ユーザーから高く評価されているケースファン&空冷CPUクーラーのトップブランドとなるNoctua」(甲18-62)、「ハイエンドユーザーから高い支持を受けるNoctua」(甲18-63)等、記載されている。
なお、本件商標の登録査定後の記事ではあるが、「AKIBA PC Hotline!」のウェブサイトに「空冷CPUクーラーのトップブランド、Noctua。」、「こだわり派のPC自作ファンの間での人気は高い。」(甲18-51)、「PC Watch」のウェブサイトに「ハイエンド空冷CPUクーラーで有名なメーカーNoctuaの最新作」(甲18-57)、「ASCII.jp」のウェブサイトに「noctua製140mmファンのロングセラーモデルで2010年代に登場」(甲18-64)、「自作ユーザーには人気のブランド」(甲18-65)との記載もある。
エ ランキング
本件商標の登録査定後のものではあるが、「価格.com」のウェブサイトの「人気売れ筋ランキング 2024年10月」によれば、請求人商品のうち、「NF-A12×25 PWM」は「ケースファン」において3257製品中6位、「NH-D15」は「CPUクーラー」において2825製品中18位であった(甲18-19、甲18-22、請求人の主張)。
オ 売上高
請求人の取引業者である、サイズ社(甲18-25、甲18-26)、株式会社サイコム(甲18-27)、サーフゲイト社(甲18-28)に対する2017年度ないし2021年度の売上高概要(甲18-29~甲18-34)によれば、例えば、2021年度の総請求額は、サイズ社に約1億6,300万円(甲18-29、甲18-30)、株式会社サイコムに約2,900万円(甲18-31、甲18-32)、サーフゲイト社に約3,200万円(甲18-33、甲18-34)である。なお、これらはいずれも卸売金額であり、小売金額は概ね2倍以上とされる(甲17)。さらに、サイズ社に対する2021年度最後のインボイスDL-0832(甲18-29、甲18-30、甲18-35、甲18-36)に示すとおり、請求人商品のうち「NF-A12x25 PWM」792個(番号27)、「NH-D15」400個(番号2)、「NF-A14 PWM」400個(番号28)が受注され、総額は約2,300万円であった。なお、「NF-A12x25 PWM」及び「NF-A14 PWM」は、いずれも「ケースファン」であり、「NH-D15」は、「CPUクーラー」である(甲18-39、甲18-51など)。
カ アワード受賞・評価
請求人商品のうち、「冷却ファン」は海外で6000以上の賞・推薦を受けており(甲18-6)、我が国でも「価格.comプロダクトアワード2019」の「パソコンパーツ部門」の「CPUクーラー」で金賞(NH-U12A)を受賞した(甲18-80、甲18-81)。
(2)判断
上記認定事実によれば、請求人が2005年に設立した「Noctua」という社名の合弁会社は、コンピュータやパーソナルコンピュータに使用される「CPUクーラー」や「ケースファン」(コンピュータ用冷却ファン)等を手がけるコンピュータ・ハードウェアメーカーである。そして、「CPUクーラー」や「ケースファン」の需要者層は、特に、性能・静音性を重視してそれら商品の選択をするような自作PCやBTOのPCのユーザーであるといえるから、その市場規模はさほど大きくないと考えられるところ、そのような中でも、我が国において、「Noctua」に係る「ケースファン」と「CPUクーラー」は、本件商標の登録出願日より約10年前の、2013年~2014年頃から、少なくとも3社の取引業者を通じて発売され続けており、相当長い期間、相当な規模で、我が国において流通してきたといえる。
また、我が国における多数の自作PC等に関するウェブサイトにおいて、請求人商品のうち「CPUクーラー」と「ケースファン」について、「有名ブランド「Noctua」」、「トップブランドとなるNoctua」、「高い支持を受けるNoctua」として評価され、請求人商品のうち「CPUクーラー」は、「価格.com」のウェブサイトの「プロダクトアワード2019」で金賞を受賞した。
さらに、「CPU冷却装置」に関するウェブサイト(Wikipedia)には、「Noctua」が「冷却装置(CPUクーラー)の著名メーカー」の一つとして記載されている。
なお、本件商標の登録査定後の情報ではあるが、「価格.com」のウェブサイトの2024年10月の人気売れ筋ランキングでは、請求人商品のうち「CPUクーラー」が2825製品中18位、「ケースファン」が3257製品中6位と、上位にランクインしたことから、本件商標の登録出願時及び登録査定時においても、これに近いランキングがされたことがうかがわれる。
これらの事実を総合すれば、「Noctua」の文字からなる商標(以下「請求人商標」という。)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務(請求人が設立した合弁会社の業務を含む。以下同じ。)に係る「CPUクーラー」及び「ケースファン」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識され、周知な商標となっていたと認められる。
(1)請求人商標の周知性について
上記1のとおり、請求人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「CPUクーラー」及び「ケースファン」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められるから、請求人商標の周知著名性の程度は高いといえる。
(2)本件商標と請求人商標の類似性の程度について
ア 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「Noctua」の欧文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「フクロウ座」を意味する語として辞書類に載録が見られるものの、我が国において親しまれたものとはいえず、一種の造語として理解されるとみるべきであるところ、当該文字は、請求人の業務に係る「CPUクーラー」及び「ケースファン」を表示するものとして周知である。
そして、欧文字からなる造語は、ローマ字又は英語の読みに倣って発音されるとみるのが自然であるから、本件商標からは、その構成文字に応じて「ノクチュア」の称呼が生じ、また、当該文字は、請求人の業務に係る「CPUクーラー」及び「ケースファン」を表示するものとして周知である請求人商標と同一の文字であるから、「請求人の業務に係る「CPUクーラー」及び「ケースファン」の名称」の観念を生じるものである。
イ 請求人商標について
請求人商標は、「Noctua」の文字からなるところ、本件商標と同一の構成文字からなるものであるから、上記アと同様の理由により、「ノクチュア」の称呼及び「請求人の業務に係る「CPUクーラー」及び「ケースファン」の名称」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と請求人商標との比較
本件商標と請求人商標とは、上記ア及びイのとおり、同一の構成文字からなり、同一の称呼及び観念を生じるものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(3)請求人商標の独創性の程度について
請求人商標を構成する「Noctua」の文字(語)は、我が国において親しまれた英語とはいえないから、請求人商標の独創性の程度は高いといえる。
(4)本件商標の指定商品と請求人の業務に係る「CPUクーラー」及び「ケースファン」との関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、コンピュータに関連する商品であることから、コンピュータ・パーソナルコンピュータに使用される「CPUクーラー」及び「ケースファン」との関連性の程度は高く、取引者及び需要者を共通にするものである。
(5)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(4)からすると、請求人商標の周知著名性及び独創性の程度、本件商標と請求人商標との類似性の程度はいずれも高く、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る「CPUクーラー」及び「ケースファン」との関連性の程度は高く、取引者及び需要者を共通にすることからすると、本件商標は、これをその指定商品に使用する場合には、これに接する需要者が、請求人商標を連想、想起し、当該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
(6)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
そうすると、他の無効事由について判断するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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