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Trademark Appeal Case

立体商標の形状識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025008812
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

本願は、令和5年8月22日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和6年5月27日付け:拒絶理由通知書

令和6年10月31日 :意見書の提出

令和7年2月18日付け:拒絶査定

令和7年6月6日 :審判請求書の提出

第2 本願商標

本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成からなり、「商標の詳細な説明」を別掲1(2)のとおりとし、第19類「窯業系サイディング材(金属製のものを除く。)」を指定商品として、立体商標として登録出願されたものである。

第3 原査定の拒絶の理由の要旨

原査定は、「本願商標は、別掲1(1)のとおり、板状の立体的形状からなるところ、本願の指定商品を取り扱う業界において、板状の窯業系サイディング材の取引が行われている実情が認められる。そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、その商品の形状を表したものであること、すなわち、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人により提出された証拠によっても、本願商標が使用をされた結果、出願人の業務に係る商品であることを認識することができる状態に至っているとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第4 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)判断の枠組み

商標法第3条第1項第3号は、形状その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、商標登録を受けることができない旨規定しており、商品の立体的形状も、同号の「形状」に含まれている(同法第2条第1項、第5条第2項参照)。指定する商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標の登録が認められないのは、通常の場合、このような商標は、自他商品識別力を欠くと考えられるからである。もとより、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であっても、使用をされた結果、自他商品識別力を有するに至ったと認められる場合には、商標登録が認められるが(同条第2項)、その場合でも、商品が当然に備える特徴と認められる立体的形状のみからなる商標の登録は認められない(同法第4条第1項第18号、同法施行令第1条の2)。商品の機能を確保するために不可欠であるような立体的形状は、商品が当然に備える特徴と解されるのであり、このような立体的形状を有する商品が、存続期間の更新が可能な商標権に基づき、事実上、半永久的に独占販売されることは相当ではないからである。

以上によれば、立体的形状のみからなる商標の商標法第3条第1項第3号該当性は、当該立体的形状が指定商品の形状を「普通に用いられる方法で表示」するものであり、自他商品識別力を欠くものと認められるか否かという観点から判断されるのであり、同法第4条第1項第18号のように商品の当然に備える特徴である立体的形状(商品の機能を確保するために不可欠な立体的形状)のみからなる標章であると認められることまでは要しない。

しかるところ、商品の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的に発揮させ、又は商品の美感をより優れたものとする等の目的で選択されるものである。また、これらの目的で選択された商品の形状は、通常、同種の商品に関与する者であれば誰でも使用することを欲するようなものであり、需要者からみれば、商品の形状そのものの範囲を出ないと認識されるものと考えられる。これらの点に照らすと、客観的にみて、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されると認められる商品の形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものと解するのが相当である。すなわち、商品の形状が、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品について、機能又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば、当該形状が他の特徴を有していたとしても、商標法第3条第1項第3号にいう「普通に用いられる方法で表示」したものに該当するというべきである(知財高裁令和6年(行ケ)第10058号参照)。

(2)本願商標の立体的形状及び本願の指定商品と同種のサイディング材の形状等

ア 本願商標は、別掲1のとおり、異なる方向から表示された3つの図により表された立体的形状からなるものであって、その赤色で着色された部分は、化粧面の形状の一例を示したものであり、商標を構成するものではない。

そして、本願商標を表示する3つの図のうち、1つは縦に細長い図であって、本願商標に係る立体的形状の1つの面を表しているものと認められ、他の2つの図は、いずれも斜視図と認められるところ、本願商標に係る立体的形状は、当該3つの図からは、四角形の板状の形状であることは認められるものの、2つの斜視図からは四角形の4つの辺の割合が特定できないため、当該四角形が長方形なのか台形なのか、必ずしも特定できない。

その意味において、本願商標は、その立体的形状が明確に特定されたものとはいえないものの、一方が平面で、もう一方は化粧が施されるが具体的な形状が特定されない面であって、長方形の両長辺部又は台形の脚(上底及び下底以外の辺)部に凹凸を有する四角形の板状の立体的形状からなるものと認められる。

イ 原審の拒絶の理由において示した証拠(別掲2参照)及び令和6年4月22日付け刊行物等提出書で提出された刊行物等(資料1から資料9)並びに請求人が提出した証拠によれば、サイディング材は、一方の面に様々な化粧が施され、両長辺部に凹凸を有する長方形の板状の形状からなるものであり、当該形状のサイディング材が、一般に販売されている実情が認められる。

(3)判断

本願の指定商品は「窯業系サイディング材(金属製のものを除く。)」であるところ、上記(2)のとおり、本願商標の立体的形状とサイディング材の形状とは、いずれも、一方の面に化粧が施され、一対の辺部に凹凸を有する四角形の板状といった形状において共通するものである。

また、本願商標の立体的形状を長方形の板状とみる場合には、この点においてもサイディング材の形状と共通するものであり、台形の板状とみる場合においても、長方形か台形かの違いはあるものの、いずれも四角形の板状という点においては共通している。

そうすると、本願商標の立体的形状は、本願の指定商品の需要者からすれば、一般に販売されているサイディング材の形状そのものの範囲を出ないと認識されるものであり、また、客観的にみても、サイディング材の機能又は美感に資することを目的として採用される形状の一というべきである。

してみると、本願商標は、その指定商品との関係において、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであり、これを覆すに足る特段の事情は見いだせない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(4)請求人の主張について

請求人は、窯業系サイディング材同士を接合するためのサイディング材端部の形状(以下「実(さね)」という。)について、各社ごとに形状が異なっており、機能を確保できる代替的な形状は他にも存在している旨、各社で実(さね)の形状が異なるため、サイディング材を金具で固定する際に施工を行う取引者・需要者は、サイディング材の実(さね)の形状に特に注目する旨、及び請求人は独自の実(さね)の形状を採用しているため、本願商標に係る商品の形状は、同種の商品の形状として採用し得る立体形状の範囲を超えているといえる旨主張する。

しかしながら、たとえ、各製造業者によってサイディング材の「実(さね)」の形状が異なり、その実情をサイディング材の施工を行う者が理解しているとしても、当該「実(さね)」は上記(2)イで認定した「両長辺部」に該当し、その形状はサイディング材同士の接合のために重要となる凹凸の形状であるから、サイディング材の「実(さね)」は、サイディング材の形状の基本的な構造の一つであって、サイディング材同士を接合するという機能に資することを目的とした形状の選択と予測し得るものというべきである。

そうすると、本願商標の立体的形状は、通常、同種の商品に関与する者であれば誰でも使用することを欲するようなものであり、需要者からみれば、商品の形状そのものの範囲を出ないと認識されるものといわなければならない。

以上よりすれば、上記(3)のとおり、「実(さね)」の形状も含めた本願商標の立体的形状は、サイディング材について商品の機能若しくは美感に資することを目的とした、又はそれらの目的からの形状の選択と予測し得る範囲の形状にすぎないものであり、当該形状の範囲を超えているということはできない。

2 商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて

請求人は、商標法第3条第2項に該当する旨を明確に主張するものではないが、本願商標の使用の結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとなっている旨主張をしているため、請求人の主張及び同人が提出した資料を参照し、以下、本願商標の使用による自他商品の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について判断する(なお、請求人は、証拠として、原審において物件(a)から(l)を、当審において物件(a)から(k)をそれぞれ提出しているところ、物件(c)及び(k)についてのみ、原審と当審で提出した証拠の内容が異なるため、原審で提出したものを「物件原審(c)」及び「物件原審(k)」と、当審で提出したものを「物件当審(c)」及び「物件当審(k)」(ただし、当審提出の物件は(k01)のように数字を併記しているので「物件当審(k01)」)のように、並びにそれら以外のものを「物件(a)」のように、それぞれ表記する。)。

(1)判断の枠組み

商標法第3条第2項は、同条第1項第3号から同項第5号までに該当する商標であっても、使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には商標登録を受けることができる旨規定しており、同項第3号に該当する商標は、元々類型的に自他商品識別力が乏しいものである上、本願商標のように商品の立体的形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、それが同法第4条第1項第18号にも該当する場合に商標登録が認められないことは明らかであり、仮に該当しない場合であっても、通常、特定人に独占させることが相応しくないものである。しかるところ、このような商標について、商標法第3条第2項を適用して商標登録を認めたときは、存続期間の更新が繰り返されることにより、事実上、半永久的に当該形状を商標として使用し、当該形状に係る商品を独占販売することを認める結果となるのであるから、同項を適用する場合には、当該形状について、このような結果を許容するに足りる十分な自他商品識別力が、その商標としての使用により獲得されたことが認められる必要がある。そして、当該形状から成る商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、ア 当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否、イ 当該商標が使用された期間、商品の販売数量、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を総合考慮して判断すべきである(前掲判決参照)。

(2)本願商標の使用

請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。

ア 請求人は、遅くとも平成3年(1991年)からサイディング材を販売している(物件原審(k)、物件(l)、物件当審(k01~70))。

イ 窯業系サイディング業界において、請求人の2023年度販売数量シェアは57.2%である(物件(g)~物件(i))。

ウ 2024年9月13日付けの日刊木材新聞において、請求人の商品が、2024年に経済産業省・製造産業局長賞を受賞したことについて記載された記事が掲載されており、その記事中には、別掲3のとおりのサイディング材の実(さね)の部分の写真が掲載されるとともに、「ニチハのオフセットサイディングは、・・・、高い環境性能とともに耐火性・耐震性など高い強靱性を有している。700種類を超える幅広いデザインバリエーションにより多様な建築物の外壁材として普及している。」との記載がある(物件(j))。

エ 請求人のカタログには、例えば、別掲4のとおりのサイディング材の写真や別掲5のとおりのサイディング材の実(さね)部分の写真のように、サイディング材又はその実(さね)の部分の写真が掲載されている((物件原審(k)、物件(l)、物件当審(k01~26、k63~70))。

オ 請求人のカタログにおいて、付属部材(留付金具)や施工に関するページ、クリーンウッド法対象商品に関するページに、サイディング材の実(さね)の部分の図又は写真が掲載されている(物件原審(c)、物件当審(c)、物件当審(k27~62))。

(3)判断

上記(2)によれば、請求人は、窯業系サイディング材を平成3年(1991年)頃から販売しており、窯業系サイディング業界における同人の2023年度の販売数量シェアは、57.2%と相当程度高いものである。また、同人のサイディング材が、2024年に経済産業省・製造産業局長賞を受賞した事実が認められる。

さらに、請求人は、別掲3及び5のような実(さね)を有する別掲4のような横長長方形の板状のサイディング材(以下「請求人商品」という。)を取り扱っていることが認められる。

しかしながら、登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならないところ(商標法第27条第1項)、本願商標は、願書に記載した商標からして、上記1(2)のとおり、長方形又は台形の板状の形状であり、台形の板状の形状とみた場合には、本願商標と請求人商品とは同一とはいえず、請求人は本願商標を使用しているとはいえない。

他方、本願商標を長方形の板状の形状とみた場合には、本願商標と請求人商標とは、実質的に同一ということができ、請求人は本願商標を使用していると認められる。

しかしながら、その場合においても、請求人商品が掲載されているカタログ(物件原審(k)及び物件当審(k01~26))は、化粧面の形状(本願商標でいうところの赤色で着色された商標を構成しない部分)を前面に押し出すものとなっており、本願商標の立体的形状(商標を構成する部分、すなわち化粧面以外の部分)を前面に押し出すような広告とはなっていない。

また、請求人商品が掲載されているカタログには、実(さね)の形状を大きく表示したものもあるが(物件当審(k63~70))、その数は僅かである。

さらに、請求人のカタログである、付属部材(留付金具)や施工に関するページ、クリーンウッド法対象商品に関するページにおける、サイディング材の実(さね)に関する掲載は(物件原審(c)、物件当審(c)、物件当審(k27~62))、留付金具や施工等について紹介しているものであって、サイディング材そのものを広告しているものではない。

加えて、請求人商品が掲載されている新聞記事(物件(j))は、経済産業省・製造産業局長賞の受賞の記事であるところ、当該記事には、高い環境性能や強靱性、幅広いバリエーションによるデザイン性が評価されていることが記載されており、実(さね)の形状が評価されたものとはいえない。

そして、請求人商品に関する広告宣伝は、請求人のカタログのみであり、第三者による紹介記事は、僅か1つの新聞記事のみであることからすれば、本願商標は、使用をされた結果、半永久的に商標として使用し独占販売することを許容するに足りる十分な自他商品識別力が獲得されたとは、到底認められない。

そうすると、本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。

3 まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、これを登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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