結論テキスト
登録第6931054号商標の商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025900163 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6931054号商標(以下「本件商標」という。)は、「ZOINSHOT」の文字を標準文字で表してなり、令和6年12月20日に登録出願、第9類「双眼鏡,スマートフォン用ケース,携帯電話機用ストラップ,スマートフォン用のフラッシュランプ,ヘッドセット,携帯電話機及びスマートフォン用ホルダー,コイル用ホルダー,マイクロホン,スマートフォン用自撮りリングライト,自撮り棒(手持用一脚),ノートブック型コンピュータ専用スタンド,写真装置用スタンド,望遠鏡,カメラ用三脚,ワイヤレススピーカーマイク」を指定商品として、同7年5月19日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第1621675号商標(以下「引用商標」という。)は、「Inshot」の文字を書してなり、2021年(令和3年)8月30日に国際商標登録出願、第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和4年9月30日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第38号証を提出した。
申立人は、写真・動画編集分野を中心としたモバイルアプリ開発において世界的に著名な企業であり、代表的アプリ「Inshot」は、2025年5月時点で世界累計ダウンロード数9億回以上、日本国内でも累計1400万回超のダウンロード実績を有している。同アプリはGoogle Play及びApp Store双方で高評価(日本国内評価4.8以上)を獲得し、写真カテゴリにおいて長年上位にランクインしている(甲3~甲5)。
加えて、BCN、isuta、Douga-tech等国内有力メディアでも繰り返し紹介され(甲6~甲8)、SNS公式アカウント(YouTube登録者243万超、TikTokフォロワー61万超、「いいね」66万超、X(旧Twitter)フォロワー8500人超等)を通じて強力なブランド発信を行っている(甲9~甲11)。また、同アプリは、2016年に「Best of App on Google Play」、2017年及び2020年に「Editor’s Choice on Google Play」、2020年に「MI GetsApp Best App」及び「Vivo Best Ranked」をそれぞれ受賞している(甲12~甲15)。
これらの事実により、引用商標は本件商標の登録出願時において、日本国内外の取引者及び需要者の間で広く認識された周知・著名商標であったことは明らかである。
また、申立人は、自身の代表的アプリであり最も重要な商標である「Inshot」に関して、世界各国で商標権を取得し、自社ブランドの積極的保護に努め、各国の登録証又は商標の保護が認められたこと示す資料を提出する(甲16~甲38)。
(1)本件商標について
ア 本件商標の構成要素・要部
本件商標は、「INSHOT」部分が要部として、取引者及び需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。本件商標の構成中の語頭「ZO」部分は、我が国において外国語として何らかの意味を持つものとして親しまれている語ではなく、むしろ、本件商標は、申立人が有する著名な引用商標である「Inshot」と同一の文字配列「INSHOT」の文字がそのまま含まれていることから、たとえ「ZO」と「INSHOT」の間にスペースがなくとも、「INSHOT」部分が申立人の業務に係る写真・動画関連分野の商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時には、高い周知著名性を獲得するに至っている事実に鑑みれば、本件商標の構成中「INSHOT」部分が、取引者及び需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部となるというべきである。これは、周知著名商標を含む複合商標について、周知部分が要部として取引者に認識されやすいとした過去の審決・判例の考え方にも合致する(平成28年1月20日判決(知財高判平27(行ケ)10158号)参照。)。
以上より、本件商標においては、要部である「INSHOT」部分が他の商標との類否判断の対象となるというべきである。
イ 本件商標の称呼・観念
本件商標の構成中の「INSHOT」部分が出所表示標識として強い印象を生ずる部分であるため、「INSHOT」部分より「インショット」の称呼が生じ、引用商標に係る写真・動画関連分野の商品等の商標として周知・著名な「INSHOT」の観念も生じる。
(2)引用商標について
引用商標は、ローマ文字「Inshot」の構成から「インショット」の称呼を生じ、また、申立人の写真・動画関連分野の商品等の商標として周知・著名な「Inshot」の観念も生じる。
(3)本件商標と引用商標との称呼・観念・外観の類否
本件商標と引用商標とは称呼及び観念において類似するものであることは明らかであり、外観においても、本件商標の構成中の「INSHOT」が分離独立して商標の要部を構成するものと認識する事情があることから、外観上同様の印象を受け、視覚を通じて認識する外形も類似する。よって、本件商標は、引用商標と外観上も類似する。
(4)本件商標と引用商標との指定商品の類似性
本件商標に係る指定商品中「スマートフォン用ケース,携帯電話機用ストラップ,スマートフォン用のフラッシュランプ,ヘッドセット,携帯電話機及びスマートフォン用ホルダー,コイル用ホルダー,マイクロホン,スマートフォン用自撮りリングライト,自撮り棒(手持用一脚),ノートブック型コンピュータ専用スタンド」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、外観、称呼及び観念において引用商標と類似する商標であって、本件商標は引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品を指定する商標でもある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(1)引用商標の周知著名性・独創性
引用商標は、本件商標の登録出願時において、日本国内外の取引者及び需要者の間で広く認識された周知・著名商標であったことは明らかであり、国内外で広範な利用実績と高い評価を有し、商標としての識別力は高く、独創性も高いものと評価できる。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
引用商標は、ローマ文字「Inshot」の構成から「インショット」の称呼を生じ、申立人の写真・動画関連分野の商品等の商標として周知・著名な「Inshot」の観念も生じる。
他方、本件商標の構成中の語頭「ZO」部分は、我が国において外国語として何らかの意味を持つものとして親しまれている語ではなく、本件商標の指定商品が、写真・動画関連分野の商品等との関連性が非常に高いことに鑑みれば、本件商標に接した取引者及び需要者は、周知・著名な引用商標を連想することは明らかであるため、本件商標の構成中の「INSHOT」部分から「インショット」の称呼を生じ、申立人の写真・動画関連分野の商品等の商標として周知・著名な「Inshot」の観念も生じる。
よって、本件商標は、引用商標と称呼及び観念において類似すると考えるのは自然であり、外観においても、本件商標の構成中の「INSHOT」が要部を構成することから、引用商標と外観上も類似する。仮に、本件商標が引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号における類似とまではいえないとしても、極めて強い出所識別機能を有する「Inshot」の部分と文字配列が共通する部分がある以上、その類似性の程度は極めて高いことは明らかである。
(3)本件商標と引用商標との指定商品の関連性、及び取引者・需要者の共通性
本件商標の指定商品の多くは写真・動画撮影/編集に直接利用される又はスマートフォンでのコンテンツ制作に用いられる周辺機器である。一方で、引用商標は、スマートフォン等での写真・動画の編集・加工を主目的とした著名なアプリケーションであり、その需要者層は上記周辺機器の購入・利用者と高い重複を有する。すなわち、両者の指定商品・サービスは用途・目的が密接に関連しており、取引チャネルや需要者層も類似している。よって、本件商標の指定商品と引用商標が用いられる業務・商品分野との間には高い関連性、並びに取引者及び需要者の共通性が存在する。
したがって、本件商標の指定する商品分野は、引用商標のブランド・信頼に依拠して商品選択が行われる分野と共通していることから、本件商標の使用は、通常払われる注意力を基準にした場合に、引用商標と出所混同又は誤認混同を引き起こす蓋然性が高い。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標との外観、称呼及び観念上の類似性、引用商標が周知著名性を獲得し高い独創性を有していること、申立人が周知著名性を獲得している写真・動画分野と密接に関連する商品を本件商標が指定商品としている点等の取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも申立人又は申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずる蓋然性が高いことは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(1)引用商標の著名性
引用商標は本件商標の登録出願時において、日本国内外の取引者及び需要者の間で広く認識された著名商標であり、ブランドとして需要者の間に浸透しているため、商標法第4条第1項第19号に規定する「他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当する。
(2)本件商標と引用商標との類似性
本件商標は、外観、称呼及び観念において引用商標と類似する商標である。
(3)商標権者の不正の目的
引用商標は、本件商標の登録出願時において日本国内外の取引者及び需要者の間で広く認識され、高い名声、信用及び評判を獲得するに至っており、登録出願時には引用商標の著名性が高いことを容易に認識できる状況であったことは明らかである。一方、本件商標の要部は、引用商標と同一の称呼及び観念が生じ、その指定商品は、引用商標が著名性を獲得した写真・動画分野の商品と極めて密接に関連する商品であることを考えると、本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)が著名な引用商標を知らず、偶然に引用商標と同一の文字配列を含む本件商標を登録出願したと考えるのは不自然であり、引用商標の有する高い名声、信用及び評判にフリーライドする目的で出願及び登録を行ったと合理的に推認される。特に、構成文字列が引用商標をほぼそのまま包含している点は、意図的な類似取得の強い傍証となる。
したがって、商標権者が本件商標を不正の目的で使用するものであることは明らかである。
(4)小括
以上のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る写真・動画関連分野の商品等について世界的に著名な商標となっていること、本件商標は外観、称呼及び観念上引用商標と類似するものであること、商標権者は引用商標の名声等に便乗して出所表示上の独占的利益を図る目的で出願及び登録を行ったものであると推認されることから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当すると判断されるべきである。
(1)申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア 引用商標は、「動画編集アプリ」に使用されており(以下、引用商標が使用された「動画編集アプリ」を「本件アプリ」という。)、本件アプリは、「Google Play」において、5億回以上ダウンロードされるとともに「4.8」の評価を得ている(甲4)。
イ 本件アプリは、「BCN+R」と称するウェブサイトにおける2023年(令和5年)12月29日付けの記事(甲6)、「isuta」と称するウェブサイトにおける2024年(令和6年)12月4日付けの記事(甲7)及び「カンタン動画入門」と称するウェブサイトにおける同年4月8日付けの記事(甲8)において紹介されている。
ウ 本件アプリは、「YouTube」、「TikTok」及び「X」において広告宣伝されている(甲9~甲11)。
エ 本件アプリは、2016年(平成28年)に「Best of App on Google Play」、2017年(平成29年)及び2020年(令和2年)に「Editors’ Choice on Google Play」、2020年(令和2年)に「MI GetsApp Best App」及び「Vivo Best Ranked」をそれぞれ受賞している(甲12~甲15、申立人の主張)。
オ 引用商標は、多くの国において商標登録されている(甲16~甲38)。
(2)判断
前記(1)で認定した事実によれば、引用商標は、「動画編集アプリ」に使用されており、引用商標が使用された本件アプリは、相当数ダウンロードされるとともに高い評価を得ており、また、本件アプリは、ウェブサイトでの紹介記事の掲載、SNS上での広告宣伝、受賞歴があり、さらに、引用商標は、多くの国で商標登録されていることが認められる。
しかしながら、ウェブサイトでの紹介記事の掲載数は僅か3件であり、また、受賞歴については、具体的に何が評価されての受賞なのかが不明であり、さらに、多くの国で商標登録されていることは、周知著名性を根拠付ける直接の証拠とはならない。
そうすると、引用商標は、「動画編集アプリ」を表示するものとして、日本国内の需要者の間に一定程度認識されているとはいえても、日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。
したがって、引用商標の周知著名性の程度は低いといわなければならない。
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「ZOINSHOT」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成文字は、同書、同大、等間隔でまとまりよく一体に表されているものであって、その構成文字全体から生じる「ゾインショット」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成文字中には、引用商標の構成文字とつづりを共通にする「INSHOT」の文字列が含まれているとしても、本件商標の前記構成及び称呼に加えて、前記1(2)のとおり、引用商標が日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されているとはいえないことからすると、本件商標に接する取引者及び需要者は「INSHOT」の文字部分に着目することなく、本件商標の構成全体をもって不可分一体のものとして認識するとみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成全体から「ゾインショット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、「Inshot」の文字を書してなるものであり、「インショット」の称呼を生じ、特定の観念を生じないと判断するのが相当である。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、語頭における「ZO」の文字の有無という明らかな差異を有していることから、明確に区別でき、相紛れるおそれはないものである。
また、本件商標から生じる「ゾインショット」の称呼と引用商標から生じる「インショット」の称呼とは、語頭における「ゾ」の音の有無という明らかな差異を有するものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、音調、音感が明らかに相違し、相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標及び引用商標からは、特定の観念は生じないから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、たとえ観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれはないものであるから、これらの外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
したがって、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標とはいえないから、本件商標の指定商品中に引用商標の指定商品と同一又は類似する商品が含まれているとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
前記1(2)のとおり、引用商標は、「動画編集アプリ」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとはいえず、その周知著名性の程度は低いものである。
また、前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、たとえ「INSHOT(Inshot)」の構成文字を共通にするとしても、その類似性の程度は低いといわなければならない。
そうすると、引用商標の独創性の程度、本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る「動画編集アプリ」との関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性を考慮したとしても、本件商標に接する取引者及び需要者が引用商標を連想又は想起することはなく、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用をしても、その商品が他人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
前記1(2)のとおり、引用商標は、「動画編集アプリ」を表示するものとして日本国内及び外国の需要者の間に広く認識されているとはいえない。
また、前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。
そうすると、本件商標は、不正の目的について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するとはいえず、その登録が同項の規定に違反してされたものとはいえない。
他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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