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Trademark Appeal Case

著名商標の類否判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900165
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6933410号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6933410号商標(以下「本件商標」という。)は、「SOGIlympic」の文字を標準文字で表してなり、令和5年8月14日に登録出願、第35類及び第41類に属する別掲のとおりの役務を指定役務として、同7年4月17日に登録審決、同年5月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する国際登録第1747104号商標(以下「引用商標」という。)は、「OLYMPIC」の欧文字を横書きしてなり、2022年(令和4年)12月7日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、同年12月19日に国際商標登録出願、第9類、第35類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2025年(令和7年)8月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第15号及び同法第8条第1項に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第170号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第6号について

(1)申立人について

申立人は、近代オリンピックの創始者であるフランス人、ピエール・ド・クーベルタン男爵の提唱で1894年6月23日に設立された、オリンピック競技大会を運営・統括する国際的な非政府の非営利団体であり、オリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し、次の世代へと受け継いでいく様々な活動たるオリンピック・ムーブメントを統括する最高機関として、オリンピック憲章に従い、オリンピズムを普及させる役割を担っている(甲4)。

(2)「OLYMPIC」標章の著名性及び公益性について

ア 申立人が運営・統括に携わる、近代オリンピック競技大会の誕生は、今から130年以上前の1896年であり、同年に第1回オリンピックアテネ大会が開催され、以後、オリンピック競技大会は1世紀以上にわたり、美と技を競う世界規模の平和とスポーツの祭典として原則として2年又は4年に一度開催されてきた。

近年に開催された、2008年の第29回夏季オリンピック北京大会と2012年の第30回夏季オリンピックロンドン大会には、いずれも204の国と地域から1万人以上もの選手が参加し(甲5)、また、2016年の第31回夏季オリンピックリオデジャネイロ大会には過去最大の205の国と地域から1万1000人以上の選手が参加しており(甲6)、テレビ・インターネット・ラジオを通じて世界中の数十億の人々に視聴された。

我が国で出版されたオリンピック競技大会に関する書籍の一部(甲7~甲66)からは、同競技大会が我が国でも大いに注目されており、「OLYMPIC」の文字からなる引用商標と同一の標章が、オリンピック競技大会を表すものとして、130年以上もの間継続して使用されてきた事実をうかがい知ることができる。

以上より、130年以上の長期にわたり、世界の各都市を舞台として盛大に開催されてきた、オリンピック競技大会を指称する「OLYMPIC」なる標章は、全世界で老若男女問わず、申立人がその運営・統括の中心となって開催するオリンピック競技大会やその関連活動等を広く示すものとして認識されており、その程度は極めて高く、世界でも最も著名な標章の一つであると共に、公益性も非常に高いものであることは明白である。

イ オリンピック憲章では、申立人の使命として、「スポーツと文化および教育を融合させる活動を奨励し支援する」と規定されている(甲4)。かかる規定に基づき、申立人は、オリンピック・ムーブメントの一環として、様々な教育・文化活動を世界的規模で行い、「OLYMPIC」標章は、これらの各種教育・文化活動についても広く用いられ、親しまれている。我が国では、日本オリンピック委員会(JOC)等がオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業として、各種の教育・文化活動を国内で精力的に行っており(甲67~甲119)、このような活動は多岐に渡る。

申立人は、多くの協力者と共に、オリンピック・ムーブメントと呼ばれる、オリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し、次の世代へと受け継いでいく様々な活動を行い、また、オリンピック憲章に従い、オリンピズムを推進すべく、普遍かつ恒久的な活動を行っており、このような活動の状況からしても「OLYMPIC」が公益性の高い標章であることは明らかである。

(3)本件商標と「OLYMPIC」標章について

本件商標は、「SOGIlympic」の標準文字をもって表されてなり、主にセクシャルマイノリティに関する研修・教育・PR等の事業を営む本件商標権者によって出願されたものである(甲126、甲127)。他方、申立人に係るオリンピック競技大会を表象する「OLYMPIC」標章は、欧文字を横書きにして表されてなるものである。

しかして、本件商標の構成中「SOGI」の文字は、性的指向を示す「Social Orientation」と性自認を示す「Gender Identity」の頭文字を結合させてなる頭字語であり、これらの概念を表す包括的な総称として、セクシャルマイノリティ分野への理解促進を図る啓発活動等に従事する国や地方自治体、教育機関、民間企業、報道機関等といった多岐にわたる主体により広く用いられているものであることを考慮すると(甲129~甲170)、本件商標の指定役務との関係では、役務が提供される分野等を表したものと把握されるにすぎないものといい得るものである。

加えて、本件商標権者にあっては、そのホームページにおいて、「セクシャルマイノリティに関する事業を通じて、社会の枠組みを取り払い、それぞれの立場に新たな価値を生み出す」といった理念を掲げていることがうかがい知れるところ(甲128)、そのような理念は、申立人に係るオリンピック競技大会や申立人がオリンピック・ムーブメントの普及・啓発活動の一環として精力的に行ってきたオリンピック競技大会や各種教育・文化活動とその内容や理念等において相通じるところがあることは明らかである。

そうとすれば、本件商標は、その構成中の「lympic」の文字部分につき格段に強い自他役務識別力を有するものと認められることから、これに接する取引者・需要者は、「lympic」の文字が語順を入れ替えることもなくそのまま「OLYMPIC」に包含されることも相まって、当該文字部分からオリンピック憲章に基づく著名な標章たる「OLYMPIC」を想起し、記憶にとどめるものというべきであり、「OLYMPIC」の標章と何らかの関連性があると捉えられ、全体として相紛らわしい類似の商標と認識されると考えられるものである。

(4)小括

「OLYMPIC」標章は、申立人に係る公益に関する事業であって営利を目的としない事業であるオリンピック競技大会を表象するものとして、本件商標の登録出願時には、我が国はもとより世界的に著名になっており、かつ、その状態は登録査定時においても継続していたと認められるものである。そして、本件商標と「OLYMPIC」商標とは類似するものであることからすると、本件商標は、商標法第4条第1項第6号の規定に違反して登録されたことが明らかである。

2 商標法第4条第1項第7号について

(1)「OLYMPIC」標章は極めて公益性が高く、世界各国で著名に至っていることは明白であるから、これと同一又は類似、あるいは、これとの関連性を想起させるような商標の登録・使用が認められれば、スポーツによる教育、平和への貢献といったオリンピック・ムーブメントにより築き上げられた価値観が棄損され、公益に反する結果を招くことは想像に難くなく、特に、2021年の夏には東京で第32回夏季オリンピック東京大会が開催され、日本でもオリンピック・ムーブメントの公益的な目標の達成に向けて官民一体となって邁進してきたことにも鑑みると、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性の検討に際しては、「OLYMPIC」標章及びこれの使用される各種活動の公益性という点が十分に考慮されるべきである。

(2)申立人は、オリンピズムの理念に基づいてオリンピック競技大会を頂点としたオリンピック・ムーブメントを永きにわたり主導的な立場で推進してきたが、申立人と何ら関わりのない本件商標は、著名な「OLYMPIC」標章に便乗し、その信用、名声にあやかろうとする意図が明らかであって、申立人が推進してきたオリンピック・ムーブメントが阻害されるに他ならない。

本件商標は、性的指向を示す「Social Orientation」と性自認を示す「Gender Identity」の両概念を表す包括的な総称として広く用いられる「SOGI」の語と「OLYMPIC」の語を組み合わせて構成されてなるものと容易に理解させるものであることから、著名な「OLYMPIC」標章に着想を得て創作されたものであることは明白であると共に、本件商標権者が掲げる理念や事業活動についてもオリンピック競技大会やそれに関連した各種教育・文化活動と相通じる要素があること等をも鑑みると、これに接する需要者等をして「OLYMPIC」標章との関連性を想起させるおそれが極めて高いというべきである。

上述の諸点に鑑みると、本件商標は、「OLYMPIC」標章に化体した信用にただ乗りし、不正な利益を得ようとしたものであって、スポーツを通じ、平和でよりよい世界の実現に貢献するという、まさに公共の利益を追求するオリンピック競技大会の尊厳が害されるおそれがあるのみならず、「OLYMPIC」標章の著名性にあやかって不正な利益を得ようとするものであり、公正な取引秩序を乱すばかりか、国際信義及び公序良俗にも反するものである。

したがって、本件商標のように申立人と何ら関係のない者が本件商標を独占して使用することは、オリンピック憲章に基づき開催されるオリンピック競技大会の権威を損なうおそれがあるばかりか、社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すものと判断されるのが相当である。

そうすると、本件商標は、「OLYMPIC」標章に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。

(3)小結

本件商標は、申立人が運営・統括に携わるオリンピック競技大会やオリンピック・ムーブメント推進のための様々な式典やイベントで使用されている著名な「OLYMPIC」標章に化体した信用にただ乗りし、あやかろうとしたものであり、社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すことは明らかであって、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたことが明らかである。

3 商標法第8条第1項について

(1)本件商標と引用商標とが類似の関係にあることは前記のとおりであって、また、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とは類似のものである。

したがって、引用商標に係る出願日が本件商標に係る商標登録出願の出願日に先立つものであることも考慮すると、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたものである。

(2)小結

本件商標は、引用商標と同一又は類似の商標であって、その指定役務も同一又は類似のものである。したがって、本件商標は、商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたことが明らかである。

4 商標法第4条第1項第15号について

(1)「OLYMPIC」の著名性について

上記1(2)のとおり「OLYMPIC」標章は、我が国は当然として全世界で極めて著名性の高いものである。

オリンピック競技大会の開催をはじめとするオリンピック・ムーブメントの諸活動を継続的に実施のためには莫大な費用が必要であり、オリンピック・ムーブメントの推進には、民間企業等の資金的・技術的な協力が不可欠であることから、申立人は、世界各国でオリンピック・ムーブメントの推進と、オリンピック競技大会運営のための資金調達を目的としたマーケティング活動を実施している。

このようなマーケティングの主なものとしては、スポンサーシップ、放映権、ライセンシングがある(甲120、甲121)。このうち、スポンサーシップ契約は、原則として1業種につき1社のみとされ、これにより契約したスポンサーは、契約したスポンサーの種類に応じ、「OLYMPIC」の名称、オリンピック・シンボル(五輪マーク)、大会のエンブレムと大会マスコット等のオリンピック資産を利用した様々なマーケティング活動を行うことができる。オリンピックのスポンサー契約のうち、最高位のスポンサーシッププログラムが、申立人が1985年にスタートさせたTOP(THE OLYMPIC Partner)プログラムであり、TOPのスポンサー企業は、世界的規模で、契約を締結した各分野について独占的に、オリンピック資産を活用したマーケティングを行うことが可能となる(甲121)。なお、2014年の冬季オリンピックソチ大会及び2016年の夏季オリンピックリオデジャネイロ大会のTOPスポンサーは12社という非常に厳選された数字となっている。

また、オリンピック開催国では、国内マーケティングプログラムが用意され、TOPスポンサーの業種との調整を踏まえて、業種別にスポンサー企業が決められることになっており(甲121)、例えば、2012年の夏季オリンピックロンドン大会のスポンサー企業の数は42社、2014年の冬季オリンピックソチ大会のスポンサー企業の数は46社に上った。

そして、2021年に開催された第32回夏季オリンピック東京大会でも、TOPスポンサー企業、東京2020オリンピックゴールドパートナー及び東京2020オリンピックオフィシャルパートナーとしての契約がこれまでと同様に締結されており、同大会の開催に伴う経済波及効果は約3兆円との試算が示されていたことからもわかるように、マーケティング活動を介しても、「OLYMPIC」が著名なものとなっていることが容易に理解できるものである。

(2)出所の混同のおそれについて

申立人の使用に係る「OLYMPIC」が1894年から現在に至るまでおよそ130年以上に渡り、世界最大級のスポーツの祭典であるオリンピック競技大会を指称する商標として使用されており、オリンピック競技大会といったスポーツの興行の企画・運営にとどまらず、これに関連した極めて広範な商品や役務との関係で著名であることは、上述の諸点より明らかである。

また、本件商標は、上述のとおり、性的指向を示す「Social Orientation」と性自認を示す「Gender Identity」の両概念を表す包括的な総称として広く用いられる「SOGI」と「OLYMPIC」の語を組み合わせて構成されてなるものと容易に理解させるものであることから、著名な「OLYMPIC」標章に着想を得て創作されたものであることは明白であるとともに、本件商標権者が掲げる理念や事業活動もオリンピック競技大会やそれに関連している各種教育・文化活動と相通じる要素があることも考慮すると、「OLYMPIC」の極めて高い著名性と相まって、本件商標は「OLYMPIC」関連の一群の商標と認識され得るものである。

そして、申立人は、各企業とのスポンサーシップ契約を締結し、それらのスポンサーがオリンピック資産を利用したさまざまなマーケティング活動を行っているという実態からすれば、著名な「OLYMPIC」商標との関係性を容易に想起させる本件商標が付された本件指定役務が実際の商取引に資された場合、これに接した需要者・取引者は、申立人あるいは日本オリンピック委員会と正式なスポンサー契約を締結した、オフィシャルスポンサーの業務に係る役務であるかのごとく、役務の出所について混同を生じるおそれがあることは明らかである。

(3)小結

申立人が中心となって開催されるオリンピック競技大会やオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業を表示する「OLYMPIC」と密接な関連性を印象付ける本件商標は、これが使用された場合、オリンピック競技大会を容易に想起又は連想させ、申立人あるいは日本オリンピック委員会とスポンサー関係にある者の業務に係る役務であると役務の出所について混同を生じさせるおそれがあることから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第6号該当性について

(1)引用商標及び「OLYMPIC」標章の周知性について

申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。

ア 申立人は、1894年に設立された、オリンピック競技大会を運営・統括する国際的な非政府の非営利団体であって、「OLYMPIC」標章は、1896年の第1回オリンピックアテネ大会以降、130年以上にわたり、美と技を競う世界的規模の平和とスポーツの祭典として、原則として4年又は2年に一度開催されるオリンピック競技大会を表示するものとして継続して使用されていたことが確認できる(甲5~甲66)。

イ オリンピック憲章では、申立人の使命として、「スポーツと文化および教育を融合させる活動を奨励し支援する。」と規定され(甲4)、申立人は、当該規定に基づき、オリンピック・ムーブメントの一環として、様々な教育・文化活動を世界的規模で行い、我が国でも各種教育・文化活動を多岐にわたり行っており(甲67~甲119)、「OLYMPIC」標章は、当該競技大会やその関連活動等を指称するものとして広く認識されている。

したがって、「OLYMPIC」標章及び当該標章と構成を同じくする引用商標(以下、まとめて「引用商標等」という。)は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章として、本件商標の登録出願前より現在に至るまで著名なものであると認められる。

(2)本件商標と引用商標等との類否について

ア 本件商標について

本件商標は、「SOGIlympic」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成は、各文字が同書、同大、等間隔でまとまりよく表されており、その構成中のいずれかの文字部分が強調されて表現されているものではないことから、視覚上、一体的に看取されるものである。

また、本件商標の構成全体から生じる「ソジリンピック」又は「ソギリンピック」の称呼は、7音からなり冗長とはいえないことから、無理なく一連に称呼し得るものである。

そして、「SOGIlympic」の文字は、一般の辞書に載録された語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解、認識させるものでもないから、一種の造語として認識されるものである。

したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「ソジリンピック」又は「ソギリンピック」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

イ 引用商標等について

引用商標等は、「OLYMPIC」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、当該文字は、上記(1)のとおり、申立人に係るオリンピック競技大会を示す標章として広く認識されている。

したがって、引用商標等は、その構成文字に相応して「オリンピック」の称呼及び「オリンピック競技大会」の観念を生じるものである。

ウ 本件商標と引用商標等の類否について

本件商標と引用商標等は、それぞれ上記ア及びイのとおりの構成からなるところ、外観においては、10文字と7文字の構成文字からなり、文字数の差異に加えて、語頭における「SOGI」と「O」の差異を有するものである。

してみれば、上記差異は容易に認識できるものであるから、両者は、外観上、明確に区別できるものである。

次に、称呼においては、本件商標から生じる「ソジリンピック」又は「ソギリンピック」の称呼と引用商標等から生じる「オリンピック」の称呼とは、構成音数が相違することに加えて、語頭における「ソジ」又は「ソギ」と「オ」の音に明らかな差異を有するものであるから、明瞭に聴別され、相紛れるおそれはない。

さらに、観念においては、本件商標からは特定の観念が生じないのに対し、引用商標等からは「オリンピック競技大会」の観念が生じるから、相紛れるおそれはない。

そうすると、本件商標と引用商標等とは、外観、称呼及び観念のいずれにもおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。

エ 申立人の主張について

申立人は、本件商標構成中の「SOGI」の文字は「性的指向と性自認を表す総称」であり、本件商標の指定役務との関係では役務が提供される分野を表したものにすぎないこと、また、本件商標権者が掲げる理念は、申立人に係るオリンピック競技大会や各種教育・文化活動の理念等と相通じるところがあることから、本件商標は、その構成中の「lympic」の文字部分に各段に強い自他役務識別力を有し、「lympic」の文字部分に接する取引者、需要者は、当該文字部分から引用商標等を想起し、記憶にとどめるというべきであり、引用商標等と関連性があると捉えられ、全体として相紛らわしい類似の商標と認識される旨主張している。

しかしながら、本件商標「SOGIlympic」は、上記1(2)アのとおりであるところ、かかる構成及び称呼にあっては、本件商標に接する取引者、需要者が、「SOGI」の文字と「lympic」の文字に分離して看取し、殊更、その構成中の「lympic」の文字部分のみに着目するということはなく、構成文字全体をもって、特定の意味を有しない一体不可分の造語を表したものとして認識し、把握するというべきである。

したがって、本件商標が引用商標等を連想又は想起させるものでなく、引用商標等と相紛らわしい類似の商標とはいえず、申立人の主張は採用できない。

(3)小括

上記(1)のとおり、引用商標等は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章として著名なものであると認められる。

しかしながら、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標等は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。

そうすると、本件商標は、「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なもの」と同一又は類似の商標と認めることはできないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。

2 商標法第8条第1項について

上記1(2)のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第8条第1項に違反して登録されたものとはいえない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)引用商標等の周知性について

上記1(1)のとおり、引用商標等は、申立人により開催されるオリンピック競技大会やその関連活動等を指称するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたものである。

(2)本件商標と引用商標等の類似性の程度について

上記1(2)のとおり、本件商標は、引用商標等と非類似のものであり、別異の商標というべきものであるから、その類似性の程度は低い。

(3)出所の混同のおそれについて

上記(1)のとおり、引用商標等は、我が国の需要者の間に広く知られており、また、引用商標等が使用される商品及び役務の需要者と本件商標の指定役務の需要者が一部共通するとしても、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標等とは、類似性の程度は低いことから、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務に使用したときに、これに接する取引者、需要者が、引用商標等を連想、想起するとはいえず、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。

その他、本件商標が引用商標等との関係において、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

(4)申立人の主張について

申立人は、本件商標は、「性的指向と性自認を表す総称」として広く用いられる「SOGI」と「OLYMPIC」の語を組み合わせて構成されてなるものと容易に理解させるものであることから、著名な「OLYMPIC」標章に着想を得て創作されたものであることは明白であるとともに、本件商標権者が掲げる理念や事業活動もオリンピック競技大会やそれに関連している各種教育・文化活動と相通じる要素があることも考慮すると、「OLYMPIC」の極めて高い著名性と相まって、本件商標は「OLYMPIC」関連の一群の商標と認識され得るものである旨主張している。

しかしながら、本件商標「SOGIlympic」は、上記1(2)アのとおりであるところ、かかる構成及び称呼にあっては、本件商標に接する取引者、需要者は、一体不可分の造語として認識、把握するというべきであって、直ちに「OLYMPIC」標章と関連づけて看取されるものとはいえない。したがって、申立人の主張は採用できない。

(5)小括

以上のとおり、本件商標は、本件商標権者がその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標等を連想、想起するとはいえず、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第7号該当性について

上記1(1)のとおり、引用商標等は、申立人により開催されるオリンピック競技大会を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたものである。

しかしながら、上記1(2)のとおり、本件商標は、引用商標等とは非類似のものであり、別異の商標というべきものであって、さらに、上記3のとおり、本件商標は、引用商標等を連想又は想起させるものでもない。

そうすると、引用商標等が周知であり、かつ、本件商標から引用商標等を連想することを前提に引用商標等に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不正の利益を得る等の目的をもって本件商標を登録出願し登録を受けたものであるとする申立人の主張に理由はない。

その他、本件商標の構成が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような構成のものでないことは明らかであり、また、その使用が、法的に禁じられているとか、公正な取引秩序を乱すおそれがあったり、国際信義に反するとすべき理由は見いだせない。

してみると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に当たるとは認められないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

5 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第15号のいずれにも該当せず、その登録は、同項及び同法第8条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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