結論テキスト
登録第6953013号商標の商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025900208 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6953013号商標(以下「本件商標」という。)は、「Proust」の文字を標準文字で表してなり、令和6年10月30日に登録出願、第9類、第16類、第41類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同7年7月8日に登録査定され、同月30日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由に該当するとして引用する登録商標及び標章は以下のア及びイのとおりである。
ア 申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第6033827号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成29年8月8日に登録出願、第40類「名刺・はがき・チラシの印刷,印刷,印刷に関する情報の提供」を指定役務として、同30年4月6日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
イ 申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する標章は、申立人が実際の取引において使用し、香り付き印刷物の分野において需要者間に広く認識されていると主張する「プルースト」の片仮名文字を横書きしてなるもの(以下「使用商標」という。)である。
申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第16類「印刷物」(以下「申立てに係る商品」という場合がある。)について、商標法第4条第1項第11号、同項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第21号証(以下「甲○」と記載する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 商標の類否について
本件商標と引用商標は、両者とも「プルースト」の称呼を生じるので共通している。
外観においても、本件商標が英文字1段の横書きで「Proust」と表記されるのに対し、引用商標が英文字横書き「PROUST」を上段にカタカナ横書き「プルースト」を下段に配した2段併記されている点で相違する。しかし、本件商標と引用商標の英文字部分について対比すると、大文字と小文字の差異のみで綴りは一致しており、全体として両者は共通している。
観念においても、「マルセル・プルースト」というフランスの世界的な作家から、「プルースト効果」や「匂い」を連想する場合があり、「プルースト効果」等を想起させる点で両者は共通している。
よって、本件商標と引用商標は、その外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等が共通しており、両商標は類似している。
イ 指定商品・指定役務の類否について
本件商標の指定商品中第16類「印刷物」は、引用商標の指定役務第40類「印刷」と密接に関連している。「印刷物(商品)」は、そのほぼ全てが印刷業者の提供する役務によって作成される成果物であって、需要者層も同一で実質的に密接に関連して取引されており、「印刷物(商品)」と「印刷(役務)」は一体不可分の関係である。
例えば、「印刷物(商品)」の一例であるパンフレットや名刺は、「印刷(役務)」の成果物として提供される商品にも該当し、需要者からは「一体のサービス」として認識される場合が多い。
また、「印刷物(商品)」を取り扱う企業・団体・個人は、「印刷業者から役務の提供を受ける側」であり、双方の指定商品・指定役務は、同一または極めて近接した需要者層を対象とし、まさに需要者層が共通している。
また、商標審査基準〔改訂第16版〕「第4条第1項第11号」において、示されている商品と役務の類否判断基準に照らし合わせると、
(ア)同一の印刷事業者が、印刷物(カレンダー、ポスター、はがき、チラシ、名刺など)を製造し、販売している。なお、依頼者からの受注で印刷加工をする場合であっても、印刷加工したはがきや名刺等の印刷物を製品として依頼者へ販売していることには変わりない。印刷事業者とは、例えば、国内においては、大日本印刷,凸版印刷,共同印刷,株式会社小西印刷所,株式会社プリントパック等があげられる。
(イ)商品「印刷物」の用途と、役務「印刷」で得られる「印刷物」の用途は全く同じである。
(ウ)商品「印刷物」の提供(販売)場所は小売店、ECサイト販売、受発注販売、印刷所である。役務「印刷」の提供場所はECサイト、印刷所である。つまり、少なくともECサイト、印刷所において共通している。
(エ)需要者の範囲は、印刷物の購入者あるいは発注者であり、共通している。
以上のとおり、第16類「印刷物(商品)」と第40類「印刷(役務)」は上述の(ア)~(エ)を全て充足しており、両者は「類似」であると判断されるべきである。
よって、本件指定商品中第16類「印刷物」は、引用商標の指定役務である第40類「印刷」と類似している。
(2)商標法第4条第1項第10号について
申立人の使用商標は、2018年以降、香り付き印刷物の分野において広く取引者・需要者に認識されている周知商標である(甲2~甲14)。
本件商標と申立人の使用商標は称呼・観念において共通し、外観においても類似しているため、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当し、登録を受けることができない。
ア 商標の周知性
2018年から全国展示会出展、新聞・業界紙・NHKニュースでの報道、公式サイト及びSNSでの継続使用を通じ、本件商標の出願日である令和6年10月30日時点において、申立人の使用商標は、「香りの印刷所 プルースト」として需要者間に広く認識されている(甲2~甲21)。特に、NHKニュースで放映され、またGoogle検索結果においても上位に表示される事実から、取引者に周知性を獲得していることは明らかである。
イ 商標の類似性
本件商標「Proust」と申立人の使用商標は、称呼「プルースト」が共通し、外観も大文字・小文字の差異を除き共通しており、観念においても「プルースト効果」等を想起させる点で共通する。
よって、本件商標と申立人の使用商標は、その外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等が共通しており、両商標は類似している。
ウ 商品・役務との関係
本件商標の指定商品「印刷物」は、申立人が使用商標を使用する「香り付き印刷物」と同一である。
したがって、本件商標は申立人の周知商標と同一又は類似の商品に使用されるものであり、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 商標の類似性
本件商標と申立人の使用商標(周知商標)は称呼・外観・観念において類似する。
イ 出所混同のおそれ
本件商標「Proust」を「印刷物」に使用した場合、需要者は申立人の「香りの印刷所 プルースト」で製造・販売された印刷物であると誤認する蓋然性が高い。また、取引者・印刷業界関係者においても同様の混同が生じる。特に、「プルースト」という語は「プルースト効果」との関連からも「香り」・「記憶」を喚起し、申立人の業務分野との関連性が極めて強い。
ウ 商品・役務の関連性
本件商標の商品「印刷物」と、申立人が実際に印刷・販売している「名刺,カード,しおり,はがき」は共通する。また、印刷物は印刷役務の成果物として取引されるものであり、申立人の業務である「香りの印刷所 プルースト」と密接に関連している。
エ 需要者の共通性
印刷物を購入・発注する需要者は、印刷役務を利用する需要者と一致する。実際に、印刷事業者は印刷物の製造・販売と印刷役務の提供を一体的に行っており、需要者層は共通している。
オ 観念上の関連性
「Proust」は造語ではなく、「プルースト効果」として香りや記憶を想起させる語であり、申立人の業務分野(香り付き印刷物)と強い結びつきを有する。
カ 総合評価
以上の事実を総合すると、本件商標を指定商品「印刷物」に使用すると、需要者は申立人の「香りの印刷所 プルースト」で製造・販売された香り付き印刷物であるかのように誤認する可能性が極めて高く、商品・役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。また、申立人の業務に係る商品・役務であると認識しなくても組織的に申立人と関連がある商品であるとの誤認し、商品・役務の出所について混同を生じるおそれがある。
そして、出所混同を生じさせる本件商標の使用は、需要者の利益をも害することは明らかである。特に、申立人の「香りの印刷所 プルースト」で提供される商品は「香り付きの印刷物」であることに加え、本件商標からも「プルースト効果」或いは「匂い」という観念が生じることも相まって、誤認を生じるおそれは非常に高い。
したがって、本件商標の使用は需要者に出所混同を生じさせる蓋然性が高く、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標
本件商標は、「Proust」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「プルースト」の称呼が生じる。
また、「Proust」は、「プルースト《1871-1922;フランスの小説家》」(新英和中辞典(第7版)株式会社研究社)を意味する英語であることから、「フランスの小説家であるプルースト」の観念が生じる。
イ 引用商標
引用商標は、別掲1のとおり「PROUST」の欧文字及び「プルースト」の片仮名文字を上下二段に普通に用いられる方法で表してなるところ、その構成文字に相応して「プルースト」の称呼が生じ、「フランスの小説家であるプルースト」の観念が生じる。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標の外観を比較すると、本件商標と引用商標の構成中「Proust」の欧文字は大文字小文字の差異はあるものの綴りを同じくし、引用商標の構成中「プルースト」の片仮名文字は文字種の相違はあるものの、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を変換することは取引上一般に行われていることから、文字種の違いは、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとはいえず、共通する語を表したものとして、近似した印象を与える。
また、称呼においては、本件商標から生じる称呼と、引用商標から生じる呼とは同一である。
さらに、観念においては、本件商標から生じる観念と、引用商標から生じる観念は同一である。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観上近似し、称呼及び観念を同一にするものであることから、両者の外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は類似する商標と認められる。
エ 本件商標の申立てに係る商品と引用商標の指定役務との類否
本願商標の申立てに係る商品「印刷物」は、例えば、「絵はがき,楽譜,歌集,カタログ,カレンダー,雑誌,時刻表,書籍,新聞,地図,日記帳,ニューズレター,パンフレット」を含むものであるところ、これらの商品と引用商標の指定役務中「印刷」(以下「引用役務」という場合がある。)について、以下検討する。
(ア)事業者の共通性
申立てに係る商品は、主に出版社、新聞社、書店、文具店等が取り扱う物品としての商品である一方、引用役務は、主に印刷会社が発注を受けて、他人のために、オフセット印刷、活版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷などの手法を用いて、紙、段ボール、布、ガラス、ゴムなど様々な素材に印刷することを目的として提供される役務である。
そして、当審において職権で調査するも、印刷会社が物品としての印刷物を自己の商品として生産、販売することが一般的、かつ、恒常的な取引であるとの事情は見いだせず、申立てに係る商品の販売と引用役務の提供が同一事業者によって行われることが一般的であるとはいえない。
(イ)用途の共通性
申立てに係る商品は、当該商品に印刷された情報を、読者、購読者、利用者等の需要者に伝えるために用いられるものである一方、引用役務は、発注者が需要者に伝えたい情報等を紙等の素材に転写するために行われるものであることから、両者の用途は共通するものとはいえない。
(ウ)場所の共通性
申立てに係る商品は、書店、駅等の売店、文具店、オンラインショッピングサイト等で販売されているのに対し、引用役務は印刷会社(印刷所)において提供されているものであることから、両者の販売場所及び提供場所が共通するとはいえない。
(エ)需要者の共通性
申立てに係る商品の需要者は、主に書籍等の読者、新聞等の購読者、カレンダー等の利用者などである一方、引用役務の需要者は、主に印刷を発注し、納品を受ける事業者である。なお、個人の需要者が自己の名刺の印刷を印刷会社に発注するなどの例は一部あるものの、別掲2のとおり、ポスター・チラシ・マニュアル・料金表等を印刷する商標印刷、新聞・雑誌・文庫本等を印刷する出版印刷、紙袋・段ボール・缶・ペットボトル等に印刷する包装印刷など、印刷の役務は事業者向けに提供されることが一般的であると認められることから、両者の需要者が共通することが一般的であるとはいえない。
(オ)以上からすると、申立てに係る商品と引用役務とは、通常同一事業者により販売又は提供されているとの事情は認められず、用途、商品の販売場所及び役務の提供場所、需要者の範囲も異にするものであって、両者に同一又は類似の商標を使用した場合に、同一事業者の製造・販売又は提供に係る商品又は役務と誤認混同されるおそれがあるとはいえないことから、両者が互いに類似する商品及び役務であるということはできない。
また、申立てに係る商品と、上記引用役務以外の引用商標の指定役務も、同一又は類似するものとは認められない。
オ 小括
以上を踏まえると、本件商標と引用商標が類似するとしても、申立てに係る商品は、引用商標の指定役務とは類似しないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性
ア 使用商標の周知性
(ア)申立人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
申立人は、印刷インキの製造及び印刷の受注を行う会社であり、マイクロカプセル香料を使用したインキを開発し、当該香料を使用して、印刷皮膜をこすることで香りがする名刺、はがき、しおり、チラシ等を印刷する役務を提供している(甲9、甲17、甲18)。
申立人は、印刷通販サイト「香りの印刷所 Proust」を平成29年(2017年)7月に開設した(甲12)。また、「香りの印刷所 プルースト」の文字をチラシ(甲3)、SNS(甲4)、申立人ウェブサイト(甲7)、ダイレクトメール(甲21)において使用している。
申立人は、2017年から2024年に「香りの技術・原料展」、「紙加工技術展」、「販促物活用フェスタ」等の展示会に出展した(甲15)。
2019年7月11日放送のNHKニュース(甲10)、公益社団法人日本アロマ環境協会発行「AEAJ No.90 2019」(甲16)において、申立人による香料インキを使用した印刷を紹介するニュース及び記事において「プルースト」の文字が使用されている。
(イ)上記からすると、「プルースト」又は「Proust」の文字からなる商標が、少なくとも2017年以降、申立人により印刷の役務及び当該役務の広告宣伝に使用され、一部のメディアによって取り上げられている例があることが認められる。
しかしながら、展示会への出展について、「プルースト」の文字が使用されていることが確認できるのは、2018年7月4~6日開催の第10回販促EXPO(甲15の9葉)及び2019年7月11日開催の香りの技術・製品展2019(甲15の7葉)のみであり、来場者数や来場者層は不明である。
また、広告宣伝について、「プルースト」の文字を使用したチラシ(甲3)を2018年11月に3000部印刷したとの申立人の説明があること及びダイレクトメールを2019年9月25日に12,228通発送したこと(甲21)は認められるものの、広告宣伝の規模がさほど大きいとはいえず、このほかに、使用商標が使用された役務の市場シェア、売上高等、使用商標の周知性を具体的に裏付ける証拠の提出はない。
そうすると、使用商標は、申立人提出証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間において広く認識されている商標と認めることはできない。
イ 小括
以上を踏まえると、使用商標は、需要者の間において広く認識されている商標とはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ず、同号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
使用商標は、上記(2)アのとおり、我が国の需要者の間において広く認識されている商標ではないから、本件商標と使用商標の類似性の程度や本件商標の申立てに係る商品と申立人の業務に係る役務との関連性の程度などにかかわらず、本件商標権者がこれを申立てに係る商品について使用しても、我が国の需要者をして使用商標を連想又は想起させるとは考えにくく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号及び同項第15号のいずれの規定にも違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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