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Trademark Appeal Case

ボールフロートの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900227
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6959898号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6959898号商標(以下「本件商標」という。)は、「フリーボールフロート」の文字を標準文字で表してなり、令和7年6月13日に登録出願、第7類「スチームトラップ・その他のバルブ(陸上の乗物用のものを除く機械要素)」(以下「本件指定商品」という。)を指定商品として、同年8月14日に登録査定、同月21日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録第3198956号商標(以下「引用商標」という。)は、「フリーフロート」及び「FREE FLOAT」の文字を2段に横書きしてなり、平成5年1月12日に登録出願、第7類「フロート弁」を指定商品として、同8年9月30日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第16号に違反して登録されたものであり、その登録は、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証(枝番号を含む。)を提出した。

以下、証拠の記載については、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。

1 本件商標を商標法第4条第1項第11号により取り消すべき理由

(1)商標法第4条第1項第11号

商標法第4条第1項第11号の商標の類否について、最高裁判所は、「対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれで決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする」(「氷山印事件」最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日民事判例集22巻2号339頁)、と判示した。

(2)本件指定商品に係る取引の実情

本件指定商品(バルブ)を取り扱う業界において、穴の開いたボールを回転させることで開閉を切り替えることができるバルブの名称として「ボールバルブ」が広く使用されている(甲3~甲7)。

例えば、株式会社日阪製作所のウェブサイト(甲3)において、「ボールバルブは流体の流れを制御する弁体がボールのような形状をしたバルブ」と説明されている。

株式会社キッツのウェブサイト(甲5)においては、「ボールバルブのジスクは球状をしていて、流体を通過させるために中央部に筒状の流路(ポート)があけられてます。この球状のジスクを90度回転させることで開閉する構造となっています。JIS用語:ボール弁」と説明されている。

日本ダイヤバルブ株式会社のウェブサイト(甲6)において、「ボールバルブは、弁箱(本体)の中で弁体(ボール)が弁棒(ステム)を軸に回転して流体を制御するバルブ」と説明されている。

株式会社ミスミグループ本社のウェブサイト(甲7)においては、「ボールバルブは、穴の開いたボールが取り付けられており、そのボールを回転させることで開閉を切り替えることができるバルブです。外側に付いているハンドルを90 ゚回転させるだけで、簡単に開閉をコントロールすることができます。」と説明され、各社から販売されているボールバルブ(15選)が掲載されている。

特許庁での審査においても、本件指定商品と同一又は類似する商品との関係において、「ピロボール/PILLO BALL」、「レギュラーボール」の各文字は自他識別力を欠き、また、品質誤認のおそれがあるとして、拒絶されている(甲8、甲9)。2016年6月23日に出願された「コンパクトボール」(商願2016-68472)に対する拒絶理由通知書においても、「「ボール」の文字は、本願に係る指定商品のバルブの分野では、「ボール弁の球状の弁体」を意味する語であり、「ボール弁」とは、「弁体が球状で、コックに類似するバルブ」を意味する語」であるとして、「「ボールバルブ」以外の本願に係る指定商品に使用するときは、あたかもそれが「ボールバルブ」であるかのごとく、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、同法第4条第1項第16号に該当します」として、拒絶査定となった(甲10)。

また、本件指定商品中、「スチームトラップ」に関して、ドレンが存在するとボールが上がり、バルブが開いて高密度のドレンを通過させる構造の機械式スチームトラップが、「ボールフロート式」と称して取引に供されている(甲11~甲15、甲18)。

甲第12号証は、本件商標の出願日直前に公表された「ボールフロートスチームトラップ市場予測」であり、ボールフロートスチームトラップ市場の主要プレーヤーとして、Armstrong、Flowserve、Velan、TLV、Tyco(Pentair)、Circor、Yoshitake、Steriflow、Cameron、MIYAWAKI、Gestra、Tunstall、Watson McDaniel、ARI、Hongfeng Mechanical、Yingqiao Machinery、Chenghang Industrial Safety、DSC、LonzeValve、Sprirax Sarco Indiaなどの国内外の数多くの企業が名を連ねており、機械式トラップ、サーモスタット式トラップ、熱力学式トラップ、逆バケット式トラップの4種類存在することが記載されている。

本件商標よりも前に出願された「スチームトラップ」に係る特許明細書にも、「ボールフロート」のことが記載されている(甲16、甲17)。

このように、本件指定商品を取り扱う業界において、「ボール」又は「ボールフロート」の語は、特定のバルブ又はスチームトラップを表す語として、広く一般に使用されていることから、当該事情になじみある本件指定商品の需要者及び取引者であれば、本件商標の構成中「ボール」又は「ボールフロート」の文字部分を見て、「ボールバルブ」又は「ボールフロート式スチームトラップ」を指称したものと認識することが容易に推測される。

(3)商標の同一又は類似

本件商標は、「フリーボールフロート」の標準文字よりなる(甲1、甲2)。

本件指定商品に係る上記取引の実情になじみある本件指定商品の需要者及び取引者であれば、本件商標の構成中「ボール」又は「ボールフロート」の文字部分を見て、「ボールバルブ」又は「ボールフロート式スチームトラップ」を表したものと容易に認識する。

そうすると、本件商標の構成中「ボール」及び「ボールフロート」の文字部分は、本件指定商品との関係において自他識別力を発揮し得ず、その場合、「フリーフロート」又は「フリー」の文字部分が要部といえる。

したがって、本件商標からは、「フリーボールフロート」の称呼に加え、「フリーフロート」、「フリー」の称呼も生じる。

引用商標は、通常のゴシック体で書された「FREE FLOAT」の欧文字とその読み方「フリーフロート」を上下2段に併記した構成からなる(甲19)。

本件商標の要部と引用商標とを対比してみると、上下2段の構成において差異を有するものの、本件商標から「フリーフロート」の称呼が生ずる場合、引用商標の上段及び下段から生ずる称呼「フリーフロート」において一致する。

また、引用商標に係る指定商品は第7類「フロート弁」であるところ、引用商標の構成中「フロート」及び「FLOAT」の文字部分は、当該商品との関係において、それ自体、自他識別力を発揮しない。その場合、引用商標からは「フリー」の称呼が生じ、本件商標の要部「フリー」から生ずる称呼と一致する。

本件商標全体と引用商標を対比した場合においても、引用商標は、株式会社テイエルブイのフロート弁に使用されていることから(甲20)、本件商標「フリーボールフロート」からは、「株式会社テイエルブイのボール形状のフロート弁」の意味合いが認識される。

このように、本件商標と引用商標とは、外観において相違するものの、全体又は要部において称呼及び観念が一致することから、外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察し、本件指定商品に係る取引の実情を考慮すると、両商標は類似する。

(4)商品の同一又は類似

本件指定商品は、引用商標に係る第7類「フロート弁」と同じ類似群コード(09F05)が付される商品であることから、明らかに同一又は類似する。

(5)小括

本件商標の要部と引用商標とは同一又は類似しており、本件指定商品と引用商標に係る指定商品とは同一又は類似する。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 本件商標を商標法第4条第1項第16号により取り消すべき理由

(1)商標法第4条第1項第16号

商標法第4条第1項第16号にいう「誤認を生ずるおそれ」とは、商標が表す商品の品質等を有する商品の製造、販売又は役務の提供が現実に行われていることは要せず、需要者がその商品の品質等を誤認する可能性がある場合をいう(甲21)。また、「誤認を生ずるおそれ」の有無は、商標が表す商品の品質等と指定商品又は指定役務が関連しているか否か、及び商標が表す商品の品質等と指定商品又は指定役務が有する品質又は質が異なるか否かにより判断する。

(2)「ボールバルブ」及び「ボールフロート式スチームトラップ」

上述したとおり、本件指定商品(バルブ)を取り扱う業界において、穴の開いたボールを回転させることで開閉を切り替えることができるバルブの名称として「ボールバルブ」が広く使用されており(甲3~甲7)、特許庁での審査においても、本件指定商品と同一又は類似する商品との関係において、「「ボール」の文字は、本願に係る指定商品のバルブの分野では、「ボール弁の球状の弁体」を意味する語であり、「ボール弁」とは、「弁体が球状で、コックに類似するバルブ」を意味する語」で、「「ボールバルブ」以外の本願に係る指定商品に使用するときは、あたかもそれが「ボールバルブ」であるかのごとく、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、同法第4条第1項第16号に該当します」と判断された(甲10)。

また、本件指定商品中、「スチームトラップ」に関して、ドレンが存在するとボールが上がり、バルブが開いて高密度のドレンを通過させる構造の機械式スチームトラップが、「ボールフロート式」と称して取引に供されている(甲11~甲18)。

このように、本件指定商品を取り扱う業界において、「ボール」又は「ボールフロート」の語は、特定のバルブ又はスチームトラップを表す語として、広く一般に使用されていることから、当該事情になじみある本件指定商品の需要者及び取引者であれば、本件商標の構成中「ボール」又は「ボールフロート」の文字部分を見て、「ボールバルブ」又は「ボールフロート式スチームトラップ」を表示するにすぎないものと認識する。そうすると、本件商標は、「ボールバルブ」又は「ボールフロート式」スチームトラップ以外の商品に使用された場合、商品の品質の誤認を生ずる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標

本件商標は、上記第1のとおり、「フリーボールフロート」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔で、外観上まとまりよく一体に表されており、その構成全体から生じる「フリーボールフロート」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。

また、たとえ、本件商標の構成中の「ボールフロート」や「ボール」の文字部分が、本件指定商品との関係において、商品の部品の形状や品質等を表す際に使用される語であるとしても、本件商標の上記構成及び称呼からすれば、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「ボールフロート」や「ボール」の文字部分を捨象して、「フリー」の文字部分のみ、又は「フリー」及び「フロート」の文字部分のみに着目するというよりは、むしろ、その構成全体を、一体不可分のものとして看取、把握するものとみるのが相当である。

さらに、本件商標の構成中の「フリー」の文字部分のみ、又は「フリー」及び「フロート」の文字部分のみが独立して、自他商品の識別標識として認識されるものとみるべき特段の事情は見当たらない。

したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「フリーボールフロート」の称呼を生じ、当該文字については、一般的な辞書に載録された語ではないから、特定の観念を生じることのない造語として認識されるものである。

(2)引用商標

引用商標は、上記第2のとおり、「フリーフロート」及び「FREE FLOAT」の文字を2段に横書きしてなるところ、上段、下段いずれも同書、同大で表されており、全体として外観上まとまりよく一体に表されている。

そして、その構成中、上段の「フリーフロート」の片仮名は、下段の欧文字の読みを特定しているものと容易に認識されるものであるから、本件商標は、構成文字全体として「フリーフロート」の称呼を生ずるというのが相当であり、かかる称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。

また、たとえ、引用商標の構成中の「フロート」及び「FLOAT」の文字部分が、引用商標の指定商品である「フロ―ト弁」との関係において、強い自他商品の識別力を有さない場合があるとしても、引用商標の上記構成及び称呼からすれば、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「フロート」及び「FLOAT」の文字部分を捨象して、「フリー」及び「FREE」の文字部分のみに着目するというよりは、むしろ、その構成全体を、一体不可分のものとして看取、把握するものとみるのが相当である。

さらに、引用商標の構成中の「フリー」及び「FREE」の文字部分のみが独立して、自他商品の識別標識として認識されるものとみるべき特段の事情は見当たらない。

したがって、引用商標は、その構成文字に相応して「フリーフロート」の称呼を生じ、当該文字については、一般的な辞書に載録された語ではないから、特定の観念を生じることのない造語として認識されるものである。

(3)本件商標と引用商標の類否

本件商標と引用商標とを比較すると、両者は「フリー」及び「フロート」の構成文字において共通するとしても、他の構成文字及び全体の構成態様において明らかに相違するから、外観において相紛れるおそれはない。

また、本件商標から生じる「フリーボールフロート」の称呼と引用商標から生じる「フリーフロート」の称呼とは、音構成及び音数が明らかに相違するため、語調語感が異なり、互いに紛れるおそれはない。

さらに、観念においては、両者は共に特定の観念を生じないから、比較することができない。

そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において容易に区別し得るから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。

その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。

以上により、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標ではないから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について言及するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

2 商標法第4条第1項第16号について

申立人は、本件指定商品を取り扱う業界において、「ボール」又は「ボールフロート」の語は、特定のバルブ又はスチームトラップを表す語として、広く一般に使用されていることから、本件商標が「ボールバルブ」又は「ボールフロート式スチームトラップ」以外の商品に使用された場合、商品の品質の誤認を生ずる旨主張する。

しかしながら、「ボール」又は「ボールフロート」の語が「特定のバルブ又はスチームトラップ」を表す際に使用されることがあるとしても、「フリーボールフロート」の文字を同書、同大、等間隔で表した構成からなる本件商標にあっては、これに接する取引者、需要者が、殊更その構成中の「ボール」又は「ボールフロート」の文字部分を捉えて、商品の品質を表したものと認識するというべき事情は見いだせない。

そうすると、本件商標は、これを本件商標の指定商品に使用されたとしても、商品の品質について誤認を生ずるおそれはない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。

3 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第16号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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