結論テキスト
登録第6960382号商標の商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025900230 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6960382号商標(以下、「本件商標」という。)は、「MAGI DASHI」の文字を標準文字で表してなり、令和7年5月23日に商標登録出願、第30類「調味料,そばつゆ,ソース(調味料)」を指定商品として、同年8月6日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件異議申立ての理由のうち、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に関して引用する商標は、以下の(1)ないし(3)であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第188983号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
指定商品:第30類「ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,ホワイトソース,マヨネーズソース」
登録出願日:大正15年 3月 3日
設定登録日:昭和 2年 2月24日
書換登録日:平成19年 8月 8日
(2)登録第1477576号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
指定商品:第29類「食用油脂,乳製品」及び第30類「みそ,ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖(調味料),砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ(調味料),ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」
登録出願日:昭和45年10月31日
設定登録日:昭和56年 8月31日
書換登録日:平成15年 2月12日
(3)登録第1324485号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
指定商品:第29類「食用油脂,乳製品」及び第30類「調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」
登録出願日:昭和40年11月30日
設定登録日:昭和53年 2月24日
書換登録日:平成20年 3月12日
以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめて「引用商標」という場合がある。
申立人は、本件商標は、以下に述べる理由により、商標法第4条第1項第11号及び同15号に違反して登録されたものであるから、その登録は商標法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。また、表記に当たっては「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 商品の類似性
本件商標の指定商品「調味料,そばつゆ,ソース(調味料)」は、引用商標1の指定商品「ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,ホワイトソース,マヨネーズソース」、引用商標2の指定商品中「ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ」、引用商標3の指定商品中「調味料」と、それぞれ類似することは明らかである。
イ 商標の類似性
(ア)本件商標及び引用商標から生じる称呼
本件商標は「MAGI DASHI」の文字を標準文字で横書きしてなるところ、構成中「DASHI」の文字は、本件商標の「出汁(だし)」を欧文字表記したものと容易に認識されるものである(甲5)。このため、当該部分は本件商標にかかる指定商品「調味料,そばつゆ,ソース(調味料)」との関係では自他商品等識別力が極めて弱い語であり、「MAGI」部分が取引者、需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるから、本件商標の要部は「MAGI」である。そして、「MAGI」の文字は特定の意味合いを有さない造語であるところ、一般的に、特定の語義を有しない欧文字からなる商標を称呼するときは、我が国で広く親しまれている英語風又はローマ字の読みに倣って称呼するのが自然であり、「GI」で終わる英単語は見当たらないことから、「MAGI」からは、ローマ字の読み方に倣って「マギ」の称呼が生じる。
一方、引用商標は「マギー」と称され、上述のとおり、申立人の業務に係る商品について長年使用されていることから「マギー」の称呼が生じる。
(イ)本件商標と引用商標の対比
本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標の要部である「MAGI」と、引用商標1及び引用商標2の文字部分「MAGGI」「Maggi」は、「MA」「GI(gi)」の文字が共通する。両商標は、大文字・小文字の差異と、中間部における「G(g)」の文字が一つであるか二つ連続するかの差異があるにすぎないから、両者は、外観において、極めて近似した印象を与える。
また、本件商標の要部である「MAGI」から生じる称呼「マギ」と、引用商標から生じる「マギー」の称呼は、「マギ」の音構成が共通し、明確に聴取されにくい語尾における長音の有無のみが相違するにすぎない。一般的に、語尾の長音は前音に吸収されて僅かに余韻が残るかのように感じられる程度であるから、それぞれを一連に呼称する場合、両称呼は音調、音感が極めて近似し、相紛らわしく称呼上類似するといえる。
なお、本件商標中の「MAGI」と引用商標は、いずれも特定の称呼が生じない造語であるから、観念において比較することはできない。
以上のことから、本件商標と引用商標とは外観・称呼において極めて紛らわしく、類似性は高いというべきである。
ウ 取引の実情
商標の類否判断は、商標が使用される商品の主たる需要者層その他商品の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として判断しなければならないと商標審査基準にも示されているところ、ここでいう「取引の実情」には引用商標の周知・著名性も含まれることは経験則によっても認められており、引用商標の周知・著名性は、具体的な取引状況の下では、出所の混同のおそれを増幅させるものとなる(東京高等裁判所平成13年(行ケ)第277号、甲6)。
後述するとおり、引用商標は「調味料」や「ブイヨン」等、とりわけ「ブイヨン」について周知・著名な商標である。引用商標にかかる「MAGGI」は、1882年頃に粉末上の豆のスープのブランドとして誕生し、その後、液体ブイヨンや固形ブイヨン、各種調味料のブランドとして世界中で使用されている。我が国においては、「マギーブイヨン」が1927年頃に紹介されて以来、申立人は各種調味料やスープの素、ブイヨン等について引用商標が使用されており、現在でも使用は継続している(甲7~甲26)。したがって、引用商標は本件商標の登録出願前より、「調味料」及び「ブイヨン」について、その取引者・需要者間で広く知られており、本件商標の査定時においてもその周知性・著名性は継続している。
上述のとおり、本件商標の指定商品と申立人が引用商標を使用している商品「調味料」等とは類似し、取引者・需要者は重複するものであるから、商品の出所の混同のおそれを増幅させるものである。
したがって、本件商標と引用商標とはそもそも外観及び称呼が類似し、互いに相紛らわしいものであるが、加えて取引の実情を考慮すれば、両商標の紛らわしさは一層増幅されるのであって、両商標は類似するというべきである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、外観・称呼において類似する商標であり、その指定商品も同一又は類似するから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知著名性
引用商標「MAGGI」「Maggi」「マギー」(以下、これらを合わせて「マギー」と称する。)は、スイス人のジュリアス・マギーが粉末状の豆のスープを販売したことから始まる。その後「マギー」は、1885年には世界初のインスタントスープを、1886年には濃縮液体ブイヨン、固形ブイヨンなどを発売するなど、様々な調味料を販売し、世界中で「マギー」ブランドとして親しまれてきた。我が国においては、1927年にスイスの料理人がマギーのブイヨンを紹介したのを機に、西洋料理に使用する調味料としてホテルシェフを中心とした料理人の間で受け継がれ、「塩・コショー・マギー」と呼ばれるほど欠かせない存在となった。1947年には家庭用のマギー製品が発売され、家庭でも洋風料理が手軽に作れると喜ばれ、マギー製品が急速に普及した。それ以来、現在まで80年近くもの長期にわたり継続的に使用されている(甲7、甲8)。
我が国において申立人は、「マギー」ブランドのもと、発売当初から愛されているブイヨンのほか、シーズニング(濃縮液体調味料)、クッキングスパイス、チリソース、ホワイトソース、ドミグラスソース、煮込み料理のもと、中華スープのもと、ローストチキン等のオーブン料理専用の調味料など、消費者のニーズにあわせて多種多様な商品を販売してきた(甲9~甲11)。現在は、家庭用のブイヨン、コンソメ、洋風万能調味料のほか、業務用のトマトソース、粉末デミグラスソース、粉末ホワイトソース、カレーパウダー、マッシュポテトミックスなどを販売している(甲12、甲13)。このように、「マギー」は、「マギーブイヨン」、「マギーコンソメ」、「マギーホワイトソース」、「マギーデミグラスソース」など、様々な調味料について「マギー○○」として長年にわたり使用してきたことにより、いまや家庭用・業務用いずれにおいても料理に必要不可欠な調味料の一大ブランドとして広く親しまれるに至っている。
さらに、近年は、老舗京料理店の総料理長が監修した「マギー無添加うどんつゆ」や、かつおだし・こんぶだしを使用した「マギーヘルシー無添加だしスープ」など「和」の素材を使用した商品を販売したり、お米の楽しみ方として「茶漬け」「ブイヨンライス」を提案するなど、和食に適した商品やレシピも提案しており、今や和風・洋風の区別なく、様々な料理にあう調味料として訴求を図っている(甲14~甲18)。加えて、食品アレルギーの特定原材料を使わないブイヨンを発売し、それを使ったレシピを公開するなど、食物アレルゲンに配慮したい家庭でのメニューのバリエーションを増やす取り組みも行っている(甲19、甲20)。
また、申立人は、「マギー」製品について新聞・雑誌への広告掲載やテレビCMによる宣伝活動だけでなく、需要者により強く商品を印象付けるため、マギーをどのように料理に活用するかを含めた洋食文化そのものを様々なかたちでアピールしてきた。例えば、ウェブサイトや主婦向けの雑誌において、マギー製品を使用した料理レシピを提案したり、有名な料理店・料理家とのコラボレーションによるイベントやSNSでの発信を通じて、広く一般消費者に対し、様々な料理に使用できる調味料としての訴求を図っている(甲21~甲26)。
単なる広告であれば、商品の選択肢が多い調味料・ブイヨンの分野では簡単に他商品に埋没してしまうが、このような、マギーを使った新しい料理レシピや利用方法の提案とともにマギーを広告することで、マギー商品は需要者の印象に強く残り、現在の著名性を獲得するに至ったのである。
なお、引用商標が周知著名性を獲得していることは、引用商標2について防護標章登録が認められていること(甲27)、また、「日本国周知・著名商標検索」のデータに収録されていることからも明らかである(甲28)。さらに、過去の異議事件においても、申立人の「MAGGI」「マギー」等の引用商標は、「調味料、ブイヨン」「スープのもと(ブイヨン)」等について周知著名性が認められている(異議2005-090060、異議2007-900557;甲29、甲30)。
そして、申立人は現在もブイヨン及び調味料を中心に引用商標の使用を継続しているから、本件商標の査定時においてもその周知性・著名性は継続しているものである。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
上述のとおり、本件商標の構成中「DASHI」の文字は、「出汁(だし)」を欧文字表記したものと容易に認識され識別力が極めて弱いものであるから、「MAGI」部分が取引者、需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。したがって、本件商標は「MAGI」部分から「マギ」の称呼が生じ、引用商標から生じる称呼「マギー」とは、明確に聴取されにくい語尾における長音の有無のみが相違するにすぎない。一般的に、語尾の長音は前音に吸収されて僅かに余韻が残るかのように感じられる程度であるから、それぞれを一連に呼称する場合、両称呼は音調、音感が極めて近似し、相紛らわしく称呼上類似するといえる。
また、本件商標の要部である「MAGI」と、引用商標1及び引用商標2の文字部分「MAGGI」「Maggi」とは、「MA」「GI(gi)」の文字が共通し、大文字・小文字の差異と、中間部における「G(g)」の文字が一つであるか二つ連続するかの差異があるにすぎないから、両者は、外観において極めて近似した印象を与える。
したがって、本件商標と引用商標との類似性は非常に高いものである。
ウ 商品の関連性並びに取引者・需要者の共通性
本件商標の指定商品と引用商標の使用にかかる商品は、調味料にあたるものであり、その取引者及び需要者は共通する。
なお、上述したように、引用商標は調味料、とりわけ「ブイヨン」について、需要者・取引者の間に広く認識されている。ここで「ブイヨン」とは、フランス語で「だし」を意味する語であり、牛骨や鳥の骨、野菜やハーブなどをじっくり煮込んで旨み成分を引き出して作られ、あらゆる料理のベースとなるものである(甲31)。すなわち、申立人が販売する商品は、単なる「スープのもととしてのブイヨン」というよりはむしろ、様々な料理のベースとして使用される「洋風だし」として認識されているのであり、実際に商品パッケージや商品説明にも「洋風だし」と表示している(甲12)。加えて、申立人は、「洋風万能調味料」、「マギー無添加うどんつゆ」や、かつおだし・こんぶだしを使用した「マギーヘルシー無添加だしスープ」など、従来の「ブイヨン(洋風だし)」の概念にとらわれない商品も販売するなど、和食・洋食の区別なく、広く使われる調味料ブランドとしての訴求を図ってきた(甲12、甲14~甲16)。
したがって、引用商標を使用する商品と本件商標の指定商品は極めて密接に関連するといえる。
エ その他取引の実情
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、所謂狭義の混同のみならず、商品や営業の関連性を想起させる広義の混同が含まれる(「レールデュタン」事件判決・最高裁平成10年(行ヒ)第85号、甲32)。さらに、同号の目的からすれば、周知表示又は著名表示へのフリーライドや希釈化(ダイリューション)を防止することも重要であるとされている。
しかるところ、上に検討したように、調味料・ブイヨン(洋風だし)における引用商標の周知著名性、さらに申立人が様々な調味料や食品を製造・販売している事業実態及びその需要者の共通性等、その商品の提供者や取引者・需要者層の個別・具体的な関連性や共通性の実情等を総合的に考察すれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも著名ブランドである「MAGGI」「マギー」に係る申立人の提供する商品であるかの如く誤認され、そうでなくとも、何らかの密接な営業上の関連性を想起させ、あたかも申立人のグループ会社か、あるいは許諾を受けた者に係る商品であるかの如く誤認させ、商品又は営業上の出所混同を生じるおそれが極めて高いというべきである。
オ 小括
以上のとおり、本件商標がその指定商品について使用された場合は、申立人の周知著名な商標に係る商品と出所の混同を生ずるおそれが高いものであり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してなされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
(1)引用商標の周知性について
引用商標1は、別掲1のとおり、「MAGGI」の文字を横書きしてなるものであり、引用商標2は、別掲2のとおり、黄色地の四角形の中に赤地の吹き出し様の図形を表し、当該図形内に「Maggi」の文字を黄色で横書きしてなるものであって、また、引用商標3は、別掲3のとおり、黒地の横長長方形内に「マギー」の文字を白抜きで表してなるものである。
そして、申立人の主張及び同人が提出した証拠によれば、申立人は、我が国において1927年から現在に至るまで長期間継続的に、商品「ブイヨン(スープのもと)」や「洋風調味料」を中心に、引用商標を含む、「MAGGI(Maggi)」の文字や「マギー」の文字からなる商標を使用しており(甲7~甲26)、また、引用商標2については、第21類に属する商品について、防護標章登録が認められており(甲27)、現に有効に存続しているものである。
そうすると、引用商標は、申立人の業務に係る商品「ブイヨン(スープのもと)」や「洋風調味料」等について、本件商標の登録出願前より、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができる。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、「MAGI DASHI」の文字を標準文字で表してなるものであり、「MAGI」の文字と「DASHI」の文字の間に1文字分のスペース(空白)があるものの、すべての文字が同じ大きさ及び書体で、まとまりよく一体的に表されているといえるものである。
そして、その構成中「MAGI」の文字は、「魔法使い」を意味する「magus」の複数形として英語の辞書に掲載があるものの(出典:「新英和中辞典 第七版」株式会社研究社)、我が国において一般的に使用、理解されているものとはいえないことからすれば、特定の意味合いを理解させない造語として認識されるというのが相当である。
そして、そのような欧文字からなる造語については、これを称呼する場合、我が国において親しまれている英語風の読み又はローマ字風の読みに倣って称呼するのが自然であるところ、ローマ字読み及び上記英語の辞書における発音の記載からすれば、「MAGI」の文字は「マギ」と称呼することが考えられる。また、例えば「magic」を「マジック」と発音することに倣えば、同文字は「マジ」と称呼することが考えられる。
次に、本件商標の構成中「DASHI」の文字は、これ自体は一般的な英語の辞書に掲載されているものではない。また、これはローマ字読みで「ダシ」と称呼することから、「ダシ」と発音する日本語をローマ字で表したものとも考えられるところ、例えば「広辞苑 第七版」(株式会社岩波書店)において、「だし」の見出し語としては「出し」及び「山車」の2つが載録されており、かつ、「出し」についてみても、「城の出丸」「「出し汁」の略。」「手段として利用するもの。」などの複数の意味が掲載されている。
そうすると、本件商標の指定商品が飲食料品であることを踏まえれば、これに接する取引者、需要者において、その構成中の「DASHI」の文字が「「出し汁」の略。」を意味する「出し(出汁)」の語の読みをローマ字で表したものと理解される場合があるとしても、上記のとおり、「DASHI」の文字から想起され得る日本語の意味が複数あることからすれば、必ずしもそのように認識されるともいい難いものである。
また、本件商標の構成全体より生じる「マギダシ」「マジダシ」の称呼は、いずれも4音と短く、一息で容易に発音できるものである。
以上のことからすれば、本件商標に接する取引者、需要者は、殊更「MAGI」の文字部分のみに着目するというよりは、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握するとみるのが自然であり、本件商標よりは、その構成文字に相応した「マギダシ」「マジダシ」の称呼が生じ、また、特定の観念は生じないものといえる。
なお、申立人は、本件商標の構成中「DASHI」の文字は、「出汁(だし)」を欧文字表記したものと容易に認識されるものであり、当該部分は本件商標に係る指定商品との関係では自他商品の識別力が極めて弱い語であって、同構成中の「MAGI」の文字部分が取引者、需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるから、本件商標の要部は「MAGI」である旨主張する。
しかしながら、「DASHI」の文字が必ずしも「出し(出汁)」の語をローマ字で表したと直ちに認識されないものであることは、上記のとおりであって、また、そのほかに「MAGI」の文字部分が本件商標の指定商品の取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべき事情も見当たらないことからすると、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分のものと認識、把握されるというのが相当である。
したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。
イ 引用商標について
引用商標の構成態様は、上記(1)のとおりである。
そして、「マギー」の文字は、それ自体が一般的な辞書類に掲載されているものではなく、また、「MAGGI(Maggi)」の文字は、「マギー(女性名;Margaretの愛称)」として英語の辞書に掲載があるものの(出典:「新英和中辞典 第七版」株式会社研究社)、我が国において一般的に使用、理解されているものとはいえないことからすれば、これらの文字は、原則として特定の意味合いを理解させない造語として認識されるというのが相当である。しかしながら、例外として、上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品「ブイヨン(スープのもと)」や「洋風調味料」等について、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているものであるから、それらの商品との関係においては、「申立人のブランド」の観念が生じ得るものである。
そうすると、引用商標よりは、その構成文字に相応した「マギー」の称呼が生じ、また、特定の観念は生じないか、商品との関係によっては「申立人のブランド」の観念が生じ得るものといえる。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標を比較するに、外観においては、本件商標と引用商標1との比較では、語頭から「MAG」の3文字のつづりを共通にするものの、全体の文字数が9文字と5文字で明らかに異なり、書体も異なるものであって、引用商標2との比較では、それらの差異に加えて「M」以外の文字の大文字・小文字の差異、色彩や装飾図形の有無で異なり、また、引用商標3との比較では、文字種などが異なるものであるから、いずれも十分に区別し得るものである。
また、称呼においては、本件商標より生じる「マギダシ」の称呼と引用商標より生じる「マギー」の称呼は、語頭の「マギ」の音を共通にするものの、それに続く音が「ダシ」と長音とで異なり、また、本件商標より生じる「マジダシ」の称呼と引用商標より生じる「マギー」の称呼の比較では、語頭の「マ」の音を共通にするのみで、それ以外の音がすべて異なるものであって、3音ないし4音という短い音構成においては、これらの差異が全体の語調、語感に与える影響は大きく、いずれも明瞭に聴別できるものといえる。
そして、観念においては、本件商標よりは特定の観念が生じないのに対し、引用商標からは「申立人のブランド」の観念が生じる場合があるから、比較することができないか、又は、相紛らわしいとはいえないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができない場合があるとしても、相紛らわしいといえる場合はなく、また、外観において十分に区別し得るものであり、称呼においては明瞭に聴別できるものであるから、これらの商標が与える印象、記憶等を総合してみれば、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのない、非類似の商標というのが相当である。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品「ブイヨン(スープのもと)」や「洋風調味料」等について、本件商標の登録出願前より、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができる。
また、上記3(1)アのとおり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものを含むものである。
しかしながら、上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標の類似性の程度は低いものである。
そして、そのほかに、本件商標が申立人の業務に係る商品と出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
以上のことからすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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