結論テキスト
登録第6960955号商標の商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025900231 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6960955号商標(以下「本件商標」という。)は、「ほったらかしの宿 ゆうふり」の文字を標準文字で表してなり、令和6年12月4日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」及び第44類「入浴施設の提供,温泉施設の提供,サウナの提供,岩盤浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,整体,はり治療」を指定役務として、同7年7月1日に登録査定され、同年8月26日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立の理由において引用する登録商標及び引用する使用商標(以下まとめていうときは「引用商標」という。)は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
商標の態様:ほったらかし(標準文字)
登録出願日:平成30年10月19日
設定登録日:令和元年9月20日
指定商品及び指定役務:第29類、第32類、第43類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
申立人は、本件商標は、その指定役務について商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によって、取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第92号証を提出した。
(1)本件商標について
本件商標「ほったらかしの宿 ゆうふり」は、スペースを含めて全13文字から成る横一列の構成であり、商標としては比較的文字数が多く、称呼も冗長である。このような長い構成に接した需要者は、視認性や記憶のしやすさの観点から、スペース部分を境にして「ほったらかしの宿」と「ゆうふり」とを分離して認識するのが自然である。
また、本件商標は、日本語の複数語句から構成される商標であり、我が国の商取引においては、こうした商標に接した需要者は、外観上や称呼の自然な流れから、先頭に位置する語句に最も強い印象を受ける傾向がある。特に、複数の語句で構成された名称の場合、初めの語が記憶や連想の中心となり、後続の語句が省略されて称呼されることも一般的である。
そうすると、本件商標において最初に現れる「ほったらかしの宿」の文字部分が、需要者等に与える印象、記憶、連想等に大きな影響を与え、一般的に需要者等に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえる。更に、本件商標において分離して認識される「ほったらかしの宿」のうち、「の宿」の語については、その指定役務である第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供」や第44類「入浴施設の提供,温泉施設の提供」等との関係においては、その役務の質を表すものにすぎず、自他商品役務識別力は認められない。したがって、本件商標の要部は「ほったらかし」であるといえる。
以上より、本件商標からは、要部の構成文字「ほったらかし」に相応して「ホッタラカシ」の称呼が生じるとともに、観念においては、「気をつけたり手を加えたりしないで、そのままに放置しておくこと」といった意味の他、後述する申立人の周知な温泉施設の名称を指すものと想起されるものである。
(2)引用商標1について
引用商標1は、「ほったらかし」の文字を同書・同大で横一列に配してなるものであり、その構成文字に相応して「ホッタラカシ」との称呼が生じる。さらに、引用商標1の観念については、「気をつけたり手を加えたりしないで、そのままに放置しておくこと」の意味の他、後述するように申立人の周知な温泉施設が想起される。
(3)役務の類似性
本件商標に係る指定役務中、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供」、第44類「入浴施設の提供,温泉施設の提供,サウナの提供,岩盤浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,整体,はり治療」が、引用商標1に係る第43類の指定役務「宿泊施設の提供,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),展示施設の貸与」、第44類の指定役務「入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧」と同一又は類似する。
(4)本件商標と引用商標1の対比について
上記(1)のとおり、本件商標の要部は「ほったらかし」と考えられる。一方で、引用商標1は、「ほったらかし」を同書同大で横一列に配してなる構成となっている。したがって、両商標を比較すると、その外観・観念・称呼のいずれの要素も近似するものである。
(5)まとめ
以上より、本件商標は外観、観念及び称呼において、引用商標1と相紛れるおそれのある類似の商標であることは明らかであり、また、本件商標は、引用商標1の指定役務と同一又は類似の役務に使用するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(1)引用商標2「ほったらかし温泉」の周知・著名性について
ア 申立人は、1999年に山梨県において「ほったらかし温泉」の名称の下で温泉施設を開業し、以来、温泉の運営を業として継続している事業者である(甲3)。開業当初は広告宣伝に充てる資金も限られており、「行き届いたサービスはできないが、訪れる方々に自由に温泉を楽しんでいただきたい」という趣旨から、あえて「ほったらかし温泉」と命名し、山中においてひっそりと営業を開始した。同年、テレビ番組にて「変わった名称の温泉」として紹介されたことを契機に、来場者数が急増し、以後、ロコミ等を通じて広く知られるようになった(甲90)。
この名称は、過剰なサービスを排し、自然環境と温泉そのものの魅力を最大限に享受してもらうという運営方針を端的に表すものであり、創業当初から一貫して使用されてきた商標である。
申立人の温泉施設は、雄大な自然景観を背景に、日の出や夜景を望む絶景露天風呂として高い評価を受けており、観光情報誌、テレビ番組、インターネット等において繰り返し取り上げられてきた(甲4~甲76)。特に「ほったらかし」という独特かつ印象的な名称は、施設のコンセプトと強く結びついており、来場者の記憶に残りやすく、施設の認知度向上に大きく寄与してきた。
このように、申立人の温泉施設は、長年にわたる継続的な営業努力と、名称の独自性・話題性により、全国的に高い知名度と顧客からの信頼を獲得しており、「ほったらかし温泉」の名称は、申立人の業務に係る温泉施設を示すものとして、我が国において著名性を有するに至っている。
イ 申立人が運営する「ほったらかし温泉」には、2006年から継続して現在に至るまで、年間平均40万人前後の来訪者数を記録している(甲88)。また、売上についても、継続して高い売上を記録しており、2025年を含む過去5年間において、毎年3億円以上を記録している(甲88)。さらに、申立人は当該温泉施設に関するウェブサイトを運営しており、2025年の月間平均訪問ユーザー数が6,000を超えている(甲89)。これらの事実は、「ほったらかし温泉」が我が国において、温泉施設の名称として高い認知度と人気を有していることを裏付けるものである。
ウ また、申立人の「ほったらかし温泉」は、1999年に開業し、現在に至るまで、極めて多くのテレビ、雑誌、インターネット等のメディアによって取り上げられ、紹介されている(甲4~甲76)。なかには、国内最大級の旅行情報サイトとして知られる「じゃらん」における「全国絶景日帰り温泉のランキング」や交通情報や交通機関の乗換情報を提供する日本大手サービス「ジョルダン」が提供する「温泉全国人気ランキング」にて、申立人の温泉施設が上位にランクされており、申立人の絶え間なる営業努力の結果が現れているものである(甲77、甲78)。同様に、ナビゲーションサービスを提供するウェブサイト「ナビタイム」で検索された観光地等のスポットのランキング(各時間帯別に検索された人気スポットをランキングしたもの)では、2020年から4年連続で、申立人の温泉施設が深夜・早朝部門において、一位を記録している(甲79~甲83)。加えて、旅行会社大手「JTB」や出版社大手「小学館」等、広く社会的信用を有する企業が運営するウェブサイトにおいても、申立人の「ほったらかし温泉」は常に上位10位以内にランキングされている事実が確認できる(甲71~甲76)。
エ 申立人が運営する温泉施設「ほったらかし温泉」は、映画化もされた人気アニメ作品『ゆるキャン△』の第5話において、登場人物らが実際に訪れる温泉のモデルとして描かれており、作中には温泉に入浴する場面も含まれている。さらに、同話中には「そういえばテレビの旅番組でたまに紹介されとるね」「ま、有名な温泉だしなー。早朝からやってて、日の出見ながらはいれるんだってな」といった台詞が登場し、当該温泉施設が広く知られ、高い人気を有していることが示唆されている(甲23、甲55、甲56及び甲84)。また、当該アニメ作品の放映後には、実際に多数のファンが申立人の温泉施設を訪れており、作品との関連性を契機とした来訪が確認されている(甲24)。これらの事実は、申立人の温泉施設が一般需要者の間で広く認知され、著名性を有する施設であることを裏付けるものである。
オ さらに、引用商標2の「ほったらかし温泉」は、「温泉」の語が、提供される役務との関係で自他商品役務識別力が弱いため、「ほったらかし」の部分のみでも称呼され親しまれている(甲9、甲16、甲85及び甲86)。さらに、主要検索サイト「YAHOO!JAPAN」や「Google」において『ほったらかし』と検索した場合、申立人の『ほったらかし温泉』に関する記事が多数表示される事実は、当該略称が我が国において広く周知されていることを示すものである(甲91、甲92)。
以上のとおり、本件商標の出願時点である令和6(2024)年には、引用商標2「ほったらかし温泉」は、申立人の温泉施設の名称として、既に広く認識されていた。また、申立人が「温泉施設の提供」等の役務に使用する商標としても、広く知られ、著名性を獲得するに至っていたというべきである。
(2)商標と指定役務の類否について
本件商標については、上記1の「第4条第1項第11号について」において述べたとおり、「ほったらかし」が要部である。一方、引用商標2は、「ほったらかし温泉」の文字から成るところ、「温泉」の語は申立人に係る役務との関係において自他商品役務識別力が弱いため、「ほったらかし」がその要部と認識される。また、引用商標2は「ほったらかし」の名称でも周知である(甲9、甲16、甲85及び甲86)。
そこで、本件商標の要部と引用商標2の要部とを比較すると、外観・観念・称呼のいずれにおいても類似しており、相互に紛らわしいものである。
また、本件商標に係る指定役務中、第44類「入浴施設の提供,温泉施設の提供」と引用商標2が使用される「温泉施設の提供」は互いに同一又は類似する。
以上の点から、本件商標が「温泉施設の提供」に使用された場合、日本市場において取引者・需要者に出所の混同を生じさせるおそれが極めて高いといえる。
(3)まとめ
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反してなされたものである。
(1)混同を生じるおそれについて
「混同を生ずるおそれ」については、最高裁判決において、その有無の判断要素が認定されている(最高裁平成10(行ヒ)85号)。上記判例によれば、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべき、と示されている。上記の点を本件商標と引用商標2について以下のとおり検討する。
(2)申立人の業務及び引用商標2の周知性
申立人の業務及び引用商標2の周知性については、上記2(1)のとおりであり、本件商標の登録出願前より需要者の間に広く認識されているものである。
(3)商標及び役務の類似性
本件商標については、上記1の「第4条第1項第11号について」において述べたとおり、「ほったらかし」が要部である。一方、引用商標2は、「ほったらかし温泉」の文字から成るところ、「温泉」の語は申立人に係る役務との関係において自他商品役務識別力が弱いため、「ほったらかし」がその要部と認識される。また、引用商標2は「ほったらかし」の名称でも周知である(甲9、甲16、甲85及び甲86)。
そこで、本件商標の要部と引用商標2の要部とを比較すると、外観・観念・称呼のいずれにおいても類似しており、相互に紛らわしいものである。
また、本件商標に係る指定役務中、第44類「入浴施設の提供,温泉施設の提供」と引用商標2が使用される「温泉施設の提供」は互いに同一又は類似する。
(4)引用商標の独創性について
引用商標2の独創性の程度については、創業当初より「行き届いたサービスはできないが、訪れる方々に自由に温泉を楽しんでいただきたい」という理念のもと命名されたものであり、その背景には、他に類を見ない独自の発想と価値観が存在する。このような命名の経緯および理念に照らせば、引用商標2は、単なる記述的表示や一般的表現を超えた、極めて高い独創性を有する商標である。
(5)取引者及び需要者の共通性について
本件商標はその指定役務に「温泉施設の提供」を含むものであり、引用商標2も「温泉施設の提供」に使用されるものである。このように指定役務の分野が共通するものであるので、役務の目的も同一であり、その取引者・需要者は共通であるというべきである。
(6)取引の実情について
申立人は、温泉施設だけではなく、同施設内で「気まぐれ屋」という飲食店及び軽食スタンドを営業しており(甲3)、同施設の近くには、申立人会社の取締役が代表を務める「ほったらかしキャンプ場」を提供するなど、多角的な経営を行っている(甲87)。
なお、申立人の温泉施設には、本件商標に係る宿泊施設と誤認混同した内容の電話での問い合わせを受けている事実がある。これは、実際に、需要者が両施設を混同している事実を裏付けるものである。
以上より、本件商標と引用商標の役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準に役務間の関連性、商標自体の類似性の程度、引用商標の著名性の程度、著名である引用商標の独創性の程度、取引者及び需要者の共通性、並びに実際の具体的取引の実情を勘案すると、本件商標がその指定役務に使用された場合、取引者及び需要者は、それらの役務があたかも申立人若しくは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(7)まとめ
以上のように、本件商標がその指定役務に使用される際には、これに接する取引者・需要者は、あたかも申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何等かの関係がある者の業務であるかのごとく誤認し、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「ほったらかしの宿 ゆうふり」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中の「ほったらかしの宿」の文字部分は、「何の世話や処置もせずに、うちすてておくこと。」の意味を有する「ほったらかし」の文字(広辞苑第七版 岩波書店)と、「宿屋」の意味を有する「宿」の文字(前掲書)を、助詞の「の」を介して結合したものと理解されるといえるが、全体で辞書に掲載された語ではなく、造語として理解される。また、構成中の「ゆうふり」の文字についても、辞書に掲載された語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれた語でもないことから造語として理解されるものである。そして、本件指定役務との関係において、当該各文字部分が役務の質等を表示するものとはいえないことから、各文字部分が自他役務の識別標識として機能を有さないと判断するべき特段の事情はない。
そうすると、「ほったらかしの宿」の文字と「ゆうふり」の文字との間に、観念的なつながりがあるとはいえず、本件商標は、各文字部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえないものである。
したがって、本件商標よりは、その構成文字全体に相応した「ホッタラカシノヤドユウフリ」の一連の称呼のほか、「ほったらかしの宿」の文字部分に相応して「ホッタラカシノヤド」及び「ゆうふり」の文字部分に相応して「ユウフリ」の称呼が生じ、構成文字全体及び各文字部分からは特定の観念は生じない。
(2)引用商標1について
引用商標1は、上記第2の1のとおり、「ほったらかし」の文字を標準文字で表してなるところ、これよりは「ホッタラカシ」の称呼が生じ、「何の世話や処置もせずに、うちすてておくこと。」(前掲書)の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観について、両者は、その構成文字及び構成文字数において明らかに相違することから、外観において相紛れるおそれはないというべきである。
次に、称呼について、本件商標から生じる称呼のうち、「ホッタラカシノヤドユウフリ」及び「ホッタラカシノヤド」と引用商標1から生じる「ホッタラカシ」の称呼は、前半の「ホッタラカシ」の音を共通にするものの、後半において、それぞれ「ノヤドユウフリ」と「ノヤド」の音の相違があるところ、これらの相違音により、語調語感及び音質が明確に異なるものであるから、これらの称呼を一連に称呼しても両者は称呼上、明瞭に聴別できるものである。また、本件商標から生じる称呼のうち「ユウフリ」の称呼と、引用商標1から生じる「ホッタラカシ」の称呼についても、語調語感が明らかに異なるから、明瞭に聴別できる。
さらに、観念について、本件商標の構成文字全体及び各文字部分からは特定の観念は生じないのに対し、引用商標1からは、「何の世話や処置もせずに、うちすてておくこと。」の観念を生じるものであから、両者は、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観において明らかに相違するものであり、称呼において明瞭に聴別でき、観念においても相違するものであるから、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1とは非類似の商標であるから、両者の指定商品及び指定役務を比較するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(1)引用商標2の周知性について
ア 申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人の「ほったらかし温泉」は、富士山を眺めることができる山梨県山梨市に所在する天然の温泉であり(甲10、甲12、甲15、甲21他)、遅くとも2018年以降、各種雑誌、テレビ番組、インターネットにおいて、「ほったらかし温泉」が取り上げられている(甲4~甲13、甲15~甲58他)。
(イ)申立人が運営する「ほったらかし温泉」には、2006年から継続して現在に至るまで、年間平均40万人前後の来訪者数を記録し、売上についても、2025年を含む過去5年間において、毎年3億円以上を記録している旨主張している(甲88)。
(ウ)2022年ないし2025年にかけて、インターネット上の各種日帰り温泉ランキングにおいて、申立人の「ほったらかし温泉」が、上位10位以内にランキングされている(甲73~甲77)。
(エ)申立人は、主要検索サイト「YAHOO!JAPAN」や「Google」において、「ほったらかし」と検索した場合、申立人の「ほったらかし温泉」に関連する記事が多数表示されることから、「ほったらかし」の文字が我が国において広く周知となっている旨主張している(甲91、甲92)。
イ 上記アによれば、申立人の「ほったらかし温泉」は、富士山を眺望できる温泉として、遅くとも2018年以降、各種雑誌等に紹介されているものの、同一ページ内に他の温泉も複数紹介されているなど、「ほったらかし温泉」のみを特集した内容の記事は多いとはいえない。また、テレビ番組についても、テレビ画面の写真が掲載されているのみであり、テレビ番組内において当該温泉について紹介された時間、視聴率等は不明である。
なお、申立人は、2006年以降、現在に至るまで年間平均40万人前後が、「ほったらかし温泉」に来訪し、2025年を含む過去5年間において、毎年3億円以上の売上高を推移しているとして、年度別の来場者数及び売上高(税別)表(甲88)を提出しているが、当該表は、単に、来訪者の人数と金額が記載されているのみであって、当該来訪者数や売上高等を証明する客観的な証拠が提出されていないため、信憑性に乏しいといわざるをえない。
そうすると、申立人の提出に係る証拠からは、引用商標2が、申立人の役務である「温泉施設の提供」の分野において、取引者、需要者の間に一定程度認識されているとしても、引用商標2である「ほったらかし温泉」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。
なお、申立人は、「ほったらかし温泉」のうち「温泉」の文字が自他役務識別力が弱いこと、我が国の主要な検索サイトで「ほったらかし」の文字をキーワード検索した結果、「ほったらかし温泉」の文字が検索結果に多数表示される(甲91、甲92)ことから、「ほったらかし」の部分のみが略称として親しまれていると主張するが、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「ほったらかし」の文字が申立人の業務に係る商標として広く知られていることを客観的に示す証拠の提出はないから、当該申立人の主張は採用することができない。
(2)本件商標と引用商標2の類否について
ア 本件商標は、「ほったらかしの宿 ゆうふり」の文字を標準文字で表してなるところ、上記1(1)のとおり、その構成文字全体に相応した「ホッタラカシノヤドユウフリ」の一連の称呼のほか、「ほったらかしの宿」の文字部分に相応して「ホッタラカシノヤド」及び「ゆうふり」の文字部分に相応して「ユウフリ」の称呼が生じ、構成文字全体及び各文字部分からは特定の観念は生じない。
イ 引用商標2は、「ほったらかし温泉」の文字からなるところ、構成中の「ほったらかし」の文字は、「何の世話や処置もせずに、うちすてておくこと。」の意味を有し、「温泉」の文字は、「地熱のために平均気温以上に熱せられて湧き出る泉。」(広辞苑第七版 岩波書店)の意味を有する語であるが、その構成文字はすべて同じ大きさ、同じ書体で表され、全体としても10音と冗長とはいえないため、構成文字全体として一体のものと理解され、「ホッタラカシオンセン」の一連の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
ウ そうすると、本件商標と引用商標2とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれがなく、両者の外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、本件商標と引用商標2とが類似するというべき事情は見いだせない。
(3)小括
以上によれば、引用商標2は、我が国における需要者の間に広く認識されている商標ではなく、また、本件商標と引用商標2は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、その他の要件について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
上記2(1)のとおり、引用商標2は、申立人の役務である「温泉施設の提供」の分野における取引者、需要者の間に一定程度認識されているものといえるとしても、引用商標2の文字が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そして、上記2(2)のとおり、本件商標は、引用商標2とは非類似の商標であり、別異の商標と認められる。
そうすると、本件商標に係る指定役務の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、本件商標権者が、本件商標をその指定役務について使用をしても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標2を連想、想起することはなく、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が引用商標2と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものではなく、その登録は同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
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