sokuhyo

Trademark Appeal Case

脳波測定香料の特許性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023016597
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

本願は、2016年(平成28年)3月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年3月16日 グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(GB))を国際出願日とする特願2017-548912号の一部を令和3年2月22日に新たな特許出願としたものであって、その手続の概要は次のとおりである。

令和 3年 3月24日 手続補正書の提出

同年 8月 3日 手続補正書の提出

令和 4年 2月28日付け 拒絶理由通知書

同年 9月 2日 意見書の提出

同年 9月14日付け 拒絶理由通知書

令和 5年 3月17日 意見書、手続補正書の提出

同年 5月29日付け 拒絶査定

同年10月 2日 審判請求書、手続補正書の提出

令和 7年 3月12日付け 拒絶理由通知書

同年 9月12日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1~10に係る発明は、令和7年9月12日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載されたとおりのものであって、それらのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。下線は、補正箇所を表す。

「【請求項1】

なくとも2種の、より特定的には少なくとも5種の、さらに特定的には10種以上の、香料成分を

用いて調製され

、Sandman Classifier(SC)値が少なくとも1.35であ

る、香料組成物を含む消費者用製品であって

ここで、Sandman Classifierは、

- 標準の10-20電極法を使用して脳波検査(EEG)によって当該香料組成物を吸引した後で、ヒト対象の脳波活動を測定すること;および

- 以下の式:

SC=((а1

ce

ce

)/δ

tem

)+(Θ/а2)

式中:

а1

ce

は、中心部電極C3、C4、Czにわたる8~12ヘルツの間の振動数を有するアルファ1脳波活動の振幅値を表し;

Θ

ce

は、中心部電極C3、C4、Czにわたる4~7ヘルツの間の振動数を有するシータ脳波活動の振幅値を表し;

δ

tem

は、側頭部電極T7およびT8にわたる0.1~3ヘルツの間の振動数を有するデルタ脳波活動の振幅値を表し;および

Θ/а2は、全電極にわたる4~7ヘルツの間の振動数を有するシータ脳波活動の振幅の12~15ヘルツの間の振動数を有するアルファ2脳波活動の振幅値に対する比を表す;

にしたがうSandman Classifier(SC)を規定すること、

によって規定され、

香料組成物が、少なくとも重量で0.01%の、以下の群から選び出される香料成分

を用いて調製された組成物である、前記

消費者用製品:

A)香料組成物中で使用される香料成分の総量を基にして1重量%~30重量%の、少なくとも1種の以下からなる群から選択される柑橘調の成分:ベルガモット油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;CITRAL LEMAROME N;CITRAL TECH;CITRATHAL R;CITRONELLYL NITRILE;CLONAL;CYMENE PARA;DIHYDRO MYRCENOL;DIMETHYL OCTENONE;DIMETOL;FLOROPAL;グレープフルーツ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;レモン油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;LEMONILE;LINALOOL OXIDE;LINALYL ACETATE SYNTHETIC;アオモジ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;マンダリン油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;METHYL PAMPLEMOUSSE;MYRCENE 90;オレンジ油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;プチグレン油、エッセンス、エキス、ベース、代替物または代用物;PRECYCLEMONE B;PRENYL ACETATE;RHUBAFURAN;タマリンド油、エッセンス、エキス、ベース、代替物または代用物;タンジェリン油、エッセンス、エキス、エッセンス、ベース、代替物または代用物;TERPINENE GAMMA;TERPINOLENE;およびTERPINYL ACETATE;

および、

以下に表示する量の、群B7の少なくとも1種の成分、

以下に表示する量の、群B11の少なくとも1種の成分、および

以下に表示する量の、群B1~B6、B8~B10、B12~B20の少なくとも3つそれぞれからの少なくとも1種の成分:

B1)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~1.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のアルデヒド調の成分:ALDEHYDE C 10 DECYLIC;ALDEHYDE C 11 UNDECYLENIC;ALDEHYDE C 110 UNDECYLIC;ALDEHYDE C 12 LAURIC;ALDEHYDE C 12 MNA PURE;ALDEHYDE C 8 OCTYLIC FOOD GRADE;ALDEHYDE 9 ISONONYLIC;ALDEHYDE C9 NONYLIC FOOD GRADE;ALDEHYDE C 90 NONENYLIC 1%/TEC;ALDEHYDE C12 (DODECANAL);ALDEHYDE ISO C 11;マンダリンアルデヒド;トランス-4-デセナール;DIHYDROFARNESAL;ドデカナール;MYRALDENE;およびTANGERINOL;

B2)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~25重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のアンバー調の成分:アンバーケタール;アンバーマックス;アンブロセニド;AMBROFIX;AMBROFIX FLAKES;ベランブレ;BOISAMBRENE FORTE;CEDRYL ACETATE LIQUID;CEDRYL METHYL ETHER;CETALOX;ISO E SUPER;KARANAL;KEPHALIS;TIMBEROL;TRIMOFIX O;

B3)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~1.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のアニマリック/レザー調の成分:ANIMALIS 1745 SUBST. PMF 2;ケード油、エッセンス、エキス、代替物、代用物;GUAIACOL;INDOFLOR;インドール;インドレン;スエーデラル成分;

B4)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~0.2重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のアニス調の成分:ANETHOLE;ANISE STAR OIL;ANISIC ALDEHYDE;ANISYL ACETATE;DIHYDRO ANETHOLE;ESTRAGOLE;ウイキョウ油、エッセンス、エキス、ベース、代替物または代用物;

B5)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~0.2重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のバルサム調の成分:ベンゾイン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;BENZYL ALCOHOL;BENZYL CINNAMATE;オリバナム油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;PHENYL ETHYL PHENYL ACETATE;

B6)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~10重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のカンファー/アロマ調の成分:アルモワーズ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;樟脳および樟脳油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ユーカリプトールおよびユーカリプトール油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ラバンジン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ラベンダー油、エキス、エッセンス、代替物または代用物;ローズマリー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ニオイヒバ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;

B7)香料組成物中で使用される香料成分を基にして30重量%~約80重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のフローラル調の成分:ACETAL CD;AMYL CINNAMIC ALDEHYDE;AMYL SALICYLATE;AURANTIOL PURE BENZYL ACETATE;BENZYL SALICYLATE;BOURGEONAL;CITRONELLOL;CITRONELLYL ACETATE;CRESYL METHYL ETHER PARA;CYCLAMEN ALDEHYDE EXTRA;CYCLOHEXAL;CYCLOHEXYL SALICYLATE;DIMETHYL ANTHRANILATE;DIMETHYL PHENYL THYL CARBINOL;DUPICAL;ETHYL LINALOOL;FLOROSA;FLOROSA HC;GERANIOL;ゼラニウム油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;GERANODYLE;GERANYL ACETATE;GERANYL BUTYRATE;HEDIONE;HEDIONE HC;HEXENYL-3-CIS SALICYLATE;HEXYL CINNAMIC ALDEHYDE;HEXYL CINNAMIC ALDEHYDE DQ AC XI 41505TT;HEXYL SALICYLATE;HYDROXYCITRONELLAL;ISOBUTYL PHENYL ACETATE;ISOBUTYL SALICYLATE;JASMATONE;ジャスミン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;JASMONE CIS;JASMONYL;JASMOPYRANE FORTE;LILIALおよびリリアール代用物;LINALOOL;MEFROSOL;METHYL ANTHRANILATE;METHYL ANTHRANILATE EXTRA;METHYL BENZOATE;METHYL PHENYL ACETATE;ネロリ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;NEROLINE CRYSTALS;NEROLIONE;ORANGER CRYSTALS;ORANGER FLEUR CREME 1103/20;PELARGOL;PEONILE;PETALIA;PHENYL ETHYL ACETATE;PHENYL ETHYL ALCOHOL;PHENYL ETHYL ISOVALERATE;PHENYL ETHYL SALICYLATE CRYSTALS;ROSACETOL;ROSALVA;バラ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;SUPER MUGUET;TERPINEOL PURE;TETRAHYDRO LINALOOL;VERDANTIOL;YARA YARA;イランイラン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;

B8)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~22重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のフルーツ調の成分:ACETATE C 6 HEXYLIC;AGRUMEX;ALLYL AMYL GLYCOLATE;ALLYL CAPROATE;ALLYL CYCLOHEXYL PROPIONATE;ALLYL OENANTHATE;AMYL BUTYRATE;APHERMATE;リンゴ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;バナナ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;BENZYL BUTYRATE;BENZYL ISOBUTYRATE;BENZYL PROPIONATE;BUTYL ACETATE;BUTYRIC ACID;カシス油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;COGNAC WHITE OIL EXTRA DQ (AC) 41547TT;CYCLOGALBANATE;DAMASCENONE;DAMASCONE ALPHA;DAMASCONE BETA;DAMASCONE DELTA;DECALACTONE DELTA;DECALACTONE GAMMA;デューフルーツ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;DIETHYL MALONATE;DIMETHYL BENZYL CARBINYL ACETATE;DIMETHYL BENZYL CARBINYL BUTYRATE;DODECALACTONE DELTA;DODECALACTONE GAMMA;ETHYL ACETOACETATE;ETHYL BUTYRATE;ETHYL CAPROATE;ETHYL CAPRYLATE;ETHYL ISOAMYL KETONE;ETHYL ISOBUTYRATE;ETHYL METHYL-2-BUTYRATE;ETHYL OENANTHATE;ETHYL PELARGONATE;ETHYL PROPIONATE;ETHYL SAFRANATE;FLOROCYCLENE;FRAISTONE;FRUCTONE;FRUITATE;GARDOCYCLENE;GIVESCONE;グアバ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;HEXENYL-3-CIS BUTYRATE;HEXENYL-3-CIS ISOBUTYRATE;HEXYL BUTYRATE;HEXYL ISOBUTYRATE;ISOAMYL ACETATE EXTRA;ISOAMYL BUTYRATE FR;JASMACYCLENE;MANZANATE;メロン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;METHOXY PHENYL BUTANONE;METHYL HEPTENONE PURE;METHYL HEXYL KETONE;METHYL-2-PENTENOIC ACID;2-NECTARYL;OCTALACTONE GAMMA;PEACH PURE;PHENOXY ETHYL ISOBUTYRATE;PHENYL ETHYL ISOBUTYRATE;PRUNOLIDE;RASPBERRY KETONE (N112);STRAWBERRY PURE;

B9)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.001重量%~0.01重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のキノコ調の成分:AMYL VINYL CARBINOL;OCIMENE;

B10)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~1重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のグルマン調の成分:ACETOIN;アセチルピラジン;BUTYL BUTYRO LACTATE;チョコレート油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CORYLONE DRIED;CYCLOTENE;エチルマルトール;ホモフロノール;ヒドロキシエチルメチルチアゾール;ISOBUTAVAN;MALTYL ISOBUTYRATE;

B11)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のグリーン調の成分:ACETAL E;ALCOHOL C 6 HEXYLIC;ALDEHYDE C 6 HEXYLIC FOOD GRADE;BUTYL QUINOLINE SECONDARY;CYCLAL C;DIPHENYL OXIDE;ELINTAAL;ETHYL DECADIENOATE;エチルジメチルピラジン;ガルバノン;GARDENOL;ヘキサナール-2-トランス;HEXENOL-2-TRANS;HEXENOL-3-CIS;HEXENYL-3-CIS ACETATE;HEXENYL-3-CIS BENZOATE;HEXENYL-3-CIS PROPIONATE;ISOCYCLOCITRAL;イソヘキシルメトキシピラジン;LIFFAROME;LIGANTRAAL;MACEAL;METHYL OCTYNE CARBONATE;NEOFOLIONE;ノナジエナール;NONADIENOL-2,6;ノネナール-6-シス;NONENOL-6-CIS;フェノキシアセトアルデヒド;フェニルアセトアルデヒド;PYRALONE;RESEDAL;ROSE OXIDE;ROSYRANE SUPER;STEMONE;TRICYCLAL;TRIFERNAL;UNDECATRIENE;UNDECAVERTOL;バイオレットニトリル;VIRIDINE;

B12)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~0.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のハーブ調の成分:バジル油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;カモミール油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CITRONELLAL;クラリセージ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CYPRISATE;ユーカリ油、エキス、エッセンス、代替物または代用物;HERBOXANE;PINOACETALDEHYDE;TANAISONE;タイム油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;THYMOL CRYSTALS;

B13)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のマリン/ウォータリー調の成分:ADOXAL;アズロン;CALONE 1951;FENNALDEHYDE;FLORALOZONE;FLORHYDRAL;MELONAL;SCENTENAL;TROPIONAL;VERNALDEHYDE;

B14)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~0.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のミント調の成分:ブチュ葉油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CARVONE LAEVO;ハッカ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;FRESKOMENTHE;ISOMENTHONE DL;MENTHOL LAEVO;MENTHOL-DL;MENTHONE;MENTHYL ACETATE;ペパーミント油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;スペアミント油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;

B15)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~50重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のムスク調の成分:AMBRETTOLIDE;CASHMERAN;COSMONE;シクロペンタデカノリド;ETHYLENE BRASSYLATE;GALAXOLIDE;GALAXOLIDE S;HABANOLIDE;MUSCENONE;MUSK C14;SERENOLIDE;SILVANONE SUPRA;SYLKOLIDE;VELVIONE;

B16)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~10重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のオリス調の成分:CETONE V;DIHYDRO IONONE BETA;IONONE BETA;IRISONE ALPHA;IRISONE PURE;ISORALDEINE 70;ISORALDEINE 95;ORIVONE;

B17)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~1重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のスパイス調の成分:カルダモン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CARYOPHYLLENE;CINNAMIC ALCOHOL;CINNAMIC ALDEHYDE;シナモンリーフ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;クローブ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;コリアンダー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;エレミ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ETHYL CINNAMATE;EUGENOL;ジンジャー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ISOEUGENOL;METHYL CINNAMATE;METHYL ISOEUGENOL;MYSTIKAL;ナツメグ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;胡椒油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;SZECHUAN PEPPER (ASH BARK) DQ AF 24070TT;

B18)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~0.5重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種の硫黄調の成分:アンジェルク(Anjeruk);コールカシス;コールパンプルムース;ジメチルスルフィド;GARDAMIDE;ラビエノキシム;メルカプタン;METHYL ISOPROPYL THIAZOLE;ナルドゼステ(Nardozeste)油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;NEOCASPIRENE EXTRA;NONIVAMIDE 1% TRIACETIN;オキサン;PARADISAMIDE;パラメントン;

B19)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~10重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のスウィート/パウダリー調の成分:ACETOPHENONE;AUBEPINE PARA CRESOL;BICYCLO NONALACTONE;COUMARIN;エチルライトン;ETHYL VANILLIN;HELIOTROPIN;バニラ油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;バノリア(Vanolia)油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;VERATRIC ALDEHYDE;

B20)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~15重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種のウッディ/パイン調の成分:BORNEOL;BORNYL ACETATE LIQUID;BUTYL CYCLOHEXANOL PARA;BUTYL CYCLOHEXYL ACETATE PARA;シダーウッド油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;CONIFERAN;EBANOL;EVERNYL;FENCHYL ACETATE;ガイアックウッド油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;ISONONANYL ACETATE;JAVANOL;KOHINOOL;MENTHANYL ACETATE;METHYL CEDRYL KETONE;NOPYL ACETATE;OSYROL;OXYOCTALINE FORMATE;パチュリー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;PINENE ALPHA;PINENE BETA;RADJANOL;RADJANOL SUPER;テレピン油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;VERTOFIX COEUR;ベチバー油、エッセンス、エキス、代替物または代用物;

および、任意に

B21)香料組成物中で使用される香料成分を基にして0.01重量%~10重量%の、以下からなる群から選択される少なくとも1種の成分:ALDEHYDE C12;およびMENTHYL ACETATE。」

第3 当審における拒絶理由の概要

令和7年3月12日付けで通知した拒絶理由通知は、以下の理由を含むものである。

理由1:(明確性)

本願の請求項1に係る発明の「~油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;」との記載は、例示と併記され、定義はされておらず、これらがどのような成分であるかが出願時の技術常識から明らかともいえないため、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由2:(実施可能要件)

発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識を参酌しても、SC値が不明な非常に多様な香料成分を非常に多様な配合割合で混合して、本願の請求項1に係る、SC値が少なくとも1.35である香料組成物を含む消費者用製品を製造することは、当業者に期待しうる程度を越える試行錯誤や複雑高度な実験等を必要とするものであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 当審における判断(実施可能要件)

以下、下線は当審で付したものである。

1 前提

(1)判断手法

本願発明は、「少なくとも2種の、より特定的には少なくとも5種の、さらに特定的には10種以上の、香料成分を用いて調製され、Sandman Classifier(SC)値が少なくとも1.35である、香料組成物を含む消費者用製品であって、

ここで、Sandman Classifierは、・・・によって規定され、

香料組成物が、少なくとも重量で0.01%の、以下の群から選び出される香料成分を用いて調製された組成物である、前記消費者用製品:」という物の発明である。

特許法第36条第4項第1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないと定めるところ(いわゆる「実施可能要件」)、この規定にいう「実施」とは、物の発明においては、その物を作り、使用をする行為をいうものであるから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について実施可能要件を満たすためには、発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものでなければならない。

以上を前提として、発明の詳細な説明の記載が、本件発明について実施可能要件を満たすものであるか検討する。

(2)本願明細書の記載

本願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。

「【0112】

表1に説明された香り組成物を調製し、種々の試験プロトコルに供した。香り41(=例示の香り4)および香り47(=例示の香り6)とラベル付けされた香りは、本発明による香り組成物である一方、香り44(例示の香り1)および香り37は、強調された固有の匂い属性についてのガイドライン値を破らない本発明の条件に合致しない比較例である。

【0113】

【表1】

110

121

0001435476000001.jpg

表1

「Sleep Good」の香りの範囲値と比較した、試験した香りの範囲値(最小および最大)。太字のイタリック体の数字のセルは、推奨範囲を破っていることを表示する。最終行は、推奨できるか否かの結果(YESまたはNO)、すなわち、試験した香りが睡眠向上特性を有するとみなされるか否かを説明する。

【0114】

例示の香り1を、例示の香り2、例示の香り3、例示の香り4、例示の香り5、例示の香り6および例示の香り7の香りと比較する。

香りを、前に概説した枠組みにおけるEEG、および検証試験を通じて測定したところ、以下の結果が得られた:

【0115】

【表2】

57

88

0001435476000002.jpg

表2

試験した香りのSandman classifierおよび検証尺度の値

検証尺度=睡眠%+(睡眠の質)2

【0116】

睡眠%は、アクティグラフィーにおけるアルゴリズムから取られた測定尺度であって、睡眠の質の全般的な測定尺度であり、一方、睡眠の質は、1~5の値を取る主観的な測定尺度である。

【0117】

例示の香り1のSandman classifier値を、例示の香り2、例示の香り3、例示の香り4、例示の香り5、例示の香り6または例示の香り7のいずれかの同等の値と直接比較することによって、例示の香り1が他のいずれの香りよりも低いSandman classifier値を有することがわかる。これに加えて、例示の香り1のSandman classifier値は、指定した1.35の閾値を下回る。

したがって、例示の香り1が他のいずれの香りよりも大幅に睡眠の向上性が低いことを予測することができる。実際に、我々の検証尺度は、正にこれを示している。」

(3)令和5年3月17日提出の意見書の記載

同意見書第2頁第6~32行には、次の記載があり、下記の参考資料Aが添付されている。

「なお、審査官殿ご指摘の通り、本願明細書に記載の「香り41」、「香り47」に用いられた具体的な成分名は記載されていませんが、アルデヒド調、柑橘調、グリーン調、マリン/ウォータリー調、硫黄調、フローラル調、オリス調、フルーツ調、アンバー調、アニマリック/レザー調、スウィート・パウダリー調、ウッディ/パイン調といった香料成分の香りの方向性に基づいた分類は香料の分野において一般的であり、香料に接している当業者であれば、これらの分類を十分理解しており、各群に属する香料原料も十分理解しています。

本出願人は、同じ群(分類)に属する香料成分が、同程度の「Sandman Classifier(SC)値を示すことを理解して頂くべく、参考資料Aを提出いたします。

参考資料Aにおいては、柑橘調(A群)の成分であるオレンジテルペンおよびレモンオイルが、7名のパネルにおいて、SC値のMean±SDが、3.38±0.19と3.44±0.26と同等の値が示されたこと、およびフローラル調(B7群)の成分である、FlorosaおよびHEDIONEが、7名のパネルにおいても、SC値のMean±SDが、3.31±0.12と3.32±0.12と同等の値が示されたことが理解できます。

なお、オレンジテルペンおよびレモンオイルは、オレンジとレモンという異なる詳細な印象を与えるものでありますが、広義にはいずれもシトラスであり同様の印象を与えるものであります。そして、そのSC値は同等であることが理解できます。

同様に、Florosaはクリーミーなフローラルミュゲノートが特徴であり、HEDIONEは、透明感のあるフローラルノート、ジャスミン、シトラスが特徴であり、狭義の印象で言えば異なる印象を与えるものですが、いずれもフローラルな印象を与えるものであります。そして、そのSC値は同等であることが理解できます。

以上のことから、同じ「属性」に属する香料であれば、同程度の「Sandman Classifier(SC)値を示すことが理解されます。そもそも、ヒトに好まれる香料組成物を調製するための豊富な知識を有する当業者にとっては、本願明細書は、「睡眠の質に対処することに適した香料組成物」を調製するための追加の指針を提供するものであり、当業者であれば、日常的な実験によって、本発明を実施することができることは明らかであるものと思料します。」

「(添付資料) 参考資料A: 7名のパネルによる、特定の香料成分のSC値

60

101

0001435476000003.jpg

(4)精油に関する技術常識を示す文献

文献A:日本味と匂学会誌、1994年12月(第28回味と匂のシンポジウム)、Vol.1 No.3、486-489頁

文献B:睡眠と環境 (J.Sleep and Environments) 、2020、第15巻第1号、3-9頁

文献C:佐々木薫監修、「ハーブ&アロマ事典」、株式会社大泉書店、2004年10月11日 初版発行、70~71頁

ア 精油に関する文献Aには、次の記載がある。

(第488頁下から4~最終行)

「第1ブロックでレモン油呈示時に、蒸留水呈示時と比較した場合にα1波帯域が低いという結果は、レモン油の眠気抑制効果を表すものと推察され、レモンは官能検査でも覚醒効果があるとされているが、レモン油の結果は覚醒効果が他のニオイ呈示時よりも高いことを生理学的に示すものと思われる。」

イ 精油に関する文献Bには、次の記載がある。

(第4頁左欄下第2行~右欄第9行)

「一方、近年、睡眠環境を向上させる要因の一つとして香りが注目されている。例えば、副交感神経を亢進させる作用を持つラベンダーは、足部温浴に用いることで、ネガティブな気分を軽減させることが分かっている。更に、ラベンダーには、交感神経活動を低下させ、睡眠中の心拍数を減少させる効果もある。また、交感神経を亢進させるジャスミンには、気分を向上させ、抑うつ状態を改善する効果があることが知られている。但し、ジャスミンは、睡眠時に呈示すると、就寝中の心拍数の低下を抑制させる。」

ウ 精油に関する文献Cには、次の記載がある。

(第70頁~第71頁)

188

153

0001435476000004.jpg

184

153

0001435476000005.jpg

2 検討

(1)SC値について

ア 本願明細書の【0006】には、「好ましい香料組成物は、1.35~約150の、より特定的には1.35~約75の、さらに特定的には1.35~約3の、SC値を示す。」と記載され、本願発明1、並びに明細書の【0007】及び【0008】には、各種脳波活動の振幅値がSC値の算出に用いられることが記載されている。また、前記1(2)の本願明細書の段落【0115】の【表2】には、SC値が1.080の「例示の香り-1」は検証尺度が低い(睡眠の向上性が低い)のに対し、SC値が1.361の「例示の香り-5」を含む「例示の香り-2」~「例示の香り-7」は、検証尺度が高いとの記載がある(段落【0117】)。

しかしながら、「例示の香り-2」、「例示の香り-3」、「例示の香り-5」及び「例示の香り-7」は、そもそも〇〇調といったどのような属性の香調をどの程度含むかすら不明である。加えて、「例示の香り-1」、「例示の香り-4」及び「例示の香り-6」に対応する「香り44」、「香り41」及び「香り47」も、本願明細書の段落【0113】の【表1】に、各々に含まれる香りの属性として「〇〇調」と記載されるにとどまり、前記1(2)の本願明細書の段落【0112】にも、「香り41」及び「香り47」が「本発明による香り組成物である」と記載されるにすぎず、本願明細書には、実施例として記載される香料組成物についてすら、具体的な成分(化合物)とその量は不明である。

さらに、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明に特定されるように各〇〇調の成分を用いてそれぞれの香調の上限値及び下限値が特定の重量%となるよう調製された香料組成物のSC値が、少なくとも1.35となることに関し、メカニズム等(各種脳波活動の振幅値の変動は、各香調に含まれるどのような成分や化合物による、どのような機序によるものか。香調を混合することにより、各種脳波活動の振幅値は、どのように変化するのか等)の記載もなされていない。

イ 「〇〇調」との香調について、例えば、前記1(4)アの文献Aに、「第1ブロックでレモン油呈示時に、蒸留水呈示時と比較した場合にα1波帯域が低いという結果は、レモン油の眠気抑制効果を表すものと推察され、レモンは官能検査でも覚醒効果があるとされているが、レモン油の結果は覚醒効果が他のニオイ呈示時よりも高いことを生理学的に示すものと思われる。」(第488頁下から4~最終行)と記載されている。さらに、前記1(4)ウの文献Cには、「レモン」の精油、すなわち本願発明の柑橘調成分である「レモン油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」について「気持ちをリフレッシュさせ、集中力や記憶力を高める」と記載される一方、「グレープフルーツ」の精油、すなわちレモン油と同じく本願発明の柑橘調成分である「グレープフルーツ油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」について、「ストレスや不安をやわらげる/心地よい眠りに導く」と記載されている。このように、同じ本願発明の柑橘調の成分でも、レモン油は眠気抑制効果を有するのに対し、グレープフルーツの精油は、心地よい眠りに導くというレモン油とはほぼ反対の作用を有することは、本願出願時の技術常識である。

また、前記1(4)ウの文献Cには、「ジャスミン」の精油、すなわち本願発明のフローラル調成分である「ジャスミン油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」について「気分を高揚させる効果が最も高い精油のひとつといわれています」と記載される一方、「ゼラニウム」や「ネロリ」の精油、すなわち本願発明のフローラル調成分である「ゼラニウム油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」や「ネロリ油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」について「精神的なストレスや不安をやわらげる/心地よい眠りに導く」とも記載されている。ラベンダーは副交感神経を亢進させる一方、ジャスミンは交感神経を亢進させる等(要すれば、本願出願後に公開された文献ではあるが、上記1(4)イ文献Bの従来技術としての記載等参照)、同じ本願発明のフローラル成分でも、ジャスミンの精油は気分を高揚させるのに対し、ゼラニウムの精油やネロリの精油は心地よい眠りに導くというジャスミンの精油とほぼ反対の作用を有することも、本願出願時の技術常識である。

このように、本願発明において〇〇調とされる香りでも、個々の成分(化合物)等によりもたらされる作用が多様であることは、当該分野における技術常識であり、本願出願時、本願発明の同じ香調に属する成分(化合物)であれば、個々の香りの特性によらず、睡眠の質や、本願発明1、並びに本願明細書の段落【0007】及び【0008】にSC値の算出に用いられることが記載される各種脳波活動の振幅値に対して、全て同様の作用を奏するものとは認識されていなかったと認められる。

ウ 一般に、香料分野において、例えば「柑橘調」のような〇〇調との呼称が広く用いられ、それらを配合することが行われてていたとしても、前記イのとおり、睡眠の質の向上特性や本願発明1と本願明細書に記載される各種脳波活動の振幅値との関係で、同じ香調に属する成分(化合物)であれば、全て同様の作用を奏することが本願出願時の技術常識であったとはいえないから、本願明細書の記載及び本願出願時の技術常識から、各香調の成分を本願発明の所定の配合量で組み合わせて調製された香料組成物であれば、各香調の成分として、どのような成分(化合物)を用いた場合でも、同等の「SC値」であることが明らかとはいえない。

前記1(3)の請求人が提出した参考資料Aのとおり、本願発明において同じ香調の成分の多種多様な選択肢の中に、同程度の「Sandman Classifier(SC)値を示すものが存在するとしても、そのことをもって、本願発明において同じ香調の成分(化合物)の全てが同等の「SC値」であることが明らかとはいえないし、各香調の成分を本願発明の所定の配合量で組み合わせて香料組成物を調製すれば、同等の「SC値」を示すものと当業者が理解したとはいえない。

エ そうすると、本願明細書に「本発明による香り組成物」として記載される前記アの「香り41」及び「香り47」についてすら、本願明細書の発明の詳細な説明及び技術常識から、当業者はそれらがいかなる香調の成分及び量の組み合わせであるのかを理解できない以上、SC値が「2.484」及び「3.033」(【表2】)となる香りをもたらすような追試を行うことはできず、ましてや、本願明細書の発明の詳細な説明に、請求項1に記載される香料組成物の多種多様な香料成分(化合物)の種類及び量の組み合わせにおいて、当業者が過度な実験を要することなく「SC値が少なくとも1.35であ」る香料組成物を調製し、これを含む消費者用製品を製造できる程度に、明確かつ十分に記載されていたということもできない。

したがって、本願発明の各「香調」とその配合量の「上限」、「下限」から、どのように「SC値が少なくとも1.35であ」る香料組成物を製造できるのか、技術常識を参酌しても、明細書の記載に基づいて当業者が理解できるとはいえない。

(2)Sleep Goodについて

ア 【表1】について、本願明細書の段落【0112】及び【0113】には、「表1に説明された香り組成物を調製し、種々の試験プロトコルに供した。香り41(=例示の香り4)および香り47(=例示の香り6)とラベル付けされた香りは、本発明による香り組成物である一方、香り44(例示の香り1)および香り37は、強調された固有の匂い属性についてのガイドライン値を破らない本発明の条件に合致しない比較例である」、並びに、「表1 「Sleep Good」の香りの範囲値と比較した、試験した香りの範囲値(最小および最大)。太字のイタリック体の数字のセルは、推奨範囲を破っていることを表示する。最終行は、推奨できるか否かの結果(YESまたはNO)、すなわち、試験した香りが睡眠向上特性を有するとみなされるか否かを説明する。」と記載されている。

しかしながら、「「Sleep Good」がどのような指標であり、「Sleep Good」と各香調の含有量の関係がどのような手法によって得られるものなのかについて、本願明細書には具体的な記載がなされて」おらず、また、前記(1)イでも検討したとおり、「一般に、香料組成物は、同じ香調の群に属する香料化合物を用いたとしても、香料化合物の種類が異なると、睡眠向上特性などの特性が変化する場合があると考えられるところ、様々な香料化合物を含み得る香調の含有量が特定の範囲であれば、「Sleep Good」であると、どうして一般化して考えることができるのかが判然としない」ことから、令和7年3月12日付け拒絶理由の最後に審尋を行ったところ、当該審尋に対する令和7年9月12日提出の意見書における請求人の回答は、以下のとおりである。

「(1)「Sleep Good」について

ア 表1における「Sleep Good」は、睡眠促進効果のあるフレグランスを得るために適した、各フレグランスファミリー(グループ)の最小レベルおよび最大レベルを示すものであります。これらのレベルは、多数のフレグランスおよびオーラルケア組成物を、脳波検査(EEG)、活動量計検査(アクチグラフィー)、および/または睡眠日誌によって試験したデータに基づいて決定されました。言い換えれば、

この欄は本出願人の広範な試験から得られた結果を示すもの

であります。したがって、

これらの事項は、本願発明時の技術常識ではありませんでした

。なお、表1の他の欄は、試験した特定のフレグラス組成物の組成をしますものであります。」

イ 本願明細書の発明の詳細な説明には、「Sleep Good」の最大値と最小値を求める試験について、各香調の成分としてどのような成分(化合物)をどの程度(複数種または1種、どの程度の量)用いて行われ、どのような具体的な結果に基づいて決定されたか等の具体的な記載はなされていない。

前記(1)イでも検討したとおり、香料分野において、例えば「柑橘調」のような〇〇調との呼称が広く行われていたとしても、睡眠の質の向上特性との関係で、同じ香調に属する成分(化合物)であれば、全て同様の作用を奏することが本願出願時の技術常識であったとはいえず、また、「Sleep Good」のガイドライン値が本願出願時の技術常識でない以上、本願明細書の発明の詳細な説明に、「Sleep Good」の最小値及び最大値が記載されていることをもって、本願明細書の発明の詳細な説明に、請求項1に記載される香料組成物の多種多様な香料成分(化合物)の種類及び量の組み合わせにおいて、当業者が過度な実験を要することなく「SC値が少なくとも1.35であ」る香料組成物を調製し、これを含む消費者用製品を製造できる程度に、明確かつ十分に記載されていたということもできない。

以上のとおりであるから、「技術常識」ではない上に、どのように導かれたガイドラインであるかの根拠も明らかにされない「Sleep Good」の最小値及び最大値と、調合された結果として得られる香料組成物全体の組成との関係を、明細書の記載に基づいて当業者が理解できるとはいえない。

(3) 小括

したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、本願発明に係る香料組成物を含む消費者用製品を製造できる程度の記載がなされていないことに加え、本願出願時の技術常識に照らし合わせても、本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明で特定される各香調の多種多様な成分(化合物)の種類及び量とその膨大な組み合わせを包含する香料成分をさらに組み合わせ、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等を要することなく「SC値が少なくとも1.35であ」る香料組成物とし、これを含む消費者用製品を製造できる程度に、明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

3 請求人の主張について

(1)審判請求までの主張

請求人は審判請求書において、「特許請求の範囲に列記される香料成分のSC値は当業者にとって明らかではなかった」ことは事実だが、各香料成分のSC値を測定する必要はなく、当業者は、請求項に記載された、各群の香料成分のリストおよび提案された量を考慮して、香料組成物を調製することができ、調整された香料組成物のSC値が少なくとも1.35であることを確認することにより、特許請求の範囲に記載された発明を実施することができると主張する。

また、請求人は、令和5年3月17日提出の意見書において、柑橘調(A群)の成分であるオレンジテルペンおよびレモンオイルのSC値は、3.38±0.19と3.44±0.26であり、フローラル調(B7群)の成分である、FlorosaおよびHEDIONEのSC値は、3.31±0.12と3.32±0.12であることを示しつつ(前記1(3)の参考資料Aも参照)、オレンジテルペン及びレモンオイルは、オレンジとレモンという異なる詳細な印象を与えるものであるが、広義にはいずれもシトラスであり同様の印象を与えるものであるから、そのSC値は同等であることが理解でき、Florosaはクリーミーなフローラルミュゲノートが特徴であり、HEDIONEは、透明感のあるフローラルノート、ジャスミン、シトラスが特徴であり、狭義の印象で言えば異なる印象を与えるものであるが、いずれもフローラルな印象を与えるものであるから、そのSC値は同等であることが理解できるため、同じ「属性」に属する香料であれば、同程度の「Sandman Classifier(SC)値を示すことが理解される旨主張する。

しかしながら、前記2(1)のとおり、本願明細書には具体的にどのような香調の成分を用いることにより、SC値が2.484又は3.033である香料組成物を製造できたか、また、具体的にどのような香調の成分をどの程度用いることにより、SC値が2.456、2.691又は1.361である香料組成物を製造できたかという点についてすら記載されていない。

請求人は、オレンジテルペン及びレモンオイルの2種類の柑橘調の成分、Florosa及びHEDIONEの2種類のフローラル調の成分という限定された追試におけるデータに基づいて、同じ香調であれば同じSC値になる旨主張している。しかしながら、前記2(2)のとおり、レモン油では覚醒効果があるという出願時の技術常識があるなど、柑橘調の成分やフローラル調の成分とされる香りでも、個々の成分等によりもたらされる作用が多様であるという当該分野の技術常識を踏まえると、参考資料Aのとおり、本願発明において同じ香調の成分の多種多様な選択肢の中に、同程度の「Sandman Classifier(SC)値を示すものが存在する場合があるとしても、そのことをもって、本願発明において同じ香調の成分(化合物)の全てが同等の「SC値」であることが明らかとはいえず、ましてや、各香調を用いて本願発明で特定される重量%の範囲内となるように調製された香料組成物の全てが同等の「SC値」であることが明らかともいえない。

してみれば、特許請求の範囲の記載に基づき、SC値が不明な非常に多様な香調の成分を非常に多様な配合割合で混合して香料組成物を調製し、調製された個々の香料組成物のSC値を測定すればSC値が少なくとも1.35である香料組成物を得ることができるから本願発明は実施可能であるとの上記請求人の主張は、まさに、本願発明の香料組成物を含む消費者用製品を製造するために当業者に過度な試行錯誤を強いるものといえる。

したがって、請求人の主張をもって、本願明細書の発明の詳細な説明が、本願発明を当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されていたとはいえない。

(2)令和7年9月12日提出の意見書における主張

請求人は、令和7年9月12日の意見書の第4頁第19行~第5頁第21行に、「2 理由2(実施可能要件)について」として、「審判官殿は、「(2)検討」において、・・・「「本願出願時の技術常識に照らし合わせても、請求項1~6、8~11で特定される多種多様な『化合物の種類及び量』の組み合わせを包含する香料組成物及びその調製方法の全てが、『睡眠の質を向上させ、かつ同時に快楽性能が高く精巧である、機能的な香料アコードを生み出すことを、香料製造者に可能にさせる手段を提供する』との課題を解決することが、本願明細書の発明の詳細な説明から明らかとはいえない。」旨認定され、」(前提)

「睡眠の質に対処することに適した香料組成物を含む消費者製品に係る請求項1に記載の各フレグランスファミリー・香調についてのガイドライン値は、望ましい匂いの印象を付与し、睡眠促進効果が期待される香料組成物とするガイドラインであり、まずこのガイドラインを満たすもの中から、さらにSC値のガイドラインを満たすものが、睡眠の質に対処することに適した香料組成物に適していると判断できることは、本願明細書の記載から当業者であれば理解することであります。」(主張1)

「審判官殿が、柑橘調成分に関する文献Aに言及されましたように、

柑橘調の成分については、一般的に眠気を抑制する作用があると考えられているため、フローラル調の成分と組み合わせることで睡眠の質の向上をサポートするというのは、実際には、発明者および出願人にとって意外なこと

であり、この観察結果は、本願発明の進歩性を裏付けるものであります。」(主張2)

「睡眠の質に対処することに適した香料組成物を含む消費者製品に係る請求項1に記載の各フレグランスファミリー・香調についてのガイドライン値は、望ましい匂いの印象を付与し、睡眠促進効果が期待される組成物を調製するためのガイドラインであり、このガイドラインを満す成分から調製した香料組成物であって、さらにSC値のガイドラインを満たす香料組成物を採用することにより、本願発明は睡眠の質に対処することに適した香料組成物を提供するものであり、かかる効果は本願明細書の記載から理解されるものと思料します。」(前記主張1とほぼ同様)と主張している。

しかしながら、令和7年3月12日付け拒絶理由には、前記(前提)の記載はなく、このような前提に基づく請求人の主張の趣旨は不明であるが、以下、念のため、前記主張1及び主張2について検討する。

主張1について、前記「ガイドライン値」とは、例えば請求項1のA)の柑橘調の成分の「1重量%~30重量%」を指すものと理解できるが、本願明細書の発明の詳細な説明には、【表1】を含め、柑橘調の成分を「1重量%~30重量%」とすることについて、具体的な記載はない(【表1】のSleep Goodの最小値及び最大値は、それぞれ、1.200及び28.873である。)。そして、本願明細書の発明の詳細な説明に、「Sleep Good」の最小値及び最大値が記載されていることをもって、本願明細書の発明の詳細な説明に、請求項1に記載される香料組成物の多種多様な香料成分(化合物)の種類及び量の組み合わせにおいて、当業者が過度な実験を要することなく「SC値が少なくとも1.35であ」る香料組成物を調製し、それを含む消費者用製品を製造できる程度に、明確かつ十分に記載されていたといえないことは、前記2の(1)エ及び(2)イで検討したとおりである。

主張2について、柑橘調の成分とフローラル調の成分とを組み合わせることで睡眠の質の向上を実現することが

当業者にとって意外なことである

ならなおさら、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明を裏付ける実施例等の具体的な記載が必要とされるにもかかわらず、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記2(1)のとおり、「Sleep Good」を決定した際に用いられた成分及び試験した香りのいずれについても、具体的にどのような香調の成分(化合物)を用いて調整され、含むのか不明である。

したがって、これらの請求人の主張をもって、本願発明が、本願当初明細書の発明な詳細において明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。

4 特許法第36条第4項第1号についてのまとめ

以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものではない。

第5 当審における判断(明確性要件)

1 前提

特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。

そこで、本件特許発明が、明確であるか否か、上記判断基準に沿って以下検討する。

2 検討

本願発明の、例えば、「~少なくとも1種の以下からなる群から選択される柑橘調の成分:ベルガモット油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物;CITRAL LEMAROME N;CITRAL TECH・・・」との記載は、柑橘調の成分として、「ベルガモット油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」と「CITRAL LEMAROME N」(合議体注:商標名)等を並列に記載するものである。

本願明細書の段落【0011】には、「ベルガモット油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物、例えば・・・;CITRAL LEMAROME N;CITRAL TECH・・・」として、「ベルガモット油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」の具体例の記載はあるものの、「ベース、代用物または代替物」に関する定義等はなされておらず、これらがどのような成分であるかが出願時の技術常識から明らかともいえないため、本願発明は明確でない。

また、「ベルガモット油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」の一具体例に相当するCITRAL LEMAROME N(合議体注:商標名)等と、「ベルガモット油、エッセンス、エキス、ベ-ス、代用物または代替物」とを同列で択一的に並べる本願発明の記載では、段落【0011】の記載とは異なり、両者の関係が明瞭とはいえないため、このような観点からも、本願発明は明確でない。

本願発明のベルガモット以外の各種「・・・油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」についても、前記同様の理由から、明確でない。

3 請求人の主張について

請求人は、令和7年9月12日提出の意見書において、「段落【0011】に記載されているが請求項1には記載されていない製品名は、「油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」の例であります。たとえば、「ベルガモット油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」に関し、「

BERGAMOT OIL ITALY EXPRESSED

」は、ベルガモット「油、エッセンス、エキス」の例であり、「

BERGAMOTE GIVCO 104/4

」は、ベルガモット「ベース、代用物または代替物」の例であります。ここで、例えば、ベルガモット「ベース、代用物または代替物」は、「ベルガモット油、エッセンス、エキス」それ自体ではないが、例えば、ベルガモット「代用物または代替物」は、その香りの類似性から、「ベルガモット油、エッセンス、エキス」の代用物または代替物として用いることができる、化合物の混合物であって、「ベース」もまた、ベルガモットノートのために重要な化合物を含み、そのベースを形成する混合物であり、このことは当業者には明らかであるものと思料します。これは、他のフルーツ等に関しても同様であります。審判官殿ご指摘の「CITRAL LEMAROME N」は、ベルガモット油、エッセンス、エキスから独立した、柑橘調成分の別の例であります。」として、上記記載が明確である旨を主張する。

しかしながら、「当業者には明らかである」とされる「その香りの類似性から、「ベルガモット油、エッセンス、エキス」の代用物または代替物として用いることができる、化合物の混合物」について、「化合物」やその配合は明示されていないし、「「ベース」もまた、ベルガモットノートのために重要な化合物を含み、そのベースを形成する混合物であり」とされるのみで、具体的に「重要な化合物」が何でどの程度の比率で含まれれば足りるのかは、何ら説明されていない。そうすると、それぞれが具体的に何を指すのか、例示はされているものの定義はされていないこれらの用語が、例示されたもの以外に、如何なる成分までを意味するものであるかは依然として不明である。「当業者には明らか」と記載されていても、実際には、成分や配合は明示されておらず、その根拠を辿ることも、一義的に解釈を定めることもできない。

したがって、上記主張は採用することができず、本願発明の「・・・油、エッセンス、エキス、ベース、代用物または代替物」なる記載は、請求人と第三者に「解釈の違い」を生じ得るものであるから、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。

4 特許法第36条第6項第2号についてのまとめ

以上のとおりであるから、本願は特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものではない。

第6 むすび

以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。