sokuhyo

Trademark Appeal Case

特許の明確性・新規性・進歩性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024014592
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特願2022-508601号(以下、「本願」という。)は、2021年(令和3年)3月15日(優先権主張 2020年(令和2年)3月18日)を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和4年 9月15日 :上申書及び手続補正書の提出

令和5年10月11日付け:拒絶理由通知(発送日:同年10月17日)

令和5年12月 4日 :意見書及び手続補正書の提出

令和6年 2月 6日付け:拒絶理由通知<最後>(発送日:同年2月

13日)

令和6年 4月11日 :意見書及び手続補正書の提出

令和6年 6月 4日付け:補正却下、拒絶査定(発送日:同年6月

11日)

令和6年 9月11日 :審判請求書及び手続補正書の提出

令和7年 3月24日 :上申書の提出

令和7年 6月30日付け:拒絶理由通知(発送日:同年7月1日)

令和7年 9月 1日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明

令和7年9月1日に提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「 【請求項1】

車両に搭載された機器を動作させる電子制御ユニットのソフトウェアの更新処理を実行 するソフトウェア更新装置であって、

前記機器には前記車両のパワートレインが含まれ、

前記ソフトウェア更新装置は、

前記車両のパワートレインの駆動力出力状態を検知する検知部と、

前記ソフトウェアを取得し、当該ソフトウェアを前記機器に適用することで前記機器を制御する電子制御ユニットと、

前記電子制御ユニットと通信可能であるとともに、前記検知部から前記車両のパワートレインの駆動力状態を取得するゲートウェイと、を備え、

前記電子制御ユニットは、

取得した第1のソフトウェアを記憶する第1記憶部と、

取得した第2のソフトウェアを記憶する第2記憶部と、を有し、

前記電子制御ユニットは、

前記機器に適用するソフトウェアを前記第1のソフトウェアから前記第2のソフトウェアに変更することで前記ソフトウェアの更新処理を実行し、

前記ソフトウェアをダウンロード及びインストールしている間は前記機器を停止せず、

前記ゲートウェイは、

前記検知部から前記車両のパワートレインの駆動力状態を取得し、前記検知部が前記車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態であることを検知した場合に、前記車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態において、前記ソフトウェアの更新処理を許可し、

前記ソフトウェアの更新処理中は、前記車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止し、

前記ソフトウェアの更新が完了すると、車両のパワートレインによる駆動力の出力を許可し、

前記車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)状態である場合のうち、少なくとも一方の場合である、

ソフトウェア更新装置。」

第3 拒絶の理由

令和7年6月30日付けで当審より請求項1について通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。

1 (明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 (新規性)この出願の下記の請求項1に係る発明は、その優先日前(審決注:同通知における「

出願

前」は「

優先日

前」の誤記である。)に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3 (進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2018-200510号公報

2.特開2007-11734号公報

第4 引用文献

1 引用文献1の記載及び引用発明

(1)引用文献1の記載事項

ア 引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。

(ア)「【技術分野】 【0001】

本発明は、ソフトウェア更新装置、ソフトウェア更新システム、及び、ソフトウェア更新方法に関する

。」

(イ)「【発明が解決しようとする課題】

【0005】

近年においては、車両1台に備えられる電子制御装置(ECU:Electric Control Unit)の数が非常に多くなっている。このために、例えば特許文献1や2の構成を車両のECUのソフトウェアの更新に適用する場合、ソフトウェアの更新処理に要する時間が非常に長くなることが懸念される。更新処理が長くなると、例えば、車両の所有者を待たせる時間が長くなり過ぎることが懸念される。また、

ソフトウェアの更新処理は、エンジンの停止中に実施する必要があり

、更新処理に時間がかかると、車両のバッテリが上がる可能性がある。

【0006】

複数のECUの間で、ソフトウェアの更新処理を行うタイミングをずらすことが考えられる。例えば、

車両が停車するタイミングに合わせて、ソフトウェアの更新処理を順次行うことが考えられる

。これにより、車両の所有者を待たせたり、車両のバッテリが上がったりすることを防止することができる。しかしながら、このような構成では、相互に連携する複数のECUの中に、ソフトウェアの更新処理が完了しているECUと、ソフトウェアの更新処理が完了していないECUとが混在する可能性がある。このような混在が発生すると、例えばインターフェースの不整合等によって、車両が誤作動を起こす可能性がある。

【0007】

本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、相互に連携する複数の制御装置のソフトウェアの更新処理を効率良く適切に行う技術を提供することを目的とする。」

(ウ)「【0018】

以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。

【0019】

<1.システムの概要>

図1は、本発明の実施形態に係るソフトウェア更新システム100の概要を示す図である

ソフトウェア更新システム100は、車両10が有する複数の制御装置のソフトウェアの更新処理を行うシステムである

。ソフトウェアは、アプリケーションソフトウェアでも、システムソフトウェアでもよい。

本実施の形態では、ソフトウェアは、制御装置の制御プログラムである

。ただし、これは例示であり、ソフトウェアは、例えば、制御装置の制御に必要なパラメータやデータ等の制御情報を含んでもよい。

【0020】

図1に示すように、ソフトウェア更新システム100は、サーバ装置1と、ソフトウェア更新装置2と、複数のECU3と、備える

ECU3は、本発明の制御装置の一例である

ソフトウェア更新装置2と、複数のECU3とは、車両10に搭載される

。本実施の形態では、複数のECU3は、第1ECU3aと、第2ECU3bと、第3ECU3cとを含む。ECU3の数は特に限定されず、2つ以上であればよい。複数のECU3は、互いに異なる機能を発揮する。

複数のECU3は、例えば、車両10のエンジンを制御するエンジンECU、車両10のステアリングの舵角を制御するステアリングECU、車両10のブレーキを制御するブレーキECU、車両10のシフトを制御するシフトECU、車両10の電源制御用ECU、車両10のライトを制御するライトECU等を含んでよい

【0021】

本実施の形態では、第1ECU3aと第2ECU3bとは相互に連携し、連携ECU群4を構成する。連携ECU群4は、本発明の連携制御装置群の一例である。連携ECU群4は、相互に連携して制御を行うECU3の集合である。例えば、第1ECU3aと第2ECU3bとは、先進運転システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)を構成する複数のECUの中に含まれてよい。より詳細には、第1ECU3a及び第2ECU3bは、例えば自動ブレーキシステムを構成する複数のECUの中に含まれてよい。例えば、第1ECU3aはブレーキECUであり、第2ECU3bはステアリングECUであってよい。

【0022】

サーバ装置1とソフトウェア更新装置2とは、例えばインターネット等のネットワークを介して通信を行い、情報のやり取りを行う

サーバ装置1は、ソフトウェア更新装置2にソフトウェアの更新情報を送信する

ソフトウェア更新装置2と複数のECU3とは、車内LAN(Local Area Network)5を介して通信を行い、情報のやり取りを行う

ソフトウェア更新装置2は、複数のECU3のソフトウェアの更新処理を制御する

【0023】

ソフトウェア更新システム100によれば、サーバ装置1からソフトウェアの更新情報を受信して各ECU3のソフトウェアの更新を行うことができる

。このために、ソフトウェアの更新情報を素早く入手して、早いタイミングでソフトウェアの更新処理を行うことができる。

【0024】

<2.ソフトウェア更新装置の構成>

図2は、本発明の実施形態に係るソフトウェア更新装置2の構成を示すブロック図である

ソフトウェア更新装置2は、サーバ装置1及び複数のECU3と通信を行い、複数のECU3のソフトウェアの更新処理を制御する

図2に示すように、ソフトウェア更新装置2は、制御部21と、記憶部22と、WAN(Wide Area Network)インターフェース(以下、WAN-IFと表記する)23と、LAN(Local Area Network)インターフェース(以下、LAN-IFと表記する)24とを有する

【0025】

制御部21は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を備えるコンピュータである

制御部21は、例えば記憶部22に記憶された制御プログラムに基づいて情報の処理及び送受信を行い、ソフトウェア更新装置2の全体を制御する

制御部21は、書込み指示部211と、確認部212と、切替え指示部213とを備える

。これら

各部211~213の機能は、記憶部22に記憶されたプログラムにしたがってCPUが演算処理を実行することによって実現される

。各機能部211~213の詳細については後述する。

【0026】

記憶部22は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを含む

。揮発性メモリは、例えば制御プログラムの動作に必要なデータ等を一時的に記憶する。

不揮発性メモリは、制御プログラムやパラメータ等、ソフトウェア更新装置2を動作させるための制御情報を記憶する

。不揮発性メモリは、例えば、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等であってよい。不揮発メモリの一部又は全部を、SDメモリカード(登録商標)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記憶媒体で構成し、ソフトウェア更新装置2の本体に対して装脱着可能にしてもよい。

【0027】

本実施の形態においては、記憶部22には、サーバ装置1から送信されたソフトウェアの更新情報221が記憶される

。また、記憶部22には、複数のECU3のうち、相互に連携するECU3がいずれかであることを示すECU連携情報222が記憶される。本実施の形態では、制御部21は、ECU連携情報222によって、第1ECU3aと第2ECU3bとが相互に連携するECUであることを認識することができる。その他、記憶部22には、ソフトウェア更新装置2と接続されるECU3の構成情報、各ECU3のソフトウェアの更新状態等、ソフトウェア更新装置2によってECU3を更新するために必要となる各種の情報が記憶される。

【0028】

WAN-IF23は、ソフトウェア更新装置2がインターネット等のネットワークを介してサーバ装置1との間でデータの送受信を行うことを可能にする

本実施の形態では、WAN-IF23は無線通信部として構成される

WAN-IF23は、有線通信部として構成されてもよい

【0029】

LAN-IF24は、ソフトウェア更新装置2が車内LAN5を介して複数のECU3との間でデータの送受信を行うことを可能にする

本実施の形態では、ソフトウェア更新装置2と複数のECU3とは有線で接続される

。これらは、

場合によっては無線接続であってもよい

【0030】

<3.ECUの構成>

本実施の形態では、ソフトウェア更新システム100は、第1ECU3a、第2ECU3b、及び、第3ECU3cを含む。これらのECU3a~3bの基本的な構造は同様である。図3を参照して、ECU3の基本的な構造について説明する。

図3は、本発明の実施形形態に係るECU3の基本構造を示すブロック図である

図3に示すように、ECU3は、制御部31と、記憶部32と、LAN-IF33とを備える

【0031】

制御部31は、図示しないCPUを備えるコンピュータである

制御部31は、例えば記憶部32に記憶されたプログラムに基づいて情報の処理及び送受信を行い、ECU3の全体を制御する

。詳細には、

制御部31は、通常の動作を行うための制御プログラムにしたがって動作する他、リプログラミングソフトによって動作をする場合がある

本明細書では、リプログラミングソフトによって動作するモードをリプログモードと表記する

リプログモードは、ソフトウェアの更新処理を行う際に適用される

【0032】

記憶部32は、ソフトウェア更新装置2と同様に、揮発性メモリと不揮発性メモリとを含む

本実施の形態では、複数のECU3のそれぞれが有する記憶部32は、第1領域321と第2領域322とを有する

第1領域321は、現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)が記憶されるソフトウェア記憶領域である

第2領域322は、ソフトウェア更新装置2がサーバ装置1から受信した更新情報に含まれる更新ソフトウェアが記憶されるソフトウェア記憶領域である

【0033】

LAN-IF33は、ECU3が車内LAN5を介してソフトウェア更新装置2との間でデータの送受信を行うことを可能にする

【0034】

<4.ソフトウェア更新装置の機能>

ソフトウェア更新装置2の制御部21が備える各機能部211~213(図2参照)の詳細について説明する

【0035】

書込み指示部211は、サーバ装置1から送信された更新ソフトウェアを第1領域321とは別に設けられる第2領域322に書き込むことをECU3に対して指示する

。詳細には、

書込み指示部211は、サーバ装置1から送信された更新ソフトウェアが複数のECUのうちのいずれの更新ソフトウェアかを判断し、更新対象となるECU3に対して書込み指示を行う

。或る更新ソフトウェアがいずれのECU3の更新ソフトウェアであるかは、例えばサーバ装置1から送信される更新情報や更新ソフトウェア自身に含まれる。

【0036】

なお、

更新ソフトウェアは、第1領域321とは別に設けられる第2領域322に書き込めば良い

。このために、

第1領域321に記憶されるソフトウェアの稼働中に、バックグラウンドで更新ソフトウェアの書き込み処理を行うことができる

【0037】

確認部212は、ソフトウェアの更新対象となる複数のECU3のうち、連携ECU群4を構成する全てのECU3に対して、更新ソフトウェアが第2領域322に書き込まれたことを確認する。なお、連携ECU群4は、相互に連携して制御を行うECU3の集合である。本実施の形態では、連携ECU群4は、第1ECU3aと、第2ECU3bとで構成される。詳細には、確認部212は、記憶部22に記憶されるECU連携情報222に基づいて、連携ECU群4を構成する複数のECU3を認識する。ソフトウェアの更新対象となる複数のECU3の中に、連携ECU群4が存在しない場合には、確認部212による確認は実質的には行われない。

【0038】

切替え指示部213は、第2領域322に書き込まれた更新ソフトウェアを今後稼働させるソフトウェアに切り替えることを、連携ECU群4を構成する全てのECU3に指示する

。詳細には、切替え指示部213は、ソフトウェアを切り替えることを、連携ECU群4を構成する全てのECU3に同時期に指示する。切替え指示部213による切替え指示は、確認部212の確認完了後に行われる。すなわち、切替え指示部213は、連携ECU群4を構成する全てのECU3において、更新ソフトウェアが第2領域322に書き込まれたことを確認するまで、切替え指示を行わない。

【0039】

本実施の形態によれば、各ECU3において、更新ソフトウェアの書き込みを通常動作を行いながらバックグラウンドで実行させることができる

。すなわち、

本実施の形態によれば、ソフトウェアを旧バージョンから新バージョンに更新する処理を、車両10のエンジンを停止して実行する時間を短くすることができる

【0040】

また、本実施の形態によれば、連携ECU群4を構成するECU3のソフトウェアの更新を同時期に行うことができる。このために、相互に連携する複数のECU3の中に、ソフトウェアの更新処理が完了しているECUと、ソフトウェアの更新処理が完了していないECUとが混在することを防止することができる。すなわち、本実施の形態によれば、相互に連携するECU間に不整合が生じて誤動作等が発生することを防止することができる。

【0041】

<5.ソフトウェア更新方法>

<5-1.ソフトウェア更新方法の概要>

図4は、本発明の実施形態に係るソフトウェア更新システム100によって実行されるソフトウェアの更新方法の概要を示すフローチャートである

前段階として、ソフトウェア更新装置2にサーバ装置1から更新情報が受信されると、受信された更新情報は記憶部22に記憶される

。ソフトウェア更新装置2は、受信した更新情報の正当性を確認する。

【0042】

その後、書込み指示部211によって、ソフトウェアの更新対象となるECU3に対して、更新ソフトウェアを第2領域322に書き込むことが指示される(ステップS1)

ソフトウェア更新装置2からの書込み指示によって、ソフトウェアの更新対象となるECU3の制御部31は、書込み処理を行う

書込み処理は、第1領域321に記憶されるソフトウェアを稼働させながら、バックグラウンドで行われることが好ましい

これによって、車両10のエンジンを停止した状態でソフトウェアの更新処理を行う時間を短くすることができる

【0043】

なお、第2領域322には、更新ソフトウェアの書込みが行われる前に、バージョンの古いソフトウェアが書き込まれていてよい。この場合には、ECU3の制御部31は、古いバージョンのソフトウェアを消去した後に、更新ソフトウェアの書込みを行う。すなわち、本発明のソフトウェアの書込み処理には、ソフトウェアの書換処理が含まれる。

【0044】

次に、確認部212によって、連携ECU群4を構成する全てのECU3において更新ソフトウェアが第2領域322に書き込まれたことを確認する工程が行われる(ステップS2)。なお、ソフトウェアの更新対象となる複数のECU3の中に、連携ECU群4に属さないECU3が含まれることがある。連携ECU群4に属さないECU3については、確認部212による確認処理の対象外である。

【0045】

確認部212の確認完了後、すなわち、確認部212によって、連携ECU群4を構成する全てのECU3において更新ソフトウェアが第2領域322に書き込まれたことが確認された後、一旦、車両10の電源がオフされ、その後、電源がオンされる(ステップS3)

本実施の形態では、電源のオンオフは、ACCのオンオフである

【0046】

ACCがオンされた後、切替え指示部213は、第2領域322に書き込まれた更新ソフトウェアを今後稼働させるソフトウェアとする切替え処理を行うことを、連携ECU群4を構成する全てのECU3に同時期に指示する(ステップS4)

切替え指示によって、各ECU3は、第2領域322に書き込まれた更新ソフトウェアを今後稼働させるソフトウェアに変更する

【0047】

図5は、稼働させるソフトウェアの切替えイメージを示す模式図である

図5に示すように、本実施の形態では、切替え処理によって、切替え前において第2領域として使用されていた領域が第1領域に、第1領域として使用されていた領域が第2領域に入れ替わる

。これによれば、ソフトウェアの更新処理のために必要以上に格納領域を増やす必要がなく、記憶部32の記憶容量をなるべく小さく抑えることができる。

【0048】

本実施の形態では、切替え指示部213は、確認部212による確認完了後に、一旦、車両10の電源がオフされ、その後電源がオンされた後に、切替え処理の指示を行う

本実施の形態では、電源のオンオフは、ACCのオンオフである

。このために、

車両10のエンジンが稼働している間に、各ECU3に対して更新ソフトウェアのダウンロードを行わせ、その後、停止されたエンジンが再始動する前に複数のECU3に対して纏めて更新ソフトウェアへの切替えを行うことができる

このために、安全、且つ、効率良く、ソフトウェアの更新処理を行うことができる

【0049】

なお、ソフトウェアの更新対象となる複数のECU3の中に、連携ECU群4に属するECU3と、連携ECU群4に属さないECU3とが含まれることがある。連携ECU群4に属さないECU3については、他のECU3と連携してソフトウェアの更新を行う必要がない。また、ソフトウェアの更新対象となる少なくとも1つのECU3の中に、連携ECU群4が含まれない場合には、各ECU3は、連携ECU群4に属さないECUであり、他のECU3と連携してソフトウェアの更新を行う必要がない。すなわち、これらのECU3に対しては、ステップS2の確認部212による確認処理は不要である。本実施の形態では、切替え指示部213は、連携ECU群4に属さないECU3に対して、他のECU3とは独立して切替え処理を行うことを指示する。これにより、連携ECU群4に属さないECU3は、それぞれ適当なタイミングでソフトウェアの更新処理を行うことができる。例えば、連携ECU群4に属さないECU3のソフトウェアの更新処理は、単独で実施されてもよいし、他のECU3と更新日時を合わせて実施されてもよい。

【0050】

また、ソフトウェアの更新処理は、切替え処理が実行される前の適当なタイミングで、ユーザが更新を望むか否かを確認し、更新を望む場合にのみ実施される構成としてもよい。ユーザへの確認は、例えば画面表示や音声が利用されてよい。ユーザからの指令は、例えば入力キーや音声入力等が利用されてよい。

【0051】

<5-2.ソフトウェアの更新方法の詳細>

次に、ソフトウェアの更新対象となる複数のECU3の中に連携ECU群4が含まれる場合における、連携ECU群4を構成する各ECU3のソフトウェアの更新方法について、更に詳細に説明する。

図6は、ソフトウェアの更新方法の前半部分を示すフローチャートである

図7は、ソフトウェアの更新方法の後方部分を示すフローチャートである

図8は、ソフトウェアの更新処理時における、ソフトウェア更新装置2と、連携ECU群4を構成する各ECU3との関係を示す模式図である

。なお、本実施の形態では、連携ECU群4は、第1ECU3aと第2ECU3bとによって構成される。また、

本実施の形態では、好ましい例として、図6に示すフローは、車両10のエンジン稼働中に実施される

好ましい例として、図7に示すフローは、車両10のエンジン停止中に実施される

【0052】

図6に示すように、ソフトウェア更新装置2は、連携ECU群4を構成する第1ECU3a及び第2ECU3bに更新ソフトウェアの書込み指示を行う(ステップS11)

。詳細には、

図8に示すように、ソフトウェア更新装置2は、各ECU3a、3bに対して、それぞれ対応する更新ソフトウェアのデータを転送する

各ECU3a、3bは、ソフトウェア更新装置2から転送された更新ソフトウェアを、バックグラウンドで第2領域322に書き込む

。各ECU3a、3bは、更新ソフトウェアの書込み後、ベリファイを行う。なお、

各ECU3a、3bは、書込み及びベリファイをバックグラウンドで実行している間も、第1領域321に記憶される制御プログラムによって稼働している

。換言すると、

各ECU3a、3bは通常動作を継続しながら、更新ソフトウェアの書込み処理を行う

【0053】

図6に示すように、ソフトウェア更新装置2は、各ECU3a、3bにて更新ソフトウェアの書込み処理が開始すると、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bにおいて更新ソフトウェアの書込み処理が完了した否かを監視する(ステップS12)。詳細には、図8に示すように、ソフトウェア更新装置2は、データ転送後、各ECU3a、3bからの書込み完了通知を待つ。各ECU3a、3bは、ベリファイの完了後、ソフトウェア更新装置2に対して書込み完了通知を行う。

【0054】

図6に示すように、ソフトウェア更新装置2は、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bにおいて更新ソフトウェアの書込み処理が完了したことを認識すると、各ECU3a、3bに対して切替え準備を指示する(ステップS13)。図8に示すように、各ECU3a、3bは、これにより、他のECUも書込みが完了したことを認識するとともに、切替え待機状態に入ったことをソフトウェア更新装置2に通知する。

【0055】

図6に示すように、ソフトウェア更新装置2は、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bが切替え待機状態に入ったか否かを監視する(ステップS14)。ソフトウェア更新装置2は、全てのECU3a、3bから切替え待機状態に入ったことの通知を受けた段階で、切替え準備完了を認識する。詳細には、ソフトウェア更新装置2は、ソフトウェア更新処理の後半部分が実行できることを認識する。当該後半部分は、稼働させるソフトウェアを切り替える処理である。

本実施の形態では、ソフトウェアの切替え処理は、安全性等を考慮してエンジンの停止時に行われる

。このために、

図8に示すように、ソフトウェア更新装置2は、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bが切替え待機状態に入ったことを認識後、切替え処理を保留して車両10のACCが一旦オフされることを待つ

【0056】

図8に示すように、ソフトウェア更新装置2は、車両10のACCが一旦オフされ、その後ACCがオンされると、切替え処理を実行する

ACCオンによって、各ECU3a、3bはリプログモードで起動する

【0057】

図7に示すように、ソフトウェア更新装置2は、車両10のACCがオンされると、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bにおいて切替え準備が完了しているか否かを再確認する(ステップS21)。この間、各ECU3a、3bは、ソフトウェア更新装置2からの指示を待つ。

【0058】

なお、連携ECU群4を構成するECU3a、3bの中に、切替え準備ができていないECUが存在する場合には(ステップS21でNo)、切替え処理は実行できないために、ソフトウェア更新装置2は、各ECU3a、3bに対してリプログモードを解除する指示を行う。各ECU3a、3bは、リプログモードを解除して、ソフトウェアの更新処理を中止して、第1領域321に記憶されるソフトウェアを起動して通常動作を行う。

【0059】

図7に示すように

、切替準備が完了していることを確認後(ステップS21でYes)、

ソフトウェア更新装置2は、連携ECU群4を構成する各ECU3a、3bに対して、切替え処理を実施することを指示する(ステップS22)

これにより、図8に示すように、各ECU3a、3bは、第2領域322に書き込まれた更新ソフトウェアを今後稼働させるソフトウェアとする切替え処理を行う

。各ECU3a、3bは、切替え処理の完了後、その旨をソフトウェア更新装置2に通知する。

【0060】

図7に示すように、切替え指示の後、ソフトウェア更新装置2は、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bが切替え処理を完了したか否かを監視する(ステップS23)。

ソフトウェア更新装置2は、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bからの完了通知を受け取った時点で切替え処理の完了を認識する

。図8に示すように、各ECU3a、3bは、完了通知後、リプログモードの解除指示を待つ。

【0061】

図7に示すように、ソフトウェア更新装置2は、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bの切替え処理を認識すると(ステップS23でYes)、各ECU3a、3bに対してリプログモードの解除指示を行う(ステップS24)

これにより、図8に示すように、各ECU3a、3bは、更新ソフトウェアを起動させ、通常の動作を開始する

。各ECU3a、3bは、更新ソフトウェアの起動の完了をソフトウェア更新装置2に通知する。ソフトウェア更新装置2は、これによって、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bで更新ソフトウェアによる通常動作が開始したことを認識して更新完了を認識する。

【0062】

本実施の形態では、連携ECU群4を構成する複数のECU3の新旧のソフトウェアの切替え処理を、切替え準備と切替え実行との2つのフェーズに分けて実行する。このために、連携ECU群4を構成する全てのECU3が新しいソフトウェアの切替え準備ができたことを、ソフトウェア更新装置が認識した後に、連携ECU群4を構成する各ECU3に対して同時期にソフトウェアの切替え実行を指示することができる。この結果、相互に連携するECU3が不整合を起すことなく、ソフトウェアの更新を行うことができる。

【0063】

リプログモードに入るまでは、現在使用中のソフトウェアをそのまま使用して、車両10の走行中に更新ソフトウェアの書込み処理を行うことができる

。また、

ソフトウェアの更新処理のためにエンジン停止中に実施する処理は、切替えに関わる処理のみとすることができる

ために、バッテリが上がる可能性を抑制してソフトウェアの更新処理を行うことができる。また、ソフトウェアの更新処理のために、ユーザを待たせる時間を低減できる。

【0064】

なお、ステップS23において、ソフトウェア更新装置2が、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bの完了通知を所定の時間を超えても認識できないことも起こり得る。この場合、エンジンの始動開始をなかなかできず、ユーザを待たせることになる。このような事態を避けるために、ソフトウェア更新装置2が所定の時間内に全てのECU3a、3bの完了通知を受けることができない場合には、ソフトウェアの更新処理を中止する構成としてもよい。更新の中止を決定した場合、ソフトウェア更新装置2は、連携ECU群4を構成する全てのECU3a、3bに対して、更新前のソフトウェアによる起動を実行させる。なお、更新前のソフトウェアは、第1領域321に記憶されるソフトウェアのことである。」

(エ)「

68

104

0001435700000001.jpg

」(【図1】)

(オ)「

67

88

0001435700000002.jpg

」(【図2】)

(カ)「

72

73

0001435700000003.jpg

」(【図3】)

(キ)「

78

41

0001435700000004.jpg

」(【図4】)

(ク)「

33

74

0001435700000005.jpg

」(【図5】)

(ケ)「

106

46

0001435700000006.jpg

」(【図6】)

(コ)「

100

54

0001435700000007.jpg

」(【図7】)

(サ)「

53

95

0001435700000008.jpg

」(【図8】)

イ 引用文献1には、上記アの記載事項からみて、次の事項が記載されていると認められる。

(ア)上記ア(ア)ないし(ウ)の記載並びに(エ)ないし(サ)の図示内容からみて、引用文献1には、「車両10のエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3のソフトウェアの更新処理を行うソフトウェア更新システム100」が記載されていると認められる。

(イ)上記ア(ウ)の記載からみて、「エンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトには車両10のエンジン、ブレーキ、トランスミッションが含まれ」ることが記載されていると認められる。

(ウ)上記ア(ウ)の記載及び(エ)ないし(サ)の図示内容からみて、「ソフトウェア更新システム100は、車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2と、ソフトウェアがサーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送され、当該ソフトウェアを稼働させてエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3と、複数のECU3と車内LANを介して通信を行い、車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2と、を備え」ることが記載されていると認められる。

(エ)上記ア(ウ)の記載並びに(エ)ないし(カ)及び(ク)の図示内容からみて、「複数のECU3は、サーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送された現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)が記憶される第1領域211と、サーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送された更新ソフトウェアが記憶される第2領域322と、を有し」ているものであることが記載されていると認められる。

(オ)上記ア(ア)ないし(ウ)の記載並びに(エ)ないし(サ)の図示内容からみて、「複数のECU3は、エンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3を稼働させるソフトウェアを現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)から更新ソフトウェアに切替えてソフトウェアの更新処理を行い、ソフトウェアのダウンロード及び書込みはエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトが稼働している間に行わせ」ることが記載されていると認められる。

(カ)上記ア(ウ)の記載並びに(キ)及び(サ)の図示内容からみて、「ソフトウェア更新装置2は、車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行する際に、車両10のACCがオフされエンジンの停止時に、ACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に、ソフトウェアの切替え処理を行い、ソフトウェアの切替え処理は、停止されたエンジンが再始動する前に行い、ソフトウェアの切替え処理の完了を認識すると、リプログモードの解除指示を行い、各ECU3は、更新ソフトウェアを起動させ、通常の動作を開始」することが記載されていると認められる。

(キ)上記ア(ウ)の記載並びに(キ)及び(サ)の図示内容からみて、「エンジンの停止時は、車両の電源がオフされエンジンが停止し停止されたエンジンが再始動する前である」ことが記載されていると認められる。

(2)引用発明

上記(1)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「 車両10のエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3のソフトウェアの更新処理を行うソフトウェア更新システム100であって、

エンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトには車両10のエンジン、ブレーキ、トランスミッションが含まれ、

ソフトウェア更新システム100は、

車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2と、

ソフトウェアがサーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送され、ソフトウェアを稼働させてエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3と、

複数のECU3と車内LANを介して通信を行い、車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2と、を備え、

複数のECU3は、

サーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送された現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)が記憶される第1領域211と、

サーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送された更新ソフトウェアが記憶される第2領域322と、を有し、

複数のECU3は、

エンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3を稼働させるソフトウェアを現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)から更新ソフトウェアに切替えてソフトウェアの更新処理を行い、

ソフトウェアのダウンロード及び書込みはエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトが稼働している間に行わせ、

ソフトウェア更新装置2は、

車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行する際に、車両10のACCがオフされエンジンの停止時に、ACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に、ソフトウェアの切替え処理を行い、

ソフトウェアの切替え処理は、停止されたエンジンが再始動する前に行い、

ソフトウェアの切替え処理の完了を認識すると、リプログモードの解除指示を行い、各ECU3は、更新ソフトウェアを起動させ、通常の動作を開始し、

エンジンの停止時は、車両の電源がオフされエンジンが停止し停止されたエンジンが再始動する前である、

ソフトウェア更新システム100。」

2 引用文献2の記載及び引用文献2に記載された技術的事項

(1)引用文献2の記載

ア 引用文献2の記載事項

引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】

【0001】

この発明は、車載機器を制御するための制御プログラムや制御データ等のデータが書き換え(リプログラミング)可能に構成された車載制御装置に関し、特に無線通信によって外部から得られる書き換え用のデータに基づいて同書き換えが実行される車載制御装置に関する

。」

(イ)「【0035】

(第1の実施の形態)

以下、

この発明にかかる車載制御装置の第1の実施の形態について、図1~図16を参照して詳細に説明する

図1に、この実施の形態にかかる車載制御装置の全体構成をブロック図として示す

【0036】

同図1に示されるように、この車載制御装置100は、大きくは、各種の車載機器を分散制御する複数の電子制御装置、及びこれら各電子制御装置に関する情報(例えば制御プログラムのバージョン情報など)を総括管理するマスタ制御装置140を備えている

これら制御装置は、例えばCAN(Controller Area Network)などのバス型のネットワークシステムを構成する通信バス101によってそれぞれ電気的に接続され、該通信バス101を通じて各種データの授受を行う

【0037】

ここで、

上記複数の電子制御装置は、その一部として以下に列記する電子制御装置110~130を有している

車載エンジンの燃料噴射等の制御を行うエンジン制御装置110

トランスミッションの変速比の自動切替制御を行うトランスミッション制御装置120

車両のブレーキ制御を行うブレーキ制御装置130

【0038】

これら各電子制御装置110~130の間では、上記通信バス101を通じて各々の制御状態や制御結果等の授受が行われる。そして通常は、こうして

授受される情報や予め保持されている制御データに基づき、当該電子制御装置110~130自身がそれぞれ内蔵する不揮発性メモリに格納されている制御プログラムを実行する

ことにより、上述の各制御が協調して実行されるようになる。例えば、上記トランスミッション制御装置120では、トランスミッションの出力軸等に設けられている車速センサによる検出信号(2値化信号)が取り込まれると、この検出信号に基づいて車速情報を示すデータを作成してこれを上記通信バス101上に例えばシリアルデータとして送出する。そして、通信バス101上に送出されたシリアルデータが、例えば上記ブレーキ制御装置130に取り込まれ、該ブレーキ制御装置130において上述の車両のブレーキ制御に供されることとなる。

【0039】

一方、

上記マスタ制御装置140は、各車両のVINコード(車両識別コード)や制御プログラムのバージョン情報等を保持、管理している外部の管理センター200から書き換え用のデータを無線通信によって取得し(通信手段)、該取得したデータに基づき上記電子制御装置110~130内のデータを書き換える部分でもある

【0040】

すなわち、

上記電子制御装置110~130内の制御プログラムや制御データ等のデータは、制御プログラムのバージョンアップや修正等に伴って、その内容の書き換えが必要となることがある

このような場合、同マスタ制御装置140では、該データ(プログラム)の書き換えに用いる書き換え用のデータを上記管理センター200からまずは取得する

。そして、

該取得した書き換え用のデータに基づき、上記電子制御装置110~130内のデータを、その書き換え対象となる電子制御装置と協働して書き換える(書換制御手段)

このような制御装置100を車両に搭載するようにすることで、極めて容易に電子制御装置110~130内の制御プログラムや制御データ等のデータを最新の状態に保つことができるようになる

【0041】

ただし前述の通り、上記書き換え用のデータを無線通信によって取得するこのような車載制御装置100の場合、上記管理センター200との間の通信環境の変化や車両の状態等によっては上記取得されるデータ自体の信頼性が低下する懸念がある。

【0042】

そこで、

この実施の形態では、上記制御プログラムや制御データの書き換えに際し、該車載制御装置100のマスタ制御装置140がまず、無線通信によって得られる上記書き換え用のデータを一時的に記憶手段に格納する

とともに該格納された書き換え用のデータの適正性を判断する(判断手段)。そしてこの結果、記憶手段に格納された書き換え用のデータが適正であることを条件に、

同書き換え用のデータを用いて上記書き換えを実行する

ため、それらデータの書き換え(リプログラミング)にかかる信頼性の向上を図ることができるようになる。

【0043】

しかも、同構成では、

上記管理センター200との間の通信環境が良好であれば、例えば車両のキースイッチがオン状態にあるなど、車両の状態が上記データの書き換えに適した状況になくても、該データを無線通信によって取得し、上記記憶手段に格納する

・例えば

車両のキースイッチがオフ状態にあるなど、車両の状態が上記データの書き換えに適した状況にあれば

、車両が通信環境の悪い場所(例えば地下駐車場など)に駐車されている場合であっても、

上記記憶手段に格納されている書き換え用のデータを用いて上記制御プログラムや制御データの書き換えを実行する

。 等々、データの取得時期や書き換え実行時期にかかる自由度の向上も併せて図ることができるようになる。

【0044】

図2は、図1に示した車載制御装置100のうち、特にエンジン制御装置110及びマスタ制御装置140の内部構造をブロック図として示したものである

。以下、

同図2を併せ参照してこれら制御装置110、140の各内部構造及びそれらの電気的な動作についてさらに具体的に説明する

。なお

ここでは、エンジン制御装置110内のデータが書き換えられる場合を想定している

【0045】

同図2に示されるように、上記マスタ制御装置140は、各種情報を演算処理する制御部141を中心に構成されている。この制御部141は、該制御部141自身が内蔵する読み出し専用メモリに格納されている制御プログラムを実行することにより、無線通信部142やメモリ装置143、通信装置144等との間での各種データの授受や、それらデータに基づく演算処理を行うこととなる。

【0046】

ここで、

上記無線通信部142は、上記制御部141と上記管理センター200との間での無線通信によるデータの授受を仲介する部分である

。なお、この無線通信部142は、アンテナを介して受信される電波の強度等の情報に基づき上記管理センター200との間の通信状況の良悪を判定する通信状況判定部145と接続されている。そして、該通信状況判定部145による判定結果によっては上記制御部141と上記管理センター200との間の無線通信を禁止する。また、同無線通信部142は、上記制御部141を自動起動するソークタイマ146とも接続されており、管理センター200から上記制御部141を起動する旨の信号が出力されたときは、該制御部141の起動を促すべく同ソークタイマ146にその旨の信号を出力するなどといった処理も併せ行う。

【0047】

また、

上記メモリ装置143は、無線通信によって得られる上記書き換え用のデータを一時的に保持する上述の記憶手段を形成する部分であり、例えばバックアップRAMなど、データを不揮発な状態で保持するメモリからなる

【0048】

また、

上記通信装置144は、上記制御部141と上記エンジン制御装置110との間での上記通信バス101を介したデータの授受を仲介する部分である

このような

マスタ制御装置140にあって、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えに際しては、該マスタ制御装置140の制御部141がまず、上記無線通信部142を介して上記管理センター200から無線送信される書き換え用のデータを取得する

。次いで、

該取得したデータをメモリ装置143に格納し

、その上で同データの適正性を判断する。そしてその結果、メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータに適正性があることを条件に、

該データを用いて上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えを該エンジン制御装置110との協働の下に実行する

。具体的には、

制御部141は、上記メモリ装置143から上記書き換え用のデータを読み出し、該読み出したデータを上記通信装置144を通じて上記エンジン制御装置110に送信する

【0049】

一方、

上記エンジン制御装置110は、通信装置112やエンジン制御用プログラムメモリ113、書換制御用プログラムメモリ114等との間で授受される情報に基づき各種の演算処理を行う制御部111を中心に構成されている

【0050】

ここで、上記通信装置112は、上記制御部111と上記マスタ制御装置140との間での上記通信バス101を介したデータの授受を仲介する部分である。なお、この通信装置112も同様、上記制御部111を自動起動するソークタイマ115と接続されており、上記マスタ制御装置140から上記制御部111を起動する旨の信号が出力されたときは、該制御部111の起動を促すべく同ソークタイマ115にその旨の信号を出力するなどといった処理も併せ行う。

【0051】

また、

エンジン制御用プログラムメモリ113は、エンジン制御に用いられる制御プログラムや制御データ等のデータが格納されている部分であり、例えばフラッシュメモリやEEPROMなど、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリからなる

【0052】

また、

書換制御用プログラムメモリ114は、制御部111が上記マスタ制御装置140の制御部141と協働して上記エンジン制御用プログラムメモリ113内のデータを書き換えるときに用いられる制御プログラムや制御データ等のデータが格納されている適宜の不揮発性メモリ(例えばEEPROM)からなる

【0053】

周知のように、このような

エンジン制御装置110では通常、制御部111が上記通信バス101上に送出されている車速情報等の運転情報を取り込み、上記エンジン制御用プログラムメモリ113に格納されている制御プログラムを実行することにより、上述のエンジン制御を行う

【0054】

ただし、

上記エンジン制御用プログラムメモリ113内のデータの書き換えに際しては、該エンジン制御装置110の制御部111がまず、上記マスタ制御装置140から上記通信バス101上に送出されている上記書き換え用のデータを上記通信装置112を介して取り込む

。次いで、

該取得したデータを用いて上記書換制御用プログラムメモリ114内の制御プログラムを実行することにより、上記エンジン制御用プログラムメモリ113内のデータを書き換える

。なお、上記マスタ制御装置140とエンジン制御装置110との間での通信に際しては、サムチェックなどの適宜の通信チェックを行うようにすることが実用上望ましい。

【0055】

なお、

エンジン制御装置110内のこうした内部構造は、他の電子制御装置120、130においても概ね共通している

図3は、こうした内部構造を有するマスタ制御装置140及びエンジン制御装置110の協働の下に行われる上記データの書換処理についてその処理手順を示すシーケンスチャートである

。次に、

この図3を参照して同処理手順について説明する

【0056】

ちなみに、この

書換処理に際しては、上記管理センター200がまず、図4に示されるフローチャートの処理手順に従った送信処理を実行する

すなわち、

同図4に示されるように

上記管理センター200は

、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えが完了した旨を示す書換完了通知をその書き換え対象となる全ての車両から受信するまで、それら

車両に搭載されている各制御装置100に対し、上記書き換え用のデータを繰り返し送信する

(ステップS11及びS12)。ただし、この実施の形態において、管理センター200によるこの送信処理は、パケット通信によって実行され、上記書き換え用のデータは適宜のデータブロック単位(パケット単位)で分割送信される。また、同送信処理においては、書き換えの対象となる車両や電子制御装置を指定するID(VINコードや品番など)、及びデータの書き換えを要求する通知(書き換え要求)も併せて送信される。

【0057】

このような送信処理に対し、

車載制御装置100では、上記マスタ制御装置140の制御部141がまず、図3に示されるように、上記管理センター200から無線送信される書き換え用のデータを受信して上記メモリ装置143に格納するための1次処理(ステップS1)を実行する

。次いで、同じく管理センター200から再送信されるデータに基づき、メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータの適正性を判断するための2次処理(ステップS2)を実行する。そして次に、メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータが適正である条件の下に、上記エンジン制御装置110内のデータを書き換えるための準備が完了した旨をユーザに通知するための3次処理(ステップS300)を実行する(通知手段)。そして、この3次処理によってユーザから上記データの書き換えが指示されることに基づき、

エンジン制御装置110内のデータの書き換えを実行するための4次処理(ステップS4)を上記エンジン制御装置110との協働の下に実行する

。そして、このような一連の処理(1次処理~4次処理)が実行されることによって、

上記エンジン制御装置110内のデータが書き換えられると、該書き換えが完了した旨を示す上記書換完了通知を上記管理センター200に送信し、この時点で同書換処理を終了する

【0058】

ただし、この実施の形態では、こうした書換処理(1次処理~4次処理)は、具体的には、管理センター200から上記書き換え用のデータが送信される都度、該データと併せて送信されるIDや書き換え要求、さらには図5に示されるかたちで操作される以下の3種のフラグ情報に基づいて以下のように行われる。なお後述するが、以下の3種のフラグ情報は、例えば、該制御部141自身が内蔵するバックアップRAMにおいて記憶され、同制御部141によって操作される。

・1次処理(ステップS1)が実行される期間と同期するかたちでフラグ操作される1次処理フラグ。

・2次処理(ステップS2)が実行される期間と同期するかたちでフラグ操作される2次処理フラグ。

・3次処理及び4次処理(ステップS3及びS4)が実行される期間と同期するかたちでフラグ操作される3,4次処理フラグ。

【0059】

図6は

、これら3種のフラグ情報の論理レベル等に基づいて行われる

上記書換処理(1次処理~4次処理)についてその具体的な処理手順を示したフローチャートである

。なおこの処理は、パケット単位に分割されたデータ(データブロック)が受信される度に行われる。

【0060】

すなわち、この書換処理に際しては、上記マスタ制御装置140の制御部141がまず、ステップS21の処理として、上記管理センター200からのデータ(ID)が当該車両を指定しているか否かを確認する。同IDが当該車両を指定しているときは、次いで、ステップS22及びS23の処理として、上記2次処理フラグ及び3,4次処理フラグの各論理レベルを順次に参照する。

【0061】

そしてこの結果、上記2次処理フラグ及び3,4次処理フラグがいずれも論理「L」レベルにある場合、同制御部141は、先の図5に示したように上記1次処理(ステップS1)が行われるべき状況にあるとして、次にステップS24の処理に移行する。そして、このステップS24の処理において、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えが完了していないと判断されるときに、上記受信した書き換え用のデータをメモリ装置143に格納するデータ格納処理を実行する(ステップS100)。これにより、こうしたステップS21~S24、並びにステップS100の処理が、上記1次処理(ステップS1)として実行されるようになる。なお、上記データ格納処理(ステップS100)の詳細については、後に図7を参照して説明する。

【0062】

ただし、上記ステップS23の処理において、上記3,4次処理フラグが論理「H」レベルにある場合、同制御部141は、先の図5に示したように上記3次処理あるいは4次処理が行われるべき状況にあるとして、該3,4次処理フラグが論理「H」レベルにあることを確認した時点で、この制御を終了する。

【0063】

他方、上記ステップS22の処理において、上記2次処理フラグが論理「H」レベルにある場合には、先の図5に示したように、上記2次処理(ステップS2)が行われるべき状況にある。したがってこの場合、同制御部141は、次にステップS200の処理として、メモリ装置143に格納されている上記書き換え用のデータの適正性を上記受信したデータに基づき判断する適正性判断処理(2次処理)を実行する。これにより、こうしたステップS21及びS22、並びにステップS200の処理が、上記2次処理(ステップS2)として実行されるようになる。なお、上記適正性判断処理(ステップS200)の詳細についても、後に図9を参照して説明する。

【0064】

また、上記ステップS200の処理が実行されて後、同制御部141は、次にステップS25の処理として、上記3,4次処理フラグの論理レベルを確認する。そして、該3,4次処理フラグが論理「H」レベルにあるとき、同制御部141は、上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータが適正であるとして、次いでステップS300の処理として、エンジン制御装置110内のデータを書き換えるための準備が完了した旨をユーザに通知する書換準備完了通知処理(3次処理)を実行する。これにより、こうしたステップS25及びS300の処理が、上記3次処理(ステップS3)として実行されるようになる。なお、上記書換準備完了通知処理(ステップS300)の詳細についても、後に図10を参照して説明する。

【0065】

ただし、上記ステップS25の処理において、上記3,4次処理フラグが論理「L」レベルにある場合には、上記ステップS200の処理において、メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータが適正でないと判断されたこととなる。したがってこの場合、同制御部141は、上記3,4次処理フラグが論理「L」レベルにあることを確認した時点で、同制御を終了する。

【0066】

図7及び図9及び図10は、上記ステップS100の処理として実行されるデータ格納処理、及び上記ステップS200の処理として実行される適正性判断処理、及び上記ステップS300の処理として実行される書換準備完了通知処理について、それらの処理手順をそれぞれフローチャートとして示したものである。以下、これら図7及び図9及び図10に基づきそれら各処理についてさらに詳述する。

【0067】

まず、

図7を参照して、上記データ格納処理(ステップS100)についてその処理手順を詳述する

いま、

上記ステップS24の処理(図6)において、上記エンジン制御装置110内のデータの書換処理が未だ完了していないと判断されたとすると、同マスタ制御装置140は上述のように、ステップS100の処理として、上記受信した書き換え用のデータを上記メモリ装置143に格納する当該データ格納処理を実行する

【0068】

具体的には、同図7に示されるように、上記書き換え用のデータの上記メモリ装置143への格納に際しては、上記マスタ制御装置140の制御部141がまず、ステップS101の処理として、上記1次処理フラグを論理「H」レベルに操作する。次いで、ステップS102の処理として、データブロック単位(パケット単位)にて分割送信される上記書き換え用のデータを図8に示されるかたちで上記メモリ装置143の一部のメモリ領域143aに格納する。そして次に、ステップS103の処理として、上記書き換え用のデータを構成する全てのデータブロック(データブロック「1」~データブロック「n」)が上記メモリ装置143に格納されたか否かを判断する。この結果、上記書き換え用のデータを構成する全てのデータブロックが上記メモリ装置143に格納されていないと判断される場合には、このデータ格納処理を一旦終了し、パケット通信によって次のデータブロックが受信されるまで待機する。すなわちこの場合、上記書き換え用のデータを構成する全てのデータブロックが上記メモリ装置143に格納されたと判断されるまで、上記書き換え用のデータがデータブロック単位にて受信される都度、上記ステップS101~S103の処理を繰り返し実行することとなる。

【0069】

そして、こうした処理の結果、図8に示されるように、上記書き換え用のデータを構成する全てのデータブロック(データブロック「1」~データブロック「n」)が上記メモリ装置143に格納されたと判断されると、同制御部141は、次にステップS104の処理に移行する。そして、このステップS104の処理において、上記1次処理フラグを論理「L」レベルに操作するとともに上記2次処理フラグを論理「H」レベルに操作した時点で、当該データ格納処理を終了する。

【0070】

このように1次処理フラグ及び2次処理フラグが操作されることによって、上記制御部141は次に、先の図5に示したように、該メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータの適正性を判断する適正性判断処理(ステップS200)を行うようになる。ただし、この実施の形態では、同制御部141は、上記管理センター200から再送信されるデータを上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータに対応するベリファイ用のデータとして受信し、該受信したデータと上記格納されているデータとのベリファイチェックに基づき、該適正性判断処理を実行する。

【0071】

次に、図9を参照して、この適正性判断処理(ステップS200)の具体的な処理態様について説明する。 すなわち、いま、上記ステップS22の処理(図6)において、上記2次処理フラグが論理「H」レベルにあるとすると、同マスタ制御装置140は上述のように、ステップS200の処理として、メモリ装置143に格納されている上記書き換え用のデータの適正性を上記受信したデータに基づき判断する当該適正性判断処理を実行する。

【0072】

具体的には、同図9に示されるように、適正性の判断に際しては、上記マスタ制御装置140の制御部141がまず、ステップS201の処理として、受信したベリファイ用のデータのデータブロックに対応する上記書き換え用のデータのデータブロックを上記メモリ装置143から読み出す。次いで、ステップS202の処理として、上記受信したデータブロック(ベリファイ用のデータ)と上記読み出したデータブロック(書き換え用のデータ)とを比較(ベリファイチェック)する。この結果、これら2つのデータブロックが一致した場合には、次にステップS203の処理として、上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータを構成する全てのデータブロック(データブロック「1」~データブロック「n」)に関してのベリファイチェックが完了したか否かの判断を行う。

【0073】

このステップS203の処理において、該ベリファイチェックが完了していないと判断される場合には、この適正性判断処理を一旦終了し、パケット通信によって次のデータブロックを受信するまで待機する。すなわちこの場合、上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータを構成する全てのデータブロック(データブロック「1」~データブロック「n」)に関してのベリファイチェックが完了したと判断されるまで、上記ステップS201~S203の処理を繰り返し実行することとなる。

【0074】

ただしこの際、上記ステップS202の処理において、上記2つのデータブロックが一致しないと判断された場合、同制御部141は、これら2つのデータブロックが一致しないと判断した時点で、次にステップS206~S208の処理を行う。すなわち、まず、ステップS206の処理として、上記ベリファイチェックが一致しなかった旨を上記管理センター200に通知する。次に、ステップS207の処理として、上記2次処理フラグを論理「L」レベルに操作する。そして次に、ステップS208の処理として、メモリ装置143に格納されている全てのデータブロック(データブロック「1」~データブロック「n」)を削除する。このような処理(ステップS206~S208)を通じて、同制御部141は、上述の書換処理(1次処理~4次処理)を、上記データ格納処理(1次処理)から再実行するようになる。

【0075】

一方、上記ステップS201~S203の処理が繰り返し実行された結果、ステップS203の処理において、全てのデータブロック(データブロック「1」~データブロック「n」)に関してのベリファイチェックが完了したと判断された場合には、同制御部141は、次にステップS204の処理を行う。すなわち、このステップS204の処理として、上記ベリファイチェックが一致した旨を上記管理センター200に通知する。そしてその後に、ステップS205の処理として、上記2次処理フラグを論理「L」レベルに操作するとともに上記3,4次処理フラグを論理「H」レベルに操作した時点で、当該適正性判断処理を終了する。

【0076】

このように2次処理フラグ及び3,4次処理フラグが操作されることによって、上記制御部141は次に、先の図5に示したように、エンジン制御装置110内のデータを書き換えるための準備が完了した旨をユーザに通知する書換準備完了通知処理(ステップS300)を行うようになる。

【0077】

次に、図10を参照して、この書換準備完了通知処理(ステップS200)の具体的な処理態様について説明する。

すなわち、いま、上記ステップS25の処理(図6)において、上記3,4次処理フラグが論理「H」レベルにあるとすると、同マスタ制御装置140は上述のように、ステップS300の処理として、エンジン制御装置110内のデータを書き換えるための準備が完了した旨をユーザに通知する当該書換準備完了通知処理を実行する。

【0078】

具体的には、同図10に示されるように、ユーザへの通知に際しては、上記マスタ制御装置140の制御部141がまず、ステップS301の処理として、ドライバ(ユーザ)がシートに着座しているか否かを検出する着座センサからの出力を監視する。なお、この着座センサは、例えば、ドライバの着座によってシートに付与される圧力の大きさを検出する圧力センサなどからなる。そしてその結果、該着座センサからの出力に基づき、ドライバがシートに着座していると判断される場合には、次にステップS302の処理として、車内に設けられているナビゲーションシステムの画面表示を通じて、上記エンジン制御装置110内のデータを書き換えるための準備が完了した旨をユーザに通知した時点で、同制御を終了する。

【0079】

ただし、上記ステップS301の処理において、ドライバがシートに着座していないと判断される場合には、次にステップS303の処理に移行する。そして、このステップS303の処理において、予め登録されている携帯電話へのメール送信(Eメール)によって、上記エンジン制御装置110内のデータを書き換えるための準備が完了した旨をユーザに通知した時点で、同制御を終了する。なお、このステップS303の処理は、具体的には、同制御部141が上記無線通信部142を介して上記メール送信(Eメール)による通知を行うべき旨の信号を上記管理センター200に送信することによって行われる。すなわちこの場合、上記管理センター200が、同信号の受信に基づき、予め登録されている携帯電話へのメール送信(Eメール)を実行することとなる。

【0080】

このように書換準備完了通知処理が終了すると、上記制御部141は、上記データの書き換えに関するユーザによる指示があるまで、基本的に待機する。なお、ユーザによる指示は、例えば、上記ナビゲーションシステムのスイッチ操作や、上記Eメールに対する返信メールを上記管理センター200に送信する操作などを通じて行われる。また、ユーザは、こうした操作を通じて、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えを指示し、あるいは同データの書き換えのキャンセルを指示する。この実施の形態では、ユーザは、上記書き換えの指示態様として、車載制御装置100に対し、書換開始時刻を指示することも可能である。すなわちこの場合、上記マスタ制御装置140のソークタイマ146に、ユーザにより指示された書換開始時刻に対応するタイマ時間が設定されることとなる。

【0081】

ただし、この実施の形態では、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えにかかるより円滑な実行を促すべく、同制御部141は、当該車両のIGスイッチがオフ操作された時点、及び同IGスイッチがオン操作された時点において、こうしたユーザによる操作が未実行であるとき、上記書換準備完了通知処理を再実行するようにしている。

【0082】

図11及び図12は、IGスイッチがオフ操作及びオン操作された時点で行われる処理についてその処理手順をそれぞれフローチャートとして示したものである。

まず、図11を参照して、上記IGスイッチがオフ操作された時点で行われる処理について説明する。

【0083】

すなわち、いま、IGスイッチがオフ操作されたとすると、上記マスタ制御装置140の制御部141はまず、ステップS31の処理として、メインリレー制御に基づき車載バッテリからの給電状態を保持する。また併せて、このメインリレー制御の開始に基づき、タイマ(メインリレータイマ)による計時を開始する。そして次に、上記1次処理フラグ、2次処理フラグがいずれも論理「L」レベルにあり、且つ、上記3,4次処理フラグが論理「H」レベルにあることを条件に(ステップS32及びS33)、上記ソークタイマ146にタイマ時間(データの書換開始時刻)が設定されているか否かを判断する(ステップS34)。この結果、データの書換開始時刻が設定されている場合には、上述の通り、ユーザによる操作は既に行われている。したがってこの場合、同制御部141は、次にステップS35の処理として、上記メインリレー制御に基づく車載バッテリからの給電状態の保持を解除した時点で、この制御を終了する。

【0084】

一方、このステップS34の処理において、上記データの書換開始時刻が設定されていない場合には、ユーザによる操作が未だ行われていないこととなる。したがって、同制御部141は、上記エンジン制御装置110内のデータを書き換えるための準備が完了した旨をユーザに通知する上記書換準備完了通知処理(ステップS300)を再実行する。そして次に、ステップS35の処理として、上記メインリレー制御に基づく車載バッテリからの給電状態の保持を解除した時点で、この制御を終了する。こうした処理を通じて、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えにかかるより円滑な実行が促されるようになる。

【0085】

他方、上記ステップS33の処理において、上記3,4次処理フラグが論理「L」レベルにある場合には、上記3種のフラグ情報がいずれも論理「L」レベルにあり、先の図5に示したように、上述の書換処理(1次処理~4次処理)が未だ実行されていない状況にある。したがって、同制御部141は、上記ステップS34及びS300の処理を行うことなく、上記ステップS35の処理に移行し、上記メインリレー制御に基づく車載バッテリからの給電状態の保持を解除した時点で、この制御を終了する。

【0086】

また他方、上記ステップS32の処理において、上記1次処理フラグ及び2次処理フラグの一方が論理「H」レベルにある場合には、上述のデータ格納処理(ステップS100)または適正性判断処理(ステップS200)が実行されるべき状況にある。すなわち、同制御部141が、上記書き換え用のデータまたはベリファイ用のデータを受信すべく、上記管理センター200との間で無線通信中であるにもかかわらず、上記IGスイッチがオフ操作されたこととなる。

【0087】

そこでこの場合、上記マスタ制御装置140の制御部141は、次にステップS36の処理として、車載バッテリからの給電状態を上記データの通信に要する時間だけ保持し、上述のデータ格納処理(ステップS100)及び適正性判断処理(ステップS200)の実行を継続するようにしている。これにより、IGスイッチの操作にかかわらず、これらデータ格納処理(ステップS100)及び適正性判断処理(ステップS200)を的確に実行することができるようになる。

【0088】

ただし、例えば、車両が通信環境の悪い場所(例えば地下駐車場など)に駐車されている場合や、車載バッテリの電圧値が上記通信を行うために必要とされる下限値未満である場合など、上記データの通信を中止するようにすることが、上述の書換処理(1次処理~4次処理)にかかる信頼性を維持する上で望ましいこともある。したがって、同制御部141は、このステップS36の処理において、上記メインリレータイマによる計時時間が上記データの通信に要する時間として予め設定されている上限時間を超えた場合や、車載バッテリの電圧値が上記下限値未満となった場合には、まず、上記データの通信を中止する。そして、上記データの通信を中止した旨を示す通信中止履歴を例えば該制御部141自身が内蔵するバックアップRAMに記憶し(ステップS37)、上記メインリレー制御に基づく車載バッテリからの給電状態の保持を解除した時点で(ステップS35)、この制御を終了することとしている。後述するが、このような処理(ステップS35~S37)を通じて、同制御部141は、上述の書換処理(1次処理~4次処理)を、上記データ格納処理(1次処理)から再実行するようになる。

【0089】

次に、図12を参照して、上記IGスイッチがオン操作された時点で行われる処理について説明する。

いま、上記IGスイッチがオン操作されたとすると、上記マスタ制御装置140の制御部141はまず、ステップS41の処理として、該制御部141自身が内蔵するバックアップRAMに上記通信中止履歴が記憶されているか否かを判断する。この結果、該履歴が記憶されていると判断された場合、同制御部141は、上記管理センター200との間での通信が中止されたとして、上述の書換処理(1次処理~4次処理)を上記データ格納処理(1次処理)から再実行すべく、次にステップS42~S44の処理を順次に実行する。

【0090】

すなわち、同制御部141はまず、上記ステップS42の処理として、上記メモリ装置143に格納されている上記管理センター200との間での通信によって受信したデータ(書き換え用のデータやベリファイ用のデータ)を消去する。そして次に、上記1次処理フラグ、及び2次処理フラグ、及び3,4次処理フラグをいずれも論理「L」レベルに操作して後に(ステップS43)、該制御部141自身が内蔵するバックアップRAMに記憶されている上記通信中止履歴を消去する(ステップS44)。これらステップS42~S44の処理を通じて、同制御部141は上述の通り、上述の書換処理(1次処理~4次処理)を、上記データ格納処理(1次処理)から再実行するようになる。そしてその後は、ステップS45の処理として、上記3,4次処理フラグが論理「H」レベルにあるか否かを判断し、その結果、3,4次処理フラグが論理「L」レベルにあると判断した時点で、この制御を終了する。

【0091】

ただし、上記ステップS41の処理において、該制御部141自身が内蔵するバックアップRAMに通信中止履歴が記憶されていない場合、同制御部141は、上記ステップS42~S44の処理を実行することなく、上記ステップS45の処理に移行する。そして、このステップS45の処理において、上記3,4次処理フラグが論理「H」レベルにあると判断されると、次にステップS46の処理として、上記ソークタイマ146にデータの書換開始時刻が設定されているか否かを判断する。この結果、上記データの書換開始時刻が設定されていない場合、同制御部141は、ユーザによる操作が未だ行われていないとして、上記エンジン制御装置110内のデータを書き換えるための準備が完了した旨をユーザに通知する上記書換準備完了通知処理(ステップS300)を再実行する。こうした処理を通じて、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えにかかるより円滑な実行が促されるようになる。

【0092】

一方、上記ステップS46の処理において、データの書換開始時刻が設定されている場合には、同制御部141は、ユーザによる操作が既に行われているとして、この制御を終了する。

【0093】

そして、こうして書換準備完了通知処理(ステップS300)が繰り返し実行された結果、ユーザによる操作が行われると、上記制御部141は次に、ユーザ指示に対する応答処理(4次処理)を行うようになる。

【0094】

図13は、ユーザ指示に対する応答処理についてその処理手順をフローチャートとして示したものであり、次に、同図13を参照して、該処理について説明する。

この処理に際しては、上記マスタ制御装置140の制御部141がまず、ステップS401の処理として、ユーザによる操作が、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えを指示するものであったか否かの判断を行う。この結果、ユーザによる操作が、該書き換えのキャンセルを指示するものであった場合、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えを延期すべく、同制御を終了する。

【0095】

一方、このステップS401の処理において、ユーザによる操作が上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えを指示するものであったと判断された場合、同制御部141は、次にステップS402の処理として、データの書換開始時刻の設定が要求(指示)されているか否かを判断する。そしてこの結果、データの書換開始時刻の設定が指示されていないと判断されると、同制御部141は、次にステップS403の処理として、上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータを用いて上記エンジン制御装置110内のデータを書き換える書換実行処理を行う。

【0096】

他方、上記ステップS402の処理において、データの書換開始時刻の設定が指示されていると判断された場合、同制御部141は、次にステップS404の処理として、ユーザにより指示された書換開始時刻をもって上記ソークタイマ146にタイマ時間を設定する。これにより、該制御部141が、上記ソークタイマ146による自動起動に基づき、上記書換実行処理(ステップS403)を実行するようになる。具体的には、図14に示されるように、いま、上記設定されたタイマ時間に到達し、上記ソークタイマ146による自動起動があったとすると、同制御部141は、上記3,4次処理フラグが論理「H」レベルにあることを条件に(ステップS61)、上記書換実行処理(ステップS403)を実行する。

【0097】

図15は、こうした書換実行処理についてその処理手順をフローチャートとして示したものであり、次に、同図15を参照して、該処理について説明する。

いま、上記ステップS402の処理(図13)において、書換開始時刻の指定がない、若しくは上記ステップS61の処理(図14)において、上記3,4次処理フラグが論理「H」レベルにあると判断されたとすると、同マスタ制御装置140は上述のように、ステップS403の処理として、当該書換実行処理を実行する。

【0098】

この書換実行処理に際しては、同図15に示されるように、上記マスタ制御装置140の制御部141がまず、ステップS411の処理として、書き換え実行の対象となる上記エンジン制御装置110の制御部111が給電状態にあるか否かを確認する。この結果、制御部111が給電状態になければ、該制御部111が給電状態となるまで、上記エンジン制御装置110に対し、同制御部111を起動する旨の指令を出力する(ステップS412)。

【0099】

一方、このステップS411の処理において、例えば上記エンジン制御装置110のソークタイマ115による自動起動があり、上記制御部111が給電状態にあると判断されると、同制御部141は、次にステップS413の処理として、上記エンジン制御装置110に対し、ダイアグ処理の実行を禁止する旨の指令を出力する。

【0100】

すなわち、この実施の形態では、エンジン制御装置110は、上記制御部111の起動に基づき制御対象となる車載機器の故障診断処理(ダイアグ処理)を行うものとなっている。この点、この実施の形態では、エンジン制御装置110のソークタイマ115によって上記制御部111が起動された時点で、上記ステップS413の処理として、ダイアグ処理の実行を禁止する旨の指令を出力するようにしている。このため、エンジン制御装置110内のデータの書換実行処理がこうした故障診断処理と並行して実行されることが回避されるようになり、同書換処理をより的確に実行することができるようになる。

【0101】

しかも、

この実施の形態では、同制御部141は、次にステップS414の処理として、車両の状態が上記データの書き換えに適した状態にあるか否かの開始判定を行い、該開始判定の結果、車両の状態が書き換えに適した状態にあると判定されることを条件に、上 記データの書換実行処理を開始するようにしている

。このため、車両の状態が上記データの書き換えに適した状況にあるときにより確実に上記データの書換実行処理を実行することができるようになる。なお、該開始判定(ステップS414)は、当該車両の状態が上記書き換えに適した状態となるまで繰り返し実行される(ステップS415)。この開始判定については、図16を参照して後述する。

【0102】

また、

こうした開始判定の結果、当該車両の状態が上記書き換えに適した状態にあると判定された場合(ステップS415)、同制御部141は、次にステップS416の処理として、ユーザに対し、車載エンジンの稼働の禁止を要求する通知を行う

。なおこの通知も、例えば、予め登録されている携帯電話に対するEメール送信等により行われる。そして、ユーザに対して該通知を行った上で、上記エンジン制御装置110内のデータを、該エンジン制御装置110(制御部111)と協働して書き換える(ステップS417)。なお、該書き換えの具体的な態様については、図2を参照して前述した通りである。

【0103】

そして、

同制御部141は、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換え(リプログラミング)が完了すると(ステップS418)

、次にステップS419の処理として、上記3,4次処理フラグを論理「L」レベルに操作する。そして次に、ステップS420の処理として、上記管理センター200に対し、上述の書換完了通知(図3)を送信する。これにより、上記管理センター200において、上記マスタ制御装置140に対する前述した送信処理(図4)が中止されるようになる。そして

その後、同制御部141は、ユーザに対し、車載エンジンの稼働の禁止を解除する通知を行うとともに(ステップS421)、エンジン制御装置110に対し、ダイアグ処理の実行禁止を解除する旨の指令を出力した時点で(ステップS422)、この制御を終了する

【0104】

他方、上記ステップS418の処理において、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換え(リプログラミング)が完了していないと判断された場合には、該データの書き換えが完了するまで、上記ステップS417の処理が繰り返し実行される(ステップS423)。ただし、このステップS423の処理において、上記ステップS417の処理の実行にかかる回数が予め設定されている上限値を超えたとときは、上述の一連の処理(1次処理~4次処理)を中止し、上記管理センター200に対してその旨を通知する(ステップS424)。そしてその後、上記ステップS421及びS422の処理を順次に実行した時点で、この制御を終了する。

【0105】

図16は、上記ステップS414の処理として、上記マスタ制御装置140によって行われる開始判定についてその処理手順を示したフローチャートであり、次に同図16を参照して、該開始判定について説明する。

【0106】

該開始判定に際しては、同マスタ制御装置140の制御部141がまず、ステップS451の処理として、車両の状態を示す各種の車載センサからの出力をモニタする

。そして、それら

モニタしたセンサ出力に基づき、以下のステップS452~S460の処理を実行することにより、当該開始判定を行う

【0107】

具体的には、

同制御部141は、ステップS452の処理として、エンジン回転数が「50rpm」未満(実質的に「0」)であるか否かの判断を行う

。この結果、

エンジン回転数が「50rpm」以上であると判断された場合、同制御部141は、上記エンジン制御用プログラムメモリ113に格納されている制御プログラムを用いた上述の制御(エンジン制御)が行われている可能性があるとして、次のステップS460の処理において、車両の状態がデータ書き換えに適した状態にないと判定する

【0108】

一方、上記ステップS452の処理において、エンジン回転数が「50rpm」以上であると判断された場合には、同制御部141は、次にステップS453の処理として、エンジン回転数が「50rpm」未満(実質的に「0」)となった時刻から予め設定された時間が経過するまで待機する。すなわち、当該車両にあって、上記エンジン制御装置110の制御部111では、車載エンジンの運転停止に伴ってその回転数が「0」となると、例えば次回の運転時まで保持すべき学習値等のデータを該制御部111自身が内蔵するバックアップRAM(不揮発性メモリ)に保持するなどの後処理が行われる。このため、

この実施の形態では、エンジン回転数が「50rpm」未満(実質的に「0」)となった時刻から予め設定された時間が経過するまで待機することによって、こうした後処理と並行して上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えが実行されることを回避するようにしている

【0109】

そして、

こうした後処理が終了して後に、同制御部141は、次に、以下のステップS454~S458の処理として

(a)

車速が「3km/h」未満(実質的に「0」)であること(ステップS454)

(b)

シフトポジションがパーキング「P」ポジション、若しくはニュートラル「N」ポジションにあること(ステップS455)

(c)サイドブレーキが作動していること(ステップS456)。

(d)車載バッテリの電圧値が、上記エンジン制御装置110内のデータを書き換える上で必要とされる下限値以上であること(ステップS457)。

(e)エンジン制御装置110を含めて、車載制御装置100が有する制御装置がいずれも上述の故障診断処理(ダイアグ処理)を実行していないこと(ステップS458)。

の論理積条件が満たされているか否かをさらに判断する。そして、

ステップS454~S458の処理において、これら条件(a)~(e)の論理積が満たされていると判断されるとき、同制御部141が、当該車両の状態がデータ書き換えに適した状態にあると判定する(ステップS459)

。なお、

上記条件(a)~(c)は、当該車両の安全が確保されているか否かを確認するための条件であり

、上記条件(d)及び(e)は、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えをより高い信頼性の下で実行するための条件である。したがって、これらステップS454~S458の処理を順次に実行するに際して、

上記条件(a)~(e)のいずれか1つでも満たされていない条件があると判断された場合には、同制御部141は

、該判断を行った時点で、上記ステップS460の処理に移行し、

車両の状態がデータ書き換えに適した状態にないと判定する

【0110】

以上説明したように、この実施の形態にかかる車載制御装置によれば、以下に記載するような多くの優れた効果が得られるようになる。

(1)

エンジン制御装置110内の制御プログラムや制御データの書き換えに際して、無線通信によって得られる書き換え用のデータを一時的にメモリ装置143に格納することとした

。そして、該メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータが適正であることを条件に、

同書き換え用のデータを用いた上記制御プログラムや制御データの書き換えを実行することとした

。このため、無線通信によって得られる書き換え用のデータの取得時期や書き換え実行時期にかかる自由度を高めつつ、それらデータの書き換えにかかる信頼性のさらなる向上を図ることができるようになる。

【0111】

(2)メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータの適正性の判断を、該書き換え用のデータと同データに対応するベリファイ用のデータとのベリファイチェックに基づいて行うようにしたため、上述の書換処理(1次処理~4次処理)をより適正に実行することができるようになる。

【0112】

(3)データブロック(パケット)単位で分割送信されるデータを受信する都度、それら分割されたデータ毎に上記ベリファイチェックを行うこととした。このため、上記ベリファイ用のデータを構成する全てのデータブロックの受信に先立って、これら2つのデータブロックが一致しなかった時点で、上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータに適正性がない旨の判断を行うことができるようになる。

【0113】

(4)マスタ制御装置140は、上記管理センター200との間での通信中に、IGスイッチがオフ操作されることに基づき、車載バッテリからの給電状態を上記データの通信に要する時間だけ保持するようにした。このため、

IGスイッチの操作にかかわらず上記書き換え用のデータを的確に受信して上記メモリ装置143に格納することができるようになる

【0114】

(5)マスタ制御装置140は、上記管理センター200との間での通信中に、車載バッテリからの給電が遮断されることに基づいて該給電が遮断された旨を示す履歴情報(通信中止履歴)をバックアップRAM(不揮発性メモリ)に保持するようにした。これにより、該履歴情報に基づき、上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータの消去や該消去した書き換え用のデータの再受信等を行うことができるようになる。

【0115】

(6)ユーザからの書き換え指示に基づき上記エンジン制御装置110内のデータの書き換え(リプログラミング)を実行するため、リプログラミング中に車両のキースイッチが操作されることが回避されるようになり、車載機器を制御するための制御プログラムや制御データ等のデータを的確に書き換えることができるようになる。

【0116】

(7)エンジン制御装置110内のデータの書き換えが未実行であるとき、IGスイッチがオフ操作された時点、及び同IGスイッチがオン操作された時点において、上記書換準備完了通知処理(ステップS300)を再実行するようにした。このため、上記データの書き換え(リプログラミング)にかかるより円滑な実行が促されるようになる。

【0117】

(8)

エンジン制御装置110内のデータの書き換えの実行を指示する操作が行われたとき、車載エンジンの稼働の禁止を要求する通知をユーザに対して行うようにした

。このため、リプログラミング中の車両のキースイッチの操作が好適に回避されるようになり、同エンジン制御装置110内のデータをより的確に書き換えることができるようになる。

【0118】

(9)ユーザによって設定されるタイマ時間(書換開始時刻)に到達することに基づき上記マスタ制御装置140の制御部141を起動するソークタイマ146を備えることとした。そして、該マスタ制御装置140の制御部141が、この起動に基づき、上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータが適正であることを条件に、上記エンジン制御装置110内のデータを書き換える上記書換実行処理(ステップS403)を実行するようにした。このため、上記データの書き換え実行時期をユーザが適宜に選択(指示)することができるようになる。また併せて、

車載エンジンの稼働が停止しており、且つ、車両のキースイッチがオフ状態にあるとき(車両の状態が上記データの書き換えに適した状況にあるとき)に、上記マスタ制御装置140の制御部141が自動起動されて上記書き換えを実行する

ため、高い信頼性の下で該データの書き換えを実行することができるようになる。

【0119】

(10)ソークタイマ146によって当該マスタ制御装置140の制御部141が起動された時点で、上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータが適正であると判断されている場合、この自動起動時に行われる車載機器の故障診断処理(ダイアグ処理)の実行を禁止するようにした。これにより、該故障診断処理と並行して上記書換処理が行われることが回避されるようになり、上述の書換処理(1次処理~4次処理)をより的確に実行することができるようになる。

【0120】

(11)ユーザからのキャンセル指示に基づき、上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えを延期することとしたため、ユーザは、車両の利用機会を容易に確保することができるようになる。

【0121】

(12)

上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えに際し、車両の状態が該書き換えに適した状態にあるか否かの開始判定を行うこととした

。そして、

車両の状態が該書き換えに適した状態にあると判定されることを条件に、上記メモリ装置143に格納されている書き換え用のデータを用いて上記エンジン制御装置110内のデータを書き換えるようにした

。このため、

該データの書き換えが、車両の状態が上記データの書き換えに適した状況にあるときにより確実に実行されるようになる

【0122】

(13)エンジン回転数が「50rpm」未満(実質的に「0」)となった時刻から予め設定された時間が経過するまで待機し、上述の後処理と並行して上記エンジン制御装置110内のデータの書き換えが実行されることを回避するようにしたため、より高い信頼性の下で該データの書き換えを実行することができるようになる。

【0123】

(14)マスタ制御装置140が、無線通信部142、及びメモリ装置143を備えることとしたため、無線通信によって得られる書き換え用のデータを上記通信バス101を利用することなくメモリ装置143に格納することができるようになる。」

(ウ)「

79

110

0001435700000009.jpg

」(【図1】)

(エ)「

92

90

0001435700000010.jpg

」(【図2】)

(オ)「

104

86

0001435700000011.jpg

」(【図3】)

(カ)「

49

57

0001435700000012.jpg

」(【図4】)

(キ)「

46

94

0001435700000013.jpg

」(【図5】)

(ク)「

95

92

0001435700000014.jpg

」(【図6】)

(ケ)「

61

65

0001435700000015.jpg

」(【図7】)

(コ)「

44

45

0001435700000016.jpg

」(【図8】)

(サ)「

86

94

0001435700000017.jpg

」(【図9】)

(シ)「

43

72

0001435700000018.jpg

」(【図10】)

(ス)「

116

91

0001435700000019.jpg

」(【図11】)

(セ)「

101

55

0001435700000020.jpg

」(【図12】)

(ソ)「

56

82

0001435700000021.jpg

」(【図13】)

(タ)「

45

52

0001435700000022.jpg

」(【図14】)

(チ)「

133

93

0001435700000023.jpg

」(【図15】)

(ツ)「

132

86

0001435700000024.jpg

」(【図16】)

イ 引用文献2の認定事項

(ア)上記ア(ア)及び(イ)の記載並びに上記ア(ウ)ないし(ツ)の図示内容からみて、「車載エンジン、トランスミッション、ブレーキをその一部として有する車載機器を制御するための制御プログラムの書換実行処理を実行する車載制御装置100」が記載されていると認められる。

(イ)上記ア(ア)及び(イ)の記載並びに上記ア(ウ)ないし(ツ)の図示内容からみて、「車載エンジンの稼働が停止しており、且つ、車両のキースイッチがオフ状態にあるとき(車両の状態がデータ書き換えに適した状態にあるとき)、制御プログラムの書き換えを実行」することが記載されていると認められる。

(ウ)上記ア(ア)及び(イ)の記載並びに上記ア(ウ)ないし(ツ)の図示内容からみて、「車載エンジンの稼働が停止しており、且つ、車両のキースイッチがオフ状態にあるとき(車両の状態がデータ書き換えに適した状態にあるとき)は、車載エンジンの回転数が「0」であって車載エンジンの稼働が停止し、もしくは、シフトポジションがニュートラル「N」ポジションまたパーキング「P」ポジションにあることを含む」ことが記載されていると認められる。

ウ 引用文献2に記載された技術的事項

上記ア及びイを総合すると、引用文献2には、第1の実施の形態として、次の技術的事項(以下、「引用文献2記載技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。

「車載エンジン、トランスミッション、ブレーキをその一部として有する車載機器を制御するための制御プログラムの書換実行処理を実行する車載制御装置100において、

車載エンジンの稼働が停止しており、且つ、車両のキースイッチがオフ状態にあるとき(車両の状態がデータ書き換えに適した状態にあるとき)、制御プログラムの書き換えを実行し、

車載エンジンの稼働が停止しており、且つ、車両のキースイッチがオフ状態にあるとき(車両の状態がデータ書き換えに適した状態にあるとき)は、車載エンジンの回転数が「0」であって車載エンジンの稼働が停止し、もしくは、シフトポジションがニュートラル「N」ポジションまたはパーキング「P」ポジションにあることを含む、

車載制御装置100。」

第5 対比

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明における「車両10のエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライト」は本願発明における「車両に搭載された機器」に相当し、同様に、「制御する」ことは「動作させる」ことに、「複数のECU3」は「電子制御ユニット」に、「ソフトウェア」は「ソフトウェア」に、「更新処理」は「更新処理」に、「行う」ことは「実行する」ことに、「ソフトウェア更新システム100」は「ソフトウェア更新装置」に、それぞれ相当する。

これを踏まえると、引用発明における「車両10のエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3のソフトウェアの更新処理を行うソフトウェア更新システム100」は本願発明における「車両に搭載された機器を動作させる電子制御ユニットのソフトウェアの更新処理を実行するソフトウェア更新装置」に相当する。

(2)引用発明における「車両10のエンジン、ブレーキ、トランスミッション」は本願発明における「車両のパワートレイン」に相当し、同様に、「含まれ」ることは「含まれ」ることに相当する。

これを踏まえると、引用発明における「エンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトには車両10のエンジン、ブレーキ、トランスミッションが含まれ」ることは、本願発明における「機器には車両のパワートレインが含まれ」ることに相当する。

(3)引用発明における「車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2」は、引用文献1の「図7に示すフローは、車両10の

エンジン停止中に

実施される。」(引用文献1の段落【0051】)及び「ソフトウェアの切り替え処理は

安全性等を考慮

して

エンジンの停止時に

行われる。」(引用文献1の段落【0055】)なる記載を踏まえると、ソフトウェアの切り替え処理をエンジンの停止中に実施するべく、ソフトウェア更新装置2は、車両10の少なくともエンジンの停止及びエンジンが再始動する前を把握していると理解できることから、本願発明における「車両のパワートレインの駆動力出力状態を検知する検知部」に相当する。

また、引用発明における「ソフトウェアがサーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送され」ることは本願発明における「ソフトウェアを取得」することに相当し、同様に、「ソフトウェアを稼働させてエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する」ことは「当該ソフトウェアを機器に適用することで機器を制御する」ことに相当し、そうすると、引用発明における「ソフトウェアがサーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送され、ソフトウェアを稼働させてエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3」は本願発明における「ソフトウェアを取得し、当該ソフトウェアを機器に適用することで機器を制御する電子制御ユニット」に相当する。

さらに、引用発明における「複数のECU3と車内LANを介して通信を行」うことは本願発明における「電子制御ユニットと通信可能である」ことに相当する。また、引用発明における「車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行する」ことは、引用文献1の「図7に示すフローは、車両10の

エンジン停止中に

実施される。」(引用文献1の段落【0051】)及び「ソフトウェアの切り替え処理は

安全性等を考慮

して

エンジンの停止時に

行われる。」(引用文献1の段落【0055】)なる記載を踏まえると、ソフトウェアの切り替え処理をエンジンの停止中に実施するべく、ソフトウェア更新装置2は、車両10の少なくともエンジンの停止及びエンジンが再始動する前を把握していると理解できることから、本願発明における「検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得する」ことに相当する。そうすると、引用発明における「複数のECU3と車内LANを介して通信を行い、車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2」は本願発明における「電子制御ユニットと通信可能であるとともに、検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得するゲートウェイ」に相当する。

これらを踏まえると、引用発明における

「ソフトウェア更新システム100は、

車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2と、

ソフトウェアがサーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送され、ソフトウェアを稼働させてエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3と、

複数のECU3と車内LANを介して通信を行い、車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2と、を備え」ることは、

本願発明における

「ソフトウェア更新装置は、

車両のパワートレインの駆動力出力状態を検知する検知部と、

ソフトウェアを取得し、当該ソフトウェアを機器に適用することで機器を制御する電子制御ユニットと、

電子制御ユニットと通信可能であるとともに、検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得するゲートウェイと、を備え」ることに相当する。

(4)引用発明における「サーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送された」ことは本願発明における「取得した」ことに相当し、同様に、「現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)」は「第1のソフトウェア」に、「記憶される」ことは「記憶する」ことに、それぞれ相当する。そうすると、引用発明における「サーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送された現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)が記憶される第1領域211」は本願発明における「取得した第1のソフトウェアを記憶する第1記憶部」に相当する。

また、引用発明における「更新ソフトウェア」は本願発明における「第2のソフトウェア」に相当する。そうすると、引用発明における「サーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送された更新ソフトウェアが記憶される第2領域322」は本願発明における「取得した第2のソフトウェアを記憶する第2記憶部」に相当する。

これらを踏まえると、引用発明における

「複数のECU3」)は、

サーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送された現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)が記憶される第1領域211」)と、

サーバ装置1から送信されてソフトウェア更新装置2から転送された更新ソフトウェアが記憶される第2領域322と、を有」することは、

本願発明における

「 電子制御ユニット)は、

取得した第1のソフトウェアを記憶する第1記憶部と、

取得した第2のソフトウェアを記憶する第2記憶部と、を有」することに相当する。

(5)引用発明における「エンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3を稼働させる」ことは本願発明における「機器に適用する」ことに相当することから、引用発明における「エンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3を稼働させるソフトウェア」は、本願発明における「機器に適用するソフトウェア」に相当する。また、引用発明における「切替え」ることは本願発明における「変更する」ことに相当する。そうすると、引用発明における「エンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3を稼働させるソフトウェアを現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)から更新ソフトウェアに切替えてソフトウェアの更新処理を行」うことは、本願発明における「機器に適用するソフトウェアを第1のソフトウェアから第2のソフトウェアに変更することでソフトウェアの更新処理を実行」することに相当する。

また、引用発明における「ダウンロード」は本願発明における「ダウンロード」に相当し、同様に、「書込み」は「インストール」に、「稼働している間に行わせ」ることは「停止」しないに、それぞれ相当する。そうすると、引用発明における「ソフトウェアのダウンロード及び書込みはエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトが稼働している間に行わせ」ることは、本願発明における「ソフトウェアをダウンロード及びインストールしている間は機器を停止」しないことに相当する。

これらを踏まえると、引用発明における

「複数のECU3は、

エンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトを制御する複数のECU3を稼働させるソフトウェアを現在使用される制御プログラム(ソフトウェア)から更新ソフトウェアに切替えてソフトウェアの更新処理を行い)、

ソフトウェアのダウンロード及び書込みはエンジン、ステアリング、ブレーキ、トランスミッション、電源、ライトが稼働している間に行わせ」ることは

本願発明における

「 電子制御ユニットは、

機器に適用するソフトウェアを第1のソフトウェアから第2のソフトウェアに変更することでソフトウェアの更新処理を実行し、

ソフトウェアをダウンロード及びインストールしている間は機器を停止」しないこと

に相当する。

(6)引用発明における「車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行する際」には、上記(3)と同様に、本願発明における「検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得」することに相当することが行われているといえる。また、引用発明における「車両10のACCがオフされエンジンの停止時」は本願発明における「検知部が車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態であることを検知した場合」に相当し、同様に、「ACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前」は「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態」に、「ソフトウェアの切替え処理を行」うことは「ソフトウェアの更新処理を許可」することに、それぞれ相当する。

また、引用発明における「ソフトウェアの切替え処理は、停止されたエンジンが再始動する前に行」うことは、上記(3)において言及した引用文献1の「図7に示すフローは、車両10の

エンジン停止中に

実施される。」(引用文献1の段落【0051】)及び「ソフトウェアの切り替え処理は

安全性等を考慮

して

エンジンの停止時に

行われる。」(引用文献1の段落【0055】)なる記載を踏まえると、ソフトウェアの切り替え処理をエンジンの停止中に実施するべく、ソフトウェアの切替え処理中は、停止されたエンジンが再始動しているものではないことから、実質的にみて、本願発明における「ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止」することに相当する。

さらに、引用発明における「ソフトウェアの切替え処理の完了を認識すると、リプログモードの解除指示を行い、各ECU3は、更新ソフトウェアを起動させ、通常の動作を開始」することは本願発明における「ソフトウェアの更新が完了すると、車両のパワートレインによる駆動力の出力を許可」することに相当する。

これらを踏まえると、引用発明における

「ソフトウェア更新装置2は、

車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行する際に、車両10のACCがオフされエンジンの停止時に、ACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に、ソフトウェアの切替え処理を行い、

ソフトウェアの切替え処理は、停止されたエンジンが再始動する前に行い、

ソフトウェアの切替え処理の完了を認識すると、リプログモードの解除指示を行い、各ECU3は、更新ソフトウェアを起動させ、通常の動作を開始」することは、

本願発明における

「ゲートウェイは、

検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得し、検知部が車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態であることを検知した場合に、車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態において、ソフトウェアの更新処理を許可し、

ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止し、

ソフトウェアの更新が完了すると、車両のパワートレインによる駆動力の出力を許可」することに相当する。

(7)引用発明における「エンジンの停止時」は本願発明における「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態」に相当する。また、引用発明における「車両の電源がオフされエンジンが停止し停止されたエンジンが再始動する前」は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態であることから、本願発明における「エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合のうち」前者の「一方の場合」に相当し、してみると、本願発明における「エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合のうち、少なくとも一方の場合」に相当する。

これらを踏まえると、引用発明における

「エンジンの停止時は、車両の電源がオフされエンジンが停止し停止されたエンジンが再始動する前である」ことは、

本願発明における

「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合のうち、少なくとも一方の場合である」こと

に相当する。

2 一致点

したがって、本願発明と引用発明は、

「 車両に搭載された機器を動作させる電子制御ユニットのソフトウェアの更新処理を実行するソフトウェア更新装置であって、

機器には車両のパワートレインが含まれ、

ソフトウェア更新装置は、

車両のパワートレインの駆動力出力状態を検知する検知部と、

ソフトウェアを取得し、当該ソフトウェアを機器に適用することで機器を制御する電子制御ユニットと、

電子制御ユニットと通信可能であるとともに、検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得するゲートウェイと、を備え、

電子制御ユニットは、

取得した第1のソフトウェアを記憶する第1記憶部と、

取得した第2のソフトウェアを記憶する第2記憶部と、を有し、

電子制御ユニットは、

機器に適用するソフトウェアを第1のソフトウェアから第2のソフトウェアに変更することで前記ソフトウェアの更新処理を実行し、

ソフトウェアをダウンロード及びインストールしている間は機器を停止せず、

ゲートウェイは、

検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得し、検知部が車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態であることを検知した場合に、車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態において、ソフトウェアの更新処理を許可し、

ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止し、

ソフトウェアの更新が完了すると、車両のパワートレインによる駆動力の出力を許可し、

車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合である、

ソフトウェア更新装置。」

である点で一致する。

第6 判断

1 判断1

上記第5の2のとおり、本願発明は引用発明と全ての点で一致している。

したがって、本願発明は引用発明である。

2 判断2(予備的判断)

上記1のとおりであるが、以下に予備的な見解を示す。

(1)判断2-1

ア 仮に、本願発明は、ゲートウェイが「検知部から」車両のパワートレインの駆動力状態を取得するものであるのに対して、引用発明は、ソフトウェア更新装置2(ゲートウェイ)が車両10のACCが一旦オフされ、その後ACCがオンされると切替え処理を実行する」ものではあるものの、本願発明のように「ソフトウェア更新装置2」以外に別異の「検知部から」車両のパワートレインの駆動力状態を取得するものではない点で相違するとしたとしても、引用発明において、検知部の機能を「ソフトウェア更新装置2」以外に別異の要素において設けるか否かは当業者が設計時において適宜選択し得る事項であり、かかる点に係る本願発明のように構成することは当業者が通常の創作能力の発揮により容易になし得るものである。

イ また、仮に、上記第5の1(3)及び(6)において、引用発明における「車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2」が本願発明における「車両のパワートレインの駆動力出力状態を検知する検知部」及び「検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得するゲートウェイ」に相当するものではないとした場合について検討する。

引用発明における「車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2」について、上記1(3)において言及した引用文献1の「図7に示すフローは、車両10の

エンジン停止中に

実施される。」(引用文献1の段落【0051】)及び「ソフトウェアの切り替え処理は

安全性等を考慮

して

エンジンの停止時に

行われる。」(引用文献1の段落【0055】)なる記載を踏まえると、ソフトウェアの切り替え処理をエンジンの停止中に実施するべく、ソフトウェア更新装置2は、車両10の少なくともエンジンの停止及びエンジンが再始動する前を把握することが実質的に示唆されていると理解できることから、かかる示唆のもとで、引用発明の「ソフトウェア更新装置2」自体や「ソフトウェア更新装置2」以外に別異の「検知部」を備えるようにし、本願発明のような「車両のパワートレインの駆動力出力状態を検知する検知部」及び「検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得するゲートウェイ」を備えるように構成することは当業者が通常の創作能力の発揮により容易になし得るものである。

ウ さらに、仮に、上記第5の1(6)において、引用発明における「ソフトウェアの切替え処理は、停止されたエンジンが再始動する前に行」うことが本願発明における「ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止」することに相当するものではないとした場合について検討する。

引用発明における「ソフトウェアの切替え処理は、停止されたエンジンが再始動する前に行」うことについて、上記1(6)において言及した引用文献1の「図7に示すフローは、車両10の

エンジン停止中に

実施される。」(引用文献1の段落【0051】)及び「ソフトウェアの切り替え処理は

安全性等を考慮

して

エンジンの停止時に

行われる。」(引用文献1の段落【0055】)なる記載を踏まえると、ソフトウェアの切り替え処理をエンジンの停止中に実施するべく、ソフトウェアの切替え処理中は、停止されたエンジンが再始動しているものではないことから、このソフトウェアの切替え処理中において停止されたエンジンが再始動していない状態を確実に維持することが実質的に示唆されていると理解でき、かかる示唆のもとで、引用発明のソフトウェアの切替え処理中において停止されたエンジンが再始動していない状態を確実に維持するべく、本願発明のように「ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止」するように構成することは当業者が通常の創作能力の発揮により容易になし得るものである。

さらに、引用文献2において「こうした開始判定の結果、当

該車両の状態が上記書き換えに適した状態にあると判定された場合

(ステップS415)、同制御部141は、次にステップS416の処理として、

ユーザに対し、車載エンジンの稼働の禁止を要求する通知を行う

。」(引用文献2の段落【0102】)及び「(8)

エンジン制御装置110内のデータの書き換えの実行を指示する操作が行われたとき

車載エンジンの稼働の禁止を要求する通知をユーザに対して行う

ようにした。」(引用文献2の段落【0117】)なる記載を踏まえてみても、引用発明において、本願発明のように「ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止」するように構成することは当業者が通常の創作能力の発揮により容易になし得るものである。

(2)判断2-2

本願発明における「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合のうち、少なくとも一方の場合である」において、「少なくとも一方の場合」が「トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合」や、「少なくとも一方の場合」が「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合」及び「トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合」を含む場合について、引用発明は、「エンジンの停止時は、車両の電源がオフされエンジンが停止し停止されたエンジンが再始動する前」である点で相違するとした場合について検討する。

引用文献2には、上記第4の2(1)ウのとおりの引用文献2記載技術的事項が記載されている。

ここで、引用文献2記載技術的事項における「車載エンジン、トランスミッション、ブレーキ」は本願発明における「車両のパワートレイン」に相当し、以下同様に、「をその一部として有する」ことは「含む」ことに、「車載機器」は「車両に搭載された機器」に、「制御するための」は「動作させる」に、「制御プログラム」は「ソフトウェア」に、「書換実行処理」は「更新処理」に、「実行する」ことは「実行する」ことに、「車載制御装置100」は「ソフトウェア更新装置」に、それぞれ相当する。

これらを踏まえると、引用文献2記載技術的事項における

「車載エンジン、トランスミッション、ブレーキをその一部として有する車載機器を制御するための制御プログラムの書換実行処理を実行する車載制御装置100」は、本願発明における「車両のパワートレインを含む車両に搭載された機器を動作させるソフトウェアの更新処理を実行するソフトウェア更新装置」に相当する。

また、引用文献2記載技術的事項における「車載エンジンの稼働が停止しており、且つ、車両のキースイッチがオフ状態にあるとき(車両の状態がデータ書き換えに適した状態にあるとき)」は本願発明における「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態において」に相当し、以下同様に、「書き換え」は「更新処理」に、「実行」することは「許可」することに、それぞれ相当する。

これらを踏まえると、引用文献2記載技術的事項における「車載エンジンの稼働が停止しており、且つ、車両のキースイッチがオフ状態にあるとき(車両の状態がデータ書き換えに適した状態にあるとき)、制御プログラムの書き換えを実行」することは、本願発明における「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態において、ソフトウェアの更新処理を許可」することに相当する。

さらに、引用文献2記載技術的事項における「車載エンジンの稼働が停止しており、且つ、車両のキースイッチがオフ状態にあるとき(車両の状態がデータ書き換えに適した状態にあるとき)」は本願発明における「パワートレインにより駆動力が出力されない状態」に相当し、以下同様に、「車載エンジンの回転数が「0」」は「エンジン回転数が0」に、「車載エンジンの稼働が停止し」ていることは「エンジンがオフの状態である場合」に、「シフトポジション」は「トランスミッション」に、「ニュートラル「N」ポジション」は「ニュートラル(N)」に、「パーキング「P」ポジション」は「パーキング(P)」に、「にあること」は「状態である場合」に、「を含む」ことは「である」ことに、それぞれ相当する。

これらを踏まえると、引用文献2記載技術的事項における「車載エンジンの稼働が停止しており、且つ、車両のキースイッチがオフ状態にあるとき(車両の状態がデータ書き換えに適した状態にあるとき)は、車載エンジンの回転数が「0」であって車載エンジンの稼働が停止し、もしくは、シフトポジションがニュートラル「N」ポジションまたはパーキング「P」ポジションにあることを含む」ことは、本願発明における「パワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)状態である場合である」ことに相当する。

以上より、引用文献2記載技術的事項を、本願発明の用語を用いて整理すると、以下のとおりとなる。

「車両のパワートレインを含む車両に搭載された機器を動作させるソフトウェアの更新処理を実行するソフトウェア更新装置において、

前記車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態において、前記ソフトウェアの更新処理を許可し、

前記パワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)状態である場合である、

ソフトウェア更新装置。」

そうすると、引用発明において、ソフトウェア(ソフトウェア)の切替え処理を行う(更新処理を許可する)車両10のACCがオフされエンジンの停止時(パワートレインにより駆動力が出力されない状態)として、同様に車両に搭載された機器を動作させるソフトウェアの更新処理を実行するソフトウェア更新装置の技術分野に属し車両に搭載された機器を動作させるソフトウェアの更新処理を実行するという共通の機能を有する引用文献2記載技術的事項のような車載エンジンの回転数が「0」(エンジン回転数が0)であって車載エンジンの稼働が停止し(エンジンがオフの状態である場合)、もしくは、シフトポジション(トランスミッション)が(「ニュートラル「N」ポジション(ニュートラル(N))またはパーキング「P」ポジション(パーキング(P))にあること(状態である場合)のうち、少なくとも一方の場合とする構成を採用し、上記点に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。

(3)本願発明が奏する効果の予測性

そして、本願発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2記載技術的事項から当業者が予測し得る程度のものである。

(4)小括

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 審判請求人の主張について

1 令和7年9月1日に提出された意見書における主張

(1)審判請求人の主張の内容

審判請求人は、上記意見書において、以下のように主張する(審決注:下線は当審にて付した。)。

ア 新規性に関する主張

「審査官殿は、引用文献1における、車両10のACCが一旦オフされ、その後ACCがオンされると切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2が本願の検知部に相当するものと認定されております。しかしながら、

引用文献1に記載されているのは、車両10のACCオン情報に基づいてソフトウェアの切替処理を実行することだけ

であります。即ち、

引用文献1は、本願請求項1のように、検知部がエンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態であるか、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)状態であるか、を検知すること、ゲートウェイが車両のパワートレインの駆動力状態の情報を取得し、ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止し、ソフトウェアの更新が完了すると、車両のパワートレインによる駆動力の出力を許可すること、を開示しておりません

。このように、

引用文献1は、本願請求項1の検知部及びゲートウェイを開示しておらず

、本願請求項1と引用文献1とが同一でないことは明らかです。従って、本願請求項1は、引用文献1に基づいても新規性を有しているものと思料致します。」(上記意見書の「(5-2)新規性について」欄)

イ 進歩性に関する主張

(ア)「本願請求項1は、「エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)状態である場合のうち、少なくとも一方の場合」、車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態であるとして、ゲートウェイはソフトウェアの更新処理を許可し、ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止し、ソフトウェアの更新が完了すると、車両のパワートレインによる駆動力の出力を許可します。即ち、

ゲートウェイは、エンジンの停止時(エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態)だけでなく、エンジンがオンであっても、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)状態であれば、ソフトウェアの更新処理を許可します

。これにより、

必ずしもエンジンが完全に停止していなくても、車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態であれば、ソフトウェアの更新処理が実行されるため、ソフトウェア更新処理後に必ずしもエンジンを起動しなおす必要はありません

。また、本願では、

エンジンを完全に停止しない場合でも、ソフトウェアの更新処理実行中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止することにより、安全性を担保しています

。これに対し、引用文献1は、停止されたエンジンが再始動する前に更新ソフトウェアへの切替が行われます(段落[0048])。即ち、引用文献1では、ソフトウェアの更新処理時には必ずエンジンが停止されます。また、

引用文献1では、ACCのオンオフで車両の電源のオンオフを判断し、ソフトウェアの更新処理中は、前記車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止することも開示していません

。従って、本願請求項1と引用文献1とは、ソフトウェアの更新処理を許可する要件、安全性担保の方法が異なります 。」(上記意見書の「(5-3)進歩性について」欄)

(イ)「また、引用文献2は、通信状態の悪い場所でもソフトウェアのアップデートを実現することを目的とするため、エンジンを停止した状態で更新ソフトウェアのインストール及び更新処理を実行します。一方、文献1は、相互に連携する複数の制御装置のソフトウェアの更新処理を効率良く適切に行うことを課題とするものであり(段落[0007])、更新ソフトウェアが第2領域に書き込まれたことを確認してから、ソフトウェアの切替処理(更新処理)を行うものです。即ち、

両者の課題は明らかに異なり、両者を組み合わせる論理付けはありません

。実際、ソフトウェアのダウンロード及びインストールまでは、エンジンを停止せずに行う文献1と、

エンジンを停止した状態で更新ソフトウェアのインストール

及び更新処理

をおこなう文献2

を組み合わせることは不可能です。また、

引用文献2も、ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止することについて、開示していません

。」(上記意見書の「(5-3)進歩性について」欄)

(2)審判請求人の主張の検討

上記(1)の主張について検討する。

ア 上記(1)アの主張について

上記第5の1(3)及び(6)のとおり、引用発明における「車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2」は、引用文献1の「図7に示すフローは、車両10の

エンジン停止中に

実施される。」(引用文献1の段落【0051】)及び「ソフトウェアの切り替え処理は

安全性等を考慮

して

エンジンの停止時に

行われる。」(引用文献1の段落【0055】)なる記載を踏まえると、ソフトウェアの切り替え処理をエンジンの停止中に実施するべく、ソフトウェア更新装置2は、車両10の少なくともエンジンの停止及びエンジンが再始動する前を把握していると理解できることから、本願発明における「車両のパワートレインの駆動力出力状態を検知する検知部」及び「検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得するゲートウェイ」に相当する。

したがって、上記第6の1のとおり、本願発明は引用発明であり、上記(1)アの主張は採用することができない。

また、上記第6の2(1)イのとおり、仮に、引用発明における「車両10のACCが一旦オフされエンジンの停止時に、その後ACCがオンされるとACCオンによって各ECU3がリプログモードで起動し停止されたエンジンが再始動する前に切替え処理を実行するソフトウェア更新装置2」が本願発明における「車両のパワートレインの駆動力出力状態を検知する検知部」及び「検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得するゲートウェイ」に相当するものではないとした場合であっても、引用発明において、本願発明のような「車両のパワートレインの駆動力出力状態を検知する検知部」及び「検知部から車両のパワートレインの駆動力状態を取得するゲートウェイ」を備えるように構成することは当業者が通常の創作能力の発揮により容易になし得るものである。

イ 上記(1)イの主張について

まず、上記第5の1(7)のとおり、引用発明における「車両の電源がオフされエンジンが停止し停止されたエンジンが再始動する前」は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態であることから、本願発明における「エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合のうち」前者の「一方の場合」に相当し、してみると、引用発明における「エンジンの停止時は、車両の電源がオフされエンジンが停止し停止されたエンジンが再始動する前である」ことは、本願発明における「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合のうち、少なくとも一方の場合」に相当することから、本願発明における「エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合のうち」前者の「一方の場合」に相当する場合については本願発明と引用発明において相違するものではない。

次に、上記第6の2(2)において示した本願発明における「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合、もしくは、トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合のうち、少なくとも一方の場合である」において、「少なくとも一方の場合」が「トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合」や、「少なくとも一方の場合」が「車両のパワートレインにより駆動力が出力されない状態は、エンジン回転数が0であってエンジンがオフの状態である場合」及び「トランスミッションがニュートラル(N)またはパーキング(P)である場合」を含む場合については、上記第6の2(2)のとおり、引用発明において、ソフトウェア(ソフトウェア)の切替え処理を行う(更新処理を許可する)車両10のACCがオフされエンジンの停止時(パワートレインにより駆動力が出力されない状態)として、

同様に車両に搭載された機器を動作させるソフトウェアの更新処理を実行するソフトウェア更新装置の技術分野に属し車両に搭載された機器を動作させるソフトウェアの更新処理を実行するという共通の機能を有する

引用文献2記載技術的事項のような車載エンジンの回転数が「0」(エンジン回転数が0)であって車載エンジンの稼働が停止し(エンジンがオフの状態である場合)、もしくは、シフトポジション(トランスミッション)がニュートラル「N」ポジション(ニュートラル(N))またはパーキング「P」ポジション(パーキング(P))にあること(状態である場合)のうち、少なくとも一方の場合とする構成を採用し、上記点に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。

すなわち、上記下線を付したとおり、引用発明において引用文献2記載技術的事項の構成を採用する動機は十分にあるといえることから、上記(1)イ(イ)の主張における「引用文献2は、・・・を目的とするため、・・・一方、文献1は、・・・を課題とするものであり、・・・即ち、両者の課題は明らかに異なり、両者を組み合わせる論理付けはありません。」なる主張は採用することができない。

また、引用文献2には「上記管理センター200との間の通信環境が良好であれば、例えば

車両のキースイッチがオン状態にあるなど、車両の状態が、上記データの書き換えに適した状況になくても、該データを無線通信によって取得し、上記記憶手段に格納する

。」(引用文献2の段落【0043】)と記載されていることから、上記(1)イ(イ)の主張における「ソフトウェアのダウンロード及びインストールまでは、エンジンを停止せずに行う文献1と、

エンジンを停止した状態で更新ソフトウェアのインストール

及び更新処理

をおこなう文献2

を組み合わせることは不可能です。」なる点は採用することができない。

さらに、上記第6の2(1)ウのとおり、引用発明における「ソフトウェアの切替え処理は、停止されたエンジンが再始動する前に行」うことが本願発明における「ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止」することに相当するものではないとした場合について、引用文献1の「図7に示すフローは、車両10の

エンジン停止中に

実施される。」(引用文献1の段落【0051】)及び「ソフトウェアの切り替え処理は

安全性等を考慮

して

エンジンの停止時に

行われる。」(引用文献1の段落【0055】)なる記載を踏まえると、ソフトウェアの切り替え処理をエンジンの停止中に実施するべく、ソフトウェアの切替え処理中は、停止されたエンジンが再始動しているものではないことから、このソフトウェアの切替え処理中において停止されたエンジンが再始動していない状態を確実に維持することが実質的に示唆されていると理解でき、かかる示唆のもとで、引用発明のソフトウェアの切替え処理中において停止されたエンジンが再始動していない状態を確実に維持するべく、本願発明のように「ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止」するように構成することは当業者が通常の創作能力の発揮により容易になし得るものである。さらに、引用文献2において「こうした開始判定の結果、当

該車両の状態が上記書き換えに適した状態にあると判定された場合

(ステップS415)、同制御部141は、次にステップS416の処理として、

ユーザに対し、車載エンジンの稼働の禁止を要求する通知を行う

。」(引用文献2の段落【0102】)及び「(8)

エンジン制御装置110内のデータの書き換えの実行を指示する操作が行われたとき

車載エンジンの稼働の禁止を要求する通知をユーザに対して行う

ようにした。」(引用文献2の段落【0117】)なる記載を踏まえてみても、引用発明において、本願発明のように「ソフトウェアの更新処理中は、車両のパワートレインにより駆動力が出力されることを禁止」するように構成することは当業者が通常の創作能力の発揮により容易になし得るものである。

したがって、上記第6の2のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、上記(1)イの主張は採用することができない。

2 小括

したがって、審判請求人の主張はいずれも採用することができず、上記第6のとおり、本願発明は引用発明であり、また、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第8 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明である。

また、本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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