結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024015753 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、2018年(平成30年)8月3日(優先権主張 平成29年8月21日)を国際出願日とする特願2019-538040号の一部を令和5年1月19日に新たな特許出願としたものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年 2月17日 手続補正書及び上申書の提出
同年12月26日付け 拒絶理由通知
令和6年 6月25日付け 拒絶査定
同年10月 1日 手続補正書(以下、同手続補正書によりなされた補正を、「本件補正」という。)及び審判請求書の提出
令和7年 1月24日付け 前置報告書
同年 5月15日 上申書(前置報告書への反論)の提出
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
本件補正は、特許請求の範囲の請求項2についての補正を含むものであって、本件補正前後の特許請求の範囲の請求項2の記載は、次のとおりである。
(1)本件補正後の請求項2の記載
「【請求項2】
気体分離膜を選択的に透過させることによって、混合気体中の特定の気体(A)の濃度を低減させるために用いられる、気体分離膜であって、
前記混合気体中の前記気体(A)の濃度が、10000質量ppm以下であり、
前記気体(A)が二酸化炭素であり、
前記気体分離膜による前記気体(A)の選択的透過が、前記気体分離膜の両面での圧力差が1気圧以下の条件で行われ、
膜厚1μm以下の、ポリジメチルシロキサンからなる膜であり、
1nm以上の開口径を有する貫通孔を有さ
ず
、
前記気体分離膜と、有機材料の多孔質からなる支持膜とからなる積層体を構成する、前記
気体分離膜。」(下線は補正箇所である。)
(2)本件補正前の請求項2の記載
「【請求項2】
気体分離膜を選択的に透過させることによって、混合気体中の特定の気体(A)の濃度を低減させるために用いられる、気体分離膜であって、
前記混合気体中の前記気体(A)の濃度が、10000質量ppm以下であり、
前記気体(A)が二酸化炭素であり、
前記気体分離膜による前記気体(A)の選択的透過が、前記気体分離膜の両面での圧力差が1気圧以下の条件で行われ、
膜厚1μm以下の、ポリジメチルシロキサンからなる膜であり、
1nm以上の開口径を有する貫通孔を有さない、気体分離膜。」
(1)補正の目的について
本件補正は、請求項2において、本件補正前の「気体分離膜」を、「気体分離膜と、有機材料の多孔質からなる支持膜とからなる積層体を構成する」「気体分離膜」に限定するものであるから、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
(2)独立特許要件について
上記(1)のとおり、本件補正に係る請求項2の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、当該補正が、適法になされたものであるというためには、さらに同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合することが必要である。
そこで、上記1(1)で記載した本件補正後の請求項2に係る発明(以下「補正発明」という。)が、同条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
ア 引用文献に記載された事項
本願出願(優先日)前に頒布され、下記第3の2で述べる原査定の拒絶の理由(令和5年12月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由)において引用された引用文献1(特開2004-203367号公報)、さらに、技術常識若しくは周知事項として引用する、前置報告において引用された引用文献2(特開2015-160159号公報)、引用文献3(特開2013-75264号公報)、及び当審で技術常識若しくは周知事項として引用する、引用文献4(相良 紘 著「そこが知りたい化学の話「分離技術」」日刊工業新聞社、2008年6月28日、110~114頁、164~165頁)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付したものであり、「・・・」は、記載の省略を示す。
(ア)引用文献1に記載された事項
a 「【0002】
【従来の技術】
例えば自動車は、車室外部から空気を導入してこれを加熱あるいは冷却して車室内に供給するする外気導入モードと、車室内の空気を循環しながら空気を加熱あるいは冷却する内気循環モードとを有するエアーコンディショナを備えている。そして近年、車室内へ侵入する音の遮断性能を向上させるため、車両の組み付け精度を上げる等の対策が施され、車室の密閉度がますます高まるようになってきた。しかし、このように車室の密閉度が高まると、多くの乗員が長時間の乗車をした際に、酸素濃度の低下や二酸化炭素濃度の上昇が起こり、乗員に頭痛や気分の不快をもたらす恐れがあった。このため、適度に外気導入モードを利用して外気を車室内に導入する必要があった。
【0003】
しかし、都会や幹線道路等は大気汚染がひどく、外気をそのまま車室内に導入することは乗員の健康を考えると大きな問題があった。そこで、大気中の有害ガスや粉塵等の汚染物質を除去するための様々なフィルタが開発され、このようなフィルタを外気導入のための取り入れ口に設置して、大気中の汚染物質を除去するようにしている自動車もある(方式1)。
【0004】
また、特許文献1に記載されているように外気の汚れを検出するガス検出手段を設け、このガス検出手段によって外気が汚れていないと判断されたときのみ、内気循環モードから外気導入モードへと自動切り替えを行う自動車用空調装置が考えられている(方式2)。
・・・
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した方式1の方法は、現実には性能的に十分なフィルタがなく、汚染物質の車室内への侵入を十分に防ぐことができなかった。一方、上述した方式2の方法は、ガス検出手段を実現するセンサ及び制御装置や、内気循環モードから外気導入モードへ切り替えを行うアクチュエータ等にコストがかかるといった問題があった。また、都会や幹線道路等の大気汚染の著しい地域を長く走行しているときはなかなか外気導入モードに切り替わらず、長時間換気が行われない状態が続くといった問題もあった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、汚染物質の空調対象空間内への侵入をより防止し、その空調対象空間にいる人に対して快適さを提供する空調システムを提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の空調システムは、空調対象空間を構成し、気体を透過させない壁と、その壁の一部を置き換えて設置された、酸素及び二酸化炭素を優位に透過させる透過膜とを備える。ここで言う、「気体を透過させない壁」というのは、気体よりも分子構造が大きい粉塵等はもちろん通過させない(以下同様)。また、「酸素及び二酸化炭素を優位に透過させる透過膜」というのは、理想的には酸素及び二酸化炭素のみを透過させる透過膜であるとよい。また、透過膜は、酸素を優位に透過するものと二酸化炭素を優位に透過するものとを別体に構成してもよい。」
b 「【0050】
一方、図1(a)に示す実施例の車両10は、従来の車両30の床下通気口35やトランク通気口33のような通気口を備えない。また、図示しないエアコンは、内気循環モードのみを備える。
車両10の車室19は、
車室壁11と
透過膜13
と圧力調整機構17と
を備え
、透過膜13及び圧力調整機構17以外では気体の出入りは起こらない準密閉空間となっている。
【0051】
車室壁11は、鉄、アルミ、ガラス等の気体を透過させない材質によって構成されている。また、
透過膜13は、酸素と二酸化炭素を優位に透過させる性質を持ち
、車室19の前席の足下、且つエアーコンディショナの送風経路内に設置されている。
【0052】
ここで、透過膜13について図2の斜視図を用いて説明する。
透過膜13は、平面形状をしており、その片面に密着する同じく平面状の支持体21によって支持されている
。尚、支持体21は透過膜13の片面に完全に密着するようになっていてもよいし、透過膜13の一部だけに密着して透過膜13を支持するようになっていてもよい(例えば外周のみを支持する等)。透過膜13は、高分子を含む有機材料やセラミック等から構成され、その形状は平膜、中空膜、袋状膜等よりなる。また、
支持体21は、セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成される
。
【0053】
このように透過膜13が支持体21によって支持されているため、
透過膜13を薄くして透過する気体量を増やしながら、強度も確保することができる
。
ここで、透過膜13の厚さや面積等について言及しておく。車両10の乗車定員を5人と仮定すると、5人が排出する二酸化炭素は100[l/h]と想定される(宇宙船内の環境基準による)。すなわち、1秒あたり約27.8[ml]である。また、
濃度の上限としては1000[ppm]が建築基準法に定められている
。車室19の外部(すなわち空気中)の二酸化炭素濃度は通常300[ppm]程度であるため、
車室19の二酸化炭素濃度が上限の1000[ppm]に達した場合
、車室19とその外部との二酸化炭素の濃度差は700[ppm]程度と計算できる。すなわち分圧差は76×700×10
-8
=0.0532[cmHg]である。
【0054】
透過膜13の材料として、PDMS(ポリジメチルシロキサン:透過係数=3200×10
-10
[cm
3
(STP)cm/cm
2
・s・cmHg])を用いた場合、通常の作成方法で達成しうる膜厚は0.1[μm]程度である
。したがって、透過膜13の面積は、
20
113
0001435719000001.jpg
すなわち、約130[cm]四方の大きさPDMS膜が必要となる。
・・・
【0058】
次に、透過膜13の設置について説明する。図3は、
エアーコンディショナの
送風ファン23付近を表す断面図である。送風ファン23は送風経路25上に設置されている。また、
送風経路25を構成する
壁の一部には、
支持体21に支持された透過膜13が設置され
、これらが送風経路25の
壁の一部を形成し
ている。尚、
支持体21に支持された透過膜13の送風経路25と反対側は外気に接するように
なっている。
【0059】
次に、圧力調整機構17について説明する。図4は、圧力調整機構17及びその周辺の断面図である。圧力調整機構17は、内部に緩衝空間17aを有する箱形状となっており、車室壁11に設けられた孔11aに、圧力調整機構17の半分を車室19に突出させ、残り半分を車室19の外に突出させるように設置されている。圧力調整機構17の車室19に突出している部分の壁の一部には、孔17bが設けられており、緩衝空間17a内に設けられた扉17cによって塞がれている。この扉17cは付勢力によって孔17bを塞ぐようになっており、車室19側から所定の圧力が加わると緩衝空間17a側に開くようになっている。また、圧力調整機構17の、車室19の外に突出している部分の壁の一部にも、孔17dが設けられており、緩衝空間17a内に設けられた扉17eによって塞がれている。この扉17eは付勢力によって孔17dを塞ぐようになっており、車室19の外側から所定の圧力が加わると緩衝空間17a側に開くようになっている。尚、圧力調整機構17は、気体を透過させない性質を持つ材料によって構成されている。
【0060】
このように圧力調整機構17が構成されているため、例えばドアが閉められたときのように瞬間的に車室19の気圧が上昇した場合、車室19の空気が扉17cを押し開けて緩衝空間17aに流れ込み、その流れ込んだ空気が緩衝空間17aに元々存在した空気を扉17eの隙間から車室19の外に押し出す。一方、例えばドアが開かれたときのように瞬間的に車室19の気圧が低下した場合は、車室19の外の空気が扉17eを押し開けて緩衝空間17aに流れ込み、その流れ込んだ空気が緩衝空間17aに元々存在した空気を扉17cの隙間から車室19に押し出す。したがって、車室19の外から車室19に汚染した空気が流れ込むことを抑えながら、
車室19の気圧と車室19の外の気圧とを一致させることができる
。
【0061】
これまで説明したように、実施例の車両10によれば、例えば都会や幹線道路のような大気汚染が著しいところを走行しているときであっても、有害気体や有害微粒子の車室19への侵入を防ぐことができる。そして、このようなことを実現させながら、
酸素は車室19へ供給され、二酸化炭素は車室19の外に排出される
ため、車室19にいる人は快適である。また、従来と比べて車室19を出入りする気体量が少ないため冷暖房効率も高い。また、密閉性も高いため、静粛性の向上に貢献する。」
c 「【図1】
70
100
0001435719000002.jpg
【図2】
51
63
0001435719000003.jpg
【図3】
70
60
0001435719000004.jpg
【図4】
53
68
0001435719000005.jpg
」
(イ)引用文献2に記載された事項
a 「【請求項1】
多孔質支持体と、該多孔質支持体上に設けられたポリマー層と、該ポリマー層上に設けられたゲル層と、を備え
、
前記ポリマー層は、ポリジメチルシロキサン、ポリトリメチルシリルプロピン、ポリジフェニルアセチレン、パーフルオロポリマー及びポリエチレンオキシドからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有し、
前記ゲル層は、ポリエチレングリコール骨格を有する架橋ポリマーと、イオン液体、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド及び炭素数が15以下のアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の液体と、を含有する、
気体分離膜
。」
b 「【0002】
気体分離膜による気体の分離・濃縮は、蒸留法や高圧吸着法などと比べてエネルギー効率に優れた省エネルギーで安全性の高い方法であり、近年再び注目を集めている。特に、気体分離膜の中でも、二酸化炭素を選択的に分離する分離膜が精力的に検討されている。この技術は、油田のオフガス、ゴミ焼却や火力発電の排ガス、天然ガス等からの二酸化炭素の分離回収に利用することができる(非特許文献1参照)。
【0003】
従来、気体分離膜として高分子素材の検討がなされてきた。高分子素材には素材特有の気体透過性があるため、高分子素材から構成された膜によって気体成分を分離できることが知られている。二酸化炭素の透過性を選択的に向上させるには、溶解・拡散機構に基づいて、高分子膜に対する二酸化炭素の溶解度係数もしくは拡散係数を向上させればよい。しかし、一般的な高分子膜は選択性を上げると透過性が減少するというトレードオフの関係が知られており、更なる高性能な膜の開発が望まれている(非特許文献2参照)。
・・・
【0005】
また、液体の代わりに液体成分を含有するゲル状組成物を分離層として用いることで、耐圧性や長期安定性を改善する検討が行われている(非特許文献5)。
ゲル状組成物を分離層として高気体透過性能の気体分離膜を作製する
場合、ゲル状組成物に含まれる液体の液体含有率を高くする必要がある。ゲル状組成物の液体含有率を高くすることで、高気体透過性能である液体の影響が大きくなり、高気体透過性能の気体分離膜を作製することができる。
【0006】
さらに、高強度なゲル状組成物の研究が発表されている(特許文献5、非特許文献6参照)。例えば、特許文献5及び非特許文献6では、イオン液体を含有した高強度ゲルの提案がされている。特許文献5及び非特許文献6に記載のゲルは、末端官能基がアミノ基の4官能ポリエチレングリコールと末端官能基がN-ヒドロキシ-スクシンイミジル基の4官能ポリエチレングリコールとを反応させることで製造される。これらの2種類の多官能ポリエチレングリコールの側鎖の長さが同じである点と、分子内の官能基同士が相互に反応しないため分子内反応が生じない点から、均一な架橋構造のゲル状組成物が得られ高強度になると推測される。ゲル状組成物を分離層とした気体分離膜を作製する場合、透過性の指標である透過度(単位:cm
3
(STP)/cm
2
・s・cmHg)を考慮する必要がある。透過度は膜厚と反比例するため、高透過度の気体分離膜を作製するためには分離層の薄膜化が必須となる。また、
薄膜化する際に薄膜にピンホール等の欠陥が存在すると気体分離膜の選択性が低下するため、薄膜は無欠陥である必要がある
。
・・・
【0012】
本発明は、高い気体透過性能と薄膜化とを両立した気体分離膜及び製造方法を提供することを目的とする。」
c 「【0031】
本実施形態においては、図1に示すように、気体分離膜1は、多孔質支持体2と、多孔質支持体2上に設けられたポリマー層3と、ポリマー層3上に設けられたゲル層4と、を備える。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0032】
[多孔質支持体]
多孔質支持体は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂多孔質膜
;不織布と多孔質膜の複合積層体などが好ましい。多孔質膜の好ましい例は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース、ポリイミドである。不織布の好ましい例は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、アクリル、ビニロン等の樹脂で作製された不織布である。また、多孔質支持体の形状としては、平膜状、管状、中空糸状などいずれの形状もとることができる。
・・・
【0035】
[ポリマー層]
ポリマー層は、ポリジメチルシロキサン、ポリトリメチルシリルプロピン、ポリジフェニルアセチレン、パーフルオロポリマー及びポリエチレンオキシドからなる群より選択される少なくとも一種のポリマーを含有する。
これらのポリマーは高い二酸化炭素透過係数を有する
ため、ゲル層の下地であるポリマー層の透過抵抗が小さくなり、高気体透過性かつ高気体分離性のゲル層の性能を十分に活かした気体分離膜を提供することができる。高い二酸化炭素透過係数を有する観点から、ポリジメチルシロキサン又はパーフルオロポリマーが好ましい。ポリジメチルシロキサンを使用する場合、ポリジメチルシロキサンを架橋させる触媒、架橋剤、充填材などの添加剤、分子鎖両末端にシラノール基を有するポリオルガノポリシロキサンが予め混合されている市販の室温硬化型(RTV)シリコーンゴム組成物を利用してもよい。このようなシリコーンゴム組成物の具体的な例としては、信越化学工業(株)製のKE44(商品名)、KE45(商品名)、KE441(商品名)、KE445(商品名);モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSE382(商品名);東レ・ダウコーニング(株)製のSH780(商品名)、SE5007(商品名)などを挙げることができる。パーフルオロポリマーの具体的な例としては、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のTeflonAF1600(商品名、登録商標)、TeflonAF2400(商品名、登録商標)、旭硝子社(株)製のCytop(商品名)が挙げられる。
【0036】
[ゲル層]
本実施形態のゲル層は、ポリエチレングリコール骨格を有する架橋ポリマーと、イオン液体、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド及び炭素数が15以下のアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の液体と、を含有する。なお、本明細書中においてポリエチレングリコール骨格とは、下記一般式(A)で表される骨格を意味し、ポリオキシエチレン骨格又はポリエチレンオキサイド骨格ともいう。ただし、式(A)中、pは自然数である。
【0037】
【化8】
17
106
0001435719000006.jpg
」
d 「【図1】
72
109
0001435719000007.jpg
」
(ウ)引用文献3に記載された事項
a 「【請求項1】
支持体と該支持体上に形成された樹脂からなる分離層とを具備するガス分離膜であって、前記分離層は前記支持体とは反対側に親水性の改質処理面を有し、該親水性改質処理面を構成する層の膜厚が0.1μm以下であり、前記親水性改質処理面の水を用いた表面接触角が60°以下である記載のガス分離膜
。」
b 「【0005】
本発明者らは、特に
二酸化炭素をメタン等から分離する際の技術課題に着目
し、さまざまなガス分離特性や膜の物性変化、分離挙動について調査分析を行い、素材等に関する研究を行った。すると、ガス分離膜の寿命を左右する因子として、水分ではなく、むしろこの系の混合ガスにおいては、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン系有機成分)が関与していることを突き止めた。特に、ガス分離膜として溶解・拡散機構を利用する膜素材においてはその影響が大きく、特定の態様で分離膜表面を親水性に改質することで、高いガス分離特性を維持したまま、膜寿命を長期化することができることを確認した。
【0006】
上記の点を考慮し、本発明は、優れたガス透過性を有しながら、高いガス分離選択性をも実現し、さらにBTXが混入している混合ガスの分離に対して膜寿命が長期化されたガス分離膜、その製造方法、それを用いたガス分離膜モジュールの提供を目的とする。」
c 「【0011】
[複合膜の構成]
図1は、本発明の好ましい実施形態であるガス分離複合膜10を模式的に示す断面図である。1はガス分離層、2は多孔質層からなる支持層である。図2は、本発明の好ましい実施形態であるガス分離複合膜20を模式的に示す断面図である。この実施形態では、ガス分離層1及び多孔質層2に加え、支持層として不織布層3が追加されている。このような形態の複合膜は、多孔質性の支持体の少なくとも表面に、上記のガス分離層をなす塗布液(ドープ)を塗布し(本明細書において塗布とは浸漬により表面に付着される態様を含む意味である。)、任意の方法で硬化させることが好ましい。なお、支持層上側とは、支持層とガス分離層との間に他の層が介在してもよい意味である。なお、上下の表現については、特に断らない限り、分離対象となるガスが供給される方向を「上」とし、分離されたガスが出される方向を「下」とする。
・・・
【0035】
[支持層]
支持層に好ましく適用される多孔質支持体は
、機械的強度及び高気体透過性の付与に合致する目的のものであれば、特に限定されるものではなく有機、無機どちらの素材であっても構わないが、
好ましくは有機高分子の多孔質膜であり
、その厚さは1~3000μm、好ましくは5~500μmであり、より好ましくは5~300μmである。この多孔質膜の細孔構造は、通常平均細孔直径が10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下であり、空孔率は好ましくは20~90%であり、より好ましくは30~90%である。また、その気体透過率は二酸化炭素透過速度で3×10
-5
cm
3
(STP)/cm・sec・cmHg以上であることが好ましい。
多孔質膜の素材としては、従来公知の高分子、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂
を挙げることができる。なかでも、高い膜強度、高いガス透過性と分離選択性とを同時に達成する観点から、支持層が、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシドからなるものであることが好ましい。多孔質膜の形状としては、平板状、スパイラル状、管状、中空糸状などいずれの形状をとることができる。
・・・
【0038】
[分離層の構成材料]
本発明のガス分離膜において、分離層は樹脂からなり、これに適用される材料は、以下にあげられるが、これらに限定されるわけではない。具体的には、ポリイミド類、ポリアミド類、セルロース類、ポリエチレングリコール類であることが好ましい。
【0039】
また、より具体的には、Huntsman Advanced Materials社よりMatrimid(登録商標)の商標で販売されているMatrimid(Matrimid(登録商標)5218は、Matrimid(登録商標)の商標で販売されている特定のポリイミドポリマーを指す)およびHP Polymers GmbH社よりそれぞれ商品名P84および商品名P84HTで販売されているP84またはP84HT等のポリイミド類、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース類、ポリジメチルシロキサン類、ポリエチレングリコール#200ジアクリレート(新中村化学社製)の重合したポリマーなどのポリエチレングリコール類、また、特表2010-513021に記載のポリマーなどを選択することができる。」
d 「【図1】
37
144
0001435719000008.jpg
」
(エ)引用文献4に記載された事項
a 「2.5.1 分離法を概観する
・・・
膜分離は、基本的には分子(微粒子も含む)の大きさの違いや膜に対する親和性(相互作用)の違いを識別して、分子をより分ける方法である。さきに述べたろ過膜(精密ろ過膜、限外ろ過膜)、あとで述べる気体分離膜も含めて、分離膜と分離の対象を整理しておく(図2.63)。
・・・
2.5.2 膜透過のメカニズム
液体混合物の分離に用いられる膜は主に非多孔質膜である。非多孔質膜は孔の径が1nm以下のもはや孔とは呼べないような分子のすき間(高分子の鎖の間隙)を有するような膜である。
79
111
0001435719000009.jpg
・・・
非多孔質膜では、分子は多孔質膜の場合のように、直接分子のすき間を移動していくことはできない。まず膜の界面で膜に取り込まれ(溶解し)、ついで、これによって生じた濃度勾配を駆動力として、分子のすき間を拡散していく。このような分子の膜透過を溶解・拡散機構と呼んでいる(図2.65)。
・・・
95
77
0001435719000010.jpg
」(110頁12行~114頁)
b 「3.2.1 気体透過のメカニズム
各種分離膜の構造と膜透過のメカニズムについては、すでに第2章で述べた。気体分離膜においても、その構造とメカニズムはそれほど変わるものではない。
膜は多孔質膜と非多孔質膜に大別できるが、気体混合物の分離に用いられる膜は主として非多孔質膜である。非多孔質膜による気体透過のメカニズムは、さきに述べた溶解・拡散によって説明される。
すなわち、気体分子はまず膜の界面で膜に取り込まれる。ついで、取り込まれた分子は膜の界面に生じた濃度勾配(濃度分極)を駆動力として、膜をつくっている高分子のすき間を拡散していく。
膜に取り込まれる気体分子の量は、水に溶ける気体の量が気体の溶解度係数(ヘンリー定数の逆数)に従って決まるように、気体分子と膜との親和性によって決まる。また、気体分子が膜の中を拡散して反対側に達する(透過する)速度は、気体分子の種類と膜材(膜をつくっている物質)の種類によって異なる。その違いは、分子の大きさや形状ならびに膜材に対する化学的親和性による。
・・・
53
117
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」(164頁1行~165頁)
イ 引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4から認定できる技術常識若しくは周知事項
(ア)引用文献1に記載された発明
引用文献1の上記ア(ア)bの【0050】の「一方、図1(a)に示す実施例の車両10は、従来の車両30の床下通気口35やトランク通気口33のような通気口を備えない。また、図示しないエアコンは、内気循環モードのみを備える。
車両10の車室19は、
車室壁11と
透過膜13
と圧力調整機構17と
を備え
、透過膜13及び圧力調整機構17以外では気体の出入りは起こらない準密閉空間となっている。」との記載、同【0053】の「車両10の乗車定員を5人と仮定すると、5人が排出する二酸化炭素は100[l/h]と想定される(宇宙船内の環境基準による)。すなわち、1秒あたり約27.8[ml]である。また、
濃度の上限としては1000[ppm]が建築基準法に定められている
。車室19の外部(すなわち空気中)の二酸化炭素濃度は通常300[ppm]程度であるため、
車室19の二酸化炭素濃度が上限の1000[ppm]に達した場合
、車室19とその外部との二酸化炭素の濃度差は700[ppm]程度と計算できる。すなわち分圧差は76×700×10
-8
=0.0532[cmHg]である。」との記載、及び同【0060】の「このように圧力調整機構17が構成されているため・・・車室19の外から車室19に汚染した空気が流れ込むことを抑えながら、
車室19の気圧と車室19の外の気圧とを一致させることができる
。」との記載によれば、車室の気圧と車室の外の気圧とを一致させることができ、車室の二酸化炭素濃度の上限が1000[ppm]とされている車両の車室に備えられた透過膜が記載されているところ、同【0058】の「図3は、
エアーコンディショナの
送風ファン23付近を表す断面図である。送風ファン23は送風経路25上に設置されている。また、
送風経路25を構成する
壁の一部には、
支持体21に支持された透過膜13が設置され
、これらが送風経路25の
壁の一部を形成し
ている。尚、
支持体21に支持された透過膜13の送風経路25と反対側は外気に接するように
なっている。」との記載によれば、透過膜は、エアーコンディショナの送風経路に、送風経路と反対側が外気に接するように、壁の一部を形成するように設置されるものである。
そして、同【0051】の「また、
透過膜13は、酸素と二酸化炭素を優位に透過させる性質を持ち
、車室19の前席の足下、且つエアーコンディショナの送風経路内に設置されている。」との記載、及び同【0061】の「これまで説明したように、実施例の車両10によれば・・・そして、このようなことを実現させながら、
酸素は車室19へ供給され、二酸化炭素は車室19の外に排出される
ため、車室19にいる人は快適である。」との記載によれば、透過膜は、酸素と二酸化炭素を優位に透過させる性質を持ち、酸素を車室へ供給し、二酸化炭素は車室の外に排出するものである。
また、同【0052】の「ここで、透過膜13について図2の斜視図を用いて説明する。
透過膜13は、平面形状をしており、その片面に密着する同じく平面状の支持体21によって支持されている
。・・・透過膜13は、高分子を含む有機材料やセラミック等から構成され、その形状は平膜、中空膜、袋状膜等よりなる。また、
支持体21は、セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成される
。」との記載によれば、透過膜は、平面形状をしており、その片面に密着する同じく平面状の支持体によって支持され、支持体は、セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成され、同【0053】の「このように透過膜13が支持体21によって支持されているため、
透過膜13を薄くして透過する気体量を増やしながら、強度も確保することができる
。」との記載によれば、透過膜は薄くするものであるところ、同【0054】の「
透過膜13の材料として、PDMS(ポリジメチルシロキサン:透過係数=3200×10
-10
[cm
3
(STP)cm/cm
2
・s・cmHg])を用いた場合、通常の作成方法で達成しうる膜厚は0.1[μm]程度である
。」との記載によれば、透過膜が、PDMS(ポリジメチルシロキサン)から構成され、膜厚が0.1[μm]程度である場合を把握できる。
以上の引用文献1における記載事項をまとめると、引用文献1には、透過膜について、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「車室の気圧と車室の外の気圧とを一致させることができ、車室の二酸化炭素濃度の上限が1000[ppm]とされている車両の車室に備えられた透過膜であって、
該透過膜は、エアーコンディショナの送風経路に、送風経路と反対側が外気に接するように、壁の一部を形成するように設置されるものであり、
酸素と二酸化炭素を優位に透過させる性質を持ち、酸素を車室へ供給し、二酸化炭素は車室の外に排出するものであり、
平面形状をしており、その片面に密着する同じく平面状の支持体によって支持され、
上記支持体は、セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成され
上記透過膜は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)から構成され、膜厚が0.1[μm]程度であるものである、透過膜。」
(イ)引用文献2、3から認定できる技術常識若しくは周知事項
a 気体分離膜に用いられる支持体について
(a)引用文献2には、多孔質支持体と、該多孔質支持体上に設けられたポリマー層と、該ポリマー層上に設けられたゲル層と、を備える気体分離膜(上記ア(イ)a)において、前記多孔質支持体を、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂多孔質膜とすること(同cの【0032】)、前記ポリマー層は、高い二酸化炭素透過係数を有するポリマーを含有すること(同cの【0035】)が記載されている。
ここで、同bの【0005】の「また、液体の代わりに液体成分を含有するゲル状組成物を分離層として用いることで、耐圧性や長期安定性を改善する検討が行われている(非特許文献5)。
ゲル状組成物を分離層として高気体透過性能の気体分離膜を作製する
場合、ゲル状組成物に含まれる液体の液体含有率を高くする必要がある。」との記載によれば、上記ポリマー層上に設けられたゲル層は、(二酸化炭素)分離層であるといえると共に、ポリマー層も、上述のとおり、高い二酸化炭素透過係数を有するポリマーを含有するものであるから、ポリマー層も、二酸化炭素分離層であるといえる。
そうすると、ポリマー層とゲル層は合わせて二酸化炭素分離層であると把握できるから、引用文献2には、「多孔質支持体と、該多孔質支持体上に設けられたポリマー層と、該ポリマー層上に設けられたゲル層と、を備え、前記ポリマー層と前記ゲル層は合わせて二酸化炭素分離層を構成する気体分離膜において、前記多孔質支持体を、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂多孔質膜とすること」が記載されているといえる。
(b)引用文献3には、支持体と該支持体上に形成された樹脂からなる分離層とを具備するガス分離膜であって、前記分離層は前記支持体とは反対側に親水性の改質処理面を有し、該親水性改質処理面を構成する層の膜厚が0.1μm以下であり、前記親水性改質処理面の水を用いた表面接触角が60°以下であるガス分離膜(上記ア(ウ)a)において、上記支持体(層)を、好ましくは有機高分子の多孔質膜であって、従来公知の高分子、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂を素材とする多孔質膜とすること(同cの【0035】)が記載されている。
ここで、同bの【0005】の「本発明者らは、特に
二酸化炭素をメタン等から分離する際の技術課題に着目
し、さまざまなガス分離特性や膜の物性変化、分離挙動について調査分析を行い、素材等に関する研究を行った。」との記載によれば、上記「分離層」は、二酸化炭素分離層であるといえる。
そうすると、引用文献3には、「支持体と該支持体上に形成された樹脂からなる二酸化炭素分離層とを具備するガス分離膜であって、前記分離層は前記支持体とは反対側に親水性の改質処理面を有し、該親水性改質処理面を構成する層の膜厚が0.1μm以下であり、前記親水性改質処理面の水を用いた表面接触角が60°以下であるガス分離膜において、上記支持体(層)を、好ましくは有機高分子の多孔質膜であって、従来公知の高分子、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアラミド等の各種樹脂を素材とする多孔質膜とすること」が記載されているといえる。
(c)ここで、気体分離膜(ガス分離膜)に用いられる支持層に着目すると、上記(a)及び(b)で述べた引用文献2、3から以下の技術常識若しくは周知事項を把握できるといえる。
「支持体と該支持体上に形成された二酸化炭素分離層とを具備するガス分離膜において、上記支持体を、樹脂多孔質膜とすること。」
b 気体分離膜について
引用文献2の上記ア(イ)bの【0006】には、「透過度は膜厚と反比例するため、高透過度の気体分離膜を作製するためには分離層の薄膜化が必須となる。また、
薄膜化する際に薄膜にピンホール等の欠陥が存在すると気体分離膜の選択性が低下するため、薄膜は無欠陥である必要がある
。」との記載がある。
この記載から、気体分離膜に関する以下の技術常識若しくは周知事項を把握できるといえる。
「気体分離膜にピンホール(貫通孔)があっては、気体分離膜の選択性が低下するため、気体分離膜は無欠陥である必要があること。」
(ウ)引用文献4から認定できる技術常識若しくは周知事項
引用文献4の上記ア(エ)bの「膜は多孔質膜と非多孔質膜に大別できるが、気体混合物の分離に用いられる膜は主として非多孔質膜である。非多孔質膜による気体透過のメカニズムは、さきに述べた溶解・拡散によって説明される。
すなわち、気体分子はまず膜の界面で膜に取り込まれる。ついで、取り込まれた分子は膜の界面に生じた濃度勾配(濃度分極)を駆動力として、膜をつくっている高分子のすき間を拡散していく。」との記載によれば、気体混合物の分離に用いられる膜は主として非多孔質膜であり、非多孔質膜による気体透過のメカニズムは、溶解・拡散によるものであり、気体分子はまず膜の界面で膜に取り込まれ、取り込まれた分子は膜の界面に生じた濃度勾配(濃度分極)を駆動力として、膜をつくっている高分子のすき間を拡散していくことが理解できる。そして、このメカニズムによれば、膜に取り込まれる気体分子の量は、気体分子と膜との親和性等によって決まり、同bの表3.1には、気体分子と膜との組み合わせとして、例えば、CO
2
(二酸化炭素)とポリジメチルシロキサンの組み合わせが記載されている。
また、同aの「液体混合物の分離に用いられる膜は主に非多孔質膜である。非多孔質膜は孔の径が1nm以下のもはや孔とは呼べないような分子のすき間(高分子の鎖の間隙)を有するような膜である。」との記載によれば、非多孔質膜における分子のすき間は、孔の径が1nm以下のもはや孔とは呼べないようなものであることが理解できる。
以上の記載をまとめると、引用文献4から、以下の技術常識若しくは周知事項が把握できるといえる。
「二酸化炭素を含むもの等、気体混合物の分離に用いられるポリジメチルシロキサン等の膜は非多孔質膜であり、非多孔質膜による気体透過のメカニズムは、溶解・拡散によるものであり、気体分子はまず膜の界面で膜に取り込まれ、取り込まれた分子は膜の界面に生じた濃度勾配(濃度分極)を駆動力として、膜をつくっている高分子の孔の径が1nm以下のもはや孔とは呼べないような、すき間を拡散していくこと。」
ウ 対比・判断
(ア)補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「透過膜」は、「酸素と二酸化炭素を優位に透過させる性質を持ち、酸素を車室へ供給し、二酸化炭素は車室の外に排出するものであ」るところ、引用発明の透過膜が、「二酸化炭素を優位に透過させる」ことは、補正発明の「二酸化炭素であ」る「特定の気体(A)」を「選択的に透過させる」ことに相当し、引用発明において、「二酸化炭素は車室の外に排出する」ということは、車室内の空気(混合気体)から、二酸化炭素を分離し、車室内の二酸化炭素の濃度を低減することであるといえる。
そうすると、引用発明の、車室内の空気(混合気体)から、二酸化炭素を分離する「透過膜」は、補正発明の「気体分離膜」に相当し、引用発明の「酸素と二酸化炭素を優位に透過させる性質を持ち、酸素を車室へ供給し、二酸化炭素は車室の外に排出するものであ」る「透過膜」は、補正発明の「気体分離膜を選択的に透過させることによって、混合気体中の特定の気体(A)の濃度を低減させるために用いられる、気体分離膜であって」、「前記気体(A)が二酸化炭素であ」る、「気体分離膜」に相当する。
b 引用発明において、車室の二酸化炭素濃度の上限である1000[ppm]は、補正発明における、気体(A)の濃度の範囲である「10000質量ppm以下」に含まれるものであるから、引用発明において、「車室の二酸化炭素濃度の上限が1000[ppm]とされている」ことは、補正発明において、「前記混合気体中の前記気体(A)の濃度が、10000質量ppm以下であ」ることに相当する。
c 引用発明の「透過膜」は、「エアーコンディショナの送風経路に、送風経路と反対側が外気に接するように、壁の一部を形成するように設置されるものであ」るところ、エアーコンディショナの送風経路は車室に連通し車室とほぼ同じ気圧であるといえ、「外気」は、「車室の外」に対応するものである。そして、引用発明は、「車室の気圧と車室の外の気圧とを一致させる」ものであるから、透過膜の両面での圧力差は無く、補正発明の「気体分離膜の両面での圧力差が1気圧以下の条件」を満たすものである。そして、この状態で引用発明の「透過膜」は、「二酸化炭素を優位に透過させ」ている。
そうすると、引用発明において、「エアーコンディショナの送風経路に、送風経路と反対側が外気に接するように、壁の一部を形成するように設置され」る「透過膜」において、「二酸化炭素を優位に透過させる」ことが、「車室の気圧と車室の外の気圧とを一致させる」状態で行われることは、補正発明において、「前記気体分離膜による前記気体(A)の選択的透過が、前記気体分離膜の両面での圧力差が1気圧以下の条件で行われ」ることに相当する。
d 引用発明の「透過膜」の「膜厚が0.1[μm]程度である」ことは、補正発明の「膜厚1μm以下」との条件を満たすから、引用発明において、「上記透過膜は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)から構成され、膜厚が0.1[μm]程度であるものである」ことは、補正発明において、「膜厚1μm以下の、ポリジメチルシロキサンからなる膜であ」ることに相当する。
e 引用発明の「透過膜」は、「平面形状をしており、その片面に密着する同じく平面状の支持体によって支持され、上記支持体は、セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成され」るものであるところ、「透過膜」は、その片面に密着する支持体とで、「積層体」を構成しているといえる。そして、支持体を構成する「セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等」は、「多孔質金属樹脂」とあるように、多孔質からなるものである。また、引用発明の「支持体」は、補正発明の「支持膜」と、「支持体」である点で共通する。
そうすると、引用発明で、「透過膜」は、「平面形状をしており、その片面に密着する同じく平面状の支持体によって支持され、上記支持体は、セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成され」ることは、補正発明の「前記気体分離膜と、有機材料の多孔質からなる支持膜とからなる積層体を構成する」ことと、「前記気体分離膜と、多孔質からなる支持体とからなる積層体を構成する」ことで共通する。
f 上記a~eによれば、補正発明と引用発明は、「気体分離膜を選択的に透過させることによって、混合気体中の特定の気体(A)の濃度を低減させるために用いられる、気体分離膜であって、
前記混合気体中の前記気体(A)の濃度が、10000質量ppm以下であり、
前記気体(A)が二酸化炭素であり、
前記気体分離膜による前記気体(A)の選択的透過が、前記気体分離膜の両面での圧力差が1気圧以下の条件で行われ、
膜厚1μm以下の、ポリジメチルシロキサンからなる膜であり、
前記気体分離膜と、多孔質からなる支持体とからなる積層体を構成する、前記気体分離膜。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点1>
気体分離膜について、補正発明では、「1nm以上の開口径を有する貫通孔を有さ」ないものであるのに対し、引用発明では、「1nm以上の開口径を有する貫通孔」を有さないものであるのか否か明らかでない点。
<相違点2>
気体分離膜と積層体を構成する「支持体」について、補正発明では、「有機材料の」「膜」であるのに対し、補正発明では、有機材料の膜であるのか明らかでない点。
(イ)相違点に対する判断
a 相違点1について
(a)補正発明で、「1nm以上の開口径を有する貫通孔を有さ」ないことの技術的意義は、本願明細書の【0016】の「気体分離膜は、混合気体のショートパスによる気体分離性能の低下を防ぐため、通常、1nm以上の開口径を有する貫通孔を有さないのが好ましい。」との記載によれば、混合気体のショートパスによる気体分離性能の低下を防ぐことであるところ、上記イ(イ)bで述べたように、気体分離膜にピンホール(貫通孔)があっては、気体分離膜の選択性が低下するため、気体分離膜は無欠陥である必要があることは、技術常識若しくは周知事項である。
これによれば、気体分離膜にピンホール(貫通孔)があっては、気体分離膜の選択性が低下してしまうのであるから、二酸化炭素を優位に透過させ、二酸化炭素を車室の外に排出するものである引用発明の透過膜も、車室の空気(混合気体)のショートパスによる気体分離性能の低下を防いでいるものであることは明らかである。
そして、引用文献1の上記ア(ア)bの【0053】の「ここで、透過膜13の厚さや面積等について言及しておく。車両10の乗車定員を5人と仮定すると、5人が排出する二酸化炭素は100[l/h]と想定される(宇宙船内の環境基準による)。すなわち、1秒あたり約27.8[ml]である。また、濃度の上限としては1000[ppm]が建築基準法に定められている。車室19の外部(すなわち空気中)の二酸化炭素濃度は通常300[ppm]程度であるため、車室19の二酸化炭素濃度が上限の1000[ppm]に達した場合、車室19とその外部との二酸化炭素の濃度差は700[ppm]程度と計算できる。すなわち分圧差は76×700×10
-8
=0.0532[cmHg]である。」との記載、及び同【0054】の「透過膜13の材料として、PDMS(ポリジメチルシロキサン:透過係数=3200×10
-10
[cm
3
(STP)cm/cm
2
・s・cmHg])を用いた場合、通常の作成方法で達成しうる膜厚は0.1[μm]程度である。したがって、透過膜13の面積は、
20
113
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すなわち、約130[cm]四方の大きさPDMS膜が必要となる。」との記載によれば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)膜における二酸化炭素の透過量、膜圧、二酸化炭素の分圧差、透過係数から必要なPDMS膜の面積が求められているが、この計算には、仮に起こっているのであれば必ず考慮しなければならない、車室の空気(混合気体)のショートパスの影響が見積もられていないから、引用発明における透過膜には、混合気体のショートパスを生じるような、すなわち、1nm以上の開口径を有する貫通孔は存在しないといえるし、二酸化炭素を優位に透過させ、二酸化炭素を車室の外に排出する引用発明の透過膜において、この機能を毀損する、車室の空気(混合気体)のショートパスによる気体分離性能の低下が好ましくないことは当業者にとり明らかであるから、引用発明の「透過膜」を、混合気体のショートパスを生じるような、すなわち、1nm以上の開口径を有する貫通孔は存在しないものとすることは、当業者ならば、容易に想到し得るといえる。
(b)また、引用発明の透過膜は、「二酸化炭素を優位に透過させる性質を持」ち、「PDMS(ポリジメチルシロキサン)から構成され」るものであるところ、上記イ(ウ)で述べたように、二酸化炭素を含むもの等、気体混合物の分離に用いられるポリジメチルシロキサン等の膜は非多孔質膜であり、非多孔質膜による気体透過のメカニズムは、溶解・拡散によるものであり、気体分子はまず膜の界面で膜に取り込まれ、取り込まれた分子は膜の界面に生じた濃度勾配(濃度分極)を駆動力として、膜をつくっている高分子の孔の径が1nm以下のもはや孔とは呼べないような、すき間を拡散していくことは、技術常識若しくは周知事項である。
この技術常識若しくは周知事項によれば、気体混合物の分離に用いられる、引用発明における「PDMS(ポリジメチルシロキサン)から構成され」る透過膜も、非多孔質膜であり、気体透過のメカニズムは、溶解・拡散によるものであり、気体分子はまず膜の界面で膜に取り込まれ、取り込まれた分子は膜の界面に生じた濃度勾配(濃度分極)を駆動力として、膜をつくっている高分子の孔の径が1nm以下のもはや孔とは呼べないような、すき間を拡散していくものであるといえる。
そうすると、引用発明における「PDMS(ポリジメチルシロキサン)から構成され」る透過膜には、上述のメカニズムによる「二酸化炭素を優位に透過させる性質」を毀損する、1nmを境界とするといえる貫通孔が存在するとはいえないし、また、このような貫通孔が存在しては、上述のメカニズムによる「二酸化炭素を優位に透過させる性質」が毀損されるのであるから、引用発明における「PDMS(ポリジメチルシロキサン)から構成され」る透過膜において、1nmを境界とするといえる貫通孔を設けないものとすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。
(c)上記(a)及び(b)によれば、上記相違点1は、実質的な相違点ではないか、上記相違点1に係る補正発明の構成は、当業者ならば容易に想到し得るものであるといえる。
b 相違点2について
(a)引用発明では、支持体について、「セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成され」るものとされている。
ここで、繊維には、有機及び無機の繊維があることは技術常識であり、また、「多孔質金属樹脂」について、「金属」と「樹脂」は、そもそも材料が異なり相容れないものであると共に、「金属樹脂」という技術用語も普通ではなく、「多孔質金属樹脂」との用語は、「金属」と「樹脂」それぞれに対して、「多孔質」であるものも想定されるものである。
そうしてみると、少なくとも、引用発明の「支持体」については、樹脂(有機)材料のものを使うことが排除されているわけではないことが理解できる。
そして、上記イ(イ)aで述べたように、支持体と該支持体上に形成された二酸化炭素分離層とを具備するガス分離膜において、上記支持体を、樹脂多孔質膜とすることは、技術常識若しくは周知事項であり、引用発明における「支持体」及び「透過膜」は、それぞれ、上記常識若しくは周知事項の「樹脂多孔質膜」である「支持体」及び「二酸化炭素分離層」に相当し、「樹脂多孔質膜」は「有機材料の多孔質からなる支持膜」であるから、引用発明に、上記常識若しくは周知事項を適用して、引用発明の「支持体」を、「有機材料の多孔質からなる支持膜」とすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。
(b)上記(a)によれば、上記相違点2に係る補正発明の構成は、当業者ならば容易に想到し得るものであるといえる。
c 補正発明の効果について
本願明細書に記載される補正発明の効果は、本願明細書の記載からは、本願明細書の【0004】に記載される「しかし、空調機等の用途での、気体分離膜の両面における圧力差が1気圧以下であるような穏やかな条件において、混合気体中の微量の成分を良好に分離する方法については、十分に検討が進んでいない。」との課題に対して、【発明の効果】の項目に続く同【0009】に記載される「本発明によれば、気体分離膜の両面における圧力差が1気圧以下であるような穏やかな条件で、混合気体中の微量の成分を良好に分離可能な気体分離方法と、当該気体分離方法において好適に用いられる気体分離膜と提供することができる。」ことであるといえる。
しかしながら、引用発明の「透過膜」も、「車室の気圧と車室の外の気圧とを一致させることができ、車室の二酸化炭素濃度の上限が1000[ppm]とされている」という条件で、「二酸化炭素を優位に透過させる性質を持ち、」「二酸化炭素は車室の外に排出する」ことができるものであるから、補正発明と同様に、気体分離膜の両面における圧力差が1気圧以下であるような穏やかな条件で、混合気体中の微量の成分を良好に分離可能な気体分離膜であるといえる。
そうすると、補正発明の「気体分離膜」が、引用発明の「透過膜」に対して、格別な効果を奏するものであるとはいえない。
(ウ)審判請求人の令和7年5月15日提出の上申書における主な主張について
審判請求人の最新の主張は、上記上申書でなされているから、以下、その主張について検討する。
a 審判請求人の主張の概要
(a)引用文献1の【0050】には、「車両10の車室19は、車室壁11と透過膜13と圧力調整機構17とを備え、透過膜13及び圧力調整機構17以外では気体の出入りは起こらない準密閉空間となっている。」と記載され、【0051】には「車室壁11は、鉄、アルミ、ガラス等の気体を透過させない材質によって構成されている。」と記載されている。
車室壁11が、鉄、アルミ、ガラス等の気体を透過させない強固な材質によって構成され、透過膜13及び圧力調整機構17以外では気体の出入りは起こらない準密閉空間となっているにもかかわらず、透過膜13を支持するための支持体21だけを「セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成される支持体」から、脆い「有機材料の多孔質からなる支持膜」へ置き換えることは適合性(compatibility)に欠けると思料され、車両10において、透過膜13と、それ支持するための支持体21との部分だけが脆くなり、透過膜13と、それ支持するための支持体21との部分で故障が頻発する車両10になり実用的ではない。
そうすると、引用文献2、3等の記載から気体分離膜に有機材料の多孔質からなる支持膜を積層することが周知の技術であったとしても、引用文献2、3等と組み合わせて、【0052】に記載の「セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成される支持体21」を「有機材料の多孔質からなる支持膜」に置き換える動機付けは引用文献1にはない。
(b)本願発明の効果について
本願請求項1、2に係る発明は、「支持膜が有機材料の多孔質からなる」ことにより、「所望する孔径や空隙率を有する多孔質膜の形成」を可能とし、気体分離膜の両面における圧力差が1気圧以下であるような穏やかな条件で、混合気体中の微量の成分を良好に分離可能という作用効果を奏する。
上記作用効果を得ることを目的として、引用文献1~3の記載から、本願請求項1、2に係る発明における「気体分離膜と、有機材料の多孔質からなる支持膜とからなる積層体を構成する気体分離膜」には当業者といえども容易に想到し得ない。
(c)補正案について
審判請求人は、「補正発明」に対応する請求項として、以下の補正案を提示し、
「[請求項3]
気体分離膜を選択的に透過させることによって、混合気体中の特定の気体(A)の濃度を低減させるために用いられる、気体分離膜であって、
前記混合気体中の前記気体(A)の濃度が、10000質量ppm以下であり、
前記気体(A)が二酸化炭素であり、
前記気体分離膜による前記気体(A)の選択的透過が、前記気体分離膜の両面での圧力差が1気圧以下の条件で行われ、
膜厚
100nmより大きく
1μm以下の、ポリジメチルシロキサンからなる膜であり、
1nm以上の開口径を有する貫通孔を有さず、
前記気体分離膜と、有機材料の多孔質からなる支持膜とからなる積層体を構成する、前記気体分離膜。」
引用文献1には、膜厚として、【0054】に「膜厚は0.1[μm]程度である。」とだけ記載されているのに対し、上記補正案の本願請求項3に係る発明は、気体分離膜の膜厚が100nmより大きいことに特定している。
そして、このような、膜厚が100nmより大きい気体分離膜は引用文献1に記載されていないし、引用文献1に記載のものは、「汚染物質の空調対象空間内への侵入をより防止し、その空調対象空間にいる人に対して快適さを提供する空調システムの提案」(【0007】)を課題とするものであるから、上記課題の解決を目的として、引用文献2及び3と組み合わせて0.1[μm]程度の膜厚を「膜厚が100nmより大きい気体分離膜」に置き換える動機付けは引用文献1にはない、と主張している。
b 上記aの主張に対する当審の判断
(a)上記a(a)の主張に対して
まず、引用発明における「セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成される支持体」の材料が、何ら有機材料を排除するものではないことは、上記(イ)b(a)で述べたとおりである。
そして、引用発明の透過膜を支持するための支持体にどの程度の強度が求められるかであるが、支持体に関し、引用文献1の上記ア(ア)bの【0053】には、「このように透過膜13が支持体21によって支持されているため、透過膜13を薄くして透過する気体量を増やしながら、強度も確保することができる。」との記載があるが、ここでは、支持体に、鉄、アルミ、ガラス等の気体を透過させない強固な材質によって構成される車室壁に匹敵する強度が必要である旨は記載されていないし、むしろ、【0053】の記載は、支持体は、透過膜を薄くした場合に、それにより損なわれる強度を、補強するものとして理解され、有機材料を何ら排除するものではない。
実際にも、引用発明の透過膜は、「エアーコンディショナの送風経路に、送風経路と反対側が外気に接するように、壁の一部を形成するように設置されるものであ」るし、引用文献1の同cの【図1】(a)に記載される箇所等に配置される場合には、透過膜は、鉄、アルミ等の強固な材質によって包囲されているといえ、特に透過膜を保持する支持体に車両壁に匹敵する強度が必要であるといえない。
そうすると、引用発明の透過膜の支持体として、有機材料の多孔質を用いても何らの支障もないのであるから、引用発明に「セラミックや繊維や多孔質金属樹脂等から構成される支持体」を「有機材料の多孔質からなる支持膜」に置き換える動機付けがないとはいえない。
(b)上記a(b)の主張に対して
本願明細書には、支持体に関し、【0040】に「多孔質膜の材質は、特に限定されず、有機材料であっても無機材料であってもよい。
所望する孔径や空隙率を有する多孔質膜の形成が容易であることから、多孔質膜の材質としては、有機材料が好ましい
。かかる有機材料は、典型的にはポリマーである。
ポリマーとしては、例えば・・・等が挙げられる。
ポリマーの中でも、熱的又は化学的に安定で、機械的強度に優れる多孔質膜を得やすいことから、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、及びポリアミドイミドが好ましい。
なお、多孔質膜の材質としては、2種以上の樹脂が混合して使用されてもよい。」との記載があり、「支持膜が有機材料の多孔質からなる」ことにより、「所望する孔径や空隙率を有する多孔質膜の形成が容易であること」は、記載されているが、「支持膜が有機材料の多孔質からなる」ことにより、「気体分離膜の両面における圧力差が1気圧以下であるような穏やかな条件で、混合気体中の微量の成分を良好に分離可能という作用効果を奏する」ことは記載されていない。
むしろ、同【0006】の「本発明者らは、気体分離膜を用いて、濃度1000質量ppm以下の特定の気体(A)を含む混合気体から気体(A)を選択的に透過させることによる気体分離方法において、膜厚が1μm以下の極薄い気体分離膜を用いることにより、気体分離膜の両面における圧力差が1気圧以下であるような穏やかな条件でも、良好に気体(A)を分離できることを見出し、本発明を完成するに至った。」との記載によれば、「気体分離膜の両面における圧力差が1気圧以下であるような穏やかな条件で、混合気体中の微量の成分を良好に分離可能という作用効果」は、主に、膜厚が1μm以下の極薄い気体分離膜を用いることにより発揮されるものである。
そうすると、審判請求人の上記a(b)の主張は、本願明細書の記載に対応するものではない。
また、「支持膜が有機材料の多孔質からなる」ことにより、「所望する孔径や空隙率を有する多孔質膜の形成が容易であること」は、支持膜として有機材料の多孔質膜を用いた時点で達成されることであり、引用文献2、3等における支持体である樹脂多孔質膜も、所望する孔径や空隙率を有する多孔質膜の形成が容易なものであるといえる。
(c)上記a(c)の主張に対して
上記上申書で提示された補正案は、実際に手続補正書において提出されたものではないから、特に審理を要するものではないが、念のため検討する。
上記補正案は、補正発明で、ポリジメチルシロキサンからなる膜の膜厚が、「膜厚1μm以下」とされていたのを「膜厚100nmより大きく1μm以下」と限定しようとするものである。
しかしながら、引用発明は、「上記透過膜は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)から構成され、膜厚が
0.1[μm]程度
であるもの」であり、膜厚は0.1[μm]「程度」とされているのであるから、0.1[μm]近辺の膜厚も当然含み、「膜厚100nm(0.1μm)より大きく」との特定で、引用発明の透過膜の厚みの値を排除できているとはいえない。
しかも、引用発明の透過膜の厚みに関する、引用文献1の上記ア(ア)bの【0054】の「透過膜13の材料として、PDMS(ポリジメチルシロキサン:透過係数=3200×10
-10
[cm
3
(STP)cm/cm
2
・s・cmHg])を用いた場合、通常の作成方法で達成しうる膜厚は0.1[μm]程度である。」との記載によれば、通常の作成方法で達成することができる膜厚の限界が0.1[μm]程度ということであるから、余裕をみて限界までの膜厚を求めないのであれば、0.1[μm](100nm)以上の膜厚となることは明らかである。
そうすると、補正案で、ポリジメチルシロキサンからなる膜の膜厚を、「膜厚1μm以下」から「膜厚100nmより大きく1μm以下」としたとしても、このことにより相違点が生じるとはいえないし、仮に、この点が相違点となったとしても、引用発明において、0.1[μm]程度の膜厚を、「100nmより大きく1μm以下」の範囲に重複する値とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることであるといえる。
c 上記bで述べたとおり、審判請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(エ)小括
以上のとおり、補正発明は、引用発明及び技術常識若しくは周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明は、令和5年2月17日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
原査定の拒絶の理由は、令和6年6月25日付け拒絶査定に記載された理由(上記拒絶査定で引用されている令和5年12月26日付け拒絶理由通知に記載された理由1及び2)であって、その理由1は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものであり、その理由2は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1:特開2004-203367号公報
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)ア(ア)に記載したとおりである。また、技術常識若しくは周知事項として引用する引用文献2及び引用文献4は、同アのとおりであり、その記載事項は、それぞれ、同(イ)及び(エ)に記載したとおりである。
そして、引用発明及び、技術常識若しくは周知事項は、同イ(ア)、(イ)b及び(ウ)のとおりである。
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明は、上記第2の[理由]2(1)で検討したように、補正発明に対して、「気体分離膜」に対する「気体分離膜と、有機材料の多孔質からなる支持膜とからなる積層体を構成する」との限定を削除し、「気体分離膜」に拡張したものにあたる。そして、それ以外の特定は、補正発明と同じであるから、同(2)ウ(ア)で述べた本願発明と補正発明との対比を参照すると、「気体分離膜と、有機材料の多孔質からなる支持膜とからなる積層体を構成する」との限定により生じた同(ア)fで述べた<相違点2>はなく、本願発明と引用発明は、<相違点1>でのみ相違し、その余の点で一致したものとなる。
そして、上記<相違点1>に対する判断は、上記第2の[理由]2(2)ウ(イ)aで述べたとおりである。
また、本願発明の効果に対する判断も、同(イ)cで述べたとおりである。
そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点ではないか、上記相違点1に係る本願発明の構成は、当業者ならば容易に想到し得るものであるといえる。
(2)小括
本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により、特許を受けることができない。また、本願発明は、引用発明及び引用文献2及び4に記載された技術常識若しくは周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項及び同法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、同法第49条第2号に該当するから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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