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Trademark Appeal Case

請求項減縮訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023701084
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7255854号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第7255854号の請求項1~12に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7255854号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成31年3月29日の出願であって、令和5年4月3日にその特許権の設定登録がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行された。その後の特許異議の申立ての手続の経緯は、次のとおりである。

令和5年10月11日 特許異議申立人 鈴木 憲治(以下「申立人」という。)による全請求項に係る特許に対する特許異議の申立て

令和6年 2月19日付け 取消理由通知書

同年 4月19日 意見書及び訂正請求書(特許権者)

同年 4月30日付け 訂正請求があった旨の通知書

同年 6月 6日 意見書(申立人)

同年10月23日付け 訂正拒絶理由通知書

令和7年 1月29日付け 取消理由通知書(決定の予告)

同年 4月 2日 意見書及び訂正請求書(特許権者)

同年 5月 1日付け 訂正請求があった旨の通知書

同年 6月 6日 意見書(申立人)

同年 9月30日付け 取消理由通知書(決定の予告)

同年12月 3日 意見書及び訂正請求書(特許権者)

同年12月17日付け 訂正請求があった旨の通知書

令和8年 1月19日 意見書(申立人)

なお、令和6年4月19日にされた訂正請求及び令和7年4月2日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

令和7年12月3日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次のとおりのものである。なお、下線は訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「前記基油としてポリアルファオレフィンを含み、」と記載されているのを、「前記基油として

潤滑剤組成物全量に対して30質量%~70質量%の

ポリアルファオレフィンを含み、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項1に「前記増ちょう剤としてカルシウムスルフォネートコンプレックスを含み、」と記載されているのを、「前記増ちょう剤として

潤滑剤組成物全量に対して10質量%~40質量%の

カルシウムスルフォネートコンプレックスを含み、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項1に「前記酸化防止剤は、芳香族アミン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤と、」と記載されているのを、「前記酸化防止剤は、

潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の

芳香族アミン系酸化防止剤又は

潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の

フェノール系酸化防止剤と、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項1に「チオフェノール系酸化防止剤と、を含み、」と記載されているのを、「

潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の

チオフェノール系酸化防止剤と、を含み、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項6に「前記極圧剤は、チオリン酸エステル系極圧剤及びリン酸エステル系極圧剤から選択される1種以上を含む」と記載されているのを、「前記極圧剤は、

潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の

チオリン酸エステル系極圧剤及び

潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の

リン酸エステル系極圧剤から選択される1種以上を含む」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~12も同様に訂正する)。

2 一群の請求項

本件訂正前の請求項1~12において、請求項2~12は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 訂正の適否についての当審の判断

(1)訂正事項1

ア 訂正の目的

訂正事項1は、訂正前の請求項1の「ポリアルファオレフィン」の含有量を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項1は、ポリアルファオレフィンの含有量を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項1は、本件明細書の段落【0035】の「ポリアルファオレフィンの含有量は、特に限定されないが、潤滑剤組成物全量に対して30質量%~70質量%程度の範囲であることが好ましく、40質量%~60質量%程度の範囲であることがより好ましい。」との記載に基づいて、ポリアルファオレフィンの含有量を特定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(2)訂正事項2

ア 訂正の目的

訂正事項2は、訂正前の請求項1の「カルシウムスルフォネートコンプレックス」の含有量を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項2は、カルシウムスルフォネートコンプレックスの含有量を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項2は、本件明細書の【0041】の「カルシウムスルフォネートコンプレックスの含有量は、潤滑剤組成物の所望とするちょう度に応じて適宜調整することが好ましい。なお、例えば、潤滑剤組成物全量に対して10質量%~40質量%の範囲とすることができる。」との記載に基づいて、カルシウムスルフォネートコンプレックスの含有量を特定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(3)訂正事項3

ア 訂正の目的

訂正事項3は、訂正前の請求項1の「芳香族アミン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤」の含有量を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項3は、芳香族アミン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤の含有量を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項3は、本件明細書の段落【0046】の「芳香族アミン系酸化防止剤の含有量は、潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の量であることが好ましい。」との記載、及び同【0049】の「フェノール系酸化防止剤の含有量は、潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の量であることが好ましい。」との記載に基づいて、芳香族アミン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤の含有量を特定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4

ア 訂正の目的

訂正事項4は、訂正前の請求項1の「チオフェノール系酸化防止剤」の含有量を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項4は、チオフェノール系酸化防止剤の含有量を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項4は、本件明細書の段落【0051】の「チオフェノール系酸化防止剤の含有量は、潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の量であることが好ましい。」との記載に基づいて、チオフェノール系酸化防止剤の含有量を特定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項5

ア 訂正の目的

訂正事項5は、訂正前の請求項6の「チオリン酸エステル系極圧剤及びリン酸エステル系極圧剤」の含有量を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと

訂正事項5は、チオリン酸エステル系極圧剤及びリン酸エステル系極圧剤の含有量を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

訂正事項5は、本件明細書の段落【0054】の「チオリン酸エステル系極圧剤の含有量は、潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の量であることが好ましい。」との記載、及び同【0056】の「リン酸エステル系極圧剤の含有量は、潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の量であることが好ましい。」との記載に基づいて、チオリン酸エステル系極圧剤及びリン酸エステル系極圧剤の含有量を特定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

4 独立特許要件についての判断

本件訂正においては、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。

5 小括

以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明

本件訂正は前記第2のとおり認められたので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明(以下項番順に「本件訂正発明1」等ともいい、まとめて「本件訂正発明」ということもある。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】

基油と、増ちょう剤とを含有する食品機械用の潤滑剤組成物であって、

前記基油として潤滑剤組成物全量に対して30質量%~70質量%のポリアルファオレフィンを含み、前記増ちょう剤として潤滑剤組成物全量に対して10質量%~40質量%のカルシウムスルフォネートコンプレックスを含み、

さらに酸化防止剤を含有し、

前記酸化防止剤は、

潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の芳香族アミン系酸化防止剤又は潤滑剤組成物全量に対して0.01.質量%以上0.5質量%以下のフェノール系酸化防止剤と、

潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下のチオフェノール系酸化防止剤と、

を含み、

前記チオフェノール系酸化防止剤は、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む、

食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項2】

前記カルシウムスルフォネートコンプレックスの含有量は潤滑剤組成物全量に対して10質量%~29質量%の範囲である

請求項1に記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項3】

前記ポリアルファオレフィンは、分子量が400~3000であり、

前記基油の40°C動粘度が30mm

2

/s~200mm

2

/sである

請求項1又は2に記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項4】

前記芳香族アミン系酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミン及びアルキル化ナフチルアミンから選択される1種以上を含む

請求項1又は2に記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項5】

前記フェノール系酸化防止剤は、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-di-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む

請求項1又は2に記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項6】

さらに、極圧剤を含有し、

前記極圧剤は、潤滑剤組成物全量に対して0.01量%以上0.5質量%以下のチオリン酸エステル系極圧剤及び潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%のリン酸エステル系極圧剤から選択される1種以上を含む

請求項1又は2に記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項7】

前記チオリン酸エステル系極圧剤は、トリフェニルホスホロチオエート及びブチル化卜リフェニルホスホロチオエートから選択される1種以上を含む

請求項6に記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項8】

前記リン酸エステル系極圧剤は、アミンC11-14側鎖アルキル,モノヘキシル及びジヘキシルフォスフェート混合物を含む

請求項6に記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項9】

さらに、摩耗防止剤を含有し、

前記摩耗防止剤は、硫黄系摩耗防止剤を含む

請求項1、2、及び6のいずれかに記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項10】

前記硫黄系摩耗防止剤は、メチレンビスジブチルジチオカーバメートを含む

請求項9に記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項11】

さらに、油性剤を含有し、

前記油性剤は、エステル系油性剤を含む

請求項1、2、6、及び9のいずれかに記載の食品機械用潤滑剤組成物。

【請求項12】

前記エステル系油性剤は、ソルビタンモノオレートを含む

請求項11に記載の食品機械用潤滑剤組成物。」

第4 特許異議申立理由、取消理由等の概要

1 特許異議申立理由の概要

申立人は、次の申立理由を主張し、その証拠方法として後記5の甲第1号証~甲第5号証(以下「甲1」等という。)を提出した。甲1~甲5は、いずれも本件特許の出願日よりも前に公開されたものである。

(1)進歩性(甲1又は甲2を主引例とした進歩性)

本件発明1~12は、甲1又は甲2に記載された発明、並びに甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(2)サポート要件

本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が後記ア及びイのとおり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

ア 本件明細書の実施例において使用されている増ちょう剤は、単にカルシウムスルフォネートコンプレックスであることが記載されているのみで、いずれの化合物を使用することによって【表1】の結果が得られたのかが不明であるから、本件特許の請求項1~12に係る発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。

イ 本件明細書において、芳香族アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びチオフェノール系酸化防止剤のいずれについても、潤滑剤組成物の全量に対して0.5質量%を超えると食品機械用途の潤滑剤組成物として好適に用いることができないと記載されているところ、これらの酸化防止剤の含有量が何ら特定されていない本件特許の請求項1~12に係る発明は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えている。

2 令和6年 2月19日付けの取消理由の概要

当審は、後記5の甲1又は甲2を主たる引用例とした進歩性欠如に係る取消理由を通知した。

3 令和7年1月29日付けの取消理由通知(決定の予告)の概要

当審は、令和6年4月19日に提出された訂正請求書による訂正を認めず、訂正前の請求項1~12に係る発明に対して、前記2と同趣旨の取消理由(決定の予告)を通知した。

4 令和7年9月30日付けの取消理由通知(決定の予告)の概要

当審は、令和7年4月2日に提出された訂正請求書による訂正を認め、訂正後の請求項1~12に係る発明に対して、後記5の甲1又は甲2を主たる引用例とした進歩性欠如に係る取消理由(決定の予告)を通知した。

5 証拠方法

(1)特許異議申立書とともに提出されたもの

甲1 :中国特許出願公開第102899134号明細書

甲1-1:J-Plat-Patによる甲1の機械翻訳

甲2 :国際公開第2017/200924号

甲2-1:甲2の翻訳として特表2019-516835号公報

甲3 :国際公開第2010/008694号

甲3-1:甲3の翻訳として特表2011-528060号公報

甲4 :米国特許出願公開第2019/0040335号明細書

甲5 :米国特許出願公開第2013/0065805号明細書

(2)令和6年6月6日の意見書及び令和7年6月6日の意見書とともに提出されたもの

甲6 :Theo Mang and Wilfried Dresel, “Lubricants

and Lubrication", 2001, p.613-614

甲7 :Rob Bosman and Piet M. Lugt, “The

Microstructure of Calcium Sulfonate Complex

Lubricating Grease and Its Change in the

Presence of Water", TRIBOLOGY

TRANSACTIONS, 2018,VOL.61,NO.5,p.842-849

甲8 :特開2008-94991号公報

甲9 :国際公開第2014/077090号

6 甲号証に記載された事項

(1)甲1には次の記載がある。甲1は中国語のため、訳として申立人の提出した甲1-1を参考にしつつ、合議体が修正した訳を記載した。

37

121

0001436129000001.jpg

(訳)

【請求項1】食品グレードの複合スルホン酸カルシウムグリースの組成物、その特徴は成分および重量パーセントが下記である:

1)高塩基性合成スルホン酸カルシウム:40~60%、

2)ステアリン酸:2~5%、

3)ホウ酸カルシウム:1~5%、

4)水酸化カルシウム:1~5%、

5)酢酸:0.5~2%、

6)基油:25~50%、

7)抗酸化剤:0.2~1.5%。」

12

153

0001436129000002.jpg

(訳)

[0001] 本発明はグリース技術分野に属し、特に食品グレードの複合スルホン酸カルシウムグリースの組成物および製造方法に関する。」

63

120

0001436129000003.jpg

34

152

0001436129000004.jpg

(訳)

[0003] 現在、欧米などの先進国では、食品グレードのグリースの評価・認証制度が整備されており、関連する強制法規も制定されている。食品グレードのグリースは、食品加工機械の潤滑に広く使用されている。海外の食品グレードのグリース増ちょう剤は、主にアルミニウム錯体、シリカ、無水炭酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン、ベントナイト、ポリウレアなどであり、比較的幅広い種類の増ちょう剤を提供している。国内食品レベルグリースは動き出して比較的遅く、増粘剤種類は主に複合したアルミニウムタイプとし、粘性化剤類型は比較的に不足し、全体は水平に比較的に低く、国外製品に後れを取る。

[0004] 複合スルホン酸カルシウムグリースは、優れた高温性能、機械的安定性、コロイド安定性、極圧性、耐摩耗性、耐水性、優れた防錆性を備えており、食品グレードのグリースの今後の発展方向となっている。海外では公式の食品グレードの複合スルホン酸カルシウムグリース製品が発売されているが、中国では複合スルホン酸カルシウムグリースに関する研究が比較的遅れており、市場への応用は主に食品以外の産業に集中しており、例えば鉄鋼業界の圧延機ベアリング、連続鋳造機ローラベアリングなどの高温、高湿、高負荷の装置にもう広範な応用を得る。本特許は、複合スルホン酸カルシウム増ちょう剤を使用した食品グレードのグリースに関するものである。このグリースは、NSF認証の高塩基性スルホン酸カルシウムと基油を使用し、特殊なプロセスで配合されていて、極圧型添加剤を含まずに、複合スルホン酸カルシウムグリースの高温特性、高極圧抗摩耗性、優れた耐水性能、突出した防錆性を備える。また、重金属や、NSFが認定した発癌物質、誘導変異物質、催奇形物質、無機酸を含まず、無臭であり、高温・重負荷・多水などの特殊な条件下での食品機械潤滑に対応する。

[0005] 特許番号CN1414076の特許は、複合スルホン酸カルシウムグリースおよびその調製方法を提供し、それは20~60%の高塩基性合成スルホン酸カルシウム、0.2~1.5%の酢酸、0.5~5%のC

12

~C

22

のヒドロキシ脂肪酸、0.5~1%のホウ酸、0.5~1%の芳香族抗酸化剤と77.8~26.5%の基油を含む;高塩基性合成スルホン酸カルシウムの総塩基数は280~380mgKOH/gとする;C

6

~C

20

のアミン反応後残留部分のジイソシアネートとヒドロキシ脂肪酸石灰石鹸反応生成ウレタン系の反応生成物と0.5~5%のC

6

~C

20

のアミンあるいは彼らの混合物とジイソシアネートが反応した有機尿素化合物を含む。」

24

153

0001436129000005.jpg

(訳)

[0009] 本発明の食品グレードの複合スルホン酸カルシウムグリースは、NSF認証の高塩基性合成スルホン酸カルシウム、基油、医薬品グレードの原料を用いて特殊なプロセスで製造されており、優れた極圧性、耐摩耗性、耐水性を示し、不重金属含有は、NSFが認定した発癌物質、誘導変異物質、催奇形を含んで物質と無機酸を変えなく、無臭は、高温、重荷、水分補給過多症などの特定の作業情況の食品機械潤滑に適用する。」

24

153

0001436129000006.jpg

35

153

0001436129000007.jpg

(訳)

[0038] 実施例4

[0039] 食品グレードの複合スルホン酸カルシウムは、次の各成分及び百分率含有量で調合される:高塩基性合成スルホン酸カルシウム40%、ステアリン酸4%、ホウ酸カルシウム5%、水酸化カルシウム4%、酢酸2%、基油PAO43.5%、抗酸化剤チオジプロピオン酸ジドデシル1.5%。

[0040]アルカリ価400mgKOH/gの高塩基性合成スルホン酸カルシウム1120g、水とエタノールの混合物(水とエタノールの質量比は1:1)112gを常圧反応器に入れ、60~80°Cに加熱し、酢酸56gを加えて結晶構造の炭酸カルシウムに変換し、60分間の恒温後に昇温する。90~100°Cで水酸化カルシウム112gとステアリン酸102gを順に添加し、120分間の恒温反応後に昇温を続ける。130~140°Cで1時間保持した後、ホウ酸カルシウム140gを添加し、200°Cに昇温し、10分間この温度に保持する。100~110°Cまで冷却後、チオジプロピオン酸ジドデシル42gを添加する。均質化後、PAO 1218gを添加して増粘する。最終製品グリースは2800g、作業ちょう度は282/25°Cである。

[0041](実験は結果表1を見る)」

57

128

0001436129000008.jpg

(訳)

[0049] 表1の実施例中製品試験データ

[0050]

57

145

0001436129000009.jpg

(2)甲2は英語のため、対応する日本語ファミリー文献である甲2-1の対応箇所を訳として記載した。

「【0006】 単純カルシウムスルホネートグリースの他に、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースも、従来技術において知られている。これらのコンプレックスグリースは、一般に、水酸化カルシウム又は酸化カルシウムなどのカルシウム含有強塩基を、二工程処理又は一工程処理の何れかで作製される単純カルシウムスルホネートグリースに加えて、化学量論等量まで、12-ヒドロキシステアリン酸、ホウ酸、酢酸又はリン酸などのコンプレックス化酸(変換前に加えられる場合には、変換剤であってもよい)と反応させることによって作製される。単純グリースに対して主張されているカルシウムスルホネートコンプレックスグリースの利点には、粘着性が低下すること、圧送性(pumpability)が改善されること、及び高温実用性が改善されることが含まれる。カルシウムスルホネートコンプレックスグリースは、米国特許第4,560,489号、米国特許第5,126,062号、米国特許第5,308,514号及び米国特許第5,338,467号に開示されている。

【0007】 更に、(最終グリース中の過塩基性カルシウムスルホネートの割合をより少なくすることによって)改善された増ちょう剤収率及び滴点の両方をもたらす、カルシウムスルホネートコンプレックスグリース組成物とその製造方法とがあることが望ましい。本明細書では、用語「増ちょう剤収率」は、潤滑グリース製造において一般的に使用される標準的な浸透試験ASTM D217又はD1403によって測定されるような、グリースに特定の所望の粘ちょう性を与えるために必要とされる高過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの濃度である。用語「滴点」は、潤滑グリース製造に一般的に使用される標準滴点試験ASTM D2265を用いて得られた値を指す。公知の従来技術の組成物及び方法論の多くは、少なくとも575°Fの滴点を有し、NLGI No.2カテゴリに適したグリースを達成するために、(最終グリース生成物の重量比で)最低でも36%という量の過塩基性カルシウムスルホネートを必要とする。過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、カルシウムスルホネートグリースの製造において最も高価な成分の一つであり、従って、最終のグリースにおけて所望のレベルの硬度をなお維持しながら、この成分の量を低減する(それによって、増ちょう剤収率を高める)ことが望ましい。」([0006]、[0007])

「【0025】[過塩基性カルシウムマグネシウムスルホネートグリース組成物]

本発明の好ましい一実施形態によれば、過塩基性カルシウムスルホネート及び過塩基性マグネシウムスルホネートを含むカルシウムマグネシウムスルホネートグリース組成物がもたらされる。好ましい別の実施形態によれば、カルシウムマグネシウムスルホネート単純又はコンプレックスグリース組成物は、基油と、1又は複数種の添加カルシウム含有塩基と、水と、1又は複数種の非水性変換剤と、任意選択的に促進酸とを更に含む。好ましい別の実施形態によれば、カルシウムマグネシウムスルホネートコンプレックスグリース組成物は、1又は複数種のコンプレックス化酸を更に含む。」([0025])

「【0031】 グリース製造において一般に使用されており且つ広く知られている、石油系の任意のナフテン鉱油又はパラフィン鉱油を、本発明の基油として使用してよい。市販の過塩基性カルシウムスルホネートの大半は、過塩基性スルホネートが濃くなって容易に取り扱うことができないことを避けるために、希釈剤として約40%の基油を既に含むであろうということから、基油は、必要に応じて加えられる。同様に、過塩基性マグネシウムスルホネートは、希釈剤として基油を含む可能性が高いであろう。過塩基性カルシウムスルホネート及び過塩基性マグネシウムスルホネート中の基油の量によっては、変換直後の所望のグリースのちょう度及び最終グリースの所望のちょう度次第で、追加の基油を加える必要はない。合成基油も本発明のグリースに使用することができる。そのような合成基油には、ポリアルファオレフィン(PAO)、ジエステル、ポリオールエステル、ポリエーテル、アルキル化ベンゼン、アルキル化ナフタレン、及びシリコーン油が含まれる。当業者には理解できるように、合成基油は、変換処理の間に存在すると、悪影響を及ぼすことがある。そのような場合、それらの合成基油は、最初は加えず、変換後などの、悪影響が排除され又は最小化される工程にてグリース製造処理に加えられる。ナフテン鉱基油又はパラフィン鉱基油が、その低コスト及び入手容易性の点から好ましい。加える基油(最初に加えるものと、所望のちょう度を達成するためにグリース処理で後に加えるものを含む)の総量は、グリースの最終重量に基づき、前記の表1の範囲内であることが好ましい。典型的には、別個の成分として加えられる基油の量は、過塩基性カルシウムスルホネートの量が減少するにつれて増加する。当業者に理解されるように、上記のような異なる基油の組合せもまた、本発明において使用されてよい。

【0032】 本発明のこれらの実施形態に従って使用される過塩基性マグネシウムスルホネート(本明細書では、簡潔にするために単に「マグネシウムスルホネート」とも呼ばれる)は、先行技術において記載されている又は知られている典型的なものであってよい。過塩基性マグネシウムスルホネートはその場で作製されてよく、市販の過塩基性マグネシウムスルホネートが使用されてもよい。塩基性マグネシウムスルホネートは、典型的には、中性のマグネシウムアルキルベンゼンスルホネートと、相当量の過塩基化が炭酸マグネシウムの形態であるような塩基化とを含んでよい。炭酸マグネシウムは、通常、非晶質(非結晶)形態であると考えられる。酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は酸化物と水酸化物の混合物の形態で、過塩基化の一部が存在してもよい。過塩基性マグネシウムスルホネートの全塩基価(TBN)は、好ましくは少なくとも400mg KOH/gであるが、より低いTBN値と、上記の過塩基性カルシウムスルホネートのTBN値について示されたものと同じ範囲の値も許容され得る。

【0033】 水は、1つの変換剤として本発明の好ましい実施形態に加えられる。1又は複数種の他の非水性変換剤もまた、本発明のこれらの実施形態において加えられるのが好ましい。非水性変換剤には、水以外の任意の変換剤が含まれており、例えば、アルコール、エーテル、グリコール、グリコールエーテル、グリコールポリエーテル、カルボン酸、無機酸、有機硝酸塩、多価アルコール及びそれらの誘導体、或いは、活性水素又は互変異性水素(tautomeric hydrogen)の何れかを含むその他の任意の化合物が含まれる。非水性変換剤には、希釈剤又は不純物として幾らかの水を含むそれらの剤も含まれる。それらは非水性変換剤として使用されてよいが、グリース製造プロセス中のガス抜きや洗浄したアルコールの有害廃棄処理に関連する環境上の懸念や制限から、メタノール又はイソプロピルアルコール或いは他の低分子量(即ち、より揮発する)アルコールなどのアルコールを使用しないことが好ましい。グリースの最終重量に基づいて、変換剤として加えられる水の総量は、表1に示された範囲内であるのが好ましい。変換後に水が更に加えられてよい。また、変換中にかなりの量の水を蒸発させるように十分に高い温度で開放容器内で変換が行われる場合、失われた水を置き換わる追加の水が加えられてよい。加えられる1又は複数種の非水性変換剤の総量は、グリースの最終重量を基準にして、表1に示された範囲内であるのが好ましい。典型的には、使用される非水性変換剤の量は、過塩基性カルシウムスルホネートの量が減少するにつれて減少する。使用される変換剤に応じて、それらの一部又は全部が製造プロセス中に揮発によって除去されてもよい。ヘキシレングリコール及びプロピレングリコールのような低分子量グリコールが特に好ましい。後述する本発明の一実施形態によるカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製するために、幾つかの変換剤がコンプレックス化酸としての役割を果たすこともあることに留意されたい。このような物質は、変換とコンプレックス化の両方の機能を同時に提供する。」([0031]~[0033])

「【0050】 グリース製造分野において一般に認められている他の添加剤もまた、本発明の単純グリースの実施形態又はコンプレックスグリースの実施形態の何れかに加えることができる。このような添加剤には、錆防止剤及び腐食防止剤、金属不活性化剤、金属不動態化剤、酸化防止剤、極圧添加剤、耐摩耗性添加剤、キレート剤、ポリマー、粘着付与剤、染料、化学マーカー、香り付加剤、及び蒸発性溶媒が含まれる。後のカテゴリは、オープンギア用潤滑剤及び編組ワイヤーロープ用潤滑剤を作製する場合に特に有用であり得る。そのような任意の添加剤を含むことは、依然として本発明の範囲内であると理解されるべきである。成分の割合は、特に示されていない限り、完成したグリースの最終重量に基づくものであるが、その量の成分は、反応又は揮発により最終グリース生成物に存在しなくてもよい。」([0050])

「【0089】 [実施例1-(基準実施例-マグネシウムスルホネートの添加無し)]

‘406特許に記載されているカルシウムヒドロキシアパタイト組成物を用いてカルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。この実施例では、過塩基性マグネシウムスルホネートは加えられていない。また、非水性変換剤遅延法もアルカリ金属水酸化物添加法も用いられていない。この実施例は、‘473出願の実施例8と同じである。

【0090】 グリースを次のように作製した。400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネート264.98gを開放混合容器に加え、続いて100°Fで約600SUSの粘度を有する溶剤ニュートラルグループ1(solvent neutral group 1)パラフィン系基油378.68gと、100°Cで4cStの粘度を有するPAO11.10gとを加えた。400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネートは、‘406の特許の実施例10及び11に用いられたものと同様の低品質カルシウムスルホネートである。加熱せずに、遊星攪拌パドル(planetary mixing paddle)を使用して混合を開始した。次に、主(primarily)C12アルキルベンゼンスルホン酸23.96gを加えた。20分間混ぜた後、5ミクロン未満の平均粒径を有するカルシウムヒドロキシアパタイト50.62gと5ミクロン未満の平均粒径を有する食品グレード純度の水酸化カルシウム3.68gを加え、これらを30分間混ぜた。次に、氷酢酸0.84gと、12-ヒドロキシステアリン酸10.56gとを加え、10分間混ぜた。次に、5ミクロン未満の平均粒径を有する微粉炭酸カルシウム55.05gを加え、5分間混ぜた。次に、ヘキシレングリコール13.34gと水39.27gとを加えた。190°Fの温度に達するまで混合物を加熱した。フーリエ変換赤外(FTIR)分光が非晶質炭酸カルシウムから結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)への変換が起こったことを示すまで、190°F~200°Fの温度に45分間保持した。同じ水酸化カルシウム7.34gを加えて、10分間混ぜた。次に、氷酢酸1.59gを加えた後、12-ヒドロキシステアリン酸27.22gを加えた。12-ヒドロキシステアリン酸が溶けてグリースに混合された後、ホウ酸9.37gを熱水50gに混合し、その混合物をグリースに加えた。

【0091】 グリースがしつこい(heaviness)ために、同じパラフィン系基油62.29gを更に加えた。次に、75%リン酸水溶液17.99gを加えて、混ぜて反応させた。パラフィン系基油46.90gを更に加えた。次に、混合物を撹拌しながら電気加熱マントルで加熱した。グリースが300°Fに達すると、スチレン-アルキレンコポリマー22.17gをクラム形成固体(crumb-formed solid)として加えた。グリースを更に約390°Fに加熱した。この時、ポリマーは全て溶けて、グリース混合物に完全に溶解した。加熱マントルを取り外して、グリースを外気中で攪拌しながら冷却した。グリースが300°Fに冷却されると、5μm未満の平均粒径を有する食品グレードの無水硫酸カルシウム33.30gを加えた。グリースの温度が200°Fに冷めると、アリールアミン酸化防止剤2.27gとポリイソブチレンポリマー4.46gとを加えた。同じパラフィン系基油55.77gを追加した。グリースが170°Fの温度に達するまで攪拌を続けた。次に、グリースをミキサーから取り出し、3本ロールミルを3回通過させることで、最終的に滑らかで均一な質感を得た。このグリースの60往復混和ちょう度は、281であった。最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は24.01%であった。滴点は、>650°Fであった。」([0089]~[0091])

(3)甲3には次の記載がある。訳は甲3-1を採用した。

ア 2頁9~12行

13

75

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(訳)

技術分野

本発明は、潤滑油組成物に、より詳細には、酸化劣化を少なくするための添加剤パッケージを含む潤滑油組成物に関する。」

イ 5頁18~6頁13行

13

77

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39

74

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(訳)

本発明の別の態様において、添加剤パッケージは、ADPA、PNA及び硫黄含有フェノールを含む。通常、硫黄含有フェノールは、室温で固体である。しかし、室温で液体である硫黄含有フェノールもまた使用され得る。一態様において、ADPA、PNA及び硫黄含有フェノールの組合せは、透明な液体を生成する。別の態様において、ADPA、PNA及び硫黄含有フェノールの組合せは、ADPA単独のものを超えて、酸化安定性をかなり向上させ、また、中-高温熱酸化エンジンオイルシミュレーション試験(Mid-High Temperature Thermo-Oxidation Engine Oil Simulation Test、TEOST MHT、ASTM D7097)堆積物(下を参照)の量を減少させる添加剤パッケージを生成する。このような添加剤パッケージは、APIグループII基油を含むエンジンオイルにブレンド(約1重量%の重量%で)された時、約40分のOITを示し、37ミリグラム(mg)の堆積物を示した。本発明の一態様において、潤滑油組成物は、約60mg未満、例えば、約50mg未満、約40mg未満、又は約20mg未満のTEOST MHT値を有する。ADPA単独の添加剤パッケージは、約55mgのTEOST MHT値を生じ、PNA単独では約80mgのTEOST MHT値を生じ、また硫黄含有フェノール単独では約63mgのTEOST MHT値を生じることに注意すべきである。したがって、潤滑油組成物での、55mg未満のTEOST MHT値は、驚くべきことであり、予想外である。」

ウ 9頁12行~22行

34

75

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(訳)

本発明の添加剤パッケージは、可能性のある多くの基油と組み合わせられる成分として特に有用である。添加剤パッケージは、天然及び合成潤滑油並びにこれらの混合物を含めて、潤滑粘度を有する様々なオイルに含められ得る。例として、添加剤パッケージは、火花着火式及び圧縮着火式内燃機関のクランクケース潤滑油に含められる。添加剤パッケージは、また、例えば、ガスエンジン潤滑油、タービン潤滑油、自動変速機流体、ギア潤滑油、コンプレッサ潤滑油、金属加工潤滑油、油圧流体、及び他の潤滑油及びグリース組成物と共に使用され得る。本発明の一態様において、添加剤パッケージは、食品との接触、例えば、偶発的な食品との接触があり得る潤滑油の製造に用いられる。より詳細には、添加剤パッケージは、H1食品グレード基油と共に用いられ得る。」

エ 13頁3行~12行

42

74

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12

74

0001436129000015.jpg

(訳)

本発明の一態様において、硫黄含有フェノールは、式IVの硫黄含有フェノール:

【化8】

42

76

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を含み、

式中、R

3

は、硫黄含有アルキル若しくはアリール基、又は硫黄含有アルケン若しくはカルボン酸であり、

式中、R

4

及びR

5

はアルキル又はアリールである。

本発明において用いることができる好ましい硫黄含有フェノールには、例えば、2,2’-チオジエチレンビス(3,5,-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチル-フェノール)、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、及び(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)メチルチオ酢酸イソ(C

10

~C

14

)アルキルが含まれる。」

オ 14頁11行~15頁最終行

9

75

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90

69

0001436129000018.jpg

(訳)

さらなる態様は、表3に列挙されるADPA、PNA及び硫黄含有フェノールの組合せを用いる。この列挙は、全ての好ましい態様を排除しない。

120

90

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(4)甲4には、次の記載がある。訳は、J-Plat-Patによる機械翻訳を記載した。

100

119

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(訳)本発明の組成物

[0049] 一態様では、本開示は、驚くべきかつ予想外に増強された潤滑性を有する潤滑組成物およびポンプ流量率の大幅な改善を提供する。潤滑組成物は、以下を含む:40°Cで約80mm

2

/秒~約120mm

2

/秒(例えば、40°Cで約85mm

2

/秒~115mm

2

/秒、または40°Cで約90mm

2

から約110mm

2

/sec);100(例えば、100°Cで約10mm

2

/sec~約13.5mm

2

/秒、100°Cで約10.5mm

2

/sec~約13mm

2

)で約9.5mm

2

~約14mm

2

/秒;またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの運動学的粘度を有するホワイトオイルは、潤滑組成物の約40wt%未満の量で存在する重合体増粘剤。本明細書に記載される任意の態様または実施形態において、潤滑組成物は、ISO VGが220潤滑剤であってもよい。例えば、潤滑組成物は、ISO VGが220の食品グレードの潤滑剤であってもよい。」

84

120

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(訳)性能添加剤

[0053] 本開示の潤滑組成物は、さらに、少なくとも1種の性能添加剤を含んでいてもよい。例えば、潤滑組成物は、分散剤、清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、磨耗防止剤、極圧添加剤、焼付き防止剤、蝋改質剤、粘度指数向上剤、粘度調整剤/向上剤、流体損失添加剤、シール適合性剤、摩擦調整剤、潤滑性剤、汚染防止剤、発色剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、増粘剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤、酸化防止剤、酸化防止剤、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つを含むことができる。これらの潤滑油性能添加剤の存在又は不在は、・・・」

37

121

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91

116

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(訳)抗酸化剤(単数または複数)。

[0062] 特定の実施形態において、潤滑組成物は、少なくとも1種の酸化防止剤を含む(例えば、1、2、3、4 5 6またはそれ以上の酸化防止剤(1種以上))。酸化防止剤(1種以上)は、使用中の基油の酸化劣化を遅らせるために加えることができる。このような劣化は、金属表面上への沈積、スラッジの存在、または潤滑油の粘度増加を招きうる。当業者であれば、潤滑油組成物に有用な多種多様な酸化防止剤を知っている。例えば、クラマンの潤滑剤および関連製品、および米国特許第4,798,684号および同第5,084,197号におけるKlamannを参照されたい。本開示の潤滑組成物中で使用することは、既知であるか、当技術分野で知られるようになる任意の酸化防止剤であってもよい。

[0063] 2の一般的なタイプの酸化防止剤は、開始剤、ペルオキシラジカル、および不活性化合物を生成するヒドロペルオキシドと反応するものであり、これらの物質は、活性の低い化合物を形成するために分解するものである。具体例としては、フェノール類、例えば6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール[2,6-ジ(tert-ブチル)-p-クレゾール, DBPC]、および芳香族アミン、例えばN-フェニルαnaphthalamineをヒンダード(アルキル化)される。これらの酸化防止剤は、拡張されたサービスのために意図されるタービン、循環、および油圧油に使用される。」

12

115

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・・・

16

111

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(訳)

[0064] 酸化防止剤または酸化防止剤は、約6重量%未満の量で存在し、・・・

一実施形態において、抗酸化剤は、食品等級のフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。」

30

153

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(訳)

[0065] フェノール系酸化防止剤の以下の説明は、例としてのみ提示されており、本開示の潤滑組成物で用いることができるフェノール系酸化防止剤の種類に限定されるものではない。

24

119

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157

115

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(訳)

[0068]フェノール系酸化防止剤の他の例としては、4,4'-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2-(ジ-p-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコール-ビス[3,(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](「イルガノックスL109」という商品名をCiba Speciality Chemicals Co.)、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキス-y-5-メチルフェニル)プロピオナート](「トミノックス917」という商品名をYoshitomi Seiyaku Co.)、2,2'-チオ-[ジエチル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](「Irganox L115」という商品名をCiba Speciality Chemicals Co.)、3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニロ-xy]エチル}2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(「スミライザーGA80」という商品名をSumitomo Kagaku Co.)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)(「Antage RC」という商品名をKawaguchi Kagaku Co.)、2,2'-チオビス(3-メチル-4,6-ジt butylresorcinol);ポリフェノール、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナト]メタン(「イルガノックス(Irganox)L101」という商品名をCiba Speciality Chemicals Co.)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニ-l)ブタン(「ヨシノックス930」という商品名をYoshitomi Seiyaku Co.)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(「イルガノックス330」という商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、などが挙げられる。」

29

150

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(訳)

[0085]本発明の組成物に使用されてもよい非フェノール酸化防止剤には、芳香族アミン酸化防止剤、または組合せのいずれかで、フェノール系酸化防止剤との組み合わせで使用することができる。」

82

95

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(訳)

[0094]アミン系酸化防止剤、芳香族アミン酸化防止剤は、以下の化学構造によって記載されるフェニル-α-ナフチルアミン(例えば、Irganox(登録商標)L06)などであってもよい。

28

98

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[0095]Rzは、水素又は炭素数1~14の直鎖またはC3~C14分岐アルキル基である。

[0096]nは1~5(例えば1~)の範囲の整数である。」

84

115

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10

106

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(訳)

[0100]また、アミン系酸化防止剤としては、ジフェニルアミン、p,p'-ジオクチルジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン(「ノンフレックスOD3」という商品名をSeiko Kagaku Co.)、p,p'-ジ-α-メチルベンジルジフェニルアミン、p-ブチルフェニルNp'-octylphenylamine;MS、t=TT1細菌、モノオクチルジフェニルアミン;ジ(2,4-ジエチルフェニル)アミンおよびジ(2-エチル-4-ノニルフェニル)アミンなどビス(ジアルキルフェニル)アミン;アルキルフェニル-1-ナフチルアミン、オクチルフェニル-1-ナフチルアミンおよびN-t-ドデシルフェニル-1-ナフチルアミン;arylnaphthylamines、1-ナフチルアミン、フェニル-1-ナフチルアミン、フェニル-2-ナフチルアミン、N-ヘキシルフェニル-2-ナフチルアミンおよびN-オクチルフェニル-2-ナフチルアミン、フェニレンジアミン、N,N'-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジンのようなフェノチアジン(Hodogaya Kagaku Co.:フェノチアジン)および3,7-ジオクチルフェノチアジンなどが挙げられる。」

(5)甲5には、次の記載がある。訳は、J-Plat-Patによる機械翻訳を記載した。

17

88

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18

92

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59

92

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57

94

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97

95

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(訳)

[0034] 本発明の食品グレード潤滑剤組成物は、少なくとも1種の食品級の性能添加剤を含む。食品グレードの性能添加剤は、米国農務省により必要とされるようなH-1の承認を得ている添加剤及び/又は食品と接触しても安全である。なお、H-1は最終的にほとんどの場合、アメリカ合衆国以外の国において同等の分類に関するものと理解される。

[0035] いくつかの実施形態において、本発明の組成物は抗酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、金属不動態化剤を含み、金属不動態化剤、腐食防止剤及び/又は金属不活性化剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は腐食防止剤を含む。さらに他の実施形態において、本発明の組成物は、金属不活性化剤および腐食抑制剤の組み合わせを含む。さらに別の実施形態において、本発明の組成物は、酸化防止剤、金属奪活剤および腐食防止剤の組み合わせを含む。これらの実施形態のいずれかにおいて、組成物はさらに1つ以上の追加の性能添加剤を含んでいてもよい。

[0036] 本発明での使用に適した酸化防止剤は、過度に限定されない。しかし、いくつかの実施形態において、抗酸化剤は、食品グレードでなければならず、添加剤および/または得られる組成物から食品グレード分類を除去するであろう量で使用しなければならない。

[0037] 適切な食品等級FDA認可された抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、フェニル-α-ナフチルアミン(PANA)、オクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、高分子量フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミンビス-フェノール酸酸化防止剤、ジ-α-トコフェロール、ジ-第3級-ブチルフェノールなどが挙げられる。他の有用な酸化防止剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,534,454号に記載されている。

[0038] いくつかの実施形態では、食品グレードの酸化防止剤のうちの1つ以上を含む。

[0039] (i)ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート),CAS登録番号35074-77-2、チバ・スペシャルティ・ケミカル社から商業的に入手可能である。

[0040] (ii)N-フェニルベンゼンアミン、2,4,4-トリメチルペンテン,CAS登録番号68411-46-1、チバ・スペシャルティ・ケミカル社から商業的に入手した反応生成物。

[0041] (iii)Ciba Specialty Chemical Companyから商業的に入手可能なフェニルおよび/またはフェニル-a-ナフチルアミン、例えばN-フェニル-ar-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-1-ナフタレンアミン、である。

[0042] (iv)テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタン、CAS登録番号6683-19-8。

[0043] (v)Thiodiethylenebis(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート),CAS登録番号41484-35-9、21C.F.R.#xa7チオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ-シンナマート)として記載されている;178.3570。

[0044](vi)Butylatedhydroxytoluene(BHT)。

[0045](vii)Butylatedhydroxyanisole(BHA)である。

[0046](viii)ビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル) アミン、チバ・スペシャルティ・ケミカル社から商業的に入手可能である。

[0047](ix)Benzenepropanoic酸、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-、チオジ-2,1-エタンジイル エステル、チバ・スペシャルティ・ケミカル社から市販されている。」

(6)甲6には、次の記載がある。当審による訳を記載する。

ア 613頁

4

84

0001436129000039.jpg

(訳:カルシウムスルフォネートコンプレックス石けん)

イ 614頁

26

87

0001436129000040.jpg

(7)甲7には、次の記載がある。当審による訳を記載する。

ア 表題

9

107

0001436129000041.jpg

(訳:水の存在下におけるカルシウムスルフォネートコンプレックス潤滑油の構造とその変化)

イ 843頁左欄25~30行及び右欄

19

66

0001436129000042.jpg

・・・

59

65

0001436129000043.jpg

(訳:グリースの結晶構造はカルサイトである。図2参照。これは、粒子径が2~15nm未満の非晶質CaCO

3

を含む流動性スルホン酸塩とは異なる(Muir(15))。グリース状のスルホン酸塩は、主に結晶性のカルサイト(ウエハー状の板状物質)を含み、粒子径ははるかに大きい(15~500nm;Muir(15))。)

(8)甲8には、次の記載がある。

「【0001】

本発明は、自動車、産業用機械等の潤滑箇所へ適用でき、耐熱性及び極圧性に優れたグリース組成物に関する。」

「【0006】

本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油に、式(1)で表されるポリウレア化合物を0.5~15質量%、平均粒径0.01~20μmの炭酸カルシウムを3~30質量%、及びポリテトラフルオロエチレンまたは黒鉛から選ばれる少なくとも1種以上の固体潤滑剤を1~20質量%含有することにより耐熱性及び極圧性が向上することを見出した。

【0007】

その中でも、基油として、フェニルエーテル類、ポリαオレフィン、ポリオールエステル類及びコンプレックス型ポリオールエステル類から選ばれる少なくとも1種以上を使用することにより耐熱性及び極圧性を著しく向上させることを見出した。

すなわち、本発明は、鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油に、式(1)で表されるポリウレア化合物を0.5~15質量%、平均粒径0.01~20μmの炭酸カルシウムを3~30質量%、及びポリテトラフルオロエチレンまたは黒鉛から選ばれる少なくとも1種以上の固体潤滑剤を1~20質量%含有することを特徴とするグリース組成物を提供する。」

「【0017】

本発明で使用される基油としては、通常グリースに使用される鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油又はこれらの混合系のものなどの種々の潤滑油基油が用いられるが、40°Cにおける動粘度の値としてが、1~2000mm

2

/sの範囲が好ましく、1~1000mm

2

/sの範囲がより好ましく、10~600mm

2

/sの範囲が特に好ましい。動粘度が、あまり小さすぎると極圧性が低くなる傾向にある。動粘度が大きすぎると流動性が悪くなり、グリース本来の性能が出にくくなる傾向にある。

鉱油系潤滑油基油としては、例えば原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製など適宜組み合わせて精製したものが挙げられる。

【0018】

合成系潤滑油基油としては、例えば、ポリαオレフィン(以下、PAOということがある)、ジアルキルジエステル、ポリオールエステル類、コンプレックス型エステル類、アルキルベンゼン類、ポリグリコール類、フェニルエーテル類などが挙げられる。

ポリαオレフィンとしては、炭素数3~12のα-オレフィンの重合体であるα-オレフィンオリゴマーが挙げられる。・・・

・・・

【0021】

上記鉱油系潤滑油基油及び合成系潤滑油基油は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することができるが、好ましくは、PAO、ポリオールエステル類、コンプレックス型ポリオールエステル類およびフェニルエーテル類の中から選ばれる1種単独、あるいは2種以上の混合使用である。」

「【0024】

(実施例1~5及び比較例1~11)

実施例及び比較例では、以下に示す*1~*21成分を表1~2に示した配合量(質量)の割合で含有させたグリース組成物を調製した。*1~*21のうちの増ちょう剤は、その増ちょう剤の原料を基油に混合して、基油中でその原料を反応させて増ちょう剤にして、結果として*1~*21の各成分を含有するグリース組成物を調製した。なお、グリース組成物は、*1~*21の各成分を適宜混合し、ミル処理を行ってグリース中に増ちょう剤を均一に分散させ、調製した。

得られたグリース組成物は、それぞれ燃焼性試験の評価を行った。

・・・

【0031】

7:カルシウムスルホネートコンプレックス(耐熱容器に基油を入れ、塩基価400のカルシウムスルホネートとメタノールを入れ十分に攪拌し、その後、80~90°C付近まで加熱してメタノールを揮発除去し、基油中に炭酸カルシウムがコロイド状に分散した混合物を得た。次に、この混合物にホウ酸、酢酸、ベヘニン酸及びステアリン酸と水酸化カルシウム水溶液を添加し、激しく攪拌しながら約150°C付近まで加熱し、約30分保持した後、冷却し、カルシウムスルホネートコンプレックスの結晶を最適なものとし得られたカルシウムコンプレックス。得られた組成物の成分は以下のとおりである。

【0032】

(基油成分) 60質量%

(カルシウムスルホネートコンプレックス成分)

カルシウムスルホネート+炭酸カルシウム 36.0質量%

ベヘニン酸カルシウム 0.8質量%

ジステアリン酸カルシウム 0.6質量%

ホウ酸カルシウム 0.7質量%

酢酸カルシウム 1.9質量%

・・・

【0033】

*8:鉱油(40°C動粘度:100mm

2

/sの水素化精製鉱油)

*9:PAO(炭素数10のαオレフィンの重合体で、40°Cの動粘度:60mm

2

/sのポリアルファオレフィン)

*10:ポリオールエステル(ペンタエリスリトールと炭素数8~10モノカルボン酸とのテトラエステルで、40°Cの動粘度:30mm2/s)

*11:コンプレックスエステル(ペンタエリスリトールと炭素数8~10のモノカルボン酸と炭素数6のジカルボン酸とのコンプレックスエステル、40°C粘度:105mm

2

/s)

*12:アルキル化ジフェニルエーテル(商品名「モレスコハイルーブLB-100」、松村石油(株)製で、40°C粘度:100mm

2

/s)

・・・

【0037】

【表1】

176

153

0001436129000044.jpg

(9)甲9には、次の記載がある。

「[0001] 本発明は、グリース組成物に関する。

[0002] カルシウムスルホネートコンプレックスグリースは、耐熱性、耐水性に優れるため、自動車のエンジン周辺の摺動部に使用されるほか、鉄鋼用途の圧延機等の軸受やアウトドアで使用される機器に使用されている(例えば、特許文献1,2参照)。

一方で、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースのような金属複合石けんを用いた金属石けん系グリースは、潤滑性に優れるが、高温下においてグリース構造が長期間維持されにくいという問題を有している。

そこで、増ちょう剤として有機ベントナイトと第二増ちょう剤成分とを含有するグリース組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。第二増ちょう剤成分としては、金属複合石けん、ポリウレア、フッ素樹脂、N-置換テレフタルアミド酸金属塩、カルシウムスルホネートコンプレックスが記載されている。特許文献3によれば、増ちょう剤として、有機ベントナイトと、第二増ちょう剤成分との混合物を用いることで、防錆性、極圧性、耐水性、および潤滑寿命が優れたグリース組成物を提供できる。」

「[0020] [カルシウムスルホネートコンプレックスグリース]

増ちょう剤として用いられるカルシウムスルホネートコンプレックスは、カルシウムスルホネートと、(i)炭酸カルシウム、(ii)カルシウムジベヘネート、カルシウムジステアレート、カルシウムジヒドロキシステアレート等の高級脂肪酸カルシウム塩、(iii)酢酸カルシウム等の低級脂肪酸カルシウム塩、(iv)ホウ酸カルシウム等から選択されるカルシウム塩(カルシウム石けん)とを組み合わせたものである。中でも、カルシウムスルホネートと炭酸カルシウムとを必須成分とし、これにカルシウムジベヘネート、カルシウムジステアレート、カルシウムジヒドロキシステアレート、ホウ酸カルシウム及び酢酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも2種を配合したものが好ましい。また、カルシウムスルホネートは、増ちょう効果の観点から、塩基価が50mgKOH/g以上500mgKOH/g以下のものが好ましく、300mgKOH/g以上500mgKOH/g以下のものがより好ましい。具体的には、ジアルキルベンゼンスルホン酸カルシウム塩が特に好ましい。」

「[0039] [ベースグリース3]

塩基価500mgKOH/gのカルシウムスルホネート42重量部、40°C動粘度が90mm

2

/sのパラフィン系鉱物油53重量部、12-ヒドロキシステアリン酸4重量部、酢酸1重量部、イソプロパノール2重量部、および、蒸留水5重量部を容器に入れ、75°Cで2時間撹拌した。その後、容器を160°Cまで加熱してイソプロパノールおよび蒸留水を留去した。内容物を常温まで冷却して、カルシウムスルホネートコンプレックスグリースを作製した。これをベースグリース3とした。作製時の配合割合を次の表1に示す。」

第5 当審の判断

1 甲1を主引例とした進歩性欠如

(1)甲1に記載された発明

甲1(前記第4の6(1)参照。)の[0039]及び[0040]に記載された「実施例4」に着目し、同[0001]の「食品グレードの複合スルホン酸カルシウムグリースの組成物」との記載及び[0003]の「食品グレードのグリースは、食品加工機械の潤滑に広く使用されている。」との記載を参酌すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

(甲1発明)

「高塩基性合成スルホン酸カルシウム40重量%、ステアリン酸4重量%、ホウ酸カルシウム5重量%、水酸化カルシウム4重量%、酢酸2重量%、基油(PAO)43.5重量%、抗酸化剤(チオジプロピオン酸ジドデシル)1.5重量%を混合して得た食品グレードの複合スルホン酸カルシウムグリースの組成物であって、

高塩基性合成スルホン酸カルシウム1120g、水とエタノールの混合物(水とエタノールの質量比は1:1)112gを常圧反応器に入れ、60~80°Cに加熱し、酢酸56gを加えて結晶構造の炭酸カルシウムに変換し、60分間の恒温後に昇温させ、

90~100°Cで水酸化カルシウム112gとステアリン酸102gを順に添加し、120分間の恒温反応後に昇温を続け、

130~140°Cで1時間保持した後、ホウ酸カルシウム140gを添加し、200°Cに昇温し、10分間この温度に保持し、

100~110°Cまで冷却後、チオジプロピオン酸ジドデシル42gを添加し、

均質化後、PAO 1218gを添加して増粘して得た、

食品加工機械の潤滑に使用される、食品グレードの複合スルホン酸カルシウムグリースの組成物。」

(2)対比・判断

ア 本件訂正発明1

(ア)対比

本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「基油(PAO)43.5重量%」は、本件訂正発明1の「基油として潤滑剤組成物全量に対して30質量%~70質量%のポリアルファオレフィン」に相当する。

甲1発明の「抗酸化剤(チオジプロピオン酸ジドデシル)」は、本件訂正発明1の「酸化防止剤」に相当する。

甲1発明の「高塩基性合成スルホン酸カルシウム40重量%、ステアリン酸4重量%、ホウ酸カルシウム5重量%、水酸化カルシウム4重量%、酢酸2重量%」は、混合されて複合スルホン酸カルシウムとなり、増ちょう剤として機能すると考えられるから、本件訂正発明1の「増ちょう剤」及び「前記増ちょう剤として」「カルシウムスルフォネートコンプレックス」に相当する。

甲1発明の「食品加工機械の潤滑に使用される、食品グレードの複合スルホン酸カルシウムグリースの組成物」は、本件訂正発明1の「食品機械用潤滑剤組成物」に相当する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>

「基油と、増ちょう剤とを含有する食品機械用の潤滑剤組成物であって、

前記基油として潤滑剤組成物全量に対して30質量%~70質量%のポリアルファオレフィンを含み、前記増ちょう剤としてカルシウムスルフォネートコンプレックスを含み、

さらに酸化防止剤を含有する、

食品機械用潤滑剤組成物。」

<相違点1-1>

増ちょう剤としてのカルシウムスルフォネートコンプレックスが、本件訂正発明1は「潤滑剤組成物全量に対して10質量%~40質量%」であるのに対し、甲1発明は、40+4+5+4+2=55重量%である点。

<相違点1-2>

酸化防止剤が、本件訂正発明1は「潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の芳香族アミン系酸化防止剤又は潤滑剤組成物全量に対して0.01.質量%以上0.5質量%以下のフェノール系酸化防止剤と、潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下のチオフェノール系酸化防止剤と、を含み、前記チオフェノール系酸化防止剤は、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む」のに対し、甲1発明は、「抗酸化剤(チオジプロピオン酸ジドデシル)1.5重量%」である点。

(イ)判断

まず、相違点1-1について検討する。甲1の【請求項1】には、本件訂正発明1の「カルシウムスルフォネートコンプレックス」に相当する成分(高塩基性合成スルホン酸カルシウム、ステアリン酸、ホウ酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸)が、計44.5~69重量%含まれることが記載されているものの、これらの成分を10~40質量%とすることは記載されていない。

そして、甲1の[0004]には「本特許は、複合スルホン酸カルシウム増ちょう剤を使用した食品グレードのグリースに関するものである。このグリースは、NSF認証の高塩基性スルホン酸カルシウムと基油を使用し、特殊なプロセスで配合されていて、極圧型添加剤を含まずに、複合スルホン酸カルシウムグリースの高温特性、高極圧抗摩耗性、優れた耐水性能、突出した防錆性を備える。」と記載され、甲1発明は、極圧型添加剤を含まずに、複合スルホン酸カルシウムグリースの高極圧抗摩耗性を発揮することを意図したものであることが示唆されている。

そうすると、極圧型添加剤を含まないことを前提とした甲1発明において、極圧性能を発揮するのに必要な複合スルホン酸カルシウムの量を望ましい範囲の下限より少なくすることが動機付けられるとはいえないから、本件訂正発明1の「カルシウムスルフォネートコンプレックス」に相当する成分について、甲1の[0005]の「高塩基性合成スルホン酸カルシウム、酢酸、C

12

~C

22

のヒドロキシ脂肪酸、ホウ酸」の合計が、21.2~67.5%であるとの従来技術の記載、甲2の「最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は24.01%」であるとの記載、又は他の甲号証の記載を参酌しても、甲1発明において、本件訂正発明1の「カルシウムスルフォネートコンプレックス」に相当する成分の量を「潤滑剤組成物全量に対して10質量%~40質量%」とすることを、当業者が容易になし得たとはいえない。

してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲1~甲9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)申立人の主張

申立人は、令和8年1月19日の意見書において、「甲1の段落[0004]は、極圧剤等の添加を排除すべきことを教示するものではない。潤滑剤組成物全量に対するカルシウムスルフォネートコンプレックスの含有量は、所望する目的に応じて、添加する基油の量や、その他の添加物の量により調整することが可能であり、甲1発明の55%を本件補正発明の範囲とすることに、特段の困難性はない。本件特許の実施例において、増ちょう剤としてアルミニウムコンプレックスを用いた場合、低温特性及び剪断安定性に劣ることが示され、基油として流動パラフィンを用いた場合、低温特性に劣ることが示されていが、カルシウムスルフォネートコンプレックスの含有量を10~40質量%の範囲に制御することによる格別に優れた効果は認められない。」との趣旨の主張をしている。

しかしながら、前記(イ)のとおり、甲1の[0004]には、甲1発明が、極圧型添加剤を含まずに、複合スルホン酸カルシウムグリースの高極圧抗摩耗性を発揮することを意図したものであることが示唆されているから、極圧型添加剤を含まないことを前提とした甲1発明において、極圧性能を発揮するのに必要な複合スルホン酸カルシウムの量を望ましい範囲の下限より少なくすることが動機付けられるとはいえない。そうすると、本件訂正発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件訂正発明2~12

本件訂正発明2~12は、本件訂正発明1の記載を引用する形式で記載されたものであって、前記(2)の<相違点1-1>に係る特定事項を全て含むものである。

そうすると、本件訂正発明2~12は、前記(2)と同じ理由により、甲1発明及び甲1~甲9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 甲2を主引例とした進歩性欠如

(1)甲2に記載された発明

甲2(前記2(2)参照。)の【0089】~【0091】の「実施例1」に着目すれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。

(甲2発明)

「400TBN過塩基性油溶性カルシウムスルホネート264.98gに、100°Fで約600SUSの粘度を有する溶剤ニュートラルグループ1(solvent neutral group 1)パラフィン系基油378.68gと、100°Cで4cStの粘度を有するPAO11.10gを加えて混合し、C12アルキルベンゼンスルホン酸23.96gを加えて混合し、5ミクロン未満の平均粒径を有するカルシウムヒドロキシアパタイト50.62gと、5ミクロン未満の平均粒径を有する食品グレード純度の水酸化カルシウム3.68gを加えて混合し、氷酢酸0.84gと、12-ヒドロキシステアリン酸10.56gを加えて混合し、5ミクロン未満の平均粒径を有する微粉炭酸カルシウム55.05gを加えて混合し、ヘキシレングリコール13.34gと水39.27gを加えて混合物を加熱し、非晶質炭酸カルシウムを結晶性炭酸カルシウム(カルサイト)に変換させ、

同じ水酸化カルシウム7.34gを加えて混合し、氷酢酸1.59gを加えた後、12-ヒドロキシステアリン酸27.22gを加え、12-ヒドロキシステアリン酸が溶けてグリースに混合された後、ホウ酸9.37gを熱水50gに混合し、その混合物をグリースに加え、

同じパラフィン系基油62.29gを更に加え、75%リン酸水溶液17.99gを加えて、混ぜて反応させ、

パラフィン系基油46.90gを更に加えて加熱し、スチレン-アルキレンコポリマー22.17gをクラム形成固体(crumb-formed solid)として加え、グリースを更に加熱し、ポリマーをグリース混合物に完全に溶解させ、グリースを外気中で攪拌しながら冷却し、5μm未満の平均粒径を有する食品グレードの無水硫酸カルシウム33.30gを加え、

アリールアミン酸化防止剤2.27gとポリイソブチレンポリマー4.46gとを加え、同じパラフィン系基油55.77gを追加し、攪拌を続けて得られたカルシウムスルホネートコンプレックスグリースであって、

最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネートの割合は24.01%であり、滴点は、>650°Fであるカルシウムスルホネートコンプレックスグリース。」

(2)対比・判断

ア 本件訂正発明1

(ア)対比

対比するにあたり、まず、甲2発明の組成を整理する。甲2発明の最終グリースの重量は、最終グリース中の過塩基性油溶性カルシウムスルホネート(264.98g)の割合が24.01%であることから逆算すると、264.98/24.01×100≒1103.48gであり、これは、化合物の総量(列挙された原料の重量の合計)1192.75gから、水39.27gと熱水50gを除いた値と一致する(75%リン酸水溶液中の水に相当する量の水は残存していると考えられる。)。

甲2発明の基油に対応する化合物の総量は、「過塩基性油溶性カルシウムスルホネート」に希釈剤として含まれる可能性のある基油を除けば、「パラフィン系基油」と「PAO」であり、その合計量は、378.68+11.10+62.29+46.9+55.77=554.74gであり、最終グリースに対する重量比は、554.74/1103.48×100≒50.27%である。

甲2発明の酸化防止剤に対応する化合物は「アリールアミン酸化防止剤」であって、2.27gであり、最終グリースに対する重量比は、2.27/1103.48×100≒0.21%である。

甲2発明のカルシウムスルフォネートコンプレックスに対応する化合物は定かでないが、基油及び酸化防止剤以外の成分が該当するとすれば、1103.48-554.74-2.27=546.47gであり、最終グリースに対する重量比は、546.47/1103.48×100≒49.52%である。

そこで、本件訂正発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の基油及び酸化防止剤以外の成分は、カルシウムスルフォネートコンプレックスないしは増ちょう剤的な役割を果たすと考えられる。

また、甲2発明の「アリールアミン酸化防止剤2.27g」は、最終グリースに対する重量比が0.21%であるから、本件訂正発明1の「潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の芳香族アミン系酸化防止剤」に相当する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>

「基油と、増ちょう剤とを含有する潤滑剤組成物であって、

前記基油としてポリアルファオレフィンを含み、前記増ちょう剤としてカルシウムスルフォネートコンプレックスを含み、

さらに酸化防止剤を含有し、

前記酸化防止剤は、

潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下の芳香族アミン系酸化防止剤を含む、

潤滑剤組成物。」

<相違点2-1>

本件訂正発明1は「基油として潤滑剤組成物全量に対して30質量%~70質量%のポリアルファオレフィンを含」むのに対し、甲2発明は、基油として、「パラフィン系基油」と「PAO」を合計50.27%含むものの、PAOの割合は11.10/1103.48×100≒1.01%である点。

<相違点2-2>

本件訂正発明1は「潤滑剤組成物全量に対して10質量%~40質量%のカルシウムスルフォネートコンプレックスを含」むのに対し、甲2発明は、カルシウムスルフォネートコンプレックスに相当する成分が定かではないが、基油及び酸化防止剤以外の成分が該当するとすれば、49.52%である点。

<相違点2-3>

酸化防止剤が、本件訂正発明1は「潤滑剤組成物全量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下のチオフェノール系酸化防止剤」「を含み、前記チオフェノール系酸化防止剤は、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む」のに対し、甲2発明は、チオフェノール系酸化防止剤を含まない点。

<相違点2-4>

潤滑剤組成物が、本件訂正発明1は「食品機械用」であるのに対し、甲2発明は、その明示がない点。

(イ)判断

まず、相違点2-1について検討する。甲2発明の基油について、甲2発明を認定した甲2の【0031】には、「合成基油も本発明のグリースに使用することができる。そのような合成基油には、ポリアルファオレフィン(PAO)、ジエステル、ポリオールエステル、ポリエーテル、アルキル化ベンゼン、アルキル化ナフタレン、及びシリコーン油が含まれる。」と記載されるものの、「当業者には理解できるように、合成基油は、変換処理の間に存在すると、悪影響を及ぼすことがある。そのような場合、それらの合成基油は、最初は加えず、変換後などの、悪影響が排除され又は最小化される工程にてグリース製造処理に加えられる。」とも記載されており、この記載は、甲2発明において、変換処理工程でPAOがほとんど用いられていないことと整合する。

これに対して、甲1の[0040]には、高塩基性合成スルホン酸カルシウム、水とエタノールの混合物(水とエタノールの質量比は1:1)、酢酸56gを加えて結晶構造の炭酸カルシウムに変換し、水酸化カルシウムとステアリン酸を順に添加し、ホウ酸カルシウムを添加し、冷却後、チオジプロピオン酸ジドデシルを添加し、均質化後、PAO 1218g(前記1(2)アで検討したとおり、組成物の総量に対して43.5重量%)を添加して増粘することが記載されているが、PAOは変換工程で添加されるものではなく、変換が終わった後に添加されるものであるから、甲1の記載は、甲2発明の変換工程において、PAOを添加する動機付けとはならない。

また、甲8の【0031】及び【0032】には、基油60質量%を含むカルシウムスルフォネートコンプレックスの製造について記載されているが、【0037】の【表1】及び【0038】の【表2】において、カルシウムスルフォネートコンプレックスを用いるものは比較例4、7のみであって、いずれも、基油としてPAOを用いるものではないから、甲8にも、カルシウムスルフォネートコンプレックスの変換工程でPAOを用いることは記載されていない。

また、その他の甲号証には、カルシウムスルフォネートコンプレックスとPAOの関係について記載されていない。

そうすると、甲1、甲8の記載があったとしても、甲2発明において、変換処理で用いられることが好ましくないとされるPAOを30~70質量%含むようにすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。

さらに、甲1発明において、グリースがしつこいために添加された基油であるパラフィン系基油62.29+46.9+55.77=164.96g全てをPAOに置き換えたとしても、PAOの割合は、1.01%+14.95(≒164.96/1103.48×100)=15.96%であって、30%を超えることはない。

してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明及び甲1~甲9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)申立人の主張

申立人は、令和8年1月19日の意見書において、「甲2の表1には、最終グリース生成物に含まれる基油成分の好ましい含有量が30~70重量%であることが示されている。また、合成基油の選択肢の1つにPAOが挙げられており、加える基油の総量は、グリースの最終重量に基づき当該表1の範囲内であることが好ましいことも示唆されている。さらに、本件特許の実施例において、基油の含有量を30~70質量%の範囲に制御することによる格別に優れた効果も認められない。」との趣旨の主張をしている。

しかしながら、前記(イ)のとおり、甲2の【0031】には、(PAOのような)合成基油は、変換処理の間に存在すると、悪影響を及ぼすとの趣旨の記載があるから、甲2発明において、変換処理で用いられることが好ましくないとされるPAOを30~70質量%含むようにする動機付けはない。そうすると、効果について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件訂正発明2~12

本件訂正発明2~12は、本件訂正発明1の記載を引用する形式で記載されたものであって、前記(2)の<相違点2-1>に係る特定事項を全て含むものである。

そうすると、本件訂正発明2~12は、前記(2)と同じ理由により、甲2発明及び甲1~甲9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 取消理由で採用しなかった申立理由(前記第4の1(2)サポート要件)について

(1)増ちょう剤の種類について

申立人は、本件明細書の実施例において使用されている増ちょう剤は、単にカルシウムスルフォネートコンプレックスであると記載されているのみで、いずれの化合物を使用することによって【表1】の結果が得られたのかが不明であるから、本件特許の請求項1~12に係る発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである、との趣旨の主張をしている。

しかしながら、本件明細書の実施例の記載から、本件訂正発明1で特定される含有量の化合物を含む組成物は、カルシウムスルフォネートコンプレックスの種類によらず、発明の課題を解決できることを認識できるから、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものとはいえない。

(2)抗酸化剤の添加量について

申立人は、本件明細書において、芳香族アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びチオフェノール系酸化防止剤のいずれについても、潤滑剤組成物の全量に対して0.5質量%を超えると食品機械用途の潤滑剤組成物として好適に用いることができないと記載されているところ、これらの酸化防止剤の含有量が何ら特定されていない本件特許の請求項1~12に係る発明は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えている、との趣旨の主張をしている。

しかしながら、前記第2の訂正により、酸化防止剤の含有量は、いずれも0.5質量%以下であることが特定されたから、この点において、本件訂正発明が、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。

また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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