結論テキスト
特許第7353441号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7353441号の請求項1~10に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024700281 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7353441号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成30年4月24日(優先権主張 平成29年5月30日)に出願した特願2018-82694号の一部を、令和4年8月8日に新たな特許出願としたものであって、令和5年9月21日にその特許権の設定登録がされ、令和5年9月29日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 3月28日 :特許異議申立人渡辺陽子(以下「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 6月26日付け:取消理由通知書
令和6年 8月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 8月20日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和6年10月25日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年12月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和7年 3月21日付け:異議の決定(以下「一次決定」という。)
令和7年 4月24日 :一次決定に対する訴えの提起(令和7年(行ケ)第10039号)
令和8年 1月15日 :決定取消の判決の言渡
令和8年 2月 2日 :決定取消の判決の確定
令和6年8月15日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、当審から令和6年8月27日付け、及び令和6年12月20日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、いずれについても、当該期間内に申立人からは応答がなかった。
本件決定に対する取消判決の主文は「1 特許庁が異議2024-700281号事件について令和7年3月21日にした決定のうち、特許第7353441号の請求項1から7まで、9及び10に係る特許を取り消した部分を取り消す。2 訴訟費用は被告の負担とする。」であり、異議決定のうち、請求項1~7、9及び10係る部分が取り消された。
一方、本件において、請求項2~10は訂正された請求項1を引用しており、請求項1~10は一群の請求項を構成している。
そこで、181条2項の規定に基づき、一次決定における一群の請求項1~10を構成する請求項8に対する決定を取り消した上で、本件の請求項1~10に係る特許に対する異議申立てについて判断する。
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「実使用状態において太陽光が入射する側の表面から順に、ハードコート、アンカーコート、及び樹脂フィルムの層を有し;」を、
「実使用状態において太陽光が入射する側の表面から順に、ハードコート、アンカーコート、及び樹脂フィルムの層を有し;
上記ハードコートは、実使用状態において太陽光が入射する側の表面を形成し、
」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項1に記載された「上記ハードコートは、1分子中にベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を1個以上有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、全構成モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、1モル%以上の量で含む(A)重合体を含む第1の塗料からなり;」を、
「上記ハードコートは、1分子中にベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を1個以上有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、全構成モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、1モル%以上の量で含む(A)重合体を含む第1の塗料からなり
(但し、上記ハードコートから、樹脂成分として有機骨格に無機成分が結合した有機無機複合体を含むものを除く)
;」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項8に記載された
「上記ハードコートが、更に多官能(メタ)アクリレートを含む請求項1~7の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。」を、
「上記ハードコートが、
上記(A)重合体、及び
多官能(メタ)アクリレートを含む
上記第1の塗料からなり、ここで上記(A)重合体は、更に、(a2)アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位、及び(a3)1分子中に1個以上のイソシアネート基を有する化合物に由来する構成単位を含む、
請求項1~7の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、10も同様に訂正する。)。
本件訂正前の請求項1~10は、請求項2~10が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~10〕について請求されたものである。
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「ハードコート」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0104】、【0114】、【0116】及び本件特許の図面の【図5】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の「ハードコート」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2の「ハードコート」について、「(但し、上記ハードコートから、樹脂成分として有機骨格に無機成分が結合した有機無機複合体を含む物を除く)」とする点は、当該除外により、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に該当せず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項8の「ハードコート」が「(A)重合体」を含むこと、及び当該「(A)重合体」の組成について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は、本件特許の明細書の【0019】、【0140】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
上記第3のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~10の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
実使用状態において太陽光が入射する側の表面から順に、ハードコート、アンカーコート、及び樹脂フィルムの層を有し;
上記ハードコートは、実使用状態において太陽光が入射する側の表面を形成し、
上記ハードコートは、1分子中にベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を1個以上有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、全構成モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、1モル%以上の量で含む(A)重合体を含む第1の塗料からなり
(但し、上記ハードコートから、樹脂成分として有機骨格に無機成分が結合した有機無機複合体を含むものを除く);
上記アンカーコートは、1分子中にベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を1個以上有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、全構成モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、1モル%以上の量で含む(P)重合体を含む第2の塗料からなり;
ここで、上記(P)重合体から、反応性シリル基を有するモノマーを、全モノマー成分を100質量%として、50~90質量%の量で重合してなるものを除くものとする、
ハードコート積層フィルム。
【請求項2】
下記特性(イ)、(ロ)、及び(ニ)を満たす、請求項1に記載のハードコート積層フィルム。
(イ)可視光線透過率が80%以上である。
(ロ)紫外線透過率が1%以下である。
(ニ)JIS A5759:2016の6.10耐候性に準拠し、JIS B7753:2007に規定されるサンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機を使用し、試験片をハードコート積層フィルムのハードコート側の面が照射面となるようにセットし、JIS A5759:2016の6.10耐候性の表11に示される条件で1000時間の促進耐候性処理をした後、碁盤目試験を、JIS K5600-5-6:1999に従い、促進耐候性処理後のハードコート積層フィルムにハードコート面側から碁盤目の切れ込みを入れて行ったとき分類4、分類3、分類2、分類1又は分類0である。
【請求項3】
上記ハードコートが、上記(A)重合体を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる;請求項1又は2に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項4】
上記第2の塗料が含む上記(P)重合体が、
(p1)1分子中にベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を1個以上有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位;
(p2)アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位;及び、
(p3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位;
を含む、請求項1~3の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項5】
上記第2の塗料が含む上記(P)重合体が、
全構成モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、
(p1)1分子中にベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を1個以上有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位 1~50モル%;
(p2)アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位 30~95モル%;及び、
(p3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位 1~50モル%;
を含む、請求項1~4の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項6】
上記(p2)アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位が、メチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位、又はエチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む請求項4又は5の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項7】
上記第2の塗料が、更に1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を、上記第2の塗料が含む上記(P)重合体100質量部に対して、1~50質量部含む請求項1~6の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項8】
上記ハードコートが、上記(A)重合体、及び多官能(メタ)アクリレートを含む上記第1の塗料からなり、ここで上記(A)重合体は、更に、(a2)アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位、及び(a3)1分子中に1個以上のイソシアネート基を有する化合物に由来する構成単位を含む、請求項1~7の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のハードコート積層フィルムを含むガラス外貼り用フィルム。
【請求項10】
請求項1~8の何れか1項に記載のハードコート積層フィルムの有する樹脂フィルムの層のハードコートが形成される側の面とは反対側の面の上に粘着剤層を有し;
上記粘着剤層が、上記粘着剤層のベース樹脂100質量部に対して、紫外線吸収剤0.01~50質量部を含む;ガラス外貼り用フィルム。
本件訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、当審が令和6年10月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、引用文献2に記載された発明、引用文献1に記載された事項及び周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2001-246687号公報(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2013-216774号公報(申立人が提出した甲第2号証)
引用文献3:特開2016-94016号公報(申立人が提出した甲第3号証)
引用文献4:特開2005-153441号公報(申立人が提出した甲第4号証)
引用文献6:特開2010-7027号公報(申立人が提出した甲第6号証)
引用文献7:特開2013-127043号公報(申立人が提出した甲第7号証)
当審合議体は、合議の結果、上記取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由によっては、本件発明1~10は取り消されるべきではないものと判断する。
(1)引用文献に記載された発明等
ア 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
引用文献2には次の記載がある。なお下線は当審において付したものである。以下同様。
「【請求項1】
屋外側の硝子表面に貼着する硝子外貼り用フィルムであって、
紫外線吸収剤を含むポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に、最大吸収波長が360nm以上400nm以下である紫外線吸収剤を含むアンカーコート層と、最大吸収波長が200nm以上360nm未満である紫外線吸収剤および樹脂成分を含むハードコート層とがこの順で積層され、
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの他方の面に、熱線吸収剤を含む裏面コート層および粘着層がこの順で積層されてなり、
前記ハードコート層における紫外線吸収剤が、前記樹脂成分と結合してなることを特徴とする硝子外貼り用フィルム。
」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって
本発明の目的は、
上記のような従来の課題を解決し、
紫外線の吸収特性、熱線の吸収特性、耐傷付き性、透明性、耐候性、塗膜密着性に優れる硝子外貼り用フィルムおよびその製造方法を提供すること
にある。」
「【0014】
(ポリエチレンテレフタレートフィルム)
ポリエチレンテレフタレートフィルム102は、フィルムに強度を持たせるという観点から、二軸延伸のポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。また、ポリエチレンテレフタレートフィルム102に含まれる紫外線吸収剤としては、とくに制限されないが、本発明の効果の観点、とくに紫外線の吸収特性および耐候性の点から、環状イミノエステルが好ましく、ビスベンゾオキサジノンがさらに好ましい。当該紫外線吸収剤を用いることにより波長380nmの光の透過率が25%以下であり、390nmの光の透過率が60%以上、400nmでの光の透過率が80%以上であることが達成できる。これら化合物は一般溶媒への溶解性が小さく、塗料としてコーティングすることは難しいため、ポリエチレンテレフタレートフィルム102中へ含有させる。このような紫外線吸収剤を含むポリエチレンテレフタレートフィルム102は公知であり、前記の特許文献1に記載されている他、帝人デュポンフィルム(株)から商品名テトロンHB3として市販されている。
ポリエチレンテレフタレートフィルム102の厚みとしては25μm~200μmが好ましく、30μm~150mがさらに好ましい。厚みが25μm未満であると、耐候性、飛散防止性が低下し、200μmを超えると施工性が低下する。なお、飛散防止性を確保するには厚みが50μm以上であることが好ましい。
【0015】
(アンカーコート層)
アンカーコート層104は、最大吸収波長が360nm以上400nm以下である紫外線吸収剤を含むコート層である。
アンカーコート層104に用いる紫外線吸収剤としては、
最大吸収波長が360nm以上400nm以下であるものの中から適宜選択すればよいが、ベンゾフェノン系が好ましく
、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシ-ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-ベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシ-ベンゾフェノン等が挙げられる。
アンカーコート層104を形成する樹脂成分としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム102およびハードコート層106との密着性および接着性を確保でき、耐候性を阻害しなければ、特には限定されず、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系等が使用できる。
紫外線吸収剤の添加量としては樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.5質量部~8質量部がさらに好ましい。この添加量の範囲とすることにより、紫外線の吸収特性、耐候性、密着性のバランスが取れた製品となる。
アンカーコート層104の厚みとしては0.5μm~5μmが好ましく、1μm~4μmがさらに好ましい。厚みが0.5μm未満であると密着性および接着性が低下し、5μmを超える透明性が低下する。
【0016】
(ハードコート層)
ハードコート層106は、最大吸収波長が200nm以上360nm未満である紫外線吸収剤および樹脂成分を含み、かつ該紫外線吸収剤が、該樹脂成分と結合してなるコート層である。
樹脂成分としては、耐傷付き性、飛散防止性、耐候性等の観点から、有機無機複合体であることが好ましい
。有機無機複合体は、有機無機ハイブリッドポリマーとしても知られている。また本発明においては、有機骨格に無機成分および紫外線吸収剤が共重合やグラフト等により結合し、紫外線で硬化するタイプの有機無機複合体がさらに好ましい。有機骨格としては、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等が挙げられ、無機成分としてはポリシロキサン、酸化亜鉛等が挙げられる。紫外線吸収剤が有機骨格と結合していることにより、紫外線吸収剤を単に添加しているタイプに比べ、脱離、分解が抑制され、耐候性や長期安定性に優れる。また、
無機成分が有機骨格と結合していることにより、高硬度となり、耐傷付き性、耐久性にも優れたものとなる
。
紫外線吸収剤としては、最大吸収波長が200nm以上360nm未満であるものの中から適宜選択すればよいが、例えば公知のベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系等が挙げられ、前記のように有機骨格と反応可能とするために、紫外線吸収剤を反応性モノマーとし、有機骨格と共重合させるのが好ましい。
前記の有機骨格に無機成分および紫外線吸収剤が結合し、紫外線で硬化するタイプの有機無機複合体は公知であり、また市販されているものを利用でき、例えば中国塗料(株)製の商品名フォルシードNo.460Cタイプが挙げられる。
ハードコート層106の厚みとしては3μm~10μmが好ましく、4μm~8μmがさらに好ましい。厚みが3μm未満であると、耐候性、耐傷付き性が低下し、10μmを超えると、カールおよび塗膜のクラックが発生しやすくなる。」
「【0031】
ハードコート層形成用塗料2:
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 100質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製チヌビン384-2)
3質量部
アルキルフェノン系光開始剤(BASF社製イルガキュア127)
4質量部
メチルエチルケトン(溶剤) 120質量部」
「【0038】
<可視光線透過率>
分光光度計にてJIS A5759へ準じて測定した。
〇:75%以上、
△:65%以上、75%未満、
×:65%未満、
として評価した。
【0039】
<紫外線透過率>
分光光度計にてJIS A5759に準じて測定した。
但し、ハードコート層、ポリエチレンテレフタレートフィルム層、アンカーコート層のみの構成にて評価した。
〇:1%未満、
△:1%以上、3%未満、
×:3%以上、
として評価した。」
「【0043】
実施例2,3、比較例1,2,3,5
表1に示す各種塗料を用いたこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。」
「【0047】
表1の結果から、実施例の硝子外貼り用フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にアンカーコート層およびハードコート層を積層し、他方の面に熱線吸収剤を含む裏面コート層および粘着層を積層し、該ポリエチレンテレフタレートフィルム、アンカーコート層およびハードコート層のすべてに紫外線吸収剤を配合するとともに、該アンカーコート層およびハードコート層の紫外線吸収剤の最大吸収波長を各層で特定範囲に設定し、かつ該ハードコート層における紫外線吸収剤を樹脂成分と結合させているので、各比較例に比べて、紫外線の吸収特性、熱線の吸収特性、耐傷付き性、飛散防止性、透明性、耐候性、塗膜密着性に優れることが証明された。」
(イ)引用文献2に記載された発明
上記(ア)によると、引用文献2には、次の発明が記載されている。
「屋外側の硝子表面に貼着する硝子外貼り用フィルムであって、
紫外線吸収剤を含むポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に、最大吸収波長が360nm以上400nm以下である紫外線吸収剤を含むアンカーコート層と、最大吸収波長が200nm以上360nm未満である紫外線吸収剤および樹脂成分を含むハードコート層とがこの順で積層され、
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの他方の面に、熱線吸収剤を含む裏面コート層および粘着層がこの順で積層されてなり、
前記ハードコート層における紫外線吸収剤が、前記樹脂成分と結合してなる硝子外貼り用フィルム。」(以下「引用発明2」という。)
イ 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
引用文献1には次の記載がある。
「【0021】本発明において、
基材の熱可塑性フィルムと紫外線吸収層との接着性を向上させる目的で
、熱可塑性フィルム表面に各種放電処理、酸化処理、粗面化処理、
アンカーコート処理などを施すことができる
。
【0022】本発明の
光触媒コート用積層フィルムは、この光触媒コート用積層フィルムを基材とし、さらにブチルシリケート加水分解物等からなる無機コート層を形成した後、酸化チタン等からなる光触媒層を積層形成し、光触媒フィルムとすること
ができる。
【0023】このようにして得られた
光触媒フィルムは、屋外用途、例えば、窓ガラスの外側に貼付し汚れ防止あるいはガラス飛散防止用として、また、車のサイドミラーの曇り止め用あるいは屋外看板の汚れ防止用などに好適に利用すること
ができる。
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明について更に詳しく説明する。なお、各特性の測定と評価方法は次のとおりである。
【0024】[特性の測定、評価]
(イ)耐候性
紫外線劣化促進試験機(アイスーパーUVテスター SUV-W131:岩崎電気(株)製)を用いて、下記の条件で照射サイクルテストを行ない、フィルムの色目変化、光学特性、機械的特性を評価した。ライト8時間(UV照度:100mW/cm
2
温湿度:60°C×50%RH)→デュー4時間(温湿度:35°C×100%RH結露)の12時間で照射サイクル1サイクルとし、12サイクル照射前後の特性を評価した。
【0025】(ロ)フィルムの色目変化
アイスーパーUVテスター照射後のフイルムの色目変化を肉眼で判定し、〇と△を良好とした。
〇:変化なし。
△:僅かに黄色く変化している。
×:黄褐色に変化している。
【0026】(ハ)光学特性
直読ヘイズコンピューター(HGM-2DP:スガ試験機(株)製)を用いて、ヘイズ、光線透過率を測定した。
【0027】(ニ)引っ張り強度と伸度
テンシロンを使用し、引っ張り速度200mm/分、試長50mm、幅5mmの短冊状フィルムの引っ張り強度と伸度を測定した。
【0028】(ホ)密着性A(ベースフィルムと紫外線吸収層との密着)
JIS K5400 碁盤目テープ法に準じて紫外線吸収層の密着性を評価した。基準は次のとおりである。
〇:紫外線吸収層の剥離は見られない(評価点8~10点)。
△:紫外線吸収層の剥離がわずかに見られる(評価点2~6点)。
×:紫外線吸収層が全面にわたり剥離する(評価点0点)。
【0029】(ヘ)密着性B
紫外線吸収層の上に、n-ブチルシリケート加水分解物とメトキシメチルシラン加水分解物(1:2)を塗布し、160°C2分間乾燥して厚み5μmの無機系中間層を得た。紫外線吸収層とこの無機系中間層との密着性をJIS K5400 碁盤目テープ法に準じて評価した。基準は次のとおりである。
〇:無機系中間層の剥離は見られない(評価点8~10点)。
△:無機系中間層の剥離がわずかに見られる(評価点2~6点)。
×:無機系中間層が全面にわたり剥離する(評価点0点)。
【0030】(実施例1)
二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー””(東レ株式会社登録商標)タイプT60、厚み50μm)の片面に、
下記する(A)層の塗料組成物を、塗布後の厚みが2μmとなるように固形分濃度20%の溶液を#6メタリングバーで塗布し、120°Cで1分間乾燥して
紫外線吸収層A層を形成した
。
さらに、このA層上に、
下記する(B)層の塗料組成物を硬化後の厚みが4μmになるように固形分濃度25%の溶液を#10メタリングバーで塗布し、80°Cの熱風乾燥機で溶媒を乾燥した後、コンベア式高圧水銀ランプ(アイグラフィック社製)で紫外線光量300mJ/cm
2
を照射し硬化させ、
紫外線吸収層を兼ねた耐候性表面硬度化層(B)層を形成し積層フィルムを製造した
。
【0031】
(A)層の塗料組成物
2-(2′-ヒドロキシ-5′-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(30wt%)共重合メチルメタクリレート
95部
変性飽和ポリエステル樹脂 4部
メチル化メラミン樹脂 1部
トルエン/メチルエチルケトン=1:1 400部
(B)層の塗料組成
2-(2′-ヒドロキシ-5′-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール
20部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 68部
ポリエステルアクリルオリゴマー 8部
2-ヒドロキシプロピルアクリレート 4部
イルガキュアー183(チバガイギー社製) 4部
トルエン/メチルエチルケトン=1:1 312部。」
「【0034】(実施例4)実施例1の(B)層の紫外線吸収剤(2-(2′-ヒドロキシ-5′-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール)の代わりに、2-(2′-ヒドロキシ-5′-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(50wt%)共重合メチルメタクリレートを添加した塗料組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。」
「【0036】以上の実施例1~4および比較例1~2の光触媒コート用耐候性フィルムの各種特性を評価した結果を表1に示す。表1の結果から、本発明の積層フィルムが耐候性、透明性および密着性に優れていることがわかる。
【0037】
【表1】
138
153
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」
(イ)引用文献1に記載された事項
引用文献1の【0030】には、「二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム」の片面に「紫外線吸収層(A)層」を形成し、このA層上に、「耐候性表面硬度化層(B)」を形成した積層フィルムを製造することが記載されている。
そして、当該「紫外線吸収層(A)」、「耐候性表面硬化層(B)」の機能に鑑みれば、積層フィルムにおいてこれらが積層されている側が実使用状態において太陽光が入射する側であると理解される。
そうすると、引用文献1の実施例4に関する記載及び上記認定事項を総合すると、引用文献1には次の事項が記載されている。
「二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの太陽光が入射する側に、紫外線吸収層(A)層を形成し、この(A)層上に紫外線吸収層を兼ねた耐候性表面硬度化層(B)層を形成した光触媒コート用積層フィルムにおいて、
(A)層の塗料組成物が、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(30wt%)共重合メチルメタクリレート95部、変性飽和ポリエステル樹脂4部、メチル化メラミン樹脂1部を含有すること。」(以下「引用文献1記載事項」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明2を対比する。
引用発明2の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1の「樹脂フィルム」に相当し、以下同様に、「アンカーコート層」は「アンカーコート」に、「ハードコート層」は「ハードコート」に、「ガラス外貼り用フィルム」は「ハードコート積層フィルム」に相当する。
引用発明2の「屋外側の硝子表面に貼着する硝子外貼り用フィルムであって、紫外線吸収剤を含むポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に、最大吸収波長が360nm以上400nm以下である紫外線吸収剤を含むアンカーコート層と、最大吸収波長が200nm以上360nm未満である紫外線吸収剤および樹脂成分を含むハードコート層とがこの順で積層され、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの他方の面に、熱線吸収剤を含む裏面コート層および粘着層がこの順で積層されてな」ることは、本件発明1の「実使用状態において太陽光が入射する側の表面から順に、ハードコート、アンカーコート、及び樹脂フィルムの層を有し;上記ハードコートは、実使用状態において太陽光が入射する側の表面を形成」することに相当する。
以上のことから、本件発明1と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「実使用状態において太陽光が入射する側の表面から順に、ハードコート、アンカーコート、及び樹脂フィルムの層を有し;
上記ハードコートは、実使用状態において太陽光が入射する側の表面を形成する、ハードコート積層フィルム。」
[相違点1]
本件発明1は「上記ハードコートは、1分子中にベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を1個以上有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、全構成モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、1モル%以上の量で含む(A)重合体を含む第1の塗料からなり(但し、上記ハードコートから、樹脂成分として有機骨格に無機成分が結合した有機無機複合体を含むものを除く)」ものであるのに対して、引用発明2は「ハードコート層」が「最大吸収波長が200nm以上360nm未満である紫外線吸収剤および樹脂成分を含」み、「前記ハードコート層における紫外線吸収剤が、前記樹脂成分と結合してなる」点。
[相違点2]
本件発明1は「上記アンカーコートは、1分子中にベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を1個以上有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、全構成モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、1モル%以上の量で含む(P)重合体を含む第2の塗料からなり;ここで、上記(P)重合体から、反応性シリル基を有するモノマーを、全モノマー成分を100質量%として、50~90質量%の量で重合してなるものを除くものとする」ものであるのに対して、引用発明2は「アンカーコート層」が「最大吸収波長が360nm以上400nm以下である紫外線吸収剤を含む」点。
イ 判断
(ア)相違点1について
引用文献2の【0007】には、「発明が解決使用とする課題」に関して、「本発明の目的は、・・・紫外線の吸収特性、熱線の吸収特性、耐傷付き性、透明性、耐候性、塗膜密着性に優れる硝子外貼り用フィルムおよびその製造方法を提供すること・・・」と記載されており、【0016】には、「ハードコート層」に関して、「樹脂成分としては、耐傷付き性、飛散防止性、耐候性等の観点から、有機無機複合体であることが好ましい。・・・無機成分が有機骨格と結合していることにより、高硬度となり、耐傷付き性、耐久性にも優れたものとなる。」と記載されている。
そうすると、そもそも耐傷付き性や耐候性等の向上を意図した引用発明2において、樹脂成分として無機成分が有機骨格と結合しているものが好ましいとされているのであるから、引用発明2においてこの点が必須の事項ではないとしても、あえてこれを排除することに合理的な理由はなく、当業者が容易に想到し得た事項であるということはできない。
(イ)相違点2について
引用文献1記載事項の「光触媒コート用積層フィルム」は、「二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム」、「紫外線吸収層(A)層」、「耐候性表面硬化層(B)層」を積層したものであるところ、引用文献1の【0021】には、「基材の熱可塑性フィルムと紫外線吸収層との接着性を向上させる目的」のもとに「熱可塑性フィルム表面に・・・アンカーコート処理などを施すこと」が記載されている。そうすると、「二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム」に積層されている「紫外線吸収層(A)層」は、いわゆるアンカーコート層ではないと理解される。
してみれば、引用文献1記載事項には、アンカーコート層を紫外線吸収層として機能させることは、そもそも記載されていない。
よって、引用発明2に引用文献1記載事項を適用したとしても、当該相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることはできない。
加えて、引用文献2の【0015】には、「アンカーコート層104に用いる紫外線吸収剤としては、最大吸収波長が360nm以上400nm以下であるものの中から適宜選択すればよいが、ベンゾフェノン系が好ましく」と記載されている中で、最大吸収波長が不明であり、かつ、ベンゾフェノン系でもない引用文献1記載事項を引用発明2に適用することは、当業者にとって動機づけがない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、引用発明2及び引用文献1記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加えるものであるから、いずれも引用発明2及び引用文献1記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性、進歩性)
請求項1~3に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(甲1を主引例とする進歩性)
請求項1~10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1~甲9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)提出された証拠
以下、申立人が提出した甲第1~9号証を「甲1」等という。
甲1:特開2001-246687号公報
甲2:特開2013-216774号公報
甲3:特開2016-94016号公報
甲4:特開2005-153441号公報
甲5:特開平10-329291号公報
甲6:特開2010-7027号公報
甲7:特開2013-127043号公報
甲8:特開2004-182924号公報
甲9:特開2014-171974号公報
甲1の特に実施例4(【0021】~【0031】、【0034】、【0036】、【0037】)に着目すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの太陽光が入射する側に、紫外線吸収層(A)層を形成し、紫外線吸収層を兼ねた耐候性表面硬度化層(B)層を形成した光触媒コート用積層フィルムであって、
(A)層の塗料組成物が、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(30wt%)共重合メチルメタクリレート95部、変性飽和ポリエステル樹脂4部、メチル化メラミン樹脂1部、トルエン/メチルエチルケトン=1:1 400部を含有し、
(B)層の塗料組成物が、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(50wt%)共重合メチルメタクリレート20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート68部、ポリエステルアクリルオリゴマー8部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート4部、イルガキュアー183(チバガイギー社製)4部、トルエン/メチルエチルケトン=1:1 320部を含有し、
光線透過率が90.6%である光触媒コート用積層フィルム。」
そこで、本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点3]
本件発明1は「1分子中にベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を1個以上有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、全構成モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、1モル%以上の量で含む(P)重合体を含む第2の塗料からなり;ここで、上記(P)重合体から、反応性シリル基を有するモノマーを、全モノマー成分を100質量%として、50~90質量%の量で重合してなるものを除くものとする」「アンカーコート」を有するのに対して、甲1発明はそのよう構成を有していない点。
相違点3について検討するに、まず、上記第5の2(2)イ(イ)で示したとおり、甲1発明の「紫外線吸収層(A)層」は、いわゆるアンカーコート層ではないと理解される。
そして、甲1には、甲1発明の紫外線吸収層(A)をアンカーコート層としても機能させることは、記載も示唆もされていない。また、甲1の【0021】には、熱可塑性フィルムの表面にアンカーコート処理を施すことが記載されていることからみて、「紫外線吸収層(A)」をアンカーコート層とすることに動機づけはなく、むしろ阻害事由が存在するといえる。してみれば、甲1発明及び甲1の記載から当該相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることはできない。
また、他の証拠を含め、当該相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を記載ないし示唆しているものは見いだせない。
よって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また甲1発明及び甲1~甲9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
本件発明1と同様に、本件発明2~3は、甲1発明ではなく、また甲1発明及び甲1~甲9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないし、本件発明4~10は、甲1発明及び甲1~甲9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
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