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Trademark Appeal Case

特許訂正要件の判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024700813
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7488667号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。
特許第7488667号の請求項1、2及び4に係る特許を維持する。
特許第7488667号の請求項3に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7488667号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年2月28日(優先権主張 平成31年2月28日)の出願であって、令和6年5月14日に特許権の設定の登録がされ、同年同月22日にその特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~4に係る発明の特許に対し、同年8月28日付けで、特許異議申立人 森山 涼子(以下「申立人A」という。)により、同年11月20日付けで、特許異議申立人 郡司 理(以下「申立人B」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。

その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和7年 3月31日付け 取消理由通知

同年 5月19日 応対記録(特許権者)

同年 5月29日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)

同年 6月17日付け 手続補正指令(方式)

同年 7月22日 上申書・手続補正書(特許権者)

同年 7月28日付け 訂正請求があった旨の通知

同年 8月27日 意見書の提出(申立人B)

同年11月25日付け 取消理由通知(決定の予告)

令和8年 1月26日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)

以下、令和7年7月22日に提出された手続補正書に添付された訂正請求書による訂正の請求を「先の訂正請求」といい、令和8年1月26日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

申立人Aは、令和7年7月28日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。

また、令和8年1月26日提出の訂正請求書による訂正の請求に関し、先の訂正請求に対して、申立人A及びBに訂正の請求があった旨を通知して意見書を提出する機会を既に与えており、かつ、第2以降で述べるとおり、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても 特許を維持すべきとの結論となるから、本件訂正請求については、特許法第120条の5第5項に規定する特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないとされる特別な事情にあたると認められ、申立人に、再度、意見書を提出する機会を与えなかった。

なお、本件訂正請求により、先の訂正請求は取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。

第2 本件訂正請求について

1 訂正の内容

本件訂正請求の「請求の趣旨」は、「特許第7488667号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容は、本件訂正請求書の記載及び本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項1~3からなるものである。

なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に、

「前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上である、マスク製剤。」と記載されているのを、

「前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上であ

り、

前記マスク組成物はジュレ状であり、

前記マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100である

、マスク製剤。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項4に、

「前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上である、マスク製剤キット。」と記載されているのを、

「前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上であ

り、

前記マスク組成物はジュレ状であり、

前記マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100である

、マスク製剤キット。」に訂正する。

2 一群の請求項について

本件訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。

したがって、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。

3 訂正事項についての訂正要件の判断

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1において、マスク製剤が備えるマスク組成物を「ジュレ状」に限定し、さらに「マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100である」ことを限定するものである。

したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項の追加の有無(以下「・・・」は、記載の省略を示す。)

本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)の段落【0027】には、「本発明者らの研究によると、60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、1質量%以上30質量%未満のポリオールと、少なくとも1種の高分子化合物を含み、組成物の粘度が3000mPa・s以上の構成のジュレ状の組成物においては、目付が40g/m

2

~80g/m

2

である不織布に含浸させたところ、これまでにないみずみずしい使用感が得られ、かつ、肌への密着性に優れたマスク製剤となることが分かった。」と、段落【0036】には、「本実施形態のマスク組成物は、・・・みずみずしいジュレの使用感が得られ、マスク製剤(ジュレマスク)を提供することができる(例えば、特許文献1~3参照)。」と、段落【0084】には、「・・・粘度を上げたジュレマスク(試料1~4)にすることで軋みが抑制された(「軋みのなさ」が向上した)。なお、・・・粘度を上げたジュレマスク(試料1~4)にすることにより、密着感や浸透感も向上した。」と、それぞれ記載されている。

してみると、マスク製剤が備えるマスク組成物を「ジュレ状」に訂正することは、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

また、本件明細書等の段落【0037】には、「マスク組成物の化粧料のLab表色系(Hunter Lab system)におけるL値は、好ましくは50~100であり、・・・。」と記載されており、段落【0083】の【表1】には、試料3として、L値が「99.55」のマスク組成物が記載されている。

してみると、「マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100である」と訂正することは、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無

訂正事項1に係る訂正は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項1に係る発明のカテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、請求項3を削除するというものであるから、この訂正事項による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項の追加の有無

訂正事項2に係る訂正は、請求項3を削除するというものであるから、この訂正事項による訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無

訂正事項2に係る訂正は、請求項3を削除するというものであるから、この訂正事項による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項4において、マスク製剤が備えるマスク組成物を「ジュレ状」に限定し、さらに「マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100である」ことを限定するものである。

したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項の追加の有無

訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1と同様の訂正であるから、上記(1)イで述べたのと同様の理由により、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無

訂正事項3に係る訂正は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項4に係る発明のカテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)独立特許要件について

本件訂正の訂正事項1~3に係る訂正は、上記(1)ア、(2)ア及び(3)アで示したとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的とするものであるが、本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~4に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。

4 本件訂正請求についてのまとめ

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものである。

よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件特許に係る発明

上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1、2及び4(以下「本件請求項1」、「本件請求項2」及び「本件請求項4」ということがある。)の記載は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2及び4に記載された以下のとおりのものであり、以下、本件請求項1、2及び4に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」、「本件発明2」及び「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということがある。

「【請求項1

目付が40g/m

2

~80g/m

2

である不織布と、

前記不織布に含浸されたマスク組成物と、を備えるマスク製剤であって、

前記マスク組成物は、

(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分と、

(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、

(C) 5質量%以上25質量%未満のポリオールと、

(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、

前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり、

前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり、

前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり、

前記有効成分がトラネキサム酸を含有する場合、前記マスク組成物中のトラネキサム酸の含有率は1~5質量%であり、

前記有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合、前記マスク組成物中のニコチン酸アミドの含有率は3~7質量%であり、

前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上であり、

前記マスク組成物はジュレ状であり、

前記マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100である、マスク製剤。

【請求項2】

前記マスク組成物の粘度が3000~30000mPa・sである、請求項1に記載のマスク製剤。

【請求項3】

(削除)

【請求項4】

目付が40g/m

2

~80g/m

2

である不織布と、

マスク組成物と、を備えるマスク製剤キットであって、

前記マスク組成物は、

(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下及び分子量1000以下である水溶性の有効成分と、

(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、

(C) 5質量%以上25質量%未満のポリオールと、

(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、

前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり、

前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり、

前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり、

前記有効成分がトラネキサム酸を含有する場合、前記マスク組成物中のトラネキサム酸の含有率は1~5質量%であり、

前記有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合、前記マスク組成物中のニコチン酸アミドの含有率は3~7質量%であり、

前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上であり、

前記マスク組成物はジェル状であり、

前記マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100である、マスク製剤キット。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由について

1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要

(1)申立人Aが申し立てた理由

申立人Aの特許異議申立書(以下「申立書A」という。)の第73頁3-3の下記の記載

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153

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73

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及び申立書Aの全体の記載から、申立人Aが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~4に係る特許に対して申し立てた特許異議の申立理由(以下、申立人Bの申し立てた特許異議の申立理由と併せて、単に「申立理由」という。)は、概略、以下のア~カのとおりであると認められる。

また、申立人Aは、申立書Aに添付して、証拠方法として、下記(3)の甲第1A~3A号証(以下、それぞれ「甲1A」~「甲3A」という。)を提出している。

ア 申立理由1A-1(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))

本件発明1~4の組成物が、(A)の有効成分としてトラネキサム酸を含有する場合、本件発明1~4は、甲1Aの記載に基いて、新規性を有しない。

イ 申立理由1A-2(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))

(ア)本件発明1~4の組成物が、(A)の有効成分としてトラネキサム酸を含有する場合、本件発明1~4は、甲1Aの記載に基いて、進歩性を有しない。

(イ)本件発明1~4の組成物が、(A)の有効成分としてニコチン酸アミドを含有する場合、本件発明1~4は、甲1Aの記載、及び副引例である甲2Aの記載に基いて、進歩性を有しない。

ウ 申立理由2A(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))

(ア)本件発明1~4の組成物が、(A)の有効成分としてトラネキサム酸を含有する場合、本件発明1~4は、甲2Aの記載、並びに副引例である甲1A及び甲3Aの記載に基いて、進歩性を有しない。

(イ)本件発明1~4の組成物が、(A)の有効成分としてニコチン酸アミドを含有する場合、本件発明1~4は、甲2Aの記載に基いて、進歩性を有しない。

エ 申立理由3A-1(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))

本件発明1~4の組成物が、(A)の有効成分としてトラネキサム酸を含有する場合、本件発明1~4は、甲3Aの記載に基いて、新規性を有しない。

オ 申立理由3A-2(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))

(ア)本件発明1~4の組成物が、(A)の有効成分としてトラネキサム酸を含有する場合、本件発明1~4は、甲3Aの記載に基いて、進歩性を有しない。

(イ)本件発明1~4の組成物が、(A)の有効成分としてニコチン酸アミドを含有する場合、本件発明1~4は、甲3A、及び副引例である甲2Aの記載に基いて、進歩性を有しない。

カ 申立理由4A(特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号))

本件発明1及び本件発明1に従属する本件発明2及び3、並びに本件発明1と共通の特徴を有する本件発明4は、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に違反している。

具体的な理由の要点は、

78

153

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31

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」、

23

153

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」というものである(申立書A第130~131頁)。

(2)申立人Bが申し立てた理由

申立人Bの特許異議申立書(以下「申立書B」という。)の第49頁(5)の下記の記載

82

153

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及び申立書Bの全体の記載から、申立人Bが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~4に係る特許に対して申し立てた申立理由は、概略、以下のア~オのとおりであると認められる。

また、申立人Bは、令和7年8月27日提出の意見書において、先の訂正請求によってされた訂正により、新たな取消理由が生じたとして、追加の申立理由を示しているが、その概略は、下記のカのとおりであると認められる。

そして、申立人Bは、申立書Bに添付して、証拠方法として、下記(4)の甲第1B~7B号証(以下、それぞれ「甲1B」~「甲7B」という。)を提出し、その後、令和7年8月27日提出の意見書に添付して甲第8B~10B号証(以下、それぞれ「甲8B」~「甲10B」という。)を提出している。

ア 申立理由1B-1(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))

本件発明1、2及び4は、甲1Bの記載に基いて、新規性を有しない。

イ 申立理由1B-2(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))

本件発明1~4は、甲1Bの記載に基いて、進歩性を有しない。

ウ 申立理由2B(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))

本件発明1、2及び4は、甲2Bの記載に基いて、新規性を有しない。

エ 申立理由3B(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))

本件発明1~4は、甲3Bの記載に基いて、進歩性を有しない。

オ 申立理由4B(特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号))

本件発明3は、明確でない。

具体的な理由の要点は、

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153

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89

153

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」というものである(申立書B第48頁~第49頁)。

カ 申立理由5B(特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号))

本件発明1~4は、明確でない。

具体的な理由の要点は、

36

153

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」というものである(令和7年8月27日提出の意見書第6頁)。

(3)申立人Aが提出した証拠方法

甲第1A号証:特開2006-312603号公報

甲第2A号証:特表2005-535677号公報

甲第3A号証:特開2011-57558号公報

(4)申立人Bが提出した証拠方法

甲第1B号証:特開2011-57558号公報

甲第2B号証:特開2006-312603号公報

甲第3B号証:特表2008-507525号公報

甲第4B号証:特表2004-513729号公報

甲第5B号証:「原料:Pemulen

TM

TR-2 Polymer」,[online],[text],[取得日 2024年10月29日],取得先<https://www.iwasedatabase.jp/s/db-ingredients/a0N2u0000005kZuEAI/pemulen-tr2-polymer?language=ja>

甲第6B号証:「色彩管理指標|濃度計のツボ|楽しく学べる知恵袋|コニカミノルタ」,[online],[text],[取得日 2024年11月5日],取得先<https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/fluorescence/color_index/>

甲第7B号証:「12_スクシノグリカン|多糖類の種類|多糖類.com|MP五協フード&ケミカル」,[online],[text],[取得日 2024年11月15日],取得先<https://www.tatourui.com/about/type/12_succinoglycan.html>

甲第8B号証:新村出,「広辞苑第七版」,第七版第一刷,株式会社岩波書店,2018年1月12日,第1410~1411頁

甲第9B号証:「化粧品用語集|ライブラリー|日本化粧品技術者会SCCJ」,[online],[text],[取得日 2025年8月5日],取得先<https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/703>

甲第10B号証:「贅沢ジュレマスクで話題の「プレミアムプレサ」より「贅沢ジュレローション」9月1日に新発売!金箔配合の贅沢化粧水で毎日ケア うるおいもハリもあるお肌へ」,[online],[text],[掲載年月日 2017年9月1日],取得先<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000058.000018106.html>

2 当審合議体が通知した取消理由(決定の予告)の概要

先の訂正請求による訂正による請求項1~4に係る特許に対して、当審合議体が令和7年11月25日付けで、決定の予告として特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである(以下に記載の「請求項」は、先の訂正請求による訂正後のものである。)。

[取消理由1(新規性欠如)]

本件請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~4に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

[取消理由2(進歩性欠如)]

本件請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記引用文献1に記載された発明、又は引用文献3に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

[取消理由4(明確性要件違反)]

本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

具体的な理由の要点は、特許件者が引用発明1の水中油型乳化組成物の形態が「ジュレ状」であるか否かは不明であると主張していることを指摘したうえで、

「請求項1において、本件発明1の「ジュレ状」であるという特定により、どのような状態あるいは物性が特定されたのか客観的に把握することができない。そして、本件発明1を引用する本件発明2及び3も、同じ理由から明確ではない。さらに、請求項4に記載された「ジュレ状」も、同じ理由から明確ではない。」というものである(令和7年11月25日付けで決定の予告として特許件者に通知した取消理由通知書の第5の1)。

上記取消理由1、2及び4で引用した引用文献は、下記のとおりである。

(引用文献一覧)

引用文献1:特開2006-312603号公報(甲1A、甲2B)

引用文献2:特表2005-535677号公報(甲2A)

引用文献3:特開2011-057558号公報(甲3A、甲1B)

引用文献4:「化粧品事典」、第3刷、丸善株式会社、2005年4月25日、第499頁(甲9Bと同内容の書籍)

なお、令和7年3月31日付け取消理由通知書で通知した取消理由は、上記取消理由1及び2に加えて、下記の取消理由3を含むものであった(取消理由3に記載の「請求項」は、本件特許の特許掲載公報に記載されたものである。)。

[取消理由3](サポート要件違反)

本件請求項1~4に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号の規定にする要件を満たしていないから、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

具体的な理由の要点は、

「上記本件特許明細書の記載によれば、本件発明は、マスク組成物がジュレの形態であることによって、上記課題である「みずみずしい使用感」を得られると考えられるから、本件発明のうち、マスク組成物が「ジュレ」以外の形態の組成物であるものについては、本件特許出願時の技術常識を参酌しても、発明の詳細な説明の記載から、上記課題を解決することを当業者が認識できない。」というものである(令和7年3月31日付け取消理由通知書2(3))。

この取消理由3について、令和7年11月25日付けで、決定の予告として特許権者に通知した取消理由通知書においては、取消理由3は、先の訂正請求による訂正によって解消したと判断した旨記載している。また、本件訂正請求においても、先の訂正請求と同様に本件発明のマスク組成物は「ジュレ状」であると訂正されているので、当該取消理由は解消している。

ここで、申立人A及び申立人Bによる申立理由と当審合議体が通知した取消理由の対応関係は、下記のとおりである。

申立理由1A-1 :取消理由1(甲1A(甲2B)に基く新規性欠如

)

申立理由1A-2(ア):取消理由2(甲1A(甲2B)に基く進歩性欠如

)

申立理由3A-2(ア):取消理由2(甲3A(甲1B)に基く進歩性欠如

)

申立理由1B-2 :取消理由2(甲3A(甲1B)に基く進歩性欠如

)

申立理由2B :取消理由1(甲1A(甲2B)に基く新規性欠如

)

申立理由5B :取消理由4(明確性要件違反)

上記以外の申立理由、すなわち、申立理由1A-2(イ)、申立理由2A、申立理由3A-1、申立理由3A-2(イ)、申立理由4A、申立理由1B-1、申立理由3B、申立理由4Bは、取消理由通知書において取消理由として採用しなかった。

第5 当審合議体の判断

当審合議体は、本件特許の請求項1、2及び4に係る特許は、取消理由通知書に記載した理由並びに申立人A及びBが申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。

1 引用文献及び甲各号証の記載

(1)引用文献1(甲1A、甲2B)の記載

引用文献1には、次の記載がある。

摘記1a:

「【請求項1】

油溶性薬剤と、水溶性薬剤と、親水性非イオン界面活性剤と、多価アルコールと、水とを含む水中油型乳化組成物において、

前記親水性非イオン界面活性剤の配合量が、組成物全体の0.05~0.5質量%であり、乳化粒子径が0.5~1.0μmである水中油型乳化組成物を、

シート状基材に含侵させることを特徴とするシート状皮膚外用剤。

・・・

【請求項4】

請求項1~3のいずれかに記載の皮膚外用剤において、水溶性薬剤がトラネキサム酸であることを特徴とするシート状皮膚外用剤。」

摘記1b:

「【0032】

・・・

本発明における水中油型乳化組成物の粘度は、好ましくは500~1500mPa・s(30°C)である。1500mPa・sを超えるとシート状基材への浸透性が悪くなるが、逆に500mPa・s未満では、使用時にシート状基材から組成物が垂れ落ちる、あるいは垂れ落ちないようにするには少量しか含浸できない。

尚、粘度は30°Cにおいて芝浦システム社製のB型粘度計で12rpm、1分間の条件で測定した場合の数値である。」

摘記1c:

「【0035】

<シート状基材>

本発明のシート状皮膚外用剤においては、上記水中油型乳化組成物をシート状基材に含浸させる。

・・・

含浸させる時期としては、使用者が使用時にその都度含浸させることもできるが、水中油型乳化組成物を製造後すぐにシート状基材に含浸させると、薬剤の安定性が確保され、使用性に優れ、携帯性にも優れるので好ましい。」

摘記1d:

「【0040】

本発明のシート状皮膚外用剤は、顔(全体、あるいは頬部、目元部、口元部等)、腕部、脚部、胸部、腹部、首部等の全体又は局所の部位に密着させ、適当な時間放置後に剥離することにより使用される。

本発明のシート状化粧料の使用方法としては、シートを適用部位に密着させてから1~60分間程度放置してからシートを剥すことが好ましい。また、使用頻度は、週1回~1日1回程度が好ましい。」

摘記1e:

「【実施例1】

【0041】

初めに、本発明にて用いる評価方法について説明する。

・・・

【0046】

評価(4):シート状基材への含侵性

コットン100%、目付60g/m

2

の不織布25cm

2

の中央にスポイトを用いて試料(乳化組成物)を2g滴下した。

◎:シート状基材にとても含浸させやすい。

○:シート状基材に含浸させやすい。

△:シート状基材にやや含浸させにくい。

×:シート状基材に含浸させにくい。」

摘記1f:

「【0048】

以下に示す各皮膚外用剤について、上記評価方法に基づいて評価を行った。

107

94

0001436145000010.jpg

摘記1g:

「【0049】

(製法)

・・・

〈試験例5、6〉

親水性非イオン界面活性剤、多価アルコール及びその他の成分を水に溶解した(水相1,2)。これに油相を添加し、加熱後ホモミキサー処理により乳化し、その後冷却し、水中油型乳化組成物を得た(乳化方法B)。

該組成物0.05gをコットン100%、目付60g/m

2

の不織布25cm

2

に含浸させた。

【0050】

・・・

試験例6は、試験例5に増粘剤を加えたものであるが、乳化安定性は多少改善されたものの十分ではなく、また粘度が高くなり、薬剤の浸透性が悪くなってしまった。

以上より、本発明のシート状皮膚外用剤(試験例1)は、特異的に水中油型乳化組成物の乳化安定性が良好であり、また水溶性薬剤及び油溶性薬剤の浸透性が優れていることが確認された。

【0051】

上記試験例1~6の皮膚外用剤について、肌実感度の比較を行った。

しわの気になる30~50代の女性パネラー45人が、試験例1~6を週3回それぞれ2週間使用し、2週間使用後の肌実感度を1~5の5段階評価した。結果を図2に示す。

図2からわかるように、試験例1は、他の試験例と比較して、肌実感度が著しく良い結果となった。これは、表1に示されたとおり、本発明のシート状皮膚外用剤(試験例1)は、薬剤の浸透性が高く、また乳化安定性が良好で薬剤を安定に保持できるためであると考えられる。」

(2)引用文献2(甲2A)の記載

引用文献2には、次の記載がある。

摘記2a:

「【特許請求の範囲】

【請求項1】

(1)水不溶性基材と

(2)(a)油性成分;

(b)親水性界面活性剤;

(c)約500mPa・s~60,000mPa・sの粘度を前記液体組成物に与える水溶性増粘化ポリマー;及び

(d)水性キャリア

を含む乳化液体組成物と

を含むマスク組成物。

・・・

【請求項6】

長期持続美白剤を更に含む、請求項1に記載の液体組成物。

【請求項7】

前記長期持続美白剤が、少なくともアスコルビン酸誘導体及びビタミンB

3

誘導体を含有する、請求項6に記載の液体組成物。」

摘記2b:

「【0001】

本発明は、局所適用のためのマスク組成物に関し、このマスクは、水不溶性基材及び乳化液体組成物を含む。

・・・

【0012】

特に指定しない限り、百分率、割合、及び比率はすべて、本発明の組成物の総重量を基準とする。記載した成分などに関する全てのこのような重量は活性レベルに基づいており、そのため、市販材料に含まれ得るキャリア又は副産物を含まない。」

摘記2c:

「【0021】

本発明で有用な基材はまた、多種多様な市販品から入手することができる。本明細書で有用で好適な不織布基材の非限定例としては、ウォルキィソフトU.S.A(Walkisoft U.S.A.)から入手可能なウォルキィソフト(WALKISOFT)(登録商標)(セルロース基材);ヴェラテック(Veratec,Inc.)(マサチューセッツ州ウォルポール)から入手可能なノヴォネット(NOVONET)(登録商標)149-801及び149-191(約69%のレーヨン、約25%のポリプロピレン、及び約6%の綿を含有する基材);PGI/チコピー(PGI/Chicopee)(ニュージャージー州デイトン(Dayton))から入手可能なケイバック(KEYBAK)(登録商標)951V及び1368(約75%のレーヨン及び約25%のアクリル繊維を含有する基材);両方ともダイワボ K.K.(Daiwabo K.K.)から入手可能なRMT-90(それぞれレーヨン及びポリエステルの組み合わせから製造された2つの外層と共に内層としてパルプを有する三層基材)及びRFP-90(2つのレーヨン外層と組み合わせた内層としてのPP層を有する三層基材)が挙げられる。」

摘記2d:

「【0034】

本発明のマスク組成物に用いられる液体組成物は、マニュアルNo.M/92-161-H895に記載された操作方法に従って、ブルックフィールド・デジタル粘度計(Brookfield Digital Viscometer)、モデルDV-II+バージョン3.2により速度0.5rad/s(5.0rpm)で測定した場合、約500mPa・s~約60,000mPa・s、好ましくは約1000mPa・s~約30,000mPa・s、より好ましくは約2000mPa・s~約15,000mPa・sの範囲の粘度を有する。このような粘度は、適用中に顔から滴り落ちるのを防止ししつつ水不溶性基材に浸透するのに好適であると考えられる。このような粘度はまた、粒子状物質が含まれる場合、液体組成物に有効な様式でその粒子状物質を懸濁させ、皮膚に粒子状物質を有効に付着させるのに好適であると考えられる。」

摘記2e:

「【0041】

(水溶性増粘化ポリマー)

本発明の液体組成物は、水溶性増粘化ポリマーを含む。本明細書の水溶性増粘化ポリマーは、水溶性又は水混和性ポリマーであり、組成物の粘度を高める能力を有し、組成物に使用される他の構成成分と適合性である。水溶性増粘化ポリマーは、本組成物の液体組成物が約500mPa・s~約60,000mPa・s、好ましくは約1000mPa・s ~約30,000mPa・s、より好ましくは約2000mPa・s~約15,000m Pa・sの所望の粘度を有するように選択される。水溶性増粘化ポリマーは、好ましくは 液体組成物の約0.1重量%~約3重量%、より好ましくは約0.1重量%~約2重量% 、更に好ましくは約0.2重量%~約2重量%の濃度で含まれる。

【0042】

本明細書で有用な水溶性増粘化ポリマーには、陰イオン性ポリマー及び非イオン性ポリ マーが含まれる。本明細書で有用な水溶性増粘化ポリマーとしては、例えば、アクリルポリマー、約10000を超える分子量を有するポリアルキレングリコールポリマー、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム及びキサンタンガムのようなガム、カラゲーナン、ペクチン、寒天、マルメロ種子(シドニア・アブロンガ・ミル(Cydonia oblonga Mill))、 デンプン(米、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦)、藻類コロイド(藻類抽出物)、デキストラン、スクシノグルカン、プレラン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン、アルギン酸ナトリウム、及びアルギン酸プロピレングリコールエステルが挙げられる。中和剤は、上記の陰イオン性増粘剤を中和するために含まれてもよい。 このような中和剤の非限定的例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、モノエタノールアミン(monethanolamine)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、トロメタミン(tromethamine)、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン及びこれらの混合物が挙げられる。

【0043】

上記ポリマーのうち、極めて好ましいのは、乳化液体組成物が皮膚上で乾燥した場合に 所望でないポリマーフレークが少ないものである。このような極めて好ましいポリマーとしては、例えば、アクリルポリマーが挙げられる。本明細書で有用なアクリルポリマーとしては、アクリル酸、アクリル酸の塩、アクリル酸の誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸の塩、メタクリル酸の誘導体、及びこれらの混合物からなる群から選択されるモノマーを含むものが挙げられる。誘導体としては、例えば、アルキルアクリレート、アクリルアミド、アルキルメタクリレート、及びメタクリルアミドが挙げられる。このようなアクリルポリマーとしては、例えば、カルボマーというCTFA名称を有する架橋アクリル酸ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、及びアクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマーというCTFA名称を有するアクリル酸/アルキルアクリレートコポリマーが挙げられる。本明細書に極めて有用な市販のアクリルポリマーとしては、例えば、セピック(SEPPIC Inc.)から商品名セピゲル(Sepigel)305として入手可能なポリアクリルアミド、及びすべてB.F.グッドリッチカンパニー(B.F.Goodrich Company)から商品名ペミュレン(Pemulen)TR-1、ペミュレン(Pemulen)TR-2、カーボポール(Carbopol)1342、カーボポール(Carbopol)1382、及びカーボポール(Carbopol)ETD2020として入手可能なアクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマーが挙げられる。」

摘記2f:

「【0053】

本明細書で有用なビタミンB

3

化合物としては、例えば、次の式を有するものが挙げられる:

【0054】

【化1】

11

24

0001436145000011.jpg

式中、Rは-CONH

2

(例えば、ニコチン酸アミド)、又は-CH

2

OH(例えば、ニコチニルアルコール);これらの誘導体;及び上記いずれかの塩である。

【0055】

前出のビタミンB

3

化合物の代表的な誘導体としては、ニコチン酸の非血管拡張性エステル、ニコチニルアミノ酸、カルボン酸のニコチニルアルコールエステル、ニコチン酸N-オキシド、及びニコチン酸アミドN-オキシドを含む、ニコチン酸エステルが挙げられる。好ましいビタミンB

3

化合物は、ニコチン酸アミド及びニコチン酸トコフェロール、より好ましいものはニコチン酸アミドである。好ましい実施例では、ビタミンB

3

化合物は限られた量の塩の形態を含有し、より好ましくはビタミンB

3

化合物の塩は実質的に含まれない。好ましくはビタミンB

3

化合物は約50%未満のそのような塩を含有し、更に好ましくは本質的には塩の形態を含まない。」

摘記2g:

「【0068】

(調製方法)

本発明のマスク組成物は当業者に既知のいかなる方法でも製造することができる。一般に、マスク組成物は、水不溶性基材を筺体の中に設置すること、液体組成物が水不溶性基材に染み込むように液体組成物の中に浸すこと、並びに運搬及び/又は貯蔵のために密封することにより製造される。マスク組成物を包装の中に、一構成単位ごとに又は複数構成単位で収容することができる。「構成単位」とは、例えば、単一片の顔用マスクはそれ自体で一構成単位となると同時に、二部分の顔用マスクは1つの上部マスクと1つの下部マスクにより一構成単位となるということを意味する。好ましくは、マスク組成物は、一構成単位ごとに個々の包装の中に収容される。使い捨ての包装では、包装は密封され、使用時に開けられる。複数回使用の包装では、包装には、開封後に包装が実質的に密封され得るような手段が装備されている。」

摘記2h:

「【0076】

実施例1~6のマスク組成物は、約3.0gのダイワボ(Daiwabo)より入手可能な基材RFP-90から製造されており、図1に従って切断及び成形され、下記に指定されるそれぞれの乳化液体組成物25gに浸される。マスク組成物はまた、上に指定された基材の代わりに、3.5gの綿の基材からも製造することができる。

【0077】

(乳化液体組成物)

【0078】

【表1】

100

93

0001436145000012.jpg

【0079】

(構成成分の定義)

*1 ポリソルベート20:ICI界面活性剤(ICI Surfactants)から入手可能なツイーン(Tween)20

*2 ポリアクリルアミド:セピック(SEPPIC Inc.)から入手可能なセピゲル(Sepigel)305

*3 アクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマー:B.F.グッドリッチ(B.F.Goodrich)から入手可能なペミュレン(Pemulen)TR-2

*4 キサンタンガム:ケルコ(Kelco)から入手可能なケルトロール(Keltrol)

*5 二酸化チタン:コボ・プロダクツ社(Kobo Products Inc.)から入手可能なコボ(Kobo)GLW75CAP-MP

*6 アスコルビン酸グルコシド:ハヤシバラ(Hayashibara)から入手可能

*7 リン酸アスコルビルナトリウム:ロッシュ(Roche)から入手可能なステイ(Stay)-C

*8 ニコチン酸アミド:ロッシュ(Roche)から入手可能なナイアシンアミド

*9 パンテノール:ロッシュ(Roche)から入手可能なDL-パンテノール

*10 酢酸トコフェロール:エーザイ(Eisai Co.Ltd.)から入手可能

*11 ニコチン酸トコフェロール:エーザイ(Eisai Co.Ltd.)から入手可能

*12 クワ抽出物:丸善製薬(Maruzen Pharmaceuticals)から入手可能なクワ抽出物BG

*13 酵母発酵濾液:カシワヤマ(Kashiwayama)から入手可能なSKIIピテラ(Pitera)

*14 天然抽出物:カネダ(Kaneda)から入手可能なフィテレン(Phytelene)EGX243[ウサギギクマウンテンフラワー(Arnica Mountan Flower)抽出物、セイヨウオトギリソウ抽出物、ツタ(セイヨウキズタ)抽出物、ウィッチヘーゼル(アメリカマンサク)抽出物、ブドウ(ヨーロッパブドウ)葉抽出物、及びマロニエ(セイヨウトチノキ)抽出物の混合物]

*15 エルゴチオネイン(Ergothioneine):AGIデルマティクス(AGI Dermatics)から入手可能なチオタイン(Thiotaine)

*16 ラミナリア・ディギタータ(Laminaria Digitata)抽出物:コレチカ(Coletica)から入手可能なセアネギリウム(Seanergilium)BG

【0080】

(調製方法)

上記の組成物は、当業者に既知のいかなる方法でも製造することができる。組成物は次のように好適に製造される:

(1)任意の油性成分及び親水性界面活性剤を容器にて混合し、固体の油性成分が含まれる場合にはそれが溶融するまで70°C以上で加熱する。

(2)水溶性増粘化ポリマー以外の水溶性及び熱安定性成分を別の容器にて水に溶解させ、70°C以上まで加熱する。

(3)工程(1)及び(2)の生成物を均一になるまで混合する。

(4)水溶性増粘化ポリマーを、工程(3)の生成物に添加し、均一になるまで混合する。

(5)工程(4)の生成物を40°C以下まで冷却する。

(6)含まれる場合は、香料及び酵母発酵濾液のような他の残存構成成分を工程(5)の生成物に添加する。

(7)水不溶性基材を折り畳み、一構成単位ごとにアルミニウムの小袋の中に設置する。

(8)こうして工程(6)で得た乳化液体組成物を、水不溶性基材を含有するアルミニウムの小袋の中に注ぎ、密封する。」

(3)引用文献3(甲3A、甲1B)の記載

引用文献3には、次の記載がある。

摘記3a:

「【特許請求の範囲】

【請求項1】

セルロース系短繊維を10~30質量%の配合割合で含有する1層乃至多層の不織布に、トラネキサム酸および/またはその誘導体を含有する化粧料を含浸させてなる、シート状化粧料。

・・・

【請求項5】

トラネキサム酸および/またはその誘導体を0.01~7質量%の割合で化粧料中に含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のシート状化粧料。」

摘記3b:

「【0054】

本発明のシート状化粧料は、化粧料を不織布に含浸させて製造する。・・・含浸させる時期としては、使用者が使用時にその都度含浸させることもできるが、化粧料を製造後すぐに不織布に含浸させることが品質管理上好ましい。」

摘記3c:

「【実施例】

【0058】

以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。

【0059】

[使用性(柔らかさ、密着性)]

女性パネル(10名)の顔に試料(含浸マスク)を貼付したときの、肌あたりの柔らかさ、試料の密着性について評価した。評価は下記の評価点(1~5点)基準に基づいて行った。次いで各パネルが付けた評価点を合計し、下記評価基準に基づいて評価した。

[評価点]

5点:非常に優れている

4点:優れている

3点:普通

2点:劣る

1点:非常に劣る

(評価基準)

◎:合計点が40点以上

○:合計点が30~39点

△:合計点が20~29点

×:合計点が19点以下

【0060】

[色調安定性]

調製直後の試料(含浸マスク)に比べ、50°Cの恒温室に1ヵ月間保管した試料(含浸マスク)が色調変化しているかどうかを、10名のパネルにより視感判定により評価したものを総合評価した。

(評価基準)

A+:色調変化がまったくみられなかった

A:色調変化がほとんどみられなかった

B:色調変化がみられた

C:色調が著しく変化した

【0061】

(実施例1~4、比較例1~10)

(1)不織布として以下の不織布(A)~(G)を準備した。不織布を構成する各繊維の配合量(質量%)は不織布全量に対する配合量を示す。不織布の目付けは全て60(g/m

2

)のものを用いた。

【0062】

・不織布(A):PET(80質量%)およびコットン(20質量%)からなる1層構造の不織布。

・不織布(B):コットン(100質量%)からなる1層構造の不織布。

・不織布(C):パルプ(24質量%)からなる中間層の両面に表面層(コットン53質量%、PET23質量%)を設けた3層構造の不織布。

・不織布(D):レーヨン(30質量%)およびPET(70質量%)からなる1層構造の不織布。

・不織布(E):パルプ(30質量%)からなる中間層の両面に表面層(レーヨン56質量%、PET14質量%)を設けた3層構造の不織布。

・不織布(F):レーヨン(80質量%)およびポリオレフィン(20質量%)からなる1層構造の不織布。

・不織布(G):PET(10質量%)、レーヨン(35質量%)およびパルプ(55質量%)からなる1層構造の不織布。

【0063】

(2)次に、含浸液である化粧料として以下の化粧料1、2を常法により調製した。配合量はすべて化粧料全量に対する質量%である。

【0064】

<化粧料1(乳化系)>

(配 合 成 分) (配合量)

テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチル 5

ジメチコン 5

エタノール 5

(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10~30))コポリマー

0.2

カルボキシビニルポリマー 0.1

水酸化カリウム 0.05

サクシノグリカン 0.1

グリセリン 8

ブチレングリコール 10

トラネキサム酸 3

フェノキシエタノール 0.5

エデト酸三ナトリウム 0.1

ピロ亜硫酸ナトリウム 0.005

精製水 残余」

摘記3d:

「【0066】

(3)顔型に切った不織布(A)~(G)に、化粧料1、化粧料2を不織布質量の9倍量含浸させてシート状化粧料を調製し、上記の評価基準に基づき、色調安定性、使用感触について評価を行った。結果を表1に示す。

【0067】

【表1】

55

105

0001436145000013.jpg

(4)引用文献4(甲9B)の記載

引用文献4には、次の記載がある。

摘記4a:

117

82

0001436145000014.jpg

88

82

0001436145000015.jpg

(5)甲3Bの記載

甲3Bには、次の記載がある。

摘記3Ba:

「【請求項1】

(1)皮膚科学的に許容可能な予備成形基材と、

(2)フラボノイド化合物と

を含むスキンケアデバイスであって、前記デバイスが前記フラボノイド化合物を送達するための液体媒体を含むデバイス。

【請求項2】

前記液体媒体が水を含む、請求項1に記載のデバイス。

・・・

【請求項5】

前記基材が非水溶性であり、前記デバイスの残りが液体組成物を形成し、前記液体組成物が前記液体媒体を含み、

前記液体組成物が、前記液体組成物に対して、

(a)約0.001重量%~約10重量%の前記フラボノイド化合物と、

(b)約10mPas~約600,000mPasの粘度を前記液体組成物に提供する水溶性増粘剤と、

(c)水と

を含み、

前記液体組成物が、前記非水溶性基材の100重量%~2000重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。

【請求項6】

前記液体組成物の約0.01重量%~約15重量%のビタミンB3化合物をさらに含む、請求項5に記載の液体組成物。」

摘記3Bb:

「【0012】

百分率、部及び比率は全て、特に明記しない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。提示された成分に関する全てのこのような重量は活性物質の濃度に基づき、したがって市販材料に含まれる可能性があるキャリア又は副生成物を含まない。」

摘記3Bc:

「【0056】

上記の基準を満たす好適な非水溶性基材の例には、不織布基材、織布基材、水流交絡基材、空気交絡基材、天然の海綿、合成スポンジ、ポリマーでできた網状メッシュ、及び類似のものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態は、経済的であり、様々な材料で容易に入手できることから、不織布基材を用いる。「不織布」とは、布地に織り上げられるのではなく、シート、マット、又はパッド層に形成されるような繊維で、層が構成されていることを意味する。

・・・

【0058】

本発明で有用な非水溶性基材はまた、多種多様な市販品から入手することができる。本明細書で有用で好適な不織布基材の非限定例としては:ウォルキィソフト(Walkisoft U.S.A.)から入手可能なセルロース基材であるウォルキィソフト(WALKISOFT)(登録商標);ヴェラテック(Veratec, Inc)(マサチューセッツ州ウォルポール(Walpole, MA))から入手可能な、約69%のレーヨン、約25%のポリプロピレン及び約6%の綿を含有する基材であるノボネット(NOVONET)(登録商標)149-801及び149-191;PGI/チコピー(PGI/Chicopee)(ニュージャージー州デイトン(Dayton, NJ))から入手可能な約75%のレーヨン及び約25%のアクリル繊維を含有する基材であるキーバック(KEYBAK)(登録商標)951V及び1368;全てダイワボー(Daiwabo K.K.)から入手可能な、内層としてパルプ層、レーヨン及びポリエステルの組み合わせからそれぞれ製造された外層を有する3層基材RMT-90、及び内層としてPP層、レーヨンの外層の組み合わせを有する3層基材RFP-90、100%レーヨンを含有する単一層基材R-80が挙げられる。」

摘記3Bd:

「【0103】

実施例1~12

実施例1~12は、非水溶性基材として切断及び成形されたダイワボー(Daiwabo)から入手可能な基材RFP-90を3.0gを用い、表1及び表2にて以下で特定される液体組成物それぞれ20~30gに浸されるマスク実施形態である。

【0104】

【表1】

90

101

0001436145000016.jpg

【0105】

成分の定義

*

1 グルコシルヘスペリジン:東洋精糖(Toyo Sugar Refining)から入手可能なα-GヘスペリジンPS-CC。

*

2 グルコシルルチン:東洋精糖(Toyo Sugar Refining)から入手可能なα-Gルチン

*

3 ナイアシンアミド:DSMから入手可能なナイアシンアミドUSP

*

4 ピリドキシンジパルミテート:日光ケミカルズ(Nikko Chemicals)から入手可能なニッコール(Nikkol)DP

*

5 イソステアリン酸イソプロピル:スケア・ケミカルズ(Scher Chemicals Inc.)から入手可能なスケルセモル(Schercemol)318

*

6 ポリ綿実脂肪酸スクロース:コボ・プロダクツ(Kobo Products Inc.)から入手可能

*

7 イソヘキサデカン:バイエル(Bayer Corp)から入手可能なパーメチル(Permethyl)101A

*

8 ジメチコン及びジメチコノール:ダウ・ケミカルズ(Dow Chemicals)から入手可能なダウ・コーニング(Dow corning)Q2-1503液

*

9 PEG-100ステアレート:ユニケマ(Uniqema)から入手可能なMyrj59P

*

10 セテアリルグルコシド:コグニス(Cognis)から入手可能なエムールゲイド(Emulgade)PL-68/50

*

11 ポリアクリルアミド:セピック(SEPPIC Inc.)から入手可能なセピゲル(Sepigel)305

*

12 アクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマー:B.F.グッドリッチ(B. F. Goodrich)から入手可能なペミュレン(Pemulen)TR-2

*

13 ポリメチルシルセスキオキサン:GE-東芝(GE-Toshiba)からのトスパール(Tospearl)145A

*

14 リン酸アスコルビルナトリウム:DSMから入手可能なステイ(Stay)-C50

*

15 パンテノール:ロッシェ(Roche)から入手可能なDL-パンテノール

*

16 トコフェロールアセテート:エーザイ(Eisai Co. Ltd.)から入手可能

*

17 クワ抽出物:丸善製薬(Maruzen Pharmaceuticals)から入手可能なクワ抽出物BG

【0106】

実施例1~6の調製方法

上記の組成物は、当業者に既知のいかなる方法でも製造することができる。組成物は次のように好適に製造される:

(1)全ての油性成分及び界面活性剤を容器にて混合し、固体の油性成分が含まれる場合はそれが溶融するまで75°C以上で加熱する。

(2)水溶性増粘化ポリマー類以外の水溶性及び熱安定性成分を別の容器にて水に溶解させ、75°C以上まで加熱する。

(3)工程(1)及び(2)の生成物を均一になるまで混合する。

(4)水溶性増粘化ポリマー類を、工程(3)の生成物に添加し、均一になるまで混合する。

(5)工程(4)の生成物を40°C以下まで冷却する。

(6)ヘスペリジン及びナイアシンアミド、抽出物などのようなその他の水溶性成分を、水に溶解し、上記工程(5)混合物に添加する。

(7)含まれる場合、その他の残存成分、例えば香料を工程(5)の生成物に添加する。

(8)非水溶性基材を折り畳み、一構成単位ごとにアルミニウムの小袋の中に設置する。

(9)工程(7)にてこうして得られた乳化液体組成物を、非水溶性基材又は予備成形ゲル貼付剤を含有するアルミニウム小袋に注ぎ、密封する。

【0107】

【表2】

66

109

0001436145000017.jpg

【0108】

成分の定義

*

1 グルコシルヘスペリジン:東洋精糖(Toyo Sugar Refining)から入手可能なα-GヘスペリジンPS-CC。

*

2 ナイアシンアミド:DSMから入手可能なナイアシンアミドUSP(niacinamide USP)

*

3 ピリドキシン塩酸塩:DSMから入手可能

*

4 キサンタンガム:ケルコ(Kelco)から入手可能なケルトロール(Keltrol)

*

5 ポリアクリルアミド:セピック(SEPPIC Inc.)から入手可能なセピゲル(Sepigel)305

*

6 アクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマー:B.F.グッドリッチ(B. F. Goodrich)から入手可能なペミュレン(Pemulen)TR-2

*

7 ジプロピレングリコール

*

8 リン酸アスコルビルナトリウム:DSMから入手可能なステイ(Stay)-C50

*

9 二酸化チタン:コボ・プロダクツ(Kobo Products Inc.)から入手可能なコボ(Kobo)GLW75CAP-MP

*

10 ポリソルベート20:ICIサーファクタンツ(ICI Surfactants)から入手可能なツイーン(Tween)20

*

11 サッカロミコプシス発酵濾液:カシワヤマ(Kashiwayama)から入手可能なSKIIピテラ(Pitera)

【0109】

実施例7~12の調製方法

上記の組成物は、当業者に既知のいかなる方法でも製造することができる。組成物は次のように好適に製造される:

(1)香料のようないずれかの油性成分が存在する場合、界面活性剤及び少量の水に予め溶解させる。

(2)水溶性増粘剤が存在する場合、水及び/又は水溶性保湿剤に予め分散させる。

(3)残存成分の全てを水及び/又は水溶性保湿剤に溶解し、必要に応じてpH調節剤によりpHを調節する。必要に応じて加熱してもよい。防腐剤のような相対的に油性の成分が存在する場合、水溶性保湿剤に予め溶解してもよい。

(4)工程(1)及び(3)の生成物を均一になるまで混合する。

(5)工程(2)及び(4)の生成物を、必要に応じて高速ミキサーを用いて均質になるまで混合する。

(6)非水溶性基材を折り畳み、一構成単位ごとにアルミニウム小袋の中に設置する。

(7)工程(5)にてこうして得られた液体組成物を、非水溶性基材小袋又は予備成形ゲル貼付剤を含有するアルミニウム小袋に注ぎ、密封する。」

(6)甲4Bの記載

甲4Bには、次の記載がある。

摘記4Ba:

「【0010】

・・・ノースカロライナ州マウントホリー(Mount Holly)のウォーキソフトU.S.A.(Walkisoft U.S.A.)から入手可能な坪量約75gsy(62.71gsm)を有するエンボス加工された、エアレイドセルロース性化合物ウォーキソフト(Walkisoft)(登録商標)・・・

・・・

【0013】

本発明で有用な合成材料から製造される不織布は多種多様な商業的供給元から得ることができる。本明細書で有用な好適な不織布材料の非限定例には、約50%レーヨンと50%ポリエステルを含有する、水力で巻き込んだ孔あき材料で、平方メータ当たり約61グラム(gsm)の坪量を有し、マサチューセッツ州ウォルポール(Walpole, MA)ベラテック社(Veratech.Inc.)から入手可能な、HEF40-047;約50%レーヨンと約50%ポリエステルを含有する、水力で巻き込んだ孔あき材料で、約67gsmの坪量を有し、マサチューセッツ州ウォルポール(Walpole, MA)のベラテック社(Veratech. Inc.)から入手可能な、HEF140-102;約100%ポリプロピレンを含有し、熱で接合した格子模様の材料で、約60gsmの坪量を有し、マサチューセッツ州ウォルポール(Walpole, MA)のベラテック社(Veratech. Inc.)から入手可能なノボネット(Novonet)(登録商標)149-616;約69%レーヨン、約25%ポリプロピレン、及び約6%綿を含有し、熱で接合した格子模様の材料で、約90gsmの坪量を有し、マサチューセッツ州ウォルポール(Walpole, MA)のベラテック社(Veratech. Inc.)、から入手可能なノボネット(登録商標)149-801;約69%レーヨン、約25%ポリプロピレン、及び約6%綿を含有し、熱で接合した格子模様の材料で、約120gsmの坪量を有し、マサチューセッツ州ウォルポール(Walpole, MA)のベラテック社(Veratech.Inc.)から入手可能なノボネット(登録商標)149-191;約100%ポリエステルを含有し、叩いて水力で巻き込んだ孔あき材料で、約84gsmの坪量を有し、マサチューセッツ州ウォルポール(Walpole, MA)のベラテック社(Veratech.Inc.)から入手可能なHEFナブテックス(Nubtex)(登録商標)149-801;約75%レーヨン、約25%アクリル繊維を含有し、乾燥形成した孔あき材料で、約51gsmの坪量を有し、ニュージャージー州ニューブランスウィック(New Brunswick, NJ)のチコピー(Chicopee)から入手可能なキーバック(Keybak)(登録商標)951V;約75%レーヨン、約25%ポリエステルを含有し、孔あき材料で、約47gsmの坪量を有し、ニュージャージー州ニューブランスウィック(New Brunswick, NJ)のチコピー(Chicopee)から入手可能なキーバック(登録商標)1368;約100%レーヨンを含有し、水力で巻き込んだ孔あき材料で、約48~約138gsmの坪量を有し、ニュージャージー州ニューブランスウィック(New Brunswick, NJ)チコピー(Chicopee)から入手可能なデュラレース(Duralace)(登録商標)1236;約100%ポリエステルを含有し、水力で巻き込んだ孔あき材料で、約48~約138gsmの坪量を有し、ニュージャージー州ニューブランスウィック(New Brunswick, NJ)のチコピー(Chicopee)から入手可能なデュラレース(登録商標)5904;梳いて、水力で口径を作った材料で(インチ当たり8×6の孔、センチ当り3×2の孔)、約70%レーヨンと約30%ポリエステル、及び任意選択で約5%w/wまでのラテックス結合剤(アクリレートまたはEVAを基にした)を含有し、約60~約90gsmの坪量を有し、ニュージャージー州ニューブランスウィック(New Brunswick, MA)のチコピー(Chicopee)から入手可能なチコピー(Chicopee)(登録商標)5763;梳いて水力で巻き込んだ材料で、50%のレーヨン/50%のポリエステルから0%のレーヨン/100%のポリエステル、または100%のレーヨン/0%のポリエステルの繊維組成物を含有し、約36gsm~約84gsmの坪量を有し、ニュージャージー州ニューブランスウィック(New Brunswick, NJ)のチコピー(Chicopee)から入手可能なチコピー(登録商標)9900シリーズ(例えば、チコピー9931-62gsm、50/50のレーヨン/ポリエステル、及びチコピー9950-50gsm、50/50のレーヨン/ポリエステル);水力で巻き込んだ材料で、約50%のセルロースと約50%のポリエステルを含有し、約72gsmの坪量を有し、デュポンケミカル社から入手可能なソンタラ(Sontara)8868、が挙げられる。好ましい不織布基材材料は、約24gsm~約200gsm、更に好ましくは約36gsm~約110gsm、及び最も好ましくは約42gsm~約78gsmの坪量を有する。」

(7)甲5Bの記載

甲5Bには、次の記載がある。

摘記5Ba:

74

153

0001436145000018.jpg

(8)甲6Bの記載

甲6Bには、次の記載がある。

摘記6Ba:

86

153

0001436145000019.jpg

(9)甲7Bの記載

甲7Bには、次の記載がある。

摘記7Ba:

93

153

0001436145000020.jpg

摘記7Bb:

100

153

0001436145000021.jpg

(10)甲8Bの記載

甲8Bには、次の記載がある。

摘記8Ba:

66

25

0001436145000022.jpg

(11)甲10Bの記載

甲10Bには、次の記載がある。

摘記10Ba:

49

153

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2 当審合議体が通知した取消理由について

(1)取消理由1及び取消理由2について

ア 引用発明

(ア)引用文献1に記載された発明

引用文献1には、試験例6として示される成分からなる水中油型乳化組成物を「コットン100%、目付60g/m

2

の不織布25cm

2

に含浸させた」ことが記載されている(摘記1e、摘記1f、摘記1g)。ここで、上記組成物には、「トラネキサム」を含有する旨が記載されているが(摘記1f)、引用文献1の請求項4(摘記1a)等の記載及び本件特許の出願時の技術常識を参酌すれば、上記「トラネキサム」は「トラネキサム酸」を意味するものと認められる。また、引用文献1には、試験例6の水中油型乳化組成物は、粘度(30°C)が「5600Pa・s」である旨が記載されているが(摘記1f)、引用文献1の摘記1bの記載及び本件特許の出願時の技術常識を参酌すると、引用文献1に記載された「5600Pa・s」とは、「5600mPa・s」の誤記であると認められる。

そうすると、試験例6の記載(摘記1f、摘記1g)からみて、引用文献1には、

「0.04質量%のビタミンAパルミテート、9.0質量%のメチルフェニルポリシロキサン、9.0質量%のテトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、5.0質量%のエタノール、5.0質量%のグリセリン、8.0質量%の1,3-ブチレングリコール、0.3質量%のPEG(60)水添ヒマシ油、2.0質量%のトラネキサム酸、0.5質量%のカルボキシビニルポリマー、残量のイオン交換水を含有し、粘度(30°C)が5600mPa・sである水中油型乳化組成物を、目付60g/m

2

の不織布に含浸させたシート状皮膚外用剤。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

(イ)引用文献3に記載された発明

引用文献3の特許請求の範囲及び明細書の記載(摘記3a~3d)からみて、引用文献3には、化粧料1を用いた実施例1及び2として、

「5質量%のテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、5質量%のジメチコン、5質量%のエタノール、0.2質量%の(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C

10-30

))コポリマー、0.1質量%のカルボキシビニルポリマー、0.05質量%の水酸化ナトリウム、0.1質量%のサクシノグリカン、8質量%のグリセリン、10質量%のブチレングリコール、3質量%のトラネキサム酸、0.5質量%のフェノキシエタノール、0.1質量%のエデト酸三ナトリウム、0.005質量%のピロ亜硫酸ナトリウム、残余の精製水を含有する化粧料(乳化系)を、顔型に切った、目付が60g/m

2

の不織布に含浸させたシート状化粧料。」

の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているといえる。

イ 引用発明1に基く新規性・進歩性について

(ア)本件発明1について

a 対比

(a)引用発明1の「目付60g/m

2

の不織布」は、本件発明1の「目付が40g/m

2

~80g/m

2

である不織布」に相当する。

(b)引用発明1の「2.0質量%のトラネキサム酸」は、本件発明1の「(A)0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分」であって、「前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり」、「前記有効成分がトラネキサム酸を含有する場合」「組成物中のトラネキサム酸の含有率は1~5質量%であり」に相当する。

(c)引用発明1の「エタノール」は、本件発明1の「低級アルコール」に相当する。

引用発明1の「イオン交換水」は、本件発明1の「水」に相当する。

そして、引用発明1の「残量のイオン交換水」の含有量について、引用発明1の組成から「残量」を算出すると、「61.16質量%」であると認められるから(61.16=100-0.04-9.0-9.0-5.0-5.0-8.0-0.3-2.0-0.5)」、引用発明1の「残量のイオン交換水」は「61.16質量%の水」である。

そうすると、引用発明1の「5.0質量%のエタノール」及び「残量の水」は、本件発明1の「(B)60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれか」に相当する。

(d)引用発明1の「8.0質量%の1,3-ブチレングリコール」は、本件発明1の「(C)5質量%以上25質量%未満のポリオール」であって、「前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり」に相当する。

(e)引用発明1の「0.5質量%のカルボキシビニルポリマー」は、本件発明1の「(D)少なくとも1種の高分子化合物」、「前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり」に相当する。

(f)引用発明1の「粘度(30°C)が5600mPa・sである」は、本件発明1の「前記マスク組成物の粘度が3000mPa・s以上である」に相当する。

(g)本件発明1の「マスク組成物」について、本件明細書等には、「医薬外用剤、医薬部外品、化粧品等に用いられる薬学的または生理学的に許容される添加剤を含んでいてもよい。」と記載されているから(段落【0056】)、引用発明1の「水中油型乳化組成物」が、ビタミンAパルミテート等の上記以外の成分を含有することは、両発明の相違点とはならない。

また、引用発明1の「水中油型乳化組成物」と本件発明1の「マスク組成物」は、「組成物」である点で一致する。

そして、引用発明1の「シート状皮膚外用剤」は、本件発明1の「製剤」に相当する。

そうすると、本件発明1と引用発明1とは、

「目付が40g/m

2

~80g/m

2

である不織布と、

前記不織布に含浸された組成物と、を備える製剤であって、

前記組成物は、

(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分と、

(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、

(C) 5質量%以上25質量%未満のポリオールと、

(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、

前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり、

前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり、

前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり、

前記有効成分がトラネキサム酸を含有する場合、前記組成物中のトラネキサム酸の含有率は1~5質量%であり、

前記有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合、前記組成物中のニコチン酸アミドの含有率は3~7質量%であり、

前記組成物の粘度が3000mPa・s以上である、製剤。」

という点において一致し、以下の点で相違する。

相違点1-1:

本件発明1は、「不織布に含浸されたマスク組成物」を備えた「マスク製剤」であるのに対し、引用発明1は、「水中油型乳化組成物」を不織布に含浸させた「シート状皮膚外用剤」である点。

相違点1-2:

本件発明1は、「マスク組成物」が「ジュレ状」であるのに対し、引用発明1は、「水中油型乳化組成物」が「ジュレ状」であるとされていない点。

相違点1-3:

本件発明1は、「マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100」であるのに対し、引用発明1は、「水中油型乳化組成物」の「化粧料のLab表色系におけるL値」が不明である点。

b 判断

(a)上記相違点1-1について検討する。

引用文献1には、摘記1dにおいて、「本発明のシート状皮膚外用剤は、顔(全体、あるいは頬部、目元部、口元部等)・・・等の全体又は局所の部位に密着させ、適当な時間放置後に剥離することにより使用される。」と記載されていることを参酌すれば、引用発明1の「シート状皮膚外用剤」は、本件発明1の「マスク製剤」に相当すると認められる。

また、引用発明1の「水中油型乳化組成物」は、「マスク製剤」に相当する「シート状皮膚外用剤」の不織布に含浸されるところ(摘記1c)、本件発明1の「マスク組成物」は、本件明細書等に記載されるように(段落【0074】)、その形態は限定されず、また、界面活性剤等を含んでもよく(段落【0056】及び【0059】)、乳化組成物としての形態をとり得るものであるから、引用発明1の「水中油型乳化組成物」を不織布に含浸させた「シート状皮膚外用剤」は、本件発明1の「不織布に含浸されたマスク組成物」を備えた「マスク製剤」に相当すると認められる。

よって、相違点1-1は、実質的な相違点ではない。

(b)上記相違点1-2について検討する。

本件明細書等の段落【0036】には、「本実施形態のマスク組成物は、上記(B)~(D)および粘度の要件を満たすことにより、みずみずしいジュレの使用感が得られ、マスク製剤(ジュレマスク)を提供することができる(例えば、特許文献1~3参照)。」と記載されていること、同段落【0084】には、「・・・しかし、これをトラネキサム酸を含有し、粘度を上げたジュレマスク(試料1~4)にすることで軋みが抑制された(「軋みのなさ」が向上した)。なお、トラネキサム酸含有従来マスク(試料5、6)をトラネキサム酸を含有し、粘度を上げたジュレマスク(試料1~4)にすることにより、密着感や浸透感も向上した。」と記載されていること、同段落【0087】には、「・・・このことから、トラネキサム酸により保液性が向上する効果は、高粘度(例えば、3000mPa・s以上)のジュレマスクに特有の効果であると考えられる。」と記載されていることから、本件発明1が「ジュレ状」であることは、(B)、(C)及び(D)の要件を満たすことと、所定の粘度を有することの2点により実現されるものと認められる。

そうすると、上述のとおり、引用発明1の組成物は、本件発明1の(B)、(C)及び(D)の要件を満たし、本件発明1に特定された範囲の粘度を有するものであるから、引用発明1の組成物も「ジュレ状」であるものといえる。

よって、相違点1-2は、実質的な相違点ではない(なお、特許権者は、令和8年1月26日提出の意見書において、令和7年5月29日提出の意見書における主張(引用発明1における水中油型乳化組成物の形態がジュレ状であるか否か不明であるという趣旨の主張)は、「引用発明1における水中油型乳化組成物の形態が「ジュレ状」ではないことを主張したものではなかった」と述べており(第8~9頁)、相違点1-2が実質的な相違点であることについての反論はしていない。)。

(c)上記相違点1-3について検討する。

引用文献1には、引用発明1の水中油型乳化組成物の「化粧料のLab表色系におけるL値」が記載されておらず、水中油型乳化組成物である引用発明1の組成物の透明度の度合いが、上記L値の値にして99.55~100程度であると認める根拠となる記載もない。

したがって、本件発明1は、相違点1-3の点で、引用発明1と実質的に相違するから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。

また、引用文献1には、引用発明1の組成物の透明度を向上させることについて動機付けとなる記載はないし、一般にマスク組成物の透明度を向上させる技術常識が存在したとも認められないから、引用発明1において、組成物の透明度を向上させ、その「化粧料のLab表色系におけるL値」を「99.55~100」の範囲にすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

申立人Aは、申立書Aにおいて「構成要件3Aは、「前記マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が50~100である、請求項1または2のいずれか1項に記載のマスク製剤。」である。これに対して、甲第1号証の試験例6の構成成分(段落0048、表1)を鑑みて、得られた水中油型乳化組成物が透明又は半透明である蓋然性が高いと考えられる。」と主張している(申立書A第113頁)。

また、申立人Bは、令和7年8月27日提出の意見書において、「本件特許発明3は、マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が50~100であることを規定している。そして、本件特許発明3に関し、取消理由通知書において認定されているように、引用発明1を構成する水中油型乳化組成物の上記L値は50~100である蓋然性が高い(取消理由通知書の1、(3)、ウ 本件発明3について)。」と主張している(申立人Bによる令和7年8月27日提出の意見書第12頁)。

しかし、本件訂正により本件発明1の「化粧料のLab表色系におけるL値」の範囲の下限は、「99.55」とされており、上記のとおり、引用発明1の組成物が「化粧料のLab表色系におけるL値」で「99.55~100」程度といえるほど高い透明度を有すると認めることはできない。

(d)本件発明1の効果について

本件発明1のマスク製剤は、みずみずしい使用感が得られ、かつ、肌への密着性に優れたマスク製剤であり(本件明細書等の段落【0013】)、さらに、当該マスク製剤は、マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100であることで、その高い透明度により、見た目にもみずみずしい印象を与え、使用者の心理にも訴えることができる(本件明細書等の段落【0038】)という、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものであるといえる。

(e)小括

以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件発明2及び4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

本件発明4は、本件発明1と同じ「不織布」と「マスク組成物」を備えるマスク製剤キットの発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 引用発明3に基く進歩性について

(ア)本件発明1について

a 対比

(a)引用発明3の「目付が60g/m

2

の不織布」は、本件発明1の「目付が40g/m

2

~80g/m

2

である不織布」に相当する。

(b)引用発明3の「3質量%のトラネキサム酸」は、本件発明1の「(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分」であって、「前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり」、「前記有効成分がトラネキサム酸を含有する場合」「組成物中のトラネキサム酸の含有率は1~5質量%であり」に相当する。

(c)引用発明3の「エタノール」は、本件発明1の「低級アルコール」に相当する。

引用発明3の「精製水」は、本件発明1の「水」に相当する。

そして、引用発明3の「残余の精製水」について、引用発明3の組成から「残余」を算出すると、「62.945質量%」であると認められるから(62.945=100-5-5-5-0.2-0.1-0.05-0.1-8-10-3-0.5-0.1-0.005)、引用発明3の「残余の精製水」は「62.945質量%の水」である。

そうすると、引用発明3の「5質量%のエタノール」及び「残余の精製水」は、本件発明1の「(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれか」に相当する。

(d)引用発明3の「10重量%のブチレングリコール」は、本件発明1の「(C)5質量%以上25質量%未満のポリオール」であって、「前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり」に相当する。

(e)引用発明3の「0.2質量%の(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C

10-30

))コポリマー、0.1質量%のカルボキシビニルポリマー」は、本件発明1の「(D)少なくとも1種の高分子化合物」、「前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり」に相当する。

(f)本件発明1の「マスク組成物」について、本件明細書等には、「医薬外用剤、医薬部外品、化粧品等に用いられる薬学的または生理学的に許容される添加剤を含んでいてもよい。」と記載されているから(段落【0056】)、引用発明3の「化粧料(乳化系)」が、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル等の上記以外の成分を含有することは、両発明の相違点とはならない。

また、引用発明3の「化粧料(乳化系)」と本件発明1の「マスク組成物」は、いずれも組成物であることから、引用発明3の「化粧料(乳化系)」は、「組成物」である点で一致する。

そして、引用発明3の「シート状化粧料」は、本件発明1の「製剤」に相当する。

(g)なお、申立人Bは、申立書Bの第33頁において、追試として、甲1Bすなわち引用文献3に記載された「化粧料1」と類似の組成を有する組成物を調製し、その粘度が12620mPa・sであったことを根拠として、引用文献3に記載された「化粧料1」の粘度も12620mPa・s程度であると主張している(追試として作成した組成物においてサクシノグリカンを用いなかったところ、そのことが組成物の粘度に及ぼす影響が極めて小さいことを示すために摘記7Ba、7Bbを参照している。)。

しかしながら、上記追試についての記載は、実験条件等の詳細が明らかでないから、追試結果を信用するのに十分な程度のものとはいえず、上記追試の結果をただちに採用することはできない。

特に、引用文献3には、「化粧料1」に含まれる「カルボキシビニルポリマー」及び「アクリル酸/アクリル酸アルキル(C

10-30

)コポリマー」の重合度や平均分子量が記載されていないにもかかわらず、上記追試において、「カルボキシビニルポリマー」及び「アクリル酸/アクリル酸アルキル(C

10-30

)コポリマー」を含有し、上記「化粧料1」と類似の組成を有する組成物の粘度を測定している。

しかしながら、「カルボキシビニルポリマー」及び「アクリル酸/アクリル酸アルキル(C

10-30

)コポリマー」等の重合体において、その重合度や平均分子量が変われば、当該重合体を含む組成物の粘度も変わることは、技術常識であるから、上記追試は適切なものであるとはいえず、その結果を採用することはできない。

そうすると、本件発明1と引用発明3とは、

「目付が40g/m

2

~80g/m

2

である不織布と、

前記不織布に含浸された組成物と、を備える製剤であって、

前記組成物は、

(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分と、

(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、

(C) 5質量%以上25質量%未満のポリオールと、

(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、

前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり、

前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり、

前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり、

前記有効成分がトラネキサム酸を含有する場合、前記組成物中のトラネキサム酸の含有率は1~5質量%であり、

前記有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合、前記組成物中のニコチン酸アミドの含有率は3~7質量%である、

製剤。」

という点において一致し、以下の点で相違する。

相違点3-1:

本件発明1は、「不織布に含浸されたマスク組成物」を備えた「マスク製剤」であるのに対し、引用発明3は「化粧料(乳化系)」を不織布に含浸させた「シート状化粧料」である点。

相違点3-2:

本件発明1は、組成物の「粘度が3000mPa・s以上である」のに対し、引用発明3は、化粧料(乳化系)の粘度が不明である点。

相違点3-3:

本件発明1は、「マスク組成物」が「ジュレ状」であるのに対し、引用発明3は、化粧料(乳化系)が「ジュレ状」であるか否か明らかでない点。

相違点3-4:

本件発明1は、「マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100」であるのに対し、引用発明3は、化粧料(乳化系)の「化粧料のLab表色系におけるL値」が不明である点。

b 判断

(a)上記相違点3-1について検討する。

引用文献3には、摘記3cにおいて、試料が「含浸マスク」である旨が記載されていることから、引用発明3の「シート状化粧料」は、本件発明1の「マスク製剤」に相当すると認められる。

また、引用発明3の「化粧料(乳化系)」は、「マスク製剤」に相当する「シート状化粧料」の不織布に含浸されるところ(摘記3d)、本件発明1の「マスク組成物」は、本件明細書等に記載されるように(段落【0074】)、その形態は限定されず、また、界面活性剤等を含んでもよく(段落【0056】及び【0059】)、乳化組成物としての形態をとり得るものであるから、引用発明3の「化粧料(乳化系)」を不織布に含浸させた「シート状化粧料」は、本件発明1の「不織布に含浸されたマスク組成物」を備えた「マスク製剤」に相当すると認められる。

よって、相違点3-1は、実質的な相違点ではない。

(b)上記相違点3-2について検討する。

引用文献3には、含浸液である引用発明3の「化粧料(乳化系)」の粘度は記載されていない(摘記3c)。

しかしながら、「化粧料(乳化系)」に含まれる(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー及びカルボキシビニルポリマーは、増粘剤であり(必要であれば、引用文献2(摘記2e)を参照。)、引用文献2には、マスク組成物に用いられる液体組成物が「顔から滴り落ちるのを防止ししつつ水不溶性基材に浸透するのに好適」な粘度として、約500mPa・s~約60,000mPa・s、好ましくは約1000mPa・s~約30,000mPa・s、より好ましくは約2000mPa・s~約15,000mPa・sの範囲の粘度とすることが記載されているから(摘記2d)、引用発明3の含浸液である「化粧料(乳化系)」の粘度を本件発明1のように調整することは当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

(c)上記相違点3-3について検討する。

本件発明1と引用発明1との相違点1-2について検討したように(イ(ア))、本件発明1が「ジュレ状」であることは、(B)、(C)及び(D)の要件を満たすことと、所定の粘度を有することの2点により実現されるものと認められる。

ここで、上述のとおり、引用発明3の含浸液である「化粧料(乳化系)」は、本件発明1の(B)、(C)及び(D)の要件を満たすものである。また、上記(b)で検討したように、引用発明3の含浸液である「化粧料(乳化系)」の粘度を本件発明1のように調整することは当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

そうすると、引用発明3の「化粧料(乳化系)」の粘度を本件発明1のように調整して得られたものは、結果的に「ジュレ状」となっているといえる。

そして、(b)で述べたとおり、相違点3-2に係る本件発明1の技術的事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるといえるから、相違点3-3も当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

(d)上記相違点3-4について検討する。

引用文献3には、引用発明3の「化粧料(乳化系)」の「化粧料のLab表色系におけるL値」が記載されておらず、引用発明3の「化粧料(乳化系)」の透明度の度合いが、上記L値の値にして99.55~100程度であると認める根拠となる記載もない。

また、引用文献3には、引用発明3の「化粧料(乳化系)」の透明度を向上させることについて動機付けとなる記載はないし、一般にマスク組成物の透明度を向上させる技術常識が存在したとも認められないから、引用発明3において、組成物の透明度を向上させ、その「化粧料のLab表色系におけるL値」を「99.55~100」の範囲にすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

これについて、申立人A及び申立人Bの主張は、上記イ(ア)で述べたとおりであるが、上記のとおり、引用発明3の組成物が「化粧料のLab表色系におけるL値」で「99.55~100」程度といえるほど高い透明度を有すると認めることはできない。

(e)本件発明1の効果について

本件発明1のマスク製剤は、みずみずしい使用感が得られ、かつ、肌への密着性に優れたマスク製剤であり(本件明細書等の段落【0013】)、さらに、当該マスク製剤は、マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100であることで、その高い透明度により、見た目にもみずみずしい印象を与え、使用者の心理にも訴えることができる(本件明細書等の段落【0038】)という、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものであるといえる。

(f)小括

以上のとおり、本件発明1は、引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)本件発明2及び4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件発明4は、本件発明1と同じ「不織布」と「マスク組成物」を備えるマスク製剤キットの発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)取消理由4について

当審合議体は、決定の予告として特許権者に通知した取消理由通知書において、特許件者が引用発明1の形態が「ジュレ状」であるか否かは不明であると主張していることを指摘したうえで、「請求項1において、本件発明1の「ジュレ状」であるという特定により、どのような状態あるいは物性が特定されたのか客観的に把握することができない。そして、本件発明1を引用する本件発明2及び3も、同じ理由から明確ではない。さらに、請求項4に記載された「ジュレ状」も、同じ理由から明確ではない。」と指摘した。

これに対し、特許権者は、令和8年1月26日提出の意見書において、「ご指摘の通り、本件特許発明について、「ジュレ状」は、一般的に定義づけられる「ジュレ状」と同じ意味である。すなわち、「ジュレ」は、「ジェル」と同義であり、「透明もしくは半透明で粘度の高い液体(ゼリー状)」を指す。また、令和7年5月29日付の意見書において、引用発明1における水中油型乳化組成物の形態がジュレ状であるか否か不明であるという趣旨の主張であったが、当該趣旨は、引用文献1に水中油型乳化組成物が「ジュレ状」であるという明示的な記載がなされていなかったことを意味しており、引用発明1における水中油型乳化組成物の形態が「ジュレ状」ではないことを主張したものではなかった。」と主張している(特許権者による令和8年1月26日提出の意見書第8~9頁)。

特許権者の主張における「透明もしくは半透明で粘度の高い液体(ゼリー状)」は、決定の予告として特許権者に通知した取消理由通知書で引用した引用文献4にある記載(摘記4a)であり、化粧料の技術分野において、一般的に理解されている用語の定義と同じものである。

そうすると、本件発明及び本件明細書等においては、「ジュレ状」という用語は、化粧料の技術分野において一般的に理解されている用語の定義と同じ意味で用いられていることが明らかであるから、「ジュレ状」の用語の意味は明確である。

また、上記意見書には、引用発明1の組成物の形態が「ジュレ状」であることを否定する趣旨の主張はしていないとの説明があるが、この点は、上記(1)イ(ア)で述べた相違点1-2に関する判断とも矛盾せず、この説明により「ジュレ状」の用語の意味が不明確となることもない。

申立人Bは、令和7年8月27日提出の意見書において、「「ジュレ状」との用語からは、例えば、半固体状であって、流動性を有しながらも形状を保持する状態などが観念される。しかしながら、このように観念される形態(状態)もまた、いずれも定性的なものにすぎず、具体的な物理的特性を数値で示すものではないから、その固さ、流動性、形状保持能力がそれぞれどの程度であるのか等、その記載に接した者によって解釈に幅が生じる、主観的な要素を含む表現である。」と主張している(申立人Bによる令和7年8月27日提出の意見書第6頁、同意見書において、申立人Bは、「ジュレ」が「ゼリー」と同義であることを示すために摘記8Baを参照している。)。

しかし、特許請求の範囲の記載中、その技術の属する分野において一般的に用いられている用語を、その一般的な意味で用いている場合には、具体的な物理的特性を数値で示すものでなくても、特段の事情がない限り、当該用語を用いた記載が不明確であるとはいえないところ、本件発明の「ジュレ状」との用語については、化粧料の技術分野の一般的な書籍に記載されている用語の意味(摘記4a)と同じ意味で本件発明の「ジュレ状」という用語が用いられていることは特許権者の主張から明らかであり、本件明細書等にそれと矛盾する記載があるものでもないから、「ジュレ状」の用語が明確でないとする申立人の主張は受け入れられない。

よって、本件の請求項1及び4、並びに請求項1を引用する請求項2の記載は明確である。

(3)まとめ

以上のとおりであるから、取消理由1、2及び4には、理由がない。

3 取消理由通知において採用しなかった申立理由について

上記2で述べたように、取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)は、引用文献1(甲1A、甲2B)を主引例とする点で、申立理由1A-1、1A-2(ア)及び2Bと同旨であり、取消理由2(進歩性)は、引用文献3(甲3A、甲1B)を主引例とする点で、申立理由3A-2(ア)及び1B-2と同旨であり、取消理由4(明確性)は、「ジェル状」の用語に関する点で、申立理由5Bと同旨である。

一方、申立理由1A-2(イ)、申立理由2A、申立理由3A-1、申立理由3A-2(イ)、申立理由4A、申立理由1B-1、申立理由3B、及び申立理由4Bについては、取消理由として採用しなかったため、以下検討する。

(1)申立理由1A-2(イ)(引用文献1(甲1A、甲2B)を主引例、引用文献2(甲2A)を副引例とする進歩性)について

ア 本件発明1について

(ア)対比

本件発明1と引用発明1の対比については、上記2(1)イ(ア)に記載のとおりである。

本件発明1のマスク組成物がニコチン酸アミドを含有する態様について検討すると、引用文献1には、引用発明1にニコチン酸アミドをさらに加えることや、トラネキサム酸に代えてニコチン酸アミドを用い得ることは記載されていないから、この態様については、下記の点が新たな相違点として生じる。

相違点1-4:

本件発明1のマスク組成物は、「有効成分」として「ニコチン酸アミド」を含むのに対し、引用発明1の組成物は、「ニコチン酸アミド」を含有しない点。

(イ)判断

引用文献2には、マスク組成物に長期持続美白剤として、ニコチン酸アミドを添加し得ることが記載されている(摘記2a、2f、2h)。

しかしながら、引用文献2には、ニコチン酸アミドがトラネキサム酸に比べて優れた性能を有するものであることは記載されていないから、引用発明1の組成物のトラネキサム酸に代えて、ニコチン酸アミドを用いることの動機付けはない。また、引用文献2には、ニコチン酸アミドをトラネキサム酸と併用することで優れた効果が奏されることも記載されていないから、引用発明1の組成物に対して、ニコチン酸アミドをさらに添加することにも、動機付けがない。

申立人Aは、申立書Aにおいて、「本件発明1の組成物がニコチン酸アミドを含有する態様については、本件の構成要件1L(「前記有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合、前記マスク組成物中のニコチン酸アミドの含有率は3~7質量%であり」)が必須の構成となるが、甲第2号証に記載のように、「ニコチン酸アミド」をマスク組成物に配合することは一般的に行われている(甲第2号証の実施例1~3及び6(段落0078(表1)))。したがって、甲第1号証の試験例6の組成物において、「トラネキサム酸」と共に、又は「トラネキサム酸」に代えて、「ニコチン酸アミド」を使用することは、当業者にとって容易になし得ることである。」と主張している(申立書A第111頁)。

しかし、単に一般的に用いられている成分であるというのみでは、ニコチン酸アミドを引用発明1の組成物に添加する又はトラネキサム酸に代えて用いることの動機付けがあるとはいえないから、申立人の主張は受け入れられない。

以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2及び4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記アと同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件発明4は、本件発明1と同じ「不織布」と「マスク組成物」を備えるマスク製剤キットの発明であるから、上記アと同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)申立理由2A(引用文献2(甲2A)を主引例とする進歩性)について

ア 引用文献2に記載された発明

引用文献2には、実施例2の記載(摘記2b、摘記2g、摘記2h)からみて、

「0.5重量%のイソプロピルイソステアレート、0.3重量%のセチルアルコール、0.3重量%のステアリルアルコール、0.2重量%のイソヘキサデカン、0.2重量%のココヤシ油、0.1重量%のPEG-100ステアレート、0.2重量%のステアレス-21、0.2重量%のステアレス2、0.25重量%のアクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー、5.0重量%の1,3-ブチレングリコール、3.0重量%のジプロピレングリコール、2.0重量%のアスコルビルグルコシド、2.0重量%のニコチン酸アミド、0.2重量%の酢酸トコフェロール、0.2重量%のサリチル酸ナトリウム、0.15重量%のベンジルアルコール、0.07重量%のエチルパラベン、0.03重量%のプロピルパラベン、0.1重量%のEDTA二ナトリウム、NaOH、適量を加えて100重量%とする量の脱イオン水を含有する乳化液体組成物を、基材RFP-90に浸させたマスク組成物」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)対比

a 引用発明2の「基材RFP-90」は、不織布であるから(摘記2c)、本件発明1の「不織布」に相当する。

b 引用発明2の「2.0重量%のニコチン酸アミド」は、本件発明1の「(A)0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分」であって、「前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり」に相当する。

c 引用発明2の「脱イオン水」は、本件発明1の「水」に相当する。

そして、引用発明2の「適量を加えて100重量%とする量の脱イオン水」の含有量について、引用発明2の組成から「適量を加えて100重量%とする量」を算出する。まず、具体的な含有量が不明な「NaOH」以外の成分の含有量を100重量%から除くと、その値は「85重量%」である(85=100-0.5-0.3-0.3-0.2-0.2-0.1-0.2-0.2-0.25-5.0-3.0-2.0-2.0-0.2-0.2-0.15-0.07-0.03-0.1)から、「NaOH」と「脱イオン水」の合計の含有量は「85重量%」である。ここで、引用文献2の表1には、「NaOH」はpHを6~8に調整するために加えられていることが記載されていること、引用発明2の乳化液体組成物は、多量の酸性物質を含有しないことからすると、引用発明2の「NaOH」の含有量が乳化液体組成物全体の25重量%以上である蓋然性は低く、したがって、上記の計算により算出された「85重量%」のうち、60重量%以上が「脱イオン水」の含有量である蓋然性が高い。

そうすると、「NaOH」と「脱イオン水」の合計の含有量の「85重量%」のうち、「脱イオン水」の含有量は、60重量%以上であると認められるから、引用発明2の「適量を加えて100重量%とする量の脱イオン水」は、本件発明1の「(B)60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれか」に相当する。

d 引用発明2の「5.0重量%の1,3-ブチレングリコール」は、本件発明1の「(C)5質量%以上25質量%未満のポリオール」であって、「前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり」に相当する。

e 引用発明2の「0.25重量%のアクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー」は、本件発明1の「(D)少なくとも1種の高分子化合物」、「前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり」に相当する。

f 本件発明1の「マスク組成物」について、本件明細書等には、「医薬外用剤、医薬部外品、化粧品等に用いられる薬学的または生理学的に許容される添加剤を含んでいてもよい。」と記載されているから(段落【0056】)、引用発明2の「乳化液体組成物」が、イソプロピルイソステアレート等の上記以外の成分を含有することは、両発明の相違点とはならない。

また、引用発明1の「乳化液体組成物」は、本件発明1の「マスク組成物」に相当する。

そして、引用発明1の「マスク組成物」は、本件発明1の「マスク製剤」に相当する。

そうすると、本件発明1と引用発明2とは、

「不織布と、

前記不織布に含浸されたマスク組成物と、を備えるマスク製剤であって、

前記マスク組成物は、

(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分と、

(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、

(C) 5質量%以上25質量%未満のポリオールと、

(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、

前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり、

前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり、

前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかである、

マスク製剤。」

という点において一致し、以下の点で相違する。

相違点2-1:

本件発明1は、「不織布」の「目付が40g/m

2

~80g/m

2

」であるのに対し、引用発明2は、「不織布」の目付の値が特定されていない点。

相違点2-2:

本件発明1は、「有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合」、その含有率が「3~7質量%」と特定されているのに対し、引用発明2は、「ニコチン酸アミド」の含有量が「2.0重量%」である点。

相違点2-3:

本件発明1は、組成物の「粘度が3000mPa・s以上である」のに対し、引用発明2は、乳化液体組成物の粘度が不明である点。

相違点2-4:

本件発明1は、「マスク組成物」が「ジュレ状」であるのに対し、引用発明2は、「ジュレ状」であるか否か明らかでない点。

相違点2-5:

本件発明1は、「マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100」であるのに対し、引用発明2は、「化粧料のLab表色系におけるL値」が不明である点。

(イ)判断

a 上記相違点2-1について検討する。

引用文献2には、引用発明2の不織布の目付の値は記載されておらず、その値が、「40g/m

2

~80g/m

2

」の範囲内であると認める根拠となる記載もない。

また、引用文献2には、引用発明2の不織布の目付の値として、どのような値のものを用いるかは記載されていないから、不織布の目付の値の範囲を「40g/m

2

~80g/m

2

」とする動機付けがないし、不織布の目付の値を「40g/m

2

~80g/m

2

」とすることに関する一般的な技術常識が存在していたとも認められない。

したがって、引用発明2において、不織布の目付の範囲を「40g/m

2

~80g/m

2

」の範囲とすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

これについて、申立人Aは、申立書Aにおいて「しかしながら、本件発明の技術分野は、甲第2号証の技術分野と共通しているため、美容目的のマスク製剤に係る不織布として「目付が40g/m

2

~80g/m

2

である」ものを採用することは、当業者にとってなし得るものである。」と主張している(申立書A第117頁)。

しかし、マスク組成物の含浸に用いられる不織布は、目付が「40g/m

2

~80g/m

2

」の範囲外のものも存在するから(必要であれば、摘記4Baを参照されたい。)、技術分野が共通しているという理由のみでは、引用発明2において、本件発明1と同程度の目付の不織布を用いることが当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。

また、本件明細書等の段落【0107】~【0110】には、目付が「40g/m

2

~80g/m

2

」の範囲内の不織布を使用することで、含浸性が良く、よれが少ないマスク製剤を得られることが記載されているから、本件発明1は、不織布として「目付が40g/m

2

~80g/m

2

」であるものを採用することにより格別顕著な効果が奏されるものであるといえる。

したがって、申立人の主張は受け入れられない。

b 上記のとおり、相違点2-1に関して、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明2及び4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イと同様の理由により、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件発明4は、本件発明1と同じ「不織布」と「マスク組成物」を備えるマスク製剤キットの発明であるから、上記イと同様の理由により、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立理由3A-1(引用文献3(甲3A、甲1B)を主引例とする新規性)について

上記2(1)ウにおいて述べたとおり、本件発明1と引用発明3は、相違点3-2、相違点3-3及び相違点3-4において実質的に相違するから、本件発明1は、引用文献3に記載された発明であるとはいえない。

また、本件発明2及び4も、同様に引用文献3に記載された発明であるとはいえない。

(4)申立理由3A-2(イ)(引用文献3(甲3A、甲1B)を主引例、引用文献2(甲2A)を副引例とする進歩性)について

引用発明3に、ニコチン酸アミドをさらに加えることや、トラネキサム酸に代えてニコチン酸アミドを用いることについては、上記(1)で検討した理由と同様の理由から、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

したがって、本件発明1は、引用文献3に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、引用文献3に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件発明4は、本件発明1と同じ「不織布」と「マスク組成物」を備えるマスク製剤キットの発明であるから、上記(1)と同様の理由により、引用文献3に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)申立理由4A(サポート要件)について

ア サポート要件の判断の前提

特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 課題

本件発明の課題は、本件明細書等の発明の詳細な説明(特に段落【0005】)の記載からみて、「みずみずしい使用感が得られ、かつ、肌への密着性に優れたマスク製剤を提供すること」であると認められる。

ウ 上記課題を解決するための手段

本件明細書等の発明の詳細な説明には、本件発明の不織布について記載され(段落【0015】~【0017】)、本件発明のマスク組成物の(A)~(D)の各成分について記載され(段落【0018】~【0034】)、本件発明のマスク組成物の粘度について記載され(段落【0035】)、本件発明のマスク組成物が「ジュレ状」であることについて記載され(段落【0036】)、本件発明のマスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値について記載され(段落【0037】~【0038】)、本件発明のマスク製剤キットについて記載され(段落【0076】)、実際に、マスク製剤を製造した例が、実施例として記載されている(段落【0077】~【0110】)。

そうしてみれば、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載には、上記イの課題を解決するための手段が記載され、実際に、実施例で、本件発明のマスク製剤が「みずみずしい使用感が得られ、かつ、肌への密着性に優れた」ものであることが確認されている(段落【0077】~【0110】)から、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載から、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識できるといえ、本件発明は、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載されているといえる。

エ 申立理由4Aにおける指摘

申立人Aは、上記第4の1(1)カのように述べ、本件発明はサポート要件を満たさないと主張する。

オ 判断

本件明細書等の実施例(特に段落【0096】~【0100】)には、有効成分としてニコチン酸アミドのみを用いた場合の保液性試験の結果が示されており、段落【0100】には、「表6および表7に示されるように、マスクのみ(試料17)よりもジュレマスクにニコチン酸アミドを配合するとさらに保液性が向上することが分かる(試料11,13)。また、ニコチン酸アミドを配合したマスク(試料15)よりも、さらにジュレマスクとする方が保液性が向上した(試料12)。」との記載がある。

これらの記載から、本件発明のマスク組成物は、有効成分としてニコチン酸アミドのみを用いた場合にも優れた保液性を有することを理解することができる。そして、保液性が高ければ、マスクを使用した際のみずみずしい使用感も得られる蓋然性が高いといえるから、本件発明のマスク組成物であって、有効成分としてニコチン酸アミドのみを用いたものについても、みずみずしい使用感を得られることが、本件明細書等の記載から理解することができる。

また、本件明細書等の実施例の記載のうち、「表1」に示された試料4と試料7の密着性に関するデータを比較すると、どちらも「3.3」と同じ数値となっている。ここで、試料4は、トラネキサム酸含有ジュレマスクであり、試料7は、トラネキサム酸を含有しないこと以外は、試料4と同じ組成を有するマスク組成物を用いたジュレマスクである。

さらに、同「表1」に示された試料1~4及び7と試料5、6及び8の密着感のデータを比較すると、試料1~4及び7は、その値が「5.0」又は「3.3」であるのに対し、試料5、6及び8は、「1.7」、「2.0」、「1.0」となっており、試料1~4及び7の方が、試料5、6及び8よりも優れていることが理解できる。ここで、試料1~4及び7は、マスクの形態がジュレマスクであり、試料5、6及び8は、従来マスクである。

そうすると、マスクの密着性は、ジュレという形態を有するマスクで高くなっており、有効成分であるトラネキサム酸の含有の有無の影響を受けていないことが理解できるから、有効成分としてニコチン酸アミドのみを用いた場合であっても、ジュレという形態のマスクであれば、密着性が高くなるものと理解することができる。

したがって、本件発明のマスク組成物であって、有効成分としてニコチン酸アミドのみを用いたものについても、高い密着性を得られることが、本件明細書等の記載から理解することができる。

よって、本件発明のマスク組成物であって、有効成分としてニコチン酸アミドのみを用いたものは、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであると認められる。

カ まとめ

以上のとおりであるから、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(6)申立理由1B-1(引用文献3(甲3A、甲1B)を主引例とする新規性)について

上記2(1)ウにおいて述べたとおり、本件発明1と引用発明3は、相違点3-2、相違点3-3及び相違点3-4において相違するから、本件発明1は、引用文献3に記載された発明であるとはいえない。

また、本件発明2及び4も、同様に引用文献3に記載された発明であるとはいえない。

(7)申立理由3B(甲3Bを主引例とする進歩性)について

ア 甲3Bに記載された発明

甲3Bには、特許請求の範囲及び明細書の記載(摘記3Ba、摘記3Bb、摘記3Be)からみて、実施例4~6、11として、下記の発明(以下「甲3B発明」という。)が記載されているといえる。

「下記の成分を含有する液体組成物を、基材RFP-90に浸させたマスク実施形態。

0.3重量%のグルコシルヘスペリジン、3.5重量%のナイアシンアミド、0.2重量%のピリドキシンジパルミテート、1.0重量%のイソステアリン酸イソプロピル、0.3重量%のセチルアルコール、0.3重量%のステアリルアルコール、1.0重量%のイソヘキサデカン、0.5重量%のジメチコン及びジメチコノール、0.1重量%のPEG-100ステアレート、0.15重量%のセテアリルグルコシド、0.25重量%のアクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー、3.0重量%のグリセリン、5.0重量%の1,3-ブチレングリコール、0.2重量%のトコフェロールアセテート、0.25重量%のベンジルアルコール、0.15重量%のメチルパラベン、0.07重量%のエチルパラベン、0.03重量%のプロピルパラベン、0.1重量%のEDTA二ナトリウム、NaOH、適量を加えて100重量%とする量の脱イオン水を含有する液体組成物(実施例4)

0.2重量%のグルコシルヘスペリジン、3.5重量%のナイアシンアミド、0.2重量%のピリドキシンジパルミテート、2.0重量%のイソヘキサデカン、1.5重量%のジメチコン及びジメチコノール、0.36重量%のアクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー、3.0重量%のグリセリン、5.0重量%の1,3-ブチレングリコール、2.0重量%のポリメチルシルセスキオキサン、2.0重量%のリン酸アスコルビルナトリウム、0.2重量%のトコフェロールアセテート、0.5重量%のクワ抽出物、0.1重量%の香料、0.25重量%のベンジルアルコール、0.15重量%のメチルパラベン、0.1重量%のEDTA二ナトリウム、NaOH、適量を加えて100重量%とする量の脱イオン水を含有する液体組成物(実施例5)

0.2重量%のグルコシルルチン、5.0重量%のナイアシンアミド、0.2重量%のピリドキシンジパルミテート、2.0重量%のイソヘキサデカン、1.5重量%のジメチコン及びジメチコノール、0.36重量%のアクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー、3.0重量%のグリセリン、8.0重量%の1,3-ブチレングリコール、2.0重量%のポリメチルシルセスキオキサン、0.2重量%のトコフェロールアセテート、0.5重量%のクワ抽出物、0.1重量%の香料、0.25重量%のベンジルアルコール、0.15重量%のメチルパラベン、0.1重量%のEDTA二ナトリウム、NaOH、適量を加えて100重量%とする量の脱イオン水を含有する液体組成物(実施例6)

0.2重量%のグルコシルヘスペリジン、3.5重量%のナイアシンアミド、0.1重量%のピリドキシン塩酸塩、0.4重量%のキサンタンガム、0.2重量%のアクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー、8重量%の1,3-ブチレングリコール、5重量%のグリセリン、2重量%のリン酸アスコルビルナトリウム、0.3重量%のポリソルベート20、0.15重量%のメチルパラベン、0.25重量%のベンジルアルコール、0.1重量%のEDTA-2Na、水酸化ナトリウム、適量を加えて100重量%とする量の脱イオン水を含有する液体組成物(実施例11)」

イ 本件発明1について

(ア)対比

a 甲3B発明の「基材RFP-90」は、不織布であるから(摘記3Bc)、本件発明1の「不織布」に相当する。

b 甲3B発明の「3.5重量%のナイアシンアミド」、「5.0重要%のナイアシンアミド」は、本件発明1の「(A)0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分」であって、「前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり」「前記有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合」「組成物中のニコチン酸アミドの含有率は3~7質量%であり」に相当する。

c 甲3B発明の「脱イオン水」は、本件発明1の「水」に相当する。

そして、甲3B発明の「適量を加えて100重量%とする量の脱イオン水」の含有量について、甲3B発明の組成から「適量を加えて100重量%とする量」を算出する。まず、甲3Bの各実施例について、具体的な含有量が不明な「水酸化ナトリウム」以外の成分の含有量を100重量%から除くと、その値は、それぞれ次のようになる。

実施例4は、「83.6重量%」(83.6=100-0.3-3.5-0.2-1.0-0.3-0.3-1.0-0.5-0.1-0.15-0.25-3.0-5.0-0.2-0.25-0.15-0.07-0.03-0.1)。

実施例5は、「78.94重量%」(78.94=100-0.2-3.5-0.2-2.0-1.5-0.36-3.0-5.0-2.0-2.0-0.2-0.5-0.1-0.25-0.15-0.1)。

実施例6は、「76.44重量%」(76.44=100-0.2-5.0-0.2-2.0-1.5-0.36-3.0-8.0-2.0-0.2-0.5-0.1-0.25-0.15-0.1)。

実施例11は、「79.8重量%」(79.8=100-0.2-3.5-0.1-0.4-0.2-8-5-2-0.3-0.15-0.25-0.1)。

これらの値は、「水酸化ナトリウム」と「脱イオン水」の合計の含有量を意味するところ、甲3Bの表1には、「水酸化ナトリウム」はpHを6~8に調整するために加えられていること(実施例4、5及び6)、表2には、「水酸化ナトリウム」は、pHを4.5~7.0に調整するために加えられていること(実施例11)が記載されており、甲3B発明の液体組成物は、多量の酸性物質を含有しないことからすると、上記の実施例の中で最も「水酸化ナトリウム」と「脱イオン水」の合計の含有量が少ない実施例6について考えても、甲3B発明の「水酸化ナトリウム」の含有量が乳化液体組成物全体の16.44重量%以上である蓋然性は低く、したがって、上記の計算により算出された「83.6重量%」(実施例4)、「78.94重量%」(実施例5)、「76.44重量%」(実施例6)、「79.8重量%」(実施例11)のうち、それぞれ60重量%以上が「脱イオン水」の含有量である蓋然性が高い。

そうすると、上記「NaOH」と「脱イオン水」の合計の含有量の「83.6重量%」(実施例4)、「78.94重量%」(実施例5)、「76.44重量%」(実施例6)、「79.8重量%」(実施例11)のうち、「脱イオン水」の含有量は、それぞれ60重量%以上であると認められるから、甲3B発明の「適量を加えて100重量%とする量の脱イオン水」は、本件発明1の「(B)60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれか」に相当する。

d 甲3B発明の「5.0重量%の1,3-ブチレングリコール」、「8.0重量%の1,3-ブチレングリコール」、「8重量%の1,3-ブチレングリコール」は、本件発明1の「(C)5質量%以上25質量%未満のポリオール」であって、「前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり」に相当する。

e 甲3B発明の「0.25重量%のアクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー」、「0.36重量%のアクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー」、「0.2重量%のアクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー」の「アクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー」は、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体であるから(必要であれば、摘記5Baを参照されたい。)、本件発明1の「(D)少なくとも1種の高分子化合物」、「前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり」に相当する。

f 本件発明1の「マスク組成物」について、本件明細書等には、「医薬外用剤、医薬部外品、化粧品等に用いられる薬学的または生理学的に許容される添加剤を含んでいてもよい。」と記載されているから(段落【0056】)、甲3B発明の「液体組成物」が、グルコシルヘスペリジン等の上記以外の成分を含有することは、両発明の相違点とはならない。

また、甲3B発明の「液体組成物」は、本件発明1の「マスク組成物」に相当する。

そして、甲3B発明の「マスク実施形態」は、本件発明1の「マスク製剤」に相当する。

g なお、申立人Bは、申立書Bの第44頁において、追試として、甲3Bに記載された実施例6と類似の組成を有する組成物を調製し、その粘度が7880mPa・sであったことを根拠として、甲3Bに記載された実施例6の粘度も7880mPa・s程度であると主張している。

しかしながら、上記追試についての記載は、実験条件等の詳細が明らかでないから、追試結果を信用するのに十分な程度のものとはいえず、上記追試の結果をただちに採用することはできない。

そうすると、本件発明1と甲3B発明とは、

「不織布と、

前記不織布に含浸されたマスク組成物と、を備えるマスク製剤であって、

前記マスク組成物は、

(A) 0.5質量%以上のlogP値が0以下であり、分子量が1000以下である水溶性の有効成分と、

(B) 60質量%以上の水および低級アルコールの少なくともいずれかと、

(C) 5質量%以上25質量%未満のポリオールと、

(D) 少なくとも1種の高分子化合物と、を含有し、

前記有効成分は、トラネキサム酸およびニコチン酸アミドの少なくともいずれかであり、

前記ポリオールは、ブチレングリコールおよび1,3-プロパンジオールの少なくともいずれかであり、

前記少なくとも1種の高分子化合物は、カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の少なくともいずれかであり、

前記有効成分がトラネキサム酸を含有する場合、前記組成物中のトラネキサム酸の含有率は1~5質量%であり、

前記有効成分がニコチン酸アミドを含有する場合、前記マスク組成物中のニコチン酸アミドの含有率は3~7質量%である、

マスク製剤。」

という点において一致し、以下の点で相違する。

相違点3B-1:

本件発明1は、「不織布」の「目付が40g/m

2

~80g/m

2

」であるのに対し、甲3B発明は、「不織布」の目付の値が特定されていない点。

相違点3B-2:

本件発明1は、組成物の「粘度が3000mPa・s以上である」のに対し、甲3B発明は、乳化液体組成物の粘度が不明である点。

相違点3B-3:

本件発明1は、「マスク組成物」が「ジュレ状」であるのに対し、甲3B発明は、「ジュレ状」であるか否か明らかでない点。

相違点3B-4:

本件発明1は、「マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100」であるのに対し、甲3B発明は、「Lab表色系におけるL値」が不明である点。

(イ)判断

a 上記相違点3B-1について検討する。

甲3Bには、甲3B発明の不織布の目付の値は記載されておらず、その値が、「40g/m

2

~80g/m

2

」の範囲内であると認める根拠となる記載もない。

また、甲3Bには、甲3B発明の不織布の目付の値として、どのような値のものを用いるかは記載されていないから、不織布の目付の値の範囲を「40g/m

2

~80g/m

2

」とする動機付けがないし、不織布の目付の値を「40g/m

2

~80g/m

2

」とすることに関する一般的な技術常識が存在していたとも認められない。

したがって、甲3B発明において、不織布の目付の範囲を「40g/m

2

~80g/m

2

」の範囲とすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

これについて、申立人Bは、申立書Bにおいて「甲3発明において用いられた不織布基材としてのPFP-90に代えて、上記【0058】に例示された各不織布基材に置換することは、当業者が容易に想到しうることであり、格別の困難性なくなし得たことである。」と主張している(申立書B第45頁)。

申立人Bの主張のとおり、甲3Bの段落【0058】には、各種の不織布が例示されているが(摘記3Bc)、当該段落には、用い得る不織布が単に列記されているのみで、どのようなものを用いることがどのような点で好ましいかは記載されていないから、同段落の記載を参酌しても、特定の範囲の目付を有する不織布を使用することに当業者が容易に想到するとはいえない。

したがって、申立人の主張は受け入れられない。

b 上記のとおり、相違点3B-1に関して、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、その余の相違点については、検討するまでもなく、本件発明1は、甲3Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明2及び4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イと同様の理由により、甲3Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件発明4は、本件発明1と同じ「不織布」と「マスク組成物」を備えるマスク製剤キットの発明であるから、上記イと同様の理由により、甲3Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(8)申立理由4B(明確性)について

申立人Bは、申立書Bにおいて、「本件特許発明3には、「前記マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が50~100である、請求項1または2のいずれか1項に記載のマスク製剤。」と記載されている。また、本件明細書等の段落【0038】には、以下のように記載されている(下線は異議申立人が付した。)。

「【0038】

化粧料のLab表色系におけるL値は、精製水の透明度を100とし、全く光の透過がない場合を0としたときの透明度を表す値である。即ち、L値は100に近いほど透明度が高いことを意味する。

L値は、例えば、試験液をガラスセル(CM-A99、厚さ20mm)に入れ、分光測色計CM-5(コニカミノルタ株式会社製)等を用いて測定することができる。

本実施形態のマスク組成物は、L値が50以上の透明または半透明の組成物である。これにより、見た目にもみずみずしい印象を与え、使用者の心理にも訴えることができるという利点がある。

上記記載によれば、本件特許発明3に規定されたL値が50~100であることは、当該マスク組成物の透明度が高いことを意図していると考えられる。しかし、甲第6号証の「地球に例えられるL

*

a

*

b

*

の定義」の項目に記載されているように、

Lab表色系におけるL値とは、明度を表し、完全な黒色を0、完全な白色を100とした場合における、測定対象表面の色の白色度の度合いを示す物性である

ことは技術常識である。そうすると、本件特許発明3に規定される「L値が50~100である」とは、

当該マスク組成物が、白と黒との中間(グレー)よりも白色度が高いことを意味する

と考えられるのが妥当である。」と主張している(申立書B第48~49頁、上記甲第6号証の記載については、摘記6Baを参照されたい。)。

本件訂正により、本件特許の請求項3は、削除されているが、同時に請求項1及び4に「前記マスク組成物の化粧料のLab表色系におけるL値が99.55~100である」との記載が追加されているので、実質的に申立理由4Bは、本件訂正後の請求項1及び4に対するものと解釈し、以下検討する。

本件明細書等の段落【0038】には、本件発明における「化粧料のLab表色系におけるL値」の意味するところが明記されているし、その測定方法も記載されている。また、実施例においては、製造した試料1~8の各マスク組成物の「化粧料のLab表色系におけるL値」を段落【0038】に記載の方法で測定したことも具体的に記載されているから(本件明細書等の段落【0080】)、本件発明における「化粧料のLab表色系におけるL値」の用語は明確である。

また、本件特許以外にも、L値を透明度の指標として用いている特許文献は多数存在しているから(例えば、特開2014-148473号公報の段落【0025】等を参照されたい。)、L値について、本件特許のみがことさら特異な定義を用いているとも認められない。

したがって、申立人の主張は受け入れられない。

(9)まとめ

以上のとおりであるから、申立理由1A-2(イ)、申立理由2A、申立理由3A-1、申立理由3A-2(イ)、申立理由4A、申立理由1B-1、申立理由3B及び申立理由4Bには、理由がない。

第6 むすび

以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人A及び申立人Bの特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。

また、ほかに請求項1、2及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

さらに、本件訂正により、請求項3は削除されたため、申立人A及び申立人Bの請求項3に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったので、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8において準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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