sokuhyo

Trademark Appeal Case

特許異議申立の訂正請求

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700014
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7505726号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7505726号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7505726号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年10月1日の出願であって、令和6年6月17日に特許権の設定の登録がされ、同年同月25日にその特許掲載公報が発行された。その後、同年12月24日に、本件特許の請求項1~4に係る特許に対し、特許異議申立人 佐伯 圭佑(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和7年 4月 7日付け 取消理由通知書

同年 6月 4日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)

同年 同月30日付け 訂正請求があった旨の通知

同年 7月30日 意見書の提出(申立人)

同年 9月 1日付け 取消理由通知書(決定の予告)

同年10月23日 応対記録(日付は初回応対日)

同年11月 4日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)

同年 同月18日付け 訂正請求があった旨の通知

同年12月25日 意見書の提出(申立人)

以下、令和7年6月4日に提出された訂正請求書による訂正の請求を「先の訂正請求」といい、令和7年11月4日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

なお、本件訂正請求により、先の訂正請求は取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。

第2 本件訂正請求について

1 訂正の内容

本件訂正請求の「請求の趣旨」は、「特許第7505726号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容は、本件訂正請求書の記載及び本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項1~5からなるものである。

なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に

「 分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基を有する単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、

前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、」

と記載されているのを、

「 分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基を有する単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、

前記ヒドロキシル基を有する単官能モノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上であり、

前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、」

に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項1に

「 前記ヒドロキシル基を有する単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に80質量%未満含み、」

と記載されているのを、

「 前記ヒドロキシル基を有する単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に

20.5質量%以上46質量%以下

含み、」

に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項1に

「 硬化塗膜の水接触角が77°以上であり、粘度が35Pa・s以下である、」

と記載されているのを、

「 硬化塗膜の水接触角が77°以上

115°以下

であり、粘度が35Pa・s以下である、」

に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項3に

「 請求項1に記載の硬化性ジェルネイル組成物から得られる、硬化塗膜の水接触角が77°以上のジェルネイルベース層。」

と記載されているのを、

「 請求項1に記載の硬化性ジェルネイル組成物から得られる、硬化塗膜の水接触角が77°以上

115°以下

のジェルネイルベース層。」

に訂正する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項4に

「 爪の上に、硬化塗膜の水接触角が77°以上である請求項1に記載の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、」

と記載されているのを、

「 爪の上に、硬化塗膜の水接触角が77°以上

115°以下

である請求項1に記載の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、」

に訂正する。

2 一群の請求項について

本件訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、それぞれ請求項1の記載を直接又は間接的に引用しており、訂正事項1~訂正事項3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。

したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。

3 訂正事項についての訂正要件の判断

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」を「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」に限定するものである。

したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項の追加の有無

本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)の段落【0027】には、「単官能モノマー」として、「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート」が例示されており、同【0028】には、特に「2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート」等が好ましいこと、さらに同【0050】~【0061】には、「単官能モノマー」として「ヒドロキシプロピルメタクリレート」である「ライトエステル HOP(N)」を用いた実施例1~9も記載されている。

してみると、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」を「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」に限定することは、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無

訂正事項1に係る訂正は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項1に係る発明のカテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」の硬化性ジェルネイル組成物中の含有量を「20.5質量%以上46質量%以下」に限定するものである。

したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項の追加の有無

上記(1)イで述べた点に加え、本件明細書等の段落【0028】には、硬化性ジェルネイル組成物中の「単官能モノマー」の含有量は、「80質量%未満」とすることができることが記載されており、さらに同【0057】の表1には、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」として「ヒドロキシプロピルメタクリレート」である「ライトエステル HOP(N)」を「20.5質量%」用いた実施例5、同「ライトエステル HOP(N)」を「46.0質量%」用いた実施例6及び8が記載されている。

してみると、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」の硬化性ジェルネイル組成物中の含有量を「20.5質量%以上46質量%以下」に限定することは、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無

訂正事項2に係る訂正は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項1に係る発明のカテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「硬化塗膜の水接触角」の上限を「115°以下」に限定するものである。

したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項の追加の有無

本件明細書等の段落【0012】には、「硬化塗膜の水接触角」の範囲は「90°~115°」が好ましいことが記載されている。

してみると、「硬化塗膜の水接触角」の上限を「115°以下」に限定することは、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無

訂正事項3に係る訂正は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項1に係る発明のカテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項3に記載の「硬化塗膜の水接触角」の上限を「115°以下」に限定するものである。

したがって、本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項の追加の有無

訂正事項4に係る訂正は、訂正事項3と同様の訂正であるから、上記(3)イで述べたのと同様の理由により、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無

訂正事項4に係る訂正は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項3に係る発明のカテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について

ア 訂正の目的の適否

本件訂正の訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項4に記載の「硬化塗膜の水接触角」の上限を「115°以下」に限定するものである。

したがって、本件訂正の訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 新規事項の追加の有無

訂正事項5に係る訂正は、訂正事項3と同様の訂正であるから、上記(3)イで述べたのと同様の理由により、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無

訂正事項5に係る訂正は、上記アで示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項4に係る発明のカテゴリーを変更するものでもないから、当該訂正は実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正の訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(6)独立特許要件について

本件訂正の訂正事項1~5に係る訂正は、上記(1)ア、(2)ア、(3)ア、(4)ア及び(5)アで示したとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的とするものであるが、本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~4に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。

4 本件訂正請求についてのまとめ

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものである。

よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件特許に係る発明

上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1~4(以下「本件請求項1」~「本件請求項4」ということがある。)の記載は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された、以下のとおりのものである。

そして、本件請求項1~4に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたとおりのものであると認める(以下「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。

「【請求項1】

分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基を有する単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、

前記ヒドロキシル基を有する単官能モノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上であり、

前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、

前記ヒドロキシル基を有する単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下含み、

1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤を含まず、

前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり、

硬化塗膜の水接触角が77°以上115°以下であり、粘度が35Pa・s以下である、

硬化性ジェルネイル組成物。

【請求項2】

爪の上に直接塗布されるジェルネイルベース層形成用である、請求項1に記載の硬化性ジェルネイル組成物。

【請求項3】

請求項1に記載の硬化性ジェルネイル組成物から得られる、硬化塗膜の水接触角が77°以上115°以下のジェルネイルベース層。

【請求項4】

爪の上に、硬化塗膜の水接触角が77°以上115°以下である請求項1に記載の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由について

1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要

(1)申立人が申し立てた理由

申立人の特許異議申立書(以下「申立書」という。)の第86頁~第87頁の下記の記載

43

113

0001436155000001.jpg

116

115

0001436155000002.jpg

89

117

0001436155000003.jpg

及び申立書の全体の記載から、申立人が、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~4に係る特許に対して申し立てた特許異議の申立理由(以下「申立理由」という。)は、概略、以下のア~コのとおりであると認められる。

また、申立人は、申立書に添付して、証拠方法として、下記(2)の甲第1~9号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲9」という。)を提出し、その後、令和7年7月30日提出の意見書に添付して参考資料1(以下「参1A」という。)を提出し、さらに令和7年12月25日提出の意見書に添付して甲第10~13号証(以下、それぞれ「甲10」~「甲13」という。)並びに参考資料1及び参考資料2(以下、それぞれ「参1B」及び「参2B」という。)を提出している。

ア 申立理由1(特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項(同法第113条第2号))

訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲1に記載された発明と同一である。

また、訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 申立理由2(特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項(同法第113条第2号))

訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲2に記載された発明と同一である。

また、訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 申立理由3(特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項(同法第113条第2号))

訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲3に記載された発明と同一である。

また、訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 申立理由4(特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項(同法第113条第2号))

訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲4に記載された発明と同一である。

また、訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 申立理由5(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))

訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲5の記載事項及び周知技術(甲6及び甲7の記載を参照。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 申立理由6(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))

訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲2に記載された発明並びに甲5の記載事項及び周知技術(甲6及び甲7の記載を参照。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 申立理由7(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))

訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲4に記載された発明並びに甲5の記載事項及び周知技術(甲6及び甲7の記載を参照。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 申立理由8(特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号))

訂正前の請求項1~4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

具体的な理由の要点は、下記のとおりである(申立書第79頁~第82頁)。

(ア)訂正前の請求項1~4に係る発明には、硬化膜の水接触角は規定されているが、硬化膜の伸びや応力、硬さについては規定がなく、請求項において発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求している。

(イ)訂正前の請求項1~4に係る発明には、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」を含む旨が規定されているが、その具体的な構造は「ヒドロキシル基を有する単官能」の他、一切規定されていない。「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」の構造が、実施例で使用されたものから大きく異なれば、硬化膜の伸びや応力、硬さも当然影響があるし、濡れ性や化学的結合にも当然影響がある。「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」が如何なる構造を有していても、本件特許の発明の課題を解決できると認識することはできない。

(ウ)訂正前の請求項1に係る発明に含まれている組成物(参考例2(比較例3))は、半数以上が「剥離・カケ・割れ・浮き等の問題」を生じているのだから、本件特許の課題を解決できていない。なお、実施例組成物であっても30%、40%に問題が生じているという点でも、本件特許の課題を解決できているのか疑問である。

(エ)本件明細書等の比較例4の組成物においてはライトエステルHOP(N):2-ヒドロキシプロピルメタクリレートのみならずライトエステル14EG(ポリエチレングリコールジメタクリレート)が併用されているが、かかる組成物の硬化塗膜の水接触角は77°に満たない。これを換言すると、訂正前の請求項1~4に係る発明には、水接触角が77°以上に調整するための必須の構成要件(具体的には、ポリエチレングリコールジメタクリレートは硬化性ジェルネイル組成物に含まれないこと)が規定されていない。すなわち、請求項において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていない。

ケ 申立理由9(特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号))

本件明細書等の発明の詳細な説明の記載には不備があり、訂正前の請求項1~4に係る発明は、特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

具体的な理由の要点は、下記のとおりである(申立書第82頁~第85頁)。

(ア)親水性基を含まないイソボニル基を有するIB-Xは、HOP(N)よりも疎水性であるといえる。しかし、HOP(N)を用いた実施例4~7は、IB-Xを用いた比較例1、2よりも表面接触角が高くなっている。つまり、本件明細書等の段落【0012】及び【0013】の記載並びに本件特許に関する拒絶査定不服審判事件についての令和5年2月13日提出の審判請求書における特許権者の主張と矛盾することは明確である。

(イ)本件明細書等の段落【0055】には、紫外線の積算光量の開示がない。積算光量が変われば、硬化塗膜の状態も変わり得るところ、接触角がどのような状態の硬化塗膜に対するものであるかが分からないので、正確な接触角を算出することができない。

(ウ)本件明細書等には、質量平均分子量の具体的な測定方法の開示がない。質量平均分子量の値は、測定条件によって変わることが常識であるため、本件特許の開示だけでは、正確な質量平均分子量を導き出すことができない。

(エ)本件明細書等の比較例4の組成物においては、ライトエステルHOP(N):2-ヒドロキシプロピルメタクリレートのみならずライトエステル14EG(ポリエチレングリコールジメタクリレート)が併用されているが、かかる組成物の硬化塗膜の水接触角は77°に満たない。本件特許には、硬化性ジェルネイル組成物がポリエチレングリコールジメタクリレートを含む場合、どのようにすれば水接触角を77°以上に調整できるかの開示がない。

コ 申立理由10(特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号))

訂正前の請求項1~4に係る発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

具体的な理由の要点は、下記のとおりである(申立書第85頁)。

(ア)本件明細書等の段落【0055】には、紫外線の積算光量の開示がない。積算光量が変われば、硬化塗膜の硬化状態も変わり得、硬化塗膜の硬化状態が変われば接触角も変わり得る。つまり、訂正前の請求項1に係る発明の「硬化塗膜の水接触角」とは、硬化塗膜がどのような硬化状態での水接触角であるかが不明であるため、発明の外延が不明である。

(イ)本件明細書等には、質量平均分子量の具体的な測定方法の開示がない。質量平均分子量の値は、測定条件によって変わることが常識であるため、本件特許の開示だけでは、正確な質量平均分子量を導き出すことができない。訂正前の請求項1に係る発明は、「前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲」との規定により、その発明の外延が不明確である。

(2)申立人が提出した証拠方法

甲第1号証(甲1):特開2013-43853号

甲第2号証(甲2):特開2017-178937号

甲第3号証(甲3):特開2017-105759号

甲第4号証(甲4):国際公開2017/082057号

甲第5号証(甲5):特開2017-210457号

甲第6号証(甲6):特開2003-81731号

甲第7号証(甲7):特開2010-75366号

甲第8号証(甲8):機能性化学品、共栄社化学株式会社、2022年11月、第2頁~第31頁

甲第9号証(甲9):特開2014-209260号

甲第10号証(甲10):特開2016-150546号

甲第11号証(甲11):国際公開2018/116798号

甲第12号証(甲12):特開2017-105759号

甲第13号証(甲13):特開2018-70498号

参考資料1(参1A):特開2018-27944号

参考資料1(参1B):「信越シリコーンセレクションガイド HOME>シランカップリング剤>汎用シラン>アクリルシラン>KBM-5103」、[online]、

< https://www.silicone.jp/guide/silanecoup/kbm-5103/>

参考資料2(参2B):「信越シリコーンセレクションガイド HOME>シランカップリング剤>汎用シラン>エポキシシラン>KBM-403」、[online]、

<https://www.silicone.jp/guide/silanecoup/kbm-403/>

2 当審合議体が通知した取消理由(決定の予告)の概要

先の訂正請求による訂正による請求項1~4に係る特許に対して、当審合議体が令和7年9月1日付けで、決定の予告として特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである(以下に記載の「請求項」は、先の訂正請求による訂正によるものである。)。

[取消理由1(進歩性欠如)]

請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

上記取消理由1で引用した引用文献は、下記のとおりである。

(引用文献一覧)

甲4:国際公開2017/082057号(申立人が提示した甲4)

甲5:特開2017-210457号(同甲5)

参考文献A:国際公開第2024/241895号(当審合議体が引用した周知技術を示すための文献)

ここで、上記取消理由1は、申立人による申立理由7と同旨である。

第5 当審合議体の判断

当審合議体は、本件特許の請求項1~4に係る特許は、取消理由通知書に記載した理由及び申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。

1 甲各号証及び参考文献の記載

以下において「・・・」は記載の省略を示す。また、下線は、当審合議体が付したものである。

(1)甲1の記載

甲1には、次の記載がある。

摘記1a:

「【請求項1】

下記(A)~(F)成分を含有することを特徴とする光硬化型ジェルネイル用下地剤。

(A)ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマー

100重量部

(B)脂環式(メタ)アクリレートモノマー 20~60重量部

(C)25°Cにおいて液体であるアクリルアミド系モノマー

5~20重量部

(D)分子内にエチレンオキサイドを有する2官能(メタ)アクリレートモノマー 20~40重量部

(E)3官能以上の多官能モノマー 0重量部または0~1重量部

(但し、0重量部は含まない。)

(F)光重合開始剤 5~20重量部

【請求項2】

前記(A)成分であるポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマーの重量平均分子量を10,000~50,000の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の光硬化型ジェルネイル用下地剤。

・・・

【請求項4】

前記(C)成分である25°Cにおいて液体であるアクリルアミド系モノマーが、ヒドロキシエチルアクリルアミドであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化型ジェルネイル用下地剤。」

摘記1b:

「【0001】

本発明は、光硬化型ジェルネイル用下地剤およびそれを用いたジェルネイル方法に関する。

特に、爪に対する密着性および剥離性のバランスに優れるばかりか、硬化速度が速く、さらには、上方に積層されるジェルネイル層との密着性にも優れる光硬化型ジェルネイル用下地剤およびそれを用いたジェルネイル方法に関する。」

摘記1c:

「【0083】

[実施例1]

1.光硬化型ジェルネイル用下地剤の調製

撹拌装置を備えた容器内に、下記組成を収容した後、撹拌装置を用いて均一になるまで混合し、光硬化型ジェルネイル用下地剤とした。

(A)ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマー:

100重量部

(B)イソボルニルメタアクリレート :35重量部

(C)ヒドロキシエチルアクリルアミド :10重量部

(D)ビスフェノールA-EO付加物ジアクリレート :30重量部

(F1)α-ヒドロキシケトン系化合物 : 8重量部

(F2)アシルフォスフィンオキサイド系化合物 : 2重量部

(H)シリコーン系レベリング剤 : 2重量部

【0084】

また、上述した(A)成分であるポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマーの重量平均分子量は23,000であった。以下においても同様である。

・・・

【0085】

また、上述した(F1)成分であるα-ヒドロキシケトン系化合物としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Ciba(株)製、IRGACURE184)を用いた。以下においても同様である。

・・・

【0086】

2.光硬化型ジェルネイル組成物の調製

次いで、撹拌装置を備えた容器内に、下記組成を収容した後、撹拌装置を用いて均一になるまで混合し、光硬化型ジェルネイル組成物とした。

(A)ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマー:

100重量部

(B)イソボルニルメタアクリレート :35重量部

(D)ビスフェノールA-EO付加物ジアクリレート :30重量部

(E)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート :10重量部

(F1)α-ヒドロキシケトン系化合物 : 5重量部

(F2)アシルフォスフィンオキサイド系化合物 : 5重量部

(G)有機赤色顔料 : 4重量部

(H)シリコーン系レベリング剤 : 2重量部

【0087】

3.下地層の形成

次いで、手の爪に対し、光硬化型ジェルネイル用下地剤を刷毛にて塗布した後、ジェルネイル専用UV装置を用いて光硬化させて、下地層を形成した。

なお、光硬化型ジェルネイル用下地剤の塗布条件および硬化条件は、以下の通りである。

【0088】

(塗布条件)

粘度 :20,000mPa・s(測定温度:25°C)」

摘記1d:

「【0095】

[実施例2~3および比較例1~2]

実施例2~3および比較例1~2では、光硬化型ジェルネイル用下地剤を調製する際に、(A)成分であるポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマーの配合比を表1に示すように変えたほかは、実施例1と同様に爪に対して下地層およびジェルネイル層を順次形成し、評価した。得られた結果を表1に示す。

【0096】

【表1】

78

103

0001436155000004.jpg

【0097】

[実施例4~5および比較例3~4]

実施例4~5および比較例3~4では、光硬化型ジェルネイル用下地剤を調製する際に、(B)成分であるイソボルニルメタアクリレートの配合比を表2に示すように変えたほかは、実施例1と同様に爪に対して下地層およびジェルネイル層を順次形成し、評価した。得られた結果を表2に示す。

【0098】

【表2】

74

89

0001436155000005.jpg

【0099】

[実施例6~7および比較例5~6]

実施例6~7および比較例5~6では、光硬化型ジェルネイル用下地剤を調製する際に、(C)成分であるヒドロキシエチルアクリルアミドの配合比を表3に示すように変えたほかは、実施例1と同様に爪に対して下地層およびジェルネイル層を順次形成し、評価した。得られた結果を表3に示す。

【0100】

【表3】

84

104

0001436155000006.jpg

【0101】

[実施例8~9および比較例7~8]

実施例8~9および比較例7~8では、光硬化型ジェルネイル用下地剤を調製する際に、(D)成分であるビスフェノールA-EO付加物ジアクリレートの配合比を表4に示すように変えたほかは、実施例1と同様に爪に対して下地層およびジェルネイル層を順次形成し、評価した。得られた結果を表4に示す。

【0102】

【表4】

88

107

0001436155000007.jpg

【0103】

[実施例10~11および比較例9~11]

実施例10~11および比較例9~11では、光硬化型ジェルネイル用下地剤を調製する際に、(E)成分としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを配合するとともに、その配合比を表5に示すように変えたほかは、実施例1と同様に爪に対して下地層およびジェルネイル層を順次形成し、評価した。得られた結果を表5に示す。

【0104】

【表5】

80

107

0001436155000008.jpg

【0105】

[実施例12~19]

実施例12~19では、爪に対して下地層およびジェルネイル層を順次形成した後、ジェルネイル層に対して、さらにクリアコート剤を塗布し、クリアコート層を形成した場合について評価した。

すなわち、表6に示す組成の光硬化型ジェルネイル用下地剤1~2、光硬化型ジェルネイル組成物1~4、およびクリアコート剤1を、表7に示す組み合わせにて、爪に対して積層し、評価した。得られた結果を表7に示す。

なお、光硬化型ジェルネイル用下地剤、光硬化型ジェルネイル組成物、およびクリアコート剤の塗布条件および硬化条件は、実施例1における光硬化型ジェルネイル用下地剤の塗布条件および硬化条件と同様である。

【0106】

【表6】

119

122

0001436155000009.jpg

(2)甲2の記載

甲2には、次の記載がある。

摘記2a:

「【請求項1】

酸化鉄及びカーボンブラックを含有する光硬化性黒色人工爪組成物。

【請求項2】

ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマー、光重合開始剤を含有する請求項1に記載の光硬化性黒色人工爪組成物。

【請求項3】

該光重合開始剤が1-ヒドロキシシクロヘキシルジフェニルケトンとトリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドのうちの1種以上である請求項2に記載の光硬化性黒色人工爪組成物。」

摘記2b:

「【0012】

((メタ)アクリレートオリゴマー)

(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、分子内にエーテル結合及び/又はエステル結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)ウレタンアクリレートオリゴマーを使用することができる。なかでもウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。

このような(メタ)アクリレートオリゴマーを使用することによって、硬化後の臭いが少なく、伸縮性や艶が優れた塗膜を得ることができる。

(メタ)アクリレートオリゴマーは、本発明の光硬化性黒色人工爪組成物中10~99重量%となるように使用することができ、好ましくは30~70重量%である。

10重量%未満のときには、十分な強度又は硬度を備えた塗膜が形成されない可能性があり、塗膜表面に傷が付きやすい。99重量%を超えると、塗膜形成後において剥離しやすくなる可能性がある。

さらに、1分子あたり官能基数が2~4のウレタンアクリレートオリゴマーを選択することにより、黒色の人工爪組成物であっても、適切な硬化性を発揮できる。

またウレタンアクリレートオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は2,000~5,000の範囲であることが硬化性の点において好ましい。

【0013】

(単官能(メタ)アクリレートモノマー)

単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、・・・イソボルニル(メタ)アクリレート、・・・等のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である(メタ)アクリレートが挙げられる。

また、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、・・・を使用することもできる。・・・

これらの中でも(メタ)アクリロキシエチルヘキサノエートフォスフェート、ビス((メタ)アクリロキシエチルヘキサノエート)フォスフェートが好ましい。また、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレートが好ましい。

このような単官能(メタ)アクリレートモノマーを配合することによって、臭いが少なく、爪への密着性に優れかつ低刺激性の光硬化性黒色人工爪組成物とすることができる。そして単官能(メタ)アクリレートモノマーは、本発明の光硬化性黒色人工爪組成物中1~99重量%となるように使用することができ、好ましくは1~60重量%、さらに好ましくは10~40重量%である。1~99重量%の範囲とすることによって、硬化後の臭いが少なく、適度な重合性を備え、硬化塗膜を収縮させることがなく低刺激性とすることができる。

1重量%未満のときには、十分な密着性を備えた塗膜が形成されず、また使用時の拭き取り性が悪化する可能性があり、99重量%を超えると硬化した塗膜が脆くなり、硬化膜が剥がれ易くなったり、傷が付きやすくなったりする可能性がある。」

摘記2c:

「【0021】

<光硬化性黒色人工爪組成物による被覆方法>

本発明の光硬化性黒色人工爪組成物は、使用者自身の爪の表面にサンディングを施して爪表面に凹凸を形成させる必要がない他は、公知の紫外線硬化型の光硬化性人工爪組成物と同様の方法により爪表面に塗布することができる。また、爪への下地層として、あるいは中間層、さらにトップコート層、模様を描くために部分的に形成する層として使用することができる。自爪への接着性に優れるという性質からみて、爪表面に直接塗布するために使用することが最も好ましい。

そのため、本発明の光硬化性黒色人工爪組成物は筆等の塗布具によって十分に塗布することができる程度の粘度を有すればよい。もちろん、爪表面に本発明の光硬化性黒色人工爪組成物を塗布後、硬化前に小さな飾りや粉体等を塗膜表面に付着させることも可能である。・・・」

摘記2d:

「【実施例】

【0022】

全配合成分を容器内に投入し、ディゾルバーにより撹拌しつつ70°Cまで加温し1時間撹拌した。撹拌後2時間静置し脱泡した。

・・・

【0025】

オリゴマー1:ウレタンアクリレートオリゴマー(1分子あたり官能基数2、分子量3,500)

オリゴマー2:ウレタンアクリレートオリゴマー(1分子あたり官能基数2、分子量4,300)

モノマー1 :イソボルニルアクリレート

モノマー2 :ポリペンタエリスリトールオクタアクリレート

モノマー3 :イソボルニルメタクリレート

開始剤1 :ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン

開始剤2 :トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド

【0026】

【表1】

39

105

0001436155000010.jpg

【0027】

酸化鉄とカーボンブラックを併用してなる実施例によれば、硬化性及び隠蔽性に優れた黒色の塗布層が形成されたことがわかった。この黒色を基にして新しいネイルアートのデザインが現れる可能性を確認できる。特にカーボンブラックの含有量が0.1重量%と少量であるにも関わらず、十分な隠蔽性を備えていた。

またカーボンブラックを含有しない比較例1~3によると、硬化性及び隠蔽性のバランスが取れた塗膜にはならなかった。酸化鉄を含有しない比較例4~6によると、硬化性と隠蔽性のバランスが取れた塗膜にはならなかった。」

(3)甲3の記載

甲3には、次の記載がある。

摘記3a:

「【請求項1】

以下の(A)~(C)成分を含む、爪または人工爪被覆用光硬化性組成物;

(A)成分:アクリレートオリゴマー

(B)成分:メタクリレートモノマー

(C)成分:光重合開始剤。

・・・

【請求項6】

25°Cにおける粘度が20~200Pa・sである、請求項1~5のいずれか1項に記載の爪または人工爪被覆用光硬化性組成物。

・・・

【請求項9】

請求項1~7のいずれか1項に記載の爪または人工爪被覆用光硬化性組成物を爪上に塗布した後、活性エネルギー線照射により前記爪または人工爪被覆用光硬化性組成物を硬化させることを繰り返し行う、爪の被覆方法。」

摘記3b:

「【背景技術】

【0002】

ネイル分野において、爪または人工爪被覆用光硬化性組成物(UVネイルジェル)が用いられており、具体的には、スカルプチュアで使用されるUVネイルジェルが知られている。スカルプチュアの形成時には、フォームと呼ばれるシール台紙を爪(地爪)と指先の間に差し込み、爪およびフォーム上にUVネイルジェルを塗布した後に、光硬化させる工程を繰り返すことにより爪を被覆(装飾)する手法が用いられる。かかる方法によれば、ネイルチップ等を爪に接着せずに、爪に対してネイルジェルが一体化するように爪を装飾することができるため、ネイルチップ等が剥がれ落ちることが少なく、耐久性に優れた装飾を施すことができる。」

摘記3c:

「【0030】

(B)成分としての1官能メタクリレートモノマーの具体例としては、メタクリル酸、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、エチルカルビトールメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシジエチレングリコールメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸メタクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート等の鎖状構造を有するメタクリレート;シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等の脂環式構造を有するメタクリレート;ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、ノニルフェノキシエチルメタクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコールメタクリレート、エチレンオキサイド変性フタル酸メタクリレート等の芳香環構造を有するメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート等の複素環構造を有するメタクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、4-メタクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド化合物;等が挙げられるが、これらに限定されない。」

摘記3d:

「【実施例】

【0066】

次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25°C)で行った。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。

【0067】

<実施例1~4、比較例1~3>

爪または人工爪被覆用光硬化性組成物を調製するために下記成分を準備した。

【0068】

[(A)成分:アクリレートオリゴマー]

・無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(2官能)(UF-8001G 共栄社化学株式会社製;重量平均分子量 4,500)

[(B)成分:メタクリレートモノマー]

・トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT 新中村化学工業株式会社製)

・イソボルニルメタクリレート(ライトエステルIB-X 共栄社化学株式会社製;下記表1において「IB-X」と称する)

・ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート(ライトエステルDCP-M 共栄社化学株式会社製;下記表1において「DCP-M」と称する)

[(B’)成分:(B)成分以外のモノマー]

・トリメチロールプロパントリアクリレート(A-TMPT 新中村化学工業株式会社製)

・イソボルニルアクリレート(ライトアクリレート(登録商標)IB-XA 共栄社化学株式会社製;下記表1において「IB-XA」と称する)

・ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(DCP-A 共栄社化学株式会社製;下記表1において「DCP-A」と称する)

[(C)成分:光重合開始剤]

・1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(非可視光型光重合開始剤)(Suncure(登録商標)84 Chemark社製;下記表1において「84」と称する)

・2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(可視光型光重合開始剤)(LUCIRIN(登録商標) TPO BASF社製;下記表1において「TPO」と称する)

[可塑剤]

・セバシン酸ジ2-エチルヘキシル(サンソサイザーDOS 新日本理化株式会社製;下記表1において「DOS」と称する)

上記各成分を下記表1に記載された量(質量部)で配合し、組成物を調製した。具体的には、(A)成分、(B)成分(または(B’)成分)および可塑剤を撹拌釜に秤量した後、30分間真空脱泡しながら撹拌を行った。その後、(C)成分を秤量して撹拌釜に添加し、さらに30分間真空脱泡しながら撹拌を行った。

【0069】

【表1】

81

129

0001436155000011.jpg

【0070】

実施例1~4および比較例1~3で得られた各組成物について、粘度測定、光沢確認、深部硬化性確認、硬度測定、DSC測定、官能検査による発熱確認を行った。その結果を表2に示す。各評価の詳細は以下のとおりである。

【0071】

[粘度測定]

実施例1~4および比較例1~3の組成物をそれぞれ0.5mL採取して、測定用カップ内に吐出した。以下の条件で、EHD型粘度計(東機産業株式会社製)にて粘度測定を行った。その結果を「粘度(Pa・s)」とした。爪の被覆(装飾)時において、組成物の流動の抑制や塗布のしやすさなどの作業性の観点から、組成物の粘度は20~200Pa・sであると好ましい。

【0072】

≪測定条件≫

コーンローター:3°×R14

回転速度:1rpm

測定時間:3分

測定温度:25°C(恒温槽により温度制御した)。

・・・

【0080】

【表2】

59

130

0001436155000012.jpg

(4)甲4の記載

甲4には、次の記載がある。

摘記4a:

「[請求項1] 下記の(A)~(C)成分を含む爪または人工爪用光硬化性組成物。

(A)成分:(メタ)アクリロイル基を有する化合物

(B)成分:ロジンまたはロジン誘導体

(C)成分:光開始剤」(請求の範囲)」

摘記4b:

「[0018] 本発明の第一の実施形態によると、UV照射器とLED照射に対応した表面硬化性を有し、硬化物は日常生活において安定した接着性を維持して耐久性を有すると共に、ソークオフ性を両立させ、硬化物は無色透明で濁りが無い爪または人工爪用光硬化性組成物を提供しうる。」

摘記4c:

「[0038] (A)成分が(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーまたは(メタ)アクリルアミドモノマーとを含む場合、(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量と、(メタ)アクリレートモノマーと(メタ)アクリルアミドモノマーとの合計の含有量との比率(質量比)は、(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量:(メタ)アクリレートモノマーと(メタ)アクリルアミドモノマーとの合計の含有量=50:50~95:5であることが好ましく、60:40~90:10であることがより好ましく、75:25~85:15であることがさらに好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことで、耐久性がより向上する。

[0039] また、(A)成分が(メタ)アクリレートモノマーまたは(メタ)アクリルアミドモノマーを含む場合、(メタ)アクリルアミドモノマーの含有量と、(メタ)アクリレートモノマーの含有量との比率(質量比)は、(メタ)アクリルアミドモノマーの含有量:(メタ)アクリレートモノマーの含有量=50:50~0:100であることが好ましく、70:30~0:100であることがより好ましく、80:20~0:100であることがさらに好ましい。

・・・

[0048] (B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して1質量部以上であることが好ましい。(B)成分の添加量が(A)成分100質量部に対して1質量部以上である場合は、ソークオフ性がより向上する。同様の観点から(B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。一方、(B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましい。(B)成分が30質量部以下である場合は、接着力などの耐久性の維持効果がより向上する。同様の観点から(B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。これより、(B)成分の好ましい添加量は、例えば、(A)成分100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であり、(B)成分のより好ましい添加量は、例えば、(A)成分100質量部に対して5質量部以上20質量部以下である。

・・・

[0051]

(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。(C)成分の添加量が(A)成分100質量部に対して0.1質量部以上である場合は、光硬化性の維持効果がより向上する。同様の観点から、(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.14質量部以上であることがより好ましい。一方、(C)成分の添加量は、(A)成分が100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。(C)成分の添加量が(A)成分100質量部に対して20質量部以下である場合は、保存時に増粘することをより良好に抑制することで、保存安定性の維持効果がより向上する。同様の観点から、(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。これより、(C)成分の好ましい添加量は、例えば、(A)成分100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下である。

・・・

[0054] [カップリング材]

本発明の一形態に係る爪または人工爪用光硬化性組成物は、本発明の特性を損なわない範囲において、カップリング剤を添加することが好ましい。カップリング剤を添加することで、密着性をより向上させることができる。

[0055] カップリング剤としては、特に制限されないが、シラン系カップリング剤であることが好ましい。シラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリル基またはメタクリル基と加水分解性シラン基を併せ持つシラン系カップリング剤、フェニル基および加水分解性シリル基を有するポリオルガノシロキサン、エポキシ基および加水分解性シリル基を有するポリオルガノシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、加水分解性シリル基としては、特に制限されないが、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基などのアルコキシシリル基等が挙げられる。シラン系カップリング剤の具体例としては、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるがこれらに限定されない。これらの中でも、シラン系カップリング剤としては、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。シラン系カップリング材としては、市販品を用いることもでき、市販品の具体例としては、信越化学工業株式会社製のKBM-1003、KBM-403、KBM-503、KBM-5103等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

[0056] シラン系カップリング剤を含む場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~5質量部であり、さらにより好ましくは1~3質量部である。」

摘記4d:

「[0071] <爪または人工爪用光硬化性組成物の調製>

[実施例1~7、比較例1~7]

爪または人工爪用光硬化性組成物(以下、単に組成物とも称する)を調製するために、下記の各成分を準備した。

[0072] <(A)成分:(メタ)アクリル基を有する化合物>

・ウレタン変性アクリレートオリゴマー(2官能、重量平均分子量:4500)(UF-8001G 共栄社化学株式会社製、下記表1および下記表2では「UF8001G」と表記)

・・・

・2-ヒドロキシエチルアクリレート(アクリエステル(登録商標)HO 三菱レイヨン株式会社製、下記表1および下記表2では「HO」と表記)

・・・

[0075] <(C)成分:光開始剤>

・・・

・1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(非可視光型光開始剤)(Suncure84 Chemark社製、下記表1および下記表2では「84」と表記)。

[0076] <カップリング剤>

・3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103 信越化学工業株式会社製)。」

摘記4e:

「[0078] 組成物の調製は、まず、(A)成分、(B)成分(または(B’)成分)およびカップリング剤を撹拌釜に秤量した後、30分間真空脱泡しながら撹拌を行った。このとき、(B)成分(または(B’)成分)が固形の場合は、溶解するまで攪拌時間を延長した。その後、充填剤を秤量して撹拌釜に添加して、さらに30分間真空脱泡しながら撹拌を行った。最後に(C)成分を秤量して攪拌釜に添加して30分管撹拌を行った。各組成物の詳細な調製量は下記表1に従った。なお下記表1においては、数値は全て質量部で表記している。

[0079][表1]

109

94

0001436155000013.jpg

[0080] 実施例1~7、および比較例1~7に対して、粘度測定、表面硬化性確認、透過率測定、濁度測定、ソークオフ性確認および耐久性試験を後述する方法に従って実施した。その結果を下記表2にまとめる。

[0081] [粘度測定]

0.5mlの組成物を採取して、測定用カップに吐出した。そして、以下の条件で、EHD型粘度計(東機産業株式会社製)にて組成物の粘度測定を行った。その結果を「粘度(Pa・s)」とした。施術時の取り扱いを考慮すると、流れ性などの観点から、粘度は30Pa・s以下が好ましく、25Pa・s以下であることがより好ましい。また、流れ性の観点から、粘度は5Pa・s以上であることが好ましい。

[0082] (測定条件)

コーンローター:3°×R14

回転速度:10rpm

測定時間:3分

測定温度:25°C(恒温槽により温度制御する)

・・・

[0087] [耐久性試験]

爪にサンディングを実施した後、爪専用溶剤(エタノール主成分)で埃や油分を取り除いた。次いで、

ベースコート剤として組成物を、ウェットの状態で厚さが300μmとなるよう塗布した。

塗布は刷毛にて行った。

その後、ネイル用LEDランプ(定格電圧:240V 50-60Hz、消費電力:30W、波長:400~410nm)にて、10秒照射して組成物を硬化させ、ベースコートとした。

続いて、同様の方法を用いて、ベースコートの表面にカラーコートおよびトップコートを、同様の条件で順に硬化させることで形成した。ここで、カラーコートはPREGEL社製のスーパーカラーEX(色:パステルピーチ)を、トップコートはVETRO社製のVL-00をそれぞれ使用した。評価としては、一人の人間の手の指の爪(10本)に対して、施術して3週間後に剥離していない数を「耐久性(本/10本)」とした。ここで剥離とは、全面が剥がれることも、端部のみ剥がれることも含むものとした。実用性を考慮すると「耐久性」は5以上であることが好ましい。」

摘記4f:

「[0088][表2]

69

97

0001436155000014.jpg

[0089] 実施例に係る組成物では(B)成分としてロジンまたはロジン誘導体を添加しており、表面硬化性、透過率、濁り度、ソークオフ性、粘度、および耐久性の全てにおいて良好な結果が得られた。」

(5)甲5の記載

甲5には、次の記載がある。

摘記5a:

「【請求項1】

疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル系モノマー、及び光重合開始剤を含有する自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。」

摘記5b:

「【0006】

・・・本発明は自爪内部及び外部からの水分を人工爪組成物による被膜が十分に吸収することなく、その結果として、自爪表面に形成させた人工爪組成物の被膜を長期的に高い密着性によって密着させる・・・」

摘記5c:

「【0011】

・・・硬化被膜も疎水性を有することになり、爪表面から被膜に浸透される水によって、該被膜が柔軟化したり、膨潤したりすることがない。」

摘記5d:

「【0012】

[単官能(メタ)アクリレートモノマー]

本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物にさらに含有させることが可能な、(メタ)アクリレートモノマーの中でも単官能(メタ)アクリレートモノマーは、自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の臭いを少なくし、透明であって、低刺激性であり、反応性に優れ、黄変しない性質を備えることが必要である。

そのような単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、・・・ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。

・・・

なお、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又はイソボルニル(メタ)アクリレートを配合することが好ましく、このときに硬化後の被膜の硬度と屈曲性のバランスが良好になる。これらの化合物を配合する場合には、好ましくはその合計の配合量を20重量%以下とすることが好ましい。」

(6)甲6の記載

甲6には、次の記載がある。

摘記6a:

「【請求項1】 親水性重合性単量体(a)、フルオロカーボン基を有し、かつ分子内に2つ以上のオレフィン性二重結合を有する重合性単量体(b)および重合開始剤(c)を含有することを特徴とする歯科用組成物。」

摘記6b:

「【0005】

【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、短時間で重合硬化が可能であり、かつ優れた撥水性や耐着色性を示しながらも、歯質(エナメル質、象牙質、セメント質など)や接着剤(セルフエッチングプライマー、ボンディング材など)とのなじみが良く、優れた接着性を得ることのできる歯科用組成物を提供することにある。

・・・

【0056】 実施例5~8

HEMA、H12FDM、UDMA、TMDPO、CQ及びDMABE等を表2に示す重量比で混合した組成物をそれぞれ調製した。これらの組成物を用いて、実施例1の撥水性試験、耐着色試験および接着力試験に従って、接触角、着色性および歯質接着性を評価し、結果を表2に示した。

・・・

【0060】

【表2】

75

93

0001436155000015.jpg

(7)甲7の記載

甲7には、次の記載がある。

摘記7a:

「【請求項1】

(A)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合と抗菌性基を有する化合物および/または(B)抗菌性フィラー、(C)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、および(D)重合開始材を含む抗菌性人工爪組成物。」

摘記7b:

「【0004】

最近では、歯科用常温重合レジンを応用した人工爪材料の臭気刺激性や施術操作性を改善したジェルネイルが市場の中心となっている。現在市販されているジェルネイルは、(メタ)アクリル系モノマーと光重合開始材を主構成成分とする高粘度液体材料であり、紫外線を照射することにより硬化する。これらの市販ジェルネイルは、上段落記載の歯科用常温重合レジンを応用した人工爪材料と比較して、臭気刺激、皮膚刺激が少なく、施術操作性が良好、さらに、豊富な色調を持つことから、一般のネイリストの多くに受け入れられている。

・・・

【0054】

((抗菌性人工爪組成物の抗菌性試験))

[抗菌性人工爪組成物の調製]

表4および表5に記載した配合量に従い、原材料を計量後大気圧下50°Cにて16時間混合した。次に、自転公転型混合機を使用して40~45Torr下にて脱泡して、均一な高粘度透明液体である本発明の抗菌性人工爪組成物、および比較例の組成物を得た。

【0055】

【表4】

58

96

0001436155000016.jpg

【0056】

【表5】

52

96

0001436155000017.jpg

(8)甲8の記載

甲8には、次の記載がある。

甲8a:

117

73

0001436155000018.jpg

(9)甲9の記載

甲9には、次の記載がある。

摘記9a:

「【0122】

・・・

・UF-8001G-20M(商品名、共栄社化学株式会社製、20%メチルエチルケトン溶液);

・・・

【0123】

なお、UF-8001G-20Mの固形分は、末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物に、2-ヒドロキシエチルアクリレート2モルを反応させて得られた光重合性化合物からなり、重量平均分子量は4500である。ここで、上記ウレタン化合物は、繰返し単位として、ヘキサメチレンカーボネート構造/ペンタメチレンカーボネート構造=5/5(モル比)を含み、末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物(重量平均分子量が790)3モルとイソホロンジイソシアネート4モルとを付加重合反応させて得られたものである。」

(10)甲10の記載

甲10には、次の記載がある。

摘記10a:

「【0109】

(シランカップリング剤水溶液3の調製)

上記(シランカップリング剤水溶液1の調製)において、KBM-403(エポキシシランカップリング剤:信越シリコーン製)とした以外は同様にして、シランカップリング剤水溶液3を調製した。」

(11)甲11の記載

甲11には、次の記載がある。

摘記11a:

「[0028] 以下、(A)成分として好ましく用いられる(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(メタ)アクリレートモノマーについて説明する。(メタ)アクリレートオリゴマーを添加すると、爪または人工爪に対する密着性の向上、光硬化性樹脂組成物(塗膜)の硬化性および強度の向上効果が得られる。一方、(メタ)アクリレートモノマーを添加すると、光硬化性樹脂組成物の粘度を下げることができる。よって、これらの利点を得るために、(A)成分は、(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(メタ)アクリレートモノマーの両方を含むと好ましい。」

摘記11b:

「[0039] (メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、特に制限されないが、1官能、2官能、3官能の((メタ)アクリロイル基を1~3個有する)(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマーなどが挙げられる。上記(メタ)アクリレートモノマーは、市販品または合成品のいずれを使用してもよい。また、(メタ)アクリレートモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、その他モノマーを組み合わせて使用することもできる。

[0040] 1官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。」

(12)甲12の記載

甲12には、次の記載がある。

摘記12a:

「【0027】

組成物を低粘度化し、塗布する際の作業性を向上させるために、(B)成分の分子量は、1,000以下であると好ましく、さらに好ましくは500以下である。(B)成分の分子量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)法等、公知の方法で測定できる。また、NMR等の方法により(B)成分の構造を特定し、当該構造に基づき計算を行うことにより分子量を特定することができる。

・・・

【0030】

(B)成分としての1官能メタクリレートモノマーの具体例としては、メタクリル酸、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、エチルカルビトールメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシジエチレングリコールメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸メタクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート等の鎖状構造を有するメタクリレート;シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等の脂環式構造を有するメタクリレート;ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、ノニルフェノキシエチルメタクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコールメタクリレート、エチレンオキサイド変性フタル酸メタクリレート等の芳香環構造を有するメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート等の複素環構造を有するメタクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド、N-メチロールメタアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、4-メタクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド化合物;等が挙げられるが、これらに限定されない。」

(13)甲13の記載

甲13には、次の記載がある。

摘記13a:

「【0037】

【表1】

39

105

0001436155000019.jpg

【0038】

オリゴマーA:ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:3,000、アクリロイル基に基づく官能基数2)

オリゴマーB:ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:740、アクリロイル基に基づく官能基数6)

ポリマーA:ポリウレタン(重量平均分子量:23,000、アクリロイル基に基づく官能基数0)

IBXA:イソボルニルアクリレート

HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート

184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン

TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド

光輝材:銀を挟み込んだPETフィルム(0.1mm×0.1mm)

DMSS:ジメチルシリル化シリカ」

(14)参1Aの記載

参1Aには、次の記載がある。

摘記1Aa:

「【0016】

[単官能(メタ)アクリレートモノマー]

本発明の粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物にさらに含有させることが可能な、(メタ)アクリル系モノマーの中でも単官能(メタ)アクリレートモノマーは、粘着付与剤含有光硬化性人工爪組成物の臭いを少なくし、組成物の粘度を調整でき、透明であって、低刺激性であり、反応性に優れ、黄変しない性質を備えることが必要である。

そのような単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。

また、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ラジカル重合性不飽和基含有化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレートを使用することもできる。」

(15)参1Bの記載

参1Bには、次の記載がある。

摘記1Ba:

47

153

0001436155000020.jpg

(16)参2Bの記載

参2Bには、次の記載がある。

摘記2Ba:

46

153

0001436155000021.jpg

2 当審合議体が通知した取消理由について

(1)取消理由1について

ア 甲4に記載された発明

甲4は、爪又は人工爪用光硬化性組成物に関する文献であって(摘記4a、摘記4b)、請求項1において、「(A)成分:(メタ)アクリロイル基を有する化合物」、「(B)成分:ロジンまたはロジン誘導体」、及び「(C)成分:光開始剤」を含む「爪または人工爪用光硬化性組成物」が記載されており(摘記4a)、その具体例として、実施例6には、具体的な処方に基き調製された「爪または人工爪光硬化性組成物」が記載されている(摘記4d、摘記4e、摘記4f)。

そうすると、甲4には、実施例6の「爪または人工爪光硬化性組成物」として、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。

<甲4発明>

「75質量部の「UF-8001G」と、20質量部の「HO」と、5質量部のメタクリル酸と、15質量部の「KE-311」と、3.0質量部の「TPO」と、2.0質量部の「84」と、1.0質量部の「KBM-5103」と、0.5質量部の「200」を含有する、爪または人工爪用光硬化性組成物。」

イ 甲4発明に基く進歩性について

(ア)本件発明1について

a 対比

(a)本件発明1の「ジェルネイル」とは、「ジェル状の爪被覆材料を爪に塗布し、紫外線を照射して硬化」させて得られる人工爪であるところ(要すれば、本件明細書等の段落【0004】等を参照。)、甲4には、甲4発明である実施例6の組成物について、「ベースコート剤として組成物を、ウェットの状態で厚さが300μmとなるよう塗布した。・・・その後、ネイル用LEDランプ・・・にて、10秒照射して組成物を硬化させ、ベースコートとした。」と記載されているから(摘記4e)、甲4発明の「爪または人工爪用光硬化組成物」は、本件発明1の「硬化性ジェルネイル組成物」に相当する。

(b)甲4には、「UF-8001G」が「ウレタン変性アクリレートオリゴマー」であり、その「重量平均分子量」は「4500」であると記載されている(摘記4d)。ここで、「重量平均分子量」と「質量平均分子量」は同じものを指し、参考文献Aにおいて、「UF-8001G」は、「ポリカーボネート骨格を有するウレタン変性アクリレートオリゴマー」であると記載されていることを参酌すれば(段落[0065])、甲4発明の「UF-8001G」は、本件発明1の「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」に相当し、かつ「前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり」に相当する。

そして、甲4発明において、「爪または人工爪用光硬化組成物」に含まれる全ての成分の合計量は、121.5質量部(=75+20+5+15+3.0+2.0+1.0+0.5)であるから、甲4発明において、「爪または人工爪用光硬化組成物」における「UF-8001G」の含有割合は、62質量%(=75/121.5×100)である。

そうすると、甲4発明の「75質量部の「UF-8001G」」は、本件発明1の「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」を「硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み」、及び「前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり」に相当する。

(c)甲4には、「HO」が「2-ヒドロキシエチルアクリレート」であると記載されているから(摘記4d)、甲4発明の「HO」は、本件発明1の「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」、及び「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」に相当する。

そして、甲4発明において、「爪または人工爪用光硬化組成物」における「HO」の含有割合は、約16質量%(=20/121.5×100)である。

(d)甲4には、「84」が「1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」であると記載されているから(摘記4d)、甲4発明の「84」は、本件発明1の「ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」に相当する。

(e)甲4には、実施例6として記載された「爪または人工爪用光硬化組成物」は、25°Cにおける粘度が19Pa・sであると記載されている(摘記4e、摘記4f)。

甲4発明の「爪または人工爪用光硬化組成物」の粘度が19Pa・sであることは、本件発明1における「粘度が35Pa・s以下」に相当する。

(f)甲4には、「KBM-5103」が、シランカップリング剤の具体例として記載され(摘記4d)、KBM-5103は3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランであると認められるから(必要であれば、たとえば、信越シリコーンのカタログ(摘記1Ba)などを参照。)、甲4発明の「KBM-5103」は、本件発明1において、含まれない成分である「1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤」に相当する。

(g)そうすると、本件発明1と甲4発明とは、

「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基を有する単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、

前記ヒドロキシル基を有する単官能モノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上であり、

前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、

前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり、

粘度が35Pa・s以下である、

硬化性ジェルネイル組成物。」

という点において一致し、以下の点で相違する。

相違点4-1:本件発明1は、「1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤」を含まないのに対し、甲4発明は、「1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤」を含む点。

相違点4-2:本件発明1は、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」の含有量が「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」であるのに対し、甲4発明は、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」である「HO」の含有量が約16質量%である点。

相違点4-3:本件発明1は「硬化塗膜の水接触角が77°以上115°以下」であるのに対し、甲4発明では、「硬化塗膜の水接触角」が不明である点。

b 判断

事案に鑑み、まず相違点4-2について検討する。

甲4には、必須成分として、「(A)成分:(メタ)アクリロイル基を有する化合物」、「(B)成分:ロジンまたはロジン誘導体」、及び「(C)成分:光開始剤」を含み、「UV照射器とLED照射に対応した表面硬化性を有し、硬化物は日常生活において安定した接着性を維持して耐久性を有すると共に、ソークオフ性を両立させ、硬化物は無色透明で濁りが無い」「爪または人工爪用光硬化性組成物」が記載されている(摘記4a、4b)。

また、甲4には、上記必須成分の配合割合について、(B)成分は(A)成分100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下が好ましく、(C)成分は(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましいことも記載されており(摘記4cの段落[0048]、[0051])、さらに、(A)成分が(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリルアミドモノマーとを含む場合、(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量:(メタ)アクリレートモノマーと(メタ)アクリルアミドモノマーとの合計の含有量=50:50~95:5が好ましいこと、(A)成分が(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリルアミドモノマーを含む場合、(メタ)アクリルアミドモノマーの含有量:(メタ)アクリレートモノマーの含有量=50:50~0:100が好ましいことも記載されている(摘記4cの段落[0038]~[0039])。

そうすると、甲4の記載から、「爪または人工爪用光硬化性組成物」における(A)成分の含有割合は、約67質量%~約99質量%(100/(100+30+20)×100~100/(100+1+0.1)×100)とし得ることが理解でき、さらに、(A)成分が(メタ)アクリレートモノマーを含有する場合に、その含有量の範囲は、(A)成分中に2.5質量%~50質量%(5/100×50/100×100~50/100×100/100×100)とし得ることも理解できる。そして、これらのことから、「爪または人工爪用光硬化性組成物」における「(メタ)アクリレートモノマー」の含有量の範囲は、約1.7質量%~約50質量%(67/100×2.5/100×100~99/100×50/100×100)とし得ることが理解できる。

ここで、甲4発明の「UF-8001G」は、「ウレタン変性アクリレートオリゴマー」であるから、上記(A)成分の「(メタ)アクリレートオリゴマー」にあたり、「HO」は、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」であるから、上記(A)成分の「(メタ)アクリレートモノマー」にあたるので、甲4発明は、(A)成分が(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーまたは(メタ)アクリルアミドモノマーとを含む場合に対応する。

しかしながら、上記甲4の記載は、「爪または人工爪用光硬化性組成物」における、特に「2-ヒドロキシエチルアクリレート」について、その含有量の範囲を示唆するものではない。また、ヒドロキシ基を有する「(メタ)アクリレートモノマー」を甲4発明の配合量である約16質量%より多く含む「爪または人工爪用光硬化性組成物」が好ましいことは甲4には記載されていない。

したがって、甲4には、甲4発明において、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」である「HO」の含有量を増加させることについて動機付けとなる記載があるとはいえない。

また、一般に「爪または人工爪用光硬化性組成物」において「2-ヒドロキシエチルアクリレート」を多く含有させることが好ましいとする技術常識が存在したとも認められないから、甲4発明において、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」である「HO」の含有量を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」の範囲とすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

そして、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物は、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」の含有量を含め、本件発明1で特定する事項により、

爪表面に濡れ広がりやすく

、密着性に優れ、持ちがよいジェルネイルを形成できるという効果が得られるものであり、この効果は、甲4に記載された「日常生活において安定した接着性を維持して耐久性を有すると共に、ソークオフ性を両立させ、硬化物は無色透明で濁りが無い」「爪または人工爪用光硬化性組成物」からは、当業者の予測の範囲を超えるものといえる。

申立人は、令和7年12月25日提出の意見書において、甲4発明において、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」である「HO」の含有量を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」の範囲とすることについて「実施例6、7に基づき、甲第4号証の段落[0038]に開示する好ましい比率(オリゴマー:モノマー=60:40~90:10)と、成分(A)総量(64.9~97.6質量%)を当業者が掛け合わせれば、(メタ)アクリレートモノマーの含有量として約6.5~約39.0重量%の範囲は導かれる。」と主張し、甲4発明において、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」である「HO」の含有量を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」の範囲とすることに関する阻害要因がないことについて、特許・実用新案審査基準の阻害要因に関する記載を引用しつつ「甲第4号証には、ヒドロキシル基を有する単官能モノマーの含有量を「約16質量%」付近で切り分ける個別の発明が存在するとの記載は一切ない。」、「甲第4号証に開示の2-ヒドロキシエチルアクリレートや、2-ヒドロキシプロピルアクリレートの量を約16質量%からわずか5質量%程度増量しただけで、甲第4号証の段落[0088]の表2で示される評価が比較例相当になり、「主引用発明の目的に反する」(例1)との根拠はないし、このような増量により甲4の組成物が「機能しなくなる」(例2)との示唆もなく、例2には該当しない。甲4は2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレートモノマーの含有量が6.5~39質量%であることを好適範囲として示唆しているため、「その適用を排斥しており、採用されることがあり得ない」はずがない(例3)。例4は別の刊行物の適用が想定されていることが理解され、別の刊行物において増量例が劣位例として記載又は掲載されている事実もないし、仮に例4が別の刊行物を前提となくても甲4にも増量例が劣位例として記載又は掲載されている事実もないため、例4とも異なる」と主張し、甲4発明において、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」である「HO」の含有量を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」の範囲とする動機付けについて、甲11~甲13の記載(摘記11a、摘記11b、摘記12a、摘記13a)を参照しつつ「甲第4号証の段落[0081]は、上記のとおり、施術時の取り扱いを考慮すると、5Pa・sを下限として粘度は低い方が好ましいことを示唆するので、粘度低下効果が周知である2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートのような(メタ)アクリレートモノマーの配合量を増やすことには、当業者にとって十分な動機付けが存在する。」と主張し、甲4発明において、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」である「HO」の含有量を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」の範囲とすることにより奏される効果について「本件特許で主張されている効果は、甲4に既に評価指標として現れており、「甲4からは予測できない」あるいは「顕著である」との特許権者の主張には全く根拠がない。」と主張している(令和7年12月25日提出の意見書の第6頁~第14頁)。

以下、申立人の主張について検討する。

まず、上記で述べたとおり、「爪または人工爪用光硬化性組成物」における「(メタ)アクリレートモノマー」全般としての含有量の範囲が甲4の記載から理解できるとしても、その範囲の中で、「(メタ)アクリレートモノマー」の含有量、特に「2-ヒドロキシエチルアクリレート」である「HO」の含有量を増加させることが好ましいことを理解できる記載は、甲4にはない。

また、甲5には、自爪内部及び外部からの水分を人工爪組成物による被膜が十分に吸収しないことにより、被膜が高い密着性を発揮すること(摘記5b、摘記5c)、及び人工爪組成物の硬化被膜が疎水性を有すれば、爪表面から被膜に浸水される水によって、該被膜が柔軟化したり、膨張したりすることがないこと(摘記5b、摘記5c)が記載されており、当該記載を参酌すれば、人工爪による被膜の疎水性が高まれば、爪に対する高い密着性が発揮されると当業者であれば理解することができる。

そうすると、甲4発明の「爪または人工爪用光硬化組成物」は、「耐久性」、すなわち爪に対する密着性の持続時間を高めることを課題としているのだから(摘記4e、4f)、当該「耐久性」を高めるために硬化塗膜の疎水性を高めることが重要であることが理解できる。

そして、甲4発明において「HO」(2-ヒドロキシエチルアクリレート)の含有量を増加させることは、「爪または人工爪用光硬化組成物」の疎水性を低下させることにつながるおそれがあり、「爪または人工爪用光硬化組成物」の疎水性の低下は、甲4発明の目的である耐久性の低下につながり得ることであるから、甲5の記載は、逆に、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」である「HO」の含有量を減少させる動機づけとなるといえる。

さらに、申立人は、粘度を低下させることを動機付けとして主張するが、組成物の粘度を低減するための方法は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートのような(メタ)アクリレートモノマーの配合量を増やすこと以外にも存在するところ、上記のとおり、ヒドロキシル基を有する「HO」の含有量の増加は、「爪または人工爪用光硬化組成物」の疎水性を低下させる懸念を有する方法であるから、そのような懸念のある方法をあえて採用する動機付けが当業者にあったということはできない。

また、上述のとおり、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」の含有量を含めた、本件発明1で特定する事項により奏される本件発明1の効果は、甲4の記載からは、当業者の予測の範囲を超えるものである。

したがって、申立人の主張は採用できない。

よって、相違点4-1及び相違点4-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2~4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件発明3は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物から得られるジェルネイルベース層の発明であり、本件発明4は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法であるから、上記(ア)と同様の理由により、甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)まとめ

以上のとおりであるから、取消理由1には、理由がない。

3 取消理由通知において採用しなかった申立理由について

上記2で述べたように、取消理由1(進歩性)は、甲4を主引例としたものであり、申立理由7と同旨である。

一方、申立理由1~6及び8~10については、令和7年9月1日付けで、決定の予告として特許権者に通知した取消理由として採用しなかったため、以下検討する。

(1)申立理由1(甲1を主引例とする新規性及び進歩性)について

ア 甲1に記載された発明

甲1には、実施例3の記載(摘記1c、摘記1d)からみて、

「100重量部のポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマーと、60重量部のイソボルニルメタアクリレートと、20重量部のヒドロキシエチルアクリルアミドと、40重量部のビスレのールA-EO付加物ジアクリレートと、16重量部のα-ヒドロキシケトン系化合物と、4重量部のアシルフォスフィンオキサイド系化合物と、4重量部のシリコーン系レベリング剤を含有する、光硬化型ジェルネイル用下地剤。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)対比

a 本件発明1の「硬化性ジェルネイル組成物」は、爪の表面にジェルネイルを設ける際に、爪表面に直接設けられるベース層(ベースコート層・下地層)を形成するために用いることができるものであるから(要すれば、本件明細書等の段落【0041】を参照。)、甲1発明の「光硬化型ジェルネイル用下地剤」は、本件発明1の「硬化性ジェルネイル組成物」に相当する。

b 甲1には、「ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマー」の重量平均分子量が23,000であることが記載されていることから(摘記1c)、甲1発明の「ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマー」は、本件発明1の「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」に相当し、かつ「前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり」に相当する。

そして、甲1発明において、光硬化型ジェルネイル用下地剤に含まれる全ての成分の合計量は、244重量部(=100+60+20+40+16+4+4)であるから、甲1発明において、「光硬化型ジェルネイル用下地剤」における「ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレート」の含有割合は、41重量%(=100/244×100)である。

そうすると、甲1発明の「100重量部のポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマー」は、本件発明1の「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」を「硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み」、「前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり」に相当する。

c 甲1発明の「ヒドロキシエチルアクリルアミド」は、本件発明1の「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」に相当する。

なお、甲1発明の「ヒドロキシエチルアクリルアミド」の含有量を計算すると、約8重量%(=20/(100+60+20+40+16+4+4)×100)である。

d 甲1には、甲1発明を認定した実施例3において、「α-ヒドロキシケトン系化合物」として、「1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」を用いたことが記載されているから(摘記1c)、甲1発明の「α-ヒドロキシケトン系化合物」は、本件発明1の「ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」に相当する。

e 甲1には、「光硬化型ジェルネイル用下地剤」を、25°Cにおいて刷毛にて塗布した際に、粘度が「20,000mPa・s」であることが記載されており(摘記1c)、「20,000mPa・s」は「20Pa・s」である。

甲1発明の「光硬化型ジェルネイル用下地剤」の粘度が20Pa・sであることは、本件発明1における「粘度が35Pa・s以下」に相当する。

f 甲1発明は、「1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤」に相当する成分を含まない。

g そうすると、本件発明1と甲1発明とは、

「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基を有する単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、

前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、

1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤を含まず、

前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり、

粘度が35Pa・s以下である、

硬化性ジェルネイル組成物。」

という点において一致し、以下の点で相違する。

相違点1-1:本件発明1は、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」として「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を用いるものであり、その含有量が「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」であるのに対し、甲1発明は、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」として「ヒドロキシエチルアクリルアミド」を用いるものであり、その含有量が約8重量%である点。

相違点1-2:本件発明1は「硬化塗膜の水接触角が77°以上115°以下」であるのに対し、甲1発明では、「硬化塗膜の水接触角」が不明である点。

(イ)判断

事案に鑑み、まず相違点1-1について検討する。

a 甲1発明の「ヒドロキシエチルアクリルアミド」は、「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート」のいずれでもないから、相違点1-1は、実質的相違点である。

したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。

b 甲1発明の「ヒドロキシエチルアクリルアミド」は、甲1の特許請求の範囲の記載(摘記1a)からして、必須成分であるといえる。

また、甲1には、甲1発明の「光硬化型ジェルネイル用下地剤」に「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を添加し得る旨の記載はない。

さらに、「光硬化型ジェルネイル用下地剤」に「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を添加することの動機付けとなるような技術常識が存在していたとも認められない。

したがって、甲1発明の「光硬化型ジェルネイル用下地剤」において、「ヒドロキシエチルアクリルアミド」に代えて「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を用いることや、甲1発明の「光硬化型ジェルネイル用下地剤」に「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を追加的に加えることは、甲1発明及び甲1に記載された事項から当業者が容易になしえた事項であるとはいえない。

よって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2~4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イと同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

本件発明3は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物から得られるジェルネイルベース層の発明であり、本件発明4は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法であるから、上記イと同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)申立理由2(甲2を主引例とする新規性及び進歩性)について

ア 甲2に記載された発明

甲2には、特許請求の範囲及び実施例の記載(摘記2a、摘記2d)からみて、

「以下の表の実施例1~5で表される配合の光硬化性黒色人工爪組成物(数字は、重量%)。

37

62

0001436155000022.jpg

オリゴマー1:ウレタンアクリレートオリゴマー(1分子あたり官能基数2、分子量3,500)

オリゴマー2:ウレタンアクリレートオリゴマー(1分子あたり官能基数2、分子量4,300)

モノマー1 :イソボルニルアクリレート

モノマー2 :ポリペンタエリスリトールオクタアクリレート

モノマー3 :イソボルニルメタクリレート

開始剤1 :ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン

開始剤2 :トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)対比

a 本件発明1の「硬化性ジェルネイル組成物」は、爪の表面にジェルネイルを設ける際に、爪表面に直接設けられるベース層(ベースコート層・下地層)を形成するために用いることができるものであるところ(要すれば、本件明細書等の段落【0041】を参照。)、甲2発明の光硬化性黒色人工爪組成物も爪への下地層として使用することができるものである(摘記2c)から、甲2発明の「光硬化性黒色人工爪組成物」は、本件発明1の「硬化性ジェルネイル組成物」に相当する。

b 甲2発明の「ウレタンアクリレートオリゴマー」である「オリゴマー1」及び「オリゴマー2」は、本件発明1の「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」と、「ウレタン(メタ)アクリレート」である点で共通する。

また、甲2発明の「オリゴマー1」及び「オリゴマー2」の含有量は、最も含有量の少ない実施例1で47.5重量%、最も含有量の多い実施例5で55.7重量%であり、いずれも本件発明1の「前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み」の範囲内の値である。

そして、甲2に記載された「ウレタンアクリレートオリゴマー」の「分子量」は、重量平均分子量を意味するところ(摘記2b)、甲2発明の「オリゴマー1」は、重量平均分子量が3,500であり、「オリゴマー2」は、重量平均分子量が4,300であるから、甲2発明の「オリゴマー1」及び「オリゴマー2」の重量平均分子量の値は、本件発明1の「前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり」の範囲内の値である。

c 甲2発明の「イソボニルアクリレート」である「モノマー1」、「イソボルニルメタクリレート」である「モノマー3」は、本件発明1の「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」と、「単官能モノマー」である点で共通する。

d 甲2発明の「ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」である「開始剤1」は、本件発明1の「ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」に相当する。

e 甲2発明の光硬化性黒色人工爪組成物には、「1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤」に相当する成分が含まれていない。

f そうすると、本件発明1と甲2発明とは、

「ウレタン(メタ)アクリレートと、単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、

前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、

1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤を含まず、

前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にある、

硬化性ジェルネイル組成物。」

という点において一致し、以下の点で相違する。

相違点2-1:本件発明1は、「ウレタン(メタ)アクリレート」が「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有する」ものであるのに対して、甲2発明の「ウレタンアクリレートオリゴマー」である「オリゴマー1」及び「オリゴマー2」は、「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有する」ものであるか否か不明である点。

相違点2-2:本件発明1は、「単官能モノマー」として「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を用いるものであり、その含有量が「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」であるのに対し、甲2発明は、「単官能モノマー」として「イソボルニルアクリレート」又は「イソボルニルメタクリレート」を用いるものであり、その含有量が最も多い実施例4でも17.2重量%である点。

相違点2-3:本件発明1は「硬化塗膜の水接触角が77°以上115°以下」であるのに対し、甲2発明では、「硬化塗膜の水接触角」が不明である点。

相違点2-4:本件発明1は「粘度が35Pa・s以下」であるのに対し、甲2発明では、「粘度」が不明である点。

(イ)判断

事案に鑑み、まず相違点2-2について検討する。

a 甲2発明の「イソボルニルアクリレート」又は「イソボルニルメタクリレート」は、「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート」のいずれでもないから、相違点2-2は、実質的相違点である。

したがって、相違点2-1、相違点2-3及び相違点2-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明ではない。

b 甲2には、単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、甲2発明において用いられているイソボニルアクリレート又はイソボニルメタクリレートの他にも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用い得ることが記載されており、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレートが好ましいことも記載されている(摘記2b)。

しかし、これら2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートは、他の多数の単官能(メタ)アクリレートモノマーと同列の選択肢として記載されたもののひとつに過ぎないし、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレートが好ましいとの記載があるとしても、甲2には、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレートを添加することで、具体的にどのような性能が向上するか、他の単官能(メタ)アクリレートモノマーに比べてどのような点で優れているのかは記載されていない。

そうすると、甲2には、甲2発明において、単官能(メタ)アクリレートモノマーとして2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを採用する動機付けが記載されているとはいえない。

また、甲2には、単官能(メタ)アクリレートモノマーの配合量の範囲を1~99重量%、好ましくは10~40重量%とし得ることは記載されている(摘記2b)。

しかし、当該記載は、単官能(メタ)アクリレートモノマー全般について、その配合量の範囲を記載しているに過ぎず、特にヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレートを用いた場合に、その含有量の範囲をどのような範囲とするべきかについて記載したものではない。また、甲2には、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレートを用いた場合に、その含有量が多い方がよいとする記載もない。

そうすると、甲2には、単官能(メタ)アクリレートモノマーとして2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを採用した場合に、その含有量の範囲を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」とする動機付けが記載されているともいえない。

さらに、「光硬化性黒色人工爪組成物」に「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を「組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」の範囲で添加することの動機付けとなるような技術常識が存在していたとも認められない。

したがって、甲2発明の「光硬化性黒色人工爪組成物」において、「イソボニルアクリレート又はイソボニルメタクリレート」に代えて「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を用いることや、甲2発明の「光硬化性黒色人工爪組成物」に「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を追加的に加えること、さらにその含有量の範囲を「組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」とすることは、当業者が容易になしえた事項であるとはいえない。

よって、相違点2-1、相違点2-3及び相違点2-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2~4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イと同様の理由により、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

本件発明3は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物から得られるジェルネイルベース層の発明であり、本件発明4は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法であるから、上記イと同様の理由により、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)申立理由3(甲3を主引例とする新規性及び進歩性)について

ア 甲3に記載された発明

甲3には、特許請求の範囲及び実施例の記載(摘記3a、摘記3d)からみて、

「以下の表の実施例3で表される配合であり、粘度が50Pa・sである、爪または人工爪被覆用光硬化性組成物(数字は、質量部)。

79

61

0001436155000023.jpg

UF-8001G:無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(2官能)(重量平均分子量 4,500

IB-X:イソボルニルメタクリレート

84:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン

TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド

DOS:セバシン酸ジ2-エチルヘキシル」の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について

(ア)対比

a 甲3には、「爪または人工爪被覆用光硬化性組成物」は、UVネイルジェルと同義であることが記載されているから(摘記3b)、甲3発明の「爪または人工爪被覆用光硬化性組成物」は、本件発明1の「硬化性ジェルネイル組成物」に相当する。

b 甲3発明の「無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(2官能)」は、本件発明1の「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」と、「ウレタン(メタ)アクリレート」である点で共通する。

また、甲3発明の「無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(2官能)」の含有量を計算すると約68質量%(=100/148×100)であり、これは、本件発明1の「前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み」の範囲内の値である。

そして、甲3発明の「無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(2官能)」は、重量平均分子量が4,500であり、これは、本件発明1の「前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり」の範囲内の値である。

c 甲3発明の「イソボニルメタクリレート」は、本件発明1の「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」と、「単官能モノマー」である点で共通する。

また、甲3発明の「イソボニルメタクリレート」の含有量を計算すると約24質量%(=35/148×100)であり、これは、本件発明1の「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」の範囲内の値である。

d 甲3発明の「1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」は、本件発明1の「ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」に相当する。

e 甲3発明の「爪または人工爪被覆用光硬化性組成物」には、「1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤」に相当する成分が含まれていない。

f そうすると、本件発明1と甲3発明とは、

「ウレタン(メタ)アクリレートと、単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、

前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、

前記単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下含み、

1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤を含まず、

前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にある、

硬化性ジェルネイル組成物。」

という点において一致し、以下の点で相違する。

相違点3-1:本件発明1は、「ウレタン(メタ)アクリレート」が「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有する」ものであるのに対して、甲3発明の「無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(2官能)」は、「分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有する」ものであるか否か不明である点。

相違点3-2:本件発明1は、「単官能モノマー」が「ヒドロキシル基を有する」ものであり、「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」であるのに対し、甲3発明は、「イソボルニルメタクリレート」である点。

相違点3-3:本件発明1は「硬化塗膜の水接触角が77°以上115°以下」であるのに対し、甲3発明では、「硬化塗膜の水接触角」が不明である点。

相違点3-4:本件発明1は「粘度が35Pa・s以下」であるのに対し、甲3発明では、「粘度が50Pa・s」である点。

(イ)判断

事案に鑑み、まず相違点3-2について検討する。

a 甲3発明の「イソボルニルメタクリレート」は、「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート」のいずれでもないから、相違点3-2は、実質的相違点である。

したがって、相違点3-1、相違点3-3及び相違点3-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明ではない。

b 甲3には、1官能メタクリレートモノマーとして、甲3発明において用いられているイソボニルメタクリレートの他にも、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び2-ヒドロキシプロピルメタクリレートを用い得ることが記載されいる(摘記3c)。

しかし、これら2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び2-ヒドロキシプロピルメタクリレートは、他の多数の1官能メタクリレートモノマーと同列の選択肢として記載されたもののひとつに過ぎないから、甲3に、1官能メタクリレートモノマーとして2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び2-ヒドロキシプロピルメタクリレートを採用する動機付けが記載されているとはいえない。

さらに、「爪または人工爪被覆用光硬化性組成物」に「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を添加することの動機付けとなるような技術常識が存在していたとも認められない。

したがって、甲3発明の「爪または人工爪被覆用光硬化性組成物」において、「イソボニルメタクリレート」に代えて「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を用いることや、甲3発明の「爪または人工爪被覆用光硬化性組成物」に「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を追加的に加えることは、当業者が容易になしえた事項であるとはいえない。

よって、相違点3-1、相違点3-3及び相違点3-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2~4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イと同様の理由により、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

本件発明3は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物から得られるジェルネイルベース層の発明であり、本件発明4は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法であるから、上記イと同様の理由により、甲3に記載された発明であるとはいえず、甲3に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)申立理由4(甲4を主引例とする新規性及び進歩性)について

ア 本件発明1について

甲4発明は、上記2(1)アにおいて述べたとおりであり、本件発明1と甲4発明は、上記2(1)イ(ア)において述べたとおり、相違点4-1~相違点4-3において相違する。

そして、少なくとも相違点4-2は、実質的相違点であるから、相違点4-1及び相違点4-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明ではない。

同様に、上記2(1)イ(ア)で述べたとおり、相違点4-2については、当業者が容易になし得た事項ではないから、相違点4-1及び相違点4-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2~4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記アと同様の理由により、甲4に記載された発明であるとはいえず、甲4に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

本件発明3は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物から得られるジェルネイルベース層の発明であり、本件発明4は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法であるから、上記アと同様の理由により、甲4に記載された発明であるとはいえず、甲4に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)申立理由5(甲1を主引例とし、甲5を副引例とし、さらに周知技術を参照する進歩性)について

ア 本件発明1について

甲1発明は、上記(1)アにおいて述べたとおりであり、本件発明1と甲1発明は、上記(1)イにおいて述べたとおり、相違点1-1及び相違点1-2において相違する。

ここで、相違点1-1について検討すると、甲5には、疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル系モノマー、及び光重合開始剤を含有する自爪塗布用光硬化性人工爪組成物において、(メタ)アクリル系モノマーとして、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又はイソボニル(メタ)アクリレートを配合することが好ましいことが記載されているが(摘記5a、摘記5d)、甲5には、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又はイソボニル(メタ)アクリレートを配合することが好ましいとの記載に続けて、これらの化合物を配合する場合には、その合計の配合量を20重量%以下とすることが好ましいとも記載されており(摘記5d)、これは、本件発明1の「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」の含有量の範囲である「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」と重複しない。

そして、甲1の記載事項については、上記(1)イにおいて検討したとおりであるし、周知技術を示す文献として示された甲6及び甲7は、甲1発明のようなポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレートオリゴマーを含有する光硬化型ジェルネイル用下地剤を開示するものではないから(摘記6a、摘記6b、摘記7a、摘記7b)、甲1発明において、「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を用い、その含有量の範囲を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」とすることが周知であったともいえない。

申立人は、令和7年7月30日提出の意見書において、参1Aの記載(摘記1Aa)を参照しつつ「(反応性を高める目的で使用される)ヒドロキシエチルアクリルアミドを開示する甲第1号証に触れた当業者が、該ヒドロキシエチルアクリルアミドを含む光硬化型ジェルネイル用下地剤を構成するにあたり、粘性および塗布適性を調整する目的で、組み合わせ容易の甲第5号証を見た当業者が、流動調整剤として、甲第5号証に開示の(反応性にも優れる)「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート」を、ヒドロキシエチルアクリルアミドと併用して用いようとすることは困難なことではない。」と主張している(令和7年7月30日提出の意見書第6頁)。

しかし、上記2(1)イ(ア)において述べたように、組成物の粘度を調整するための方法は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを加えること以外にも存在するところ、甲1発明の「光硬化型ジェルネイル用下地剤」は、爪に対する密着性を高めることを課題としているのだから(摘記1b)、「光硬化型ジェルネイル用下地剤」の疎水性を低下させる懸念のある、ヒドロキシル基を有する成分の含有量の増加という方法をあえて採用する動機付けが当業者にあったということはできない。

したがって、申立人の主張は採用できない。

よって、甲5の記載及び周知技術によっても、甲1発明において、(メタ)アクリル系モノマーとして「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を用い、その含有量の範囲を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」とすることが、当業者にとって容易になし得た事項であるとはいえないから、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明並びに甲5の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2~4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記アと同様の理由により、甲1に記載された発明並びに甲5の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

本件発明3は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物から得られるジェルネイルベース層の発明であり、本件発明4は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法であるから、上記アと同様の理由により、甲1に記載された発明並びに甲5の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(6)申立理由6(甲2を主引例とし、甲5を副引例とし、さらに周知技術を参照する進歩性)について

ア 本件発明1について

甲2発明は、上記(2)アにおいて述べたとおりであり、本件発明1と甲2発明は、上記(2)イにおいて述べたとおり、相違点2-1~相違点2-4において相違する。

ここで、相違点2-2について検討すると、上記(5)アにおいて述べたとおり、甲5には、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又はイソボニル(メタ)アクリレートを配合する場合には、その合計の配合量を20重量%以下とすることが好ましいと記載されており(摘記5d)、これは、本件発明1の「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」の含有量の範囲である「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」と重複しない。

そして、甲2の記載事項については、上記(2)イにおいて検討したとおりであるし、周知技術を示す文献として示された甲6及び甲7は、甲2発明のようなウレタンアクリレートオリゴマーを含有する光硬化性黒色人工爪組成物を開示するものではないから(摘記6a、摘記6b、摘記7a、摘記7b)、甲2発明において、単官能(メタ)アクリレートモノマーとして「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を用い、その含有量の範囲を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」とすることが周知であったともいえない。

したがって、甲5の記載及び周知技術によっても、甲2発明において、単官能(メタ)アクリレートモノマーとして「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」を用い、その含有量の範囲を「硬化性ジェルネイル組成物中に20.5質量%以上46質量%以下」とすることが、当業者にとって容易になし得た事項であるとはいえないから、相違点2-1、相違点2-3及び相違点2-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲5の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2~4について

本件発明2は、本件発明1を引用してさらに技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記アと同様の理由により、甲2に記載された発明並びに甲5の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

本件発明3は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物から得られるジェルネイルベース層の発明であり、本件発明4は、本件発明1の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法であるから、上記アと同様の理由により、甲2に記載された発明並びに甲5の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(7)申立理由8(サポート要件違反)について

ア サポート要件の判断の前提

特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 課題

本件発明の課題は、本件明細書の発明の詳細な説明(特に【0008】)の記載からみて、「(1)硬化性ジェルネイル組成物において、爪表面に対し濡れ広がりやすく、爪と硬化塗膜との密着性に優れ持ちのよいジェルネイルを構成することのできる硬化性ジェルネイル組成物を得ること、(2)爪と硬化塗膜との密着性に優れ持ちのよいジェルネイルを構成することのできるジェルネイルベース層を得ること、(3)爪表面に対し濡れ広がりやすく、爪と硬化塗膜との密着性に優れ持ちのよいジェルネイルを爪の上に設けること」であると認められる。

ウ 上記課題を解決するための手段

本件明細書等の発明の詳細な説明には、本件発明の分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートについて記載され(段落【0014】~【0025】)、ヒドロキシル基を有する単官能モノマーについて記載され(段落【0026】~【0028】)、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンについて記載され(段落【0031】~【0033】)、硬化塗膜の水接触角及び粘度について記載され(段落【0012】~【0013】)、実際に、硬化性ジェルネイル組成物を製造した例が、実施例として記載されている(段落【0050】~【0061】)。

そうしてみれば、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載には、上記イの課題を解決するための手段が記載され、実際に、実施例で、本件発明の硬化性ジェルネイル組成物が「爪への密着性に優れ、クロスカット試験及び1時間含水後のクロスカット試験の結果がいずれも良好であり、3週間以上剥離・カケ・割れ・浮き等の問題が生じない「持ち」がよい」ものであることが確認されている(段落【0050】~【0061】)から、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載から、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識できるといえ、本件発明は、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載されているといえる。

エ 申立理由8における指摘

申立人は、上記第4の1(1)クのように述べ、本件発明はサポート要件を満たさないと主張する。

オ 判断

申立人の主張について、以下検討する。

(ア)硬化膜の伸びや応力、硬さについて

本件発明は、硬化性ジェル組成物をその構成成分、硬化塗膜の水接触角及び組成物の粘度で特定するものであり、上記ウで述べたとおり、本件明細書等には、本件発明の具体例である実施例の硬化性ジェルネイル組成物は、上記イにおいて述べた本件発明の課題を解決するものであることが具体的に記載されている。

申立人の主張するように、本件明細書の段落【0007】には、硬化膜の伸びや応力、硬さも爪への密着性に影響を与える物理的な因子として記載はされているが、同【0007】に記載されているように、本件発明は、密着性の化学的な因子である爪への濡れ広がりやすさがジェルネイルの密着性や持ちに大きく影響すること、そして、爪の表面が疎水性であることから、爪への濡れ広がりをよくするためには、ジェルネイルの疎水性を向上させることが必要であるとの知見に基いてなされたものであるから、爪への濡れ広がりやすさに影響を与える硬化性ジェルネイル組成物の疎水性の度合いを硬化膜の水接触角で特定していることにより、本件発明は、課題解決のために必要な手段を特定しているものといえる。

(イ)「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」の構造について

本件発明は、本件訂正により、「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」が「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上」に限定されている。

そして、本件明細書等の実施例においては、「2-ヒドロキシプロピルメタクリレート」を用いた実施例が具体的に示されている。

そうすると、本件発明の「ヒドロキシル基を有する単官能モノマー」は、実施例で用いられた「2-ヒドロキシプロピルメタクリレート」と類似の化学構造を有する化合物のみに限定されており、類似の化学構造を有する化合物が類似の性能を有することは、一般的な技術常識であるから、本件発明は、その課題を解決できると当業者が認識できる範囲内のものであると認められる。

(ウ)参考例2(比較例3)及び実施例1~5のモニター評価試験結果(表2)について

申立人は、参考例2(比較例3)のモニター評価試験結果が「40」%であることから、60%には、「問題」が生じていること、実施例1~5のモニター評価試験結果も、「60」%又は「70」%であること(表2)から、実施例1~5についても、40%又は30%には、「問題」が生じていることを指摘し、このことから、本件発明はその課題を解決できるとはいえないと主張している。

しかし、表2には、比較例1、2及び4のモニター評価試験結果も記載されており、その値は、それぞれ「0」%、「10」%、「30」%であるから、比較例1、2及び4は、それぞれ100%、90%及び70%が「問題」のあるものであったことを理解することができる。

そうすると、参考例2(比較例3)及び実施例1~5の結果は、比較例1、2及び4の結果に比べて、改善されているものであることが明らかであるから、本件発明はその課題を解決することができるものといえる。

(エ)ポリエチレングリコールジメタクリレートが硬化性ジェルネイル組成物に含まれないことが特定されていないことについて

申立人は、比較例4の硬化塗膜の水接触角が「63.2」°Cであることを指摘して、本件発明においては、ポリエチレングリコールジメタクリレートが硬化性ジェルネイル組成物に含まれないことが必須の要件であると主張している。

しかし、比較例4は、硬化塗膜の水接触角の値のみが本件発明の範囲外のものがどのような性能を有するのかを示すものであると解されるところ、比較例4の1例のみをもって、ポリエチレングリコールジメタクリレートを含有することで、硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜の水接触角を本件発明の範囲とすることができなくなるということはできないから、本件発明において、ポリエチレングリコールジメタクリレートを含有しないことが必須の構成要件であるということはできない。

カ まとめ

以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(8)申立理由9(実施可能要件違反)について

ア 実施可能要件の判断の前提

物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要し、また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要するものである。

イ 本件発明の実施可能要件について

上記(7)ウで述べたように、本件発明の硬化性ジェルネイル組成物は、「爪への密着性に優れ、クロスカット試験及び1時間含水後のクロスカット試験の結果がいずれも良好であり、3週間以上剥離・カケ・割れ・浮き等の問題が生じない「持ち」がよい」ものであることが本件明細書等の実施例に記載されているから、これら実施例を参考に、一般的な説明も参照すれば、当業者は、過度な試行錯誤なく、本件発明1及び2の「硬化性ジェルネイル組成物」並びに本件発明3の「ジェルネイルベース層」を製造し、使用することができ、また、本件発明4の「爪の上にジェルネイルを設ける方法」を使用することができるといえる。

したがって、本件明細書等の記載は、本件発明1~4について、その属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

ウ 申立理由9における指摘

申立人は、上記第4の1(1)ケのように述べ、本件発明は実施可能要件を満たさないと主張する。

エ 判断

申立人の主張について、以下検討する。

(ア)HOP(N)を用いた実施例4~7がIB-Xを用いた比較例1、2よりも表面接触角が高いことについて

上記イで述べたように、本件明細書等の実施例には、実施例1~9として本件発明の具体例が記載されているから、少なくともこれら実施例1~9の硬化性ジェルネイル組成物については、本件発明の硬化性ジェルネイル組成物を製造し、使用できることは明らかである。

また、疎水性の高いIB-Xで表されるイソボニルメタクリレートを用いた比較例1及び2の硬化塗膜の水接触角の値が、実施例4~7の硬化塗膜の水接触角の値よりも小さかったとしても、そのことのみから直ちに本件発明の実施例以外の様態の製造及び使用が不可能となるものではない。

(イ)紫外線の積算光量について

本件明細書等の実施例には、硬化の際に照射した紫外線の積算光量の値は記載されていないが、本件明細書等には、紫外線硬化の際に必要な照射エネルギーは、含有される化合物や顔料等の成分によって異なるものの、積算エネルギー量として、5mJ/cm

2

~1000mJ/cm

2

であるのが好ましく、10mJ/cm

2

~800mJ/cm

2

であるのがより好ましいことが記載されている(段落【0045】及び【0049】)。

そうすると、本件発明の硬化性ジェルネイル組成物を使用する際には、その組成に応じて、硬化性ジェルネイル組成物が硬化する程度の紫外線を照射すればよいことは当業者にとって明らかであるから、本件明細書等の実施例において照射した紫外線の積算光量が記載されていないことが、本件発明の実施を妨げるものであるとはいえない。

(ウ)質量平均分子量の測定方法について

本件明細書等の段落【0051】には、実施例において用いた分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの商品名や質量平均分子量の値が記載されているから、当業者が本件発明の硬化性ジェルネイル組成物を製造するに際し、実施例の記載を参考にして、使用する分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを選択することに過度の試行錯誤を要するとはいえない。

(エ)硬化性ジェルネイル組成物がポリエチレングリコールジメタクリレートを含む場合に水接触角を77°以上に調整する手段について

本件発明において、ポリエチレングリコールジメタクリレートは必須の成分ではないから、本件発明の実施にあたっては、必ずしもポリエチレングリコールジメタクリレートを含める必要はなく、ポリエチレングリコールジメタクリレートを含む場合に硬化塗膜の水接触角を調整する方法の開示がなかったとしても、そのことをもって本件発明の硬化性ジェルネイル組成物を製造し使用することができないとする理由とはならない。

オ まとめ

以上のとおりであるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。

(9)申立理由10(明確性要件違反)について

ア 本件特許の請求項1の「硬化塗膜の水接触角」について

(ア)本件特許の請求項1~4の明確性について

膜の疎水性を「水接触角」で表すことは、本件発明の技術分野において一般的に行われていることであるから(必要であれば、甲6の段落【0046】を参照。)、「硬化塗膜の水接触角」という用語自体は明確であるし、本件明細書等の段落【0055】には、実施例においてその値を測定した際の測定方法が記載されているから、その測定方法も明確である。

(イ)申立人の主張について

申立人は、本件明細書等の段落【0055】には、紫外線の積算光量の開示がなく、積算光量が変われば、硬化塗膜の硬化状態も変わり得ること、硬化塗膜の硬化状態が変われば接触角も変わり得ることから、訂正前の請求項1に係る発明の「硬化塗膜の水接触角」とは、硬化塗膜がどのような硬化状態での水接触角であるかが不明であるため、発明の外延が不明であると主張している。

しかし、「硬化塗膜の水接触角」の特定にあたり、本件発明の技術分野においては、「水接触角」の測定方法を示す場合に、必ずしも紫外線の積算光量の値を明示しているものではない(必要であれば、甲6の段落【0046】を参照。)し、「水接触角」の測定のために硬化塗膜を製造する際に、硬化塗膜が得られる程度の紫外線を照射すればよいことは当業者にとって明らかであるから、本件明細書等に紫外線の積算光量の開示がなかったとしても、本件発明の「硬化塗膜の水接触角」が不明確となるとはいえない。

イ 本件特許の請求項1の「質量平均分子量」について

(ア)本件特許の請求項1~4の明確性について

高分子化合物の分子量を「質量平均分子量」で表すことは、本件発明の技術分野において一般的に行われていることであるから、「質量平均分子量」という用語自体は明確であるし、本件明細書等の段落【0051】には、実施例で使用した分子内にポリエーテル骨格又はポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの商品名や質量平均分子量の値が記載されているから、実施例に記載された硬化性ジェルネイル組成物が本件発明の具体例であることは明らかであり、本件明細書等の記載が「質量平均分子量」の用語の定義を不明確とするものではない。

(イ)申立人の主張について

申立人は、本件明細書等には、質量平均分子量の具体的な測定方法の開示がなく、質量平均分子量の値は、測定条件によって変わることが常識であるため、本件特許の開示だけでは、正確な質量平均分子量を導き出すことができないから、訂正前の請求項1に係る発明は、「前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲」との規定により、その発明の外延が不明確であると主張している。

しかし、上記のとおり、「質量平均分子量」の用語は、高分子化合物の分子量を特定する際に一般的に用いられている用語であるし、質量平均分子量の値が測定条件によって多少変動するものであったとしても、本件発明のように3000~70,000という数値範囲で特定することが第三者に不測の不利益を与えるほど不明確とはいえず、当業者が本件発明を実施できないとまではいえない。

(10)まとめ

以上のとおりであるから、申立理由1~6及び8~10には、理由がない。

第6 むすび

以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人の特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許と取り消すことはできない。

また、ほかに請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。