結論テキスト
特許第7530696号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第7530696号の請求項1-5に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700143 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
以下において下線は当審合議体が付与したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。
特許第7530696号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和2年1月23日に出願され、令和6年7月31日にその特許権の設定登録がされ、同年8月8日に特許掲載公報が発行され、その後、その全請求項に係る特許に対し、令和7年2月3日に特許異議申立人 佐藤 徹(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以後の手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和7年 3月10日付け 取消理由通知
同年 5月12日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月23日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 6月26日 意見書の提出(申立人)
同年 8月26日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年10月31日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年11月11日付け 訂正請求があった旨の通知
同年12月12日 意見書の提出(申立人)
なお、令和7年5月12日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
令和7年10月31日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、「特許第7530696号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものであって、その内容は、以下の訂正事項1~3からなるものである。
(1)訂正事項1
請求項1の
「1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液を、蒸留により精製するにおいて、還流状態下にある蒸留塔に前記粗原液を導入し、前記蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、一方、前記蒸留塔の底部からの高沸点成分を除去し、前記蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す蒸留工程とを少なくとも有し、
前記蒸留工程が多工程とされ、還流状態下にある蒸留塔に前記粗原液を導入し、蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、前記第1の蒸留塔の底部からの缶出物を得る第1蒸留工程と、第1蒸留工程により得られた缶出物を還流状態下にある第2の蒸留塔に導入し、蒸留塔の底部から高沸点成分を除去し、前記第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す第2蒸留工程とを少なくとも有する」
との記載を、
「1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液を、蒸留により精製するにおいて
、
前
記蒸
留が
多工程とされ、
還流状態下にある
第1の
蒸留塔に前記粗原液を導入し、
前記第1の
蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、前記第1の蒸留塔の底部からの缶出物を得る第1蒸留工程と、
第1蒸留工程により得られた缶出物を還流状態下にある第2の蒸留塔に導入し、
前記第2の
蒸留塔の底部から高沸点成分を除去し、前記第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す第2蒸留工程とを少なくとも有
し、
」
との記載に訂正する(下線は訂正箇所。第2の1において同様。)。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1の冒頭に、
「
1,3-ブタンジオール含有量が90.0質量%超99.5質量%以下、水分含有量が5質量%以下である、
」
との記載を追加する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5についても同様に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項1の
「1,3-ブタンジオールの製造方法。」
との記載を、
「
純度99.9質量%以上で、かつ以下に示す臭気判定方法において(1)精留直後と(2)1か月以上の所定条件で保管保持後とでいずれも評価1以下である特性を示す
1,3-ブタンジオールの製造方法。
(臭気判定方法)
1,3-ブタンジオール粗原液を基準サンプルとし、評価サンプルを以下のレベルで評価、その相対評価点で点数を付ける。
評価サンプルは、1,3-ブタンジオール粗原料または精製品と水を1:1質量比で混合し、広口ガラス瓶に入れ密封し室温に放置した後、大気中で速やかに臭いを嗅ぎ、比較する方法で行う
評価者は、嗅覚が正常な6名を選定し、各々の評価点を平均化したあと、四捨五入で、臭気レベルを判定する。評価基準は、以下の6段階評価とする。
(評価基準)
0:臭気を感じ取れない、全くわからない(純水を入れた無臭瓶と同じに感じる)
1:やっと感知できる臭気、臭気の種類までは判断できない
2:弱い臭気を感じ取ることができ、どんな臭いかわかる
3:容易に感知できる臭い
4:基準サンプルほどではないが、強い臭気を感じる
5:基準サンプルと同等もしくはそれ以上な強い臭気を感じる
臭気判定は、(1)精留直後と(2)常温(20°C±10°C)で少なくとも1か月以上製品を褐色瓶(広口瓶・褐色(ソーダ石灰ガラス製)、ポリプロピレンキャップ、ポリエチレン製中蓋付)中に入れ、空間部は窒素で満たし酸素が無い状況で密閉し、暗室(照度:0.1ルクス(Lx)以下)に保管保持した後の二回評価する。
」
との記載に訂正する。
(1)訂正事項1について
ア 訂正の内容
訂正事項1は、以下の訂正事項1-1~1-3からなる。
(訂正事項1-1)
訂正前の「還流状態下にある蒸留塔に前記粗原液を導入し、前記蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、一方、前記蒸留塔の底部からの高沸点成分を除去し、前記蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す蒸留工程とを少なくとも有し、」との記載を削除する訂正。
(訂正事項1-2)
訂正前の「前記蒸留工程が多工程とされ、還流状態下にある蒸留塔に前記粗原液を導入し、蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し」との記載を、「前記蒸
留が
多工程とされ、還流状態下にある
第1の
蒸留塔に前記粗原液を導入し、
前記第1の
蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し」との記載とする訂正。
(訂正事項1-3)
訂正前の「還流状態下にある第2の蒸留塔に導入し、蒸留塔の底部から高沸点成分を除去し」との記載を、「還流状態下にある第2の蒸留塔に導入し、
前記第2の
蒸留塔の底部から高沸点成分を除去し」との記載とする訂正。
イ 訂正の目的
訂正事項1は、令和7年3月10日付けの取消理由通知において、訂正前の請求項1の、
「還流状態下にある蒸留塔に前記粗原液を導入し、前記蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、一方、前記蒸留塔の底部からの高沸点成分を除去し、前記蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す蒸留工程とを少なくとも有し、前記蒸留工程が多工程とされ、」
との記載と、
「還流状態下にある蒸留塔に前記粗原液を導入し、蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、前記第1の蒸留塔の底部からの缶出物を得る第1蒸留工程と、」
との記載が整合せず、明確でないとの指摘に応じてされた訂正である。
訂正事項1-1により削除された記載は、上記指摘のうち、前者の「還流状態下にある蒸留塔・・・前記蒸留工程が多工程とされ、」との記載を削除して、記載の不整合を正すものであるから、訂正事項1-1は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
訂正事項1-2は、第1蒸留工程において、粗原液を導入する蒸留塔及び上部から低沸点成分を除去する蒸留塔がいずれも、第1の蒸留塔であることを明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
訂正事項1-3は、第2蒸留工程において、底部から高沸点成分を除去する蒸留塔が第2の蒸留塔であることを明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。
ウ 新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1について、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0018】に、
「本発明に係る1,3-ブタンジオールの製造方法の一実施形態においては、1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液を、蒸留により精製するにおいて、還流状態下にある第1の蒸留塔に前記粗原液を導入し、蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、前記第1の蒸留塔の底部からの缶出物を得る第1蒸留工程と、第1蒸留工程により得られた缶出物を還流状態下にある第2の蒸留塔に導入し、蒸留塔の底部から高沸点成分を除去し、前記第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す第2蒸留工程とを少なくとも有する1,3-ブタンジオールの製造方法が示される。」
と記載され、当該製造方法に関する精製装置について【0060】~【0062】及び図2の記載があるから、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、「1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液」における、1,3-ブタンジオール含有量及び水分含有量を特定範囲のものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
「1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液」における、1,3-ブタンジオール含有量及び水分含有量について、本件特許明細書等には、
「【0033】
次に、処理対象となる、「1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液」(以下、単に「粗原液」とも称する場合がある。)としては、・・・などであってもよい。また1,3-ブタンジオール含有量としても特に限定されるものではないが、例えば、1,3-ブタンジオール含有量が60.0質量%以上
99.5質量%以下
のもの、より好ましくは
90.0質量%以上
99.0質量%以下のもの、さらに好ましくは95.0質量%以上98.0質量%以下のものであることができる。特に、粗原液は、あらかじめ脱水処理されて
水分含有量が5質量%以下
とされたものであることが好ましい。」
との記載があり、本件特許明細書等には、「1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液」における1,3-ブタンジオール含有量の下限が90.0質量%であり、上限が99.5質量%であること、水分含有量が5質量%以下であることが記載されている。
そして、1,3-ブタンジオール含有量の下限が90.0質量%であり、上限が99.5質量%であることが記載されていれば、1,3-ブタンジオール含有量が90.0質量%超99.5質量%以下であることが記載されているといえる。
したがって、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、請求項1に記載された「1,3-ブタンジオールの製造方法」における目的物質である「1,3-ブタンジオール」について、その純度を特定範囲のものに限定し、かつ、臭気特性を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
イ 新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件特許明細書等には、
「【0076】
上記に説明したような本
発明に係る製造方法により得られる精製1,3-ブタンジオールは、純度99.9質量%以上
で、かつ、官能試験において無臭である。
【0077】
本明細書において「無臭」とは、少なくとも後述する官能試験(臭気判定方法)に従って測定した人間による臭気判定において精留直後において無臭で透明な高純度液体であることを意味する、特に、好ましくは、
精留直後と常温(20°C±10°C)で少なくとも1か月以上製品を褐色瓶(広口瓶・褐色(ソーダ石灰ガラス製)、ポリプロピレンキャップ、ポリエチレン製中蓋付)中で暗室(照度:0.1ルクス(Lx)以下)に保管保持した後の二回評価にて、無臭で透明な高純度液体である
ことを意味する。
・・・
【実施例】
【0079】
・・・
なお、以下に示す実施例および比較例において、
使用した粗原料、測定方法等は次の通りであった
。
【0080】
粗原料
バイオマス由来の1,3-ブタンジオール粗精製品を協力企業より入手した。・・・
【0082】
(臭気判定方法)
上記した
バイオマス由来の1,3-ブタンジオール粗精製品を基準サンプルとし、評価サンプルを以下のレベルで評価、その相対評価点で点数を付けた。
評価サンプルは、1,3-ブタンジオール粗精製品または精製品と水を1:1質量比で混合し、広口ガラス瓶に入れ密封し室温に放置した後、大気中で速やかに臭いを嗅ぎ、比較する方法で行った。
評価者は、嗅覚が正常な6名を選定し、各々の評価点を平均化したあと、四捨五入で、臭気レベルを判定した。
・・・
なお、
評価基準は、以下の6段階評価とした。
【0083】
(評価基準)
0:臭気を感じ取れない、全くわからない(純水を入れた無臭瓶と同じに感じる)
1:やっと感知できる臭気、臭気の種類までは判断できない
2:弱い臭気を感じ取ることができ、どんな臭いかわかる
3:容易に感知できる臭い
4:基準サンプルほどではないが、強い臭気を感じる
5:基準サンプルと同等もしくはそれ以上な強い臭気を感じる
【0084】
また、臭気判定は、(1)精留直後と(2)常温(20°C±10°C)で少なくとも1か月以上製品を褐色瓶(広口瓶・褐色(ソーダ石灰ガラス製)、ポリプロピレンキャップ、ポリエチレン製中蓋付)中に入れ、空間部は窒素で満たし酸素が無い状況で密閉し、暗室(照度:0.1ルクス(Lx)以下)に保管保持した後の二回評価した。
・・・
【0091】
【表1】
39
121
0001436163000001.jpg
【0092】
表1に示すように、本発明に係る方法により得られた実施例1~4においては、高精製でかつ無臭性の高い1,3-ブタンジオールが得られた。」
との記載がある。
ここで、本件特許明細書等には、訂正事項3によって追加された記載のうち、「(1)精留直後と(2)1か月以上の所定条件で保管保持後とでいずれも評価1以下である特性を示す」との記載はないが、本件特許明細書等の【0077】に、
「本明細書において「
無臭
」とは、少なくとも後述する官能試験(臭気判定方法)に従って測定した人間による臭気判定において精留直後において無臭で透明な高純度液体であることを意味する、特に、好ましくは、精留直後と常温(20°C±10°C)で少なくとも1か月以上製品を褐色瓶(広口瓶・褐色(ソーダ石灰ガラス製)、ポリプロピレンキャップ、ポリエチレン製中蓋付)中で暗室(照度:0.1ルクス(Lx)以下)に保管保持した後の二回評価にて、無臭で透明な高純度液体であることを意味する。」
と記載され、同【0091】の表1には、実施例1~4の臭気特性が、(精留)直後及び1か月後に0又は1であることが記載され、同【0092】に
「表1に示すように、本発明に係る方法により得られた実施例1~4においては、高精製でかつ無臭性の高い1,3-ブタンジオールが得られた。」
と記載されていることから、当業者が、本件特許明細書等には、「(1)精留直後と(2)1か月以上の所定条件で保管保持後とでいずれも評価1以下である特性を示す」ことが記載されていることを認識できるといえる。
したがって、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を直接的又は間接的に引用して記載されているものであって、上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項についてされたものである。
(5)独立特許要件について
本件特許異議申立においては、訂正前の全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5に係る発明について、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
本件訂正後の請求項1~5に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」ということがある。)。
「【請求項1】
1,3-ブタンジオール含有量が90.0質量%超99.5質量%以下、水分含有量が 5質量%以下である、1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液を、蒸留により精製するにおいて、
前記蒸留が多工程とされ、
還流状態下にある第1の蒸留塔に前記粗原液を導入し、前記第1の蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、前記第1の蒸留塔の底部からの缶出物を得る第1蒸留工程と、
第1蒸留工程により得られた缶出物を還流状態下にある第2の蒸留塔に導入し、前記第2の蒸留塔の底部から高沸点成分を除去し、前記第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す第2蒸留工程とを少なくとも有し、
純度99.9質量%以上で、かつ以下に示す臭気判定方法において(1)精留直後と(2)1か月以上の所定条件で保管保持後とでいずれも評価1以下である特性を示す1,3-ブタンジオールの製造方法。
(臭気判定方法)
1,3-ブタンジオール粗原液を基準サンプルとし、評価サンプルを以下のレベルで評価、その相対評価点で点数を付ける。
評価サンプルは、1,3-ブタンジオール粗原料または精製品と水を1:1質量比で混合し、広口ガラス瓶に入れ密封し室温に放置した後、大気中で速やかに臭いを嗅ぎ、比較する方法で行う
評価者は、嗅覚が正常な6名を選定し、各々の評価点を平均化したあと、四捨五入で、臭気レベルを判定する。評価基準は、以下の6段階評価とする。
(評価基準)
0:臭気を感じ取れない、全くわからない(純水を入れた無臭瓶と同じに感じる)
1:やっと感知できる臭気、臭気の種類までは判断できない
2:弱い臭気を感じ取ることができ、どんな臭いかわかる
3:容易に感知できる臭い
4:基準サンプルほどではないが、強い臭気を感じる
5:基準サンプルと同等もしくはそれ以上な強い臭気を感じる
臭気判定は、(1)精留直後と(2)常温(20°C±10°C)で少なくとも1か月以上製品を褐色瓶(広口瓶・褐色(ソーダ石灰ガラス製)、ポリプロピレンキャップ、ポリエチレン製中蓋付)中に入れ、空間部は窒素で満たし酸素が無い状況で密閉し、暗室(照度:0.1ルクス(Lx)以下)に保管保持した後の二回評価する。
【請求項2】
上記粗原液を、吸着剤に適用する吸着剤前処理工程をさらに有するものである請求項1に記載の1,3-ブタンジオールの製造方法。
【請求項3】
上記蒸留工程後において、前記精留分を、吸着剤に適用する吸着剤後処理工程をさらに有するものである請求項2に記載の1,3-ブタンジオールの製造方法。
【請求項4】
前記吸着剤が平均細孔径5nm以下である吸着剤である請求項2または3に記載の1,3-ブタンジオールの製造方法。
【請求項5】
前記吸着剤が活性炭である請求項2~4のいずれか1つに記載の1,3-ブタンジオールの製造方法。」
申立人が、本件訂正前(特許登録時)の特許請求の範囲の請求項1~5に係る特許に対して申し立てた特許異議の申立ての理由は、以下の申立理由1及び2であって、申立人は、特許異議申立書に添付して、証拠方法として、以下に示す甲第1~4号証(枝番を含む。以下、「甲1」等ということがある。)を提出した。
また、申立人は、令和7年6月26日付けの意見書に添付して、以下に示す参考文献1-1、1-2及び2(以下、「参1-1」等ということがある。)を、令和7年12月12日付けの意見書に添付して、以下に示す参考文献4及び5(以下、「参4」等ということがある。)を提出した。
[申立理由1](新規性)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、その出願前に公開された甲第1-1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない(同法第113条第2号)。
[申立理由2](進歩性)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、 その出願前に公開された甲第1-1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、 特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(同法第113条第2号)。
甲1-1:国際公開第2018/183628号
甲1-2:特表2020-512351号公報(甲1-1の翻訳文として参照するための文献。)
甲2:藤田重文、東畑平一郎編、化学工学III、株式会社東京化学同人、1964年7月1日、第1版第2刷、14頁(還流についての技術常識を示すための文献。)
甲3:相良紘著、そこが知りたい化学の話「分離技術」、日刊工業新聞社、2008年6月28日、初版第1刷、60~61頁(還流がない場合に蒸気組成が変化しないことを示す技術常識を示すための文献。)
甲4:生活衛生、(1993)、37、pp.163~172(ヤシ殻活性炭についての技術常識を示すための文献。)
参1-1:米国特許出願公開第2011/0282107号明細書
参1-2:参考文献1-1の機械翻訳文
参2:特開昭61-197534号公報
参4:特許第4559625号公報
参5:国際公開第01/56963号
本件訂正前(特許登録時)の請求項1~5に係る特許に対して令和7年3月10日付け取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)[取消理由1](明確性)
本件特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
よって、本件特許請求の範囲の請求項1~5に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
具体的な理由の概要は次のとおりである。
「【請求項1】
(1)1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む
粗原液
を、蒸留により精製するにおいて、
(2)還流状態下にある蒸留塔に
前記
粗原液を導入し、前記蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、一方、前記蒸留塔の底部からの高沸点成分を除去し、前記蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す蒸留工程とを少なくとも有し、
(3)
前記
蒸留工程が多工程とされ、
(4)還流状態下にある蒸留塔に
前記
粗原液を導入し、蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、
前記
第1の蒸留塔の底部からの缶出物を得る第1蒸留工程と、
(5)第1蒸留工程により得られた
缶出物
を還流状態下にある第2の蒸留塔に導入し、蒸留塔の底部から高沸点成分を除去し、前記第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す第2蒸留工程とを
(6)少なくとも有する1,3-ブタンジオールの製造方法。」
上記請求項1の記載は、本件特許明細書の【0018】に記載の蒸留工程が多工程で行われる実施態様を表そうとするものと考えられるが、(2)及び(3)の蒸留工程の記載と、(4)及び(5)の蒸留工程の記載が整合しないため、結果として、請求項1の記載は、明確でない。
令和7年5月12日付けの訂正請求書によって訂正された請求項1~5に係る特許に対して令和7年8月26日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由は、上記1に示した申立理由2と同じ理由であり、以下の文献を提示した。
甲1:国際公開第2018/183628号(申立人が提示した甲第1-1号証)
甲4:生活衛生、(1993)、37、pp.163~172(周知技術を示す文献:申立人が提示した甲4)
参1:米国特許出願公開第2011/0282107号明細書(周知技術を示す文献:申立人が提示した参考文献1-1)
参2:特開昭61-197534号公報(周知技術を示す文献:申立人が提示した参考文献2)
参3:特表2006-504789号公報(周知技術を示す文献:当審合議体が提示する文献)
当審合議体は、本件発明1~5に係る特許は、特許異議申立理由及び令和7年8月26日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由(申立理由2(進歩性)と同じ。)によって取り消すことはできないと判断する。
理由は次のとおりである。
(1)引用文献
甲1:国際公開第2018/183628号(申立人が提示した甲第1-1号証)
甲4:生活衛生、(1993)、37、pp.163~172(周知技術を示す文献:申立人が提示した甲4)
参1:米国特許出願公開第2011/0282107号明細書(周知技術を示す文献:申立人が提示した参考文献1-1)
参2:特開昭61-197534号公報(周知技術を示す文献:申立人が提示した参考文献2)
参3:特表2006-504789号公報(周知技術を示す文献:当審合議体が提示する文献)
(2)引用文献の記載事項
ア 甲1
甲1には以下の記載がある(翻訳文で示す。)。
甲1a)「背景技術
[0003] 本開示は、生合成方法によって生成される組成物、ならびにそのような組成物を生成するための方法およびシステムに全般的に関する。
[0004] 1,3-BG(BG、1,3-ブタンジオール、1,3-BDO、13-BDO、1,3-ブチレングリコール、またはブチレングリコールと称されることもある)は四炭素ジオールであり、従来は化学プロセスにおいて石油由来アセチレンからその水和を介して生成されている(「petro-BG」)。次いで、得られたアセトアルデヒドを3-ヒドロキシブチルアルデヒドに変換し、続いてこれを還元して1,3-BGを形成する。1,3-BGは、例えば、食品香味剤のための有機溶媒として、ならびにポリウレタンおよびポリエステル樹脂を生成するための試薬として、多くの産業プロセスで使用されている。1,3-BGは、一般に低毒性で低刺激な性質のため、化粧料産業におけるさらなる使用も見出される。本明細書では、1,3-BGは、無臭の化粧料グレード成分として特に有用である。
[0005] 化粧料グレードのpetro-BG、ならびに化粧料グレードのpetro-BGを生成および保管するための方法が、化粧料産業で利用可能であるが、化粧料および食品の用途のための生物由来1,3-BG(「bio-BG」)、ならびにそのようなbio-BGを生成するための方法およびシステムが依然として必要とされている。」
甲1b)「
詳細な説明
[0072] 商業的には、1,3-BGは、アセトアルデヒド(石油またはエタノールから誘導される)を3-ヒドロキシブチルアルデヒドへ化学的に変換し、その後還元し、石油由来1,3-BG(「petro-BG」)を形成することによって典型的には生成される。この化学的に生成されるpetro-BGは、1,3-BGのR-およびS-鏡像異性体の等モル比のラセミ混合物を通常は形成する。1,3-BGラセミ体を使用して、petro-BGから各キラル形態を単離するための方法は開示されている。しかしこのような単離方法は、非常に非効率的である(例えばラセミ体の酵素変換)、または産業スケールの生成にスケールアップするのが非常に高価かつ困難である(例えばキラルクロマトグラフィー)ことが概して立証されている。
[0073] 本出願人は、化粧料および食品産業において使用するために高純度の生物由来1,3-BG(「bio-BG」)が依然として必要とされていることを認識している。特に、本出願人は、R-鏡像異性体が、例えばヒトおよび動物(例えば、家畜または飼育動物)における用途で全般的にS-鏡像異性体よりも生理学的に有効であると考えられる場合に、食品、栄養補助食品、医薬品、および他の用途のために1,3-BGのR-鏡像異性体が必要とされることを確認した。特に、本出願人は、例えば、典型的な市販のpetro-BGラセミ調製物と比較して、改善された純度プロファイルを有する1,3-BGのR-鏡像異性体の必要性を確認した。1,3-BGのR-鏡像異性体を経済的に有効に生成するのが可能な方法は、化粧料および他の産業、例えば食品または医薬品産業における用途のために1,3-BGを工業規模で生成するために必要とする。
[0074] 本開示は、petro-BGおよびbio-BGがさまざまな臭気特性を有し、その上petro-BGおよびbio-BGのさまざまな臭気が、petro-BGおよびbio-BG調製物に通常存在するさまざまな不純物に起因するという認識にさらに一部基づく。
[0075] 本開示は、化学的に高純度(例えば総純度)な生物由来1,3-BGおよび生物由来1,3-BGの富化または高キラル純度R-鏡像異性体は、ラセミ1,3-BG混合物またはpetro-BG(例えば、化粧料グレードまたは産業グレード)と比較して、全般的に異なるまたは好ましい臭気特性または改善された生理学的性質(例えば、in vitroアッセイまたはin vivoにおいて観察可能)を有する場合があるという認識にさらに一部基づく。
[0076] 精製されたbio-BG生成物ならびにそのような精製されたbio-BG生成物を生成するための方法およびシステムが本明細書において提供される。
[0077] 一態様では、生物由来1,3-ブチレングリコール(1,3-BG)(「bio-BG」)が提供される。一部の実施形態では、生物由来1,3-BGは、石油またはアセトアルデヒドの加工から誘導される1,3-BGなどの化学的に誘導された1,3-BGと異なる臭気を有する。一部の実施形態では、生物由来1,3-BGは、産業グレードbio-BGにおいて典型的に認められる特徴的な異臭を有さない。一部の実施形態では、生物由来1,3-BGは、例えば、訓練を受けた臭気パネリストによる官能試験で判定されるように、petro-BGと比較して改善された臭気を有する。一部の実施形態では、bio-BGの改善された臭気は、例えば、訓練を受けた臭気パネリストによって「甘い」として特徴付けられる。一部の実施形態では、生物由来1,3-BGは化粧料グレードである。一部の実施形態では、化粧料グレード生物由来1,3-BGは、petro-BGと比較して改善された臭気特徴(例えば「甘い」臭気)を有する。別の態様では、生物由来1,3-BGを精製するためのシステムが本明細書において提供される。別の態様では、生物由来1,3-BGを精製するための方法が本明細書において提供される。
・・・
[0083] 本明細書において使用する「粗製生物由来1,3-BG混合物」という用語は、約50%から90%の生物由来1,3-BGおよび50%から1%の水と、発酵プロセスから誘導される1つまたは複数の他の不純物である、またはこれらを含む、生物由来1,3-BG(1,3-BDO)の混合物を意味する。一部の実施形態では、粗製生物由来1,3-BG混合物は、約75%から85%またはそれより多い1,3-BGと、1%から25%の水と、発酵プロセスから誘導される1つまたは複数の他の不純物である。一部の実施形態では、粗製生物由来1,3-BG混合物は、約80%から85%の1,3-BGと、1%から20%の水と、発酵プロセスから誘導される1つまたは複数の他の不純物である。粗製生物由来1,3-BG混合物は、部分的に精製された生物由来1,3-BG、例えば1つまたは複数の方法を使用して部分的に精製されている生物由来1,3-BGを含む混合物とすることができる、または含むことができる。」
甲1c)「[0135] 好ましくは、本明細書におけるすべての実施形態では、bio-BGに存在する軽質物および重質物不純物は、産業または化粧料グレードのpetro-BG中のものよりも、低い総レベルである、あるいはそれぞれが低レベルである。」
甲1d)「[0162] 別の態様では、生物由来1,3-BGを精製するための方法が本明細書において提供される。
[0163] 一部の実施形態では、生物由来1,3-BGを精製するための方法は、非天然発生的な微生物を培養して発酵ブロス中に生物由来1,3-BGを生成し、発酵ブロスに以下の手順のうちの1つまたは複数を行うステップを含み得る:マイクロ濾過、限外濾過、ナノ濾過、一次イオン交換、蒸発、洗練イオン交換、カラム蒸留、水素添加、活性炭濾過または吸着、塩基添加、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4
)処理、およびワイプ薄膜蒸発(wiped-film evaporation)。
[0164] 一部の実施形態では、生物由来1,3-BGを精製するための方法は、(i)マイクロ濾過、続いて(ii)ナノ濾過、続いて(iii)一次イオン交換、続いて(iv)蒸発、続いて(v)洗練イオン交換、続いて(vi)蒸留を含む。一部の実施形態では、塩基添加は、イオン交換後および蒸留ステップ前または蒸留ステップ中のステップとして行う。一部の実施形態では、蒸留は活性炭処理を含む。一部の実施形態では、活性炭処理は蒸留プロセスの間に行う。一部の実施形態では、炭素処理は蒸留プロセスの最後に行う。一部の実施形態では、蒸留の後に(v)水素化ホウ素ナトリウム処理を行う。
[0165] 一部の実施形態では、生物由来1,3-BGを精製するための方法は、粗製生物由来1,3-BG混合物または部分的に精製された生物由来1,3-BGを蒸留するステップを含み得る。蒸留は、本明細書において提供される蒸留システムを用いて行って、精製された生物由来1,3-BG生成物を生成することができる。精製された生物由来1,3-BG生成物は、重量/重量ベースで90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%または99.9%より多い生物由来1,3-BG(1,3-BDO)とすることができるまたはそれを含む。蒸留システムは、1,3-BGよりも高いまたは低い沸点を有する材料の流を生成することによって1,3-BGよりも高いまたは低い沸点を有する材料を除去するために使用することができる1つまたは複数の蒸留カラムを含み得るまたはそれから構成される。蒸留カラムとしては、例えば、不規則充填物、規則充填物、プレート、不規則および規則充填物、不規則充填物およびプレート、または規則充填物およびプレートがあり得る、または含み得る。当技術分野において公知であるように、多くのタイプおよび機器構成(configurations)の蒸留カラムが利用可能である。精製された生物由来1,3-BG(1,3-BDO)生成物中の生物由来1,3-BGの回収率は、精製された生物由来1,3-BG生成物中の生物由来1,3-BG(1,3-BDO)の量を、精製された粗製生物由来1,3-BG混合物中の生物由来1,3-BGまたは標的化合物の量で除することによって百分率として算出することができる。
・・・
[0168] 精製されることになる混合物は、蒸留カラムへ供給することができ、操作条件によって、高沸点または低沸点材料を混合物から除去することができる。例えば、低沸点材料を除去する場合、低沸点材料を沸騰させ、蒸留カラムの頂部から除去し、低沸点材料が除去された生成物含有流を蒸留カラムの底部から排出する。この底部流を次の蒸留カラムへ供給することができ、ここで高沸点材料を生成物含有流から除去する。次の蒸留カラムでは、生成物含有流を沸騰させ、蒸留カラムの頂部から排出し、高沸点材料を蒸留カラムの底部から除去し、そうしてより純粋な生成物含有流が得られる。別の例では、高沸点材料と低沸点材料の両方を生成物含有流から除去することができ、この場合、低沸点材料を沸騰させ、カラムの頂部を通して除去し、高沸点材料はカラムの底部から除去され、生成物はサイド抜出し(side-draw)を通して排出され、それによって材料は、蒸留カラムの頂部と底部との間の中間位置でカラムから抜き出される。
・・・
[0171] 一部の実施形態では、方法は、粗製生物由来1,3-BG混合物または部分的に精製された生物由来1,3-BGに洗練に供して、(a)の第1の生物由来1,3-BG含有生成物流を生成するステップを含む。一部の実施形態では、洗練には、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、または活性炭との接触が伴う。
[0172] 洗練は、粗製生物由来1,3-BG混合物、または部分的に精製された生物由来1,3-BG中のすべての残留塩および/または他の不純物を減少させるための、または除去するための手順である。洗練は、粗製生物由来1,3-BG(1,3-BDO)、または部分的に精製された生物由来1,3-BGを、粗製生物由来1,3-BG混合物、または部分的に精製された生物由来1,3-BG中の不純物と反応することができるまたはそれを吸着することができる1つまたはいくつかの材料に接触させるステップを含み得る。洗練で使用される材料は、イオン交換樹脂、活性炭、または例えば、DOWEX(商標)22、DOWEX(商標)88、OPTIPORE(商標)L493、AMBERLITE(商標)XAD761、またはAMBERLITE(商標)FPX66、またはDOWEX(商標)22およびDOWEX(商標)88の混合物などのこれらの樹脂の混合物などの吸着樹脂を含み得る。
[0173] 一部の実施形態では、洗練は洗練イオン交換である、またはそれを含む。洗練イオン交換を使用して、すべての残留塩、色素体(color bodies)および色素前駆体(color precursors)を除去してから、さらに精製することができる。洗練イオン交換は、アニオン交換、カチオン交換、カチオン交換とアニオン交換の両方を含むことができ、またはカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の両方を含むカチオン-アニオン混合型交換とすることができる、もしくはこれらを含み得る。ある特定の実施形態では、洗練イオン交換は、アニオン交換、続いてカチオン交換、カチオン交換、続いてアニオン交換、もしくはカチオン-アニオン混合型交換である、またはこれらを含む。ある特定の実施形態では、洗練イオン交換はアニオン交換である、またはそれを含む。洗練イオン交換は、強カチオンと強アニオン交換の両方である、もしくはこれらを含む、または他の洗練カチオン交換または洗練アニオン交換以外の強アニオン交換である、もしくはそれを含む。一部の実施形態では、洗練イオン交換は、蒸発などの水分除去ステップの後に、かつその後の蒸留の前に行う。
[0174] 一部の実施形態では、方法は、粗製生物由来1,3-BG混合物または部分的に精製された生物由来1,3-BGを脱水カラム蒸留手順に供して、生物由来1,3-BGよりも低い沸点を有する材料を粗製生物由来1,3-BG混合物または部分的に精製された生物由来1,3-BGから除去して、(a)の第1の生物由来1,3-BG含有生成物流を生成するステップを含む。
[0175] 一部の実施形態では、方法は、粗製生物由来1,3-BG混合物または部分的に精製された生物由来1,3-BGを洗練に供して、得られた粗製生物由来1,3-BG混合物または部分的に精製された生物由来1,3-BGを脱水カラム蒸留手順に供して、生物由来1,3-BGよりも低い沸点を有する材料を、得られた粗製生物由来1,3-BG混合物から減少させまたは除去して、(a)の第1の生物由来1,3-BG含有生成物流を生成するステップを含む。一部の実施形態では、洗練には、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、または活性炭との接触が伴う。
[0176] 蒸留システムまたは方法における還流割合は、沸騰割合と取出し割合との比である。言い換えると、還流割合は、蒸留カラムへ戻る還流物の量とレシーバー中に収集される還流物(蒸留物)の量との比である。例えば、2:1の還流割合は、蒸留カラムへ戻る還流物が、蒸留物として収集されるものの2倍(例えば、体積または重量ベースで)であることを示す。
[0177] 一部の実施形態では、本明細書において提供される方法またはシステムにおける脱水カラム、または第1の、第2のもしくは第3の蒸留カラムの還流比は、1:1もしくはそれより多い、2:1もしくはそれより多い、3:1もしくはそれより多い、4:1もしくはそれより多い、5:1もしくはそれより多い、6:1もしくはそれより多い、7:1もしくはそれより多い、8:1もしくはそれより多い、9:1もしくはそれより多い、または10:1もしくはそれより多い。
[0178] 一部の実施形態では、本明細書において提供される方法またはシステムにおける脱水カラム、または第1の、第2のもしくは第3の蒸留カラムの還流比は、1:1もしくはそれ未満、1:2もしくはそれ未満、1:3もしくはそれ未満、1:4もしくはそれ未満、1:5もしくはそれ未満、1:6もしくはそれ未満、1:7もしくはそれ未満、1:8もしくはそれ未満、1:9もしくはそれ未満、または1:10もしくはそれ未満である。
・・・
[0190] 一部の実施形態では、方法は、生物由来1,3-BG含有生成物流を活性炭に接触させるステップを含む。一部の実施形態では、活性炭は化学的活性炭である。本明細書において使用する「化学的活性炭」は、空気または他の気体を用いた酸化とは対照的に、化学的処理によって活性化されている活性炭を指す。一部の実施形態では、化学的活性炭は、蒸気を用いた第2の活性化が行われ、化学的活性化で生じることのない物理的性質が与えられる。使用することができる化学的活性化剤としては、リン酸;硫酸;塩化亜鉛;硫化カリウム;チオシアン酸カリウム;アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、硫化物および硫酸塩;ならびにアルカリ土類の炭酸塩、塩化物、硫酸塩、およびリン酸塩がある。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法およびシステムにおいて使用される化学的活性炭は、リン酸で活性化された木質系(おがくず)活性炭である。例示的な化学的活性炭は市販の、例えば、MeadWestvaco Corp.(Richmond、VA)Nuchar(登録商標)WV-Bグレード活性炭材料である。
[0191] 活性炭は、例えば、微粉化または顆粒状形態とすることができる。一部の実施形態では、活性炭は、石炭、木質、またはヤシ殻系である。一部の実施形態では、活性炭は蒸気賦活性である。一部の実施形態では、活性炭は、酸で洗浄される。一部の実施形態では、活性炭としては、Cabot Darco S-51A M-1967(Darco;Cabot Corp.、Boston、MA)、Calgon FILTRASORB 300(FS 300;Calgon CarbonCorp.、Moon Township、PA)、またはCalgon CPG-LF(CPG-LF;Calgon Carbon Corp.、Moon Township、PA)があり得る。
[0192] 一部の実施形態では、活性炭で処理された生物由来1,3-BGは、顧客に提供され、かつ/または例えば、蒸留などのさらにその後の精製ステップを行わずに活性炭処理直後に別の組成物中に組み込まれる場合は、さらに精製することなく「消費される」。」
甲1e)「[0250] 本明細書において提供される蒸留システムの例を図15Aに示す。粗製生物由来1,3-BG混合物または部分的に精製された生物由来1,3-BG500は、脱水カラム510へ供給され、ここで軽質物材料512(水などの1,3-BGよりも低い沸点を有する材料)は第1のカラム510の頂部から除去される。生物由来1,3-BG含有生成物流514は、第1のカラムの底部から排出され、第1の蒸留カラム520へ供給される。重質物材料524(1,3-BGよりも高い沸点を有する材料)は、第1の蒸留カラム520の底部から除去され、生物由来1,3BG含有生成物流522が、第1の蒸留カラム520の頂部から排出される。重質物材料524は、ワイプ薄膜エバポレーター(WFE)525へ必要に応じて供給することができ、ここでWFE蒸留物542および重質物材料が生成される。WFE蒸留物542は、第1の蒸留カラム520へ必要に応じて供給される。生物由来1,3-BG含有生成物流522は、第2の蒸留カラム530へ供給される。蒸留カラム530は、軽質物材料532をカラム530の頂部から、かつ第3の生物由来1,3-BG含有生成物流534をカラム530の底部から除去する。第3の生物由来1,3-BG含有生成物流(1,3-BDO含有生成物流)534は、第3の蒸留カラム550へ供給される。精製された生物由来1,3-BG(1,3-BDO)生成物552は、カラム550の頂部から収集され、重質物材料554は、カラム550の底部から排出される。」
甲1f)「実施例1
Bio-BGの実験室スケールでの生成および精製
[0272]
・・・
[0273] その後、生物由来1,3-BGを、(1)マイクロ濾過、(2)ナノ濾過、(3)イオン交換クロマトグラフィー、(4)水の蒸発、および(5)洗練イオン交換の順序を使用して発酵ブロスから精製し、生物由来1,3-BGを含む粗製ミックスを生成した。次いで粗製ミックスを脱水蒸留カラムに供給し、1,3-BG含有生成物流を生成し、それを2Lバッチ蒸留カラムに供給し、生物由来1,3-BG生成物を生成した。バッチ蒸留カラムはランダムに充填された直径1インチ、高さ約2フィートのカラムであり、凝縮器、およびカラムの頂部に直接取り付けられた還流制御装置を有していた。
高還流率でバッチ蒸留すると、高純度の生物由来1,3-BGを生成することができる
[0274] この例は、例えば上述のような実験室規模の蒸留システムを使用したバッチ蒸留プロセスによって、例えば、活性炭素処理、水素添加、塩基添加、またはホウ化水素処理を伴う追加の精製ステップの非存在下でさえ、最高純度のbio-BGを得ることができることを実証する。3:1の還流比での脱水/重質物(DW/HV)蒸留、続いて3:1の還流比での軽質物/1,3-BG(LT/BG)蒸留を伴う蒸留プロセスに関する例示的な結果を表2に示す。高純度の生物由来1,3-BGフラクションが得られ、乾燥ベースで99.9%の純度および50ppm未満の4-ヒドロキシ-2-ブタノンおよび3-ブタナールレベルを有していた。
[0275] 生物由来1,3-BGの純度および臭気において、連続的な蒸留プロセスを使用してさらなる改善を達成することができると考えられる。高度の真空および高還流比を伴う特に連続的な蒸留プロセスがbio-1,3-BGの臭気を減少させるのに有用であると考えられる。理論に束縛されることを望むものではないが、そのような方法の状態下で、4-ヒドロキシ-2-ブタノン(4-OH-2-ブタノン)および3-ヒドロキシ-ブタナール(3-OH-ブタナール)が分解すると、MVKおよびCr-Aldなどの強力な臭気副産物が減少し、または回避される場合があることが考えられる。
87
153
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」
甲1g)「【図15A】
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106
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」
イ 甲4
甲4には以下の記載がある。
甲4a)「
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87
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」(164頁右欄)
甲4b)「
103
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」(165頁)
ウ 参1
参1には以下の記載がある(表を除き、翻訳文で示す。)。
参1a)「[0001] 本発明は、グリセロールの水素化で得られる水素化生成物を蒸留処理して脱臭された1,2-プロパンジオールを製造する方法に関する。
・・・
[0004] ここで使用されるグリセロール含有ストリームには、硫酸、硫化水素、チオアルコール、チオエーテル、二酸化炭素、硫化物、および例えば窒素化合物、例えばアミノ酸などの多くの望ましくない成分も含まれている可能性があります。
実際にはグリセロールの水素化前にこれらの不純物が除去されることが分かっているにもかかわらず、それらの一部はグリセロールの水素化後も 1,2-プロパンジオール中に依然として存在します。 このような不純物により、得られる 1,2-プロパンジオールは、そこから発生する臭気のために、特定の用途には不適切となる可能性がある。 より具体的には、チオール、脂肪酸、エステル、アルデヒド、ケトンなどの不純物が問題となり、その一部は臭気を強くする物質であるため、ppb レベルでも感知されることがあります。
[0005] 本発明の目的は、特に菜種油などの天然原料から得られるグリセロールの水素化によって得られるプロパンジオールの後処理に特に適した、脱臭された1,2-プロパンジオールを調製するための方法を提供することである。」
参1b)「[0006] 蒸留によって不純物を除去するために1,2-プロパンジオールを精製する方法が発見され、汚染されたプロパンジオールは、
[0007] 1.まず、精留部と剥離部とからなる低沸点カラムAに導入され、
[0008] 1.1 低沸点物、特にメタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、水、低沸点臭気物質はカラムの上部から除去され、
[0009] 1.2 1,2-プロパンジオール流は、カラムの底部から除去された不純物を含み、
[0010] 2. 精製蒸留のためにカラムBに導入され、
[0011] 2.1 精製された低臭気の1,2-プロパンジオールが液体サイドドローとしてカラムから排出され、
[0012] 2.2 好ましくは少量の、まだ汚染された臭気を含む1,2-プロパンジオールがカラムBの上部から抜き出され、
[0013] 2.3 エチレングリコールやグリセロールなどの高沸点物質は底部から除去される。」
参1c)「[0014] 好ましい実施形態では、まだ汚染された1,2-プロパンジオールは、当業者に既知の内部構造を備えた低沸点カラムAに導かれる。・・・還流比は好ましくは5未満、より好ましくは1未満である。・・・低沸点物塔Aの上部を介して、好ましくはメタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、水などの低沸点物、ならびに低沸点臭気物質を除去することが可能である。・・・カラムの底部から抜き出された、まだ臭気物質を含んでいる 1,2-プロパンジオール流には、エチレングリコールやグリセロールなどの高沸点成分がまだ含まれている可能性がある。
[0015] 精製蒸留塔Bにおいては、特にエチレングリコールおよびグリセロールが主に底部から除去される。精製された低臭気の 1,2-プロパンジオール生成物流は、好ましくは比較的低いエチレングリコール濃度(特に 2000 ppm 重量未満、より好ましくは 500 ppm 重量未満)で液体サイドドローとしてカラムから排出される。カラムの上部を介して、エチレングリコール濃度が低い可能性のある臭気物質をまだ含む、好ましくは少量の 1,2-プロパンジオールの流れを取り出すことができ、臭気を排出するために、これを全部または一部を低沸点カラム Aに再循環させることができる。
[0016] 好ましい実施形態では、カラム A から取り出された、まだ汚染されたプロパンジオールは、総重量に基づいて少なくとも 90%、好ましくは 97% の 1,2-プロパンジオールからなる混合物である。カラム B から取り出された精製プロパンジオールは、プロパンジオール濃度が少なくとも 99%、好ましくは 99.5%、特に 99.7 重量% であり、臭気を強める物質の最大含有量が 0.01%、特に 0.001 重量% であり、エチレングリコールの最大含有量が 0.2%、好ましくは 0.05 重量% であるのが好ましい。ここで臭気を強く発する物質とは、特にチオール、脂肪酸、エステル、アルデヒド、ケトンを指す。
[0017] この好ましい実施形態では、液体側抜き出し口より上のカラム B の精留セクションには 60 段未満の理論段があり、より好ましくは 40 段未満の理論段がある。・・・精製蒸留塔Bの供給原料を基準とした塔Bの上部における還流比は、好ましくは10未満、より好ましくは6未満である。
・・・
[0020] 図1は本発明の方法に有利なカラム配置の概略構造を示す。汚染されたプロパンジオールは、供給ライン1.0を介して、塔頂AKと塔底ASを有する低沸点物塔Aに供給される。低沸点は塔頂AKからライン1.1を介して抜き出すことができる。また、汚染されたままのプロパンジオールは、出口1.2を介して塔底ASから抜き出され、供給BFを介して塔Bに導入される。塔Bには塔頂BKがあり、そこから汚染されたままのプロパンジオールがライン2.1を介して抜き出され、ライン3を介して汚染されたプロパンジオール流1.0に再導入することができる。
[0021] 高沸点物はライン 2.3 を介してカラム底部 BS から抜き出すことができ、精製されたプロパンジオールはサイド ドロー BSA (ライン 2.2) を介してカラム B から排出される。」
参1d)「実施例
[0033] 汚染されたプロパンジオールの蒸留は、図1に示したカラム配置で行われた。使用した低沸点カラム A は、精留部の内径が 50 mm、剥離部の内径が 43mm の実験室用カラムであった。使用された内部部品は、水性精留部での分離タスクを達成するための 10 個のバブルキャップ トレイと、剥離部での Montz A3750 構造化パッキングであった。剥離部の充填高さは0.64mであった。
[0034] 塔底の加熱は薄層蒸発器で行われ、上部の凝縮は冷却水によって行われた。オフガス(温度約25°C(上部コンデンサーで)の高温は、ドライアイスで冷却されたコールドトラップを通して導かれた。カラムはトレース加熱されており、底部温度 153°C、上部圧力 300 mbar abs で動作した。
[0035] 精製蒸留は内径64mmのカラムBで行われた。流れは底部から計算して1.64mの充填高さで添加された。充填高さ 4.55m で、純粋な 1,2-プロパンジオール製品が液体側流として取り出された。
・・・
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」
参1e)「
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」(図1)
エ 参2
参2には以下の記載がある。
参2a)「水素添加反応によつて粗1,4-BG(当審注:1,4-ブタンジオールを意味する。)中のアルデヒド、アセタール類は、1,4-BGと容易に分離できる化合物に変換される。即ち、BGTF、BDTF及びBGDTF(当審注:順に、2-(4’-ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン、2-(4’-オキソブトキシ)テトラヒドロフラン及び1,4-ジ-(2’-テトラヒドロフロキシ)ブタンを意味する。)は、水添によつてTHF、1,4-BG、ブタノール、ジテトラメチレングリコール等に変換される。
該反応生成物は、常圧に保持された気液分離器に移送され、気相排ガスを分離後、液相部は軽沸分離塔である第1蒸留塔に供給され、水、THF、ブタノールを含有する軽沸物を留去する。第1蒸留塔は、理論段数3~10、圧力100~760Torr、還流比0.5~2.0で操作される。第1蒸留塔から缶出される1,4-BGを生成分とする液相部は、更に製品塔である第2蒸留塔に供給され、塔頂からは、若干の軽沸物を含む1,4-BGが抜き出され、塔底からは高沸物を含む1,4-BGを抜き出す。塔側からは目的とする精製された高純度1,4-BGが取得される。・・・。第2蒸留塔は、理論段数15~30、圧力20~100Torr、還流比0.1~1.0で操作される。・・・。
〔実施例〕
・・・
実施例1
BGTF2.05%、BDTF、BGDTF及び高沸物を含む不純物0.3%を含有し、カルボニル価6.2mg・KOH/g、純度97.55%の粗1,4-BG1874部/hrを0.5部/hrの水素と共に水添反応器へ供給した。・・・気液分離後の反応液を1874部/hrで軽沸分離塔である第1蒸留塔に供給し軽沸物を分離した。軽沸分離塔は段数3段で還留比1、圧力150torr、塔底温度180°Cで運転した。塔頂からは水、THF、ブタノールの混合物を96部/hrで留出させ、塔底からは高沸物を含む1,4-BGを177g部/hrで缶出させ缶出液は製品塔である第2蒸留塔へ供給した。製品塔は段数20段で還留比0.6、圧力30torr、塔底温度150°Cで運転し塔頂からは軽沸物を含む1,4-BGを55部/hrで流出させ、塔底からは高沸物を含む1,4-BGを40部/hrで抜出し、塔側より製品1,4-BG1683部/hrを得た。製品1,4-BGのBGTF含有量は0.18%、BDTF、BGDTF及び高沸物を含む不純物含有量は0.05%、カルボニル価0.4mg・KOH/gで1,4-BG純度は99.7%であった。」(4頁右上欄3行~5頁左上欄7行)
オ 参3
参3には以下の記載がある。
参3a)「【請求項1】
a)3-ヒドロキシプロパナールの水溶液を形成するステップと、
b)3-ヒドロキシプロパナールを水素化して、1,3-プロパンジオール、水、MW132環状アセタール、および/またはMW176環状アセタールを含む粗1,3-プロパンジオール混合物を形成するステップと、
c)前記粗1,3-プロパンジオール混合物を蒸留(乾燥)して、水を除去し、1,3-プロパンジオール、MW132環状アセタール、および/またはMW176環状アセタールを含む第2粗1,3-プロパンジオール混合物(第1蒸留ボトム流)を形成するステップと、
d)MW132環状アセタールおよび/またはMW176環状アセタールを含む流を、酸型カチオン交換樹脂または酸性ゼオライトまたは可溶性酸と接触させるステップと、
e)MW132環状アセタールおよび/またはMW176環状アセタールを、1,3-プロパンジオールから除去するステップとを含む、1,3-プロパンジオールを生成する方法。
【請求項2】
3-ヒドロキシプロパナールの水溶液が形成され、3-ヒドロキシプロパナールが水素化されて、1,3-プロパンジオール、水、MW176環状アセタール、高揮発性および低揮発性材料を含む粗1,3-プロパンジオール混合物が形成され、粗1,3-プロパンジオール混合物が乾燥されて、水を含む第1オーバーヘッド流と、1,3-プロパンジオール、MW176環状アセタール、高揮発性および低揮発性材料を含む第1蒸留ボトム流とが生成され、第1蒸留ボトム流が蒸留されて、高揮発性材料を含む第2オーバーヘッド流と、1,3-プロパンジオールおよびMW176アセタールを含む中間流と、1,3-プロパンジオールおよび低揮発性材料を含む第2蒸留ボトム流とが生成され、粗1,3-プロパンジオール混合物、第1蒸留ボトム流、または中間流のうち少なくとも1つが、乾燥前に、酸性ゼオライトまたは酸型カチオン交換樹脂または可溶性酸と接触されて、MW176環状アセタールが、蒸留によって1,3-プロパンジオールから簡単に分離され得るより揮発性の高い材料に転換される請求項1に記載の1,3-プロパンジオールを生成する方法。」
参3b)「【0029】
MW176アセタール
本発明の第1実施形態を説明する際に役立つ図1の例示的な簡略化した蒸留スキームに示すように、MW176アセタールを含むPDO水溶液が、乾燥用蒸留塔2に流入する。水と一部の高揮発性材料は、オーバーヘッド流3として除去され、蒸留ボトム流のMW176アセタールを含む乾燥したPDOは、蒸留塔5に流入する。より多くの高揮発性材料が分離されて、オーバーヘッド流6として出て行き、蒸留ボトム流8は、低揮発性材料と一部のPDO、ならびに微量のMW176アセタールを含んでいる。回収可能なPDOは、中間流中から出る。容器1、4、および7は、(図に示した系においては、少なくとも1つ必要であるが)オプションの酸処理容器である。酸触媒処理は、乾燥前に容器1において行うか、乾燥した後、蒸留前に容器4において行うか、または蒸留後に容器7において行うことができる。最後の実施形態が実施されるとき、PDOからより揮発性の高いMW176アセタール反応生成物を分離するために追加の蒸留が必要とされる。」
参3c)「【0056】
(実施例132-3)
その後の再蒸留を伴う酸性樹脂乾燥ストリッピング 有色体前駆物質(color body precursor)試験時に目で見える淡黄色を呈する、2回蒸留されたPDO生成物試料を、窒素ストリッピングしながら、5重量%の乾燥A15強酸型カチオン交換樹脂と、105°Cで4時間接触させた。MW132アセタールはほぼ除去されたが、1.7重量%のジPDOが形成され(表7)、ガスクロマトグラフィーによる純度は97.9重量%であった。処理した試料は、2フィート(0.6メートル)の小型同心円管塔中、塔底温度121~123°C、9mmHg(1.3kPa)で再蒸留された。蒸留によって、ジPDOがPDO留出物から容易に分離されることが明らかにされた。蒸留カットは、MW132アセタールがかなり削減され、ガスクロマトグラフィーによる純度は99.9%に近づいた。上記の色試験では、この時点で、わずかに黄色を帯びただけであり、これは、有色体前駆物質の量が減少したことを示唆している。
【0057】
【表7】
52
93
0001436163000008.jpg
」
参3d)「【0058】
3重量%のMW132アセタールを含む、純度のより低い試料は、有色体前駆物質の分析を行ったとき顕著に呈色したが、窒素ストリッピングしながら、5重量%の強酸性樹脂(A15)で同様に処理された。4時間後に得られたPDOは、MW132アセタールを含んでいなかったが、2.9重量%のジPDOを含んでいた。2フィート(0.6メートル)の同心円管塔中、塔底温度122~129°C、8mmHg(1.3kPa)で再蒸留すると、表8に示す蒸留カットが得られた。さらに、その後にこの不純物を含まない蒸留オーバーヘッド生成物が生成され得るように、酸性樹脂ストリッピングによって、MW132アセタールのかなりの部分が除去された。樹脂処理中に形成したジPDOは、蒸留によって、容易に分離された。最終蒸留カットの純度は、PDOより揮発性の高いことが知られているMW102アセタール(2-メチル-1,3-ジオキサン)の形成が蒸留中に進行しなければ、極めて高くなったはずである。さらにもう1回蒸留を行えば、生成物からこの不純物を除去することができるはずである。
【0059】
【表8】
75
109
0001436163000009.jpg
」
参3e)「
80
78
0001436163000010.jpg
」(図1)
(3)引用発明(甲1に記載された発明)
甲1には、精製された生物由来1,3-ブチレングリコール(以下「bio-BG」という。)及びそれを生成するための方法について記載されている(摘記甲1a~甲1g)。
甲1に、
「精製されることになる混合物は、蒸留カラムへ供給することができ、操作条件によって、高沸点または低沸点材料を混合物から除去することができる。例えば、低沸点材料を除去する場合、低沸点材料を沸騰させ、蒸留カラムの頂部から除去し、低沸点材料が除去された生成物含有流を蒸留カラムの底部から排出する。この底部流を次の蒸留カラムへ供給することができ、ここで高沸点材料を生成物含有流から除去する。次の蒸留カラムでは、生成物含有流を沸騰させ、蒸留カラムの頂部から排出し、高沸点材料を蒸留カラムの底部から除去し、そうしてより純粋な生成物含有流が得られる。」
と記載されているところ(摘記甲1d、[0168])、当該記載が、粗製bio-BGから精製されたbio-BGを製造する方法に関するものであり、「低沸点材料」及び「高沸点材料」が処理対象の粗製bio-BGに含まれる物質であり、「純粋な生成物」が「精製されたbio-BG」に相当することは明らかである。
また、それらを甲1の[0250](摘記甲1e)及び図15A(摘記甲1g)の記載に対応させると、
「精製されることになる混合物」及び「粗製bio-BG」は、「生物由来1,3-BG500」に、上記のうち最初の「蒸溜カラム」は「脱水カラム510」に、
「低沸点材料」は「軽質物材料512」に、
「低沸点材料が除去された生成物含有流」は「生物由来1,3-BG含有生成物流514」に、
「次の蒸留カラム」は「第1の蒸留カラム520」に、
「高沸点材料」は「重質物材料524」に、
「より純粋な生成物含有流」は「生物由来1,3BG含有生成物流522」に
それぞれ対応させることができる。
したがって、甲1には、次に示す発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「粗製bio-BGから精製されたbio-BGを製造する方法であって、粗製bio-BGから低沸点材料を除去するために、低沸点材料を沸騰させて蒸留カラムの頂部から除去し、低沸点材料が除去された生成物含有流を蒸留カラムの底部から排出し、底部流を次の蒸留カラムへ供給し、次の蒸留カラムにおいて、生成物含有流を沸騰させて蒸留カラムの頂部から排出し、高沸点材料を蒸留カラムの底部から除去することにより、精製されたbio-BGの含有流を得る方法。」
(4)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「粗製bio-BG」は、「約50%から90%の生物由来1,3-BGおよび50%から1%の水と、発酵プロセスから誘導される1つまたは複数の他の不純物である、またはこれらを含む」ものであり(摘記甲1b、[0083])、液体であることは明らかであるから、本件発明1の「1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液」に相当する。
甲1発明は、蒸留カラムを用いて精製する方法であるから、本件発明1の「蒸留により精製する」ことに相当する。
甲1発明は、2つの蒸留カラムを用いて精製する方法であるから、本件発明1の「蒸留が多工程とされ」ることに相当する。
甲1発明において、「粗製bio-BGから低沸点材料を除去するために、低沸点材料を沸騰させて蒸留カラムの頂部から除去し、低沸点材料が除去された生成物含有流を蒸留カラムの底部から排出」することは、本件発明1の「第1の蒸留塔に前記粗原液を導入し、前記第1の蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、前記第1の蒸留塔の底部からの缶出物を得る第1蒸留工程」に相当する。
甲1発明において、「底部流を次の蒸留カラムへ供給し、次の蒸留カラムにおいて、生成物含有流を沸騰させて蒸留カラムの頂部から排出し、高沸点材料を蒸留カラムの底部から除去する」処理では、精製されたbio-BGが生成物含有流として蒸留カラムの頂部から排出されていることから、当該処理は、本件発明1と「第1蒸留工程により得られた缶出物を第2の蒸留塔に導入し、前記第2の蒸留塔の底部から高沸点成分を除去する第2蒸留工程」である点で共通する。
甲1発明の「精製されたbio-BGを製造する方法」は、本件発明1の「1,3-ブタンジオールの製造方法」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、
「1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液を、蒸留により精製するにおいて、
前記蒸留が多工程とされ、
第1の蒸留塔に前記粗原液を導入し、前記第1の蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、前記第1の蒸留塔の底部からの缶出物を得る第1蒸留工程と、
第1蒸留工程により得られた缶出物を第2の蒸留塔に導入し、前記第2の蒸留塔の底部から高沸点成分を除去する第2蒸留工程とを少なくとも有する1,3-ブタンジオールの製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
第1の蒸留工程及び第2の蒸留工程について、本件発明1は、「還流状態下にある」と特定されているのに対し、甲1発明は、「還流状態下にある」とはされていない点。
<相違点2>
第2の蒸留工程について、本件発明1は、「第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す」と特定されているのに対し、甲1発明は、「生成物含有流を沸騰させて蒸留カラムの頂部から排出」する点。
<相違点3>
1,3-ブタンジオールを主成分として少なくとも含む粗原液について、本件発明1は、「1,3-ブタンジオール含有量が90.0質量%超99.5質量%以下、水分含有量が 5質量%以下である」と特定されているのに対し、甲1発明は、1,3-ブタンジオール含有量及び水分含有量が特定されていない点。
<相違点4>
目的物である1,3-ブタンジオールについて、本件発明1は、
「純度99.9質量%以上で、かつ以下に示す臭気判定方法において(1)精留直後と(2)1か月以上の所定条件で保管保持後とでいずれも評価1以下である特性を示す」及び
「 (臭気判定方法)
1,3-ブタンジオール粗原液を基準サンプルとし、評価サンプルを以下のレベルで評価、その相対評価点で点数を付ける。
評価サンプルは、1,3-ブタンジオール粗原料または精製品と水を1:1質量比で混合し、広口ガラス瓶に入れ密封し室温に放置した後、大気中で速やかに臭いを嗅ぎ、比較する方法で行う
評価者は、嗅覚が正常な6名を選定し、各々の評価点を平均化したあと、四捨五入で、臭気レベルを判定する。評価基準は、以下の6段階評価とする。
(評価基準)
0:臭気を感じ取れない、全くわからない(純水を入れた無臭瓶と同じに感じる)
1:やっと感知できる臭気、臭気の種類までは判断できない
2:弱い臭気を感じ取ることができ、どんな臭いかわかる
3:容易に感知できる臭い
4:基準サンプルほどではないが、強い臭気を感じる
5:基準サンプルと同等もしくはそれ以上な強い臭気を感じる
臭気判定は、(1)精留直後と(2)常温(20°C±10°C)で少なくとも1か月以上製品を褐色瓶(広口瓶・褐色(ソーダ石灰ガラス製)、ポリプロピレンキャップ、ポリエチレン製中蓋付)中に入れ、空間部は窒素で満たし酸素が無い状況で密閉し、暗室(照度:0.1ルクス(Lx)以下)に保管保持した後の二回評価する。」
と特定されているのに対し、甲1発明は、純度及び臭気特性が特定されていない点。
(イ)判断
上記各相違点について検討する。
a <相違点1>について
甲1には、蒸留システムまたは方法における還流割合について記載されており(摘記甲1d、[0176]~[0178])、実施例1においても、蒸留カラムが還流制御装置を有していたこと、高還流比(率)でバッチ蒸留すると、高純度のbio-BGを生成することができることが記載されている(摘記甲1e、[0273]~[0275])。
してみると、甲1発明の各蒸留カラムは、還流状態下にある蓋然性が高いから、この点は実質的な相違点ではない。
仮に、甲1発明の各蒸留カラムが還流状態下にあるものではなかったとしても、上記甲1の記載に基づいて、甲1発明の各蒸留カラムを、還流状態下にあるものとすることは当業者が容易になし得た事項である。
b <相違点3>について
甲1には、使用する「粗製生物由来1,3-BG混合物」について、「
約
50%から
90%の生物由来1,3-BGおよび50%から1%の水
と、発酵プロセスから誘導される1つまたは複数の他の不純物である、またはこれらを含む、生物由来1,3-BG(1,3-BDO)の混合物を意味する。」及び「粗製生物由来1,3-BG混合物は、部分的に精製された生物由来1,3-BG、例えば1つまたは複数の方法を使用して部分的に精製されている生物由来1,3-BGを含む混合物とすることができる、または含むことができる。」と記載されている(摘記甲1b、[0083])。
また、甲1には、実施例1として、「生物由来1,3-BGを、(1)マイクロ濾過、(2)ナノ濾過、(3)イオン交換クロマトグラフィー、(4)水の蒸発、および(5)洗練イオン交換の順序を使用して発酵ブロスから精製し、
生物由来1,3-BGを含む粗製ミックスを生成した
。次いで粗製ミックスを脱水蒸留カラムに供給し、1,3-BG含有生成物流を生成し、それを2Lバッチ蒸留カラムに供給し、生物由来1,3-BG生成物を生成した。」と記載され(摘記甲1f、[0273])、表2には、「PIX生成物」(なお、甲1の「(5)洗練イオン交換」は甲1-1において「(5)
p
olishing
i
on-e
x
change」と記載されているから、「PIX」は実施例1における「(5)洗練イオン交換」であると解される。)について、純度、1,3-BG(BDO)重質物及び1,3-BG(BDO)軽質物が、94.8%、4.8%及び0.4%であることが記載されている(摘記甲1f、表2)。
ここで、上記実施例1の記載からみて、「粗製ミックス」は(5)洗練イオン交換により得られた物であり、脱水蒸留カラムに供給する前の物であるから、表2の「PIX生成物」であるといえ、また、「粗製bio-BG」に相当するといえる。
そして、甲1には、粗製bio-BGが約90%のbio-BG及び1%の水を含むものを意味することが記載されているものの、実施例1において、「粗製bio-BG」に相当する「粗製ミックス」である「PIX生成物」の純度が94.8%であることが記載されており、また、「PIX生成物」における水は、1,3-BG(BDO)軽質物に含まれると考えられるから、最大でも0.4%であるといえる。
してみると、甲1発明の粗製bio-BGについて、1,3-ブタンジオール含有量及び水分含有量を本件発明1で特定される範囲内のものとすることは当業者が容易になし得た事項である。
c <相違点2>及び<相違点4>について
本件明細書の記載からみて、本件発明1は、「
高度に精製され、臭気のない、さらに安全性の高い、精製1,3-ブタンジオールおよびその製造方法
を提供すること」及び「特に生化学的な方法により得られた夾雑物の多い粗製1,3-ブタンジオールから、高度に精製され、臭気のない、さらに安全性の高い、精製1,3-ブタンジオールおよびその製造方法を提供すること」を課題とするものであり(本件明細書、【0015】)、当該課題を「
臭気は、例えば、ガスクロマトグラフィー法等によって検出される微量成分の量や、そのピーク位置とあまり相関性なく生じるものであり、単純に低沸点物質の除去率を高めて、これらの微量成分のピークを小さくするあるいはなくしたとしても、完全には臭気を除去できないものである
との知見を得」て、「
水の添加やアルカリ物質の添加等の複雑な処理や多数回の蒸留処理を行わなくとも
、1,3-ブタンジオールを含有する粗原料を蒸留精製するにおいて、蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、さらに蒸留塔の底部より缶出されるものを精製品とすることなく、
蒸留塔の底部から高沸点成分を除去し、蒸留塔の適切な中塔部より精製品として抜き出すという単純な処理
によって、臭気の極めて少ない高純度の1,3-ブタンジオールを得られることを見出した」(本件明細書、【0016】)ことに基づいて、本件発明1の特定事項を採用することで解決したものであるといえる。
したがって、本件発明1は、最初の蒸留塔の塔底部から抜き出した生成物を、次の蒸留塔の中塔部から抜き出す精製品とすることによって、複雑な処理や多数回の蒸留処理を行わなくても、純度が高く、臭気がなく、安定性の高い精製1,3-ブタンジオールの製造方法としたものであるといえる。よって、本件発明1は、<相違点2>に係る技術的事項を備えたものとすることで、<相違点4>に係る純度及び臭気特性を実現したものであるといえる。
蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す点(相違点2)について、甲1には、一例として、高沸点材料と低沸点材料の両方を生成物含有流から除去する場合に、低沸点材料を沸騰させ、カラムの頂部を通して除去し、高沸点材料はカラムの底部から除去され、生成物はサイド抜出し(side-draw)を通して排出され、それによって材料は、蒸留カラムの頂部と底部との間の中間位置でカラムから抜き出されること、すなわち、中塔部より精留分を取り出すことが記載されている(摘記甲1c、[0168])。
そして、参1~3には、各種アルカンジオールの精製方法であって、複数の蒸留塔を用いる方法において、本件発明1の第1蒸留工程及び第2蒸留工程における、第1の蒸留塔に前記粗原液を導入し、前記第1の蒸留塔の上部から低沸点成分を除去し、前記第1の蒸留塔の底部からの缶出物を得る第1蒸留工程と、第1蒸留工程により得られた缶出物を第2の蒸留塔に導入し、前記第2の蒸留塔の底部から高沸点成分を除去し、前記第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す第2蒸留工程に相当する方法が記載されているといえるところ、異なるアルカンジオールの精製に共通する蒸留方法が適用されていることになるから、本件特許の出願時において、アルカンジオールを上記共通する蒸留方法によって精製することが、周知技術であったということができる。
してみると、当業者には、甲1発明において、「生成物含有流を沸騰させて蒸留カラムの頂部から排出」することに代えて、「第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す」ものとすることに一応の動機付けがあるといえる。
しかしながら、目的物である1,3-ブタンジオールの純度(相違点4)について、甲1には、一般的な記載として「99.9%より多い生物由来1,3-BG(1,3-BDO)とすることができる」ことが記載されているが(摘記甲1d、[0165])、当該記載からは、具体的にどのような蒸留工程を経て99.9%より多い生物由来1,3-BG(1,3-BDO)とするのかは不明であるし、以下に述べるように、甲1に記載された具体的な精製方法を検討しても、純度が99.9%であるbio-BGを得るために、相違点2に係る「第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す」という技術的事項を採用することが当業者にとって容易になし得たとはいえない。
甲1の実施例1には、「高純度の生物由来1,3-BGフラクションが得られ、乾燥ベースで99.9%の純度」を有していたことが記載されており(摘記甲1f、[0274])、実施例1の結果である表2には、「軽質物蒸留物1」及び「BG蒸留物1」の純度が99.2%及び97.6%であること、並びに「BG蒸留物5」~「BG蒸留物9」及び「BG塔底物」の純度が99.9%であることが記載されている(摘記甲1f)。したがって、甲1には、実施例1として、純度が99.9%であるbio-BGを得たことが記載されているといえる。
ここで、実施例1は、粗製ミックスを脱水蒸留カラムに供給し、1,3-BG含有生成物流を生成し、それを2Lバッチ蒸留カラムに供給し、生物由来1,3-BG生成物を生成した例であり、bio-BGを含む粗製ミックスを、3:1の還流比での脱水/重質物(DW/HV)蒸留、続いて3:1の還流比での軽質物/1,3-BG(LT/BG)蒸留を伴う蒸留プロセスによって精製するものである(摘記甲1f、[0273]及び[0274])。
そして、実施例1における上記「BG蒸留物1」は軽質物/1,3-BG(LT/BG)蒸留後に得られた精製されたbio-BGであると解されるところ、その純度は97.6%であり、99.9%に満たない。
また、そもそも甲1に記載された実施例1の方法は、脱水/重質物(DW/HV)蒸留、及びそれに続く軽質物/1,3-BG(LT/BG)蒸留について、少なくとも後者の蒸留は塔底において目的とするbio-BGが得られていると考えられるから、2番目の蒸留で塔頂から目的とするbio-BGを得ている甲1発明とは工程が大きく異なる。
一方、上記「BG蒸留物5」~「BG蒸留物9」及び「BG塔底物」は、純度が99.9%であるものの、具体的にどのような工程を経て得られた物であるかは明らかでない。甲1の表2における各BG蒸留物の分析値を参酌すると、各BG蒸留物はその番号が大きくなるにしたがって純度が向上し、不純物の量が減少する傾向があるといえるから、「BG蒸留物」の番号は蒸留を行った回数を示していることが考えられ、それが正しければ、「BG蒸留物2」~「BG蒸留物9」及び「BG塔底物」は、2番目の蒸留で塔頂から目的とするbio-BGを得る工程を複数回繰り返して蒸留を行う方法であることになり、本件発明1及び甲1発明とは異なる。
したがって、甲1の記載を参酌しても、甲1発明において、相違点2に係る「第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す」という技術的事項を採用して、相違点4に係る目的物であるbio-BGの純度を99.9質量%以上とすることは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
さらに、参1~3について検討するに、参1~3には、
目的物が1,2-プロパンジオールである精製方法について、原料の純度が72.10%であり、精製物の純度が99.90%であることが記載され(摘記参1dの表)、
目的物が1,4-ブタンジオールである精製方法について、原料の純度が97.55%であり、精製物の純度が99.7%であることが記載され(摘記参2a、実施例1)、
目的物が1,3-プロパンジオールである精製方法について、2回蒸留した後に強酸型カチオン交換樹脂又は強酸性樹脂と接触させ、さらに蒸留することが記載され、再蒸留前の原料の純度は97.933又は95.204%であり、精製物の純度が高いもので99.910%又は99.756%であることが記載されている(摘記参3c及び参3d)。
しかし、参1の精製方法は、原料の純度が72.10%であって、90.0質量%超99.5質量%以下である本件発明1の範囲内になく、参2の精製方法は、精製物の純度が99.7%であって、99.9質量%以上である本件発明1の範囲内になく、参3の精製方法は、複数回蒸留する際の原料の純度が不明であり、かつ、再蒸留に供する、2回蒸留後かつ強酸型カチオン交換樹脂又は強酸性樹脂と接触させた後の目的物(表7及び表8における「フィード」)の純度は97.933又は95.204%であって、目的物の純度が99.9質量%以上である本件発明1の範囲内になく、再蒸留後の精製物の純度は高いもので99.910%であるものの、中塔部から取り出したものではない。
さらに、参1~参3の精製方法における精製対象の物質はいずれも1,3-BGではないところ、精製対象の物質が異なれば含有する不純物も異なるから、参1~3に記載された精製方法と同様の方法を採用したからといって、それら文献に記載された精製物の純度と同様の純度の1,3-BGが得られると当業者が認識するということもできない。
してみると、甲1の記載事項に加えてさらに参1~3に示される周知技術を参酌しても、甲1発明において、相違点2に係る「第2の蒸留塔の中塔部より精留分を取り出す」という技術的事項を採用して、相違点4に係る目的物であるbio-BGの純度を99.9質量%以上とすることは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
したがって、本件発明1において特定される所定の臭気判定方法における特性について検討するまでもなく、相違点2及び相違点4に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない
イ 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1についてさらに技術的に限定するものである。
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのと同様に、本件発明2~5は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和7年12月12日付けの意見書において、参考文献4及び5も提示して、上記相違点4について、もっぱら臭気判定方法、その結果及び臭気評価方法について指摘し、「甲1発明における精製で得られる1,3-BGは、訂正発明1にいう「特性」を満たす蓋然性が高いといえる。このように、相違点4は実質的な相違点ではない。仮に、訂正発明1と甲1発明とが相違点4で相違するとしても、上述した甲1等の記載に基づいて、精製によって上記「特性」を満たす1,3-BGを得ることは当業者が容易になし得た事項である。」と主張する(4~6頁、「4 相違点4について」)。
上記主張における「特性」には、目的物である1,3-ブタンジオールの純度が「99.9質量%以上」であることが含まれると解することもできるが、上記意見書において「純度99.9質量%以上」の点については明示的に主張がされていない。
本件明細書の【0015】に、「1,3-ブタンジオールを含有する粗原料を蒸留法により精製することに関して鋭意研究および検討を行った結果、臭気は、例えば、ガスクロマトグラフィー法等によって検出される微量成分の量や、そのピーク位置とあまり相関性なく生じるものであり、単純に低沸点物質の除去率を高めて、これらの微量成分のピークを小さくするあるいはなくしたとしても、完全には臭気を除去できないものであるとの知見を得た。」と記載されているから、当業者は、臭気と純度とは必ずしも相関しないことを認識するといえ、臭気に関する点をもって、甲1発明における1,3-ブタンジオールの純度が99.9質量%以上であるということはできない。
そして、甲1発明において、目的物であるbio-BGの純度を99.9質量%以上とすることは当業者が容易になし得た事項であるということはできないことは、上記ア(イ)cで述べたとおりである。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、令和7年8月26日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由(申立理由2と同じ。)は理由がない。
申立理由1(新規性)は取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由であるが、上記1のアで述べたとおりであるから、本件発明1と甲1発明は、少なくとも<相違点2>及び<相違点4>の点において実質的に相違する。
したがって、本件発明1は、甲1-1(甲1)に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明2~5は、本件発明1についてさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲1-1(甲1)に記載された発明であるとはいえない。
よって、申立理由1は理由がない。
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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