結論テキスト
特許第7685564号の請求項1~22に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025701106 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7685564号の請求項1~22に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願(以下、「本件特許出願」という。)は、2018年(平成30年)12月20日を国際出願日として出願された特願2021-535967号(以下、「原出願」という。)の一部を、令和5年9月6日に新たな特許出願としたものであって、令和7年5月21日にその特許権の設定登録がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和7年12月1日に特許異議申立人若山裕郎(以下、「申立人」という。)により本件特許1~22に対する特許異議の申立てがされ、令和8年1月30日に特許異議申立書に対する手続補正書(方式)が提出された。
本件特許の請求項1~22に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲(以下、「本件特許請求の範囲」という。)の請求項1~22に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
石膏建築材料において、少なくとも石膏と、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素と、を含み、
前記石膏建築材料が、スタッコを材料とし、前記石膏建築材料が、前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサン及び0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含み、前記非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み、
前記H-シロキサンが、前記石膏建築材料中に均一に分布し、
少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する、石膏建築材料。
【請求項2】
前記石膏建築材料が、さらなる添加剤を含む、請求項1に記載の石膏建築材料。
【請求項3】
前記石膏建築材料の前記膨張段階が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも2倍であることを特徴とする、請求項1に記載の石膏建築材料。
【請求項4】
前記石膏建築材料の前記膨張段階が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも2.5倍であることを特徴とする、請求項3に記載の石膏建築材料。
【請求項5】
最初の60分間、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従った温度の影響下にあり、次の60分間、950°Cの一定の温度適用下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料よりも小さい収縮率を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項6】
前記石膏建築材料の前記収縮率が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の前記収縮率よりも少なくとも10%低いことを特徴とする、請求項5に記載の石膏建築材料。
【請求項7】
前記石膏建築材料の前記収縮率が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の前記収縮率よりも少なくとも50%低いことを特徴とする、請求項6に記載の石膏建築材料。
【請求項8】
前記石膏建築材料の前記収縮率が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の前記収縮率よりも少なくとも75%低いことを特徴とする、請求項7に記載の石膏建築材料。
【請求項9】
前記石膏建築材料が、前記スタッコの質量に対して、0.01~5重量%のH-シロキサンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項10】
前記石膏建築材料が、前記スタッコの量に対して、0.5重量%~10重量%の非晶質二酸化ケイ素を含む、請求項1に記載の石膏建築材料。
【請求項11】
前記石膏建築材料が、前記スタッコの量に対して、0.5重量%~6重量%の非晶質二酸化ケイ素を含む、請求項10に記載の石膏建築材料。
【請求項12】
前記H-シロキサンの含有量が前記非晶質二酸化ケイ素の含有量よりも低い、請求項1~11のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項13】
前記石膏建築材料が、1~2.5重量%のH-シロキサンおよび1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の石膏建築材料を含む石膏建築ボード。
【請求項15】
前記石膏建築材料と、少なくとも1つの表面上に配置されたH-シロキサンを含むコーティングとを含む、請求項14に記載の石膏建築ボード。
【請求項16】
前記石膏建築材料と、少なくとも2つの表面上に配置されたH-シロキサンを含むコーティングとを含む、請求項15に記載の石膏建築ボード。
【請求項17】
前記石膏建築材料と、少なくとも上面および下面上に配置されたH-シロキサンを含むコーティングとを含む、請求項16に記載の石膏建築ボード。
【請求項18】
少なくとも1つのエッジ層およびコア層を有し、前記少なくとも1つのエッジ層が、請求項1~13のいずれか一項に記載の石膏建築材料を含有することを特徴とする、石膏建築ボード。
【請求項19】
石膏建築ボードを製造するための方法であって、
少なくとも1つのスラリーが、少なくともスタッコと水とが互いに混合されることで製造され、前記スラリーが、石膏建築ボードの切れ目のないストランドへと形成されて、次いでこれが複数の石膏建築ボードに分離され、前記複数の石膏建築ボードが乾燥される方法であり、
前記スラリーを製造するために、前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンおよび前記スタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素が、前記石膏建築ボード中に均一に分布するように添加され、前記非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み、それにより、少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築ボードが、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築ボードの膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有することを特徴とする、石膏建築ボードを製造するための方法。
【請求項20】
前記方法がさらに、前記石膏建築ボードの切れ目のないストランドまたは分離された前記複数の石膏建築ボードの少なくとも1つの表面にH-シロキサンを塗布することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記石膏建築ボードが少なくとも1つのエッジ層およびコア層を含むこと、及び前記スラリーが、前記少なくとも1つのエッジ層を形成するために使用されることを特徴とする、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
温度の影響下における、スタッコからなる石膏建築材料の膨張段階を延長するための、スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンおよびスタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素の使用であって、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含み、
前記石膏建築材料を、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って、0分から60分まで、950°Cまで加熱し、60分から120分まで、常に950°Cの一定温度に保ちながら処理したときに、前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成の石膏建築材料と比較して、より長い膨張段階を有し、
少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する、使用。」
申立人が主張する特許異議の申立ての理由は、概略、次のとおりである。
なお、申立理由1が対象とする特許は、令和8年1月30日付けの手続補正書(方式)で補正された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)の「(4)具体的理由」の「(4-1)理由1(新規性)について」の記載を踏まえ、本件特許2~22である。
(1) 申立理由1(分割不適法を前提とする新規性欠如)
本件特許出願は、特許法第44条第1項に規定する分割要件を満たしておらず、その出願日は令和5年9月6日である。そして、本件発明2~22は、令和4年4月21日に公表された甲第9号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許2~22は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2) 申立理由2(サポート要件違反)
本件特許は、その特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3) 申立理由3(明確性要件違反)
本件特許は、その特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4) 申立理由4(進歩性欠如)
本件発明1~22は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第8号証、甲第10号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~22は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5) 証拠方法一覧
甲第1号証 特表2017-535508号公報
甲第2号証 特表2018-522808号公報
甲第3号証 特許第3284756号公報
甲第4号証 特表2010-505674号公報
甲第5号証 特表2017-536318号公報
甲第6号証 特表2016-539891号公報
甲第7号証 特表2014-510854号公報
甲第8号証 特表2016-508110号公報
甲第9号証 特表2022-522930号公報
甲第10号証 特開2004-35377号公報
(1) 甲第1号証の記載
甲第1号証には、「耐火性硫酸カルシウムベースの製品」(発明の名称)に関して、次の記載がある。なお、下線は当審が付した(以下同様)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏、ポゾラン源及び金属塩添加剤を含む硫酸カルシウムベースの製品。
・・・
【請求項20】
前記ポゾラン源が、カオリナイト粘土材料、フライアッシュ、もみ殻灰、珪藻土、火山灰及び軽石、マイクロシリカ、シリカフェーム並びにシリコーンオイルから選択される、請求項1~19のいずれかに記載の硫酸カルシウムベースの製品。
・・・
【請求項25】
硫酸カルシウムベースの組成物の水性スラリーを乾燥することによる硫酸カルシウムベースの製品を形成する際に使用するための硫酸カルシウムベースの組成物であって、前記硫酸カルシウムベースの組成物は、
焼石膏、ポゾラン源及び金属塩を含む、前記組成物。
・・・
【請求項35】
前記ポゾラン源が、カオリナイト粘土材料、フライアッシュ、もみ殻灰、珪藻土、火山灰及び軽石、マイクロシリカ、シリカフェーム並びにシリコーンオイルから選択される、請求項25~34のいずれかに記載の硫酸カルシウムベースの組成物。
・・・
【請求項40】
請求項25~39のいずれかに記載の組成物を含む水性スラリーを乾燥することによる硫酸カルシウムベースの製品を形成する方法。
【請求項41】
石膏を含む硫酸カルシウムベースの製品が熱に暴露されている間に収縮を減少する及び/または強度を改良するためのポゾラン源及び金属塩添加剤の組み合わせの使用。
」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された耐火性の硫酸カルシウムベースの製品、特に高温に暴露された後に減少した収縮性をもつ硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品に関する。
」
ウ 「【背景技術】
・・・
【0003】
ウォールボードなどの硫酸カルシウムベースの製品は、通常は、焼石膏またはスタッコとしても知られる硫酸カルシウムの半水和物(CaSO
4
・1/2H
2
O)の水性スラリーを、ライニング紙またはガラス繊維マットの二つのシートの間で乾燥することによって形成される。スラリーが乾燥して、焼石膏が水和されるにつれて、ライニングシート/マットの間にはさまれた石膏(硫酸カルシウム二水和物(CaSO
4
・2H
2
O))の硬質で剛性のコアが形成される。
」
エ 「【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、ポゾラン源と金属塩の組み合わせを添加すると、最高1000°Cに加熱した後でさえもその寸法安定性を維持する硫酸カルシウムベースの製品がもたらされることを知見した。石膏を一緒に結合して寸法安定性を改良するのを助ける焼結プロセスが起きると考えられる。加熱後(及び石膏がEDTAを使用して除去された後)の製品の分析から、ポゾラン源が連結性網状構造を形成し、これが石膏を結合するのを助け、安定性が高まることが明らかである。金属塩が存在すると、ポゾラン源が連結性網状構造に変化する温度を低下させて、必要とされるポゾラン源の量を減らすことができる。これは、網状構造に金属塩が包含された結果かもしれない。
【0019】
「ポゾラン源」なる用語は、それ自体がポゾランである材料(たとえばフライアッシュ、もみ殻灰、珪藻土、火山灰及び軽石、マイクロシリカ、シリカフューム)または加熱するとポゾラン材料を生成する材料(たとえば、加熱するとメタカオリンを生成するカオリナイト粘土または、加熱するとシリカを生成するシリコーンオイルなど)を含むと意図される。
【0020】
「シリコーンオイル」なる用語は、液体ポリシロキサンを指すように意図される。シリコーンオイルはポリジオルガノシロキサンを含むことができる。オルガノ基はアルキル及び/またはアリール、たとえばメチル及び/またはフェニル基でありうる。一例としてはポリジメチルシロキサン(PDMS)がある。シリコーンオイルはポリオルガノヒドロシロキサンを含むことができる。オルガノ基はアルキルまたはアリール基、たとえばメチル及び/またはフェニル基でありえる。一例としてはポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)がある。シリコーンオイルはジオルガノシロキサン及びオルガノヒドロシロキサンのコポリマーまたは、ポリジオルガノシロキサン及びポリオルガノヒドロシロキサンのブレンドを含むことができる。
・・・
【0023】
硫酸カルシウムベースの製品では、ポゾラン源は4重量%を超える量、好ましくは4~27重量%、より好ましくは4~20重量%、最も好ましくは4~9重量%(ここで重量%は、石膏、ポゾラン源及び金属塩の重量に基づく)の量で提供することができる。
・・・
【0030】
硫酸カルシウムベースの製品を形成するために使用されるスラリー及び硫酸カルシウムベースの製品において、焼石膏は好ましくは、60重量%~95重量%の量、より好ましくは75~95重量%及び最も好ましくは75~90重量%の量(ここで重量%は、焼石膏、ポゾラン源及び金属塩の重量に基づく)で提供される。
・・・
【0032】
特に好ましい態様では、硫酸カルシウムベースの製品は、石膏65重量%~98重量%、ポゾラン源及び金属塩0.5重量%~9重量%を含み、焼石膏60~95重量%、ポゾラン源及び金属塩1重量%~9重量%(ここで重量%は、石膏、ポゾラン源及び金属塩の重量に基づく)を含む水性スラリーを乾燥することから形成することができる。
・・・
【0036】
硫酸カルシウムベースの製品は、促進剤、遅延剤、発泡剤/消泡剤、流動化剤などの添加剤を含むことができる。促進剤は、たとえば糖または界面活性剤の添加剤を含む新しく粉砕した石膏であってもよい。
かかる促進剤としては、Ground Mineral NANSA(GMN)、耐熱性促進剤(HRA)及びボールミル促進剤(BMA)を挙げることができる。あるいは、促進剤は、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛または硫酸カリウムなどの化学添加物であってもよい。
場合によっては、複数の促進剤の混合物、たとえば硫酸塩促進剤と組み合わせてGMNを使用することができる。さらなる代替案としては、たとえば米国特許第US2010/0136259号に記載のように、超音波を使用してスラリーの硬化速度を加速させることができる。」
オ 「【実施例】
【0040】
以下の実施例は、高温において減少した収縮をもつ製品を示し、例示のみの目的で与えられる。
・・・
【0049】
対照試料10-シリコーンオイル(10重量%)
シリコーンオイル20gを40°Cにおいて水140gに添加した。焼石膏200gをこの溶液に添加し、30秒間手でブレンドしてスラリーを形成した。このスラリーを円筒状シリコーン鋳型(高さ25mm、直径12mm)に注ぎ、この試料を40°Cで一晩(最低12時間)乾燥した。
【0050】
使用したシリコーンオイルは
、Wacker製のSILRES(登録商標)BS 94であった。これは
ポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイルである。
対照試料11-マイクロシリカ(10重量%)
焼石膏180gをマイクロシリカ20gとドライブレンドし、次いで水140gと30秒間手でブレンドしてスラリーを形成した。このスラリーを円筒状シリコーン鋳型(高さ25mm、直径12mm)に注ぎ、この試料を40°Cで一晩(最低12時間)乾燥した。
・・・
【0052】
実施例
以下の表1に示された金属塩、ポゾラン源及び焼石膏の量の試料配合で、金属塩と40°Cにおいて水140gとを混合して調製した(実施例23を除く全て)。ポゾラン源及び焼石膏をドライブレンドして水/塩混合物に添加した。得られた混合物を30秒間手でブレンドしてスラリーを形成した。
実施例23に関しては、シリコーンオイル及び金属塩を40°Cにおいて水140gに添加し、次いで焼石膏を溶液に添加してスラリーを形成し、これを30秒間手でブレンドした。スラリー中の各成分の(乾燥成分に基づく)重量%量を以下のかっこ内に示す。
【0053】
このスラリーを円筒状シリコーン鋳型(高さ25mm、直径12mm)に注ぎ、この試料を40°Cで一晩(最低12時間)乾燥した。
【0054】
【表1-1】
200
153
0001436208000001.jpg
【0055】
【表1-2】
155
153
0001436208000002.jpg
【0056】
線収縮
線収縮は、Netzsch膨張計を使用して測定した。試料は、1000°Cに5°C/分の速度で加熱した。収縮は、解像度8nmをもつ変換器を使用してin-situで測定した。
【0057】
膨張計の結果を表2に示す。
【0058】
【表2-1】
218
153
0001436208000003.jpg
【0059】
【表2-2】
116
153
0001436208000004.jpg
【0060】
この結果は、ポゾラン源及び金属塩との組み合わせは、高温に暴露した後の収縮を減少させるのに役立ちうることを示す。5重量%を超える(製品中で4重量%を超える)ポゾラン源をスラリー中で使用するとき及び、1重量%を超える(製品中で0.5重量%を超える)金属塩をスラリー中で使用するときに結果は最も顕著である。結果は、同量のポゾラン源及び金属塩を使用する場合に特に顕著である。」
(2) 甲第2号証の記載
甲第2号証には、「防水用シリコーンエマルジョン、優れたクラック抵抗性を示す防水ボード及びその製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
半水石膏、シリコーンオイル、及び炭酸塩岩鉱物を触媒として含む水系石膏スラリーの硬化物を含む防水ボード。
【請求項2】
シリコーンオイルが下記式で表される構造を含むポリシロキサンを含む、請求項1に記載の防水ボード:
【化1】
33
115
0001436208000005.jpg
前記構造式で、R
1
は、独立して水素または非水素置換基であり、ただし、複数のR
1
のうち少なくとも一つは水素であり;R
2
は非水素置換基であり;nは1から200の整数である。
・・・
【請求項17】
半水石膏、シリコーンオイル、乳化剤及び触媒を含む水系石膏スラリーの硬化物を含む防水ボード。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、防水用シリコーンエマルジョン、優れたクラック抵抗性を示す防水ボード及びその製造方法に関し、より詳しくは、シリコーンオイル及び乳化剤を含む防水用シリコーンエマルジョンと、半水石膏、シリコーンオイル及び特定の触媒を含む水系石膏スラリーの硬化物を含み、優れたクラック抵抗性及び低い全吸収率を示す防水ボード及びその製造方法に関する。」
ウ 「【背景技術】
・・・
【0005】
シリコン化合物を防水剤として用いる場合、石膏スラリーの製造過程でシリコーンオイルのヒドロゲン作用基が加水分解されてヒドロキシド作用基に変わり、この作用基が二水石膏内の結晶水であるヒドロキシド作用基と反応して加水分解されることにより、シリコーンオイルが二水石膏固形体に固定されることになる。この過程を介し、
シリコーンオイルは
二水石膏と強い化学結合をなして石膏の表面を覆うことになり、撥水性を表すメチル基は石膏の表面と垂直になるように位置して
石膏の表面で効果的な撥水機能を示す
ことになる。しかし、シリコーンオイルは消泡性が強いため、発泡剤の使用によって石膏のコア内に生成された気泡を取り除いてしまう問題がある。」
エ 「【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パラフィンワックスに比べて少ない量のシリコーンオイルを用いながらも、優れたクラック抵抗性及び低い全吸収率を表す防水ボードを得ることができる。さらに、本発明に係るシリコーンエマルジョンを用いると、シリコーンオイルの消泡性を抑制して最終製品が低い密度を維持するようにしながらも、気泡の大きさがパラフィンワックスの使用時と同等水準の大きさを有するようにし、少ないシリコーンオイルの使用量でも低い全吸収率(例えば、6%以下)を示すことができるので、原材料費を大幅に節減することができる。」
オ 「【発明を実施するための形態】
【0016】
以下で、本発明を詳しく説明する。
本発明が提供する防水ボードは、半水石膏、シリコーンオイル、及び軽焼ドロマイトを触媒として含む水系石膏スラリーの硬化物を含む。前記石膏スラリーの硬化物は、ボードのコアとして用いられてよい。
・・・
【0019】
前記シリコーンオイルは防水機能の付与のために用いられる
ものであって、線形または環状の、少なくとも部分的に水素改質されたポリシロキサンを含むことができる。このようなポリシロキサンは、塩基性環境で重合されて高度に架橋されたシロキサン重合体を形成することができ、その重合体は高い防水性を表す。より具体的に、前記ポリシロキサンは、下記式で表される構造を含むことができる。
【0020】
【化1】
33
115
0001436208000006.jpg
【0021】
前記構造式で、R
1
は、独立して水素または非水素置換基(例えば、非置換またはハロゲンで置換されたアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール)であり、ただし、複数のR
1
のうち少なくとも一つが、より具体的には10%以上(例えば、10から100%)が水素であり;R
2
は、前述した非水素置換基であり;nは1から200の整数である。
・・・
【0026】
本発明の好ましい一具体例によれば、
前記シリコーンオイルとしてメチルヒドロゲンポリシロキサン(methylhydrogenpolysiloxane、MHP)を含むシリコーンオイルを用いる。
【0027】
本発明に係る防水ボードにおいて、前記石膏スラリー内のシリコーンオイルの含量は、半水石膏の100重量部を基準に、例えば、0.04から4重量部であってよく、より具体的には0.1から1.5重量部であってよい。石膏スラリー内のシリコーンオイルの含量が前記範囲より少なすぎると、目標とする防水性が発現しないという問題点があり、逆に多すぎると、シリコーンオイルの特有の消泡性によって石膏の使用量が多くなり、スラリーの粘性が増大してミキサーの内部で固まるという問題点があり得る。
・・・
【0045】
本発明では、防水剤としてシリコーンオイルを用いることにより、パラフィンワックスに比べて少量の防水剤の使用でも優れた防水性能を得るとともに、炭酸塩岩鉱物を触媒として用いることにより、適した反応速度を示すことができるようにして石膏ボードのクラッキングを防止する。」
(3) 甲第3号証の記載
甲第3号証には、「撥水性石膏ボード」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 メチルハイドロジェンポリシロキサンと、珪酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種と石膏とを含む石膏組成物及びボード原紙からなることを特徴とする撥水性石膏ボード。
【請求項2】 石膏組成物が、石膏100重量部に対して、メチルハイドロジェンポリシロキサン0.2~5重量部、珪酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種0.1~10重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の撥水性石膏ボード。」
イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は従来にない優れた性能を有する撥水性石膏ボードに関する。更に詳しくは、
耐水性及び防火性の改善された撥水性石膏ボードに関する。
」
ウ 「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らはかかる問題点の解消法につき鋭意検討を行ったところ、メチルハイドロジェンポリシロキサンと特定の化合物を併用することにより、
メチルハイドロジェンポリシロキサンの使用量が少量でも撥水性を示し
、防火性も損なわれず、ボード原紙との接着も良好であることを見いだし本発明に至った。
・・・
【0006】本発明に使用されるポリシロキサンは下記の構造式を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンである。
【0007】
【化1】
38
102
0001436208000007.jpg
【0008】メチルハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、石膏100重量部(半水石膏換算)に対して0.2~5重量部、好ましくは0.2~1重量部である。0.2重量部より少ないと十分な撥水性が得られない。5重量部より多いと防火性の点で不利になる。上記一般式中、nは1~100の数を示す。
【0009】メチルハイドロジェンポリシロキサンはそのまま使用しても、また、メチルハイドロジェンポリシロキサンを水中に乳化してなるエマルションとして使用してもよい。エマルションとして使用すると石膏スラリー中にメチルハイドロジェンポリシロキサンを均一に添加混合できるので好ましい。メチルハイドロジェンポリシロキサンを水中に乳化してなるエマルションとするために使用する乳化剤には特に制限はなく、例えば、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ポリビニルアルコール等が挙げられる。」
エ 「【0018】
【実施例】次に本発明を実施例、比較例により説明する。なお、以下の例において「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
実施例1
メチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学製KF-99)99部、ケン化度85%のポリビニルアルコール(日本合成製GL-05)1部と水135部をホモミキサーにて乳化しメチルハイドロジェンポリシロキサンを42%含むエマルションを得た。
【0019】β半水石膏(吉野石膏製桜印A級)100部に上記のメチルハイドロジェンポリシロキサンのエマルションをメチルハイドロジェンポリシロキサンとして0.6部、セメント1部及び水80部を添加しスラリーとし、これを石膏ボード原紙の間に流し込み石膏ボードとし、70°Cで2.5時間乾燥した。乾燥後の石膏と石膏ボード原紙の接着は十分であり剥離は認められなかった。得られた石膏ボードの比重は0.86であった。該ボードを20°C±1°Cの水中に2時間、24時間浸漬後の吸水率(Aw
2
、Aw
24
)を測定した。」
(4) 甲第4号証の記載
甲第4号証には、「耐火性石膏パネル」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏および高温度収縮抵抗性材料を含み、少なくとも2つの相対する面と2つの相対する端を有するパネルへ形成される芯;
該面の1つ以上、該端の1つ以上およびこれらの組み合わせからなる群の少なくとも一部を覆い、該芯より高い密度を有する石膏マトリックスおよび第1の膨張する材料を含む膨張する層;および
該膨張可能な層の少なくとも一部を覆う表面仕上げ材料
からなることを特徴とする多層石膏パネル。
【請求項2】
該高温度収縮抵抗性材料が、ガラスファイバー、フュームシリカ、珪藻土および粘土からなる群の少なくとも1つである請求項1のパネル。」
イ 「【背景技術】
・・・
【0003】
2水和物中の化学的に結合した水は、石膏パネルの防火性に働く。熱または火に曝されたとき、2水和物は半水和物に、または硬石膏の形にまで転換する。水和の過剰な水は、水蒸気の形で追い出される。
水蒸気が離れるとき、火からの熱エネルギーが脱水反応の生成および水の蒸発に使用されるので、パネルを通る熱の透過は低下する。厚い石膏パネルは、熱がパネルの厚さ全体へ浸透してすべての結晶水を追い出すには長い時間を要するため、薄いものより耐火性を上げる。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
当業者は、多量の通常の膨張する材料を要しない改善された耐火性を有する石膏パネルを求めている。また、当業者は、防火性を改善するために膨張する石膏パネル上に使用できる耐火性の層を求めている。」
エ 「【発明を実施するための形態】
・・・
【0023】
化粧しっくいの他の望ましい性質は、高いシリカ含量であり、好ましいシリカは粘土ミネラル例えばカオリン粘土である。石膏複合物中に高いシリカ含量を有する化粧しっくいは、融点を上げる。これは、より良い耐火性にとり好ましい。高いシリカの硫酸カルシウム半水和物の例は、1重量%より多いシリカまたは2重量%より多い粘土含量である。
・・・
【0026】
芯12および膨張する層14の両者の他の必須の成分は、高温度収縮抵抗性材料である。他の成分と一緒に使用できそして収縮しない任意の材料が、収縮抵抗性材料として有用である。最も収縮抵抗性のある材料は、石膏複合物の融点を上げて高温度における収縮を低下または防ぐ充填剤である。化粧しっくいを少量のこれらの充填剤により置き換えることにより、硬化芯12は、これらの充填剤のない硬化芯に比べて遙かに収縮しない。
収縮抵抗性材料の例は、ガラスファイバー、ガラスまたは合成の繊維、フュームシリカ、珪藻土および粘土例えばカオリン粘土を含む。多くのシリカの多いミネラルは、石膏の収縮を低下させるように働く。
好ましくは、芯は、コストの懸念から膨張する材料を含まない。収縮抵抗性材料は、乾燥成分に基づいて0.1-約3重量%の量で使用される。好ましい収縮抵抗性材料はカオリン粘土である。すべてのガラスファイバーが収縮抵抗性でないことに注意すべきである。収縮抵抗性材料のみがこの成分で有用である。」
(5) 甲第5号証の記載
甲第5号証には、「改善された固定強度を有する構造パネル」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
・・・
【0008】
好ましくは、石膏製品は、その中に埋め込まれた繊維を含む。典型的に、繊維は、石膏に対して2wt%より多い、好ましくは3wt%より多い量で存在する。典型的に、繊維は、石膏に対して10wt%未満、好ましくは7wt%未満の量で存在する。一般に、繊維はガラス繊維である。
好ましくは、石膏製品は実質的にホウ素を含まない。ホウ素添加剤は、石膏製品の製造中に健康及び安全へのリスクを呈すると考えられる。
特定実施形態において、石膏製品はプラスターボードである。一般に、プラスターボードは紙製表面仕上げを有する。これらの紙製表面仕上げは、セルロース繊維とガラス繊維を両方含んでよく、これはプラスターボードの耐火性を改善すると考えられる。他の場合、プラスターボードは、表面が一部又は完全に埋め込まれたマット、例えば、ガラスマットを有してよい。
特定の実施形態において、
石膏製品は、シリコーン油又はワックス等の疎水性添加剤を含む。
特定実施形態において、石膏製品は、殺生物剤を含有してよい。
特定実施形態において、
石膏製品は、製品の耐火性を改善するために、非膨張バーミキュライト、マイクロシリカ、及び/又は粘土等の収縮防止剤を含有してよい。
特定実施形態は、泡又は軽量凝集体、例えばパーライトを含めてよい。該添加剤は、許容できる厚さを有する低密度ボードを作製するために当技術分野で知られている。」
(6) 甲第6号証の記載
甲第6号証には、「高い水対スタッコ比を使用して製造した石膏ウォールボード」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項3】
前記硬化石膏組成物が、シリカ・ヒューム、ポルトランドセメント、フライアッシュ、クレー、セルロース微粒子、もしくは高分子ポリマーからなる群から選択される増粘剤、またはそれらの任意の混合物を含む、請求項1または2に記載の耐火性石膏ボード。
【請求項4】
前記増粘剤がスタッコの重量基準で約10重量%未満である、請求項3に記載の耐火性石膏ボード。」
イ 「【発明を実施するための形態】
・・・
【0016】
石膏ウォールボードは、(a)石膏結晶の充填、(b)水の蒸発、および(c)任意の泡添加剤の存在に由来する空隙を含み得る。一定の密度のボードを作製するために、泡空隙が増加するにつれて、水対スタッコ比を下方調整することによって水空隙の量を減少させることができ、水空隙が増加するにつれて、添加する泡を減らすことによって泡空隙を減少させることができる(図1を参照)。理論によって拘束されることを望むものではないが、
火炎にさらされた場合、CaSO
4
・2H
2
Oからの水蒸気は大気中に放出される前にボードを通過しなければならない。
泡空隙は、比較的大きい可能性があり、燃焼中に水蒸気を石膏芯材から迅速に放出させることができる。水空隙は微小であるので、蒸気は泡空隙を通過する場合よりも高い流れ抵抗に打ち勝たなければならない。結果として、水蒸気がボードを通過するのにより長い時間がかかり、したがって、ウォールボードの耐火性が増加する。このように、例えばより高い水対スタッコ比で作製された、
水蒸発空隙数が増加したウォールボードは、より高い耐火性を有し得る。しかしながら、水対スタッコ比が高すぎる(そして泡量が少なすぎる)場合、蒸気圧が増大して、ウォールボードの崩壊に至る可能性がある。
有効な耐火性を得るために、最適の水対スタッコ比および泡含有量で石膏ウォールボードを調製できる。最適の耐火性および軽量特性を有するウォールボードを作製するために、含水量と耐火特性との間のバランスを達成することができる。
・・・
【0035】
増粘剤は、いくつかの実施形態では、製造ラインでボードを製造するために適切なレオロジーを獲得するために使用できる。
スタッコスラリーの流動性を充分に低下させるために必要ないかなる増粘剤もスラリーに添加できる。例えば、シリカ・ヒューム、ポルトランドセメント、フライアッシュ、クレー、セルロース繊維、およびそれらの混合物を石膏組成物に添加できる。
これは、200ft/分を上回るライン速度でライン上のスラリーを増粘するためにも最も有利である。ポリアクリルアミドなどの高分子ポリマーを石膏スラリーに添加してスラリーの流動性を低下させることもできる。いくつかの実施形態において、増粘剤または増粘剤の混合物をスラリーに対してスタッコの重量基準で約10重量%未満の量で添加してもよい。
・・・
【0043】
促進剤は、
促進剤に関して参照することによって本明細書中に組み込まれる、米国特許第6,409,825号で記載されているように、本発明の石膏含有組成物で使用できる。
1つの望ましい耐熱性促進剤(HRA)は粉末石膏(硫酸カルシウム二水和物)の乾式研削から製造できる。
糖、デキストロース、ホウ酸、およびデンプンなどの少量の添加剤(通常は約5重量%)を添加して、このHRAを製造できる。糖、すなわちデキストロースが現在好ましい。
別の有用な促進剤は、
促進剤に関して参照することによって本明細書中に組み込まれる米国特許第3,573,947号で記載されるような
「気候安定化(climate stabilized)促進剤」または「気候安定性(climate stable)促進剤」(CSA)である。
」
(7) 甲第7号証の記載
甲第7号証には、「軽量かつ低密度の耐火性石膏パネル」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
ア 「【背景技術】
・・・
【0026】
これまで、耐火等級石膏パネルの耐火性を改善するために、様々なストラテジーが使用された。例えば、パネルにおける水と石膏の両方の存在量を増加させてヒートシンクとして作用する能力を増強するために、パネルの収縮を減少させるために、ならびにパネルの構造的安定性および構造的強度を高めるために、より厚いより高密度なパネルコアが使用されてきた。あるいは、またはパネルコアの密度を高めることに加えて、パネルコアの引張り強さを増加させることによっておよび収縮応力をコアマトリックス全体に分散させることによって石膏パネルの耐火性を高めるためにガラス繊維および他の繊維を含む様々な原料が石膏コアに組み込まれた。同様に、ある量のある特定の粘土(例えば、約1マイクロメートル未満のサイズのもの)およびコロイドケイ酸またはアルミナ添加物(例えば、1マイクロメートル未満のサイズのもの)が、石膏パネルコアにおいて高い耐火性(および高温収縮抵抗性)を提供するためにこれまで使用されてきた。
・・・
【0033】
多くの用途において、そのようなパネルを通る熱レベルの透過を半時間さえも遅らせる、比較的高熱条件または火炎条件の影響に抵抗する能力を有するそのような軽量石膏パネルを提供することは、当該分野にとって重要な寄与であり得る。しかしながら、一般に、石膏パネルにおけるコアの密度をかなり減少させることにより、パネルの強度特性および構造的完全性が減少し、かつ、パネルを通る熱の透過を半時間さえも遅らせる能力も減少すると考えられている。より詳細には、その強度および構造的完全性が低いと予想され、かつ意図的に低い石膏含有量を有するパネルは、収縮力、および比較的高熱の条件または火炎条件との接触によって引き起こされる他の応力に過度に脆弱であり、かつそのような条件に伴う熱の吸収および遮断において効果的でないと予想されているので、それらのパネルは、これらの用途において特に懸念される。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0037】
石膏スラリー中のシロキサンの使用は、シリコーン樹脂を原位置で形成することによって、完成したパネルに耐水性を付与する有用な手段である
が、シロキサンは、軽量かつ低密度のパネルを十分に保護しないと予想される。したがって、当該分野では、シロキサンによって通常付与される耐水性を増強することによって合理的なコストにおいて、改善された耐水性を有する軽量かつ低密度の耐火性石膏パネルを作製する方法が必要とされている。」
ウ 「【課題を解決するための手段】
・・・
【0051】
本発明の別の利点は、パネルの寸法安定性である。この反応を触媒するために使用されるいくつかの化合物は、パネルが乾燥するにつれて有意な膨張を生じる。パネルの内部が膨張すると、外面に亀裂が生じ、パネルに損傷を与える。フライアッシュおよび酸化マグネシウムを使用することにより、完成したパネルにおける膨張が非常に少なくなり、亀裂が非常に少なくなる。重合シリコーン樹脂が高温加熱条件下でのパネルの収縮を減少させることも予想外に見出された。」
エ 「【発明を実施するための形態】
・・・
【0071】
参照により本明細書中に援用されるYu et al.に対する米国特許第6,409,825号明細書に記載されているように、本発明の石膏含有組成物において促進剤が使用され得る。
1つの望ましい耐熱性促進剤(HRA)は、粉末石膏(硫酸カルシウム二水和物)の乾式粉砕物から生成され得る。
このHRAを生成するために、糖、デキストロース、ホウ酸およびデンプンなどの少量の添加物(通常、約5重量%)を使用することができる。糖すなわちデキストロースが、現在のところ好ましい。
別の有用な促進剤は、
参照により本明細書中に援用される米国特許第3,573,947号明細書に記載されているような
「気候安定化促進剤(climate stabilized accelerator)」または「気候安定促進剤(climate stable accelerator)」(CSA)である。
・・・
【0102】
遅延剤/促進剤。漆喰水和反応が起きる速度を改変するために、固化遅延剤(最大約2lb/MSF(9.8g/m
2
))または乾燥促進剤(最大約35lb/MSF(170g/m
2
))が、コアスラリーのいくつかの態様に加えられ得る。「CSA」は、5%糖と共に粉砕され、250°F(1-21°C)に加熱されてその糖がカラメルになった、95%硫酸カルシウム二水和物を含む固化促進剤である。
CSAは、USG Corporation,Southard,Okla.plantから入手可能であり
、参照により本明細書中に援用される米国特許第3,573,947号明細書に従って調製される。硫酸カリウムが、別の好ましい促進剤である。好ましい促進剤であるHRAは、硫酸カルシウム二水和物の100ポンドあたり約5~25ポンドの糖の比で糖とともに粉砕されたばかりの硫酸カルシウム二水和物である。それは、参照により本明細書中に援用される米国特許第2,078,199号明細書にさらに記載されている。これらの両方が、好ましい促進剤である。
・・・
【0110】
好ましくは、シロキサンは、通常、流動性の直鎖状水素修飾シロキサンであるが、環状水素修飾シロキサンでもあり得る。そのようなシロキサンは、高度に架橋されたシリコーン樹脂を形成することができる。そのような流体は、当業者に周知であり、商業的に入手可能であり、上記特許文献に記載されている。通常、本発明の実施において有用な直鎖状水素修飾シロキサンは、以下の一般式の反復単位を有するシロキサンを含む:
【化2】
23
153
0001436208000008.jpg
式中、Rは、飽和または不飽和の一価炭化水素ラジカルである。好ましい実施形態において、Rは、アルキル基であり、最も好ましくは、Rは、メチル基である。重合中に、末端基が縮合によって除去され、シロキサン基が互いに連結されることにより、シリコーン樹脂が形成される。それらの鎖の架橋も起きる。得られたシリコーン樹脂は、それが形成するとき、石膏マトリックスに耐水性を付与する。
・・・
【0127】
なおも他の実施形態において、
石膏パネルは、固化した石膏の重量に基づいて少なくとも0.4重量%のシロキサンを含む。いくつかの実施形態において、そのパネルの高温収縮は、シロキサンを含まない同じ構成物の量のパネルの高温収縮より小さい。
いくつかの実施形態において、石膏パネルは、2重量%超のアルファ化デンプンを含む。いくつかの実施形態において、そのパネルの高温収縮は、シロキサンを含まない同じ構成物の量のパネルの高温収縮より小さい。いくつかの実施形態において、そのパネルの高温収縮は、シロキサンを含まない同じ構成物の量のパネルの高温収縮の約50%である。」
(8) 甲第8号証の記載
甲第8号証には、「硫酸カルシウムベースの製品」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された高温抵抗性の硫酸カルシウムベースの製品、特に高温において減少した収縮性を有する硫酸カルシウムベースの製品に関する。」
イ 「【背景技術】
・・・
【0004】
ウォールボード又は天井タイルが、建物火災において遭遇するもの、又は高温の流体を移送するダクトを収容するために用いられるウォールボードが遭遇するもののような高い温度に曝されると、石膏内に含まれている結晶水が排除されて硫酸カルシウムの無水石膏が生成する。初めは、これは、ウォールボード/天井タイルを横切る熱伝達が減少して、ダクトから放射されるか又は建物火災中に生じる熱を封じ込めるのが促進されるという有利性を有する。しかしながら、約400~450°Cの温度においては、初めに形成されたAIII相の無水石膏(γ-CaSO
4
又は「可溶性」無水石膏としても知られる)がAII相(又は「不溶性」無水石膏)に転化し、この相変化によってウォールボード/タイルの収縮、即ち寸法安定性の損失がもたらされる。この収縮(ウォールボード/タイルの長さ又は幅の約2%、或いはウォールボードの体積の約6%になる可能性がある)によって、しばしば、ウォールボードがそれらの支持構造体から剥離する。これは明らかに望ましくない。これによって、ダクトが高温に曝された状態にされる可能性がある。更に、ウォールボードを屋内仕切壁のために用いていて、火災が発生した状況においては、収縮によって隙間が残されて、火源に隣接している部屋が熱/炎の影響に曝される可能性がある。また、隙間によって火源中に酸素が侵入し、火に燃料が注がれて防火扉の効果が失われる。
・・・
【0007】
例えば、
収縮を減少させるためにウォールボードの石膏コア中における添加剤としてマイクロシリカを用いる
ことが、EP-0258064から公知である。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
・・・
【0024】
硫酸カルシウムベースの製品には、MPPに関して観察される硬化時間の僅かな遅延を相殺する促進剤のような添加剤を含ませることができる。促進剤は、例えば、糖又は界面活性剤の添加剤を有する新しく粉砕した石膏であってよい。
かかる促進剤としては、Ground Mineral NANSA(GMN)、耐熱性促進剤(HRA)、及びボールミル促進剤(BMA)を挙げることができる。或いは、促進剤は、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、又は硫酸カリウムのような化学添加剤であってよい。
幾つかの場合においては、複数の促進剤の混合物、例えば硫酸塩促進剤と組み合わせたGMNを用いることができる。更なる代案として、例えばUS-2010/0136259に記載されているように、超音波を用いてスラリーの硬化速度を加速させることができる。」
エ 「【実施例】
・・・
【0038】
対照試料1:
1500gのスタッコを(スタッコの重量に対して)0.1重量%の粉砕石膏促進剤(GMN:Ground Mineral NANSA)とブレンドし、40°Cにおいて1350gの水に加えた。これを大型のワーリングブレンダー内で10秒間混合し、得られたスラリーを100×50×11mm及び200×200×12.5mmの真鍮製の金型に注入して硬化させた。親指硬化は10分間未満であった。親指硬化は、硬化している石膏の一部の上に親指の端を押し付けることによって測定される。硬化している石膏中にもはや跡を形成することができないような十分な強度が得られる時点を記録する。試料を1時間水和させた後、これらを40°Cのオーブンに移し、一晩(少なくとも12時間)乾燥させた。
・・・
【0046】
このメラミンピロホスフェートと比較するために、(a)上記と同様であるが、メラミンピロホスフェートを加えない石膏シリンダー、(b)上記と同様であるが、メラミンピロホスフェートに代えて2.5重量5のMPPを加えた石膏シリンダー、及び(c)上記と同様であるが、メラミンピロホスフェートを加えず、(スタッコの重量を基準として)2.0重量%のマイクロシリカを加えた石膏シリンダーを形成した。比較の結果を下記において議論し、図3に示す。
・・・
【0051】
線収縮:
直線変位変換器に取り付けたセラミック棒を用いて、200×200×12.5mmの試料の線収縮を測定した。
試料を他の複数のセラミック棒によって支持し、加熱炉内において1000°Cに(約44°C/分の初期速度で600°Cまで、次に徐々にゆっくりと減少した速度で)加熱した(ISO-834に準拠)。
結果を図2に示す。
・・・
【0053】
図3は、メラミンピロホスフェートに関する線収縮の結果を示す。収縮の減少はMPPを用いて得られたものと匹敵する、即ち、対照試料(メラミンピロホスフェートを有しない)に関する約19%と比べて約10%の収縮であることが分かる。」
オ 「【図3】
111
153
0001436208000009.jpg
」
(9) 甲第9号証の記載
甲第9号証には、「改善された耐高温性を有する石膏建築材料」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏建築材料において、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素
、ならびに任意選択でさらなる添加剤を含み、
前記H-シロキサンが、前記石膏建築材料中に均一に分布する
、および/または前記石膏建築材料の少なくとも1つの表面に塗布されることを特徴とし、
少なくとも80°Cの温度の影響下にある前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない石膏建築材料よりも長い膨張段階を有し、前記石膏建築材料が、それ以外は同一組成であることを特徴とする、石膏建築材料。
【請求項2】
前記石膏建築材料の前記膨張段階が、同一組成であるがH-シロキサンまたは非晶質二酸化ケイ素を含まない前記石膏建築材料の前記膨張段階の少なくとも1.2倍の前記時間
、好ましくは少なくとも2倍の前記時間、および特に好ましくは少なくとも2.5倍の前記時間であることを特徴とする、請求項1に記載の石膏建築材料。
【請求項3】
最初の60分間、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従った温度の影響下にあり、次の60分間、常に950°C下にある前記石膏建築材料が、同一組成であるがH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない石膏建築材料よりも小さい収縮率を有することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項4】
前記石膏建築材料の前記収縮率が、同一組成であるがH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない石膏建築材料の前記収縮率よりも少なくとも10%低い、好ましくは少なくとも50%低い、および特に少なくとも75%低いことを特徴とする、請求項3に記載の石膏建築材料。
【請求項5】
前記石膏建築材料が、使用されるスタッコの質量に対して、0.01~10重量%のH-シロキサンを含む
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項6】
前記石膏建築材料が、使用されるスタッコの量に対して、少なくとも0.5重量%、および最大20重量%
、好ましくは最大10%y重量、および特に好ましくは最大6重量%
の非晶質二酸化ケイ素を含む
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項7】
前記石膏建築材料が、1~2.5重量%のH-シロキサンおよび1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項6に記載の石膏建築材料。
【請求項8】
前記非晶質二酸化ケイ素が、マイクロシリカおよび/または熱分解的に生成された二酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項9】
前記石膏建築材料が、石膏建築ボードであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項10】
前記石膏建築ボードの少なくとも1つの表面が、H-シロキサンで処理されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項11】
前記石膏建築ボードの少なくとも2つの表面、好ましくは上面および下面が、H-シロキサンで処理されていることを特徴とする、請求項10に記載の石膏建築材料。
【請求項12】
前記石膏建築ボードが、少なくとも1つの第1のエッジ層およびコア層を有し、少なくとも前記第1のエッジ層が、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含有することを特徴とする、請求項9に記載の石膏建築材料。
【請求項13】
石膏建築ボードを製造するための方法において、少なくとも1つのスラリーが、少なくともスタッコと水とが互いに混合されることで製造され、前記スラリーが、石膏建築ボードの切れ目のないストランドへと形成されて、次いでこれが石膏建築ボードに分離され、前記石膏建築ボードが乾燥され、前記スラリーを製造するために、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素がさらに使用されること
、および/または少なくとも80°Cの温度の影響下にある前記石膏建築ボードがH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない石膏建築ボードよりも長い膨張段階を有するように、H-シロキサンが、前記石膏建築ボードの切れ目のないストランドまたは前記分離された石膏建築ボードの少なくとも1つの表面に塗布され、前記石膏建築ボードが、それ以外は同一組成であることを特徴とする、
方法。
【請求項14】
少なくとも1つの第1のおよび1つの第2のスラリーが、製造され、前記第1のスラリーが、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含有し、前記第1のスラリーが、前記石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層を形成するために使用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
温度の影響下で石膏建築材料の
収縮率を低減する
ためのH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素の使用であって、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従った前記石膏建築材料が、0~60分間、950°Cまで加熱され、常に950°Cの一定温度に保ちながら60~120分間処理され、前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび/また非晶質二酸化ケイ素を含まないがそれ以外は同一組成の石膏建築材料と比較して、より長い膨張段階
および/またはより小さい収縮率
を有する、使用。
」
イ 「【課題を解決するための手段】
・・・
【0010】
したがって、本発明による石膏建築材料は、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカを含む。
当業者に知られているさらなる添加剤を任意選択で含有される。
H-シロキサンは、石膏建築材料中で均一に分布することができ
、および/または石膏建築材料の少なくとも1つの表面に塗布することができる。本発明による石膏建築材料の具体的な特徴は、
少なくとも80°Cの温度の影響下にある石膏建築材料が、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まないが、それ以外は同一組成である石膏材料よりも時間的に長い膨張段階を有するという事実にある。
さらに、石膏建築材料は、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない同一の石膏建築材料よりも温度収縮が少ない。
・・・
【0014】
任意選択で提供されるさらなる添加剤は、石膏建築材料用の添加剤として当業者に知られている。これらは、例えば、促進剤、遅延剤、液化剤、増粘剤、殺生物剤、殺菌剤などであり得る。
・・・
【0021】
本発明による石膏建築材料の膨張段階は、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない同一組成の石膏建築材料の膨張段階よりも、好ましくは少なくとも1.2倍長い
、好ましくは少なくとも2倍長い、特に好ましくは少なくとも2.5倍長い。膨張段階中、石膏建築材料は安定したままである。結晶水の排出は、エネルギーを消費する吸熱プロセスであり、したがって、石膏建築材料のさらなる加熱を一時的に阻止するか、または少なくとも低減する。膨張段階の延長により、例えば建築物の避難に利用可能である時間を延長することができる。
【0022】
同等の結果を実現するために、本発明による石膏建築材料の試料本体は、加熱の最初の60分間、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って温度適用を施された。それを基準にして、炉の温度は、以下の比率を満たす必要があり:
T=345 log10(8t+1)+20
式中、
Tは、平均炉温度(摂氏度)であり、tは、経過した時間(分)である。最初の60分間で、試料を約950°Cまで加熱した。この初期期間の後、実行された試験による温度適用は、DIN EN1363-1:2012-10から逸脱した:60~120分の試験実行時間、950°Cの一定の温度適用を使用した。本発明による組成を有する試料は、同一組成であるがH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない試験片よりも小さい収縮率を有する。
【0023】
本発明による建築材料の収縮率は、同一組成であるがH-シロキサンまたはマイクロシリカを含まない石膏建築材料の収縮率よりも、好ましくは少なくとも10%低い、好ましくは少なくとも50%、および特に少なくとも75%低い。上述のように、石膏のタイプ、重量、サイズ、および適用可能な場合、製造方向に対する向きは、同等でなければならない。
【0024】
本発明の実施形態によれば、
石膏建築材料は、使用されるスタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンを含む。
石膏建築材料は、使用されるスタッコの量に対して少なくとも2重量%のH-シロキサンを含むことが好ましい。H-シロキサンの使用についての上限は一般に重要ではなく、むしろコストの考慮である。しかしながら、H-シロキサン含有量の増加に伴う試料本体の収縮への影響は、閾値(提案された手段ではさらに低減することができない最小収縮率に対応する)に近づいているように見え、さらにH-シロキサンは比較的コストがかかる添加剤であるため、使用されるスタッコの量に対して5重量%以下のH-シロキサンを使用することが有利である。最適なコスト:使用比率を実現するために、マイクロシリカがさらに添加されない場合、使用されるスタッコの量に対する3~4.5重量%のH-シロキサンの範囲が、石膏建築材料中に均一に分布するH-シロキサン用に提案される。H-シロキサンと非晶質二酸化ケイ素との組み合わせを使用する場合、H-シロキサンの含有量は、添加される非晶質二酸化ケイ素の量に依存して、有利に大幅に低減することができる。
・・・
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、
石膏建築材料は、使用されるスタッコの量に対して、少なくとも0.5重量%の非晶質二酸化ケイ素、
特にマイクロシリカを
含有することができる。
H-シロキサンの代わりに、またはH-シロキサンに加えて、非晶質二酸化ケイ素を石膏建築材料中に含有させることができる。しかしながら、
最大で20重量%以下の非晶質二酸化ケイ素を使用する必要がある。
最大10重量%または最大6重量%の非晶質二酸化ケイ素などのより少ない量で使用されることが好ましい。使用される非晶質二酸化ケイ素の実際の量は、とりわけ、H-シロキサンもさらに含まれるかどうかに依存する。この場合、少量の非晶質二酸化ケイ素で十分である。
【0027】
H-シロキサンの含有量は、非晶質二酸化ケイ素の含有量よりも低いことが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態によれば、石膏建築材料は、例えば、1~2.5重量%のH-シロキサンと1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素との組み合わせを含むことができる。
【0028】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、石膏建築材料は石膏建築ボードである。石膏建築ボードの少なくとも1つの大きい表面がH-シロキサンでコーティング、塗装、スプレー塗布、またはその他の方法で処理される場合、石膏建築ボードの耐火性は、効果的に向上する。特に、石膏建築ボードの上面または可視面は、典型的には、潜在的な火災に直接さらされる面であるため、H-シロキサンで処理する必要がある。石膏建築ボードの両方の大きい表面、具体的には上面および下面の両方の処理は、さらにより効果的である。
【0029】
石膏建築ボードを製造するための本発明による方法は、少なくとも(スタッコ)と水とを互いに混合することによる少なくとも1つのスラリーの製造を含む。次いで、このスラリーは、石膏建築ボードの切れ目のないストランドに成形され、石膏が十分に凝結すると、個々の石膏建築ボードに分離される。スタッコおよび水に加えて、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカは、スラリーの製造のために添加することができる。
あるいはまたは加えて、H-シロキサンは、石膏建築ボードの切れ目のないストランドまたは分離された個々の石膏建築ボードの少なくとも1つの表面に塗布することができる。
少なくとも80°Cの温度の影響下にあるH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を備えた石膏建築ボードは、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない石膏建築ボードよりも長い膨張段階を有しており、石膏建築ボードはそれ以外は同一組成である。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの第1のおよび1つの第2のスラリーを製造することができ、少なくとも第1のスラリーが、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含有し、第1のスラリーが、石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層を形成するために使用される。エッジ層、すなわちライナーと直接接触している層は、軽量の石膏建築ボードの場合に特に有利である。それは、典型的には、さらに内側に配置されたコア層よりも高密度である。より高い密度により、ライナーとボードコアとの間の接触面積が増加し、それによって、ライナーがコアとより良好に結合される。さらに、エッジ層は、ボードをそれほど重くすることなく、機械的特性を大幅に向上させる。H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素の導入により、それ自体が知られているエッジ層が得られ、またさらなる利点として、それがボードの耐火性を向上させる。同様に、添加剤、すなわちH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素は、ボードコア全体ではなく、薄いエッジ層(厚さ<7mm)に添加剤を提供する必要があるだけであるため、比較的少量だけが単に必要であるということが有利である。
【0031】
高温の影響下での石膏建築材料の
収縮率を低減する
ために、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素の使用についての保護も求められる。
これらの物質が使用される
石膏建築材料は、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って最初の60分間加熱し、その後上記のように950°Cに保つとき、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まないがそれ以外は同一組成を有する石膏建築材料の収縮率および または膨張時間と比較して、
収縮率および/または
延長された膨張時間
が少ない。試験では、
石膏建築材料の試料は、0~60分間、950°Cまで加熱され、60~120分間、常に950°Cに保つ。
」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0034】
調査した角柱(試験片)は、以下のように製造した:スタッコおよび促進剤を事前に混合して、ドライミックスを形成した。長さの変化を図1~5に示す試料は、70重量%のFGD(排煙脱硫)石膏および30重量%の天然石膏から得られたスタッコを使用して製造した。長さの変化を図6に示す角柱は、実質的に7重量%のFGD石膏を含む天然石膏から得られたスタッコから製造した。ドライミックスを水の中にばらまき、この量は、0.6の水-石膏値に対応し、泡立て器を使用して短い浸漬時間後に混合した。このように製造したスラリーを使用して、16×4×2cm
3
の大きさの角柱を打設し、これを混合の25分後に離型した。このように製造された角柱は、40°Cの乾燥キャビネット内で一定重量まで乾燥した。次いで、角柱をサイズ(10×4×2cm
3
)に切断した。
・・・
【0049】
スタッコ、水、および促進剤から製造された角柱は、乾燥キャビネット内で乾燥した後、H-シロキサンでコーティングした。H-シロキサンの量は、角柱内の二水和物の量に対して約0.2重量%に対応した。さらなる角柱は、両面上をH-シロキサンでコーティングした。塗布量は、角柱内の二水和物の量に対して約1.1重量%に対応する。」
(10) 甲第10号証の記載
甲第10号証には、「断熱耐火材組成物とこれを用いた断熱耐火材」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性アルカリ珪酸塩と無機質粉末とを主成分とし
、珪素原子に水素原子が直接結合した構造を有する珪素化合物が配合された水性ペーストからなる
断熱耐火性組成物。
【請求項2】
前記珪素化合物が次式;
27
127
0001436208000010.jpg
で表されるシリコーン系化合物からなる請求項1記載の断熱耐火性組成物。
・・・
【請求項5】
前記無機質粉末として微粒子状シリカを含む請求項1~4のいずれかに記載の断熱耐火性組成物。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種基材の内部の耐火断熱充填層や表面の耐火被覆層を形成するのに用いられる断熱耐火組成物と、この組成物を用いた断熱耐火材に関する。」
ウ 「【0019】
【発明の実施の形態】
・・・
【0038】
上記の耐火被覆層を形成する基材としては、特に制約はなく、例えば、鉄骨の如き鋼材を始めとする各種構造材、建物の内外壁や天井部、間仕切り、建具、屋外通路壁、トンネル内壁、器壁等が挙げられる。一方、耐火充填層についても形成対象に特に制約はなく、例えば、断熱・耐火性外被としての多重管の内外筒間に充填したり、建物や構造物の壁材、天井材、床材、間仕切り、建具等に使用される中空パネルの内部に充填し、これらを高断熱・高耐火性のものとできる。また、耐火被覆層や耐火充填層を形成する基材の材質についても特に制約はなく、不燃物及び可燃物のいずれでもよく、例えば、鉄を始めとする各種金属、スレート、コンクリート、木材、合板、紙管、ダンボール、圧縮板紙、合成樹脂、FRP等の広範な材質が対象となる。」
本件特許の願書に添付された明細書、及び図面(以下、それぞれ、「本件明細書」、「本件図面」といい、本件特許請求の範囲とまとめて「本件明細書等」という。)には、次の記載がある。
(1) 「【背景技術】
【0002】
多くの石膏建築材料は、従来技術から知られている。石膏(CaSO
4
・2H
2
O)の結晶含水量により、石膏建築材料は、火災の場合の有利な特性を有する。石膏が加熱されるとき、結晶水は、最初に石膏から放出される。このプロセスは吸熱であるため、結晶水の排出により、石膏建築材料が冷却される。水の排出が増加すると、最初に硫酸カルシウム半水和物(CaSO
4
・1/2H
2
O)が形成され、続いて無水相無水石膏(CaSO
4
)が形成される。
【0003】
しかしながら、石膏から、より低い含水量を有するか、もしくは無水である硫酸カルシウム半水和物または無水石膏相への移動が材料体積の減少と関連していることは、不利である。さらに、材料の焼結は、体積のさらなる損失につながる。この体積減少により、建築材料が収縮する。金属スタッド骨組みに適用された石膏ボードは、例えばそれらのアタッチメントから断裂し始める。乾式壁建造物の個々の部分が乾式壁建造物から落下する場合があり、これは部屋にいる個人に負傷のリスクを構築する。他方では、建築ボードの破壊はまた、火が乾式壁建造物の裏側を突き破る場合があり、さらなる部屋の中に広がり得ることを意味する。
【0004】
したがって、より長い時間周期にわたる火災の影響下での石膏建築材料の破壊を遅延または阻止することを意図する手段が従来技術から知られている。粘土または延焼材料などの耐火性充填剤材料が添加されることが多い。例えば、石膏材料にバーミキュライトを導入することが知られている。バーミキュライトは、膨張、または原料のまま、すなわち非膨張であり得る。原料のままのバーミキュライトは、火災の場合に膨張し、体積収縮を少なくとも部分的に補償することを意図している。
【0005】
石膏製品の防水のためのシロキサンの使用は、従来技術から長く知られており、何度も記載されてきた。」
(2) 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの手段は、全体では依然としてまだ満足のいくものではなく、したがってこの問題に対する新たな解決策が求められる。
【0007】
本発明の目的は、
向上した耐火性を有し、特に、火が乾式壁建造物の裏側を突き破るのにかかる時間を少なくとも大幅に遅延させる石膏建築材料を提供することにある。
」
(3) 「【課題を解決するための手段】
・・・
【0010】
したがって、
本発明による石膏建築材料は、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカを含む。
当業者に知られているさらなる添加剤を任意選択で含有される。
H-シロキサンは、石膏建築材料中で均一に分布することができ
、および/または石膏建築材料の少なくとも1つの表面に塗布することができる。本発明による石膏建築材料の具体的な特徴は、
少なくとも80°Cの温度の影響下にある石膏建築材料が、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まないが、それ以外は同一組成である石膏材料よりも時間的に長い膨張段階を有する
という事実にある。さらに、石膏建築材料は、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない同一の石膏建築材料よりも温度収縮が少ない。
【0011】
本発明の範囲内で、「石膏建築材料」という用語は、事前成形された本体、例えば石膏建築ボードまたは仕切り壁ボード、およびまたプラスター、充填剤、またはスクリードなどの材料から製造された本体の両方を意味し
、この成形は表面への塗布によってのみ実行される、と理解されるべきである。
・・・
【0013】
本発明の範囲内の「非晶質二酸化ケイ素」という用語は、特にマイクロシリカ(シリカフューム)を含むものとする。
マイクロシリカは微粉末(nm~μmの範囲のD50)であり、例えば、ケイ素またはケイ素合金の製造における副産物として発生する。マイクロシリカは、粒子状物として、または他の方法で、例えば溶媒、例えば水を含む懸濁液の形態で使用することができる。マイクロシリカは、例えばElkem社(Oslo,Norway)から調達することができる。
他の非晶質ケイ素化合物としては、例えば熱分解的に製造されたヒュームドシリカも適切である。
【0014】
任意選択で提供されるさらなる添加剤は、石膏建築材料用の添加剤として当業者に知られている。これらは、例えば、促進剤、遅延剤、液化剤、増粘剤、殺生物剤、殺菌剤などであり得る。
・・・
【0018】
しかしながら、温度適用下での試料本体の実際の収縮が始まる前に、試料本体は最初に膨張する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、この膨張は、石膏からの結晶水の排出および水蒸気へのその転化に関連していると仮定される。石膏建築材料の膨張の時間周期は、本発明の範囲内では「膨張段階」と呼ばれる。膨張段階は、試料本体の加熱で始まり、試料本体が加熱開始前よりも短い長さを有する時点で終了する。
・・・
【0021】
本発明による石膏建築材料の膨張段階は、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない同一組成の石膏建築材料の膨張段階よりも、好ましくは少なくとも1.2倍長い
、好ましくは少なくとも2倍長い、特に好ましくは少なくとも2.5倍長い。膨張段階中、石膏建築材料は安定したままである。結晶水の排出は、エネルギーを消費する吸熱プロセスであり、したがって、石膏建築材料のさらなる加熱を一時的に阻止するか、または少なくとも低減する。
膨張段階の延長により、例えば建築物の避難に利用可能である時間を延長することができる。
【0022】
同等の結果を実現するために、本発明による石膏建築材料の試料本体は、加熱の最初の60分間、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って温度適用を施された。それを基準にして、炉の温度は、以下の比率を満たす必要があり:
T=345 log10(8t+1)+20
式中、
Tは、平均炉温度(摂氏度)であり、tは、経過した時間(分)である。最初の60分間で、試料を約950°Cまで加熱した。この初期期間の後、実行された試験による温度適用は、DIN EN1363-1:2012-10から逸脱した:60~120分の試験実行時間、950°Cの一定の温度適用を使用した。本発明による組成を有する試料は、同一組成であるがH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない試験片よりも小さい収縮率を有する。
・・・
【0024】
本発明の実施形態によれば、
石膏建築材料は、使用されるスタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンを含む。
石膏建築材料は、使用されるスタッコの量に対して少なくとも2重量%のH-シロキサンを含むことが好ましい。H-シロキサンの使用についての上限は一般に重要ではなく、むしろコストの考慮である。しかしながら、H-シロキサン含有量の増加に伴う試料本体の収縮への影響は、閾値(提案された手段ではさらに低減することができない最小収縮率に対応する)に近づいているように見え、さらにH-シロキサンは比較的コストがかかる添加剤であるため、使用されるスタッコの量に対して5重量%以下のH-シロキサンを使用することが有利である。最適なコスト:使用比率を実現するために、マイクロシリカがさらに添加されない場合、使用されるスタッコの量に対する3~4.5重量%のH-シロキサンの範囲が、石膏建築材料中に均一に分布するH-シロキサン用に提案される。H-シロキサンと非晶質二酸化ケイ素との組み合わせを使用する場合、H-シロキサンの含有量は、添加される非晶質二酸化ケイ素の量に依存して、有利に大幅に低減することができる。
・・・
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、
石膏建築材料は、使用されるスタッコの量に対して、少なくとも0.5重量%の非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカを含有することができる。
H-シロキサンの代わりに、またはH-シロキサンに加えて、非晶質二酸化ケイ素を石膏建築材料中に含有させることができる。しかしながら、
最大で20重量%以下の非晶質二酸化ケイ素を使用する必要がある。
最大10重量%または最大6重量%の非晶質二酸化ケイ素などのより少ない量で使用されることが好ましい。使用される非晶質二酸化ケイ素の実際の量は、とりわけ、H-シロキサンもさらに含まれるかどうかに依存する。この場合、少量の非晶質二酸化ケイ素で十分である。
・・・
【0029】
石膏建築ボードを製造するための本発明による方法は、少なくとも(スタッコ)と水とを互いに混合することによる少なくとも1つのスラリーの製造を含む。次いで、このスラリーは、石膏建築ボードの切れ目のないストランドに成形され、石膏が十分に凝結すると、個々の石膏建築ボードに分離される。スタッコおよび水に加えて、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカは、スラリーの製造のために添加することができる。
あるいはまたは加えて、H-シロキサンは、石膏建築ボードの切れ目のないストランドまたは分離された個々の石膏建築ボードの少なくとも1つの表面に塗布することができる。
少なくとも80°Cの温度の影響下にあるH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を備えた石膏建築ボードは、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない石膏建築ボードよりも長い膨張段階を有しており、石膏建築ボードはそれ以外は同一組成である。
・・・
【0031】
高温の影響下での石膏建築材料の収縮率を低減するために、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素の使用についての保護も求められる。これらの物質が使用される石膏建築材料は、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って最初の60分間加熱し、その後上記のように950°Cに保つとき、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まないがそれ以外は同一組成を有する石膏建築材料の収縮率および または膨張時間と比較して、収縮率および/または延長された膨張時間が少ない。
試験では、石膏建築材料の試料は、0~60分間、950°Cまで加熱され、60~120分間、常に950°Cに保つ。」
(4) 「【発明を実施するための形態】
【0034】
調査した角柱(試験片)は、以下のように製造した:
スタッコおよび促進剤を事前に混合して、ドライミックスを形成した。
長さの変化を図1~5に示す試料は、70重量%のFGD(排煙脱硫)石膏および30重量%の天然石膏から得られたスタッコを使用して製造した。長さの変化を図6に示す角柱は、実質的に7重量%のFGD石膏を含む天然石膏から得られたスタッコから製造した。
ドライミックスを水の中にばらまき、この量は、0.6の水-石膏値に対応し
、泡立て器を使用して短い浸漬時間後に
混合した。このように製造したスラリーを使用して
、16×4×2cm
3
の大きさの
角柱を打設し、これを混合の25分後に離型した。このように製造された角柱は、40°Cの乾燥キャビネット内で一定重量まで乾燥した。次いで、角柱をサイズ(10×4×2cm
3
)に切断した。
【0035】
角柱がH-シロキサン(Bluestar Silicones(現在はElkem)からのBlueSil WR68)またはマイクロシリカ(Elkem940U)を含有している場合、これらの物質をスラリーに添加する
か、またはシロキサンコーティングの場合は、ブラシを使用して角柱に塗布した。
【0036】
温度適用下での長さの変化は、急速加熱チャンバ炉内で起こった。DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って、チャンバ炉を最初の60分間強く加熱した。その後、炉の温度をさらに950°Cで60分間、一定に保持した。
角柱を、角柱の長さの変化に任意の抵抗を与えないローラーホルダに位置付けた。角柱の一方の狭面を当接面に配置し、距離記録計を備えたスプリングアームが反対側の狭面に力を加え、この力により角柱が当接部に固定される。距離記録計は、角柱の長さを継続的に記録した。角柱の長さの変化は、温度適用前の角柱の長さから、温度適用中の時間のある瞬間(実質的に連続的に測定される)での角柱の長さを減算することによって得た。
・・・
【0044】
同様の効果は、非晶質二酸化ケイ素、または図2に示す結果の場合のマイクロシリカとして知られているものの添加によって提供されるように見える。4重量%のマイクロシリカ含む角柱の実際の膨張段階は、確かに参照試料の膨張段階よりもごくわずかに長いように見える。しかしながら、20~60分の角柱のその後の縮み(1%未満の縮み)は、角柱の元の長さと比較して非常に短い。焼結中の長さの減少は、比較的わずかである。しかしながら、温度適用後の角柱は、未処理の試料よりも約10%短い。比較により、5重量%のH-シロキサンの添加は、辛うじて2%の収縮率につながる。
【0045】
図3~5は、H-シロキサンとマイクロシリカの様々な量の組み合わせを含有する角柱の経時的な収縮を示す。
図3の角柱は、H-シロキサンもマイクロシリカも含有しない参照試料を除いて、全てが0.2重量%のH-シロキサンを含有する。0.2重量%のH-シロキサンのみを含有する角柱と比較して、1重量%のマイクロシリカを添加することにより、角柱の膨張段階が約5分だけ延長され、収縮率をわずかに低下させる。しかしながら、4重量%のマイクロシリカを添加する場合、膨張段階が10分だけ延長され、収縮率は半分になる。少量のH-シロキサンと大量のマイクロシリカとの効果の組み合わせは、一方では0.2重量%のH-シロキサン(図3)を含む角柱、および他方では4重量%のマイクロシリカ(図2)を含む角柱の効果の追加から得られる効果と比較して、収縮率を過大に低下させるように見える。
【0046】
1重量%のH-シロキサンと2重量%のマイクロシリカとの組み合わせで、ほぼ同じ収縮率の低下を達成することができる(図4を参照)。しかしながら、H-シロキサンのより高い含有量は、一般に、膨張段階の延長につながる。
【0047】
図5は、2.5重量%のH-シロキサンを1重量%のマイクロシリカと組み合わせた場合、温度適用下での石膏角柱の収縮がほぼ完全に排除することができる(<1.5%)ことを示す。4重量%のマイクロシリカを添加した場合、収縮率は約0.5%にすぎない。
・・・
【0049】
スタッコ、水、および促進剤から製造された角柱は、乾燥キャビネット内で乾燥した後、H-シロキサンでコーティングした。H-シロキサンの量は、角柱内の二水和物の量に対して約0.2重量%に対応した。さらなる角柱は、両面上をH-シロキサンでコーティングした。塗布量は、角柱内の二水和物の量に対して約1.1重量%に対応する。」
(5) 「【図2】
96
153
0001436208000011.jpg
【図3】
98
153
0001436208000012.jpg
【図4】
96
153
0001436208000013.jpg
【図5】
96
153
0001436208000014.jpg
」
事案に鑑み、申立理由3(明確性要件違反)、申立理由2(サポート要件違反)、申立理由1(分割不適法を前提とする新規性欠如)、申立理由4(進歩性欠如)の順に検討する。
(1) 申立理由3(明確性要件違反)について
ア 明確性要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
以下、この観点に立って検討する。
イ 申立人が主張する明確性要件違反について
申立人は、以下の(ア)~(キ)の点で、本件特許請求の範囲の記載が不明確である旨を主張している(特許異議申立書の第50~55ページ)。
(ア) 本件明細書には、「非晶質二酸化ケイ素」について、「マイクロシリカ」と「熱分解的に製造されたヒュームドシリカ」以外の記載がなく、また、本件明細書に効果があるとして開示されているのは、マイクロシリカの使用量が1重量%、2重量%、4重量%の場合のみであるところ、マイクロシリカ以外の非晶質二酸化ケイ素を含む場合の使用量について、本件明細書に何ら記載されていないので、請求項1の「0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含み、非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み」との記載が明確でない(理由a)。
(イ) 石膏建築材料には、粉体材料、塗材、成形体材料等の種類があることが技術常識であるところ、請求項1の「石膏建築材料において、少なくとも石膏と、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素と、を含み」との記載における、石膏、H-シロキサン、及び非晶質二酸化ケイ素が粉体であるから、請求項1に記載された「石膏建築材料」は粉体材料であると理解される。そうすると、請求項1に記載の「膨張段階を有する」は、本件明細書の【0018】の説明と整合せず、明確でない(理由b-1)。
請求項15に記載の「石膏建築材料」の「少なくとも1つの表面上」、及び請求項22に記載の「石膏建築材料の膨張段階を延長する」についても、同様に明確でない(理由g、理由l)。
(ウ) 請求項1、19に記載の「少なくとも80°Cの温度の影響下」について、本件明細書に説明がなく、その技術的意味が全く不明である(理由b-2、理由j)。
(エ) 請求項1、19に記載「膨張段階の時間」の測定対象が不明で、測定条件も不明であり、「膨張段階の時間」を測定することができない(理由b-2、理由b-3、理由k)。
(オ) 請求項2に記載の「添加剤」について、本件明細書の【0014】には、「これらは、例えば、促進剤、遅延剤、液化剤、増粘剤、殺生物剤、殺菌剤などであり得る。」(前記3(3)参照)と記載されているのみである。一方、本件明細書において、「膨張段階の時間」を測定するための角柱に使用しているのは「促進剤」だけであるが、「促進剤」について何ら記載がなく、不明である(理由d)。
(カ) 請求項6に記載の「前記収縮率」は、請求項6が引用する請求項5に「収縮率」が1つしか記載されていないため、不明確である(理由e)。
(キ) 請求項2~18は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するため、前記(ア)~(エ)と同様の理由で明確でない(理由c、理由f、理由g、理由i)。
また、請求項16、17は、請求項15の記載を直接又は間接的に引用するため、前記(イ)と同様の理由で明確でない(理由h)。
ウ 明確性要件に対する判断
(ア) まず、申立人の前記ア(ア)の主張について検討する。
本件請求項1の「前記石膏建築材料が」「0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含み、非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み」との記載は、石膏建築材料が非晶質二酸化ケイ素を0.5重量%~20重量%の割合で含有し、この非晶質二酸化ケイ素の一部又は全部がマイクロシリカであるということである。
また、「非晶質二酸化ケイ素」について、本件明細書の【0013】に「本発明の範囲内の「非晶質二酸化ケイ素」という用語は、特にマイクロシリカ(シリカフューム)を含むものとする。」、「他の非晶質ケイ素化合物としては、例えば熱分解的に製造されたヒュームドシリカも適切である。」(前記3(3)参照)と記載され、さらに、本件明細書に、非晶質二酸化ケイ素を特定材料に限定解釈することが記載されていないことを踏まえると、本件請求項1に記載の「非晶質二酸化ケイ素」は、マイクロシリカ(シリカフューム)やヒュームドシリカ以外の種類も含むものである。
そして、本件請求項1では、「少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」ことを特定しているため、本件請求項1に記載の「非晶質二酸化ケイ素」に含有するマイクロシリカ以外の非晶質二酸化ケイ素の種類やその含有量は、前記「少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」ことを満足するものに限定されることも理解できる。
したがって、本件請求項1の「前記石膏建築材料が」「0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含み、非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み」との記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえない。
(イ) 前記ア(イ)の主張について検討する。
本件明細書の【0011】に「本発明の範囲内で、「石膏建築材料」という用語は、事前成形された本体、例えば石膏建築ボードまたは仕切り壁ボード、およびまたプラスター、充填剤、またはスクリードなどの材料から製造された本体の両方を意味し」(前記3(3)参照)と記載されているように、本件請求項1に記載の「石膏建築材料」は、事前成形された本体、又は、粉体材料や塗材などから製造された本体であって、成形体材料であることは明らかである。
そして、本件請求項1では、成形体材料である「石膏建築材料」に対して「膨張段階を有する」ことを特定しているから、本件請求項1の「膨張段階を有する」との記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえないし、本件明細書の【0018】の「しかしながら、温度適用下での試料本体の実際の収縮が始まる前に、試料本体は最初に膨張する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、この膨張は、石膏からの結晶水の排出および水蒸気へのその転化に関連していると仮定される。石膏建築材料の膨張の時間周期は、本発明の範囲内では「膨張段階」と呼ばれる。膨張段階は、試料本体の加熱で始まり、試料本体が加熱開始前よりも短い長さを有する時点で終了する。」(前記3(3)参照)との説明と齟齬していない。
また、本件請求項15の「石膏建築材料」の「少なくとも1つの表面上」との記載は、成形体材料である石膏建築材料の1つ以上の表面上ということであり、本件請求項22の「石膏建築材料の膨張段階を延長する」との記載は、成形体材料である石膏建築材料の膨張段階の時間を延ばすことであるから、これらの記載も第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえない。
(ウ) 前記ア(ウ)の主張について検討する。
本件請求項1の「少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料」との記載、及び本件請求項19の「少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築ボード」との記載は、石膏建築材料又は石膏建築ボードが少なくとも80°Cの温度にさらされていることであるから、これらの記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえない。
また、「少なくとも80°Cの温度」の技術的意味について検討すると、本件明細書の【0018】には、「この膨張は、石膏からの結晶水の排出および水蒸気へのその転化に関連していると仮定される。石膏建築材料の膨張の時間周期は、本発明の範囲内では「膨張段階」と呼ばれる。膨張段階は、試料本体の加熱で始まり、試料本体が加熱開始前よりも短い長さを有する時点で終了する。」(前記3(3)参照)と記載されている。
ここで、石膏からの結晶水の排出は、例えば、参考資料(利光凌他、「加熱法を用いた廃石膏ボード由来再生石膏の半水石膏含有率の測定について」、土木学会西部支部研究発表会、2014年3月、第413~414ページ)に「試薬二水石膏(記号○△□▽)を加熱すると,80°Cで急激に質量の減少が始まり(第1段階),90~100°Cでは変化が認められないが,110°Cでさらに減少し(第2段階),120°C以降は温度の上昇に対して質量の変化がほとんど生じないことがわかる。」(第413ページ右欄18~22行)と記載されているように、室温から温度を上昇させていくと、約80°Cから始まることが技術常識である。
加えて、水は室温状態ではほとんど蒸発せず、室温から沸点(大気圧では100°C)に近づくに従ってより多く蒸発するのが技術常識である。
これらの事項を併せ考えると、本件請求項1では、石膏からの結晶水が排出され、その蒸発量が増えてくる、すなわち、膨張が生じる温度として、「少なくとも80°Cの温度」と特定したものと理解することができ、その技術的意味も明確である。
(エ) 前記ア(エ)の主張について検討する。
本件請求項1には、「膨張段階の時間」の測定対象について、「スタッコを材料とし」、「前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサン及び0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含み、前記非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み、前記H-シロキサンが、前記石膏建築材料中に均一に分布し」ている「石膏建築材料」、及び「H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料」であることが記載され、「膨張段階の時間」の測定条件について、「少なくとも80°Cの温度」であることが記載されている。
また、本件請求項19には、「膨張段階の時間」の測定対象について、「前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンおよび前記スタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素が、前記石膏建築ボード中に均一に分布するように添加され」た「スラリー」から製造された「石膏建築ボード」、及び「H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築ボード」であることが記載され、「膨張段階の時間」の測定条件について、「少なくとも80°Cの温度」であることが記載されている。
したがって、本件請求項1、19の記載は、「膨張段階の時間」の測定対象及び測定条件に関して、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえない。
(オ) 前記ア(オ)の主張について検討する。
本件明細書の【0014】には、「任意選択で提供されるさらなる添加剤は、石膏建築材料用の添加剤として当業者に知られている。これらは、例えば、促進剤、遅延剤、液化剤、増粘剤、殺生物剤、殺菌剤などであり得る。」(前記3(3)参照)と記載されている。
そして、石膏建築材料用の促進剤として、甲第1号証及び甲第8号証に、「Ground Mineral NANSA(GMN)」、「耐熱性促進剤(HRA)」、「ボールミル促進剤(BMA)」、「硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、又は硫酸カリウムのような化学添加剤」(前記2(1)エの【0036】、同(8)ウの【0024】)が記載され、また、甲第6号証、及び甲第7号証に、「耐熱性促進剤(HRA)」、「気候安定化促進剤(CSA)」(前記2(6)イの【0043】、同(7)エの【0071】)、「CSAは、USG Corporation,Southard,Okla.plantから入手可能であ」ること(前記2(7)エの【0102】)が記載されていることから、これらの石膏建築材料用促進剤は、周知の促進剤であるといえる。
以上を踏まえると、本件請求項2に記載の「添加剤」は、促進剤、遅延剤、液化剤、増粘剤、殺生物剤、殺菌剤などの添加剤であって、甲第1号証、甲第6号証~甲第8号証に記載された周知の促進剤などであることを理解できるから、本件請求項2の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえない。
(カ) 前記ア(カ)の主張について検討する。
本件請求項6が引用する本件請求項5の「前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料よりも小さい収縮率を有する」との記載は、石膏建築材料の収縮率が、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の収縮率よりも小さいということであり、本件請求項6の「前記石膏建築材料の前記収縮率が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の前記収縮率」との記載のそれぞれの「前記収縮率」に対応しているから、本件請求項6の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえない。
(キ) 最後に、前記ア(キ)の主張について検討すると、本件請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件請求項2~18の記載、及び、本件請求項15の記載を直接又は間接的に引用する本件請求項16、17の記載は、前記(ア)~(エ)で検討したのと同様に、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえない。
(ク) そして、本件請求項1~22のその余の記載をみても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確な記載は見当たらないから、前記アの判断手法を本件に当てはめると、本件特許請求の範囲の請求項1~22の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件に適合する。
エ 申立理由3(明確性要件違反)についての結論
以上のとおりであるから、申立理由3に理由はない。
(2) 申立理由2(サポート要件違反)について
ア サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
以下、この観点に立って検討する。
イ 本件発明の課題について
本件明細書の発明の詳細な説明(以下、「本件発明の詳細な説明」という。)の【0002】~【0007】の記載(前記3(1)、(2)参照)からして、本件発明の課題は、向上した耐火性を有し、火が乾式壁建造物の裏側を突き破るのにかかる時間を大幅に遅延させる石膏建築材料を提供すること(【0007】)であるといえる。
ウ 本件発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段について
(ア) 本件発明の詳細な説明には、前記3(3)によれば、「本発明による石膏建築材料は、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカを含む」こと(【0010】)、「H-シロキサンは、石膏建築材料中で均一に分布することができ」ること(【0010】)、「少なくとも80°Cの温度の影響下にある石膏建築材料が、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まないが、それ以外は同一組成である石膏材料よりも時間的に長い膨張段階を有する」こと(【0010】)、「本発明による石膏建築材料の膨張段階は、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない同一組成の石膏建築材料の膨張段階よりも、好ましくは少なくとも1.2倍長い」こと(【0021】)、「石膏建築材料は、使用されるスタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンを含む」こと(【0024】)、「石膏建築材料は、使用されるスタッコの量に対して、少なくとも0.5重量%の非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカを含有する」こと(【0026】)、「最大で20重量%の非晶質二酸化ケイ素を使用する必要がある」こと(【0026】)、「石膏建築ボードを製造するための本発明による方法は、少なくとも(スタッコ)と水とを互いに混合することによる少なくとも1つのスラリーの製造を含む。次いで、このスラリーは、石膏建築ボードの切れ目のないストランドに成形され、石膏が十分に凝結すると、個々の石膏建築ボードに分離される。スタッコおよび水に加えて、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカは、スラリーの製造のために添加することができる」こと(【0029】)、「少なくとも80°Cの温度の影響下にあるH-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を備えた石膏建築ボードは、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない石膏建築ボードよりも長い膨張段階を有しており、石膏建築ボードはそれ以外は同一組成である」こと(【0029】)、「高温の影響下での石膏建築材料の収縮率を低減するために、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素の使用についての保護も求められる。これらの物質が使用される石膏建築材料は、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って最初の60分間加熱し、その後上記のように950°Cに保つとき、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まないがそれ以外は同一組成を有する石膏建築材料の収縮率および または膨張時間と比較して、収縮率および/または延長された膨張時間が少ない」こと(【0031】)が記載されている。
(イ) 前記(ア)の記載事項を併せ考えると、本件発明の詳細な説明には、以下の石膏建築材料、石膏建築ボードを製造するための方法、及びH-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素の使用が記載されているといえる。
a 石膏建築材料において、少なくとも石膏と、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素と、を含み、前記石膏建築材料が、スタッコを材料とし、前記石膏建築材料が、前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサン及び0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含み、前記非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み、前記H-シロキサンが、前記石膏建築材料中に均一に分布し、少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する、石膏建築材料。
b 少なくともスタッコと水とが互いに混合されることで少なくとも1つのスラリーが製造され、前記スラリーが、石膏建築ボードの切れ目のないストランドへと形成されて、石膏が十分に凝結すると、複数の石膏建築ボードに分離される方法であり、前記スラリーを製造するために、前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサン及び前記スタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素が、前記石膏建築ボード中に均一に分布するように添加され、前記非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み、それにより、少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築ボードが、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築ボードの膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する石膏建築ボードを製造するための方法。
c 温度の影響下での石膏建築材料の膨張段階を延長するための、石膏建築材料のスタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサン及びスタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素の使用であって、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含み、前記石膏建築材料を、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って、0分から60分まで、950°Cまで加熱し、60分から120分まで、常に950°Cの一定温度に保ちながら処理したときに、前記石膏建築材料が、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成の石膏建築材料と比較して、より長い膨張段階を有し、少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素の使用。
(ウ) 本件発明の詳細な説明には、前記3(4)によれば、前記(イ)aの石膏建築材料の具体例として、スタッコ及び促進剤を事前に混合して形成したドライミックスを水-石膏値が0.6になるように水に混合してスラリーを製造し、このように製造したスラリーを使用して、角柱を打設し、これを混合の25分後に離型し、製造された角柱は、40°Cの乾燥キャビネット内で一定重量まで乾燥した後で切断して、10×4×2cm
3
サイズの角柱としたこと(【0034】)、角柱がH-シロキサン又はマイクロシリカを含有している場合には、これらの物質をスラリーに添加すること(【0035】)、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って、チャンバ炉を最初の60分間強く加熱し、その後、炉の温度をさらに950°Cで60分間、一定に保持したときの角柱の長さの変化を測定したこと(【0036】)、及び、H-シロキサンとマイクロシリカの様々な量の組み合わせを含有する角柱の長さの経時的な収縮を図3~図5に示すこと(【0045】)が記載されている。
そして、前記3(5)の【図3】~【図5】によれば、H-シロキサンを0.2重量%、1.0重量%、又は2.5重量%で添加すると共に、マイクロシリカを1重量%、2重量%、又は4重量%で添加した場合の角柱の膨張段階の延長時間が、H-シロキサン及びマイクロシリカを添加していない角柱の膨張段階の延長時間の約2.5倍~約4倍になっていることが見て取れる。
(エ) 前記(ウ)の具体例に加えて、本件発明の詳細な説明の【0021】の「膨張段階の延長により、例えば建築物の避難に利用可能である時間を延長することができる。」(前記3(3)参照)との記載を踏まえると、前記(イ)の石膏建築材料、石膏建築ボードを製造するための方法、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素の使用は、少なくとも80°Cの温度の影響下において石膏建築材料又は石膏建築ボードが、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料又は石膏建築ボードの膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有しており、建築物の避難に利用可能である時間を延長することができるといえるから、当業者において、本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。
エ 本件特許請求の範囲の記載と本件発明の詳細な説明の記載との対比
本件発明1~22は、前記第2のとおりであって、本件発明1の「石膏建築材料」、本件発明19の「石膏建築ボードを製造するための方法」、本件発明22の「使用」は、それぞれ、前記ウ(イ)の石膏建築材料、石膏建築ボードを製造するための方法、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素の使用と実質的に同じものである。
したがって、本件発明1、19、22は、前記ウ(エ)で検討したのと同様に、当業者において、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
本件請求項1の記載を引用する本件発明2~18、本件請求項19の記載を引用する本件発明20、21についても同様である。
したがって、前記アの判断手法を本件に当てはめると、本件特許請求の範囲の請求項1~22の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に適合する。
オ 申立人の主張について
(ア) 申立人は、以下のa~gの点で、本件特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たさない旨を主張している(特許異議申立書の第29~50ページ)。
a 本件発明の詳細な説明の【0010】、【0014】、【0034】、及び【0049】の記載を踏まえると、本件発明の詳細な説明には、「石膏建築材料において、少なくとも石膏と、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素」に、「さらなる添加剤」を含んでなる材料しか開示されてないから、請求項1の「石膏建築材料において、少なくとも石膏と、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素と、を含み」との規定、及び、請求項19の「少なくとも1つのスラリーが、少なくともスタッコと水とが互いに混合されることで製造され」との規定は、本件発明の詳細な説明の開示範囲を超えるものである(理由A、理由H)。
b 請求項1、22で規定されている「膨張段階の時間」の測定対象は、「促進剤」である「添加剤」を含まないものや、「角柱」以外の「粉体材料」を含むところ、本件発明の詳細な説明には、「膨張段階の時間」の測定対象について、基本構成が、石膏と促進剤と水からなるスラリーを使用して、特定の速度で硬化(凝結)させてなる特有サイズの角柱以外を対象とした測定についての開示はされていないから、請求項1、22の「膨張段階の時間」との規定は、本件発明の詳細な説明の開示範囲を超えるものである(理由B、理由L、理由N)。
c 請求項1では、「前記石膏建築材料が、前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサン及び0.5重量%~2.0重量%の非晶質二酸化ケイ素を含み」と規定され、請求項19では、「前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサン及び前記スタッコの質基に対して0.5重最%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素が、前記石膏建築ボード中に均一に分布するように添加され、前記非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み」と規定され、請求項22では、「スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンおよびスタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素の使用であって、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含み」と規定されているところ、本件発明の詳細な説明で効果を確認しているのは、「非晶質二酸化ケイ素」が「マイクロシリカ」の場合であり、その使用量が1重量%、2重量%、4重量%の場合、及び、「H-シロキサン」の使用量が0.2重量%、1.0重量%、2,5重量%の場合のみであるから、請求項1、19、22の前記規定は、本件発明の詳細な説明の開示範囲を超えるものである(理由C、理由I、理由M、理由N)。
d 本件発明の詳細な説明には、請求項1、22に記載された「少なくとも80°Cの温度の影響下」についての具体的な温度条件の説明がない。
そして、甲第4号証の【0003】の「2水和物中の化学的に結合した水は、石膏パネルの防火性に働く。熱または火に曝されたとき、2水和物は半水和物に、または硬石膏の形にまで転換する。水和の過剰な水は、水蒸気の形で追い出される。」(前記2(4)イ参照)との記載や、甲第6号証の【0016】の「火炎にさらされた場合、CaSO
4
・2H
2
Oからの水蒸気は大気中に放出される前にボードを通過しなければならない。」、「水蒸発空隙数が増加したウォールボードは、より高い耐火性を有し得る。しかしながら、水対スタッコ比が高すぎる(そして泡量が少なすぎる)場合、蒸気圧が増大して、ウォールボードの崩壊に至る可能性がある。」(前記2(6)イ参照)との記載によれば、硬化した石膏製品は、火炎にさらされるとCaSO
4
・2H
2
Oからの水蒸気が放出され、水対スタッコ比が高すぎると崩壊する可能性があるとの特性を有しているといえるところ、請求項1、22に記載された「少なくとも80°Cの温度の影響下」が、本件発明の詳細な説明の【0022】に記載の加熱速度を意味しているとすれば、急激な加熱によって、CaSO
4
・2H
2
Oからの水蒸気は多くなり、試験対象の硬化物である角柱を通過することになるので、角柱内の蒸気圧が増大して角柱が膨張することは理解できる。そして、本件図面の【図3】~【図5】は、本件発明の詳細な説明の【0022】に記載された急激な初期加熱によって、硬化物である角柱の生じる膨張の程度を通常より拡大させたものである。
これに対して、甲第8号証の【図3】には、【0051】の「試料を他の複数のセラミック棒によって支持し、加熱炉内において1000°Cに(約44°C/分の初期速度で600°Cまで、次に徐々にゆっくりと減少した速度で)加熱した(ISO-834に準拠)。」(前記2(8)エ参照)との記載によれば、2分弱で80°Cを越えて、13~14分程度で600°Cになるような速度で加熱したときの硬化物の線収縮が記載されているといえるところ、加熱の初期に僅かながら膨張が認められるのみであり、この硬化物における膨張の程度の違いは初期加熱の条件の違いであると理解できる。
このことは、請求項1、22に記載された「膨張段階の時間」は、特有の加熱条件下において初めて明確に確認できるものであることを示している。
しかしながら、請求項1、22の「少なくとも80°Cの温度の影響下」の規定は、同様の硬化物試料について全く異なる線収縮のグラフを示す甲第8号証の【図3】における加熱条件も該当するため、当該規定はサポート要件を満たさない(理由D、理由P)。
e 甲第8号証の【図3】のように、火災初期段階に膨張することは技術常識であり、「H-シロキサン」による「膨張段階の時間」の延長効果は、本件明細書で初めて開示されたものでないから、比較対象を「H-シロキサンを含まず」とした規定はサポート要件を満たさない。
また、本件発明の詳細な説明には、H-シロキサンのみを含む角柱に対して、「膨張段階の時間」のわずかな延長効果は認められるが、「少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」ことは開示されていないので、サポート要件を満たさない(理由E、理由J、理由O、理由P)。
f 請求項2の「前記石膏建築材料が、さらなる添加剤を含む」との規定について、本件発明の詳細な説明で、スタッコとドライミックスを形成し、スラリーにした後、硬化させて、「膨張段階の時間」を測定するための特有の角柱に用いているのは「促進剤」だけであるから、サポート要件を満たさない(理由G)。
g 請求項2~18は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するため、前記a~eと同様の理由でサポート要件を満たさない(理由F)。
また、請求項20、21は、請求項19の記載を直接又は間接的に引用するため、前記a、c、eと同様の理由でサポート要件を満たさない(理由K)。
(イ) 前記主張に対する判断
a 前記(ア)aの主張について
本件発明の詳細な説明の【0010】には、「本発明による石膏建築材料は、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカを含む。」(前記3(3)参照)と「さらなる添加剤」を含んでいない場合の記載があるから、本件請求項1に記載の「石膏建築材料において、少なくとも石膏と、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素と、を含み」との特定事項、及び、本件請求項19に記載の「少なくとも1つのスラリーが、少なくともスタッコと水とが互いに混合されることで製造され」との特定事項は、本件発明の詳細な説明の開示範囲を超えるものでない。
よって、前記(ア)aの主張は採用できない。
b 前記(ア)bの主張について
本件請求項1、22に記載の「石膏建築材料」は、前記(1)ウ(イ)で検討したとおり、事前成形された本体、又は、粉体材料や塗材などから製造された本体であって、成形体材料であることは明らかである。
また、本件請求項1、22の「前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」との記載は、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素以外の組成が同じ「石膏建築材料」に対して、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素の有無による「膨張段階の時間」の相対的な値を示すものであるから、「角柱」以外の形状であることや「添加剤」を含まないことが、当該相対的な値に影響しないことを理解できる。
そして、本件請求項1、22には、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素以外の組成が同じ「石膏建築材料」を「膨張段階の時間」の測定対象とすることが記載されているから、本件請求項1、22に記載の「膨張段階の時間」は、本件発明の詳細な説明の開示範囲を超えるものでない。
よって、前記(ア)bの主張は採用できない。
c 前記(ア)cの主張について
本件発明の詳細な説明の【発明を実施するための形態】に記載された具体例の結果である【図3】~【図5】(前記3(5)参照)によれば、H-シロキサンの含有量が一定で、マイクロシリカの含有量を増加させたとき、また、マイクロシリカの含有量が一定で、H-シロキサンの含有量を増加させたときに、膨張段階の時間が長くなることを見て取れるし、また、本件発明の詳細な説明には、前記ウ(ア)で検討したとおり、「石膏建築材料は、使用されるスタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンを含む」こと(前記3(3)の【0024】参照)、「石膏建築材料は、使用されるスタッコの量に対して、少なくとも0.5重量%の非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカを含有する」こと(前記3(3)の【0026】参照)、及び「最大で20重量%の非晶質二酸化ケイ素を使用する必要がある」こと(前記3(3)の【0026】)が記載されているから、本件請求項1、19、22に記載されたH-シロキサンの含有量及び非晶質二酸化ケイ素の含有量は、本件発明の詳細な説明の開示範囲を超えるものでない。
よって、前記(ア)cの主張は採用できない。
d 前記(ア)dの主張について
前記(1)ウ(ウ)で検討したとおり、本件請求項1、22に記載された「少なくとも80°Cの温度」は、膨張が生じる温度として特定されたものと理解することができる。
また、申立人が主張するように、初期加熱の条件の違いにより、石膏建築材料における膨張の程度の大きさに違いが生じるといえるものの、本件請求項1、22に記載の「前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」ことは、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素以外の組成が同じ「石膏建築材料」に対して、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素の有無による「膨張段階の時間」の相対的な値を示すものであり、膨張の程度の大きさを示すものでない。
しかも、甲第8号証の【図3】(前記2(8)オ参照)には、2%微細二酸化ケイ素を分散させたときの熱収縮のグラフが記載されているところ、この微細二酸化ケイ素の添加量は、本件発明の詳細な説明に記載された「膨張段階の時間」の延長効果が最も小さい具体例である、マイクロシリカを4重量%添加した場合(前記3(5)の【図2】参照)の半分程度であり、「膨張段階の時間」の延長効果はさらに小さくなるから、甲第8号証の【図3】の熱収縮のグラフから、「膨張段階の時間」の延長効果は読み取り難いものである。
そうしてみると、本件請求項1、22の「少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」との記載において、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素の有無による「膨張段階の時間」の相対的な値に初期加熱の条件が影響するとまではいうことができない。
したがって、前記(ア)dの主張は採用できない。
e 前記(ア)eの主張について
申立人が主張する「H-シロキサン」による「膨張段階の時間」の延長効果は、甲第1号証~甲第8号証、甲第10号証のいずれにも記載されておらず、本件特許出願時の技術常識といえない。
そうしてみると、前記(ア)eの主張は、その前提が誤っているので採用できない。
f 前記(ア)fの主張について
本件発明の詳細な説明の【0014】には、「任意選択で提供されるさらなる添加剤は、石膏建築材料用の添加剤として当業者に知られている。これらは、例えば、促進剤、遅延剤、液化剤、増粘剤、殺生物剤、殺菌剤などであり得る。」(前記3(3)参照)と記載されている。
そして、本件請求項2が引用する本件請求項1の「前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」との記載は、前記bで検討したとおり、添加剤の有無が影響するものでない。
以上を踏まえると、「膨張段階の時間」の測定対象に「促進剤」以外の添加剤を含有しても、前記エで検討したとおり、本件発明の課題を解決できると認識できるから、本件請求項2の「前記石膏建築材料が、さらなる添加剤を含む」との規定は、サポート要件を満足する。
よって、前記(ア)fの主張は採用できない。
g 前記(ア)gの主張について
本件請求項2~18、20、21についても、前記a~eで検討したのと同様の理由により、サポート要件を満足するから、前記(ア)gの主張は採用できない。
カ 申立理由2(サポート要件違反)についての結論
以上のとおりであるから、申立理由2に理由はない。
(3) 申立理由1(分割不適法を前提とする新規性欠如)について
ア 分割要件に対する判断
(ア) 分割要件の判断手法
分割出願を認めるためには、以下の「要件1」~「要件3」が満たされる必要があるので、以下、この観点に沿って検討する。
要件1 原出願の分割直前の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。
要件2 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。
要件3 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること。
(イ) 要件2及び3について
a 原出願の出願当初の明細書等の記載について
原出願は、2018年(平成30年)12月20日を国際出願日とする外国語特許出願であって、令和3年6月18日に明細書、請求の範囲、図面、及び要約の翻訳文(以下、「翻訳文等」という。)が提出され、令和3年12月20日に手続補正書が提出され、令和4年4月21日に公表公報(甲第9号証)が発行されたものであり、原出願の出願当初の明細書等とみなされる翻訳文等の記載は、甲第9号証の第2ページ~第11ページのとおりであり、前記2(9)に摘記した記載がある。
b 本件発明1~18について
原出願の当初の明細書等には、前記2(9)ア、イによれば、石膏建築材料は、少なくとも石膏、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカを含み、H-シロキサンは、石膏建築材料中で均一に分布することができ、少なくとも80°Cの温度の影響下にある石膏建築材料が、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まないが、それ以外は同一組成である石膏材料よりも時間的に長い膨張段階を有すること(【請求項1】、【0010】)、石膏建築材料の膨張段階は、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まない同一組成の石膏建築材料の膨張段階よりも少なくとも1.2倍長いこと(【請求項2】、【0021】)、石膏建築材料は、使用されるスタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンを含むこと(【請求項5】、【0024】)、石膏建築材料は、使用されるスタッコの量に対して、少なくとも0.5重量%、及び、最大で20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含むこと(【請求項6】、【0026】)が記載されているから、本件発明1は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるといえる。
また、本件発明2~18についても、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるといえる(前記2(9)アの【請求項1】~【請求項4】、【請求項6】、【請求項7】、【請求項9】~【請求項12】、同イの【0010】、【0021】~【0024】、【0026】~【0028】参照)。
c 本件発明19~21について
原出願の当初の明細書等には、前記2(9)ア、イによれば、石膏建築ボードを製造するための方法において、少なくとも1つのスラリーが、少なくともスタッコと水とが互いに混合されることで製造され、前記スラリーが、石膏建築ボードの切れ目のないストランドへと形成されて、次いでこれが石膏建築ボードに分離され、前記石膏建築ボードが乾燥され、前記スラリーを製造するために、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素がさらに使用され、少なくとも80°Cの温度の影響下にあるH-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を備えた石膏建築ボードは、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築ボードよりも長い膨張段階を有すること(【請求項13】、【0029】)、H-シロキサンは、石膏建築材料中で均一に分布すること(【0010】)、石膏建築材料の膨張段階は、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まない同一組成の石膏建築材料の膨張段階よりも少なくとも1.2倍長いこと(【0021】)、石膏建築材料は、使用されるスタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンを含むこと(【0024】)、石膏建築材料は、使用されるスタッコの量に対して、少なくとも0.5重量%、及び、最大で20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含むこと(【0026】)が記載されているから、本件発明19は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるといえる。
また、本件発明20、21についても、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるといえる(前記2(9)アの【請求項13】、【請求項14】、同イの【0029】、【0030】参照)。
d 本件発明22について
原出願の当初の明細書等には、前記2(9)ア、イによれば、温度の影響下で石膏建築材料に対するH-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素の使用であって、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従った前記石膏建築材料が、0~60分間、950°Cまで加熱され、常に950°Cの一定温度に保ちながら60~120分間処理され、前記石膏建築材料が、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まないがそれ以外は同一組成の石膏建築材料と比較して、より長い膨張段階を有する使用(【請求項15】、【0031】)、石膏建築材料の膨張段階は、H-シロキサン及び非晶質二酸化ケイ素を含まない同一組成の石膏建築材料の膨張段階よりも少なくとも1.2倍長いこと(【0021】)、石膏建築材料は、使用されるスタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンを含むこと(【0024】)、石膏建築材料は、使用されるスタッコの量に対して、少なくとも0.5重量%、及び、最大で20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含むこと(【0026】)が記載されているから、本件発明22は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるといえる。
e 小括
前記b~dでの検討のとおり、本件発明1~22は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるといえるから、本件特許出願は、要件2を満足する。
また、本件特許出願は、原出願の審査過程における令和5年6月9日発送の拒絶理由通知の応答期間内、すなわち、原出願の明細書等について補正することができる時期である同年9月6日に分割出願されたものであるから、原出願の分割直前の明細書等には、前記2(9)に摘記した事項が実質的に記載されているといえる。
よって、本件発明1~22は、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であるといえるから、本件特許出願は、要件3を満足する。
(ウ) 要件1について
原出願の分割直前の明細書等には、上記記載内容以外にもさまざまな技術的な事項が記載されているため、本件発明1~22は、原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部であるといえないことは明らかであるから、本件特許出願は、要件1を満足する。
(エ) 申立人の主張について
a 申立人は、以下の(a)、(b)の点で、本件特許出願は分割要件を満たしていない旨を主張している(特許異議申立書の第25~27ページ)。
(a) 本件発明1の「石膏建築材料において、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素、を含み」との特定事項に関し、原出願の当初の特許請求の範囲の請求項1の「石膏建築材料において、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素、ならびに任意選択でさらなる添加剤を含み」との記載における「任意選択でさらなる添加剤を含み」は、原出願の当初の明細書の【0010】、【0014】、【0034】、及び【0049】の記載によれば、添加剤の種類を「任意選択」しており、さらなる添加剤を含むことを「任意選択」していないため、原出願の当初の明細書等には、「石膏建築材料において、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素、を含み」とする構成の発明は記載されておらず、本件発明1は、原出願の当初の明細書等に記載された発明でない(第一の理由)。
(b) 本件発明22の「温度の影響下における、スタッコからなる石膏建築材料の膨張段階を延長するための」との特定事項に関し、原出願の当初の明細書等には、粉体材料である「スタッコ」の膨張段階を延長することは記載されていないから、本件発明22は、原出願の当初の明細書等に記載された発明でない(第二の理由)。
b 前記主張に対する判断
(a) 前記a(a)の主張について
原出願の当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された「任意選択でさらなる添加剤を含み」は、「任意選択」が「含み」に係っていることは明らかであり、このことは、原出願の当初の明細書の【0010】の「したがって、本発明による石膏建築材料は、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素、特にマイクロシリカを含む。」との記載(前記2(9)イ参照)で裏付けられている。
したがって、原出願の当初の明細書等には、「石膏建築材料において、少なくとも石膏、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素、を含み」とする構成の発明が記載されているから、申立人の前記a(a)の主張は採用できない。
(b) 前記a(b)の主張について
本件発明22における「スタッコからなる石膏建築材料」は、本件明細書の【0011】の「本発明の範囲内で、「石膏建築材料」という用語は、事前成形された本体、例えば石膏建築ボードまたは仕切り壁ボード、およびまたプラスター、充填剤、またはスクリードなどの材料から製造された本体の両方を意味し」との記載(前記3(3)参照)からして、スタッコから製造された成形体材料である石膏建築材料を意味し、粉体材料である「スタッコ」を意味していないことは明らかである。
そして、原出願の当初の明細書等には、前記dで検討したとおり、【請求項15】、【0031】等の記載によれば、石膏建築材料の膨張段階を延長することが記載されている。
したがって、原出願の当初の明細書等には、本件発明22が記載されているから、申立人の前記a(b)の主張は採用できない。
(オ) 分割要件についての結論
以上のとおりであるから、本件特許出願は、分割要件を満たすものである。
イ 新規性欠如に対する判断
本件特許出願は、前記アで検討したとおり、分割要件を満たすものであるから、特許法第44条第2項の規定により、原出願の出願日である平成30年12月20日にしたものとみなされる。
そして、令和4年4月21日に公表された甲第9号証は、本件特許出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものといえないから、本件発明2~22は、甲第9号証に記載された発明に対して、新規性を有する。
ウ 申立理由1(分割不適法を前提とする新規性欠如)についての結論
以上のとおりであるから、申立理由1に理由はない。
(4) 申立理由4(進歩性欠如)について
ア 甲第1号証に記載された発明
(ア) 甲第1号証には、前記2(1)アによれば、石膏、ポゾラン源及び金属塩添加剤を含み、前記ポゾラン源が、カオリナイト粘土材料、フライアッシュ、もみ殻灰、珪藻土、火山灰及び軽石、マイクロシリカ、シリカフェーム並びにシリコーンオイルから選択される硫酸カルシウムベースの製品(【請求項1】、【請求項20】)、焼石膏、ポゾラン源及び金属塩を含み、前記ポゾラン源が、カオリナイト粘土材料、フライアッシュ、もみ殻灰、珪藻土、火山灰及び軽石、マイクロシリカ、シリカフェーム並びにシリコーンオイルから選択される硫酸カルシウムベースの組成物を含む水性スラリーを乾燥することによる硫酸カルシウムベースの製品を形成する方法(【請求項25】、【請求項35】、【請求項40】)、並びに、石膏を含む硫酸カルシウムベースの製品が熱に暴露されている間に収縮を減少する及び/又は強度を改良するためのポゾラン源及び金属塩添加剤の組み合わせの使用(【請求項41】)が記載され、前記2(1)イによれば、硫酸カルシウムベースの製品は、硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品(【0001】)といえる。
(イ) そして、甲第1号証には、前記2(1)オによれば、前記(ア)の硫酸カルシウムベースの製品、硫酸カルシウムベースの製品を形成する方法、並びに、ポゾラン源及び金属塩添加剤の組み合わせの使用の具体例として、シリコーンオイル及び金属塩として硝酸マグネシウム六水和物を40°Cにおいて水140gに添加し、次いで焼石膏を溶液に添加して、これを30秒間手でブレンドして、スタッコが82wt%、シリコーンオイルが9wt%、硝酸マグネシウム六水和物が9wt%のスラリーを形成し、このスラリーを円筒状シリコーン鋳型に注ぎ、この試料を40°Cで一晩乾燥したこと(【0052】、【0053】、【0054】【表1-1】、【0055】【表1-2】の実施例23)、得られた製品中のスタッコが84.2wt%、シリコーンオイルが7.9wt%、硝酸マグネシウムが7.9t%であること(【0058】【表2-1】、【0059】【表2-2】の実施例23)、シリコーンオイルが、ポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイルであること(【0050】)が記載されている。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)の記載事項を、「硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品」、「硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品を形成する方法」、並びに、「ポゾラン源及び金属塩添加剤の組み合わせの使用」に注目して整理すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているといえる。
a 甲1発明1
「石膏、ポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイル、及び硝酸マグネシウムを含み、製品中のスタッコが84.2wt%、シリコーンオイルが7.9wt%、硝酸マグネシウムが7.9t%である、硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品。」
b 甲1発明2
「ポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイル、及び硝酸マグネシウム六水和物を40°Cにおいて水140gに添加し、次いで焼石膏を溶液に添加して、これを30秒間手でブレンドして、スタッコが82wt%、シリコーンオイルが9wt%、硝酸マグネシウム六水和物が9wt%のスラリーを形成し、このスラリーを円筒状シリコーン鋳型に注ぎ、この試料を40°Cで一晩乾燥することによる硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品を形成する方法。」
c 甲1発明3
「石膏を含む硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品が熱に暴露されている間に収縮を減少する及び/又は強度を改良するためのポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイル、及び硝酸マグネシウム六水和物の組み合わせの使用。」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「石膏」、「ポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイル」は、それぞれ、本件発明1の「石膏」、「H-シロキサン」に相当する。
また、甲1発明1の「硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品」は、甲第1号証の【0003】の「ウォールボードなどの硫酸カルシウムベースの製品は、通常は、焼石膏またはスタッコとしても知られる硫酸カルシウムの半水和物(CaSO
4
・1/2H
2
O)の水性スラリーを、ライニング紙またはガラス繊維マットの二つのシートの間で乾燥することによって形成される。スラリーが乾燥して、焼石膏が水和されるにつれて、ライニングシート/マットの間にはさまれた石膏(硫酸カルシウム二水和物(CaSO
4
・2H
2
O))の硬質で剛性のコアが形成される。」(前記2(1)ウ参照)との記載を踏まえると石膏ベースの建物/建設用製品といえるから、本件発明1の「石膏建築材料」に相当する。
また、甲1発明1の「製品中のスタッコ」は、前記の対応関係を踏まえると、本件発明1の「前記石膏建築材料が、スタッコを材料と」することに相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明1とは、「石膏建築材料において、少なくとも石膏と、H-シロキサンと、を含み、前記石膏建築材料が、スタッコを材料とし、前記石膏建築材料が、H-シロキサンを含む、石膏建築材料」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件発明1は、「前記石膏建築材料が、スタッコを材料とし、前記石膏建築材料が、前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサン及び0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素を含み、前記非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含」んでいるのに対して、甲1発明1は、「製品中のスタッコが84.2wt%、シリコーンオイルが7.9wt%、硝酸マグネシウムが7.9t%である」点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記H-シロキサンが、前記石膏建築材料中に均一に分布し」ているのに対して、甲1発明1は、その点が明らかでない点。
<相違点3>
本件発明1は、「少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」のに対して、甲1発明1は、その点が明らかでない点。
(イ) 判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
甲第2号証には、メチルヒドロゲンポリシロキサンを含むシリコーンオイルが石膏に防水機能を付与するために使用されること(前記2(2)ウの【0005】、同オの【0019】、【0026】参照)、甲第3号証には、メチルハイドロジェンポリシロキサンが石膏ボードに撥水性を付与できること(前記2(3)イの【0001】、同ウの【0004】参照)、甲第4号証には、フュームシリカが石膏の収縮抵抗性材料であること(前記2(4)エの【0026】参照)、甲第5号証には、シリコーン油が石膏製品の疎水性添加剤であり、マイクロシリカが石膏製品の収縮防止剤であること(前記2(5)の【0008】参照)、甲第6号証には、シリカ・ヒュームがスタッコスラリーの増粘剤であること(前記2(6)イの【0035】参照)、甲第7号証には、シロキサンが石膏ボードの耐水性を付与し、高温収縮を抑制すること(前記2(7)イの【0037】、同エの【0127】参照)、甲第8号証には、マイクロシリカをウォールボードの石膏コアの収縮を減少させるために使用すること(前記2(8)イの【0007】参照)、甲第10号証には、水溶性アルカリ珪酸塩と無機質粉末を主成分とする断熱耐火性組成物(前記2(10)アの【請求項1】参照)がそれぞれ記載されている。
しかしながら、甲第2号証~甲第8号証、及び甲第10号証のいずれにも、「少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」ことは、記載も示唆もされていないし、このことが技術常識であるとの証拠もないため、甲1発明1において、相違点3に係る本件発明1の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものといえない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第8号証、甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
(ウ) 申立人の主張について
a 申立人は、相違点3に関して、本件発明1の「少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」との特定事項は、不明確であること(前記(1)イ(イ)~(エ)参照)、及び本件明細書で開示されている範囲を大きく逸脱していること(前記(2)オ(ア)b、d、e参照)から、進歩性についての判断をすることができないが、相違点3に係る本件発明1の前記特定事項は、甲第1号証~甲第8号証の記載から理解できるとおり、広く製造・販売・使用されている石膏ボードや石膏パネル等の石膏製品について規定したものであると言わざるをえない旨を主張している(特許異議申立書第80~84ページ)。
b 前記主張について検討すると、前記(1)、(2)で検討したとおり、本件発明1の「少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」との特定事項は、明確であるし、本件明細書に開示されている範囲を逸脱するものでもない。
また、広く製造・販売・使用されている石膏ボードや石膏パネル等の石膏製品が、前記特定事項を満足することについて、申立人は、測定結果等の具体的な証拠を何ら示していないため、前記特定事項が、広く製造・販売・使用されている石膏製品を規定したものであるとはいえない。
したがって、申立人の前記aの主張は採用できない。
ウ 本件発明2~18について
本件発明2~18は、本件発明1の特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記イの本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明2~18は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第8号証、甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
エ 本件発明19について
(ア) 対比
本件発明19と甲1発明2とを対比する。
前記イ(ア)の対応関係を踏まえると、甲1発明2の「硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品」は、「石膏建築材料」といえるから、甲1発明2の「硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品を形成する方法」は、本件発明19の「石膏建築ボードを製造するための方法」と、「石膏建築材料を製造する方法」で共通している。
また、甲1発明2の「ポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイル」は、本件発明19の「H-シロキサン」に相当するから、甲1発明2の「ポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイル、及び硝酸マグネシウム六水和物を40°Cにおいて水140gに添加し、次いで焼石膏を溶液に添加して、これを30秒間手でブレンドして、スタッコが82wt%、シリコーンオイルが9wt%、硝酸マグネシウム六水和物が9wt%のスラリーを形成」することは、本件発明19の「少なくとも1つのスラリーが、少なくともスタッコと水とが互いに混合されることで製造され」、「前記スラリーを製造するために」、「H-シロキサン」が「添加され」ることに相当する。
したがって、本件発明19と甲1発明2とは、「石膏建築材料を製造するための方法であって、少なくとも1つのスラリーが、少なくともスタッコと水とが互いに混合されることで製造され、前記スラリーを製造するために、前記スタッコにH-シロキサンが添加される、石膏建築材料を製造するための方法」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点4>
本件発明19は、「石膏建築ボードを製造するための方法であって」、「前記スラリーが、石膏建築ボードの切れ目のないストランドへと形成されて、次いでこれが複数の石膏建築ボードに分離され、前記複数の石膏建築ボードが乾燥される方法」であるのに対して、甲1発明2は、その点が明らかでない点。
<相違点5>
本件発明19は、「前記スラリーを製造するために、前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンおよび前記スタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素が、前記石膏建築ボード中に均一に分布するように添加され、前記非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み、それにより、少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築ボードが、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築ボードの膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」のに対して、甲1発明2は、「スタッコが82wt%、シリコーンオイルが9wt%、硝酸マグネシウム六水和物が9wt%のスラリーを形成し」ている点。
(イ) 判断
事案に鑑み、まず相違点5について検討すると、甲第2号証~甲第8号証、及び甲第10号証のいずれにも、「前記スラリーを製造するために、前記スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンおよび前記スタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素が、前記石膏建築ボード中に均一に分布するように添加され、前記非晶質二酸化ケイ素がマイクロシリカを含み、それにより、少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築ボードが、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築ボードの膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」ことは、記載も示唆もされていないし、このことが技術常識であるとの証拠もないため、甲1発明2において、相違点5に係る本件発明19の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものといえない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明19は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第8号証、甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
オ 本件発明20、21について
本件発明20、21は、本件発明19の特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記エの本件発明19についての検討と同様の理由により、本件発明20、21は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第8号証、甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
カ 本件発明22について
(ア) 対比
本件発明22と甲1発明3とを対比する。
甲1発明3の「石膏を含む硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品」は、甲第1号証の【0003】の「ウォールボードなどの硫酸カルシウムベースの製品は、通常は、焼石膏またはスタッコとしても知られる硫酸カルシウムの半水和物(CaSO
4
・1/2H
2
O)の水性スラリーを、ライニング紙またはガラス繊維マットの二つのシートの間で乾燥することによって形成される。スラリーが乾燥して、焼石膏が水和されるにつれて、ライニングシート/マットの間にはさまれた石膏(硫酸カルシウム二水和物(CaSO
4
・2H
2
O))の硬質で剛性のコアが形成される。」(前記2(1)ウ参照)との記載を踏まえると、スタッコから製造された石膏ベースの建物/建設用製品といえるから、本件発明22の「スタッコからなる石膏建築材料」に相当する。
また、甲1発明3の「ポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイル」は、本件発明22の「H-シロキサン」に相当する。
さらに、前記対応関係を踏まえると、甲1発明3の「石膏を含む硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品が熱に暴露されている間に収縮を減少する及び/又は強度を改良する」は、本件発明22の「温度の影響下における、スタッコからなる石膏建築材料の膨張段階を延長する」と、「温度の影響下における」「石膏建築材料」を改良することで共通する。
したがって、本件発明22と甲1発明3とは、「温度の影響下における、スタッコからなる石膏建築材料を改良するための、H-シロキサンの使用」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点6>
本件発明22は、「温度の影響下における」、「石膏建築材料の膨張段階を延長するための、スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンおよびスタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素の使用であって、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含み、前記石膏建築材料を、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って、0分から60分まで、950°Cまで加熱し、60分から120分まで、常に950°Cの一定温度に保ちながら処理したときに、前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成の石膏建築材料と比較して、より長い膨張段階を有し、少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」のに対して、甲1発明3は、「石膏を含む硫酸カルシウムベースの建物/建設用製品が熱に暴露されている間に収縮を減少する及び/又は強度を改良するためのポリメチルヒドロシロキサンをベースとする無水シリコーンオイル、及び硝酸マグネシウム六水和物の組み合わせの使用」である点。
(イ) 判断
相違点6について検討すると、甲第2号証~甲第8号証、及び甲第10号証のいずれにも、「温度の影響下における」、「石膏建築材料の膨張段階を延長するための、スタッコの質量に対して0.01~10重量%のH-シロキサンおよびスタッコの質量に対して0.5重量%~20重量%の非晶質二酸化ケイ素の使用であって、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含み、前記石膏建築材料を、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って、0分から60分まで、950°Cまで加熱し、60分から120分まで、常に950°Cの一定温度に保ちながら処理したときに、前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成の石膏建築材料と比較して、より長い膨張段階を有し、少なくとも80°Cの温度の影響下において前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍である膨張段階を有する」ことは、記載も示唆もされていないし、このことが技術常識であるとの証拠もないため、甲1発明3において、相違点6に係る本件発明22の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものといえない。
したがって、本件発明22は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第8号証、甲第10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
キ 申立理由4(進歩性欠如)についての結論
以上のとおりであるから、申立理由4に理由はない。
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許1~22を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1~22を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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